JP2004211030A - コーティング用ポリフェニレンサルファイド、およびそれを用いたコーティング膜、ならびにそのコーティング膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】肉薄なコーティング膜を形成する場合であっても、強靭な皮膜を維持しつつ、塗膜特性を悪化させることがないように塗膜中の気泡やクレーターの発生を抑制した塗膜を形成し得る、コーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイドを提供する。
【解決手段】コーティングに使用される粉末状ポリフェニレンサルファイドであって、剪断速度1200/秒、310℃における溶融粘度が、150〜500Pa・sであり、177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上である、直鎖状ポリフェニレンサルファイド粉末からなることを特徴とする誘導加熱法によるコーティングに好適な粉末状ポリフェニレンサルファイド。
【選択図】 なし
【解決手段】コーティングに使用される粉末状ポリフェニレンサルファイドであって、剪断速度1200/秒、310℃における溶融粘度が、150〜500Pa・sであり、177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上である、直鎖状ポリフェニレンサルファイド粉末からなることを特徴とする誘導加熱法によるコーティングに好適な粉末状ポリフェニレンサルファイド。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、粉末コーティング用ポリフェニレンサルファイドおよびそれを用いたコーティング膜、ならびにそのコーティング膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンサルファイドは、その優れた耐熱性および耐薬品性に着目して、静電塗装法、流動浸漬法等の方法により形成される金属被覆用のコーティング材料として用いられている。これら金属被覆用のコーティングは、一般的には、静電塗装法にて被塗装基体表面にポリフェニレンサルファイド粉末を付着させた後、該ポリフェニレンサルファイド粉末の溶融合一化に必要な温度、すなわち、通常は300℃以上の温度において加熱炉中で焼成加熱することによりポリフェニレンサルファイドコーティング塗膜を形成させることにより得られるものである。
【0003】
このような粉末コーティングに使用されるポリフェニレンサルファイドとして、特許第2871949号公報には、基体との密着性に優れ、平滑で均一な塗膜を形成することができるポリフェニレンサルファイド組成物が開示されている(特許文献1参照)。また、特許第3256881号公報には、平滑かつ肉厚な塗膜を形成するために所定粒径と所定重量平均分子量とを有する粉体コーティング用高分子量ポリアリーレンサルファイドが開示されている(特許文献2参照)。
さらに、特開平8−239599号公報には、ポリフェニレンサルファイドの溶融粘度と粒径を所定の範囲にすることにより、割れを生じないような強靱なコーティング被膜(塗膜)を得ることができるポリフェニレンサルファイドが開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2871949号公報
【特許文献2】
特許第3256881号公報
【特許文献3】
特開平8−239599号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ポリフェニレンサルファイドの分子量を上げることにより、それを基体上にコーティングした塗膜の強度は向上し、また、所定粒径の微粉末を用いることにより、溶融状態も均一となるため、平滑性に優れた塗膜を得ることが可能となる。
【0006】
しかしながら、ポリフェニレンサルファイドの分子量増加にともない、そのポリフェニレンサルファイドの溶融粘度も上昇するため、微粉末のポリフェニレンサルファイドを用いた場合には、微粉末が溶融する時に気泡を巻き込んで塗膜が形成されてしまい、溶融粘度が高すぎると、塗膜中に巻き込まれた気泡が溶融固化の間に抜けきれず、気泡を含んだまま固化し、塗膜が形成されてしまう。
【0007】
このような塗膜中の気泡は、コーティング膜(塗膜)の膜厚が厚い場合には問題とならないが、気泡の存在によりコーティング膜内部に空隙や割れが形成されてしまうため、肉薄なコーティング膜を必要とする分野においてはコーティング膜の耐薬品性や絶縁性が悪化するといった問題があった。
【0008】
また、かかる気泡は、クレーター状の凹凸となって膜表面に現れるため、塗膜表面の平滑性を低下させる原因となっていた。
【0009】
さらに、近年、部材が軽量化、小型化する傾向にあり、これら被塗装物を含めて被覆厚(コーティング膜の膜厚)もできるだけ肉薄なものが求められる傾向にあるため、上記の問題がより顕著となる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、肉薄なコーティング膜を形成する場合であっても、強靭な皮膜を維持しつつ、塗膜特性を悪化させることがないように塗膜中の気泡やクレーターの発生を抑制した塗膜を形成し得る、コーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記の目的を達成するため、本発明は、コーティングに使用される粉末状ポリフェニレンサルファイドであって、剪断速度1200/秒、310℃における溶融粘度が、150〜500Pa・sであり、177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上である、直鎖状ポリフェニレンサルファイド粉末からなることを特徴とする、誘導加熱法によるコーティングに好適な粉末状ポリフェニレンサルファイドを提供する。
【0012】
本発明の態様としては、前記直鎖状ポリフェニレンサルファイドが、直鎖ポリフェニレンサルファイドであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の別の態様として、上記の粉末状ポリフェニレンサルファイドを70質量%以上含有する組成物を、誘導加熱法により溶融させて塗膜を形成することにより、前記塗膜内部に空隙を有さず、かつ前記塗膜表面が平滑である、ことを特徴とする、ポリフェニレンサルファイドコーティング膜を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明の別の態様として、粉末状ポリフェニレンサルファイドを70質量%以上含有する組成物を、吹き付け法または流動浸漬法により基体上に塗布する工程、前記塗布体を誘導加熱法により加熱する工程、前記誘導加熱により前記基体表面側から順に前記組成物を溶融させて、前記基体上に塗膜を形成する工程、を含んでなる、ポリフェニレンサルファイドコーティング膜の製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明による粉末コーティングされたポリフェニレンサルファイドは、クレーターないし割れがなく、表面が平滑で強靭な薄肉コーティング塗膜を形成することができ、耐熱性、絶縁性が要求される電気部品・製鋼部材等に好適に用いることができる。
【0016】
本発明は、粉末コーティング用ポリフェニレンサルファイドについて種々の限定を加えて、良好なコーティング表面が得られるようにしたものであるが、これらの限定のうち、分子量ないし溶融粘度の限定は中でも特に重要である。すなわち、ポリフェニレンサルファイドの粉末コーティング表面にクレーター状の欠陥が認められることがあることは前記したところであるが、この欠陥は使用するポリフェニレンサルファイドの分子量ないし溶融粘度が、特定の範囲内にある時には認められない。ポリフェニレンサルファイドという特定樹脂の粉末コーティングという特定のコーティング方法の際に発生しうるコーティング面上のクレーターという特定の欠陥が使用樹脂の分子量ないし溶融粘度に臨界的に依存するということは興味のあることといえよう。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイド、およびそれを用いて得られるコーティング膜の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
<直鎖状ポリフェニレンサルファイド>
本発明の粉末コーティング用ポリフェニレンルファイドに使用するポリフェニレンサルファイドは、基本的には2個のハロゲン置換基を有する芳香族化合物とアルカリ金属硫化物との脱ハロゲン化アルカリ反応によって形成されるポリマーであることはいうまでもないが、充分な分子量ないし溶融粘度が得られないときには、3個以上のハロゲンロ換基を有する芳香族化合物を少量併用したり、ポリマーを酸化条件で加熱して架橋させたものが知られている。
【0019】
しかしながら、酸化架橋により増粘されたポリフェニレンサァイドは直鎖状ポリフェニレンサルファイドと比べると機械的強度が弱く、また成形時の溶融樹脂の粘度変化が温度に大きく影響されてコーティング被膜成形条件のコントロールが難しいところからコーティング被膜成形性に劣っており、しかもコーティングされた表面に微小なクレーターや凹凸等のディンプルが認められるなどの問題があり、これらを単独で使用すると、成形された被覆用コーティング膜の表面平滑性は非常に悪く、実用に耐えないものである。ただし、本発明においては、このようなものも直鎖状ポリフェニレンサルファイドに少量混合して使用することは差し支えない。
【0020】
ここで、「直鎖状ポリフェニレンサルファイド」とは、酸化架橋により増粘(キュアー)されたポリフェニレンサルファイドではなく、実質的に一分子当たり二個のハロゲン置換基を有する芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とから得られたポリフェニレンサルファイドを指す。すなわち、一分子当たり二個より多いハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物に基づく重合構成単位の存在は、それが少量である限り、「直鎖状」の枠内として許容される。「直鎖状」の定義を厳密にいえば、本発明に用いられる「直鎖状ポリフェニレンサルファイド」は、その溶解度(溶媒:αークロロナフタリン、温度:25℃)が対応「基準」ポリフェニレンサルファイド(すなわち、一分子当たり二個より多いハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を持たない対応直鎖ポリフェニレンサルファイド)の溶解度の0.7〜1.0倍、好ましくは0.9〜1.0倍、より一層好ましくは0.95〜1.0倍、であるものをいう。特に好ましくは、直鎖ポリフェニレンサルファイドである。このような直鎖状ポリフェニレンサルファイドは、例えば、特公昭63ー33775号公報、特公昭53ー25589号公報等に記載の方法により得られる。なお、本発明に用いられる直鎖状ポリフェニレンサルファイドには、フェニレンサルファイドを主とする共重合体、一部が変性された直鎖状ポリフェニレンサルファイド等も包含するものとする。
【0021】
また、本発明において用いられる直鎖状ポリフェニレンサルファイドは、その溶融粘度がキャピラリー型溶融粘度測定機における310℃、剪断速度1200/秒において150〜500Pa・s、好ましくは160〜400Pa・s、より好ましくは170〜250Pa・sを有するものである。150Pa・sより低い溶融粘度であると割れが発生し、被覆用コーティング膜の機械的強度が低下して、実際の使用に耐えがたいものとなるためであり、500Pa・sを上回る溶融粘度であると流動性が低下してコーティング膜に偏肉を生ずるためである。
【0022】
さらに、本発明において用いられる直鎖状ポリフェニレンサルファイドは粉末状のものである。その粉末としては、177μm以下(80メッシュパス)の粒径の粒子が80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上、のものが用いられる。177μm以下の粒径の粒子が80質量%未満になると被覆用コーティング膜厚の斑を生じやすくなり、表面の平滑性にすぐれた被覆用コーティング体が得られなくなり、極端な場合、製膜ができないためである。静電塗装法においては好ましくは20〜100μm、より一層好ましくは30〜90μm、のものが用いられる。原料ポリフェニレンサルファイドが所期の粒径ないし粒径分布のものとして得られないときは、粉砕によって所期の粒子特性のものとすることができる。粉砕は、ポリフェニレンサルファイドを凍結して行うことが好ましい。
【0023】
<ポリフェニレンサルファイドコーティング膜>
コーティングは、上記のコーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイドを少なくとも70質量%含んでなる組成物を用いることにより形成する。すなわち、本発明によるコーティング用組成物の一具体例としては、このようなポリフェニレンサルファイド粉末単独からなるものが、本発明の最も好ましい実施態様であるが、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする組成物であっても良い。後者の場合、添加物としては特に限定されないが、具体的には、たとえば、(イ)粒状または扁平状の無機充填剤、例えば、アルミナ、シリカ、ガラスビーズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、フェライト、珪酸カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、マイカ、および酸化マグネシウム等、(口)繊維状強化剤、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム、およびセラミックス繊維、(ハ)樹脂、例えば、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド、およびポリエステル等、ならびに、(二)顔料、酸化防止剤、および防食剤等を例示することができる。これらは被膜形成性を損なわない範囲で添加でき、また、該添加剤が固体である場合は、ポリフェニレンサルファイドと粒径が近似していることが望ましい。このような添加剤の添加量は、組成物中、高々30質量%であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。添加剤の量が30質量%以上になると、被膜形成性が損なわれるとともに、ポリフェニレンサルファイドの樹脂特性が低下する。
【0024】
被塗装体(基体)としては、導電性を有する金属が好適に使用される。すなわち、後述するように、誘導加熱により加熱可能な材料であれば、特に限定されるものではない。これら金属の中でも、特に、鉄が好適である。また、基体の形状は、板状、管状、柱状、線状等、特に限定されないが、板状、管状、柱状等が好適に使用される。基体と塗膜との接着性の面からは、基体表面はプライマー処理されていることが望ましいが、本発明の誘導加熱によるコーティング膜製造方法によれば、該プライマー処理をしなくても十分実用的なものが得られる。
【0025】
<コーティング膜の製造方法>
上記の粉末状ポリフェニレンサルファイドを基体上に塗布する方法としては、吹き付け法や流動浸漬法を利用することができるが、特に、吹き付け法が好ましい。また、吹き付け法の中でも、エア静電塗装法等が好適に用いられる。かかる方法を用いて基体上に粉体層(塗布膜)を形成させる。
【0026】
塗布膜が形成された基体を、誘導加熱を利用することにより、粉体層の内部から加熱して塗布層を基体に融着させ、加熱焼成により、基体上に塗膜を形成する。このように誘導加熱を利用した場合、基体自体の温度が昇温されることにより粉末状ポリフェニレンサルファイドが溶融するため、該粉末は、粉体層(塗布膜)内部の基体と接している部分から溶融が始まり、基体と融着していく。そのため、粉末中に含まれる空気を脱気しながら溶融が進行し、粉体層の上層部まで完全に溶融が進んだ状態でも、溶融樹脂中に気泡が残らない。一方、従来の加熱炉を用いて塗膜を形成した場合には、粉体層の表面から溶融が開始されるので、基体と接している粉体層内部は、依然として粉体のままであり空気を脱気できない。コーティングに用いる樹脂にもよるが、本発明のポリフェニレンサルファイドのように、溶融粘度が高いものでは、溶融した樹脂内部に含まれた気泡が脱気されるのにある程度の時間を要する。したがって、空気が樹脂から完全に脱気される前に溶融樹脂が固化されるため、コーティング膜表面の平滑性が損なわれるとともに、コーティング膜内部にも空隙が形成されてしまい絶縁特性等が低下する。このようなコーティング膜内部に空隙が形成されることによる問題は、コーティング膜が肉薄である場合に顕著となる。
【0027】
誘導加熱は、慣用の高周波誘導加熱装置を用いて行うことができ、誘導加熱の周波数は、例えば、約0.5〜200kHz(例えば、0.5〜100kHz、好ましくは1〜80kHz、さらに好ましくは5〜70kHz、特に10〜50kHz)程度であってもよい。
【0028】
上記加熱焼成温度は樹脂の融点以上の温度、通常は320〜360℃が適当である。本発明においては、このような温度で加熱をするので、その際に酸化架橋反応が起こる可能性があるが、本発明ではポリフェニレンサルファイドを積極的に酸化架橋させる必要はない。
【0029】
粉末状ポリフェニレンサルファイドを溶融させて焼成した後、塗布体を冷却する。樹脂の溶融状態から結晶化温度までの冷却速度は特に規定されないが、結晶化温度よりガラス転移温度までの冷却は、徐冷でなければ表面の平滑な良い被膜は得られない。徐冷の冷却速度は、5℃/分以下、好ましくは4℃/分以下、より好ましくは3℃以下、である。冷却速度が5℃/分より大きくて急冷になると被膜にクラックが入りやすくなり、かつポリフェニレンサルファイドの結晶化が阻害され、良好な被膜が得られにくくなるとともに、膜内部にも空隙が形成され易い。溶融状態から結晶化温度まで、ならびにガラス転移温度から取り出し温度まで、の冷却速度は、特に限定されるものではない。
【0030】
また、基体上のポリフェニレンサルファイドコーティング膜の厚さは、例えば0.03mm〜1.0mm、好ましくは0.05〜0.5mmである。一回の粉末コーティングで所期のコーティング膜厚さが得られないときは、コーティング操作を複数回実施すればよい。
【0031】
【実施例】
実施例1および2
ポリフェニレンサルファイドとして、呉羽化学化学工業(株)製「フォートロンKSP」を使用し、溶融粘度が異なる4種類のグレードそれぞれについて、液体窒素により冷凍粉砕し、分粒機により所定の粒径の粉体を得た。表1に、実施例および比較例において用いた、ポリフェニレンサルファイドの粒度分布および溶融粘度を示す。なお供試「フォートロンKPS」は、4種のグレードの何れも177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上であった。
【0032】
また、コーティング膜を形成する基体として、ハードディスクドライブ用モーター回転子(鉄製:直径20mmφ)を用いた。
【0033】
コーティング膜の形成は、静電粉体塗装装置((株)英布製 M−380ES)を用いて、上記モーター回転子の表面に、凍結粉砕された上記の各グレードのポリフェニレンサルファイドそれぞれを静電塗装法により塗布し、粉体層を形成した後、モーター回転子の温度が350℃になるように誘導加熱を行い、粉体層(塗膜)の加熱焼成を行った。
【表1】
【0034】
比較例1〜4
実施例1で使用した粉末状ポリフェニレンサルファイドを、静電塗装機(小野田セメント製GX3600T−20)を用いて、モーター回転子表面上に塗布することにより、粉体層を形成し、その後、加熱炉(電気炉)中で、350℃の温度条件により加熱焼成を行い、該モーター回転子の表面にコーティング膜を形成した。
【0035】
実施例1および2、ならびに比較例1〜4で得られたコーティング膜について、表面状態を肉眼により観察した。また、コーティング膜が形成されたモーター回転子を切断し、その切断面を査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6300F)を用いて観察することにより、コーティング膜の膜厚を計測し、コーティング膜内部の形態(気泡、割れ等の有無)の評価を行った。
【0036】
測定結果を表2に示す。
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明の粉末状ポリフェニレンサルファイドを用いて、誘導加熱により得られたコーティング膜は、表面が平滑で、かつ割れや気泡の発生が抑制されている。
本発明の製造方法によれば、強靭で薄肉なコーティング塗膜を形成できるとともに、薄膜とすることによる塗膜特性の低下も抑えることができるため、耐熱性や絶縁性が要求される電気部品、製鋼部材等に好適に用いることができる。
【産業上の利用分野】
本発明は、粉末コーティング用ポリフェニレンサルファイドおよびそれを用いたコーティング膜、ならびにそのコーティング膜の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリフェニレンサルファイドは、その優れた耐熱性および耐薬品性に着目して、静電塗装法、流動浸漬法等の方法により形成される金属被覆用のコーティング材料として用いられている。これら金属被覆用のコーティングは、一般的には、静電塗装法にて被塗装基体表面にポリフェニレンサルファイド粉末を付着させた後、該ポリフェニレンサルファイド粉末の溶融合一化に必要な温度、すなわち、通常は300℃以上の温度において加熱炉中で焼成加熱することによりポリフェニレンサルファイドコーティング塗膜を形成させることにより得られるものである。
【0003】
このような粉末コーティングに使用されるポリフェニレンサルファイドとして、特許第2871949号公報には、基体との密着性に優れ、平滑で均一な塗膜を形成することができるポリフェニレンサルファイド組成物が開示されている(特許文献1参照)。また、特許第3256881号公報には、平滑かつ肉厚な塗膜を形成するために所定粒径と所定重量平均分子量とを有する粉体コーティング用高分子量ポリアリーレンサルファイドが開示されている(特許文献2参照)。
さらに、特開平8−239599号公報には、ポリフェニレンサルファイドの溶融粘度と粒径を所定の範囲にすることにより、割れを生じないような強靱なコーティング被膜(塗膜)を得ることができるポリフェニレンサルファイドが開示されている(特許文献3参照)。
【0004】
【特許文献1】
特許第2871949号公報
【特許文献2】
特許第3256881号公報
【特許文献3】
特開平8−239599号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ポリフェニレンサルファイドの分子量を上げることにより、それを基体上にコーティングした塗膜の強度は向上し、また、所定粒径の微粉末を用いることにより、溶融状態も均一となるため、平滑性に優れた塗膜を得ることが可能となる。
【0006】
しかしながら、ポリフェニレンサルファイドの分子量増加にともない、そのポリフェニレンサルファイドの溶融粘度も上昇するため、微粉末のポリフェニレンサルファイドを用いた場合には、微粉末が溶融する時に気泡を巻き込んで塗膜が形成されてしまい、溶融粘度が高すぎると、塗膜中に巻き込まれた気泡が溶融固化の間に抜けきれず、気泡を含んだまま固化し、塗膜が形成されてしまう。
【0007】
このような塗膜中の気泡は、コーティング膜(塗膜)の膜厚が厚い場合には問題とならないが、気泡の存在によりコーティング膜内部に空隙や割れが形成されてしまうため、肉薄なコーティング膜を必要とする分野においてはコーティング膜の耐薬品性や絶縁性が悪化するといった問題があった。
【0008】
また、かかる気泡は、クレーター状の凹凸となって膜表面に現れるため、塗膜表面の平滑性を低下させる原因となっていた。
【0009】
さらに、近年、部材が軽量化、小型化する傾向にあり、これら被塗装物を含めて被覆厚(コーティング膜の膜厚)もできるだけ肉薄なものが求められる傾向にあるため、上記の問題がより顕著となる可能性がある。
【0010】
したがって、本発明の目的は、肉薄なコーティング膜を形成する場合であっても、強靭な皮膜を維持しつつ、塗膜特性を悪化させることがないように塗膜中の気泡やクレーターの発生を抑制した塗膜を形成し得る、コーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイドを提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、上記の目的を達成するため、本発明は、コーティングに使用される粉末状ポリフェニレンサルファイドであって、剪断速度1200/秒、310℃における溶融粘度が、150〜500Pa・sであり、177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上である、直鎖状ポリフェニレンサルファイド粉末からなることを特徴とする、誘導加熱法によるコーティングに好適な粉末状ポリフェニレンサルファイドを提供する。
【0012】
本発明の態様としては、前記直鎖状ポリフェニレンサルファイドが、直鎖ポリフェニレンサルファイドであることが好ましい。
【0013】
また、本発明の別の態様として、上記の粉末状ポリフェニレンサルファイドを70質量%以上含有する組成物を、誘導加熱法により溶融させて塗膜を形成することにより、前記塗膜内部に空隙を有さず、かつ前記塗膜表面が平滑である、ことを特徴とする、ポリフェニレンサルファイドコーティング膜を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明の別の態様として、粉末状ポリフェニレンサルファイドを70質量%以上含有する組成物を、吹き付け法または流動浸漬法により基体上に塗布する工程、前記塗布体を誘導加熱法により加熱する工程、前記誘導加熱により前記基体表面側から順に前記組成物を溶融させて、前記基体上に塗膜を形成する工程、を含んでなる、ポリフェニレンサルファイドコーティング膜の製造方法を提供するものである。
【0015】
本発明による粉末コーティングされたポリフェニレンサルファイドは、クレーターないし割れがなく、表面が平滑で強靭な薄肉コーティング塗膜を形成することができ、耐熱性、絶縁性が要求される電気部品・製鋼部材等に好適に用いることができる。
【0016】
本発明は、粉末コーティング用ポリフェニレンサルファイドについて種々の限定を加えて、良好なコーティング表面が得られるようにしたものであるが、これらの限定のうち、分子量ないし溶融粘度の限定は中でも特に重要である。すなわち、ポリフェニレンサルファイドの粉末コーティング表面にクレーター状の欠陥が認められることがあることは前記したところであるが、この欠陥は使用するポリフェニレンサルファイドの分子量ないし溶融粘度が、特定の範囲内にある時には認められない。ポリフェニレンサルファイドという特定樹脂の粉末コーティングという特定のコーティング方法の際に発生しうるコーティング面上のクレーターという特定の欠陥が使用樹脂の分子量ないし溶融粘度に臨界的に依存するということは興味のあることといえよう。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のコーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイド、およびそれを用いて得られるコーティング膜の製造方法について詳細に説明する。
【0018】
<直鎖状ポリフェニレンサルファイド>
本発明の粉末コーティング用ポリフェニレンルファイドに使用するポリフェニレンサルファイドは、基本的には2個のハロゲン置換基を有する芳香族化合物とアルカリ金属硫化物との脱ハロゲン化アルカリ反応によって形成されるポリマーであることはいうまでもないが、充分な分子量ないし溶融粘度が得られないときには、3個以上のハロゲンロ換基を有する芳香族化合物を少量併用したり、ポリマーを酸化条件で加熱して架橋させたものが知られている。
【0019】
しかしながら、酸化架橋により増粘されたポリフェニレンサァイドは直鎖状ポリフェニレンサルファイドと比べると機械的強度が弱く、また成形時の溶融樹脂の粘度変化が温度に大きく影響されてコーティング被膜成形条件のコントロールが難しいところからコーティング被膜成形性に劣っており、しかもコーティングされた表面に微小なクレーターや凹凸等のディンプルが認められるなどの問題があり、これらを単独で使用すると、成形された被覆用コーティング膜の表面平滑性は非常に悪く、実用に耐えないものである。ただし、本発明においては、このようなものも直鎖状ポリフェニレンサルファイドに少量混合して使用することは差し支えない。
【0020】
ここで、「直鎖状ポリフェニレンサルファイド」とは、酸化架橋により増粘(キュアー)されたポリフェニレンサルファイドではなく、実質的に一分子当たり二個のハロゲン置換基を有する芳香族化合物とアルカリ金属硫化物とから得られたポリフェニレンサルファイドを指す。すなわち、一分子当たり二個より多いハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物に基づく重合構成単位の存在は、それが少量である限り、「直鎖状」の枠内として許容される。「直鎖状」の定義を厳密にいえば、本発明に用いられる「直鎖状ポリフェニレンサルファイド」は、その溶解度(溶媒:αークロロナフタリン、温度:25℃)が対応「基準」ポリフェニレンサルファイド(すなわち、一分子当たり二個より多いハロゲン置換基を有するポリハロ芳香族化合物を持たない対応直鎖ポリフェニレンサルファイド)の溶解度の0.7〜1.0倍、好ましくは0.9〜1.0倍、より一層好ましくは0.95〜1.0倍、であるものをいう。特に好ましくは、直鎖ポリフェニレンサルファイドである。このような直鎖状ポリフェニレンサルファイドは、例えば、特公昭63ー33775号公報、特公昭53ー25589号公報等に記載の方法により得られる。なお、本発明に用いられる直鎖状ポリフェニレンサルファイドには、フェニレンサルファイドを主とする共重合体、一部が変性された直鎖状ポリフェニレンサルファイド等も包含するものとする。
【0021】
また、本発明において用いられる直鎖状ポリフェニレンサルファイドは、その溶融粘度がキャピラリー型溶融粘度測定機における310℃、剪断速度1200/秒において150〜500Pa・s、好ましくは160〜400Pa・s、より好ましくは170〜250Pa・sを有するものである。150Pa・sより低い溶融粘度であると割れが発生し、被覆用コーティング膜の機械的強度が低下して、実際の使用に耐えがたいものとなるためであり、500Pa・sを上回る溶融粘度であると流動性が低下してコーティング膜に偏肉を生ずるためである。
【0022】
さらに、本発明において用いられる直鎖状ポリフェニレンサルファイドは粉末状のものである。その粉末としては、177μm以下(80メッシュパス)の粒径の粒子が80質量%以上、好ましくは85質量%以上、より一層好ましくは90質量%以上、のものが用いられる。177μm以下の粒径の粒子が80質量%未満になると被覆用コーティング膜厚の斑を生じやすくなり、表面の平滑性にすぐれた被覆用コーティング体が得られなくなり、極端な場合、製膜ができないためである。静電塗装法においては好ましくは20〜100μm、より一層好ましくは30〜90μm、のものが用いられる。原料ポリフェニレンサルファイドが所期の粒径ないし粒径分布のものとして得られないときは、粉砕によって所期の粒子特性のものとすることができる。粉砕は、ポリフェニレンサルファイドを凍結して行うことが好ましい。
【0023】
<ポリフェニレンサルファイドコーティング膜>
コーティングは、上記のコーティング用粉末状ポリフェニレンサルファイドを少なくとも70質量%含んでなる組成物を用いることにより形成する。すなわち、本発明によるコーティング用組成物の一具体例としては、このようなポリフェニレンサルファイド粉末単独からなるものが、本発明の最も好ましい実施態様であるが、ポリフェニレンサルファイドを主成分とする組成物であっても良い。後者の場合、添加物としては特に限定されないが、具体的には、たとえば、(イ)粒状または扁平状の無機充填剤、例えば、アルミナ、シリカ、ガラスビーズ、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、フェライト、珪酸カルシウム、グラファイト、カーボンブラック、マイカ、および酸化マグネシウム等、(口)繊維状強化剤、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム、およびセラミックス繊維、(ハ)樹脂、例えば、フッ素樹脂、シリコン樹脂、ポリアミド、およびポリエステル等、ならびに、(二)顔料、酸化防止剤、および防食剤等を例示することができる。これらは被膜形成性を損なわない範囲で添加でき、また、該添加剤が固体である場合は、ポリフェニレンサルファイドと粒径が近似していることが望ましい。このような添加剤の添加量は、組成物中、高々30質量%であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。添加剤の量が30質量%以上になると、被膜形成性が損なわれるとともに、ポリフェニレンサルファイドの樹脂特性が低下する。
【0024】
被塗装体(基体)としては、導電性を有する金属が好適に使用される。すなわち、後述するように、誘導加熱により加熱可能な材料であれば、特に限定されるものではない。これら金属の中でも、特に、鉄が好適である。また、基体の形状は、板状、管状、柱状、線状等、特に限定されないが、板状、管状、柱状等が好適に使用される。基体と塗膜との接着性の面からは、基体表面はプライマー処理されていることが望ましいが、本発明の誘導加熱によるコーティング膜製造方法によれば、該プライマー処理をしなくても十分実用的なものが得られる。
【0025】
<コーティング膜の製造方法>
上記の粉末状ポリフェニレンサルファイドを基体上に塗布する方法としては、吹き付け法や流動浸漬法を利用することができるが、特に、吹き付け法が好ましい。また、吹き付け法の中でも、エア静電塗装法等が好適に用いられる。かかる方法を用いて基体上に粉体層(塗布膜)を形成させる。
【0026】
塗布膜が形成された基体を、誘導加熱を利用することにより、粉体層の内部から加熱して塗布層を基体に融着させ、加熱焼成により、基体上に塗膜を形成する。このように誘導加熱を利用した場合、基体自体の温度が昇温されることにより粉末状ポリフェニレンサルファイドが溶融するため、該粉末は、粉体層(塗布膜)内部の基体と接している部分から溶融が始まり、基体と融着していく。そのため、粉末中に含まれる空気を脱気しながら溶融が進行し、粉体層の上層部まで完全に溶融が進んだ状態でも、溶融樹脂中に気泡が残らない。一方、従来の加熱炉を用いて塗膜を形成した場合には、粉体層の表面から溶融が開始されるので、基体と接している粉体層内部は、依然として粉体のままであり空気を脱気できない。コーティングに用いる樹脂にもよるが、本発明のポリフェニレンサルファイドのように、溶融粘度が高いものでは、溶融した樹脂内部に含まれた気泡が脱気されるのにある程度の時間を要する。したがって、空気が樹脂から完全に脱気される前に溶融樹脂が固化されるため、コーティング膜表面の平滑性が損なわれるとともに、コーティング膜内部にも空隙が形成されてしまい絶縁特性等が低下する。このようなコーティング膜内部に空隙が形成されることによる問題は、コーティング膜が肉薄である場合に顕著となる。
【0027】
誘導加熱は、慣用の高周波誘導加熱装置を用いて行うことができ、誘導加熱の周波数は、例えば、約0.5〜200kHz(例えば、0.5〜100kHz、好ましくは1〜80kHz、さらに好ましくは5〜70kHz、特に10〜50kHz)程度であってもよい。
【0028】
上記加熱焼成温度は樹脂の融点以上の温度、通常は320〜360℃が適当である。本発明においては、このような温度で加熱をするので、その際に酸化架橋反応が起こる可能性があるが、本発明ではポリフェニレンサルファイドを積極的に酸化架橋させる必要はない。
【0029】
粉末状ポリフェニレンサルファイドを溶融させて焼成した後、塗布体を冷却する。樹脂の溶融状態から結晶化温度までの冷却速度は特に規定されないが、結晶化温度よりガラス転移温度までの冷却は、徐冷でなければ表面の平滑な良い被膜は得られない。徐冷の冷却速度は、5℃/分以下、好ましくは4℃/分以下、より好ましくは3℃以下、である。冷却速度が5℃/分より大きくて急冷になると被膜にクラックが入りやすくなり、かつポリフェニレンサルファイドの結晶化が阻害され、良好な被膜が得られにくくなるとともに、膜内部にも空隙が形成され易い。溶融状態から結晶化温度まで、ならびにガラス転移温度から取り出し温度まで、の冷却速度は、特に限定されるものではない。
【0030】
また、基体上のポリフェニレンサルファイドコーティング膜の厚さは、例えば0.03mm〜1.0mm、好ましくは0.05〜0.5mmである。一回の粉末コーティングで所期のコーティング膜厚さが得られないときは、コーティング操作を複数回実施すればよい。
【0031】
【実施例】
実施例1および2
ポリフェニレンサルファイドとして、呉羽化学化学工業(株)製「フォートロンKSP」を使用し、溶融粘度が異なる4種類のグレードそれぞれについて、液体窒素により冷凍粉砕し、分粒機により所定の粒径の粉体を得た。表1に、実施例および比較例において用いた、ポリフェニレンサルファイドの粒度分布および溶融粘度を示す。なお供試「フォートロンKPS」は、4種のグレードの何れも177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上であった。
【0032】
また、コーティング膜を形成する基体として、ハードディスクドライブ用モーター回転子(鉄製:直径20mmφ)を用いた。
【0033】
コーティング膜の形成は、静電粉体塗装装置((株)英布製 M−380ES)を用いて、上記モーター回転子の表面に、凍結粉砕された上記の各グレードのポリフェニレンサルファイドそれぞれを静電塗装法により塗布し、粉体層を形成した後、モーター回転子の温度が350℃になるように誘導加熱を行い、粉体層(塗膜)の加熱焼成を行った。
【表1】
【0034】
比較例1〜4
実施例1で使用した粉末状ポリフェニレンサルファイドを、静電塗装機(小野田セメント製GX3600T−20)を用いて、モーター回転子表面上に塗布することにより、粉体層を形成し、その後、加熱炉(電気炉)中で、350℃の温度条件により加熱焼成を行い、該モーター回転子の表面にコーティング膜を形成した。
【0035】
実施例1および2、ならびに比較例1〜4で得られたコーティング膜について、表面状態を肉眼により観察した。また、コーティング膜が形成されたモーター回転子を切断し、その切断面を査型電子顕微鏡(日本電子(株)製JSM−6300F)を用いて観察することにより、コーティング膜の膜厚を計測し、コーティング膜内部の形態(気泡、割れ等の有無)の評価を行った。
【0036】
測定結果を表2に示す。
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明の粉末状ポリフェニレンサルファイドを用いて、誘導加熱により得られたコーティング膜は、表面が平滑で、かつ割れや気泡の発生が抑制されている。
本発明の製造方法によれば、強靭で薄肉なコーティング塗膜を形成できるとともに、薄膜とすることによる塗膜特性の低下も抑えることができるため、耐熱性や絶縁性が要求される電気部品、製鋼部材等に好適に用いることができる。
Claims (9)
- コーティングに使用される粉末状ポリフェニレンサルファイドであって、剪断速度1200/秒、310℃における溶融粘度が、150〜500Pa・sであり、177μm以下の粒径の粒子が80質量%以上である、直鎖状ポリフェニレンサルファイド粉末からなることを特徴とする、誘導加熱法によるコーティングに好適な粉末状ポリフェニレンサルファイド。
- 前記直鎖状ポリフェニレンサルファイドが、直鎖ポリフェニレンサルファイドである、請求項1に記載の粉末状ポリフェニレンサルファイド。
- 請求項1または2に記載の粉末状ポリフェニレンサルファイドを70質量%以上含有する組成物を、誘導加熱法により溶融させて塗膜を形成することにより、前記塗膜内部に空隙を有さず、かつ前記塗膜表面が平滑である、ことを特徴とする、ポリフェニレンサルファイドコーティング膜。
- 前記組成物が、実質的に請求項1または2に記載の粉末状ポリフェニレンサルファイドのみからなる、請求項3に記載のポリフェニレンサルファイドコーティング膜。
- 前記基体が、金属である、請求項3または4に記載のポリフェニレンサルファイドコーティング膜。
- 請求項1または2に記載の粉末状ポリフェニレンサルファイドを70質量%以上含有する組成物を、吹き付け法または流動浸漬法により基体上に塗布する工程、
前記塗布体を誘導加熱法により加熱する工程、
前記誘導加熱により前記基体表面側から順に前記組成物を溶融させて、前記基体上に塗膜を形成する工程、を含んでなる、ポリフェニレンサルファイドコーティング膜の製造方法。 - 前記組成物が、実質的にポリフェニレンサルファイドのみからなる、請求項6に記載の製造方法。
- 前記基体が、金属である、請求項6または7に記載の製造方法。
- 請求項1または2に記載の粉末状ポリフェニレンサルファイドの誘導加熱法によるコーティング膜形成用材料としての使用。
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