JP2004235276A - 太陽電池素子およびその形成方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ファイヤースルー法で電極を形成する太陽電池素子において、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく、太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田にする。
【解決手段】半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を設けるとともに裏面側に裏面電極を設け、この表面電極を半田で被覆した太陽電池素子であって、上記表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、上記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田とする。
【選択図】 図1
【解決手段】半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を設けるとともに裏面側に裏面電極を設け、この表面電極を半田で被覆した太陽電池素子であって、上記表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、上記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池素子とその形成方法に関し、特に半田よって電極を被覆した太陽電池素子とその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来のシリコン太陽電池の代表的な製造工程を図3に示す。まず図3(a)のようにP型半導体基板1を準備する。そして、図3(b)に示すように、半導体基板1をN型不純物雰囲気中で熱処理などして、半導体基板1の表面側近傍全面に一定の深さまでN型不純物を拡散させてN型を呈する拡散層2を形成する。次に、図3(c)に示すように、半導体基板1の表面側にCVD法などで反射防止膜3を形成する。次に、拡散層2を分離した後、表面側に表面電極4を形成するとともに、裏面側に出力取出電極6と集電電極5とを形成することよって図3(d)に示すような太陽電池素子を得る。
【0003】
表面電極4は例えば反射防止膜3の上に表面電極材料を塗布して焼成することによって表面電極材料の下の反射防止膜3を溶融させて半導体基板1と直接接触させるいわゆるファイヤースルー法で形成される。電極材料としては、0.1〜2μm程度の粒径を有する銀粉末100重量部に対して、10〜30重量部の有機ビヒクル、0.1〜5重量部のガラスフリットから成るペースト状の電極材料などが用いられている。しかし、この方法によれば安定したオーミック接触が得られず、表面電極4の接着強度も充分なものが得られないという問題があった。
【0004】
この問題を回避するために、反射防止膜3上に焼き付ける電極材料にTi、Bi、Co、Zn、Fe、Crもしくはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。この方法によればオーミックコンタクト性がよく接着強度の強い太陽電池素子を得ることができる。
【0005】
しかし、上記Ti、Bi、Co、Zn、Fe、Crは銀の焼結を阻害する傾向があり、装置のトラブルなど何らかの原因によって半田被覆の作業温度が上昇すると表面電極4の焼結し切れなかったAgが半田中のSnと化合物を形成して半田に溶解してしまういわゆる銀喰われが発生することがあった。
【0006】
さらに、これらの表面電極4は長期信頼性の確保および後工程で太陽電池素子同士を接続するインナーリード(不図示)と接続するために半田で被覆する。このときの半田材料としては一般に62Sn−38Pb共晶半田が使用される。このSn−Pb共晶半田は融点が183℃であり、電極への半田被覆は190〜200℃程度で行われる。
【0007】
一方、近年、鉛の人体への影響が叫ばれて鉛を含まないいわゆる鉛フリー半田とよばれる半田材料が盛んに検討されている。鉛フリー半田の例としてはSn−Bi系半田、Sn−Zn系半田、Sn−Ag系半田、Sn−Cu系半田、Sn−In系半田等が挙げられる。このうち太陽電池には3〜89重量%のBiを含有したSn−Bi−Ag系半田や、3.5〜4.5重量%のAgを含有したSn−Ag系半田を使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしこれらの鉛フリー半田は一般に上記Sn−Pb共晶半田よりも共晶温度が高く、銀喰われを発生しやすい。
【0008】
そこで、鉛フリー半田を太陽電池素子の電極への被覆に使用するためには錫濃度の低減、および半田作業温度の低減が求められる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ファイヤースルー法で形成する太陽電池素子において、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく、太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田にした太陽電池素子とその形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−313400号公報
【特許文献2】
特開2002−217434号公報
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る太陽電池素子によれば、半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を設けるとともに裏面側に裏面電極を設け、この表面電極を半田で被覆した太陽電池素子において、前記表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、前記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る太陽電池素子の形成方法によれば、半導体基板の表面側に形成された反射防止膜上に、銀を主成分とする電極材料を塗布して焼き付けることによって表面電極を形成し、その表面に半田を被覆してなる太陽電池素子の形成方法において、前記電極材料はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、前記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の太陽電池素子の構造を示す断面図である。図1において、1は半導体基板、2は拡散層、3は反射防止膜、4はBSF層、5は表面電極、6は裏面電極、7は表面半田層、8は裏面半田層を示す。
【0014】
まず、半導体基板1を用意する。この半導体基板1は単結晶又は多結晶シリコンなどから成る。このシリコン基板1は、ボロン(B)などの一導電型半導体不純物を1×1016〜1018atoms/cm3程度含有し、比抵抗1.5Ωcm程度の基板である。単結晶シリコンの場合は引き上げ法などで形成され、多結晶シリコンの場合は鋳造法などで形成される。多結晶シリコンは大量生産が可能で製造コスト面で単結晶シリコンよりも有利である。引き上げ法や鋳造法で形成されたインゴットを300μm程度の厚みにスライスして10cm×10cm程度の大きさに切断してシリコン基板とする。
【0015】
次に、基板の切断面を清浄化するために表面をフッ酸やフッ硝酸などでごく微量エッチングする。
【0016】
次に、シリコン基板1を拡散炉中に配置してオキシ塩化リン(POCl3)などの中で加熱することによってシリコン基板1の表面部分にリン原子を拡散させてシート抵抗が30〜300Ω/□の他の導電型を呈する拡散層2を形成する。
【0017】
次に、シリコン基板1の表面側のみを残して他の部分を除去した後、純水で洗浄する。このシリコン基板1の表面側以外の除去は、シリコン基板1の表面側にレジスト膜を塗布し、フッ酸と硝酸の混合液を用いてエッチング除去した後、レジスト膜を除去することよって行なう。
【0018】
次に、シリコン基板1の表面側に反射防止膜3を形成する。この反射防止膜3は例えば窒化シリコン膜などから成り、例えばシラン(SiH4)とアンモニア(NH4)との混合ガスをグロー放電分解してプラズマ化させて堆積させるプラズマCVD法などで形成される。この反射防止膜3はシリコン基板1との屈折率差などを考慮して屈折率が1.8〜2.3程度になるように形成され、厚み500〜1000Å程度の厚みに形成される。この窒化シリコン膜3は形成する際にパッシベート効果があり、反射防止の機能と併せて太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
【0019】
次に、裏面にアルミニウムペーストなどを塗布して焼き付けることにより、BSF層4を形成する。
【0020】
そして、表裏面に電極材料を塗布して焼き付けることよって表面電極5および裏面電極6を形成する。この電極材料は銀と有機ビヒクルとガラスフリットを銀100重量部に対してそれぞれ10〜30重量部、0.1〜5重量部を添加してぺースト状にしたもので、これをスクリーン印刷法で印刷して600〜800℃で1〜30分程度焼成することよって焼き付けられる。
【0021】
この際に用いられる有機ビヒクルは粉末状のものをペースト状にするために用いられる樹脂であり、例えばセルロース系やアクリル系のものがある。これらは400℃程度で分解して揮散するため焼成後の電極5、6にはその成分は残らない。また、ガラスフリットは焼き付けた電極5、6に強度を持たすために用いられる。ガラスフリットは、鉛、ホウ素、珪素等の酸化物を含み、300〜600℃程度の種々の軟化点をもつものがあるが、焼成後に一部は電極5、6中に残り、一部はシリコンと溶着するために電極5、6とシリコン基板1との間を接着する機能を持つ。
【0022】
本発明においては、この表面電極材料には粒径0.1〜5μm程度のTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のいずれか1種または複数種を含有する。粒径が0.1μm以下の場合は電極材料中での分散性が悪くなり十分な電極強度を得られず望ましくない。粒径が5μm以上の場合にはスクリーン印刷性(線切れ、線幅の均一性)が悪くなり十分な電極強度を得られず望ましくない。また含有量が0.05重量部以下では十分な強度が得られず望ましくない。含有量が5重量部以上では電極材料の線抵抗が増大し、望ましくない。
【0023】
また、Ti、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物を用いることにより、反射防止膜上から前記電極材料を塗布すれば、オーミックコンンタクト性が良く電極強度の強い太陽電池素子が得られる。
【0024】
このようにすることにより、ファイヤースルー法で形成された表面電極5でも充分なオーミックコンタクトと接着強度を得ることができる。その理由は銀電極中に含まれるガラスフリット成分へ作用して反射防止膜へのガラスフリットの作用を促進させるためである。
【0025】
表面電極5と裏面電極6の表面には、長期信頼性の確保および後工程で太陽電池素子同士を接続するためのインナーリード(不図示)を接続するために、半田7、8を被覆する。本発明によれば表面電極5を被覆する半田7は、Biを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田とする。
【0026】
Biは半田の溶融温度を下げる作用し、Snは銀と化学結合していわゆる半田接合部を形成するように作用し、Agは銀電極と半田濡れ性を改善するように作用する。
【0027】
この場合、Biは27〜73重量%添加される。62Sn−38Pb共晶半田よりもSn含有量を少なくして融点(62Sn−36Pbでは183℃)が低い組成にするためである。
【0028】
図2にBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田の相図を示す。なお、図2はSnとBiの含有量に応じた融点温度を示している。図2から明らかなように、Biを27〜73重量%含有することよって半田の融点は183℃以下となり、従来のSn−Pb共晶半田の融点とほぼ同等となる。よって銀喰われの問題が発生することはない。
【0029】
なお、製造工程上、裏面電極6を被覆する半田8もBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田とすることが望ましい。
【0030】
ファイヤースルーによる良好なコンタクトおよび電極強度を得るためにはTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有することが必要であったが、この電極ではSn−Pbでの半田被覆で銀喰われが起こるという問題があった。今回この問題をSn濃度の低い半田種へ変更することにより改善するものである。
【0031】
半田浸漬時間と銀喰われ状態(削減された線幅)を表1に示した。銀ペーストは酸化亜鉛を添加したものについてはSn−Pb共晶半田に1.5重量%の銀を加えたものとSn−Bi−Ag系半田(Bi含有量(重量%):25、27、40、57、70、75)でディップした。銀ペーストに添加剤を加えなかったものはSn−Pb共晶半田に1.5重量%の銀を加えたもののみの評価を行った。
【0032】
【表1】
【0033】
銀ペーストに対する添加剤の有無による銀喰われは各々の浸漬時間において添加剤を含まないものの喰われは少ない。銀ペーストに添加剤が入っているものでもSn−Bi−Ag系半田では銀喰われは少ない。このうちもっとも銀喰われが少なかったのはSn−57Bi−1.5Ag半田であった。
【0034】
なお、Bi濃度が25重量%のときには線幅削減量がSn−Pb−1.5Ag半田より多く銀喰われの程度が改善されていない。また、Bi濃度が75重量%のときには曲線因子、電気特性がSn−Pb−1.5Ag半田を用いた場合に比べて低下し好ましくない。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る太陽電池素子によれば、銀を主成分とする表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、この表面電極を被覆する半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることから、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田にすることが可能となる。
【0036】
また、本発明に係る太陽電池素子の形成方法によれば、銀を主成分とする表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、この表面電極を被覆する半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることから、半導体基板の表面側に形成された反射防止膜上に電極材料を塗布して焼き付けることによって表面電極を形成できるとともに、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田で太陽電池素子を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽電池素子の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る太陽電池素子の電極表面を被覆する半田の相図である。
【図3】従来の太陽電池素子の形成方法を示す図である。
【符号の説明】
1:半導体基板、2:拡散層、3:反射防止膜、4:BSF層、5:表面電極、6:裏面電極、7:表面半田層、8:裏面半田層
【発明の属する技術分野】
本発明は太陽電池素子とその形成方法に関し、特に半田よって電極を被覆した太陽電池素子とその形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
従来のシリコン太陽電池の代表的な製造工程を図3に示す。まず図3(a)のようにP型半導体基板1を準備する。そして、図3(b)に示すように、半導体基板1をN型不純物雰囲気中で熱処理などして、半導体基板1の表面側近傍全面に一定の深さまでN型不純物を拡散させてN型を呈する拡散層2を形成する。次に、図3(c)に示すように、半導体基板1の表面側にCVD法などで反射防止膜3を形成する。次に、拡散層2を分離した後、表面側に表面電極4を形成するとともに、裏面側に出力取出電極6と集電電極5とを形成することよって図3(d)に示すような太陽電池素子を得る。
【0003】
表面電極4は例えば反射防止膜3の上に表面電極材料を塗布して焼成することによって表面電極材料の下の反射防止膜3を溶融させて半導体基板1と直接接触させるいわゆるファイヤースルー法で形成される。電極材料としては、0.1〜2μm程度の粒径を有する銀粉末100重量部に対して、10〜30重量部の有機ビヒクル、0.1〜5重量部のガラスフリットから成るペースト状の電極材料などが用いられている。しかし、この方法によれば安定したオーミック接触が得られず、表面電極4の接着強度も充分なものが得られないという問題があった。
【0004】
この問題を回避するために、反射防止膜3上に焼き付ける電極材料にTi、Bi、Co、Zn、Fe、Crもしくはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。この方法によればオーミックコンタクト性がよく接着強度の強い太陽電池素子を得ることができる。
【0005】
しかし、上記Ti、Bi、Co、Zn、Fe、Crは銀の焼結を阻害する傾向があり、装置のトラブルなど何らかの原因によって半田被覆の作業温度が上昇すると表面電極4の焼結し切れなかったAgが半田中のSnと化合物を形成して半田に溶解してしまういわゆる銀喰われが発生することがあった。
【0006】
さらに、これらの表面電極4は長期信頼性の確保および後工程で太陽電池素子同士を接続するインナーリード(不図示)と接続するために半田で被覆する。このときの半田材料としては一般に62Sn−38Pb共晶半田が使用される。このSn−Pb共晶半田は融点が183℃であり、電極への半田被覆は190〜200℃程度で行われる。
【0007】
一方、近年、鉛の人体への影響が叫ばれて鉛を含まないいわゆる鉛フリー半田とよばれる半田材料が盛んに検討されている。鉛フリー半田の例としてはSn−Bi系半田、Sn−Zn系半田、Sn−Ag系半田、Sn−Cu系半田、Sn−In系半田等が挙げられる。このうち太陽電池には3〜89重量%のBiを含有したSn−Bi−Ag系半田や、3.5〜4.5重量%のAgを含有したSn−Ag系半田を使用することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしこれらの鉛フリー半田は一般に上記Sn−Pb共晶半田よりも共晶温度が高く、銀喰われを発生しやすい。
【0008】
そこで、鉛フリー半田を太陽電池素子の電極への被覆に使用するためには錫濃度の低減、および半田作業温度の低減が求められる。
【0009】
本発明は、このような従来の問題点に鑑みてなされたものであり、ファイヤースルー法で形成する太陽電池素子において、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく、太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田にした太陽電池素子とその形成方法を提供することを目的とする。
【0010】
【特許文献1】
特開2001−313400号公報
【特許文献2】
特開2002−217434号公報
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に係る太陽電池素子によれば、半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を設けるとともに裏面側に裏面電極を設け、この表面電極を半田で被覆した太陽電池素子において、前記表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、前記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2に係る太陽電池素子の形成方法によれば、半導体基板の表面側に形成された反射防止膜上に、銀を主成分とする電極材料を塗布して焼き付けることによって表面電極を形成し、その表面に半田を被覆してなる太陽電池素子の形成方法において、前記電極材料はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、前記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることを特徴とする。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を添付図面に基づき詳細に説明する。図1は本発明の太陽電池素子の構造を示す断面図である。図1において、1は半導体基板、2は拡散層、3は反射防止膜、4はBSF層、5は表面電極、6は裏面電極、7は表面半田層、8は裏面半田層を示す。
【0014】
まず、半導体基板1を用意する。この半導体基板1は単結晶又は多結晶シリコンなどから成る。このシリコン基板1は、ボロン(B)などの一導電型半導体不純物を1×1016〜1018atoms/cm3程度含有し、比抵抗1.5Ωcm程度の基板である。単結晶シリコンの場合は引き上げ法などで形成され、多結晶シリコンの場合は鋳造法などで形成される。多結晶シリコンは大量生産が可能で製造コスト面で単結晶シリコンよりも有利である。引き上げ法や鋳造法で形成されたインゴットを300μm程度の厚みにスライスして10cm×10cm程度の大きさに切断してシリコン基板とする。
【0015】
次に、基板の切断面を清浄化するために表面をフッ酸やフッ硝酸などでごく微量エッチングする。
【0016】
次に、シリコン基板1を拡散炉中に配置してオキシ塩化リン(POCl3)などの中で加熱することによってシリコン基板1の表面部分にリン原子を拡散させてシート抵抗が30〜300Ω/□の他の導電型を呈する拡散層2を形成する。
【0017】
次に、シリコン基板1の表面側のみを残して他の部分を除去した後、純水で洗浄する。このシリコン基板1の表面側以外の除去は、シリコン基板1の表面側にレジスト膜を塗布し、フッ酸と硝酸の混合液を用いてエッチング除去した後、レジスト膜を除去することよって行なう。
【0018】
次に、シリコン基板1の表面側に反射防止膜3を形成する。この反射防止膜3は例えば窒化シリコン膜などから成り、例えばシラン(SiH4)とアンモニア(NH4)との混合ガスをグロー放電分解してプラズマ化させて堆積させるプラズマCVD法などで形成される。この反射防止膜3はシリコン基板1との屈折率差などを考慮して屈折率が1.8〜2.3程度になるように形成され、厚み500〜1000Å程度の厚みに形成される。この窒化シリコン膜3は形成する際にパッシベート効果があり、反射防止の機能と併せて太陽電池の電気特性を向上させる効果がある。
【0019】
次に、裏面にアルミニウムペーストなどを塗布して焼き付けることにより、BSF層4を形成する。
【0020】
そして、表裏面に電極材料を塗布して焼き付けることよって表面電極5および裏面電極6を形成する。この電極材料は銀と有機ビヒクルとガラスフリットを銀100重量部に対してそれぞれ10〜30重量部、0.1〜5重量部を添加してぺースト状にしたもので、これをスクリーン印刷法で印刷して600〜800℃で1〜30分程度焼成することよって焼き付けられる。
【0021】
この際に用いられる有機ビヒクルは粉末状のものをペースト状にするために用いられる樹脂であり、例えばセルロース系やアクリル系のものがある。これらは400℃程度で分解して揮散するため焼成後の電極5、6にはその成分は残らない。また、ガラスフリットは焼き付けた電極5、6に強度を持たすために用いられる。ガラスフリットは、鉛、ホウ素、珪素等の酸化物を含み、300〜600℃程度の種々の軟化点をもつものがあるが、焼成後に一部は電極5、6中に残り、一部はシリコンと溶着するために電極5、6とシリコン基板1との間を接着する機能を持つ。
【0022】
本発明においては、この表面電極材料には粒径0.1〜5μm程度のTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のいずれか1種または複数種を含有する。粒径が0.1μm以下の場合は電極材料中での分散性が悪くなり十分な電極強度を得られず望ましくない。粒径が5μm以上の場合にはスクリーン印刷性(線切れ、線幅の均一性)が悪くなり十分な電極強度を得られず望ましくない。また含有量が0.05重量部以下では十分な強度が得られず望ましくない。含有量が5重量部以上では電極材料の線抵抗が増大し、望ましくない。
【0023】
また、Ti、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物を用いることにより、反射防止膜上から前記電極材料を塗布すれば、オーミックコンンタクト性が良く電極強度の強い太陽電池素子が得られる。
【0024】
このようにすることにより、ファイヤースルー法で形成された表面電極5でも充分なオーミックコンタクトと接着強度を得ることができる。その理由は銀電極中に含まれるガラスフリット成分へ作用して反射防止膜へのガラスフリットの作用を促進させるためである。
【0025】
表面電極5と裏面電極6の表面には、長期信頼性の確保および後工程で太陽電池素子同士を接続するためのインナーリード(不図示)を接続するために、半田7、8を被覆する。本発明によれば表面電極5を被覆する半田7は、Biを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田とする。
【0026】
Biは半田の溶融温度を下げる作用し、Snは銀と化学結合していわゆる半田接合部を形成するように作用し、Agは銀電極と半田濡れ性を改善するように作用する。
【0027】
この場合、Biは27〜73重量%添加される。62Sn−38Pb共晶半田よりもSn含有量を少なくして融点(62Sn−36Pbでは183℃)が低い組成にするためである。
【0028】
図2にBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田の相図を示す。なお、図2はSnとBiの含有量に応じた融点温度を示している。図2から明らかなように、Biを27〜73重量%含有することよって半田の融点は183℃以下となり、従来のSn−Pb共晶半田の融点とほぼ同等となる。よって銀喰われの問題が発生することはない。
【0029】
なお、製造工程上、裏面電極6を被覆する半田8もBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田とすることが望ましい。
【0030】
ファイヤースルーによる良好なコンタクトおよび電極強度を得るためにはTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有することが必要であったが、この電極ではSn−Pbでの半田被覆で銀喰われが起こるという問題があった。今回この問題をSn濃度の低い半田種へ変更することにより改善するものである。
【0031】
半田浸漬時間と銀喰われ状態(削減された線幅)を表1に示した。銀ペーストは酸化亜鉛を添加したものについてはSn−Pb共晶半田に1.5重量%の銀を加えたものとSn−Bi−Ag系半田(Bi含有量(重量%):25、27、40、57、70、75)でディップした。銀ペーストに添加剤を加えなかったものはSn−Pb共晶半田に1.5重量%の銀を加えたもののみの評価を行った。
【0032】
【表1】
【0033】
銀ペーストに対する添加剤の有無による銀喰われは各々の浸漬時間において添加剤を含まないものの喰われは少ない。銀ペーストに添加剤が入っているものでもSn−Bi−Ag系半田では銀喰われは少ない。このうちもっとも銀喰われが少なかったのはSn−57Bi−1.5Ag半田であった。
【0034】
なお、Bi濃度が25重量%のときには線幅削減量がSn−Pb−1.5Ag半田より多く銀喰われの程度が改善されていない。また、Bi濃度が75重量%のときには曲線因子、電気特性がSn−Pb−1.5Ag半田を用いた場合に比べて低下し好ましくない。
【0035】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る太陽電池素子によれば、銀を主成分とする表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、この表面電極を被覆する半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることから、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田にすることが可能となる。
【0036】
また、本発明に係る太陽電池素子の形成方法によれば、銀を主成分とする表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、この表面電極を被覆する半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることから、半導体基板の表面側に形成された反射防止膜上に電極材料を塗布して焼き付けることによって表面電極を形成できるとともに、オーミックコンタクト性および接着強度を確保するとともに、銀喰われの問題を発生させることなく太陽電池素子の電極を環境問題を考慮した鉛フリー半田で太陽電池素子を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る太陽電池素子の一実施形態を示す図である。
【図2】本発明に係る太陽電池素子の電極表面を被覆する半田の相図である。
【図3】従来の太陽電池素子の形成方法を示す図である。
【符号の説明】
1:半導体基板、2:拡散層、3:反射防止膜、4:BSF層、5:表面電極、6:裏面電極、7:表面半田層、8:裏面半田層
Claims (2)
- 半導体接合部を有する半導体基板の表面側に表面電極を設けるとともに裏面側に裏面電極を設け、この表面電極を半田で被覆した太陽電池素子において、前記表面電極はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、前記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることを特徴とする太陽電池素子。
- 半導体基板の表面側に形成された反射防止膜上に、銀を主成分とする電極材料を塗布して焼き付けることによって表面電極を形成し、その表面に半田を被覆してなる太陽電池素子の形成方法において、前記電極材料はTi、Bi、Co、Zn、Zr、Fe、Cr、またはこれらの酸化物のうちのいずれか一種または複数種を含有するとともに、前記半田はBiを27〜73重量%含有するとともに鉛を実質的に含まないSn−Bi−Ag系の半田であることを特徴とする太陽電池素子の形成方法。
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