JP2004253625A - 半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム及び該粘着フィルムを用いる半導体ウェハの保護方法 - Google Patents
半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム及び該粘着フィルムを用いる半導体ウェハの保護方法 Download PDFInfo
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Abstract
【解決課題】ワックスで支持基板を固定して、半導体ウェハを支持した後、機械的研削、破砕層除去工程により厚み150μm以下に薄層化し、支持基板剥離、洗浄する半導体ウェハの回路非形成面に対する加工工程において、半導体ウェハの破損防止に有用である半導体ウェハの保護方法を提供する。
【解決手段】基材フィルムの少なくとも1層が、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムであり、該基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された粘着フィルムを用いることを特徴とする半導体ウェハ保護方法。
【選択図】なし
【解決手段】基材フィルムの少なくとも1層が、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムであり、該基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された粘着フィルムを用いることを特徴とする半導体ウェハ保護方法。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム及び該粘着フィルムを用いる半導体ウェハの保護方法に関する。詳しくは、半導体ウェハの回路非形成面の加工工程における半導体ウェハの破損防止に有用で、廃液処理の削減、生産性向上、生産コストの削減を図り得る半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム及び該粘着フィルムを用いる半導体ウェハの保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェハを加工する工程は、半導体ウェハの回路形成面に半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを貼り付ける工程、半導体ウェハの回路非形成面を加工する工程、半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを剥離する工程、半導体ウェハを分割切断するダイシング工程を経た後、半導体チップを外部保護の為に樹脂で封止するモールド工程等により構成されている。
【0003】
従来、半導体ウェハの回路非形成面を加工する工程においては、半導体ウェハの回路非形成面を機械的に研削する工程後の半導体ウェハの厚さが200μm以下になると、機械的研削により生じた破砕層に起因して半導体ウェハ自身の強度が低下し、微小な応力により半導体ウェハを破損してしまう恐れがあった。そこで、半導体ウェハの厚さが200μm以下になる場合、半導体ウェハの回路非形成面を機械的に研削する工程に次いで、研削後の半導体ウェハの回路非形成面に生じた破砕層を除去するために化学的な処理を加える工程が実施されている。
【0004】
化学的な処理を加えるエッチング工程としては、弗酸、硝酸、酢酸溶液の混酸液を用いたウェットエッチング工程が実施されている。ウェットエッチング工程には、半導体ウェハの回路形成面を下向きに、半導体ウェハの回路非形成面を上向きにした状態で、高速回転させながらエッチング液を上方から滴下して半導体ウェハの回路非形成面を加工するスピン方式、混酸の入った液槽に浸漬させて半導体ウェハの回路非形成面を加工するディッピング方式とがある。 また、シリコンよりも脆いガリウム−ヒ素等の化合物半導体ウェハは、半導体ウェハの回路非形成面の研削、破砕層除去時、及び搬送時に破損しやすい。そこでワックスをウェハ表面を介して、ガラス等の基板に固定して、半導体ウェハを支持した後に、基板、ワックスを介して半導体ウェハを加工機に固定し、半導体ウェハの回路非形成面を薄肉加工する手法が実施されている。用いられるワックスの成分は、ワックス分、樹脂分及び添加剤より構成されている。研削、破砕層除去工程の後、ワックスをアルカリ性水溶性洗剤、有機溶剤等で、加熱、超音波、揺動等を用いて溶解させ、ガラス基板と半導体ウェハとを剥離し、半導体ウェハの回路形成面の洗浄が行なわれている。しかし、半導体ウェハを支持していたガラス基板の剥離後に洗浄を行うため、半導体ウェハの厚さが150μm以下である場合、洗浄中に半導体ウェハの破損することがある。また環境面で、半導体ウェハ回路形成面のワックス除去の洗浄時に生じる廃液の、処理の際の取り扱いが懸念されている。
【0005】
近年益々、半導体チップの薄層化の要求が高まっており、厚みが20〜100μm程度のチップも望まれている。その中で半導体ウェハの製造プロセスも複雑化してきているが、このように薄層化された半導体ウェハであっても破損することなく、簡易的且つ効率的な製造プロセスが望まれている。また、環境面に於いても、廃液処理の取り扱いが懸念されており、廃液の出来るだけ発生しないプロセスが望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ワックスで支持基板を固定して、半導体ウェハを支持した後、機械的研削、破砕層除去工程により厚み150μm以下に薄層化し、支持基板剥離、洗浄する半導体ウェハの回路非形成面に対する加工工程において、半導体ウェハの薄層化加工に伴う半導体ウェハの強度低下に起因する半導体ウェハの破損防止に有用である半導体ウェハの保護方法、及びその際用いる半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、溶解させたワックスで、半導体ウェハを支持基板に固定して、半導体ウェハを支持した後に、支持基板を介して半導体ウェハを研削機に固定し、半導体ウェハの回路非形成面を研削、砕層除去後、ワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離する工程を実施する際の半導体ウェハの保護方法において、薄層化に伴う半導体ウェハの強度低下を考慮して、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを用いることが有用であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、 本発明は、基材フィルムの片表面に粘着剤層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを、半導体ウェハの回路形成面に貼着する第一工程、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムにワックスを塗布した後、半導体ウェハを支持する支持基板に固定する第二工程、前記支持基板を介して半導体ウェハを研削または研磨機に固定し、半導体ウェハ裏面を加工する第三工程、ワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離させる第四工程を順次実施する半導体ウェハの回路非形成面の加工工程における半導体ウェハの保護方法であって、基材フィルムの少なくとも1層が、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムであり、該基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを用いることを特徴とする半導体ウェハ保護方法である。
【0009】
本発明に係わる半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムは、基材フィルムの少なくとも1層に、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムを用い、基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムである。
【0010】
かかる性能を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを用いることにより、半導体ウェハの回路形成面を加工する一連の工程において半導体ウエハの厚みが100μm以下に薄層化された場合であっても、これら一連の工程における半導体ウェハの破損などを防止できる効果を奏する。更に、この半導体ウェハ保護方法は、ワックス除去が目的である洗浄工程を省略することができ、簡易的な製造プロセスを可能とする。また環境面に於いても、洗浄工程を省略することで、廃液が発生しない利点がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。先ず、本発明に係わる半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム(以下、粘着フィルムという)について説明する。本発明の粘着フィルムは、基材フィルムの片面に粘着剤層を形成することにより製造される。通常、粘着剤層の汚染を防止するため、粘着剤層の表面には剥離フィルムが貼付される。基材フィルムに粘着剤層を形成する方法としては、粘着剤層の表面を介して、半導体ウェハの回路形成面(以下、ウェハ表面という)に貼着することを考慮し、粘着剤層による半導体ウエハ表面の汚染防止を図るために、剥離フィルムの片面に、粘着剤塗布液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成した後、得られた粘着剤層を基材フィルムに転写する方法が好ましい。
【0012】
本発明の粘着フィルムに用いる基材フィルムは、少なくとも1層に融点が少なくとも200℃、更には250℃以上、厚みが10〜200μm、更には50〜200μmである樹脂フィルムを用いることが好ましい。半導体ウェハの回路非形成面(以下、ウェハ裏面という)を研削した後のウェハ裏面に生じた破砕層を除去する工程、例えば、ウェットエッチング工程、プラズマエッチング工程及びポリッシング工程等では、エッチング液と半導体ウェハとの反応に伴う発熱、プラズマ発生に伴う系内の高温、高真空状態、及びポリッシング剤による研磨熱など、発熱を伴う工程を経ることを考慮するとき、これらの工程において基材フィルムが熱変形するのを防止することが重要である。かかる観点から、基材フィルムの少なくとも1層(好ましくは最外層)は、プロセス中の発生熱と系内の推定温度から融点が少なくとも200℃、且つ、半導体ウェハの薄層化に伴い、ある程度剛性を有する樹脂であることが好ましい。通常、基材フィルムを形成する樹脂の融点は、200℃〜300℃程度である。また、剛性の観点から融点を有さない硬化性ポリイミドフィルムも使用できる。基材フィルムの厚みは、粘着力に影響を及ぼす。薄すぎると粘着力が高くなり、剥離不良、糊残りなどが発生しやすくなる。逆に、厚すぎると粘着力が低くなり、ウェハ表面への密着性が低下し、また、粘着フィルムのカット性が悪くなる。かかる点を考慮すると、基材フィルムの総厚みは10〜300μm、更には50〜300μmであることが好ましい。
【0013】
基材フィルムを形成する好ましい樹脂を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド等、及びこれらの混合樹脂が挙げられる。代表的市販品として、帝人(株)製、商品名:テオネックス、三菱化学(株)製、商品名:トーロン4203L、ICI社製、商品名:45G、ICI社製、商品名:200P、東レ社製、商品名トレリナ等が挙げられる。
【0014】
本発明に係わる粘着フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤は、半導体ウェハの裏面に生じた破砕層を除去する工程での温度条件下でも、粘着剤として充分機能するもので、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤が好ましい。その厚みは3〜100μm、更には10〜80μmであることが好ましい。ウェハ表面から粘着フィルムを剥離する時には、半導体ウェハの表面を汚染していないことが好ましい。
【0015】
特に、ウェットエッチング、プラズマエッチング及びポリッシングといった裏面処理プロセスにより高温に曝された後、粘着力が大きくなり過ぎないように、また、ウエハ表面の汚染が増加しないように、反応性官能基を有する架橋剤、過酸化物、放射線等により高密度に架橋されたものであることが好ましい。更に、粘着力の上昇に伴う剥離不良及び糊残りが発生しないことが好ましい。その為には、150℃における貯蔵弾性率が1×105Pa以上、更には3×105Pa以上が好ましい。更に、200℃における貯蔵弾性率は1×105Pa以上、更には3×105Pa以上がより好ましい。通常、150℃における貯蔵弾性率の上限は1×107Pa程度である。また、200℃における貯蔵弾性率の上限は1×107Pa程度である。
【0016】
上記特性を有する粘着剤層を形成する方法として、アクリル系粘着剤を用いる方法を例示する。粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)、架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)、2官能性モノマー単位(C)をそれぞれ特定量含む乳化重合共重合体のアクリル系粘着剤、並びに、凝集力を上げたり粘着力を調整するための、官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤を含む溶液またはエマルション液を用いることにより形成される。溶液で使用する場合は、乳化重合で得られたエマルション液からアクリル系粘着剤を塩析等で分離してから、溶剤等で再溶解して使用する。アクリル系粘着剤は、分子量が充分に大きく、溶剤への溶解性が低く、若しくは溶解しない場合が多いので、コスト的な観点から鑑みても、エマルション液のまま使用することが好ましい。
【0017】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、又はこれらの混合物を主モノマー〔以下、モノマー(A)〕として、架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られるものが挙げられる。
【0018】
モノマー(A)としては、炭素数1〜12程度のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステル〔以下、これらの総称して(メタ)アクリル酸アルキルエステルという〕が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。モノマー(A)の使用量は、粘着剤の原料となる全モノマーの総量中に、通常、10〜98.9重量%の範囲で含ませることが好ましい。更に好ましくは85〜95重量%である。モノマー(A)の使用量をかかる範囲とすることにより、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)10〜98.9重量%、好ましくは85〜95重量%を含むポリマーが得られる。
【0019】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)を形成するモノマー(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらの一種を上記主モノマーと共重合させてもよいし、また2種以上を共重合させてもよい。架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(B)の使用量は、粘着剤の原料となる全モノマーの総量中に、通常、1〜40重量%の範囲で含まれていることが好ましい。更に好ましくは、1〜10重量%である。而して、モノマー組成とほぼ等しい組成の構成単位(B)を有するポリマーが得られる。
【0021】
更に、粘着剤層が半導体ウェハ裏面の加工工程での半導体ウェハの裏面加工時、ウェハ裏面のエッチング処理時の温度条件下でも、粘着剤として充分機能するように、粘着力や剥離性を調整する方策として、エマルション粒子の凝集力を維持する為に粒子バルクの架橋方式も考慮することが好ましい。
【0022】
エマルション粒子に対しては、150℃において、1×105Pa以上の貯蔵弾性率を有するように、2官能モノマー(C)を共重合することによって凝集力を維持するような架橋方式を採用することが好ましい。良好に共重合するモノマーとして、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル等が挙げられる。その他のものとして、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型であるもの〔日本油脂(株)製、商品名;PDP−200、同PDP−400、同ADP−200、同ADP−400〕、テトラメチレングリコール型であるもの〔日本油脂(株)製、商品名;ADT‐250、同ADT‐850〕及びこれらの混合型であるもの〔日本油脂(株)製、商品名:ADET‐1800、同ADPT−4000〕等が挙げられる。
2官能モノマー(C)を乳化共重合する場合、その使用量は、全モノマー中に0.1〜30重量%含むことが好ましい。更に好ましくは0.1〜5重量%である。而して、モノマー組成とほぼ等しい組成の構成単位(C)を有するポリマーが得られる。
【0023】
上記粘着剤を構成する主モノマー及び架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの他に、界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)を共重合してもよい。重合性界面活性剤は、主モノマー及びコモノマーと共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。重合性界面活性剤を用いて乳化重合したアクリル系粘着剤を用いた場合には、通常界面活性剤によるウェハ表面に対する汚染が生じない。また、粘着剤層に起因する僅かな汚染が生じた場合においても、ウェハ表面を水洗することにより容易に除去することが可能となる。
【0024】
このような重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN−10、同RN−20、同RN−30、同RN−50等〕、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS−10、同HS−20等〕、及び分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系〔花王(株)製;商品名:ラテムルS−120A、同S−180A等〕等が挙げられる。更に必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーを共重合してもよい。
【0025】
アクリル系粘着剤の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。粘着剤の製造コスト、モノマーの官能基の影響及び半導体ウェハ表面へのイオンの影響等を等慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−ターシャル−ブチルパーオキサイド、ジ−ターシャル−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0026】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。半導体ウェハ表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が更に好ましい。4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0027】
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤は、アクリル系粘着剤が有する官能基と反応させ、粘着力及び凝集力を調整するために用いる。架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、N,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンの4官能性エポキシ系化合物及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上に対して併用してもよい。
【0028】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数がアクリル系粘着剤中の官能基数よりも多くならない程度の範囲で含有する。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。好ましい含有量は、アクリル系粘着剤100重量部に対し、架橋剤0.1〜15重量部である。含有量が少ない場合、粘着剤層の凝集力が不十分となり、150〜200℃において、弾性率が1×105Pa未満になり、耐熱特性が欠如する為、粘着剤層に起因する糊残りを生じ易くなったり、粘着力が高くなり、粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に剥離トラブルが発生したり、ウェハを完全に破損したりする場合がある。含有量が多い場合、粘着剤層とウェハ表面との密着力が弱くなり、ウェハ裏面の研削工程中にウェハ表面と粘着剤層との間に水や研削屑が浸入してウェハを破損したり、研削屑によるウェハ表面の汚染が生じたりすることがある。
【0029】
本発明に用いる粘着剤塗布液には、上記の特定の2官能モノマーを共重合したアクリル系粘着剤、架橋剤の他に粘着特性を調整するためにロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等を、本発明の目的に影響しない程度に適宜含有してもよい。また、塗布液がエマルション液である場合は、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の造膜助剤を本発明の目的に影響しない程度に適宜添加してよい。造膜助剤として使用されるジエチレングリコールモノアルキルエーテル及びその誘導体は、粘着剤層中に多量に含有した場合、洗浄が不可能となる程度のウェハ表面の汚染を招くことがあることを考慮すれば、粘着剤塗工後の乾燥時の温度で揮発するものを使用し、粘着剤層中への残存量を低くすることが好ましい。
【0030】
本発明の粘着フィルムの粘着力は、半導体ウェハの加工条件、ウェハの直径、裏面研削後のウェハの厚み、ウェハ裏面のエッチング処理時の発熱温度等を勘案して適宜調整できるが、粘着力が低すぎるとウェハ表面への粘着フィルムの貼着が困難となったり、或いは粘着フィルムによる保護性能が不十分となり、ウェハが破損したり、ウェハ表面に研削屑等による汚染が生じたりする傾向にある。また、粘着力が高すぎると、ウェハ加工後に粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に、剥離トラブルが発生する等、剥離作業性が低下したり、ウェハを破損したりすることがある。通常、SUS304−BA板に対する粘着力に換算して5〜500g/25mm、好ましくは10〜300g/25mmである。
【0031】
基材フィルムまたは剥離フィルムに粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えばロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後に、半導体ウェハの表面保護粘着フィルムを40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0032】
本発明における粘着フィルムの製造方法は、上記の通りであるが、半導体ウェハ表面の汚染防止の観点から、基材フィルム、剥離フィルム、粘着剤主剤等全ての原料資材の製造環境、粘着剤塗布液の調製、保存、塗布及び乾燥環境は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
本発明に係わる半導体ウェハ保護方法を適用した半導体ウエハの製造方法は、先ず、基材フィルムの片表面に粘着剤層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを、半導体ウェハの回路形成面に貼着する第一工程、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムにワックスを塗布した後、半導体ウェハを支持する支持基板に固定する第二工程、前記支持基板、ワックス、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを介して半導体ウェハを研削または研磨機に固定し、半導体ウェハ裏面を加工する第三工程、ワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離させる第四工程を順次実施する。
【0033】
以降の工程は特に制限はないが、例えば、粘着フィルムから半導体ウェハを剥離する工程、半導体ウェハを分割切断するダイシング工程、半導体チップを外部保護の為に樹脂で封止するモールド工程等を順次実施する半導体ウェハの製造方法が挙げられる。
以下、本発明の半導体ウェハ保護方法について詳細に説明する。
先ず、粘着フィルムの粘着剤層側から剥離フィルムを剥離し、粘着剤層表面を露出させ、その粘着剤層を介して、半導体ウェハの表面に貼着する(第一工程)。貼り付ける際にはエアなどの混入が無いようにすることが重要である。
次いで、ワックスを介して、粘着フィルムが貼付けられた半導体ウェハをガラス基板等の支持基板に貼着する(第二工程)。この際に用いる半導体ウェハを支持する基板としては、例えば、ガラス基板の他には回路非形成のウェハ等が挙げられる。
次いで、半導体ウェハを支持基板を介して、加工機に固定し、半導体ウェハの裏面を加工する(第三工程)。
その後、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持するガラス基板と粘着テープが貼着されている半導体ウェハを剥離(第五工程)、更に粘着テープを半導体ウェハから剥離の後、必要に応じて、半導体ウェハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の処理が施される。
【0034】
裏面加工操作において、半導体ウェハは、研削前の厚みが、通常500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常200〜600μm程度まで研削、薄層化される。本発明を適用することにより、厚みが100μm以下になるまで薄層化することができる。その場合、裏面研削や研磨に引き続いて、半導体ウェハの裏面に生じている破砕層を除去する工程を実施することが好ましい。そのエッチングする厚みは、0.5〜60μm程度である。裏面を研削する前の半導体ウェハの厚みは、半導体ウェハの直径、種類等により適宜決められ、裏面研削後のウェハの厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。本発明を適用することにより薄層化することができる厚みの下限は20μm程度である。
【0035】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ研削は、半導体ウェハと砥石に水をかけて冷却しながら行われる。裏面研削終了後の半導体ウェハ裏面に生じた破砕層の除去としては、ウエットエッチング、プラズマエッチング、ポリッシングなどのプロセスが挙げられる。ウェットエッチング工程、プラズマエッチング工程及びポリッシング工程は、半導体ウェハ裏面に生じた破砕層の除去の他に、半導体ウェハの更なる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液やプラズマ条件及びポリッシング剤は、目的に応じて適宜選択される。
【0036】
半導体ウェハ薄層化後には、80〜200℃で半導体ウェハを加熱し、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持している支持基板と、半導体ウェハを横にスライドさせて剥離する。この際、ウェハ表面は粘着テープで保護されているため、ワックス除去のための洗浄は必要ない。従って、ワックスの成分を含む廃液等は発生しない。また、ワックス除去の洗浄が必要ないため、洗浄中のウェハ破損が生じない。
【0037】
ワックスとしては、液状ワックス〔日化精工(株)製、商品名:スカイリキッド、スペースリキッド、アクアリキッド〕等が挙げられる。ワックスの成分は主に、ワックス分、樹脂分及び添加剤から構成される。ワックス分には、油脂、カルナバ、パラフィン、木ロウ、PEG、PPG、脂肪酸等が用いられ、樹脂分としてはシェラック、ロジン、酢酸ビニル、ナイロン、アクリル等、添加剤は界面活性剤等が用いられている。
半導体ウェハを支持している支持基板剥離後、ウェハ表面より粘着テープの剥離を行う。
【0038】
粘着フィルムを剥離した後のウェハ表面は、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、ウェハ表面の汚染状況により適宜選択されるが、ウェハ表面にワックスの残留がないので、ワックス成分を含む廃液等は発生しない。
本発明の半導体ウェハ保護方法が適用できる半導体ウェハとして、ガリウム−ヒ素、ゲルマニウム、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等の化合物半導体ウェハが挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。以下に示す全ての実施例及び比較例において、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持された環境において粘着剤塗布液の調製及び塗布、半導体シリコンウェハの裏面研削、並びに裏面研削後の破砕層除去テスト等を実施した。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例に示した各種特性値は下記の方法で測定した。
【0040】
1.粘着力測定(g/25mm)
下記に規定した条件以外は、全てJIS Z0237−1991に規定される方法に準じて測定する。23℃の雰囲気下において、実施例または比較例で得られた粘着フィルムをその粘着剤層を介して、5cm×20cmのSUS304−BA板(JIS G4305−1991規定)の表面に貼着し、60分放置する。試料の一端を挟持し、剥離角度180度、剥離速度300mm/min.でSUS304−BA板の表面から試料を剥離する際の応力を測定し、25mm幅に換算する。
【0041】
2.貯蔵弾性率(Pa)
粘着フィルムの粘着剤層の部分を厚さ1mmまで積層することにより粘弾性測定用サンプルを作製する。サンプルサイズを直径8mmの円形に切断し、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RMS−800)を用いて、150℃及び200℃において貯蔵弾性率を測定する。測定周波数は1Hzとし、歪みは0.1〜3%とする。
【0042】
3.汚染性評価
試料用の粘着フィルムをその粘着剤層を介して、半導体シリコンウェハ〔直径:約200mm(8インチ)、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm〕の全表面に貼着し、半導体ウェハの裏面研削及び裏面破砕層除去処理を実施した後、120℃のホットプレート上で1分加熱した。その後、冷却し、粘着フィルムを剥離した後のウェハの表面をレーザーフォーカス顕微鏡(KEYENCE製、形式:VF−7510、VF−7500、VP−ED100)を用いて250倍率で観察する。試料枚数は各裏面破砕層除去処理毎に10枚とする。評価基準は、次の通り。○:糊残り無し、ウェハ表面と粘着フィルム間へのポリッシング時の研磨剤又はケミカルエッチング液の浸入なし、剥離不良なしのものは「○」印で示す。糊残りの発生、剥離不良の発生などが観察された場合は、その枚数を示す。
【0043】
4.半導体ウエハの破損(枚数)
半導体ウェハの裏面研削時、裏面破砕層除去処理時、及び粘着フィルム剥離時におけるウエハの破損枚数を示す。試料枚数は各裏面破砕層除去処理毎に10枚とする。○:ウェハの破損がないものは「○」印で示す。ウェハに破損またはクラックが発生した場合はその枚数を示す。
【0044】
<粘着剤主剤の調製例>
1−1.粘着剤主剤の調製例
重合反応機に脱イオン水150重量部、重合開始剤として4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド〔大塚化学(株)製、商品名:ACVA〕を0.625重量部、モノマー(A)としてアクリル酸−2−エチルヘキシル62.25重量部、アクリル酸−n−ブチル18重量部、及びメタクリル酸メチル12重量部、モノマー(B)としてメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル3重量部、メタクリル酸2重量部、及びアクリルアミド1重量部、モノマー(C)としてポリテトラメチレングリコールジアクリレート〔日本油脂(株)製、商品名:ADT−250〕1重量部、水溶性コモノマーとしてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイドの付加モル数の平均値:約20)の硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕0.75重量部を装入し、攪拌下で70〜72℃において8時間乳化重合を実施し、アクリル系樹脂エマルションを得た。これを9重量%アンモニア水で中和(pH=7.0)し、固形分42.5重量%のアクリル系粘着剤とした。
【0045】
<粘着剤塗布液の調製例>
2−1.粘着剤塗布液の調製
粘着剤主剤の調製例で得られた粘着剤主剤1の100重量部を採取し、さらに9重量%アンモニア水を加えてpH9.5に調整した。次いで、アジリジン系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、商品名:ケミタイトPz−33〕0.8重量部を添加して粘着剤塗布液を得た。
【0046】
<粘着フィルムの調製例>
3−1.粘着フィルムの調製例1(粘着フィルム1)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(融点255℃、フィルム厚み12μm)のコロナ放電処理側と貼り合わせ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム1を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は230g/25mmであった。
【0047】
3−2.粘着フィルムの調製例2(粘着フィルム2)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(融点255℃、フィルム厚み190μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム2を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は30g/25mmであった。
【0048】
3−3.粘着フィルムの調製例3(粘着フィルム3)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンナフタレートフィルム(融点269℃、フィルム厚み100μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム3を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は60g/25mmであった。
【0049】
3−4.粘着フィルムの比較調製例1(粘着フィルム4)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(融点255℃、フィルム厚み6μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム4を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は330g/25mmであった。
【0050】
3−5.粘着フィルムの比較調製例2(粘着フィルム5)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(融点85℃、フィルム厚み120μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム5を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は120g/25mmであった。
【0051】
<粘着フィルムによる半導体ウェハの保護性能>
<裏面加工処理方法及び使用機器>(1)裏面研削とケミカルエッチング:ディスコ社及び日曹エンジニアリング社製、型式:BESTを用いた。(2)ガラス板の固定及び剥離(ホットプレート):アズワン社製:EC−1200Nを用いた。
【0052】
実施例1
粘着フィルム1を集積回路が組み込まれた半導体シリコンウェハ(直径:約200mm(8インチ)、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm)の回路形成面に貼着する。更に120℃で加熱してあるホットプレート上で、溶解したワックスを介して、半導体シリコンウェハとほぼ同一形状のガラス板(厚さ1.0mm)をウェハの回路形成面側に貼付け、評価試料を作成した。評価試料を10枚(セット)作成した。
上記試料10枚について、上記装置を用い、先ず、半導体シリコンウェハの裏面研削を行ってウェハの厚みを70μmとし、更に、ウェハの裏面をケミカルエッチングし、ウェハの厚みを50μmとした。ウェハ薄層化後、120℃で加熱してあるホットプレート上で、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持するガラス基板と半導体ウェハとを剥離させ、続いて粘着フィルムから半導体ウェハを剥離する。
上記裏面加工を実施した際における半導体シリコンウェハの破損及び粘着フィルムの変形に起因した半導体シリコンウェハの割れは発生しなかった。また、粘着フィルムを剥離した後のウェハ表面に糊残り等の汚染は観察されなかった。
【0053】
実施例2〜3
粘着フィルム1に替えて、粘着フィルム2〜3を用いた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウェハ加工を実施して、粘着フィルムの保護性能を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
120℃で加熱してあるホットプレート上で、集積回路が組み込まれた半導体シリコンウェハ(直径:約200mm(8インチ)、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm)の回路形成面に、溶解したワックスを介して、半導体シリコンウェハとほぼ同一形状のガラス板(厚さ1.0mm)を貼付け、評価試料を作成した。評価試料を10枚(セット)作成した。
上記試料10枚について、上記装置を用い、先ず、半導体シリコンウェハの裏面研削を行ってウェハの厚みを70μmとし、更に、ウェハの裏面をケミカルエッチングし、ウェハの厚みを50μmとした。ウェハ薄層化後、120℃で加熱してあるホットプレート上で、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持するガラス基板と半導体ウェハとを剥離させる。続いてウェハ表面に付着したワックスを除去するために、アルカリ水で洗浄を行なった。
上記裏面加工を実施した際、ウェハ表面への汚染は観察されなかったが、ワックス除去を行なう洗浄工程で、半導体シリコンウェハの破損及び割れが発生した。
得られた結果を表1に示す。
【0055】
比較例2〜3
粘着フィルム1に替えて、粘着フィルム4および5を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着フィルムの保護性能を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明に係る半導体ウエハ保護方法は、半導体ウェハの回路形成面を加工する一連の工程において半導体ウエハの厚みが100μm以下に薄層化された場合であっても、これら一連の工程における半導体ウェハの破損などを防止できる効果を奏する。更に、ワックス除去が目的である洗浄工程を省略することができ、簡易的な製造プロセスが可能である。また環境面に於いても、洗浄工程を省略することで、廃液が発生しない利点がある。
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム及び該粘着フィルムを用いる半導体ウェハの保護方法に関する。詳しくは、半導体ウェハの回路非形成面の加工工程における半導体ウェハの破損防止に有用で、廃液処理の削減、生産性向上、生産コストの削減を図り得る半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム及び該粘着フィルムを用いる半導体ウェハの保護方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウェハを加工する工程は、半導体ウェハの回路形成面に半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを貼り付ける工程、半導体ウェハの回路非形成面を加工する工程、半導体ウエハ表面保護用粘着フィルムを剥離する工程、半導体ウェハを分割切断するダイシング工程を経た後、半導体チップを外部保護の為に樹脂で封止するモールド工程等により構成されている。
【0003】
従来、半導体ウェハの回路非形成面を加工する工程においては、半導体ウェハの回路非形成面を機械的に研削する工程後の半導体ウェハの厚さが200μm以下になると、機械的研削により生じた破砕層に起因して半導体ウェハ自身の強度が低下し、微小な応力により半導体ウェハを破損してしまう恐れがあった。そこで、半導体ウェハの厚さが200μm以下になる場合、半導体ウェハの回路非形成面を機械的に研削する工程に次いで、研削後の半導体ウェハの回路非形成面に生じた破砕層を除去するために化学的な処理を加える工程が実施されている。
【0004】
化学的な処理を加えるエッチング工程としては、弗酸、硝酸、酢酸溶液の混酸液を用いたウェットエッチング工程が実施されている。ウェットエッチング工程には、半導体ウェハの回路形成面を下向きに、半導体ウェハの回路非形成面を上向きにした状態で、高速回転させながらエッチング液を上方から滴下して半導体ウェハの回路非形成面を加工するスピン方式、混酸の入った液槽に浸漬させて半導体ウェハの回路非形成面を加工するディッピング方式とがある。 また、シリコンよりも脆いガリウム−ヒ素等の化合物半導体ウェハは、半導体ウェハの回路非形成面の研削、破砕層除去時、及び搬送時に破損しやすい。そこでワックスをウェハ表面を介して、ガラス等の基板に固定して、半導体ウェハを支持した後に、基板、ワックスを介して半導体ウェハを加工機に固定し、半導体ウェハの回路非形成面を薄肉加工する手法が実施されている。用いられるワックスの成分は、ワックス分、樹脂分及び添加剤より構成されている。研削、破砕層除去工程の後、ワックスをアルカリ性水溶性洗剤、有機溶剤等で、加熱、超音波、揺動等を用いて溶解させ、ガラス基板と半導体ウェハとを剥離し、半導体ウェハの回路形成面の洗浄が行なわれている。しかし、半導体ウェハを支持していたガラス基板の剥離後に洗浄を行うため、半導体ウェハの厚さが150μm以下である場合、洗浄中に半導体ウェハの破損することがある。また環境面で、半導体ウェハ回路形成面のワックス除去の洗浄時に生じる廃液の、処理の際の取り扱いが懸念されている。
【0005】
近年益々、半導体チップの薄層化の要求が高まっており、厚みが20〜100μm程度のチップも望まれている。その中で半導体ウェハの製造プロセスも複雑化してきているが、このように薄層化された半導体ウェハであっても破損することなく、簡易的且つ効率的な製造プロセスが望まれている。また、環境面に於いても、廃液処理の取り扱いが懸念されており、廃液の出来るだけ発生しないプロセスが望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題に鑑み、ワックスで支持基板を固定して、半導体ウェハを支持した後、機械的研削、破砕層除去工程により厚み150μm以下に薄層化し、支持基板剥離、洗浄する半導体ウェハの回路非形成面に対する加工工程において、半導体ウェハの薄層化加工に伴う半導体ウェハの強度低下に起因する半導体ウェハの破損防止に有用である半導体ウェハの保護方法、及びその際用いる半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、溶解させたワックスで、半導体ウェハを支持基板に固定して、半導体ウェハを支持した後に、支持基板を介して半導体ウェハを研削機に固定し、半導体ウェハの回路非形成面を研削、砕層除去後、ワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離する工程を実施する際の半導体ウェハの保護方法において、薄層化に伴う半導体ウェハの強度低下を考慮して、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを用いることが有用であることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、 本発明は、基材フィルムの片表面に粘着剤層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを、半導体ウェハの回路形成面に貼着する第一工程、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムにワックスを塗布した後、半導体ウェハを支持する支持基板に固定する第二工程、前記支持基板を介して半導体ウェハを研削または研磨機に固定し、半導体ウェハ裏面を加工する第三工程、ワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離させる第四工程を順次実施する半導体ウェハの回路非形成面の加工工程における半導体ウェハの保護方法であって、基材フィルムの少なくとも1層が、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムであり、該基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを用いることを特徴とする半導体ウェハ保護方法である。
【0009】
本発明に係わる半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムは、基材フィルムの少なくとも1層に、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムを用い、基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムである。
【0010】
かかる性能を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを用いることにより、半導体ウェハの回路形成面を加工する一連の工程において半導体ウエハの厚みが100μm以下に薄層化された場合であっても、これら一連の工程における半導体ウェハの破損などを防止できる効果を奏する。更に、この半導体ウェハ保護方法は、ワックス除去が目的である洗浄工程を省略することができ、簡易的な製造プロセスを可能とする。また環境面に於いても、洗浄工程を省略することで、廃液が発生しない利点がある。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。先ず、本発明に係わる半導体ウェハ表面保護用粘着フィルム(以下、粘着フィルムという)について説明する。本発明の粘着フィルムは、基材フィルムの片面に粘着剤層を形成することにより製造される。通常、粘着剤層の汚染を防止するため、粘着剤層の表面には剥離フィルムが貼付される。基材フィルムに粘着剤層を形成する方法としては、粘着剤層の表面を介して、半導体ウェハの回路形成面(以下、ウェハ表面という)に貼着することを考慮し、粘着剤層による半導体ウエハ表面の汚染防止を図るために、剥離フィルムの片面に、粘着剤塗布液を塗布、乾燥して粘着剤層を形成した後、得られた粘着剤層を基材フィルムに転写する方法が好ましい。
【0012】
本発明の粘着フィルムに用いる基材フィルムは、少なくとも1層に融点が少なくとも200℃、更には250℃以上、厚みが10〜200μm、更には50〜200μmである樹脂フィルムを用いることが好ましい。半導体ウェハの回路非形成面(以下、ウェハ裏面という)を研削した後のウェハ裏面に生じた破砕層を除去する工程、例えば、ウェットエッチング工程、プラズマエッチング工程及びポリッシング工程等では、エッチング液と半導体ウェハとの反応に伴う発熱、プラズマ発生に伴う系内の高温、高真空状態、及びポリッシング剤による研磨熱など、発熱を伴う工程を経ることを考慮するとき、これらの工程において基材フィルムが熱変形するのを防止することが重要である。かかる観点から、基材フィルムの少なくとも1層(好ましくは最外層)は、プロセス中の発生熱と系内の推定温度から融点が少なくとも200℃、且つ、半導体ウェハの薄層化に伴い、ある程度剛性を有する樹脂であることが好ましい。通常、基材フィルムを形成する樹脂の融点は、200℃〜300℃程度である。また、剛性の観点から融点を有さない硬化性ポリイミドフィルムも使用できる。基材フィルムの厚みは、粘着力に影響を及ぼす。薄すぎると粘着力が高くなり、剥離不良、糊残りなどが発生しやすくなる。逆に、厚すぎると粘着力が低くなり、ウェハ表面への密着性が低下し、また、粘着フィルムのカット性が悪くなる。かかる点を考慮すると、基材フィルムの総厚みは10〜300μm、更には50〜300μmであることが好ましい。
【0013】
基材フィルムを形成する好ましい樹脂を例示すると、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド等、及びこれらの混合樹脂が挙げられる。代表的市販品として、帝人(株)製、商品名:テオネックス、三菱化学(株)製、商品名:トーロン4203L、ICI社製、商品名:45G、ICI社製、商品名:200P、東レ社製、商品名トレリナ等が挙げられる。
【0014】
本発明に係わる粘着フィルムの粘着剤層を形成する粘着剤は、半導体ウェハの裏面に生じた破砕層を除去する工程での温度条件下でも、粘着剤として充分機能するもので、アクリル系粘着剤、シリコン系粘着剤が好ましい。その厚みは3〜100μm、更には10〜80μmであることが好ましい。ウェハ表面から粘着フィルムを剥離する時には、半導体ウェハの表面を汚染していないことが好ましい。
【0015】
特に、ウェットエッチング、プラズマエッチング及びポリッシングといった裏面処理プロセスにより高温に曝された後、粘着力が大きくなり過ぎないように、また、ウエハ表面の汚染が増加しないように、反応性官能基を有する架橋剤、過酸化物、放射線等により高密度に架橋されたものであることが好ましい。更に、粘着力の上昇に伴う剥離不良及び糊残りが発生しないことが好ましい。その為には、150℃における貯蔵弾性率が1×105Pa以上、更には3×105Pa以上が好ましい。更に、200℃における貯蔵弾性率は1×105Pa以上、更には3×105Pa以上がより好ましい。通常、150℃における貯蔵弾性率の上限は1×107Pa程度である。また、200℃における貯蔵弾性率の上限は1×107Pa程度である。
【0016】
上記特性を有する粘着剤層を形成する方法として、アクリル系粘着剤を用いる方法を例示する。粘着剤層は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)、架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)、2官能性モノマー単位(C)をそれぞれ特定量含む乳化重合共重合体のアクリル系粘着剤、並びに、凝集力を上げたり粘着力を調整するための、官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤を含む溶液またはエマルション液を用いることにより形成される。溶液で使用する場合は、乳化重合で得られたエマルション液からアクリル系粘着剤を塩析等で分離してから、溶剤等で再溶解して使用する。アクリル系粘着剤は、分子量が充分に大きく、溶剤への溶解性が低く、若しくは溶解しない場合が多いので、コスト的な観点から鑑みても、エマルション液のまま使用することが好ましい。
【0017】
アクリル系粘着剤としては、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、又はこれらの混合物を主モノマー〔以下、モノマー(A)〕として、架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーを含むモノマー混合物を共重合して得られるものが挙げられる。
【0018】
モノマー(A)としては、炭素数1〜12程度のアルキル基を有するアクリル酸アルキルエステル又はメタアクリル酸アルキルエステル〔以下、これらの総称して(メタ)アクリル酸アルキルエステルという〕が挙げられる。好ましくは、炭素数1〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルである。具体的には、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独で使用しても、また、2種以上を混合して使用してもよい。モノマー(A)の使用量は、粘着剤の原料となる全モノマーの総量中に、通常、10〜98.9重量%の範囲で含ませることが好ましい。更に好ましくは85〜95重量%である。モノマー(A)の使用量をかかる範囲とすることにより、(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー単位(A)10〜98.9重量%、好ましくは85〜95重量%を含むポリマーが得られる。
【0019】
架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー単位(B)を形成するモノマー(B)としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、メサコン酸モノアルキルエステル、シトラコン酸モノアルキルエステル、フマル酸モノアルキルエステル、マレイン酸モノアルキルエステル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド、ターシャル−ブチルアミノエチルアクリレート、ターシャル−ブチルアミノエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0020】
好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、メタクリルアミド等である。これらの一種を上記主モノマーと共重合させてもよいし、また2種以上を共重合させてもよい。架橋剤と反応し得る官能基を有するモノマー(B)の使用量は、粘着剤の原料となる全モノマーの総量中に、通常、1〜40重量%の範囲で含まれていることが好ましい。更に好ましくは、1〜10重量%である。而して、モノマー組成とほぼ等しい組成の構成単位(B)を有するポリマーが得られる。
【0021】
更に、粘着剤層が半導体ウェハ裏面の加工工程での半導体ウェハの裏面加工時、ウェハ裏面のエッチング処理時の温度条件下でも、粘着剤として充分機能するように、粘着力や剥離性を調整する方策として、エマルション粒子の凝集力を維持する為に粒子バルクの架橋方式も考慮することが好ましい。
【0022】
エマルション粒子に対しては、150℃において、1×105Pa以上の貯蔵弾性率を有するように、2官能モノマー(C)を共重合することによって凝集力を維持するような架橋方式を採用することが好ましい。良好に共重合するモノマーとして、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、ジビニルベンゼン、メタクリル酸ビニル、アクリル酸ビニル等が挙げられる。その他のものとして、例えば、両末端がジアクリレートまたはジメタクリレートで主鎖の構造がプロピレングリコール型であるもの〔日本油脂(株)製、商品名;PDP−200、同PDP−400、同ADP−200、同ADP−400〕、テトラメチレングリコール型であるもの〔日本油脂(株)製、商品名;ADT‐250、同ADT‐850〕及びこれらの混合型であるもの〔日本油脂(株)製、商品名:ADET‐1800、同ADPT−4000〕等が挙げられる。
2官能モノマー(C)を乳化共重合する場合、その使用量は、全モノマー中に0.1〜30重量%含むことが好ましい。更に好ましくは0.1〜5重量%である。而して、モノマー組成とほぼ等しい組成の構成単位(C)を有するポリマーが得られる。
【0023】
上記粘着剤を構成する主モノマー及び架橋剤と反応し得る官能基を有するコモノマーの他に、界面活性剤としての性質を有する特定のコモノマー(以下、重合性界面活性剤と称する)を共重合してもよい。重合性界面活性剤は、主モノマー及びコモノマーと共重合する性質を有すると共に、乳化重合する場合には乳化剤としての作用を有する。重合性界面活性剤を用いて乳化重合したアクリル系粘着剤を用いた場合には、通常界面活性剤によるウェハ表面に対する汚染が生じない。また、粘着剤層に起因する僅かな汚染が生じた場合においても、ウェハ表面を水洗することにより容易に除去することが可能となる。
【0024】
このような重合性界面活性剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルのベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンRN−10、同RN−20、同RN−30、同RN−50等〕、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルの硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製;商品名:アクアロンHS−10、同HS−20等〕、及び分子内に重合性二重結合を持つ、スルホコハク酸ジエステル系〔花王(株)製;商品名:ラテムルS−120A、同S−180A等〕等が挙げられる。更に必要に応じて、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレン等の重合性2重結合を有するモノマーを共重合してもよい。
【0025】
アクリル系粘着剤の重合反応機構としては、ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合等が挙げられる。粘着剤の製造コスト、モノマーの官能基の影響及び半導体ウェハ表面へのイオンの影響等を等慮すればラジカル重合によって重合することが好ましい。ラジカル重合反応によって重合する際、ラジカル重合開始剤として、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−ターシャル−ブチルパーオキサイド、ジ−ターシャル−アミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等のアゾ化合物が挙げられる。
【0026】
乳化重合法により重合する場合には、これらのラジカル重合開始剤の中で、水溶性の過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の無機過酸化物、同じく水溶性の4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を持ったアゾ化合物が好ましい。半導体ウェハ表面へのイオンの影響を考慮すれば、過硫酸アンモニウム、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が更に好ましい。4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド等の分子内にカルボキシル基を有するアゾ化合物が特に好ましい。
【0027】
架橋性の官能基を1分子中に2個以上有する架橋剤は、アクリル系粘着剤が有する官能基と反応させ、粘着力及び凝集力を調整するために用いる。架橋剤としては、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、レソルシンジグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパンのトルエンジイソシアネート3付加物、ポリイソシアネート等のイソシアネート系化合物、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、N,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−(2−メチルアジリジン)プロピオネート等のアジリジン系化合物、N,N,N’,N’−テトラグリシジルm−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサンの4官能性エポキシ系化合物及びヘキサメトキシメチロールメラミン等のメラミン系化合物が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上に対して併用してもよい。
【0028】
架橋剤の含有量は、通常、架橋剤中の官能基数がアクリル系粘着剤中の官能基数よりも多くならない程度の範囲で含有する。しかし、架橋反応で新たに官能基が生じる場合や、架橋反応が遅い場合等、必要に応じて過剰に含有してもよい。好ましい含有量は、アクリル系粘着剤100重量部に対し、架橋剤0.1〜15重量部である。含有量が少ない場合、粘着剤層の凝集力が不十分となり、150〜200℃において、弾性率が1×105Pa未満になり、耐熱特性が欠如する為、粘着剤層に起因する糊残りを生じ易くなったり、粘着力が高くなり、粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に剥離トラブルが発生したり、ウェハを完全に破損したりする場合がある。含有量が多い場合、粘着剤層とウェハ表面との密着力が弱くなり、ウェハ裏面の研削工程中にウェハ表面と粘着剤層との間に水や研削屑が浸入してウェハを破損したり、研削屑によるウェハ表面の汚染が生じたりすることがある。
【0029】
本発明に用いる粘着剤塗布液には、上記の特定の2官能モノマーを共重合したアクリル系粘着剤、架橋剤の他に粘着特性を調整するためにロジン系、テルペン樹脂系等のタッキファイヤー、各種界面活性剤等を、本発明の目的に影響しない程度に適宜含有してもよい。また、塗布液がエマルション液である場合は、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル等の造膜助剤を本発明の目的に影響しない程度に適宜添加してよい。造膜助剤として使用されるジエチレングリコールモノアルキルエーテル及びその誘導体は、粘着剤層中に多量に含有した場合、洗浄が不可能となる程度のウェハ表面の汚染を招くことがあることを考慮すれば、粘着剤塗工後の乾燥時の温度で揮発するものを使用し、粘着剤層中への残存量を低くすることが好ましい。
【0030】
本発明の粘着フィルムの粘着力は、半導体ウェハの加工条件、ウェハの直径、裏面研削後のウェハの厚み、ウェハ裏面のエッチング処理時の発熱温度等を勘案して適宜調整できるが、粘着力が低すぎるとウェハ表面への粘着フィルムの貼着が困難となったり、或いは粘着フィルムによる保護性能が不十分となり、ウェハが破損したり、ウェハ表面に研削屑等による汚染が生じたりする傾向にある。また、粘着力が高すぎると、ウェハ加工後に粘着フィルムをウェハ表面から剥離する際に、剥離トラブルが発生する等、剥離作業性が低下したり、ウェハを破損したりすることがある。通常、SUS304−BA板に対する粘着力に換算して5〜500g/25mm、好ましくは10〜300g/25mmである。
【0031】
基材フィルムまたは剥離フィルムに粘着剤塗布液を塗布する方法としては、従来公知の塗布方法、例えばロールコーター法、リバースロールコーター法、グラビアロール法、バーコート法、コンマコーター法、ダイコーター法等が採用できる。塗布された粘着剤の乾燥条件には特に制限はないが、一般的には、80〜200℃の温度範囲において10秒〜10分間乾燥することが好ましい。更に好ましくは、80〜170℃において15秒〜5分間乾燥する。架橋剤と粘着剤との架橋反応を十分に促進させるために、粘着剤塗布液の乾燥が終了した後に、半導体ウェハの表面保護粘着フィルムを40〜80℃において5〜300時間程度加熱してもよい。
【0032】
本発明における粘着フィルムの製造方法は、上記の通りであるが、半導体ウェハ表面の汚染防止の観点から、基材フィルム、剥離フィルム、粘着剤主剤等全ての原料資材の製造環境、粘着剤塗布液の調製、保存、塗布及び乾燥環境は、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持されていることが好ましい。
本発明に係わる半導体ウェハ保護方法を適用した半導体ウエハの製造方法は、先ず、基材フィルムの片表面に粘着剤層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを、半導体ウェハの回路形成面に貼着する第一工程、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムにワックスを塗布した後、半導体ウェハを支持する支持基板に固定する第二工程、前記支持基板、ワックス、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを介して半導体ウェハを研削または研磨機に固定し、半導体ウェハ裏面を加工する第三工程、ワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離させる第四工程を順次実施する。
【0033】
以降の工程は特に制限はないが、例えば、粘着フィルムから半導体ウェハを剥離する工程、半導体ウェハを分割切断するダイシング工程、半導体チップを外部保護の為に樹脂で封止するモールド工程等を順次実施する半導体ウェハの製造方法が挙げられる。
以下、本発明の半導体ウェハ保護方法について詳細に説明する。
先ず、粘着フィルムの粘着剤層側から剥離フィルムを剥離し、粘着剤層表面を露出させ、その粘着剤層を介して、半導体ウェハの表面に貼着する(第一工程)。貼り付ける際にはエアなどの混入が無いようにすることが重要である。
次いで、ワックスを介して、粘着フィルムが貼付けられた半導体ウェハをガラス基板等の支持基板に貼着する(第二工程)。この際に用いる半導体ウェハを支持する基板としては、例えば、ガラス基板の他には回路非形成のウェハ等が挙げられる。
次いで、半導体ウェハを支持基板を介して、加工機に固定し、半導体ウェハの裏面を加工する(第三工程)。
その後、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持するガラス基板と粘着テープが貼着されている半導体ウェハを剥離(第五工程)、更に粘着テープを半導体ウェハから剥離の後、必要に応じて、半導体ウェハ表面に対して、水洗、プラズマ洗浄等の処理が施される。
【0034】
裏面加工操作において、半導体ウェハは、研削前の厚みが、通常500〜1000μmであるのに対して、半導体チップの種類等に応じ、通常200〜600μm程度まで研削、薄層化される。本発明を適用することにより、厚みが100μm以下になるまで薄層化することができる。その場合、裏面研削や研磨に引き続いて、半導体ウェハの裏面に生じている破砕層を除去する工程を実施することが好ましい。そのエッチングする厚みは、0.5〜60μm程度である。裏面を研削する前の半導体ウェハの厚みは、半導体ウェハの直径、種類等により適宜決められ、裏面研削後のウェハの厚みは、得られるチップのサイズ、回路の種類等により適宜決められる。本発明を適用することにより薄層化することができる厚みの下限は20μm程度である。
【0035】
裏面研削方式としては、スルーフィード方式、インフィード方式等の公知の研削方式が採用される。それぞれ研削は、半導体ウェハと砥石に水をかけて冷却しながら行われる。裏面研削終了後の半導体ウェハ裏面に生じた破砕層の除去としては、ウエットエッチング、プラズマエッチング、ポリッシングなどのプロセスが挙げられる。ウェットエッチング工程、プラズマエッチング工程及びポリッシング工程は、半導体ウェハ裏面に生じた破砕層の除去の他に、半導体ウェハの更なる薄層化、酸化膜等の除去、電極を裏面に形成する際の前処理等を目的として行われる。エッチング液やプラズマ条件及びポリッシング剤は、目的に応じて適宜選択される。
【0036】
半導体ウェハ薄層化後には、80〜200℃で半導体ウェハを加熱し、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持している支持基板と、半導体ウェハを横にスライドさせて剥離する。この際、ウェハ表面は粘着テープで保護されているため、ワックス除去のための洗浄は必要ない。従って、ワックスの成分を含む廃液等は発生しない。また、ワックス除去の洗浄が必要ないため、洗浄中のウェハ破損が生じない。
【0037】
ワックスとしては、液状ワックス〔日化精工(株)製、商品名:スカイリキッド、スペースリキッド、アクアリキッド〕等が挙げられる。ワックスの成分は主に、ワックス分、樹脂分及び添加剤から構成される。ワックス分には、油脂、カルナバ、パラフィン、木ロウ、PEG、PPG、脂肪酸等が用いられ、樹脂分としてはシェラック、ロジン、酢酸ビニル、ナイロン、アクリル等、添加剤は界面活性剤等が用いられている。
半導体ウェハを支持している支持基板剥離後、ウェハ表面より粘着テープの剥離を行う。
【0038】
粘着フィルムを剥離した後のウェハ表面は、必要に応じて洗浄される。洗浄方法としては、水洗浄、溶剤洗浄等の湿式洗浄、プラズマ洗浄等の乾式洗浄等が挙げられる。湿式洗浄の場合、超音波洗浄を併用してもよい。これらの洗浄方法は、ウェハ表面の汚染状況により適宜選択されるが、ウェハ表面にワックスの残留がないので、ワックス成分を含む廃液等は発生しない。
本発明の半導体ウェハ保護方法が適用できる半導体ウェハとして、ガリウム−ヒ素、ゲルマニウム、ガリウム−リン、ガリウム−ヒ素−アルミニウム等の化合物半導体ウェハが挙げられる。
【0039】
【実施例】
以下、実施例を示して本発明についてさらに詳細に説明する。以下に示す全ての実施例及び比較例において、米国連邦規格209bに規定されるクラス1,000以下のクリーン度に維持された環境において粘着剤塗布液の調製及び塗布、半導体シリコンウェハの裏面研削、並びに裏面研削後の破砕層除去テスト等を実施した。本発明はこれら実施例に限定されるものではない。尚、実施例に示した各種特性値は下記の方法で測定した。
【0040】
1.粘着力測定(g/25mm)
下記に規定した条件以外は、全てJIS Z0237−1991に規定される方法に準じて測定する。23℃の雰囲気下において、実施例または比較例で得られた粘着フィルムをその粘着剤層を介して、5cm×20cmのSUS304−BA板(JIS G4305−1991規定)の表面に貼着し、60分放置する。試料の一端を挟持し、剥離角度180度、剥離速度300mm/min.でSUS304−BA板の表面から試料を剥離する際の応力を測定し、25mm幅に換算する。
【0041】
2.貯蔵弾性率(Pa)
粘着フィルムの粘着剤層の部分を厚さ1mmまで積層することにより粘弾性測定用サンプルを作製する。サンプルサイズを直径8mmの円形に切断し、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製:形式:RMS−800)を用いて、150℃及び200℃において貯蔵弾性率を測定する。測定周波数は1Hzとし、歪みは0.1〜3%とする。
【0042】
3.汚染性評価
試料用の粘着フィルムをその粘着剤層を介して、半導体シリコンウェハ〔直径:約200mm(8インチ)、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm〕の全表面に貼着し、半導体ウェハの裏面研削及び裏面破砕層除去処理を実施した後、120℃のホットプレート上で1分加熱した。その後、冷却し、粘着フィルムを剥離した後のウェハの表面をレーザーフォーカス顕微鏡(KEYENCE製、形式:VF−7510、VF−7500、VP−ED100)を用いて250倍率で観察する。試料枚数は各裏面破砕層除去処理毎に10枚とする。評価基準は、次の通り。○:糊残り無し、ウェハ表面と粘着フィルム間へのポリッシング時の研磨剤又はケミカルエッチング液の浸入なし、剥離不良なしのものは「○」印で示す。糊残りの発生、剥離不良の発生などが観察された場合は、その枚数を示す。
【0043】
4.半導体ウエハの破損(枚数)
半導体ウェハの裏面研削時、裏面破砕層除去処理時、及び粘着フィルム剥離時におけるウエハの破損枚数を示す。試料枚数は各裏面破砕層除去処理毎に10枚とする。○:ウェハの破損がないものは「○」印で示す。ウェハに破損またはクラックが発生した場合はその枚数を示す。
【0044】
<粘着剤主剤の調製例>
1−1.粘着剤主剤の調製例
重合反応機に脱イオン水150重量部、重合開始剤として4,4’−アゾビス−4−シアノバレリックアシッド〔大塚化学(株)製、商品名:ACVA〕を0.625重量部、モノマー(A)としてアクリル酸−2−エチルヘキシル62.25重量部、アクリル酸−n−ブチル18重量部、及びメタクリル酸メチル12重量部、モノマー(B)としてメタクリル酸−2−ヒドロキシエチル3重量部、メタクリル酸2重量部、及びアクリルアミド1重量部、モノマー(C)としてポリテトラメチレングリコールジアクリレート〔日本油脂(株)製、商品名:ADT−250〕1重量部、水溶性コモノマーとしてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(エチレンオキサイドの付加モル数の平均値:約20)の硫酸エステルのアンモニウム塩のベンゼン環に重合性の1−プロペニル基を導入したもの〔第一工業製薬(株)製、商品名:アクアロンHS−10〕0.75重量部を装入し、攪拌下で70〜72℃において8時間乳化重合を実施し、アクリル系樹脂エマルションを得た。これを9重量%アンモニア水で中和(pH=7.0)し、固形分42.5重量%のアクリル系粘着剤とした。
【0045】
<粘着剤塗布液の調製例>
2−1.粘着剤塗布液の調製
粘着剤主剤の調製例で得られた粘着剤主剤1の100重量部を採取し、さらに9重量%アンモニア水を加えてpH9.5に調整した。次いで、アジリジン系架橋剤〔日本触媒化学工業(株)製、商品名:ケミタイトPz−33〕0.8重量部を添加して粘着剤塗布液を得た。
【0046】
<粘着フィルムの調製例>
3−1.粘着フィルムの調製例1(粘着フィルム1)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(融点255℃、フィルム厚み12μm)のコロナ放電処理側と貼り合わせ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム1を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は230g/25mmであった。
【0047】
3−2.粘着フィルムの調製例2(粘着フィルム2)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(融点255℃、フィルム厚み190μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム2を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は30g/25mmであった。
【0048】
3−3.粘着フィルムの調製例3(粘着フィルム3)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンナフタレートフィルム(融点269℃、フィルム厚み100μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム3を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は60g/25mmであった。
【0049】
3−4.粘着フィルムの比較調製例1(粘着フィルム4)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したポリエチレンテレフタレートフィルム(融点255℃、フィルム厚み6μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム4を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は330g/25mmであった。
【0050】
3−5.粘着フィルムの比較調製例2(粘着フィルム5)
粘着剤塗布液1を、ロールコーターを用いてポリプロピレンフィルム(剥離フィルム、厚み:50μm)に塗布し、120℃で2分間乾燥して厚み10μmの粘着剤層を設けた。これに基材フィルムとして片面をコロナ放電処理したエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(融点85℃、フィルム厚み120μm)のコロナ放電処理側と貼り合せ、押圧して粘着剤層を転写させた。60℃において48時間加熱した後、室温まで冷却することにより粘着フィルム5を製造した。粘着剤層の貯蔵弾性率は、150℃において1.5×105Pa、200℃において1.3×105Paであった。また、粘着力は120g/25mmであった。
【0051】
<粘着フィルムによる半導体ウェハの保護性能>
<裏面加工処理方法及び使用機器>(1)裏面研削とケミカルエッチング:ディスコ社及び日曹エンジニアリング社製、型式:BESTを用いた。(2)ガラス板の固定及び剥離(ホットプレート):アズワン社製:EC−1200Nを用いた。
【0052】
実施例1
粘着フィルム1を集積回路が組み込まれた半導体シリコンウェハ(直径:約200mm(8インチ)、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm)の回路形成面に貼着する。更に120℃で加熱してあるホットプレート上で、溶解したワックスを介して、半導体シリコンウェハとほぼ同一形状のガラス板(厚さ1.0mm)をウェハの回路形成面側に貼付け、評価試料を作成した。評価試料を10枚(セット)作成した。
上記試料10枚について、上記装置を用い、先ず、半導体シリコンウェハの裏面研削を行ってウェハの厚みを70μmとし、更に、ウェハの裏面をケミカルエッチングし、ウェハの厚みを50μmとした。ウェハ薄層化後、120℃で加熱してあるホットプレート上で、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持するガラス基板と半導体ウェハとを剥離させ、続いて粘着フィルムから半導体ウェハを剥離する。
上記裏面加工を実施した際における半導体シリコンウェハの破損及び粘着フィルムの変形に起因した半導体シリコンウェハの割れは発生しなかった。また、粘着フィルムを剥離した後のウェハ表面に糊残り等の汚染は観察されなかった。
【0053】
実施例2〜3
粘着フィルム1に替えて、粘着フィルム2〜3を用いた以外は、実施例1と同様にして、半導体ウェハ加工を実施して、粘着フィルムの保護性能を評価した。得られた結果を表1に示す。
【0054】
比較例1
120℃で加熱してあるホットプレート上で、集積回路が組み込まれた半導体シリコンウェハ(直径:約200mm(8インチ)、厚み:600μm、スクライブラインの深さ:8μm、スクライブラインの幅:100μm)の回路形成面に、溶解したワックスを介して、半導体シリコンウェハとほぼ同一形状のガラス板(厚さ1.0mm)を貼付け、評価試料を作成した。評価試料を10枚(セット)作成した。
上記試料10枚について、上記装置を用い、先ず、半導体シリコンウェハの裏面研削を行ってウェハの厚みを70μmとし、更に、ウェハの裏面をケミカルエッチングし、ウェハの厚みを50μmとした。ウェハ薄層化後、120℃で加熱してあるホットプレート上で、ワックスを溶解させ、半導体ウェハを支持するガラス基板と半導体ウェハとを剥離させる。続いてウェハ表面に付着したワックスを除去するために、アルカリ水で洗浄を行なった。
上記裏面加工を実施した際、ウェハ表面への汚染は観察されなかったが、ワックス除去を行なう洗浄工程で、半導体シリコンウェハの破損及び割れが発生した。
得られた結果を表1に示す。
【0055】
比較例2〜3
粘着フィルム1に替えて、粘着フィルム4および5を用いた以外は、実施例1と同様にして、粘着フィルムの保護性能を評価した。得られた結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【発明の効果】
本発明に係る半導体ウエハ保護方法は、半導体ウェハの回路形成面を加工する一連の工程において半導体ウエハの厚みが100μm以下に薄層化された場合であっても、これら一連の工程における半導体ウェハの破損などを防止できる効果を奏する。更に、ワックス除去が目的である洗浄工程を省略することができ、簡易的な製造プロセスが可能である。また環境面に於いても、洗浄工程を省略することで、廃液が発生しない利点がある。
Claims (3)
- 基材フィルムの片表面に粘着剤層を有する半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムを、半導体ウェハの回路形成面に貼着する第一工程、半導体ウェハ表面保護用粘着フィルムにワックスを塗布した後、半導体ウェハを支持する支持基板に固定する第二工程、前記支持基板を介して半導体ウェハを研削または研磨機に固定し、半導体ウェハ裏面を加工する第三工程、及びワックスを溶解させ、支持基板と半導体ウェハとを剥離させる第四工程を順次実施する半導体ウェハの回路非形成面の加工工程における半導体ウェハの保護方法であって、前記基材フィルムの少なくとも1層が、融点が少なくとも200℃、厚みが10〜200μmである樹脂フィルムであり、該基材フィルムの片表面に150℃における貯蔵弾性率が少なくとも1×105Pa、厚みが3〜100μmである粘着剤層が形成された粘着フィルムを用いることを特徴とする半導体ウェハ保護方法。
- 前記第三工程が、機械研削工程、ウェットエッチング工程、プラズマエッチング工程及びポリッシング工程から選ばれた少なくとも一工程を含むことを特徴とする請求項1記載の半導体ウェハの保護方法。
- 半導体ウェハが化合物半導体であり、第三工程を実施した後の厚みが100μm以下であることを特徴とする請求項1記載の半導体ウェハの保護方法。
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JP2007220694A (ja) * | 2005-05-16 | 2007-08-30 | Nitto Denko Corp | ダイシング用粘着シート及びそれを用いた被加工物の加工方法 |
JP2020155688A (ja) * | 2019-03-22 | 2020-09-24 | 日東電工株式会社 | バックグラインドテープ |
CN112908922A (zh) * | 2021-01-28 | 2021-06-04 | 蔡德昌 | 一种重复使用的透明硬质载具与待减薄晶圆片之贴合及剥离工艺 |
-
2003
- 2003-02-20 JP JP2003042590A patent/JP2004253625A/ja active Pending
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