JP2004260020A - 軟磁性部材 - Google Patents

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康雄 橋本
Katsuhiko Wakayama
勝彦 若山
Yasushi Iijima
康 飯島
Akira Kakinuma
朗 柿沼
Kazunori Tazaki
和則 田崎
Tsutomu Cho
勤 長
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Abstract

【課題】製造が容易であるとともに、GHz帯域において高い透磁率を示す軟磁性部材を提供する。
【解決手段】樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に配設された軟磁性金属層4と、を備えた軟磁性部材1であって、下地金属層3の厚さをs、軟磁性金属層4の厚さをpとすると、5≦p/s<10かつ0<s<100nmとする。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ギガ・ヘルツ(GHz)帯域で複素透磁率の実数部分が大きく、虚数部分の小さな軟磁性部材に関する。
【0002】
【従来の技術】
情報通信機器は小型化・高周波化の傾向にあり、これまでは誘電率を利用した素子の高性能化が図られてきた。一方で、近傍界の電磁波を利用して効率改善を図る場合は、透磁率を利用した高性能化が期待できる。従来、磁性体の透磁率はGHz帯域においてそれ以下の帯域に比べて一桁のオーダーで小さな値しか示さないことから、透磁率を積極的に利用されることはなく、高周波部品には専ら誘電体が使用されてきた。しかしながら、アンテナを含む高周波部品では、誘電率の利用による特性改善に限界が現れてきており、飛躍的な効率改善を望むことは困難である。
【0003】
一方、GHz帯域といった高周波における透磁率を改善する研究も進められている。
例えば、イオンビームスパッタ法により、基板上に磁性体層と非磁性体層(SiO)とを交互に積層した構造をなす多層膜がGHz帯域で優れた複素透磁率を示すことが知られている(千田、永井、石井、道上、NTT R&D,Vol.42 No.5(1993),pp689−696)。ここで、高透磁率を実現するためには磁歪が小さいほうが有利である。そのために、例えば、Fe(磁歪:負)とNiFe合金(磁歪:正)とを相互拡散させることにより磁歪を小さく制御した磁性体層を提案している。また、CoNbZr膜のように磁歪の小さな膜に磁界中熱処理を施して誘導異方性を付与し、GHzといった高周波帯域まで高い透磁率を保つ工夫がなされている。なお、異方性は、磁界中熱処理を施す以外に微細パターンを形成することによっても付与することができる(末沢、山口、荒井、島田、田邉、伊藤、日本応用磁気学会誌,Vol.24(2000),pp731−734)。
【0004】
【非特許文献1】NTT R&D,Vol.42 No.5(1993),pp689−696
【非特許文献2】日本応用磁気学会誌,Vol.24(2000),pp731−734
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
以上のGHz帯域での高透磁率化の手法は、基板上に軟磁性膜を成膜した後に、磁界中熱処理を施して誘導異方性を付与する、あるいは微細パターンを形成して形状異方性を付与することにより、異方性磁界を大きくして高周波化するものである。しかしながら以上の手法は、固い基板材料を使用する必要があり、さらに異方性を付与するために高価な熱処理や加工を施す必要がある。そのために、形状や価格の制約が厳しく、実用化の障害となる。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、製造が容易であるとともに、GHz帯域において高い透磁率を示す軟磁性部材を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる目的のもと、本発明は、絶縁層と、絶縁層に対向して配置された下地金属層と、下地金属層上に配設された軟磁性金属層と、を備えた軟磁性部材であって、下地金属層の厚さをs、軟磁性金属層の厚さをpとすると、5≦p/s<10、かつ0<s<100nmとすることを特徴としている。
また本発明は、絶縁層と、絶縁層に対向して配置された下地金属層と、下地金属層上に配設された軟磁性金属層と、を備えた軟磁性部材であって、下地金属層の厚さをs、軟磁性金属層の厚さをpとすると、4≦p/s≦15、かつ100nm<s≦1000nmとすることを特徴としている。
【0007】
本発明の軟磁性部材において、下地金属層が、軟磁性金属層よりも保磁力又は異方性磁界の大きな材料で構成することが望ましい。
また本発明の軟磁性部材において、軟磁性金属層を、20〜80wt%のFeと、Ni及びCoの1種又は2種を含む合金から構成することが望ましい。
さらに本発明の軟磁性部材は、絶縁層と、下地金属層と、軟磁性金属層からなるユニットが複数積層された形態を含む。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に示す実施の形態に基づいてこの発明を詳細に説明する。
図1は、本発明にかかる軟磁性部材の構成例を示す部分断面図である。
図1に示す軟磁性部材1は、樹脂フィルム2と、樹脂フィルム2上に形成された下地金属層3と、下地金属層3上に形成された軟磁性金属層4とから構成される。
絶縁層として機能する樹脂フィルム2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、メラミン樹脂、ユリア樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリサルフォン、ポリカーボネート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリイミド、PPS(ポニフェニレンサルファイド)、フッ素樹脂、シリコーン樹脂を用いることができる。その中で、後述するように積層軟磁性部材の製造過程で熱処理を施す場合には、耐熱性を有する樹脂材料を用いることが望ましい。
【0009】
軟磁性金属層4は、磁性を示す遷移金属元素のいずれか、あるいは遷移金属元素と他の金属元素とからなる合金により構成することができる。具体的な例としては、Fe、Ni及びCoの1種又は2種を主成分とする合金であり、Fe−Ni系合金、Fe−Co系合金、Fe−Ni−Co系合金、Co−Ni系合金が該当する。これらの中で、飽和磁束密度が1.0T、さらには1.5T以上の合金が望ましい。特にこの中で、Fe含有量が20〜80wt%(望ましくは30〜70wt%、さらに望ましくは40〜65wt%)のFe−Ni合金、Fe−Co合金及びFe−Co−Ni合金が望ましい。この組成系の合金は、飽和磁束密度が大きく、異方性制御により異方性磁界を増大させて、共鳴周波数を高周波側へシフトさせるのに有利である。これら合金に15at%以下のNb,Mo,Ta,W,Zr,Mn,Ti,Cr,Cu,Coの1種以上を含有することができる。また、軟磁性金属層4をめっき(電解又は無電解)で形成する場合にはC及びS等の元素を不可避的に含むが、本発明の軟磁性金属層4は、そのような元素の含有を許容する。
【0010】
軟磁性金属層4は、結晶質合金及び非晶質合金のいずれの態様であっても構わない。非晶質合金としては、Co系及びFe系の非晶質合金を用いることができる。また、Fe系の微結晶合金を用いることも本発明は包含する。微結晶合金は、一般的に、結晶粒径が10nm程度の微細な結晶が主体をなす合金として知られている。
軟磁性金属層4は、めっき、真空蒸着法、スパッタリング法等の各種の膜形成プロセスによって作成することができる。これらの膜形成プロセスは、単独で行なうことができる。したがって、めっきのみで軟磁性金属層4を形成することもできるし、蒸着のみで軟磁性金属層4を形成することもできる。もちろん、複数の膜形成プロセスを組み合わせることもできる。めっきは、真空蒸着法に比べて低温で膜を形成することができる点で本発明にとって好適である。特に、軟磁性金属層4を樹脂フィルム2上に形成する場合に、樹脂フィルム2に熱的な影響を与えないことが望ましいからである。また、めっきは、スパッタリング法に比べて、所定の厚さの膜を短時間で得ることができるメリットがある。なお、めっきにより軟磁性金属層4を得る場合、めっき浴中に含まれているS等の元素が軟磁性金属層4に混入することから、他のプロセスによる軟磁性金属層4との区別ができる。
【0011】
下地金属層3として、軟磁性金属層4よりも保磁力(異方性磁界)が大きい材質を選択することが望ましい。そうすることにより、軟磁性金属層4の異方性磁界を増大させて、GHz帯域の強磁性共鳴周波数を大きくできる。その結果、2GHz付近のμ’(複素透磁率の実数部分)を増大させ、同時にμ”(複素透磁率の虚数部分)を低減することができる。携帯通信機器が使用する周波数帯域では、μ’が大きくμ”が小さいほど電磁波の放射効率改善効果が大きい。なお、下地金属層3と同様の材質からなる層を、軟磁性金属層4上に形成してもGHz帯域の透磁率改善効果が望める。軟磁性金属層4がFe−Ni合金の場合、下地金属層3として純Niを用いることが望ましい。
【0012】
下地金属層3は、軟磁性金属層4の異方性磁界を高める他に、軟磁性金属層4を電解めっきによって樹脂フィルム2上に形成する場合に必要となる導電層としての役割も果たす。下地金属層3は、例えば、真空蒸着法、スパッタ法あるいは無電解めっきにより形成することができる。
【0013】
次に、軟磁性部材1の厚さについて説明する。
樹脂フィルム2の厚さは、50μm以下とする。樹脂フィルム2は、軟磁性部材1の基体として機能するほか、軟磁性部材1を積層した際に軟磁性金属層4同士を絶縁する機能を果たす。しかし、この絶縁層が厚くなると軟磁性金属層4の占積率が、ひいては軟磁性部材1としての透磁率が低下するため50μm以下とする。望ましい樹脂フィルム2の厚さは25μm以下、さらに望ましい樹脂フィルム2の厚さは10μm以下である。もっとも、極端に薄い樹脂フィルム2は製造が困難であるとともに、軟磁性金属層4を形成するための所定の強度を持つことができなくなる。したがって、0.2μm以上、あるいは2μm以上の厚さとすることが推奨される。なお、本発明に用いられる樹脂フィルム2は可撓性を有しているため、これを含む軟磁性部材1を種々の機器に配設する際の取り扱いが容易である。
【0014】
軟磁性金属層4は、1μm以下の厚さとすることが望ましい。なお、軟磁性金属層4の厚さを、以下pで示す。これを超える厚さでは、本発明が対象とする800MHzを超える高周波数帯域での渦電流損失が大きくなり、磁性体としての機能が減じてしまうからである。したがって、pは、0.5μm以下とすることがさらに望ましい。軟磁性金属層4は、緻密に形成されているのが望ましいため、各種プロセスによって緻密な膜を形成することができる程度の最低限の膜厚を有していることが必要である。なお、軟磁性金属層4の表面に酸化膜が形成されていてもよい。
【0015】
下地金属層3は、軟磁性金属層4の異方性磁界向上の機能と、電解めっき時には導電層として機能させるべく、800MHz以上の高周波帯域で使用する場合には、その厚さを100nm以下とする。なお、下地金属層3の厚さを、以下sで示す。800MHz以上の高周波帯域での使用におけるより望ましいsは80nm以下、さらに望ましいsは50nm以下である。
なお、下地金属層3と樹脂フィルム2との間には、例えば金属酸化物層、接着剤層が介在してもよい。また、下地金属層3の表面、つまり下地金属層3と軟磁性金属層4との間には金属酸化物層が存在していてもよい。電気抵抗の大きな金属酸化物層が介在することで、下地金属層3と軟磁性金属層4との間の磁気的結合はやや弱くなるが、膜断面方向の電気抵抗が増大して渦電流を低減する効果がある。金属酸化物層の厚さが厚すぎるとめっきが難しくなるので、その厚さを40nm以下、望ましくは20nm以下、さらに望ましくは10nm以下とする。この金属酸化物層は、下地金属層3を形成した後に大気に晒すことにより形成することができる。軟磁性金属層4の表面に形成される金属酸化物層も同様である。
【0016】
以上では、下地金属層3及び軟磁性金属層4の各々の厚さs、pについて説明したが、sとpの比(p/s)が、下地金属層3と軟磁性金属層4との磁気的結合の強さに影響を与えるため、本発明では、p/sが重要となる。つまり、p/sが小さすぎると複素透磁率の虚数成分(μ”)の特性がブロード又はダブルピークを示し、tanδ(=μ”/μ’,μ’:複素透磁率の実数成分) が大きくなり好ましくない。一方、p/sが大きすぎると、μ”の周波数特性はシングルピークとなり、帯域も狭くなるが、μ’が減衰をし始める周波数が低下して、GHz帯域の透磁率が劣化する。p/sは、軟磁性金属層4、下地金属層3の厚さ及び材質に依存するものの、5≦p/s<10、望ましくは6≦p/s≦8の範囲とする。
【0017】
図1に示した軟磁性部材1は、樹脂フィルム2の片面に下地金属層3及び軟磁性金属層4を形成した例を示している。本発明では、樹脂フィルム2の表裏両面に下地金属層3及び軟磁性金属層4を形成することもできる。
また、図1に示した例では、絶縁層として樹脂フィルム2を用いた例を示したが、本発明は樹脂フィルム2以外の素材を用いることを排除するものではない。例えば、セラミックス材料を絶縁層として用いることもできる。
【0018】
次に、本発明において、以上で説明した軟磁性部材1を単体で使用することができるし、複数の軟磁性部材1を積層して使用することもできる。以下、軟磁性部材1を1つのユニットとして複数積層した形態の部材を積層軟磁性部材ということにする。
図2は本実施の形態による積層軟磁性部材20の一例を示す断面図である。図2に示すように、積層軟磁性部材20は、樹脂フィルム2、下地金属層3及び軟磁性金属層4が交互に積層された断面構造を有している。ここで、積層軟磁性部材20全体としての厚さは、0.2mm以下とすることが重要である。前述のように、携帯電話機にシート状の積層軟磁性部材20を貼り付ける場合には、携帯電話機のサイズに対応する必要があるからである。より望ましい厚さは、0.15mm以下、さらには0.1mm以下である。なお、積層軟磁性部材20には、樹脂フィルム2、下地金属層3及び軟磁性金属層4からなるユニットの積層の順序が異なる部位が含まれていてもよい。
【0019】
図1に示した軟磁性部材1を積層することにより積層軟磁性部材20を得ることができる。
軟磁性部材1の樹脂フィルム2が絶縁層を構成するので、絶縁層の厚さは50μm以下となる。もっとも、軟磁性部材1を積層する場合に接着剤を層間に介在させると、絶縁層が樹脂フィルム2の厚さより厚くなる場合がある。したがって、接着剤を用いる場合には、絶縁層の厚さが50μm以下となるように樹脂フィルム2の厚さを定める必要がある。このとき、接着剤が樹脂で形成されていると、接着剤層も絶縁層を構成することになる。なお、軟磁性金属層4が表面に露出しないように、最上層の軟磁性金属層4上に絶縁層を配設することができる。
また、積層軟磁性部材20の表面のいずれか一方に、粘着剤又は両面粘着テープを設けることができる。携帯電話機等の機器に積層軟磁性部材20を貼り付ける際の便宜のためである。
【0020】
以下、図3に基づいて、積層軟磁性部材20を得るのに好適な製造方法を説明する。
図3において、はじめに樹脂フィルム2に、例えば、真空蒸着法により下地金属層3を形成する(図3(a))。
下地金属層3を形成した後、例えば電解めっきにより軟磁性金属層4を下地金属層3上に形成することによって、図1に示した軟磁性部材1を得ることができる(図3(b))。
軟磁性部材1を所定の枚数作成し、各軟磁性部材1の樹脂フィルム2と軟磁性金属層4とを対向させた状態で積層することにより、図2に示した積層軟磁性部材20を得ることができる(図3(c))。
【0021】
軟磁性部材1同士の接合は、軟磁性部材1間に例えばエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の接着剤を配置して行なうことができる。接着剤の粘度は、1000cP以下、望ましくは300cP以下、さらに望ましくは200cP以下とする。溶剤を加えた接着剤を軟磁性部材1に塗布し、その後接着剤が粘着性を保持する程度まで溶剤を蒸発させ、しかる後に軟磁性部材1を積層する。軟磁性部材1を構成する樹脂フィルム2の静電気により、接着剤を用いることなく積層状態を維持することもできる。この場合、接合強度を向上するために、軟磁性部材1を積層後に、接着剤に浸漬して外周部のみを接着することもできる。また、接着剤は絶縁層として機能するので、軟磁性金属層4同士を対向させた状態、又は樹脂フィルム2同士を対向させた状態で積層してもよい。
【0022】
積層軟磁性部材20を得た後に、応力緩和熱処理を行なうことにより、磁気特性の向上を図ることもできる。応力緩和熱処理は、例えば軟磁性部材1同士の接合に接着剤を用いた場合には、接着剤の乾燥のための加熱を兼ねて行なうこともできる。応力緩和熱処理を行なう場合には、樹脂フィルム2に耐熱性に優れたポリアミドイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂又はPPS(ポニフェニレンサルファイド)樹脂を用いることが望ましい。
また、樹脂フィルム2にPET(ポリエチレンテレフタレート)又はPBT(ポリブチレンテレフタレート)を使用する場合、加熱処理による収縮応力を利用して誘導異方性を付与することにより、磁気特性の向上を図ることもできる。
また、積層軟磁性部材20は、温間プレス加工によって、所望する形状に加工することもできる。さらに、切断を行なって、所望する寸法に加工することもできる。
【0023】
次に、積層軟磁性部材20を得るための他の製造方法を図4に基づいて説明する。
図4において、はじめに樹脂フィルム2に、例えば、真空蒸着法により下地金属層3を形成する(図4(a))。下地金属層3を形成した後、例えば電解めっきにより軟磁性金属層4を下地金属層3上に形成する(図4(b))。ここまでの工程は、図3に示した製造方法と同様である。
次に、軟磁性金属層4上に熱融着のための樹脂層5を形成する(図4(c))。樹脂層5の形成は、塗布、スプレー等の種々の手法で行なうことができる。
樹脂層5を形成した後に、樹脂フィルム2を剥離、除去することにより、下地金属層3、軟磁性金属層4及び樹脂層5とが積層された軟磁性部材10を得る(図4(d))。下地金属層3に対する樹脂フィルム2の密着強度よりも軟磁性金属層4に対する樹脂層5の密着強度を高くすれば、樹脂フィルム2の剥離は比較的に容易に行なうことができる。
【0024】
軟磁性部材10を所定の枚数作成し、各軟磁性部材10の樹脂層5と下地金属層3とを対向させた状態で積層することにより、積層軟磁性部材20を得ることができる(図4(e))。
軟磁性部材10同士の接合は、樹脂層5を用いて行なうことができる。つまり、各軟磁性部材10の樹脂層5と軟磁性金属層4とを対向させた状態で積層した後に、所定の加熱処理を施して樹脂層5を溶融、硬化させることにより、隣接する軟磁性部材10同士の接合強度を確保することができる。また、図4では複数の軟磁性部材10を作成した後にそれらを積層する例を示したが、樹脂フィルム2の剥離及び樹脂層5の形成を連続的に行い、かつシート体を巻回して巻回体を得ることももちろんできる。
なお、以上では樹脂層5を熱融着することによって軟磁性部材10を接合したが、軟磁性部材10を樹脂層5の熱圧着による接合を行なうことができる。例えば、樹脂層5としてPETを選択して150〜300℃程度の温度に加熱した状態で所定の圧力を付与することにより、熱圧着された樹脂層5によって軟磁性部材10同士を接合することができる。
【0025】
以上では、本発明による軟磁性部材1(10)について、800MHzを超える高周波帯域で使用することを前提に説明した。ところが、本発明による軟磁性部材1(10)は、800MHz以下、例えば100MHz近辺の周波数帯域に使用することもできる。ただし、その場合には、下地金属層3の厚さを100nmを超えることとする。下地金属層3の厚さが100nm以下では、軟磁性金属層4との磁気的結合が弱くなるためである。ただし、1000nmを超える厚さでは、厚さが厚すぎて軟磁性部材1(10)としての優位性がなくなる。したがって、上記周波数帯域での使用を前提とすると、下地金属層3の厚さ(s)は100nm〜1000nm(100nmを含まず)とする。望ましいsは110nm〜700nm、さらに望ましいsは110nm〜500nmである。
【0026】
下地金属層3の厚さ(s)を上述した範囲にすると、下地金属層3の厚さの軟磁性金属層4への磁気的な影響が大きくなる。そこで、p/sは4〜15とする。この範囲で優れた複素透磁率が得られる。p/sが4未満では、下地金属層3による異方性磁界の制御効果が小さくなり、高透磁率を得ることができない。また、p/sが15を超えると、膜厚が厚くなるために渦電流による透磁率の低下が著しくなるからである。
【0027】
以下本発明を具体的な実施例に基づいて説明する。
(実施例1)
PET基体を用意し、このPET基体の各々に斜め蒸着法により厚さ19nm、37nmのNi下地膜(下地金属層)を成膜した。その後、Ni下地膜を陰極導電体としてFeを約61wt%含有する種々の厚さのFe−Ni合金膜(軟磁性金属層)を電解めっきにより成膜して、表1に示す試料a〜hの8種類の軟磁性部材を作成した。
得られた8種類の軟磁性部材について複素透磁率を、凌和電子製高周波透磁率測定器(PMF3000)で測定した。その結果を図5〜図12に示す。
【0028】
【表1】
Figure 2004260020
【0029】
はじめに、Ni下地膜の厚さ(s)が19nmの試料a〜dについて述べる。
図5に示すように、試料a(p/s=5.53)は、800MHz附近で複素透磁率の実数成分(μ’)が減衰し始めているが、2GHzにおいて150程度の高透磁率が得られている。試料a〜dのなかで最も膜厚が薄いのが試料aであり、800MHz付近で現れる透磁率の減衰の原因は渦電流によるものでないことがわかる。
図6に示すように、試料b(p/s=7.72)は、μ’の減衰も1000MHz(1GHz)以上の値で始まっており、また、当該周波数附近でのμ”の増大もないことから、tanδも抑制されている。試料c(図7、p/s=9.89)及び試料d(図8、p/s=11.26)も同様な傾向を示すが、試料cは共鳴周波数が2GHzを超えているのに対して、試料dは2GHz未満となっている。
図5〜図8に示すように、p/sの増大とともに、μ”の周波数依存性がシャープな形状を示すようになる。同時に、ピーク値をとる周波数が低下するため、Fe−Ni合金膜が厚すぎても複素透磁率が劣化する。
このように、厚さ19nmのNi下地膜を用いた場合には、p/sが5〜10(未満)、特に6〜8の範囲でμ’が大きくtanδ(=μ”/μ’)の小さな良好な特性を示す。
【0030】
図9に示すように試料e(p/s=3.32)は、2GHzを超える高い共鳴周波数を示すが、650MHz付近でμ’が減衰し始め、同時にμ”が増大するためtanδが大きくなり好ましくない。
図10及び図11に示すように、試料f(p/s=5.89)、g(p/s=7.22)は、試料eに比べて共鳴周波数がやや低下するが、μ”の低周波側の値が低くなり、tanδが改善される。
図12に示すように、試料h(p/s=8.68)は、μ’の減衰周波数がやや低下する傾向が現れるが、必要十分な特性が得られている。
以上より、厚さ37nmのNi下地膜を用いた場合には、p/sが4〜8の範囲でμ’が大きくtanδ(=μ”/μ’)の小さな良好な特性を示す。
なお、Ni下地膜が19nmの場合も同様であるが、図9〜図12よりFe−Ni合金膜の厚さが厚くなると、Ni下地膜の影響が小さくなり、μ’の減衰周波数が低下することがわかる。
【0031】
次に、試料a、b、c、d、e及びgについてB−H曲線をVSM(振動試料型磁力計)で求めた。その結果を図15〜図20に示す。なお、基板上にNi下地膜のみを成膜した試料についても同様にB−H曲線を求めた。その結果を図13(膜厚19nm)及び図14(膜厚37nm)に示す。
【0032】
図15〜図18は、各々、試料a〜dのB−H曲線である。保磁力は、各々、10.2Oe、5.1Oe、3.2Oe、2.9Oeである。ちなみに、19nmのNi下地膜単体では、39.7Oeである。異方性磁界の大きさのp/s依存性も保磁力と同様の傾向を示しており、Fe−Ni合金膜の厚さが薄いほど、軟磁性部材としてNi下地膜の影響を受けやすいことがわかる。
【0033】
(実施例2)
厚さ4μmのポリイミドシートに厚さ150nmのCoをスパッタし、これに厚さ約2μmの60wt%Fe−Ni合金を成膜した。p/sは13.3である。この軟磁性部材の100MHzにおける透磁率は、同一厚さの圧延材料(PBパーマロイ)よりも50%大きな値を示した。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、製造が容易であるとともに、GHz帯域において高い透磁率を示す軟磁性部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態における軟磁性部材を示す部分断面図である。
【図2】図1に示した軟磁性部材を複数積層した積層軟磁性部材の構成を示す部分断面図である。
【図3】図2に示した積層軟磁性部材の製造方法を示す図である。
【図4】図2に示した積層軟磁性部材の他の製造方法を示す図である。
【図5】実施例1における試料aの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図6】実施例1における試料bの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図7】実施例1における試料cの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図8】実施例1における試料dの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図9】実施例1における試料eの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図10】実施例1における試料fの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図11】実施例1における試料gの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図12】実施例1における試料hの複素透磁率の測定結果を示すグラフである。
【図13】厚さ19nmのNi膜を成膜した試料のB−H曲線を示すグラフである。
【図14】厚さ37nmのNi膜を成膜した試料のB−H曲線を示すグラフである。
【図15】実施例1における試料aのB−H曲線を示すグラフである。
【図16】実施例1における試料bのB−H曲線を示すグラフである。
【図17】実施例1における試料cのB−H曲線を示すグラフである。
【図18】実施例1における試料dのB−H曲線を示すグラフである。
【図19】実施例1における試料eのB−H曲線を示すグラフである。
【図20】実施例1における試料gのB−H曲線を示すグラフである。
【符号の説明】
1,10…軟磁性部材、2…樹脂フィルム、3…下地金属層、4…軟磁性金属層、5…樹脂層、20…積層軟磁性部材

Claims (5)

  1. 絶縁層と、
    前記絶縁層に対向して配置された下地金属層と、
    前記下地金属層上に配設された軟磁性金属層と、を備えた軟磁性部材であって、
    前記下地金属層の厚さをs、前記軟磁性金属層の厚さをpとすると、
    5≦p/s<10、かつ0<s<100nmであることを特徴とする軟磁性部材。
  2. 絶縁層と、
    前記絶縁層に対向して配置された下地金属層と、
    前記下地金属層上に配設された軟磁性金属層と、を備えた軟磁性部材であって、
    前記下地金属層の厚さをs、前記軟磁性金属層の厚さをpとすると、
    4≦p/s≦15、かつ100nm<s≦1000nmであることを特徴とする軟磁性部材。
  3. 前記下地金属層が、前記軟磁性金属層よりも保磁力又は異方性磁界の大きな材料で構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の軟磁性部材。
  4. 前記軟磁性金属層が、20〜80wt%のFeと、Ni及びCoの1種又は2種を含む合金から構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の軟磁性部材。
  5. 前記絶縁層と、前記下地金属層と、前記軟磁性金属層からなるユニットが複数積層されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の軟磁性部材。
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