JP2004223534A - 浸漬ノズル - Google Patents
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Abstract
【課題】溶鋼流路の内壁面、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における介在物の付着を防止する。
【解決手段】筒状のノズル本体1の溶鋼流路10を構成するノズル内壁面11に表裏に連通する多数の通気孔を有する多孔質耐火物からなる筒状の多孔質部2を配設し、その背面には、ガスプール13を形成し、不活性ガスを導入するための導入孔13aから導入した不活性ガスをこの多孔質部2の通気孔を介して溶鋼流路10内の溶鋼中に吹き込むようにした浸漬ノズルにおいて、この多孔質部2を下部多孔質部材22と上部多孔質部材21の2種から構成し、その下部多孔質部22の通気率が上部多孔質部21の通気率に比較して大となるようにした。
【選択図】 図1
【解決手段】筒状のノズル本体1の溶鋼流路10を構成するノズル内壁面11に表裏に連通する多数の通気孔を有する多孔質耐火物からなる筒状の多孔質部2を配設し、その背面には、ガスプール13を形成し、不活性ガスを導入するための導入孔13aから導入した不活性ガスをこの多孔質部2の通気孔を介して溶鋼流路10内の溶鋼中に吹き込むようにした浸漬ノズルにおいて、この多孔質部2を下部多孔質部材22と上部多孔質部材21の2種から構成し、その下部多孔質部22の通気率が上部多孔質部21の通気率に比較して大となるようにした。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造に使用する浸漬ノズルの改良に関し、特にノズルの閉塞防止効果に優れる浸漬ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、鋼の連続鋳造において、タンディッシュからモールド内へ溶鋼を注入するには、タンディッシュに連接された浸漬ノズルを介して行われる。この浸漬ノズルは使用を重ねるうちに、ノズル内壁面に脱酸生成物のアルミナ等の非金属介在物が付着、堆積してノズル閉塞を起こし、安定した連続鋳造ができなくなる問題があった。
【0003】
この対策として、例えば特許文献1(特開昭62−130754号公報)、特許文献2(特開平8−57613号公報)に開示されているように、ノズル内壁面にポーラスな材質を配設し、その気孔を介して溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことによりノズル閉塞を防止することが一般に行われている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−130754号公報:特許請求の範囲1の欄
【特許文献2】
特開平8−57613号公報:請求項1の欄
【0005】
この目的に用いられる浸漬ノズルは、図3に例示するような、ノズル本体1の溶鋼流路10を構成するノズル内壁面11にポーラスな材質からなる多孔質部12を配設し、その背面には、導入孔13aから導入した不活性ガスを多孔質部12全体に供給するためのガス空間であるガスプール13を形成して、不活性ガスをこの多孔質部12の気孔を介して溶鋼流路10内の溶鋼中に吹き込むようにしたものである。
【0006】
かくして、溶鋼中に吹き込まれた不活性ガスの一部は溶鋼流路10内の溶鋼流に抗して浮上し、その浮上過程において非金属介在物を捕捉し、あるいは非金属介在物を捕捉したまま、吐出口14を経てモールド(図示せず)内に注入され、そこで浮上分離されることにより、ノズル閉塞を防止するのである。
【0007】
上記のようなガス吹き込みタイプの浸漬ノズルを使用すると、溶鋼流路の内壁面11の介在物付着は防止されるが、ノズル下部の吐出口14周辺や底部15では溶鋼のよどみが生じ、介在物が付着しやすく、この部分でノズル閉塞にいたるという問題が依然として残っていた。
【0008】
この問題に対して、特許文献3(特開平5−285613号公報)に記載の浸漬ノズルが提案されている。この浸漬ノズルは、ガス吹き込み用の多孔質部の下端部分をノズルの吐出口に対して10〜80mmの距離に近づけて配設して、吐出口周辺の介在物の付着を防止しようとするものである。ところが、この浸漬ノズルであっても、吐出口周辺の介在物の付着はある程度抑制できるものの、必ずしも満足し得る効果が得られるものではなかった。
【0009】
【特許文献3】
特開平5−285613号公報:請求項1の欄
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、浸漬ノズルの溶鋼流路の内壁面における介在物の付着を防止するとともに、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における付着も防止して、ノズル閉塞を効果的に予防することができる浸漬ノズルを提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記した浸漬ノズルにおける溶鋼流路に不活性ガスを吹き込むようにしたポーラスな多孔質部からのガス吹込み量を詳細に研究した結果、多孔質部の背面には、ガスの供給圧を均等にする目的のガスプールを設けているにも関わらず、多孔質部の上部に比較して下部の吹込み量がかなり少なくなっており、所期の機能を果たしていないという知見を見出して、本発明を完成したのである。
【0012】
そして上記の問題は、不活性ガスを吹き込むための多孔質耐火物からなる多孔質部をノズル内壁面に配置した連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記多孔質部の下部の通気率が上部に比較して大となるよう通気率の異なる多孔質部材を配置して、この多孔質部の下部における不活性ガス吹き込み量を上部に比較して大としたことを特徴とする本発明の浸漬ノズルによって、解決することができる。
【0013】
そして、本発明は、前記多孔質部が、上部から下部に向かって通気率が段階的に大となるよう通気率の異なる多孔質部材を配置したものとし、この多孔質部の下部における不活性ガスの吹込み量を上部に比較して大とした第1の形態や、さらに、これに加えるに、前記多孔質部が、上部から下部に向かって通気部材の厚さが段階的にまたは連続的に小となるよう厚さの異なる多孔質部材を配置した第2の形態に具体化できる。
【0014】
本発明の浸漬ノズルによれば、下部、すなわち不活性ガスの導入孔から離れている吐出口近傍の多孔質部の通気率を大きく設定したり、さらには多孔質部の下部の通気部材の厚さを上部に比較して小となるよう形成しているから、前記導入孔から離れているうえ、溶鋼のヘッド圧が作用する多孔質部の下部においても、不活性ガスの吹込み量が低下することなく、十分に吹き込めるので、ノズル内壁面は勿論、吐出口近傍やノズル底部いずれにおいても介在物の付着が効果的に防止され、ノズル閉塞を起こすことなく、長期に使用可能となる利点が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図1、2を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の一例を図1に示す。図1は2口タイプの連続鋳造用浸漬ノズルを示しており、筒状のノズル本体1の軸心に設けられた溶鋼流路10の下端部分には2個の吐出口14が配されており、この溶鋼流路10を構成するノズル内壁面11に表裏に連通する多数の通気孔を有する多孔質耐火物からなる筒状の多孔質部2を配設し、その背面には、不活性ガスを多孔質部2全体に供給するためのガス空間であるガスプール13を形成している。このガスプール13の上部には外部から不活性ガスを導入するための導入孔13aが設けられていて、導入した不活性ガスをこの多孔質部2の通気孔を介して溶鋼流路10内の溶鋼中に吹き込むようにした基本的な構成は先のものと同様である。
【0016】
そして、この第1実施形態では、この多孔質部2の下部における不活性ガス吹込み量が、上部に比較して大となるよう、この多孔質部2を下部多孔質部材22と上部多孔質部材21の2種の多孔質部材から構成し、その下部多孔質部材22の通気率が上部多孔質部材21の通気率に比較して大となるよう選択した点にその特徴がある。
【0017】
ここで、本発明における好ましい通気率について説明すると、上部多孔質部21は、従来の浸漬ノズルに配設されている通気率を有する多孔質耐火物が適用できる。その通気率は、通常、0.1×10−4〜5.0×10−4 cm3・cm/cm2・cmH2O・secの範囲に設定されており、本発明の上部多孔質部材21もこの範囲で設定すればよい。そして、本発明の下部多孔質部材22の通気率は、上部多孔質部21の1.1〜2.0倍の通気量が確保できるように設定すればよく、0.11×10−4 〜10×10−4cm3・cm/cm2・cmH2O・secの範囲で、上部多孔質部21の通気率に応じて設定されるものである。
【0018】
本発明の浸漬ノズルに配設する多孔質部2に所定の通気率特性を付与する方法は特に限定されるものはなく、例えば、多孔質部を形成する耐火材料中に加熱処理により消失する材料を予め混合して筒状に成形、焼成することにより達成できる。加熱処理により消失する材料としては、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、パルプ等の有機繊維、タール、ピッチ等の有機バインダ一などの1種または2種以上の組み合わせで使用でき、多孔質部の通気率はそれらの添加量により適宜に制御することが可能である。そして、多孔質部の外面に加熱処理により消失する材質の所定厚みの布などを巻き付けた後に、ノズル全体の成形を行い、焼成すれば、この布が消失した部分がガスプールとして形成される。
【0019】
また、上記図1の事例では、多孔質部2を通気率が大の下部多孔質部材22と通気率が小の上部多孔質部材21の2種の多孔質部材から構成しているが、本発明では、この多孔質部2が、上部から下部に向かって通気率が段階的に大となるよう通気率の異なる3種以上の多孔質部材を配置し、不活性ガス量の制御をより精密に行えるようにするのが好ましい。
【0020】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図2を参照して説明する。
この実施形態の浸漬ノズルは、多孔質部2の下部における不活性ガス吹込み量が、上部に比較して大となるよう、ノズル本体1の吐出口14近傍に配設される下部多孔質部材22は上部多孔質部材21に比べて、通気率を大とする点は第1実施形態の場合と同じであるが、さらに下部多孔質部材22の厚さを小とした部分22bを設けたものである。
【0021】
この実施形態では、背面のガスプール13からノズル内壁面11にいたる多孔質部材の厚さを変化させるものであり、この下部多孔質部材22の厚さを上部多孔質部材21の30%以上に設定することが望ましい。下部多孔質部材22の通気厚さが上部多孔質部材21の30%未満では耐火物として強度バランスが悪く耐久性が低下する、
【0022】
また、図2では、下部多孔質部材22の一部の厚さを小としているが、全体を小としてもよいのはいうまでもない。さらに、第1実施形態のように、下部多孔質部材の通気率が上部多孔質部材の通気率に比較して大となるよう段階的に形成した場合には、その段階に対応させて、上部から下部に向かって多孔質部材の厚さを段階的に小となるよう通気率と厚さの異なる多孔質部材を配置するのも好ましい。この場合、多孔質部材の厚さは上部から下部に向かって連続的に変化させてもよい。
【0023】
以上説明した各実施形態において、従来、不活性ガスの吹出し量が低下してしまっていた下方部分の多孔質部の通気抵抗が上部に較べて低く設定されるので、十分なガス吹出し量が得られる結果が得られる。かくして、浸漬ノズルのノズル内壁面における介在物の付着を防止するとともに、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における付着も抑制することができ、ひいてはノズル閉塞を防止できるのである。
【0024】
なお、前記説明では、不活性ガスを吹出すための多孔質部を筒状形状のものとして例示したが、本発明では、多孔質部は一体に形成された筒状部材に限定されず、R曲面の表面を有する複数の縦長多孔質部材をノズル内壁面に並設したものを含むのである。また、下部多孔質部材の下端部は、溶鋼の吐出口の周辺、吐出口と吐出口との間の部分、いわゆる「柱」と称される部位の内壁面まで、すなわち底面15に至るまで配設することが好ましく、さらには底面15を多孔質部材で形成するのもよい。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例をあげて、本発明を説明する。なお、試験品の仕様、結果については表1にまとめて示す。
<実施例1>
内径85mm、長さ800mmのアルミナ−グラファイト質浸漬ノズルを作製した。ノズル作製に先立ち、予めノズル内壁面構成部材を作製した。溶鋼流路を構成するノズル内壁面には、厚さ10mm、長さ200mmで通気率が2×10−4cm3・cm/cm2・cmH2O・secの上部多孔質部、厚さ8mm、長さ100mmで通気率が3×10−4cm3・cm/cm2・cmH2O・secの下部多孔質部、およぴその上下にノズル本体と同材質部分を配した。
【0026】
なお、下部多孔質部は、吐出口横側の「柱」部分を含め底面まで達する仕様とした。多孔質部の通気率は、耐火材料に混合するタールまたはピッチの量により調整した。続いて、多孔質部の外面にガスプールを形成するための不織布を巻き、さらにノズル形状に成形し熱処理して浸漬ノズルを作製した。
【0027】
<実施例2>
実施例2の浸漬ノズルでは、上部多孔質部と下部多孔質部の厚さを同じ10mmとした他は実施例1と同様に製作した。
【0028】
これらの浸漬ノズルを用いて、毎分1.0リットルのアルゴンガスを吹き込みながらアルミキルド鋼を鋳造し、1500トン鋳造後のノズル内壁面の状況を観察した。その結果、内壁面全体、吐出口周辺、底部ともにアルミナ付着はほとんど認められず良好な状態を維持していた。また多孔質部は上部、下部ともに異常なく、10回〜12回の耐用回数まで使用可能な状況であった。
【0029】
<比較例1>
多孔質部が上部、下部とも全て実施例1の上部多孔質部と同質、同厚さに設定した以外は、実施例1と同一とした浸漬ノズルを作製し、実施例1と同条件で使用し、ノズル内壁面の状況を観察した。このノズル内壁面の上部においては、アルミナの付着はほとんど無く良好な状況であったが、吐出口周辺および底部にはアルミナの付着がかなり認められた。
【0030】
<比較例2>
多孔質部は、実施例1の上部多孔質部のみとし、下部多孔質部に相当する部分をノズル本体材質と同一材とした以外は、実施例1と同一とした浸漬ノズルを作製し、実施例1と同条件で使用し、ノズル内壁面の状況を観察した。ノズル内壁面の上部はアルミナ付着は少なく比較的良好な状況であったが、吐出口周辺および底部はアルミナ付着が著しく閉塞寸前の状況であった。この比較例1、2では、3〜5回の耐用回数しか使用できないものであった。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
本発明の浸漬ノズルは、以上説明したように構成されているので、従来、不活性ガスの吹出し量が低下してしまっていた下部多孔質部から十分な不活性ガスの吹出し量が得られるので、浸漬ノズルのノズル内壁面における介在物の付着を防止するとともに、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における付着も防止することができる。
【0033】
よって、ノズル閉塞を効果的に予防することができ、浸漬ノズルの耐用寿命が向上するうえ、アルミナ等に起因する介在物性欠陥が防止できるので鋳造鋳片の品質向上効果も期待できるるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した浸漬ノズルとして、工業的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を説明するための浸漬ノズルの要部断面図。
【図2】本発明の第2実施形態を説明するための浸漬ノズルの要部断面図。
【図3】従来の浸漬ノズルの要部断面図。
【符号の説明】
1 ノズル本体、10 溶鋼流路、11ノズル内壁面、13 ガスプール、13a 導入孔、14 吐出口、2 多孔質部、21 上部多孔質部材、22 下部多孔質部材。
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼の連続鋳造に使用する浸漬ノズルの改良に関し、特にノズルの閉塞防止効果に優れる浸漬ノズルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、鋼の連続鋳造において、タンディッシュからモールド内へ溶鋼を注入するには、タンディッシュに連接された浸漬ノズルを介して行われる。この浸漬ノズルは使用を重ねるうちに、ノズル内壁面に脱酸生成物のアルミナ等の非金属介在物が付着、堆積してノズル閉塞を起こし、安定した連続鋳造ができなくなる問題があった。
【0003】
この対策として、例えば特許文献1(特開昭62−130754号公報)、特許文献2(特開平8−57613号公報)に開示されているように、ノズル内壁面にポーラスな材質を配設し、その気孔を介して溶鋼中に不活性ガスを吹き込むことによりノズル閉塞を防止することが一般に行われている。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−130754号公報:特許請求の範囲1の欄
【特許文献2】
特開平8−57613号公報:請求項1の欄
【0005】
この目的に用いられる浸漬ノズルは、図3に例示するような、ノズル本体1の溶鋼流路10を構成するノズル内壁面11にポーラスな材質からなる多孔質部12を配設し、その背面には、導入孔13aから導入した不活性ガスを多孔質部12全体に供給するためのガス空間であるガスプール13を形成して、不活性ガスをこの多孔質部12の気孔を介して溶鋼流路10内の溶鋼中に吹き込むようにしたものである。
【0006】
かくして、溶鋼中に吹き込まれた不活性ガスの一部は溶鋼流路10内の溶鋼流に抗して浮上し、その浮上過程において非金属介在物を捕捉し、あるいは非金属介在物を捕捉したまま、吐出口14を経てモールド(図示せず)内に注入され、そこで浮上分離されることにより、ノズル閉塞を防止するのである。
【0007】
上記のようなガス吹き込みタイプの浸漬ノズルを使用すると、溶鋼流路の内壁面11の介在物付着は防止されるが、ノズル下部の吐出口14周辺や底部15では溶鋼のよどみが生じ、介在物が付着しやすく、この部分でノズル閉塞にいたるという問題が依然として残っていた。
【0008】
この問題に対して、特許文献3(特開平5−285613号公報)に記載の浸漬ノズルが提案されている。この浸漬ノズルは、ガス吹き込み用の多孔質部の下端部分をノズルの吐出口に対して10〜80mmの距離に近づけて配設して、吐出口周辺の介在物の付着を防止しようとするものである。ところが、この浸漬ノズルであっても、吐出口周辺の介在物の付着はある程度抑制できるものの、必ずしも満足し得る効果が得られるものではなかった。
【0009】
【特許文献3】
特開平5−285613号公報:請求項1の欄
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、浸漬ノズルの溶鋼流路の内壁面における介在物の付着を防止するとともに、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における付着も防止して、ノズル閉塞を効果的に予防することができる浸漬ノズルを提供する。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記した浸漬ノズルにおける溶鋼流路に不活性ガスを吹き込むようにしたポーラスな多孔質部からのガス吹込み量を詳細に研究した結果、多孔質部の背面には、ガスの供給圧を均等にする目的のガスプールを設けているにも関わらず、多孔質部の上部に比較して下部の吹込み量がかなり少なくなっており、所期の機能を果たしていないという知見を見出して、本発明を完成したのである。
【0012】
そして上記の問題は、不活性ガスを吹き込むための多孔質耐火物からなる多孔質部をノズル内壁面に配置した連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記多孔質部の下部の通気率が上部に比較して大となるよう通気率の異なる多孔質部材を配置して、この多孔質部の下部における不活性ガス吹き込み量を上部に比較して大としたことを特徴とする本発明の浸漬ノズルによって、解決することができる。
【0013】
そして、本発明は、前記多孔質部が、上部から下部に向かって通気率が段階的に大となるよう通気率の異なる多孔質部材を配置したものとし、この多孔質部の下部における不活性ガスの吹込み量を上部に比較して大とした第1の形態や、さらに、これに加えるに、前記多孔質部が、上部から下部に向かって通気部材の厚さが段階的にまたは連続的に小となるよう厚さの異なる多孔質部材を配置した第2の形態に具体化できる。
【0014】
本発明の浸漬ノズルによれば、下部、すなわち不活性ガスの導入孔から離れている吐出口近傍の多孔質部の通気率を大きく設定したり、さらには多孔質部の下部の通気部材の厚さを上部に比較して小となるよう形成しているから、前記導入孔から離れているうえ、溶鋼のヘッド圧が作用する多孔質部の下部においても、不活性ガスの吹込み量が低下することなく、十分に吹き込めるので、ノズル内壁面は勿論、吐出口近傍やノズル底部いずれにおいても介在物の付着が効果的に防止され、ノズル閉塞を起こすことなく、長期に使用可能となる利点が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施形態について図1、2を参照して詳細に説明する。
(第1実施形態)
本発明の一例を図1に示す。図1は2口タイプの連続鋳造用浸漬ノズルを示しており、筒状のノズル本体1の軸心に設けられた溶鋼流路10の下端部分には2個の吐出口14が配されており、この溶鋼流路10を構成するノズル内壁面11に表裏に連通する多数の通気孔を有する多孔質耐火物からなる筒状の多孔質部2を配設し、その背面には、不活性ガスを多孔質部2全体に供給するためのガス空間であるガスプール13を形成している。このガスプール13の上部には外部から不活性ガスを導入するための導入孔13aが設けられていて、導入した不活性ガスをこの多孔質部2の通気孔を介して溶鋼流路10内の溶鋼中に吹き込むようにした基本的な構成は先のものと同様である。
【0016】
そして、この第1実施形態では、この多孔質部2の下部における不活性ガス吹込み量が、上部に比較して大となるよう、この多孔質部2を下部多孔質部材22と上部多孔質部材21の2種の多孔質部材から構成し、その下部多孔質部材22の通気率が上部多孔質部材21の通気率に比較して大となるよう選択した点にその特徴がある。
【0017】
ここで、本発明における好ましい通気率について説明すると、上部多孔質部21は、従来の浸漬ノズルに配設されている通気率を有する多孔質耐火物が適用できる。その通気率は、通常、0.1×10−4〜5.0×10−4 cm3・cm/cm2・cmH2O・secの範囲に設定されており、本発明の上部多孔質部材21もこの範囲で設定すればよい。そして、本発明の下部多孔質部材22の通気率は、上部多孔質部21の1.1〜2.0倍の通気量が確保できるように設定すればよく、0.11×10−4 〜10×10−4cm3・cm/cm2・cmH2O・secの範囲で、上部多孔質部21の通気率に応じて設定されるものである。
【0018】
本発明の浸漬ノズルに配設する多孔質部2に所定の通気率特性を付与する方法は特に限定されるものはなく、例えば、多孔質部を形成する耐火材料中に加熱処理により消失する材料を予め混合して筒状に成形、焼成することにより達成できる。加熱処理により消失する材料としては、ビニロン、ナイロン、ポリエステル、パルプ等の有機繊維、タール、ピッチ等の有機バインダ一などの1種または2種以上の組み合わせで使用でき、多孔質部の通気率はそれらの添加量により適宜に制御することが可能である。そして、多孔質部の外面に加熱処理により消失する材質の所定厚みの布などを巻き付けた後に、ノズル全体の成形を行い、焼成すれば、この布が消失した部分がガスプールとして形成される。
【0019】
また、上記図1の事例では、多孔質部2を通気率が大の下部多孔質部材22と通気率が小の上部多孔質部材21の2種の多孔質部材から構成しているが、本発明では、この多孔質部2が、上部から下部に向かって通気率が段階的に大となるよう通気率の異なる3種以上の多孔質部材を配置し、不活性ガス量の制御をより精密に行えるようにするのが好ましい。
【0020】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について、図2を参照して説明する。
この実施形態の浸漬ノズルは、多孔質部2の下部における不活性ガス吹込み量が、上部に比較して大となるよう、ノズル本体1の吐出口14近傍に配設される下部多孔質部材22は上部多孔質部材21に比べて、通気率を大とする点は第1実施形態の場合と同じであるが、さらに下部多孔質部材22の厚さを小とした部分22bを設けたものである。
【0021】
この実施形態では、背面のガスプール13からノズル内壁面11にいたる多孔質部材の厚さを変化させるものであり、この下部多孔質部材22の厚さを上部多孔質部材21の30%以上に設定することが望ましい。下部多孔質部材22の通気厚さが上部多孔質部材21の30%未満では耐火物として強度バランスが悪く耐久性が低下する、
【0022】
また、図2では、下部多孔質部材22の一部の厚さを小としているが、全体を小としてもよいのはいうまでもない。さらに、第1実施形態のように、下部多孔質部材の通気率が上部多孔質部材の通気率に比較して大となるよう段階的に形成した場合には、その段階に対応させて、上部から下部に向かって多孔質部材の厚さを段階的に小となるよう通気率と厚さの異なる多孔質部材を配置するのも好ましい。この場合、多孔質部材の厚さは上部から下部に向かって連続的に変化させてもよい。
【0023】
以上説明した各実施形態において、従来、不活性ガスの吹出し量が低下してしまっていた下方部分の多孔質部の通気抵抗が上部に較べて低く設定されるので、十分なガス吹出し量が得られる結果が得られる。かくして、浸漬ノズルのノズル内壁面における介在物の付着を防止するとともに、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における付着も抑制することができ、ひいてはノズル閉塞を防止できるのである。
【0024】
なお、前記説明では、不活性ガスを吹出すための多孔質部を筒状形状のものとして例示したが、本発明では、多孔質部は一体に形成された筒状部材に限定されず、R曲面の表面を有する複数の縦長多孔質部材をノズル内壁面に並設したものを含むのである。また、下部多孔質部材の下端部は、溶鋼の吐出口の周辺、吐出口と吐出口との間の部分、いわゆる「柱」と称される部位の内壁面まで、すなわち底面15に至るまで配設することが好ましく、さらには底面15を多孔質部材で形成するのもよい。
【0025】
【実施例】
以下に、本発明の実施例および比較例をあげて、本発明を説明する。なお、試験品の仕様、結果については表1にまとめて示す。
<実施例1>
内径85mm、長さ800mmのアルミナ−グラファイト質浸漬ノズルを作製した。ノズル作製に先立ち、予めノズル内壁面構成部材を作製した。溶鋼流路を構成するノズル内壁面には、厚さ10mm、長さ200mmで通気率が2×10−4cm3・cm/cm2・cmH2O・secの上部多孔質部、厚さ8mm、長さ100mmで通気率が3×10−4cm3・cm/cm2・cmH2O・secの下部多孔質部、およぴその上下にノズル本体と同材質部分を配した。
【0026】
なお、下部多孔質部は、吐出口横側の「柱」部分を含め底面まで達する仕様とした。多孔質部の通気率は、耐火材料に混合するタールまたはピッチの量により調整した。続いて、多孔質部の外面にガスプールを形成するための不織布を巻き、さらにノズル形状に成形し熱処理して浸漬ノズルを作製した。
【0027】
<実施例2>
実施例2の浸漬ノズルでは、上部多孔質部と下部多孔質部の厚さを同じ10mmとした他は実施例1と同様に製作した。
【0028】
これらの浸漬ノズルを用いて、毎分1.0リットルのアルゴンガスを吹き込みながらアルミキルド鋼を鋳造し、1500トン鋳造後のノズル内壁面の状況を観察した。その結果、内壁面全体、吐出口周辺、底部ともにアルミナ付着はほとんど認められず良好な状態を維持していた。また多孔質部は上部、下部ともに異常なく、10回〜12回の耐用回数まで使用可能な状況であった。
【0029】
<比較例1>
多孔質部が上部、下部とも全て実施例1の上部多孔質部と同質、同厚さに設定した以外は、実施例1と同一とした浸漬ノズルを作製し、実施例1と同条件で使用し、ノズル内壁面の状況を観察した。このノズル内壁面の上部においては、アルミナの付着はほとんど無く良好な状況であったが、吐出口周辺および底部にはアルミナの付着がかなり認められた。
【0030】
<比較例2>
多孔質部は、実施例1の上部多孔質部のみとし、下部多孔質部に相当する部分をノズル本体材質と同一材とした以外は、実施例1と同一とした浸漬ノズルを作製し、実施例1と同条件で使用し、ノズル内壁面の状況を観察した。ノズル内壁面の上部はアルミナ付着は少なく比較的良好な状況であったが、吐出口周辺および底部はアルミナ付着が著しく閉塞寸前の状況であった。この比較例1、2では、3〜5回の耐用回数しか使用できないものであった。
【0031】
【表1】
【0032】
【発明の効果】
本発明の浸漬ノズルは、以上説明したように構成されているので、従来、不活性ガスの吹出し量が低下してしまっていた下部多孔質部から十分な不活性ガスの吹出し量が得られるので、浸漬ノズルのノズル内壁面における介在物の付着を防止するとともに、ノズル下部の吐出口周辺や底部近傍における付着も防止することができる。
【0033】
よって、ノズル閉塞を効果的に予防することができ、浸漬ノズルの耐用寿命が向上するうえ、アルミナ等に起因する介在物性欠陥が防止できるので鋳造鋳片の品質向上効果も期待できるるという優れた効果がある。よって本発明は、従来の問題点を解消した浸漬ノズルとして、工業的価値はきわめて大なるものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態を説明するための浸漬ノズルの要部断面図。
【図2】本発明の第2実施形態を説明するための浸漬ノズルの要部断面図。
【図3】従来の浸漬ノズルの要部断面図。
【符号の説明】
1 ノズル本体、10 溶鋼流路、11ノズル内壁面、13 ガスプール、13a 導入孔、14 吐出口、2 多孔質部、21 上部多孔質部材、22 下部多孔質部材。
Claims (4)
- 不活性ガスを吹き込むための多孔質耐火物からなる多孔質部をノズル内壁面に配置した連続鋳造用浸漬ノズルであって、前記多孔質部の下部の通気率が上部に比較して大となるよう通気率の異なる多孔質部材を配置して、この多孔質部の下部における不活性ガス吹き込み量を上部に比較して大としたことを特徴とする浸漬ノズル。
- 前記多孔質部が、上部から下部に向かって通気率が段階的に大となるよう通気率の異なる多孔質部材を配置したものである請求項1に記載の浸漬ノズル。
- 前記多孔質部の下部における通気部材の厚さを上部に比較して小となるよう形成した請求項1または2に記載の浸漬ノズル。
- 前記多孔質部が、上部から下部に向かって通気部材の厚さが段階的にまたは連続的に小となるよう厚さの異なる多孔質部材を配置した請求項3に記載の浸漬ノズル。
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CN111618289A (zh) * | 2020-05-19 | 2020-09-04 | 浙江自立高温科技股份有限公司 | 上水口及中间包 |
JP6997397B2 (ja) | 2020-04-28 | 2022-01-17 | 品川リフラクトリーズ株式会社 | 連続鋳造用耐火物 |
-
2003
- 2003-01-21 JP JP2003012055A patent/JP2004223534A/ja not_active Withdrawn
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