JP2004219354A - モータ検査装置およびモータ検査方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】モータ検査装置100は,インバータ2と,モータ制御ECU3と,トルクメータ4と,負荷モータ5と,負荷モータ制御部6と,交流電力計測器7と,直流電力計測器8と,DC電源9と,モータ出力性能検査制御装置10と,モータパワーケーブル接続用電磁開閉器11とを備えている。トルクメータ4は,検査対象モータ1の出力トルクを計測するものである。負荷モータ5は,検査対象モータ1への負荷トルクを発生させるためのものである。交流電力計測部7および直流電力計測部8は,検査対象モータ1に供給される電力を計測するためのものである。モータ出力性能検査制御装置10は,システム全体の動作制御,検査データの測定,性能判定等を実施するものである。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,モータの性能を検査するモータ検査装置およびモータ検査方法に関する。さらに詳細には,モータの性能を検査するとともに性能不良のモータについてはその要因を特定することができるモータ検査装置およびモータ検査方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,低公害等の観点からハイブリッド車(HV),電気自動車(EV)等が注目されている。これらの車両に搭載される車両駆動用モータにおいては,高精度のトルク性能が要求されるとともに,品質が安定したモータを大量生産する必要がある。
【0003】
モータの検査技術としては,例えば特許文献1に記載された技術がある。すなわち,駆動条件を変更可能として,駆動条件に沿って検査対象のモータを駆動させるとともに,駆動条件による負荷に沿って負荷モータを駆動させる。そして,各モータの性能(電気的入力値,回転速度,出力トルク等)を演算することにより,検査対象モータが搭載されている電気製品の性能を検査する性能模擬試験装置が提案されている。また,その他の検査技術としては,例えば特許文献2に記載された技術がある。すなわち,モータに関する複数のデータをモニタし,そのモニタ値の変化にしたがって,あらかじめ記憶された解析マトリクスを参照することにより動作状態を特定し,この動作状態に対応する原因・対策を表示するモータ駆動装置の検査方法が提案されている。
【0004】
【特許文献1】
特開平3−212194号公報
【特許文献2】
特開2002−223586号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら,前記した従来の検査装置には以下のような問題があった。すなわち,特許文献1に記載された性能模擬試験装置は,モータを搭載している電気製品の性能を検査するものであり,モータ自体の性能を検査するものではない。そのため,モータ自体の性能のばらつきを検査することができない。ここで,モータ自体の性能のばらつきとは,同一の仕様のモータを大量生産した場合に,個々のモータの性能に生じるばらつきのことである。また,特許文献2に記載された検査方法では,モータ駆動装置全体の動作解析を行っているが,異常原因がモータ自体であるか否かの特定ができない。そのため,モータ自体の性能がばらつくことについての検査にはなっていない。また,両検査装置(特許文献1,2)ともモータ自体の性能がばらつく要因(機械的要因,電気的要因等)についての特定ができない。
【0006】
本発明は,前記した従来の検査装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,モータ自体の性能を検査するとともに性能不良のモータについてはその要因を特定できるモータ検査装置および検査方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この課題の解決を目的としてなされたモータ検査装置は,モータの出力性能を検査するモータ検査装置であって,検査対象のモータを出力動作させた状態で,そのモータの出力特性を計測する出力特性計測手段と,出力特性計測手段にて計測された出力特性が,目標範囲内であるか否かを自動的に判定する自動判定手段と,自動判定手段にて目標範囲外と判定された場合に,そのモータの不具合現象を特定するための計測を行い,そのモータの不具合要因を特定する不具合要因特定手段とを有し,不具合要因特定手段は,機械的要因,電気的要因,センサ要因のうち,少なくとも2つの不具合要因について特定する機能を持つものである。
【0008】
また,本発明のモータ検査方法は,モータの出力性能を検査するモータ検査方法であって,検査対象のモータを動作させた状態で,そのモータの出力特性を計測し,計測された出力特性が,目標範囲内であるか否かを自動的に判定し,目標範囲内であればそのモータを良品と判定し,目標範囲内でなければそのモータを不良品と判定し,そのモータが不良品と判定された場合には,そのモータの引きずりトルクを計測し,その計測結果を基に機械的要因の不具合であるか否かを判定し,そのモータの逆起電圧を計測し,その計測結果を基に電気的要因の不具合であるか否かを判定し,所定の電流にて,そのモータの出力トルクを計測し,その計測結果を基にセンサ要因の不具合であるか否かを判定している。
【0009】
本発明のモータ検査装置および検査方法では,検査対象のモータを出力動作させた状態で,そのモータの出力特性を計測している。すなわち,大量生産されるモータの,個々の出力特性を計測している。ここでいう出力特性には,例えばモータの出力トルクがある。そして,計測された出力特性が,目標範囲内であるか否かを自動的に判定している。これにより,大量生産されるモータについて,個々のモータの性能不良を検査することができるのである。さらに,不良品とされた場合には,そのモータについて不具合現象を特定するための計測を行っている。ここでいう不具合現象を特定するための計測には,例えばそのモータの引きずりトルクや,逆起電圧の計測がある。そして,その計測結果を基に,不具合要因を機械的要因,電気的要因,センサ要因の中から少なくとも2つの不具合要因について特定している。これにより,不良品とされたモータについては,そのモータについての不具合要因の特定を行うことができる。
【0010】
また,このモータ検査装置の不具合要因特定手段は,検査対象のモータの引きずりトルクを計測し,その計測結果を基に不具合を検出する機械的要因不具合検出手段と,検査対象のモータの逆起電圧を計測し,その計測結果を基に不具合を検出する電気的要因不具合検出手段と,所定の電流値にて検査対象のモータの出力トルクを計測し,その計測結果を基に不具合を検出するセンサ要因不具合検出手段とを有することとするとよりよい。これにより,各不具合要因について詳細に検査を行うことができる。すなわち,不良品のモータについては,その要因を機械的要因,電気的要因,あるいはセンサ要因に分類できる。
【0011】
さらに,このモータ検査装置の電気的要因不具合特定手段は,計測された逆起電圧の波形形状を基に不具合を検出する波形異常検出手段を有し,波形異常検出手段は,逆起電圧の波形形状がモータ回転角度の一部で異常を示す場合に,電気的要因の不具合として検出することとするとよりよい。これにより,波形形状の一部が異常を示す場合に,異常発生時のモータの回転角度を検出することができる。そして,この回転角度によって,異常発生部位を特定することができるのである。これにより,電気的要因の不具合のうちの巻線・絶縁不良を検出することができる。勿論,逆起電圧の波形形状の全体が異常であることを検出することとしてもよい。これにより,着磁不良を検出することもできる。
【0012】
また,このモータ検査装置のセンサ要因不具合特定手段は,モータ正回転での力行動作および回生動作,モータ逆回転での力行動作および回生動作の出力トルクを計測し,計測された出力トルクを基に不具合を検出するトルク異常検出手段を有し,トルク異常検出手段は,計測された各出力トルクの差が目標範囲外である場合に,センサ要因の不具合として検出するとしてもよい。所定の電流値によりモータを動作させたときには,モータ正回転での力行/回生,モータ逆回転での力行/回生の4動作すべてが同一の出力トルクとなるはずである。この特性を利用することで,トルク電流および界磁電流ともに任意の値の電流を流す,すなわち積極的にトルクを出力させた場合であっても,センサ要因の不具合を検査できる。なお,モータは,電流進角の変化に対して出力トルクの変化が大きい領域内で動作させることが好ましい。なぜなら,トルク検出の分解能が低いトルク計測器でも問題なく検査を行うことができるからである。
【0013】
また,このモータ検査装置は,検査対象モータの逆起電圧特性を算出する逆起電圧特性算出手段と,そのモータを出力動作させた状態で,出力トルクを計測するトルク計測手段と,そのモータの逆起電圧を計測し,その計測結果と逆起電圧特性算出手段にて算出された逆起電圧特性とを基に,トルク出力時の検査対象のモータの磁石の温度を算出する温度算出手段と,温度算出手段にて算出された温度を基に,トルク計測手段にて計測された出力トルクを補正する出力トルク補正手段とを有することとするとよりよい。モータの温度の変化によって,モータの磁石の磁力は変化する。そのため,現状のトルクと現在の温度とを計測し,その現在の温度での実測トルクを基準温度での出力トルクに補正する。これにより,モータ本来の性能を検査することができる。
【0014】
また,このモータ検査装置は,検査対象モータの逆起電圧特性を算出する逆起電圧特性算出手段と,そのモータの逆起電圧を計測し,その計測結果と逆起電圧特性算出手段にて算出された逆起電圧特性とを基に,検査対象のモータの磁石の温度を算出する温度算出手段と,温度算出手段にて算出された温度が目標範囲内であるか否かを判定する温度判定手段と,温度判定手段にて目標範囲外と判定された場合に,そのモータの磁石の温度を目標範囲内とするように温度を調節する温度調節手段と,温度調節手段にてモータの磁石の温度が目標範囲内に調節された後に,そのモータを出力動作させた状態で,出力トルクを計測するトルク計測手段とを有することとしてもよい。すなわち,モータの磁石の温度を基準温度にする。これによっても,モータ本来の性能を検査することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。なお,本実施例は,永久磁石同期モータの検査装置に本発明を適用したものである。
【0016】
実施の形態に係るモータ検査装置100は,図1に示すようにインバータ2と,モータ制御ECU3と,トルクメータ4と,負荷モータ5と,負荷モータ制御部6と,交流電力計測器7と,直流電力計測器8と,DC電源9と,モータ出力性能検査制御装置10と,モータパワーケーブル接続用電磁開閉器(以下,「開閉器」とする)11とを備えている。トルクメータ4は,検査対象モータ1の出力トルクを計測するものである。負荷モータ5は,検査対象モータ1への負荷トルクを発生するものである。負荷モータ制御部6は,負荷モータ5を制御するものである。交流電力計測部7および直流電力計測部8は,検査対象モータ1に供給される電力を計測するものである。モータ出力性能検査制御装置10は,システム全体の動作制御,検査データの測定,性能判定等を実施するものである。なお,検査モータ1と,トルクメータ4と,負荷モータ5とは機械的に結合している。
【0017】
次に,モータ検査装置100による検査方法について説明する。本検査では,検査対象モータ1を所定の検査条件にて動作させ,モータ出力トルク,モータ効率等を計測する。そして,計測された値が目標範囲内の値であるか否かを判定する。なお,検査を開始する前に,あらかじめ検査条件となる検査ポイントを設定しておく。図2は,モータ出力性能の検査ポイント(P_n)の設定例を示すグラフである。図2中の縦軸は,モータの出力トルク(単位:Nm)を示している。また,図2中の横軸は,モータの回転数(単位:rpm)を示している。検査ポイントは,検査目標トルク(Tm*)と,検査目標回転数(Rm*)とを特定することにより設定される。また,図2中の曲線は,出力動作中のモータ最大出力を示している。すなわち,回転数と最大出力トルクとの関係を示している。また,その曲線の左側のハッチングを付した領域は,モータの全動作領域を示している。検査ポイントは,このモータの全動作領域の中から,目的に応じて任意に設定される。
【0018】
以下,モータ出力性能検査の手順について,図3,図4のフローチャートに基づいて説明する。なお,以下の制御は,主としてモータ出力性能検査制御装置10にて行われる。まず,あらかじめ設定された検査ポイントの中から,1つの検査ポイント(P_n)が選択される(S1)。検査ポイントの選択順序は,あらかじめ設定されており,その順に自動的に選択される。なお,順序の設定は任意である。あるいは,検査の都度,検査者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0019】
次に,選択された検査ポイント(P_n)におけるモータ駆動直流電圧を設定する(S2)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10からDC電源9に対して電圧設定信号が送られる。電圧を可変とする理由は,ハイブリッド車用モータにおいては,車両に搭載されたバッテリからモータへの供給電圧が走行条件により変動するからである。従って,モータ出力性能検査においても,車両条件により変動しうる範囲内で任意に設定した電圧により性能検査する必要がある。この点で,商用電源による駆動を前提としている産業用モータの場合とは異なる。
【0020】
次に,選択された検査ポイント(P_n)の検査目標回転数(Rm*)にて負荷モータ5を回転させる(S3)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10から負荷モータ制御部6に対して回転制御指示信号が送られる。なお,検査対象モータ1は機械的に負荷モータ5と結合しているため,負荷モータ5が回転すると,検査対象モータ1も同じ回転数で同じ方向に回転する。
【0021】
次に,負荷モータ5の回転数が,検査目標回転数(Rm*)に到達したか否かを判定する(S4)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10にて,負荷モータ制御部6からの回転数フィードバック信号によって判定する。なお,検査対象モータ1もしくはトルクメータ4からのフィードバック信号によって判定しても良い。負荷モータ5の回転数が検査目標回転数に到達した場合(S4:YES)には,S5の処理に移行する。一方,負荷モータ5の回転数が検査目標回転数に到達していない場合(S4:NO)には,S4の処理を繰り返す。
【0022】
次に,選択された検査ポイント(P_n)の検査目標トルク(Tm*)にて検査対象モータ1が動作するように,モータ制御ECU3に対して動作指令を送る(S5)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10からモータ制御ECU3に対してモータトルク指令信号が送られる。モータ制御ECU3では,モータトルク指令信号を基にモータ電流の制御が行われる。すなわち,インバータ2を介して検査対象モータ1にモータ電流を流してトルクを発生させる。
【0023】
次に,S5の処理の開始から,あらかじめ設定されている待ち時間が経過したか否かを判定する(S6)。S6の処理が必要な理由は,検査対象モータ1がトルク出力を開始した直後は出力トルクおよび回転数がともに過渡期であり,安定した計測が困難だからである。そのため,待ち時間が経過した場合(S6:YES)には,S7の処理に移行する。一方,待ち時間が経過していない場合(S6:NO)には,S6の処理を繰り返す。なお,検査対象モータ1がトルク出力を開始した後であっても,負荷モータ5は指示された回転数を維持しようとするように回転数の制御を継続している。そのため,負荷モータ5の回転数は,検査対象モータ1がトルク出力を開始した直後には変動するが,次第に検査目標回転数(Rm*)に収束することになる。これらを考慮し,負荷モータ5の回転数にてS7の処理に移行するか否かを判断することもできる。
【0024】
次に,検査対象モータ1をトルク出力させた状態にてモータ出力特性データを計測する(S7)。具体的には,次の内容のデータを計測する。
a.モータ出力トルクおよび回転数
トルクメータ4にて,モータ出力トルク(Tm)および回転数(Rm)を計測する。計測結果は,モータ出力性能検査制御装置10にて記録される。
b.直流電力データ
直流電力計測器8にて,DC電源9とインバータ2との間に流れる直流電流の電力を計測する。具体的には,電圧(Vdc)と,電流(Idc)と,電力(Pdc)とが計測される。そして,その計測結果がモータ出力性能検査制御装置10にて記録される。
c.交流電力データ
交流電力計測器7にて,インバータ2と検査対象モータ1との間に流れる交流電流の電力を計測する。具体的には,電圧(Vac)と,電流(Iac)と,電力(Pac)とが計測される。そして,その計測結果がモータ出力性能検査制御装置10にて記録される。
d.モータ制御状態データ
モータ制御ECU3にて,検査対象モータ1およびインバータ2の制御状態データを計測する。具体的には,モータトルク指令値(Tm*),モータ電流指令値(Im*),モータ電流フィードバック値(Ifb),モータ電圧指令値(Vm*),モータ回転位置検出値(θm)等が計測され,その計測結果がモータ出力性能検査制御装置10にて記録される。これらのデータは,主にモータ出力トルクおよび回転数の計測時に,検査対象モータ1が正常に制御されているか否かを判定するために使用される。
【0025】
次に,計測されたモータ出力トルク(Tm)が目標範囲内であるか否かを判定する(S8)。具体的には,S1の処理で選択した検査ポイント(P_n)に対し,計測されたモータ出力トルクが,トルク上限値(TmU)からトルク下限値(TmL)までの範囲内であるか否かが判定される(図5参照)。モータ出力トルクが目標範囲内でない場合(S8:NG)には,当該検査ポイント(P_n)でのモータ出力トルクが不良であったことを,検査NGフラグ(F_Tm_n)に記録する(S9)。モータ出力トルクが目標範囲内である場合(S8:OK)には,S9の処理をバイパスする。その後,図4のS10の処理に移行する。
【0026】
次に,S7の処理の計測結果を基に,モータ効率を算出する(S10)。ハイブリッド車等の車両用駆動モータでは,モータ出力トルク(Tm)が目標範囲内であっても,モータ効率が悪ければ,すなわちモータ損失が大きければ,車両燃費の低下等の悪影響を生じることがある。そのため,モータ効率についても検査する必要がある。具体的なモータ効率(η)の算出式は,次の式(1),(2)に示すように力行動作時と回生動作時とによって異なる。
(1)力行時:η=Pm/Pac
(2)回生時:η=Pac/Pm
Pacは交流電力(S7の処理にて計測),Pmはモータ機械出力(S7の処理にて計測されたモータ出力トルク(Tm)と回転数(Rm)とにより算出(例えば,Pm=Tm×Rm×2π/60によって求められる))である。
【0027】
次に,算出されたモータ効率(η)が目標範囲内であるか否かを判定する(S11)。具体的には,選択された検査ポイント(P_n)に対し,算出されたモータ効率が,モータ効率下限値(ηL)以下であるか否かが判定される。勿論,必要により,モータ効率上限値(ηU)を設けてモータ効率上限値(ηU)からモータ効率下限値(ηL)までの範囲内であるか否かにより判定してもよい。モータ効率が目標範囲外である場合(S11:NG)には,当該検査ポイント(P_n)でのモータ効率が不良であったことを検査NGフラグ(F_η_n)に記録する(S12)。モータ効率が目標範囲内である場合(S11:OK)には,S12の処理をバイパスする。その後,S13の処理に移行する。
【0028】
次に,全ての検査ポイントについて検査が行われたか否かを判定する(S13)。未だ検査が行われていない検査ポイントが存在する場合(S13:NO)には,その検査ポイントを選択してS2以降の処理を実施する。全ての検査ポイントについて検査が終了している場合(S13:YES)には,S14の処理に移行する。
【0029】
次に,検査NGフラグが記録されているか否かを判定する(S14)。具体的には,検査NGフラグ(S9:F_Tm_n,S12:F_η_n)が記録されているか否かを確認する。いずれの検査NGフラグも記録されていない場合(S14:NO)には,検査対象モータ1を良品と判定(S15)してモータ出力性能検査を終了する。一方,1つでも検査NGフラグが記録されている場合(S14:YES)には,検査対象モータ1を不良品と判定(S16)してモータ出力性能検査を終了する。これにより,不良品のモータが検出される。
【0030】
次に,モータの不良要因特定検査について説明する。本検査は,モータ出力性能検査にて不良品と判定されたモータに対して行われる。そして,モータの不良要因を,図6に示すようにA.機械引きずり負荷異常(機械的要因)と,B.逆起電圧異常(電気的要因)と,C.モータ位置検出異常(センサ要因)とに分類して検査する。なお,検査を開始する前に,あらかじめ不良要因特定検査用の検査ポイント(fP_n)を設定しておく。図7は,不良検査ポイント(fP_n)の設定例を示すグラフである。図7中の縦軸は,モータの引きずりトルク(単位:Nm)を示している。図7中の横軸は,モータの回転数(単位:rpm)を示している。不良検査ポイントは,モータの動作範囲内の回転数の中から,目的に応じて任意に設定される。すなわち,不良検査ポイントは,検査目標回転数(Rm*)を特定することにより設定される。
【0031】
不良要因特定検査では,開閉器11を開放した状態で,各不良検査ポイントについて,機械引きずり負荷異常(機械的要因)と逆起電圧異常(電気的要因)とを検査する。その後,開閉器11を接続した状態で,任意の不良検査ポイントについて,モータ位置検出異常(センサ要因)を検査する。なお,機械引きずり負荷異常および逆起電圧異常の検査は,全不良検査ポイントについて実施される。一方,モータ位置検出異常の検査は,任意の1つの不良検査ポイントについて実施されれば足りる。以下,検査手順について,図8,図9,図10のフローチャートに基づいて説明する。
【0032】
まず,開閉器11を開放状態にする(S21)。検査対象モータ1とインバータ2とが電気的に接続された状態では,インバータ回路の影響により引きずりトルクおよび逆起電圧が精度よく計測できないためである。
【0033】
次に,あらかじめ設定された不良検査ポイントの中から,1つの不良検査ポイント(fP_n)が選択される(S22,図7参照)。具体的には,検査目標回転数(Rm*)が選択される。不良検査ポイントの選択順序は,あらかじめ設定されており,その順に自動的に選択される。なお,順序の設定は任意である。あるいは,検査の都度,検査者が任意に設定できるようにしてもよい。
【0034】
次に,選択された不良検査ポイント(fP_n)の検査目標回転数(Rm*)で負荷モータ5を回転させる(S23)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10から負荷モータ制御部6に対して回転制御指示信号が送られる。負荷モータ5の回転数が検査目標回転数に到達した段階で,S24の処理に移行する。なお,検査対象モータ1も負荷モータ5と同じ回転数で同じ方向に回転する。
【0035】
次に,検査対象モータ1が目標回転数に到達した時点での引きずりトルク(Tloss_n)を計測する(S24)。具体的には,トルクメータ4の計測値がモータ出力性能検査制御装置10にて記録される。
【0036】
次に,計測された引きずりトルク(Tloss_n)が目標範囲内であるか否かを判定する(S25)。具体的には,S22の処理で選択した不良検査ポイント(fP_n)に対し,計測された引きずりトルクが判定閾値(Tloss_n*)以下であるが否かが判定される(図7参照)。引きずりトルクが判定閾値以下でない場合(S25:NG)には,当該検査ポイント(fP_n)での引きずりトルクが不良であったことを機械NGフラグ(F_Tloss_n)に記録する(S26)。引きずりトルクが判定閾値以下である場合(S25:OK)には,S26の処理をバイパスする。その後,S27の処理に移行する。
【0037】
次に,検査対象モータ1の逆起電圧(Vk_n)を計測する(S27)。永久磁石同期モータにおいては,モータを回転させることで電圧が生じる。この電圧,すなわち逆起電圧を計測することで,モータ磁石の状態や巻線に異常があるか否かを検査するのである。具体的には,交流電力計測器7にて計測される交流電圧実効値を,モータ出力性能検査制御装置10にて記録する。
【0038】
次に,計測された逆起電圧(Vk_n)が目標範囲内であるか否かを判定する(S28)。具体的には,S22の処理で選択した不良検査ポイント(fP_n)に対し,計測された逆起電圧が下限閾値(VkL_n)から上限閾値(VkH_n)までの範囲内であるが否かが判定される(図11参照)。逆起電圧が目標範囲内でない場合(S28:NG)には,当該不良検査ポイント(fP_n)での逆起電圧が不良であったことを電気NGフラグ(F_Vk_n)に記録する(S29)。逆起電圧が目標範囲内である場合(S28:OK)には,S29の処理をバイパスする。その後,S30の処理に移行する。
【0039】
次に,全ての不良検査ポイントについて検査,すなわち機械引きずり負荷異常および逆起電圧異常の判定が行われたか否かを判定する(S30)。これらの検査が未だ行われていない不良検査ポイントが存在する場合(S30:NO)には,その不良検査ポイントを選択してS23以降の処理を実施する。全ての不良検査ポイントについてこれらの検査が行われている場合(S30:YES)には,図9のS31の処理に移行する。
【0040】
次に,開閉器11を接続状態にする(S31)。モータ位置検出異常を検査するためには,実際に検査対象モータ1を駆動させて出力トルクを計測する必要があるためである。
【0041】
次に,あらかじめ設定された不良検査ポイントの中から,1つの不良検査ポイント(fP_n)が任意に選択される(S32,図7参照)。具体的には,検査目標回転数(Rm*)が選択される。
【0042】
次に,検査ポイントの検査目標回転数(Rm*)にて負荷モータ5を回転させる(S33)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10から負荷モータ制御部6に対して回転制御指示信号が送られる。負荷モータ5の回転数が検査目標回転数(Rm*)に到達した段階で,S34の処理に移行する。
【0043】
次に,検査対象モータ1に対して任意の電流を流し,検査対象モータ1を動作させる(S34)。永久磁石同期モータに対して電流を流した時に発生するモータ出力トルク(T)は,次の式(3)で表される。
(3)T=P(φ×Iq+(Ld−Lq)×Id×Iq)
Pはモータ極対数,φは永久磁石磁束量,Lqはq軸インダクタンス,Ldはd軸インダクタンスである。これらの値は,検査対象モータ1に固有の既知の値である。また,Iqはq軸電流指令,Idはd軸電流指令である。これらの値は,制御可能なパラメータであり,永久磁石同期モータをd−q軸座標上で電流制御する際の電流指令値である。d−q軸座標でのモータ電流制御については公知技術であり,詳細な説明は省略する。なお,Iqはトルク電流とも呼ばれ,モータトルクの発生に寄与する。Idは界磁電流とも呼ばれ,モータ磁力に影響を及ぼす。
【0044】
具体的には,図12に示すようにIq(トルク電流)を0Aとし,Id(界磁電流)に任意の電流(*A)を流すことでモータを動作させる。この状態では,Iqの値が0であるため,式(3)によりトルク(T)が発生しないはずである(モータトルク0)。しかしながら,モータ検出位置に異常が生じていると,図13に示すように位置ずれ量に応じて,電流の一部がIq電流として流れることとなる。このため,トルクが発生してしまう。従って,モータ出力トルク(T)を計測することにより,モータ位置検出異常が検査できるのである。
【0045】
次に,S34の処理の開始から,あらかじめ設定されている待ち時間が経過したか否かを判定する(S35)。S35の処理が必要な理由は,検査対象モータ1がトルク出力を開始した直後は出力トルクおよび回転数がともに過渡期であり,安定した計測が困難だからである。そのため,待ち時間が経過した場合(S35:YES)には,S36の処理に移行する。一方,待ち時間が経過していない場合(S35:NO)には,S35の処理を繰り返す。
【0046】
次に,検査対象モータ1をトルク出力させた状態にてモータ出力特性データを計測する(S36)。具体的には,S7の処理と同様に,モータ出力トルク(Tmθ),回転数,直流電力データ,交流電力データ,モータ制御状態データを計測する。
【0047】
次に,計測されたモータ出力トルク(Tmθ)が目標範囲内であるか否かを判定する(S37)。具体的には,S32の処理で選択した不良検査ポイント(fP_n)に対し,計測されたモータ出力トルクが目標範囲内であるか否かが判定される。モータ出力トルクが目標範囲内でない場合(S37:NG)には,当該不良検査ポイント(fP_n)でのモータ位置検出が不良であったことをセンサNGフラグ(F_Tmθ)に記録する(S38)。モータ出力トルクが目標範囲内である場合(S37:OK)には,S38の処理をバイパスする。その後,図10のS39の処理に移行する。
【0048】
以上で不良要因の個別の検査を終了し,以下に検査結果から不良要因の特定を行う。まず,機械NGフラグ(F_Tloss_n)が記録されているか否かを判定する(S39)。機械NGフラグが記録されている場合(S39:YES)には,機械引きずり負荷異常(機械的要因)と断定する(S40)。機械引きずり負荷異常と断定されることで,組付け工程での不良発生の有無や,組付け部品の不良等を調査して必要な対策を実施することができる。機械NGフラグが記録されていない場合(S39:NO)には,S40の処理をバイパスする。その後,S41の処理に移行する。
【0049】
次に,電気NGフラグ(F_Vk_n)が記録されているか否かを判定する(S41)。電気NGフラグが記録されている場合(S41:YES)には,逆起電圧異常(電気的要因)と断定する(S42)。逆起電圧異常と断定されることで,着磁工程での不良発生の有無や,巻線工程での巻線不良,絶縁不良等を調査して必要な対策を実施することができる。電気NGフラグが記録されていない場合(S41:NO)には,S42の処理をバイパスする。その後,S43の処理に移行する。
【0050】
次に,センサNGフラグ(F_Tmθ)が記録されているか否かを判定する(S43)。センサNGフラグが記録されている場合(S43:YES)には,モータ位置検出異常(センサ要因)と断定する(S44)。モータ位置検出異常と断定されることで,位置センサ取付け工程での不良発生の有無や,位置センサ部品の不良等を調査して必要な対策を実施することができる。センサNGフラグが記録されていない場合(S43:NO)には,S44の処理をバイパスする。その後,不良要因特定検査を終了する。
【0051】
なお,不良要因を特定する方法は,本実施例に限定するものではない。以下,その他の不良要因の特定方法について説明する。
【0052】
[変形例1]
本変形例は,逆起電圧の計測,逆起電圧異常の判定を,前述した実施例とは別の手段で実現するものである。本変形例では,逆起電圧の波形形状から異常判定を実施する。前述した実施例との差異は,前述した実施例では,交流電力計測器7にて計測された交流電圧実効値を基に異常であるか否かの判定をしているのに対して,本変形例では,逆起電圧の波形形状が異常であるか否かを判定することにある。
【0053】
詳細には,例えば検査対象モータ1が3相交流モータであれば,図14に示すようにモータ回転角度に対して120度の間隔で逆起電圧(U−V,V−W,W−U間波形)が発生する。これらの波形は,基本的には正弦波形状である。しかしながら,ステータ(巻線)構造もしくはロータ(磁石)構造により完全な正弦波ではなく,多少の歪みを持つ波形であることもある。逆起電圧値が不良となる波形には,主として2つのパターンがある。1つめとしては,図15に示すように波形が全体的に目標範囲外となるパターンがある。このような波形の場合には,着磁不足,着磁過多等の着磁不良による逆起電圧異常であると判定できる。また,2つめとしては,図16に示すように波形が部分的に目標範囲外となるパターンがある。このような波形の場合には,巻線・絶縁不良等による逆起電圧異常であると判定できる。また,このパターンでは,異常検出時のモータ回転角度により巻線・絶縁不良等の異常発生部位も特定できる。本変形例では,この波形形状を検査することでモータの不良要因を特定する。
【0054】
以下,本変形例の不良要因特定検査の手順について,図17のフローチャートに基づいて説明する。なお,前述した実施の形態と同様の処理を行う部分(S21〜S26,S30〜S44)については,説明を省略する。すなわち,逆起電圧の計測,逆起電圧異常の判定を行う部分についてのみ説明する。
【0055】
まず,S21〜S26の処理の後に,計測対象の相を選択する(S27−1)。具体的には,U−V波形,V−W波形,W−U波形のうちいずれか1つの相を選択する。なお,選択される相の順序は,あらかじめ設定されており,その順に自動的に選択される。
【0056】
次に,モータ回転状態にて,逆起電圧値を計測する(S27−2)。具体的には,逆起電圧の瞬時値(Vkθ)およびモータ回転角度(θ)が計測され,その計測結果がモータ出力性能検査制御装置10にて記録される。なお,逆起電圧値の検出タイミングについては,モータ出力性能検査制御装置10の処理速度および検査対象モータ1の回転速度により決定される。本変形例では,目標検査精度を満たすことができる検査タイミングおよびモータ回転数を設定できることを前提としている。
【0057】
次に,計測された逆起電圧(Vkθ)が目標範囲内であるか否かを判定する(S28−1)。具体的には,S27−2の処理で計測したモータ回転角度(θ)に対し,計測された逆起電圧値が下限閾値(Vk_WLθ)から上限閾値(Vk_WHθ)までの範囲内であるが否かが判定される。逆起電圧値が目標範囲内でない(不良波形)場合(S28−1:NG)には,逆起電圧が不良であったことを電気NGフラグ(F_Vk_n)に記録する(S29−1)。またその他に,上限閾値(Vk_WHθ)/下限閾値(Vk_WLθ)のどちらの異常であるのかの区別,異常発生時,異常発生時のモータ回転角度(θ),異常発生時の逆起電圧値,計測波形等も記録する。逆起電圧値が目標範囲内である場合(S28−1:OK)には,S29−1の処理をバイパスする。その後,S29−2の処理に移行する。
【0058】
次に,モータ1回転(360度)分の計測が完了したか否かを判定する(S29−2)。モータ1回転分の計測が完了していない場合(S29−2:NO)には,S27−2の処理に移行して逆起電圧の計測等を繰り返す。モータ1回転分の計測が完了している場合(S29−2:YES)には,S29−3の処理に移行する。
【0059】
次に,全ての相(U−V波形,V−W波形,W−U波形)についての計測が終了したか否かを判定する(S29−3)。計測していない相がある場合(S29−3:NO)には,S27−1の処理に移行して当該相についての計測を行う。全相の計測が終了している場合(S29−3:YES)には,S29−4の処理に移行する。
【0060】
次に,異常内容の解析を実施する(S29−4)。具体的には,S29−1の処理にて記録したデータを基に,モータ1回転(360度)の中で,どの回転位置で逆起電圧異常が発生しているのかを解析する。そして,全体的に逆起電圧異常が発生(図15参照)しているのか,部分的に逆起電圧異常が発生(図16参照)しているのかを判定し,不良発生要因(製造工程)を特定する。S29−4の処理の終了後は,S30以降の処理に移行する。なお,電気NGフラグ(F_Vk_n)に何も記録されていなければ,異常内容の解析は行われない。これにより,逆起電圧異常を検出することが可能(特に,部分的な異常を検出することが可能)であるとともに,異常発生部位(モータ回転角度)を検出することができる。また,不良要因(製造工程)のより細かな特定が可能である。
【0061】
[変形例2]
本変形例は,モータ位置検出異常の検査を,前述した実施例とは別の手段で実現する。前述した実施例では,Iq(トルク電流)を0Aとしてモータを動作させ,モータ出力トルクをトルクメータ4で検出し,その検出結果が目標範囲内であるか否かの判定をしている。しかしながら,検査対象モータによっては,低速域で大トルクを発生する出力特性を持つモータ(図2参照)がある。その場合には,トルクメータ4も大トルクを測定できるものでなければならず,背反事項としてトルク検出の分解能が低下することになる。これを回避する方法として,大トルク計測時と小トルク計測時とで別々のトルクメータに付け替える方法が考えられるが,所定の付替え時間が必要となり大量生産されるモータの検査装置としては不適切である。そこで,本形態では,モータの持つ出力性能に関係なく,積極的にトルク出力させながら,あくまで1つのトルクメータ(大トルク計測可能)で精度良くモータ位置検出異常を検査する。
【0062】
図18は,検査対象である永久磁石同期モータの電流進角と出力トルクとの関係を示す図である。前述した実施例では,電流進角90度の位置(Iq=0A,発生トルク=0Nm)でモータ位置検出異常を検査している。本変形例では,電流進角の変化に対して出力トルクの変化が大きい領域(以下,「トルク検査領域」とする。図18では電流進角50〜90度)に着目して,このトルク検査領域にてモータ位置検出異常を検査する。このトルク検査領域は,位置ずれの変化に対して出力トルクの変化量が大きい。そのため,トルク検出の分解能が低いトルクメータであっても問題なく検査することができる。そして,このトルク検査領域にて,モータ正回転での力行/回生,モータ逆回転での力行/回生の4つの動作を行う。その際,任意の電流指令(Iq=*A,Id=*A)を送り,それぞれの動作での出力トルクを計測する。正常な場合には,4つの出力トルクは同一となる。しかしながら,位置検出異常がある場合には,モータ電流がずれて流れるため,4つの出力トルクには差異が生じる。すなわち,本変形例では,出力トルクの差異が目標範囲内であるか否かを判定することでモータ位置検出異常を検査する。
【0063】
以下,本変形例の不良要因特定検査の手順について,図19のフローチャートに基づいて説明する。なお,前述した実施の形態と同様の処理を行う部分(S21〜S33,S39〜S44)については,説明を省略する。すなわち,モータ位置検出異常の判定を行う部分についてのみ説明する。
【0064】
まず,S21〜S33の処理の後に,検査動作条件を選択する(S34−1)。本変形例では,▲1▼モータ正回転・力行動作,▲2▼モータ正回転・回生動作,▲3▼モータ逆回転・力行動作,▲4▼モータ逆回転・回生動作の順に自動選択する。
【0065】
次に,あらかじめ任意に設定された電流指令Id,Iqにて検査対象モータ1を動作させる(S34−2)。電流指令Id,Iqは,トルク検査領域(図18では電流進角50〜90度)での動作となるように,検査対象モータ1に合わせて設定しておく。なお,力行動作と回生動作とは,Iq指令の符号を反転させることで実現される。
【0066】
次に,S34−2の処理の開始から,あらかじめ設定されている待ち時間が経過したか否かを判定する(S35−1)。S35−1の処理が必要な理由は,検査対象モータ1がトルク出力を開始した直後は出力トルクおよび回転数がともに過渡期であり,安定した計測が困難だからである。そのため,待ち時間が経過した場合(S35−1:YES)には,S36−1の処理に移行する。一方,待ち時間が経過していない場合(S35−1:NO)には,S35−1の処理を繰り返す。
【0067】
次に,検査対象モータ1をトルク出力させた状態にてモータ出力特性データを計測する(S36−1)。具体的には,S7の処理と同様に,モータ出力トルク(Tn),回転数,直流電力データ,交流電力データ,モータ制御状態データを計測する。
【0068】
次に,全ての動作条件(正回転の力行/回生,逆回転の力行/回生)についての計測が終了したか否かを判定する(S37−1)。計測していない動作条件がある場合(S37−1:NO)には,S34−1の処理に移行して当該動作条件についての計測を行う。全動作条件の計測が終了している場合(S37−1:YES)には,S37−2の処理に移行する。
【0069】
次に,計測した各モータ出力トルクについて,その差異が目標範囲内であるか否かを判定する(S37−2)。具体的には,計測されたモータ出力トルク中の最大値と最小値との差が目標範囲内であるか否かを判別する。モータ出力トルクの差が目標範囲内でない場合(S37−2:NO)には,モータ位置検出がNGであったことをセンサNGフラグ(F_Tmθ)に記録する(S38−1)。モータ出力トルクが目標範囲内である場合(S37−2:YES)には,S38−1の処理をバイパスする。その後,S39以降の処理に移行する。これにより,大トルク対応のトルクメータを使用していても,モータ位置検出異常を検出することが可能である。また,1つのトルクメータでモータ位置検出異常を検出することができる。
【0070】
[変形例3]
本変形例は,検査時の温度変化の影響を受けない高精度なモータ出力性能検査を実現するためのものである。前述した実施例のモータ出力性能検査では,実際に計測された出力トルクが目標性能範囲内であるか否かを検査している。しかし,計測時のモータ温度(夏・冬での温度差,モータ自己発熱等)により,モータ磁石の磁力が変化してしまうことがある。そのため,計測結果がモータ本来の性能ではないことがある。従って,モータ自体は正しい特性で製造されていても,計測時のモータ温度差により誤判定されうるのである。これを回避する方法として,サーミスタ等の温度センサを設置して磁石の温度を測定/制御することが考えられる。しかし,モータ磁石がロータに存在するモータの場合は,温度センサを設置するために特殊な装置(スリップリング,非接触テレメータ等)を装着する必要がある。このような形態は,製品化が困難である。本変形例は,特殊な装置を装着する必要がなく,モータ自体の逆起電圧を利用することでモータの温度を算出し,検査時の温度変化の影響を考慮したモータ出力性能検査を実施する。
【0071】
モータの出力トルク(T)は,次の式(4)にて表すことができる。
(4)T=Ke×I
Keはモータ逆起電圧定数,Iは電流である。永久磁石同期モータ(リラクタンストルク利用モータ)においては,式(3)に示したようにIがId,Iq,KeがLd,Lqを含めた式に細分化されるが,基本式は(4)に集約される。ここで,Keはモータ磁力により決定される。そのため,Keはモータ磁力を表した数値として代用できる。そして,モータ磁力は,温度特性(磁力温度係数:Kmag)を有している。例えば,ネオジム系磁石は,0.12%/℃の磁力変化(100℃の温度変化で,12%の磁力変化)がある。従って,モータの出力トルク(T)も,温度によって変化する。このような特性から,モータ出力トルクを正確に検査するためには,温度特性を考慮した検査を実施することが必要である。
【0072】
以下,本変形例のモータ出力性能検査の手順について,図20,図21のフローチャートに基づいて説明する。ここで,ロータ(磁石)温度と逆起電圧との関係を,図22のグラフに示す。モータには,設計値としての逆起電圧(Ke_ref)がある(図22の▲1▼−a)。しかしながら,逆起電圧は温度(磁石温度係数)により変化する。この温度変化による逆起電圧の変化は,逆起電圧特性ラインとして表すことができる(図22の設計基準特性ライン▲1▼−b)。しかしながら,実際に大量生産されるモータでは性能のばらつきが存在するため,個々のモータの逆起電圧にもばらつきが生じる。そのため,モータ出力性能検査の前に,検査対象モータ1の逆起電圧特性ラインを把握するためにキャリブレーションを実施する。そこでまず,任意の回転数にて負荷モータ5を回転させる(S51:キャリブレーション開始)。これにより,検査対象モータ1も任意の回転数にて回転(空回り)する。
【0073】
次に,検査対象モータ1を回転させた状態にて,逆起電圧(Ke_cal)およびロータ温度(Temp_cal)を計測する(S52:図22の▲2▼−a)。モータへの通電前であれば,ステータの温度と,ロータの温度とがほぼ同一である。そのため,ステータの温度をロータの温度とみなすことができる。具体的には,ステータの温度を,サーミスタ等の温度センサにより測定する。そして,その測定結果を,逆起電圧の計測結果とともにモータ出力性能検査制御装置10にて記録する。測定終了後は,負荷モータ5の回転を停止させる(S53:キャリブレーション終了)。なお,モータへの通電後は,モータ内の場所によって温度が異なる。このため,ステータの温度をロータの温度とみなすことができない。従って,キャリブレーションはモータ出力性能検査前に実施しなくてはならない。
【0074】
次に,S52の処理で計測した逆起電圧(Ke_cal)およびロータ温度(Temp_cal)を基に,逆起電圧特性(図22の▲2▼−b)を算出する(S54)。具体的には,次の式(5)により求める。
(5)Ke=Kmag×Temp+b
Keは逆起電圧,Kmagは磁石温度係数,Tempはロータ温度である。式(5)中の切片bは,次の式(6)により求められる値である。
(6)b=Ke_cal+Kmag×Temp_cal
【0075】
次に,あらかじめ設定された検査ポイントの中から,1つの検査ポイント(P_n)を選択する(S55)。ここで選択する検査ポイントは,図2で説明した検査ポイントである。具体的には,検査目標回転数(Rm*)と,目標トルク(Tm*)とを選択する。検査ポイントの選択順は,あらかじめ設定されており,その順に自動的に選択される。
【0076】
次に,選択された検査ポイント(P_n)に対するモータ駆動直流電圧を設定する(S56)。そして,検査ポイント(P_n)の検査目標回転数(Rm*)にて負荷モータ5を回転させる(S57)。負荷モータの回転数が検査目標回転数(Rm*)に到達した段階でS58の処理に移行する。
【0077】
次に,検査対象モータ1の逆起電圧(Ke_mes1)を計測する(S58)。計測された逆起電圧は,モータ温度による出力トルクの変動を補正するための基礎データとして利用される。具体的には,交流電力計測器7の交流電圧を計測する。なお,計測時には,インバータ2のスイッチング素子を開放状態とし,DC電源9の影響を受けない状態にしておく。また,開閉器11を開放状態とすると,より正確に逆起電圧を計測することができる。
【0078】
次に,検査対象モータ1に電流を流す準備を行う(S59)。具体的には,インバータ2の開放状態を解除し,スイッチング素子がスイッチング可能な状態とする。さらに,開閉器11が開放状態であれば,接続状態とする。準備が完了した段階で図21のS60の処理に移行する。
【0079】
次に,検査ポイント(P_n)の検査トルク(Tm*)にて検査対象モータ1を動作させる(S60)。具体的には,モータ出力性能検査制御装置10からモータ制御ECU3に対してモータトルク指令信号が送られる。モータ制御ECU3では,モータトルク指令信号を基にモータ電流制御が行われる。そして,インバータ2を介して検査対象モータ1にモータ電流を流し,トルクを発生させる。
【0080】
次に,S60の処理の開始から,あらかじめ設定されている待ち時間が経過したか否かを判定する(S61)。S61の処理が必要な理由は,検査対象モータ1がトルク出力を開始した直後は出力トルクおよび回転数がともに過渡期であり,安定した計測が困難だからである。そのため,待ち時間が経過した場合(S61:YES)には,S62の処理に移行する。一方,待ち時間が経過していない場合(S61:NO)には,S61の処理を繰り返す。
【0081】
次に,検査対象モータ1に電流を流し,トルク出力させた状態にてモータ出力特性データを計測する(S62)。具体的には,トルクメータ4にてモータ出力トルク(Trq_mes1)と回転数とを検出する。検出結果は,モータ出力性能検査制御装置10にて記録される。計測完了後は,トルク指令を解除して検査対象モータ1の通電状態を解除する。
【0082】
次に,逆起電圧特性(式(5))と,S58の処理にて計測された逆起電圧(Ke_mes1)とを基に,モータ出力特性データの計測時のロータ(磁石)温度(Temp_mes1)を算出する(S63:図22の▲3▼)。具体的には,次の式(7)により求められる。
(7)Temp_mes1=Ke_mes1/Kmag−b
Kmagは磁石温度係数である。切片bは前述の式(6)のbと同様である。
【0083】
次に,S62の処理で計測されたモータ出力トルク(Trq_mes1)から,基準温度(Temp_std)での出力トルク(Trq_std)を算出する(S64:図22の▲5▼)。具体的には,次の式(8)により求められる。
(8)Trq_std=Trq_mes1×(1−Kmag×(Temp_mes1−Temp_std))
具体的には,S63の処理にて算出された温度(Temp_mes1)を基に,基準温度(Temp_std)との差異を算出する。そして,磁石温度係数(Kmag)にて実測トルク(Trq_mes1)を補正する。これにより,基準温度でのモータ出力トルク(Trq_std)が算出される。
【0084】
次に,算出された基準温度でのモータ出力トルク(Trq_std)が目標範囲内であるか否かを判定する(S65)。具体的には,S55の処理で選択した検査ポイントに対し,計測されたモータ出力トルクがトルク上限値(TmU)からトルク下限値(TmL)までの範囲内であるか否かが判定される。モータ出力トルクが目標範囲内でない場合(S65:NG)には,当該検査ポイントでのモータ出力トルクがNGであったことを検査NGフラグ(F_Tm_n)に記録する(S66)。モータ出力トルクが目標範囲内である場合(S65:OK)には,S66の処理をバイパスする。その後,S67の処理に移行する。
【0085】
次に,全ての検査ポイントについて検査が行われたか否かを判定する(S67)。検査が行われていない検査ポイントが存在する場合(S67:NO)には,その検査ポイントを選択してS56以降の処理を実施する。全ての検査ポイントについて検査が終了している場合(S67:YES)には,モータ出力性能検査を終了する。なお,全検査ポイントについて検査を継続している間にも,モータ損失によりモータ温度が上昇する。しかしながら本検査手順では,検査ポイントごとに基準温度への補正を行うため,正確な検査を行うことができる。これにより,季節によるモータ温度差,あるいは検査タイミングによるモータ温度差を考慮しつつ,高精度なモータ出力トルクを計測することが可能である。
【0086】
[変形例4]
本変形例も,変形例3と同じく,検査時の温度変化の影響を受けない高精度なモータ出力性能検査を実現する。本変形例では,ロータ(磁石)の温度を算出し,ロータ(磁石)が基準温度になるように逆起電圧をモニタしつつ加熱・冷却し,ロータ(磁石)の温度を基準温度に調節することで出力トルクを検査する。変形例3との差異は,変形例3では,現状の温度での計測トルクを基準温度相当のトルクに補正することで出力トルクを検査するのに対して,本変形例では,ロータの温度を基準温度相当に調節することで出力トルクを検査することにある。
【0087】
以下,本変形例のモータ出力性能検査の手順について,図23,図24のフローチャートに基づいて説明する。なお,前述した変形例3と同様の処理を行う部分(S51〜S54,S56〜S57,S60〜S62)については,説明を省略する。
【0088】
まず,S51〜S54の処理の後に,基準温度(Temp_std)での逆起電圧(Ke_std)を算出する(S54−1:図25▲5▼)。具体的には,逆起電圧特性(式(5))を基に,次の式(9)にて求められる。
(9)Ke_std=Kmag×Temp_std+b
【0089】
次に,あらかじめ設定された検査ポイントの中から,1つの検査ポイント(P_n)を選択する(S55−1)。検査ポイントは,図2で説明した検査ポイントである。具体的には,検査目標回転数(Rm*)と,目標トルク(Tm*)を選択する。そして,選択された検査ポイント(P_n)に対するモータ駆動直流電圧を設定し(S56),検査ポイント(P_n)の検査目標回転数(Rm*)にて負荷モータ5を回転させる(S57)。負荷モータの回転数が検査目標回転数(Rm*)に到達した段階でS58−1の処理に移行する。
【0090】
次に,検査対象モータ1の逆起電圧(Ke_mes)を計測する(S58−1)。そして,計測された逆起電圧(Ke_mes)と,S54−1の処理にて算出された基準温度での逆起電圧(Ke_std)とを比較し,現時点のロータの温度が基準温度と等しい(または,目標範囲内)か否かを判定する(S58−2)。そして,等しい場合(S58−2:OK)には,図24のS59−1の処理に移行する。一方,等しくない場合(S58−2:NG)には,S58−3の処理に移行する。
【0091】
S58−3の処理では,現時点のロータの温度が基準温度より高いか否かを判定する。基準温度より高い場合(S58−3:YES,図25▲4▼)には,逆起電圧をモニタしつつ,基準温度と等しくなる(または,目標範囲内となる)までモータを冷却する(S58−4)。モータの冷却方法としては,例えば外部から冷却風を送る方法がある。また,水冷式モータであれば,冷却水の温度をコントロールすることでも冷却可能である。一方,基準温度より低い場合(S58−3:NO,図25▲3▼)には,逆起電圧をモニタしつつ,基準温度と等しくなる(または,目標範囲内となる)までモータを加熱する(S58−5)。モータの加熱方法としては,例えばモータの自己発熱やヒータ等による加熱がある。また,水冷式モータであれば,冷却水の温度をコントロールすることでも加熱可能である。そして,ロータの温度が目標範囲内に到達した場合には,S59−1の処理に移行する。
【0092】
S59−1の処理では,検査対象モータ1に電流を流す準備を行う。そして,検査対象モータ1に電流を流し,トルク出力させた状態にてモータ出力特性データを計測する(S60〜S62)。次に,計測されたモータ出力トルク(Tm)が目標範囲内であるか否かを判定する(S65−1)。具体的には,S55−1の処理で選択した検査ポイントに対し,計測されたモータ出力トルクがトルク上限値(TmU)からトルク下限値(TmL)までの範囲内であるか否かが判定される。モータ出力トルクが目標範囲内でない場合(S65−1:NG)には,当該検査ポイントでのモータ出力トルクがNGであったことを検査NGフラグ(F_Tm_n)に記録する(S66−1)。モータ出力トルクが目標範囲内である場合(S65−1:OK)には,S66−1の処理をバイパスする。その後,S67−1の処理に移行する。
【0093】
次に,全ての検査ポイントについて検査が行われたか否かを判定する(S67−1)。検査が行われていない検査ポイントが存在する場合(S67−1:NO)には,その検査ポイントを選択してS56以降の処理を実施する。全ての検査ポイントについて検査が終了している場合(S67−1:YES)には,モータ出力性能検査を終了する。これにより,本形態でも,季節によるモータ温度差,あるいは検査タイミングによるモータ温度差を考慮しつつ,高精度なモータ出力トルクを計測することが可能である。すなわち,不良モータを正確に検出することができる。
【0094】
以上詳細に説明したように本実施の形態のモータ検査装置では,検査対象モータ1をトルク出力させた状態にて,モータ出力特性データを計測することとしている。そして,その計測結果を基に,その検査対象モータ1が目標性能を満たしているか否かを判定することとしている。すなわち,検査対象モータ1自体の性能がばらつくことについての検査が実施されている。また,不良と判定されたモータについては,その不良要因について,機械的要因と,電気的要因と,センサ要因とに分け,それぞれの要因について検査することとしている。具体的には,機械的要因を検出するために,検査対象モータ1の引きずりトルクを計測することとしている。また,電気的要因を検出するために,逆起電圧を計測することとしている。また,センサ要因を検出するために,所定の電流値(Iq=0A,Id=*A)にて検査対象モータの出力トルクを計測することとしている。これにより,不具合要因を特定することができている。従って,モータ自体の性能を検査するとともに性能不良のモータについてはその要因を特定できるモータ検査装置および検査方法が実現されている。
【0095】
また,変形例1のモータ検査装置では,逆起電圧の波形形状を基に不良品の判定を行うこととしている。この判定では,波形形状が全体的に目標範囲外となる場合とともに,逆起電圧の波形形状がモータ回転角度の一部で目標範囲外となる場合についても判定することとしている。そのため,不良要因が電気的要因であることを特定するだけではなく,異常検出時のモータ回転角度からモータの異常発生部位を特定することもできている。
【0096】
また,変形例2のモータ検査装置では,トルク検査領域,すなわち電流進角の変化に対して出力トルクの変化が大きい領域について,任意の電流(Iq=*A,Id=*A)にて,モータ正回転での力行/回生,モータ逆回転での力行/回生の4つの動作を行うこととしている。当該領域では,出力トルクの変化量が大きいため,分解能が低いトルクメータであっても出力トルクの差異を問題なく検出することが可能である。これにより,1つのトルクメータで不良要因特定検査を行うこともできている。
【0097】
また,変形例3のモータ検査装置では,個々の検査対象モータの逆起電圧特性を求めることとしている。また,検査ポイントでの逆起電圧値と出力トルクを計測することとしている。そして,計測した逆起電圧値から現在のロータの温度を求め,その温度を基に検査ポイントでの出力トルクを基準温度での出力トルクに補正することとしている。すなわち,温度による磁力の変化を考慮して出力性能の判定を行うこととしている。そのため,磁石の温度が変化する環境であってもモータ本来の性能を検査することができ,正確にモータ出力性能検査を行うことができている。
【0098】
また,変形例4のモータ検査装置では,現在のロータの温度を求め,そのロータの温度を基準温度に近づけるように温度調節をすることとしている。そして,温度調節後に出力トルクを計測することとしている。この形態によっても,温度による磁力の変化を考慮しつつ,正確にモータ出力性能検査を行うことができている。
【0099】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,本形態の実施例では,永久磁石同期モータについて検査を行っているが,これに限るものではない。
【0100】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように本発明によれば,モータ自体の性能を検査するとともに性能不良のモータについてはその要因を特定できるモータ検査装置および検査方法が提供されている。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るモータ検査装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】モータ出力性能検査の測定ポイントの一例を示す図である。
【図3】モータ検査装置に係る出力性能検査の動作を示すフローチャート(開始〜A)である。
【図4】モータ検査装置に係る出力性能検査の動作を示すフローチャート(A〜終了)である。
【図5】モータ検査装置の検査結果の一例を示す図である。
【図6】モータの不良要因の具体例を示す図である。
【図7】不良要因特定検査の測定ポイントおよび引きずりトルク検査時の閾値の一例を示す図である。
【図8】モータ検査装置に係る不良要因特定の動作を示すフローチャート(開始〜C)である。
【図9】モータ検査装置に係る不良要因特定の動作を示すフローチャート(C〜D)である。
【図10】モータ検査装置に係る不良要因特定の動作を示すフローチャート(D〜終了)である。
【図11】逆起電圧検査時の閾値の一例を示す図である。
【図12】位置検出異常検査時の正常時のトルク発生状態を示す図である。
【図13】位置検出異常検査時の異常時のトルク発生状態を示す図である。
【図14】永久磁石同期モータ(3相交流モータ)の逆起電圧波形を示す図である。
【図15】逆起電圧波形の異常パターン(全体的不良)を示す図である。
【図16】逆起電圧波形の異常パターン(部分的不良)を示す図である。
【図17】変形例1に係る逆起電圧測定の一例を示すフローチャートである。
【図18】永久磁石同期モータの電流進角と出力トルクとの関係を示す図である。
【図19】変形例2に係る位置ずれ判別の一例を示すフローチャートである。
【図20】変形例3の出力性能検査の動作を示すフローチャート(開始〜E)である。
【図21】変形例3の出力性能検査の動作を示すフローチャート(E〜終了)である。
【図22】変形例3のモータ温度と逆起電圧との関係を示す図である。
【図23】変形例4の出力性能検査の動作を示すフローチャート(開始〜G)である。
【図24】変形例4の出力性能検査の動作を示すフローチャート(G〜終了)である。
【図25】変形例4のモータ温度と逆起電圧との関係を示す図である。
【符号の説明】
1 検査対象モータ
2 インバータ
3 モータ制御ECU
4 トルクメータ
5 負荷モータ
6 負荷モータ制御部
7 交流電力計測器
8 直流電力計測器
10 モータ出力性能検査制御装置
11 モータパワーケーブル接続用電磁開閉器(開閉器)
Claims (7)
- モータの出力性能を検査するモータ検査装置において,
検査対象のモータを出力動作させた状態で,そのモータの出力特性を計測する出力特性計測手段と,
前記出力特性計測手段にて計測された出力特性が,目標範囲内であるか否かを自動的に判定する自動判定手段と,
前記自動判定手段にて目標範囲外と判定された場合に,そのモータの不具合現象を特定するための計測を行い,そのモータの不具合要因を特定する不具合要因特定手段とを有し,
前記不具合要因特定手段は,機械的要因,電気的要因,センサ要因のうち,少なくとも2つの不具合要因について特定する機能を持つことを特徴とするモータ検査装置。 - 請求項1に記載するモータ検査装置において,
検査対象のモータの引きずりトルクを計測し,その計測結果を基に不具合を検出する機械的要因不具合検出手段と,
検査対象のモータの逆起電圧を計測し,その計測結果を基に不具合を検出する電気的要因不具合検出手段と,
所定の電流値にて検査対象のモータの出力トルクを計測し,その計測結果を基に不具合を検出するセンサ要因不具合検出手段とを有することを特徴とするモータ検査装置。 - 請求項2に記載するモータ検査装置において,
前記電気的要因不具合特定手段は,
計測された逆起電圧の波形形状を基に不具合を検出する波形異常検出手段を有し,
前記波形異常検出手段は,逆起電圧の波形形状がモータ回転角度の一部で異常を示す場合に,電気的要因の不具合として検出することを特徴とするモータ検査装置。 - 請求項2に記載するモータ検査装置において,
前記センサ要因不具合特定手段は,
モータ正回転での力行動作および回生動作,モータ逆回転での力行動作および回生動作の出力トルクを計測し,計測された出力トルクを基に不具合を検出するトルク異常検出手段を有し,
前記トルク異常検出手段は,計測された各出力トルクの差が目標範囲外である場合に,センサ要因の不具合として検出することを特徴とするモータ検査装置。 - 請求項1に記載するモータ検査装置において,
検査対象モータの逆起電圧特性を算出する逆起電圧特性算出手段と,
そのモータを出力動作させた状態で,出力トルクを計測するトルク計測手段と,
そのモータの逆起電圧を計測し,その計測結果と前記逆起電圧特性算出手段にて算出された逆起電圧特性とを基に,トルク出力時の検査対象のモータの磁石の温度を算出する温度算出手段と,
前記温度算出手段にて算出された温度を基に,前記トルク計測手段にて計測された出力トルクを補正する出力トルク補正手段とを有することを特徴とするモータ検査装置。 - 請求項1に記載するモータ検査装置において,
検査対象モータの逆起電圧特性を算出する逆起電圧特性算出手段と,
そのモータの逆起電圧を計測し,その計測結果と前記逆起電圧特性算出手段にて算出された逆起電圧特性とを基に,検査対象のモータの磁石の温度を算出する温度算出手段と,
前記温度算出手段にて算出された温度が目標範囲内であるか否かを判定する温度判定手段と,
前記温度判定手段にて目標範囲外と判定された場合に,そのモータの磁石の温度を目標範囲内とするように温度を調節する温度調節手段と,
前記温度調節手段にてモータの磁石の温度が目標範囲内に調節された後に,そのモータを出力動作させた状態で,出力トルクを計測するトルク計測手段とを有することを特徴とするモータ検査装置。 - モータの出力性能を検査するモータ検査方法において,
検査対象のモータを動作させた状態で,そのモータの出力特性を計測し,
計測された出力特性が,目標範囲内であるか否かを自動的に判定し,
目標範囲内であればそのモータを良品と判定し,目標範囲内でなければそのモータを不良品と判定し,
そのモータが不良品と判定された場合には,
そのモータの引きずりトルクを計測し,その計測結果を基に機械的要因の不具合であるか否かを判定し,
そのモータの逆起電圧を計測し,その計測結果を基に電気的要因の不具合であるか否かを判定し,
所定の電流にて,そのモータの出力トルクを計測し,その計測結果を基にセンサ要因の不具合であるか否かを判定することを特徴とするモータ検査方法。
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