JP2004212861A - トナー及び画像形成装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】、転写残トナーを再利用する画像形成装置においても、カブリ現象、再転写現象、及びブリスターが発生しないトナー及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】転写残トナーを再利用する画像形成装置に使用されるトナーであって、該トナーは平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有することを特徴とするトナー。
【選択図】なし
【解決手段】転写残トナーを再利用する画像形成装置に使用されるトナーであって、該トナーは平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有することを特徴とするトナー。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電記録方式や電子写真方式等の作画プロセスを利用した画像形成装置及びトナーに関し、特に複数の画像情報に基づく顕像化像を、多重転写することにより多色画像を得るようにした多色画像形成装置及びトナーに関するものであり、電子写真複写装置のみならず、様々なプリンター、ファクシミリ等に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、この電子写真法は、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像して可視像化し、必要に応じて紙などの転写材にトナー像を転写した後に、熱や圧力により転写材上にトナー像を定着して最終画像を得るものである。
【0003】
近年では電子写真方式を用いた複写機、プリンター等で出力した画像の画質に対しての要求も従来より更に高くなってきている。特にカラー複写機やカラープリンターではその画質に対する要求は高い。このような従来以上の性能が求められるている改善すべきて点の一つとしてはカブリ現象がある。カラー画像を得るためには それぞれの色のトナーにより形成された画像を複数重ね合わせてカラー画像を形成するが、その際にカブリがあると他の色の画像部分に混色するため、画像の品位を低下させる原因となる。
【0004】
また、別の改善すべき点としては、再転写現象がある。先に述べたようにカラー画像は複数の色の画像を中間転写体や紙等の転写材上に順次転写し重ねることにより形成されるが、再転写現象とは、先に転写材上に転写されたトナーが次の色の転写の際に潜像担持体上に戻ってしまう現象である。この現象が起こると、先に転写したトナーの色が薄くなり最終画像の色が変わってしまい、画像品位の低下の原因となる。
【0005】
また、特許文献1等で開示されている定着方式(以下、「サーフ定着」とも呼ぶ)や、特許文献2等で開示されている電磁誘導を利用した定着方式においては、ブリスターと呼ばれる現象が通常の定着機と比較して起こり易くなることもわかった。
上述した課題であるカブリ、再転写現象、またはブリスター現象は、転写残トナーを再利用する画像形成装置において圧倒的に多く発生することもわかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−346744号公報
【特許文献2】
特開平7−295411号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決した多色画像形成装置及びトナーを提供することにある。即ち、本発明の目的は、転写残トナーを再利用する画像形成装置においても、カブリ現象、再転写現象、及びブリスターが発生しないトナー及び画像形成装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の外添剤を選択して組合せ使用することが有効であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
【0009】
(1) 転写残トナーを再利用する画像形成装置に使用されるトナーであって、該トナーは平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有することを特徴とするトナー、
(2) 該トナーが略球形であることを特徴とする前記(1)に記載のトナー、
(3) 円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のトナー、
(4) 少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像をトナーで現像する現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置を有する画像形成装置に使用されることを特徴とする前記(3)に記載のトナー、
(5) 前記画像形成装置が、現像装置を複数有する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)に記載のトナー、
(6) 前記画像形成装置が、少なくとも前記潜像担持体、前記帯電装置、及び前記現像装置を具備する画像形成ユニットを複数有する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)に記載のトナー、
(7) 前記画像形成装置の画像形成ユニットが列設されている画像形成装置であることを特徴とする前記(6)に記載のトナー、
(8) 前記画像形成装置が、加熱体と、該加熱体の表面に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)乃至(7)のいずれか一項に記載のトナー、
(9) 前記画像形成装置が、磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー像を加熱定着する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)乃至(7)のいずれか一項に記載のトナー、
(10) 前記第1無機微粒子の平均一次粒径が100〜500nmであることを特徴とする前記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載のトナー、
(11) 前記第1無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のトナー、
(12) 前記第2無機微粒子の平均一次粒径が25乃至70nmであることを特徴とする前記(1)乃至(11)のいずれか一項に記載のトナー、
(13) 前記第2無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(1)乃至(12)のいずれか一項に記載のトナー、
(14) 示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とする前記(1)乃至(13)のいずれか一項に記載のトナー、
(15) 非磁性トナーであることを特徴とする前記(1)乃至(14)のいずれか一項に記載のトナー、
(16) 少なくともモノマーと着色剤を含有する組成物を造粒して重合する工程を経て製造されることを特徴とする前記(1)乃至(15)のいずれか一項に記載のトナー、
(17) 少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像を現像するトナーを収納した現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置、転写残トナーを再利用させるための装置を有する画像形成装置であって、該トナーが、平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有するトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(18) 該トナーが円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有するトナーであることを特徴とする前記(17)記載の画像形成装置、
(19) 現像装置を複数有することを特徴とする前記(17)に記載の画像形成装置、
(20) 少なくとも前記潜像担持体、前記帯電装置、及び前記現像装置を具備する画像形成ユニットを複数有することを特徴とする前記(17)に記載の画像形成装置、
(21) 前記画像形成ユニットが列設されていることを特徴とする前記(20)に記載の画像形成装置、
(22) 加熱体と、耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着することを特徴とする前記(17)乃至(21)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(23) 磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー像を加熱定着することを特徴とする前記(17)乃至(21)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(24) 前記第1無機微粒子の平均一次粒径が100〜500nmであることを特徴とする前記(17)乃至(23)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(25) 前記第1無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(17)乃至(24)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(26) 前記第2無機微粒子の平均一次粒径が25乃至70nmであることを特徴とする前記(17)乃至(25)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(27) 前記第2無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(17)乃至(26)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(28) 前記トナーが示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とする前記(17)乃至(27)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(29) 前記トナーが非磁性トナーであることを特徴とする前記(17)乃至(28)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(30) 前記トナーは、少なくともモノマーと着色剤を含有する組成物を造粒して重合する工程を経て製造されることを特徴とする前記(17)乃至(29)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(31) 前記感光体がアモルファスシリコン感光体であることを特徴とする前記(17)乃至(30)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記要件を満たした多色画像形成装置及びトナーを用いることで、前記の課題をすべて解決することができる。この構成によって前記の課題が解決できた理由について、次のように考えられる。
従来の外添剤には、摩擦帯電機能を有するものが多い。しかしながら、そのような外添剤はトナー粒子の中に埋没してしまうと、トナーとしての摩擦帯電量は低下してしまう。特に、転写残トナーを再利用する(再び現像に使用する)画像形成装置では、再び現像装置に戻ってきたときには、外添剤がトナー粒子の中に埋没してしまっていることが多く、摩擦帯電量の低いトナーを含んでしまう。
【0011】
カブリ現象については、本発明者等は、適正な帯電量を付与されなかったトナーが潜像担持体上の非画像部に付着してしまう現象であると考えている。よって、転写残トナーを再利用する画像形成装置では発生しやすい。
【0012】
これについては、一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムのいずれかの酸化物から選ばれる第1無機微粒子をトナー表面に含有することにより、解決される。この第1無機微粒子はトナーの帯電を下げる効果がある。また、一次粒径が大きいためにトナー粒子から遊離しやすい。このような性質を持つ外添剤をトナー表面に有していても、トナーリサイクルの過程でトナー粒子からだんだんと遊離してしていく。何度も再利用された場合は、この第一無機微粒子がトナー表面からほとんど無くなってしまう。前述したように、この第一無機微粒子があることによってトナーの摩擦帯電量を下げていたので、それが無くなった分、摩擦帯電量を持ち上げる効果がある。ただし、その他の外添剤がトナー粒子の中に埋没した分 摩擦帯電量を下げているので、トータル的には摩擦帯電量は変動しないようになっている。この結果、摩擦帯電量の低下がおこらず、カブリの発生が抑制されたものと考えている。
【0013】
更に、トナーが円相当径1〜2μmのものを20〜30個数%含有することにより上記無機微粒子を最適な状態で保持することができ、状況に応じてトナーに適正な帯電を付与することにより、低湿環境下で過剰に帯電するトナーの発生を防止でき、解決できているものと本発明者等は考えている。
【0014】
【0015】
再転写現象については、転写材上に一旦転写されたトナーに次の色の転写時に転写材を通して転写電流が注入され、適正な帯電量を有していなかったトナーの帯電を反転させ、帯電が反転したトナーが転写材から潜像担持体に戻ってしまう現象であると本発明者等は考えている。カブリ現象のところで説明したのと同じ理由により、適正な帯電量を付与されないトナーの発生が抑制され、この問題が解決できているものと本発明者等は考えている。
【0016】
ブリスターに関しては、定着による急加熱によって記録材内の空気や水分の蒸発が起こるために定着画像が発泡したようになってしまう現象だと本発明者等は考えている。この現象は、現像器を列設したより高速定着が可能な多色画像形成装置や、高速定着が可能なフィルム式定着装置においてより顕著に発生する。この問題に関しても、適正な帯電量を付与されていないトナーが記録材上に転写された場合、トナーと記録材との付着力が弱い。よって、記録材からの揮発物によって定着画像が乱されてしまうものと本発明者等は考えている。
【0017】
次に、本発明の構成要件について説明する。
【0018】
<トナー>
本発明のトナーは、平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子を表面に含有する。第1無機微粒子の平均一次粒子が80nm未満である場合は、トナー粒子からの遊離効果が十分でない。一方、第1無機微粒子の平均一次粒径が800nmを超える場合は、潜像担持体表面に微小な傷を付けやすく、トナーの融着現象が悪化することがある。また、第1無機微粒子の比表面積が小さいために帯電コントロール効果も十分に得られないことがある。第1無機微粒子の平均一次粒径は、遊離効果、帯電コントロール性、潜像担持体表面への傷つけ難さの点で、100〜500nmであることが更に好ましい。
【0019】
チタン、アルミニウム、亜鉛、及びジルコニウムのいずれかの酸化物は、白色でありカラー用のトナーに用いることができ、また、トナーへの帯電コントロール効果が高く、また、潜像担持体表面に微小な傷をつけ難い。チタン、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムのいずれかの酸化物以外の無機微粒子では、色味、帯電コントロール性、潜像担持体表面への傷つけ易さの点で本発明の課題を全て解決するためには検討の余地が残されている。第1無機微粒子の種類は、帯電コントロール性、潜像担持体表面への傷つけ難さの点で、チタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることがより好ましい。
【0020】
第1無機微粒子は、一種類のみならず、二種類以上ものを併用しても良い。また、第1無機微粒子としては、疎水化処理剤として公知のカップリング剤やオイル等の有機化合物により、常法に従って表面を疎水化処理したものでも用いることができる。
【0021】
第1無機微粒子の添加量としては、トナー母体量を100質量部としたときに0.05〜5質量部であることが好ましい。添加量が0.05質量部未満では上述した第1無機微粒子による効果が十分に得られないことがあり、5質量部を超えるとトナーの定着性を損なうことがある。
【0022】
本発明のトナーは、更に、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子を表面に含有する。平均一次粒径が80nm以上である場合では、第1無機微粒子の帯電コントロール効果が十分に得られず、本発明の課題を全て解決することができないことがある。第2無機微粒子の平均一次粒径は、第1無機微粒子の帯電コントロール性の維持の点で、25乃至70nmであることが更に好ましい。
【0023】
第2無機微粒子の種類としては、シリカ以外であれば特に限定されず、例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ジルコニウム、マンガン、セリウム、ストロンチウム等の酸化物粉体、及びチタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複合金属酸化物粉体、及びホウ素、ケイ素、チタニウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン等の炭化物、及びマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の炭酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩等を挙げることができる。これらの中でも第2無機微粒子は、チタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることが好ましい。その理由としては、第1無機微粒子の帯電コントロール効果を高める効果が他の物に比べて特に高いためである。
【0024】
第2無機微粒子は、一種類のみならず、二種類以上ものを併用しても良い。また、第2無機微粒子としては、疎水化処理剤として公知のカップリング剤やオイル等の有機化合物により、常法に従って表面が疎水化処理されたものでも用いることができる。
【0025】
第2無機微粒子の添加量としては、トナー母体量を100質量部としたときに0.01〜1.0質量部、更に好ましくは0.02〜0.7質量部であることが好ましい。添加量が0.01質量部未満では上述した第1無機微粒子による効果が十分に得られないことがあり、1.0質量部を超えるとトナーの定着性を損なうことがある。
【0026】
本発明のトナーは、更に、平均一次粒径が30nm未満のシリカ微粒子を表面に含有する。平均一次粒径が30nm以上である場合は、第1無機微粒子の帯電コントロール効果が十分に得られず、本発明の課題を全て解決することができないことがある。この理由については定かではないが、シリカ微粒子の高い負帯電性が第1無機微粒子の帯電コントロール効果とのバランスの上で必要であるものと本発明者等は考えている。シリカ微粒子としては、平均一次粒径8乃至20nmのものがより好ましい。
【0027】
シリカ微粒子の添加量としては、トナー母体量を100質量部としたときに0.2〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.4〜3.0質量部である。シリカ微粒子の添加量が0.2質量部未満では課題に対する改良の効果が得られないことがあり、また、5.0質量部を超える場合はトナーの定着性を損なうことがある。
【0028】
尚、本発明に用いられるシリカ微粒子のうち特に好ましいものとしては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。
【0029】
また、乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、前記シリカ微粒子はそれらも包含する。
【0030】
本発明に用いられるシリカ微粒子は、必要に応じて、疎水化、摩擦帯電性の制御などの目的のために、シランカップリング剤、有機ケイ素化合物、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル等の処理剤で処理されていても良く、その方法も公知の方法が用いられ、シリカ粒子と反応または物理吸着する処理剤でシリカ微粒子が処理される。なお、本発明に用いられるシリカ微粒子は、製法や組成、表面処理の有無等、条件の異なるシリカを複数種類含むものであっても良い。
【0031】
そのような処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは一種または二種以上の混合物で用いられる。
【0032】
本発明のトナーは、円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有することが好ましい。これは従来公知の分級機によって調整することが可能である。また、重合トナーに関しては直接粒径を調整して合成することも好ましい。
【0033】
円相当径1〜2μmのトナー粒子の割合が30個数%より多い場合は、低湿環境下において帯電付与時に過剰帯電粒子が増加しやすく、カブリ現象を悪化してしまうことがある。また20個数%より少ない場合は、改善効果は見られるものの本発明の改善効果を十分に発揮することができないことがある。
【0034】
本発明のトナーは、示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することが好ましい。60〜90℃に吸熱ピークを有するトナーは、本発明に使用される外添剤構成によるトナーの帯電コントロールがより効果的に働き、より好ましい結果が得られる。更に、本発明のような高速での定着に優れる画像形成装置は、より低温での定着性を必要とするため、60〜90℃に吸熱ピークを有することが好ましい。
【0035】
吸熱ピークが60℃未満にあると保存安定性が損なわれ、ブロッキング等の問題が発生しやすい。一方、90℃を超える温度に吸熱ピークがあっても更なるトナーの帯電コントロール性が向上する効果が得られにくく、定着性にも若干劣る場合が多い。ただし60〜90℃に吸熱ピークがあれば90℃を超える温度域に別の吸熱ピークがあっても構わない。
【0036】
示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃にあるトナーの形態にする手段としては、示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃に有する化合物をトナー中に内添することが好ましい。示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃に一つ以上ある物質としては、例えばワックスを挙げることができる。
【0037】
本発明に用いられるワックスとしては、次のようなワックスが挙げられる。すなわち、パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。ポリオレフィンワックスとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンのような直鎖α−オレフィン及び分岐α−オレフィンの単重合体や共重合体が挙げられる。
【0038】
その他、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ひまし油及びその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタム等、示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃にあるものであればどれも用いることが可能である。
【0039】
ワックスは一種類用いても良いし、複数種類を併用しても良い。ワックスの含有量としては、重合性単量体を100質量部としたときに0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。ワックスの含有量が0.3質量部より少ないとトナーの示差熱分析における吸熱ピークにワックスの効果が反映されないことがある。一方、ワックスの含有量が30質量部よりも多いとトナーの着色力や帯電性等が損なわれることがある。
【0040】
本発明のトナーは、外添剤としての前記無機微粒子等の他に、着色剤等を含有するトナー母体粒子を有する。このトナー母体粒子は、結着樹脂と着色剤とを有しており、必要に応じて荷電制御剤や前述したワックス(可塑剤)等の他の添加物を含む。
【0041】
本発明に用いうる結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン類及びその置換体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリルアミド等のような二重結合を有するモノカルボン酸及びその置換体;例えばマレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルのような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニル類またはビニルエステル類、又は例えばビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のようなビニルエーテル類等のビニル系単量体を単独で用いた重合体または二種以上を用いた共重合体;更にはスチレン−ブタジエン共重合体、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン等;これらを単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これら結着樹脂のうち、本発明においては結着樹脂としてスチレン系ポリマーが含有されていることが好ましい。スチレン系ポリマーはそれ自身の主鎖の極性が低く、本発明のトナーにおける外添剤の構成によるトナーの帯電コントロールがより効果的に働くため好ましい。
【0043】
また、本発明に使用される結着樹脂には、トナーの定着温度を調整するために、以下に例示する架橋性重合性単量体(「架橋剤」ともいう)を含有することも可能である。
【0044】
架橋性重合性単量体としては、主として二個以上の重合可能な二重結合を有する重合性単量体が用いられる。具体例としては、二官能の架橋剤、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0045】
架橋性重合性単量体は、一種を使用または二種以上を併用することができ、重合性単量体を100質量部としたときに0.001〜10質量部添加することが好ましい。添加量が0.001質量部よりも小さいと高温下での保存性が劣ったり、高温オフセットが発生したりすることがあり、添加量が10質量部よりも大きいと定着性に悪影響が現れることがある。
【0046】
本発明のトナーは、非磁性トナーである場合に特に効果的である。非磁性トナーは、電気抵抗が比較的低い磁性粉を含有する磁性トナーに比べて、トナー母体として低湿環境において過剰に帯電したトナーが発生しやすい。そのために、本発明のトナーにおける外添剤構成による効果が、磁性トナーに比べて非磁性トナーにおいてより顕著に現れる。また、非磁性トナーはカラーへの対応が容易である点でも好ましい。
【0047】
本発明のトナーには、必要に応じて荷電制御剤を添加しても良い。荷電制御剤にはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。
【0048】
トナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0049】
例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、四級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノンメタルカルボン酸型化合物等が挙げられる。
【0050】
また、トナーを正荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0051】
例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
更に本発明において直接重合法を用いる場合には、重合阻害性が無く水系への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。具体的化合物としては、ネガ系としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の金属化合物、スルホン酸、カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が利用でき、ポジ系として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。
【0053】
該荷電制御剤を内添する場合は重合性単量体100質量部に対し0.1〜20質量部が好ましい。荷電制御剤の添加量が0.1質量部よりも小さいと電荷の制御効果が得られないことがあり、20質量部より大きいと定着性が悪化したり、電荷が過剰になったりすることがある。また、外添する場合は上記と同様の理由により0.01〜10質量部が好ましい。
【0054】
本発明のトナーには、着色剤としてカーボンブラック、マグネタイト等の黒色着色剤の他に、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン着色剤等あらゆる顔料や染料を用いることができる。
【0055】
例えば本発明のトナーをフルカラー用トナーとして使用する場合には、次の様なものが挙げられる。
【0056】
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
【0057】
本発明のトナーに使用される顔料は単独で使用しても構わないが、染料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0058】
マゼンタ用染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27;C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40;C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28の如き塩基性染料が挙げられる。
【0059】
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した構造を有する銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
【0060】
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,65,73,83;C.I.バットイエロー1,3,20等が挙げられる。
【0061】
本発明に使用される前述したような着色剤の添加量は、重合性単量体を100質量部としたときに0.1〜20質量部であることが好ましい。着色剤の添加量が0.1質量部よりも小さいと着色力が劣り、20質量部よりも大きいと定着性が悪化することがある。
【0062】
本発明のトナー母体の製造方法としては、従来より知られている種々の製造方法を利用することができるが、例えば、トナーの構成材料をヘンシェルミキサー、ボールミル、V型ミキサー等の混合器を用いて混合する混合行程、熱ロールニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて構成材料を混練する混練行程、混練物を冷却固化後、ジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕する粉砕行程、及び風力分級機等を用いて粉砕物を分級する分級行程等を経て製造する方法(いわゆる「粉砕法」)がある。
【0063】
また別の方法としては、少なくともモノマーと着色剤を含有する成分を造粒して重合する行程を経て製造する方法(いわゆる「重合法」)がある。本発明のトナーは、その製造工程として少なくともモノマーと着色剤を含有する成分を造粒して重合する行程を経て製造される場合に特に好ましい。この製造方法で製造されたトナーはその形状として表面が滑らかな状態のものが得られ、本発明の外添剤構成によるトナーの帯電コントロールがより効果的に働き、本発明の課題に関してより高い効果が得られる。
【0064】
次に、この製造方法について以下に詳細に説明する。
【0065】
前述のトナー母体を重合するにあたっては、水系媒体中に単量体系の液滴粒子を形成し、その状態で単量体を重合する懸濁重合法を、より好適な製造方法として利用することができる。このような懸濁重合法では、単量体は、重合開始剤の存在下、架橋剤の存在下、または不存在下で重合しうる。
【0066】
重合開始剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフ夕レート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブロパン、ジ−t−ブチルパーオキシ−α−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグル夕レート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフ夕レート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリアジン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、クミンパービバレート、ジクミルパーオキサイド、アゾビス−イソブチロニトリル及びジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0067】
上述の重合開始剤は、添加量、重合温度、及び半減期等を考慮して、単独または混合して使用できる。また該重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には結着樹脂を構成する単量体に対し0.5〜20質量部添加され、用いられる。更に、重合度を制御するため公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加して用いることも可能である。なお、重合開始剤は、重合前の任意の段階で重合系内に添加することができる。
【0068】
前記懸濁重合法においては、単量体系の好適な造粒を実現するために、水系媒体中で液滴粒子を分散させる分散剤、及び必要に応じて安定化剤を使用することが好ましい。本発明で用いられる分散剤としては、一般的な分散剤を用いることが可能で、場合によっては、適当な安定化剤を併用することができる。例えば無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。また有機化合物としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が挙げられる。これらを水相に分散させて使用できる。
【0069】
この分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部使用することが好ましい。分散剤の添加量が0.2質量部より小さいとトナー粒径が大きくなったり塊状で反応してしまう恐れがあり、2.0質量部よりも大きいと粒径が細かすぎたり、微粉が多量に出来てしまうことがある。
【0070】
またこれら分散剤の微細な分散のために、重合性単量体100質量部に対して0.001〜0.1質量部の界面活性剤等の安定化剤を併用しても良い。これは上記分散剤の所期の作用を促進するためのものであり、その具体例としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。これらのような安定化剤の添加量が0.001質量部より小さいと効果が現れないことがあり、0.1質量部よりも大きいとトナー粒径が不均一になったりすることがある。
【0071】
前述した重合法による本発明のトナーの具体的な製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0072】
即ち、重合性単量体中に低軟化点物質からなる離型剤(前述したワックス)、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤、その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等の高剪断能を有する攪拌機によって均一に溶解または分散せしめた単量体系を、分散剤等を含有する水相中に通常の攪拌機またはホモミキサー、ホモジナイザー等により分散せしめる。好ましくは単量体液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように攪拌速度、時間を調整し、造粒する。その後は分散剤等の作用により粒子状態が維持され、かつ粒子の沈降が防止される程度の攪拌を行えば良い。
【0073】
重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行うのが良い。また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、トナー定着時の臭いの原因等となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、または反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。懸濁重合法においては、通常、単量体系100質量部に対して水300〜3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。また、重合終了後の任意の段階で分級を行っても良い。
【0074】
以下に、本発明のトナーに係る測定方法等について説明する。
【0075】
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型またはコールターマルチサイザー(コールター社製)等による種々の方法で測定可能であるが、本発明においては、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、粒度域を16分割したデータとして出力させた。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフイックジャパン社製)が使用できる。
【0076】
測定法としては、前記電解水溶液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5mL加え、更に測定試料を2〜20mgを加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから本発明に係わる所の体積分布から求めた体積標準の体積平均粒径(Dv:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)と体積変動係数(Sv)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)と長さ変動係数(S1)、及び体積分布から求めた重量基準の粗粉量(8.00μm以上)、個数分布から求めた個数基準の微粉量(5μm以下)を求め、これらを用いることにより、トナーの重量平均粒径及び粒度分布を求めた。
【0077】
本発明において円相当径とは、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて計測されるものであり、本発明では「FPIA−1000型」(東亜医用電子社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
【0078】
円相当径=(粒子投影面積/π)1/2×2
ここで「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積である。
【0079】
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物等を除去したイオン交換水10mLを用意し、その中に分散剤として活性界面剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子として直径5(mm)のチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃とならないように適宜冷却する。
【0080】
トナーの円相当径の測定には、前記フロー粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μLとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いてトナーの円相当径を求める。そして円相当径1〜2μmである粒子の個数%の測定は、0〜90μmの範囲を57分割で行い、1〜2μmの範囲の粒子数を個数%で算出した。
【0081】
本発明のトナーの示差熱分析における吸熱ピークは、DSC測定によって測定することができる。本発明に係わるDSC測定では、トナーの熱のやり取りを測定し、その挙動を観測するので、測定原理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましく、例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7が使用できる。
【0082】
測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、一回昇温させ前履歴をとった後、温度速度10℃/min、温度0〜200℃の範囲で降温、昇温させたときに測定されるDSC曲線を用いる。
【0083】
吸熱ピーク温度とは、DSC曲線において、プラスの方向のピーク温度のことであり、即ち、ピーク曲線の微分値が正から負にかわる際の0になる点を言う。
【0084】
本発明において第1無機微粒子、第2無機微粒子、及びシリカ微粒子の平均一次粒径の測定は、走査型電子顕微鏡FE−SEM(日立製作所社製 S−4700)により10万倍に拡大したトナー粒子表面の写真を撮影し、その拡大写真を必要に応じて更に拡大して行い、それぞれの粒子について50個以上の粒子について定規、ノギス等を用い、その粒径を測定する。その際、微粒子の組成判別は、上記装置のX線マイクロアナライザーを指定した特定の元素のみを検出することにより行う。
本発明においては、感光体としてアモルファスシリコン感光体を使用することが好ましい。本発明の第1無機微粒子はトナー粒子から遊離しやすい構成となっている。感光体としては耐久性の高いものが好ましい。前述したアモルファスシリコンを使用した場合、遊離した外添剤による傷が抑制される。結果的にフィルミングも防止できる。
【0085】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、前述したトナーを用い、少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像を前記トナーで現像する現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置、トナーを再利用させる為の装置を有する。
【0086】
本発明の構成はトナーの帯電が安定するために、カブリが防止されて、再転写、ブリスターも発生せずに高画質も維持できるので、多色画像形成装置に好適であることから、前記現像装置を複数有する構成とすることが好ましい。
【0087】
このような多色画像形成装置における画像形成方法としては、各々四色のトナー毎に画像形成部(画像形成ユニット)を設け、各画像形成部において潜像担持体としての感光体ドラムに各色ごとの可視画像を形成し、これら可視画像を転写材に順次転写するような画像形成方法であり、以下に装置及び方法について図面を用いて説明する。
【0088】
複数画像形成部にて各色のトナー画像をそれぞれ形成し、これを同一記録材に順次重ねて転写するようにした画像形成装置を図1に基づき説明する。
【0089】
この画像形成装置では、第1、第2、第3及び第4の画像形成部28a、28b、28c、28dが並んで設けられており、各画像形成部はそれぞれ専用の潜像担持体、いわゆる感光ドラム19a〜19dと、帯電ローラ16a〜16dと、潜像形成手段23a〜23dと、現像器17a〜17d、クリーニング部18a〜18dとを有する構成となっており、本発明における画像形成ユニットを構成している。これらの画像形成部28a〜28dは、記録材Sを搬送するための搬送ベルト25上に並んで設けられており、搬送ベルト25を介して感光ドラム19a〜19dの反対側には、転写用放電部24a〜24dがそれぞれ設けられている。
【0090】
画像形成部28a〜28dは搬送ベルト25の直上に設けられている。すなわち、図1の画像形成装置は、潜像担持体、帯電装置、及び現像装置を具備する画像形成ユニットを複数(四つ)有する画像形成装置であり、さらにはこの画像形成ユニットが搬送ベルト25によるプロセス方向に沿って列となって設けられている。すなわち画像形成ユニットが列設されている画像形成装置である。
【0091】
搬送ベルト25において第1の画像形成部28aよりも上流側には記録材Sを適切な極性に帯電する搬送用帯電器27が設けられ、第4の画像形成器28dよりも下流側には搬送ベルト25から記録材Sを離すための除電器20が設けられ、除電器20よりも下流側にはトナー像を定着するための定着器22が設けられている。
【0092】
このような構成にて、まず第1の画像形成部28aの感光ドラム19a上に潜像形成手段23aによって原稿画像における、例えばイエロー成分色の潜像が形成される。該潜像は現像器17aのイエロートナーによって可視画像とされ、転写部24aにて、転写材としての記録材Sに転写される。
【0093】
上記のようにイエロー画像が転写材Sに転写されている間に、第2の画像形成部28bではマゼンタ成分色の潜像が感光ドラム19b上に形成され、続いて現像器17bのマゼンタトナーで可視画像とされる。この可視画像(マゼンタトナー像)は、上記第1の画像形成部28aでの転写が終了した転写材Sが転写用放電部24bに搬入されたときに、該転写材Sの所定位置に重ねて転写される。
【0094】
以下、上記と同様な方法により第3、第4の画像形成部28c、28dによってシアン色、ブラック色の画像形成が行われ、上記同一の転写材Sにシアン色、ブラック色を重ねて転写するのである。このような画像形成プロセスが終了したならば、転写材Sは定着器22に搬送され、転写材S上の画像が定着される。これによって転写材S上には多色画像が得られるのである。転写が終了した各感光ドラム19a〜19dは、クリーニング部18a〜18dによる残留トナーの除去が行われ、引き続き行われる次の潜像形成のために供せられる。除去された残留トナーは、図示しないトナー搬送経路を通って現像装置に戻される。なお、上記画像形成装置では、転写材としての記録材Sの搬送のために、搬送ベルト25が用いられており、図1において、転写材Sは右側から左側へ搬送され、その搬送過程で、各画像形成部28a〜28d及び各転写用放電部24a〜24dを通過し、転写を受ける。
【0095】
この画像形成装置において、転写材を搬送する搬送手段として、加工の容易性及び耐久性の観点から、ポリエステル繊維(商品名:テトロン繊維)のメッシュを用いた搬送ベルト及びポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂の如き薄い誘電体シートを用いた搬送ベルトが利用される。
【0096】
転写材Sが第4の画像形成部28dを通過すると、AC電圧が除電器20に加えられ、転写材Sは除電され、搬送ベルト25から分離される。その後、定着器22に入り、画像定着されて排出口26から排出される。
【0097】
本発明においては、前記図1のように画像形成ユニットが列設されているものが好ましく、画像形成ユニットは列設されていればその列設方向は縦でも横でも円弧状でも構わない。
【0098】
更に、本発明の画像形成装置の構成は、トナーの帯電が安定するために、トナー飛散が防止され、他の画像ユニットへの他色トナーの混入も無く、高画質が維持できるので、多色画像形成装置に好適である。
【0099】
また、この画像形成装置に使用される定着装置としては従来公知の装置が使用可能であるが、耐熱性定着フィルムを介して記録材上の顕画像を加熱定着するフィルム加熱定着装置の方が、本発明の効果がより発揮されやすく、好適に用いることができる。また、フィルム加熱定着装置では、トナー定着のための加熱を行うにあたって、フィルムを介して加熱を行う装置であっても良いし、フィルム自体が発熱することによって加熱を行う装置であっても良い。
【0100】
以下に、フィルム加熱定着装置の具体的な装置例を示す。
【0101】
図2は、加熱体と、耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着するフィルム方式の加熱加圧定着手段の一例の分解斜視図であり、図3は、上記加熱加圧定着手段の要部の拡大横断面図である。このフィルム加熱定着装置は、内部の支持体に固定支持させた加熱体を有し、該加熱体に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルムを回転加熱部材とし、該エンドレスフィルムを介してトナー画像を加熱加圧する定着装置である。
【0102】
この定着装置は、内部の支持体37に固定支持させた加熱体31を有する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム32を有する回転加熱部材と、耐熱性エンドレスフィルム32を介して回転加圧部剤としての円筒状の加圧ローラ33とを有し、耐熱性エンドレスフィルム32と加圧ローラ33とは相互圧接してニップ部を形成している。
【0103】
より具体的には加熱体31は各種支持体35、36及び37によって支持され、適度な当接圧に調整するための付勢手段であるコイルバネ34によって加圧ローラ33側に向けて付勢されるような構成とされている。そして、前記ニップ部の上流側には転写材を該ニップ部に導入するための導入用ガイド部材39が設けられ、ニップ部の下流側には定着後の転写材を排出するための排出用ガイド部材38が設けられている。
【0104】
この定着装置は、作動時には図3に示す矢印の方向に回転し、トナー画像を担持した被加熱体としての転写材を耐熱性エンドレスフィルム32に密着させて加熱体31に向けて押圧し、耐熱性エンドレスフィルム32とともに移動駆動させる。なお、前記付勢手段は加熱体31と加圧ローラ33とを互いに近接する方向へ付勢するものであれば特に限定されず、また、図中の支持体(図2では支持体35)及び加圧ローラ33のいずれか一方または両方にあっても良い。
【0105】
固定支持された加熱体31は、ヒータ基盤31a、通電発熱抵抗体(発熱体)31b、表面保護層31c、及び検温素子31d等を有する低熱容量洗浄加熱体として構成されている。ヒータ基盤31aには耐熱性、絶縁性、低熱容量及び高熱伝導性を呈する部材が好ましく、その大きさや材質については特に限定されないが、例えば厚み1mm、幅10mmで長さ240mmのアルミナ基板等が好ましい。
【0106】
発熱体31bは、ヒータ基盤31aの下面(フィルム32との対面側)の略中央部に、支持体37の長手方向(フィルム32の幅方向)に沿って、例えばAg−Pd(銀パラジウム)、Ta2N、RuO2等の電気抵抗材料を、厚み約10μm、幅1〜3mm程度の線状または細帯状にスクリーン印刷等により塗工し、その上に表面保護層31cとして、例えば耐熱ガラスを蒸着等により約10μmの厚みにコートしたものである。
【0107】
検温素子31dは、例えばヒータ基盤31aの上面(発熱体31bを設けた面とは反対側の面)の略中央部に、スクリーン印刷等により塗工して具備させたPt(白金)膜等の低熱容量の測温抵抗体である。なお、低熱容量のサーミスタ等による代用も可能である。加熱体31は、発熱体31bに対して画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電することで発熱体31bを略全長にわたって発熱させる。
【0108】
通電はAC100Vであり、検温素子31dの検知温度に応じて、トライアックを含む通電制御回路(不図示)により、通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
【0109】
加熱体31は、ヒータ基盤31a、発熱体31b、及び表面保護層31cの熱容量が小さいので、発熱体31bへの通電によって加熱体31の表面が所望の定着温度まで急速に温度上昇したり、未使用時には室温付近まで急冷するため、耐熱性エンドレスフィルム32や回転加圧部材としての加圧ローラ33に与える熱衝撃は大きいが、前述したトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0110】
なお、前述したように本発明におけるトナーは、どの環境においても帯電コントロール効果が良好に保たれるため、オフセットやかぶり等による加熱加圧手段へのストレスを抑制する効果がある。そのために、前述したトナーを用いることによって、フィルム式加熱定着装置においても長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。これは後述する電磁誘導方式の加熱加圧定着装置においても同様である。
【0111】
回転加圧部材との間にニップ部を形成する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム32には、耐熱性、強度確保、耐久性及び低熱容量の観点から、厚さ20〜100μmの単層または複合層からなる耐熱性シートであることが好ましく、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルホン(PES)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリパラバン酸(PPA)、または複合層フィルム、例えば、厚さ20μmのポリイミドフィルムの少なくともトナー画像当接面側に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、PFA、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオルプロピレンの共重合体(FEP)等のフッ素樹脂やシリコーン樹脂等、さらにはそれにカーボンブラック、グラファイト、導電性ウイスカ等の導電材を添加した離型性コート層を、厚み10μm程度に施したもの等が好ましい。
【0112】
また、回転加圧部材である加圧ローラ33は、上記の如き耐熱性エンドレスフィルム32を移動駆動させるための駆動ローラを兼ねることもでき、トナー等に対する離型性に優れるだけでなく、耐熱性エンドレスフィルム32との密着性を有することが好ましく、例えばシリコーンゴム等のゴム弾性体が好適に用いられる。上述したように加圧ローラ33に加わる熱衝撃は大きく、長期使用による加圧ローラ33の表面劣化は上記の如き加熱加圧手段の駆動機能そのものにも影響を及ぼすが、前述したトナーを用いることによって、上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0113】
図4は、磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する電磁誘導方式の加熱加圧定着装置の一例の模式図である。この定着装置は、内部に磁界発生手段を有し、該磁界発生手段の作用で電磁誘導発熱する発熱層を有する円筒状のエンドレスフィルムからなる加熱体と、回転加圧部材とを有する。
【0114】
上記電磁誘導方式の加熱加圧定着装置は、内部に励磁コイル40が巻き付けられるコイル芯材(磁性体)42、及び励磁コイル40を支持しながら耐熱性エンドレスフィルム47の走行をガイドする滑板43を含む磁界発生手段と、該磁界発生手段に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム47とを有する回転加熱部材と、耐熱性エンドレスフィルムを介して回転加圧部材としての円筒状の加圧ローラ48とを有し、耐熱性エンドレスフィルム47と加圧ローラ48とは相互圧接してニップ部Nを形成している。図5は、耐熱性エンドレスフィルムの47の断面拡大説明図である。この定着装置は、作動時には図4に示す矢印の方向に回転し、トナー画像Tを担持した被加熱体としての転写材Pを耐熱性エンドレスフィルム47に密着させて磁界発生手段に向けて押圧し、耐熱性エンドレスフィルム47とともに移動駆動させる。
【0115】
この時、上記磁界発生手段によって発生する磁界は、励磁回路(不図示)から10kHzk〜500kHzの周波数の交番電流が供給されることによって、励磁コイル40の周囲には図5中の矢印で示した磁束Hが生成消滅を繰り返す。この変動する磁界中を移動する耐熱性エンドレスフィルム47中の導電層(誘導磁性材)47bには、電磁誘導によってその磁界の変化を少なくするように図5中の矢印で示したような渦電流Aが発生する。この渦電流は、導電層の表皮抵抗によってジュール熱に変換され、結果的に耐熱性エンドレスフィルム47の中の導電層が発熱層となる。このように耐熱性エンドレスフィルム47の表層近くが直接発熱するので、フィルム基層の熱伝導率、熱容量及び耐熱性エンドレスフィルムの厚さにも依存しない急速加熱が実現できる。
【0116】
トナー画像Tを担持した被加熱体としての転写材Pは、耐熱性エンドレスフィルム47に密着してニップ部Nを通過することによって、転写材P上に定着画像を得ることができる。
【0117】
電磁誘導方式の加熱加圧定着装置に用いられる耐熱性エンドレスフィルム47は、少なくともフィルム基層47a、導電層47b、及び表面層47cの三層を有するものが好ましく用いられる。例えば、厚み10μm〜100μmのポリイミド等の耐熱性樹脂をフィルム基層47aとし、その基層47aの外周面上(被加熱体圧接面側)に導電層47bを、例えばNi、Cu、Cr等の金属を厚み1μm〜100μmでメッキ等の処理によって形成し、さらにその導電層47bの自由面に、例えばPFAやPTFE等のトナー離型の良好な耐熱性樹脂を混合または単独で被覆して表面層47cを形成したものを例示することができる。また、フィルム基層47aには導電層の役割を持たせ、二層構造としても良い。
【0118】
コイル芯材42は、例えば、フェライトパーマロイ等の高透磁率で残留磁束密度の低いもので形成されていることが好ましい。残留磁束密度の低い材質のものをコイル芯材42に用いることで、芯材自身に発生する渦電流を抑制することができるので、コイル芯材42からの発熱が無くなり効率が上がる。また、高透磁率の材質を用いることによって、コイル芯材42が磁束Hの通り道になり、外部への磁束漏れを可能な限り抑えることができる。
【0119】
励磁コイル40は、導線(電線)として一本ずつが各々絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いたものを好適に使用することができる。また、励磁コイルパターンはガラス入りエポキシ樹脂(汎用電器基板)やセラミック等の非磁性体の基板表面上に多層印刷したシートコイル基板を用いても良い。
【0120】
滑板43は、液晶ポリマーやフェノール等の耐熱樹脂で構成され、耐熱性エンドレスフィルム47との対向面には耐熱性エンドレスフィルム47との摩擦抵抗を減少させるために、例えば、PFAやPTFE等の樹脂コート、または滑り性に富むガラスコート等を施すことが好ましい。
【0121】
加圧ローラ48は、芯金の周囲にシリコーンやフッ素ゴム等を巻いて構成される。この加圧ローラ48は、軸受け手段と付勢手段(いずれも不図示)により所定の押圧力Fをもって耐熱性エンドレスフィルム47を介して滑板43との間に耐熱性エンドレスフィルム47を狭持しながらニップ部Nを形成する。なお、前記付勢手段は磁界発生手段と加圧ローラ48とを互いに近接する方向へ付勢するものであれば特に限定されず、また、磁界発生手段及び加圧ローラのいずれか一方または両方にあっても良い。
【0122】
ニップ部Nでは磁界発生手段によって発生する磁界が集中しているため、電磁誘導発熱によって耐熱性エンドレスフィルム47の表層付近が急速に直接発熱する。この結果、耐熱性エンドレスフィルム47の表面や加圧ローラ48には大きな熱衝撃が与えられ、トナー等に対する離型性や、耐熱性エンドレスフィルム47との密着性が低下することになるが、前述したトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0123】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0124】
<実施例1>
先ず、下記の手順によって重合法トナーを作製した。イオン交換水700gに0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液450gを投入し、50℃に加温した後、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000rpmにて撹拌した。これに1.0mol/リットル−CaCl2水溶液70gを徐々に添加し、Ca3(PO4)2を含む水系媒体を得た。
【0125】下記処方を60℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、9,000rpmにて均一に溶解、分散した。
【0126】
・スチレン 168質量部
・n−ブチルアクリレート 28質量部
・メチルメタアクリレート 4質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 14質量部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
・飽和ポリエステル 20質量部
・ベヘニルステアレート 30質量部
・ジビニルベンゼン 0.4質量部
これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0127】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、造粒した。
【0128】
その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、2時間で70℃に昇温し、4時間後、昇温速度40℃/Hrで80℃に昇温し、4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下でモノマーを留去し、冷却後、塩酸を加えてリン酸カルシウム塩を溶解させて、ろ過、水洗、乾燥、分級してシアントナーの母体粒子(1)を得た。
【0129】
シアントナー母体粒子100質量部に対して、平均粒子径が8nmでありヘキサメチレンジシラザンで表面処理されたシリカ微粒子1質量部(シリカ微粒子A)、第2無機微粒子(以下、「無機微粒子2」という)として平均一次粒径が45nmのルチル型酸化チタン微粒子0.15質量部(2A)、第1無機微粒子(以下、「無機微粒子1」という)として平均一次粒径が200nmのルチル型酸化チタン微粒子0.5質量部(1A)をヘンシェルミキサーで混合し、本発明のトナーを得た。このトナーの重量平均粒径は7.2μm、1〜2μmの粒子の個数%は21.1個数%、示差熱分析での吸熱ピークは60℃にあった。
【0130】
このトナーを、図1に示す画像形成装置(プロセススピード230mm/sec、従来のローラ定着方式)に適用し、評価を行った。カブリは15℃/15%の低温低湿環境において印字率4%のライン画像を10000枚連続プリントした後に評価し、潜像担持体上のカブリをテープに転写させてそのテープを白紙に貼り、レファレンスのテープの反射率との差をリフレクトメータ(東京電色社製)により測定した。評価結果については0.5%以下を良好と判断した。
【0131】
再転写については30.0℃/90%の高温高湿環境で4%印字率のライン画像を連続プリントした後に評価し、現像順で一番最初のイエローステーションに現像ユニットを入れ、4色重ねモードと単色モードでのハーフトーン画像の反射濃度の差を評価した。また、評価結果に関しては0.1%を良好と判断した。
【0132】
ブリスターに関しては、各評価機において定着画像の濃度を上記リフレクトメータで1.30に設定して画像を出し、その時に発生した発泡の様な画像の乱れを評価した。評価結果についてはその程度により5段階で評価し、発泡状の画像の乱れが10cm2あたりに0.5個未満を5、2個未満を4、3.5個未満を3、5個未満を2とし、それより多い画像を1とした。
【0133】
使用したトナーと上記評価結果を表5に、使用した微粒子及びトナー母体粒子の種類や物性を表1〜4にそれぞれ示す。表5よりわかるように、本実施例では、カブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
<比較例1>
実施例1で用いた無機微粒子1Aを用いない以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0140】
<比較例2>
実施例1で用いた無機微粒子2Aを用いない以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0141】
<比較例3>
実施例1で用いたシリカ微粒子Aを用いず、無機微粒子2Aを1.0質量部にする以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0142】
<実施例2〜6>
実施例1で用いた無機微粒子1Aの代わりに表1に示す無機微粒子1B〜1Fをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0143】
<比較例4〜7>
実施例1で用いた無機微粒子1Aの代わりに表1に示す無機微粒子1G〜1Jをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0144】
<実施例7〜12>
実施例1で用いた無機微粒子2Aの代わりに表2に示す無機微粒子2B〜2Gをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0145】
【表6】
【0146】
<比較例8、9>
実施例1で用いた無機微粒子2Aの代わりに表2に示す無機微粒子2H、2Iをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0147】
<実施例13、14>
実施例1で用いたシリカ微粒子Aの代わりに表3に示すシリカ微粒子B、Cをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0148】
<比較例10>
実施例1で用いたシリカ微粒子Aの代わりに表3に示すシリカ微粒子Dを用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0149】
<実施例15、16>
トナー製造工程の中の分級条件を変え、表4に示す粒度分布のトナー母体粒子2、3をそれぞれ用いる以外は実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表7に示す。表7よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0150】
【表7】
【0151】
<実施例17、18>
・スチレン−アクリル酸ブチル共重合体 100質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
・ベヘン酸ベヘニル 10質量部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
前記材料を予備混合した後に、130℃に設定した二軸混練押し出し機によって溶融混練を行った。混練物を冷却後、粗粉砕をし、ジェット気流を用いた粉砕機によって微粉砕をし、更に風力分級機を用いて分級したトナー母体粒子(表4に示すトナー母体6、7)をそれぞれ用いる以外は実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0152】
【表8】
【0153】
<実施例19>
結着樹脂としてスチレン−アクリル酸ブチルの代わりにポリエステル樹脂(プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸の縮重合体)を用いる以外は実施例17と同様にしてトナー母体粒子(表4に示すトナー母体9)を作製し、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0154】
<実施例20>
実施例1の無機微粒子1A:0.5質量部の代わりに、無機微粒子1A:0.3質量部と無機微粒子1C:0.3質量部を併用する以外は実施例1と同様にしてトナーを作製し、画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0155】
<実施例21>
実施例1の無機微粒子2A:0.15質量部の代わりに、無機微粒子2A:0.1質量部と無機微粒子2C:0.1質量部を併用する以外は実施例1と同様にしてトナーを作製し、画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0156】
<実施例22,23>
実施例1の評価機(図1に示す従来のローラ定着方式による画像形成装置)に代えて、表9に示すように、図1に示す画像形成装置における定着方式として、耐熱性定着フィルムを有し加熱体による加熱方式の定着装置を有するもの(以下図2導入機)、及び図1に示す画像形成装置における定着方式として、耐熱定着フィルムを有する電磁誘導加熱方式の定着装置を有するもの(以下図4導入機)をそれぞれ用いる以外は実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0157】
【表9】
【0158】
<実施例24,25>
実施例2の評価機に代えて表9に示すように図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は実施例2と同様のトナーを用い、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0159】
<比較例11,12>
比較例1の評価機に代えて表9に示すように図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は比較例1と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0160】
<比較例13,14>
比較例2の評価機に代えて表9に示すように、図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は比較例2と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0161】
<比較例15,16>
比較例3の評価機に代えて表9に示すように、図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は比較例3と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0162】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のトナーによれば、転写残トナーを再利用する画像形成装置を使用しても、かぶり現象、再転写現象およびブリスターの発生を防止することができ、カラー画像を形成する多色画像形成装置において、高画質の画像を高速で形成することができる。
【0163】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の実施の形態における一例として、複数画像形成部にて各色のトナー画像をそれぞれ形成し、これを同一記録材に順次重ねて転写する画像形成装置を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成装置に用いられる定着装置の一例として、フィルム方式の加熱加圧定着手段の一例を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示した加熱加圧定着手段の要部を拡大して示す要部拡大横断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置に用いられる定着装置の他例として、電磁誘導方式の加熱加圧定着装置の一例を示す模式図である。
【図5】図4のX部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
17a〜17d : 現像器(現像装置)
18a〜18d : クリーニング部
19a〜19d : 感光ドラム(潜像担持体)
20 : 除電器
22 : 定着器(定着装置)
23a〜23d : 潜像形成手段(潜像形成装置)
24a〜24d : 転写用放電部(転写装置)
25 : 搬送ベルト
26 : 排出口
27 : 搬送用帯電器
28a〜28d : 第1〜第4の画像形成部(画像形成ユニット)
31 : 加熱体
31a : ヒータ基盤
31b : 通電発熱抵抗体(発熱体)
31c : 表面保護層
31d : 検温素子
32、47 : 耐熱性エンドレスフィルム(耐熱性定着フィルム)
33、48 : 加圧ローラ(加圧部材)
34 : コイルバネ
35〜37 : 支持体
38 : 排出用ガイド部材
39 : 導入用ガイド部材
40 : 励磁コイル
42 : コイル芯材(磁性体)
43 : 滑板
47a : フィルム基層
47b : 導電層(誘導磁性材)
47c : 表面層
A : 渦電流
E : レーザー光
F : 押圧力
H : 磁束
N : ニップ部
P: 記録材(転写材)
T : ト ナー画像
【発明の属する技術分野】
本発明は、静電記録方式や電子写真方式等の作画プロセスを利用した画像形成装置及びトナーに関し、特に複数の画像情報に基づく顕像化像を、多重転写することにより多色画像を得るようにした多色画像形成装置及びトナーに関するものであり、電子写真複写装置のみならず、様々なプリンター、ファクシミリ等に有用である。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子写真法としては多数の方法が知られているが、この電子写真法は、一般には光導電性物質を利用し、種々の手段により感光体上に電気的潜像を形成し、次いで該潜像をトナーで現像して可視像化し、必要に応じて紙などの転写材にトナー像を転写した後に、熱や圧力により転写材上にトナー像を定着して最終画像を得るものである。
【0003】
近年では電子写真方式を用いた複写機、プリンター等で出力した画像の画質に対しての要求も従来より更に高くなってきている。特にカラー複写機やカラープリンターではその画質に対する要求は高い。このような従来以上の性能が求められるている改善すべきて点の一つとしてはカブリ現象がある。カラー画像を得るためには それぞれの色のトナーにより形成された画像を複数重ね合わせてカラー画像を形成するが、その際にカブリがあると他の色の画像部分に混色するため、画像の品位を低下させる原因となる。
【0004】
また、別の改善すべき点としては、再転写現象がある。先に述べたようにカラー画像は複数の色の画像を中間転写体や紙等の転写材上に順次転写し重ねることにより形成されるが、再転写現象とは、先に転写材上に転写されたトナーが次の色の転写の際に潜像担持体上に戻ってしまう現象である。この現象が起こると、先に転写したトナーの色が薄くなり最終画像の色が変わってしまい、画像品位の低下の原因となる。
【0005】
また、特許文献1等で開示されている定着方式(以下、「サーフ定着」とも呼ぶ)や、特許文献2等で開示されている電磁誘導を利用した定着方式においては、ブリスターと呼ばれる現象が通常の定着機と比較して起こり易くなることもわかった。
上述した課題であるカブリ、再転写現象、またはブリスター現象は、転写残トナーを再利用する画像形成装置において圧倒的に多く発生することもわかった。
【0006】
【特許文献1】
特開平5−346744号公報
【特許文献2】
特開平7−295411号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の問題点を解決した多色画像形成装置及びトナーを提供することにある。即ち、本発明の目的は、転写残トナーを再利用する画像形成装置においても、カブリ現象、再転写現象、及びブリスターが発生しないトナー及び画像形成装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の外添剤を選択して組合せ使用することが有効であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
【0009】
(1) 転写残トナーを再利用する画像形成装置に使用されるトナーであって、該トナーは平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有することを特徴とするトナー、
(2) 該トナーが略球形であることを特徴とする前記(1)に記載のトナー、
(3) 円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載のトナー、
(4) 少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像をトナーで現像する現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置を有する画像形成装置に使用されることを特徴とする前記(3)に記載のトナー、
(5) 前記画像形成装置が、現像装置を複数有する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)に記載のトナー、
(6) 前記画像形成装置が、少なくとも前記潜像担持体、前記帯電装置、及び前記現像装置を具備する画像形成ユニットを複数有する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)に記載のトナー、
(7) 前記画像形成装置の画像形成ユニットが列設されている画像形成装置であることを特徴とする前記(6)に記載のトナー、
(8) 前記画像形成装置が、加熱体と、該加熱体の表面に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)乃至(7)のいずれか一項に記載のトナー、
(9) 前記画像形成装置が、磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー像を加熱定着する画像形成装置であることを特徴とする前記(4)乃至(7)のいずれか一項に記載のトナー、
(10) 前記第1無機微粒子の平均一次粒径が100〜500nmであることを特徴とする前記(1)乃至(9)のいずれか一項に記載のトナー、
(11) 前記第1無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(1)乃至(10)のいずれか一項に記載のトナー、
(12) 前記第2無機微粒子の平均一次粒径が25乃至70nmであることを特徴とする前記(1)乃至(11)のいずれか一項に記載のトナー、
(13) 前記第2無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(1)乃至(12)のいずれか一項に記載のトナー、
(14) 示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とする前記(1)乃至(13)のいずれか一項に記載のトナー、
(15) 非磁性トナーであることを特徴とする前記(1)乃至(14)のいずれか一項に記載のトナー、
(16) 少なくともモノマーと着色剤を含有する組成物を造粒して重合する工程を経て製造されることを特徴とする前記(1)乃至(15)のいずれか一項に記載のトナー、
(17) 少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像を現像するトナーを収納した現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置、転写残トナーを再利用させるための装置を有する画像形成装置であって、該トナーが、平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有するトナーであることを特徴とする画像形成装置。
(18) 該トナーが円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有するトナーであることを特徴とする前記(17)記載の画像形成装置、
(19) 現像装置を複数有することを特徴とする前記(17)に記載の画像形成装置、
(20) 少なくとも前記潜像担持体、前記帯電装置、及び前記現像装置を具備する画像形成ユニットを複数有することを特徴とする前記(17)に記載の画像形成装置、
(21) 前記画像形成ユニットが列設されていることを特徴とする前記(20)に記載の画像形成装置、
(22) 加熱体と、耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着することを特徴とする前記(17)乃至(21)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(23) 磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー像を加熱定着することを特徴とする前記(17)乃至(21)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(24) 前記第1無機微粒子の平均一次粒径が100〜500nmであることを特徴とする前記(17)乃至(23)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(25) 前記第1無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(17)乃至(24)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(26) 前記第2無機微粒子の平均一次粒径が25乃至70nmであることを特徴とする前記(17)乃至(25)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(27) 前記第2無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする前記(17)乃至(26)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(28) 前記トナーが示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とする前記(17)乃至(27)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(29) 前記トナーが非磁性トナーであることを特徴とする前記(17)乃至(28)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(30) 前記トナーは、少なくともモノマーと着色剤を含有する組成物を造粒して重合する工程を経て製造されることを特徴とする前記(17)乃至(29)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
(31) 前記感光体がアモルファスシリコン感光体であることを特徴とする前記(17)乃至(30)のいずれか一項に記載の画像形成装置、
に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
上記要件を満たした多色画像形成装置及びトナーを用いることで、前記の課題をすべて解決することができる。この構成によって前記の課題が解決できた理由について、次のように考えられる。
従来の外添剤には、摩擦帯電機能を有するものが多い。しかしながら、そのような外添剤はトナー粒子の中に埋没してしまうと、トナーとしての摩擦帯電量は低下してしまう。特に、転写残トナーを再利用する(再び現像に使用する)画像形成装置では、再び現像装置に戻ってきたときには、外添剤がトナー粒子の中に埋没してしまっていることが多く、摩擦帯電量の低いトナーを含んでしまう。
【0011】
カブリ現象については、本発明者等は、適正な帯電量を付与されなかったトナーが潜像担持体上の非画像部に付着してしまう現象であると考えている。よって、転写残トナーを再利用する画像形成装置では発生しやすい。
【0012】
これについては、一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムのいずれかの酸化物から選ばれる第1無機微粒子をトナー表面に含有することにより、解決される。この第1無機微粒子はトナーの帯電を下げる効果がある。また、一次粒径が大きいためにトナー粒子から遊離しやすい。このような性質を持つ外添剤をトナー表面に有していても、トナーリサイクルの過程でトナー粒子からだんだんと遊離してしていく。何度も再利用された場合は、この第一無機微粒子がトナー表面からほとんど無くなってしまう。前述したように、この第一無機微粒子があることによってトナーの摩擦帯電量を下げていたので、それが無くなった分、摩擦帯電量を持ち上げる効果がある。ただし、その他の外添剤がトナー粒子の中に埋没した分 摩擦帯電量を下げているので、トータル的には摩擦帯電量は変動しないようになっている。この結果、摩擦帯電量の低下がおこらず、カブリの発生が抑制されたものと考えている。
【0013】
更に、トナーが円相当径1〜2μmのものを20〜30個数%含有することにより上記無機微粒子を最適な状態で保持することができ、状況に応じてトナーに適正な帯電を付与することにより、低湿環境下で過剰に帯電するトナーの発生を防止でき、解決できているものと本発明者等は考えている。
【0014】
【0015】
再転写現象については、転写材上に一旦転写されたトナーに次の色の転写時に転写材を通して転写電流が注入され、適正な帯電量を有していなかったトナーの帯電を反転させ、帯電が反転したトナーが転写材から潜像担持体に戻ってしまう現象であると本発明者等は考えている。カブリ現象のところで説明したのと同じ理由により、適正な帯電量を付与されないトナーの発生が抑制され、この問題が解決できているものと本発明者等は考えている。
【0016】
ブリスターに関しては、定着による急加熱によって記録材内の空気や水分の蒸発が起こるために定着画像が発泡したようになってしまう現象だと本発明者等は考えている。この現象は、現像器を列設したより高速定着が可能な多色画像形成装置や、高速定着が可能なフィルム式定着装置においてより顕著に発生する。この問題に関しても、適正な帯電量を付与されていないトナーが記録材上に転写された場合、トナーと記録材との付着力が弱い。よって、記録材からの揮発物によって定着画像が乱されてしまうものと本発明者等は考えている。
【0017】
次に、本発明の構成要件について説明する。
【0018】
<トナー>
本発明のトナーは、平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子を表面に含有する。第1無機微粒子の平均一次粒子が80nm未満である場合は、トナー粒子からの遊離効果が十分でない。一方、第1無機微粒子の平均一次粒径が800nmを超える場合は、潜像担持体表面に微小な傷を付けやすく、トナーの融着現象が悪化することがある。また、第1無機微粒子の比表面積が小さいために帯電コントロール効果も十分に得られないことがある。第1無機微粒子の平均一次粒径は、遊離効果、帯電コントロール性、潜像担持体表面への傷つけ難さの点で、100〜500nmであることが更に好ましい。
【0019】
チタン、アルミニウム、亜鉛、及びジルコニウムのいずれかの酸化物は、白色でありカラー用のトナーに用いることができ、また、トナーへの帯電コントロール効果が高く、また、潜像担持体表面に微小な傷をつけ難い。チタン、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムのいずれかの酸化物以外の無機微粒子では、色味、帯電コントロール性、潜像担持体表面への傷つけ易さの点で本発明の課題を全て解決するためには検討の余地が残されている。第1無機微粒子の種類は、帯電コントロール性、潜像担持体表面への傷つけ難さの点で、チタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることがより好ましい。
【0020】
第1無機微粒子は、一種類のみならず、二種類以上ものを併用しても良い。また、第1無機微粒子としては、疎水化処理剤として公知のカップリング剤やオイル等の有機化合物により、常法に従って表面を疎水化処理したものでも用いることができる。
【0021】
第1無機微粒子の添加量としては、トナー母体量を100質量部としたときに0.05〜5質量部であることが好ましい。添加量が0.05質量部未満では上述した第1無機微粒子による効果が十分に得られないことがあり、5質量部を超えるとトナーの定着性を損なうことがある。
【0022】
本発明のトナーは、更に、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子を表面に含有する。平均一次粒径が80nm以上である場合では、第1無機微粒子の帯電コントロール効果が十分に得られず、本発明の課題を全て解決することができないことがある。第2無機微粒子の平均一次粒径は、第1無機微粒子の帯電コントロール性の維持の点で、25乃至70nmであることが更に好ましい。
【0023】
第2無機微粒子の種類としては、シリカ以外であれば特に限定されず、例えば、マグネシウム、亜鉛、アルミニウム、チタン、コバルト、ジルコニウム、マンガン、セリウム、ストロンチウム等の酸化物粉体、及びチタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複合金属酸化物粉体、及びホウ素、ケイ素、チタニウム、バナジウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン等の炭化物、及びマグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等の炭酸塩、硫酸塩、またはリン酸塩等を挙げることができる。これらの中でも第2無機微粒子は、チタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることが好ましい。その理由としては、第1無機微粒子の帯電コントロール効果を高める効果が他の物に比べて特に高いためである。
【0024】
第2無機微粒子は、一種類のみならず、二種類以上ものを併用しても良い。また、第2無機微粒子としては、疎水化処理剤として公知のカップリング剤やオイル等の有機化合物により、常法に従って表面が疎水化処理されたものでも用いることができる。
【0025】
第2無機微粒子の添加量としては、トナー母体量を100質量部としたときに0.01〜1.0質量部、更に好ましくは0.02〜0.7質量部であることが好ましい。添加量が0.01質量部未満では上述した第1無機微粒子による効果が十分に得られないことがあり、1.0質量部を超えるとトナーの定着性を損なうことがある。
【0026】
本発明のトナーは、更に、平均一次粒径が30nm未満のシリカ微粒子を表面に含有する。平均一次粒径が30nm以上である場合は、第1無機微粒子の帯電コントロール効果が十分に得られず、本発明の課題を全て解決することができないことがある。この理由については定かではないが、シリカ微粒子の高い負帯電性が第1無機微粒子の帯電コントロール効果とのバランスの上で必要であるものと本発明者等は考えている。シリカ微粒子としては、平均一次粒径8乃至20nmのものがより好ましい。
【0027】
シリカ微粒子の添加量としては、トナー母体量を100質量部としたときに0.2〜5.0質量部が好ましく、より好ましくは0.4〜3.0質量部である。シリカ微粒子の添加量が0.2質量部未満では課題に対する改良の効果が得られないことがあり、また、5.0質量部を超える場合はトナーの定着性を損なうことがある。
【0028】
尚、本発明に用いられるシリカ微粒子のうち特に好ましいものとしては、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成されたいわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び水ガラス等から製造されるいわゆる湿式シリカの両方が使用可能であるが、表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、またNa2O、SO3 2−等の製造残滓の少ない乾式シリカの方が好ましい。
【0029】
また、乾式シリカにおいては、製造工程において例えば、塩化アルミニウム、又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得ることも可能であり、前記シリカ微粒子はそれらも包含する。
【0030】
本発明に用いられるシリカ微粒子は、必要に応じて、疎水化、摩擦帯電性の制御などの目的のために、シランカップリング剤、有機ケイ素化合物、シリコーンオイル、各種変性シリコーンオイル等の処理剤で処理されていても良く、その方法も公知の方法が用いられ、シリカ粒子と反応または物理吸着する処理剤でシリカ微粒子が処理される。なお、本発明に用いられるシリカ微粒子は、製法や組成、表面処理の有無等、条件の異なるシリカを複数種類含むものであっても良い。
【0031】
そのような処理剤としては、例えば、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフェニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフェニルテトラメチルジシロキサン、及び1分子当たり2〜12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは一種または二種以上の混合物で用いられる。
【0032】
本発明のトナーは、円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有することが好ましい。これは従来公知の分級機によって調整することが可能である。また、重合トナーに関しては直接粒径を調整して合成することも好ましい。
【0033】
円相当径1〜2μmのトナー粒子の割合が30個数%より多い場合は、低湿環境下において帯電付与時に過剰帯電粒子が増加しやすく、カブリ現象を悪化してしまうことがある。また20個数%より少ない場合は、改善効果は見られるものの本発明の改善効果を十分に発揮することができないことがある。
【0034】
本発明のトナーは、示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することが好ましい。60〜90℃に吸熱ピークを有するトナーは、本発明に使用される外添剤構成によるトナーの帯電コントロールがより効果的に働き、より好ましい結果が得られる。更に、本発明のような高速での定着に優れる画像形成装置は、より低温での定着性を必要とするため、60〜90℃に吸熱ピークを有することが好ましい。
【0035】
吸熱ピークが60℃未満にあると保存安定性が損なわれ、ブロッキング等の問題が発生しやすい。一方、90℃を超える温度に吸熱ピークがあっても更なるトナーの帯電コントロール性が向上する効果が得られにくく、定着性にも若干劣る場合が多い。ただし60〜90℃に吸熱ピークがあれば90℃を超える温度域に別の吸熱ピークがあっても構わない。
【0036】
示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃にあるトナーの形態にする手段としては、示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃に有する化合物をトナー中に内添することが好ましい。示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃に一つ以上ある物質としては、例えばワックスを挙げることができる。
【0037】
本発明に用いられるワックスとしては、次のようなワックスが挙げられる。すなわち、パラフィンワックス及びその誘導体、モンタンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体などで、誘導体には酸化物やビニル系モノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物を含む。ポリオレフィンワックスとしては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセンのような直鎖α−オレフィン及び分岐α−オレフィンの単重合体や共重合体が挙げられる。
【0038】
その他、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ひまし油及びその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタム等、示差熱分析における吸熱ピークが60〜90℃にあるものであればどれも用いることが可能である。
【0039】
ワックスは一種類用いても良いし、複数種類を併用しても良い。ワックスの含有量としては、重合性単量体を100質量部としたときに0.3〜30質量部、より好ましくは0.5〜20質量部である。ワックスの含有量が0.3質量部より少ないとトナーの示差熱分析における吸熱ピークにワックスの効果が反映されないことがある。一方、ワックスの含有量が30質量部よりも多いとトナーの着色力や帯電性等が損なわれることがある。
【0040】
本発明のトナーは、外添剤としての前記無機微粒子等の他に、着色剤等を含有するトナー母体粒子を有する。このトナー母体粒子は、結着樹脂と着色剤とを有しており、必要に応じて荷電制御剤や前述したワックス(可塑剤)等の他の添加物を含む。
【0041】
本発明に用いうる結着樹脂としては、一般に公知の樹脂が使用可能である。例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン類及びその置換体;アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリルアミド等のような二重結合を有するモノカルボン酸及びその置換体;例えばマレイン酸、マレイン酸ブチル、マレイン酸メチル、マレイン酸ジメチルのような二重結合を有するジカルボン酸及びその置換体;例えば塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルのようなビニル類またはビニルエステル類、又は例えばビニルエチルエーテル、ビニルメチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のようなビニルエーテル類等のビニル系単量体を単独で用いた重合体または二種以上を用いた共重合体;更にはスチレン−ブタジエン共重合体、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリビニルブチラール、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン等;これらを単独または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
これら結着樹脂のうち、本発明においては結着樹脂としてスチレン系ポリマーが含有されていることが好ましい。スチレン系ポリマーはそれ自身の主鎖の極性が低く、本発明のトナーにおける外添剤の構成によるトナーの帯電コントロールがより効果的に働くため好ましい。
【0043】
また、本発明に使用される結着樹脂には、トナーの定着温度を調整するために、以下に例示する架橋性重合性単量体(「架橋剤」ともいう)を含有することも可能である。
【0044】
架橋性重合性単量体としては、主として二個以上の重合可能な二重結合を有する重合性単量体が用いられる。具体例としては、二官能の架橋剤、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、ビス(4−アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,5−ペンタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール#200、#400、#600の各ジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエステル型ジアクリレート(MANDA日本化薬)、及び以上のアクリレートをメタクリレートに代えたものが挙げられる。
【0045】
架橋性重合性単量体は、一種を使用または二種以上を併用することができ、重合性単量体を100質量部としたときに0.001〜10質量部添加することが好ましい。添加量が0.001質量部よりも小さいと高温下での保存性が劣ったり、高温オフセットが発生したりすることがあり、添加量が10質量部よりも大きいと定着性に悪影響が現れることがある。
【0046】
本発明のトナーは、非磁性トナーである場合に特に効果的である。非磁性トナーは、電気抵抗が比較的低い磁性粉を含有する磁性トナーに比べて、トナー母体として低湿環境において過剰に帯電したトナーが発生しやすい。そのために、本発明のトナーにおける外添剤構成による効果が、磁性トナーに比べて非磁性トナーにおいてより顕著に現れる。また、非磁性トナーはカラーへの対応が容易である点でも好ましい。
【0047】
本発明のトナーには、必要に応じて荷電制御剤を添加しても良い。荷電制御剤にはトナーを負荷電性に制御するものと正荷電性に制御するものがある。
【0048】
トナーを負荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0049】
例えば、有機金属化合物、キレート化合物が有効であり、モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸系の金属化合物がある。他には、芳香族ハイドロキシカルボン酸、芳香族モノ及びポリカルボン酸及びその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノール等のフェノール誘導体類などがある。また、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、四級アンモニウム塩、カリックスアレーン、ケイ素化合物、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル−スルホン酸共重合体、ノンメタルカルボン酸型化合物等が挙げられる。
【0050】
また、トナーを正荷電性に制御するものとして下記物質がある。
【0051】
例えば、ニグロシン及び脂肪酸金属塩等による変性物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物、トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの四級アンモニウム塩、及びこれらの類似体であるホスホニウム塩等のオニウム塩及びこれらのレーキ顔料、トリフェニルメタン染料及びこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など)、高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートなどのジオルガノスズボレート類;これらを単独でまたは二種類以上組み合わせて用いることができる。
【0052】
更に本発明において直接重合法を用いる場合には、重合阻害性が無く水系への可溶化物の無い荷電制御剤が特に好ましい。具体的化合物としては、ネガ系としてサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸等の金属化合物、スルホン酸、カルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン等が利用でき、ポジ系として四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物等が好ましく用いられる。
【0053】
該荷電制御剤を内添する場合は重合性単量体100質量部に対し0.1〜20質量部が好ましい。荷電制御剤の添加量が0.1質量部よりも小さいと電荷の制御効果が得られないことがあり、20質量部より大きいと定着性が悪化したり、電荷が過剰になったりすることがある。また、外添する場合は上記と同様の理由により0.01〜10質量部が好ましい。
【0054】
本発明のトナーには、着色剤としてカーボンブラック、マグネタイト等の黒色着色剤の他に、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン着色剤等あらゆる顔料や染料を用いることができる。
【0055】
例えば本発明のトナーをフルカラー用トナーとして使用する場合には、次の様なものが挙げられる。
【0056】
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,21,22,23,30,31,32,37,38,39,40,41,48,49,50,51,52,53,54,55,57,58,60,63,64,68,81,83,88,89,90,112,114,122,123,163,202,206,207,209;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1,2,10,13,15,23,29,35等が挙げられる。
【0057】
本発明のトナーに使用される顔料は単独で使用しても構わないが、染料と併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
【0058】
マゼンタ用染料としては、例えばC.I.ソルベントレッド1,3,8,23,24,25,27,30,49,81,82,83,84,100,109,121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8,13,14,21,27;C.I.ディスパースバイオレット1などの油溶染料、C.I.ベーシックレッド1,2,9,12,13,14,15,17,18,22,23,24,27,29,32,34,35,36,37,38,39,40;C.I.ベーシックバイオレット1,3,7,10,14,15,21,25,26,27,28の如き塩基性染料が挙げられる。
【0059】
シアン用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントブルー2,3,15,16,17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、又はフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1〜5個置換した構造を有する銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
【0060】
イエロー用着色顔料としては、例えばC.I.ピグメントイエロー1,2,3,4,5,6,7,10,11,12,13,14,15,16,17,23,65,73,83;C.I.バットイエロー1,3,20等が挙げられる。
【0061】
本発明に使用される前述したような着色剤の添加量は、重合性単量体を100質量部としたときに0.1〜20質量部であることが好ましい。着色剤の添加量が0.1質量部よりも小さいと着色力が劣り、20質量部よりも大きいと定着性が悪化することがある。
【0062】
本発明のトナー母体の製造方法としては、従来より知られている種々の製造方法を利用することができるが、例えば、トナーの構成材料をヘンシェルミキサー、ボールミル、V型ミキサー等の混合器を用いて混合する混合行程、熱ロールニーダー、エクストルーダーのごとき熱混練機を用いて構成材料を混練する混練行程、混練物を冷却固化後、ジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕する粉砕行程、及び風力分級機等を用いて粉砕物を分級する分級行程等を経て製造する方法(いわゆる「粉砕法」)がある。
【0063】
また別の方法としては、少なくともモノマーと着色剤を含有する成分を造粒して重合する行程を経て製造する方法(いわゆる「重合法」)がある。本発明のトナーは、その製造工程として少なくともモノマーと着色剤を含有する成分を造粒して重合する行程を経て製造される場合に特に好ましい。この製造方法で製造されたトナーはその形状として表面が滑らかな状態のものが得られ、本発明の外添剤構成によるトナーの帯電コントロールがより効果的に働き、本発明の課題に関してより高い効果が得られる。
【0064】
次に、この製造方法について以下に詳細に説明する。
【0065】
前述のトナー母体を重合するにあたっては、水系媒体中に単量体系の液滴粒子を形成し、その状態で単量体を重合する懸濁重合法を、より好適な製造方法として利用することができる。このような懸濁重合法では、単量体は、重合開始剤の存在下、架橋剤の存在下、または不存在下で重合しうる。
【0066】
重合開始剤としては、例えば、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシラウレート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バリレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルジパーオキシイソフ夕レート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)ブロパン、ジ−t−ブチルパーオキシ−α−メチルサクシネート、ジ−t−ブチルパーオキシジメチルグル夕レート、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフ夕レート、ジ−t−ブチルパーオキシアゼラート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)、ジ−t−ブチルパーオキシトリメチルアジペート、トリアジン、トリス(t−ブチルパーオキシ)トリアジン、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、クミンパービバレート、ジクミルパーオキサイド、アゾビス−イソブチロニトリル及びジメチルアゾイソブチレート等が挙げられる。
【0067】
上述の重合開始剤は、添加量、重合温度、及び半減期等を考慮して、単独または混合して使用できる。また該重合開始剤の添加量は、目的とする重合度により変化するが、一般的には結着樹脂を構成する単量体に対し0.5〜20質量部添加され、用いられる。更に、重合度を制御するため公知の架橋剤、連鎖移動剤、重合禁止剤等を添加して用いることも可能である。なお、重合開始剤は、重合前の任意の段階で重合系内に添加することができる。
【0068】
前記懸濁重合法においては、単量体系の好適な造粒を実現するために、水系媒体中で液滴粒子を分散させる分散剤、及び必要に応じて安定化剤を使用することが好ましい。本発明で用いられる分散剤としては、一般的な分散剤を用いることが可能で、場合によっては、適当な安定化剤を併用することができる。例えば無機化合物として、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等が挙げられる。また有機化合物としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、ポリアクリル酸及びその塩、デンプン等が挙げられる。これらを水相に分散させて使用できる。
【0069】
この分散剤は、重合性単量体100質量部に対して0.2〜2.0質量部使用することが好ましい。分散剤の添加量が0.2質量部より小さいとトナー粒径が大きくなったり塊状で反応してしまう恐れがあり、2.0質量部よりも大きいと粒径が細かすぎたり、微粉が多量に出来てしまうことがある。
【0070】
またこれら分散剤の微細な分散のために、重合性単量体100質量部に対して0.001〜0.1質量部の界面活性剤等の安定化剤を併用しても良い。これは上記分散剤の所期の作用を促進するためのものであり、その具体例としては、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等、オレイン酸カルシウム等が挙げられる。これらのような安定化剤の添加量が0.001質量部より小さいと効果が現れないことがあり、0.1質量部よりも大きいとトナー粒径が不均一になったりすることがある。
【0071】
前述した重合法による本発明のトナーの具体的な製造方法としては、例えば以下の方法が挙げられる。
【0072】
即ち、重合性単量体中に低軟化点物質からなる離型剤(前述したワックス)、着色剤、荷電制御剤、重合開始剤、その他の添加剤を加え、ホモジナイザー、超音波分散機等の高剪断能を有する攪拌機によって均一に溶解または分散せしめた単量体系を、分散剤等を含有する水相中に通常の攪拌機またはホモミキサー、ホモジナイザー等により分散せしめる。好ましくは単量体液滴が所望のトナー粒子のサイズを有するように攪拌速度、時間を調整し、造粒する。その後は分散剤等の作用により粒子状態が維持され、かつ粒子の沈降が防止される程度の攪拌を行えば良い。
【0073】
重合温度は40℃以上、一般的には50〜90℃の温度に設定して重合を行うのが良い。また、重合反応後半に昇温しても良く、更に、トナー定着時の臭いの原因等となる未反応の重合性単量体、副生成物等を除去するために反応後半、または反応終了後に一部水系媒体を留去しても良い。懸濁重合法においては、通常、単量体系100質量部に対して水300〜3000質量部を分散媒として使用するのが好ましい。また、重合終了後の任意の段階で分級を行っても良い。
【0074】
以下に、本発明のトナーに係る測定方法等について説明する。
【0075】
トナーの重量平均粒径及び粒度分布はコールターカウンターTA−II型またはコールターマルチサイザー(コールター社製)等による種々の方法で測定可能であるが、本発明においては、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、個数分布、体積分布を出力するインターフェース(日科機製)及びPC9801パーソナルコンピューター(NEC製)を接続し、粒度域を16分割したデータとして出力させた。電解液は1級塩化ナトリウムを用いて1%NaCl水溶液を調製する。例えば、ISOTON R−II(コールターサイエンティフイックジャパン社製)が使用できる。
【0076】
測定法としては、前記電解水溶液100〜150mL中に分散剤として界面活性剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を0.1〜5mL加え、更に測定試料を2〜20mgを加える。試料を懸濁した電解液は超音波分散器で約1〜3分間分散処理を行い、前記コールターマルチサイザーによりアパーチャーとして100μmアパーチャーを用いて、2μm以上のトナーの体積、個数を測定して体積分布と個数分布とを算出した。それから本発明に係わる所の体積分布から求めた体積標準の体積平均粒径(Dv:各チャンネルの中央値をチャンネルの代表値とする)と体積変動係数(Sv)、個数分布から求めた個数基準の長さ平均粒径(D1)と長さ変動係数(S1)、及び体積分布から求めた重量基準の粗粉量(8.00μm以上)、個数分布から求めた個数基準の微粉量(5μm以下)を求め、これらを用いることにより、トナーの重量平均粒径及び粒度分布を求めた。
【0077】
本発明において円相当径とは、フロー式粒子像測定装置で計測されるトナーの個数基準の円相当径−円形度スキャッタグラムにおいて計測されるものであり、本発明では「FPIA−1000型」(東亜医用電子社製)を用いて測定を行い、下式を用いて算出した。
【0078】
円相当径=(粒子投影面積/π)1/2×2
ここで「粒子投影面積」とは二値化されたトナー粒子像の面積である。
【0079】
具体的な測定方法としては、容器中に予め不純固形物等を除去したイオン交換水10mLを用意し、その中に分散剤として活性界面剤、好ましくはアルキルベンゼンスルホン酸塩を加えた後、更に測定試料を0.02g加え、均一に分散させる。分散させる手段としては、超音波分散機「UH−50型」(エスエムテー社製)に振動子として直径5(mm)のチタン合金チップを装着したものを用い、5分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、該分散液の温度が40℃とならないように適宜冷却する。
【0080】
トナーの円相当径の測定には、前記フロー粒子像測定装置を用い、測定時のトナー粒子濃度が3000〜1万個/μLとなる様に該分散液濃度を再調整し、トナー粒子を1000個以上計測する。計測後、このデータを用いてトナーの円相当径を求める。そして円相当径1〜2μmである粒子の個数%の測定は、0〜90μmの範囲を57分割で行い、1〜2μmの範囲の粒子数を個数%で算出した。
【0081】
本発明のトナーの示差熱分析における吸熱ピークは、DSC測定によって測定することができる。本発明に係わるDSC測定では、トナーの熱のやり取りを測定し、その挙動を観測するので、測定原理から、高精度の内熱式入力補償型の示差走査熱量計で測定することが好ましく、例えば、パーキンエルマー社製のDSC−7が使用できる。
【0082】
測定方法は、ASTM D3418−82に準じて行う。本発明に用いられるDSC曲線は、一回昇温させ前履歴をとった後、温度速度10℃/min、温度0〜200℃の範囲で降温、昇温させたときに測定されるDSC曲線を用いる。
【0083】
吸熱ピーク温度とは、DSC曲線において、プラスの方向のピーク温度のことであり、即ち、ピーク曲線の微分値が正から負にかわる際の0になる点を言う。
【0084】
本発明において第1無機微粒子、第2無機微粒子、及びシリカ微粒子の平均一次粒径の測定は、走査型電子顕微鏡FE−SEM(日立製作所社製 S−4700)により10万倍に拡大したトナー粒子表面の写真を撮影し、その拡大写真を必要に応じて更に拡大して行い、それぞれの粒子について50個以上の粒子について定規、ノギス等を用い、その粒径を測定する。その際、微粒子の組成判別は、上記装置のX線マイクロアナライザーを指定した特定の元素のみを検出することにより行う。
本発明においては、感光体としてアモルファスシリコン感光体を使用することが好ましい。本発明の第1無機微粒子はトナー粒子から遊離しやすい構成となっている。感光体としては耐久性の高いものが好ましい。前述したアモルファスシリコンを使用した場合、遊離した外添剤による傷が抑制される。結果的にフィルミングも防止できる。
【0085】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、前述したトナーを用い、少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像を前記トナーで現像する現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置、トナーを再利用させる為の装置を有する。
【0086】
本発明の構成はトナーの帯電が安定するために、カブリが防止されて、再転写、ブリスターも発生せずに高画質も維持できるので、多色画像形成装置に好適であることから、前記現像装置を複数有する構成とすることが好ましい。
【0087】
このような多色画像形成装置における画像形成方法としては、各々四色のトナー毎に画像形成部(画像形成ユニット)を設け、各画像形成部において潜像担持体としての感光体ドラムに各色ごとの可視画像を形成し、これら可視画像を転写材に順次転写するような画像形成方法であり、以下に装置及び方法について図面を用いて説明する。
【0088】
複数画像形成部にて各色のトナー画像をそれぞれ形成し、これを同一記録材に順次重ねて転写するようにした画像形成装置を図1に基づき説明する。
【0089】
この画像形成装置では、第1、第2、第3及び第4の画像形成部28a、28b、28c、28dが並んで設けられており、各画像形成部はそれぞれ専用の潜像担持体、いわゆる感光ドラム19a〜19dと、帯電ローラ16a〜16dと、潜像形成手段23a〜23dと、現像器17a〜17d、クリーニング部18a〜18dとを有する構成となっており、本発明における画像形成ユニットを構成している。これらの画像形成部28a〜28dは、記録材Sを搬送するための搬送ベルト25上に並んで設けられており、搬送ベルト25を介して感光ドラム19a〜19dの反対側には、転写用放電部24a〜24dがそれぞれ設けられている。
【0090】
画像形成部28a〜28dは搬送ベルト25の直上に設けられている。すなわち、図1の画像形成装置は、潜像担持体、帯電装置、及び現像装置を具備する画像形成ユニットを複数(四つ)有する画像形成装置であり、さらにはこの画像形成ユニットが搬送ベルト25によるプロセス方向に沿って列となって設けられている。すなわち画像形成ユニットが列設されている画像形成装置である。
【0091】
搬送ベルト25において第1の画像形成部28aよりも上流側には記録材Sを適切な極性に帯電する搬送用帯電器27が設けられ、第4の画像形成器28dよりも下流側には搬送ベルト25から記録材Sを離すための除電器20が設けられ、除電器20よりも下流側にはトナー像を定着するための定着器22が設けられている。
【0092】
このような構成にて、まず第1の画像形成部28aの感光ドラム19a上に潜像形成手段23aによって原稿画像における、例えばイエロー成分色の潜像が形成される。該潜像は現像器17aのイエロートナーによって可視画像とされ、転写部24aにて、転写材としての記録材Sに転写される。
【0093】
上記のようにイエロー画像が転写材Sに転写されている間に、第2の画像形成部28bではマゼンタ成分色の潜像が感光ドラム19b上に形成され、続いて現像器17bのマゼンタトナーで可視画像とされる。この可視画像(マゼンタトナー像)は、上記第1の画像形成部28aでの転写が終了した転写材Sが転写用放電部24bに搬入されたときに、該転写材Sの所定位置に重ねて転写される。
【0094】
以下、上記と同様な方法により第3、第4の画像形成部28c、28dによってシアン色、ブラック色の画像形成が行われ、上記同一の転写材Sにシアン色、ブラック色を重ねて転写するのである。このような画像形成プロセスが終了したならば、転写材Sは定着器22に搬送され、転写材S上の画像が定着される。これによって転写材S上には多色画像が得られるのである。転写が終了した各感光ドラム19a〜19dは、クリーニング部18a〜18dによる残留トナーの除去が行われ、引き続き行われる次の潜像形成のために供せられる。除去された残留トナーは、図示しないトナー搬送経路を通って現像装置に戻される。なお、上記画像形成装置では、転写材としての記録材Sの搬送のために、搬送ベルト25が用いられており、図1において、転写材Sは右側から左側へ搬送され、その搬送過程で、各画像形成部28a〜28d及び各転写用放電部24a〜24dを通過し、転写を受ける。
【0095】
この画像形成装置において、転写材を搬送する搬送手段として、加工の容易性及び耐久性の観点から、ポリエステル繊維(商品名:テトロン繊維)のメッシュを用いた搬送ベルト及びポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ウレタン系樹脂の如き薄い誘電体シートを用いた搬送ベルトが利用される。
【0096】
転写材Sが第4の画像形成部28dを通過すると、AC電圧が除電器20に加えられ、転写材Sは除電され、搬送ベルト25から分離される。その後、定着器22に入り、画像定着されて排出口26から排出される。
【0097】
本発明においては、前記図1のように画像形成ユニットが列設されているものが好ましく、画像形成ユニットは列設されていればその列設方向は縦でも横でも円弧状でも構わない。
【0098】
更に、本発明の画像形成装置の構成は、トナーの帯電が安定するために、トナー飛散が防止され、他の画像ユニットへの他色トナーの混入も無く、高画質が維持できるので、多色画像形成装置に好適である。
【0099】
また、この画像形成装置に使用される定着装置としては従来公知の装置が使用可能であるが、耐熱性定着フィルムを介して記録材上の顕画像を加熱定着するフィルム加熱定着装置の方が、本発明の効果がより発揮されやすく、好適に用いることができる。また、フィルム加熱定着装置では、トナー定着のための加熱を行うにあたって、フィルムを介して加熱を行う装置であっても良いし、フィルム自体が発熱することによって加熱を行う装置であっても良い。
【0100】
以下に、フィルム加熱定着装置の具体的な装置例を示す。
【0101】
図2は、加熱体と、耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着するフィルム方式の加熱加圧定着手段の一例の分解斜視図であり、図3は、上記加熱加圧定着手段の要部の拡大横断面図である。このフィルム加熱定着装置は、内部の支持体に固定支持させた加熱体を有し、該加熱体に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルムを回転加熱部材とし、該エンドレスフィルムを介してトナー画像を加熱加圧する定着装置である。
【0102】
この定着装置は、内部の支持体37に固定支持させた加熱体31を有する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム32を有する回転加熱部材と、耐熱性エンドレスフィルム32を介して回転加圧部剤としての円筒状の加圧ローラ33とを有し、耐熱性エンドレスフィルム32と加圧ローラ33とは相互圧接してニップ部を形成している。
【0103】
より具体的には加熱体31は各種支持体35、36及び37によって支持され、適度な当接圧に調整するための付勢手段であるコイルバネ34によって加圧ローラ33側に向けて付勢されるような構成とされている。そして、前記ニップ部の上流側には転写材を該ニップ部に導入するための導入用ガイド部材39が設けられ、ニップ部の下流側には定着後の転写材を排出するための排出用ガイド部材38が設けられている。
【0104】
この定着装置は、作動時には図3に示す矢印の方向に回転し、トナー画像を担持した被加熱体としての転写材を耐熱性エンドレスフィルム32に密着させて加熱体31に向けて押圧し、耐熱性エンドレスフィルム32とともに移動駆動させる。なお、前記付勢手段は加熱体31と加圧ローラ33とを互いに近接する方向へ付勢するものであれば特に限定されず、また、図中の支持体(図2では支持体35)及び加圧ローラ33のいずれか一方または両方にあっても良い。
【0105】
固定支持された加熱体31は、ヒータ基盤31a、通電発熱抵抗体(発熱体)31b、表面保護層31c、及び検温素子31d等を有する低熱容量洗浄加熱体として構成されている。ヒータ基盤31aには耐熱性、絶縁性、低熱容量及び高熱伝導性を呈する部材が好ましく、その大きさや材質については特に限定されないが、例えば厚み1mm、幅10mmで長さ240mmのアルミナ基板等が好ましい。
【0106】
発熱体31bは、ヒータ基盤31aの下面(フィルム32との対面側)の略中央部に、支持体37の長手方向(フィルム32の幅方向)に沿って、例えばAg−Pd(銀パラジウム)、Ta2N、RuO2等の電気抵抗材料を、厚み約10μm、幅1〜3mm程度の線状または細帯状にスクリーン印刷等により塗工し、その上に表面保護層31cとして、例えば耐熱ガラスを蒸着等により約10μmの厚みにコートしたものである。
【0107】
検温素子31dは、例えばヒータ基盤31aの上面(発熱体31bを設けた面とは反対側の面)の略中央部に、スクリーン印刷等により塗工して具備させたPt(白金)膜等の低熱容量の測温抵抗体である。なお、低熱容量のサーミスタ等による代用も可能である。加熱体31は、発熱体31bに対して画像形成スタート信号により所定のタイミングにて通電することで発熱体31bを略全長にわたって発熱させる。
【0108】
通電はAC100Vであり、検温素子31dの検知温度に応じて、トライアックを含む通電制御回路(不図示)により、通電する位相角を制御することにより供給電力を制御している。
【0109】
加熱体31は、ヒータ基盤31a、発熱体31b、及び表面保護層31cの熱容量が小さいので、発熱体31bへの通電によって加熱体31の表面が所望の定着温度まで急速に温度上昇したり、未使用時には室温付近まで急冷するため、耐熱性エンドレスフィルム32や回転加圧部材としての加圧ローラ33に与える熱衝撃は大きいが、前述したトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0110】
なお、前述したように本発明におけるトナーは、どの環境においても帯電コントロール効果が良好に保たれるため、オフセットやかぶり等による加熱加圧手段へのストレスを抑制する効果がある。そのために、前述したトナーを用いることによって、フィルム式加熱定着装置においても長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。これは後述する電磁誘導方式の加熱加圧定着装置においても同様である。
【0111】
回転加圧部材との間にニップ部を形成する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム32には、耐熱性、強度確保、耐久性及び低熱容量の観点から、厚さ20〜100μmの単層または複合層からなる耐熱性シートであることが好ましく、例えば、ポリイミド、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエーテルサルホン(PES)、四フッ化エチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、ポリエーテルケトン(PEEK)、ポリパラバン酸(PPA)、または複合層フィルム、例えば、厚さ20μmのポリイミドフィルムの少なくともトナー画像当接面側に四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、PFA、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオルプロピレンの共重合体(FEP)等のフッ素樹脂やシリコーン樹脂等、さらにはそれにカーボンブラック、グラファイト、導電性ウイスカ等の導電材を添加した離型性コート層を、厚み10μm程度に施したもの等が好ましい。
【0112】
また、回転加圧部材である加圧ローラ33は、上記の如き耐熱性エンドレスフィルム32を移動駆動させるための駆動ローラを兼ねることもでき、トナー等に対する離型性に優れるだけでなく、耐熱性エンドレスフィルム32との密着性を有することが好ましく、例えばシリコーンゴム等のゴム弾性体が好適に用いられる。上述したように加圧ローラ33に加わる熱衝撃は大きく、長期使用による加圧ローラ33の表面劣化は上記の如き加熱加圧手段の駆動機能そのものにも影響を及ぼすが、前述したトナーを用いることによって、上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0113】
図4は、磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する電磁誘導方式の加熱加圧定着装置の一例の模式図である。この定着装置は、内部に磁界発生手段を有し、該磁界発生手段の作用で電磁誘導発熱する発熱層を有する円筒状のエンドレスフィルムからなる加熱体と、回転加圧部材とを有する。
【0114】
上記電磁誘導方式の加熱加圧定着装置は、内部に励磁コイル40が巻き付けられるコイル芯材(磁性体)42、及び励磁コイル40を支持しながら耐熱性エンドレスフィルム47の走行をガイドする滑板43を含む磁界発生手段と、該磁界発生手段に圧接されながら移動駆動する円筒状の耐熱性エンドレスフィルム47とを有する回転加熱部材と、耐熱性エンドレスフィルムを介して回転加圧部材としての円筒状の加圧ローラ48とを有し、耐熱性エンドレスフィルム47と加圧ローラ48とは相互圧接してニップ部Nを形成している。図5は、耐熱性エンドレスフィルムの47の断面拡大説明図である。この定着装置は、作動時には図4に示す矢印の方向に回転し、トナー画像Tを担持した被加熱体としての転写材Pを耐熱性エンドレスフィルム47に密着させて磁界発生手段に向けて押圧し、耐熱性エンドレスフィルム47とともに移動駆動させる。
【0115】
この時、上記磁界発生手段によって発生する磁界は、励磁回路(不図示)から10kHzk〜500kHzの周波数の交番電流が供給されることによって、励磁コイル40の周囲には図5中の矢印で示した磁束Hが生成消滅を繰り返す。この変動する磁界中を移動する耐熱性エンドレスフィルム47中の導電層(誘導磁性材)47bには、電磁誘導によってその磁界の変化を少なくするように図5中の矢印で示したような渦電流Aが発生する。この渦電流は、導電層の表皮抵抗によってジュール熱に変換され、結果的に耐熱性エンドレスフィルム47の中の導電層が発熱層となる。このように耐熱性エンドレスフィルム47の表層近くが直接発熱するので、フィルム基層の熱伝導率、熱容量及び耐熱性エンドレスフィルムの厚さにも依存しない急速加熱が実現できる。
【0116】
トナー画像Tを担持した被加熱体としての転写材Pは、耐熱性エンドレスフィルム47に密着してニップ部Nを通過することによって、転写材P上に定着画像を得ることができる。
【0117】
電磁誘導方式の加熱加圧定着装置に用いられる耐熱性エンドレスフィルム47は、少なくともフィルム基層47a、導電層47b、及び表面層47cの三層を有するものが好ましく用いられる。例えば、厚み10μm〜100μmのポリイミド等の耐熱性樹脂をフィルム基層47aとし、その基層47aの外周面上(被加熱体圧接面側)に導電層47bを、例えばNi、Cu、Cr等の金属を厚み1μm〜100μmでメッキ等の処理によって形成し、さらにその導電層47bの自由面に、例えばPFAやPTFE等のトナー離型の良好な耐熱性樹脂を混合または単独で被覆して表面層47cを形成したものを例示することができる。また、フィルム基層47aには導電層の役割を持たせ、二層構造としても良い。
【0118】
コイル芯材42は、例えば、フェライトパーマロイ等の高透磁率で残留磁束密度の低いもので形成されていることが好ましい。残留磁束密度の低い材質のものをコイル芯材42に用いることで、芯材自身に発生する渦電流を抑制することができるので、コイル芯材42からの発熱が無くなり効率が上がる。また、高透磁率の材質を用いることによって、コイル芯材42が磁束Hの通り道になり、外部への磁束漏れを可能な限り抑えることができる。
【0119】
励磁コイル40は、導線(電線)として一本ずつが各々絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いたものを好適に使用することができる。また、励磁コイルパターンはガラス入りエポキシ樹脂(汎用電器基板)やセラミック等の非磁性体の基板表面上に多層印刷したシートコイル基板を用いても良い。
【0120】
滑板43は、液晶ポリマーやフェノール等の耐熱樹脂で構成され、耐熱性エンドレスフィルム47との対向面には耐熱性エンドレスフィルム47との摩擦抵抗を減少させるために、例えば、PFAやPTFE等の樹脂コート、または滑り性に富むガラスコート等を施すことが好ましい。
【0121】
加圧ローラ48は、芯金の周囲にシリコーンやフッ素ゴム等を巻いて構成される。この加圧ローラ48は、軸受け手段と付勢手段(いずれも不図示)により所定の押圧力Fをもって耐熱性エンドレスフィルム47を介して滑板43との間に耐熱性エンドレスフィルム47を狭持しながらニップ部Nを形成する。なお、前記付勢手段は磁界発生手段と加圧ローラ48とを互いに近接する方向へ付勢するものであれば特に限定されず、また、磁界発生手段及び加圧ローラのいずれか一方または両方にあっても良い。
【0122】
ニップ部Nでは磁界発生手段によって発生する磁界が集中しているため、電磁誘導発熱によって耐熱性エンドレスフィルム47の表層付近が急速に直接発熱する。この結果、耐熱性エンドレスフィルム47の表面や加圧ローラ48には大きな熱衝撃が与えられ、トナー等に対する離型性や、耐熱性エンドレスフィルム47との密着性が低下することになるが、前述したトナーを用いることによって上記の如き加熱加圧手段に対する負荷を軽減し、長期にわたって優れた定着画像を得ることが可能となる。
【0123】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0124】
<実施例1>
先ず、下記の手順によって重合法トナーを作製した。イオン交換水700gに0.1mol/リットル−Na3PO4水溶液450gを投入し、50℃に加温した後、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、10,000rpmにて撹拌した。これに1.0mol/リットル−CaCl2水溶液70gを徐々に添加し、Ca3(PO4)2を含む水系媒体を得た。
【0125】下記処方を60℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、9,000rpmにて均一に溶解、分散した。
【0126】
・スチレン 168質量部
・n−ブチルアクリレート 28質量部
・メチルメタアクリレート 4質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 14質量部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
・飽和ポリエステル 20質量部
・ベヘニルステアレート 30質量部
・ジビニルベンゼン 0.4質量部
これに重合開始剤2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)5質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
【0127】
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、60℃、窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて8,000rpmで撹拌し、造粒した。
【0128】
その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ、2時間で70℃に昇温し、4時間後、昇温速度40℃/Hrで80℃に昇温し、4時間反応させた。重合反応終了後、減圧下でモノマーを留去し、冷却後、塩酸を加えてリン酸カルシウム塩を溶解させて、ろ過、水洗、乾燥、分級してシアントナーの母体粒子(1)を得た。
【0129】
シアントナー母体粒子100質量部に対して、平均粒子径が8nmでありヘキサメチレンジシラザンで表面処理されたシリカ微粒子1質量部(シリカ微粒子A)、第2無機微粒子(以下、「無機微粒子2」という)として平均一次粒径が45nmのルチル型酸化チタン微粒子0.15質量部(2A)、第1無機微粒子(以下、「無機微粒子1」という)として平均一次粒径が200nmのルチル型酸化チタン微粒子0.5質量部(1A)をヘンシェルミキサーで混合し、本発明のトナーを得た。このトナーの重量平均粒径は7.2μm、1〜2μmの粒子の個数%は21.1個数%、示差熱分析での吸熱ピークは60℃にあった。
【0130】
このトナーを、図1に示す画像形成装置(プロセススピード230mm/sec、従来のローラ定着方式)に適用し、評価を行った。カブリは15℃/15%の低温低湿環境において印字率4%のライン画像を10000枚連続プリントした後に評価し、潜像担持体上のカブリをテープに転写させてそのテープを白紙に貼り、レファレンスのテープの反射率との差をリフレクトメータ(東京電色社製)により測定した。評価結果については0.5%以下を良好と判断した。
【0131】
再転写については30.0℃/90%の高温高湿環境で4%印字率のライン画像を連続プリントした後に評価し、現像順で一番最初のイエローステーションに現像ユニットを入れ、4色重ねモードと単色モードでのハーフトーン画像の反射濃度の差を評価した。また、評価結果に関しては0.1%を良好と判断した。
【0132】
ブリスターに関しては、各評価機において定着画像の濃度を上記リフレクトメータで1.30に設定して画像を出し、その時に発生した発泡の様な画像の乱れを評価した。評価結果についてはその程度により5段階で評価し、発泡状の画像の乱れが10cm2あたりに0.5個未満を5、2個未満を4、3.5個未満を3、5個未満を2とし、それより多い画像を1とした。
【0133】
使用したトナーと上記評価結果を表5に、使用した微粒子及びトナー母体粒子の種類や物性を表1〜4にそれぞれ示す。表5よりわかるように、本実施例では、カブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
【表3】
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
<比較例1>
実施例1で用いた無機微粒子1Aを用いない以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0140】
<比較例2>
実施例1で用いた無機微粒子2Aを用いない以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0141】
<比較例3>
実施例1で用いたシリカ微粒子Aを用いず、無機微粒子2Aを1.0質量部にする以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0142】
<実施例2〜6>
実施例1で用いた無機微粒子1Aの代わりに表1に示す無機微粒子1B〜1Fをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0143】
<比較例4〜7>
実施例1で用いた無機微粒子1Aの代わりに表1に示す無機微粒子1G〜1Jをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表5に示す。表5よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0144】
<実施例7〜12>
実施例1で用いた無機微粒子2Aの代わりに表2に示す無機微粒子2B〜2Gをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0145】
【表6】
【0146】
<比較例8、9>
実施例1で用いた無機微粒子2Aの代わりに表2に示す無機微粒子2H、2Iをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0147】
<実施例13、14>
実施例1で用いたシリカ微粒子Aの代わりに表3に示すシリカ微粒子B、Cをそれぞれ用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0148】
<比較例10>
実施例1で用いたシリカ微粒子Aの代わりに表3に示すシリカ微粒子Dを用いる以外は、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表6に示す。表6よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0149】
<実施例15、16>
トナー製造工程の中の分級条件を変え、表4に示す粒度分布のトナー母体粒子2、3をそれぞれ用いる以外は実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表7に示す。表7よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0150】
【表7】
【0151】
<実施例17、18>
・スチレン−アクリル酸ブチル共重合体 100質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
・ベヘン酸ベヘニル 10質量部
・サリチル酸アルミニウム化合物 2質量部
前記材料を予備混合した後に、130℃に設定した二軸混練押し出し機によって溶融混練を行った。混練物を冷却後、粗粉砕をし、ジェット気流を用いた粉砕機によって微粉砕をし、更に風力分級機を用いて分級したトナー母体粒子(表4に示すトナー母体6、7)をそれぞれ用いる以外は実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0152】
【表8】
【0153】
<実施例19>
結着樹脂としてスチレン−アクリル酸ブチルの代わりにポリエステル樹脂(プロポキシ化ビスフェノールとフマル酸の縮重合体)を用いる以外は実施例17と同様にしてトナー母体粒子(表4に示すトナー母体9)を作製し、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0154】
<実施例20>
実施例1の無機微粒子1A:0.5質量部の代わりに、無機微粒子1A:0.3質量部と無機微粒子1C:0.3質量部を併用する以外は実施例1と同様にしてトナーを作製し、画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0155】
<実施例21>
実施例1の無機微粒子2A:0.15質量部の代わりに、無機微粒子2A:0.1質量部と無機微粒子2C:0.1質量部を併用する以外は実施例1と同様にしてトナーを作製し、画像を評価した。結果を表8に示す。表8よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0156】
<実施例22,23>
実施例1の評価機(図1に示す従来のローラ定着方式による画像形成装置)に代えて、表9に示すように、図1に示す画像形成装置における定着方式として、耐熱性定着フィルムを有し加熱体による加熱方式の定着装置を有するもの(以下図2導入機)、及び図1に示す画像形成装置における定着方式として、耐熱定着フィルムを有する電磁誘導加熱方式の定着装置を有するもの(以下図4導入機)をそれぞれ用いる以外は実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0157】
【表9】
【0158】
<実施例24,25>
実施例2の評価機に代えて表9に示すように図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は実施例2と同様のトナーを用い、実施例1と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本実施例では、実施例1と同様にカブリ、再転写、及びブリスターの発生を防止する上で良好な結果が得られた。
【0159】
<比較例11,12>
比較例1の評価機に代えて表9に示すように図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は比較例1と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本比較例では、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0160】
<比較例13,14>
比較例2の評価機に代えて表9に示すように、図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は比較例2と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0161】
<比較例15,16>
比較例3の評価機に代えて表9に示すように、図2導入機、及び図4導入機をそれぞれ用いる以外は比較例3と同様にして画像を評価した。結果を表9に示す。表9よりわかるように、本比較例でも、実施例1に比べてカブリ、再転写、及びブリスターの発生が認められた。
【0162】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のトナーによれば、転写残トナーを再利用する画像形成装置を使用しても、かぶり現象、再転写現象およびブリスターの発生を防止することができ、カラー画像を形成する多色画像形成装置において、高画質の画像を高速で形成することができる。
【0163】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像形成装置の実施の形態における一例として、複数画像形成部にて各色のトナー画像をそれぞれ形成し、これを同一記録材に順次重ねて転写する画像形成装置を示す概略図である。
【図2】本発明の画像形成装置に用いられる定着装置の一例として、フィルム方式の加熱加圧定着手段の一例を示す分解斜視図である。
【図3】図2に示した加熱加圧定着手段の要部を拡大して示す要部拡大横断面図である。
【図4】本発明の画像形成装置に用いられる定着装置の他例として、電磁誘導方式の加熱加圧定着装置の一例を示す模式図である。
【図5】図4のX部を拡大して示す要部拡大断面図である。
【符号の説明】
17a〜17d : 現像器(現像装置)
18a〜18d : クリーニング部
19a〜19d : 感光ドラム(潜像担持体)
20 : 除電器
22 : 定着器(定着装置)
23a〜23d : 潜像形成手段(潜像形成装置)
24a〜24d : 転写用放電部(転写装置)
25 : 搬送ベルト
26 : 排出口
27 : 搬送用帯電器
28a〜28d : 第1〜第4の画像形成部(画像形成ユニット)
31 : 加熱体
31a : ヒータ基盤
31b : 通電発熱抵抗体(発熱体)
31c : 表面保護層
31d : 検温素子
32、47 : 耐熱性エンドレスフィルム(耐熱性定着フィルム)
33、48 : 加圧ローラ(加圧部材)
34 : コイルバネ
35〜37 : 支持体
38 : 排出用ガイド部材
39 : 導入用ガイド部材
40 : 励磁コイル
42 : コイル芯材(磁性体)
43 : 滑板
47a : フィルム基層
47b : 導電層(誘導磁性材)
47c : 表面層
A : 渦電流
E : レーザー光
F : 押圧力
H : 磁束
N : ニップ部
P: 記録材(転写材)
T : ト ナー画像
Claims (31)
- 転写残トナーを再利用する画像形成装置に使用されるトナーであって、該トナーは平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有することを特徴とするトナー。
- 該トナーが略球形であることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
- 円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有することを特徴とする請求項1または2に記載のトナー。
- 少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像をトナーで現像する現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置を有する画像形成装置に使用されることを特徴とする請求項1に記載のトナー。
- 前記画像形成装置が、現像装置を複数有する画像形成装置であることを特徴とする請求項4に記載のトナー。
- 前記画像形成装置が、少なくとも前記潜像担持体、前記帯電装置、及び前記現像装置を具備する画像形成ユニットを複数有する画像形成装置であることを特徴とする請求項4に記載のトナー。
- 前記画像形成装置の画像形成ユニットが列設されている画像形成装置であることを特徴とする請求項6に記載のトナー。
- 前記画像形成装置が、加熱体と、該加熱体の表面に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着する画像形成装置であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記画像形成装置が、磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー像を加熱定着する画像形成装置であることを特徴とする請求項4乃至7のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記第1無機微粒子の平均一次粒径が100〜500nmであることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記第1無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記第2無機微粒子の平均一次粒径が25乃至70nmであることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載のトナー。
- 前記第2無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載のトナー。
- 示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とする請求項1乃至13のいずれか一項に記載のトナー。
- 非磁性トナーであることを特徴とする請求項1乃至14のいずれか一項に記載のトナー。
- 少なくともモノマーと着色剤を含有する組成物を造粒して重合する工程を経て製造されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれか一項に記載のトナー。
- 少なくとも潜像担持体、該潜像担持体を帯電する帯電装置、帯電した潜像担持体を露光して該担持体上に潜像を形成する潜像形成装置、潜像担持体の潜像を現像するトナーを収納した現像装置、潜像担持体上のトナー像を転写材に転写する転写装置、及び転写材上のトナー像を転写材に定着する定着装置、転写残トナーを再利用させるための装置を有する画像形成装置であって、該トナーが、平均一次粒径が80〜800nmであるチタン、アルミニウム、亜鉛及びジルコニウムからなるグループより選ばれる金属の酸化物である第1無機微粒子と、平均一次粒径が80nm未満でありシリカ以外から選ばれる第2無機微粒子と、平均一次粒径が30nm未満であるシリカ微粒子とを外添剤として有するトナーであることを特徴とする画像形成装置。
- 該トナーが円相当径1〜2μmである粒子を20〜30個数%有するトナーであることを特徴とする請求項17記載の画像形成装置。
- 現像装置を複数有することを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
- 少なくとも前記潜像担持体、前記帯電装置、及び前記現像装置を具備する画像形成ユニットを複数有することを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。
- 前記画像形成ユニットが列設されていることを特徴とする請求項20に記載の画像形成装置。
- 加熱体と、耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムを介して転写材を前記加熱体に向けて押圧する加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー画像を加熱定着することを特徴とする請求項17乃至21のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 磁界発生手段と、該磁界発生手段による磁界中を移動可能に設けられる耐熱性定着フィルムと、該耐熱性定着フィルムに一体に設けられ電磁誘導発熱する発熱層と、該耐熱性定着フィルムに転写材を密着させる加圧部材とを有する定着装置によって、転写材上のトナー像を加熱定着することを特徴とする請求項17乃至21のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記第1無機微粒子の平均一次粒径が100〜500nmであることを特徴とする請求項17乃至23のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記第1無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする請求項17乃至24のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記第2無機微粒子の平均一次粒径が25乃至70nmであることを特徴とする請求項17乃至25のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記第2無機微粒子がチタン及びアルミニウムのいずれかの酸化物であることを特徴とする請求項17乃至26のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記トナーが示差熱分析において、60〜90℃の間に少なくとも一つの吸熱ピークを有することを特徴とする請求項17乃至27のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記トナーが非磁性トナーであることを特徴とする請求項17乃至28のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記トナーは、少なくともモノマーと着色剤を含有する組成物を造粒して重合する工程を経て製造されることを特徴とする請求項17乃至29のいずれか一項に記載の画像形成装置。
- 前記感光体がアモルファスシリコン感光体であることを特徴とする請求項17乃至30のいずれか一項に記載の画像形成装置。
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