JP2004225790A - 車輪支持用転がり軸受ユニット - Google Patents
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Abstract
【課題】加締め時にひび割れが発生しにくい車輪支持用転がり軸受ユニットを提供する。
【解決手段】内輪3が加締めにより一体的に固定された車輪支持用転がり軸受ユニット1のハブ輪2を、マンガンと0.45〜0.65質量%の炭素とを含有する鋼で構成した。そして、下記式で定義される鋼のマンガン偏析度を、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%以上の場合は0.6以下とし、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%未満の場合は(2.8−2×[Mn0])/3以下とした。
マンガン偏析度=([Mn]−[Mn0])/[Mn0]
ここで、[Mn]は前記鋼の最大マンガン濃度であり、その単位は質量%である。
【選択図】 図1
【解決手段】内輪3が加締めにより一体的に固定された車輪支持用転がり軸受ユニット1のハブ輪2を、マンガンと0.45〜0.65質量%の炭素とを含有する鋼で構成した。そして、下記式で定義される鋼のマンガン偏析度を、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%以上の場合は0.6以下とし、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%未満の場合は(2.8−2×[Mn0])/3以下とした。
マンガン偏析度=([Mn]−[Mn0])/[Mn0]
ここで、[Mn]は前記鋼の最大マンガン濃度であり、その単位は質量%である。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等に用いられる車輪支持用転がり軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に用いられる従来の車輪支持用転がり軸受ユニットとしては、例えば図3に示すものがある。
この車輪支持用転がり軸受ユニット101は、ハブ輪102,内輪103,外輪104,及び複数の転動体105を備えており、ハブ輪102の外周面の外端側部分には、車輪を支持するための車輪取り付け用フランジ106が設けられている。なお、本明細書においては、車輪支持用転がり軸受ユニットを自動車に取り付けた状態において、自動車の幅方向外側を向いた部分を外端側部分と称し、幅方向中央側を向いた部分を内端側部分と称する。すなわち、図3においては、左側が外端側となり、右側が内端側となる。
【0003】
また、ハブ輪102の内端側部分には外径の小さい小径段部108が形成されており、該小径段部108に内輪103が嵌め込まれている。ハブ輪102の内端側部分は円筒状に形成されており、該円筒部109を径方向外方に加締め広げることにより、内輪103をハブ輪102に固定し、軸受すきまを所定値に設定している。
【0004】
ハブ輪102の外周面の軸方向中間部及び内輪103の外周面には、それぞれ軌道面が形成され、複列の内輪軌道面107a,107bとされている。また、外輪104の内周面には前記複列の内輪軌道面107a,107bに対応する複列の外輪軌道面110a,110bが形成されている。さらに、複列の内輪軌道面107a,107bと複列の外輪軌道面110a,110bとの間には、それぞれ複数の転動体105が転動自在に配置されている。そして、外輪104の車輪取り付け用フランジ6から離間する側の端部には、懸架装置取り付け用フランジ111が設けられている。
【0005】
なお、図3の例では転動体105として玉を使用しているが、質量の大きい車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体105としてテーパころを使用する場合もある。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット101を自動車に組み付けるには、外輪104の懸架装置取り付け用フランジ111を懸架装置に固定し、ハブ輪102の車輪取り付け用フランジ106に車輪を固定する。これにより、車輪を懸架装置に対して回転自在に支持することができる。
【0006】
通常、転がり軸受においては、転動体が転走する軌道部には高面圧が繰り返し負荷されるため、転がり疲労の長寿命化に必要な硬さや耐摩耗性が要求される。よって、通常の転がり軸受の材料にはSUJ2等の高炭素クロム鋼が用いられ、焼入れ,焼戻しを施すことにより、軸受部材全体が硬化処理されている。しかしながら、前述のようなフランジを有する部材は、通常の軸受部材と比較して複雑な形状を有しているため、熱間鍛造性,切削性,穴あけ加工性の観点から、S53C等の中炭素鋼で形成される。また、その軌道部周辺には、転がり疲労寿命を確保するため、高周波焼入れによって表面硬化層を設ける場合が多い。
【0007】
よって、ハブ輪102は、切断した棒材を高周波誘導により加熱して、1100〜1200℃程度のオーステナイト域で熱間鍛造することにより成形して製造される。そのうち大部分は焼入れ,焼戻しが施されることなく使用されるが、車輪取り付け用フランジ106の内端側付け根部112から内輪軌道面107bを経て小径段部108までの領域には、転がり疲労寿命の確保及び内輪嵌め合い部のフレッチング防止を目的として、高周波焼入れによる硬化層113(図3において格子状に斜線を付した部分)が形成されている。高周波焼入れが施されていない部分は、熱間鍛造したままの熱処理状態で使用される(以下、高周波焼入れが施されておらず、熱間鍛造したままの熱処理状態で使用される部分を非調質部と称す)。
【0008】
このとき、熱間鍛造後の放冷によって、まずフェライト組織が生成し、残りがパーライト組織となる。このように2つの相は変態温度が異なるため、変態点近傍での冷却速度や加熱時に成長したオーステナイト結晶の粒径の影響によって変態挙動が変化し、最終的なフェライト/パーライト分率が異なった組織が得られる。
【0009】
車輪支持用転がり軸受ユニット101の組み立て時には、内輪103をハブ輪102の小径段部108に嵌め込んだ後に、内輪103とハブ輪102とを固定するために、ハブ輪102の円筒部109を図3のように径方向外方に押し広げる工程がある。この工程では、車輪支持用転がり軸受ユニット101の全体を回転させながら、径方向外方に向いた大きな荷重を円筒部109にかけるという、大きな歪速度で高い加工率の冷間加工を行っている。
【0010】
ところが、このような揺動加締めを行うと、表面に径方向にひび割れが発生するとういう問題があった。そこで、特開2002−139060号公報には、円筒部の端面の角に丸みをつけることにより亀裂の発生を抑制する技術が提案されており、特開平12−087978号公報には、円筒から加締めて最終的な表面の曲面形状を改良することにより、抜け抗力を向上させる技術が提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−139060号公報
【特許文献2】
特開平12−087978号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、加締めの際の変形荷重や変形速度が大きくなると、前記公報に記載の技術では、前述の問題点を解決できない場合があった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、加締め時にひび割れが発生しにくい車輪支持用転がり軸受ユニットを提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記内輪が加締めにより一体的に固定された鋼製のハブ輪と、を備える車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、前記鋼は、マンガンと0.45〜0.65質量%の炭素とを含有することに加えて、下記式で定義されるマンガン偏析度が、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%以上の場合は0.6以下であり、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%未満の場合は(2.8−2×[Mn0])/3以下であることを特徴とする。
【0014】
マンガン偏析度=([Mn]−[Mn0])/[Mn0]
ここで、[Mn]は前記鋼の最大マンガン濃度であり、その単位は質量%である。
このような構成であれば、内輪をハブ輪に一体的に固定するため加締めを行っても、ひび割れが発生しにくい。以下に、その理由を説明する。
【0015】
内輪とハブ輪とを一体的に固定するために、非調質部において揺動加締めを行っているが、本発明者らは、前述の従来技術における加締め部に発生する径方向のひび割れの発生要因について鋭意研究を行った。その結果、まず、加締め性の良し悪しには素材の伸びや絞り値が大きく関与しており、組織要因によって伸び、絞り値が劣化した場合に、前述のひび割れが発生することを見出した。
【0016】
日本金属学会編「鉄鋼材料」の第78頁に記載されているように、リン(P)やマンガン(Mn)の偏析によってフェライト/パーライト組織は変化し、特に鍛伸方向に平行にフェライト/パーライトの縞状組織が現れる。そして、このような不均一な縞状組織は、引張り方向によって伸びや絞り値が大きく異なるとされている。
【0017】
加締め部分であるハブ輪の円筒部には、熱間鍛造によって、縦方向に素材のフロー及び縞状組織が発達している。また、円筒部を加締めて広げる際には縦方向と円周方向との両方向に押し広げられるため、縞状組織に対して垂直方向の力が作用する。よって、パーライト組織が連結した部分とフェライト組織が連結した部分との材料特性が異なり、材料の均一な延性が得られず、局部的に極端に変形能が低下し、加締め部表面にひび割れが発生しやすくなるのである。
【0018】
さらに、鋼中のMnSは軟質な介在物であるため切削性を向上させる効果を有する一方で、垂直方向に引張り応力が作用するとMnSを起点として割れが発生しやすい。また、MnSの析出量は通常はS濃度によって決定されるが、鍛錬比及びMnの偏析状態によってその分布が大きく異なってくるので、単にS濃度を制御するだけでは、加締めによる割れの問題は解決できず、析出したMnSのサイズ及び分布状態を決定するMnの偏析を制御することが重要であるとの結論に達した。
【0019】
また、MnSとオーステナイトとの界面は、オーステナイト粒界と同様に、鍛造後の冷却時に初析フェライトの核生成サイトとなる。その結果、フェライト中にMnSが存在する組織が形成されやすい。このような組織では、冷間変形時に界面でボイドが形成され、伸び及び絞り値の劣化が大きくなる。よって、加締め性を向上させるためには、フェライトとMnSとの界面を極力少なくする必要がある。
【0020】
MnS上のフェライト析出挙動は鍛造後の冷却速度と関係があり、冷却速度が遅い場合は、MnSを核として成長した初析フェライトの量が多くなる傾向にある。一方、冷却速度が速い場合は、MnSを起点としたフェライトの成長、さらにMnの偏析によって生じる不均一組織の形成が抑制される傾向にある。つまり、切削性を劣化させない範囲内で冷却速度を速くするか、粗大なMnSの析出そのものを抑えることが好ましい。
【0021】
次に、前述したマンガン偏析度(Mn偏析度)について詳述する。
合金元素の偏析は、鋳造後に凝固する際の冷却速度に大きく依存する。高炭素クロム軸受鋼のように熱間加工後に高温での均熱拡散処理(ソーキング)が行われると縞状偏析が低減される。これに対して、Crの含有量が比較的低い中炭素鋼は、巨大な共晶炭化物が形成されることがないことからソーキングが行なわれないため、合金元素の濃度偏析が顕著である。
【0022】
中でも、Mnが濃化した部分では変態点が低下するので、初析フェライトの成長が少なく、全面的にパーライト量が増加する。そして、その周囲では変態点が低下しないので、優先的にフェライトが成長した領域が存在する。このような偏析は、鍛伸方向に伸びたバンド状であり、これに沿ってバンド状のフェライト/パーライト組織が形成される。
【0023】
Mnの含有量が0.5質量%以上のときに前述の式で定義されるMn偏析度が0.6超過であると、加締め部に生じるバンド状の不均一組織が顕著にあわられる。さらに、Mnが濃化した部分ではMnS量の増加を招くので、結果的に伸びや絞り値が悪化し、加締め時のひび割れが発生しやすくなる。このような問題点がより生じにくくするためには、Mnの含有量が0.5質量%以上のときのMn偏析度は0.4以下であることがより好ましい。これは、縞状組織の発達がさらに抑えられ、伸びや絞り値が改善されるからである。
【0024】
一方、Mnの含有量が0.5質量%未満の場合は、Mn偏析度が大きくても変態点の差が生じにくく、Mn偏析度が(2.8−2×[Mn0])/3以下であれば縞状組織が形成されない。なお、本発明における最大マンガン濃度とは、Mnが偏析した鋼においてMnが最も濃化した部分のMn濃度を意味する。
以上のように、素材のMn偏析を極力低減させて、▲1▼フェライト/パーライトの縞状組織の形成を回避すること、▲2▼MnSの析出量を低減すること及びそれを核として成長する不均一組織を回避することによって、素材の伸び、絞り値を向上させることができる。そうすれば、加締めによって大きな冷間変形を受けても、割れが発生しにくい加締め性に優れた車輪支持用転がり軸受ユニットを得ることができる。
【0025】
なお、前記鋼中の炭素の含有量は、0.45〜0.65質量%である必要がある。0.45質量%未満であると、転動部分に十分な硬さが付与されにくいという問題があり、0.65質量%超過であると、鋼の切削性が著しく悪化するという問題がある。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの一実施形態を示す部分縦断面図である。
この車輪支持用転がり軸受ユニット1は、ハブ輪2,内輪3,外輪4,及び複数の転動体5を備えており、ハブ輪2の外周面の外端側部分には、車輪を支持するための車輪取り付け用フランジ6が設けられている。
【0027】
また、ハブ輪2の内端側部分には外径の小さい小径段部8が形成されており、該小径段部8に内輪3が嵌め込まれている。ハブ輪2の内端側部分は円筒状に形成されており、該円筒部9が径方向外方に加締め広げられて、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定され、軸受すきまが所定値に設定されている。車輪支持用転がり軸受ユニット1の組み立て時には、内輪3をハブ輪2の小径段部8に嵌め込んだ後に、全体を回転させながら、径方向外方に向いた大きな荷重を円筒部9にかけ、ハブ輪2の円筒部9を図1のように径方向外方に押し広げる。
【0028】
ハブ輪2の外周面の軸方向中間部及び内輪3の外周面には、それぞれ軌道面が形成され、複列の内輪軌道面7a,7bとされている。また、外輪4の内周面には前記複列の内輪軌道面7a,7bに対応する複列の外輪軌道面10a,10bが形成されている。さらに、複列の内輪軌道面7a,7bと複列の外輪軌道面10a,10bとの間には、それぞれ複数の転動体5が転動自在に配置されている。そして、外輪4の車輪取り付け用フランジ6から離間する側の端部には、懸架装置取り付け用フランジ11が設けられている。
【0029】
なお、図1の例では転動体5として玉を使用しているが、質量の大きい車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体5としてテーパころを使用する場合もある。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット1を自動車に組み付けるには、外輪4の懸架装置取り付け用フランジ11を懸架装置に固定し、ハブ輪2の車輪取り付け用フランジ6に車輪を固定する。これにより、車輪を懸架装置に対して回転自在に支持することができる。
【0030】
この車輪支持用転がり軸受ユニット1の軸受形式は、転動体ピッチ径が49mmの複列玉軸受であり、各列の玉数は12個である。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット1のハブ輪2は、表1に示すような合金成分を有する鋼で形成されており、熱間鍛造により製造されたものである。なお、Mn偏析度を変化させるため、凝固時の冷却速度や鍛錬比を変化させた鋼、及び鍛造前に1200℃での拡散処理をおこなった鋼を一部使用した。また、ハブ輪2は切削加工で所定の形状に加工され、内輪軌道面7aの周辺部から小径段部8の周辺部までの領域に高周波焼入れが施され、表面に硬化層13(図1において格子状に斜線を付した部分)が形成されている。そして、その後に研削加工により仕上げ形状とされている。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に、鋼のMn偏析度と加締め部の硬さ(ビッカース硬さ)とを併せて示す。また、図2のグラフに、鋼のMnの含有量とMn偏析度との相関を示す。この硬さは、円筒部9の破断面を荷重98Nで5点測定し、その平均値を示したものである。また、Mn偏析度は、電子プローブ微量分析装置(EPMA)で測定した円筒部9の破断面のMn濃度分布と、最大マンガン濃度[Mn](固溶したMnを含む部分のマンガン濃度)とから、前述の式により算出した。
【0033】
なお、内輪3はS53Cで形成されている。また、外輪4はS53Cで形成されており、1100℃で熱間鍛造により製造されたものである。そして、熱間鍛造の後に切削加工が施され、外輪軌道面10aの周辺と外輪軌道面10bの周辺には高周波焼入れが施されている。さらに、その後に研削加工が施され最終形状とされている。さらに、転動体5はSUJ2で形成されている。
【0034】
これらの車輪支持用転がり軸受ユニット1は、以下のような条件で揺動加締めが行われ、組み立てられたものである。すなわち、ハブ輪2を回転速度200min−1で回転させながら、径方向外方に向いた荷重(200000N)を円筒部9の端部に負荷して押し広げて、内輪3をハブ輪2に加締めにより取り付けた。このとき、アキシアルすきまを−15μmに設定した。
【0035】
加締め性の評価基準は、加締め部の表面にひび割れが確認できなかったものを良品、ひび割れが確認されたもの及び適切なアキシアルすきまが得られなかったものを不良品とした。そして、揺動加締め1000回当たりの不良率(%)を算出して、表1に示した。
その結果、実施例1〜17の車輪支持用転がり軸受ユニットは、鋼のMn偏析度が好適であるため、いずれも不良率が低く抑えられていた。これに対して、鋼のMn偏析度が好適な範囲を超えている比較例2〜7の車輪支持用転がり軸受ユニットは、前記各実施例に比べて著しく不良率が高かった。また、C含有量の少ない比較例1の車輪支持用転がり軸受ユニットは不良率が低いが、これはC含有量が少ないことにより伸び及び絞り値が向上したことに起因したものである。比較例1は、C含有量が少ないことにより鋼の強度が不足しており問題である。さらに、C含有量の多い比較例2は、冷間加工性が特に悪化したことも問題であった。
【0036】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、車輪支持用転がり軸受ユニットの軸受形式は複列玉軸受であったが、単列玉軸受等の他の軸受形式でも差し支えない。また、玉軸受に限らずころ軸受でも差し支えない。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、ハブ輪を構成する鋼のMn偏析度を所定の値に制御したので、非金属介在物MnSの析出量の低減及びフェライト/パーライト組織の均一化が達成され、鋼の伸び及び絞り値が改善された。よって、内輪をハブ輪に一体的に固定するため加締めを行っても、ひび割れが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】鋼中のMnの含有量とMn偏析度との相関を示すグラフである。
【図3】従来の車輪支持用転がり軸受ユニットの部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 ハブ輪
3 内輪
4 外輪
5 転動体
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等に用いられる車輪支持用転がり軸受ユニットに関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車に用いられる従来の車輪支持用転がり軸受ユニットとしては、例えば図3に示すものがある。
この車輪支持用転がり軸受ユニット101は、ハブ輪102,内輪103,外輪104,及び複数の転動体105を備えており、ハブ輪102の外周面の外端側部分には、車輪を支持するための車輪取り付け用フランジ106が設けられている。なお、本明細書においては、車輪支持用転がり軸受ユニットを自動車に取り付けた状態において、自動車の幅方向外側を向いた部分を外端側部分と称し、幅方向中央側を向いた部分を内端側部分と称する。すなわち、図3においては、左側が外端側となり、右側が内端側となる。
【0003】
また、ハブ輪102の内端側部分には外径の小さい小径段部108が形成されており、該小径段部108に内輪103が嵌め込まれている。ハブ輪102の内端側部分は円筒状に形成されており、該円筒部109を径方向外方に加締め広げることにより、内輪103をハブ輪102に固定し、軸受すきまを所定値に設定している。
【0004】
ハブ輪102の外周面の軸方向中間部及び内輪103の外周面には、それぞれ軌道面が形成され、複列の内輪軌道面107a,107bとされている。また、外輪104の内周面には前記複列の内輪軌道面107a,107bに対応する複列の外輪軌道面110a,110bが形成されている。さらに、複列の内輪軌道面107a,107bと複列の外輪軌道面110a,110bとの間には、それぞれ複数の転動体105が転動自在に配置されている。そして、外輪104の車輪取り付け用フランジ6から離間する側の端部には、懸架装置取り付け用フランジ111が設けられている。
【0005】
なお、図3の例では転動体105として玉を使用しているが、質量の大きい車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体105としてテーパころを使用する場合もある。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット101を自動車に組み付けるには、外輪104の懸架装置取り付け用フランジ111を懸架装置に固定し、ハブ輪102の車輪取り付け用フランジ106に車輪を固定する。これにより、車輪を懸架装置に対して回転自在に支持することができる。
【0006】
通常、転がり軸受においては、転動体が転走する軌道部には高面圧が繰り返し負荷されるため、転がり疲労の長寿命化に必要な硬さや耐摩耗性が要求される。よって、通常の転がり軸受の材料にはSUJ2等の高炭素クロム鋼が用いられ、焼入れ,焼戻しを施すことにより、軸受部材全体が硬化処理されている。しかしながら、前述のようなフランジを有する部材は、通常の軸受部材と比較して複雑な形状を有しているため、熱間鍛造性,切削性,穴あけ加工性の観点から、S53C等の中炭素鋼で形成される。また、その軌道部周辺には、転がり疲労寿命を確保するため、高周波焼入れによって表面硬化層を設ける場合が多い。
【0007】
よって、ハブ輪102は、切断した棒材を高周波誘導により加熱して、1100〜1200℃程度のオーステナイト域で熱間鍛造することにより成形して製造される。そのうち大部分は焼入れ,焼戻しが施されることなく使用されるが、車輪取り付け用フランジ106の内端側付け根部112から内輪軌道面107bを経て小径段部108までの領域には、転がり疲労寿命の確保及び内輪嵌め合い部のフレッチング防止を目的として、高周波焼入れによる硬化層113(図3において格子状に斜線を付した部分)が形成されている。高周波焼入れが施されていない部分は、熱間鍛造したままの熱処理状態で使用される(以下、高周波焼入れが施されておらず、熱間鍛造したままの熱処理状態で使用される部分を非調質部と称す)。
【0008】
このとき、熱間鍛造後の放冷によって、まずフェライト組織が生成し、残りがパーライト組織となる。このように2つの相は変態温度が異なるため、変態点近傍での冷却速度や加熱時に成長したオーステナイト結晶の粒径の影響によって変態挙動が変化し、最終的なフェライト/パーライト分率が異なった組織が得られる。
【0009】
車輪支持用転がり軸受ユニット101の組み立て時には、内輪103をハブ輪102の小径段部108に嵌め込んだ後に、内輪103とハブ輪102とを固定するために、ハブ輪102の円筒部109を図3のように径方向外方に押し広げる工程がある。この工程では、車輪支持用転がり軸受ユニット101の全体を回転させながら、径方向外方に向いた大きな荷重を円筒部109にかけるという、大きな歪速度で高い加工率の冷間加工を行っている。
【0010】
ところが、このような揺動加締めを行うと、表面に径方向にひび割れが発生するとういう問題があった。そこで、特開2002−139060号公報には、円筒部の端面の角に丸みをつけることにより亀裂の発生を抑制する技術が提案されており、特開平12−087978号公報には、円筒から加締めて最終的な表面の曲面形状を改良することにより、抜け抗力を向上させる技術が提案されている。
【0011】
【特許文献1】
特開2002−139060号公報
【特許文献2】
特開平12−087978号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、加締めの際の変形荷重や変形速度が大きくなると、前記公報に記載の技術では、前述の問題点を解決できない場合があった。
そこで、本発明は、上記のような従来技術の問題点を解決し、加締め時にひび割れが発生しにくい車輪支持用転がり軸受ユニットを提供することを課題とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は次のような構成からなる。すなわち、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記内輪が加締めにより一体的に固定された鋼製のハブ輪と、を備える車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、前記鋼は、マンガンと0.45〜0.65質量%の炭素とを含有することに加えて、下記式で定義されるマンガン偏析度が、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%以上の場合は0.6以下であり、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%未満の場合は(2.8−2×[Mn0])/3以下であることを特徴とする。
【0014】
マンガン偏析度=([Mn]−[Mn0])/[Mn0]
ここで、[Mn]は前記鋼の最大マンガン濃度であり、その単位は質量%である。
このような構成であれば、内輪をハブ輪に一体的に固定するため加締めを行っても、ひび割れが発生しにくい。以下に、その理由を説明する。
【0015】
内輪とハブ輪とを一体的に固定するために、非調質部において揺動加締めを行っているが、本発明者らは、前述の従来技術における加締め部に発生する径方向のひび割れの発生要因について鋭意研究を行った。その結果、まず、加締め性の良し悪しには素材の伸びや絞り値が大きく関与しており、組織要因によって伸び、絞り値が劣化した場合に、前述のひび割れが発生することを見出した。
【0016】
日本金属学会編「鉄鋼材料」の第78頁に記載されているように、リン(P)やマンガン(Mn)の偏析によってフェライト/パーライト組織は変化し、特に鍛伸方向に平行にフェライト/パーライトの縞状組織が現れる。そして、このような不均一な縞状組織は、引張り方向によって伸びや絞り値が大きく異なるとされている。
【0017】
加締め部分であるハブ輪の円筒部には、熱間鍛造によって、縦方向に素材のフロー及び縞状組織が発達している。また、円筒部を加締めて広げる際には縦方向と円周方向との両方向に押し広げられるため、縞状組織に対して垂直方向の力が作用する。よって、パーライト組織が連結した部分とフェライト組織が連結した部分との材料特性が異なり、材料の均一な延性が得られず、局部的に極端に変形能が低下し、加締め部表面にひび割れが発生しやすくなるのである。
【0018】
さらに、鋼中のMnSは軟質な介在物であるため切削性を向上させる効果を有する一方で、垂直方向に引張り応力が作用するとMnSを起点として割れが発生しやすい。また、MnSの析出量は通常はS濃度によって決定されるが、鍛錬比及びMnの偏析状態によってその分布が大きく異なってくるので、単にS濃度を制御するだけでは、加締めによる割れの問題は解決できず、析出したMnSのサイズ及び分布状態を決定するMnの偏析を制御することが重要であるとの結論に達した。
【0019】
また、MnSとオーステナイトとの界面は、オーステナイト粒界と同様に、鍛造後の冷却時に初析フェライトの核生成サイトとなる。その結果、フェライト中にMnSが存在する組織が形成されやすい。このような組織では、冷間変形時に界面でボイドが形成され、伸び及び絞り値の劣化が大きくなる。よって、加締め性を向上させるためには、フェライトとMnSとの界面を極力少なくする必要がある。
【0020】
MnS上のフェライト析出挙動は鍛造後の冷却速度と関係があり、冷却速度が遅い場合は、MnSを核として成長した初析フェライトの量が多くなる傾向にある。一方、冷却速度が速い場合は、MnSを起点としたフェライトの成長、さらにMnの偏析によって生じる不均一組織の形成が抑制される傾向にある。つまり、切削性を劣化させない範囲内で冷却速度を速くするか、粗大なMnSの析出そのものを抑えることが好ましい。
【0021】
次に、前述したマンガン偏析度(Mn偏析度)について詳述する。
合金元素の偏析は、鋳造後に凝固する際の冷却速度に大きく依存する。高炭素クロム軸受鋼のように熱間加工後に高温での均熱拡散処理(ソーキング)が行われると縞状偏析が低減される。これに対して、Crの含有量が比較的低い中炭素鋼は、巨大な共晶炭化物が形成されることがないことからソーキングが行なわれないため、合金元素の濃度偏析が顕著である。
【0022】
中でも、Mnが濃化した部分では変態点が低下するので、初析フェライトの成長が少なく、全面的にパーライト量が増加する。そして、その周囲では変態点が低下しないので、優先的にフェライトが成長した領域が存在する。このような偏析は、鍛伸方向に伸びたバンド状であり、これに沿ってバンド状のフェライト/パーライト組織が形成される。
【0023】
Mnの含有量が0.5質量%以上のときに前述の式で定義されるMn偏析度が0.6超過であると、加締め部に生じるバンド状の不均一組織が顕著にあわられる。さらに、Mnが濃化した部分ではMnS量の増加を招くので、結果的に伸びや絞り値が悪化し、加締め時のひび割れが発生しやすくなる。このような問題点がより生じにくくするためには、Mnの含有量が0.5質量%以上のときのMn偏析度は0.4以下であることがより好ましい。これは、縞状組織の発達がさらに抑えられ、伸びや絞り値が改善されるからである。
【0024】
一方、Mnの含有量が0.5質量%未満の場合は、Mn偏析度が大きくても変態点の差が生じにくく、Mn偏析度が(2.8−2×[Mn0])/3以下であれば縞状組織が形成されない。なお、本発明における最大マンガン濃度とは、Mnが偏析した鋼においてMnが最も濃化した部分のMn濃度を意味する。
以上のように、素材のMn偏析を極力低減させて、▲1▼フェライト/パーライトの縞状組織の形成を回避すること、▲2▼MnSの析出量を低減すること及びそれを核として成長する不均一組織を回避することによって、素材の伸び、絞り値を向上させることができる。そうすれば、加締めによって大きな冷間変形を受けても、割れが発生しにくい加締め性に優れた車輪支持用転がり軸受ユニットを得ることができる。
【0025】
なお、前記鋼中の炭素の含有量は、0.45〜0.65質量%である必要がある。0.45質量%未満であると、転動部分に十分な硬さが付与されにくいという問題があり、0.65質量%超過であると、鋼の切削性が著しく悪化するという問題がある。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの一実施形態を示す部分縦断面図である。
この車輪支持用転がり軸受ユニット1は、ハブ輪2,内輪3,外輪4,及び複数の転動体5を備えており、ハブ輪2の外周面の外端側部分には、車輪を支持するための車輪取り付け用フランジ6が設けられている。
【0027】
また、ハブ輪2の内端側部分には外径の小さい小径段部8が形成されており、該小径段部8に内輪3が嵌め込まれている。ハブ輪2の内端側部分は円筒状に形成されており、該円筒部9が径方向外方に加締め広げられて、内輪3とハブ輪2とが一体的に固定され、軸受すきまが所定値に設定されている。車輪支持用転がり軸受ユニット1の組み立て時には、内輪3をハブ輪2の小径段部8に嵌め込んだ後に、全体を回転させながら、径方向外方に向いた大きな荷重を円筒部9にかけ、ハブ輪2の円筒部9を図1のように径方向外方に押し広げる。
【0028】
ハブ輪2の外周面の軸方向中間部及び内輪3の外周面には、それぞれ軌道面が形成され、複列の内輪軌道面7a,7bとされている。また、外輪4の内周面には前記複列の内輪軌道面7a,7bに対応する複列の外輪軌道面10a,10bが形成されている。さらに、複列の内輪軌道面7a,7bと複列の外輪軌道面10a,10bとの間には、それぞれ複数の転動体5が転動自在に配置されている。そして、外輪4の車輪取り付け用フランジ6から離間する側の端部には、懸架装置取り付け用フランジ11が設けられている。
【0029】
なお、図1の例では転動体5として玉を使用しているが、質量の大きい車輪支持用転がり軸受ユニットの場合には、転動体5としてテーパころを使用する場合もある。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット1を自動車に組み付けるには、外輪4の懸架装置取り付け用フランジ11を懸架装置に固定し、ハブ輪2の車輪取り付け用フランジ6に車輪を固定する。これにより、車輪を懸架装置に対して回転自在に支持することができる。
【0030】
この車輪支持用転がり軸受ユニット1の軸受形式は、転動体ピッチ径が49mmの複列玉軸受であり、各列の玉数は12個である。
このような車輪支持用転がり軸受ユニット1のハブ輪2は、表1に示すような合金成分を有する鋼で形成されており、熱間鍛造により製造されたものである。なお、Mn偏析度を変化させるため、凝固時の冷却速度や鍛錬比を変化させた鋼、及び鍛造前に1200℃での拡散処理をおこなった鋼を一部使用した。また、ハブ輪2は切削加工で所定の形状に加工され、内輪軌道面7aの周辺部から小径段部8の周辺部までの領域に高周波焼入れが施され、表面に硬化層13(図1において格子状に斜線を付した部分)が形成されている。そして、その後に研削加工により仕上げ形状とされている。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に、鋼のMn偏析度と加締め部の硬さ(ビッカース硬さ)とを併せて示す。また、図2のグラフに、鋼のMnの含有量とMn偏析度との相関を示す。この硬さは、円筒部9の破断面を荷重98Nで5点測定し、その平均値を示したものである。また、Mn偏析度は、電子プローブ微量分析装置(EPMA)で測定した円筒部9の破断面のMn濃度分布と、最大マンガン濃度[Mn](固溶したMnを含む部分のマンガン濃度)とから、前述の式により算出した。
【0033】
なお、内輪3はS53Cで形成されている。また、外輪4はS53Cで形成されており、1100℃で熱間鍛造により製造されたものである。そして、熱間鍛造の後に切削加工が施され、外輪軌道面10aの周辺と外輪軌道面10bの周辺には高周波焼入れが施されている。さらに、その後に研削加工が施され最終形状とされている。さらに、転動体5はSUJ2で形成されている。
【0034】
これらの車輪支持用転がり軸受ユニット1は、以下のような条件で揺動加締めが行われ、組み立てられたものである。すなわち、ハブ輪2を回転速度200min−1で回転させながら、径方向外方に向いた荷重(200000N)を円筒部9の端部に負荷して押し広げて、内輪3をハブ輪2に加締めにより取り付けた。このとき、アキシアルすきまを−15μmに設定した。
【0035】
加締め性の評価基準は、加締め部の表面にひび割れが確認できなかったものを良品、ひび割れが確認されたもの及び適切なアキシアルすきまが得られなかったものを不良品とした。そして、揺動加締め1000回当たりの不良率(%)を算出して、表1に示した。
その結果、実施例1〜17の車輪支持用転がり軸受ユニットは、鋼のMn偏析度が好適であるため、いずれも不良率が低く抑えられていた。これに対して、鋼のMn偏析度が好適な範囲を超えている比較例2〜7の車輪支持用転がり軸受ユニットは、前記各実施例に比べて著しく不良率が高かった。また、C含有量の少ない比較例1の車輪支持用転がり軸受ユニットは不良率が低いが、これはC含有量が少ないことにより伸び及び絞り値が向上したことに起因したものである。比較例1は、C含有量が少ないことにより鋼の強度が不足しており問題である。さらに、C含有量の多い比較例2は、冷間加工性が特に悪化したことも問題であった。
【0036】
なお、本実施形態は本発明の一例を示したものであって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。例えば、本実施形態においては、車輪支持用転がり軸受ユニットの軸受形式は複列玉軸受であったが、単列玉軸受等の他の軸受形式でも差し支えない。また、玉軸受に限らずころ軸受でも差し支えない。
【0037】
【発明の効果】
以上のように、本発明の車輪支持用転がり軸受ユニットは、ハブ輪を構成する鋼のMn偏析度を所定の値に制御したので、非金属介在物MnSの析出量の低減及びフェライト/パーライト組織の均一化が達成され、鋼の伸び及び絞り値が改善された。よって、内輪をハブ輪に一体的に固定するため加締めを行っても、ひび割れが発生しにくい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る車輪支持用転がり軸受ユニットの一実施形態を示す部分縦断面図である。
【図2】鋼中のMnの含有量とMn偏析度との相関を示すグラフである。
【図3】従来の車輪支持用転がり軸受ユニットの部分縦断面図である。
【符号の説明】
1 車輪支持用転がり軸受ユニット
2 ハブ輪
3 内輪
4 外輪
5 転動体
Claims (1)
- 内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に転動自在に配設された複数の転動体と、前記内輪が加締めにより一体的に固定された鋼製のハブ輪と、を備える車輪支持用転がり軸受ユニットにおいて、
前記鋼は、マンガンと0.45〜0.65質量%の炭素とを含有することに加えて、下記式で定義されるマンガン偏析度が、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%以上の場合は0.6以下であり、マンガンの含有量[Mn0]が0.5質量%未満の場合は(2.8−2×[Mn0])/3以下であることを特徴とする車輪支持用転がり軸受ユニット。
マンガン偏析度=([Mn]−[Mn0])/[Mn0]
ここで、[Mn]は前記鋼の最大マンガン濃度であり、その単位は質量%である。
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