【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素質ナノ構造体の製造方法、炭素質ナノ構造体及びそれを用いた電子源に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、カーボンナノテクノロジーを利用した材料設計により製造され、従来のカーボン材料にはない特性を示す炭素質ナノ構造体が注目を集めている。本明細書において、「炭素質ナノ構造体」とは、カーボンを主成分とし、ナノメートルオーダーの形状を有するカーボンナノファイバーを含む構造体を意味している。
従って、「炭素質ナノ構造体」には、ナノメートルオーダーの直径を有するカーボンナノファイバー及びそのようなカーボンファイバーの集合体の他、ナノメートルオーダーの直径を有するカーボンナノファイバーを少なくとも一部に含む三次元ネットワーク構造体等も含まれるものとする。また、上記「カーボンナノファイバー」は、カーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、アモルファスカーボンナノファイバー、ダイアモンドナノファイバー等を広く含むものとする。
【0003】
代表的な炭素質ナノ構造体はカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略す場合がある)である。非特許文献1には、カーボンナノチューブの代表例が記載されている。CNTは、グラファイトの構造単位と同じ六角網目状に配列した炭素原子からなるグラファイトシートを円筒状に丸めた構造を備えている。CNTの直径はナノメートルオーダーである。一般に、一層のグラファイトシートからなる単層CNTは1〜2nmの直径を有し、複数のグラファイトシートからなる多層CNTは数nmから数十nmの直径を有している。また、CNTの電気的特性は、直径や六角網目状構造の螺旋の巻き方(カイラリティ)によって変化する。これまでに、金属と等しい電気的特性を有するものや、さまざまな大きさのバンドギャップを持つ半導体特性を備えたものが合成されている。また、CNTは熱伝導性に優れるため、電子デバイスに用いた際に熱暴走を招き難いことから、安定な動作特性を示すことが期待されている。CNTは低電圧で電子を放出することができるので、CNTを用いたフィールドエミッションディスプレィの電子源の開発が盛んである。
【0004】
CNTの代表的な合成法として、アーク放電法、レーザー蒸発法、化学的気相成長(以下CVD)法が挙げられる。アーク放電法では、大気圧よりやや低い圧力のアルゴンや水素雰囲気下、陽極及び陰極となる二本の炭素棒の間でアーク放電を行うことにより、陰極側の堆積物の一部として多層CNTが生成される。また、ニッケル、コバルトなどの触媒を含んだ炭素棒を用いてアーク放電を行うと、アーク放電に用いた容器の内側に付着するすすの一部として単層CNTが生成される。アーク放電法によれば、欠陥が少なく品質の良いCNTが得られるが、大量に合成することは困難である。
【0005】
また、レーザ蒸発法では、ニッケル、コバルトなどの触媒が添加された炭素をYAGレーザの強いパルス光で照射することにより、単層CNTが得られる。この方法によれば、比較的高い純度の単層CNTを得ることができる。また、反応温度等の条件を調整することによりCNTの直径を制御できる等の利点がある。
しかし、この方法ではCNTの収量が少ないので、CNTを工業的に合成することは困難である。
【0006】
このように、上記ニつの合成法を用いれば、良好なCNTが得られる。しかし、CNTを大量に合成することは困難であったり、CNTを基板に対して垂直に形成することが困難であるなどの問題があった。
【0007】
一方、化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、以下、「CVD法」と略すことがある)では、炭素源となる炭素化合物を含むガスを500〜1000℃で触媒金属微粒子と接触させることにより、CNTを合成する。触媒金属の種類およびその配置の仕方、炭素化合物の種類などの条件によって、多層CNT及び単層CNTの何れも合成することができる。また、触媒金属微粒子を基板上に配置することにより、基板に垂直な方向に沿って配向したCNTを得ることも可能である。CVD法によって合成されたCNTは、一般的に、他の方法により合成されたCNTよりも多くの欠陥を有する。しかしながら、原料(炭素化合物)をガスとして供給できるので、CVD法はCNTを大量に合成することに最も適する方法と言われている。
【0008】
CVD法によるCNTの合成法の一つとして、自己組織化されたポーラスアルミナを鋳型として用いてCNTを形成する方法が非特許文献2で提案されている。ポーラスアルミナはナノホールを有している。なお、本明細書では、「ナノホール」とは、ナノメートルレベル(数nm〜数百nm)の直径を有する微細孔をいう。この方法では、まず、基板表面に形成されたポーラスアルミナを反応器内に設置し、反応器内の温度を800℃に加温する。反応器内をプロピレンガスで満たすと、プロピレンガスはポーラスアルミナのナノホール内表面で熱分解する。その結果、ナノホールの内壁に炭素が堆積する。この後、ポーラスアルミナを除去することにより、基板上にナノホールの形状を反映したCNTが形成される。ポーラスアルミナは、例えば非特許文献3で報告されているように、酸性電解質中でAlを陽極酸化することによって作製される。このポーラスアルミナには、略均一な直径(数nm〜数百nm)を有するナノホールが数nm〜数百nmの間隔(セルサイズ)で形成されている。また、陽極酸化条件を最適化することにより、当該ポーラスアルミナに形成されるナノホールが高規則的なハニカム構造で配列することが知られている。従って、このようなポーラスアルミナを鋳型として用いて炭素を気相成長させると、チューブの直径及びチューブの長さがほぼ等しいCNTが得られる。
【0009】
しかし、上記の非特許文献2の方法では、触媒金属を用いないので、炭素を成長させるためには、反応器内を特に高い温度(800℃)まで加温する必要がある。そのため、ポーラスアルミナを支持する基板として、耐熱性の低い材料を用いて形成された基板、例えば安価なガラス基板などを用いることは困難である。
【0010】
このような問題を克服する方法として、非特許文献4には、ナノホールの底部に触媒金属を堆積させることにより、CNTを低温(炭素成長温度:650℃)で形成する方法が報告されている。また、非特許文献5には、炭素化合物を含むガスとして、プロピレンより反応性の高いアセチレンガスを用いることにより、触媒金属を用いずに、CNTを低温で成長させる方法が報告されている。
【0011】
【非特許文献1】
「ネイチャー誌(Nature)」1991年、354巻、56頁
【非特許文献2】
「ケミカル・マテリアル誌(Chemical Material)」1996年、8巻、2190頁
【非特許文献3】
「ネイチャー誌(Nature)」1989年、337巻、149頁
【非特許文献4】
「アプライドフィジクスレターズ誌(Applied Physics Letters)」1999年、75巻、367頁
【非特許文献5】
「カーボン誌(Carbon)」2002年、40巻、1011頁
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
非特許文献4の方法には、触媒金属を用いない従来の合成方法と比べて以下のような問題がある。
【0013】
非特許文献4の方法では、ナノホール底部に触媒金属を堆積させる工程(鍍金)、触媒金属の形状の調整する工程(一酸化炭素中で熱処理)、触媒金属を除去する工程(酸溶液処理など)といった三つの工程が新たに必要となる。また、触媒金属をナノホール底部に効率良く堆積させるためには、ナノホールの直径を30nm以上まで広げる必要がある。従って、非特許文献4の方法では、30nmよりも小さい直径を有するCNTの合成が困難であり、アスペクト比を大きくしたり、CNTのバンドギャップを制御したりすることができない。
【0014】
一方、非特許文献5の方法では、触媒金属を用いないので上記のような問題は無い。また、非特許文献の方法におけるCNTの形成温度、すなわち炭素成長温度は550℃であり、これは従来の合成方法におけるCNTの形成温度よりも低い。しかし、この方法によっても、550℃よりも低い温度、例えば510℃未満でCNTを形成することは困難である。そのため、CNTの支持体として、安価なガラス基板であるソーダライムガラス(軟化点510℃程度)を用いることができない等、支持体の材料に制約がある。
【0015】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、低温で炭素質ナノ構造体を製造できる簡便な方法、その方法により低温で製造された炭素質ナノ構造体及び電子源を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明による炭素質ナノ構造体の製造方法は、複数のナノホールを有するナノホール構造体を用意する工程と、前記複数のナノホールの少なくとも一つの内部に原料ガスを供給して、化学気相成長法により、前記少なくとも一つのナノホールの内表面に炭素を堆積させる工程とを包含し、前記原料ガスは、少なくともジオレフィン系化合物とモノオレフィン系化合物とを含むことを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
【0017】
ある好ましい実施形態において、前記炭素を堆積する工程は、450℃以上 700℃以下の温度で炭素を堆積することを含む。
【0018】
ある好ましい実施形態において、前記ジオレフィン系化合物と前記モノオレフィン系化合物とを、1:1以上2:1以下の流量比で供給する。
【0019】
前記ナノホール構造体はアルミナを含むことができる。
【0020】
前記ナノホール構造体を用意する工程が、アルミニウムを主成分とする金属層を陽極酸化することによって支持体上にポーラスアルミナ層を形成する工程を含むことができる。
【0021】
前記堆積させた炭素の少なくとも一部がカーボンナノファイバーを構成することができる。好ましくは、前記堆積させた炭素の少なくとも一部がカーボンナノチューブを構成する。
【0022】
前記炭素を堆積させる工程の後に、前記アルミナ層を除去する工程をさらに含んでもよい。
【0023】
前記ジオレフィン化合物がブタジエンを含んでもよい。また、前記モノオレフィン化合物がプロピレンを含んでもよい。
【0024】
前記ナノホール構造体を用意する工程において、前記ナノホール構造体は支持体に形成されており、前記支持体は、500℃以上660℃未満の軟化点を有するガラスから形成されていてもよい。
【0025】
本発明による炭素質ナノ構造体は、上記に記載の方法により製造された炭素質ナノ構造体であることを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
【0026】
本発明による炭素質ナノ構造体は、複数のカーボンファイバーを有する炭素質ナノ構造体であって、前記炭素質ナノ構造体は、500℃以上550℃未満の軟化点を有する材料を用いて形成された支持体によって支持されており、前記複数のカーボンファイバーの直径の平均は30nmより小さいことを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
【0027】
前記炭素質ナノ構造体は前記複数のカーボンナノファイバにアルミナを含む集合体を形成している炭素質ナノ構造体であってもよい。
【0028】
前記500℃以上550℃未満の軟化点を有する材料はガラスであってもよい。
【0029】
本発明による電子源は、上記に記載の炭素質ナノ構造体を用いていることを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
【0030】
本発明による表示装置は、上記に記載の電子源を備えていることを特徴とし、そのことによって上記目的が達成される。
【0031】
【発明実施の形態】
以下、図1〜図6を参照しながら、本発明による炭素質ナノ構造体及びその製造方法の実施形態を説明する。
【0032】
図1は、本発明による炭素質ナノ構造体が形成された基板を模式的に示している。本実施形態では、ガラス基板等の基板3の上に、例えばNbを用いて形成された電極2が設けられている。電極2の上に炭素質ナノ構造体1が形成されている。本実施形態の炭素質ナノ構造体1は、例えばカーボンナノファイバー(例えば直径5nm以上100nm未満)の集合体である。なお、カーボンナノファイバーは、ナノメートルオーダー(数nmから数百nm)の直径を有し、カーボンを主成分とするファイバーであればよく、例えばカーボンナノチューブ、グラファイトナノファイバー、アモルファスカーボンナノファイバー、ダイアモンドナノファイバー等である。
【0033】
なお、炭素質ナノ構造体1は、図1に示すようなカーボンナノファイバーの集合体に限定されない。後述するように、例えば、ナノメートルオーダーの直径を有し、カーボンを主成分とするカーボナノファイバーを構成要素とするネットワーク構造体であってもよい。
【0034】
図1では、炭素質ナノ構造体1は基板3及び電極2上に形成されている。
【0035】
基板3は、絶縁性を備えていることが好ましく、例えば、ガラス基板、絶縁性シリコン基板などを基板3として用いることができる。基板3は、後述する炭素を成長させる工程における炭素の成長温度以下で軟化しない材料、例えば軟化点が500℃以上のガラスから形成されていることが好ましい。後述するように、本実施形態では比較的低い温度(例えば450℃以上700℃以下の所定温度)で炭素の成長させることができるので、石英ガラス基板などの高耐熱性の基板に限らず、比較的耐熱性の低いガラス(例えば軟化点が500℃以上650℃未満のガラス)を用いて形成された基板でもよい。製造コストを抑えるためには、軟化点が500℃以上550℃未満のガラスから形成された基板、例えば軟化点510℃程度のソーダライムガラスを用いて形成された安価なガラス基板を用いることもできる。
【0036】
電極2は、例えば、後述するAlを陽極酸化する工程において電極として用いることができればよく、典型的にはAl、Ta、Nb、Ti、Zr、Hf等の金属材料を用いて形成される。
【0037】
図1では、炭素質ナノ構造体1は電極2及び基板3によって支持されているが、炭素質ナノ構造体1の支持体はこれに限られず、炭素質ナノ構造体1を支持することができればよい。支持体は、後述する炭素を成長させる工程における炭素の成長温度以下で劣化しないことが好ましい。ここで、支持体の「劣化」には、高温下で支持体が変形したり、支持体に含まれる材料が軟化したりすることを含むものとする。本実施形態では比較的低い温度(例えば450℃以上700℃以下の所定温度)で炭素の成長させることができるので、450℃より低い温度で劣化しない支持体が好ましい。また、本実施形態の支持体は、炭素の成長温度以下で劣化しなければよく、例えば780℃以下の温度で劣化するような耐熱性の低い支持体でも良い。なお、炭素質ナノ構造体1は、支持体に固定されていなくてもよい。
【0038】
次に、図2を参照しながら、本実施形態における炭素質ナノ構造体1の製造方法を説明する。
【0039】
まず、図2(a)に示すように、ガラス基板等の基板3に、例えば電子ビーム蒸着法により、厚さが250nm程度のNbからなる電極2を形成する。電極は、図1を参照しながら例示したような導電性材料を、基板表面に付与することによって形成すればよく、導電性材料の付与方法として、スパッタリング法、メッキ等の公知の薄膜形成方法等を用いることもできる。また、基板3として絶縁性のシリコン基板を用いる場合には、シリコン基板に不純物を導入することにより、基板表面に電極2を形成することもできる。電極の好適な厚さは、陽極酸化しようとするアルミニウム層の厚さや電極に用いる導電性材料の電気抵抗等により異なるが、典型的には50nm以上500nm以下である。
【0040】
次いで、電極2の上にナノホールを有する構造体(以下、「ナノホール構造体」と称する)を形成する。本実施形態では、ナノホール構造体としてポーラスアルミナを以下に説明する方法によって形成する。なお、ナノホール構造体の材料、構成、形成方法などは以下に限定されない。
【0041】
図2(b)に示すように、電極2の上に、例えば電子ビーム蒸着法により、厚さ約600nmのアルミニウム層4aを形成する。なお、本明細書において、アルミニウム層4aとは、アルミニウムを主成分とする金属層であればよく、シリコン、ニオブ等の不純物を含んでいても良い。また、アルミニウム層4aは、スパッタリング法、真空蒸着法、化学的気相堆積(CVD)法等により形成してもよい。アルミニウム層4aの好ましい厚さは、50nm以上1500nm以下である。薄すぎると連続膜にならず、厚すぎると剥離やクラックが起きやすいからである。
【0042】
この後、アルミニウム層4aを陽極酸化する。陽極酸化は、例えば20%の硫酸溶液(溶液温度:室温)等の酸性溶液に基板3を浸漬した状態で、例えば10Vの電圧を30分間、電極2に印加することにより行う。なお、陽極酸化の条件は、電極2の材料や所望の炭素質ナノ構造体の寸法等によって適宜選択することができる。
【0043】
陽極酸化が進むと、図2(c)に示すように、アルミニウム層4aが酸化されてアルミナ層4bになるとともに、アルミナ層4bにナノホール5が形成される。アルミナ層4bに形成されたナノホール5の直径は、印加電圧にのみ依存することが分かっており、例えば10Vの場合は10nm程度であり、30nmを下回っている。なお、本実施形態では、炭素を成長させる工程において、触媒金属をナノホール底部に堆積させないので、各ナノホール5の直径を30nm以上に広げる必要はない。ナノホール5の深さは、陽極酸化時間にほぼ比例し、最大でほぼアルミナ層の厚さである。典型的には、ナノホール5は基板3に略垂直に形成され、アルミナ層4bを貫通している。また、ナノホール5の密度は、印加電圧にのみ依存することが分かっており、例えば10Vの場合は1011個/cm2程度である。このように、アルミニウム層4aを適当な条件で陽極酸化すると、リソグラフィーを用いずに、略同じサイズのナノホールがある程度規則的に配置されたナノホール構造体(アルミナ層4b)を形成することができる。
【0044】
次に、図2(d)に示すように、アルミナ層4bを鋳型(template)として用いて炭素を気相成長させる。以下にその方法及び条件を説明する。
【0045】
まず、基板3を反応器内に設置し、反応器内の圧力及び温度を、例えば常圧及び630℃にそれぞれ設定する。この反応器内に、プロピレン等のモノオレフィン系化合物とブタジエン等のジオレフィン系化合物と(以下、単に「炭素化合物」と呼ぶことがある)を含む原料ガスを例えば1時間導入する。
【0046】
上記原料ガスは、例えば窒素等のキャリアガスを用いて反応器内に導入する。典型的には、モノオレフィン系化合物とジオレフィン系化合物とを別々に1:1以上2:1以下の流量比でキャリアガスに流入させる。または、モノオレフィン系化合物とジオレフィン系化合物とを1:1以上2:1以下のモル比となるように混合した後、キャリアガスに流入させてもよい。なお、原料ガスは、2種類以上のモノオレフィン系化合物またはジオレフィン系化合物を含んでもよいし、炭素を含む他の化合物をさらに含んでもよい。
【0047】
反応器内に導入する原料ガス及びキャリアガスの総流量は、例えば100cm3/min以上10000cm3/min以下である。また、キャリアガスの流量に対する原料ガス(モノオレフィン系化合物及びジオレフィン系化合物を含む)の流量の割合は、例えば2%以上50%以下である。
【0048】
原料ガスを反応器内に導入すると、原料ガスに含まれる炭素化合物は、アルミナ層4bの上面及びナノホール5の内表面で熱分解する。その結果、アルミナ層4bの上面及びナノホール5の内表面で炭素が堆積する。図2(d)に示すように、アルミナ層4bの上面に堆積した炭素を炭素7、ナノホール5の内表面に堆積した炭素を炭素6とする。炭素6は、1個のナノホールにつき1本のカーボンナノファイバーを構成する。カーボンナノファイバーの直径はそれぞれのナノホールの直径に応じて決まるので、カーボンナノファイバーの直径を容易に制御できる。好ましくは、炭素6はCNTを構成する。従って、それぞれのナノホールの直径と、そのナノホール内に形成されたCNTの直径(外径)とは略等しい。一方、炭素7は、典型的には炭素薄膜を構成する。
【0049】
本実施形態では、CVD法により630℃の成長温度で1時間、炭素を成長させているが、成長条件はこれに限定されず、ナノホール5の寸法や原料ガスの流量等の応じて適宜選択することができる。本実施形態では、温度が450℃以上であれば炭素を成長させることができる。好ましくは、炭素の成長温度は500℃以上700℃以下である。炭素の成長温度が500℃以上であれば、炭素を均質に成長させることがより確実となる。一方、炭素の成長温度が700℃であれば、基板3の材料に要求される耐熱性のレベルが低くなるので、材料の制約が緩和される。より好ましくは、炭素の成長温度は660℃以下である。660℃以下であれば、耐熱性の低い安価なガラス基板等を基板3として用いることができるため、製造コスト面で有利である。さらに炭素の成長温度が550℃未満(例えば510℃以下)であれば、ガラス基板の中でもさらに安価なソーダライムガラス基板を使用できるため、より有利である。
【0050】
炭素を気相成長させた後、図2(e)に示すように、ナノホール5の内表面の炭素6は残して、アルミナ層4の表面に堆積した炭素7を、例えば酸素プラズマエッチングを行うことによって除去する。
【0051】
次いで、図2(f)に示すように、アルミナ層4bを除去する。アルミナ層4bは、例えば水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ性溶液またはフッ酸、リン酸等の酸性溶液を用いてエッチングすることにより除去される。これにより、炭素質ナノ構造体1が得られる。本実施形態の炭素質ナノ構造体1は、例えば直径10nm程度のカーボンナノファイバー(炭素6)を含む集合体である。
【0052】
本実施形態では、ナノホール構造体としては、陽極酸化によって作製されたポーラスアルミナ(アルミナ層4b)を用いているが、本発明はこれに限定されない。ナノホール構造体は、複数のナノホール(ナノホール構造)を有し、かつ炭素を気相成長させる工程において鋳型(template)として用いることができればよい。例えば、シリコン基板をフッ素溶液中で陽極化成すると、ナノホールを有するポーラスシリコンが作製できる。これをナノホール構造体として用いてもよい。
【0053】
ナノホール構造体に形成されるナノホール5は種々の形状を有することができ、上記に例示したような基板に略垂直に配列した貫通孔に限定されない。ナノホール5の形状は、ナノホール構造体の材料の選択や製造条件等によって調整することができる。例えば、アルミニウム層4aを陽極酸化する工程において、アルミニウム層4aに印加する電圧を所定条件で変化させると、種々の形状のナノホールを有するナノホール構造体(アルミナ層4b)を形成することができる。ナノホール5は、例えば、複数のナノホールが所定の深さで部分的に結合することによって形成された三次元的なネットワーク形状を有していてもよい。
【0054】
なお、炭素質ナノ構造体1の構造は、図1に示したようなカーボンファイバーの集合体に限定されない。ナノホール構造体に形成されるナノホール5の形状によって、所望の構造を有する炭素質ナノ構造体1を製造することができる。例えば、アルミナ層4bに形成されたナノホールが三次元的なネットワーク形状を有する場合、このアルミナ層4bを鋳型として用いて炭素を気相成長させると、ナノホール5の形状に応じて、三次元ネットワーク構造を有する炭素質ナノ構造体1であるメソポーラスカーボンが得られる。炭素質ナノ構造体1は、その構造にかかわらず、主に六角網目状に配列した炭素原子によって構成されることが好ましい。
【0055】
以下に、炭素の気相成長に用いる原料ガスについて、発明者らが行った比較実験の結果を説明する。
【0056】
図2(a)〜(c)を参照しながら説明した方法と同様の方法で、基板3上にアルミナ層4b及び電極2が形成された基板3を3個作製した。次いで、プロピレン及びブタジエンからなる原料ガスA、ブタジエンからなる原料ガスB、プロピレンからなる原料ガスCをそれぞれ用いて、アルミナ層4b表面及びナノホール5内表面に炭素を気相成長させることにより、試料a〜cを作製した。炭素の成長温度及び成長時間は630℃及び1時間とした。原料ガスA〜Cのガス流量は、単位時間当りに供給される各原料ガスに含まれる炭素原子数(または炭素原子数の合計)が同じとなるように調整した。また、原料ガスAのプロピレンとブタジエンは、流量比が1:1となるようにそれぞれのガス流量を調整してキャリアガスに別個に供給した。
【0057】
炭素を気相成長させた後、試料a〜cのアルミナ層4bの表面を可視光で照射して、その反射スペクトルを測定した。測定結果を図3に示す。図3から、各試料のアルミナ層4bの表面及びナノホール5の内表面における炭素化合物の分解性について、以下のことがわかった。
【0058】
原料ガスA(プロピレン及びブタジエン)を用いて作製された試料aでは、アルミナ層4bの表面は、他の試料b及びcのアルミナ層4bの表面と比べて反射率が最も低く、すなわち最も黒色化されていた。このことから、試料aのアルミナ層4b表面で原料ガスAに含まれる炭素化合物の分解が進み、その結果、アルミナ層4b表面に炭素が成長して炭素薄膜7が形成されたことがわかる。原料ガスB(ブタジエン)を用いて作製された試料bでは、アルミナ層4bの表面の反射率は低く抑えられていることから、アルミナ層4bの表面には炭素薄膜7は形成されていることがわかる。しかし、炭素薄膜7の厚さが小さいため、照射光がアルミナ層4bまで侵入して、若干干渉を起こしていることがわかる。原料ガスC(プロピレン)を用いて作製された試料cでは、反射スペクトルの測定結果からも目視からも、アルミナ層4bの表面に炭素がほとんど付着していないことがわかった。なお、どの試料においても、アルミナ層4bの表面以外、例えばガラス基板3や電極2の表面では炭素の付着による色の変化は見られなかった。
【0059】
この測定は、上述したように炭素の成長温度を630℃に設定して行っているが、成長温度を高温にするか、または触媒金属を用いれば、原料ガスA〜Cのいずれを用いた場合でもアルミナ層4bの表面に所定の厚さの炭素薄膜7が形成されることは公知である。従って、原料ガスとして、プロピレンやブタジエンを単独で用いるよりも(原料ガスB、C)、プロピレンとブタジエンの混合ガスを用いると(原料ガスA)、アルミナ層4bの表面やナノホール5の内表面において、触媒金属を用いなくても、炭素化合物の熱分解性が向上し、より低温で炭素が気相成長することがわかった。これは、ブタジエンが持つ二つの炭素二重結合とプロピレンの持つ一つの炭素二重結合が反応して、シクロオレフィン類が形成されるため、続いて炭素化が容易に進行する。そして、この過程がポーラスアルミナの触媒効果により促進されるからと考えられる。
【0060】
なお、プロピレンの代わりにブチレン、エチレン等の他のモノオレフィン系化合物を用いても、上記と同様の結果が得られることもわかった。また、ブタジエンの代わりにぺンタジエン、ヘキサジエン等の他のジオレフィン系化合物を用いても、上記と同様の結果が得られることもわかった。好ましいジオレフィン系化合物はブタジエンである。ブタジエンは、常温で気体であるため、取り扱いが容易だからである。
【0061】
図4は、本実施形態において、陽極酸化によって得られたアルミナ層4bの表面のSEM写真である。この写真から、アルミナ層4bには、平均直径10nm程度のナノホール5が形成されているのがわかる。これらのナノホールは、ほぼこの直径のまま、基板3に略垂直にアルミナ層4bを貫通してNb電極2まで到達している。
【0062】
図5は、本実施形態において製造された炭素質ナノ構造体1のSEM写真である。炭素質ナノ構造体1は、平均直径10nm程度の繊維の集合体であり、それぞれが寄り添うようにして、基板3に略垂直に配向している。炭素質ナノ構造体1の直径は、図4に示すアルミナ層4bのナノホール5の直径に依存している。本実施形態では、このような炭素質ナノ構造体1が基板3上に均質に製造された。
【0063】
次に、本実施形態の炭素質ナノ構造体1の真空電子放出特性を評価した結果を説明する。
【0064】
まず、炭素質ナノ構造体試料A及びBを作製した。炭素質ナノ構造体試料A及びBの作製方法は、図2(a)〜(f)を参照しながら説明した方法と同様の方法であるが、原料ガスとして、上記原料ガスA(プロピレン及びブタジエン)、原料ガスB(ブタジエン)をそれぞれ用いて、600℃で炭素を気相成長させた点で異なっている。続いて、真空中で、各炭素質ナノ構造体試料の上方に設けた電極と電極2との間に電界を印加したときの各炭素質ナノ構造体試料からの放出電流密度を調べた。
【0065】
図6は炭素質ナノ構造体試料A及びBそれぞれの電界強度―電流密度特性を示すグラフである。図6から、炭素質ナノ構造体試料Aは印加電界が2.5V/μm付近からエミッション(電子放出)を開始しており、印加電界が6V/μmのときに約10mA/cm2の電流密度が得られることがわかる。このように、炭素質ナノ構造体試料Aは、低駆動電圧で充分な電流を放出できるので、フィールドエミッションディスプレイ用の電子源あるいは電子放出素子として好適に用いることができる。これに対し、炭素質ナノ構造体試料Bの電子放出特性は炭素質ナノ構造体試料Aの電子放出特性よりも劣っていることがわかる。例えば、炭素質ナノ構造体試料Bでは、炭素質構造体試料Aと比較して、エミッションを開始する電界強度が11V/μmと大きく、また印加電界が17V/μm程度のときに得られる電流密度が1mA/cm2と小さい。この結果、プロピレンとブタジエンとを含む原料ガスを用いると、低い炭素成長温度でも良好な炭素を成長させることが可能になることが確認された。
【0066】
次に、さらに低温形成が可能であるかを検討するために、炭素成長温度を500℃として炭素質ナノ構造体試料Cを形成する実験を行なった.図7は、作製した炭素質ナノ構造体試料Cの電界強度―電流密度特性を示すグラフである。得られた炭素質ナノ構造体試料Cは、エミッションを開始する電界強度が7V/μmとやや大きいが、前記炭素質ナノ構造体試料B(炭素成長温度:600℃)よりも優れた特性を有している。例えば、印加電界が16V/μmのとき、電流密度が1mA/cm2に達している。また、炭素質ナノ構造体試料CのSEM写真から、図5と同様の直径10nmの炭素質ナノ構造体が得られていることを確認した。このように、510℃未満の低温で炭素を成長させることにより、炭素質ナノ構造体の支持体(基板3)として、ガラス基板の中でもさらに安価であるソーダライムガラス基板(軟化点が510℃程度)を用いることが可能となるので、炭素質ナノ構造体の量産化に特に有利である。
【0067】
本発明の実施形態による炭素質ナノ構造体1の製造方法では、モノオレフィン系化合物とジオレフィン系化合物とを含む原料ガスを用いて炭素を気相成長させるので、上述したように、炭素化合物の分解温度を低く抑えることができる。従って、触媒金属を用いることなく、炭素を気相成長させる温度を低くできるため、工程数の増加を抑えることが可能になる。また、炭素質ナノ構造体1を耐熱性の低い安価なガラス基板に形成することができるので、製造コストを低減できる。さらに、上述したように、上記の原料ガスを用いて製造した炭素質ナノ構造体1は真空電子放出特性に優れているので、電子源として好適に用いることができる。
【0068】
本発明の実施形態による炭素質ナノ構造体1は、上記方法によって製造されるので、炭素質ナノ構造体1を支持する基板として、比較的耐熱性の低い材料から形成された基板を用いることができる。このため、基板材料の選択の幅が広がる。また、安価なガラス基板等を用いることにより、製造コストを低減できる。
【0069】
さらに、製造工程において用いるナノホール構造体のナノホールの直径を、触媒金属を堆積させるために広げる必要がない。そのため、触媒金属を用いて炭素を成長させる場合と比較して、各ナノホールに形成されるカーボンファイバーの直径を小さくすることができる。直径の小さいカーボンナノファイバーを有する炭素質ナノ構造体1は、より電界集中しやすいので有利である。
【0070】
本実施形態の炭素質ナノ構造体1を電子源として用いて、公知の方法によってフィールドエミッションディスプレイを構成することができる。上記のように、本実施形態の炭素質ナノ構造体1は安価で簡便な方法によって製造されるので、フィールドエミッションディスプレイの製造コストを低減できる利点がある。また、本実施形態の炭素質ナノ構造体1は優れた電子放出特性を有しているので、高輝度なフィールドエミッションディスプレイを提供できる。
【0071】
【発明の効果】
本発明によると、低温で炭素質ナノ構造体を製造できる簡便な方法、並びにその方法により低温で製造された炭素質ナノ構造体及び電子源を提供することができる。本発明は、特に、フィールドエミッションディスプレイ等の表示装置に好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態における炭素質ナノ構造体を示す模式図である。
【図2】(a)から(f)は、本発明の実施形態における炭素質ナノ構造体の製造工程を説明するための断面模式図である。
【図3】本発明の実施形態において、炭素を気相成長させた後のアルミナ層表面における可視光の反射スペクトルを示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態において、陽極酸化によって形成されたアルミナ層表面の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明の実施形態における炭素質ナノ構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図6】本発明の実施形態において、600℃で形成した炭素質ナノ構造体の電界強度―電流密度特性を示すグラフである。
【図7】本発明の実施形態において、500℃で形成した炭素質ナノ構造体の電界強度―電流密度特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 炭素質ナノ構造体
2 電極
3 ガラス基板
4a アルミニウム層
4b アルミナ層
5 ナノホール
6、7 炭素[0001]
The present invention relates to a method for producing a carbonaceous nanostructure, a carbonaceous nanostructure, and an electron source using the same.
[0002]
[Prior art]
In recent years, attention has been paid to a carbonaceous nanostructure manufactured by material design using carbon nanotechnology and exhibiting characteristics not available in a conventional carbon material. In this specification, “carbonaceous nanostructure” means a structure containing carbon nanofibers having carbon as a main component and having a shape on the order of nanometers.
Therefore, the “carbonaceous nanostructure” includes at least a portion of a carbon nanofiber having a diameter on the order of nanometers, in addition to a carbon nanofiber having a diameter on the order of nanometers and an aggregate of such carbon fibers. It is assumed that a three-dimensional network structure or the like is also included. Further, the “carbon nanofiber” broadly includes carbon nanotube, graphite nanofiber, amorphous carbon nanofiber, diamond nanofiber, and the like.
[0003]
A typical carbonaceous nanostructure is a carbon nanotube (hereinafter, may be abbreviated as “CNT”). Non-Patent Document 1 describes a typical example of a carbon nanotube. The CNT has a structure in which a graphite sheet composed of carbon atoms arranged in the same hexagonal mesh as the graphite structural unit is rolled into a cylindrical shape. The diameter of the CNT is on the order of nanometers. In general, a single-layer CNT composed of one graphite sheet has a diameter of 1 to 2 nm, and a multilayer CNT composed of a plurality of graphite sheets has a diameter of several nm to several tens nm. In addition, the electrical characteristics of the CNT vary depending on the diameter and the manner of winding the spiral of the hexagonal mesh structure (chirality). So far, those having the same electrical characteristics as metals and those having semiconductor characteristics having band gaps of various sizes have been synthesized. In addition, since CNTs have excellent thermal conductivity, they do not easily cause thermal runaway when used in electronic devices, and thus are expected to exhibit stable operation characteristics. Since CNTs can emit electrons at a low voltage, development of electron sources for field emission displays using CNTs has been active.
[0004]
Typical methods for synthesizing CNT include an arc discharge method, a laser evaporation method, and a chemical vapor deposition (hereinafter, CVD) method. In the arc discharge method, by performing arc discharge between two carbon rods serving as an anode and a cathode under an atmosphere of argon or hydrogen at a pressure slightly lower than the atmospheric pressure, multilayer CNTs are formed as part of a deposit on the cathode side. Generated. When arc discharge is performed using a carbon rod containing a catalyst such as nickel or cobalt, single-wall CNT is generated as a part of soot attached to the inside of the container used for arc discharge. According to the arc discharge method, high quality CNTs with few defects can be obtained, but it is difficult to synthesize them in large quantities.
[0005]
In the laser evaporation method, single-walled CNTs can be obtained by irradiating carbon to which a catalyst such as nickel or cobalt is added with strong pulse light of a YAG laser. According to this method, single-walled CNTs having relatively high purity can be obtained. Further, there is an advantage that the diameter of CNT can be controlled by adjusting conditions such as the reaction temperature.
However, it is difficult to industrially synthesize CNTs because the yield of CNTs is small in this method.
[0006]
Thus, good CNT can be obtained by using the above two synthesis methods. However, there were problems such as difficulty in synthesizing CNTs in large quantities and difficulty in forming CNTs perpendicular to the substrate.
[0007]
On the other hand, in a chemical vapor deposition method (hereinafter sometimes abbreviated as “CVD method”), a gas containing a carbon compound serving as a carbon source is brought into contact with catalytic metal fine particles at 500 to 1000 ° C. , Synthesize CNT. Both multilayer CNTs and single-wall CNTs can be synthesized depending on conditions such as the type of catalyst metal, its arrangement, and the type of carbon compound. Further, by disposing the catalytic metal fine particles on the substrate, it is possible to obtain CNTs oriented along the direction perpendicular to the substrate. CNTs synthesized by the CVD method generally have more defects than CNTs synthesized by other methods. However, since the raw material (carbon compound) can be supplied as a gas, the CVD method is said to be the most suitable method for synthesizing CNT in large quantities.
[0008]
Non-Patent Document 2 proposes a method of forming CNTs using self-assembled porous alumina as a template as one of the CNT synthesis methods by the CVD method. Porous alumina has nanoholes. In this specification, “nanohole” refers to a micropore having a diameter of a nanometer level (several nm to several hundred nm). In this method, first, porous alumina formed on the substrate surface is placed in a reactor, and the temperature in the reactor is heated to 800 ° C. When the inside of the reactor is filled with propylene gas, the propylene gas is thermally decomposed on the inner surface of the nanohole of porous alumina. As a result, carbon is deposited on the inner wall of the nanohole. Thereafter, by removing the porous alumina, CNTs reflecting the shape of the nanoholes are formed on the substrate. Porous alumina is produced by anodizing Al in an acidic electrolyte, for example, as reported in Non-Patent Document 3. In this porous alumina, nanoholes having a substantially uniform diameter (several nm to several hundred nm) are formed at intervals (cell size) of several nm to several hundred nm. It is also known that by optimizing the anodic oxidation conditions, nanoholes formed in the porous alumina are arranged in a highly regular honeycomb structure. Therefore, when carbon is vapor-phase grown using such porous alumina as a template, CNTs having substantially the same tube diameter and tube length can be obtained.
[0009]
However, in the method of Non-Patent Document 2 described above, since a catalytic metal is not used, it is necessary to heat the inside of the reactor to a particularly high temperature (800 ° C.) in order to grow carbon. Therefore, it is difficult to use a substrate formed using a material having low heat resistance, such as an inexpensive glass substrate, as a substrate for supporting porous alumina.
[0010]
As a method for overcoming such a problem, Non-Patent Document 4 reports a method of forming CNT at a low temperature (carbon growth temperature: 650 ° C.) by depositing a catalytic metal on the bottom of a nanohole. Non-Patent Document 5 reports a method of growing CNT at a low temperature without using a catalytic metal by using an acetylene gas having a higher reactivity than propylene as a gas containing a carbon compound.
[0011]
[Non-patent document 1]
Nature, 1991, 354, 56
[Non-patent document 2]
"Chemical Material", 1996, 8, 2190
[Non-Patent Document 3]
Nature, 1989, 337, 149
[Non-patent document 4]
"Applied Physics Letters", 1999, 75, 367.
[Non-Patent Document 5]
"Carbon," 2002, 40, 1011
[0012]
[Problems to be solved by the invention]
The method of Non-Patent Document 4 has the following problems as compared with the conventional synthesis method using no catalyst metal.
[0013]
In the method of Non-Patent Document 4, a step of depositing a catalyst metal on the bottom of a nanohole (plating), a step of adjusting the shape of the catalyst metal (heat treatment in carbon monoxide), and a step of removing the catalyst metal (acid solution treatment, etc.) These three steps are newly required. Further, in order to efficiently deposit the catalytic metal on the bottom of the nanohole, it is necessary to increase the diameter of the nanohole to 30 nm or more. Therefore, with the method of Non-Patent Document 4, it is difficult to synthesize CNTs having a diameter smaller than 30 nm, and it is not possible to increase the aspect ratio or control the CNT band gap.
[0014]
On the other hand, the method of Non-Patent Document 5 does not use a catalyst metal, and thus does not have the above-described problem. The CNT formation temperature in the method of Non-Patent Document, that is, the carbon growth temperature is 550 ° C., which is lower than the CNT formation temperature in the conventional synthesis method. However, even with this method, it is difficult to form CNTs at a temperature lower than 550 ° C., for example, lower than 510 ° C. Therefore, there is a limitation in the material of the support, such as inability to use soda-lime glass (softening point of about 510 ° C.), which is an inexpensive glass substrate, as the support of the CNT.
[0015]
The present invention has been made in view of the above circumstances, and its main objects are a simple method capable of producing a carbonaceous nanostructure at a low temperature, a carbonaceous nanostructure produced at a low temperature by the method, and To provide an electron source.
[0016]
[Means for Solving the Problems]
The method for producing a carbonaceous nanostructure according to the present invention includes a step of preparing a nanohole structure having a plurality of nanoholes, and supplying a source gas to at least one of the plurality of nanoholes by a chemical vapor deposition method. Depositing carbon on the inner surface of the at least one nanohole, wherein the source gas contains at least a diolefin-based compound and a monoolefin-based compound, thereby achieving the object. Is done.
[0017]
In a preferred embodiment, the step of depositing carbon includes depositing carbon at a temperature of 450 ° C. or more and 700 ° C. or less.
[0018]
In a preferred embodiment, the diolefin-based compound and the monoolefin-based compound are supplied at a flow ratio of 1: 1 or more and 2: 1 or less.
[0019]
The nanohole structure may include alumina.
[0020]
The step of preparing the nanohole structure may include a step of forming a porous alumina layer on a support by anodizing a metal layer containing aluminum as a main component.
[0021]
At least a part of the deposited carbon can constitute a carbon nanofiber. Preferably, at least a part of the deposited carbon constitutes a carbon nanotube.
[0022]
After the step of depositing carbon, the method may further include a step of removing the alumina layer.
[0023]
The diolefin compound may include butadiene. Further, the monoolefin compound may contain propylene.
[0024]
In the step of preparing the nanohole structure, the nanohole structure may be formed on a support, and the support may be formed of glass having a softening point of 500 ° C. or more and less than 660 ° C.
[0025]
The carbonaceous nanostructure according to the present invention is characterized by being a carbonaceous nanostructure produced by the method described above, thereby achieving the above object.
[0026]
The carbonaceous nanostructure according to the present invention is a carbonaceous nanostructure having a plurality of carbon fibers, wherein the carbonaceous nanostructure is formed using a material having a softening point of 500 ° C. or more and less than 550 ° C. The plurality of carbon fibers have an average diameter of less than 30 nm, thereby achieving the above object.
[0027]
The carbonaceous nanostructure may be a carbonaceous nanostructure in which the plurality of carbon nanofibers form an aggregate containing alumina.
[0028]
The material having a softening point of 500 ° C. or more and less than 550 ° C. may be glass.
[0029]
An electron source according to the present invention is characterized by using the carbonaceous nanostructure described above, thereby achieving the above object.
[0030]
A display device according to the present invention includes the above-described electron source, and the above object is achieved.
[0031]
DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION
Hereinafter, an embodiment of a carbonaceous nanostructure and a method of manufacturing the same according to the present invention will be described with reference to FIGS.
[0032]
FIG. 1 schematically shows a substrate on which a carbonaceous nanostructure according to the present invention is formed. In this embodiment, an electrode 2 formed using, for example, Nb is provided on a substrate 3 such as a glass substrate. The carbonaceous nanostructure 1 is formed on the electrode 2. The carbonaceous nanostructure 1 of the present embodiment is, for example, an aggregate of carbon nanofibers (for example, a diameter of 5 nm or more and less than 100 nm). Note that the carbon nanofiber may be a fiber having a diameter on the order of nanometers (several nm to several hundreds of nm) and containing carbon as a main component. For example, carbon nanotube, graphite nanofiber, amorphous carbon nanofiber, diamond Nanofibers and the like.
[0033]
In addition, the carbonaceous nanostructure 1 is not limited to an aggregate of carbon nanofibers as shown in FIG. As will be described later, for example, a network structure having a diameter on the order of nanometers and having carbon nanofibers containing carbon as a main component may be used.
[0034]
In FIG. 1, a carbonaceous nanostructure 1 is formed on a substrate 3 and an electrode 2.
[0035]
The substrate 3 preferably has an insulating property. For example, a glass substrate, an insulating silicon substrate, or the like can be used as the substrate 3. The substrate 3 is preferably formed of a material that does not soften below the carbon growth temperature in the step of growing carbon described below, for example, glass whose softening point is 500 ° C. or higher. As will be described later, in the present embodiment, carbon can be grown at a relatively low temperature (for example, a predetermined temperature of 450 ° C. or more and 700 ° C. or less), so that the present invention is not limited to a high heat-resistant substrate such as a quartz glass substrate. A substrate formed using glass having low thermal resistance (for example, glass having a softening point of 500 ° C. or more and less than 650 ° C.) may be used. In order to reduce the manufacturing cost, a substrate formed of glass having a softening point of 500 ° C. or higher and lower than 550 ° C., for example, an inexpensive glass substrate formed of soda lime glass having a softening point of about 510 ° C. can be used. .
[0036]
The electrode 2 only needs to be able to be used as an electrode in the step of anodizing Al, which will be described later, and is typically formed using a metal material such as Al, Ta, Nb, Ti, Zr, and Hf.
[0037]
In FIG. 1, the carbonaceous nanostructure 1 is supported by the electrode 2 and the substrate 3, but the support of the carbonaceous nanostructure 1 is not limited to this, as long as the carbonaceous nanostructure 1 can be supported. Good. It is preferable that the support does not deteriorate at or below the carbon growth temperature in the step of growing carbon described below. Here, the “deterioration” of the support includes deformation of the support at a high temperature and softening of the material included in the support. In this embodiment, since carbon can be grown at a relatively low temperature (for example, a predetermined temperature of 450 ° C. or more and 700 ° C. or less), a support that does not deteriorate at a temperature lower than 450 ° C. is preferable. Further, the support of the present embodiment may be a support having a low heat resistance such that the support is not deteriorated at a temperature of 780 ° C. or lower, for example, as long as the support does not deteriorate at a growth temperature of carbon or lower. In addition, the carbonaceous nanostructure 1 does not need to be fixed to the support.
[0038]
Next, a method for manufacturing the carbonaceous nanostructure 1 according to the present embodiment will be described with reference to FIG.
[0039]
First, as shown in FIG. 2A, an electrode 2 made of Nb having a thickness of about 250 nm is formed on a substrate 3 such as a glass substrate by, for example, an electron beam evaporation method. The electrode may be formed by applying a conductive material as exemplified with reference to FIG. 1 to the substrate surface. Examples of the method of applying the conductive material include a known thin film forming method such as a sputtering method and plating. Can also be used. When an insulating silicon substrate is used as the substrate 3, the electrode 2 can be formed on the surface of the substrate by introducing impurities into the silicon substrate. The preferred thickness of the electrode depends on the thickness of the aluminum layer to be anodized, the electrical resistance of the conductive material used for the electrode, and the like, but is typically 50 nm or more and 500 nm or less.
[0040]
Next, a structure having nanoholes on the electrode 2 (hereinafter, referred to as “nanohole structure”) is formed. In the present embodiment, porous alumina is formed as a nanohole structure by a method described below. Note that the material, configuration, forming method, and the like of the nanohole structure are not limited to the following.
[0041]
As shown in FIG. 2B, an aluminum layer 4a having a thickness of about 600 nm is formed on the electrode 2 by, for example, an electron beam evaporation method. In the present specification, the aluminum layer 4a may be a metal layer containing aluminum as a main component, and may contain impurities such as silicon and niobium. Further, the aluminum layer 4a may be formed by a sputtering method, a vacuum evaporation method, a chemical vapor deposition (CVD) method, or the like. The preferred thickness of the aluminum layer 4a is 50 nm or more and 1500 nm or less. If it is too thin, it will not be a continuous film, and if it is too thick, peeling and cracks are likely to occur.
[0042]
Thereafter, the aluminum layer 4a is anodized. The anodic oxidation is performed by applying a voltage of, for example, 10 V to the electrode 2 for 30 minutes while the substrate 3 is immersed in an acidic solution such as a 20% sulfuric acid solution (solution temperature: room temperature). The conditions of the anodic oxidation can be appropriately selected depending on the material of the electrode 2, the desired dimensions of the carbonaceous nanostructure, and the like.
[0043]
As the anodic oxidation proceeds, as shown in FIG. 2C, the aluminum layer 4a is oxidized to become the alumina layer 4b, and the nanoholes 5 are formed in the alumina layer 4b. It is known that the diameter of the nanoholes 5 formed in the alumina layer 4b depends only on the applied voltage. For example, in the case of 10 V, the diameter is about 10 nm, which is smaller than 30 nm. In this embodiment, since the catalyst metal is not deposited on the bottom of the nanoholes in the step of growing carbon, it is not necessary to increase the diameter of each nanohole 5 to 30 nm or more. The depth of the nanoholes 5 is substantially proportional to the anodic oxidation time, and is at most approximately the thickness of the alumina layer. Typically, the nanoholes 5 are formed substantially perpendicular to the substrate 3 and penetrate the alumina layer 4b. Further, it is known that the density of the nanoholes 5 depends only on the applied voltage. 11 Pieces / cm 2 It is about. Thus, by anodizing the aluminum layer 4a under appropriate conditions, a nanohole structure (alumina layer 4b) in which nanoholes of substantially the same size are arranged to some extent regularly can be formed without using lithography.
[0044]
Next, as shown in FIG. 2D, carbon is vapor-phase grown using the alumina layer 4b as a template. The method and conditions will be described below.
[0045]
First, the substrate 3 is placed in a reactor, and the pressure and temperature in the reactor are set to, for example, normal pressure and 630 ° C., respectively. A raw material gas containing a monoolefin-based compound such as propylene and a diolefin-based compound such as butadiene (hereinafter, may be simply referred to as “carbon compound”) is introduced into the reactor for, for example, one hour.
[0046]
The source gas is introduced into the reactor using a carrier gas such as nitrogen. Typically, a monoolefin-based compound and a diolefin-based compound are separately flowed into a carrier gas at a flow ratio of 1: 1 or more and 2: 1 or less. Alternatively, the monoolefin-based compound and the diolefin-based compound may be mixed so as to have a molar ratio of 1: 1 or more and 2: 1 or less, and then flown into the carrier gas. Note that the source gas may contain two or more types of monoolefin-based compounds or diolefin-based compounds, and may further contain another compound containing carbon.
[0047]
The total flow rate of the raw material gas and the carrier gas introduced into the reactor is, for example, 100 cm 3 / Min or more 10000cm 3 / Min or less. The ratio of the flow rate of the source gas (including the monoolefin-based compound and the diolefin-based compound) to the flow rate of the carrier gas is, for example, 2% or more and 50% or less.
[0048]
When the source gas is introduced into the reactor, the carbon compound contained in the source gas is thermally decomposed on the upper surface of the alumina layer 4b and the inner surface of the nanohole 5. As a result, carbon is deposited on the upper surface of the alumina layer 4b and the inner surface of the nanohole 5. As shown in FIG. 2D, carbon deposited on the upper surface of the alumina layer 4b is referred to as carbon 7, and carbon deposited on the inner surface of the nanohole 5 is referred to as carbon 6. Carbon 6 constitutes one carbon nanofiber per one nanohole. Since the diameter of the carbon nanofiber is determined according to the diameter of each nanohole, the diameter of the carbon nanofiber can be easily controlled. Preferably, carbon 6 comprises CNT. Therefore, the diameter of each nanohole is substantially equal to the diameter (outer diameter) of the CNT formed in the nanohole. On the other hand, the carbon 7 typically forms a carbon thin film.
[0049]
In this embodiment, carbon is grown at a growth temperature of 630 ° C. for one hour by the CVD method, but the growth conditions are not limited to this, and are appropriately selected according to the size of the nanoholes 5 and the flow rate of the source gas. be able to. In this embodiment, if the temperature is 450 ° C. or higher, carbon can be grown. Preferably, the growth temperature of carbon is 500 ° C. or more and 700 ° C. or less. When the growth temperature of carbon is 500 ° C. or more, it is more reliable to grow carbon uniformly. On the other hand, if the growth temperature of carbon is 700 ° C., the level of heat resistance required for the material of the substrate 3 is reduced, so that the restrictions on the material are relaxed. More preferably, the growth temperature of carbon is 660 ° C. or lower. When the temperature is 660 ° C. or lower, an inexpensive glass substrate or the like having low heat resistance can be used as the substrate 3, which is advantageous in terms of manufacturing cost. Further, if the carbon growth temperature is lower than 550 ° C. (for example, 510 ° C. or lower), a more inexpensive soda lime glass substrate can be used among the glass substrates, which is more advantageous.
[0050]
After the carbon is vapor-grown, the carbon 7 deposited on the surface of the alumina layer 4 is subjected to, for example, oxygen plasma etching while leaving the carbon 6 on the inner surface of the nanohole 5 as shown in FIG. To remove.
[0051]
Next, as shown in FIG. 2F, the alumina layer 4b is removed. The alumina layer 4b is removed by etching using an alkaline solution such as an aqueous sodium hydroxide solution or an acidic solution such as hydrofluoric acid or phosphoric acid. Thereby, the carbonaceous nanostructure 1 is obtained. The carbonaceous nanostructure 1 of the present embodiment is an aggregate including, for example, carbon nanofibers (carbon 6) having a diameter of about 10 nm.
[0052]
In the present embodiment, as the nanohole structure, porous alumina (alumina layer 4b) produced by anodic oxidation is used, but the present invention is not limited to this. The nanohole structure only needs to have a plurality of nanoholes (nanohole structure) and be able to be used as a template in a step of vapor-growing carbon. For example, when a silicon substrate is anodized in a fluorine solution, porous silicon having nanoholes can be manufactured. This may be used as a nanohole structure.
[0053]
The nanoholes 5 formed in the nanohole structure can have various shapes, and are not limited to the through holes arranged substantially perpendicular to the substrate as exemplified above. The shape of the nanohole 5 can be adjusted by selecting a material of the nanohole structure, manufacturing conditions, and the like. For example, in the step of anodizing the aluminum layer 4a, by changing the voltage applied to the aluminum layer 4a under predetermined conditions, a nanohole structure having various shapes of nanoholes (alumina layer 4b) can be formed. The nanoholes 5 may have, for example, a three-dimensional network shape formed by partially combining a plurality of nanoholes at a predetermined depth.
[0054]
The structure of the carbonaceous nanostructure 1 is not limited to the aggregate of carbon fibers as shown in FIG. Depending on the shape of the nanoholes 5 formed in the nanohole structure, the carbonaceous nanostructure 1 having a desired structure can be manufactured. For example, when the nanoholes formed in the alumina layer 4b have a three-dimensional network shape, when carbon is vapor-phase grown using the alumina layer 4b as a template, a three-dimensional network structure is formed according to the shape of the nanoholes 5. Is obtained as a carbonaceous nanostructure 1 having Regardless of its structure, the carbonaceous nanostructure 1 is preferably constituted mainly by carbon atoms arranged in a hexagonal network.
[0055]
Hereinafter, the results of comparative experiments performed by the inventors on source gases used for vapor phase growth of carbon will be described.
[0056]
In the same manner as described with reference to FIGS. 2A to 2C, three substrates 3 each having the alumina layer 4b and the electrode 2 formed on the substrate 3 were produced. Then, using a raw material gas A composed of propylene and butadiene, a raw material gas B composed of butadiene, and a raw material gas C composed of propylene, carbon was vapor-phase grown on the surface of the alumina layer 4b and the inner surface of the nanohole 5, thereby obtaining a sample a. To c. The growth temperature and growth time of carbon were 630 ° C. and 1 hour. The gas flow rates of the source gases A to C were adjusted so that the number of carbon atoms (or the total number of carbon atoms) contained in each source gas supplied per unit time was the same. In addition, propylene and butadiene of the raw material gas A were separately supplied to the carrier gas with the respective gas flow rates adjusted so that the flow ratio became 1: 1.
[0057]
After carbon was vapor-phase grown, the surface of the alumina layer 4b of each of the samples a to c was irradiated with visible light, and the reflection spectrum was measured. FIG. 3 shows the measurement results. From FIG. 3, the following was found regarding the decomposability of the carbon compound on the surface of the alumina layer 4 b and the inner surface of the nanoholes 5 of each sample.
[0058]
In the sample a produced using the raw material gas A (propylene and butadiene), the surface of the alumina layer 4b has the lowest reflectance as compared with the surfaces of the alumina layers 4b of the other samples b and c, that is, the blackened most. It had been. This indicates that the decomposition of the carbon compound contained in the source gas A progressed on the surface of the alumina layer 4b of the sample a, and as a result, carbon grew on the surface of the alumina layer 4b to form the carbon thin film 7. In the sample b manufactured using the raw material gas B (butadiene), the reflectance of the surface of the alumina layer 4b is kept low, so that the carbon thin film 7 is formed on the surface of the alumina layer 4b. Understand. However, since the thickness of the carbon thin film 7 is small, it can be seen that the irradiation light penetrates to the alumina layer 4b and causes some interference. In the sample c manufactured using the raw material gas C (propylene), it was found from the measurement result of the reflection spectrum and the visual observation that carbon was hardly attached to the surface of the alumina layer 4b. In any of the samples, no color change due to the adhesion of carbon was observed on the surface of the glass substrate 3 or the electrode 2 other than the surface of the alumina layer 4b.
[0059]
This measurement is performed by setting the growth temperature of carbon to 630 ° C. as described above. However, if the growth temperature is set to a high temperature or if a catalyst metal is used, any of the source gases A to C is used. However, it is known that the carbon thin film 7 having a predetermined thickness is formed on the surface of the alumina layer 4b. Therefore, when a mixed gas of propylene and butadiene is used (source gas A) rather than using propylene or butadiene alone (source gas B, C) as the source gas, the surface of the alumina layer 4b or the inner surface of the nanohole 5 is more likely to be used. It was found that even without using a catalytic metal, the thermal decomposability of the carbon compound was improved, and carbon was grown in a vapor phase at a lower temperature. This is because two carbon double bonds of butadiene and one carbon double bond of propylene react to form cycloolefins, and subsequently carbonization easily proceeds. It is considered that this process is promoted by the catalytic effect of porous alumina.
[0060]
In addition, it was also found that the same result as described above was obtained by using other monoolefin-based compounds such as butylene and ethylene instead of propylene. It was also found that the same results as described above were obtained by using other diolefin compounds such as pentadiene and hexadiene instead of butadiene. A preferred diolefin compound is butadiene. This is because butadiene is a gas at normal temperature and is easy to handle.
[0061]
FIG. 4 is an SEM photograph of the surface of the alumina layer 4b obtained by anodic oxidation in the present embodiment. From this photograph, it can be seen that nanoholes 5 having an average diameter of about 10 nm are formed in the alumina layer 4b. These nanoholes pass through the alumina layer 4b substantially perpendicular to the substrate 3 and reach the Nb electrode 2 while maintaining the diameter of the nanoholes.
[0062]
FIG. 5 is an SEM photograph of the carbonaceous nanostructure 1 manufactured in the present embodiment. The carbonaceous nanostructure 1 is an aggregate of fibers having an average diameter of about 10 nm, and is oriented substantially perpendicular to the substrate 3 so that they are close to each other. The diameter of the carbonaceous nanostructure 1 depends on the diameter of the nanohole 5 in the alumina layer 4b shown in FIG. In this embodiment, such a carbonaceous nanostructure 1 was uniformly produced on the substrate 3.
[0063]
Next, the result of evaluating the vacuum electron emission characteristics of the carbonaceous nanostructure 1 of the present embodiment will be described.
[0064]
First, carbonaceous nanostructure samples A and B were prepared. The method for producing the carbonaceous nanostructure samples A and B is the same as the method described with reference to FIGS. 2A to 2F, but the raw material gas A (propylene and butadiene) is used as the raw material gas. ) And raw material gas B (butadiene), respectively, in that carbon was vapor-phase grown at 600 ° C. Subsequently, the emission current density from each carbonaceous nanostructure sample when an electric field was applied between the electrode provided above each carbonaceous nanostructure sample and the electrode 2 in a vacuum was examined.
[0065]
FIG. 6 is a graph showing the electric field strength-current density characteristics of each of the carbonaceous nanostructure samples A and B. As shown in FIG. 6, emission (electron emission) of the carbonaceous nanostructure sample A started at an applied electric field of around 2.5 V / μm, and was approximately 10 mA / cm when the applied electric field was 6 V / μm. 2 It can be seen that a current density of? As described above, since the carbonaceous nanostructure sample A can emit a sufficient current at a low driving voltage, it can be suitably used as an electron source or an electron emitting element for a field emission display. On the other hand, the electron emission characteristics of the carbonaceous nanostructure sample B are inferior to the electron emission characteristics of the carbonaceous nanostructure sample A. For example, in the carbonaceous nanostructure sample B, compared to the carbonaceous structure sample A, the current density obtained when the electric field intensity for starting emission is as high as 11 V / μm and the applied electric field is about 17 V / μm Is 1 mA / cm 2 And small. As a result, it was confirmed that the use of a raw material gas containing propylene and butadiene enables good carbon to be grown even at a low carbon growth temperature.
[0066]
Next, in order to examine whether further low-temperature formation is possible, an experiment was performed in which a carbonaceous nanostructure sample C was formed at a carbon growth temperature of 500 ° C. FIG. 7 is a graph showing electric field strength-current density characteristics of the prepared carbonaceous nanostructure sample C. The obtained carbonaceous nanostructure sample C has a slightly higher electric field intensity of 7 V / μm to start emission, but has characteristics superior to those of the carbonaceous nanostructure sample B (carbon growth temperature: 600 ° C.). are doing. For example, when the applied electric field is 16 V / μm, the current density is 1 mA / cm 2 Has been reached. In addition, from the SEM photograph of the carbonaceous nanostructure sample C, it was confirmed that a carbonaceous nanostructure having a diameter of 10 nm similar to that of FIG. 5 was obtained. As described above, by growing carbon at a low temperature of less than 510 ° C., a soda lime glass substrate (softening point of about 510 ° C.), which is more inexpensive among glass substrates, is used as a support (substrate 3) for the carbonaceous nanostructure. ) Can be used, which is particularly advantageous for mass production of carbonaceous nanostructures.
[0067]
In the method for producing the carbonaceous nanostructure 1 according to the embodiment of the present invention, carbon is vapor-phase grown using a source gas containing a monoolefin-based compound and a diolefin-based compound. The decomposition temperature can be kept low. Therefore, the temperature at which carbon is vapor-phase grown can be lowered without using a catalytic metal, so that an increase in the number of steps can be suppressed. In addition, since the carbonaceous nanostructure 1 can be formed on an inexpensive glass substrate having low heat resistance, the manufacturing cost can be reduced. Furthermore, as described above, the carbonaceous nanostructure 1 manufactured using the above-described source gas has excellent vacuum electron emission characteristics, and thus can be suitably used as an electron source.
[0068]
Since the carbonaceous nanostructure 1 according to the embodiment of the present invention is manufactured by the above method, a substrate formed of a material having relatively low heat resistance may be used as a substrate for supporting the carbonaceous nanostructure 1. it can. Therefore, the range of choice of the substrate material is widened. Further, by using an inexpensive glass substrate or the like, the manufacturing cost can be reduced.
[0069]
Further, it is not necessary to increase the diameter of the nanoholes of the nanohole structure used in the manufacturing process in order to deposit the catalyst metal. Therefore, the diameter of the carbon fiber formed in each nanohole can be reduced as compared with the case where carbon is grown using a catalytic metal. The carbonaceous nanostructure 1 having a carbon nanofiber having a small diameter is advantageous because the electric field is more easily concentrated.
[0070]
Using the carbonaceous nanostructure 1 of the present embodiment as an electron source, a field emission display can be configured by a known method. As described above, since the carbonaceous nanostructure 1 of the present embodiment is manufactured by an inexpensive and simple method, there is an advantage that the manufacturing cost of the field emission display can be reduced. In addition, since the carbonaceous nanostructure 1 of the present embodiment has excellent electron emission characteristics, a high-luminance field emission display can be provided.
[0071]
【The invention's effect】
ADVANTAGE OF THE INVENTION According to this invention, the simple method which can manufacture a carbonaceous nanostructure at low temperature, and the carbonaceous nanostructure and electron source manufactured at low temperature by the method can be provided. The present invention is particularly suitably applied to a display device such as a field emission display.
[Brief description of the drawings]
FIG. 1 is a schematic view showing a carbonaceous nanostructure according to an embodiment of the present invention.
FIGS. 2 (a) to 2 (f) are schematic cross-sectional views for explaining a manufacturing process of a carbonaceous nanostructure in an embodiment of the present invention.
FIG. 3 is a graph showing a reflection spectrum of visible light on the surface of an alumina layer after carbon is vapor-phase grown in an embodiment of the present invention.
FIG. 4 is a scanning electron micrograph of the surface of an alumina layer formed by anodic oxidation in an embodiment of the present invention.
FIG. 5 is a scanning electron micrograph of a carbonaceous nanostructure according to an embodiment of the present invention.
FIG. 6 is a graph showing electric field intensity-current density characteristics of a carbonaceous nanostructure formed at 600 ° C. in an embodiment of the present invention.
FIG. 7 is a graph showing electric field strength-current density characteristics of a carbonaceous nanostructure formed at 500 ° C. in an embodiment of the present invention.
[Explanation of symbols]
1 Carbonaceous nanostructure
2 electrodes
3 Glass substrate
4a Aluminum layer
4b Alumina layer
5 Nanohole
6, 7 carbon