JP2004221009A - 陰極構体、電子銃及び陰極線管 - Google Patents
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Abstract
【課題】電子放射部の電子放射面を加熱部に対して略平行に固着できる陰極構体を提供する。
【解決手段】陰極構体160は、電子を蛍光体スクリーンに向けて放射するカソード部161と、このカソード部161を加熱するヒータ部162とを備えると共に、2本の支持線163を交差させたその4つの端部を電子銃側の支持部材に取り付けて支持される。カソード部161は、カップ状の金属カップ161bと、この金属カップ161b内に挿着されたペレット161aとを備え、一方、ヒータ部162は、前記カソード部161とつき合わせて固着される予定部位に「X」字状の溝165が形成される共に、この溝165に2本の支持線163が配置された状態で、カソード部161とヒータ部162とが金属ペースト170を利用して固着されている。
【選択図】 図5
【解決手段】陰極構体160は、電子を蛍光体スクリーンに向けて放射するカソード部161と、このカソード部161を加熱するヒータ部162とを備えると共に、2本の支持線163を交差させたその4つの端部を電子銃側の支持部材に取り付けて支持される。カソード部161は、カップ状の金属カップ161bと、この金属カップ161b内に挿着されたペレット161aとを備え、一方、ヒータ部162は、前記カソード部161とつき合わせて固着される予定部位に「X」字状の溝165が形成される共に、この溝165に2本の支持線163が配置された状態で、カソード部161とヒータ部162とが金属ペースト170を利用して固着されている。
【選択図】 図5
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子を放出する陰極構体、当該陰極構体を用いた電子銃及び当該電子銃を備える陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管の電子銃に組み込まれる陰極構体は、電子放射物質を備えたカソード部を加熱することにより電子を放射する。このような陰極構体として、例えば、円筒状の陰極スリーブの上面に電子放射物質を塗布すると共に、内部にヒータを収納したタイプがある。このタイプは、ヒータとスリーブとの間に隙間があるため、ヒータが陰極スリーブを間接的に加熱することになり、ヒータの熱損失が大きい。そこで、ヒータの熱損失を改善した陰極構体が近年提案されている。
【0003】
図16は、ヒータの熱損失を改善した従来の陰極構体を示す斜視図であり、図17は、陰極構体を電子銃に組み込んだ状態で、陰極構体と制御電極とを示す概略図である。なお、図17は、その内部の様子がわかるように一部切り欠いている。
この陰極構体960は、図16に示すように、電子放射物質が含浸するペレット961aとこのペレット961aを収納する金属カップ961bとを有するカソード部961と、その金属カップ961bの底面に固着されるヒータ部962とを備える。ヒータ部962は、セラミック製のセラミック体962a内にヒータが埋設されている(特許文献1)。従って、ヒータは、セラミック体962aを構成するセラミックを介して直接カソード部961を加熱するので、ヒータの熱損失が小になる。なお、セラミック体962aの外周からは、ヒータのリード線966が導出している。
【0004】
陰極構体960の電子銃への組み込みは、金属カップ961bとヒータ部962との間から径方向に延伸する4本の支持金属線964を介してなされる。4本の支持線964は、金属カップ961bとヒータ部962とを固着する前に、両者の間に2本の支持線963を交差させて配置し、これらの支持線963を挟んだ状態で、金属カップ961bとヒータ部962とが金属ペースト970の溶融により固着することで、固定される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−202898号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の陰極構体960では、その電子放射面がヒータ部962に対して大きく傾斜してしまうという問題がある。つまり、2本の支持線963は「X」字状に交差しているため、その交差する部分が周りよりも高く***する***部963aとなり(図17参照)、一方、金属カップ961bは、交差する支持線963上に載置された状態でヒータ部962に固着される。
【0007】
このとき、金属カップ961bは、その底が***部963aに当接するため、非常に不安定な状態となり、電子放射面がヒータ部962に対してどうしても傾斜してしまうのである。そして、このような電子放射面が傾斜する陰極構体を用いた場合、例えば、スピーカの発音時の振動により陰極構体が振動するとカソード電流が変動するという問題を生じる。
【0008】
以下、電子放射面が傾斜している陰極構体が振動すると、カソード電流が変動するしくみについて図17を用いて説明する。図17における仮想線は、振動により下方に移動した状態の陰極構体を示している。
先ず、同図に示すように、陰極構体960が静止している状態における電子放射面と制御電極911との距離はL1となる。これに対して、陰極構体960が下方に移動した状態では、制御電極911との距離がL2となり、このL2はL1よりも短くなる。これによって、カソード部961と制御電極911との相対的な電位差が変動してカソード電流が変動するのである。
【0009】
なお、2本の支持線を交差させずに、例えば、4本の支持線を交差させずに配した状態でカソード部とヒータ部とを固着すれば、電子放射面の傾斜は改善されるが、生産性の低下、さらには、金属ペーストの固着不良によっては支持線が抜けるおそれもあり、現実的ではない。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着できる陰極構体、電子銃及び陰極線管を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る陰極構体は、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凹部及び/又は開口部を設けて、前記支持線のうち少なくとも交差による***部が前記凹部及び/又は開口部に入り込んだ状態で、前記電子放射部の電子放射面と反対側と前記加熱部の加熱面側とが固着されていることを特徴としている。この構成によれば、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0011】
また、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向面上に凸部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線の交差部が位置されていることを特徴としている。この構成によれば、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0012】
一方、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凸部及び凹部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部及び前記凹部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線が配されていることを特徴としている。この構成によれば、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0013】
さらに、前記凹部は溝であることを特徴とし、また前記溝の深さは、前記支持線の横断面における高さと略同じ寸法であることを特徴している。このため、支持線を位置決めできると共に、支持線が全部溝に入るため、安定した状態で対向部位を固着でき、電子放射面の傾きを小にできる。
一方、前記溝は、前記加熱部の対向部位の略中央を通るよう形成されていることを特徴としている。この構成によれば、陰極構体を安定した状態で電子銃本体に支持される。
【0014】
しかも、前記凹部は、前記加熱部の対向部位に形成された溝であり、当該溝の深さが、前記支持線の横断面における高さの半分以上が入る深さであることをと特徴としている。このため、陰極構体が振動した場合でもその振動を規制することができる。これにより、例えば、カソード部に振動が加わった場合に、カソード電流の変動を小さくすることができる。
【0015】
一方、前記凸部は、前記加熱部における対向面の略中央を中心として周方向に間隔をおいて少なくとも3つ以上設けられていることを特徴とし、さらに前記凸部の高さは、前記交差部の高さと略同じであることを特徴としている。この構成によれば、支持線の配線用の空間ができ、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0016】
また、前記支持線は金属製であり、当該支持線を介して電子放射部へ給電していることを特徴としている。この構成によれば、電子放射部にカソード電圧及び映像信号電圧を印加するための配線を無くすことができる。
一方、本発明に係る電子銃は、上記構成の陰極構体を備え、また、本発明に係る陰極線管は前記電子銃を備えることを特徴としている。これら構成によれば、陰極構体が振動した場合でもカソード電流の変動を小さくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電子銃の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1.構造について
(1)電子銃
電子銃は、陰極線管内に組み込まれている。陰極線管は、内面に蛍光体スクリーンが形成されているパネル部と、ファンネル部とを備え、このファンネル部のネック部内に電子銃が配置されている。
【0018】
図1は、本実施の形態における電子銃の構成を示す図である。
電子銃1は、同図に示すように、ステム130、陰極構体160、制御電極111、加速電極112、集束電極113〜119、最終加速電極120、シールドカップ121、コンタクトスプリング122及び支持部材141とを備える。
陰極構体160は、電子ビームを蛍光体スクリーンに向けて放射するもので、制御電極111内に取り付けられる後述の陰極ユニットに組み込まれる。この陰極構体160から放射される電子ビームの量は、制御電極111及び加速電極112により制御される。
【0019】
制御電極111及び加速電極112は、カソードレンズを形成し、陰極構体160から放射された電子ビームは、そのカソードレンズによりクロスオーバーを形成する。電子ビームはさらに蛍光体スクリーン側に進むと、加速電極112、集束電極113〜119及び最終加速電極120等により形成されたプリフォーカスレンズ、主集束レンズにより蛍光体スクリーン面で集束する。
【0020】
なお、制御電極111、加速電極112、集束電極113〜119、最終加速電極120、シールドカップ121への給電は、ステム130に設けられたピン131、ネック部内面に塗布された導電性塗料に電気的に接触するコンタクトスプリング122等を介して行われる。また、各種電極111〜120、ステム130、シールドカップ121は、ガラス製の支持部材141により支持されている。
【0021】
(2)陰極ユニット
図2は、本実施の形態における陰極ユニットを蛍光体スクリーン側から見た図であり、内部の陰極ユニットの様子がわかるように制御電極の一部を切り欠いている。図3は、陰極ユニットを図2におけるX−X線での断面を矢視方向から矢視した図である。
【0022】
上述の電子銃1の制御電極111は幅広の有底円筒形状をしており、その内部に、図2及び図3に示すように、赤、緑、青用の電子ビームを放射する陰極ユニット150が3個装着されている。なお、3個の陰極ユニット150は、横一列、所謂インライン配列されている。
この陰極ユニット150は、図3に示すように、電子を放射するカソード部161とカソード部161を加熱するヒータ部162とを備える陰極構体160と、この陰極構体160を支持する絶縁基板151と、この絶縁基板151の蛍光体スクリーン側の面に固着されたL字状の支持部材153と、陰極構体160のカソード部161及びヒータ部162に電圧を供給する電圧供給部材154、156a(156aについては図4の(b)参照)とを備える。陰極ユニット150の制御電極111への取り付けは、前記支持部材153のうち電子銃1の管軸方向(以下、単に、「管軸方向」という。)に延びる部分が円筒状の制御電極111の内周面に当接することにより行われる。
【0023】
図4の(a)は、陰極ユニットを蛍光体スクリーン側から見た図であり、(b)は、ステム側(蛍光体スクリーンと反対側)から見た図である。
陰極構体160は、後述するが、カソード部161とヒータ部162との固着部分から延伸する4本の支持金属線164を備え、また、ヒータ部162の底面(ステム130側の面)からは、ヒータ用のリード線166aが延伸している。
【0024】
絶縁基板151は、図2及び図4に示すように、蛍光体スクリーン側からそれを見たときに(蛍光体スクリーン側から見ることを、以下、「正面視」という。)矩形状をしており、その略中央には管軸方向に貫通する貫通孔152が形成されている。なお、絶縁基板151には、セラミックが用いられている。
この貫通孔152は、正面視略方形状で、各辺の中央部分が貫通孔152の内側に張り出すと共に、図3に示すように、管軸方向の両端が中央部よりも大きくなっている。
【0025】
絶縁基板151のステム130側の面には、図3に示すように、L字状のヒータ電圧供給部材155が互いに対向して取り付けられており、このヒータ電圧供給部材155に、陰極構体160から延伸するリード線166aが絶縁基板151の貫通孔152を通って接続されている。
絶縁基板151におけるステム130側の面の4隅には、図4の(b)に示すように、金属板156が固着されており、陰極構体160から延伸する支持金属線164が、リード線166aと同様に、絶縁基板151の貫通孔152を通って上記金属板156に接続されている。この4個の金属板156のうち1個の金属板156aは、支持金属線164を介してカソード部161にカソード電圧及び映像信号電圧を印加するための電圧印加用となっている。なお、カソード電圧供給用の金属板156aは、支持部材153側の端部から下方に伸びる「L」字状になっており、図3では、支持部材153の影となり、図示されていない。
【0026】
なお、支持部材153の絶縁基板151への取り付け、ヒータ電圧供給部材155の絶縁基板151への取り付けには、例えば、Mo−Mnろう材や銀ろう材のような金属ペーストが用いられ、また、支持金属線164と金属板156との固着及びヒータ用のリード線166aとヒータ電圧供給部材155の固着には、例えば、溶接が用いられている。
【0027】
(3)陰極構体
図5は、本実施の形態における陰極構体であって、陰極ユニットに組み込む前の状態を示した斜視図である。
陰極構体160は、加熱によリ電子を放射するペレット161aを備えるカソード部161と、このカソード部161を加熱するためのヒータ部162と、カソード部161とヒータ部162とを固着した状態で陰極ユニット150に取り付けるための支持金属線164とを備える。なお、カソード部161とヒータ部162とは、金属ペースト170、例えば、モリブデンーマンガン(Mo−Mn)のペーストを用いて固着されている。
【0028】
図6は、図5におけるA方向から見た陰極構体160の一部を切り欠いた図である。
電子放射部としてのカソード部161は、図5及び図6に示すように、カップ状の金属カップ161bと、この金属カップ161b内に挿着されたペレット161aとからなる。
【0029】
ペレット161aは、所謂、含浸型であって、例えば、タングステン(W)の多孔質高融点基体に、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、アルミナ(Al2O3)の電子放射性物質(エミッタ)を溶融含浸させて、その電子放射面にオスミウム−ルテニウム(Os−Ru)薄膜を被着したものを用いている。なお、ペレット161aは、正面視略円形状をしており、その大きさは、例えば、直径1.18mmで、厚さが0.42mmである。
【0030】
金属カップ161bは、ペレット161aの電子放射面が金属カップ161bの端面よりも蛍光体スクリーン側に張り出す状態で、ペレット161aを保持している。つまり、金属カップ161bの周壁が、ペレット161aの周面を覆っている。これは、ペレット161aが加熱された際に、その周面から電子が放射するのを防ぐためである。
【0031】
金属カップ161bは、例えば、モリブデン(Mo)製で、ペレット161aの形状に対応して正面視円形状をし、その大きさは、外径1.25mm、内径1.19mm、高さが0.40mm(板厚:0.03mm)である。従って、ペレット161aは、金属カップ161bから略0.05mm出ていることになる。なお、金属カップ161bとペレット161aとの固着は、例えば、電気溶接により行われる。
【0032】
次に、ヒータ部162について説明する。
加熱部としてのヒータ部162は、図5及び図6に示すように、円柱状をしており、アルミナ粉体を焼結させたセラミック体162aと、このセラミック体162aの内部に埋め込まれたヒータ166とからなる。
セラミック体162aは、例えば、粒径が略1μmのアルミナ粉体を1600℃で焼結したものである。アルミナ粉末は、純度が95wt.%以上であるものを用いた。なお、アルミナ粉末の粒径は、直径0.1μm〜50μmの範囲内のものであれば良い。ヒータ部162の大きさは、例えば、直径1.5mm、厚さが0.5mmである。
【0033】
ヒータ166は、素線をコイル状に形成したものを利用しており、セラミック体162aの内部にカソード部161の電子放射面と略平行となるように正面視S字状に埋め込まれている(図7参照)。ヒータ166は、その中間部の4.4mmがセラミック体162a内に埋まっており、セラミック体162aの底面(蛍光体スクリーンと反対側の面)から管軸方向に延伸する部分が、ヒータ166に電圧を供給するためのリード線166aとなっている。
【0034】
ヒータ166は、例えば、タングステンーレニウム(W−Re)が用いられ、コイル寸法は、コイル外径が0.146mm、素線径が0.023mm、ピッチが0.036mmである。なお、素線におけるタングステンとレニウムの構成比率は、タングステンが97%、レニウムが3%である。
ヒータ166のセラミック体162a内への埋設は、セラミック体162aの内部の限られた体積内に、ヒータ166を可能な限り長く設置できるようにしつつ、ヒータ166同士が近づきすぎて電流がリークしないようにしている。また、金属ペースト170とヒータ166との間には、電子放射時に高電圧が作用するため、充分な絶縁耐圧が確保できるように、セラミック体162aの固着面とヒータ166との間隔を0.1mmとしている。
【0035】
図7は、カソード部とヒータ部とを固着する前のヒータ部を示す斜視図である。ヒータ部162は、その蛍光体スクリーン側の面(加熱面)に、正面視したときに「X」字状に2本の溝165が形成されている。
この「X」字状の溝165は、2本の支持線163を配線するための空間を形成するためのものである。2本の支持線163が溝165内に配置された状態で、ヒータ部162のカソード部161側の面と、カソード部161のヒータ部162側の面が固着されている。従って、陰極構体160を正面視したときに、支持線163が管軸方向と直交する方向の4方に延伸し、この各方向に延伸する1本を1本の支持金属線164としている。つまり、2本の支持線163により4本の支持金属線164が構成されている。
【0036】
ヒータ部162の溝165は、溝165内に配置された支持線163が交差する***部163a(図6参照)が、ヒータ部162におけるカソード部161側の面であって溝165を形成していない部分よりもカソード部161側に出ない深さとなっている。なお、この深さは、正確には、支持線163の***部163aが溝165から張り出す寸法が金属ペースト170の厚みに対応する寸法以内であれば問題ない。
【0037】
支持線163は、例えば、タングステンーレニウム(W−Re)が用いられており、その直径が例えば50μmである。このため、溝165の寸法は、支持線163が入るように幅が0.1mm、深さ0.1mmとしている。
なお、2本の溝165は、2本の支持線163に対応して、常に2本分の支持線163に相当する深さである必要はなく、2本の溝165のうち、どちらか1本がその交差する部分の深さが、支持線163の2本分に相当する深さであれば良く、少なくとも***部163aがカソード部161に当接しない構造であれば良い。
【0038】
支持線163におけるタングステンとレニウムの構成比率は、タングステンが74%、レニウムが26%であるが、この構成比率に限定するものではない。さらに、支持線163として、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)であっても良い。
2.陰極構体の組立方法について
図8は、陰極構体160の組立方法を説明する図である。
【0039】
まず、ヒータ部162と、2本の支持線163と、金属カップ161bを準備する。なお、ヒータ部162は、そのカソード部161側の面(図8における上面であり、以下「上面」という。)に、2本の溝165が形成されている。
用意した2本の支持線163を、図8の(a)に示すように、ヒータ部162の2本の溝165内に配置する。そして、ヒータ部162の上面に金属ペーストを略50μm塗布した後、金属カップ161bの下面とヒータ部162の上面と付き合わせ、そのままの状態で金属ペースト170を1500℃で溶融させる。
【0040】
このとき、ヒータ部162の上面には、支持線163に対応して2本の溝165が形成されているので、この溝165内に支持線163を配置するだけで、支持線163の位置決めができる。しかも、溝165の深さは、2本の支持線163が各溝165内に配置され状態で、溝165から張り出さないように構成されているので、金属カップ161bとヒータ部162とを付きあわせる際も、支持線163の交差による***部に影響されることはない。このため、金属カップ161bがヒータ部162の上面に対して略平行に固着される。
【0041】
次に、ペレット161aを、図8の(b)に示すように、その上端部が見えるように金属カップ161bに挿入して、金属カップ161bとペレット161aと溶接により固着する。以上の工程により、図8の(c)に示すような陰極構体160が組み立てられる。
このようにして組み立てられた陰極構体160は、2本の溝165がヒータ部162の略中央で交差し且つ互いに直交し、この溝165内に配された4本の支持金属線164を介して絶縁基板151に取り付けるので、陰極構体160は支持金属線164によりバランス良く支持される。
【0042】
3.カソード部の電子放射面の傾きについて
上記のように組み立てられた陰極構体160について、カソード部161の電子放射面の傾きを測定した。その測定結果を図9に示す。なお、電子放射面の傾きは、ヒータ部162の固着面を基準として、ペレット161aの上面の高さを測定し、その最大値と最小値との差から算出している。
【0043】
ヒータ部162に溝165を設けていない陰極構体160(以下、「従来品」という。)では、電子放射面の傾きは、最小値が16μmで、最大値が35μmとなっており、その標準偏差σは5.8である。なお、このサンプル数Nは、7である。
これに対して、ヒータ部162に溝165を設けた陰極構体160(以下、「発明品」という。)では、電子放射面の傾きは、最小値が6μmで、最大値が12μmとなっており、その標準偏差σは2.1である。このサンプル数Nは、7である。
【0044】
これらの測定結果から、発明品は、従来品に対して傾きの絶対量が小さくなっただけでなく、そのばらつき幅も小さくなっていることが明らかに分かる。これは、従来品は2本の支持線963を交差させて、その上に金属カップ961bを載置している。従って、支持線963の***部963aで少なくとも1本の支持線163分に相当する段差が生じ、この段差を生じた状態で金属カップ161bが固着される。このため、ヒータ部962に対する電子放射面の傾きの絶対量が大きく、そのバラツキも大きくなったと考えられる。
【0045】
これに対し、発明品では、支持線163がヒータ部162の溝165に入り込んでいるため、従来品のような支持線163の***部163aによる段差はなく、金属カップ161bが安定した状態で固着される。このため、電子放射面の傾きの絶対量が小さく、しかもバラツキも小さくなったと考えられる。
4.溝の深さについて
陰極構体160の電子放射面が傾斜していると、従来の技術の欄で説明したように、陰極構体160が振動した際にカソード電流が変動するという不具合が生じる。そこで、上記構成の陰極構体160を陰極線管に搭載して、実際に振動を与えてカソード電流の変化を測定した。
【0046】
測定の具体的な内容は、陰極構体160を組み込んだ電子銃1を32インチの陰極線管に搭載した。そして、100μAのカソード電流を取り出し、ネック部にその管軸方向から1Gの単振動を与え、その振動が100Hzから2KHzまでの周波数をスイープしたとき(共振点となったとき)に表れる電流変調のピークを測定した。この電流変調の変化率は、陰極構体160が振動すると、カソード電流が変化し、その振動の振幅が大きいほど、変化率が大きい。
【0047】
このようなカソード電流の変化を測定する試験を、ヒータ部162に形成された溝165の深さを変えた6種類(溝を形成していないものも含める)の陰極構体について行った。この結果を図10に示す。なお、同図には、カソード電流の変化率を電流変動率として表している。
カソード電流の変動率は、図10に示すように、溝深さ/支持線径の比率、つまり溝165が深くなるに従って、低下(改善)しているのが分かる。一方、カソード電流は、陰極構体160の振動(電子放射面の振動)の振幅が大きいほど、電流変化率が大きくなるので、溝165が深くなるほど、陰極構体160の振動振幅が小さくなっているといえる。特に、溝165の深さが、支持線1本の径の半分、つまり、溝深さ/支持線径の比率が0.5までは電流変動率の改善率が大きく、溝深さ/支持線径の比率が0.5を超えると、電流変動率の改善率が小さくなっている。
【0048】
この理由を以下に説明する。先ず、陰極構体160は、カソード部161とヒータ部162との固着部から管軸方向と直交する方向に、つまり正面視「X」字状に延伸する4本の支持金属線164を介して絶縁基板151に取り付けられている。このため、ネック部に振動を与えると、陰極構体160は、管軸廻りに回転するような振動及びカソード部161の電子放射面が管軸方向に傾斜するような振動とが組み合わされたような振動をする。
【0049】
このうち陰極構体160の管軸廻りの振動は、陰極構体160が回転したときに、溝165の壁面が支持金属線164に当接するためにそれ以上回転できなくため、振幅が小さくなると考えられる。特に、溝深さ/支持線径の比率が0.5までは、溝165の深さが大きくなるほど、陰極構体160の管軸廻りの回転を規制できるが、それ以上になると、陰極構体160の振動を規制する度合いは略同じになると考えられる。このため、図10に示すように、カソード電流の変動率が、溝深さ/支持線径の比率が0.5までは改善率が大きく、それ以降は小さくなると考えられる。
【0050】
次に、溝深さ/支持線径の比率が0.5以上になると、一旦発生した陰極構体160の振動をさらに減衰させるのは難しくなるが、溝深さが大きくなることで支持線163の***部163aの影響による電子放射面の傾きが小さくなるため、カソード電流の変動率が徐々に改善されると考えられる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明の内容が、上記実施の形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を実施することができる。
【0051】
(1)溝について
a.溝を金属カップに形成した場合について
上記の実施の形態では、支持線163用の溝165をヒータ部162に形成しているが、カソード部に形成しても良い。図11は、支持線用の溝を金属カップに形成した陰極構体を示す斜視図である。
【0052】
同図に示す陰極構体260は、金属カップ261bに支持線263の配線を許容するための溝265が形成されている。このため、金属カップ261bの固着面と、ヒータ部262の固着面とが当接した状態で両者を固着することできる。従って、上記実施の形態で説明したように、電子放射面をヒータ部262の固着面に対して略平行にすることができる。なお、金属カップ261bに溝265を設けた場合における電子放射面の傾斜は、実施の形態と同様に、従来品に比べて小さくなることを確認している。
【0053】
次に、この金属カップ261bに溝265を形成した陰極構体260を電子銃1に組み込んだ陰極線管を用いて、上記実施の形態と同様に、そのネック部に振動を与えてカソード電流の変動率を測定した。その結果を図12に示す。なお、用いた陰極構体260に形成されている溝265の深さは、実施の形態と同様に、2本の支持線263(1本の径が50μm)に相当する0.1mmである。
【0054】
なお、金属カップ261bに溝265を設けたものを、図12において、「カップ溝有」として表し、また同図には、比較のため、溝を設けていないもの(図12において「溝無」と表示)、上記実施の形態で説明したヒータ部162に溝165を設けたもの(図12において「ヒータ部溝有」と表示)もあわせて示している。
【0055】
電流変動率は、上述の3種類の陰極構体を比較すると、「ヒータ部溝有」、「カップ溝有」、「溝無」の順で大きく(悪く)なっている。「ヒータ部溝有」及び「カップ溝有」の電流変動率が小さく、また、「溝無」の電流変動率が大きい理由は上述した通りである。一方、「カップ溝有」の電流変動率が、「ヒータ部溝有」と「溝無」の間になるのは、溝265を形成することで、電子放射面がヒータ部262の固着面と略平行になり、陰極構体260が振動しても、「溝無」に比べて、その傾斜が小さくなったためと考えられる。
【0056】
一方、陰極構体260の管軸廻りの回転等による振動は、実施の形態で説明したヒータ部162の溝165によりその振動が規制されるが、金属カップ261bに溝265を設けた場合では、金属カップ261の周縁で支持線263が固定されるため、軸心廻りの回転を規制するという点では従来品と略同じになってしまう。このため、「カップ溝有」は、「ヒータ部溝有」に対して電流変動率が大きくなっていると考えられる。
【0057】
b.溝の形成部材について
上記の実施の形態では、支持線163の配線用の溝165をヒータ部162に形成した場合を説明し、また上記変形例では支持線263の配線用の溝265を金属カップ261bに形成した場合について説明した。しかしながら、支持線用の溝は、ヒータ部又は金属カップのいずれか一方にだけ設ける必要はなく、例えば、金属カップとヒータ部との両方に設けても良い。
【0058】
具体的には、金属カップに1本の支持線分の溝を、ヒータ部に1本の支持線分の溝をそれぞれ形成して、金属カップとヒータ部との両方で、2本の支持線が入るようにしても良い。当然、このようにしても、支持線の配線を許容する空間が形成されるので、電子放射面がヒータ部の固着面に対して傾斜するのを抑制することができる。
【0059】
c.溝の形状について
実施の形態及び上記変形例では、溝165、265の横断面形状を「コ」字状にしていたが、この形状に限定するものではない。他の形状としては、例えば、横断面形状が「V」字状、「U」字状でも良い。但し、ヒータ部に溝を形成すると、陰極構体が振動した際の振幅を抑制できることを実施の形態の4.の項目で説明したが、溝に振動対策作用を持たせる場合、断面形状を「V」字状、「U」字状にすると、溝の深さが浅くても支持線がある程度位置決めされるので、実施の形態における「コ」字状と同等以上の効果が得られると考えられる。
【0060】
さらに、実施の形態の溝及び金属カップに形成した溝の形状は、管軸方向から見たときに、「X」字状になっているが、溝の形状をこの「X」字状に限定するものではなく、例えば、「卍」字状であっても良い。また、「X」字状の各溝は、隣合う溝同士の間隔が直角となっているが、直角でなくても良い。
図13は、第1の実施の形態における溝の形状についての変形例を示す図である。溝165Aの交差する部分、つまりヒータ部162におけるカソード部側の面の中心部分は、同図に示すように、広く凹入していても良いし、また、隣合う溝に挟まれた部分であってヒータ部162の中心側は、図7に示すように直角でなくて、図13に示すように丸くなっていても良い。
【0061】
d.溝の幅について
実施の形態では、溝165、265の幅を0.1mmとしているが、この寸法に限定するものでない。溝を形成する目的を、単に電子放射面の傾きの抑制とするならば、溝の幅は支持線が入る幅であれば良い。しかしながら、支持線を溝内に配置する際の作業性、溝を大きくした際における金属ペーストの使用量の増加等を考慮すると、溝の幅は、支持線の直径に対して同等以上、2.5倍以下の範囲が適当であると考えられる。また、ヒータ部に溝を設けて振動の振幅を抑制する場合には、溝の幅は、支持線が溝内で移動する範囲を小さくした方が良いのは言うまでもない。
【0062】
(2)支持線配線用の空間形成について
a.凹部による空間形成
実施の形態及び上記変形例では、支持線の配線用の空間を形成するための凹部として溝を利用しているが、溝以外の凹部でも良い。このような例としては、固着面に形成された窪みがある。
【0063】
図14は、金属カップに窪みを形成した場合における支持線が交差する部分の側面断面図である。窪み465bは、同図に示すように、その底の略中央の位置に形成されている。窪み465bは、2本の支持線463が交差することによりできる***部463aを収納できる深さであれば良い。
また、窪み465bをヒータ部462側から見たときの形状は、支持線463が交差してできた***部463aが入る形状であれば良く、円形、三角形、多角形、楕円等であっても良い。また、その大きさも、***部463aが入る大きさであれば良く、例えば、ヒータ部462側から見たときの形状が円形状の場合、0.4mm程度の直径が妥当と思われる。
【0064】
なお、図14で示す窪み465bは、金属カップ461bの底に半球状に凹入するように形成されているが、例えば、金属カップ461bに円形状に開口する開口部であっても良い。当然、開口部と溝を組合わせても良い。
b.凸部による空間形成
実施の形態、上記変形例(2)a.では、支持線用の空間を形成するために、カソード部及びヒータ部の固着面を基準にして管軸方向に凹入(溝、窪み、開口部)する方式を利用したが、他の方式を利用しても良い。この例としては、固着面に管軸方向に凸出する凸部を設けても良い。
【0065】
図15は、固着面に凸部を設けたヒータ部の斜視図である。このように、ヒータ部362に凸部365を形成することにより、ヒータ部362とカソード部361とを付き合わせたときに、ヒータ部362の固着面(対向面)とカソード部361の固着面(対向面)との間に空間が形成され、その空間を利用して支持線363を交差状に配線するようにしている。この凸部365は、支持線363の2本分に相当する高さである。
【0066】
図15では、円柱状の凸部365が8個設けられているが、この数に限定するものではなく、さらに凸部365の形状も円形状に限定するものではない。但し、凸部365の大きさは、あまり大きすぎると、カソード部361aとヒータ部362とが実際に固着する面積が小さくなるので、好ましくはない。また、凸部365の高さについては、ヒータ部362とカソード部361とを付き合せたときの空間に支持線が入る必要はあるが、あまり高くなりすぎると、通常、金属ペーストには固着力が最大となる最適な厚さがあることから、固着力上好ましくはない。
【0067】
c.その他
実施の形態ではヒータ部の対向部位に、上記(1)のaではカソード部の対向部位に凹部をそれぞれ形成し、一方、(2)のb.ではヒータ部の対向面に凸部を形成している。しかしながら、ヒータ部とカソード部とを付き合わせたときに、支持線の配線を許容する空間が形成されれば、上記の例に限定するものではない。
【0068】
たとえば、カソード部の対向部位に凹部と凸部を形成して良い。具体的には、凹部に1本分の支持線が入り、凸部により1本文の支持線を配する空間を形成しても良い。
さらに、カソード部及びヒータ部の対向部位の一方に凹部を、また他方に凸部を形成しても良いし、両者の対向部位に互いに付き合うように凸部を形成すると共に一方に凹部を形成しても良い。
【0069】
(3)支持線の本数
上記の実施の形態及び変形例1)、2)の説明では、支持線は2本使用し、互いに交差させた状態で、カソード部とヒータ部との間に固着されて4本の支持金属線が延出するようにしている。しかしながら、支持金属線は4本に限定するものではなく、例えば5本以上でも良く、逆に1本、2本又は3本でも良い。
【0070】
但し、陰極構体を安定した状態で絶縁基板に取り付けるには、支持金属線は少なくとも1本以上が必要と考えられ、例えば、支持金属線(支持線)1本の場合は、ヒータ部から延出するリード線を利用すれば、支持金属線(支持線が1本とリード線が2本)が計3本となるので、陰極構体をある程度安定した状態で支持することもできる。
【0071】
(4)支持線の材質について
上記の実施の形態及び変形例では、支持線に金属線を使用し、カソード部へカソード電圧及び映像信号電圧を印加するための印加線を兼用しているが、例えば、支持線を電圧供給線として利用しなくても良い。この場合、支持線を熱伝導性の低い材質を使用すると、ヒータ部の熱が支持線を通って絶縁基板に伝わるのを防止でき、ヒータ部の熱損失を抑えることができる。このような支持線としては、例えば、W−Re(Reの比率が26%)がある。
【0072】
(5)カソード部について
上記の説明では、カソード部は、タングステンの基体にエミッタを含浸させた、所謂、含浸型エミッタを用いたが、酸化物エミッタを用いても良い。この酸化物エミッタは、ニッケル(Ni)の平板に酸化バリウム、酸化カルシウム等の酸化物をコーティングしたものである。この酸化物エミッタを用いる場合は、ニッケルの平板を含浸型エミッタの金属カップに置き換えれば良い。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る陰極構体は、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凹部及び/又は開口部を設けて、前記支持線のうち少なくとも交差による***部が前記凹部及び/又は開口部に入り込んだ状態で、前記電子放射部の電子放射面と反対側と前記加熱部の加熱面側とが固着されている。このため、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面を加熱部に対して略平行に固着することができる。
【0074】
また、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向面上に凸部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線の交差部が位置されている。このため、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面を加熱部に対して略平行に固着することができる。
【0075】
一方、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凸部及び凹部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部及び前記凹部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線が配されている。このため、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面を加熱部に対して略平行に固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における電子銃の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態における制御電極を蛍光体スクリーン側から見た図であって、内部の様子がわかるように一部を切り欠いた図である。
【図3】図2におけるX−X線における断面を矢視方向から見た図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態における陰極ユニットを蛍光体スクリーン側から見た図であり、(b)は、陰極ユニットをステム側から見た図である。
【図5】本発明の実施の形態における陰極構体の斜視図である。
【図6】図5におけるA方向から見た陰極構体の一部を切り欠いた側面図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるヒータ部の斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態における陰極構体の組立て方法を説明する概略図である。
【図9】溝の有無と電子放射面の傾きとの関係を示す図である。
【図10】溝の深さ/支持線とカソード電流の変動率との関係を示す図である。
【図11】金属カップに溝を有する陰極構体を示す斜視図である。
【図12】溝の有無、溝の形成位置とカソード電流の変動率との関係を示す図である。
【図13】第1の実施の形態におけるヒータ部の溝形状についての変形例を示す斜視図である。
【図14】金属カップに凹部を形成した陰極構体における凹部を拡大した断面図である。
【図15】凸部を有するヒータ部を示す斜視図である。
【図16】従来の陰極構体を示す斜視図である。
【図17】従来の陰極構体を電子銃に組み込んだ状態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 電子銃
160、260、360 陰極構体
111 制御電極
161、261、361 カソード部
161a、261a、361a ペレット
161b、261b、361b 金属カップ
162、262、362 ヒータ部
163、263、363 支持線
163a、263a、363a ***部
164、264、364 支持金属線
165、265 溝
365 凸部
465b 窪み
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子を放出する陰極構体、当該陰極構体を用いた電子銃及び当該電子銃を備える陰極線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
陰極線管の電子銃に組み込まれる陰極構体は、電子放射物質を備えたカソード部を加熱することにより電子を放射する。このような陰極構体として、例えば、円筒状の陰極スリーブの上面に電子放射物質を塗布すると共に、内部にヒータを収納したタイプがある。このタイプは、ヒータとスリーブとの間に隙間があるため、ヒータが陰極スリーブを間接的に加熱することになり、ヒータの熱損失が大きい。そこで、ヒータの熱損失を改善した陰極構体が近年提案されている。
【0003】
図16は、ヒータの熱損失を改善した従来の陰極構体を示す斜視図であり、図17は、陰極構体を電子銃に組み込んだ状態で、陰極構体と制御電極とを示す概略図である。なお、図17は、その内部の様子がわかるように一部切り欠いている。
この陰極構体960は、図16に示すように、電子放射物質が含浸するペレット961aとこのペレット961aを収納する金属カップ961bとを有するカソード部961と、その金属カップ961bの底面に固着されるヒータ部962とを備える。ヒータ部962は、セラミック製のセラミック体962a内にヒータが埋設されている(特許文献1)。従って、ヒータは、セラミック体962aを構成するセラミックを介して直接カソード部961を加熱するので、ヒータの熱損失が小になる。なお、セラミック体962aの外周からは、ヒータのリード線966が導出している。
【0004】
陰極構体960の電子銃への組み込みは、金属カップ961bとヒータ部962との間から径方向に延伸する4本の支持金属線964を介してなされる。4本の支持線964は、金属カップ961bとヒータ部962とを固着する前に、両者の間に2本の支持線963を交差させて配置し、これらの支持線963を挟んだ状態で、金属カップ961bとヒータ部962とが金属ペースト970の溶融により固着することで、固定される。
【0005】
【特許文献1】
特開2001−202898号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の陰極構体960では、その電子放射面がヒータ部962に対して大きく傾斜してしまうという問題がある。つまり、2本の支持線963は「X」字状に交差しているため、その交差する部分が周りよりも高く***する***部963aとなり(図17参照)、一方、金属カップ961bは、交差する支持線963上に載置された状態でヒータ部962に固着される。
【0007】
このとき、金属カップ961bは、その底が***部963aに当接するため、非常に不安定な状態となり、電子放射面がヒータ部962に対してどうしても傾斜してしまうのである。そして、このような電子放射面が傾斜する陰極構体を用いた場合、例えば、スピーカの発音時の振動により陰極構体が振動するとカソード電流が変動するという問題を生じる。
【0008】
以下、電子放射面が傾斜している陰極構体が振動すると、カソード電流が変動するしくみについて図17を用いて説明する。図17における仮想線は、振動により下方に移動した状態の陰極構体を示している。
先ず、同図に示すように、陰極構体960が静止している状態における電子放射面と制御電極911との距離はL1となる。これに対して、陰極構体960が下方に移動した状態では、制御電極911との距離がL2となり、このL2はL1よりも短くなる。これによって、カソード部961と制御電極911との相対的な電位差が変動してカソード電流が変動するのである。
【0009】
なお、2本の支持線を交差させずに、例えば、4本の支持線を交差させずに配した状態でカソード部とヒータ部とを固着すれば、電子放射面の傾斜は改善されるが、生産性の低下、さらには、金属ペーストの固着不良によっては支持線が抜けるおそれもあり、現実的ではない。
本発明は、上記のような問題点に鑑みてなされたもので、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着できる陰極構体、電子銃及び陰極線管を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る陰極構体は、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凹部及び/又は開口部を設けて、前記支持線のうち少なくとも交差による***部が前記凹部及び/又は開口部に入り込んだ状態で、前記電子放射部の電子放射面と反対側と前記加熱部の加熱面側とが固着されていることを特徴としている。この構成によれば、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0011】
また、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向面上に凸部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線の交差部が位置されていることを特徴としている。この構成によれば、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0012】
一方、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凸部及び凹部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部及び前記凹部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線が配されていることを特徴としている。この構成によれば、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0013】
さらに、前記凹部は溝であることを特徴とし、また前記溝の深さは、前記支持線の横断面における高さと略同じ寸法であることを特徴している。このため、支持線を位置決めできると共に、支持線が全部溝に入るため、安定した状態で対向部位を固着でき、電子放射面の傾きを小にできる。
一方、前記溝は、前記加熱部の対向部位の略中央を通るよう形成されていることを特徴としている。この構成によれば、陰極構体を安定した状態で電子銃本体に支持される。
【0014】
しかも、前記凹部は、前記加熱部の対向部位に形成された溝であり、当該溝の深さが、前記支持線の横断面における高さの半分以上が入る深さであることをと特徴としている。このため、陰極構体が振動した場合でもその振動を規制することができる。これにより、例えば、カソード部に振動が加わった場合に、カソード電流の変動を小さくすることができる。
【0015】
一方、前記凸部は、前記加熱部における対向面の略中央を中心として周方向に間隔をおいて少なくとも3つ以上設けられていることを特徴とし、さらに前記凸部の高さは、前記交差部の高さと略同じであることを特徴としている。この構成によれば、支持線の配線用の空間ができ、電子放射面をヒータ部に対して略平行に固着することができる。
【0016】
また、前記支持線は金属製であり、当該支持線を介して電子放射部へ給電していることを特徴としている。この構成によれば、電子放射部にカソード電圧及び映像信号電圧を印加するための配線を無くすことができる。
一方、本発明に係る電子銃は、上記構成の陰極構体を備え、また、本発明に係る陰極線管は前記電子銃を備えることを特徴としている。これら構成によれば、陰極構体が振動した場合でもカソード電流の変動を小さくすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電子銃の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
1.構造について
(1)電子銃
電子銃は、陰極線管内に組み込まれている。陰極線管は、内面に蛍光体スクリーンが形成されているパネル部と、ファンネル部とを備え、このファンネル部のネック部内に電子銃が配置されている。
【0018】
図1は、本実施の形態における電子銃の構成を示す図である。
電子銃1は、同図に示すように、ステム130、陰極構体160、制御電極111、加速電極112、集束電極113〜119、最終加速電極120、シールドカップ121、コンタクトスプリング122及び支持部材141とを備える。
陰極構体160は、電子ビームを蛍光体スクリーンに向けて放射するもので、制御電極111内に取り付けられる後述の陰極ユニットに組み込まれる。この陰極構体160から放射される電子ビームの量は、制御電極111及び加速電極112により制御される。
【0019】
制御電極111及び加速電極112は、カソードレンズを形成し、陰極構体160から放射された電子ビームは、そのカソードレンズによりクロスオーバーを形成する。電子ビームはさらに蛍光体スクリーン側に進むと、加速電極112、集束電極113〜119及び最終加速電極120等により形成されたプリフォーカスレンズ、主集束レンズにより蛍光体スクリーン面で集束する。
【0020】
なお、制御電極111、加速電極112、集束電極113〜119、最終加速電極120、シールドカップ121への給電は、ステム130に設けられたピン131、ネック部内面に塗布された導電性塗料に電気的に接触するコンタクトスプリング122等を介して行われる。また、各種電極111〜120、ステム130、シールドカップ121は、ガラス製の支持部材141により支持されている。
【0021】
(2)陰極ユニット
図2は、本実施の形態における陰極ユニットを蛍光体スクリーン側から見た図であり、内部の陰極ユニットの様子がわかるように制御電極の一部を切り欠いている。図3は、陰極ユニットを図2におけるX−X線での断面を矢視方向から矢視した図である。
【0022】
上述の電子銃1の制御電極111は幅広の有底円筒形状をしており、その内部に、図2及び図3に示すように、赤、緑、青用の電子ビームを放射する陰極ユニット150が3個装着されている。なお、3個の陰極ユニット150は、横一列、所謂インライン配列されている。
この陰極ユニット150は、図3に示すように、電子を放射するカソード部161とカソード部161を加熱するヒータ部162とを備える陰極構体160と、この陰極構体160を支持する絶縁基板151と、この絶縁基板151の蛍光体スクリーン側の面に固着されたL字状の支持部材153と、陰極構体160のカソード部161及びヒータ部162に電圧を供給する電圧供給部材154、156a(156aについては図4の(b)参照)とを備える。陰極ユニット150の制御電極111への取り付けは、前記支持部材153のうち電子銃1の管軸方向(以下、単に、「管軸方向」という。)に延びる部分が円筒状の制御電極111の内周面に当接することにより行われる。
【0023】
図4の(a)は、陰極ユニットを蛍光体スクリーン側から見た図であり、(b)は、ステム側(蛍光体スクリーンと反対側)から見た図である。
陰極構体160は、後述するが、カソード部161とヒータ部162との固着部分から延伸する4本の支持金属線164を備え、また、ヒータ部162の底面(ステム130側の面)からは、ヒータ用のリード線166aが延伸している。
【0024】
絶縁基板151は、図2及び図4に示すように、蛍光体スクリーン側からそれを見たときに(蛍光体スクリーン側から見ることを、以下、「正面視」という。)矩形状をしており、その略中央には管軸方向に貫通する貫通孔152が形成されている。なお、絶縁基板151には、セラミックが用いられている。
この貫通孔152は、正面視略方形状で、各辺の中央部分が貫通孔152の内側に張り出すと共に、図3に示すように、管軸方向の両端が中央部よりも大きくなっている。
【0025】
絶縁基板151のステム130側の面には、図3に示すように、L字状のヒータ電圧供給部材155が互いに対向して取り付けられており、このヒータ電圧供給部材155に、陰極構体160から延伸するリード線166aが絶縁基板151の貫通孔152を通って接続されている。
絶縁基板151におけるステム130側の面の4隅には、図4の(b)に示すように、金属板156が固着されており、陰極構体160から延伸する支持金属線164が、リード線166aと同様に、絶縁基板151の貫通孔152を通って上記金属板156に接続されている。この4個の金属板156のうち1個の金属板156aは、支持金属線164を介してカソード部161にカソード電圧及び映像信号電圧を印加するための電圧印加用となっている。なお、カソード電圧供給用の金属板156aは、支持部材153側の端部から下方に伸びる「L」字状になっており、図3では、支持部材153の影となり、図示されていない。
【0026】
なお、支持部材153の絶縁基板151への取り付け、ヒータ電圧供給部材155の絶縁基板151への取り付けには、例えば、Mo−Mnろう材や銀ろう材のような金属ペーストが用いられ、また、支持金属線164と金属板156との固着及びヒータ用のリード線166aとヒータ電圧供給部材155の固着には、例えば、溶接が用いられている。
【0027】
(3)陰極構体
図5は、本実施の形態における陰極構体であって、陰極ユニットに組み込む前の状態を示した斜視図である。
陰極構体160は、加熱によリ電子を放射するペレット161aを備えるカソード部161と、このカソード部161を加熱するためのヒータ部162と、カソード部161とヒータ部162とを固着した状態で陰極ユニット150に取り付けるための支持金属線164とを備える。なお、カソード部161とヒータ部162とは、金属ペースト170、例えば、モリブデンーマンガン(Mo−Mn)のペーストを用いて固着されている。
【0028】
図6は、図5におけるA方向から見た陰極構体160の一部を切り欠いた図である。
電子放射部としてのカソード部161は、図5及び図6に示すように、カップ状の金属カップ161bと、この金属カップ161b内に挿着されたペレット161aとからなる。
【0029】
ペレット161aは、所謂、含浸型であって、例えば、タングステン(W)の多孔質高融点基体に、酸化バリウム(BaO)、酸化カルシウム(CaO)、アルミナ(Al2O3)の電子放射性物質(エミッタ)を溶融含浸させて、その電子放射面にオスミウム−ルテニウム(Os−Ru)薄膜を被着したものを用いている。なお、ペレット161aは、正面視略円形状をしており、その大きさは、例えば、直径1.18mmで、厚さが0.42mmである。
【0030】
金属カップ161bは、ペレット161aの電子放射面が金属カップ161bの端面よりも蛍光体スクリーン側に張り出す状態で、ペレット161aを保持している。つまり、金属カップ161bの周壁が、ペレット161aの周面を覆っている。これは、ペレット161aが加熱された際に、その周面から電子が放射するのを防ぐためである。
【0031】
金属カップ161bは、例えば、モリブデン(Mo)製で、ペレット161aの形状に対応して正面視円形状をし、その大きさは、外径1.25mm、内径1.19mm、高さが0.40mm(板厚:0.03mm)である。従って、ペレット161aは、金属カップ161bから略0.05mm出ていることになる。なお、金属カップ161bとペレット161aとの固着は、例えば、電気溶接により行われる。
【0032】
次に、ヒータ部162について説明する。
加熱部としてのヒータ部162は、図5及び図6に示すように、円柱状をしており、アルミナ粉体を焼結させたセラミック体162aと、このセラミック体162aの内部に埋め込まれたヒータ166とからなる。
セラミック体162aは、例えば、粒径が略1μmのアルミナ粉体を1600℃で焼結したものである。アルミナ粉末は、純度が95wt.%以上であるものを用いた。なお、アルミナ粉末の粒径は、直径0.1μm〜50μmの範囲内のものであれば良い。ヒータ部162の大きさは、例えば、直径1.5mm、厚さが0.5mmである。
【0033】
ヒータ166は、素線をコイル状に形成したものを利用しており、セラミック体162aの内部にカソード部161の電子放射面と略平行となるように正面視S字状に埋め込まれている(図7参照)。ヒータ166は、その中間部の4.4mmがセラミック体162a内に埋まっており、セラミック体162aの底面(蛍光体スクリーンと反対側の面)から管軸方向に延伸する部分が、ヒータ166に電圧を供給するためのリード線166aとなっている。
【0034】
ヒータ166は、例えば、タングステンーレニウム(W−Re)が用いられ、コイル寸法は、コイル外径が0.146mm、素線径が0.023mm、ピッチが0.036mmである。なお、素線におけるタングステンとレニウムの構成比率は、タングステンが97%、レニウムが3%である。
ヒータ166のセラミック体162a内への埋設は、セラミック体162aの内部の限られた体積内に、ヒータ166を可能な限り長く設置できるようにしつつ、ヒータ166同士が近づきすぎて電流がリークしないようにしている。また、金属ペースト170とヒータ166との間には、電子放射時に高電圧が作用するため、充分な絶縁耐圧が確保できるように、セラミック体162aの固着面とヒータ166との間隔を0.1mmとしている。
【0035】
図7は、カソード部とヒータ部とを固着する前のヒータ部を示す斜視図である。ヒータ部162は、その蛍光体スクリーン側の面(加熱面)に、正面視したときに「X」字状に2本の溝165が形成されている。
この「X」字状の溝165は、2本の支持線163を配線するための空間を形成するためのものである。2本の支持線163が溝165内に配置された状態で、ヒータ部162のカソード部161側の面と、カソード部161のヒータ部162側の面が固着されている。従って、陰極構体160を正面視したときに、支持線163が管軸方向と直交する方向の4方に延伸し、この各方向に延伸する1本を1本の支持金属線164としている。つまり、2本の支持線163により4本の支持金属線164が構成されている。
【0036】
ヒータ部162の溝165は、溝165内に配置された支持線163が交差する***部163a(図6参照)が、ヒータ部162におけるカソード部161側の面であって溝165を形成していない部分よりもカソード部161側に出ない深さとなっている。なお、この深さは、正確には、支持線163の***部163aが溝165から張り出す寸法が金属ペースト170の厚みに対応する寸法以内であれば問題ない。
【0037】
支持線163は、例えば、タングステンーレニウム(W−Re)が用いられており、その直径が例えば50μmである。このため、溝165の寸法は、支持線163が入るように幅が0.1mm、深さ0.1mmとしている。
なお、2本の溝165は、2本の支持線163に対応して、常に2本分の支持線163に相当する深さである必要はなく、2本の溝165のうち、どちらか1本がその交差する部分の深さが、支持線163の2本分に相当する深さであれば良く、少なくとも***部163aがカソード部161に当接しない構造であれば良い。
【0038】
支持線163におけるタングステンとレニウムの構成比率は、タングステンが74%、レニウムが26%であるが、この構成比率に限定するものではない。さらに、支持線163として、モリブデン(Mo)、タンタル(Ta)、レニウム(Re)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)であっても良い。
2.陰極構体の組立方法について
図8は、陰極構体160の組立方法を説明する図である。
【0039】
まず、ヒータ部162と、2本の支持線163と、金属カップ161bを準備する。なお、ヒータ部162は、そのカソード部161側の面(図8における上面であり、以下「上面」という。)に、2本の溝165が形成されている。
用意した2本の支持線163を、図8の(a)に示すように、ヒータ部162の2本の溝165内に配置する。そして、ヒータ部162の上面に金属ペーストを略50μm塗布した後、金属カップ161bの下面とヒータ部162の上面と付き合わせ、そのままの状態で金属ペースト170を1500℃で溶融させる。
【0040】
このとき、ヒータ部162の上面には、支持線163に対応して2本の溝165が形成されているので、この溝165内に支持線163を配置するだけで、支持線163の位置決めができる。しかも、溝165の深さは、2本の支持線163が各溝165内に配置され状態で、溝165から張り出さないように構成されているので、金属カップ161bとヒータ部162とを付きあわせる際も、支持線163の交差による***部に影響されることはない。このため、金属カップ161bがヒータ部162の上面に対して略平行に固着される。
【0041】
次に、ペレット161aを、図8の(b)に示すように、その上端部が見えるように金属カップ161bに挿入して、金属カップ161bとペレット161aと溶接により固着する。以上の工程により、図8の(c)に示すような陰極構体160が組み立てられる。
このようにして組み立てられた陰極構体160は、2本の溝165がヒータ部162の略中央で交差し且つ互いに直交し、この溝165内に配された4本の支持金属線164を介して絶縁基板151に取り付けるので、陰極構体160は支持金属線164によりバランス良く支持される。
【0042】
3.カソード部の電子放射面の傾きについて
上記のように組み立てられた陰極構体160について、カソード部161の電子放射面の傾きを測定した。その測定結果を図9に示す。なお、電子放射面の傾きは、ヒータ部162の固着面を基準として、ペレット161aの上面の高さを測定し、その最大値と最小値との差から算出している。
【0043】
ヒータ部162に溝165を設けていない陰極構体160(以下、「従来品」という。)では、電子放射面の傾きは、最小値が16μmで、最大値が35μmとなっており、その標準偏差σは5.8である。なお、このサンプル数Nは、7である。
これに対して、ヒータ部162に溝165を設けた陰極構体160(以下、「発明品」という。)では、電子放射面の傾きは、最小値が6μmで、最大値が12μmとなっており、その標準偏差σは2.1である。このサンプル数Nは、7である。
【0044】
これらの測定結果から、発明品は、従来品に対して傾きの絶対量が小さくなっただけでなく、そのばらつき幅も小さくなっていることが明らかに分かる。これは、従来品は2本の支持線963を交差させて、その上に金属カップ961bを載置している。従って、支持線963の***部963aで少なくとも1本の支持線163分に相当する段差が生じ、この段差を生じた状態で金属カップ161bが固着される。このため、ヒータ部962に対する電子放射面の傾きの絶対量が大きく、そのバラツキも大きくなったと考えられる。
【0045】
これに対し、発明品では、支持線163がヒータ部162の溝165に入り込んでいるため、従来品のような支持線163の***部163aによる段差はなく、金属カップ161bが安定した状態で固着される。このため、電子放射面の傾きの絶対量が小さく、しかもバラツキも小さくなったと考えられる。
4.溝の深さについて
陰極構体160の電子放射面が傾斜していると、従来の技術の欄で説明したように、陰極構体160が振動した際にカソード電流が変動するという不具合が生じる。そこで、上記構成の陰極構体160を陰極線管に搭載して、実際に振動を与えてカソード電流の変化を測定した。
【0046】
測定の具体的な内容は、陰極構体160を組み込んだ電子銃1を32インチの陰極線管に搭載した。そして、100μAのカソード電流を取り出し、ネック部にその管軸方向から1Gの単振動を与え、その振動が100Hzから2KHzまでの周波数をスイープしたとき(共振点となったとき)に表れる電流変調のピークを測定した。この電流変調の変化率は、陰極構体160が振動すると、カソード電流が変化し、その振動の振幅が大きいほど、変化率が大きい。
【0047】
このようなカソード電流の変化を測定する試験を、ヒータ部162に形成された溝165の深さを変えた6種類(溝を形成していないものも含める)の陰極構体について行った。この結果を図10に示す。なお、同図には、カソード電流の変化率を電流変動率として表している。
カソード電流の変動率は、図10に示すように、溝深さ/支持線径の比率、つまり溝165が深くなるに従って、低下(改善)しているのが分かる。一方、カソード電流は、陰極構体160の振動(電子放射面の振動)の振幅が大きいほど、電流変化率が大きくなるので、溝165が深くなるほど、陰極構体160の振動振幅が小さくなっているといえる。特に、溝165の深さが、支持線1本の径の半分、つまり、溝深さ/支持線径の比率が0.5までは電流変動率の改善率が大きく、溝深さ/支持線径の比率が0.5を超えると、電流変動率の改善率が小さくなっている。
【0048】
この理由を以下に説明する。先ず、陰極構体160は、カソード部161とヒータ部162との固着部から管軸方向と直交する方向に、つまり正面視「X」字状に延伸する4本の支持金属線164を介して絶縁基板151に取り付けられている。このため、ネック部に振動を与えると、陰極構体160は、管軸廻りに回転するような振動及びカソード部161の電子放射面が管軸方向に傾斜するような振動とが組み合わされたような振動をする。
【0049】
このうち陰極構体160の管軸廻りの振動は、陰極構体160が回転したときに、溝165の壁面が支持金属線164に当接するためにそれ以上回転できなくため、振幅が小さくなると考えられる。特に、溝深さ/支持線径の比率が0.5までは、溝165の深さが大きくなるほど、陰極構体160の管軸廻りの回転を規制できるが、それ以上になると、陰極構体160の振動を規制する度合いは略同じになると考えられる。このため、図10に示すように、カソード電流の変動率が、溝深さ/支持線径の比率が0.5までは改善率が大きく、それ以降は小さくなると考えられる。
【0050】
次に、溝深さ/支持線径の比率が0.5以上になると、一旦発生した陰極構体160の振動をさらに減衰させるのは難しくなるが、溝深さが大きくなることで支持線163の***部163aの影響による電子放射面の傾きが小さくなるため、カソード電流の変動率が徐々に改善されると考えられる。
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明の内容が、上記実施の形態に示された具体例に限定されないことは勿論であり、例えば、以下のような変形例を実施することができる。
【0051】
(1)溝について
a.溝を金属カップに形成した場合について
上記の実施の形態では、支持線163用の溝165をヒータ部162に形成しているが、カソード部に形成しても良い。図11は、支持線用の溝を金属カップに形成した陰極構体を示す斜視図である。
【0052】
同図に示す陰極構体260は、金属カップ261bに支持線263の配線を許容するための溝265が形成されている。このため、金属カップ261bの固着面と、ヒータ部262の固着面とが当接した状態で両者を固着することできる。従って、上記実施の形態で説明したように、電子放射面をヒータ部262の固着面に対して略平行にすることができる。なお、金属カップ261bに溝265を設けた場合における電子放射面の傾斜は、実施の形態と同様に、従来品に比べて小さくなることを確認している。
【0053】
次に、この金属カップ261bに溝265を形成した陰極構体260を電子銃1に組み込んだ陰極線管を用いて、上記実施の形態と同様に、そのネック部に振動を与えてカソード電流の変動率を測定した。その結果を図12に示す。なお、用いた陰極構体260に形成されている溝265の深さは、実施の形態と同様に、2本の支持線263(1本の径が50μm)に相当する0.1mmである。
【0054】
なお、金属カップ261bに溝265を設けたものを、図12において、「カップ溝有」として表し、また同図には、比較のため、溝を設けていないもの(図12において「溝無」と表示)、上記実施の形態で説明したヒータ部162に溝165を設けたもの(図12において「ヒータ部溝有」と表示)もあわせて示している。
【0055】
電流変動率は、上述の3種類の陰極構体を比較すると、「ヒータ部溝有」、「カップ溝有」、「溝無」の順で大きく(悪く)なっている。「ヒータ部溝有」及び「カップ溝有」の電流変動率が小さく、また、「溝無」の電流変動率が大きい理由は上述した通りである。一方、「カップ溝有」の電流変動率が、「ヒータ部溝有」と「溝無」の間になるのは、溝265を形成することで、電子放射面がヒータ部262の固着面と略平行になり、陰極構体260が振動しても、「溝無」に比べて、その傾斜が小さくなったためと考えられる。
【0056】
一方、陰極構体260の管軸廻りの回転等による振動は、実施の形態で説明したヒータ部162の溝165によりその振動が規制されるが、金属カップ261bに溝265を設けた場合では、金属カップ261の周縁で支持線263が固定されるため、軸心廻りの回転を規制するという点では従来品と略同じになってしまう。このため、「カップ溝有」は、「ヒータ部溝有」に対して電流変動率が大きくなっていると考えられる。
【0057】
b.溝の形成部材について
上記の実施の形態では、支持線163の配線用の溝165をヒータ部162に形成した場合を説明し、また上記変形例では支持線263の配線用の溝265を金属カップ261bに形成した場合について説明した。しかしながら、支持線用の溝は、ヒータ部又は金属カップのいずれか一方にだけ設ける必要はなく、例えば、金属カップとヒータ部との両方に設けても良い。
【0058】
具体的には、金属カップに1本の支持線分の溝を、ヒータ部に1本の支持線分の溝をそれぞれ形成して、金属カップとヒータ部との両方で、2本の支持線が入るようにしても良い。当然、このようにしても、支持線の配線を許容する空間が形成されるので、電子放射面がヒータ部の固着面に対して傾斜するのを抑制することができる。
【0059】
c.溝の形状について
実施の形態及び上記変形例では、溝165、265の横断面形状を「コ」字状にしていたが、この形状に限定するものではない。他の形状としては、例えば、横断面形状が「V」字状、「U」字状でも良い。但し、ヒータ部に溝を形成すると、陰極構体が振動した際の振幅を抑制できることを実施の形態の4.の項目で説明したが、溝に振動対策作用を持たせる場合、断面形状を「V」字状、「U」字状にすると、溝の深さが浅くても支持線がある程度位置決めされるので、実施の形態における「コ」字状と同等以上の効果が得られると考えられる。
【0060】
さらに、実施の形態の溝及び金属カップに形成した溝の形状は、管軸方向から見たときに、「X」字状になっているが、溝の形状をこの「X」字状に限定するものではなく、例えば、「卍」字状であっても良い。また、「X」字状の各溝は、隣合う溝同士の間隔が直角となっているが、直角でなくても良い。
図13は、第1の実施の形態における溝の形状についての変形例を示す図である。溝165Aの交差する部分、つまりヒータ部162におけるカソード部側の面の中心部分は、同図に示すように、広く凹入していても良いし、また、隣合う溝に挟まれた部分であってヒータ部162の中心側は、図7に示すように直角でなくて、図13に示すように丸くなっていても良い。
【0061】
d.溝の幅について
実施の形態では、溝165、265の幅を0.1mmとしているが、この寸法に限定するものでない。溝を形成する目的を、単に電子放射面の傾きの抑制とするならば、溝の幅は支持線が入る幅であれば良い。しかしながら、支持線を溝内に配置する際の作業性、溝を大きくした際における金属ペーストの使用量の増加等を考慮すると、溝の幅は、支持線の直径に対して同等以上、2.5倍以下の範囲が適当であると考えられる。また、ヒータ部に溝を設けて振動の振幅を抑制する場合には、溝の幅は、支持線が溝内で移動する範囲を小さくした方が良いのは言うまでもない。
【0062】
(2)支持線配線用の空間形成について
a.凹部による空間形成
実施の形態及び上記変形例では、支持線の配線用の空間を形成するための凹部として溝を利用しているが、溝以外の凹部でも良い。このような例としては、固着面に形成された窪みがある。
【0063】
図14は、金属カップに窪みを形成した場合における支持線が交差する部分の側面断面図である。窪み465bは、同図に示すように、その底の略中央の位置に形成されている。窪み465bは、2本の支持線463が交差することによりできる***部463aを収納できる深さであれば良い。
また、窪み465bをヒータ部462側から見たときの形状は、支持線463が交差してできた***部463aが入る形状であれば良く、円形、三角形、多角形、楕円等であっても良い。また、その大きさも、***部463aが入る大きさであれば良く、例えば、ヒータ部462側から見たときの形状が円形状の場合、0.4mm程度の直径が妥当と思われる。
【0064】
なお、図14で示す窪み465bは、金属カップ461bの底に半球状に凹入するように形成されているが、例えば、金属カップ461bに円形状に開口する開口部であっても良い。当然、開口部と溝を組合わせても良い。
b.凸部による空間形成
実施の形態、上記変形例(2)a.では、支持線用の空間を形成するために、カソード部及びヒータ部の固着面を基準にして管軸方向に凹入(溝、窪み、開口部)する方式を利用したが、他の方式を利用しても良い。この例としては、固着面に管軸方向に凸出する凸部を設けても良い。
【0065】
図15は、固着面に凸部を設けたヒータ部の斜視図である。このように、ヒータ部362に凸部365を形成することにより、ヒータ部362とカソード部361とを付き合わせたときに、ヒータ部362の固着面(対向面)とカソード部361の固着面(対向面)との間に空間が形成され、その空間を利用して支持線363を交差状に配線するようにしている。この凸部365は、支持線363の2本分に相当する高さである。
【0066】
図15では、円柱状の凸部365が8個設けられているが、この数に限定するものではなく、さらに凸部365の形状も円形状に限定するものではない。但し、凸部365の大きさは、あまり大きすぎると、カソード部361aとヒータ部362とが実際に固着する面積が小さくなるので、好ましくはない。また、凸部365の高さについては、ヒータ部362とカソード部361とを付き合せたときの空間に支持線が入る必要はあるが、あまり高くなりすぎると、通常、金属ペーストには固着力が最大となる最適な厚さがあることから、固着力上好ましくはない。
【0067】
c.その他
実施の形態ではヒータ部の対向部位に、上記(1)のaではカソード部の対向部位に凹部をそれぞれ形成し、一方、(2)のb.ではヒータ部の対向面に凸部を形成している。しかしながら、ヒータ部とカソード部とを付き合わせたときに、支持線の配線を許容する空間が形成されれば、上記の例に限定するものではない。
【0068】
たとえば、カソード部の対向部位に凹部と凸部を形成して良い。具体的には、凹部に1本分の支持線が入り、凸部により1本文の支持線を配する空間を形成しても良い。
さらに、カソード部及びヒータ部の対向部位の一方に凹部を、また他方に凸部を形成しても良いし、両者の対向部位に互いに付き合うように凸部を形成すると共に一方に凹部を形成しても良い。
【0069】
(3)支持線の本数
上記の実施の形態及び変形例1)、2)の説明では、支持線は2本使用し、互いに交差させた状態で、カソード部とヒータ部との間に固着されて4本の支持金属線が延出するようにしている。しかしながら、支持金属線は4本に限定するものではなく、例えば5本以上でも良く、逆に1本、2本又は3本でも良い。
【0070】
但し、陰極構体を安定した状態で絶縁基板に取り付けるには、支持金属線は少なくとも1本以上が必要と考えられ、例えば、支持金属線(支持線)1本の場合は、ヒータ部から延出するリード線を利用すれば、支持金属線(支持線が1本とリード線が2本)が計3本となるので、陰極構体をある程度安定した状態で支持することもできる。
【0071】
(4)支持線の材質について
上記の実施の形態及び変形例では、支持線に金属線を使用し、カソード部へカソード電圧及び映像信号電圧を印加するための印加線を兼用しているが、例えば、支持線を電圧供給線として利用しなくても良い。この場合、支持線を熱伝導性の低い材質を使用すると、ヒータ部の熱が支持線を通って絶縁基板に伝わるのを防止でき、ヒータ部の熱損失を抑えることができる。このような支持線としては、例えば、W−Re(Reの比率が26%)がある。
【0072】
(5)カソード部について
上記の説明では、カソード部は、タングステンの基体にエミッタを含浸させた、所謂、含浸型エミッタを用いたが、酸化物エミッタを用いても良い。この酸化物エミッタは、ニッケル(Ni)の平板に酸化バリウム、酸化カルシウム等の酸化物をコーティングしたものである。この酸化物エミッタを用いる場合は、ニッケルの平板を含浸型エミッタの金属カップに置き換えれば良い。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る陰極構体は、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凹部及び/又は開口部を設けて、前記支持線のうち少なくとも交差による***部が前記凹部及び/又は開口部に入り込んだ状態で、前記電子放射部の電子放射面と反対側と前記加熱部の加熱面側とが固着されている。このため、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面を加熱部に対して略平行に固着することができる。
【0074】
また、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向面上に凸部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線の交差部が位置されている。このため、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面を加熱部に対して略平行に固着することができる。
【0075】
一方、電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凸部及び凹部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部及び前記凹部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線が配されている。このため、加熱部又は電子放射部において支持線の交差部と当接する部分がなくなり、電子放射面を加熱部に対して略平行に固着することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態における電子銃の側面図である。
【図2】本発明の実施の形態における制御電極を蛍光体スクリーン側から見た図であって、内部の様子がわかるように一部を切り欠いた図である。
【図3】図2におけるX−X線における断面を矢視方向から見た図である。
【図4】(a)は、本発明の実施の形態における陰極ユニットを蛍光体スクリーン側から見た図であり、(b)は、陰極ユニットをステム側から見た図である。
【図5】本発明の実施の形態における陰極構体の斜視図である。
【図6】図5におけるA方向から見た陰極構体の一部を切り欠いた側面図である。
【図7】本発明の実施の形態におけるヒータ部の斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態における陰極構体の組立て方法を説明する概略図である。
【図9】溝の有無と電子放射面の傾きとの関係を示す図である。
【図10】溝の深さ/支持線とカソード電流の変動率との関係を示す図である。
【図11】金属カップに溝を有する陰極構体を示す斜視図である。
【図12】溝の有無、溝の形成位置とカソード電流の変動率との関係を示す図である。
【図13】第1の実施の形態におけるヒータ部の溝形状についての変形例を示す斜視図である。
【図14】金属カップに凹部を形成した陰極構体における凹部を拡大した断面図である。
【図15】凸部を有するヒータ部を示す斜視図である。
【図16】従来の陰極構体を示す斜視図である。
【図17】従来の陰極構体を電子銃に組み込んだ状態を示す概略図である。
【符号の説明】
1 電子銃
160、260、360 陰極構体
111 制御電極
161、261、361 カソード部
161a、261a、361a ペレット
161b、261b、361b 金属カップ
162、262、362 ヒータ部
163、263、363 支持線
163a、263a、363a ***部
164、264、364 支持金属線
165、265 溝
365 凸部
465b 窪み
Claims (12)
- 電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、
前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凹部及び/又は開口部を設けて、前記支持線のうち少なくとも交差による***部が前記凹部及び/又は開口部に入り込んだ状態で、前記電子放射部の電子放射面と反対側と前記加熱部の加熱面側とが固着されていることを特徴とする陰極構体。 - 電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、
前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向面上に凸部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線の交差部が位置されていることを特徴とする陰極構体。 - 電子放射面を有する電子放射部と、当該電子放射部の電子放射面の反対側に固着されて前記電子放射部を加熱する加熱部とを備えると共に、複数の支持線の交差部上に載架されて電子銃本体に支持される陰極構体であって、
前記電子放射部及び前記加熱部の少なくとも一方の対向部位に凸部及び凹部が設けられ、前記電子放射部と前記加熱部とを前記凸部を介して付き合わせたときに当該凸部及び前記凹部により形成される前記電子放射部と加熱部との間隙に、前記複数の支持線が配されていることを特徴とする陰極構体。 - 前記凹部は溝であることを特徴とする請求項1又3に記載の陰極構体。
- 前記溝は、前記加熱部の対向部位の略中央を通るよう形成されていることを特徴とする請求項4に記載の陰極構体。
- 前記溝の深さは、前記支持線の横断面における高さと略同じ寸法であることを特徴とする請求項4又は5に記載の陰極構体。
- 前記凹部は、前記加熱部の対向部位に形成された溝であり、当該溝の深さが、前記支持線の横断面における高さの半分以上が入る深さであることをと特徴とする請求項1又は3に記載の陰極構体。
- 前記凸部は、前記加熱部における対向面の略中央を中心として周方向に間隔をおいて少なくとも3つ以上設けられていることを特徴とする請求項2又は3に記載の陰極構体。
- 前記凸部の高さは、前記交差部の高さと略同じであることを特徴とする請求項2又は8に記載の陰極構体。
- 前記支持線は金属製であり、当該支持線を介して電子放射部へ給電していることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の陰極構体。
- 請求項1〜10のいずれか1項に記載の陰極構体を備える電子銃。
- 請求項11に記載の電子銃を備える陰極線管。
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- 2003-01-17 JP JP2003009748A patent/JP2004221009A/ja active Pending
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