JP2004256873A - 高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金 - Google Patents
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Abstract
【目的】粉末冶金法やダイカスト法を用いることなく、晶出物の大きさを小さくして従来よりも高温強度の高い鋳物が製造できる鋳物用アルミニウム合金を提供する。
【構成】Si:9.5〜11.5質量%,Cu:5.0〜7.7質量%,Ni:3.5〜5.5質量%,Mg:0.55〜1.5質量%,P:0.003〜0.1質量%,Fe:0.15〜0.7質量%を含み、さらに必要に応じてTi:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%,Mn:0.1〜0.7質量%の少なくとも1種以上を含み、残部が実質的にAlからなる鋳物用アルミニウム合金。
【効果】凝固の際の固液共存領域の温度範囲が狭くなり、各種晶出物がほとんど同時に晶出するため晶出物が均一微細に分布され、マトリックスであるα−Al相が細かく分断された金属組織となるので高温強度が向上する。
【選択図】 なし
【構成】Si:9.5〜11.5質量%,Cu:5.0〜7.7質量%,Ni:3.5〜5.5質量%,Mg:0.55〜1.5質量%,P:0.003〜0.1質量%,Fe:0.15〜0.7質量%を含み、さらに必要に応じてTi:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%,Mn:0.1〜0.7質量%の少なくとも1種以上を含み、残部が実質的にAlからなる鋳物用アルミニウム合金。
【効果】凝固の際の固液共存領域の温度範囲が狭くなり、各種晶出物がほとんど同時に晶出するため晶出物が均一微細に分布され、マトリックスであるα−Al相が細かく分断された金属組織となるので高温強度が向上する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金に関するものであり、特に高温強度が必要とされ、かつ耐摩耗性や鋳造性も要求される車輌用等の内燃機関用ピストンに適した鋳物用アルミニウム合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関に使用されるピストンとして、軽量化を図るためJIS規格AC8A合金(Si:11.0〜13.0質量%,Cu:0.8〜1.3質量%,Mg:0.7〜1.3質量%,Ni:0.8〜1.5質量%)のような、耐摩耗性や鋳造性に優れ、熱膨張係数の小さいAl−Si系アルミニウム合金が使用されてきた。
近年、より高い温度での強度を要求されるピストンには、高温強度を高めるためにNiやCuの添加量を多くしたアルミニウム合金が使用される用になってきた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば特許文献1で紹介されたアルミニウム合金では、10〜16質量%のSiを含むAl−Si系合金にCu:1〜7質量%,Ni:0.2〜6質量%を含有させている。しかしながらこの合金では、晶出物の大きさが大きくなりやすいので、所要の高温強度を発現させるためには、含有P及びCa量を規制する必要があり、しかもダイカスト法を用い冷却速度20℃/秒以上で鋳造しなければならない。
また特許文献2で紹介されたアルミニウム合金では、11〜16質量%のSiを含むAl−Si系合金にCu:3〜7質量%,Ni:3〜7質量%を含有させている。しかしながらこの合金でも、晶出物の大きさを小さくするためにダイカスト法を用い冷却速度が早くなるように鋳造している。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−134577号公報
【特許文献2】
特開2000−204428号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
Cu及びNiを含有したAl−Si系合金では、高温で安定なAl−Ni−Cu系の晶出物を微細均一に晶出させ、α−Al相を細かく分断することにより高温強度を高めている。上記2つの技術で、冷却速度の速い鋳造法を採用して晶出物の大きさを小さくするのは、このためである。冷却速度が遅く、凝固の進行が遅い場合には晶出物が粗大化してα−Al相を細かく分断できなくなる。また、粗大な晶出物は破壊の起点になり、アルミニウム合金材の強度、特に疲労強度や破壊靭性値を低下させる原因にもなる。
晶出物の粗大化を抑制するためには急冷凝固させる必要がある。具体的には、粉末冶金法の適用や高速高圧のダイカスト法で鋳造する必要がある。しかし、粉末冶金法を使用した材料は、その製法上非常に高価であり、また高速高圧のダイカスト法はその工法上内部欠陥を含みやすく、また金型及び装置が高価になる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、粉末冶金法やダイカスト法を用いることなく、従来よりもさらに高温強度の高い鋳物が製造できる鋳物用アルミニウム合金を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金は、その目的を達成するため、Si:9.5〜11.5質量%,Cu:5.0〜7.7質量%,Ni:3.5〜5.5質量%,Mg:0.55〜1.5質量%,P:0.003〜0.1質量%,Fe:0.15〜0.7質量%を含み、残部が実質的にAlからなることを特徴とする。
本発明の鋳物用アルミニウム合金は、さらにTi:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%,Mn:0.1〜0.7質量%の少なくとも1種以上を含むことができる。
この鋳物用アルミニウム合金は、晶出物の平均粒径が15μm以下,最大粒径が100μm以下,代表粒子間距離が20μm以下であるものが好ましい。
そしてこのような鋳物用アルミニウム合金が内燃機関用ピストンとして適用される。
【0007】
【作用】
Al−Si系合金溶湯を鋳造する際、凝固速度が遅い場合に晶出物が均一微細に晶出せず粗大な晶出物が形成する理由は、発生した晶出物の周りに十分な液相スペースと成長するための時間的な余裕があるためである。例えば、特許文献2の実施例で使用されたAl−12.6%Si−4.2%Cu−0.5%Fe−0.4%Mn−4.5%Ni合金の熱平衡計算で算出した状態図を図1に示す。
この組成のアルミニウム合金溶湯を凝固させるとき、まず約609℃でAlFeSiが晶出し、次に初晶Siが晶出し、その後α−Al相の晶出が始まる。さらに、Al9FeNi、Al3Niの順で晶出し、約531℃の固相線に達するとAl3Ni2、Al5Cu2Mg8Si6が晶出する。そして凝固速度が遅いとAlFeSi、初晶Si、Al9FeNiが十分に成長する。これらの晶出物を成長させないためには、図1中の固液共存領域[AlFeSiの晶出開始温度(約609℃)から固相線温度(約531℃)までの領域]を急速に通過させる必要がある。そのために従来の技術では、冷却速度が速いダイカスト法を使用する必要があった。
【0008】
また、鋳物用Al−Si系合金の代表的組成である、Al−12%Si−3%Cu−2.5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図も図2に示す。この組成のアルミニウム合金溶湯を凝固させるとき、まず約568℃で初晶Siが晶出し、その後α−Al相の晶出が始まる。次にAl3Niの晶出が始まる。さらに531℃付近になると、Ni3(NiCu)2やMg2Si等が現れる。特許文献2の合金の固液共存領域よりも狭いが、まだ固液共存領域(約568℃〜約531℃)は広い。そして凝固速度が遅いと初晶Siは十分に成長し、その後Al3Niも十分に成長し大きなAl3Ni2に置き換わる。このため、最近のピストンに対する高い要求強度を十分に満たす高強度の鋳物は得られていない。
なお、図1,2および次の図3に共通する事項であるが、Siはα−Al相の晶出温度以上では初晶Siとして晶出し、その後は共晶Siとして晶出する。またAl3Niは途中からAl3Ni2の原料になるのでほとんどなくなる。
【0009】
そこで、本発明者等は、上記図1,2において固液共存領域の温度幅を狭く、且つ晶出温度が近似する晶出物が晶出するような成分組成を探索することにした。Siと各種Al−Ni系金属間化合物をほぼ同時に晶出させれば、異種の晶出物同士が互いに粗大化することを抑制し、凝固速度が遅くても晶出物は微細均一に且つ高密度で分布することになる。
例えば、Al−10%Si−7%Cu−5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図を図3に示す。この合金の最初の晶出物(Al9FeNi)の晶出開始温度は約553℃,固相線は約525℃である。この図から、固液共存領域の温度幅が狭く、且つ共晶Si及び各種Al−Ni系金属間化合物はほぼ同時に晶出することがわかる。このような成分組成をもつアルミニウム合金溶湯を鋳造する際、冷却速度(凝固速度)を速くしなくても晶出物は互いにその成長を抑制し合い、そのため晶出物は均一微細に分布し、マトリックスであるα−Al相が細かく分断された金属組織となって高温強度を向上することができるようになったものである。
【0010】
なお、請求項の記載で規定した成分組成は、上記の観点から各種成分組成についての熱平衡計算を行い、その計算結果から最適合金組成を予測し、予測した合金組成について予備実験を重ねて確認した結果に基づいて設定したものである。
そして、本発明の成分組成を採用すれば、重力鋳造のような低速低圧の鋳造方法でも優れた高温強度が得られる。高速高圧のダイカスト法、又は低速高圧の溶湯鍛造法などの高圧鋳造法で鋳造すると、結晶粒や晶出物はさらに微細化され、ミクロシュリンケージの発生を抑制することができるので、より優れた高温強度が得られることになる。
また、鋳込んだ鋳塊に人工時効を施したり、鋳造焼入れ後に人工時効を施したり、或いは溶体化処理後に人工時効を施すなどの熱処理を施すことにより、マトリックスの強度を制御し、より高い強度を得ることができることは、従来の鋳造用Al−Si系合金と同様である。
【0011】
以下、本発明鋳物用アルミニウム合金の成分,含有量等について詳しく説明する。
Si:9.5〜11.5質量%
初晶Siや共晶Siとして晶出し、耐熱性及び耐摩耗性を改善する合金成分である。また、熱膨張率を低下させ、鋳造時の湯流れを向上する上でも有効な成分である。さらに、共存しているMgと反応し時効処理によってMg2Siとして析出し、機械強度を向上させる。Si含有量が9.5質量%に満たないと耐摩耗性や高温強度が低くなり、熱膨張係数が大きくなる。逆に11.5質量%を超えるSi含有量では、初晶Siが比較的高温で液相から粗大に成長し、伸びが低下するうえ、鋳造性の点から鋳造温度を高くする必要も生じる。
【0012】
Cu:5.0〜7.7質量%
マトリックスに固溶し、またNiと共存するときAl3(NiCu)2を生成し、200〜350℃の高温強度向上に寄与する。またAl−Siの共晶温度域を下げ、Al−Ni系金属間化合物とほぼ同温度域とする。また、時効処理でAl2Cu中間体を生成し、250℃までの温度域でのマトリックス強度の向上に寄与する。Cu含有量が5.0質量%に満たないとこの効果は十分出ない。逆に.7質量%を超えると、Al−Si−Cu−Mg−系低融点化合物の生成量が多くなり、ミクロシュリンケージにより伸びを低下させるとともに。鋳造割れも起こしやすくなる。また、合金の比重が大きくなり、アルミニウム合金使用の軽量化メリットが減じる。
【0013】
Ni:3.5〜5.5質量%
Niは、高融点のAl−Ni系晶出物を形成し、200〜350℃付近における耐熱性,高温強度を改善する。またNiは鋳造性を向上(耐焼付き性の向上)させる作用もある。これらの効果は3.5質量%以上の含有で顕著になる。しかし、5.5質量%を超える多量のNiを含有させると、Al−Ni(FeMn)系の金属間化合物が比較的高温で液相から粗大に成長し、伸びが低下するうえ、粗大金属間化合物の周囲では高温強度向上に必要なα相の微細な分断も得られない。さらに、鋳造温度を高温にする必要も生じる。また、合金の比重が大きくなり、アルミニウム合金使用の軽量化メリットが減じるとともに、地金が高価になる。
【0014】
Mg:0.55〜1.5質量%
アルミニウム地中に固溶してマトリックスを強化するとともに、Siとの共存により時効処理でMg2Si中間体を析出し、機械強度を向上させる合金成分である。またAl−Siの共晶温度域を下げ、Al−Ni系金属間化合物とほぼ同温度域とする。Mg含有量が0.55質量%以上で十分な強化作用が得られ、1.5質量%を超えるとAl−Si−Cu−Mg系低融点化合物の生成量が多くなり、ミクロシュリンケージにより伸びを低下させる。また、鋳造割れも起こしやすくなる。
【0015】
P:0.003〜0.1質量%
初晶Siの粗大化抑制及び共晶Siの過度の微細化抑制にも寄与する。この効果は0.003重量%以上のP含有量で顕著になる。Pの含有量が多くなるにつれて湯流れ性が悪化し、湯まわり不良や湯境いといった鋳造欠陥が発生し易くなる。したがって、P含有量の上限は0.1質量%とした。
【0016】
Fe:0.15〜0.7質量%
Feは不可避的に混入してくる不純物でもあり、0.15質量%以下に抑えるのは困難であるが、0.2重量%以上含有していると種々の金属間化合物を生成し、耐摩耗性及び高温強度を向上させ、熱膨張率を下げる効果がある。また、ダイカストを行う場合には金型への焼付きを防止する効果もある。しかし、0.7質量%超える過剰量のFeが含まれると、粗大なAl−Ni(FeMn)系の金属間化合物を生成し、高温強度及び伸びを低下させる。
【0017】
Ti:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%
Ti,Zr及びBは、必要に応じて添加される成分であり、結晶粒微細化作用があり、また引け性を改善する。各々単独でも効果があるが、特にTiとBが共存すると添加量は少なくても効果は大きい。またZrには、溶湯の酸化を抑制する働きもある。Vは高温強度を高める効果があり、またZrと同様に溶湯の酸化を抑制する働きもある。
各元素の効果は下限添加量未満では不十分であり、上限添加量を超える量添加しても効果は飽和している。なお、Ti及びBを過剰に添加すると、TiB2クラスタが成長・粗大化し、ハードスポットの原因となる。また同じくZrを過剰に添加するとAl3Zrが成長し、伸びを阻害する。Vを過剰に添加すると地金が高価になる。
【0018】
Mn:0.1〜0.7質量%
Fe同様、種々の金属間化合物として晶出し、耐摩耗性及び高温強度を向上させ、熱膨張率を下げる効果がある。また、Mnはα−Al相に固溶しマトリックスを強化するとともに、粗大針状のAl−Fe系晶出物の生成も抑えられる。このような作用は、0.1質量%以上のMn含有量で顕著になる。しかし、Mn含有量が0.7質量%を超えると、Feとともに粗大なAl−Ni(FeMn)系の金属間化合物を生成し、却って高温強度及び伸びを低下させることになる。
【0019】
その他
不可避的に混入する不純物は少ない方が好ましい。例えばCaは湯流れ性を悪化させ、また共晶Siを過度に微細化して耐摩耗性を低下させるので、0.002質量%以下に規制することが好ましい。また、同様の理由から、Na含有量は0.001質量%以下に、Sr含有量は0.002質量%以下に、Sb含有量は0.05質量%以下に、さらにBi含有量は0.003質量%以下に規制することが好ましい。
【0020】
晶出物の平均粒径が15μm以下,最大粒径が100μm以下,代表粒子間距離が20μm以下
晶出物の平均粒径が15μmより大きいと、α−Al相を微細に分断できず、十分な高温強度を得ることができない。また、100μmより大きい粒径の晶出物が存在すると、応力集中が激しく晶出物が母相から剥離したり、晶出物自体が破砕されて破壊の起点となり、強度が低下する。さらに、代表粒子間距離が20μmを超えるとα−Al相を微細に分断できず、十分な高温強度を得ることができない。
このような金属組織にするためには、本請求項に記載したように規制された成分組成を有する合金を鋳造することにより得られる。
【0021】
【実施例】
表1に示す組成を有するアルミニウム合金を、重力金型鋳造法(冷却速度:0.5〜5℃/s)で、ピストン形状に鋳造した。溶湯保持温度は750℃±10℃,金型温度は250℃である。
得られた鋳物に220℃×4hrの時効処理を施した後、ピストン頭頂部から引張試験片を採取した。試験温度にて100時間の予備加熱をし、250℃と350℃で引張試験を行って引張強度を求めた。
また同時にピン穴上部の組織観察も行い、画像解析法により晶出物の平均粒径,最大粒径及び代表粒子間距離を測定した。なお、代表粒子間距離は、軽金属学会研究委員会鋳造・凝固部会推奨のデンドライトアームスペーシング測定の2次枝法により測定した。
それらの結果を表2に示す。
【0022】
【0023】
【0024】
表2より、本発明の実施例である試験No.1〜7は、例えば図4にみられるように、粗大な晶出物が晶出しておらず、高温強度に優れていることがわかる。
これに対して、比較例では、例えば図5にみられるように、晶出物の粒径が大きくなったり、粒子間距離が大きくなって、高温強度が低下している。
試験No.8は、Cu含有量が少ないために各種Al−Ni系金属間化合物の晶出温度域が分かれ、晶出物が粗大化して引張強度も低下した。試験No.9は、P含有量が少なかったために初晶Siの微細化効果が十分でなく初晶Siが粗大化して引張強度も低下した。試験No.10はSi含有量が少ないために最初にα−Al相が晶出し、そのためにα−Al相が十分に分断されず高温強度が十分でなかった。また表2には示していないが、本発明例と比較して熱膨張係数が大きくなっていた。試験No.11はCu含有量が多いためにAl−Si−Cu−Mg系低融点化合物が多量に形成され、高温強度が低下した。また鋳造性も悪かった。また試験No.12はSi含有量が多くCuとNiの含有量が少ないために晶出物量が少なく、α−Al相を十分に分断することができなかったために引張強度は高くならなかった。さらに、試験No.13はSi及びNiの含有量が多すぎたために粗大な晶出物が現れ、鋳造性も悪かった。
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、鋳造用Al−Si系アルミニウム合金において、合金成分の含有量を調整して凝固時の固液共存領域の温度範囲を狭くし、晶出物をほとんど同時に晶出させるようにすることにより、冷却速度(凝固速度)を速くしなくても晶出物を均一微細に分布させ、マトリックスであるα−Al相が細かく分断された金属組織とすることができたので、鋳造方法に影響されることなく高温強度に優れた鋳造用Al−Si系アルミニウム合金を得ることができる。これにより、高温強度,高温疲労強度及び耐摩耗性に優れた内燃機関用ピストン等が安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−12.6%Si−4.2%Cu−0.5%Fe−0.4%Mn−4.5%Ni合金の熱平衡計算で算出した状態図
【図2】Al−12%Si−3%Cu−2.5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図
【図3】Al−10%Si−7%Cu−5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図
【図4】試験No.1のマクロ組織を説明する図
【図5】試験No.12のマクロ組織を説明する図
【産業上の利用分野】
本発明は、高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金に関するものであり、特に高温強度が必要とされ、かつ耐摩耗性や鋳造性も要求される車輌用等の内燃機関用ピストンに適した鋳物用アルミニウム合金に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関に使用されるピストンとして、軽量化を図るためJIS規格AC8A合金(Si:11.0〜13.0質量%,Cu:0.8〜1.3質量%,Mg:0.7〜1.3質量%,Ni:0.8〜1.5質量%)のような、耐摩耗性や鋳造性に優れ、熱膨張係数の小さいAl−Si系アルミニウム合金が使用されてきた。
近年、より高い温度での強度を要求されるピストンには、高温強度を高めるためにNiやCuの添加量を多くしたアルミニウム合金が使用される用になってきた(例えば、特許文献1,2参照)。
【0003】
例えば特許文献1で紹介されたアルミニウム合金では、10〜16質量%のSiを含むAl−Si系合金にCu:1〜7質量%,Ni:0.2〜6質量%を含有させている。しかしながらこの合金では、晶出物の大きさが大きくなりやすいので、所要の高温強度を発現させるためには、含有P及びCa量を規制する必要があり、しかもダイカスト法を用い冷却速度20℃/秒以上で鋳造しなければならない。
また特許文献2で紹介されたアルミニウム合金では、11〜16質量%のSiを含むAl−Si系合金にCu:3〜7質量%,Ni:3〜7質量%を含有させている。しかしながらこの合金でも、晶出物の大きさを小さくするためにダイカスト法を用い冷却速度が早くなるように鋳造している。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−134577号公報
【特許文献2】
特開2000−204428号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
Cu及びNiを含有したAl−Si系合金では、高温で安定なAl−Ni−Cu系の晶出物を微細均一に晶出させ、α−Al相を細かく分断することにより高温強度を高めている。上記2つの技術で、冷却速度の速い鋳造法を採用して晶出物の大きさを小さくするのは、このためである。冷却速度が遅く、凝固の進行が遅い場合には晶出物が粗大化してα−Al相を細かく分断できなくなる。また、粗大な晶出物は破壊の起点になり、アルミニウム合金材の強度、特に疲労強度や破壊靭性値を低下させる原因にもなる。
晶出物の粗大化を抑制するためには急冷凝固させる必要がある。具体的には、粉末冶金法の適用や高速高圧のダイカスト法で鋳造する必要がある。しかし、粉末冶金法を使用した材料は、その製法上非常に高価であり、また高速高圧のダイカスト法はその工法上内部欠陥を含みやすく、また金型及び装置が高価になる。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、粉末冶金法やダイカスト法を用いることなく、従来よりもさらに高温強度の高い鋳物が製造できる鋳物用アルミニウム合金を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金は、その目的を達成するため、Si:9.5〜11.5質量%,Cu:5.0〜7.7質量%,Ni:3.5〜5.5質量%,Mg:0.55〜1.5質量%,P:0.003〜0.1質量%,Fe:0.15〜0.7質量%を含み、残部が実質的にAlからなることを特徴とする。
本発明の鋳物用アルミニウム合金は、さらにTi:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%,Mn:0.1〜0.7質量%の少なくとも1種以上を含むことができる。
この鋳物用アルミニウム合金は、晶出物の平均粒径が15μm以下,最大粒径が100μm以下,代表粒子間距離が20μm以下であるものが好ましい。
そしてこのような鋳物用アルミニウム合金が内燃機関用ピストンとして適用される。
【0007】
【作用】
Al−Si系合金溶湯を鋳造する際、凝固速度が遅い場合に晶出物が均一微細に晶出せず粗大な晶出物が形成する理由は、発生した晶出物の周りに十分な液相スペースと成長するための時間的な余裕があるためである。例えば、特許文献2の実施例で使用されたAl−12.6%Si−4.2%Cu−0.5%Fe−0.4%Mn−4.5%Ni合金の熱平衡計算で算出した状態図を図1に示す。
この組成のアルミニウム合金溶湯を凝固させるとき、まず約609℃でAlFeSiが晶出し、次に初晶Siが晶出し、その後α−Al相の晶出が始まる。さらに、Al9FeNi、Al3Niの順で晶出し、約531℃の固相線に達するとAl3Ni2、Al5Cu2Mg8Si6が晶出する。そして凝固速度が遅いとAlFeSi、初晶Si、Al9FeNiが十分に成長する。これらの晶出物を成長させないためには、図1中の固液共存領域[AlFeSiの晶出開始温度(約609℃)から固相線温度(約531℃)までの領域]を急速に通過させる必要がある。そのために従来の技術では、冷却速度が速いダイカスト法を使用する必要があった。
【0008】
また、鋳物用Al−Si系合金の代表的組成である、Al−12%Si−3%Cu−2.5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図も図2に示す。この組成のアルミニウム合金溶湯を凝固させるとき、まず約568℃で初晶Siが晶出し、その後α−Al相の晶出が始まる。次にAl3Niの晶出が始まる。さらに531℃付近になると、Ni3(NiCu)2やMg2Si等が現れる。特許文献2の合金の固液共存領域よりも狭いが、まだ固液共存領域(約568℃〜約531℃)は広い。そして凝固速度が遅いと初晶Siは十分に成長し、その後Al3Niも十分に成長し大きなAl3Ni2に置き換わる。このため、最近のピストンに対する高い要求強度を十分に満たす高強度の鋳物は得られていない。
なお、図1,2および次の図3に共通する事項であるが、Siはα−Al相の晶出温度以上では初晶Siとして晶出し、その後は共晶Siとして晶出する。またAl3Niは途中からAl3Ni2の原料になるのでほとんどなくなる。
【0009】
そこで、本発明者等は、上記図1,2において固液共存領域の温度幅を狭く、且つ晶出温度が近似する晶出物が晶出するような成分組成を探索することにした。Siと各種Al−Ni系金属間化合物をほぼ同時に晶出させれば、異種の晶出物同士が互いに粗大化することを抑制し、凝固速度が遅くても晶出物は微細均一に且つ高密度で分布することになる。
例えば、Al−10%Si−7%Cu−5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図を図3に示す。この合金の最初の晶出物(Al9FeNi)の晶出開始温度は約553℃,固相線は約525℃である。この図から、固液共存領域の温度幅が狭く、且つ共晶Si及び各種Al−Ni系金属間化合物はほぼ同時に晶出することがわかる。このような成分組成をもつアルミニウム合金溶湯を鋳造する際、冷却速度(凝固速度)を速くしなくても晶出物は互いにその成長を抑制し合い、そのため晶出物は均一微細に分布し、マトリックスであるα−Al相が細かく分断された金属組織となって高温強度を向上することができるようになったものである。
【0010】
なお、請求項の記載で規定した成分組成は、上記の観点から各種成分組成についての熱平衡計算を行い、その計算結果から最適合金組成を予測し、予測した合金組成について予備実験を重ねて確認した結果に基づいて設定したものである。
そして、本発明の成分組成を採用すれば、重力鋳造のような低速低圧の鋳造方法でも優れた高温強度が得られる。高速高圧のダイカスト法、又は低速高圧の溶湯鍛造法などの高圧鋳造法で鋳造すると、結晶粒や晶出物はさらに微細化され、ミクロシュリンケージの発生を抑制することができるので、より優れた高温強度が得られることになる。
また、鋳込んだ鋳塊に人工時効を施したり、鋳造焼入れ後に人工時効を施したり、或いは溶体化処理後に人工時効を施すなどの熱処理を施すことにより、マトリックスの強度を制御し、より高い強度を得ることができることは、従来の鋳造用Al−Si系合金と同様である。
【0011】
以下、本発明鋳物用アルミニウム合金の成分,含有量等について詳しく説明する。
Si:9.5〜11.5質量%
初晶Siや共晶Siとして晶出し、耐熱性及び耐摩耗性を改善する合金成分である。また、熱膨張率を低下させ、鋳造時の湯流れを向上する上でも有効な成分である。さらに、共存しているMgと反応し時効処理によってMg2Siとして析出し、機械強度を向上させる。Si含有量が9.5質量%に満たないと耐摩耗性や高温強度が低くなり、熱膨張係数が大きくなる。逆に11.5質量%を超えるSi含有量では、初晶Siが比較的高温で液相から粗大に成長し、伸びが低下するうえ、鋳造性の点から鋳造温度を高くする必要も生じる。
【0012】
Cu:5.0〜7.7質量%
マトリックスに固溶し、またNiと共存するときAl3(NiCu)2を生成し、200〜350℃の高温強度向上に寄与する。またAl−Siの共晶温度域を下げ、Al−Ni系金属間化合物とほぼ同温度域とする。また、時効処理でAl2Cu中間体を生成し、250℃までの温度域でのマトリックス強度の向上に寄与する。Cu含有量が5.0質量%に満たないとこの効果は十分出ない。逆に.7質量%を超えると、Al−Si−Cu−Mg−系低融点化合物の生成量が多くなり、ミクロシュリンケージにより伸びを低下させるとともに。鋳造割れも起こしやすくなる。また、合金の比重が大きくなり、アルミニウム合金使用の軽量化メリットが減じる。
【0013】
Ni:3.5〜5.5質量%
Niは、高融点のAl−Ni系晶出物を形成し、200〜350℃付近における耐熱性,高温強度を改善する。またNiは鋳造性を向上(耐焼付き性の向上)させる作用もある。これらの効果は3.5質量%以上の含有で顕著になる。しかし、5.5質量%を超える多量のNiを含有させると、Al−Ni(FeMn)系の金属間化合物が比較的高温で液相から粗大に成長し、伸びが低下するうえ、粗大金属間化合物の周囲では高温強度向上に必要なα相の微細な分断も得られない。さらに、鋳造温度を高温にする必要も生じる。また、合金の比重が大きくなり、アルミニウム合金使用の軽量化メリットが減じるとともに、地金が高価になる。
【0014】
Mg:0.55〜1.5質量%
アルミニウム地中に固溶してマトリックスを強化するとともに、Siとの共存により時効処理でMg2Si中間体を析出し、機械強度を向上させる合金成分である。またAl−Siの共晶温度域を下げ、Al−Ni系金属間化合物とほぼ同温度域とする。Mg含有量が0.55質量%以上で十分な強化作用が得られ、1.5質量%を超えるとAl−Si−Cu−Mg系低融点化合物の生成量が多くなり、ミクロシュリンケージにより伸びを低下させる。また、鋳造割れも起こしやすくなる。
【0015】
P:0.003〜0.1質量%
初晶Siの粗大化抑制及び共晶Siの過度の微細化抑制にも寄与する。この効果は0.003重量%以上のP含有量で顕著になる。Pの含有量が多くなるにつれて湯流れ性が悪化し、湯まわり不良や湯境いといった鋳造欠陥が発生し易くなる。したがって、P含有量の上限は0.1質量%とした。
【0016】
Fe:0.15〜0.7質量%
Feは不可避的に混入してくる不純物でもあり、0.15質量%以下に抑えるのは困難であるが、0.2重量%以上含有していると種々の金属間化合物を生成し、耐摩耗性及び高温強度を向上させ、熱膨張率を下げる効果がある。また、ダイカストを行う場合には金型への焼付きを防止する効果もある。しかし、0.7質量%超える過剰量のFeが含まれると、粗大なAl−Ni(FeMn)系の金属間化合物を生成し、高温強度及び伸びを低下させる。
【0017】
Ti:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%
Ti,Zr及びBは、必要に応じて添加される成分であり、結晶粒微細化作用があり、また引け性を改善する。各々単独でも効果があるが、特にTiとBが共存すると添加量は少なくても効果は大きい。またZrには、溶湯の酸化を抑制する働きもある。Vは高温強度を高める効果があり、またZrと同様に溶湯の酸化を抑制する働きもある。
各元素の効果は下限添加量未満では不十分であり、上限添加量を超える量添加しても効果は飽和している。なお、Ti及びBを過剰に添加すると、TiB2クラスタが成長・粗大化し、ハードスポットの原因となる。また同じくZrを過剰に添加するとAl3Zrが成長し、伸びを阻害する。Vを過剰に添加すると地金が高価になる。
【0018】
Mn:0.1〜0.7質量%
Fe同様、種々の金属間化合物として晶出し、耐摩耗性及び高温強度を向上させ、熱膨張率を下げる効果がある。また、Mnはα−Al相に固溶しマトリックスを強化するとともに、粗大針状のAl−Fe系晶出物の生成も抑えられる。このような作用は、0.1質量%以上のMn含有量で顕著になる。しかし、Mn含有量が0.7質量%を超えると、Feとともに粗大なAl−Ni(FeMn)系の金属間化合物を生成し、却って高温強度及び伸びを低下させることになる。
【0019】
その他
不可避的に混入する不純物は少ない方が好ましい。例えばCaは湯流れ性を悪化させ、また共晶Siを過度に微細化して耐摩耗性を低下させるので、0.002質量%以下に規制することが好ましい。また、同様の理由から、Na含有量は0.001質量%以下に、Sr含有量は0.002質量%以下に、Sb含有量は0.05質量%以下に、さらにBi含有量は0.003質量%以下に規制することが好ましい。
【0020】
晶出物の平均粒径が15μm以下,最大粒径が100μm以下,代表粒子間距離が20μm以下
晶出物の平均粒径が15μmより大きいと、α−Al相を微細に分断できず、十分な高温強度を得ることができない。また、100μmより大きい粒径の晶出物が存在すると、応力集中が激しく晶出物が母相から剥離したり、晶出物自体が破砕されて破壊の起点となり、強度が低下する。さらに、代表粒子間距離が20μmを超えるとα−Al相を微細に分断できず、十分な高温強度を得ることができない。
このような金属組織にするためには、本請求項に記載したように規制された成分組成を有する合金を鋳造することにより得られる。
【0021】
【実施例】
表1に示す組成を有するアルミニウム合金を、重力金型鋳造法(冷却速度:0.5〜5℃/s)で、ピストン形状に鋳造した。溶湯保持温度は750℃±10℃,金型温度は250℃である。
得られた鋳物に220℃×4hrの時効処理を施した後、ピストン頭頂部から引張試験片を採取した。試験温度にて100時間の予備加熱をし、250℃と350℃で引張試験を行って引張強度を求めた。
また同時にピン穴上部の組織観察も行い、画像解析法により晶出物の平均粒径,最大粒径及び代表粒子間距離を測定した。なお、代表粒子間距離は、軽金属学会研究委員会鋳造・凝固部会推奨のデンドライトアームスペーシング測定の2次枝法により測定した。
それらの結果を表2に示す。
【0022】
【0023】
【0024】
表2より、本発明の実施例である試験No.1〜7は、例えば図4にみられるように、粗大な晶出物が晶出しておらず、高温強度に優れていることがわかる。
これに対して、比較例では、例えば図5にみられるように、晶出物の粒径が大きくなったり、粒子間距離が大きくなって、高温強度が低下している。
試験No.8は、Cu含有量が少ないために各種Al−Ni系金属間化合物の晶出温度域が分かれ、晶出物が粗大化して引張強度も低下した。試験No.9は、P含有量が少なかったために初晶Siの微細化効果が十分でなく初晶Siが粗大化して引張強度も低下した。試験No.10はSi含有量が少ないために最初にα−Al相が晶出し、そのためにα−Al相が十分に分断されず高温強度が十分でなかった。また表2には示していないが、本発明例と比較して熱膨張係数が大きくなっていた。試験No.11はCu含有量が多いためにAl−Si−Cu−Mg系低融点化合物が多量に形成され、高温強度が低下した。また鋳造性も悪かった。また試験No.12はSi含有量が多くCuとNiの含有量が少ないために晶出物量が少なく、α−Al相を十分に分断することができなかったために引張強度は高くならなかった。さらに、試験No.13はSi及びNiの含有量が多すぎたために粗大な晶出物が現れ、鋳造性も悪かった。
【0025】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、鋳造用Al−Si系アルミニウム合金において、合金成分の含有量を調整して凝固時の固液共存領域の温度範囲を狭くし、晶出物をほとんど同時に晶出させるようにすることにより、冷却速度(凝固速度)を速くしなくても晶出物を均一微細に分布させ、マトリックスであるα−Al相が細かく分断された金属組織とすることができたので、鋳造方法に影響されることなく高温強度に優れた鋳造用Al−Si系アルミニウム合金を得ることができる。これにより、高温強度,高温疲労強度及び耐摩耗性に優れた内燃機関用ピストン等が安価に提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】Al−12.6%Si−4.2%Cu−0.5%Fe−0.4%Mn−4.5%Ni合金の熱平衡計算で算出した状態図
【図2】Al−12%Si−3%Cu−2.5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図
【図3】Al−10%Si−7%Cu−5%Ni−1.0%Mg−0.2%Fe合金の熱平衡計算で算出した状態図
【図4】試験No.1のマクロ組織を説明する図
【図5】試験No.12のマクロ組織を説明する図
Claims (4)
- Si:9.5〜11.5質量%,Cu:5.0〜7.7質量%,Ni:3.5〜5.5質量%,Mg:0.55〜1.5質量%,P:0.003〜0.1質量%,Fe:0.15〜0.7質量%を含み、残部が実質的にAlからなることを特徴とする高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金。
- さらにTi:0.005〜0.3質量%,Zr:0.02〜0.3質量%,V:0.02〜0.3質量%,B:0.001〜0.1質量%,Mn:0.1〜0.7質量%の少なくとも1種以上を含む請求項1に記載の高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金。
- 晶出物の平均粒径が15μm以下,最大粒径が100μm以下,代表粒子間距離が20μm以下である請求項1又は2に記載の高温強度に優れた鋳物用アルミニウム合金。
- 請求項1〜3のいずれか1に記載のアルミニウム合金からなる内燃機関用ピストン。
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