JP2004232858A - ころがり軸受およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 異物混入潤滑下での転動疲労に対し長寿命であり、経年寸法変化率を抑制する、高負荷容量のころがり軸受およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 軌道輪3,5および転動体2を部材として含む円すいころ軸受1であって、軌道輪および転動体のうちの少なくとも1つの部材が、表層部に窒素富化層を有し、オーステナイト結晶粒の平均粒径が10μm以下であり、残留オーステナイト量が15%以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ころがり軸受およびその製造方法に関し、より具体的には、異物混入潤滑下での転動疲労に対し長寿命が要求され、かつ、経年寸法変化率の抑制が必要とされる部位に用いられる高負荷容量のころがり軸受およびその製造方法に関するものである。
ころがり軸受の高負荷容量化を達成させるため、ころがり軸受の部材を形成する鋼材を焼き入れた後に、サブゼロ処理やクライオ処理といった深冷処理を行なって、鋼材の降伏強度を向上させる手法がある。すなわち、焼入れした鋼材を0℃以下やマルテンサイト変態終了温度Mf点以下に冷却して、焼入れ後も残っている残留オーステナイトをマルテンサイト等に変態させ、降伏強度や硬度を向上させることができる。
一方、深冷処理を行なうと、上記したように残留オーステナイト量が減少する。しかし、異物混入潤滑下での転動疲労は残留オーステナイトにより改善されるので、残留オーステナイトが減少すると、異物混入潤滑下での転動疲労寿命が低下するという弊害が生じる(たとえば特許文献1、非特許文献1参照)。
特開平07−190072号公報 機械設計、第39巻、第13号、頁33:「ごみ入り潤滑環境下での長寿命−TF化技術」
近年、異物混入潤滑下および高温環境下での使用など、過酷な環境下での使用が増大しており、上記苛酷な使用環境において高負荷に耐えることができる高負荷容量のころがり軸受およびその製造方法が要求されている。
本発明は、異物混入潤滑下での転動疲労に対し長寿命であり、経年寸法変化率を抑制する、高負荷容量のころがり軸受およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のころがり軸受は、軌道輪および転動体を部材として含むころがり軸受であって、軌道輪および転動体のうちの少なくとも1つの部材が、表層部に窒素富化層を有し、オーステナイト結晶粒の平均粒径が10μm以下であり、残留オーステナイト量が15%以下である。
上記の構成により、実用上十分優れた異物混入潤滑下での転動疲労寿命を得た上で、経年寸法変化が抑制され、高強度の高負荷容量のころがり軸受を得ることができる。オーステナイト結晶粒の平均粒径が10μmを超えると、転動体と軌道輪との接触で圧痕が深く付きやすく、高負荷容量化の障害となる。また、異物混入潤滑下での転動疲労試験において長寿命を得にくくなる。
なお、上記オーステナイト結晶粒は、対象とする部材の金相試料に対してエッチングなど、粒界を顕出する処理を施して観察することができる粒界であればよい。低温焼入れ直前の加熱された時点での粒界という意味で、旧オーステナイト粒と呼ぶ場合がある。測定は、JIS規格の粒度番号の平均値から平均粒径に換算して求めてもよいし、切片法などにより金相組織に重ねたランダム方向の直線が粒界と会合する間の間隔長さの平均値をとり、補正係数をかけて2次元から3次元の間隔長さにしてもよい。
残留オーステナイトが15%を超えると、経年寸法変化率が増大し、摩耗の増加や騒音の増大などが生じ、軸受部品としての性能が劣化する。残留オーステナイトの測定は、各種のX線回折法を用いて、オーステナイト相の適当な面指数の回折強度を求め、フェライト相の適当な面指数からの回折強度との比をとるなどして測定される。その際、回折ピークの高さを用いてもよいし、回折ピークの面積を用いてもよい。その他、オーステナイト相が非磁性体であり、フェライト相が強磁性体であることを利用して、磁気天秤などにより磁化力を求めることによっても測定できる。その他、市販の測定装置を用いて簡単に測定することができる。
また、上記低温焼入れの際にオーステナイト相はマルテンサイトなどに変態するが、上記残留オーステナイトは、異なる結晶面に沿って変態する隣り合うマルテンサイトの束の間などに、未変態のまま室温まで残ってしまったオーステナイトを指す。したがって、上記の平均粒径の範囲が限定されるオーステナイト結晶粒と直接の関係はない。
上記のオーステナイト結晶粒の平均粒径を6μm以下とすることができる。
上記のようにオーステナイト粒の平均粒径を6μm以下に微細化することにより、同じ残留オーステナイト量であってもオーステナイト粒の粗大な材料より、異物混入潤滑下での転動疲労寿命のさらに大きな延長を得ることができる。また、圧痕付け試験における圧痕深さの減少が得られる傾向がある。
また、上記の残留オーステナイト量を7.5%以下としてもよい。
上記のように残留オーステナイトを7.5%以下に低くすることにより、降伏強度を高め、異物混入潤滑下での転動疲労寿命をさらに延長し、圧痕付け試験における圧痕深さをさらに減少させることができる。
また、上記部材の表層部の硬度がHRC硬度63を超えるようにしてもよい。
この構成により、さらに高負荷容量のころがり軸受を得ることができる。HRC硬度は市販のHRC硬度計により測定することができる。
また、上記の諸特性を備えることにより、上記のころがり軸受は、異物混入潤滑下での転動疲労に対して長寿命が要求され、かつ経年寸法変化率が小さいことが要求される部位に用いられる軸受とすることができる。軸受の形式は問わず、玉軸受、円筒ころ軸受、針状ころ軸受、円すいころ軸受、スラスト玉軸受、スラストころ軸受など、どのような軸受であってもよい。
上記の使用環境を有する具体的な機械装置に用いられる軸受として、ドライブピニオン用軸受、減速機用軸受およびトランスミッション用軸受のうちのいずれかを挙げることができる。
本発明のころがり軸受の製造方法は、軌道輪および転動体を部材として含むころがり軸受の製造方法である。この製造方法では、部材の少なくとも1つの部材を形成する鋼材を、A1点以上の浸炭窒化温度に加熱し、浸炭窒化処理を施した後に、A1点未満に冷却する工程と、冷却工程の後に、鋼材をA1点以上でA3点未満の温度域であって、浸炭窒化温度よりも低い温度に加熱した後、焼き入れる低温焼入れ工程と、低温焼入れ工程の後、室温未満の温度に一定時間保持する深冷処理を施す工程とを備える。
上記浸炭窒化温度で浸炭窒化処理した後にA1点未満に冷却する工程では、油冷などにより室温まで冷却してもよいし、オーステナイト変態が所定値以上終了する温度まで冷却する処理であってもよい。上記製造方法により、窒素富化層を有し、オーステナイト粒が微細であり、かつ適切な量の残留オーステナイトを含む金属組織を得ることができる。このため、実用上十分優れた異物混入潤滑下での転動疲労寿命を得た上で、降伏強度を向上させることができる。また、経年寸法変化を抑制したころがり軸受を得ることができる。なお、上記窒素富化層は、上述のように、浸炭窒化処理により形成されるが、上記窒素富化層に炭素が富化されていてもよいし、富化されていなくてもよい。
また、残留オーステナイトは温度を下げるほど不安定になりマルテンサイト変態しやすくなる。このため、上記の深冷処理工程における室温未満の温度を、残留オーステナイトの目標値に応じて変化させることにより、残留オーステナイト量を変化させることができる。深冷処理の冷媒には、沸点が約−196℃の液体窒素や、その他各種の冷却装置を用いた冷却環境を用いることができる。温度も室温未満から絶対零度までの各種温度を用いることができる。
深冷処理は低温焼入れの後、1時間以内に実施することが望ましいが、低温焼入れの後、1時間を経過した後に実施してもよい。
また、深冷処理の後、焼戻しを行なうことが望ましい。しかし、深冷処理の後、焼戻しを実施しなくてもよい。
次に、図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は、円すいころ軸受を示す図であり、(a)は部分切断斜視図であり、(b)は断面図である。図1(a)に示すように、円すいころ軸受1は、ころ軸受の範疇に属し、転動体2と、内輪3と、外輪5と、保持器6とを備えている。転動体2が円すい形(円すい台)であるために、内輪3および外輪5はその断面にテーパがついている。
図1(b)から認められるように、円すいころ軸受は、内輪3および外輪5の軌道面の円すいの頂点と、ころ2の頂点とが中心軸の一点に集まるように設計されている。また、作用点9は中心軸上に位置する。ころ2は、内輪3の小つば3aおよび大つば3bによって案内されて動作する。ラジアル荷重、一方向のアキシャル荷重およびこれらの合成荷重に対して大きな負荷能力を有する点に特徴がある。ラジアル荷重が作用するときにも、軸(アキシャル)方向の分力が生じるので、2個相対して組み合わせ使用されるのが普通である。内輪3および外輪5ともに、断面における厚み寸法が小さいほうが正面であり、大きいほうがが背面である。すなわち、内輪3においては、小つば3aの側の側面が正面3cであり、大つば3bの側の側面が背面3dであり、外輪5においては、内輪と反対側にそれぞれ背面5dおよび正面5cが位置している。
2個の円すいころ軸受が用いられる場合、外輪における正面5cおよび背面5dを用いて、組み合わせ方が命名される。たとえば、図1(b)の円すいころ軸受に加えて、その右側に鏡面対称にもう1つの円すいころ軸受を組み合わせる場合、背面組み合わせ円すいころ軸受と呼ばれる。一方、図1(b)の円すいころ軸受に加えて、その左側に鏡面対称にもう1つの円すいころ軸受を組み合わせる場合、正面組み合わせ円すいころ軸受と呼ばれる。
また、上記の組み合わせ使用と同様な円すいころの配置となるようにした複列(2列)円すいころ軸受を用いてもよい。
上記本実施の形態における円すいころ軸受1では、転動体2および軌道輪3,5の少なくとも一つの部材に、A1点以上の浸炭窒化温度に加熱し、浸炭窒化処理を施す。その後に、A1点未満に冷却する工程と、冷却工程の後に、鋼材をA1点以上でA3点未満の温度域であって、浸炭窒化温度よりも低い温度に加熱した後、焼き入れる。この低温焼入れ工程の後、室温未満の温度、通常液体窒素温度の沸点−196℃前後に一定時間保持する深冷処理を施す。
上記の製造方法で製造された部材は、高負荷容量で、かつ、異物混入潤滑下での転動疲労に対し長寿命であり、かつ、経年寸法変化率の増大を防ぐことができる。このような部材の特性改善は、鋼の合金設計によっても可能であると考えられる。しかし、原材料コストが高くなるなどの問題点が発生する。本発明の実施の形態では、上記のように、一般的な軸受用鋼材を素材として、熱処理によってこれらの要求を満足することができる。すなわち、窒素富化層を形成し、かつ、オーステナイト結晶粒を従来の鋼材の2分の1以下として、かつ、深冷処理等によってMf点以下に冷却して降伏強度を向上させた部材を得ることができる。このような、金相上の特性は、異物混入潤滑下での転動疲労に対し長寿命で、経年寸法変化率を抑制し、高負荷容量とする上で非常に有効であることが分った。
図2および図3に、本実施の形態における熱処理方法を示す。図2は浸炭窒化処理後に焼入れを行なう方法である。図2において、A1以上の浸炭窒化処理温度A(850℃)では、鋼素地に窒素の拡散と、炭素の溶け込みを十分に行なう。この後、浸炭窒化温度から油焼入れを行ない、次いで180℃で焼戻しを行なう。この焼戻しは省略することができる。
この後、A1点以上であってA3点未満の温度であって浸炭窒化処理温度Aより低温の温度B(800℃)に加熱する。この温度Bは、2相域温度であり、亜共析範囲ではオーステナイトとフェライトとが、また過共析範囲ではオーステナイトとセメンタイトとが、共存する。これら2相共存域では、オーステナイト粒はほとんど成長せず、微細なオーステナイト粒を得ることができる。本実施の形態における鋼材は、過共析範囲の鋼であり、上記の2相域ではオーステナイトとセメンタイトとが共存する。この2相域の低温焼入れ温度Bから油焼入れを行なう。この後、図4に示す処理を行なう。すなわち、深冷処理を行ない残留オーステナイトを変態させて降伏強度を向上させ、その後、180℃で焼戻しを行なう。
また、図3は、浸炭窒化処理温度Aで浸炭窒化処理した後に、焼入れせずにA1点以下の温度に冷却する。その後、低温焼入れ温度Bに再加熱し、そこから油焼入れする。この後、A1変体点以下に一旦冷却して、温度Aより低温の温度Bに加熱し、油焼入れを施すという方法である。この後、図4に示すように、深冷処理と焼戻し処理を加える。図2の処理の場合も、図3の処理の場合も低温焼入れを行なった後、1時間以内に図4に示す処理を行なって、残留オーステナイトをマルテンサイトに変態させて降伏強度を向上させることが望ましい。
上記のどちらの熱処理によっても、その中の浸炭窒化処理により「浸炭窒化処理層」である窒素富化層が形成される。浸炭窒化処理において素材となる鋼の炭素濃度が高いため、通常の浸炭窒化処理の雰囲気から炭素が鋼の表面に侵入しにくい場合がある。たとえば炭素濃度が高い鋼の場合(1wt%程度の鋼)、それ以上高い炭素濃度の浸炭層が生成する場合もあるし、それ以上高い炭素濃度の浸炭層は生成しにくい場合がある。しかし、窒素濃度は、Cr濃度などにも依存するが、通常の鋼では最大限0.025wt%程度以下と低いので、素材の鋼の炭素濃度によらず窒素富化層が明瞭に生成される。上記窒素富化層には炭素が富化されていてもよいことはいうまでもない。
(実施例)
次に実施例について説明する。本発明例は、本実施の形態における製造方法を適用する鋼材としてJIS規格SUJ2材(1.0重量%C−0.25重量%Si−0.3重量%Mn−1.5重量%Cr)を用い、本発明例の試験材Eとした。また、同じ鋼材を用い、他の処理を適用したものを比較例の試験材A〜Dとした。それぞれの試験材の製造方法は次のとおりである。
(A材:比較例):普通焼入れのみ(浸炭窒化処理せず)した試験材。
(B材:比較例):浸炭窒化処理後にそのまま焼き入れた(従来の浸炭窒化焼入れ)試験材。浸炭窒化処理温度845℃、保持時間150分間。浸炭窒化処理の雰囲気は、RXガス+アンモニアガスとした。その他の浸炭窒化処理も同じ条件で行なった。
(C材:比較例):浸炭窒化処理後に図4に示す深冷処理を加えた試験材。
(D材:比較例):図2に示す処理(浸炭窒化処理後に焼入れ+焼戻し+低温度焼入れ)を加え、深冷処理を加えなかった試験材。
(E材:本発明例):図2示す処理および図4に示す深冷処理を加えた試験材。
本発明例E材および比較例B材の金相組織を図5および図6に示す。図5(a)は本発明例E材の金相写真であり、図5(b)は比較例B材の金相写真である。また、図6(a)および図6(b)は、それぞれの部分領域における模式図である。これらの図を比較することにより、本実施の形態における熱処理が組織の微細化にいかに有効であるか分かる。
上記A材〜E材の試験材のオーステナイト結晶粒の平均粒径、残留オーステナイト量、HRC硬度を表1に示す。
Figure 2004232858
比較例D材および本発明例E材は、いずれも図2に示す熱処理を行った試験材であり、低温焼入れを行なった結果、オーステナイト結晶粒の平均粒径がA材およびC材の2分の1以下である。また、深冷処理を施した比較例C材、および本発明例E材のHRC硬度は高く、逆に残留オーステナイト量は少なくなっていることが分かる。
次に、順を追って各試験条件および試験結果について説明する。
1. 異物混入潤滑下での転動疲労寿命試験
異物混入潤滑下での転動疲労の試験機の略図を図7に示す。この試験機における、異物混入潤滑下での転動疲労試験の試験条件を表2に、また、その試験結果を表3に示す。
Figure 2004232858
Figure 2004232858
表2および表3によれば、比較例B材のL10寿命(試験片10個中1個が破損する寿命)は、浸炭窒化処理のない比較例A材の2.1倍であり、浸炭窒化処理による長寿命化の効果が認められる。また、比較例C材は窒素富化層を有するが、深冷処理の結果、異物混入潤滑下での転動疲労寿命を改善する残留オーステナイト量が少ない。このため、深冷処理のない比較例B材よりもかなり短寿命になっている。図2に示す浸炭窒化処理と低温焼入れを加えた比較例D材は、他の材料に比べて非常に長寿命である。これは、残留オーステナイト量が非常に多く、かつ、オーステナイト結晶粒が細かいことに起因していると考えられる。上記比較例の試験材の結果に対し、本発明例E材は残留オーステナイトが、同じく深冷処理を行なった比較例C材程度しかないにもかかわらず、残留オーステナイト量の多い比較例B材とほぼ同じ寿命を示すことがわかった。
2. 圧痕付け試験
試験方法の概略を図8(a)〜(c)に示す。図8(a)は鋼球を平板に押し付ける前の状態を、(b)は鋼球を平板に押し込んだ状態を、また(c)は鋼球を平板から遠ざけた状態を示す図である。本圧痕付け試験では、鋼球(直径3/8インチ)と平板の最大接触面圧が、4GPa、5GPa、6GPaになるように荷重を付加し、平面側に形成される圧痕の深さを測定する。鋼球の押し込みによって平板に塑性変形に起因する圧痕が生じる。この平板に形成される圧痕の深さが浅いほど、その材料は高い面圧でも塑性変形をせず、静的な負荷容量が高いので高負荷容量ということになる。なお、それぞれの圧痕付け試験において、鋼球と平板とは、形状のみが異なる同じ試験材を用いた。
図9に圧痕付け試験の結果を示す。深冷処理を施している比較例C材、および本発明例E材は、他の3者に比較して明らかに圧痕深さは浅い。したがって、C材およびE材は、材料として高負荷容量であることがわかった。本発明例E材の圧痕深さは、比較例C材よりもさらに浅くなっている。この理由は、E材が表1に示すように微細粒であることに起因しており、Hall−Petchの法則にしたがって降伏強度が向上しているためと考えられる。
3. 経年寸法変化率測定
試験材A材〜E材について、保持温度130℃、保持時間500時間における経年寸法変化率を測定した。測定結果を表4および図10に示す。
Figure 2004232858
深冷処理を施した比較例C材、および本発明例E材の寸法変化率は、比較例B材の2分の1以下になっている。すなわち、普通焼入れ品である比較例A材よりも小さくなることがわかった。図10より分かるとおり、残留オーステナイトが少ないほど経年寸法変化率は軽減されている。また、深冷処理をせず低温焼入れを適用した微細オーステナイト粒の試験材D材、低温焼入れせず深冷処理した試験材C材、および低温焼入れと深冷処理とを行なった本発明例E材の3試験材は、同じ残留オーステナイト量であっても、比較例A材およびB材よりも寸法変化率は低めになる傾向が認められる。
上記のように、1.異物混入潤滑下での転動疲労寿命試験、2.圧痕付け試験、および3.経年寸法変化率測定の各試験結果により、本実施例における本発明例の試験材は、異物混入潤滑下での転動疲労に対して長寿命であり、高負荷容量であり、かつ経年寸法変化率の小さい材料であることが分った。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明のころがり軸受およびその製造方法を用いることにより、異物混入潤滑下での転動疲労に対し長寿命であり、経年寸法変化率が小さく、高負荷容量のころがり軸受およびその製造方法を提供することができるので、今後、この分野において広範な利用が期待される。
本発明の実施の形態における円すいころ軸受を示す図であり、(a)は円すいころ軸受の部分切断斜視図であり、(b)はその断面図である。 本発明の実施の形態における熱処理方法の一部を示す図である。 本発明の実施の形態における他の熱処理方法の一部を示す図である。 本発明の実施の形態における深冷処理と焼戻し方法を示す図である。 実施例における試験材の金相組織写真を示す図であり、(a)は本発明例E材であり、(b)は比較例B材である。 実施例における試験材の金相組織写真の模式図であり、(a)は本発明例E材であり、(b)は比較例B材である。 異物混入潤滑下での転動疲労試験を行なう試験装置を示す図である。 圧痕付け試験を示す図であり、(a)は鋼球を平板に押し付ける前の状態を、(b)は鋼球を平板に押し込んだ状態を、また(c)は鋼球を平板から遠ざけた状態を示す図である。 圧痕付け試験結果を示す図である。 各試験材の寸法変化率と残留オーステナイト量との関係を示す図である。
符号の説明
1 円すいころ軸受、2 転動体(円すいころ)、3 内輪、3a 小つば(内輪)、3b 大つば(内輪)、3c 内輪の正面、3d 内輪の背面、5 外輪、5c 外輪の正面、5d 外輪の背面、6 保持器、9 作用点。

Claims (7)

  1. 軌道輪および転動体を部材として含むころがり軸受であって、
    前記軌道輪および転動体のうちの少なくとも1つの部材が、表層部に窒素富化層を有し、オーステナイト結晶粒の平均粒径が10μm以下であり、残留オーステナイト量が15%以下である、ころがり軸受。
  2. 前記オーステナイト結晶粒の平均粒径が6μm以下である、請求項1に記載のころがり軸受。
  3. 前記残留オーステナイト量が7.5%以下である、請求項1または2に記載のころがり軸受。
  4. 前記部材の表層部の硬度がHRC硬度63を超える、請求項1〜3のいずれかに記載のころがり軸受。
  5. 前記ころがり軸受は、異物混入潤滑下での転動疲労に対して長寿命が要求され、かつ経年寸法変化率が小さいことが要求される部位に用いられる軸受である、請求項1〜4のいずれかに記載のころがり軸受。
  6. 軌道輪および転動体を部材として含むころがり軸受の製造方法であって、
    前記部材の少なくとも1つの部材を形成する鋼材を、A1点以上の浸炭窒化温度に加熱し、浸炭窒化処理を施した後に、A1点未満に冷却する工程と、
    前記冷却工程の後に、前記鋼材をA1点以上でA3点未満の温度域であって、前記浸炭窒化温度よりも低い温度に加熱した後、焼き入れる低温焼入れ工程と、
    前記低温焼入れ工程の後、室温未満の温度に一定時間保持する深冷処理を施す工程とを備える、ころがり軸受の製造方法。
  7. 前記深冷処理工程における室温未満の温度を、残留オーステナイトの目標値に応じて変化させる、請求項6に記載のころがり軸受の製造方法。
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