JP2004255388A - 異種金属スカーフ継手を有する部材及びその設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】強度上信頼性の高い異種金属スカーフ継手を得ることにある。
【解決手段】異種金属スカーフ継手の接合界面両端部A,Bの自由縁3と接合界面4を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度θ1を応力特異性解析及び最適化解析によって求め、その角度から応力集中が緩和する角度を限定してスカーフ継手を設計する。
【選択図】 図1
【解決手段】異種金属スカーフ継手の接合界面両端部A,Bの自由縁3と接合界面4を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度θ1を応力特異性解析及び最適化解析によって求め、その角度から応力集中が緩和する角度を限定してスカーフ継手を設計する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、異種金属の継手形状として用いられるスカーフ継手及びその設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
異種金属の接合は、単一材料の高機能化、高性能化を図る上で有効な技術であり、既に多くの金属材料の組合せに関する研究が行なわれ、実用化も進められてきた。
【0003】
従来、異種金属の継手としては、重ね継手(特許文献1)や自在継手(特許文献2)など種々があるが、最近では継手形状として接合面積の大きなスカーフ継手が多く用いられ、これら異種金属の接合部形状の最適化に関しては、一般的な有限要素法による解析的検討が主体で行なわれている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−156213号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−42303号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
異種金属の組合せに関しては、接合界面に脆弱な金属化合物が形成され、高い信頼性の継手を得ることが困難で、必ずしも実用化が十分に図られているとは言えない。
【0007】
ところで、異種金属の接合法として摩擦圧接法がある。この摩擦圧接法は塑性流動と固相接合に基づくプロセスであり、低い温度での接合が可能で金属間化合物層の制御が比較的容易なことから、異種金属接合には有効なプロセスである。既に、チタンとアルミニウムの接合、アルミニウムとステンレス鋼の接合、銅とアルミニウムの接合などについて、摩擦圧接条件の最適化、接合界面の組織、継手強度などに関して多くの研究がなされている。
【0008】
一方、ろう付け法や拡散接合法による異種金属の継手形状としては、従来からスカーフ継手に対する応力特異性解析により、自由縁応力特異性が消失するスカーフ角度の存在が知られている。このスカーフ角度は異種金属材料、即ち弾性定数の組合せは勿論、応力状態によって異なると考えられている。
【0009】
しかし、スカーフ継手の異種金属材料の組合せに関しては、スカーフ角度の定量的な最適化検討は行なわれていないため、継手強度を保持したスカーフ継手が得られていないのが現状である。
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、接合界面に金属間化合物層が形成される各種異種金属材料の組合せを対象に、スカーフ継手の接合界面端部の応力集中低減条件について解明し、継手設計指針を示すことにより、継手強度を保持した信頼性の高い異種金属スカーフ継手及びその設計方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような方法により異種金属スカーフ継手形状を設計する。
【0012】
請求項1に対応する発明は、異種金属の継手材料をスカーフ形状に接合してなるスカーフ継手において、継手の接合界面の応力集中低減条件として、継手の接合界面両端部の自由縁と接合界面を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度を異種金属接合界面端部の応力特異性解析により求めて応力特異性消失スカーフ角度範囲を限定し、その範囲内で継手設計を行なうことを特徴とする。
【0013】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、応力特異性解析によって求めた応力特異性消失範囲内のスカーフ角度から、最適化手法を用いて、異種金属接合界面端部の応力が最小となる角度を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の薄板継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7未満とした場合のスカーフ角度θ1を55°≦θ1≦65°として設計することを特徴とする。
【0015】
請求項4に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の薄板継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7以上とした場合のスカーフ角度θ1を3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°として設計することを特徴とする。
【0016】
請求項5に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7未満とした場合のスカーフ角度θ1を55°≦θ1≦70°として設計することを特徴とする。
【0017】
請求項6に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7以上とした場合のスカーフ角度θ1を3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°として設計することを特徴とする。
【0018】
請求項7に対応する発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、ろう付け、拡散接合、レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先アーク溶接の何れかにより接合されることを特徴とする。
【0019】
請求項8に対応する発明は、請求項3又は請求項5に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、アルミニウムを第1の金属材料とし、タングステン、モリブデン、炭素鋼、銅、ニオブのいずれかを第2の金属材料として組合せるか、又はニッケルを第1の金属材料とし、タングステン又はチタンを第2の金属材料として組合せたことを特徴とする。
【0020】
請求項9に対応する発明は、請求項4又は請求項6に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、コバルトを第1の金属材料とし、モリブデンを第2の金属材料として組合せるか、又はチタンを第1の金属材料とし、銅を第2の金属材料として組合せたことを特徴とする。
【0021】
請求項10に対応する発明は、請求項1乃至請求項9の何れかに対応する発明の設計方法により異種金属スカーフ継手を得ることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第1の実施形態を示すスカーフ継手形状の斜視図である。
【0024】
まず、異種金属の継手材料として例えばアルミニウム(Al)からなる平板状の継手材料1と、例えばニオブ(Nb)からなる継手材料2のスカーフ継手について検討する。
【0025】
二次元異種材料の接合界面端部における平面問題に関しては応力特異性を決める特性方程式が既に導かれている。そこで、本発明者等がこの特性方程式を用いて図1に示すAlとNbとの組合せによるスカーフ継手の接合界面端部の応力特異性を解析したところ、スカーフ継手の接合界面両端部A,Bにおける自由縁応力特異性は平板の両端部2ヶ所で生じていることが分かった。
【0026】
すなわち、図1において、スカーフ継手の接合界面両端部A,Bの自由縁3と接合界面4を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度θ1が0°から180°まで変化した場合の平板の両端部における応力特異性を解析した。ここでは、2ヶ所の接合界面端部における応力特異性を示す指数pを摂動法により計算し、応力特異性を求めた。
【0027】
図2は、その解析結果について縦軸を応力特異性指数、横軸をスカーフ角度として示すグラフである。
【0028】
このグラフから明らかなように、AlとNbの接合面端部に関して、A点に注目するとスカーフ角度θ1がθ1≦72°、88°≦θ1≦122°の範囲において、接合界面端部における自由縁応力特異性の消失が認められる。また、B点に注目するとスカーフ角度θ1が58°≦θ1≦92°、θ1≧108°の範囲において、接合界面端部における自由縁応力特異性の消失が認められる。
【0029】
これらのことから、接合界面両端部A,B点共に自由縁応力特異性の消失が認められる範囲は、スカーフ角度θ1が58°≦θ1≦ら72°、88°≦θ1≦92°及び108°≦θ1≦122°であることが分かる。
【0030】
このように本発明の第1の実施形態によれば、異種金属の継手材料(本例ではAlとNb)1,2をスカーフ形状に接合するに際して、その自由縁3と接合界面4を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度θ1を0°〜180°まで変化したときの平板の両縁部における応力特異性を解析して応力特異性消失範囲を上記範囲のいずれかに特定し、そのスカーフ角度θ1で異種金属スカーフ継手を設計するものである。
【0031】
そして、このような設計にもとづく異種金属の継手材料1,2を接合に適しているろう付け、拡散接合レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先溶接等で接合することにより、応力集中を低減させた信頼性の高いスカーフ継手を得ることが可能となる。
【0032】
上記では異種金属スカーフ継手として、AlとNbの接合界面端部の解析結果であるが、AlとCu、Alと炭素鋼、AlとMo、AlとW、Alと炭素鋼、NiとW、NiとTi、CoとMo等異種金属の組合せによってスカーフ継手の接合界面端部における自由縁応力特異性の消失範囲も異なるが、何れにしても上述同様にスカーフ角度θ1が0°から180°まで変化した場合の平板の両端部における応力特異性を解析により求め、その解析結果から接合界面端部における自由縁応力特異性の消失範囲を特定し、これをもとにしてスカーフ継手を設計すれば、応力集中を低減させた信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0033】
図3は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第2の実施形態を示すベーシスベクトル解析モデル図である。
【0034】
このベーシスベクトル解析は、図3に示すように異種金属として例えばアルミニウム(Al)からなる継手材料5と、例えば銅(Cu)からなる継手材料6を接合するスカーフ継手を対象とし、前述同様に応力特異性解析によって求めた応力特異性消失範囲内において、以下述べるような最適化手法を用いて、継手端部の応力が最小となる角度を求めるものである。因みに、このスカーフ継手の板幅がW=5mm、全長が15mmである。
【0035】
前述した応力特異性解析では、応力特異性が消失する範囲を特定可能であるが、応力集中の低減度合い等の定量的な特定はできない。
【0036】
そこで、まず応力特異性解析により、前述同様に応力特異性が消失する範囲を特定した後、例えば節点をグルーピング化して一つの変数として設定し、最適化を実施するベーシスベクトル法を用いることによって、最小応力となる角度を特定する。
【0037】
以下その詳細について述べる。
【0038】
図3は、異種金属としてCuとAlの継手材料5,6を用いたスカーフ継手のA点とB点での破壊発生に大きな影響を及ぼす引張り軸方向成分σxが、自由縁と接合界面のなすAl側の角度θ1によって受ける影響を示している。図3におけるベーシスベクトル解析は、有限要素法モデルの接合面の節点をグルーピング化して(例えば変数1と定義し)、その変数(端部角度)を変えて解析している。
【0039】
但し、引張軸方向応力成分は一様引張応力σnにより無次元化して示す。
【0040】
また、図4は各角度における応力分布を求めた結果を示すグラフで、黒丸が銅側、白丸がアルミ側を示し、黒三角は銅側の両端部、白三角はアルミ側の両端部を示している。
【0041】
このグラフから明らかなように、Cu側もAl側もスカーフ角度θ1の範囲でほぼ同じ応力低下傾向を示すことが確認され、また図4からはθ1=63°,117°においてσx/σn=1.0でA点、B点の応力が一致していることが確認される。このことから、異種金属としてCuとAlを継手材料とするスカーフ継手において、A点とB点で最大の引張応力を示す引張軸方向応力成分σxに注目し、これを最小とする継手端部の最適形状はθ1=63°,117°であることが分かる。
【0042】
そこで、本発明の第2の実施形態では、異種金属としてCuとAlを継手材料5,6とするスカーフ継手を対象に、応力特異性解析により応力特異性消失範囲を限定して、その範囲内で前述したベーシスベクトル解析(最適化解析)を実施し、応力が最小となるスカーフ角度角度θ1を上記角度に特定してスカーフ継手を設計するものである。
【0043】
そして、このような異種金属の継手材料5,6を接合に適しているろう付け、拡散接合レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先溶接等で接合することにより、信頼性の高いスカーフ継手を得ることが可能となる。
【0044】
図5は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第3の実施形態において、異種金属のヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0045】
図5に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、AlとNbのヤング率比が0.65、NiとWのヤング率比が0.495、AlとWのヤング率比が0.182をそれぞれ継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述した応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように55°≦θ1≦65°であることが分かる。
【0046】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばAlとMoではヤング率比が0.224、AlとWではヤング率比が0.182、AlとFeではヤング率比が0.354、AlとCuではヤング率比が0.566、TiとNiではヤング率比が0.618と異なるが、本解析では何れの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0047】
そこで、本発明の第3k実施形態では、異種金属のヤング率比E1/E2が0.7未満の薄板継手材料からなる異種金属スカーフ継手の応力最適スカーフ角度θ1の応力特異性が消失する角度範囲を55°≦θ1≦65°に設計するものである。
【0048】
ここで、異種金属のヤング率比E1/E2が0.7としているのは、異種金属スカーフ継手において、異種金属の組合せとして種々あるが、解析結果からそのほとんどのヤング率比E1/E2が0.7前後にあるためである。
【0049】
このように本発明の第3の実施形態によれば、異種金属の薄板継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0050】
図6は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第4の実施形態において、ヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0051】
図6に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、TiとCuのヤング率比が0.95を継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述した応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°であることが分かる。
【0052】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばCoとMoではヤング率比0.748と異なるが、本解析ではこの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0053】
そこで、本発明の第4の実施形態では、異種金属の継手材料のヤング率比E1/E2を0.7以上とした場合の薄板異種金属スカーフ継手の応力最適スカーフ角度θ1の特異性が消失する角度範囲を3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°に設計するものである。
【0054】
このように本発明の第4の実施形態によれば、継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0055】
図7は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第5の実施形態において、ヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0056】
図7に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、AlとNbのヤング率比が0.65、NiとWのヤング率比が0.495、AlとWのヤング率比が0.182をそれぞれ異種金属の肉厚の継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述した応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように55°≦θ1≦70°であることが分かる。
【0057】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばAlとMoではヤング率比が0.224、AlとWではヤング率比が0.182、AlとFeではヤング率比が0.354、AlとCuではヤング率比が0.566、TiとNiではヤング率比が0.618と異なるが、本解析では何れの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0058】
そこで、本発明の第5の実施形態では、異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2を0.7未満とした場合の板厚異種金属スカーフ継手の応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を55°≦θ1≦70°に設計するものである。
【0059】
このように本発明の第5の実施形態によれば、肉厚の継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0060】
図8は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第6の実施形態において、ヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0061】
図8に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、TiとCuのヤング率比が0.95を異種金属の肉厚の継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述同様に応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°であることが分かる。
【0062】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばCoとMoではヤング率比0.748と異なるが、本解析ではこの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0063】
そこで、本発明の第6の実施形態では、異種金属のヤング率比E1/E2が0.7以上の肉厚継手材料からなる異種金属スカーフ継手の応力最適スカーフ角度θ1の特異性が消失する角度範囲を3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°に設計するものである。
【0064】
このように本発明の第6の実施形態によれば、継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0065】
なお、薄肉、厚肉の定義として、部材の縦(L1)、横(L2)、板厚(t)とした場合、有限要素法で区別する一つの目安として、L1/t≧20、かつL2/t≦20を肉厚とした。
【0066】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、異種金属スカーフ継手の角度を応力特異性解析及び最適化解析によって求め、その角度から応力集中が緩和する角度を選定して継手設計することにより、強度上信頼性の高い異種金属スカーフ継手及びその設計方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するためのスカーフ継手形状を示す斜視図。
【図2】同実施形態において、応力特異性解析結果を示すグラフ。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明するためのスカーフ継手を示すベーシスベクトル解析モデル図。
【図4】同実施形態において、最適化解析結果を示すグラフ。
【図5】本発明の第3の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【図6】本発明の第4の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第5の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第6の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…Alからなる継手材料
2…Nbからなる継手材料
3…自由縁
4…接合界面
5…Alからなる継手材料
6…Cuからなる継手材料
A,B…スカーフ継手の接合界面端部
【発明の属する技術分野】
本発明は、異種金属の継手形状として用いられるスカーフ継手及びその設計方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
異種金属の接合は、単一材料の高機能化、高性能化を図る上で有効な技術であり、既に多くの金属材料の組合せに関する研究が行なわれ、実用化も進められてきた。
【0003】
従来、異種金属の継手としては、重ね継手(特許文献1)や自在継手(特許文献2)など種々があるが、最近では継手形状として接合面積の大きなスカーフ継手が多く用いられ、これら異種金属の接合部形状の最適化に関しては、一般的な有限要素法による解析的検討が主体で行なわれている。
【0004】
【特許文献1】
特開平5−156213号公報
【0005】
【特許文献2】
特開平9−42303号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
異種金属の組合せに関しては、接合界面に脆弱な金属化合物が形成され、高い信頼性の継手を得ることが困難で、必ずしも実用化が十分に図られているとは言えない。
【0007】
ところで、異種金属の接合法として摩擦圧接法がある。この摩擦圧接法は塑性流動と固相接合に基づくプロセスであり、低い温度での接合が可能で金属間化合物層の制御が比較的容易なことから、異種金属接合には有効なプロセスである。既に、チタンとアルミニウムの接合、アルミニウムとステンレス鋼の接合、銅とアルミニウムの接合などについて、摩擦圧接条件の最適化、接合界面の組織、継手強度などに関して多くの研究がなされている。
【0008】
一方、ろう付け法や拡散接合法による異種金属の継手形状としては、従来からスカーフ継手に対する応力特異性解析により、自由縁応力特異性が消失するスカーフ角度の存在が知られている。このスカーフ角度は異種金属材料、即ち弾性定数の組合せは勿論、応力状態によって異なると考えられている。
【0009】
しかし、スカーフ継手の異種金属材料の組合せに関しては、スカーフ角度の定量的な最適化検討は行なわれていないため、継手強度を保持したスカーフ継手が得られていないのが現状である。
【0010】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、接合界面に金属間化合物層が形成される各種異種金属材料の組合せを対象に、スカーフ継手の接合界面端部の応力集中低減条件について解明し、継手設計指針を示すことにより、継手強度を保持した信頼性の高い異種金属スカーフ継手及びその設計方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記の目的を達成するため、次のような方法により異種金属スカーフ継手形状を設計する。
【0012】
請求項1に対応する発明は、異種金属の継手材料をスカーフ形状に接合してなるスカーフ継手において、継手の接合界面の応力集中低減条件として、継手の接合界面両端部の自由縁と接合界面を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度を異種金属接合界面端部の応力特異性解析により求めて応力特異性消失スカーフ角度範囲を限定し、その範囲内で継手設計を行なうことを特徴とする。
【0013】
請求項2に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、応力特異性解析によって求めた応力特異性消失範囲内のスカーフ角度から、最適化手法を用いて、異種金属接合界面端部の応力が最小となる角度を求めることを特徴とする。
【0014】
請求項3に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の薄板継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7未満とした場合のスカーフ角度θ1を55°≦θ1≦65°として設計することを特徴とする。
【0015】
請求項4に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の薄板継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7以上とした場合のスカーフ角度θ1を3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°として設計することを特徴とする。
【0016】
請求項5に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7未満とした場合のスカーフ角度θ1を55°≦θ1≦70°として設計することを特徴とする。
【0017】
請求項6に対応する発明は、請求項1に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7以上とした場合のスカーフ角度θ1を3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°として設計することを特徴とする。
【0018】
請求項7に対応する発明は、請求項1乃至請求項6のいずれかに対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、ろう付け、拡散接合、レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先アーク溶接の何れかにより接合されることを特徴とする。
【0019】
請求項8に対応する発明は、請求項3又は請求項5に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、アルミニウムを第1の金属材料とし、タングステン、モリブデン、炭素鋼、銅、ニオブのいずれかを第2の金属材料として組合せるか、又はニッケルを第1の金属材料とし、タングステン又はチタンを第2の金属材料として組合せたことを特徴とする。
【0020】
請求項9に対応する発明は、請求項4又は請求項6に対応する発明の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、コバルトを第1の金属材料とし、モリブデンを第2の金属材料として組合せるか、又はチタンを第1の金属材料とし、銅を第2の金属材料として組合せたことを特徴とする。
【0021】
請求項10に対応する発明は、請求項1乃至請求項9の何れかに対応する発明の設計方法により異種金属スカーフ継手を得ることを特徴とする。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第1の実施形態を示すスカーフ継手形状の斜視図である。
【0024】
まず、異種金属の継手材料として例えばアルミニウム(Al)からなる平板状の継手材料1と、例えばニオブ(Nb)からなる継手材料2のスカーフ継手について検討する。
【0025】
二次元異種材料の接合界面端部における平面問題に関しては応力特異性を決める特性方程式が既に導かれている。そこで、本発明者等がこの特性方程式を用いて図1に示すAlとNbとの組合せによるスカーフ継手の接合界面端部の応力特異性を解析したところ、スカーフ継手の接合界面両端部A,Bにおける自由縁応力特異性は平板の両端部2ヶ所で生じていることが分かった。
【0026】
すなわち、図1において、スカーフ継手の接合界面両端部A,Bの自由縁3と接合界面4を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度θ1が0°から180°まで変化した場合の平板の両端部における応力特異性を解析した。ここでは、2ヶ所の接合界面端部における応力特異性を示す指数pを摂動法により計算し、応力特異性を求めた。
【0027】
図2は、その解析結果について縦軸を応力特異性指数、横軸をスカーフ角度として示すグラフである。
【0028】
このグラフから明らかなように、AlとNbの接合面端部に関して、A点に注目するとスカーフ角度θ1がθ1≦72°、88°≦θ1≦122°の範囲において、接合界面端部における自由縁応力特異性の消失が認められる。また、B点に注目するとスカーフ角度θ1が58°≦θ1≦92°、θ1≧108°の範囲において、接合界面端部における自由縁応力特異性の消失が認められる。
【0029】
これらのことから、接合界面両端部A,B点共に自由縁応力特異性の消失が認められる範囲は、スカーフ角度θ1が58°≦θ1≦ら72°、88°≦θ1≦92°及び108°≦θ1≦122°であることが分かる。
【0030】
このように本発明の第1の実施形態によれば、異種金属の継手材料(本例ではAlとNb)1,2をスカーフ形状に接合するに際して、その自由縁3と接合界面4を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度θ1を0°〜180°まで変化したときの平板の両縁部における応力特異性を解析して応力特異性消失範囲を上記範囲のいずれかに特定し、そのスカーフ角度θ1で異種金属スカーフ継手を設計するものである。
【0031】
そして、このような設計にもとづく異種金属の継手材料1,2を接合に適しているろう付け、拡散接合レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先溶接等で接合することにより、応力集中を低減させた信頼性の高いスカーフ継手を得ることが可能となる。
【0032】
上記では異種金属スカーフ継手として、AlとNbの接合界面端部の解析結果であるが、AlとCu、Alと炭素鋼、AlとMo、AlとW、Alと炭素鋼、NiとW、NiとTi、CoとMo等異種金属の組合せによってスカーフ継手の接合界面端部における自由縁応力特異性の消失範囲も異なるが、何れにしても上述同様にスカーフ角度θ1が0°から180°まで変化した場合の平板の両端部における応力特異性を解析により求め、その解析結果から接合界面端部における自由縁応力特異性の消失範囲を特定し、これをもとにしてスカーフ継手を設計すれば、応力集中を低減させた信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0033】
図3は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第2の実施形態を示すベーシスベクトル解析モデル図である。
【0034】
このベーシスベクトル解析は、図3に示すように異種金属として例えばアルミニウム(Al)からなる継手材料5と、例えば銅(Cu)からなる継手材料6を接合するスカーフ継手を対象とし、前述同様に応力特異性解析によって求めた応力特異性消失範囲内において、以下述べるような最適化手法を用いて、継手端部の応力が最小となる角度を求めるものである。因みに、このスカーフ継手の板幅がW=5mm、全長が15mmである。
【0035】
前述した応力特異性解析では、応力特異性が消失する範囲を特定可能であるが、応力集中の低減度合い等の定量的な特定はできない。
【0036】
そこで、まず応力特異性解析により、前述同様に応力特異性が消失する範囲を特定した後、例えば節点をグルーピング化して一つの変数として設定し、最適化を実施するベーシスベクトル法を用いることによって、最小応力となる角度を特定する。
【0037】
以下その詳細について述べる。
【0038】
図3は、異種金属としてCuとAlの継手材料5,6を用いたスカーフ継手のA点とB点での破壊発生に大きな影響を及ぼす引張り軸方向成分σxが、自由縁と接合界面のなすAl側の角度θ1によって受ける影響を示している。図3におけるベーシスベクトル解析は、有限要素法モデルの接合面の節点をグルーピング化して(例えば変数1と定義し)、その変数(端部角度)を変えて解析している。
【0039】
但し、引張軸方向応力成分は一様引張応力σnにより無次元化して示す。
【0040】
また、図4は各角度における応力分布を求めた結果を示すグラフで、黒丸が銅側、白丸がアルミ側を示し、黒三角は銅側の両端部、白三角はアルミ側の両端部を示している。
【0041】
このグラフから明らかなように、Cu側もAl側もスカーフ角度θ1の範囲でほぼ同じ応力低下傾向を示すことが確認され、また図4からはθ1=63°,117°においてσx/σn=1.0でA点、B点の応力が一致していることが確認される。このことから、異種金属としてCuとAlを継手材料とするスカーフ継手において、A点とB点で最大の引張応力を示す引張軸方向応力成分σxに注目し、これを最小とする継手端部の最適形状はθ1=63°,117°であることが分かる。
【0042】
そこで、本発明の第2の実施形態では、異種金属としてCuとAlを継手材料5,6とするスカーフ継手を対象に、応力特異性解析により応力特異性消失範囲を限定して、その範囲内で前述したベーシスベクトル解析(最適化解析)を実施し、応力が最小となるスカーフ角度角度θ1を上記角度に特定してスカーフ継手を設計するものである。
【0043】
そして、このような異種金属の継手材料5,6を接合に適しているろう付け、拡散接合レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先溶接等で接合することにより、信頼性の高いスカーフ継手を得ることが可能となる。
【0044】
図5は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第3の実施形態において、異種金属のヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0045】
図5に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、AlとNbのヤング率比が0.65、NiとWのヤング率比が0.495、AlとWのヤング率比が0.182をそれぞれ継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述した応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように55°≦θ1≦65°であることが分かる。
【0046】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばAlとMoではヤング率比が0.224、AlとWではヤング率比が0.182、AlとFeではヤング率比が0.354、AlとCuではヤング率比が0.566、TiとNiではヤング率比が0.618と異なるが、本解析では何れの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0047】
そこで、本発明の第3k実施形態では、異種金属のヤング率比E1/E2が0.7未満の薄板継手材料からなる異種金属スカーフ継手の応力最適スカーフ角度θ1の応力特異性が消失する角度範囲を55°≦θ1≦65°に設計するものである。
【0048】
ここで、異種金属のヤング率比E1/E2が0.7としているのは、異種金属スカーフ継手において、異種金属の組合せとして種々あるが、解析結果からそのほとんどのヤング率比E1/E2が0.7前後にあるためである。
【0049】
このように本発明の第3の実施形態によれば、異種金属の薄板継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0050】
図6は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第4の実施形態において、ヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0051】
図6に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、TiとCuのヤング率比が0.95を継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述した応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°であることが分かる。
【0052】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばCoとMoではヤング率比0.748と異なるが、本解析ではこの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0053】
そこで、本発明の第4の実施形態では、異種金属の継手材料のヤング率比E1/E2を0.7以上とした場合の薄板異種金属スカーフ継手の応力最適スカーフ角度θ1の特異性が消失する角度範囲を3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°に設計するものである。
【0054】
このように本発明の第4の実施形態によれば、継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0055】
図7は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第5の実施形態において、ヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0056】
図7に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、AlとNbのヤング率比が0.65、NiとWのヤング率比が0.495、AlとWのヤング率比が0.182をそれぞれ異種金属の肉厚の継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述した応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように55°≦θ1≦70°であることが分かる。
【0057】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばAlとMoではヤング率比が0.224、AlとWではヤング率比が0.182、AlとFeではヤング率比が0.354、AlとCuではヤング率比が0.566、TiとNiではヤング率比が0.618と異なるが、本解析では何れの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0058】
そこで、本発明の第5の実施形態では、異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2を0.7未満とした場合の板厚異種金属スカーフ継手の応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を55°≦θ1≦70°に設計するものである。
【0059】
このように本発明の第5の実施形態によれば、肉厚の継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0060】
図8は、本発明による異種金属スカーフ継手及びその設計方法を説明するための第6の実施形態において、ヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフである。
【0061】
図8に示すように、異種金属のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)として、TiとCuのヤング率比が0.95を異種金属の肉厚の継手材料とする異種金属スカーフ継手について前述同様に応力特異性を解析し、その結果をもとに応力特異性が消失するスカーフ角度範囲を示すとスカーフ角度がそれぞれ黒塗り部分のように3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°であることが分かる。
【0062】
また、上記とは異なる異種金属継手材料の組合せの場合には、例えばCoとMoではヤング率比0.748と異なるが、本解析ではこの組合せにおいても自由縁応力特異性の消失領域が存在することが確認された。
【0063】
そこで、本発明の第6の実施形態では、異種金属のヤング率比E1/E2が0.7以上の肉厚継手材料からなる異種金属スカーフ継手の応力最適スカーフ角度θ1の特異性が消失する角度範囲を3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°に設計するものである。
【0064】
このように本発明の第6の実施形態によれば、継手材料のヤング率比と応力特異性消失範囲を関連付けることによって、応力低減角度を用いた異種金属スカーフ継手の設計が可能となり、信頼性の高いスカーフ継手を得ることができる。
【0065】
なお、薄肉、厚肉の定義として、部材の縦(L1)、横(L2)、板厚(t)とした場合、有限要素法で区別する一つの目安として、L1/t≧20、かつL2/t≦20を肉厚とした。
【0066】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、異種金属スカーフ継手の角度を応力特異性解析及び最適化解析によって求め、その角度から応力集中が緩和する角度を選定して継手設計することにより、強度上信頼性の高い異種金属スカーフ継手及びその設計方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を説明するためのスカーフ継手形状を示す斜視図。
【図2】同実施形態において、応力特異性解析結果を示すグラフ。
【図3】本発明の第2の実施形態を説明するためのスカーフ継手を示すベーシスベクトル解析モデル図。
【図4】同実施形態において、最適化解析結果を示すグラフ。
【図5】本発明の第3の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【図6】本発明の第4の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【図7】本発明の第5の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【図8】本発明の第6の実施形態を説明するためのヤング率比と応力特異性が消失する角度との関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1…Alからなる継手材料
2…Nbからなる継手材料
3…自由縁
4…接合界面
5…Alからなる継手材料
6…Cuからなる継手材料
A,B…スカーフ継手の接合界面端部
Claims (10)
- 異種金属の継手材料をスカーフ形状に接合してなるスカーフ継手において、継手の接合界面の応力集中低減条件として、継手の接合界面両端部の自由縁と接合界面を直線とし、これらが交差する点のスカーフ角度を異種金属接合界面端部の応力特異性解析により求めて応力特異性消失スカーフ角度範囲を限定し、その範囲内で継手設計を行なうことを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、応力特異性解析によって求めた応力特異性消失範囲内のスカーフ角度から、最適化手法を用いて、異種金属接合界面端部の応力が最小となる角度を求めることを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の薄板継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7未満とした場合のスカーフ角度θ1を55°≦θ1≦65°として設計することを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の薄板継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7以上とした場合のスカーフ角度θ1を3°≦θ1≦25°、44°≦θ1≦90°として設計することを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7未満とした場合のスカーフ角度θ1を55°≦θ1≦70°として設計することを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の肉厚継手材料のヤング率比E1/E2(E1:低ヤング率材料のヤング率、E2:高ヤング率材料のヤング率)を0.7以上とした場合のスカーフ角度θ1を3°≦θ1≦15°、53°≦θ1≦90°として設計することを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、ろう付け、拡散接合、レーザ溶接、電子ビーム溶接、狭開先アーク溶接の何れかにより接合されることを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項3又は請求項5記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、アルミニウムを第1の金属材料とし、タングステン、モリブデン、炭素鋼、銅、ニオブのいずれかを第2の金属材料として組合せるか、又はニッケルを第1の金属材料とし、タングステン又はチタンを第2の金属材料として組合せたことを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項4又は請求項6記載の異種金属スカーフ継手の設計方法において、前記異種金属の継手材料は、コバルトを第1の金属材料とし、モリブデンを第2の金属材料として組合せるか、又はチタンを第1の金属材料とし、銅を第2の金属材料として組合せたことを特徴とする異種金属スカーフ継手の設計方法。
- 請求項1乃至請求項9の何れかに記載の設計方法により得られた異種金属スカーフ継手を有する部材。
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Cited By (2)
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WO2012105161A1 (ja) * | 2011-01-31 | 2012-08-09 | 三洋電機株式会社 | 異種金属接合体および端子接続部材 |
CN107639343A (zh) * | 2016-07-21 | 2018-01-30 | 松下知识产权经营株式会社 | 焊接金属部件和具有该焊接金属部件的电池 |
-
2003
- 2003-02-24 JP JP2003046235A patent/JP2004255388A/ja active Pending
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