JP2004202592A - 珪素含有非晶質炭素膜を有する工具部材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明に係わる工具部材は、表面に原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である珪素含有非晶質炭素膜を形成したを特徴とする。このような工具部材は基材表面に中間層を形成し、活性化処理を施した後、プラズマCVDを用いて原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である珪素含有非晶質炭素膜を形成する。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工具部材の表面に珪素含有非晶質炭素膜を形成することにより、優れた加工特性、耐久性を有する珪素含有非晶質炭素膜を備えた工具部材に関する。より詳しくはドリル、打ち抜きパンチ、成形金型等の加工工具において、加工対象部材と接する表面に原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である窒素含有非晶質炭素膜を形成した工具部材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)と呼ばれる非晶質炭素膜は物質特性として高硬度、低摩擦係数、潤滑性や耐摩耗性、離型性に優れていることから摺動面のみならず各種工具部材の表面へのコーティング材料として注目されている。
【0003】
これらの非晶質炭素膜を工具部材に適用し、その加工特性の向上を図ったものとして下記のような技術が存在する。
特開2000−176705号公報で提案されている技術は、高速度鋼または超硬合金からなるドリルにTiC、TiN、TiCN、TiAlN、CrNもしくはこれらの組合せを含む硬化物質をコーティングし、その上にいわゆるダイヤモンドライクカーボン(DLC)を含む非晶質炭素膜を被覆させている。
その実施例ではこのような非晶質炭素膜を被覆した高速度工具鋼製ドリルは、処理を施していない高速度工具鋼製ドリルに比べ穴あけ数が向上したことが述べられている。またWC−Co超硬合金製ドリルについても同様に非晶質炭素膜を施したものと無処理のものを比較して、同様に加工特性が向上したことが述べられている。
【0004】
ツールエンジニア2000年12月号44ページおよび日本機械学会講習会教材(表面改質技術の新展開2000年1月22日)には、超硬合金である基材上に中間層としてTiN、TiCN等の耐摩耗性被膜を形成し、その上に非晶質炭素膜を被覆したドリル、エンドミルが提案されている。
これらの非晶質炭素膜を被覆した超硬合金製ドリル、エンドミルと無処理である超硬合金製ドリル、エンドミルを対象にアルミニウム合金の切削性能について比較を行い、前記非晶質炭素膜を被覆した超硬合金製ドリル、エンドミルが無処理のものに比べ加工精度、加工能率が向上することが述べられている。
【0005】
特開平8−90092号公報では非晶質炭素膜を被覆した絞り金型が提案されている。非晶質炭素膜を被覆した絞り金型と無処理の金型でアルミニウム板の絞り加工を行ったところ、非晶質炭素膜を被覆した絞り金型は無潤滑であるにも係わらず高い加工特性を示すことが述べられている。
【0006】
また特開平6−223617号公報、特開2001−279466号公報においても同様な非晶質炭素膜を被覆した金型が提案され、金型の寿命向上が述べられている。
【0007】
【特許文献1】
特開2000−17605号公報
【特許文献2】
特開平8−90092号公報
【特許文献3】
特開平6−223617号公報
【特許文献4】
特開2001−279466号公報
【非特許文献1】
ツールエンジニア2000年12月号44ページ
【非特許文献2】
日本機械学会講習会教材(表面改質技術の新展開2000年1月22日)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
これらの従来の非晶質炭素膜を被覆した工具部材は加工特性、寿命等において優れた特性を示すものの、それは十分なものではなかった。
つまり加工の条件によっては、非晶質炭素膜の摩耗、被削切りくずとの凝着、非晶質炭素膜の剥離等が生じることがあり、それらの解決が望まれていた。
【0009】
また環境意識の高まりにより、切削油を用いない「ドライ加工」について世界中で注目が集まっている。ドライ加工はその名の通り潤滑油を用いない環境への負荷が少ない加工方法である。しかし潤滑油を用いないことからその加工条件は厳しく、特にアルミニウムなどの凝着の発生しやすい金属においては、非晶質炭素膜を被覆していない工具部材での加工は極めて難しかった。それは上記のような従来の非晶質炭素膜を施した加工部材であっても程度の差はあれ同様な問題が生じていた。
【0010】
本発明はこれらの問題を解決したものであって、非晶質炭素膜を被覆した工具部材における非晶質炭素膜の組成の最適化及び、非晶質炭素膜と工具との密着性を向上させる中間層の最適化を行い、より一層の特性向上を図った工具部材を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するため本第1発明は、工具鋼又は超硬合金からなる工具部材において、前記工具部材の表面に原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である珪素含有非晶質炭素膜を形成したことを特徴とする。
第2発明は直接炭化物、窒化物、窒炭化物の少なくとも一つまたはこれらの組合せを含む硬化物質からなる中間層を前記工具部材の表面と前記珪素含有非晶質炭素膜との間に形成したことを特徴とする。
第3発明は前記中間層は周期律表の第4A族、第5A族、第6A族に属する元素の少なくとも1種を有する炭化物、窒化物、窒炭化物の少なくとも一つまたはこれらの組合せを含む硬化物質からなることを特徴とする。
第4発明は前記珪素含有非晶質炭素膜を形成する前記工具の表面又は前記中間層に活性化処理を施した後に前記珪素含有非晶質炭素膜を形成することを特徴とする。
第5発明は前記活性化処理は希ガスを含むガスを用いることを特徴とする。
第6発明は前記活性化処理により希ガス元素が工具部材の表面に取り込まれていることを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る工具部材は表面に原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である珪素含有非晶質炭素膜を形成したことを特徴とする工具部材である。本発明において工具部材は特に限定されるものではなく、ドリル、エンドミル、金型等、珪素含有非晶質炭素膜を被覆することにより、特性が向上するものであればよい。
【0013】
工具部材の母材としてはドリル、エンドミル等の切削工具、及び金型等の加工用工具に一般的に使用される金属材料であればよいが、その中でも加工特性、寿命等を考慮し工具鋼または超硬合金を用いることが望ましい。
【0014】
本発明による珪素含有非晶質炭素膜は高硬度、高密着性、耐摩耗性、及び耐凝着性に優れた炭素系被膜である。その理由は次のとおりと考えられる。すなわち、珪素を添加することで膜硬さが増加し、耐摩耗性が向上する。また潤滑性に優れ低い摩擦係数を有することから、相手材との凝着反応が起こりにくい。
【0015】
本発明で被覆する非晶質含有炭素質膜は原子比率をSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50としている。珪素(Si)量を0.03から0.25としたのは珪素(Si)量が0.03未満では工具性能が充分でなく、また珪素(Si)量が0.25を超えると被膜の内部応力が増大し、剥離しやすくなるためである。珪素(Si)量の特に望ましい範囲は0.05〜0.1である。
【0016】
炭素(C)量を0.30から0.75としたのは、炭素量が0.30未満では被膜の硬さが十分でなく耐摩耗性に劣るためであり、炭素量が0.75を超えると被膜の内部応力が増大し、剥離しやすくなるためである。また炭素(C)量の特に望ましい範囲は0.50〜0.70である。
【0017】
水素(H)量を0.22から0.50としたのは水素量が0.22以下では被膜の内部応力が増大し剥離しやすくなるためであり、0.50を超えると硬さが十分でなく耐摩耗性に劣るからである。また水素(H)量の特に望ましい範囲は0.25〜0.30である。
【0018】
膜厚に関しては0.2μmから10μmが望ましい。より望ましくは0.5μmから5μmである。膜厚が0.2μm未満では耐摩耗性が十分でなく、膜厚が10μmを超えると被膜が剥離しやすくなり、寿命向上につながらない。無論、被覆のための時間も増大しコストアップとなる。
【0019】
珪素含有非晶質炭素膜は各種の方法にて工具部材に被覆することができる。本発明においては化学蒸着(CVD)、その中でも直流プラズマCVDにより珪素含有非晶質炭素膜を工具部材に被覆した。
【0020】
珪素含有非晶質炭素膜は工具部材に直接形成することも可能であるが、工具部材と珪素含有非晶質炭素膜の密着性を向上させるために、工具部材の表面の活性化処理を行うことが望ましい。
【0021】
珪素含有非晶質炭素被膜の被覆処理を行う前に希ガスを含むガスによるイオン衝突やイオンミキシング等による表面の活性化処理を行うことで、基材表面での新生面の生成や希ガス成分元素を含む擾乱層が形成されるため、その後に続いて成膜される珪素含有非晶質炭素膜の密着性を一層向上させる。
【0022】
その理由は定かではないが次のように考えられる。
希ガス成分元素が基材の最表面に取り込まれ、高い歪場を形成することで表面の反応性が高まり(活性化状態)、珪素含有非晶質炭素膜に含まれる活性元素である珪素との結合がより強固となり高密着化につながる。
【0023】
活性化を行う方法としては具体的にイオン衝突やイオンミキシングなどが考えられる。本発明ではイオン衝突を利用して工具部材の表面の活性化を行った。
【0024】
なお、活性処理表面を分析するため、アルゴンガスと水素ガスを各々30sccmにして500℃で1時間の表面活性化処理を行った分析用サンプル(高速度鋼製角型チップ12.7mm×12.7mm×4.7mm、Rmax0.2μm)をXPS分析で調べた。その結果、基材成分の他に微量のアルコンが検出された。すなわち基材の最表面層にはイオン衝突に用いた希ガス元素が取り込まれていることを示している。
【0025】
また直接炭化物、窒化物、窒炭化物の少なくとも一つまたはこれらの組合せを含む硬化物質からなる中間層を前記工具部材の表面と前記珪素含有非晶質炭素膜との間に形成してもよい。その理由は珪素含有非晶質炭素膜の耐摩耗性を向上させるためである。珪素含有非晶質炭素膜は焼き付きに対しては極めて良好な特性を示すものの、その硬度は2000Hv程度である。よって表面に強い応力が作用した状態で用いられる工具部材においては、更なる耐摩耗性の向上が望まれる。
【0026】
TiC、CrN等の炭化物、窒化物、炭窒化物は硬度が3000Hv以上あるため、これらを工具部材の表面と前記珪素含有非晶質炭素膜との間に形成することにより、前記珪素含有非晶質炭素膜の耐摩耗性を向上することができる。無論、中間層を形成せず、工具部材に直接珪素含有非晶質炭素膜を被覆しても良い。
【0027】
次に本発明に係わる工具部材の製造方法について説明する。
工具部材としてはドリル、エンドミル、金型等などの珪素含有非晶質炭素膜を被覆することにより、特性が向上するものであればよい。また工具部材は被覆処理がされていないものでもよいが、TiC、CrN等の炭化物、窒化物、炭窒化物等を中間層として形成し、その上に珪素含有非晶質炭素膜を被覆しても良い。
【0028】
工具部材の母材としてはドリル、エンドミル等の切削工具、及び金型等の加工用工具に一般的に使用される金属材料であればよいが、その中でも加工特性、寿命等を考慮し工具鋼または超硬合金を用いることが望ましい。
【0029】
珪素含有非晶質炭素膜の被覆にはプラズマCVDを用いた。プラズマCVD装置の容器内を真空度10−4torrまで排気した後、Arガス、H2ガスを3.5torrに到達するまで導入した。圧力一定のまま直流方式のグロー放電により電圧300V、電流1.5A、通電時間1時間のもとで、工具部材表面の活性化処理を行った。
【0030】
このときのArガス量は20〜40sccmとし、H2ガス量は20〜40sccmとした。またArガスのみならずHe、Neなどの希ガスを用いることも可能である。
グロー放電の電圧、電流、通電時間は特に限定されるものではなく、工具部材の表面の活性化処理を行える範囲であればよい。
【0031】
前記活性化処理に引き続き、ガスをCH4、H2、Si(CH3)4またはSiC14に切り替えてその流量をそれぞれ10〜100sccm、1〜40sccm、10〜30sccmの範囲内で制御した後、直流プラズマCVDにより電圧300V、電流2Aのもとで珪素含有非晶質炭素膜の被覆処理を行った。
組成比はガス流量比を変えることで制御を行った。膜厚は通電時間を変えることで制御を行った。
【0032】
また下記の方法によれば珪素含有非晶質炭素膜の被覆を行った直流プラズマCVD装置により、工具部材表面に炭化物、窒化物、窒炭化物の少なくとも一つまたはこれらの組合せを含む硬化物質の中間層を形成することができる。
【0033】
CH4、TiCl4、H2およびArガスをそれぞれ10sccm、5sccm、30sccm、30sccmを混合して容器内に導入し、500℃で1時間の直流プラズマCVDを行った。その際の電圧を400V、電流を1.6Aとした。これにより工具部材の表面にTiC(チタン炭化物)を形成することができた。導入するガスの組合せを変更することにより、工具部材の表面に所望の中間層を形成することができる。
また中間層を形成した後は、前述と同様の方法にて珪素含有非晶質炭素膜を形成することができる。
【0034】
(実施例1)
ドリル径5mm、ドリル長さ86mm(φ5×86)の市販のドリルに直流プラズマCVDにより珪素含有非晶質炭素膜を形成した。ドリルは高速度鋼製(SKH51)、超硬合金製(K10)のものを用いた。
高速度鋼製のドリルには中間層を設けないもの、中間層としてTiCを設けたもの、中間層としてCrNを設けたものを用いた。なお中間層のTiCの膜厚は2μm、CrNの膜厚は2μmとした。
超硬合金製のドリルには中間層を設けないもの、中間層としてTiAlNを設けたものを用いた。中間層のTiAlNの膜厚は2μmであった。
【0035】
直流プラズマCVD容器の真空度を10−4torrまで排気した後、Ar(20〜40sccm)とH2(20〜40sccm)ガスを3.5torrになるまで導入し、その圧力のもとで直流方式のグロー放電により電圧300V、電流1.5V、通電時間1時間の条件で各種ドリルの表面の活性化処理を行った。
【0036】
その後、ガスをCH4、H2、Si(CH3)4とし、それぞれ10〜100sccm、1〜40sccm、および10〜30sccmの範囲内で制御した後、直流プラズマCVDにより電圧300V、電流2Aのもとで、珪素含有非晶質炭素膜を形成した。
ガスの流量比を変えることで組成比を変更し、通電時間を5〜40分とすることで膜厚を0.5μmから2μmとした。
【0037】
このようにして得られた実施品1−1から実施品1−9に対して、縦型マシニングセンターを用いて以下に示す切削条件で切削試験を行った。
切削速度 50m/min
送り量 0.1mm/rev
被削材 AC2B−T6
穴深さ20mm(とまり穴)
切削油 なし(ドライ)
切削試験は折損に至るまでの穴あけ加工数で比較した。試験結果を表1にまとめて示す。
この試験結果より、本発明品は少なくとも900穴以上の加工が行え、長寿命化を示した。なお実施品1−2、実施品1−4については2000穴では折損に至らなかったが、その時点で切削試験を中止したため2000穴以上としている。
【0038】
(比較例1)
比較例として下記のドリルを用意した。ドリルのサイズは実施例1と同一とした。特に記載のない部分についても実施例1と同様としている。
市販の高速度鋼(SKH1)製ドリルで、中間層を設けないもの、中間層としてTiCを設けたもの、中間層としてCrNを設けたものを用意した。中間層であるTiCの膜厚は2μm、CrNの膜厚は2μmとした。また市販の超硬合金(K10)製ドリルで中間層を設けないものを用意した。それぞれのドリルについて実施例1と同様の方法で活性化処理を行ったが、珪素含有非晶質炭素質膜の被覆は行わなかった。
【0039】
市販の高速度鋼(SKH1)製ドリルで中間層を設けず、活性化処理を施した後、実施例1と同様の方法で珪素含有非晶質炭素膜の被覆処理を行った。ただし、珪素含有非晶質炭素膜の形成時のSi(CH3)4の流量を調整することで珪素含非晶質炭素膜のSi原子比率を0及び0.4とした。
【0040】
市販の高速度鋼(SKH1)製ドリルで中間層を設けず、活性化処理を施した後、実施例1と同様の方法で珪素含有非晶質炭素膜の被覆処理を行った。ただし通電時間を調整することで珪素含有非晶質炭素膜の厚さを0.1μm、0.3μm、0.5μm、1.5μm、15μmとした。
【0041】
このようにして得られた比較品1−1から比較品1−9に対し、実施例1と同様の試験を行った。結果を表2に示す。珪素含有非晶質炭素膜を一切施さないものについては穴あけ数が100を超えるものはなかった。また組成比が適切でない珪素含有非晶質炭素質膜を施したものや、膜厚が適切でない珪素含有非晶質炭素質膜を施したものでも穴あけ数が400を超えるものは皆無であった。
【0042】
(実施例2)
φ22×130のSKD11製打ち抜きパンチに中間層を設けず活性化処理を行い、珪素含有非晶質炭素膜を被覆した。活性化処理、珪素含有非晶質炭素膜の被覆は実施例1と同様に行った。また被覆時間を変えて膜厚を1.2μm、2μm、5μmとした。
このように得られた実施品2−1から実施品2−3に対して以下に示す条件で打ち抜き試験を行った。
被打ち抜き材 SUS304鋼板
厚さ 1.2mm
潤滑 無潤滑(ドライ)
打ち抜き試験は型寿命までのショット回数で比較した。型寿命とは打ち抜きパンチの摩耗により、打ち抜き穴のバリが2mmになったときとした。試験結果をまとめて表3に示す。
この試験結果より珪素含有非晶質炭素膜を被覆した打ち抜きパンチは型寿命まで50000回以上の打ち抜きが可能であり、長寿命化を示した。
【0043】
(比較例2)
比較例として中間層及び珪素含有非晶質炭素膜を被覆しないφ22×130のSKD11製打ち抜きパンチを用意した。
【0044】
次にφ22×130のSKD11製打ち抜きパンチに中間層としてTiCを膜厚が2μmとなるように設け、その後活性化処理、珪素含有非晶質炭素膜の被覆を行った。活性化処理、珪素含有非晶質炭素膜の被覆方法は実施例1と同様に行った。ただし通電時間を調整することで珪素含有非晶質炭素膜の膜厚を0.1μm、11μmとした。
【0045】
このように得られた比較品2−1から比較品2−4に対して実施例2と同様の方法で打ち抜き試験を行った。結果を表4に示す。
この試験結果より、中間層、珪素含有非晶質炭素膜の形成を行わないものの寿命までの打ち抜き回数は実施例2に比べ10分の1以下であった。
また中間層、膜厚が適切でない珪素含有非晶質炭素膜を被覆したものの寿命までの打ち抜き回数は実施例2に比べ2分の1以下であった。
【0046】
(実施例3)
φ22×130のSKD51製打ち抜きパンチに中間層としてTiCを設けた。TiCの膜厚は2μmとした。なおTiCの被覆には実施例1と同一のプラズマCVD装置を用いた。CH4、TiCl4、H2、及びArガスをそれぞれ10sccm、5sccm、30sccm、30sccmを混合して炉内に導入し、500℃で1時間の直流プラズマCVDにより行った。その際の電圧は400V、電流を1.6Aとした。
TiCの被覆後、一旦10−2torrまで排気した後、ガスを切り替えて、実施例1と同様の活性化処理と珪素含有非晶質炭素膜の形成を行った。珪素含有非晶質炭素質膜の厚さは1.5μmとた。
【0047】
このように得られた実施品3−1に対して以下に示す打ち抜き条件で打ち抜き試験を行った。
被打ち抜き材 S15C鋼板
厚さ 1.5mm
潤滑 無潤滑(ドライ)
打ち抜き試験は型寿命までのショット回数で比較した。型寿命とは打ち抜きパンチの摩耗により、打ち抜き穴のバリが2mmになったときとした。試験結果をまとめて表5に示す。
この試験結果より珪素含有非晶質炭素膜を被覆した打ち抜きパンチは型寿命まで80000回以上の打ち抜きが可能であり、長寿命化を示した。
【0048】
(比較例3)
比較例として中間層及び珪素含有非晶質炭素膜を被覆しないφ22×130のSKH51製打ち抜きパンチを用意した。
【0049】
次にφ22×130のSKH51製打ち抜きパンチにTiCのみを被覆したものを用意した。TiCの被覆方法は実施例3の中間層の被覆と同様に行った。
【0050】
このように得られた比較品3−1、比較品3−2に対して実施例3と同様の方法で打ち抜き試験を行った。結果を表6に示す。
この試験結果より、中間層及び珪素含有非晶質炭素膜を被覆しないものの寿命までの打ち抜き回数は実施例3に比べ10分の1以下であった。
またTiCの被覆のみで珪素含有非晶質炭素膜を被覆しないのの寿命までの打ち抜き回数は、実施例2に比べ4分の1程度であった。
【0051】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良が可能である。
例えば、上記実施例ではドリル、打ち抜きパンチとしたが、金型、バイト、チップ(、エンドミル、リーマ、ブローチ、タップ、ホブ等、様々な工具部材に用いることができる。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【発明の効果】
本発明に係わる工具部材は表面に原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である珪素含有非晶質炭素膜を形成したことにより、従来工具部材に比べ特性を向上することができ、長寿命化を図ることができる。
Claims (6)
- 工具鋼又は超硬合金からなる工具部材において、前記工具部材の表面に原子比率がSi0.03 〜 0.25C0.30 〜 0.75H0.22 〜 0.50である珪素含有非晶質炭素膜を形成したことを特徴とする工具部材。
- 炭化物、窒化物、窒炭化物の少なくとも一つまたはこれらの組合せを含む硬化物質からなる中間層を前記工具部材の表面と前記珪素含有非晶質炭素膜との間に形成したことを特徴とする請求項1記載の工具部材。
- 前記中間層は周期律表の第4A族、第5A族、第6A族に属する元素の少なくとも1種を有する炭化物、窒化物、窒炭化物の少なくとも一つまたはこれらの組合せを含む硬化物質からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の工具部材
- 前記珪素含有非晶質炭素膜を形成する前記工具の表面又は前記中間層に活性化処理を施した後に前記珪素含有非晶質炭素膜を形成することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の工具部材。
- 前記活性化処理は希ガスを含むガスを用いることを特徴とする請求項4記載の工具部材。
- 前記活性化処理により希ガス元素が工具部材の表面に取り込まれていることを特徴とする請求項5記載の工具部材。
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