JP2004251666A - サーボ型絶対変位・速度センサ - Google Patents
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Abstract
【課題】振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力され、小型軽量かつ丈夫で、極低振動数から振動の測定を可能にするサーボ型絶対変位・速度センサを提供する。
【解決手段】振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対速度を検知する相対速度検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対速度信号を微分した相対加速度信号と上記相対速度信号と上記相対速度信号を積分した相対変位信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対速度を検知する相対速度検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対速度信号を微分した相対加速度信号と上記相対速度信号と上記相対速度信号を積分した相対変位信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、重りの振動を動的に抑制しつつ振動を計測するサーボ型センサに係り、特に、振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力され、小型軽量かつ丈夫で、極低振動数から振動の測定を可能にするサーボ型絶対変位・速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長大橋主塔、高層ビル、橋梁、弾性車体、配管系等の弾性構造物、宇宙構造物のような柔軟構造物の運動や振動を計測或いはフィードバック制御するために、構造物の絶対変位や絶対速度を検出することは不可欠である。
【0003】
例えば、建設中の長大橋主塔は単独で立っているので強風に対して渦励振と呼ばれる揺れを起こす。完成された高層ビルにおいても同様なことが起こる。この揺れによって、作業時の危険性、居住不快感等を起こすところから、最近ではこれらの構造物のアクティブ振動制御技術が普及し始めた。また、高層ビルや橋梁は大地震に対して共振を起こし破壊にいたることがあるので、振動制御技術の導入が検討され始めている。一方、最近3,4階建ての一般住宅が増加しているが、道路や鉄道で発生する地盤振動の卓越振動数とこれら建物の固有振動数とが接近、もしくは一致して起こる建物の揺れを防ぎ、居住性を良くするためにアクティブ振動制御技術が求められ始めた。アクティブ振動制御では状態フィードバック、もしくは出力フィードバックと言う方法が採られている。これは、振動制御対象の構造物の適切な複数箇所に取り付けた振動センサからの速度と変位情報に基づいて制御信号を作り、制振装置を制御する方法である。
【0004】
この速度・変位信号を得るために、従来サーボ型加速度計が用いられてきた。これは直接には加速度信号を検出し、この加速度信号を一度積分して速度信号、二度積分して変位信号を得るものであるが、積分することによって加速度信号以外の信号も積分してしまう。例えば、加速度信号を増幅するアンプ類にはドリフト等の直流分があり、この直流分を積分してしまうと、本来の制御目的が達成できないことが起こるという問題があった。この問題を解決するために、速度信号を直接検出するサーボ型速度センサが開発され、この速度信号を一度だけ積分して変位信号を得る方法が採られるようになった。しかし、このサーボ型速度センサは、後に述べる本質的理由によって、小型化が難しく重量が1Kg以上と重くなり、また、衝撃に弱く取り付け方向も制約されると言う種々な問題があった。
【0005】
最近では、大地震に対して橋梁や建物の破壊を防止するためにアクティブ振動制御技術の応用が検討され始めた。この際も速度と変位のセンサが不可欠であるが、衝撃に弱い従来のサーボ型速度センサでは使用できない。また、省エネルギの観点から乗用車の軽量化が求められているが、それに伴って車の振動が増加するために、思い切った軽量化が図れないのが現状である。車体が軽量化すれば弾性車体として取り扱い、アクティブ振動制御技術によってこの問題が解決できるのであるが、ここでも軽量・小型で衝撃に強く、しかも取り付け方向に制約を受けない速度・変位センサが必要となり、現状ではそのようなセンサが無いために、この技術が実現できない。
【0006】
近未来建設が予定されている宇宙構造物においても、居住性、地上との通信精度向上などの理由で振動制御が重要な課題とされているが、ここでも軽量・小型化されたセンサが命題である。
【0007】
以上に述べたように、現在市販されているサーボ型加速度センサやサーボ型速度センサには種々な問題があり、アクティブ振動制御技術を発展させる上で大きな障害となっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平09−079900号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来のサーボ型速度センサの速度検出原理を図8によって説明する。センサ本体1の測定面A側からバネ定数kなる支持バネ2で支えられた質量mの重り3がセンサ本体1と重り3の間に挿入された電磁アクチュエータ5によって駆動されるようになっている。ここで、xは重り3の上下動変位、fcはアクチュエータ5の駆動力である。センサ本体1と重り3の間の相対変位信号u−xは、ギャップセンサ4によって検出され増幅アンプによってゲインKaだけ増幅され、コンデンサ(容量Cf)と抵抗器(抵抗Rf)から成る近似微分回路を通って出力電圧Eとなる。この信号がサーボアンプ6によってゲインKcで増幅され電磁アクチュエータ5を駆動する。この関係を信号伝達線図で表したものを図9に示す。これより、測定面の変位信号uに対する出力電圧Eの関係を伝達関数として表すと次のようになる。ここに、sは微分演算子である。
【0010】
【数1】
【0011】
この伝達関数において、分子と分母の多項式の関係を周波数特性として模式的に現したものを図10に示す。伝達関数s3 が支配する領域は60dB/decの勾配でゲインが増加し、s2 が支配する領域では40dB/dec、sが支配する領域では20dB/dec、1が支配する領域で0dB/decになっている。この20dB/decの領域が速度検出可能範囲である。この範囲が広いほど使用領域が広いことになる。これは分母のs2 の項が他の項よりも十分大きい場合に満たされる。そのことを仮定すれば次のような近似が成り立つ。
【0012】
【数2】
【0013】
この仮定を満たす係数項は重りの質量mが支持バネのバネ定数kよりも十分に大きく、かつCfRfよりも十分に大きい条件を満たすことが必要である。そのために、重りの質量mを大きくすることと弱いバネ(バネ定数kが小さい)を使うことが必要条件となるのである。その結果、従来のサーボ型速度センサでは、軽量小型に作ることが不可能であり、衝撃に弱いことは避けられない。しかも弱いバネを使うことによって、取り付け位置や方向が水平面に制約され、斜めに取り付けることや垂直面に取り付けることが不可能となり、使用上の大きな制約と限定を受けることになっている。
【0014】
以上のことから本発明で解決すべき課題を列挙すると次のようになる。
(1)軽量小型化する。
(2)衝撃に強い構造にする。
(3)取り付けの制約を受けないようにする。
(4)速度と変位を同時に測定できるようにする。
【0015】
上記した課題は、特許文献1によりある程度解決された。しかし、低い振動数まで振動の絶対速度と絶対変位が測定できるようにするには,センサの固有振動数を低振動数に設定できなければならない。従来の技術ではこの問題が解決できなかったために,未だ数Hzの振動が測定できる振動の絶対速度及び絶対変位測定用センサが世の中に存在していない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力され、小型軽量かつ丈夫で、極低振動数から振動の測定を可能にするサーボ型絶対変位・速度センサを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の第1の発明は、振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対速度を検知する相対速度検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対速度信号を微分した相対加速度信号と上記相対速度信号と上記相対速度信号を積分した相対変位信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにしたものである。
【0018】
上記の手段によって,本発明のサーボ回路で相対変位信号を増幅して正帰還することによって作られるサーボバネ定数と、相対加速度信号を負帰還することによって作られるサーボ質量によって、理論上はセンサの固有振動数を零に近づけることができる。
【0019】
上記サーボ回路は、上記相対加速度信号を負帰還し、上記相対変位信号を上記電磁アクチュエータに正帰還してもよい。
【0020】
上記サーボ回路は、上記相対速度信号を増幅する出力用増幅器と、この増幅された相対速度信号を微分する微分回路と、この微分による相対加速度信号を増幅して負帰還する加速度帰還用増幅器と、上記増幅された相対速度信号を積分する積分回路と、この積分による相対変位信号を増幅して正帰還する変位帰還用増幅器と、これら帰還される相対加速度信号及び相対速度信号及び相対変位信号を加算して上記電磁アクチュエータに出力する加算器とからなってもよい。
【0021】
上記相対速度検知器は、上記重りに取り付けられた速度検知用コイルと、上記センサ本体に取り付けられた永久磁石による磁気回路とからなり、上記速度検知用コイルが上記磁気回路内で振動するとき出力電圧が形成されてもよい。
【0022】
また、第2の発明は、振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対変位を検知する相対変位検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対変位信号を微分した相対速度信号と上記相対変位信号と上記相対変位信号を2回微分した相対加速度信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにしたものである。
【0023】
上記相対変位検知器は、上記センサ本体に設けられ上記重りに臨む光源及び受光器からなり、上記重りの表面には変位に応じて光反射量を変化させるための反射面が形成されてもよい。
【0024】
上記相対加速度信号を負帰還してもよい。
【0025】
上記支持バネは、その振動方向に直交する面を有する板バネからなってもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態には2種類がある。1つは相対速度検知器を用いた形態で第1の発明に属する。他の1つは相対変位検知器を用いた形態で第2の発明に属する。
【0027】
図1には、相対速度検知器を用いた形態を示す。図示されるように、本発明のサーボ型絶対変位・速度センサは、振動する対象物の測定面Aに設置されるセンサ本体1と、このセンサ本体1の測定面A側より立ち上げられた支持バネ2と、この支持バネ2で支持された重り3と、センサ本体1及び重り3間の相対速度を検知する相対速度検知器4と、センサ本体1に固定された磁気回路(図4参照)及び重り3に連結された電磁コイル(図4参照)を有し測定面Aに垂直な方向に重り3を負荷として駆動する電磁アクチュエータ5と、相対速度検知器4で検知した相対速度信号及びその相対速度信号を微分した相対加速度信号及び上記相対速度信号を積分した相対変位信号を電磁アクチュエータ5に帰還するサーボ回路10とからなる。
【0028】
サーボ回路10は、相対速度信号を利得Kaで増幅する速度出力用増幅器11と、この増幅された相対速度信号を積分して相対変位信号を得る積分器12と、上記増幅された相対速度信号を微分するべく容量Cfの容量素子及び抵抗Rfの抵抗素子からなる微分回路13と、速度出力用増幅器11で増幅された相対速度信号を利得Kvで増幅して帰還する速度帰還用増幅器14と、微分回路13での微分による相対加速度信号を利得KA で増幅して負帰還する加速度帰還用増幅器15と、積分器12での積分による相対変位信号を利得KD で増幅して正帰還する変位帰還用増幅器16と、これら相対加速度信号及び相対速度信号及び相対変位信号を加算してその加算結果による駆動信号を電磁アクチュエータ5に出力する利得Kfの加算器17とからなる。
【0029】
図2には、相対変位検知器8を用いた形態を示す。このサーボ型絶対変位・速度センサは、図1における相対変位検知器4を相対変位検知器8に置き換えたものであり、センサ本体1及び重り3間の相対変位を検知する相対変位検知器8にはギャップセンサ等を用いる。サーボ回路10において、相対変位検知器8で検出された相対変位信号は第一段の微分回路13によって微分され、相対速度信号となる。さらに、この相対速度信号が第二段の微分回路13によって微分され、相対加速度信号となる。後の信号処理は図1の内容と同じである。
【0030】
図2から運動方程式と回路方程式を導き、これらの方程式による特性を信号伝達線図として表したものを図3に示す。この特性から測定面変位uに対する出力変位信号eD の伝達関数を表すと次式(3)のようになる。これについては、本発明者が学会で発表した文献(The Development of a Displacement and Velocity Sensor for Vibration Control)に詳細が示してある。図2から運動方程式と回路方程式を導いても、同じ結果が得られる。
【0031】
【数3】
【0032】
ここに、mは重りの質量、cは重り3に加わる減衰係数、kは支持バネのバネ定数、T=RfCfは微分回路の時定数である。また、ωnは本センサの固有振動数、ζは本センサの減衰比、Aは本センサの感度係数である。
【0033】
【数4】
【0034】
式(3)において、
【0035】
【数5】
【0036】
であれば,式(3)は式(8)のように簡略化される。
【0037】
【数6】
【0038】
この式(8)の意味するところは、本サーボ型絶対変位・速度センサで出力される変位信号eD を測定すれば、測定面Aの絶対変位uが分かると云うことである。
【0039】
同様にして,測定面変位uに対する出力速度信号eV の伝達関数を表すと次式(9)のようになる。
【0040】
【数7】
【0041】
この式(9)においても,式(7)の条件下で次のようになる。
【0042】
【数8】
【0043】
この式(10)の意味するところも、本サーボ型絶対変位・速度センサで出力される速度信号eV を測定すれば、測定面Aの絶対速度uが分かると云うことである。
【0044】
このようにして,式(7)の条件下、すなわちセンサの固有振動数より振動の測定対象の角振動数が大きい条件下では、振動の測定対象の絶対速度と絶対変位が測定できることが分かったが、問題となるのは低い振動数まで振動の絶対速度と絶対変位が測定できるようにするには、センサの固有振動数を低振動数に設定できなければならないと云うことである。従来の技術ではこの問題が解決できなかったために、未だ数Hzの振動が測定できる振動の絶対速度と絶対変位測定用センサが世の中に存在していない。
【0045】
この問題は、本センサの構成によって得られた式(4)と式(5)によって解決できる。すなわち、式(4)の分子項は支持バネのバネ定数とサーボ回路で作られたサーボバネ定数の差を示している。サーボバネ定数が負の符号を取るのは、相対変位信号を利得KD で増幅して正帰還した効果である。この利得KD を増加することによって分子項の左側項kに対し右側項の値を近付け、分子項を止めどなく小さくできる。また、式(5)の分母項は重りの質量にサーボ回路で作られたサーボ質量が加算されている。これは相対加速度信号を利得KA で増幅して負帰還することによって得られた効果である。この利得KA を増加することによって分母項も止めどなく大きくできる。このようにして,本発明のサーボ回路で作られたサーボバネ定数とサーボ質量によって、理論上はセンサの固有振動数を零に近づけることができる。このように、本発明のセンサでは重りの質量は小さくとも、またバネのバネ定数は低下させなくとも、サーボバネ定数とサーボ質量と呼ぶサーボ制御で作られた仮想の物理量によって固有振動数を下げることができるので、小型軽量で有りながらある程度強いバネが使えて、衝撃に強い構造が実現できる。また、式(5)はセンサの位相特性に関与する減衰比を表しており,この値は相対速度信号を利得KV で増幅して帰還することによって任意に調整できる。本センサでは、減衰比が小さ過ぎれば負帰還、大き過ぎれば正帰還に切り換えるような仕組みになっている。
【0046】
本発明のセンサのもう一つの大きな特長は、上記相対加速度を負帰還することによって、振動する対象物の動きに対して支持バネで支持された重りの動きを抑制し、振動する対象物の絶対変位の測定範囲を大幅に広げることを可能にしたことである。このことを説明するために、上記信号伝達線図から測定面の振動振幅uに対するセンサ本体と重りの相対変位u−xの伝達関数を導くと次式(11)のようになる。
【0047】
【数9】
【0048】
再び式(7)を用いて近似を行うと、
【0049】
【数10】
【0050】
となり、相対加速度利得KA の増加によって式(12)は1よりも十分に小さくなることが分かる。このことは重りの可動範囲が小さくても大きな振動振幅を測ることができることになり,センサの小型化が可能になることを示している。例えば、(u−x)/u=0.1では1の可動範囲で10倍の振幅が測れることになり、大幅なセンサの小型化が可能になる。
【0051】
本発明を具体化した実施形態の一例を図4に示す。この例では,測定面Aは水平方向に振動する対象物の振動を測定するために設置する。測定面A上にセンサ本体1が設けられ、そのセンサ本体1の上部から吊り下げられた平行板状バネ20の下部に、電磁アクチュエータの電磁コイル21と相対速度センサの電磁コイル23が取り付けられている。これら電磁コイル21及び電磁コイル23の質量を合わせたものが重り31の質量mとなる。磁気回路22は電磁アクチュエータの駆動用に設けられ、磁気回路24は相対速度検知器4として出力電圧を得るために設けられている。この構造を簡略化するために、電磁アクチュエータの電磁コイル21の外側に相対速度センサの電磁コイル23を重ねて巻いてもよい。この実施形態では、平行板状バネ20はプラスチック製であり、この平行板状バネ20のバネ定数は平行板状バネ20の上下端の切り込みをの深さを変えることによって変えることができる。別の実施形態として、平行板状バネ20は燐青銅板でもよい。
【0052】
本発明を具体化した実施形態の別の例を図5に示す。図4が相対速度検出用検知器4を用いているのに対して、この例では、相対変位を検知する相対変位検知器8を用いている。この相対変位検知器8は、センサ本体1に設けられ、重り32としての電磁コイル21に取り付けられ振動方向に直交した反射面を有する反射板25と、この反射板25の反射面に対して振動方向から臨む光源27及び受光器26とからなり、反射板25が光源27に近づくと受光器26の電圧が高まり、反射板25が光源27から遠ざかると受光器26の電圧が下がる。反射板25を挟んで両側に置いた2組の光源27及び受光器26で得られた電圧を差動増幅することによって線形性の改善を図っている。この相対速度検知器8はインダクタンスの変化などを利用したギャップセンサを用いてもよい。
【0053】
図6に、図5の実施形態によって試作したサーボ型絶対変位・速度センサによって得られた周波数応答の実測値を示す。元のセンサ(サーボをかけない状態のこと)の固有振動数が9Hzにあり、この場合は20Hz以上で絶対変位が測定可能である。本発明ではサーボ回路により重り31の振動を制御したことにより、固有振動数は2Hzに低下しており、絶対変位の測定範囲が3Hzから40Hzまでに低周波振動数側に広げられていることが分る。さらに、ゲインは10dB低下しており、重り31の可動範囲で3倍以上の振動振幅の測定が可能であることが分る。
【0054】
図7に、図4の実施形態によって試作したサーボ型絶対変位・速度センサによって得られた周波数応答の実測値を示す。この場合は、元のセンサの固有振動数が6Hzにあり、15Hz以上で絶対変位が測定可能である。本発明のサーボ回路により重り32を制御したことにより、固有振動数は2Hzに低下しており、絶対変位の測定範囲が3Hzから40Hzまでに低周波振動数側に広げられており、さらに改善が図られていることが分る。また、この場合もゲインは10dB低下しており、重り32の可動範囲で3倍以上の振動振幅の測定が可能であることが分る。
【0055】
なお、特許文献1との相違は、以下のようになっている。
【0056】
(1)サーボ回路に相対加速度の負帰還を加えたこと。
【0057】
(2)上記相対加速度の負帰還によってセンサの固有振動数がより極低振動数に設定できるようになったこと。
【0058】
(3)固有振動数がより極低振動数に設定されたことにより、重りの振動が抑制され、測定する対象物の測定振幅範囲が拡大できるようになったこと。
【0059】
(4)上記(3)の結果、より小型のセンサが実現できること。
【0060】
(5)相対加速度の負帰還方法を具体化する2つの検知器が実現されたこと。
【0061】
(6)1つの検知器は、センサ本体と重りとの間の相対速度を検知する検知器であり、その相対速度を微分する微分回路を設けたこと。
【0062】
(7)上記(6)により、堅牢なセンサが構成できるようになったこと。
【0063】
(8)1つの検知器は、センサ本体と重りとの間の相対変位を検知する検知器であり、その相対変位を2度微分する微分回路を設けたこと。
【0064】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
(1)振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力される。
(2)極低振動数から振動の測定を可能にする。
(3)絶対加速度帰還の効果によって測定する対象物の測定振幅範囲が拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図3】図1及び図2のサーボ型絶対変位・速度センサの信号伝達線図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図5】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図6】図5のサーボ型絶対変位・速度センサの周波数応答の測定結果を示す周波数対位相特性及び周波数対利得特性図である。
【図7】図5のサーボ型絶対変位・速度センサの周波数応答の測定結果を示す周波数対位相特性及び周波数対利得特性図である。
【図8】従来のサーボ型速度センサの構成図である。
【図9】図8のサーボ型速度センサの信号伝達線図である。
【図10】図8のサーボ型速度センサの周波数対利得特性図である。
【符号の説明】
1 センサ本体
2,20 支持バネ
3,31,32 重り
4 相対速度検知器
5 電磁アクチュエータ
8 相対変位検出器
10 サーボ回路
11 速度出力用増幅器
12 積分器
13 微分回路
14 速度帰還用増幅器
15 加速度帰還用増幅器
16 変位帰還用増幅器
17 加算器
21,23 電磁コイル
22,24 磁気回路
25 反射板
26 受光器
27 光源
【発明の属する技術分野】
本発明は、重りの振動を動的に抑制しつつ振動を計測するサーボ型センサに係り、特に、振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力され、小型軽量かつ丈夫で、極低振動数から振動の測定を可能にするサーボ型絶対変位・速度センサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
長大橋主塔、高層ビル、橋梁、弾性車体、配管系等の弾性構造物、宇宙構造物のような柔軟構造物の運動や振動を計測或いはフィードバック制御するために、構造物の絶対変位や絶対速度を検出することは不可欠である。
【0003】
例えば、建設中の長大橋主塔は単独で立っているので強風に対して渦励振と呼ばれる揺れを起こす。完成された高層ビルにおいても同様なことが起こる。この揺れによって、作業時の危険性、居住不快感等を起こすところから、最近ではこれらの構造物のアクティブ振動制御技術が普及し始めた。また、高層ビルや橋梁は大地震に対して共振を起こし破壊にいたることがあるので、振動制御技術の導入が検討され始めている。一方、最近3,4階建ての一般住宅が増加しているが、道路や鉄道で発生する地盤振動の卓越振動数とこれら建物の固有振動数とが接近、もしくは一致して起こる建物の揺れを防ぎ、居住性を良くするためにアクティブ振動制御技術が求められ始めた。アクティブ振動制御では状態フィードバック、もしくは出力フィードバックと言う方法が採られている。これは、振動制御対象の構造物の適切な複数箇所に取り付けた振動センサからの速度と変位情報に基づいて制御信号を作り、制振装置を制御する方法である。
【0004】
この速度・変位信号を得るために、従来サーボ型加速度計が用いられてきた。これは直接には加速度信号を検出し、この加速度信号を一度積分して速度信号、二度積分して変位信号を得るものであるが、積分することによって加速度信号以外の信号も積分してしまう。例えば、加速度信号を増幅するアンプ類にはドリフト等の直流分があり、この直流分を積分してしまうと、本来の制御目的が達成できないことが起こるという問題があった。この問題を解決するために、速度信号を直接検出するサーボ型速度センサが開発され、この速度信号を一度だけ積分して変位信号を得る方法が採られるようになった。しかし、このサーボ型速度センサは、後に述べる本質的理由によって、小型化が難しく重量が1Kg以上と重くなり、また、衝撃に弱く取り付け方向も制約されると言う種々な問題があった。
【0005】
最近では、大地震に対して橋梁や建物の破壊を防止するためにアクティブ振動制御技術の応用が検討され始めた。この際も速度と変位のセンサが不可欠であるが、衝撃に弱い従来のサーボ型速度センサでは使用できない。また、省エネルギの観点から乗用車の軽量化が求められているが、それに伴って車の振動が増加するために、思い切った軽量化が図れないのが現状である。車体が軽量化すれば弾性車体として取り扱い、アクティブ振動制御技術によってこの問題が解決できるのであるが、ここでも軽量・小型で衝撃に強く、しかも取り付け方向に制約を受けない速度・変位センサが必要となり、現状ではそのようなセンサが無いために、この技術が実現できない。
【0006】
近未来建設が予定されている宇宙構造物においても、居住性、地上との通信精度向上などの理由で振動制御が重要な課題とされているが、ここでも軽量・小型化されたセンサが命題である。
【0007】
以上に述べたように、現在市販されているサーボ型加速度センサやサーボ型速度センサには種々な問題があり、アクティブ振動制御技術を発展させる上で大きな障害となっている。
【0008】
【特許文献1】
特開平09−079900号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来のサーボ型速度センサの速度検出原理を図8によって説明する。センサ本体1の測定面A側からバネ定数kなる支持バネ2で支えられた質量mの重り3がセンサ本体1と重り3の間に挿入された電磁アクチュエータ5によって駆動されるようになっている。ここで、xは重り3の上下動変位、fcはアクチュエータ5の駆動力である。センサ本体1と重り3の間の相対変位信号u−xは、ギャップセンサ4によって検出され増幅アンプによってゲインKaだけ増幅され、コンデンサ(容量Cf)と抵抗器(抵抗Rf)から成る近似微分回路を通って出力電圧Eとなる。この信号がサーボアンプ6によってゲインKcで増幅され電磁アクチュエータ5を駆動する。この関係を信号伝達線図で表したものを図9に示す。これより、測定面の変位信号uに対する出力電圧Eの関係を伝達関数として表すと次のようになる。ここに、sは微分演算子である。
【0010】
【数1】
【0011】
この伝達関数において、分子と分母の多項式の関係を周波数特性として模式的に現したものを図10に示す。伝達関数s3 が支配する領域は60dB/decの勾配でゲインが増加し、s2 が支配する領域では40dB/dec、sが支配する領域では20dB/dec、1が支配する領域で0dB/decになっている。この20dB/decの領域が速度検出可能範囲である。この範囲が広いほど使用領域が広いことになる。これは分母のs2 の項が他の項よりも十分大きい場合に満たされる。そのことを仮定すれば次のような近似が成り立つ。
【0012】
【数2】
【0013】
この仮定を満たす係数項は重りの質量mが支持バネのバネ定数kよりも十分に大きく、かつCfRfよりも十分に大きい条件を満たすことが必要である。そのために、重りの質量mを大きくすることと弱いバネ(バネ定数kが小さい)を使うことが必要条件となるのである。その結果、従来のサーボ型速度センサでは、軽量小型に作ることが不可能であり、衝撃に弱いことは避けられない。しかも弱いバネを使うことによって、取り付け位置や方向が水平面に制約され、斜めに取り付けることや垂直面に取り付けることが不可能となり、使用上の大きな制約と限定を受けることになっている。
【0014】
以上のことから本発明で解決すべき課題を列挙すると次のようになる。
(1)軽量小型化する。
(2)衝撃に強い構造にする。
(3)取り付けの制約を受けないようにする。
(4)速度と変位を同時に測定できるようにする。
【0015】
上記した課題は、特許文献1によりある程度解決された。しかし、低い振動数まで振動の絶対速度と絶対変位が測定できるようにするには,センサの固有振動数を低振動数に設定できなければならない。従来の技術ではこの問題が解決できなかったために,未だ数Hzの振動が測定できる振動の絶対速度及び絶対変位測定用センサが世の中に存在していない。
【0016】
そこで、本発明の目的は、上記課題を解決し、振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力され、小型軽量かつ丈夫で、極低振動数から振動の測定を可能にするサーボ型絶対変位・速度センサを提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明の第1の発明は、振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対速度を検知する相対速度検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対速度信号を微分した相対加速度信号と上記相対速度信号と上記相対速度信号を積分した相対変位信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにしたものである。
【0018】
上記の手段によって,本発明のサーボ回路で相対変位信号を増幅して正帰還することによって作られるサーボバネ定数と、相対加速度信号を負帰還することによって作られるサーボ質量によって、理論上はセンサの固有振動数を零に近づけることができる。
【0019】
上記サーボ回路は、上記相対加速度信号を負帰還し、上記相対変位信号を上記電磁アクチュエータに正帰還してもよい。
【0020】
上記サーボ回路は、上記相対速度信号を増幅する出力用増幅器と、この増幅された相対速度信号を微分する微分回路と、この微分による相対加速度信号を増幅して負帰還する加速度帰還用増幅器と、上記増幅された相対速度信号を積分する積分回路と、この積分による相対変位信号を増幅して正帰還する変位帰還用増幅器と、これら帰還される相対加速度信号及び相対速度信号及び相対変位信号を加算して上記電磁アクチュエータに出力する加算器とからなってもよい。
【0021】
上記相対速度検知器は、上記重りに取り付けられた速度検知用コイルと、上記センサ本体に取り付けられた永久磁石による磁気回路とからなり、上記速度検知用コイルが上記磁気回路内で振動するとき出力電圧が形成されてもよい。
【0022】
また、第2の発明は、振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対変位を検知する相対変位検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対変位信号を微分した相対速度信号と上記相対変位信号と上記相対変位信号を2回微分した相対加速度信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにしたものである。
【0023】
上記相対変位検知器は、上記センサ本体に設けられ上記重りに臨む光源及び受光器からなり、上記重りの表面には変位に応じて光反射量を変化させるための反射面が形成されてもよい。
【0024】
上記相対加速度信号を負帰還してもよい。
【0025】
上記支持バネは、その振動方向に直交する面を有する板バネからなってもよい。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態には2種類がある。1つは相対速度検知器を用いた形態で第1の発明に属する。他の1つは相対変位検知器を用いた形態で第2の発明に属する。
【0027】
図1には、相対速度検知器を用いた形態を示す。図示されるように、本発明のサーボ型絶対変位・速度センサは、振動する対象物の測定面Aに設置されるセンサ本体1と、このセンサ本体1の測定面A側より立ち上げられた支持バネ2と、この支持バネ2で支持された重り3と、センサ本体1及び重り3間の相対速度を検知する相対速度検知器4と、センサ本体1に固定された磁気回路(図4参照)及び重り3に連結された電磁コイル(図4参照)を有し測定面Aに垂直な方向に重り3を負荷として駆動する電磁アクチュエータ5と、相対速度検知器4で検知した相対速度信号及びその相対速度信号を微分した相対加速度信号及び上記相対速度信号を積分した相対変位信号を電磁アクチュエータ5に帰還するサーボ回路10とからなる。
【0028】
サーボ回路10は、相対速度信号を利得Kaで増幅する速度出力用増幅器11と、この増幅された相対速度信号を積分して相対変位信号を得る積分器12と、上記増幅された相対速度信号を微分するべく容量Cfの容量素子及び抵抗Rfの抵抗素子からなる微分回路13と、速度出力用増幅器11で増幅された相対速度信号を利得Kvで増幅して帰還する速度帰還用増幅器14と、微分回路13での微分による相対加速度信号を利得KA で増幅して負帰還する加速度帰還用増幅器15と、積分器12での積分による相対変位信号を利得KD で増幅して正帰還する変位帰還用増幅器16と、これら相対加速度信号及び相対速度信号及び相対変位信号を加算してその加算結果による駆動信号を電磁アクチュエータ5に出力する利得Kfの加算器17とからなる。
【0029】
図2には、相対変位検知器8を用いた形態を示す。このサーボ型絶対変位・速度センサは、図1における相対変位検知器4を相対変位検知器8に置き換えたものであり、センサ本体1及び重り3間の相対変位を検知する相対変位検知器8にはギャップセンサ等を用いる。サーボ回路10において、相対変位検知器8で検出された相対変位信号は第一段の微分回路13によって微分され、相対速度信号となる。さらに、この相対速度信号が第二段の微分回路13によって微分され、相対加速度信号となる。後の信号処理は図1の内容と同じである。
【0030】
図2から運動方程式と回路方程式を導き、これらの方程式による特性を信号伝達線図として表したものを図3に示す。この特性から測定面変位uに対する出力変位信号eD の伝達関数を表すと次式(3)のようになる。これについては、本発明者が学会で発表した文献(The Development of a Displacement and Velocity Sensor for Vibration Control)に詳細が示してある。図2から運動方程式と回路方程式を導いても、同じ結果が得られる。
【0031】
【数3】
【0032】
ここに、mは重りの質量、cは重り3に加わる減衰係数、kは支持バネのバネ定数、T=RfCfは微分回路の時定数である。また、ωnは本センサの固有振動数、ζは本センサの減衰比、Aは本センサの感度係数である。
【0033】
【数4】
【0034】
式(3)において、
【0035】
【数5】
【0036】
であれば,式(3)は式(8)のように簡略化される。
【0037】
【数6】
【0038】
この式(8)の意味するところは、本サーボ型絶対変位・速度センサで出力される変位信号eD を測定すれば、測定面Aの絶対変位uが分かると云うことである。
【0039】
同様にして,測定面変位uに対する出力速度信号eV の伝達関数を表すと次式(9)のようになる。
【0040】
【数7】
【0041】
この式(9)においても,式(7)の条件下で次のようになる。
【0042】
【数8】
【0043】
この式(10)の意味するところも、本サーボ型絶対変位・速度センサで出力される速度信号eV を測定すれば、測定面Aの絶対速度uが分かると云うことである。
【0044】
このようにして,式(7)の条件下、すなわちセンサの固有振動数より振動の測定対象の角振動数が大きい条件下では、振動の測定対象の絶対速度と絶対変位が測定できることが分かったが、問題となるのは低い振動数まで振動の絶対速度と絶対変位が測定できるようにするには、センサの固有振動数を低振動数に設定できなければならないと云うことである。従来の技術ではこの問題が解決できなかったために、未だ数Hzの振動が測定できる振動の絶対速度と絶対変位測定用センサが世の中に存在していない。
【0045】
この問題は、本センサの構成によって得られた式(4)と式(5)によって解決できる。すなわち、式(4)の分子項は支持バネのバネ定数とサーボ回路で作られたサーボバネ定数の差を示している。サーボバネ定数が負の符号を取るのは、相対変位信号を利得KD で増幅して正帰還した効果である。この利得KD を増加することによって分子項の左側項kに対し右側項の値を近付け、分子項を止めどなく小さくできる。また、式(5)の分母項は重りの質量にサーボ回路で作られたサーボ質量が加算されている。これは相対加速度信号を利得KA で増幅して負帰還することによって得られた効果である。この利得KA を増加することによって分母項も止めどなく大きくできる。このようにして,本発明のサーボ回路で作られたサーボバネ定数とサーボ質量によって、理論上はセンサの固有振動数を零に近づけることができる。このように、本発明のセンサでは重りの質量は小さくとも、またバネのバネ定数は低下させなくとも、サーボバネ定数とサーボ質量と呼ぶサーボ制御で作られた仮想の物理量によって固有振動数を下げることができるので、小型軽量で有りながらある程度強いバネが使えて、衝撃に強い構造が実現できる。また、式(5)はセンサの位相特性に関与する減衰比を表しており,この値は相対速度信号を利得KV で増幅して帰還することによって任意に調整できる。本センサでは、減衰比が小さ過ぎれば負帰還、大き過ぎれば正帰還に切り換えるような仕組みになっている。
【0046】
本発明のセンサのもう一つの大きな特長は、上記相対加速度を負帰還することによって、振動する対象物の動きに対して支持バネで支持された重りの動きを抑制し、振動する対象物の絶対変位の測定範囲を大幅に広げることを可能にしたことである。このことを説明するために、上記信号伝達線図から測定面の振動振幅uに対するセンサ本体と重りの相対変位u−xの伝達関数を導くと次式(11)のようになる。
【0047】
【数9】
【0048】
再び式(7)を用いて近似を行うと、
【0049】
【数10】
【0050】
となり、相対加速度利得KA の増加によって式(12)は1よりも十分に小さくなることが分かる。このことは重りの可動範囲が小さくても大きな振動振幅を測ることができることになり,センサの小型化が可能になることを示している。例えば、(u−x)/u=0.1では1の可動範囲で10倍の振幅が測れることになり、大幅なセンサの小型化が可能になる。
【0051】
本発明を具体化した実施形態の一例を図4に示す。この例では,測定面Aは水平方向に振動する対象物の振動を測定するために設置する。測定面A上にセンサ本体1が設けられ、そのセンサ本体1の上部から吊り下げられた平行板状バネ20の下部に、電磁アクチュエータの電磁コイル21と相対速度センサの電磁コイル23が取り付けられている。これら電磁コイル21及び電磁コイル23の質量を合わせたものが重り31の質量mとなる。磁気回路22は電磁アクチュエータの駆動用に設けられ、磁気回路24は相対速度検知器4として出力電圧を得るために設けられている。この構造を簡略化するために、電磁アクチュエータの電磁コイル21の外側に相対速度センサの電磁コイル23を重ねて巻いてもよい。この実施形態では、平行板状バネ20はプラスチック製であり、この平行板状バネ20のバネ定数は平行板状バネ20の上下端の切り込みをの深さを変えることによって変えることができる。別の実施形態として、平行板状バネ20は燐青銅板でもよい。
【0052】
本発明を具体化した実施形態の別の例を図5に示す。図4が相対速度検出用検知器4を用いているのに対して、この例では、相対変位を検知する相対変位検知器8を用いている。この相対変位検知器8は、センサ本体1に設けられ、重り32としての電磁コイル21に取り付けられ振動方向に直交した反射面を有する反射板25と、この反射板25の反射面に対して振動方向から臨む光源27及び受光器26とからなり、反射板25が光源27に近づくと受光器26の電圧が高まり、反射板25が光源27から遠ざかると受光器26の電圧が下がる。反射板25を挟んで両側に置いた2組の光源27及び受光器26で得られた電圧を差動増幅することによって線形性の改善を図っている。この相対速度検知器8はインダクタンスの変化などを利用したギャップセンサを用いてもよい。
【0053】
図6に、図5の実施形態によって試作したサーボ型絶対変位・速度センサによって得られた周波数応答の実測値を示す。元のセンサ(サーボをかけない状態のこと)の固有振動数が9Hzにあり、この場合は20Hz以上で絶対変位が測定可能である。本発明ではサーボ回路により重り31の振動を制御したことにより、固有振動数は2Hzに低下しており、絶対変位の測定範囲が3Hzから40Hzまでに低周波振動数側に広げられていることが分る。さらに、ゲインは10dB低下しており、重り31の可動範囲で3倍以上の振動振幅の測定が可能であることが分る。
【0054】
図7に、図4の実施形態によって試作したサーボ型絶対変位・速度センサによって得られた周波数応答の実測値を示す。この場合は、元のセンサの固有振動数が6Hzにあり、15Hz以上で絶対変位が測定可能である。本発明のサーボ回路により重り32を制御したことにより、固有振動数は2Hzに低下しており、絶対変位の測定範囲が3Hzから40Hzまでに低周波振動数側に広げられており、さらに改善が図られていることが分る。また、この場合もゲインは10dB低下しており、重り32の可動範囲で3倍以上の振動振幅の測定が可能であることが分る。
【0055】
なお、特許文献1との相違は、以下のようになっている。
【0056】
(1)サーボ回路に相対加速度の負帰還を加えたこと。
【0057】
(2)上記相対加速度の負帰還によってセンサの固有振動数がより極低振動数に設定できるようになったこと。
【0058】
(3)固有振動数がより極低振動数に設定されたことにより、重りの振動が抑制され、測定する対象物の測定振幅範囲が拡大できるようになったこと。
【0059】
(4)上記(3)の結果、より小型のセンサが実現できること。
【0060】
(5)相対加速度の負帰還方法を具体化する2つの検知器が実現されたこと。
【0061】
(6)1つの検知器は、センサ本体と重りとの間の相対速度を検知する検知器であり、その相対速度を微分する微分回路を設けたこと。
【0062】
(7)上記(6)により、堅牢なセンサが構成できるようになったこと。
【0063】
(8)1つの検知器は、センサ本体と重りとの間の相対変位を検知する検知器であり、その相対変位を2度微分する微分回路を設けたこと。
【0064】
【発明の効果】
本発明は次の如き優れた効果を発揮する。
(1)振動を測定する対象物の絶対変位と絶対速度が直接出力される。
(2)極低振動数から振動の測定を可能にする。
(3)絶対加速度帰還の効果によって測定する対象物の測定振幅範囲が拡大できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図2】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図3】図1及び図2のサーボ型絶対変位・速度センサの信号伝達線図である。
【図4】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図5】本発明の一実施形態を示すサーボ型絶対変位・速度センサの構成図である。
【図6】図5のサーボ型絶対変位・速度センサの周波数応答の測定結果を示す周波数対位相特性及び周波数対利得特性図である。
【図7】図5のサーボ型絶対変位・速度センサの周波数応答の測定結果を示す周波数対位相特性及び周波数対利得特性図である。
【図8】従来のサーボ型速度センサの構成図である。
【図9】図8のサーボ型速度センサの信号伝達線図である。
【図10】図8のサーボ型速度センサの周波数対利得特性図である。
【符号の説明】
1 センサ本体
2,20 支持バネ
3,31,32 重り
4 相対速度検知器
5 電磁アクチュエータ
8 相対変位検出器
10 サーボ回路
11 速度出力用増幅器
12 積分器
13 微分回路
14 速度帰還用増幅器
15 加速度帰還用増幅器
16 変位帰還用増幅器
17 加算器
21,23 電磁コイル
22,24 磁気回路
25 反射板
26 受光器
27 光源
Claims (8)
- 振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対速度を検知する相対速度検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対速度信号を微分した相対加速度信号と上記相対速度信号と上記相対速度信号を積分した相対変位信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにしたことを特徴とするサーボ型絶対変位・速度センサ。
- 上記サーボ回路は、上記相対加速度信号を負帰還し、上記相対変位信号を上記電磁アクチュエータに正帰還することを特徴とする請求項1記載のサーボ型速度・変位センサ。
- 上記サーボ回路は、上記相対速度信号を増幅する出力用増幅器と、この増幅された相対速度信号を微分する微分回路と、この微分による相対加速度信号を増幅して負帰還する加速度帰還用増幅器と、上記増幅された相対速度信号を積分する積分回路と、この積分による相対変位信号を増幅して正帰還する変位帰還用増幅器と、これら帰還される相対加速度信号及び相対速度信号及び相対変位信号を加算して上記電磁アクチュエータに出力する加算器とからなることを特徴とする請求項1又は2記載のサーボ型絶対変位・速度センサ。
- 上記相対速度検知器は、上記重りに取り付けられた速度検知用コイルと、上記センサ本体に取り付けられた永久磁石による磁気回路とからなり、上記速度検知用コイルが上記磁気回路内で振動するとき出力電圧が形成されることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載のサーボ型絶対変位・速度センサ。
- 振動する対象物にセンサ本体を設置し、このセンサ本体に支持バネを介して重りを支持すると共に、上記センサ本体と重りとの相対変位を検知する相対変位検知器を取り付け、この重りの振動を抑制するための電磁アクチュエータを設けると共に、上記相対変位信号を微分した相対速度信号と上記相対変位信号と上記相対変位信号を2回微分した相対加速度信号とを上記電磁アクチュエータに帰還するサーボ回路を構成し、上記重りの振動をサーボ制御しているときの上記相対速度信号及び上記相対変位信号を対象物の検出絶対速度及び検出絶対変位として出力するようにしたことを特徴とするサーボ型絶対変位・速度センサ。
- 上記相対変位検知器は、上記センサ本体に設けられ上記重りに臨む光源及び受光器からなり、上記重りの表面には変位に応じて光反射量を変化させるための反射面が形成されることを特徴とする請求項5記載のサーボ型絶対変位・速度センサ。
- 上記相対加速度信号を負帰還することを特徴とする請求項5又は6記載のサーボ型速度・変位センサ。
- 上記支持バネは、その振動方向に直交する面を有する板バネからなることを特徴とする請求項1〜7いずれか記載のサーボ型絶対変位・速度センサ。
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