JP2004219346A - 犬下痢症ウイルス抗原検出用キット - Google Patents

犬下痢症ウイルス抗原検出用キット Download PDF

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Tomoko Kanai
金井朋子
Ichiro Sato
佐藤一郎
Kotaro Tsuchiya
土屋耕太郎
Susumu Ueda
上田進
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Abstract

【課題】臨床の場面での簡便かつ迅速な診断に使用可能な犬下痢症ウィルス抗原検出用キットであるCCV感染症の診断キットを提供する。
【解決手段】(1)多孔質キャリアに検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成し、(2)標識抗体含有部位には多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得るイヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体を含有し、抗原検出部位にはイヌコロナウイルス抗原特異的抗体を固相化し、反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体を固相化し、(3)検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体中の該イヌコロナウイルス抗原を検出する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は犬のウイルス性下痢症の診断に関するものであり、犬の下痢症の原因ウイルスであるイヌコロナウイルス(以下、「CCV」と記載することがある)、又はCCV並びにイヌパルボウイルス(以下、「CPV」と記載することがある)の両者を高感度かつ特異的に、しかも簡便かつ迅速に検出することの出来る犬下痢症ウイルス抗原検出用キットおよび該キットを用いた犬ウイルス性下痢症の診断法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】Tuchiyaら(1991) Vet. Microbiol. 26: 41−51
【非特許文献2】Rimmelzwaanら(1991) Vet. Microbiol. 26: 25−40
【非特許文献3】Pratelliら (1999) J. Virol. Methods 80: 11−5
【非特許文献4】Pratelliら (2000)J. Virol. Methods 84: 91−4
【非特許文献5】Naylorら (2001) J. Clin. Microbiol. 39: 1036−41
【0003】
従来、CCVの検出法には、エライザ法を応用した方法(非特許文献1、非特許文献2)とPCR法(非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5)を応用した方法が知られているのみである。しかし、これらの方法は、特殊な機器を必要とし、手技が繁雑で結果の判定に熟練を要するなどの問題があり、犬の下痢症の迅速診断を必要とする臨床の場面には適当なものではない。また、CPVのみを迅速に検出する方法はすでに知られているが、該方法により陰性の結果を得た場合に、臨床症状が酷似するCCV感染症であるか否かの検査結果は依然として得られず、原因が不明のまま治療にあたらなければならない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
犬の下痢症の診断においては、臨床症状が酷似しており、治療が遅れた場合に致死となる可能性のある2大ウイルス性下痢症である、CCV感染症とCPV感染症の治療方針を立て、かつ予防措置を講じるために迅速かつ簡便な診断キットが必要とされている。本発明は、特殊な機器及び熟練した技術を必要とせず臨床の場面での簡便かつ迅速な診断に使用可能な犬下痢症ウイルス抗原検出用キットである、CCV感染症の診断キット及びCCV感染症とCPV感染症の鑑別診断キットの提供を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、各方面から検討の結果、免疫学的手法であるサンドイッチ法を多孔質キャリア上で実施することによって上述した技術課題を解決するのにはじめて成功したものである。
【0006】
すなわち、本発明による課題解決の第一の手段は、CCV抗原を検出するキットの提供である。
【0007】
すなわち、
(1)多孔質キャリアに、検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成してなり、(2)標識抗体含有部位には湿潤状態において多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得るCCV抗原特異的標識抗体(以下、「標識抗体I」と記載することがある)を含有せしめ、抗原検出部位にはCCV抗原特異的抗体(以下、「抗体II」と記載することがある)を固相化し、反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(以下、「抗体III」と記載することがある)を固相化し、(3)もって、検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体を多孔質キャリア内で移動せしめて、標識抗体Iを溶出させ、抗体IIを固相化した抗原検出部位及び抗体IIIを固相化した反応終了判定部位を通過せしめることにより、検体中の該CCV抗原を検出すること、を特徴とする犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを提供することにより、CCV抗原の簡便かつ迅速な検出を可能にすることである。以下、該検出用キットの要件を詳述する。
【0008】
該検出用キットは、CCV抗原に対するサンドイッチアッセイを多孔質キャリア上で行う方法(イムノクロマト法)を測定原理として利用するものである。該キットでは、CCVの全てのタンパク質が検出抗原となり得るが、好ましくは該ウイルスのヌクレオカプシドタンパク質(以下、CCV−Nと記載することがある)を検出抗原として本キットを作製した場合に、該キットの検出感度を最大限に発揮させることができる。しかし、本発明の該検出用キットの検出抗原は、CCV−Nに限られるものではなく、該ウイルスのSタンパク質、Mタンパク質など該ウイルスにコードされるタンパク質であれば、本キットの検出抗原となりうる。
【0009】
該キットにおける標識抗体Iを作製する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもCCV抗原に特異的であれば使用できる。該抗体として該ウイルスヌクレオカプシドタンパク質に特異的な抗体を使用することにより、該キットの感度を最大限に発揮させることができる。また、該標識抗体Iがモノクローナル抗体を標識して作製されることにより、該キットの特異性を高めることができる。すなわち、標識抗体Iの最も好ましい実施態様は、CCV−Nに特異的なモノクローナル抗体を使用することであるが、本発明は、これに限定されるものではない。該標識抗体は、例えば、着色ラテックス粒子、磁気ビーズ等の合成高分子、ゼラチン等の天然高分子、又は金コロイド等の金属高分子等で標識し、イムノクロマト法に使用することが可能である。反応を直接、可視的に検出する場合には金コロイドによる標識をその最も好適な例としてあげることができるが、これに限定されるものではない。
【0010】
また、CCV抗原を検出する該キットにおいて、抗原検出部位に固相化する抗体(抗体II)においてもポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもCCV抗原に特異的であれば使用できる。該ウイルスヌクレオカプシドタンパク質を被検出抗原として該タンパク質に特異的な標識抗体Iを使用したキットを作製する場合、抗体IIも該タンパク質に対して特異的な抗体分画を含むポリクローナル抗体を固相化することにより、該キットの検出感度を最大限に発揮させることができ、該抗体の使用をその最も好適な例としてあげることができるが、本発明は、これに限られるものではない。
【0011】
反応終了判定部位には標識抗体Iとして使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質に特異的な抗体(抗体III)を固相化するが、該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでも使用できる。
【0012】
これらの抗体を多孔質キャリアに順次含有せしめて、犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを構成する。多孔質キャリアの材質としては、市販の濾紙、ナイロン、ニトロセルロース、ポリビニリデンジフルオライドやガラスファイバー濾紙などを使用できる。上記のほか、ポリプロピレン、ポリエチレン、フッ化ポリビニリデン、エチレン酢酸ビニル、アクリルニトリル、ポリテトラフルオロエチレンのような合成高分子を多孔質化した多孔質プラスチックも使用することができる。
【0013】
本キットの使用により、特殊な技術、装置及び施設を必要とせず、簡便かつ迅速にCCV感染症を診断することが可能となる。
【0014】
さらに本発明による課題解決の第二の手段は、CCV及びCPV抗原を同時に検出するキットの提供である。本キットの使用により、犬の主要なウイルス性下痢症の原因であるであるCCV及びCPVの抗原検出を、一回の操作で行うことが出来、両感染症の鑑別診断が可能となり、より容易に、検査結果を得ることができる。本キットは、本発明の第一の手段で詳述した犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを発展させたキットであり、同一検出用キット上で両ウイルス抗原を検出することが可能であることを見出し、本発明の第二の検出用キットを完成させるに至った。
【0015】
すなわち、(1)多孔質キャリアに、検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成してなり、(2)標識抗体含有部位には湿潤状態において多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得る、CCV抗原特異的標識抗体(標識抗体I)及びCPV抗原特異的標識抗体(以下、「標識抗体IV」と記載することがある)を含有せしめ、抗原検出部位にはCCV抗原特異的抗体(抗体II)及びCPV抗原特異的抗体(以下、「抗体V」と記載することがある)を固相化し、反応終了判定部位には、標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を固相化し、(3)もって、検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体を多孔質キャリア内で移動せしめて、標識抗体I及びIVを溶出させ、抗体II及びVを固相化した抗原検出部位及び抗体IIIを固相化した反応終了判定部位を通過せしめることにより、検体中の該CCV抗原及び該CPV抗原を検出すること、を特徴とする犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを提供することにより、同一検体から両抗原を、迅速、簡便、かつ同時に検出することを可能にするものである。以下、該検出用キットの要件を詳述する。
【0016】
該キットのCCV抗原検出のための要件については、イヌコロナウイルス抗原のみを検出するキットの項で詳述した事項が本キットにも当てはまる。
【0017】
該キットのCPV抗原検出のための要件において、用いる標識抗体IVは、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもCPV抗原に特異的であれば使用できる。該ウイルス粒子表面タンパク質に特異的なモノクローナル抗体を標識して使用することにより、該キットの特異性を最大限に発揮させることができ、該モノクローナル抗体の使用をその最も好適な例としてあげることができるが、これに限定されるものではない。該標識抗体IVは、例えば、着色ラテックス粒子、磁気ビーズ等の合成高分子、ゼラチン等の天然高分子、又は金コロイドなどの金属高分子で標識し、イムノクロマト法に使用することが可能である。反応を直接、可視的に検出する場合には金コロイドによる標識をその最も好適な例としてあげることができるが、これに限定されるものではない。
【0018】
また、抗原検出部位に固相化する抗体(抗体V)はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでもCPV抗原に特異的であれば使用できる。該ウイルス粒子表面タンパク質を検出抗原とし、該抗原に対して特異的な抗体分画を含むポリクローナル抗体を固相化することにより、該キットの検出感度を最大限に発揮させることができ、該抗体の使用をその最も好適な例としてあげることができるが、これに限定されるものではない。
【0019】
反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質に特異的な抗体(抗体III)を固相化するが、該抗体はポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれでも使用できる。
【0020】
これらの抗体を多孔質キャリアに順次含有せしめて、犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを構成する。該キットの多孔質キャリアの要件については、犬コロナウイルス抗原のみを検出するキットの項で詳述した事項が本キットにも当てはまる。
【0021】
本キットの使用により、一回の操作でCCV感染症とCPV感染症を迅速に診断することが可能となる。なお、当業者にとって、同様の構成により検出用キットに新たに、イヌロタウイルス等の検出部位を加えていくことは容易なことである。
【0022】
【発明の実施の形態】
請求項1に係る本発明は、「犬下痢症ウイルス抗原を検出するキットであり、(1)多孔質キャリアに、検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成してなり、(2)標識抗体含有部位には湿潤状態において多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得る該CCV抗原特異的標識抗体(標識抗体I)を含有せしめ、抗原検出部位には該CCV抗原特異的抗体(抗体II)を固相化し、反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を固相化し、(3)もって、検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体を多孔質キャリア内で移動せしめて、標識抗体Iを溶出させ、抗体IIを固相化した抗原検出部位及び抗体IIIを固相化した反応終了判定部位を通過せしめることにより、検体中の該CCV抗原を検出すること、を特徴とする犬下痢症ウイルス抗原検出用キット」としたものであり、本キットの使用によりCCV感染症を、特殊な技術、装置及び施設を必要とせずしかも、簡便かつ迅速に診断できるという作用を有する。
【0023】
本キットを作製するにあたって必要とされるCCVポリクローナル抗体はAntibodies, A laboratory manual (1988, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow and Lane編)に記載される方法に従って精製CCVをウサギ、ヤギなどの各種動物に免疫することにより得ることができる。精製CCVはMakinoらの方法(Makinoら(1983)Microbiol. Immunol. 27:445−454、Makinoら(1984)Virology 133:9−17)により、例えばCCV1−71株感染CRFK細胞の培養上清からショ糖密度勾配遠心法を用いて調製することができる。あるいは、ヌクレオカプシドタンパク質に対する抗体のみを得る目的で、同タンパク質をバキュロウイルスあるいは大腸菌などを用いた発現系で大量に発現させ、これを抗原としてポリクローナル抗体を得ることも可能である。
【0024】
また、同ウイルスに対するモノクローナル抗体についても、精製CCVをマウスに免疫した後、同じくAntibodies, A laboratory manual (1988, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow and Lane編)に記載される方法に従い、CCV抗原タンパク質に対する抗体を産生するハイブリドーマをクローニングすることにより得ることができる。得られたモノクローナル抗体の特異性については、エライザ法、ウェスタンブロッティング法や、ウイルスゲノムにコードされた各タンパク質の発現産物に対する反応性を調べることにより決定することができる。
【0025】
得られた抗体の標識に使用する担体粒子は着色ラテックス粒子、磁気ビーズ等の合成高分子、ゼラチン等の天然高分子、又は金コロイド等の金属高分子を好適なものとして例示することができる。担体粒子は、肉眼での判定を行う場合には着色されていることが望ましく、この点で、金属高分子のコロイド粒子や着色ラテックス粒子は、色調を有するため有利である。抗体の標識法については、標識物である担体粒子を製造するメーカーがおのおの提供するマニュアルに沿って標識することができ、当業者にとっては自明の技術である。担体粒子により標識された抗体は、コロイド化学的安定性の向上、又は膜及び検体との非特異的な結合を防止する目的で、0.05%から5%程度のBSA等を含有した緩衝液中に懸濁して保管することが望ましい。
【0026】
これら抗体を、多孔質キャリア上に例えば図1に示すごとく配置して、本キットを作製する。すなわち、多孔質キャリアの標識抗体含有部位にはCCV抗原特異的標識抗体Iを含有せしめ、抗原検出部位にはCCV抗原特異的抗体(抗体II)を固相化し、反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を固相化し、膜を短冊状(例えば、幅5〜20mm、長さ約50mm程度)に裁断し、裁断した膜を同一の大きさの支持体(例えば、プラスチック等)に固定する。裁断した短冊の反応終了判定部位側の片端に適当な大きさの吸収材を配置すると、検体の展開を容易にする機能を有しており、有利である。さらに検体滴下部位を配置して本キットを構成する。なお、本キットにおいては標識抗体含有部位と検体滴下部位は、同一であってもかまわない。支持体への各部材の固定には、接着剤、粘着テープ等を用いることができる。
【0027】
多孔質キャリアの材質としては、市販の濾紙、ナイロン、ニトロセルロース、ポリビニリデンジフルオライドやガラスファイバー濾紙などの天然又は合成高分子のいずれも使用できる。また、CCV抗原特異的抗体(抗体II)の膜への固定方法としては、物理吸着法、化学結合(共有結合)法、その他いずれの方法も使用することができる。即ち、CCV抗体が膜より脱離しなければどのような材質を用いることも可能である。抗体II固定膜は、検体又は標識抗体Iとの非特異的な吸着を防止するために、0.05から5%程度のBSA等でブロッキング処理を行い、乾燥条件下で保存することが望ましい。
【0028】
使用にあたっては、被検動物である犬から採取した糞便を緩衝液に懸濁し、この適当量を、本キットの検体滴下部位に滴下する。滴下された検体は標識抗体Iを含有する部位に到達し、検体中にCCV抗原が存在する場合、これと標識抗体Iとの免疫複合体が形成される。該免疫複合体は毛細管現象により緩衝液とともに濾紙等の多孔質キャリア上に展開され、抗体IIが固相化された抗原検出部位に到達し、該免疫複合体の大部分は該部位で抗体IIに捕捉される。もし、検体中にCCV抗原が存在しない場合は、フリーの標識抗体Iとしてこの部位に捕捉されず通過する。一部の免疫複合体あるいはフリーの標識抗体Iは抗原検出部位を通り抜け、反応終了判定部位に到達し、免疫複合体の形成の有無にかかわらず、標識抗体Iが捕捉されて蓄積し、試験終了の反応が現れる。本キットにおいては検体滴下後、10〜15分間室温に静置することによりこの反応が現れる。この反応は、金コロイド標識抗体を用いた場合は、赤紫色の発色として出現する。反応終了判定部位に反応が現れた時点で、抗原検出部位に発色反応が現れた場合はCCV抗原陽性、現れない場合は陰性と判定し、CCV抗原陽性の場合、被検動物(犬)はCCV感染症と診断される。
【0029】
更に、該抗原検出用キットにおいて、図1に示したCCV抗原特異的標識抗体Iを含有せしめた標識抗体含有部位は、これを除いて本キットを構築することも可能である。このような形態のキットにおいては、標識抗体Iと緩衝液に懸濁した検体とをあらかじめ試験管内で混合した後に検体滴下部位に該混合液を滴下し、上記と同様に反応を待ち、抗原の有無を判定することができる。
【0030】
本発明の請求項2に記載の発明は、「犬下痢症ウイルス抗原を検出するキットであり、(1)多孔質キャリアに、検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成してなり、(2)標識抗体含有部位には湿潤状態において多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得る、CCV抗原特異的標識抗体(標識抗体I)及びCPV抗原特異的標識抗体(標識抗体IV)を含有せしめ、抗原検出部位にはCCV抗原特異的抗体(抗体II)及びCPV抗原特異的抗体(抗体V)を固相化し、反応終了判定部位には、標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を固相化し、(3)もって、検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体を多孔質キャリア内で移動せしめて、標識抗体I及びIVを溶出させ、抗体II及びVを固相化した抗原検出部位及び抗体IIIを固相化した反応終了判定部位を通過せしめることにより、検体中の該CCV抗原及び該CPV抗原を検出すること、を特徴とする犬下痢症ウイルス抗原検出用キット」としたものであり、本キットの使用によりCCV感染症及びCPV感染症を、特殊な機器及び熟練した技術を必要とせず、しかも簡便かつ迅速に診断できるという作用を有する。
【0031】
本キットにおいて必要とされるCCV抗原検出のための抗体は、イヌコロナウイルス抗原のみを検出するキットを組み立てるために作製される抗体を使用することができる。
【0032】
本キットを作製するにあたって、さらに必要とされるCPVポリクローナル抗体はAntibodies, A laboratory manual (1988, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow and Lane編)に記載される方法に従って精製CPVをウサギ、ヤギなどの各種動物に免疫することにより得ることができる。精製CPVは例えば、CPVCp−49株感染CRFK細胞の培養上清から塩化セシウム密度勾配遠心法を用いて調製することができる。
【0033】
また、同ウイルスに対するモノクローナル抗体についても、精製CPVをマウスに免疫した後、同じくAntibodies, A laboratory manual (1988, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow and Lane編)に記載される方法に従い、CPV抗原タンパク質に対する抗体を産生するハイブリドーマをクローニングすることにより得ることができる。得られたモノクローナル抗体の特異性については、エライザ法やウェスタンブロッティング法、ウイルスゲノムにコードされた各タンパク質の発現産物に対する反応性、あるいはウイルス中和活性や赤血球凝集抑制活性により決定することができる。
【0034】
抗体の標識については、CCV抗原のみを検出するキットの作製法の項で詳述した方法を準用することができる。
【0035】
これら抗体を、多孔質キャリア上に例えば図2に示すごとく配置して、本キットを作製する。すなわち、多孔質キャリアの標識抗体含有部位にはCCV抗原特異的標識抗体I及びCPV抗原特異的標識抗体IVの両者を含有せしめ、抗原検出部位には、CCV抗原特異的抗体(抗体II)及びCPV抗原特異的抗体(抗体V)を固相化し、反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を固相化し、膜を短冊状(例えば、幅5〜20mm、長さ約50mm程度)に裁断し、裁断した膜を同一の大きさの支持体(例えば、プラスチック等)に固定する。裁断した短冊の反応終了判定部位側の片端に適当な大きさの吸収材を配置すると、検体の展開を容易にする機能を有しており、有利である。さらに検体滴下部位を配置して本キットを構成する。なお、本キットにおいては標識抗体含有部位と検体滴下部位は、同一であってもかまわない。支持体への各部材の固定には、接着剤、粘着テープ等を用いることができる。
【0036】
本キットにおけるそれぞれの標識抗体は同一の物質、例えば金コロイドあるいは着色ラテックス粒子などで標識してもよく、両者を異なった標識物質、例えば一方を金コロイド、他方を着色ラテックス粒子で標識してもよい。抗原検出部位の2つの抗体(抗体II及び抗体V)は、これらを該部位内で位置をずらして、あるいはさらに固相化の形状に違い(例えば、線状と点状)を持たせてそれぞれ固相化することにより、CCV抗原検出部位とCPV抗原検出部位を区別させ抗原検出部位における発色等の反応の位置あるいは形状の違いから検体にはどちらの抗原を含んでいるか、あるいは両方の抗原を含んでいるか否かを容易に判定でき、有利である。CCV抗原特異的標識抗体IとCPV抗原特異的標識抗体IVとして使用した免疫グロブリンタンパク質の動物種が異なる場合は、いずれか一方の動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を反応終了判定部位に固相化することにより、該部位を形成することができるが、両動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体(抗体III)を該部位に固相化してもよい。
【0037】
多孔質キャリアの材質としては、市販の濾紙、ナイロン、ニトロセルロース、ポリビニリデンジフルオライドやガラスファイバー濾紙などの天然又は合成高分子のいずれも使用できる。また、CCV抗体IIの膜への固定方法としては、物理吸着法、化学結合(共有結合)法、その他いずれの方法も使用することができる。即ち、CCV抗体が膜より脱離しなければどのような材質を用いることも可能である。CCV抗体固定膜は、検体又は標識抗体Iとの非特異的な吸着を防止するために、0.05から5%程度のBSA等でブロッキング処理を行い、乾燥条件下で保存することが望ましい。
【0038】
抗原検出法は、CCV抗原検出用キットの方法と同様であり、本キットの特徴はCCV抗原とCPV抗原検出を同一のキット上で行うところにある。本発明のキットを使用することにより、一回の操作で両抗原の存在の有無を判定することが可能となる。
【0039】
使用にあたっては、検体を緩衝液に懸濁して本キットの検体滴下部位に滴下し、10〜15分間室温に静置することにより反応終了判定部位に反応が現れるのを待つ。この反応は、金コロイド標識抗体を用いた場合は、赤紫色の発色として出現する。反応終了判定部位に反応が現れた時点で、抗原検出部位のCCV抗原検出部位に同様の反応が現れた場合はCCV抗原陽性、CPV抗原検出部位に同様の反応が現れた場合はCPV抗原陽性、両検出部位に同様の反応が現れた場合はCCV抗原およびCPV抗原陽性、両検出部位に反応が現れない場合はCCV抗原およびCPV抗原陰性と判定する。診断にあたっては、被検動物は抗原陽性であったウイルスの感染症と判定される。
【0040】
更に、該抗原検出用キットにおいて、図2に示したCCV抗原特異的標識抗体I及びCPV抗原特異的標識抗体IVを含有せしめた標識抗体含有部位は、これを除いて本キットを構築することも可能である。このような形態のキットにおいては、標識抗体I及びIVと緩衝液に懸濁した検体とをあらかじめ試験管内で混合した後に検体滴下部位に該混合液を滴下し、上記と同様に反応を待ち、抗原の有無を判定することができる。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の犬下痢症ウイルス抗原検出用キットが実際に非常に有用であることを下記の調製例及び実施例に沿ってさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の調製例及び実施例によりなんら限定されるものではない。調製例では、本発明の抗原検出用キットを作製するために必要な各抗体の作製例を、そして実施例では、これら抗体を用いた抗原検出用キットの作製例ならびにその応用例を示す。
【0042】
調製例1:抗CCVポリクローナル抗体の調製
免疫原であるCCVは以下のように調製した。すなわち、CCV 1−71株感染CRFK細胞の培養上清に2.2%の塩化ナトリウム及び6.5%のポリエチレングリコール#6000を添加した後遠心分離により析出物を回収することにより粗精製CCVを得、更にこれから不連続ショ糖密度勾配遠心法により30%(W/W)ショ糖と60%(W/W)ショ糖との間に集積する精製CCV分画を調製した。ウサギ1羽あたり、100μgの精製CCVをFreundの完全アジュバントとともに皮下に接種し、更に3週間隔で2回、Freundの不完全アジュバントとともに皮下に追加接種した。その後3週間以上の間隔をあけてウサギ静脈内に精製CCVを接種し、接種後10日以内にウサギ血清を抗CCVポリクローナル抗体として得た。得られた血清からプロテインGカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー(アマシャムファルマシア社製)により抗CCV抗体含有分画を精製した。
【0043】
調製例2:抗CCV−Nモノクローナル抗体の調製
マウス1匹あたり、調製例1において調製した100μgの精製CCVをFreundの完全アジュバントとともに皮下に接種し、更に3週間隔で2回、Freundの不完全アジュバントとともに皮下に追加接種した。その後3週間以上の間隔をあけてマウス腹腔内に精製CCVを接種し、3日後に脾臓を摘出した。その脾細胞をマウスミエローマ細胞と融合させ、スクリーニング及びクローニングにより抗CCV−N抗体産生ハイブリドーマを得た。この抗CCV−N抗体産生ハイブリドーマを、プリスタン(シグマ社製)投与後10日目のBALB/cマウスの腹腔内に移入し、約10日後に腹水を採取した。得られた腹水からプロテインGカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー(アマシャムファルマシア社製)により抗CCV−Nモノクローナル抗体を精製した。
【0044】
調製例3:抗マウスイムノグロブリンポリクローナル抗体の調製
ウサギ1羽あたり、100μgの市販のマウスイムノグロブリンG(CALBIOCHEM社)をFreundの完全アジュバントとともに皮下に接種し、更に3週間隔で2回、Freundの不完全アジュバントとともに皮下に追加接種した。その後3週間以上の間隔をあけてウサギ静脈内にマウスイムノグロブリンGを接種し、接種後10日以内にウサギ血清を抗マウスイムノグロブリンポリクローナル抗体として得た。得られた血清からプロテインGを用いたアフィニティークロマトグラフィー(アマシャムファルマシア社製)により抗マウスイムノグロブリン抗体含有分画を精製した。
【0045】
調製例4:抗CPVポリクローナル抗体の調製
免疫原であるCPVは以下のように調製した。すなわち、CPV Cp−49株感染CRFK細胞の培養上清に2.2%の塩化ナトリウム及び6.5%のポリエチレングリコール#6000を添加した後遠心分離により析出物を回収することにより粗精製CPVを得、更にこれから塩化セシウム密度勾配遠心法により精製CPV分画を調製した。ウサギ1羽あたり、100μgの精製CPVをFreundの完全アジュバントとともに皮下に接種し、更に3週間隔で2回、Freundの不完全アジュバントとともに皮下に追加接種した。その後3週間以上の間隔をあけてウサギ静脈内に精製CPVを接種し、接種後10日以内にウサギ血清を抗CPVポリクローナル抗体として得た。得られた血清からプロテインGカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー(アマシャムファルマシア社製)により抗CPV抗体含有分画を精製した。
【0046】
調製例5:抗CPVモノクローナル抗体の調製
マウス1匹あたり、調製例4において調製した100μgの精製CPVをFreundの完全アジュバントとともに皮下に接種し、更に3週間隔で2回、Freundの不完全アジュバントとともに皮下に追加接種した。その後3週間以上の間隔をあけてマウス腹腔内に精製CPVを接種し、3日後に脾臓を摘出した。その脾細胞をマウスミエローマ細胞と融合させ、スクリーニング及びクローニングにより抗CPV抗体産生ハイブリドーマを得た。この抗CPV抗体産生ハイブリドーマを、プリスタン(シグマ社製)投与後10日目のBALB/cマウスの腹腔内に移入し、約10日後に腹水を採取した。得られた腹水からプロテインGカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィー(アマシャムファルマシア社製)により抗CPVマウスモノクローナル抗体を精製した。
【0047】
(実施例1)
本実施例はCCV抗原を検出するキットの作製及び該キットを用いたCCV抗原の検出を示す。
【0048】
1)CCV抗原検出用キットの作製
図1に示す抗原検出用キットを以下のように作製した。すなわち、図1の抗体IIとして調製例1で調製した抗CCV−Nウサギポリクローナル抗体を、抗体IIIとして調製例3で調製した抗マウスイムノグロブリンポリクローナル抗体を使用した。該抗体をPBS緩衝液により希釈し、抗体塗布キット(バイオドット社製)を用いて市販のニトロセルロースメンブレン(ミリポア社製)に図1に示すごとく線状に塗布した。十分に乾燥した後、非特異的な吸着を防止するため、1%のBSAを添加したPBS緩衝液によりブロッキング処理を行い、十分に乾燥させて抗体固定膜を作製した。図1の標識抗体Iとして調製例2で調製した抗CCV−Nモノクローナル抗体を以下のように標識し、使用した。すなわち、pH9.0に調製した精製CCV−Nマウスモノクローナル抗体(0.1mg/mL)50μlを、粒子径40nmの金コロイド(ブリティッシュ・バイオセル社製)1mLに添加し、常温で5分間撹拌し、次いでpH9.0に調整した10%BSA及び1%PEGを含む水溶液を100μl添加し、さらに常温で10分間撹拌した。次いで、遠心分離(4℃、10,000g、15分間)により抗CCV−Nマウスモノクローナル抗体蛋白質固定金コロイド粒子を集め、100μlの1%BSA及び0.1%アジ化ナトリウムを含むトリス塩酸緩衝液(pH8.2)に再懸濁し、CCV−Nに特異的に結合する金コロイド粒子標識抗体懸濁液を得、ガラス繊維製の吸収膜(ミリポア社製)に固定した。前記抗体固定膜と金コロイド標識抗体Iを含むガラス繊維性吸収膜を、図1のごとく幅約5mm、長さ約50mmの短冊状に成型した。反応終了判定部位側の片端に、滴下した検体を容易に展開させる目的で、グラスファイバー製吸収材(ミリポア社製)を接着し、抗原検出用キットを完成させた。
【0049】
2)被検試料
(1)試料番号1〜7:CCV実験感染個体から経時的に採取した糞便
(2)試料番号8〜11:下痢症を呈した個体から採取した糞便
(3)試料番号12:検体希釈液
【0050】
3)被検試料からのRT−PCR法によるCCVゲノムRNAの検出
被検糞便を10(W/V)%になるようにPBS緩衝液に溶解し、遠心して得た上清からゲノムRNAを抽出する。CCVゲノムRNAは、糞便溶解液上清をプロテイナーゼK及びソジウムドデシル硫酸存在下で加温処理し、これをフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液(25:24:1)により抽出し、取得することができる。
【0051】
回収されたゲノムRNAを鋳型とし、また、現在までに公知となっている塩基配列[ジャーナル・オブ・ジェネラル・ヴィロロジー(Journal of General Virology)、第73巻、第2849ページ、1992年]を参考にして、2本の合成DNAプライマー5’−GAACTGGACCTCATGCTGAT−3’(配列番号1)及び5’−CATTCTTAGGTGTAGTATCTCT−3’(配列番号2)を作製し、RT−PCR法によりCCVゲノムRNAの検出を行った。
【0052】
4)試験結果
この試験の結果は表1に示す通りである。表1から明らかな通り、CCV実験感染個体から採取した糞便においては、接種後2日目から6日目までRT−PCR法によりCCVゲノムが検出された。これら試料においては、本発明のCCV抗原を検出する犬下痢症ウイルス抗原検出用キットにより該抗原が検出された。下痢症を呈した個体から採取した糞便においては、RT−PCR法によりCCVゲノムRNAが検出された試料番号8、9で本発明の抗原検出用キットにより該抗原が検出され、CCVゲノムが検出されない試料番号10、11ではCCV抗原も検出されなかった。
【0053】
RT−PCR法は感度の高いウイルス検出法とされているが、該方法によるCCVゲノムの検出には検体の調製から結果がでるまでにほぼ1日を要するとともに、PCR反応キットを必要とし、かつ熟練した技術が必要であることに比較し、本発明の犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを用いた場合は、特殊な装置や熟練した技術を必要とせずに全工程をわずか20分以内に完了した。以上の試験結果から、本発明のキットは、CCV抗原を高感度に検出し、これによりCCV感染症を的確に診断することが可能となり、しかも簡便かつ迅速に結果を得ることが出来たことから、本発明の抗原検出用キットは、従来にない優れたCCV抗原検出用キットであることが判明した。
【0054】
【表1】
Figure 2004219346
【0055】
(実施例2)
本実施例はCCV抗原及びCPV抗原を検出するキットの作製及び該キットを用いたCCV抗原並びにCPV抗原の検出を示す。
【0056】
1)CCV抗原及びCPV抗原検出用キットの作製
図2に示す抗原検出用キットを以下のように作製した。図2の標識抗体I、抗体II、及び抗体IIIは実施例1で使用した標識抗体あるいは抗体を準用した。標識抗体IVとしては調製例5で調製した抗CPVモノクローナル抗体を、抗体Vとしては調製例4で調製した抗CPVポリクローナル抗体を使用した。抗体II、抗体III、及び抗体Vを図2に示すごとく実施例1と同様の方法でニトロセルロースメンブレンに線状に塗布し、抗体固定膜を作製した。標識抗体IVは、標識抗体Iと同様に作製し、同一ガラス繊維製の吸収膜に固定した。前記抗体固定膜と金コロイド標識抗体Iを含むガラス繊維性吸収膜を、図2のごとく幅約5mm、長さ約50mmの短冊状に成型した。反応終了判定部位側の片端に、滴下した検体を容易に展開させる目的で、グラスファイバー製吸収材(ミリポア社製)を接着し、抗原検出用キットを完成させた。
【0057】
2)被検試料
(1)試料番号1〜7:CCV実験感染個体から経時的に採取した糞便
(2)試料番号8〜14:CPV実験感染個体から経時的に採取した糞便
(3)試料番号15〜18:下痢症を呈した個体から採取した糞便
(4)試料番号19: 検体希釈液
【0058】
3)被検試料からのRT−PCR法によるCCVゲノムRNAの検出
実施例1と同様に行った。
【0059】
4)被検試料からのPCR法によるCPVゲノムDNAの検出
被検糞便を10(W/V)%になるようにPBS緩衝液に溶解し、遠心して得た上清からゲノムDNAを抽出する。CPVゲノムDNAは、糞便溶解液上清をプロテイナーゼK及びソジウムドデシル硫酸存在下で加温処理し、これをフェノール:クロロホルム:イソアミルアルコール溶液(25:24:1)により抽出し、取得することができる。
【0060】
回収されたゲノムDNAを鋳型とし、また、現在までに公知となっている塩基配列[ヴィロロジー・(Virology)、第148巻、第121ページ、1986年]を参考にして、2本の合成DNAプライマー5’− TGCCATTTACTCCAGCAGC−3’(配列番号3)及び5’− CATTTGAGTTACACCACGTCT −3’(配列番号4)を作製し、PCR法によりCPVゲノムRNAの検出を行った。
【0061】
5)試験結果
この試験の結果は表2に示す通りである。表2から明らかな通り、CCV実験感染個体から採取した糞便においては、接種後2日目から6日目までRT−PCR法によりCCVゲノムが検出された。これら試料においては、本発明のCCV及びCPV抗原を検出する犬下痢症ウイルス抗原検出用キットによりCCV抗原が検出され、CPV抗原は陰性であった。下痢症を呈した個体から採取した糞便においては、RT−PCR法によりCCVゲノムRNAが検出された試料番号15、16で本発明の抗原検出用キットによりCCV抗原が検出され、CCVゲノムが検出されない試料番号17、18ではCCV抗原も検出されなかった。また、CPV実験感染個体から採取した糞便においては、接種後2日目から6日目までPCR法によりCPVゲノムが検出された。これら試料においては、本発明のCCV及びCPV抗原検出用キットによりCPV抗原が検出され、CCV抗原は陰性であった。下痢症を呈した個体から採取した糞便においては、PCR法によりCPVゲノムDNAが検出された試料番号17で本発明の抗原検出用キットによりCPV抗原が検出され、CPVゲノムが検出されない試料番号15、16、18ではCPV抗原も検出されなかった。
【0062】
RT−PCR法及びPCR法は、感度の高いウイルス検出法とされているが、該方法によるウイルスゲノムの検出には検体の調製から結果がでるまでにほぼ1日を要するとともに、PCR反応装置を必要とし、かつ熟練した技術が必要であることに比較し、本発明の抗原検出用キットを用いた場合は、特殊な装置や熟練した技術を必要とせずに全工程をわずか20分以内に完了した。さらに、該キットの使用により、CCVとCPVの鑑別も可能であった。以上の試験結果から、本発明のキットは、CCV抗原及びCPV抗原を高感度に検出し、これによりCCV感染症及びCPV感染症を的確に診断することが可能となり、しかも簡便かつ迅速に結果を得ることが出来たことから、本発明の抗原検出用キットは、従来にない優れたCCV及びCPV検出用キットであることが判明した。
【0063】
【表2】
Figure 2004219346
【0064】
【発明の効果】
以上詳記した通り、本発明は、新規な犬のウイルス性下痢症の診断キットに関するものであり、本発明によれば、次のような効果が奏される。
1)特殊な機器及び熟練した技術を必要とすることなく、検体(糞便)の採取現場において簡便かつ迅速にイヌコロナウイルス感染症を診断することが可能となる。
2)特殊な機器及び熟練した技術を必要とすることなく、検体(糞便)の採取現場において簡便、迅速、かつ同時にイヌコロナウイルス感染症とイヌパルボウイルス感染症を鑑別診断することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態によるイヌコロナウイルス抗原を検出する犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを示す平面図。
【図2】本発明の一実施の形態によるイヌコロナウイルス抗原及びイヌパルボウイルス抗原を検出する犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを示す平面図。
【配列表】
Figure 2004219346
Figure 2004219346

Claims (6)

  1. イヌコロナウイルス抗原を検出する犬下痢症ウイルス抗原検出用キットであり、
    (1)多孔質キャリアに、検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成してなり、
    (2)標識抗体含有部位には湿潤状態において多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得るイヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体を含有せしめ、抗原検出部位にはイヌコロナウイルス抗原特異的抗体を固相化し、反応終了判定部位には標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体を固相化し、
    (3)もって、検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体を多孔質キャリア内で移動せしめて、イヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体を溶出させ、イヌコロナウイルス抗原特異的抗体を固相化した抗原検出部位及び免疫グロブリンタンパク質特異的抗体を固相化した反応終了判定部位を通過せしめることにより、検体中の該イヌコロナウイルス抗原を検出すること、
    を特徴とする犬下痢症ウイルス抗原検出用キット。
  2. イヌコロナウイルス抗原及びイヌパルボウイルス抗原を検出する犬下痢症ウイルス抗原検出用キットであり、
    (1)多孔質キャリアに、検体滴下部位、標識抗体含有部位、抗原検出部位及び反応終了判定部位とを順次形成してなり、
    (2)標識抗体含有部位には湿潤状態において多孔質キャリア上を抗原検出部位から反応終了判定部位へと順次移動し得る、イヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体及びイヌパルボウイルス抗原特異的標識抗体を含有せしめ、抗原検出部位にはイヌコロナウイルス抗原特異的抗体及びイヌパルボウイルス抗原特異的抗体を固相化し、反応終了判定部位には、標識抗体として使用した動物種の免疫グロブリンタンパク質特異的抗体を固相化し、
    (3)もって、検体を検体滴下部位に滴下することにより、検体を多孔質キャリア内で移動せしめて、イヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体及びイヌパルボウイルス抗原特異的標識抗体を溶出させ、イヌコロナウイルス抗原特異的抗体及びイヌパルボウイルス抗原特異的抗体を固相化した抗原検出部位及び免疫グロブリンタンパク質特異的抗体を固相化した反応終了判定部位を通過せしめることにより、検体中の該イヌコロナウイルス抗原及び該イヌパルボウイルス抗原を検出すること、
    を特徴とする犬下痢症ウイルス抗原検出用キット。
  3. 前記イヌコロナウイルス抗原が、イヌコロナウイルスのヌクレオカプシドタンパク質の抗原性を有するタンパク質であることを特徴とする請求項1又は2に記載の犬下痢症ウイルス抗原検出用キット。
  4. 前記イヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体がイヌコロナウイルス抗原に対するモノクローナル抗体を標識した該抗体であり、前記イヌコロナウイルス抗原特異的抗体がイヌコロナウイルス抗原に対するポリクローナル抗体であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の犬下痢症ウイルス抗原検出用キット。
  5. 前記イヌコロナウイルス抗原特異的標識抗体がイヌコロナウイルス抗原に対する抗体を金コロイド粒子により標識した該抗体であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の犬下痢症ウイルス抗原検出用キット。
  6. 犬ウイルス性下痢症の診断法であって、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の犬下痢症ウイルス抗原検出用キットを用いることにより生体由来材料中のイヌコロナウイルス抗原及び/又はイヌパルボウイルス抗原を検出することを特徴とする犬ウイルス性下痢症の診断法。
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