JP2004256914A - 硬質皮膜及びその製造方法並びに硬質皮膜形成用ターゲット - Google Patents

硬質皮膜及びその製造方法並びに硬質皮膜形成用ターゲット Download PDF

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Abstract

【課題】 TiAlNまたは従来の(TiAlV)(CN)よりも高硬度であって耐摩耗性に優れた硬質皮膜、及び、このような硬質皮膜の製造方法、並びに、その製造のための硬質皮膜形成用ターゲットを提供する。
【解決手段】 (1) (Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )を含む硬質皮膜であって、
0.02≦a≦0.5、 0.4<b≦0.8、 0.05<c、 0≦d≦0.5、 0≦f≦0.1、 0.01≦d+f≦0.5、 a+b+c+d+f=1、 0.5≦e≦1 (a,b,c,d,f:それぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比、e:Nの原子比)であることを特徴とする硬質皮膜、(2) アークイオンプレーティング法による前記硬質皮膜の製造方法、(3) 前記硬質皮膜の形成用のターゲット等。
【選択図】 図1

Description

本発明は、硬質皮膜及びその製造方法並びに硬質皮膜形成用ターゲットに関する技術分野に属し、特には、チップ、ドリル、エンドミル等の切削工具や機械部品あるいは塑性加工用治具などの耐摩耗性を向上するための硬質皮膜及びその製造方法、並びに、このような硬質皮膜の製造において蒸発源として使用されるターゲットに関する技術分野に属するものである。
従来より、超硬合金、サーメット又は高速度工具鋼を基材とする切削工具の耐摩耗性を向上させることを目的に、TiNやTiCN、TiAlN等の硬質皮膜をコーティングすることが行われている。特に、TiとAlの複合窒化皮膜(以下、TiAlNともいう)が、優れた耐摩耗性を示すことから、前記チタンの窒化物や炭化物、炭窒化物等からなる皮膜に代わって高速切削用や焼き入れ鋼等の高硬度材切削用の切削工具に適用されつつある。更に、近年では、TiAlNのような2元素系のみならず、第3元素を添加して特性を改善する試みがなされている。例えば、特開平3−120354号公報、特開平10−18024号公報、特開平10−237628号公報、特開平10−305935号公報には、Vを添加したTiAlVN、または、(TiAlV)(CN)皮膜が、S50C等の低硬度材の切削にて優れた切削特性を示すことが開示されている。しかしながら、これらの皮膜は、焼き入れSKD材等の高硬度材に対して切削特性が良好であるとは言い難く、切削速度のより高速度化等の要求から、更に硬度が高く、耐摩耗性に優れた皮膜の実現が望まれている。また、特開2002−337006号公報には、4族、5族、6族の金属元素、Alの1種以上とSiを含み、非金属元素としてN、B、C、Oの1種以上を含む硬質皮膜が提案されているが、最適組成に関してはSi量50%未満との記載があるのみで、実際に上記の元素を組み合わせただけで従来のTiAlN被膜を凌ぐ切削性能が得られるわけではない。
特開平3−120354号公報 特開平10−18024号公報 特開平10−237628号公報 特開平10−305935号公報 特開2002−337006号公報
本発明はこのような事情に着目してなされたものであって、その目的は、TiAlNまたは従来の(TiAlV)(CN)よりも高硬度であって耐摩耗性に優れた硬質皮膜、及び、このような硬質皮膜の製造方法、並びに、その製造のための硬質皮膜形成用ターゲットを提供しようとするものである。
上記目的を達成することのできた本発明は、硬質皮膜及びその製造方法並びに硬質皮膜形成用ターゲットに係わり、これは請求項1〜4記載の硬質皮膜、請求項5〜6記載の硬質皮膜の製造方法、請求項7〜12記載の硬質皮膜形成用ターゲットであり、それは次のような構成としたものである。
即ち、請求項1記載の硬質皮膜は、(Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )を含む硬質皮膜であって、
0.02≦a≦0.5、
0.4<b≦0.8、
0.05<c、
0≦d≦0.5、
0≦f≦0.1、
0.01≦d+f≦0.5、
a+b+c+d+f=1、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,fはそれぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比を示し、eはNの原子比を示すものである)であることを特徴とする硬質皮膜である〔第1発明〕。
請求項2記載の硬質皮膜は、前記fの値が0であって、前記dの値が0.01≦d≦ 0.5である請求項1記載の硬質皮膜である〔第2発明〕。
請求項3記載の硬質皮膜は、前記dの値が0であって、前記fの値が0.01≦f≦ 0.1である請求項1または2記載の硬質皮膜である〔第3発明〕。
請求項4記載の硬質皮膜は、前記dの値が0.01≦d≦0.5であって、前記fの値が0.01≦f≦0.1である請求項1〜3のいずれかに記載の硬質皮膜である〔第4発明〕。
請求項5記載の硬質皮膜の製造方法は、請求項1〜4のいずれかに記載の硬質皮膜の製造方法であって、成膜ガス雰囲気中で金属を蒸発させイオン化して、前記金属とともに成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することを特徴とする硬質皮膜の製造方法である〔第5発明〕。
請求項6記載の硬質皮膜の製造方法は、ターゲットを構成する金属の蒸発およびイオン化をアーク放電にて行うアークイオンプレーティング法を用い、ここで、該ターゲットの蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理体近傍における成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜する請求項5記載の硬質皮膜の製造方法である〔第6発明〕。
請求項7記載の硬質皮膜形成用ターゲットは、Ti、Al、Vを含み、かつ、SiとBの少なくとも一方を含むと共に、相対密度が95%以上であることを特徴とする硬質皮膜形成用ターゲットである〔第7発明〕。
請求項8記載の硬質皮膜形成用ターゲットは、(Tix ,Aly ,Vz ,Siw ,Bv )を含むターゲットであって、
0.02≦x≦0.5、
0.4<y≦0.8、
0.05<z、
0≦w≦0.5、
0≦v≦0.1、
0.01≦w+v≦0.5
x+y+z+w+v=1
(x,y,z,w,vは、それぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比を示すものである)である請求項7記載の硬質皮膜形成用ターゲットである〔第8発明〕。
請求項9記載の硬質皮膜形成用ターゲットは、前記vの値が0であって、前記wの値が0.01≦w≦0.5である請求項8記載の硬質皮膜形成用ターゲットである〔第9発明〕。
請求項10記載の硬質皮膜形成用ターゲットは、前記wの値が0であって、前記vの値が0.01≦v≦0.1である請求項8記載の硬質皮膜形成用ターゲットである〔第10発明〕。
請求項11記載の硬質皮膜形成用ターゲットは、Si、Bの少なくとも1種が化合物の形で存在する請求項7〜10のいずれかに記載の硬質皮膜形成用ターゲットである〔第11発明〕。
請求項12記載の硬質皮膜形成用ターゲットは、前記化合物が、Ti−Si化合物とTi−B化合物の少なくとも一方である請求項11記載の硬質皮膜形成用ターゲットである〔第12発明〕。
本発明によれば、従来のTiAlN皮膜や(TiAlV)(CN)皮膜よりも高硬度であって耐摩耗性に優れた硬質皮膜が得られる。この硬質皮膜を切削工具のコーティング皮膜として用いると、より高速で高能率の切削が可能な切削工具が得られ、切削の高速度化や高能率化がはかれる。
本発明者らは、前述したような状況の下で、より優れた耐摩耗性を発揮する切削工具用硬質皮膜の実現を目指して鋭意研究を進めた。その結果、指標として皮膜の硬度を高めることができれば、耐摩耗性が著しく向上することを見出した。そして、その手段として(TiAlV)(CN)膜のAl、V濃度及びSi、Bの添加作用に着目して研究を進めた結果、(TiAlV)(CN)に更にSi及び/またはBを添加することによって、膜の硬度が向上し、結果として耐摩耗性が飛躍的に向上することを突き止め、更に追求を重ねた結果、上記本発明に想到したのである。
即ち、本発明に係る硬質皮膜とは、(Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )を含有する硬質皮膜であって、
0.02≦a≦0.5、
0.4<b≦0.8、
0.05<c、
0≦d≦0.5、
0≦f≦0.1、
0.01≦d+f≦0.5、
a+b+c+d+f=1、
0.5≦e≦1
(a,b,c,d,fはそれぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比を示し、eはNの原子比を示すものである)であることを特徴とするものであるが、このように皮膜の組成を規定した理由について、以下詳細に説明する。
Alの原子比の上限を規定した理由については、次の通りである。即ち、Alの原子比が大きくなりすぎると、イオン結合であるAl−Nの割合が増加し、皮膜の密着性が低下することから、0.8以下とする必要があり、好ましくは0.75以下である。また、Alの原子比は0.4以下では硬度上昇が認められないことから、下限を0.4とした。
Vに関しては、0.05未満では硬度上昇の効果が小さい。従って、Vの原子比(c)は0.05超とした。即ち、0.05<cとした。
Si、Bに関しては、Si+B(Siの原子比とBの原子比との合計)が0.5未満の場合は、添加の効果がほとんど認められない。Si:0.5超、B:0.1超、Si+B:0.5超のいずれか一つに該当する場合は、皮膜の硬度が低下すると共に、皮膜の密着性が低下する。従って、原子比で、Siの上限値を0.5、Bの上限値を0.1とすると共に、Si+Bの上限値を0.5とし、Si+Bの下限値を0.01とした。即ち、0≦d≦0.5、0≦f≦0.1、0.01≦d+f≦0.5とした。ここで、B:0(即ちf=0)の場合には、dについては0.01≦d≦0.5となる。また、Si:0(即ちd=0)の場合には、fについては0.01≦f≦0.1となる。Si、Bの両方を含む場合、Si:0.01以上、B:0.01以上とすると、硬度上昇という添加の効果がより高い水準のものとなることから、そうすることが望ましい。即ち、dについては0.01≦d≦0.5とし、fについては0.01≦f≦0.1とすることが望ましい。
Si量に関しては、好ましい領域は組成によって異なるが、Al量が0.6以上の皮膜では、過度のSi量添加は硬度低下を招くことから、Si量は0.01〜0.1が好ましい。Al量0.6未満ではSi量は0.1〜0.5が好ましく、より望ましくは0.2〜0.4である。
B量に関しては、0.01〜0.1となるようにすると、皮膜の耐熱性をより高めることができる。BはNとの組み合わせで皮膜中にBN化合物を形成し、皮膜の耐熱性を高める効果がある。しかし、過度の添加は皮膜の低硬度化を招くことから、Bを含有させる場合は、その含有量を原子比で0.01〜0.1とすることが望ましい。
なお、Si+Bを一定量とした場合、全量をSiのみとした方が耐酸化性の向上効果が大きく、全量をBのみとした方が摩擦係数が低くなる(膜中のBN化合物形成により)という効果が得られる。従って、目的とする皮膜の性質に応じて、全量をSiで添加すること、または、全量をBで添加することができる。
Tiに関しては、上記Al、V、Si(またはBあるいはSi+B)量により残Ti量として決定されるが、0.02未満では硬度が低下し、0.5を越えると高硬度化をもたらす元素であるAl、V、Siの量が少なくなることから、上限を0.5とした。
更にC、Nの量に関しては次の通りである。すなわち、皮膜中にCを添加し、TiCやVC、SiC等の高硬度の炭化物を析出させて皮膜の硬度を高める場合には、Ti+V+Siの添加量と同量程度のCを存在させることが望ましい。しかしながら、Cを過剰に添加すると、水分と反応して容易に分解する不安定なアルミの炭化物を過度に析出させることになるので、Cの原子比(1−e)は0.5未満、即ち、Nの原子比eを0.5以上とする必要がある。eは、0.7以上である場合が好ましく、より好ましくは0.8以上であり、更には、e=1の場合を最も好ましい形態とする。
本発明に係る硬質皮膜は、上記要件を満足する単層の皮膜の他、上記要件を満たし、且つ、相互に異なる皮膜を複数積層して用いることもできる。また、用途によっては、前記1層又は2層以上の本発明で規定する(TiAlVSiB)(CN)膜の片面側または両面側に、TiN、TiAlN、TiCrAlN、TiCN、TiAlCN、TiCrAlCN、TiC等の皮膜を積層構造として用いることも可能である。
また、前記1層もしくは2層以上の本発明の硬質皮膜の片面側または両面側に、4A族、5A族、6A族、Al及びSiよりなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属層または合金層が1以上積層されているものであってもよく、前記4A族、5A族、6A族の金属として、Cr、Ti、Nb等が挙げられ、合金としてTi−Al等を用いることができる。
上記の (i)本発明の要件を満たし、且つ、相互に異なる皮膜や、(ii)硬質皮膜とは異なる成分組成の金属窒化物層、金属炭化物層又は金属炭窒化物層、(iii) 4A族、5A族、6A族、AlおよびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の金属を含む金属層または合金層を、複数層形成した硬質皮膜とする場合には、1層の膜厚が0.005〜2μm の範囲内にあればよいが、本発明の硬質皮膜を用いる場合は、単層の場合であっても上記複数層の場合であっても、トータルとしての膜厚は、0.5μm以上で20μm以下の範囲内とすることが望ましい。0.5μm未満だと膜厚が薄すぎて耐摩耗性が好ましくなく、一方、上記膜厚が20μmを超えると切削中に膜の欠損や剥離が発生する傾向があって好ましくないからである。なお、より好ましい膜厚は、1μm以上で15μm以下である。
本発明に係る硬質皮膜は、(Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )を含むものであるが、これは、(Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )を含んでなるものであり、(Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )からのみなることを意味するものではない。(Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )からのみなる場合もあるが、これには限定されず、前記成分以外の他成分を含むことができる。
本発明に係る硬質皮膜を形成するに際して金属元素(Al、V、Ti、Si、B)と反応ガス(C、N)を十分に反応させ高硬度の皮膜を形成するためには、本発明で規定する様な方法で成膜することが大変有効である。即ち、成膜ガス雰囲気中で金属を蒸発させイオン化して、前記金属とともに成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することが有効である。
更に、ターゲットを構成する金属の蒸発およびイオン化をアーク放電にて行うアークイオンプレーティング法において、該ターゲットの蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないしは平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理体近傍における成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することを好ましい形態とする。
アークイオンプレーティング(AIP)装置においては、従来のように磁場がターゲットの裏側に配置されたカソード蒸発源では本発明の皮膜を作製することが困難であり、磁石がターゲットの横または前方に配置されて、ターゲット蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって成膜ガスのプラズマ化を促進することが本発明の硬質皮膜を形成する上で大変有効なのである。
本発明を実施するための装置の一例として、図1にAIP装置を示しながら簡単に説明する。
このAIP(アークイオンプレーティング)装置は、真空排気する排気口11および成膜ガスを供給するガス供給口12とを有する真空容器1と、アーク放電によって陰極を構成するターゲットを蒸発させてイオン化するアーク式蒸発源2と、コーティング対象である被処理体(切削工具)Wを支持する支持台3と、この支持台3と前記真空容器1との間で支持台3を通して被処理体Wに負のバイアス電圧を印加するバイアス電源4とを備えている。
前記アーク式蒸発源2は、陰極を構成するターゲット6と、このターゲット6と陽極を構成する真空容器1との間に接続されたアーク電源7と、ターゲット6の蒸発面Sにほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行し、被処理体Wの近傍まで伸びる磁力線を形成する磁界形成手段としての磁石(永久磁石)8とを備えている。被処理体Wの近傍付近における磁束密度としては、被処理体の中心部において磁束密度が10G(ガウス)以上、好ましくは30G以上とするのが良い。尚、蒸発面にほぼ直交するとは、蒸発面の法線方向に対して0°を含み、30°以下の角度をなすことを意味する。
図2は、本発明の実施に供するアーク式蒸発源要部の一例を拡大した断面概略図であるが、前記磁界形成手段としての磁石8は、ターゲット6の蒸発面Sを取り囲むように配置されている。磁界形成手段としては、前記磁石に限らず、コイルとコイル電源とを備えた電磁石でも良い。また、磁石の配置場所は図3に示すように、ターゲット6の蒸発面Sの前方(被処理体側)を取り囲むように設けても良い。尚、図1では、チャンバーをアノードとしたが、例えばターゲット側面前方を取り囲むような円筒形状の専用アノードを設けても良い。図3において、符号の9は電磁石(磁界形成手段)、Wは被処理体、2Aはアーク式蒸発源を示すものである。
なお、図4に示す従来のAIP装置のアーク式蒸発源102にも、アーク放電をターゲット106上に集中させるための電磁石109を備えたものがあるが、電磁石109がターゲット106の裏側に位置しているため、磁力線がターゲット蒸発面近傍でターゲット表面と平行となり、磁力線が被処理体Wの近傍にまで伸びないようになっている。
本発明で使用するAIP装置のアーク式蒸発源と、従来のそれとの磁場構造の違いは、成膜ガスのプラズマの広がり方の違いにある。
前記図3に示すように、放電で発生した電子eの一部が磁力線に巻き付くように運動を行い、この電子が成膜ガスを構成する窒素分子等と衝突することによって成膜ガスがプラズマ化する。前記図4における従来の蒸発源102では、磁力線がターゲット近傍に限られるため、上記のようにして生成された成膜ガスのプラズマの密度はターゲット近傍が最も高く、被処理体Wの近傍ではプラズマ密度がかなり低いものとなっている。これに対し、図2および図3に示すような本発明で使用する蒸発源では、磁力線が被処理体Wにまで伸びるため、被処理体W近傍における成膜ガスのプラズマ密度が従来の蒸発源に比べ格段に高いものとなっている。
そして、このようなターゲット表面における磁力線配置、および、基板(被処理体)近傍のプラズマ密度の違いが、生成される膜の結晶構造、ひいては得られる特性に大きく影響を与えると考えられる
本発明では、成膜方法としてAIP法について述べたが、金属元素とともに成膜ガスのプラズマ化が促進される成膜方法であれば、AIP法に限定されるものではなく、例えば、パルススパッタリング法や窒素のイオンビームアシストデポジション法で成膜することができる。
本発明の硬質皮膜は、上述の如くターゲットを蒸発またはイオン化させて、被処理体上に成膜するイオンプレーティング法やスパッタリング法等の気相コーティング法にて製造するのが有効であるが、該ターゲットの特性が好ましくない場合には、成膜時に安定した放電状態が保てず、得られる皮膜の成分組成が均一でない等の問題が生じる。そこで、優れた耐摩耗性を発揮する本発明の硬質皮膜を得るにあたり、使用するターゲットの特性についても検討したところ、下記の様な知見が得られた。
まず、ターゲットの相対密度を95%以上とすることで、成膜時の放電状態が安定し、効率よく本発明の硬質皮膜が得られることが分かった。即ち、ターゲットの相対密度が95%未満になると、ターゲット中にミクロポア等の合金成分の粗な部分が生じるようになり、この様なターゲットを成膜に用いた場合に該合金成分の蒸発が不均一となって、得られる皮膜の成分組成がばらついたり膜厚が不均一となったりしてしまう。また、空孔部分は成膜時に、局所的かつ急速に消耗するので、減耗速度が速くなりターゲットの寿命が短くなる。空孔が多数存在する場合には、局所的な減耗が急速に進むのみならず、ターゲットの強度が劣化して割れが生じる原因ともなるのである。かかる知見に基づき、本発明に係る硬質皮膜形成用ターゲットは、Ti、Al、Vを有し、かつ、SiとBの少なくとも一方を有すると共に、相対密度が95%以上であることを特徴とすることとしている。
AIP法等の気相コーティング法では、使用するターゲットの成分組成が、形成される皮膜の成分組成を決定付けることから、ターゲットの成分組成は、目的とする皮膜の成分組成と同一であることが好ましい。即ち、耐摩耗性に優れた本発明に係る硬質皮膜を得るには、硬質皮膜形成用ターゲットとして、(Tix ,Aly ,Vz ,Siw ,Bv )を含むターゲットであって、
0.02≦x≦0.5、
0.4<y≦0.8、
0.05<z、
0≦w≦0.5、
0≦v≦0.1、
0.01≦w+v≦0.5
x+y+z+w+v=1
(x,y,z,w,vは、それぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比を示すものである)であるものを用いることが望ましい。あるいは、前記vの値が0であって、前記wの値が0.01≦w≦0.5であるものを用いることが望ましい。あるいは、前記wの値が0であって、前記vの値が0.01≦v≦0.1のものを用いることが望ましい。
上記ターゲットの成分組成を満足していても、ターゲットの成分組成分布がばらついていると、得られる硬質皮膜の成分組成分布も不均一となり、該皮膜の耐摩耗性が部分的に異なることとなってしまう。また、ターゲットの成分組成分布にばらつきがあると、ターゲットに局所的な電気伝導性や融点等の差異が生ずることとなり、これが放電状態を不安定にして良好に成膜されない。従って、上記ターゲットは、組成分布のばらつきが0.5at%以内にあることが好ましい。
また、本発明のターゲットに含有されるSi、Bであるが、ターゲット中に存在する形態としてはTi−SiあるいはTi−Bなどの化合物の形で存在することが好ましい。この理由は次の通りである。即ち、SiあるいはBが単体でTi、V、Alなどの導電性の高い部分に囲まれていると、スパッタリングあるいはアーク放電による成膜時にターゲットの放電状況が微視的に異なり、放電状態が不安定になることがある。Ti−Si化合物(例えば、Ti5 Si3 またはTiSi2 )やTi−B化合物(例えば、TiB2 )は、十分な導電性を有していることから、上記のような問題が起きにくい。全Si、Bに対して、Ti−Si化合物またはTi−B化合物が形成されている割合は、その効果の点から、8割以上であることが好ましい。
このような、Ti−Si化合物またはTi−B化合物の検出はX線回折で行うか、XPSでダイレクトに Ti-Si結合、 Ti-B結合を検出することができるが、化合物を検出する手段としては、X線回折の方が好ましい。
ところで、本発明は、ターゲットの製造方法についてまで特定するものではないが、例えば、量比や粒径等を適切に調整した原材料のTi粉末、V粉末およびAl粉末並びにSi粉末および/またはBを、V型ミキサー等により均一に混合して混合粉末とした後、これに冷間静水圧加圧処理(CIP処理)あるいは熱間静水圧加圧処理(HIP処理)を施すことが、本発明のターゲットを得る有効な方法として挙げられる。これらの方法の他、熱間押出法や超高圧ホットプレス法等によっても本発明のターゲットを製造することができる。
なお、上記の様にして混合粉末を調製した後、ホットプレス処理(HP)にてターゲットを製造する方法も挙げられるが、この方法では、本発明で用いるVが高融点金属であるため相対密度の高いターゲットが得られ難いといった傾向がある。また、上記の様に混合粉末を用いて製造する方法の他、予め合金化させた粉末を用いて、CIP処理やHIP処理を行ったり、溶解・凝固させてターゲットを得る方法も挙げられる。しかし、前記合金化粉末を用いてCIP処理またはHIP処理を行う方法では、組成の均一なターゲットが得られるという利点があるものの、合金粉末が難焼結性であるため、高密度ターゲットが得られ難いといった傾向がある。また、後者の合金化粉末を溶解・凝固させる方法では、組成が比較的均一なターゲットが得られるという利点があるが、凝固時に割れや引け巣が発生し易いといった傾向があり、本発明のターゲットを得ることは難しい。Ti−Si化合物やTi−B化合物が形成されたターゲットは、ターゲット製造時に、Ti5Si3やTiB2を化合物の形で添加することにより得ることができる。
本発明に係る硬質皮膜の製造方法において、「ターゲットの蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線」とは、「ターゲットの蒸発面の法線方向に対して0〜30°(0°を含む。30°を含む。)の角度をなして前方に発散ないし平行に進行する磁力線」のことである。
本発明の実施例および比較例を以下説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1、比較例1〕
前記図1に示すAIP装置のカソード(即ち、ターゲット6)にTi、V、Al、Siからなる合金ターゲットを取り付け、更に、支持台3上に被処理体Wとして超硬合金製チップ、超硬合金製ボールエンドミル(R5mm、2枚刃)を取り付け、チャンバー(真空容器)1内を真空状態にした。その後、チャンバー1内にあるヒーターで被処理体の温度を500℃に加熱し、Arイオンによるクリーニング後、窒素ガスを導入してチャンバー内の圧力を2.66Paにしてアーク放電を開始し、前記被処理体の表面に膜厚約3μmの皮膜を形成した。なお、成膜中にアース電位に対して基板(被処理体)がマイナス電位となるよう30〜200Vのバイアス電圧を基板(被処理体)に印加した。
成膜終了後、膜中の金属成分組成、ビッカース硬度を調べた。膜中の成分組成はEPMAにより測定した。なお、皮膜中の金属元素(Ti、V、Al、Si、B)及び窒素以外の不純物元素量は、酸素が1at%(原子%)以下で、炭素が2at%以下のレベルであった。
また、耐摩耗性を評価すべく、硬質皮膜を形成したエンドミルを用い、以下の条件(切削条件A、切削条件B)で切削試験を行って刃中部分の摩耗幅を測定した。
<切削条件A>
被削材:SKD61(HRC50)
切削速度:220m/分
刃送り:0.06mm/刃
軸切り込み:5mm
径方向切り込み:0.6mm
切削長:50m
その他:ダウンカット、ドライカット、エアブローのみ
<切削条件B>
被削材 :S55C(HB220)
切削速度 :100m/分(5300rpm)
刃送り :0.05mm/刃(530mm/分)
軸切り込み :3mm
径方向切り込み:0.5mm
その他:ダウンカット、ドライカット、エアブローのみ
切削試験の評価は、各切削試験にて摩耗が最も進行する部位、即ち、切削条件Aの切削試験では境界部摩耗、切削条件Bの切削試験では先端部の摩耗で評価した。
表1に、前記皮膜の組成の分析、ビッカース硬度の測定、切削試験の結果を示す。尚、摩耗幅Aは、切削条件Aの切削試験での境界部摩耗幅のことであり、摩耗幅Bは、切削条件Bの切削試験での先端部摩耗幅のことである。
皮膜は、表1からわかるように、(Tia , Alb ,Vc )(C1-e e )、または、(Tia , Alb ,Vc , Sid )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、原子比e=1のものである。
表1において、No.1〜4 、No.8、No.13 、No.18 〜20、No.28 のものは、比較例に係る皮膜についての結果である。No.5〜7 、No.9〜12、No.14 〜17、No.21 〜27のものは、本発明の実施例に係る皮膜についての結果である。
本発明の実施例に係る皮膜は、比較例に係る皮膜に比較して、硬度が高くて高硬度であると共に、摩耗幅Aおよび/または摩耗幅Bが小さくて耐摩耗性に優れていることがわかる。
〔実施例2、比較例2〕
前記図1に示すAIP装置のカソード(:ターゲット6)にTi、V、Al、Siからなる合金ターゲットを取り付け、更に、支持台3上に被処理体Wとして超硬合金製チップ、超硬合金製ボールエンドミル(R5mm、2枚刃)を取り付け、チャンバー(:真空容器)1内を真空状態にした。その後、チャンバー1内のヒーターで被処理体の温度を500℃に加熱し、窒素ガスあるいは窒素とメタンの混合ガスを導入してチャンバー内の圧力を2.66Paにしてアーク放電を開始し、前記被処理体の表面に膜厚3μmの皮膜を形成した。なお、成膜中にアース電位に対して基板(被処理体)がマイナス電位となるよう30〜200Vのバイアス電圧を基板(被処理体)に印加した。
成膜終了後、膜中の金属成分組成、ビッカース硬度を調べた。膜中の成分組成はEPMAにより測定した。なお、皮膜中の金属元素(Ti、V、Al、Si、B)並びに窒素および炭素以外の不純物元素量は、酸素が1at%以下のレベルであった。
また、耐摩耗性を評価すべく、硬質皮膜を形成したエンドミルを用い、実施例1と同じ条件(切削条件A、切削条件B)で切削試験を行って刃中部分の摩耗幅を測定した。
前記皮膜の組成の分析、ビッカース硬度の測定、切削試験の結果を、表2に示す。
皮膜は、表2からわかるように、(Tia , Alb ,Vc )(C1-e e )、または、(Tia , Alb ,Vc , Sid )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、0.3≦e≦1でeを変化させて種々の原子比とし、これに応じて(1−e)の値も変化させたものである。
表2において、No.1〜3 、No.8、No.13 、No.18 のものは、比較例に係る皮膜についての結果である。No.4〜7 、No.9〜12、No.14 〜17のものは、本発明の実施例に係る皮膜についての結果である。
本発明の実施例に係る皮膜は、比較例に係る皮膜に比較して、硬度が高くて高硬度であると共に、摩耗幅Aおよび/または摩耗幅Bが小さくて耐摩耗性に優れていることがわかる。また、本発明の実施例に係る皮膜の中、C、Nの影響に関しては、Cの原子比が大きくてNの原子比が小さいものほど、硬度が高く、概ね摩耗幅Aが小さくて耐摩耗性に優れている。
〔実施例3、比較例3〕
前記図1に示すAIP装置のカソード(:ターゲット6)にTi、V、Al、Si、Bからなる合金ターゲットを取り付け、更に、支持台1上に被処理体Wとして超硬合金製チップ、超硬合金製ボールエンドミル(R5mm、2枚刃)を取り付け、チャンバー(真空容器)1内を真空状態にした。その後、チャンバー1内のヒーターで被処理体の温度を500℃に加熱し、窒素ガスを導入してチャンバー1内の圧力を2.66Paにしてアーク放電を開始し、前記被処理体の表面に膜厚3μmの皮膜を形成した。なお、成膜中にアース電位に対して基板(被処理体)がマイナス電位となるよう30〜200Vのバイアス電圧を基板(被処理体)に印加した。
成膜終了後、膜中の金属成分組成、ビッカース硬度を調べた。膜中の成分組成はEPMAにより測定した。なお、皮膜中の金属元素(Ti、V、Al、Si、B)および窒素以外の不純物元素量は、酸素が1at%以下で、炭素が2at%以下のレベルであった。
また、耐摩耗性を評価すべく、硬質皮膜を形成したエンドミルを用い、実施例1と同じ条件(切削条件A、切削条件B)で切削試験を行って刃中部分の摩耗幅を測定した。
前記皮膜の組成の分析、ビッカース硬度の測定、切削試験の結果を、表3に示す。
皮膜は、表3からわかるように、(Tia , Alb ,Vc )(C1-e e )、(Tia , Alb ,Vc , Sid )(C1-e e )、(Tia , Alb ,Vc , Sid , Bf )(C1-e e )、または、(Tia , Alb ,Vc , Bf )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、原子比eは全て1であり、その他の原子比、特にBの原子比fを変化させて種々の原子比としたものである。
表3において、No.1〜3 、No.19 のものは、比較例に係る皮膜についての結果である。No.4〜18、No.20 のものは、本発明の実施例に係る皮膜についての結果である。
本発明の実施例に係る皮膜は、比較例に係る皮膜に比較して、硬度が高くて高硬度であると共に、摩耗幅Aおよび/または摩耗幅Bが小さくて耐摩耗性に優れていることがわかる。また、本発明の実施例に係る皮膜の中、Bの影響に関しては、Bの原子比が大きいものほど、摩耗幅Aが小さくて耐摩耗性に優れており、また、概ね摩耗幅Bが小さくて耐摩耗性に優れている。
〔実施例4〕
特にはターゲットの密度をパラメータとして変化させた。即ち、密度が種々異なる(Ti,V,Al,Si)、(Ti,V,Al,Si,B)あるいは(Ti,V,Al,B)よりなるターゲットを作製し、AIP方式あるいはUBMS方式により成膜を実施し、成膜後の皮膜の組成、硬度、及び、表面粗度を調査した。
この結果を表4に示す。表4に示すものの中、No.3〜5 、8 〜11は、成膜の際にターゲットとして本発明の実施例に係るターゲットを用いた場合に得られた皮膜についての結果である。これ以外(即ち、No.1、2 、6 、7 )は、ターゲットとして比較例に係るターゲットを用いた場合に得られた皮膜についての結果である。
皮膜は、表4からわかるように、(Tia , Alb ,Vc , Sid )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、ターゲットとしてSiが非化合物の状態で存在するターゲットを用いた場合に得られたもの〔No.1〜5 〕、(Tia , Alb ,Vc , Sid , Bf )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、ターゲットとしてSiをTi−Si化合物の状態で存在させ、BをTi−B化合物の状態で存在させたターゲットを用いた場合に得られたもの〔No.6〜10〕、および、(Tia , Alb ,Vc , Bf )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、ターゲットとしてBをTi−B化合物の状態で存在させたターゲットを用いた場合に得られたもの〔No.11 〕である。
No.1〜5 のものは、(Tia , Alb ,Vc , Sid )(C1-e e )からなる皮膜についての結果であり、この中でみると、ターゲットとしてターゲット密度の大きいものを使用して得られた皮膜の場合ほど、皮膜の硬度が高く、また、皮膜の表面粗度(Ra)値が小さくて皮膜表面が平滑である。
No.6〜10のものは、(Tia , Alb ,Vc , Sid , Bf )(C1-e e )からなる皮膜についての結果であり、この中でみると、ターゲットとしてターゲット密度の大きいものを使用して得られた皮膜の場合ほど、皮膜の硬度が高く、また、皮膜の表面粗度(Ra)値が小さくて皮膜表面が円滑である。
No.1〜5 〔(Tia , Alb ,Vc , Sid )(C1-e e )からなる皮膜についての結果〕とNo.6〜10〔(Tia , Alb ,Vc , Sid , Bf )(C1-e e )からなる皮膜についての結果〕とを、比較するに、後者のNo.6〜10〔使用ターゲット:SiをTi−Si化合物の状態で存在させ、BをTi−B化合物の状態で存在させたもの〕の方が、前者のNo.1〜5 〔使用ターゲット:Siが非化合物の状態で存在するもの〕の場合よりも、皮膜の表面粗度(Ra)値が小さくて皮膜表面が円滑である。即ち、使用したターゲットの密度が同一のもの同士で比較するに、SiをTi−Si化合物の状態で存在させ、BをTi−B化合物の状態で存在させたターゲットを用いた場合に得られたものは、Siが非化合物の状態で存在するターゲットを用いた場合に得られたものに対し、皮膜の表面粗度(Ra)値が小さくて皮膜表面が円滑である。なお、皮膜の硬度は同等である。
No.11 のものは、前述のように、(Tia , Alb ,Vc , Bf )(C1-e e )からなる硬質皮膜であって、ターゲットとしてBをTi−B化合物の状態で存在させたターゲットを用いた場合に得られたものである。このターゲットの密度は、表4からわかるように、100%である。ここで、No.11 のものを、これと使用ターゲットの密度が同一であるものとを比較する。No.11 のものは、No.10 〔使用ターゲット:SiをTi−Si化合物の状態で存在させ、BをTi−B化合物の状態で存在させたもの〕と、皮膜の硬度および表面粗度(Ra)値が同等の水準にある。即ち、No.11 のものは、No.10 とほぼ同様に皮膜の硬度が高く、また、皮膜の表面粗度(Ra)値が小さくて皮膜表面が円滑である。また、No.11 のものは、No.5〔使用ターゲット:Siが非化合物の状態で存在するもの〕に比べて、皮膜の表面粗度(Ra)値が小さくて皮膜表面が円滑である。
Figure 2004256914
Figure 2004256914
Figure 2004256914
Figure 2004256914
本発明に係る硬質皮膜は、従来のTiAlN皮膜や(TiAlV)(CN)皮膜よりも高硬度であって耐摩耗性に優れているので、切削工具や機械部品あるいは塑性加工用治具等のコーティング皮膜として好適に用いることができ、それらの耐摩耗性を向上することができる。
本発明の実施に使用する装置例としてのアークイオンプレーティング(AIP)装置の一例の概要を示す模式図である。 本発明の実施に供するアーク式蒸発源要部の一例を示す模式図である。 本発明の実施に供するアーク式蒸発源要部の一例を示す模式図である。 従来のアークイオンプレーティング(AIP)装置のアーク式蒸発源の一例を示す模式図である。
符号の説明
1--真空容器、 2,2A--アーク式蒸発源、 3--支持台、 4--バイアス電源、 6--ターゲット、 7--アーク電源、 8--磁石(磁界形成手段)、 9--電磁石(磁界形成手段)、 11--排気口、 12--ガス供給口、 W--被処理体、 S--ターゲットの蒸発面。

Claims (12)

  1. (Tia , Alb ,Vc , Sid ,Bf )(C1-e e )を含む硬質皮膜であって、
    0.02≦a≦0.5、
    0.4<b≦0.8、
    0.05<c、
    0≦d≦0.5、
    0≦f≦0.1、
    0.01≦d+f≦0.5、
    a+b+c+d+f=1、
    0.5≦e≦1
    (a,b,c,d,fはそれぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比を示し、eはNの原子比を示すものである)であることを特徴とする硬質皮膜。
  2. 前記fの値が0であって、前記dの値が0.01≦d≦0.5である請求項1記載の硬質皮膜。
  3. 前記dの値が0であって、前記fの値が0.01≦f≦0.1である請求項1または2記載の硬質皮膜。
  4. 前記dの値が0.01≦d≦0.5であって、前記fの値が0.01≦f≦0.1である請求項1〜3のいずれかに記載の硬質皮膜。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の硬質皮膜の製造方法であって、成膜ガス雰囲気中で金属を蒸発させイオン化して、前記金属とともに成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜することを特徴とする硬質皮膜の製造方法。
  6. ターゲットを構成する金属の蒸発およびイオン化をアーク放電にて行うアークイオンプレーティング法を用い、ここで、該ターゲットの蒸発面にほぼ直交して前方に発散ないし平行に進行する磁力線を形成し、この磁力線によって被処理体近傍における成膜ガスのプラズマ化を促進しつつ成膜する請求項5記載の硬質皮膜の製造方法。
  7. Ti、Al、Vを含み、かつ、SiとBの少なくとも一方を含むと共に、相対密度が95%以上であることを特徴とする硬質皮膜形成用ターゲット。
  8. (Tix ,Aly ,Vz ,Siw ,Bv )を含むターゲットであって、
    0.02≦x≦0.5、
    0.4<y≦0.8、
    0.05<z、
    0≦w≦0.5、
    0≦v≦0.1、
    0.01≦w+v≦0.5
    x+y+z+w+v=1
    (x,y,z,w,vは、それぞれTi,Al,V,Si,Bの原子比を示すものである)である請求項7記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
  9. 前記vの値が0であって、前記wの値が0.01≦w≦0.5である請求項8記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
  10. 前記wの値が0であって、前記vの値が0.01≦v≦0.1である請求項8記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
  11. Si、Bの少なくとも1種が化合物の形で存在する請求項7〜10のいずれかに記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
  12. 前記化合物が、Ti−Si化合物とTi−B化合物の少なくとも一方である請求項11記載の硬質皮膜形成用ターゲット。
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