JP2004251934A - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の目的は、帯電安定性、環境安定性、加熱保存安定性、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れたトナーを提供することにある。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂は水素添加率が50%以上である水添石油樹脂とスチレン系重合体を含有し、かつ荷電制御剤が芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
【解決手段】少なくとも結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂は水素添加率が50%以上である水添石油樹脂とスチレン系重合体を含有し、かつ荷電制御剤が芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等を利用して画像の形成がなされる電子複写機、レーザービームプリンター等における静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置等においては、所望の複写物或いは送信画像などの記録物を得るため、電子写真感光体や静電記録体などの静電荷像担持体上に種々の手段で静電荷像を形成し、この静電荷像担持体上に形成された静電荷像を現像した後、得られたトナー像を転写紙などの転写材に転写し、次いで転写されたトナー像を加熱、加圧或いは加熱・加圧して定着する方法が広く採用されている。そして、静電荷像の現像法としては、電気絶縁性液体に分散された微細トナーからなる液体現像剤を用いて現像する湿式現像法、及び結着樹脂中に着色剤などを分散、含有する粉体トナーとキャリア粒子を用いる二成分現像剤、或いは結着樹脂中に磁性粉体などを分散、含有する一成分磁性トナーを用いた乾式現像法が知られており、後者の乾式現像法が一般的に用いられている
。
【0003】
ところで、電子写真複写機での複写やレーザービームプリンターによる画像あるいはデータの打ち出し、更にはファクシミリなどによる送信画像の打ち出しなどにおいては、近年、装置の小型化、低価格化、パーソナル化、出力の高速化、低エネルギー化が要求される一方、カラー化の要求も大きくなり、これらへの対応が必要とされている。
【0004】
これら静電荷像現像用トナーは、結着樹脂とともに、染料、顔料などの着色剤、磁性トナーの場合には更に磁性粉体等が用いられているが、これらの成分のみでは通常望ましい帯電性が得られないため、さらに荷電制御剤を用いることが行われている。従来の荷電制御剤の代表的な例としては、トナーに正荷電を与えるものとしては、例えばニグロシン系染料やトリアリールメタン系染料のような塩基性染料あるいは第4級アンモニウム塩等の電子供与性物質が、またトナーに負荷電を与えるものとしては、例えばモノアゾ染料の金属錯体、含クロム有機染料のごとき含金属染料があげられる。しかし、このような従来の荷電制御剤には、結着樹脂との相溶性或いは濡れ性が悪くトナー中に均一分散しにくいとか、荷電制御剤の安定性が悪い、あるいは昇華性であるため等の理由により、長期にわたってトナーに安定して良好な荷電制御性を付与することができない、更には荷電制御剤が着色しておりカラートナーの荷電制御剤として適しないなどの問題点を有するものが多くみられた。
【0005】
また更に、トナーを夏場などに長時間高温(40〜50℃)の状態で放置しておくことによりトナーの表面状態が経時変化を引き起こし複写画像の品質の悪化、トナーの紙等の被転写体へ転写される量の割合を示す数値である転写率の低下及び複写機やプリンターの機内のトナー飛散を引き起こしてしまう問題がある。すなわち製造したばかりの状態では画像の品質に優れ、カブリが少なく、トナーの転写率も高く、また機内のトナーの飛散も少ないが、長時間高温の状態にさらされることによりトナーが経時変化を起こしてしまい、複写枚数の増加とともに、かぶりが増大し、更に機内飛散が増大してしまう。この加熱経時における劣化はトナーの帯電減衰によるものであり、荷電制御剤による原因が大きい。
【0006】
このような問題点を解決しうる荷電制御剤として、芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物(例えば特許文献1、2及び3参照)が提案されている。これらの荷電制御剤は、淡色のものが多く、カラートナー用として使用されているのが現状であるが、良好な透明感のあるクリアな色再現性と良好な帯電安定性の両方を満足する品質の優れたトナーを得るのは困難であるのが現状である。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−145255号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開昭62−163374号公報(請求項1)
【特許文献3】
特開2002−372810号公報(請求項1〜2)
【0008】
また石油樹脂を電子写真用トナーの結着樹脂成分として用いる試みは、古くからなされている。例えば、さらに、石油樹脂を加熱定着方式に用いるトナーの結着樹脂の一部として用いることも知られている。
また石油樹脂としてエチレン性二重結合の水添率が55%以上である水添石油樹脂を用いることによって粉砕性、低温定着性、帯電特性の環境依存性に優れたトナーが提案されている。(例えば特許文献4参照)
また石油樹脂として水素添加率50または60%以上の水添石油樹脂を用いたトナーが耐熱保存性が改善され、定着性に優れたトナーが得られることが記載されている。(例えば特許文献5及び6参照)
これらの文献に記載された結着樹脂は、多くは石油樹脂をトナーの結着樹脂の補助成分として用いるものであり、いずれも低温定着性と耐ブロッキング性、耐オフセット性などあるいはトナー製造時の粉砕性などを充分に満足しうるといえるものではない。
【0009】
【特許文献4】
特開平11−52611号公報(特許請求の範囲、段落番号0004、0005)
【特許文献5】
特開平8−278658号公報(特許請求の範囲、段落番号0003から0010)
【特許文献6】
特開2001−5214号公報(特許請求の範囲、段落番号0013から0018)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電安定性、環境安定性、加熱保存安定性、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れたトナーを提供することにある。
【0011】
具体的には、上記問題を解決し優れた特性を有するトナー、すなわち、トナーとキャリア間、トナーと現像スリーブの如きトナー担持体との摩擦帯電量が高く、安定で、温度、湿度による影響を受けず、カブリの発生、機内へのトナー飛散がない安定したトナー画像を形成することができるトナーを提供することである。
【0012】
さらには、着色剤がトナー中に均一に分散した、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れた画像を形成することができるトナーを提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、低温定着性、耐ブロッキング性に優れ、トナーを長期間加熱保存あるいは放置した際にもトナーの品質劣化がない静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0014】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の荷電制御剤と特定の水添率を有する石油樹脂を用いることにより、上記目的が達成できることを見出して、本発明に至ったものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
すなわち、第1の発明は、少なくとも結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂は水素添加率が50%以上である水添石油樹脂とスチレン系重合体を含有し、かつ荷電制御剤が下記一般式(1)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナーに関する。
【化2】
(式中、R1 、R2 およびR3 は、水素原子、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖アルキル基、または芳香族炭化水素基の残基であるアリール基を表すか、あるいはR1 およびR2 またはR2 およびR3 が互いに結合して、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖アルキル基を有してもよい縮合環を形成する基を
表す。)
【0016】
また、第2の発明は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸または3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸であることを特徴とする上記第1の発明に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0017】
また、第3の発明は、水添石油樹脂を結着樹脂全体に対して20〜80重量%含有することを特徴とする上記第1の発明又は第2の発明のトナーである。
【0018】
また、第4の発明は、着色剤のBET法による比表面積が30〜300m2 /gであることを特徴とする上記第1〜3いずれかの発明のトナーである。
【0019】
また、第5の発明は、着色剤が、フタロシアニンブルー顔料、キナクリドン顔料、ベンズイミダゾロン顔料またはカーボンブラックのいずれかであることを特徴とする上記第1〜4いずれかの発明のトナーである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本願発明の荷電制御剤として有用な、芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物は、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩の水溶液とハロゲン化亜鉛の水溶液をモル比において約2:1の比で混合し反応させることにより製造される。これにより芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物が得られる。上記ハロゲン化亜鉛の水溶液としては通常5〜20%程度、例えば10%程度の濃度の塩化亜鉛水溶液等が用いられる。
一方、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液は、通常50〜70℃、好ましくは60〜65℃程度に加熱した、0.5ないし5%程度、例えば1ないし2%の濃度の水酸化アルカリ金属水溶液に、アルカリ金属に対しほぼ等モルの芳香族ヒドロキシカルボン酸を加え、好ましくは水溶液をこの温度に保持しつつ攪拌して芳香族ヒドロキシカルボン酸を溶解せしめることにより製造される。また、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液を製造する温度は、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩の溶解性を考慮して決定されるもので、上記範囲が通常利用される。
【0021】
ハロゲン化亜鉛水溶液と芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液の混合は、ハロゲン化亜鉛水溶液中に芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液を滴下する方法と芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液中にハロゲン化亜鉛水溶液を滴下する方法といずれも可能であるが、いずれの方法においても混合における滴下速度が速いと収量が低下するため、ゆっくりと時間をかけて加えることが好ましい。またハロゲン化亜鉛水溶液は、モル比において芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩2モル部に対しハロゲン化亜鉛1モル部の範囲の量で使用される。芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化マグネシウム水溶液の混合後さらに十分な時間、例えば1時間程度攪拌を続けた後、濾過し、反応生成物を濾別した後、水洗し、乾燥、粉砕することにより目的の芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物が得られる。ここで濾過して得られた上記反応生成物を水洗するのはこのアルカリ金属塩成分を除去するためである。
このときハロゲン化亜鉛水溶液の温度、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液の温度、これらの混合液の温度、吸引濾過時の温度は、いずれも通常50〜70℃程度、好ましくは60〜65℃の温度を保持した状態としておくことが好ましい。また濾過は、吸引濾過方式、遠心分離方式等従来より公知の方法により行うことができる。
【0022】
また、本発明において使用される芳香族ヒドロキシカルボン酸は、上記一般式(1)で表されるものが好ましいが、上記一般式(1)中の置換基R1、R2およびR3としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基等の炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等の不飽和アルキル基、あるいはフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基が好ましいものとしてあげられる。その中で、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和アルキル基やアリール基がより好ましく、更にはtert−ブチル基、tert−オクチル基、フェニル基が特に好ましいものである。
【0023】
本発明に使用できるヒドロキシ芳香族カルボン酸は先述したように一般式(1)に記載の骨格を持つものであれば良いが、本発明の荷電制御剤を設計する上では、原料である芳香族ヒドロキシカルボン酸の性質を十分に考慮して選択する必要がある。
芳香族性が高いものや、分子量が大きいものは、親油性が強く相溶性、濡れ性に優れ結着樹脂中への分散性が良好である傾向がある。
一方、芳香族性が低いものや、分子量が小さいものは、分子中の−OHの割合が高くなり負帯電性が強くなる。
このような性質を考慮して設計することにより、トナーとして良好な特性を得ることができる。中でも3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を用いることによりトナーとして良好な特性を得ることができる。
【0024】
ここで得られた芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物は結着樹脂中への分散が良好で、かつトナー化した時の帯電安定性に優れている。また純粋な白色を呈していることからも、色汚れを起こさず、色再現性に優れ、カラートナー用の荷電制御剤としてとても優れた材料である。
【0025】
また荷電制御剤は粉砕機により、粉砕し、所望の粒度分布に調整することにより、より効果的に使用することができる。粉砕機の種類としてはジェットミル等の気流式衝突型粉砕機やターボミル、KTM、MVM、等の機械式衝撃式粉砕機があげられる。本発明の荷電制御剤として良好な粒度分布は体積平均粒径で0.5〜40μmであればよく、より好ましくは1〜20μmであることが良い。40μmよりも大きい粒径のものが含まれていると、結着樹脂中への荷電制御剤の分散が困難になりトナー中への荷電制御剤の分散が困難になってしまう。またトナー粒子あたりの荷電制御剤の含有量が偏ってしまいカブリの増加や機内飛散の原因にも繋がってしまう。一方、0.5μmよりも小さい粒径のものを用いると、結着樹脂中への分散は良好であるものの、荷電制御剤の比表面積が大きくなってしまいトナーに過度の帯電を付与してしまい帯電量が増大し画像濃度低下が生じてしまう場合がある。
【0026】
荷電制御剤の添加量は、通常、結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜3重量部である。
【0027】
本発明の結着樹脂は、水素添加率が50%以上である水添石油樹脂とスチレン系重合体とからなるものであり、原料の水添石油樹脂としては石油樹脂に残存している不飽和結合に水素を付加させて還元して得られた樹脂であり、水添石油樹脂、スチレン系重合体のどちらとも特に制限はなく、従来公知のもの、例えば水添石油樹脂の場合は脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂、脂環脂肪族系石油樹脂、これらの石油樹脂の原料モノマーを2種以上又は該原料モノマーと他の重合性モノマーとを共重合させてなる共重合体系石油樹脂等を水添したものを、スチレン系重合体の場合はスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン系共重合体、架橋されたスチレン系重合体等を適宜選択して用いればよい。
水素添加率が50%以上である石油樹脂とスチレン系重合体とをトナー用結着樹脂として用いることにより透明性を十分に得ることができ、緑色トナーとして良好な色再現ができ、さらにスチレン系重合体を併用することにより石油樹脂の良好な透明性、低温定着性等の性能を維持し、かつトナーの保存安定性、環境安定性、製造時における粉砕性等の生産性等においても優れた結着樹脂を得ることができる。
【0028】
脂肪族系石油樹脂としては、例えばナフサ分解油のうち、沸点が−10〜100℃のC4〜C6留分に含まれる重合性成分、具体的にはC4留分:1−ブテン;2−ブテン;イソブテン;1,3−ブタジエン、C5留分:1−ペンテン;2−ペンテン;2−メチル−1−ブテン;3−メチル−1−ブテン;2−メチル−2−ブテン;1,3−ペンタジエン;シクロペンテン;シクロペンタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、C6留分:1−ヘキセン;2−ヘキセン;3−ヘキセン;4−メチル−1−ペンテン;4−メチル−2−ペンテン;2−メチル−2−ペンテン;2−メチル−1−ペンテン;3−メチル−2−ペンテン;2−エチル−1−ブテン;2,3−ジメチル−1−ブテン;2,3−ジメチル−2−ブテン;2,2−ジメチル−1−ブテン;1,3−ヘキサジエン;1,4−ヘキサジエン;2−メチル−1,4−ペンタジエン;3−メチル−1,4−ペンタジエン;1,5−ヘキサジエン;2,4−ヘキサジエン;2−メチル−1,3−ペンタジエン;3−メチル−1,3−ペンタジエン;4−メチル−1,3−ペンタジエン;シクロヘキセン;1,3−シクロヘキサジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1−メチルシクロペンテン;3−メチルシクロペンテン;4−メチルシクロペンテンなど、およびこれらの重合性成分を精製したモノマーの中から選ばれた少なくとも一種を重合してなる樹脂を挙げることができる。
【0029】
芳香族系石油樹脂としては、例えばナフサ分解油のうち、C8〜C10留分を主体とした芳香族ビニル系モノマー(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、インデン、アルキル置換インデン、アリルベンゼン、アリルトルエン、tert−ブチルトルエン、tert−ブチルアリルベンゼンなど)、およびこれらの成分を精製したモノマーの中から選ばれた少なくとも一種を重合してなる樹脂を挙げることができる。
【0030】
また、シクロペンタジエン系石油樹脂、脂環脂肪族系石油樹脂としては、例えばナフサ分解油のうち、沸点が−10〜50℃の留分中に含まれるジエン類やオレフィン類をディールスアルダー反応で環化二量化させてなる脂肪族環状不飽和炭化水素モノマー、およびその中の成分を精製したモノマーの中から選ばれた少なくとも一種を重合してなる樹脂を挙げることができる。
【0031】
共重合体系石油樹脂に用いられる他の重合性モノマーとしては、公知のモノマー、例えばエチレン、プロピレン、オクテン、ドデセンなどの炭素数2〜20の鎖状オレフィン、ピネンなどの炭素数7〜20の環状オレフィン、リモネン、ミルセンなどの炭素数6〜20のポリエン類、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニル、スアテリルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル;塩化ビニリデン;1,2−ジクロロエチレン;トリクロロエチレン;テトラクロロエチレン;フッ化ビニル;フッ化ビニリデン;1,2−ジフルオロエチレン;トリフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン;臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、トリアルキルビニルシラン、トリアルコキシビニルシランなどのビニルシラン類、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのα,β−不飽和ケトン類、さらにはアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸、シクロプロパンおよびその誘導体、シクロブタンおよびその誘導体、オキセタンおよびその誘導体、テトラヒドロフランおよびその誘導体、アセチレンおよびその誘導体,α,β−不飽和アルデヒド、α,β−不飽和エステル、炭素数2〜10のジチオールなどが挙げられる。これらは単独でも、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
水添石油樹脂は、石油樹脂の不飽和部に水素を付加させたものであり、通常の石油樹脂に比べ淡色が図られ透明性が改善される。上記石油樹脂に水素添加を行う方法としては、一般の還元方法としてはいずれの方法を用いても良いが、特に接触還元法が用いられる。具体的にはニッケル、パラジウム、白金等の重金属触媒を用い、150〜250℃、30〜50kg/cm2の高温高圧下で水素を直接石油樹脂に作用させ、石油樹脂の不飽和二重結合に付加させる還元方法である。
【0033】
水素添加率は、水素で置換されていない石油樹脂の不飽和結合を定量することにより求められる。具体的には、水添石油樹脂に三塩化ヨウ素や一臭化ヨウ素などのハロゲンを作用させて水添石油樹脂中の不飽和結合と反応させ、反応によって吸収されたハロゲン量を測定し、その値をヨウ素化に換算する。そして水添率0%と100%(完全水添)の検量線を用いて水添率を求めることができる。また使用される石油樹脂の軟化点(環球式:JIS K6863−1994)は90〜140℃の範囲が好ましい。
【0034】
本発明に使用される水添石油樹脂は、水素添加率が50%以上であることが必須である。水素添加率が50%以上であればクリアで透明な色再現性に優れたトナーが得られるが、一方、水素添加率が50%よりも小さいと石油樹脂は白濁し、透明性がなくなり白みがかった色トナーとなってしまい、良好な色再現ができなくなってしまう。
【0035】
また水素添加率が50%以上の石油樹脂と荷電制御剤である前記の芳香族ヒドロキシカルボン酸のマグネシウム塩化合物を併用してトナーを得ることにより、品質の優れたトナーを得ることができる。そして帯電安定性、加熱保存安定性、環境安定性だけでなく色再現性、鮮明性、透明性に優れる点において、特にカラートナーに用いることが好ましい。
【0036】
本発明のトナーの結着樹脂として、石油樹脂とともに用いることのできるスチレン系重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体、スチレン−ジエチルアミノエチルアクリレート共重合体、スチレン−ブチルアクリレート−ジエチルアミノエチルメタクリレート共重合体等のスチレン系共重合体、架橋されたスチレン系重合体などが挙げられる。
【0037】
上記スチレン−アクリル系共重合体に使用されるアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、更にはこれらと共に用いることができる単量体として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、マレイン酸、マレイン酸ブチルなどのマレイン酸ハーフエステル、あるいはジエステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類を挙げることができる。
【0038】
また、上記の架橋したスチレン系重合体を製造するために用いる架橋剤としては、主として不飽和結合を2個以上有する化合物を挙げることができ、具体的には、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の不飽和結合を2個以上有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;および不飽和結合を3個以上有する化合物を、単独で或いは混合して使用することができる。上記架橋剤は、結着剤樹脂に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で用いられる。
【0039】
これらスチレン系樹脂は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらスチレン系樹脂のうち、GPC(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)により測定される分子量分布で二山のピークを有するものであってもよい。更には2種以上の樹脂の併用としては、例えば前記スチレン樹脂とスチレン−アクリル系共重合体との併用あるいは2種以上のスチレン−アクリル系共重合体の併用などが好ましいものである。
【0040】
また、本発明においては、結着樹脂は、上記石油樹脂とスチレン系共重合体あるいはスチレン系重合体、さらに必要であれば他の樹脂を混練する、あるいは溶剤中において溶解混合するなど適宜の方法で均質化することにより製造される。この均質な組成物はトナーの製造前あるいはトナー製造時に行うことができる。本発明においては、結着樹脂は、トナー100重量部当り40〜95重量部であることが好ましい。
【0041】
スチレン系共重合体あるいはスチレン系重合体は、前記石油樹脂に対し重量比で、石油樹脂:スチレン系共重合体あるいはスチレン系重合体=2:8〜8:2の量で用いることが好ましい。石油樹脂の量が20重量%より少ない場合には、十分な透明性が得られないだけでなく、石油樹脂の定着性の寄与率が低減し、このため低温時の定着性が十分ではなく、また石油樹脂の量が80重量%を超えるとトナー粒子を製造する際に粉砕機中で融着が発生し、収量よく所望のトナー粒子を得ることができなくなる。
【0042】
本発明のトナーの構成成分としては、上記本発明の荷電制御剤、結着樹脂以外に、更に必要に応じトナーを構成する公知の材料である、着色剤、離型剤、滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等が内添または外添される。
【0043】
本発明に用いられる着色剤としては、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各着色剤が好適に用いられる。
【0044】
イエローの着色剤としては、ベンズイミダゾロン化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。
【0045】
マゼンタの着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等が好適に用いられる。
【0046】
シアンの着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が好適に用いられる。
【0047】
黒の着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が好適に用いられる。
【0048】
上記着色剤は、単独で或いは2種以上を混合して使用することができ、通常結着樹脂の100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の添加量がよい。
【0049】
本発明において使用する着色剤は上記のうち、BET法による比表面積が30〜300m2 /gのものを用いるとより好ましい効果を見い出すことができる。着色剤のBET法による比表面積が300m2 /gを超えるものを用いると、カブリが増大して、かつトナーの機内飛散が増大して行く傾向があり複写画像の品質が悪化してしまう場合がある。特に高温高湿環境では顕著にかぶりが生じ、機内中のトナー飛散が生じてしまう場合がある。また比表面積が30m2 /gより小さいものを用いると、着色剤の粒子がトナー粒子に十分な着色を行うことが困難になり、トナーとして所望の画像濃度を得ることができなくなる場合がある。ここで着色剤の比表面積とカブリの関係は一定の相関関係を見出すことができる。着色剤の比表面積とカブリの関係については、着色剤の分散性に大きな関係がある。着色剤の比表面積が300m2 /gを超えるとトナー粒子中への均一な分散が困難になり分散不良を起こしやすい。これによりトナー粒子中に着色剤の偏在が生じてしまうこととなりトナー粒子の抵抗値がばらついてしまい、均一な安定した電荷を保持することができなくなる。この着色剤の偏在が大きい物ほどカブリが生じやすい。この原因の1つとして荷電制御剤の粒子のまわりに着色剤が抱え込まれてしまい、荷電制御剤中の電荷が着色剤を介して漏出してしまいトナーとして安定した電荷を保持できなくなることがある。
特に比表面積が50m2 /g〜100m2 /gの範囲の着色剤を用いることが上記のより良い品質を満足し、更にトナー製造時においても安定して品質の優れたトナーを満足することができる。
【0050】
本発明の静電荷像現像用トナーを磁性トナーとして用いる場合に使用できる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄または二価金属と酸化鉄との化合物、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金の粉体及びこれらの混合物があげられる。これらの磁性材料は平均粒径が0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが望ましく、磁性トナー中に含有させる量としては結着樹脂100重量部に対して5〜150重量部、好ましくは10〜120重量部である。また必要に応じて磁性材料と着色剤を併用して用いることもできる。着色剤としては、例えばカーボンブラック、銅フタロシアニン、鉄黒などが用いられる。
【0051】
本発明の着色剤のBET比表面積測定は、乾燥した状態の着色剤サンプルを、気体吸着法(流動法)である、ユアサアイオニクス社製、マルチソープ12を用いて行った。キャリアガスとしては窒素−ヘリウムの混合ガスを用いた。そして脱着ピークの値からBET比表面積を算出した。
【0052】
また本発明のトナーには、従来トナー粒子を製造する際に用いられている離型剤を加えることができる。離型剤としては、例えば熱ロール定着時の離型性(オフセット防止性)を向上させる、脂肪族炭化水素、脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックスが挙げられる。これらの中では、重量平均分子量が1000〜10000程度の低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等のワックス類が好ましい。
【0053】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。本発明のトナーとともに用いることのできるキャリアとしては、従来公知のキャリアであればいずれであってもよい。使用することができるキャリアとしては、例えば、鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のような磁性粉体やガラスビーズ等、あるいはこれらの表面を樹脂などで処理したものが挙げられる。キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂など、あるいはこれらの混合物があげられる。これらのなかでは、スペントトナーの形成が少ないためフッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂が特に好ましい。
【0054】
本発明のトナーの粒径は、重量平均粒径が1〜30μm、好ましくは3〜15μmであることが望ましい。特に、5μm以下の粒径を有するトナー粒子が12〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有するトナー粒子が1〜33個数%含有され、16μm以上の粒径を有するトナー粒子が2.0重量%以下含有され、トナーの重量平均粒径が4〜12μmであるものが、現像特性のうえからはより好ましい。なお、トナーの粒度分布測定は、例えばコールターカウンターを用いて測定することができる。
【0055】
本発明のトナーは、さらに必要に応じて滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等のトナーの製造にあたり使用されている公知の添加剤を内添、あるいは外添することができるが、滑剤としては、ポリフッ化ビニリデン
、ステアリン酸亜鉛などが、流動性改良剤としては、乾式法あるいは湿式法で製造したシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物およびこれらを疎水性化処理したものなどが、研磨剤としては窒化珪素、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウムおよびこれらを疎水化処理したものなどが、導電性付与剤としては酸化スズなどがあげられる。また、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素含有重合体の微粉末は、流動性、研磨性、帯電安定性などの点から好ましいものである。
【0056】
なお、本発明においては、疎水化処理されたシリカ、疎水化処理された酸化アルミニウム、疎水化処理された珪素アルミニウム共酸化物あるいは疎水化処理された珪素チタン共酸化物微粉体を外添剤として用いることが好ましい。シリカ微粉体の疎水化処理としては、シリコーンオイルやジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンなどのシランカップリング剤による処理等があげられる。これらはいずれも負極性であるため、負帯電性トナーとして使用するには好適であるが、正帯電性トナーとして使用する場合は、ブローオフ法により測定したときに、ノンコートフェライトキャリアコア粒子に対してプラスのトリボ電荷を有する正帯電性のシリカを用いることが好ましい。この正帯電性のシリカを得るためには、側鎖に窒素原子を少なくとも1つ有するオルガノ基を有するシリコーンオイル、あるいはアミノシラン類等の窒素含有のシランカップリング剤で処理すればよい。
疎水化処理されたシリカ微粉体の使用量は、現像剤重量あたり、0.01〜20%、好ましくは0.03〜5%である。
【0057】
本発明に係るトナーは、従来から公知のトナーの製造方法を用いて製造することができる。一般的には、上述したようなトナー構成材料を、ボールミル、ヘンシェルミキサーなどの混合機により充分混合したのち、熱ロールニーダー、一軸あるい
は二軸のエクストルーダーなどの熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化させた後
、ハンマーミルなどの粉砕機を用いて機械的に粗粉砕し、次いでジェットミル等の気流式衝突型粉砕機やターボミル、KTM、MVM、等の機械式衝撃式粉砕機により中粉砕、微粉砕した後、分級する方法が好ましい。さらに分級した後、外添剤をヘンシェルミキサー等の混合機を用いて十分に混合した後、篩い工程を経て用いることが好ましい。
【0058】
しかし、トナーの製造法はこの方法に限られるものではなく、結着樹脂溶液中に他のトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥する方法、所謂マイクロカプセル法によりトナーを製造する方法、結着樹脂を形成する単量体に所定材料を混合し、乳化あるいは懸濁重合を行いトナーを得る重合法トナー製造法など他の方法も任意に採用することができる。
【0059】
本発明における有機顔料等と結着樹脂との溶融混練温度は、100〜140℃が好ましく、更に好ましくは110〜130℃である。上記の範囲で混練することによって、トナーの着色性等が向上する。
【0060】
本発明の静電荷像現像用トナーは、従来公知の電子写真、静電記録あるいは静電印刷法などを利用して乾式トナー画像を形成するいずれの方法あるいは装置に対しても好ましい現像用トナーとして使用することができる。
【0061】
なお、本発明においては、結着樹脂成分などの分子量分布はGPCにより次の条件で測定される。
【0062】
(GPC測定条件)
装置 :日本分光(株)製800シリーズ
検出器:RI
カラム:東ソー[MN,GMH6(7.5mmI.D×600mm)×2,G2000H8(7.5mmI.D×600mm)]
温度 :室温
溶媒 :THF
注入量:400μL
流量 :1.4ml
その他:THF室温溶解で濃度は20mg/10mlに調整
【0063】
【実施例】
以下製造例、実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。
【0064】
荷電制御剤製造例1(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛塩化合物の製造)
最初に下記▲1▼、▲2▼の2つの水溶液を作製した。
▲1▼水1350gに水酸化ナトリウム24g(0.6モル)を溶解し、次いで3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸150g(0.6モル)を内温60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは7.41であった。
▲2▼水1050gに塩化亜鉛47.8g(0.35モル)を60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは8.03であった。
上記▲2▼の溶液を▲1▼に内温60〜65℃にて、2時間かけて滴下し、その後内温70〜80℃で1時間攪拌して沈殿物を得た。その時の溶液のpHは7.0であった。攪拌後、熱時濾過を行い、水1500gで水洗した.水洗終了時ではpHは7.37であった。得られた濾過物(wet)の重量は366gで最終的に、110℃で15時間乾燥し144.2gの荷電制御剤(A)を得た。荷電制御剤(A)は下記構造式(2)で表される化合物である。ジェットミルで粉砕し平均粒径8.0μmとした。
【0065】
【化3】
【0066】
荷電制御剤製造例2(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の亜鉛塩化合物の製造)
最初に下記▲1▼、▲2▼の2つの水溶液を作製した。
▲1▼水1350gに水酸化ナトリウム24g(0.6モル)を溶解し、次いで3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸 113g(0.6モル)を内温60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは7.50であった。
▲2▼水1050gに塩化亜鉛47.8g(0.35モル)を60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは8.05であった。
上記▲2▼の溶液を▲1▼に内温60〜65℃にて、2時間かけて滴下し、その後内温70〜80℃で1時間攪拌して沈殿物を得た。その時の溶液のpHは7.0であった。攪拌後、熱時濾過を行い、水1500gで水洗した.水洗終了時ではpHは7.26であった。得られた濾過物(wet)の重量は 325.0gで最終的に、110℃で15時間乾燥し125.7gの荷電制御剤(B)を得た。荷電制御剤(B)は下記構造式(3)で表される化合物である。ジェットミルで粉砕し平均粒径8.2μmとした。
【0067】
【化4】
【0068】
樹脂製造例1(樹脂Aの合成および樹脂組成物Bの製造)
温度計、攪拌機を備えたフラスコにナフサのスチームクラッキングで副生する初留140℃〜終留220℃の留分(重合可能成分:スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、インデン等)200重量部を仕込み、三フッ化硼素−フェノール錯体1重量部、フェノール7重量部を加えて70℃で3時間重合した。得られた反応混合溶液に2重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて触媒を除去後、水洗を行った。次に反応混合溶液を中性になるまで水洗した後、有機層を蒸留し、未反応物および低重合物を除去することにより、石油樹脂A(Tg:43℃、Mw=1,450、Mn=730)を得た。
【0069】(水添処理)
窒素で置換した攪拌機付きの300ミリリットルオートクレーブ内にシクロヘキサン75g,製造例1で得られた石油樹脂A75g,0.5重量%のパラジウム担持シリカ・アルミナ触媒4.0gを仕込み、水素圧力4MPa,温度150℃で2時間水素添加反応を行った。反応物を冷却後取り出し、ろ過して触媒を除去したのち、蒸留により溶剤を除去して、水添石油樹脂A−1を得た。この水添樹脂A−1の水添率は74%であった。
【0070】
次に水添石油樹脂A−1、6.0Kgと市販のポリスチレン樹脂(Tg:102.0℃、Mw=340,195、Mn=111,082、極大値の位置280,000)4.0Kg、140℃の溶融粘度が10mPa/s(cp)(熱分析装置TGAで測定したときの200℃での重量減分は0%)のサゾールワックス0.4Kgをヘンシェルミキサーを用い混合した後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、均一な樹脂組成物Bを得た。
【0071】
樹脂製造例2(樹脂組成物Cの製造)
石油樹脂Aを用いて、水添処理の処理時間を1時間にする以外は製造例1と同様にして水添石油樹脂A−2を得た。この水添樹脂A−2の水添率は52%であった。次に水添石油樹脂A−2、6.0Kgと市販のポリスチレン樹脂(Tg:102.0℃、Mw=340,195、Mn=111,082、極大値の位置280,000)4.0Kg、140℃の溶融粘度が10mPa/s(cp)(熱分析装置TGAで測定したときの200℃での重量減分は0%)のサゾールワックス0.4Kgをヘンシェルミキサーを用い混合した後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、均一な樹脂組成物Cを得た。
【0072】
樹脂製造例3(樹脂組成物Dの製造)
石油樹脂Aを用いて、水添処理の処理時間を30分にする以外は製造例1と同様にして水添石油樹脂A−3を得た。この水添樹脂A−3の水添率は47%であった。次に水添石油樹脂A−3、6.0Kgと市販のポリスチレン樹脂(Tg:102.0℃、Mw=340,195、Mn=111,082、極大値の位置280,000)4.0Kg、140℃の溶融粘度が10mPa/s(cp)(熱分析装置TGAで測定したときの200℃での重量減分は0%)のサゾールワックス0.4Kgをヘンシェルミキサーを用い混合した後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、均一な樹脂組成物Dを得た。
【0073】
実施例1
樹脂組成物B 93重量部
フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3 比表面積 80m2/g) 5重量部
荷電制御剤(A)(平均粒径8.0μm) 2重量部
上記材料をヘンシェルミキサーで均一に混合した後、二軸加熱混練機に投入し混練、押し出されてきたものを室温で冷却し、ハンマーミルで粗粉砕してチップを得た。次いで、これをジェットミル粉砕機で微粉砕し、分級機に導き、10.5μmに平均粒度を有する部分をトナー用微粉末として取り出した。次いで、このトナー用微粉末100重量部に対し、疎水性シリカ微粉体0.4重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性シアントナーを得た。得られたトナー6部と平均粒径60μmのシリコーン樹脂コートのキャリア100部とをボールミルを用いて混合し現像剤を作製した。次にこのトナーと現像剤を用いて、市販の複写機CLC−800(キヤノン社製)により通常環境(23℃、50%RH)にて実写試験を行なった。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、鮮明なシアン色画像が得られ、5万枚実写後でもカブリは少なく、画像濃度も安定しており、機内のトナー飛散、画像汚れも見られなかった。初期および5万枚複写時の画像濃度は各々1.43および1.41であり、また初期および5万枚複写時のカブリは各々0.5および0.5であった。またこのときトナーは加熱放置後の品質を確認するために乾燥機中に50℃、24時間放置した後試験を行った。
【0074】
なお、画像濃度はマクベス光度計を用いて行い、1.35以上の濃度であればよい。なお、カブリはフォトボルトにて、反射率を測定することにより行った。1.2%以下が良好な値である。 また、トナーの機内飛散は、複写機の転写チャージャー上に飛散トナーが存在するか否かを確認することにより行った。転写チャージャー上にトナー飛散がみられる場合、これに伴い画像汚れが発生する。
【0075】
実施例2〜6、比較例1〜2
実施例1に用いた荷電制御剤(A)、着色剤及び樹脂組成物Bを用いる代わりに、表1に記載の材料を用いることを除き、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の荷電制御剤及び結着樹脂を用いることにより、帯電安定性、環境安定性、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れたトナーを得ることができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真法、静電記録法等を利用して画像の形成がなされる電子複写機、レーザービームプリンター等における静電潜像を現像するために用いられる静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置等においては、所望の複写物或いは送信画像などの記録物を得るため、電子写真感光体や静電記録体などの静電荷像担持体上に種々の手段で静電荷像を形成し、この静電荷像担持体上に形成された静電荷像を現像した後、得られたトナー像を転写紙などの転写材に転写し、次いで転写されたトナー像を加熱、加圧或いは加熱・加圧して定着する方法が広く採用されている。そして、静電荷像の現像法としては、電気絶縁性液体に分散された微細トナーからなる液体現像剤を用いて現像する湿式現像法、及び結着樹脂中に着色剤などを分散、含有する粉体トナーとキャリア粒子を用いる二成分現像剤、或いは結着樹脂中に磁性粉体などを分散、含有する一成分磁性トナーを用いた乾式現像法が知られており、後者の乾式現像法が一般的に用いられている
。
【0003】
ところで、電子写真複写機での複写やレーザービームプリンターによる画像あるいはデータの打ち出し、更にはファクシミリなどによる送信画像の打ち出しなどにおいては、近年、装置の小型化、低価格化、パーソナル化、出力の高速化、低エネルギー化が要求される一方、カラー化の要求も大きくなり、これらへの対応が必要とされている。
【0004】
これら静電荷像現像用トナーは、結着樹脂とともに、染料、顔料などの着色剤、磁性トナーの場合には更に磁性粉体等が用いられているが、これらの成分のみでは通常望ましい帯電性が得られないため、さらに荷電制御剤を用いることが行われている。従来の荷電制御剤の代表的な例としては、トナーに正荷電を与えるものとしては、例えばニグロシン系染料やトリアリールメタン系染料のような塩基性染料あるいは第4級アンモニウム塩等の電子供与性物質が、またトナーに負荷電を与えるものとしては、例えばモノアゾ染料の金属錯体、含クロム有機染料のごとき含金属染料があげられる。しかし、このような従来の荷電制御剤には、結着樹脂との相溶性或いは濡れ性が悪くトナー中に均一分散しにくいとか、荷電制御剤の安定性が悪い、あるいは昇華性であるため等の理由により、長期にわたってトナーに安定して良好な荷電制御性を付与することができない、更には荷電制御剤が着色しておりカラートナーの荷電制御剤として適しないなどの問題点を有するものが多くみられた。
【0005】
また更に、トナーを夏場などに長時間高温(40〜50℃)の状態で放置しておくことによりトナーの表面状態が経時変化を引き起こし複写画像の品質の悪化、トナーの紙等の被転写体へ転写される量の割合を示す数値である転写率の低下及び複写機やプリンターの機内のトナー飛散を引き起こしてしまう問題がある。すなわち製造したばかりの状態では画像の品質に優れ、カブリが少なく、トナーの転写率も高く、また機内のトナーの飛散も少ないが、長時間高温の状態にさらされることによりトナーが経時変化を起こしてしまい、複写枚数の増加とともに、かぶりが増大し、更に機内飛散が増大してしまう。この加熱経時における劣化はトナーの帯電減衰によるものであり、荷電制御剤による原因が大きい。
【0006】
このような問題点を解決しうる荷電制御剤として、芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物(例えば特許文献1、2及び3参照)が提案されている。これらの荷電制御剤は、淡色のものが多く、カラートナー用として使用されているのが現状であるが、良好な透明感のあるクリアな色再現性と良好な帯電安定性の両方を満足する品質の優れたトナーを得るのは困難であるのが現状である。
【0007】
【特許文献1】
特開昭62−145255号公報(請求項1)
【特許文献2】
特開昭62−163374号公報(請求項1)
【特許文献3】
特開2002−372810号公報(請求項1〜2)
【0008】
また石油樹脂を電子写真用トナーの結着樹脂成分として用いる試みは、古くからなされている。例えば、さらに、石油樹脂を加熱定着方式に用いるトナーの結着樹脂の一部として用いることも知られている。
また石油樹脂としてエチレン性二重結合の水添率が55%以上である水添石油樹脂を用いることによって粉砕性、低温定着性、帯電特性の環境依存性に優れたトナーが提案されている。(例えば特許文献4参照)
また石油樹脂として水素添加率50または60%以上の水添石油樹脂を用いたトナーが耐熱保存性が改善され、定着性に優れたトナーが得られることが記載されている。(例えば特許文献5及び6参照)
これらの文献に記載された結着樹脂は、多くは石油樹脂をトナーの結着樹脂の補助成分として用いるものであり、いずれも低温定着性と耐ブロッキング性、耐オフセット性などあるいはトナー製造時の粉砕性などを充分に満足しうるといえるものではない。
【0009】
【特許文献4】
特開平11−52611号公報(特許請求の範囲、段落番号0004、0005)
【特許文献5】
特開平8−278658号公報(特許請求の範囲、段落番号0003から0010)
【特許文献6】
特開2001−5214号公報(特許請求の範囲、段落番号0013から0018)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、帯電安定性、環境安定性、加熱保存安定性、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れたトナーを提供することにある。
【0011】
具体的には、上記問題を解決し優れた特性を有するトナー、すなわち、トナーとキャリア間、トナーと現像スリーブの如きトナー担持体との摩擦帯電量が高く、安定で、温度、湿度による影響を受けず、カブリの発生、機内へのトナー飛散がない安定したトナー画像を形成することができるトナーを提供することである。
【0012】
さらには、着色剤がトナー中に均一に分散した、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れた画像を形成することができるトナーを提供することである。
【0013】
また、本発明の目的は、低温定着性、耐ブロッキング性に優れ、トナーを長期間加熱保存あるいは放置した際にもトナーの品質劣化がない静電荷像現像用トナーを提供することにある。
【0014】
本発明者等は、鋭意検討した結果、特定の荷電制御剤と特定の水添率を有する石油樹脂を用いることにより、上記目的が達成できることを見出して、本発明に至ったものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
すなわち、第1の発明は、少なくとも結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、結着樹脂は水素添加率が50%以上である水添石油樹脂とスチレン系重合体を含有し、かつ荷電制御剤が下記一般式(1)で表される芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物であることを特徴とする静電荷像現像用トナーに関する。
【化2】
(式中、R1 、R2 およびR3 は、水素原子、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖アルキル基、または芳香族炭化水素基の残基であるアリール基を表すか、あるいはR1 およびR2 またはR2 およびR3 が互いに結合して、飽和または不飽和の直鎖または分岐鎖アルキル基を有してもよい縮合環を形成する基を
表す。)
【0016】
また、第2の発明は、芳香族ヒドロキシカルボン酸が、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸または3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸であることを特徴とする上記第1の発明に記載の静電荷像現像用トナーである。
【0017】
また、第3の発明は、水添石油樹脂を結着樹脂全体に対して20〜80重量%含有することを特徴とする上記第1の発明又は第2の発明のトナーである。
【0018】
また、第4の発明は、着色剤のBET法による比表面積が30〜300m2 /gであることを特徴とする上記第1〜3いずれかの発明のトナーである。
【0019】
また、第5の発明は、着色剤が、フタロシアニンブルー顔料、キナクリドン顔料、ベンズイミダゾロン顔料またはカーボンブラックのいずれかであることを特徴とする上記第1〜4いずれかの発明のトナーである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本願発明の荷電制御剤として有用な、芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物は、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩の水溶液とハロゲン化亜鉛の水溶液をモル比において約2:1の比で混合し反応させることにより製造される。これにより芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物が得られる。上記ハロゲン化亜鉛の水溶液としては通常5〜20%程度、例えば10%程度の濃度の塩化亜鉛水溶液等が用いられる。
一方、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液は、通常50〜70℃、好ましくは60〜65℃程度に加熱した、0.5ないし5%程度、例えば1ないし2%の濃度の水酸化アルカリ金属水溶液に、アルカリ金属に対しほぼ等モルの芳香族ヒドロキシカルボン酸を加え、好ましくは水溶液をこの温度に保持しつつ攪拌して芳香族ヒドロキシカルボン酸を溶解せしめることにより製造される。また、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液を製造する温度は、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩の溶解性を考慮して決定されるもので、上記範囲が通常利用される。
【0021】
ハロゲン化亜鉛水溶液と芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液の混合は、ハロゲン化亜鉛水溶液中に芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液を滴下する方法と芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液中にハロゲン化亜鉛水溶液を滴下する方法といずれも可能であるが、いずれの方法においても混合における滴下速度が速いと収量が低下するため、ゆっくりと時間をかけて加えることが好ましい。またハロゲン化亜鉛水溶液は、モル比において芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩2モル部に対しハロゲン化亜鉛1モル部の範囲の量で使用される。芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液とハロゲン化マグネシウム水溶液の混合後さらに十分な時間、例えば1時間程度攪拌を続けた後、濾過し、反応生成物を濾別した後、水洗し、乾燥、粉砕することにより目的の芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物が得られる。ここで濾過して得られた上記反応生成物を水洗するのはこのアルカリ金属塩成分を除去するためである。
このときハロゲン化亜鉛水溶液の温度、芳香族ヒドロキシカルボン酸のアルカリ金属塩水溶液の温度、これらの混合液の温度、吸引濾過時の温度は、いずれも通常50〜70℃程度、好ましくは60〜65℃の温度を保持した状態としておくことが好ましい。また濾過は、吸引濾過方式、遠心分離方式等従来より公知の方法により行うことができる。
【0022】
また、本発明において使用される芳香族ヒドロキシカルボン酸は、上記一般式(1)で表されるものが好ましいが、上記一般式(1)中の置換基R1、R2およびR3としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、アミル基、イソアミル基、オクチル基、tert−オクチル基、ドデシル基等の炭素数1〜12の直鎖または分岐鎖アルキル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等の不飽和アルキル基、あるいはフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基が好ましいものとしてあげられる。その中で、炭素数1〜8の直鎖または分岐鎖の飽和または不飽和アルキル基やアリール基がより好ましく、更にはtert−ブチル基、tert−オクチル基、フェニル基が特に好ましいものである。
【0023】
本発明に使用できるヒドロキシ芳香族カルボン酸は先述したように一般式(1)に記載の骨格を持つものであれば良いが、本発明の荷電制御剤を設計する上では、原料である芳香族ヒドロキシカルボン酸の性質を十分に考慮して選択する必要がある。
芳香族性が高いものや、分子量が大きいものは、親油性が強く相溶性、濡れ性に優れ結着樹脂中への分散性が良好である傾向がある。
一方、芳香族性が低いものや、分子量が小さいものは、分子中の−OHの割合が高くなり負帯電性が強くなる。
このような性質を考慮して設計することにより、トナーとして良好な特性を得ることができる。中でも3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸を用いることによりトナーとして良好な特性を得ることができる。
【0024】
ここで得られた芳香族ヒドロキシカルボン酸の亜鉛塩化合物は結着樹脂中への分散が良好で、かつトナー化した時の帯電安定性に優れている。また純粋な白色を呈していることからも、色汚れを起こさず、色再現性に優れ、カラートナー用の荷電制御剤としてとても優れた材料である。
【0025】
また荷電制御剤は粉砕機により、粉砕し、所望の粒度分布に調整することにより、より効果的に使用することができる。粉砕機の種類としてはジェットミル等の気流式衝突型粉砕機やターボミル、KTM、MVM、等の機械式衝撃式粉砕機があげられる。本発明の荷電制御剤として良好な粒度分布は体積平均粒径で0.5〜40μmであればよく、より好ましくは1〜20μmであることが良い。40μmよりも大きい粒径のものが含まれていると、結着樹脂中への荷電制御剤の分散が困難になりトナー中への荷電制御剤の分散が困難になってしまう。またトナー粒子あたりの荷電制御剤の含有量が偏ってしまいカブリの増加や機内飛散の原因にも繋がってしまう。一方、0.5μmよりも小さい粒径のものを用いると、結着樹脂中への分散は良好であるものの、荷電制御剤の比表面積が大きくなってしまいトナーに過度の帯電を付与してしまい帯電量が増大し画像濃度低下が生じてしまう場合がある。
【0026】
荷電制御剤の添加量は、通常、結着樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜5重量部、より好ましくは0.8〜3重量部である。
【0027】
本発明の結着樹脂は、水素添加率が50%以上である水添石油樹脂とスチレン系重合体とからなるものであり、原料の水添石油樹脂としては石油樹脂に残存している不飽和結合に水素を付加させて還元して得られた樹脂であり、水添石油樹脂、スチレン系重合体のどちらとも特に制限はなく、従来公知のもの、例えば水添石油樹脂の場合は脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、シクロペンタジエン系石油樹脂、脂環脂肪族系石油樹脂、これらの石油樹脂の原料モノマーを2種以上又は該原料モノマーと他の重合性モノマーとを共重合させてなる共重合体系石油樹脂等を水添したものを、スチレン系重合体の場合はスチレン及びその置換体の単重合体、スチレン系共重合体、架橋されたスチレン系重合体等を適宜選択して用いればよい。
水素添加率が50%以上である石油樹脂とスチレン系重合体とをトナー用結着樹脂として用いることにより透明性を十分に得ることができ、緑色トナーとして良好な色再現ができ、さらにスチレン系重合体を併用することにより石油樹脂の良好な透明性、低温定着性等の性能を維持し、かつトナーの保存安定性、環境安定性、製造時における粉砕性等の生産性等においても優れた結着樹脂を得ることができる。
【0028】
脂肪族系石油樹脂としては、例えばナフサ分解油のうち、沸点が−10〜100℃のC4〜C6留分に含まれる重合性成分、具体的にはC4留分:1−ブテン;2−ブテン;イソブテン;1,3−ブタジエン、C5留分:1−ペンテン;2−ペンテン;2−メチル−1−ブテン;3−メチル−1−ブテン;2−メチル−2−ブテン;1,3−ペンタジエン;シクロペンテン;シクロペンタジエン;2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)、C6留分:1−ヘキセン;2−ヘキセン;3−ヘキセン;4−メチル−1−ペンテン;4−メチル−2−ペンテン;2−メチル−2−ペンテン;2−メチル−1−ペンテン;3−メチル−2−ペンテン;2−エチル−1−ブテン;2,3−ジメチル−1−ブテン;2,3−ジメチル−2−ブテン;2,2−ジメチル−1−ブテン;1,3−ヘキサジエン;1,4−ヘキサジエン;2−メチル−1,4−ペンタジエン;3−メチル−1,4−ペンタジエン;1,5−ヘキサジエン;2,4−ヘキサジエン;2−メチル−1,3−ペンタジエン;3−メチル−1,3−ペンタジエン;4−メチル−1,3−ペンタジエン;シクロヘキセン;1,3−シクロヘキサジエン;1,4−シクロヘキサジエン;1−メチルシクロペンテン;3−メチルシクロペンテン;4−メチルシクロペンテンなど、およびこれらの重合性成分を精製したモノマーの中から選ばれた少なくとも一種を重合してなる樹脂を挙げることができる。
【0029】
芳香族系石油樹脂としては、例えばナフサ分解油のうち、C8〜C10留分を主体とした芳香族ビニル系モノマー(スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、インデン、アルキル置換インデン、アリルベンゼン、アリルトルエン、tert−ブチルトルエン、tert−ブチルアリルベンゼンなど)、およびこれらの成分を精製したモノマーの中から選ばれた少なくとも一種を重合してなる樹脂を挙げることができる。
【0030】
また、シクロペンタジエン系石油樹脂、脂環脂肪族系石油樹脂としては、例えばナフサ分解油のうち、沸点が−10〜50℃の留分中に含まれるジエン類やオレフィン類をディールスアルダー反応で環化二量化させてなる脂肪族環状不飽和炭化水素モノマー、およびその中の成分を精製したモノマーの中から選ばれた少なくとも一種を重合してなる樹脂を挙げることができる。
【0031】
共重合体系石油樹脂に用いられる他の重合性モノマーとしては、公知のモノマー、例えばエチレン、プロピレン、オクテン、ドデセンなどの炭素数2〜20の鎖状オレフィン、ピネンなどの炭素数7〜20の環状オレフィン、リモネン、ミルセンなどの炭素数6〜20のポリエン類、(メタ)アクリル酸のメチル、エチル、ブチル、オクチル、フェニル、スアテリルエステルなどの(メタ)アクリル酸エステル類、塩化ビニル;塩化ビニリデン;1,2−ジクロロエチレン;トリクロロエチレン;テトラクロロエチレン;フッ化ビニル;フッ化ビニリデン;1,2−ジフルオロエチレン;トリフルオロエチレン;テトラフルオロエチレン;臭化ビニルなどのハロゲン化ビニル類、トリアルキルビニルシラン、トリアルコキシビニルシランなどのビニルシラン類、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトンなどのα,β−不飽和ケトン類、さらにはアクリル酸、メタクリル酸、アクリロニトリル、酢酸ビニル、マレイン酸、マレイン酸エステル、無水マレイン酸、シクロプロパンおよびその誘導体、シクロブタンおよびその誘導体、オキセタンおよびその誘導体、テトラヒドロフランおよびその誘導体、アセチレンおよびその誘導体,α,β−不飽和アルデヒド、α,β−不飽和エステル、炭素数2〜10のジチオールなどが挙げられる。これらは単独でも、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
水添石油樹脂は、石油樹脂の不飽和部に水素を付加させたものであり、通常の石油樹脂に比べ淡色が図られ透明性が改善される。上記石油樹脂に水素添加を行う方法としては、一般の還元方法としてはいずれの方法を用いても良いが、特に接触還元法が用いられる。具体的にはニッケル、パラジウム、白金等の重金属触媒を用い、150〜250℃、30〜50kg/cm2の高温高圧下で水素を直接石油樹脂に作用させ、石油樹脂の不飽和二重結合に付加させる還元方法である。
【0033】
水素添加率は、水素で置換されていない石油樹脂の不飽和結合を定量することにより求められる。具体的には、水添石油樹脂に三塩化ヨウ素や一臭化ヨウ素などのハロゲンを作用させて水添石油樹脂中の不飽和結合と反応させ、反応によって吸収されたハロゲン量を測定し、その値をヨウ素化に換算する。そして水添率0%と100%(完全水添)の検量線を用いて水添率を求めることができる。また使用される石油樹脂の軟化点(環球式:JIS K6863−1994)は90〜140℃の範囲が好ましい。
【0034】
本発明に使用される水添石油樹脂は、水素添加率が50%以上であることが必須である。水素添加率が50%以上であればクリアで透明な色再現性に優れたトナーが得られるが、一方、水素添加率が50%よりも小さいと石油樹脂は白濁し、透明性がなくなり白みがかった色トナーとなってしまい、良好な色再現ができなくなってしまう。
【0035】
また水素添加率が50%以上の石油樹脂と荷電制御剤である前記の芳香族ヒドロキシカルボン酸のマグネシウム塩化合物を併用してトナーを得ることにより、品質の優れたトナーを得ることができる。そして帯電安定性、加熱保存安定性、環境安定性だけでなく色再現性、鮮明性、透明性に優れる点において、特にカラートナーに用いることが好ましい。
【0036】
本発明のトナーの結着樹脂として、石油樹脂とともに用いることのできるスチレン系重合体としては、例えば、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体、スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル系共重合体、スチレン−α−クロルメタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−ジメチルアミノエチルアクリレート共重合体、スチレン−ジエチルアミノエチルアクリレート共重合体、スチレン−ブチルアクリレート−ジエチルアミノエチルメタクリレート共重合体等のスチレン系共重合体、架橋されたスチレン系重合体などが挙げられる。
【0037】
上記スチレン−アクリル系共重合体に使用されるアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸やメタクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸2エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチルなどの(メタ)アクリル酸エステル類が挙げられ、更にはこれらと共に用いることができる単量体として、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、マレイン酸、マレイン酸ブチルなどのマレイン酸ハーフエステル、あるいはジエステル類、酢酸ビニル、塩化ビニル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテル、ビニルブチルエーテルなどのビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類を挙げることができる。
【0038】
また、上記の架橋したスチレン系重合体を製造するために用いる架橋剤としては、主として不飽和結合を2個以上有する化合物を挙げることができ、具体的には、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート等の不飽和結合を2個以上有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン等のジビニル化合物;および不飽和結合を3個以上有する化合物を、単独で或いは混合して使用することができる。上記架橋剤は、結着剤樹脂に対して、0.01〜10重量%、好ましくは0.05〜5重量%で用いられる。
【0039】
これらスチレン系樹脂は、単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。これらスチレン系樹脂のうち、GPC(ゲルパーミエイション・クロマトグラフィー)により測定される分子量分布で二山のピークを有するものであってもよい。更には2種以上の樹脂の併用としては、例えば前記スチレン樹脂とスチレン−アクリル系共重合体との併用あるいは2種以上のスチレン−アクリル系共重合体の併用などが好ましいものである。
【0040】
また、本発明においては、結着樹脂は、上記石油樹脂とスチレン系共重合体あるいはスチレン系重合体、さらに必要であれば他の樹脂を混練する、あるいは溶剤中において溶解混合するなど適宜の方法で均質化することにより製造される。この均質な組成物はトナーの製造前あるいはトナー製造時に行うことができる。本発明においては、結着樹脂は、トナー100重量部当り40〜95重量部であることが好ましい。
【0041】
スチレン系共重合体あるいはスチレン系重合体は、前記石油樹脂に対し重量比で、石油樹脂:スチレン系共重合体あるいはスチレン系重合体=2:8〜8:2の量で用いることが好ましい。石油樹脂の量が20重量%より少ない場合には、十分な透明性が得られないだけでなく、石油樹脂の定着性の寄与率が低減し、このため低温時の定着性が十分ではなく、また石油樹脂の量が80重量%を超えるとトナー粒子を製造する際に粉砕機中で融着が発生し、収量よく所望のトナー粒子を得ることができなくなる。
【0042】
本発明のトナーの構成成分としては、上記本発明の荷電制御剤、結着樹脂以外に、更に必要に応じトナーを構成する公知の材料である、着色剤、離型剤、滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等が内添または外添される。
【0043】
本発明に用いられる着色剤としては、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各着色剤が好適に用いられる。
【0044】
イエローの着色剤としては、ベンズイミダゾロン化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。
【0045】
マゼンタの着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254等が好適に用いられる。
【0046】
シアンの着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が好適に用いられる。
【0047】
黒の着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、鉄黒等が好適に用いられる。
【0048】
上記着色剤は、単独で或いは2種以上を混合して使用することができ、通常結着樹脂の100重量部に対し、0.1〜20重量部、好ましくは0.3〜10重量部の添加量がよい。
【0049】
本発明において使用する着色剤は上記のうち、BET法による比表面積が30〜300m2 /gのものを用いるとより好ましい効果を見い出すことができる。着色剤のBET法による比表面積が300m2 /gを超えるものを用いると、カブリが増大して、かつトナーの機内飛散が増大して行く傾向があり複写画像の品質が悪化してしまう場合がある。特に高温高湿環境では顕著にかぶりが生じ、機内中のトナー飛散が生じてしまう場合がある。また比表面積が30m2 /gより小さいものを用いると、着色剤の粒子がトナー粒子に十分な着色を行うことが困難になり、トナーとして所望の画像濃度を得ることができなくなる場合がある。ここで着色剤の比表面積とカブリの関係は一定の相関関係を見出すことができる。着色剤の比表面積とカブリの関係については、着色剤の分散性に大きな関係がある。着色剤の比表面積が300m2 /gを超えるとトナー粒子中への均一な分散が困難になり分散不良を起こしやすい。これによりトナー粒子中に着色剤の偏在が生じてしまうこととなりトナー粒子の抵抗値がばらついてしまい、均一な安定した電荷を保持することができなくなる。この着色剤の偏在が大きい物ほどカブリが生じやすい。この原因の1つとして荷電制御剤の粒子のまわりに着色剤が抱え込まれてしまい、荷電制御剤中の電荷が着色剤を介して漏出してしまいトナーとして安定した電荷を保持できなくなることがある。
特に比表面積が50m2 /g〜100m2 /gの範囲の着色剤を用いることが上記のより良い品質を満足し、更にトナー製造時においても安定して品質の優れたトナーを満足することができる。
【0050】
本発明の静電荷像現像用トナーを磁性トナーとして用いる場合に使用できる磁性材料としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の酸化鉄または二価金属と酸化鉄との化合物、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金の粉体及びこれらの混合物があげられる。これらの磁性材料は平均粒径が0.05〜2.0μm、好ましくは0.1〜0.5μm程度のものが望ましく、磁性トナー中に含有させる量としては結着樹脂100重量部に対して5〜150重量部、好ましくは10〜120重量部である。また必要に応じて磁性材料と着色剤を併用して用いることもできる。着色剤としては、例えばカーボンブラック、銅フタロシアニン、鉄黒などが用いられる。
【0051】
本発明の着色剤のBET比表面積測定は、乾燥した状態の着色剤サンプルを、気体吸着法(流動法)である、ユアサアイオニクス社製、マルチソープ12を用いて行った。キャリアガスとしては窒素−ヘリウムの混合ガスを用いた。そして脱着ピークの値からBET比表面積を算出した。
【0052】
また本発明のトナーには、従来トナー粒子を製造する際に用いられている離型剤を加えることができる。離型剤としては、例えば熱ロール定着時の離型性(オフセット防止性)を向上させる、脂肪族炭化水素、脂肪酸金属塩類、高級脂肪酸類、脂肪酸エステル類もしくはその部分ケン化物、シリコーンオイル、各種ワックスが挙げられる。これらの中では、重量平均分子量が1000〜10000程度の低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、パラフィンワックス等のワックス類が好ましい。
【0053】
本発明のトナーは、キャリアと混合して二成分系現像剤として使用することができる。本発明のトナーとともに用いることのできるキャリアとしては、従来公知のキャリアであればいずれであってもよい。使用することができるキャリアとしては、例えば、鉄粉、フェライト粉、ニッケル粉のような磁性粉体やガラスビーズ等、あるいはこれらの表面を樹脂などで処理したものが挙げられる。キャリア表面を被覆する樹脂としては、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル共重合体、フッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂など、あるいはこれらの混合物があげられる。これらのなかでは、スペントトナーの形成が少ないためフッ素含有樹脂、シリコーン含有樹脂が特に好ましい。
【0054】
本発明のトナーの粒径は、重量平均粒径が1〜30μm、好ましくは3〜15μmであることが望ましい。特に、5μm以下の粒径を有するトナー粒子が12〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有するトナー粒子が1〜33個数%含有され、16μm以上の粒径を有するトナー粒子が2.0重量%以下含有され、トナーの重量平均粒径が4〜12μmであるものが、現像特性のうえからはより好ましい。なお、トナーの粒度分布測定は、例えばコールターカウンターを用いて測定することができる。
【0055】
本発明のトナーは、さらに必要に応じて滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等のトナーの製造にあたり使用されている公知の添加剤を内添、あるいは外添することができるが、滑剤としては、ポリフッ化ビニリデン
、ステアリン酸亜鉛などが、流動性改良剤としては、乾式法あるいは湿式法で製造したシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物およびこれらを疎水性化処理したものなどが、研磨剤としては窒化珪素、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウムおよびこれらを疎水化処理したものなどが、導電性付与剤としては酸化スズなどがあげられる。また、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素含有重合体の微粉末は、流動性、研磨性、帯電安定性などの点から好ましいものである。
【0056】
なお、本発明においては、疎水化処理されたシリカ、疎水化処理された酸化アルミニウム、疎水化処理された珪素アルミニウム共酸化物あるいは疎水化処理された珪素チタン共酸化物微粉体を外添剤として用いることが好ましい。シリカ微粉体の疎水化処理としては、シリコーンオイルやジクロロジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、テトラメチルジシラザンなどのシランカップリング剤による処理等があげられる。これらはいずれも負極性であるため、負帯電性トナーとして使用するには好適であるが、正帯電性トナーとして使用する場合は、ブローオフ法により測定したときに、ノンコートフェライトキャリアコア粒子に対してプラスのトリボ電荷を有する正帯電性のシリカを用いることが好ましい。この正帯電性のシリカを得るためには、側鎖に窒素原子を少なくとも1つ有するオルガノ基を有するシリコーンオイル、あるいはアミノシラン類等の窒素含有のシランカップリング剤で処理すればよい。
疎水化処理されたシリカ微粉体の使用量は、現像剤重量あたり、0.01〜20%、好ましくは0.03〜5%である。
【0057】
本発明に係るトナーは、従来から公知のトナーの製造方法を用いて製造することができる。一般的には、上述したようなトナー構成材料を、ボールミル、ヘンシェルミキサーなどの混合機により充分混合したのち、熱ロールニーダー、一軸あるい
は二軸のエクストルーダーなどの熱混練機を用いて良く混練し、冷却固化させた後
、ハンマーミルなどの粉砕機を用いて機械的に粗粉砕し、次いでジェットミル等の気流式衝突型粉砕機やターボミル、KTM、MVM、等の機械式衝撃式粉砕機により中粉砕、微粉砕した後、分級する方法が好ましい。さらに分級した後、外添剤をヘンシェルミキサー等の混合機を用いて十分に混合した後、篩い工程を経て用いることが好ましい。
【0058】
しかし、トナーの製造法はこの方法に限られるものではなく、結着樹脂溶液中に他のトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥する方法、所謂マイクロカプセル法によりトナーを製造する方法、結着樹脂を形成する単量体に所定材料を混合し、乳化あるいは懸濁重合を行いトナーを得る重合法トナー製造法など他の方法も任意に採用することができる。
【0059】
本発明における有機顔料等と結着樹脂との溶融混練温度は、100〜140℃が好ましく、更に好ましくは110〜130℃である。上記の範囲で混練することによって、トナーの着色性等が向上する。
【0060】
本発明の静電荷像現像用トナーは、従来公知の電子写真、静電記録あるいは静電印刷法などを利用して乾式トナー画像を形成するいずれの方法あるいは装置に対しても好ましい現像用トナーとして使用することができる。
【0061】
なお、本発明においては、結着樹脂成分などの分子量分布はGPCにより次の条件で測定される。
【0062】
(GPC測定条件)
装置 :日本分光(株)製800シリーズ
検出器:RI
カラム:東ソー[MN,GMH6(7.5mmI.D×600mm)×2,G2000H8(7.5mmI.D×600mm)]
温度 :室温
溶媒 :THF
注入量:400μL
流量 :1.4ml
その他:THF室温溶解で濃度は20mg/10mlに調整
【0063】
【実施例】
以下製造例、実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下については、部数は全て重量部を表す。
【0064】
荷電制御剤製造例1(3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸の亜鉛塩化合物の製造)
最初に下記▲1▼、▲2▼の2つの水溶液を作製した。
▲1▼水1350gに水酸化ナトリウム24g(0.6モル)を溶解し、次いで3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸150g(0.6モル)を内温60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは7.41であった。
▲2▼水1050gに塩化亜鉛47.8g(0.35モル)を60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは8.03であった。
上記▲2▼の溶液を▲1▼に内温60〜65℃にて、2時間かけて滴下し、その後内温70〜80℃で1時間攪拌して沈殿物を得た。その時の溶液のpHは7.0であった。攪拌後、熱時濾過を行い、水1500gで水洗した.水洗終了時ではpHは7.37であった。得られた濾過物(wet)の重量は366gで最終的に、110℃で15時間乾燥し144.2gの荷電制御剤(A)を得た。荷電制御剤(A)は下記構造式(2)で表される化合物である。ジェットミルで粉砕し平均粒径8.0μmとした。
【0065】
【化3】
【0066】
荷電制御剤製造例2(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸の亜鉛塩化合物の製造)
最初に下記▲1▼、▲2▼の2つの水溶液を作製した。
▲1▼水1350gに水酸化ナトリウム24g(0.6モル)を溶解し、次いで3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸 113g(0.6モル)を内温60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは7.50であった。
▲2▼水1050gに塩化亜鉛47.8g(0.35モル)を60〜65℃で溶解した。溶解後のpHは8.05であった。
上記▲2▼の溶液を▲1▼に内温60〜65℃にて、2時間かけて滴下し、その後内温70〜80℃で1時間攪拌して沈殿物を得た。その時の溶液のpHは7.0であった。攪拌後、熱時濾過を行い、水1500gで水洗した.水洗終了時ではpHは7.26であった。得られた濾過物(wet)の重量は 325.0gで最終的に、110℃で15時間乾燥し125.7gの荷電制御剤(B)を得た。荷電制御剤(B)は下記構造式(3)で表される化合物である。ジェットミルで粉砕し平均粒径8.2μmとした。
【0067】
【化4】
【0068】
樹脂製造例1(樹脂Aの合成および樹脂組成物Bの製造)
温度計、攪拌機を備えたフラスコにナフサのスチームクラッキングで副生する初留140℃〜終留220℃の留分(重合可能成分:スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、イソプロペニルトルエン、インデン等)200重量部を仕込み、三フッ化硼素−フェノール錯体1重量部、フェノール7重量部を加えて70℃で3時間重合した。得られた反応混合溶液に2重量%の水酸化ナトリウム水溶液を加えて触媒を除去後、水洗を行った。次に反応混合溶液を中性になるまで水洗した後、有機層を蒸留し、未反応物および低重合物を除去することにより、石油樹脂A(Tg:43℃、Mw=1,450、Mn=730)を得た。
【0069】(水添処理)
窒素で置換した攪拌機付きの300ミリリットルオートクレーブ内にシクロヘキサン75g,製造例1で得られた石油樹脂A75g,0.5重量%のパラジウム担持シリカ・アルミナ触媒4.0gを仕込み、水素圧力4MPa,温度150℃で2時間水素添加反応を行った。反応物を冷却後取り出し、ろ過して触媒を除去したのち、蒸留により溶剤を除去して、水添石油樹脂A−1を得た。この水添樹脂A−1の水添率は74%であった。
【0070】
次に水添石油樹脂A−1、6.0Kgと市販のポリスチレン樹脂(Tg:102.0℃、Mw=340,195、Mn=111,082、極大値の位置280,000)4.0Kg、140℃の溶融粘度が10mPa/s(cp)(熱分析装置TGAで測定したときの200℃での重量減分は0%)のサゾールワックス0.4Kgをヘンシェルミキサーを用い混合した後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、均一な樹脂組成物Bを得た。
【0071】
樹脂製造例2(樹脂組成物Cの製造)
石油樹脂Aを用いて、水添処理の処理時間を1時間にする以外は製造例1と同様にして水添石油樹脂A−2を得た。この水添樹脂A−2の水添率は52%であった。次に水添石油樹脂A−2、6.0Kgと市販のポリスチレン樹脂(Tg:102.0℃、Mw=340,195、Mn=111,082、極大値の位置280,000)4.0Kg、140℃の溶融粘度が10mPa/s(cp)(熱分析装置TGAで測定したときの200℃での重量減分は0%)のサゾールワックス0.4Kgをヘンシェルミキサーを用い混合した後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、均一な樹脂組成物Cを得た。
【0072】
樹脂製造例3(樹脂組成物Dの製造)
石油樹脂Aを用いて、水添処理の処理時間を30分にする以外は製造例1と同様にして水添石油樹脂A−3を得た。この水添樹脂A−3の水添率は47%であった。次に水添石油樹脂A−3、6.0Kgと市販のポリスチレン樹脂(Tg:102.0℃、Mw=340,195、Mn=111,082、極大値の位置280,000)4.0Kg、140℃の溶融粘度が10mPa/s(cp)(熱分析装置TGAで測定したときの200℃での重量減分は0%)のサゾールワックス0.4Kgをヘンシェルミキサーを用い混合した後、スクリュー径30mmの二軸押出機を用い、均一な樹脂組成物Dを得た。
【0073】
実施例1
樹脂組成物B 93重量部
フタロシアニンブルー(C.I.Pigment Blue 15:3 比表面積 80m2/g) 5重量部
荷電制御剤(A)(平均粒径8.0μm) 2重量部
上記材料をヘンシェルミキサーで均一に混合した後、二軸加熱混練機に投入し混練、押し出されてきたものを室温で冷却し、ハンマーミルで粗粉砕してチップを得た。次いで、これをジェットミル粉砕機で微粉砕し、分級機に導き、10.5μmに平均粒度を有する部分をトナー用微粉末として取り出した。次いで、このトナー用微粉末100重量部に対し、疎水性シリカ微粉体0.4重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで混合して負帯電性シアントナーを得た。得られたトナー6部と平均粒径60μmのシリコーン樹脂コートのキャリア100部とをボールミルを用いて混合し現像剤を作製した。次にこのトナーと現像剤を用いて、市販の複写機CLC−800(キヤノン社製)により通常環境(23℃、50%RH)にて実写試験を行なった。得られたトナーおよび現像剤を用いたところ、鮮明なシアン色画像が得られ、5万枚実写後でもカブリは少なく、画像濃度も安定しており、機内のトナー飛散、画像汚れも見られなかった。初期および5万枚複写時の画像濃度は各々1.43および1.41であり、また初期および5万枚複写時のカブリは各々0.5および0.5であった。またこのときトナーは加熱放置後の品質を確認するために乾燥機中に50℃、24時間放置した後試験を行った。
【0074】
なお、画像濃度はマクベス光度計を用いて行い、1.35以上の濃度であればよい。なお、カブリはフォトボルトにて、反射率を測定することにより行った。1.2%以下が良好な値である。 また、トナーの機内飛散は、複写機の転写チャージャー上に飛散トナーが存在するか否かを確認することにより行った。転写チャージャー上にトナー飛散がみられる場合、これに伴い画像汚れが発生する。
【0075】
実施例2〜6、比較例1〜2
実施例1に用いた荷電制御剤(A)、着色剤及び樹脂組成物Bを用いる代わりに、表1に記載の材料を用いることを除き、実施例1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の荷電制御剤及び結着樹脂を用いることにより、帯電安定性、環境安定性、着色性、鮮明性、透明性に加えて耐光性に優れたトナーを得ることができる。
Claims (5)
- 芳香族ヒドロキシカルボン酸が、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸または3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸であることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用トナー。
- 水添石油樹脂を結着樹脂全体に対して20〜80重量%含有することを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
- 着色剤のBET法による比表面積が30〜300m2 /gであることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のトナー。
- 着色剤が、フタロシアニンブルー顔料、キナクリドン顔料、ベンズイミダゾロン顔料またはカーボンブラックのいずれかであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のトナー。
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