JP2004210919A - 合成樹脂エマルジョン組成物、およびそれを含んでなる塗膜塗り替え用シーラー組成物 - Google Patents

合成樹脂エマルジョン組成物、およびそれを含んでなる塗膜塗り替え用シーラー組成物 Download PDF

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Keisuke Onishi
西 啓 介 大
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Nichigo Mowinyl Co Ltd
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Abstract

【課題】旧塗膜および上塗り塗膜との密着性に優れ、かつ、その密着性が上塗り塗膜の種類の違いによる影響を受け難い水系シーラー組成物に使用される合成樹脂エマルジョン組成物の提供。
【解決手段】本発明によれば、塗膜塗り替え用シーラー組成物の主成分として用いられる、水に合成樹脂粒子を分散させてなる合成樹脂エマルジョン組成物であって、ラジカル重合性単量体を乳化重合することにより得られるものであり、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなり、前記Tgの最高温度と、Tgの最低温度との差が少なくとも50℃以上あり、かつ、Tgが50℃以上である合成樹脂成分が、その全合成樹脂成分量に対して10〜90重量%の範囲で存在することを特徴とする、合成樹脂エマルジョン組成物が提供される。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の背景】
発明の分野
本発明は、塗膜、特に樹脂系旧塗膜の塗り替え用水系シーラー組成物の主成分として用いられる合成樹脂エマルジョンに関する。
【0002】
背景技術
一般的に、建築物の外装材としては、スレート、サイディングボード、モルタルなどの無機系材料が使用されており、通常これら外装材の表面には、美観や保護を目的としてさらに各種上塗り材を塗布して塗膜を形成させる。このような上塗り材としては、多くの場合、アクリル系樹脂塗料、スチレンアクリル系樹脂塗料、ビニル系樹脂塗料、ウレタン系樹脂塗料が使用されている。塗膜は経時的に汚れが付着し、また紫外線や雨などの要因によって劣化する。このため、このような汚れが付着し劣化した塗膜、すなわち旧塗膜を改修する必要が生ずる。
【0003】
旧塗膜の改修方法としては、旧塗膜を除去してから塗り替える方法、または旧塗膜上に新しい塗料を塗布する方法があり、後者の場合、一般的には、旧塗膜上にシーラーを塗工した後、水性の単層弾性塗料や複層弾性塗料を塗布して仕上げることが多い。
【0004】
従来、塗り替え用に使用されるシーラーとしては、主として有機溶剤系シーラーが使用されており、通常の水系シーラーは水性の各種弾性塗料との付着性に問題があるため、本発明者等の知る限りでは、ほとんど使用されていなかった。しかしながら、有機溶剤系シーラーは、付着性には優れるものの、多量の有機溶剤を含むため、昨今の環境問題から、その使用は制限される傾向にある。
したがって、塗り替え用シーラーとしては、有機溶剤を含まない水系シーラーの使用が望ましく、多くの場合、塗り替え用水系シーラーとしては、塩素化ポリオレフィンを後乳化したものが使用されている。
【0005】
しかしながら、塩素化ポリオレフィンを後乳化したシーラーは、後乳化する際、塩素化ポリオレフィンを多量の有機溶剤により溶解させる必要があり、有機溶媒の使用を全く無くすことはできない。また、このようなシーラーは、塩素化ポリオレフィンの比重が大きいため、沈殿を生じ易く、貯蔵安定性に問題があることがある。さらに、このシーラーを製造するためには、塩素化ポリオレフィン樹脂と、多量の乳化剤とが必要であるために、通常の水系アクリルエマルジョンまたは水系スチレン/アクリルエマルジョンよりも原料コストが高くなる傾向がある。また、最近では、環境問題への関心の高まりから脱塩素化を望む傾向が強く、シーラーにおいて塩素を含む塩素化ポリオレフィンの使用を減らすまたは無くすことが望まれている。
【0006】
そこで塩素化ポリオレフィンを含有しない塗り替え用水系シーラーが、提案されている。
例えば、特開平08−295832号(特許文献1)には、グリシジル基などの密着性を改善する官能基を導入したシーラーが記載されている。しかしながら、これはシーラーの貯蔵安定性が不充分なことがある。
【0007】
また例えば、特開2001−342219号(特許文献2)および特開2002−161231号(特許文献3)にも異なる手法に基づくシーラーが提案されている。
しかしながら、これらは上塗りされる各種塗料、特に弾性塗料では、所望の性能を充分に発揮できないことがある。例えば単層弾性塗料が上塗りの場合には充分に性能が発揮されるものの、複層弾性塗料を上塗りに用いた場合には発揮される性能が単層弾性塗料の場合に比べて低下することがあったり、または、複層弾性塗料を上塗りに用いた場合には充分に性能が発揮されるものの、単層弾性塗料を上塗りに用いた場合には複層弾性塗料の場合に比べて低下することがある。さらに、有機溶剤系塗料を上塗りに用いた場合には、上塗り塗膜が塗装後に膨れてくる、所謂「リフティング」が発生することがある。
【0008】
なお上記中で挙げられた文献を下記に列記すると下記のとおりである。
【0009】
【特許文献1】
特開平08−295832号公報
【特許文献2】
特開2001−342219号公報
【特許文献3】
特開2002−161231号公報
【0010】
【発明の概要】
本発明者等は、今般、少なくとも異なる2点のガラス転移温度(Tg)を有するポリマー成分を含有する合成樹脂エマルジョンを用いて調製された水系シーラーが、揮発性有機溶剤を含有しないにもかかわらず、溶剤系シーラーと同等の優れた物性、例えば旧塗膜面への密着性を示すことを見出した。さらに、この水系シーラーを使用することにより、単層弾性塗料、複層弾性塗料、さらには溶剤系上塗り塗料を使用した場合に受けることがある制限を緩和できることを見出した。本発明はこれら知見に基づくものである。
【0011】
よって、本発明は、旧塗膜および上塗り塗膜との密着性に優れ、かつ、その密着性が上塗り塗膜の種類の違いによる影響を受け難い水系シーラー組成物、およびそのシーラー組成物に使用される合成樹脂エマルジョン組成物の提供をその目的としている。
【0012】
よって、本発明の合成樹脂エマルジョン組成物は、塗膜塗り替え用シーラー組成物の主成分として用いられる、水に合成樹脂粒子を分散させてなる合成樹脂エマルジョン組成物であって、
ラジカル重合性単量体を乳化重合することにより得られるものであり、
ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなり、
前記Tgの最高温度と、Tgの最低温度との差が少なくとも50℃以上あり、かつ、
Tgが50℃以上である合成樹脂成分が、その全合成樹脂成分量に対して10〜90重量%の範囲で存在する
ことを特徴とするものである。
【0013】
本発明による塗膜塗り替え用シーラー組成物は、前記合成樹脂エマルジョン組成物を含んでなる。
【0014】
本発明による前記合成樹脂エマルジョン組成物の製造方法は、
1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、これらモノマー成分を、単一の重合缶内において前記モノマー成分の内のいずれか1種を乳化剤を用いて共重合させた後、さらに、残りのモノマー成分の内のいずれか1種を前記缶に添加してそこで乳化重合させることを繰り返すことを含んでなる。
【0015】
本発明の別の態様による前記合成樹脂エマルジョン組成物の製造方法は、
1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、各モノマー成分を、それぞれ別々の重合缶内において乳化剤を用いて重合させた後、これらを混合することを含んでなる。
【0016】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、各種樹脂系の劣化した旧塗膜への密着性に優れ、塗り替え用上塗り材として用いられる単層弾性塗料や複層弾性塗料などの塗料との密着性、中でも耐水密着性に優れる。また本発明のエマルジョン組成物は、その密着性が上塗り塗膜の種類の違いによる影響を受け難いものである。このため、上塗り材とシーラーとの界面およびシーラーと旧塗膜との界面において、いわゆるフクレを生じたり、または上塗り塗膜が剥離したりすることもない。また、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物によれば、低沸点溶剤のような有機溶剤を含有することなく、溶剤系並みの旧塗膜への密着性を有する水系シーラー組成物を調製することができるので、現場における塗装の際に問題となっていた、大気汚染や悪臭の発生を防止することができる。さらに、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物によれば、塩素化ポリオレフィンを使用しなくとも、十分な密着性が得られるので、従来型の水系シーラーの臭気を改善することができ、またシーラー組成物における塩素含量を減らすこともできる。
【0017】
【発明の具体的説明】
合成樹脂エマルジョン組成物
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、旧塗膜塗り替え用シーラー組成物の主成分として用いられる。
ここで、旧塗膜とは、建築物の外装材表面に塗布された各種樹脂系塗料により形成された塗膜であって、経時的に汚れが付着したり、または紫外線や雨等の影響により劣化した塗膜のことをいう。このとき、各種樹脂系塗料としては、樹脂系の塗料であれば溶剤系または水系を問わずいずれのものであってもよいが、具体例としては、例えばアクリル系樹脂塗料、アクリル/酢酸ビニル系樹脂塗料、アクリル/スチレン系樹脂塗料、塩化ビニル系樹脂塗料、アルキド系樹脂塗料、およびウレタン系樹脂塗料等が挙げられる。本発明においては、このうち、アクリル系樹脂塗料またはアクリル/酢酸ビニル系樹脂塗料が好ましい。
【0018】
また、旧塗膜塗り替え用シーラー組成物とは、建築物の外装材の修飾または保護のために設けられる上塗り塗膜(もしくは外装塗装)と、外装材表面の旧塗膜との密着性の向上、および上塗り塗膜の外観の向上等を目的として、旧塗膜に塗布されるものを意味する。
【0019】
上塗り材としては、水系または溶剤系いずれのタイプのものであってもよく、具体的には例えば、単層弾性塗料、複層弾性塗料などの弾性塗料、アクリル系樹脂塗料、アクリル/スチレン系樹脂塗料、アクリル/シリコーン系樹脂塗料、シリコーン系樹脂塗料、アクリル/ウレタン系樹脂塗料、およびウレタン系樹脂塗料等が挙げられる。このうち、一般的に塗り替えに使われることが多い、単層弾性塗料や複層弾性塗料などの弾性塗料が好ましいものとして挙げられる。
【0020】
前記したように、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、ラジカル重合性単量体を乳化重合することにより得られるものであり、
ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなり、
前記Tgの最高温度と、Tgの最低温度との差が少なくとも50℃以上あり、かつ、
Tgが50℃以上である合成樹脂成分が、その全合成樹脂成分量に対して10〜90重量%の範囲で存在する
ことを特徴とするものである。
【0021】
ここで、ガラス転移温度(Tg)とは、合成樹脂エマルジョン中の合成樹脂が堅くて脆いガラス状態から軟らかいゴム状態に相変化を起こす温度をいう。このTgは 例えば、示差走査熱量計(DSC)(パーキンエルマー社製)等の測定機器で測定することができるが、発明を実施する際には、下記のようなFOXの式を用いて計算することにより乳化重合前に使用するモノマー組成からTg求めることができ簡便である。
(FOXの式)
1/Tg=W/Tg+W/Tg+W/Tg+・・・+W/Tg+W+W+・・・+W=1
[式中、
1〜nは、正数を意味し、
W1、W2、W3、・・、Wnは、各モノマーの重量分率を意味し、
Tg、Tg、Tg、・・、Tgは各ホモポリマーのガラス転移点(絶対温度)を意味する。]
【0022】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなるものである。したがって、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、前記2種の合成樹脂成分に加えて、ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である別の合成樹脂成分、および/またはTgが50℃未満である別の合成樹脂成分をさらに含んでいてもよい。
【0023】
合成樹脂エマルジョン組成物が、Tgが50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなることは、合成樹脂エマルジョン組成物をDSCにより測定することにより、Tgによる温度ピークが、50℃以上の範囲に少なくとも1つと、50℃未満の範囲に少なくとも1つ観察されることで確認できる。
【0024】
Tgが50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなる合成樹脂エマルジョン組成物は、通常の均一モノマーを重合することによって得られるものではなく、エマルジョン組成物を構成する2種以上の合成樹脂成分が、互いに異なったTgを示すように積極的に使用するモノマー成分を設定することにより得ることができる。
【0025】
したがって、本発明の一つの好ましい態様によれば、前記合成樹脂エマルジョン組成物は、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、これらモノマー成分を、単一の重合缶内において前記モノマー成分の内のいずれか1種を乳化剤を用いて共重合させた後、さらに、残りのモノマー成分の内のいずれか1種を前記缶に添加してそこで乳化重合させることを繰り返すことにより得られるものである。このようにして、Tgが50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分とを少なくとも含んでなる、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物を得ることができる。
【0026】
本発明の一つのより好ましい態様によれば、前記合成樹脂エマルジョン組成物は、モノマー成分を2種用意し、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、そこに、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤とをさらに加えて共重合させることにより得られるものである。
【0027】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物が、このようにして得られる場合、エマルジョン組成物中において、Tgが50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分とは、最初の重合成分が核を形成し次の重合成分が殻を形成するいわゆるコア/シェル型、逆に最初の重合成分が殻となり次の重合成分が核を形成する逆コアシェル型、さらには、複数の粒子が複合して形成するラズベリー型のような状態で存在していると推定される。なおこの説明は、推定であって本発明を制限するものではない。
【0028】
前記したように、合成樹脂エマルジョン組成物を得るためには、モノマー成分を3種以上使用してもよい。この場合、合成樹脂エマルジョン組成物は、第2のモノマー成分を共重合させることに加えて、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第3のモノマー成分と乳化剤とをさらに加えて共重合させることにより得られるものであってもよい。さらに前記合成樹脂エマルジョン組成物は、第3のモノマー成分を共重合させることに加えて、第4のモノマー成分、第5のモノマー成分等のように、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を順次加えて重合させることを繰り返すことにより、得られるものであってもよい。
【0029】
また、本発明の別の一つの好ましい態様によれば、前記合成樹脂エマルジョン組成物は、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、各モノマー成分を、それぞれ別々の重合缶内において乳化剤を用いて重合させた後、これらを混合することにより得られるものである。このようにして、Tgが50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分とを少なくとも含んでなる、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物を得ることができる。
【0030】
本発明の別の一つのより好ましい態様によれば、前記合成樹脂エマルジョン組成物は、モノマー成分を2種用意し、第1の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、かつ、第2の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤を用いて共重合させ、これら重合缶中の生成物を混合することにより得られるものである。
【0031】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物が、このようにして得られる場合、エマルジョン組成物中において、Tgが50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分とは、別々に重合した合成樹脂粒子がそれぞれ独立した状態でエマルジョン中に存在していると推定される。なおこの説明は、推定であって本発明を制限するものではない。
【0032】
前記したように、合成樹脂エマルジョン組成物を得るためには、モノマー成分を3種以上使用してもよい。この場合、合成樹脂エマルジョン組成物は、第3の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第3のモノマー成分と乳化剤を用いて共重合させて得られる生成物を、さらに加えて混合することにより得られるものであってもよい。さらに前記合成樹脂エマルジョン組成物は、第4の重合缶、第5の重合缶、・・・、第nの重合缶において、それぞれ第4のモノマー成分、第5のモノマー成分等を別々に重合させ、これらより得られる生成物を混合することにより、得られるものであってもよい。
【0033】
第1のモノマー成分および第2のモノマー成分のような本発明による合成樹脂エマルジョン組成物を得るために使用されるモノマー成分は、Tgが50℃以上である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなるか、または、Tgが50℃未満である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなる。この場合、FOXの式等により予め得られるTgを予想して、所望するTgが得られるように、モノマー成分の組成を決定することができる。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、第1のモノマー成分は、Tgが50℃以上である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなり、かつ、第2のモノマー成分は、Tgが50℃未満である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなる。
また本発明の別の好ましい態様によれば、第1のモノマー成分は、Tgが50℃未満である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなり、かつ、第2のモノマー成分は、Tgが50℃以上である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなる。
【0035】
第3のモノマー成分のような追加のモノマー成分が使用される場合には、このようなモノマー成分は、Tgが50℃以上である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなっていてもよく、または、Tgが50℃未満である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなっていてもよい。このようなモノマー成分は、好ましくは、第1のモノマー成分により得られる合成樹脂成分のTgと、第2のモノマー成分により得られる合成樹脂成分のTgとの間の範囲にTgを持つように、構成するモノマーが選択される。
【0036】
これらのモノマー成分は、事前に調合しておくことが好ましいが、製造プロセスにおいて個々のモノマーを別々に導入し反応缶中で混合してもよい。
【0037】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物において、含まれる合成樹脂成分のTgの最高温度と、Tgの最低温度との差は少なくとも50℃以上であり、好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは120℃以上である。
【0038】
合成樹脂エマルジョン組成物において、含まれる合成樹脂成分のTgの最高温度と、Tgの最低温度との差が少なくとも50℃以上である場合には、合成樹脂エマルジョン組成物をシーラー組成物として塗布して、フィルムを形成させた際に、ミクロ的にはTgが高い成分とTgが低い成分とが系の中に不均一に存在することとなり、それぞれ相反するポリマー特性が作用して塗膜としての密着性が向上するものと推定される。例えば、旧塗膜として多く用いられる硬い塗膜、すなわちTgの高い塗膜に対しては、合成樹脂成分の内、Tgが高い成分がなじみ易く、塗り替え上塗りに多く用いられる弾性塗料に対しては、Tgが低い成分がなじみ易いものと考えられる。このため、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、旧塗膜および弾性塗料等が使用される上塗り材のいずれとも親和性に優れ、高い密着性を示すことができると考えられる。なおこれらは、推定であって本発明を制限するものではない。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、合成樹脂エマルジョン組成物に含まれる合成樹脂成分のTgの最高温度は、80℃以上であり、より好ましくは100℃以上である。
本発明の好ましい態様によれば、合成樹脂エマルジョン組成物に含まれる合成樹脂成分のTgの最低温度は、−10℃以下であり、より好ましくは−30℃以下である。
【0040】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物において、Tgが50℃以上である合成樹脂成分は、該エマルジョン組成物の全合成樹脂成分量(不揮発分量)に対して10〜90重量%、好ましくは50〜90重量%の範囲で存在する。この場合、Tgが50℃以上である合成樹脂成分が2種以上存在する場合には、その合計量が、前記範囲内にあることが必要である。なおTgが50℃以上である合成樹脂成分を除く残部は、Tgが50℃未満である合成樹脂成分からなる。
Tgが50℃以上である合成樹脂成分が、該エマルジョン組成物の全合成樹脂成分量に対して10重量%以上であることは、該エマルジョン組成物を含んでなるシーラー組成物と、上塗りまたは旧塗膜との間に充分な密着性を得る上で望ましい。
【0041】
ラジカル重合性単量体
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、ラジカル重合性単量体を乳化重合することにより得られるものである。
本発明において、このような重合用モノマーとして用いることができるラジカル重合性単量体としては、特に制限はなく、通常の乳化重合に用いられるものであれば、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
具体的には、(メタ) アクリル酸アルキルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸、芳香族ビニルや塩化ビニルなどのビニルモノマー、酢酸ビニルやバーサティック酸ビニルなどのビニルエステル、エチレン、プロピレン等の不飽和炭化水素、さらには分子内に官能基を有する官能性単量体などが挙げられる。
本発明では、これらの中でも、(メタ) アクリル酸アルキルエステル、エチレン性不飽和カルボン酸、芳香族ビニルを組み合わせて使用することが好ましい。これらを組み合わせて使用することにより、所望のTgを設定しやすく、耐水性、密着性、耐アルカリ性、耐溶剤性などの諸物性を向上させることができる。
【0043】
(a) メタ アクリル酸アルキルエステル
本発明において、ラジカル重合性単量体として用いることができる(メタ) アクリル酸アルキルエステルとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このような(メタ) アクリル酸アルキルエステルとしては、そのアルキル基の炭素数が1〜12であるアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルが好ましい。具体的には、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−,t−,iso−の各ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレートなどが好適に挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。
【0044】
本発明においては、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびエチルメタクリレートが好ましく、耐候性、皮膜の透明性、耐水性、および得られる皮膜のタフネスの点で、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびブチルアクリレートを併用して使用することがより好ましい。
【0045】
(メタ) アクリル酸アルキルエステルの使用量としては特に制限はないが、全モノマーに対して、通常、20〜99.5重量%用いられる。(メタ) アクリル酸アルキルエステルの使用量が、前記範囲内であることは、上塗り塗膜との層間剥離や種々の密着不良が生ずることを防止できる点で好ましい。
【0046】
(b)芳香族ビニル単量体
本発明における芳香族ビニル単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。芳香族ビニル単量体を使用することにより、耐水性、耐アルカリ性に優れた合成樹脂を得られるので好ましく、さらに、50℃以上の高いTgの合成樹脂成分を形成する際に、好適である
【0047】
本発明における芳香族ビニル単量体としては、例えば、スチレン、α―メチルスチレンなどが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの中では、入手の容易さ、共重合性等の点で、スチレンが好ましい。
【0048】
スチレンの使用量としては特に制限なく使用できるが、全モノマーに対して、20〜80重量%用いることが好ましい。スチレンの使用量が前記範囲内にあることは、得られる合成樹脂が耐水性、耐アルカリ性に優れる点で好ましい。
【0049】
(c)エチレン性不飽和カルボン酸
本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。エチレン性不飽和カルボン酸を使用することにより、得られる合成樹脂エマルジョンをより安定化させることができる。
【0050】
本発明におけるエチレン性不飽和カルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、桂皮酸等のモノカルボン酸、およびジカルボン酸などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
これらの中では、入手の容易さ、共重合性、得られるエマルジョンの貯蔵安定性、シーラーとして用いた時の上塗り塗膜との密着性の良さ等の点で、アクリル酸、およびメタクリル酸が好ましい。
【0051】
エチレン性不飽和カルボン酸の使用量としては特に制限なく使用できるが、全モノマーに対して、0.5〜10.0重量%用いることが好ましい。エチレン性不飽和カルボン酸の使用量が前記範囲内にあることは、得られるエマルジョンの安定性の点で有利であり、また、シーラーとして塗布した場合の耐水性がより優れる点で好ましい。
【0052】
(d)共重合可能な単量体
本発明において用いられる前記(a)、(b)および(c)と共重合可能な単量体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ラジカル重合性不飽和結合を有するものが好ましい。
また前記の共重合可能な単量体としては、官能基含有単量体、および架橋性モノマー等も使用することができる。
【0053】
官能基含有単量体としては、例えば、カルボニル基、ジカルボニル基、メチロール基、ビニル基、メタクロイル基、エポキシ基、シラノール基、メルカプト基、グリシジル基、ウレイド基、アセトアセトキシ基、アセトアセチル基、アミド基、アリル基、シリル基、ニトリル基、およびヒドロキシル基から選択される官能基を含有する単量体からなる群より選択することができる。このような単量体を使用することにより、エマルジョン中の官能基が旧塗膜と上塗り材に化学的に作用でき、これらとシーラーとの密着性および耐水密着性を向上させることができる。
【0054】
前記(d)共重合可能な単量体としては、具体的には、例えば、エチレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ベオバ(バーサチック酸ビニルエステル)等のビニルエステル類、ビニルホスフェート、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、n−ブトキシメチルアクリルアミド、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、アセト酢酸アリル、2−ヒドロキシアルキルアクリレート、アクリル酸アルコキシエチル、およびメタクリルアミドエチルエチレンウレアなどが挙げられる。
【0055】
さらには、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリアセトキシシラン等のビニルアルコキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、エポキシアルコキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4−エポキシシクロヘキシルエチルジメトキシシラン等のエポキシアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプトアルコキシシラン、γ−メタアクリロキシプロピルトリメトキシシラン、およびγ−メタアクリロキシプロピルトリエトキシシランなども挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。
【0056】
本発明において、共重合可能な単量体として官能基含有単量体を用いる場合には、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。なお、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートは、アセトアセトキシ基を含有するアルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレートのことである。本発明においては、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、アセトアセトキシエチルメタクリレートがより好ましい。
【0057】
架橋性モノマーとしては、例えば、重合性不飽和基を2個以上有するモノマーが好適なものとして例示される。このような重合性不飽和基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、ジビニル化合物、ジ(メタ)アクリレート化合物、トリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ジアリル化合物、トリアリル化合物、テトラアリル化合物などが挙げられ、より具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルアジペート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリットトリ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルジシアヌレート、およびテトラアリルオキシエタンなどが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0058】
これら架橋性モノマーの使用は、得られる合成樹脂エマルジョン組成物の耐水性、耐アルカリ性、耐薬品性等が向上するという利点を有するものの、架橋密度が高くなり、上塗り塗料との密着性が低下したり、長期的には架橋点が紫外線により劣化して急激に物性が低下する危険性があるので、その使用量は極力少なくすることが好ましい。
【0059】
本発明においては、このような共重合可能な単量体の使用量は、使用する共重合性の単量体の種類や他のモノマーの使用量等により適宜変更することが可能であるが、本発明においては0〜79.5重量%であり、0〜70重量%以下であることが好ましい。共重合可能な単量体として、官能基含有単量体を用いる場合には、その使用量は全モノマーに対して0.1〜10重量%であることが好ましく、0.3〜5.0重量%であることがより好ましい。前記官能基含有単量体の使用量が前記範囲内にあることは、シーラーと、旧塗膜および上塗塗材との密着性および耐水性の点から有利である。また、合成樹脂エマルジョン合成樹脂エマルジョン組成物の安定性の観点からも優れている。
【0060】
乳化剤
本発明においては、合成樹脂エマルジョン組成物を得る際には、ラジカル重合性単量体を乳化剤を用いて乳化重合するが、ここで用いられる乳化剤は、通常の乳化重合に用いられるものであれば、特に制限なく使用できる。
例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられ、さらに、構造中にラジカル重合性不飽和結合を有するラジカル重合性界面活性剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0061】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩等が挙げられる。
このようなアニオン系界面活性剤の中でも、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの使用は、所望の粒子径の合成樹脂エマルジョン粒子が得られる点や耐アルカリ性に優れる点で、より好ましい。
【0062】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型、ポリオキシエチレングリコール型、またはポリオキシプロピレングリコール型等のものが挙げられる。
【0063】
ラジカル重合性界面活性剤としては、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性反応性界面活性剤なども挙げられる。ラジカル重合性界面活性剤の具体例としては、以下に示す化合物1)〜15)が挙げられる。
【0064】
【化1】
Figure 2004210919
【0065】
【化2】
Figure 2004210919
【0066】
【化3】
Figure 2004210919
【0067】
このような他の界面活性剤の使用量としては、全モノマーに対して、0〜15重量%用いることが好ましく、0.1〜10重量%用いることがより好ましい。他の界面活性剤の使用量が前記範囲内にあることにより、重合時の凝集物の発生が抑えることができ、エマルジョンの耐水性の著しい低下も抑えることができる。
これらは2種以上を併用してもよい。
【0068】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物において用いることができるその他の補助成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。このような使用可能な成分としては、例えば、重合開始剤、造膜助剤、MFT調整剤、連鎖移動剤、表面張力低下剤、pH調整剤(もしくは中和剤)、増粘剤、凍結防止剤、消泡剤、および防腐剤などの公知の添加剤が挙げられる。
【0069】
重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム(APS)等の過硫酸塩、過酸化水素、ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物、およびこれらと還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤、などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0070】
連鎖移動剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、アセトフェノン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド等の炭素数2〜8のカルボン酸類、ドデシルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、ノルマルメルカプタン、チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル、チオグリセロール等のメルカプタン類などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0071】
旧塗膜の状態や種類によっては、シーラー塗装時にシーラーが旧塗膜にはじかれ、塗装困難な状態となる場合がある。このような場合にはシーラー組成物に使用する合成樹脂エマルジョン組成物に表面張力低下剤を添加してもよい。
【0072】
表面張力低下剤としては、表面張力低下能を有するアルコール等の有機溶剤、表面張力低下能を有する界面活性剤、などが挙げられるが、臭気および安全性の観点から、前記表面張力低下能を有する界面活性剤が好ましい。表面張力低下能を有する界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン性フッ素系界面活性剤;例えば、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン性フッ素系界面活性剤;例えば、パーフルオロアルキルベタイン等の両性フッ素系界面活性剤;例えば、パーフルオロアルキルアミンオキシド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物等のノニオン性フッ素系界面活性剤;例えば、ジオクチルスルホコハク酸塩等のアルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルホスホン酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル、アルキルアリルスルホン酸塩およびその縮合物、アルキル硫酸エステル塩;例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、シリコーン系添加剤などが挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0073】
最低造膜温度
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、その最低造膜温度(MFT)が0℃以下であることが好ましい。MFTは、MFT測定機(テスター産業株式会社製)を使用することにより測定することができる。ここで、最低造膜温度とは、乾燥の進行とともにエマルジョン中の水が揮発して、合成樹脂粒子が密に充填し、これらの粒子が融着および拡散して、連続皮膜を形成されるために必要な最低温度のことをいう。
【0074】
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物を用いたシーラー組成物は、通常、屋内外の建設現場で塗布される。MFTが0℃以下であると、通常の環境温度下で常に造膜させることができる点で有利である。
合成樹脂エマルジョン組成物のMFTを調整するために、合成樹脂エマルジョン組成物に、造膜助剤もしくはMFT調整剤としての高沸点溶剤を使用することができる。したがって、MFTを0℃以下にするために、造膜助剤を使用することができる。
【0075】
造膜助剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができるが、例えば、炭化水素系溶剤、アルコール系溶剤、エーテルアルコールおよびエーテル系溶剤、エステルおよびエーテルエステル系溶剤等が挙げられる。
【0076】
具体的には、炭化水素系溶剤としては、例えば、ミネラルスピリット、石油系混合溶剤等が挙げられ、アルコール系溶剤としては、例えば、ベンジルアルコール等が挙げられ、また、エーテルアルコールおよびエーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルカルビトール)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DPM)、プロピレングリコールn−ブチルエーテル(PnB)、ジプロピレングリコールn−ブチルエーテル(DPnB)、エチレングリコールモノ2エチルヘキシルエーテル(EHG)等が挙げられる。さらに、エステルおよびエーテルエステル系溶剤としては、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(BCA)、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(テキサノール)等が挙げられる。
これらは2種以上を併用してもよい。
【0077】
本発明においては、エマルジョン粒子内に入り込みやすいこと、MFTの低下効果、添加後の安定性等の観点から、造膜助剤としては、テキサノール、EHG、またはDPnBなどが好ましく、テキサノールがより好ましい。
【0078】
エマルジョンに分散している合成樹脂粒子の平均粒子径
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物に分散している合成樹脂粒子の平均粒子径は、0.2μm以下が好ましく、0.05〜0.15μmであることがより好ましい。平均粒子径を上記範囲におくことで、乳化剤の使用量を少なくすることができ、また、合成樹脂エマルジョン組成物に充分な耐水性を付与することができる。
【0079】
平均粒子径の測定は、濁度法や、一般的に光子相関法呼ばれている原理によって測定することができ、光子相関法としては、例えばNICOMP MODEL 370 submicron particle sizer (Pacific Scientific社製)を用いて測定することができる。
【0080】
合成樹脂エマルジョン組成物の製造方法
本発明の一つの態様によれば、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、これらモノマー成分を、単一の重合缶内において前記モノマー成分の内のいずれか1種を乳化剤を用いて共重合させた後、さらに、残りのモノマー成分の内のいずれか1種を前記缶に添加してそこで乳化重合させることを繰り返すことを含んでなる方法により製造することができる。
【0081】
より好ましい態様によれば、該合成樹脂エマルジョン組成物は、モノマー成分を2種用意し、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、そこに、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤とをさらに加えて共重合させることを含んでなる方法により製造することができる。
【0082】
本発明の別の一つの態様によれば、本発明による合成樹脂エマルジョン組成物は、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、各モノマー成分を、それぞれ別々の重合缶内において乳化剤を用いて重合させた後、これらを混合することを含んでなる方法により製造することができる。
【0083】
より好ましい態様によれば、該合成樹脂エマルジョン組成物は、モノマー成分を2種用意し、第1の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、かつ、第2の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤を用いて共重合させ、これら重合缶中の生成物を混合することを含んでなる方法により製造することができる。
【0084】
本発明において、重合方法における操作は、特に制限はなく、例えば、重合缶に、水、乳化剤、所定のモノマー成分を全てを仕込み、昇温して、適宜重合開始剤を加えて重合を進行させるバッチ重合法、重合缶に、水、乳化剤を仕込み、昇温して、モノマーを滴下するモノマー滴下法、更には、滴下するモノマーを予め乳化剤と水とで乳化させた後、滴下する乳化モノマー滴下法などを実施することができる。
【0085】
前記した単一の重合缶中でモノマー成分を順次加えて、段階的に重合させる場合においては、好ましくはその際の共重合は、モノマー成分組成を段階的に変化させる多段重合、モノマー成分組成を逐次変化させるパワーフィード重合、または、既に重合した重合体粒子を種としてモノマー成分を添加しながら重合するシード重合法のいずれかの方法にしたがって行うことができる。
【0086】
重合に用いるモノマーおよび補助成分としては、前記したように、前記のモノマーおよび/または補助成分から適宜選択することができる。また、重合の反応条件としては、特に制限はなく、共重合成分の種類、目的等に応じて適宜選択することができる。
【0087】
シーラー組成物
本発明によるシーラー組成物は、前記した本発明による合成樹脂エマルジョン組成物を含んでなる。本発明によるシーラー組成物は、前記したエマルジョン組成物を含んでなるものである限り、慣用の種々の成分を含むことができる。
【0088】
また、本発明によるシーラー組成物は、一般的に使用される補助剤を含むことができる。このような補助剤としては、例えば、消泡剤、湿潤剤、凍結防止剤、防腐剤、粘度調整剤、分散剤、造膜助剤、可塑剤、顔料等の着色剤、石膏、セメント、および充填剤等が例示できる。これら補助剤の他に、さらに、乾燥性の向上や塗装性向上の目的で少量の溶剤を包含させてもよい。
これらの補助剤をシーラー組成物に配合するにあたっては、これら補助剤を予め配合しておいたもの(例えば顔料ペースト)を別途用意しておき、これを合成樹脂エマルジョン組成物と混合させて配合してもよい。
【0089】
本発明の別の態様によれば、前記塗膜塗り替え用シーラー組成物が塗布された、建築物の外装材が提供される。
本発明のさらに別の態様によれば、外装材表面の旧塗膜に、前記シーラー組成物を塗布し、次いでその上から上塗り材を塗布することを含んでなる、外装材表面の旧塗膜の塗り替え方法が提供される。
【0090】
【実施例】
以下本発明を以下の例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるれものではない。
【0091】
合成樹脂エマルジョン組成物の調製
本発明による合成樹脂エマルジョン組成物を下記のようにして製造した。
【0092】
エマルジョン組成物1
反応缶に、水 56重量部、アニオン性乳化剤A(ノニルフェニルエーテル系50%水溶液) 0.7重量部、およびノニオン性乳化剤C(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル系80%水溶液) 0.9重量部を仕込んだ(下仕込)。
ここに、水 32重量部、酢酸ナトリウム 0.2重量部、アニオン性乳化剤B(アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの50%水溶液) 1.2重量部、アニオン性乳化剤A 1.2重量部、ノニオン性乳化剤界面活性剤C 0.8重量部、メチルメタクリレート(以下MMA) 8重量部、ブチルアクリレート(以下BA) 12重量部、80%アクリル酸(以下AA) 2.3重量部、アセトアセトキシエチルメタクリレート(以下AAEMA) 2.4重量部、およびスチレン(以下St)40重量部を予め乳化混合したもの(乳化モノマー)を滴下し、温度を80℃にコントロールしながら、さらに重合開始剤として3%過硫酸カリウム 6.6重量部を滴下して乳化重合させた。乳化モノマーの滴下後30分間反応を熟成させた。
【0093】
次に、水 21重量部、アニオン性乳化剤A 0.2重量部、アニオン性乳化剤B 0.2重量部、ノニオン性乳化剤C 0.1重量部、MMA 2重量部、BA28重量部、80%AA 1.5重量部、AAEME 0.5重量部、およびSt10重量部を予め乳化混合したもの(乳化モノマー)を滴下し、温度を80℃にコントロールしながら、さらに重合開始剤として3%過硫酸カリウム 4.4重量部を滴下して乳化重合させた。
重合終了後、冷却して、アンモニア水(10%アンモニア)を用いて反応缶内を中和した。次いで、ここに水を加えて不揮発分を約45%に調整して、エマルジョン組成物1を得た。
得られたエマルジョン組成物1のガラス転移温度(Tg)を、DSCを用いて測定したところ、51℃と、−10℃においてそれぞれ点のTgピークが確認された。
【0094】
エマルジョン組成物2
反応缶2aに、水 56重量部、アニオン性乳化剤A 0.7重量部、およびノニオン性乳化剤C 0.9重量部を仕込んだ(下仕込)。
ここに、水 53重量部、酢酸ナトリウム 0.2重量部、アニオン性乳化剤B1.5重量部、アニオン性乳化剤A 1.5重量部、MMA 16.7重量部、80%AA 3.7重量部、AAEME 3重量部、およびSt 83.3重量部を予め乳化混合したもの(乳化モノマー)を滴下し、温度を80℃にコントロールしながら、さらに重合開始剤として3%過硫酸カリウム 11重量部を滴下して乳化重合させた。重合終了後、冷却して、アンモニア水(10%アンモニア)を用いてこの反応缶内を中和した。
【0095】
反応缶2bに、水56重量部、アニオン性乳化剤A 0.7重量部、およびノニオン性乳化剤C 0.9重量部を仕込んだ(下仕込)。
ここに、水 53重量部、酢酸ナトリウム 0.2重量部、アニオン性乳化剤B1.5重量部、アニオン性乳化剤A 1.5重量部、BA 100重量部、80%AA 3.7重量部、およびAAEME 3重量部を予め乳化混合したもの(乳化モノマー)を滴下し、温度を80℃にコントロールしながら、さらに重合開始剤として3%過硫酸カリウム11重量部を滴下して乳化重合させた。重合終了後、冷却して、アンモニア水(10%アンモニア)を用いてこの反応缶内を中和した。
【0096】
これら別々に重合した反応缶2a内の生成物と、反応缶2b内の生成物とを、55/45の比率で混合した。次いで、ここに水を加えて不揮発分を約45%に調整して、エマルジョン組成物2を得た。
得られたエマルジョン組成物2のガラス転移温度を、DSCを用いて測定したところ、104℃と、−41℃においてそれぞれ点のTgピークが確認された。
【0097】
エマルジョン組成物3〜7
モノマー組成を表1に示した組成に従うこと以外は、エマルジョン組成物1の場合と同様にして、エマルジョン組成物3〜7を調製した。
エマルジョン組成物3、4、および6は、エマルジョン組成物1におけるモノマー構成を変更して、2点のTg間の格差を広げたものに相当する。エマルジョン組成物5および7では、エマルジョン組成物1におけるモノマー構成を変更するとともに、反応の一段目において、低いTgを有する合成樹脂が得られるように選択したモノマー成分を用い、二段目に高いTgを有する合成樹脂が得られるように選択したモノマー成分を用いた。
【0098】
エマルジョン組成物8〜11(比較例)
モノマー組成を表2に示した組成に従うこと以外は、エマルジョン組成物1の場合と同様にして、エマルジョン組成物8〜11(比較例)を調製した。
エマルジョン組成物8は、エマルジョン組成物1において、2種のモノマー成分ではなく、使用するモノマー総量はエマルジョン組成物1の場合と同じであるが、重合反応を2段階ではなく1段階で行って得られたものである。
エマルジョン組成物9および10は、エマルジョン組成物1のモノマー構成を変更したものである。
エマルジョン組成物11は、Tgの最高温度が50℃以上の範囲に存在せず、かつ、Tgの最高温度と最低温度との差が50℃未満である以外は、エマルジョン組成物1と同じであるものである。
【0099】
なお、下記に示す表1および表2において、値は全て重量部を表す。
【0100】
【表1】
Figure 2004210919
【0101】
【表2】
Figure 2004210919
【0102】
シーラー組成物の調製
エマルジョン組成物1〜11で得られた合成樹脂エマルジョン組成物に対し、表1、および表2に従って、造膜助剤としてテキサノールをそれぞれ添加し混合した。次いで、それぞれに水を加えて不揮発分を20重量%に調整して、シーラー組成物1〜11を得た。
【0103】
評価試験
試験体の作成
スレート板に市販の溶剤系アクリル/酢酸ビニル系塗料(菊水化学工業株式会社製「カラー仕上材」)を塗工し、50℃で3日養生することによって熱劣化させて旧塗膜を作成した。
得られた旧塗膜上に、固体で10〜12g/mとなるようにシーラー組成物1〜11をそれぞれ塗工し、室温で1日乾燥させた。次に、上塗り材として、市販の単層弾性塗材1(日本ペイント株式会社製「DAN フレッシュR」:スチレン/アクリル系)、単層弾性塗材2(関西ペイント株式会社製「アレス アーバンテリア」:スチレン/アクリル系)、複層弾性塗材の主材(菊水化学工業株式会社製「ラバーウォールルナ」:アクリルゴム系)を湿潤状態で1mm塗工し、これを室温で3日間乾燥させ、試験体を得た。
【0104】
試験1: 常態密着性の評価
得られた試験体について、その表面から基材部までをカッターナイフを用いて5mm間隔に切込みを入れた。このようにした試験体表面の弾性塗膜を指でつまみ上げ、その剥離の常態と抵抗を下記の基準にしたがって評価した。
判断基準:
A: 上塗り塗膜を指で摘み上げた際に、強靭な密着力があり、上塗り塗膜が切れてしまう。
B: 上塗り塗膜を指で摘み上げた際に、充分な密着力があり、上塗り/シーラー間またはシーラー/旧塗膜間で多少の剥離が認められる。
C: 上塗り塗膜を指で摘み上げた際に、密着力が不十分で、上塗り塗膜が容易に剥離する。
【0105】
試験2: 耐水密着性の評価
得られた試験体を水に3日間浸漬させた後、水から取り出して、1日間乾燥させた。その後、試験体の表面から基材部までをカッターナイフを用いて5mm間隔に切込みを入れた。このようにした試験体表面の弾性塗膜を指でつまみ上げ、その剥離の常態と抵抗を下記の基準にしたがって評価した。
なお、判断基準は前記試験1の場合と同様にした。
【0106】
試験3: 低温密着性の評価
試験体の作成の際に、シーラーおよび上塗り材を5℃の条件下において塗布して乾燥させた以外は、前記試験体の作成の場合と同様にして試験体を作成した。得られた試験体を、前記試験1(常態密着性の評価)と同様にして評価した。
なお、判断基準は前記試験1の場合と同様にした。
【0107】
以上の試験の結果は表3および表4に示されるとおりであった。
【0108】
なお本明細書中の表における省略表記はそれぞれ下記の通りのものを表す。
MMA: メチルメタクリレート
BA : ブチルアクリレート
St : スチレン
AA : アクリル酸
2EHA: 2−エチルヘキシルアクリレート
AAEM: アセトアセトキシエチルメタクリレート
【0109】
【表3】
Figure 2004210919
【0110】
【表4】
Figure 2004210919

Claims (22)

  1. 塗膜塗り替え用シーラー組成物の主成分として用いられる、水に合成樹脂粒子を分散させてなる合成樹脂エマルジョン組成物であって、
    ラジカル重合性単量体を乳化重合することにより得られるものであり、
    ガラス転移温度(Tg)が50℃以上である合成樹脂成分と、Tgが50℃未満である合成樹脂成分との少なくとも2種の合成樹脂成分を含んでなり、
    前記Tgの最高温度と、Tgの最低温度との差が少なくとも50℃以上あり、かつ、
    Tgが50℃以上である合成樹脂成分が、その全合成樹脂成分量に対して10〜90重量%の範囲で存在する
    ことを特徴とする、合成樹脂エマルジョン組成物。
  2. 1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、これらモノマー成分を、単一の重合缶内において前記モノマー成分の内のいずれか1種を乳化剤を用いて共重合させた後、さらに、残りのモノマー成分の内のいずれか1種を前記缶に添加してそこで乳化重合させることを繰り返すことにより得られるものである、請求項1に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  3. モノマー成分を2種用意し、
    1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、そこに、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤とをさらに加えて共重合させることにより得られるものである、請求項2に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  4. 1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、各モノマー成分を、それぞれ別々の重合缶内において乳化剤を用いて重合させた後、これらを混合することにより得られるものである、請求項1に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  5. モノマー成分を2種用意し、
    第1の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、かつ、第2の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤を用いて共重合させ、これら重合缶中の生成物を混合することにより得られるものである、請求項4に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  6. 第1のモノマー成分が、Tgが50℃以上である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなり、かつ、第2のモノマー成分が、Tgが50℃未満である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなるか、または第1のモノマー成分が、Tgが50℃未満である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなり、かつ、第2のモノマー成分が、Tgが50℃以上である合成樹脂成分を得られるように選択されたモノマーからなる、請求項2〜5のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  7. Tgの最高温度と、最低温度との差が少なくとも100℃以上である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  8. Tgの最高温度が80℃以上である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  9. Tgが50℃以上である合成樹脂成分が、その全合成樹脂成分量に対して50〜90重量%の範囲で存在する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  10. ラジカル重合性単量体が、
    (a)(メタ)アクリル酸アルキルエステル
    (b)芳香族ビニル単量体
    (c)エチレン性不飽和カルボン酸、および
    (d)前記(a)、(b)および(c)と共重合可能な単量体
    からなる群より選択されるものである、請求項1〜9のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  11. 前記(a)(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、エチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートおよびエチルメタクリレートからなる群から選択される、請求項10に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  12. 前記(d)共重合可能な単量体が、カルボニル基、ジカルボニル基、メチロール基、ビニル基、メタクロイル基、エポキシ基、シラノール基、メルカプト基、グリシジル基、ウレイド基、アセトアセトキシ基、アセトアセチル基、アミド基、アリル基、シリル基、ニトリル基、およびヒドロキシル基から選択された官能基を有する単量体からなる群より選択される、請求項10または11に記載の合成樹脂エマルジョン組成物
  13. 前記官能基を有する単量体が、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレートである、請求項12に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  14. 分散している合成樹脂粒子の平均粒子径が0.2μm未満である、請求項1〜13のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物。
  15. 請求項1〜14のいずれか一項に記載の合成樹脂エマルジョン組成物を含んでなる、塗膜塗り替え用シーラー組成物。
  16. 請求項15に記載の塗膜塗り替え用シーラー組成物が塗布された、建築物の外装材。
  17. 請求項1に記載の合成樹脂エマルジョン組成物の製造方法であって、
    1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、これらモノマー成分を、単一の重合缶内において前記モノマー成分の内のいずれか1種を乳化剤を用いて共重合させた後、さらに、残りのモノマー成分の内のいずれか1種を前記缶に添加してそこで乳化重合させることを繰り返すこと
    を含んでなる、方法。
  18. モノマー成分を2種用意し、
    1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、そこに、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤とをさらに加えて共重合させることを含んでなる、請求項17に記載の方法。
  19. 共重合を、シード重合法、多段重合法、またはパワーフィード重合法のいずれかの方法にしたがって行う、請求項17または18に記載の方法。
  20. 請求項1に記載の合成樹脂エマルジョン組成物の製造方法であって、
    1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなるモノマー成分を少なくとも2種用意し、各モノマー成分を、それぞれ別々の重合缶内において乳化剤を用いて重合させた後、これらを混合すること
    を含んでなる、方法。
  21. モノマー成分を2種用意し、
    第1の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第1のモノマー成分を、乳化剤を用いて共重合させ、かつ、第2の重合缶中において、1種もしくは2種以上のラジカル重合性単量体からなる第2のモノマー成分と乳化剤を用いて共重合させ、これら重合缶中の生成物を混合すること
    を含んでなる、請求項20に記載の方法。
  22. 外装材表面の旧塗膜に、請求項15に記載のシーラー組成物を塗布し、次いでその上から上塗り材を塗布することを含んでなる、外装材表面の旧塗膜の塗り替え方法。
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