JP2004228122A - 発光素子及びその作製方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】GaN系半導体レーザ素子10は、サファイア基板c面12上に、MOCVD法により、順次、エピタキシャル成長させた、GaNバッファ層14、n型GaNコンタクト層16、n型AlGaNクラッド層18、n型GaN光導波層20、活性層22、p型GaN光導波層24、p型AlGaNクラッド層26、およびp型GaNコンタクト層28の積層構造を備える。コンタクト層及びクラッド層の上部層は、ストライプ状リッジ30として形成されている。リッジ部より下層のクラッド層26には、島状に結晶成長したp型AlGaInN結晶32が1次元的にランダムな配列で配置され、1次元の屈折率分布をクラッド層に形成している。クラッド層中に配置された、p型AlGaInN島状成長結晶32の1次元配置による1次元の周期的な屈折率分布をクラッド層中に設けることにより、レーザ光の強度分布つまりNFPを制御することができる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子及びその作製方法に関し、更に詳細には、発光素子特性を制御できる屈折率分布を発光層近傍に有する発光素子、及びそのような発光素子を容易なやり方で作製できる方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
最近、光通信を始めとする光エレクトロニクスの分野で、規則正しい微細構造を備えた人工結晶であるフォトニック結晶が新しい光学材料として注目されている。フォトニック結晶は、屈折率の異なる、光の波長程度の大きさのユニットを、屈折率が1次元又は多次元周期的な分布を持つように配列してなる構造体であって、材料や構造を自由にデザインすることにより、従来の光学材料では得られない優れた光学特性を有する光デバイスを実現できる材料として期待されている。
例えば、近年、フォトニック結晶を利用した、レーザ素子、偏光分離素子、可視域用複屈折素子等が提案されている。
【0003】
フォトニック結晶を構成要素とする素子を実用的に作製するには、フォトニック結晶を構成するサブマイクロオーダーの1次元又は多次元周期構造を再現性よく、かつ経済的に作製することが重要である。そこで、フォトニック結晶の構造、及び作製方法が種々研究され、報告されている。
例えば、フォトニック結晶の構造に関する研究事例として、柱状、球状、ドット状等のユニットを1次元、又は2次元に周期的に配列して形成された構造、多孔状、角材状、あるいは組み木状に3次元に周期的に積層して形成された構造等が報告されている。
また、フォトニック結晶の作製方法として、例えば高分子微粒子の自己組織化による方法、自己クローニング法、更には成長工程及びエッチング工程の高精度プロセスを繰り返す方法等のいくつかの作製方法が、提案され、試行されている。
【0004】
例えば、Optronics(2001)No.7、197頁〜201頁には、自己クローニング法によるフォトニック結晶の作製方法が紹介されている。
これによれば、予め、基板表面に凹凸パターンを形成した後、適切な繰り返し数でスパッタ成膜とスパッタエッチングを組み合わせたプロセスにより、低屈折率膜及び高屈折率のペアからなる多層膜を積層する。基板上の積層構造が上方に多層で形成されて行くにつれて、積層構造の基板に垂直な多層膜の縦断面は、積層初期の矩形パターンから鋸歯状パターンに自動的に整形され、鋸歯パターンの凹凸パターンが基板面に平行な面で正確に周期的に繰り返される積層構造が形成される。
【0005】
自己クローニング法によれば、射影効果による凹部の強調、スパッタエッチングの斜面形成、及びスパッタ成膜の際の再付着粒子の凹部への堆積の3つの現象のバランスの結果、鋸歯状パターンが周期的に繰り返された積層構造を作製することができるとしている。
例えば、低屈折率材料としてSiO2 膜を、高屈折率材料として水素化アモルファス・シリコン膜を自己クローニング法により積層させて、自己クローニング形2次元フォトニック結晶を形成することにより、偏光子あるいは反射型偏光分離素子として動作する光素子を作製できるとしている。
【0006】
また、フォトニック結晶構造をレーザ構造に組込み、レーザ特性に優れた半導体レーザ素子を作製する研究も盛んに行われている。
例えば、特開2001−257425号公報は、3次元フォトニック結晶構造の前駆体と、光閉じ込め部を含むストライプを形成した基板とを貼り合わせて、3次元フォトニック結晶構造体の中央部に光閉じ込め部を形成することにより、低閾値電流特性を備えた半導体レーザ素子、及びその半導体レーザ素子を製造する方法を開示している。
【0007】
【特許文献1】
特開2001−257425号公報(第1頁)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のフォトニック結晶の作製方法は、主として、結晶成長による層生成と、ドライエッチングやスパッタエッチングなどによる層の一定領域の除去との組み合わせによってフォトニック結晶を作製しているものの、果して、これらのフォトニック結晶の作製方法が実用的かどうかは、今後の研究に委ねられている。
【0009】
また、前掲公報では、半導体レーザ素子の作製方法として、光閉じ込め部を含むレーザストライプを形成したレーザ発光層、並びに、それぞれ、3次元フォトニック結晶構造の前駆体である上部構造体及び下部構造体を別々の工程で作製し、次いでレーザ発光層を上部構造体及び下部構造体でいわゆるサンドイッチ状に挟む手法を採用しているので、半導体レーザ素子の作製工程が、極めて複雑である。
即ち、フォトニック結晶構造をレーザ構造に組み込み、レーザ特性に優れた半導体レーザ素子を実現する研究は、現在、開始されたばかりの状況であって、実用化は今後の課題である。
【0010】
フォトニック結晶を実用的に作製するためには、作製プロセスが、簡便なプロセスであって、制御性、安定性、再現性等のプロセス特性に優れ、しかも経済的であることが必要である。
そこで、本発明の目的は、従来のフォトニック結晶の作製方法とは異なる方法により設けられた屈折率分布を備え、素子特性に優れている発光素子を提供すること、及びそのような発光素子を簡便なプロセスで、しかも制御性、安定性、再現性等のプロセス特性に優れたプロセスで経済的に作製する方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述のような発光素子及びその作製方法を開発するに当たって、プロセスを簡便にするために、従来の成膜工程とエッチング工程とを交互に繰り返すフォトニック結晶の作製手法に代えて、化合物半導体結晶の島状成長を主とする新規な方法で屈折率分布を化合物半導体層に設けることを着想し、実験により着想が有効であることを確認し、本発明を発明するに到った。
【0012】
上記目的を達成するために、上述の知見に基づいて、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子において、
島状成長した結晶(以下、島状成長結晶と言う)の分布からなる結晶分布を化合物半導体層本体中に有する化合物半導体層(以下、島状結晶分布型化合物半導体層と言う)が、少なくとも一層発光層上に設けられ、
島状結晶分布型化合物半導体層に分布する島状成長結晶は、化合物半導体層本体とは異なる光学的又は電気的物性を有してランダムな配列で化合物半導体本体中に配置され、屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴としている。
【0013】
本発明では、屈折率分布とは、隣接する領域の屈折率が相互に異なり、これにより生じた屈折率の分布を言う。なお、屈折率分布は、発光層に平行な1次元方向、又は2次元方向でも、発光層に平行な2次元方向及び発光層に直交する方向の3次元方向でも良い。
つまり、発光層に平行な2次元方向のランダムな配列で化合物半導体層本体内に島状成長結晶を分布させた、1層の島状結晶分布型化合物半導体層が、発光層上に設けられ、これにより、駆動電流の流れを乱して、発光層に平行な1次元又は2次元方向の屈折率分布を発光層近傍に生じさせている。
また、発光層に平行な2次元方向のランダムな配列で化合物半導体層本体内に島状成長結晶を分布させた、複数層の島状結晶分布型化合物半導体層が、発光層上に設けられ、これにより、島状成長結晶が発光層に平行な2次元方向及び発光層に直交する方向の3次元分布で配置され、発光層に対して3次元方向の屈折率分布を発光層近傍に生じさせている。
【0014】
本発明の好適な実施態様では、ストライプ状リッジが積層構造の上部に形成され、
島状成長結晶を化合物半導体層本体中にランダムな配列で分布させた島状結晶分布型化合物半導体層がリッジ下及びリッジ脇に設けられ、
島状成長結晶のランダムな分布によって、リッジからの距離に応じて屈折率が変わる屈折率分布をリッジ脇及びリッジ下の発光層近傍に生じさせている。
【0015】
本発明は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備える、半導体レーザ素子及び発光ダイオード等の発光素子に適用でき、発光素子を構成する基板の種類、化合物半導体層の組成、膜厚に制約はない。
島状成長結晶は、ランダムな配列でもよく、また規則的、周期的な配列でも良い。
【0016】
本発明に係る発光素子の作製方法は、発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
島状成長した結晶(以下、島状成長結晶と言う)の分布からなる結晶分布を化合物半導体層本体に有する化合物半導体層(以下、島状結晶分布型化合物半導体層と言う)を少なくとも一層発光層上に形成する工程と、
島状結晶分布型化合物半導体層上に化合物半導体層を成長させて、発光素子を構成する積層構造の形成を完結する工程と、
島状結晶分布型化合物半導体層上の化合物半導体層をエッチングして、ストライプ状リッジを島状結晶分布型化合物半導体層上に形成する工程と
を備え、発光層に対して平行な2次元方向、又は発光層に対して平行な2次元方向及び発光層に対して直交する方向の3次元方向にランダムな配列でリッジからの距離に応じて島状成長結晶を分布させることにより、リッジ脇及びリッジ下の発光層近傍に屈折率分布を生じさせていることを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、添付図面を参照して、実施形態例に基づいて本発明をより詳細に説明する。尚、以下の実施形態例で示した導電型、膜種、膜厚、成膜方法、その他寸法等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、本発明はこれら例示に限定されるものではない。
発光素子の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子をGaN系半導体レーザ素子に適用した実施形態の一例であって、図1は本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
本実施形態例の発光素子、即ちGaN系半導体レーザ素子10は、図1に示すように、サファイア基板c面12上に、有機金属化学的気相成長(MOCVD法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により、順次、エピタキシャル成長させた、GaNバッファ層14、n型GaNコンタクト層16、n型AlGaNクラッド層18、n型GaN光導波層20、活性層22、p型GaN光導波層24、p型AlGaNクラッド層26、およびp型GaNコンタクト層28の積層構造を備えている。
【0018】
p型GaNコンタクト層28、及びp型AlGaNクラッド層26の上部層は、ストライプ状リッジ30として形成され、リッジ30脇にp型AlGaNクラッド層26の下部層が露出している。
リッジ30より下層のp型AlGaNクラッド層26には、島状に結晶成長した、例えば(Al0.08Ga0.92)0.75In0.25Nからなるp型AlGaInN結晶32が活性層22に平行な面で1次元的にランダムな配列で分布している島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層が形成されている。
本実施形態例では、p型AlGaInN結晶32を1次元的にランダムに配置したことにより、1次元の屈折率分布がp型AlGaNクラッド層26の活性層22近傍に形成されている。
【0019】
AlGaInN結晶は、In組成が大きくなるほど、下地層に対しての吸着エネルギーよりも分子自身の束縛エネルギーの方が小さくなる。そのため、成長温度、成長速度、雰囲気ガス種、V族とIII 族のガス供給量比などの成長条件にも依存するが、In組成が例えば0.25以上では、AlGaInNが、下地層上に島状成長(Island成長あるいは3次元成長)して島状成長結晶若しくはドット状結晶になったり、または、In−Inのクラスター状結晶若しくはドロップレットライクメタルになる。
これにより、p型AlGaNクラッド層26とは物性の異なる島状成長結晶が、p型AlGaNクラッド層26に形成される。
【0020】
p型AlGaInN結晶32を配置した中間部を含むp型クラッド層26の下部層、p型GaN光導波層24、活性層22、n型GaN光導波層20、及びn型コンタクト層16の上部層は、リッジ30に平行に延びるメサとして形成され、メサ脇にn型コンタクト層16の下部層が露出している。
露出したn型コンタクト層16の下部層上にn型電極34が、p型GaNコンタクト層28上にp型電極36が、それぞれ、形成されている。
【0021】
本実施形態例の各化合物半導体層の膜厚を一例として挙げれば、GaNバッファ層14の膜厚は膜厚50nm、n型コンタクト層16の膜厚は3μm、n型AlGaNクラッド層18の膜厚は0.5μm、n型GaN光導波層20の膜厚は0.1μm、p型GaN光導波層24の膜厚は0.1μm、p型AlGaNクラッド層26の膜厚は0.5μm、及びp型GaNコンタクト層28の膜厚は0.5μmである。
また、活性層22は、Ga1−X InX N井戸層(x=0.15)とGa1−y Iny N障壁層(y=0.22)とから構成されている。
【0022】
本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子10では、p型AlGaNクラッド層26中に配置された、p型AlGaInN島状成長結晶32の1次元配置による生じる1次元の屈折率分布をp型AlGaNクラッド層26の活性層24近傍に設けたことにより、レーザ光の強度分布つまりNFP(Near Field Pattern)を制御することができる。
【0023】
また、AlGaInN島状成長結晶若しくはドット状結晶は、本実施形態例では、p型の導電型化合物半導体であるが、これに限らず、一般的なAlGaInN層と同等の高抵抗性物質、或いは逆にメタル相当の高伝導性の物質でもよい。また、AlGaInN島状成長結晶あるいはドット状結晶は、In−Inのクラスター状結晶若しくはドロップレットライクメタルでもよい。
AlGaInN島状成長結晶若しくはドット状結晶、又はIn−Inのクラスター状結晶若しくはドロップレットライクメタルは、駆動電流の流れる領域で、あたかもパチンコの釘あるいは如雨露や漏斗の役割を果して、駆動電流を制御する。
また、屈折率分布は、活性層に対してアンチガイディングになりモード制御に一定の役割をすることも本実施形態例の効果に含まれる。
【0024】
発光素子の作製方法の実施形態例
本実施形態例は本発明に係る発光素子の作製方法を上述のGaN系半導体レーザ素子10の作製に適用した実施形態の一例である。図2(a)と(b)及び図3(c)と(d)は、それぞれ、本実施形態例の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
図2(a)に示すように、基板、例えばサファイア基板c面12上に、例えば有機金属化学的気相成長(MOCVD法:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法によって550℃程度の低温の成長温度でGaNバッファ層14をエピタキシャル成長させる。
続いて、GaNバッファ層14上に、MOCVD法によって1000℃程度の成長温度で、n型GaNコンタクト層16、n型AlGaNクラッド層18、及びn型GaN光導波層20を順次エピタキシャル成長させる。
次いで、活性層22を800℃程度の成長温度でエピタキシャル成長させ、続いて、1000℃程度の成長温度で、p型GaN光導波層24、p型AlGaNクラッド層26の下層部をエピタキシャル成長させる。
【0025】
p型AlGaNクラッド層26の下層部をエピタキシャル成長させた後、p型AlGaNクラッド層26の成長を中止し、例えば800℃程度の成長温度で、p型AlGaInN結晶32を島状成長させる。
前述のように、AlGaInN結晶はIn組成が大きくなるほど、下地層に対しての吸着エネルギーよりも分子自身の束縛エネルギーの方が小さくなる。その結果、AlGaInNはp型AlGaNクラッド層26上に島状成長(Island成長あるいは3次元成長)してドット状結晶になる。または、In−Inのクラスター状結晶若しくはドロップレットライクメタルが生成される。
続いて、再び、p型AlGaNクラッド層26を成長させる。これにより、p型AlGaNクラッド層26中にAlGaInN島状成長結晶をランダムな1次元配列で配置させた島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層を形成することができる。
次いで、島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層上にp型GaNコンタクト層28をエピタキシャル成長させて、GaN系半導体レーザ素子の積層構造を形成する。
【0026】
次に、図2(b)に示すように、p型GaNコンタクト層28上に、通常のレジスト塗布工程によってレジスト膜を形成する。次いで、通常のリソグラフィー技術を適用して、露光工程、現像工程、ベーキング工程等を実施し、レジスト膜をパターニングしてストライプ状のレジストパターンを有するレジストマスク38を形成する。
続いて、レジストマスク38をエッチングマスクに用いてウエットエッチング法又はドライエッチング法によりp型GaNコンタクト層28の露出領域をエッチングし、次いでAlGaInN結晶32上のp型AlGaNクラッド層26の上層部を選択的に除去して、p型GaNコンタクト層28に連続するp型AlGaNクラッド層26の上部層を有するリッジ30を作製する。
【0027】
次に、レジストマスク38を使ってCVD成膜法により、図3(c)に示すように、リッジ30の両脇に露出しているp型AlGaNクラッド層26の平坦面上にSiO2 膜を成膜し、次いでパターニングして、メサ形成用のエッチングマスク39をp型AlGaNクラッド層26の露出面上に形成する。
【0028】
次いで、図3(d)に示すように、エッチングマスク39を使って、以下、従来のGaN系半導体レーザ素子の作製方法と同様にして、p型AlGaNクラッド層26の下部層、p型GaN光導波層24、活性層22、n型GaN光導波層20、n型AlGaNクラッド層18、及びn型GaNコンタクト層16の上部層をエッチングして、リッジ30と同じ方向に延在するメサ構造を形成する。
更に、n型GaNコンタクト層16の露出領域にn側電極34をp型GaNコンタクト層28上にp側電極36を形成する。
以上の工程を経ることにより、屈折率分布を有するGaN系半導体レーザ素子10を従来の作製方法に比べて簡単に作製することができる。
【0029】
発光素子の実施形態例2
本実施形態例は本発明に係る発光素子をGaN系半導体レーザ素子に適用した実施形態の別の例であって、図4は本実施形態例のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。図4から図6中、図1から図3の部位と同じものには、同じ符号を付している。
本変形例のGaN系半導体レーザ素子40は、図4に示すように、p型AlGaNクラッド層26中にp型AlGaInN島状成長結晶42を3次元的配列で分布させた島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層44を有することを除いて、実施形態例1の半導体レーザ素子10と同じ構成を備えている。
【0030】
本実施形態例では、p型AlGaInN島状成長結晶42の3次元配列構造は、実施形態例1の島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層を3層積層することにより構成されている。
これにより、p型AlGaInN島状成長結晶42の3次元の周期的配置により、3次元屈折率分布がp型AlGaNクラッド層26の活性層22近傍に形成される。
【0031】
本実施形態例では、p型AlGaNクラッド層26の活性層22近傍に3次元屈折率分布を有するので、1次元屈折率分布を有する実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子10に比べて、駆動電流の制御が一層容易になる。
これにより、レーザ光の強度分布、つまりNFP(Near Field Pattern) を一層容易に制御することができ、キンクの生じるストライプ幅を変えることができる。更には、自然放出光強度を変えることができる。
【0032】
発光素子の作製方法の実施形態例2
本実施形態例は、本発明方法に係る発光素子の作製方法を上述の実施形態例2のGaN系半導体レーザ素子の作製に適用した実施形態の別の例であって、図5(a)と(b)及び図6(c)と(d)は、それぞれ、本実施形態例の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
実施形態例1と同様に、先ず、図5(a)に示すように、サファイア基板c面12上にMOCVD法によって550℃程度の低温の成長温度でGaNバッファ層14をエピタキシャル成長させる。
続いて、GaNバッファ層14上に、MOCVD法によって1000℃程度の成長温度で、n型GaNコンタクト層16、n型AlGaNクラッド層18、及びn型GaN光導波層20を順次エピタキシャル成長させる。
次いで、活性層22を800℃程度の成長温度でエピタキシャル成長させ、続いて、1000℃程度の成長温度で、p型GaN光導波層24、p型AlGaNクラッド層26の下層部をエピタキシャル成長させる。
【0033】
p型AlGaNクラッド層26の下層部をエピタキシャル成長させた後、p型AlGaNクラッド層26の成長を中止し、800℃程度の成長温度で、p型AlGaInN結晶42を島状成長させる。
続いて、再び、p型AlGaNクラッド層26を成長させる。これにより、p型AlGaNクラッド層26中にAlGaInN島状成長結晶をランダムな配列で配置させた1次元島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層を形成することができる。これを3回繰り返して、AlGaInN島状成長結晶の3次元分布構造を有する島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層44を積層する。これにより、p型AlGaInN島状成長結晶42の3次元配列構造を形成することができる。
次いで、島状結晶分布型p型AlGaNクラッド層44上にp型AlGaNクラッド層26を成長させ、続いてp型GaNコンタクト層28をエピタキシャル成長させて、GaN系半導体レーザ素子の積層構造の形成を完結する。
【0034】
次に、図5(b)に示すように、p型GaNコンタクト層28上に、通常のレジスト塗布工程によってレジスト膜を形成する。次いで、通常のリソグラフィー技術を適用して、露光工程、現像工程、ベーキング工程等を実施し、レジスト膜をパターニングしてストライプ状のレジストパターンを有するレジストマスク38を形成する。
続いて、レジストマスク38をエッチングマスクに用いてウエットエッチング法又はドライエッチング法によりp型GaNコンタクト層28の露出領域をエッチングし、次いでAlGaInN島状成長結晶42上のp型AlGaNクラッド層26の上層部を選択的に除去して、p型GaNコンタクト層28に連続するp型AlGaNクラッド層26の上部層を有するリッジ30を作製する。
【0035】
次に、レジストマスク38を使ってCVD成膜法により、図6(c)に示すように、リッジ30の両側に露出しているp型AlGaNクラッド層26の平坦面上にSiO2 膜を成膜し、パターニングして、メサ形成用のエッチングマスク39をp型AlGaNクラッド層26上に形成する。
【0036】
次いで、図6(d)に示すように、エッチングマスク39を使って、以下、従来のGaN系半導体レーザ素子の作製方法と同様にして、p型AlGaNクラッド層26の下部層、p型GaN光導波層24、活性層22、n型GaN光導波層20、n型AlGaNクラッド層18、及びn型GaNコンタクト層16の上部層をエッチングして、リッジ30と同じ方向に延在するメサ構造を形成する。
更に、n型GaNコンタクト層16の露出領域にn側電極34をp型GaNコンタクト層上にp側電極36を形成する。
以上の工程を経ることにより、屈折率分布を有するGaN系半導体レーザ素子40を従来の作製方法に比べて簡単に作製することができる。
【0037】
以上、本発明を実施形態例により具体的に説明したが、本発明は、実施形態例1及び2に限定されることはなく、本発明の技術的思想に基づく各種変形が可能である。例えば、上述の各実施形態例において記載した数値、構造、材料、プロセス等は一例であって、必要に応じてこれらと異なる数値、構造、材料、プロセスなどは用いてもよい。
実施形態例1及び2の半導体レーザ素子10、40はGaN系半導体レーザ素子であるが、GaAs系やInP系の半導体レーザ素子でも良い。また、発光ダイオードでも良い。
【0038】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明によれば、化合物半導体層とは異なる光学的又は電気的物性を有する島状成長結晶が、発光層上の少なくとも一層の化合物半導体層にランダムな配列で配置されていることにより、屈折率分布を発光層近傍に生じさせることができる。
これにより、素子特性に優れた発光素子、例えば駆動電流の制御が可能で、発光波長を変化させることができ、レーザ光の強度分布つまりNFP(Near FieldPattern)を制御することができる半導体レーザ素子を実現することができる。更には、キンクの生じるストライプ幅を変えることができ、自然放出光強度を変えることができる半導体レーザ素子を実現することができる。
【0039】
本発明の作製方法によれば、発光層上の化合物半導体層中に化合物半導体層とは異なる光学的又は電気的物性を有する島状成長結晶又はドロップレットメタルをランダムな配列で形成することにより、駆動電流の流れを乱して、屈折率分布を生成させる半導体レーザ素子を作製することができる。
本発明方法によれば、制御性、安定性、及び再現性に優れた屈折率分布を簡便なプロセスで形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図2】図2(a)と(b)は、それぞれ、実施形態例1の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図3】図3(c)と(d)は、それぞれ、図2(b)に続いて実施形態例1の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図4】実施形態例2のGaN系半導体レーザ素子の構成を示す断面図である。
【図5】図5(a)と(b)は、それぞれ、実施形態例2の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【図6】図6(c)と(d)は、それぞれ、図5(b)に続いて実施形態例2の方法に従ってGaN系半導体レーザ素子を製造する際の工程毎の基板断面図である。
【符号の説明】
10……実施形態例1のGaN系半導体レーザ素子、12……サファイア基板c面、14……GaNバッファ層、16……n型GaNコンタクト層、18……n型AlGaNクラッド層、20……n型GaN光導波層、22……活性層、24……p型GaN光導波層、26(44)……p型AlGaNクラッド層、28……p型GaNコンタクト層、30……リッジ、32……AlGaInN島状成長結晶(又はIn−Inメタル)、34……n型電極、36……p型電極、38……マスク、40……実施形態例2のGaN系半導体レーザ素子、42……AlGaInN島状成長結晶(又はIn−Inメタル)。
Claims (5)
- 発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子において、
島状成長した結晶(以下、島状成長結晶と言う)の分布からなる結晶分布を化合物半導体層本体中に有する化合物半導体層(以下、島状結晶分布型化合物半導体層と言う)が、少なくとも一層発光層上に設けられ、
島状結晶分布型化合物半導体層に分布する島状成長結晶は、化合物半導体層本体とは異なる光学的又は電気的物性を有してランダムな配列で化合物半導体本体中に配置され、屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴とする発光素子。 - 発光層に平行な2次元方向のランダムな配列で化合物半導体層本体内に島状成長結晶を分布させた、1層の島状結晶分布型化合物半導体層が、発光層上に設けられ、これにより、発光層に平行な2次元方向の屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
- 発光層に平行な2次元方向のランダムな配列で化合物半導体層本体内に島状成長結晶を分布させた、複数層の島状結晶分布型化合物半導体層が、発光層上に設けられ、これにより、島状成長結晶が発光層に平行な2次元方向及び発光層に直交する方向の3次元分布で配置され、発光層に対して3次元方向の屈折率分布を発光層近傍に生じさせていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。
- ストライプ状リッジが積層構造の上部に形成され、
島状成長結晶を化合物半導体層本体中にランダムな配列で分布させた島状結晶分布型化合物半導体層がリッジ下及びリッジ脇に設けられ、
島状成長結晶のランダムな分布によって、リッジからの距離に応じて屈折率が変わる屈折率分布をリッジ脇及びリッジ下の発光層近傍に生じさせていることを特徴とする請求項1に記載の発光素子。 - 発光層を含む化合物半導体層の積層構造を備えた発光素子の作製方法であって、
発光層を含む化合物半導体層の積層構造を基板上に形成する工程と、
島状成長した結晶(以下、島状成長結晶と言う)の分布からなる結晶分布を化合物半導体層本体に有する化合物半導体層(以下、島状結晶分布型化合物半導体層と言う)を少なくとも一層発光層上に形成する工程と、
島状結晶分布型化合物半導体層上に化合物半導体層を成長させて、発光素子を構成する積層構造の形成を完結する工程と、
島状結晶分布型化合物半導体層上の化合物半導体層をエッチングして、ストライプ状リッジを島状結晶分布型化合物半導体層上に形成する工程と
を備え、発光層に対して平行な2次元方向、又は発光層に対して平行な2次元方向及び発光層に対して直交する方向の3次元方向にランダムな配列でリッジからの距離に応じて島状成長結晶を分布させることにより、リッジ脇及びリッジ下の発光層近傍に屈折率分布を生じさせていることを特徴とする発光素子の作製方法。
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