JP2004201869A - 生体活性骨セメント - Google Patents
生体活性骨セメント Download PDFInfo
- Publication number
- JP2004201869A JP2004201869A JP2002373436A JP2002373436A JP2004201869A JP 2004201869 A JP2004201869 A JP 2004201869A JP 2002373436 A JP2002373436 A JP 2002373436A JP 2002373436 A JP2002373436 A JP 2002373436A JP 2004201869 A JP2004201869 A JP 2004201869A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- bone cement
- bone
- cement
- mass
- blended
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Pending
Links
Images
Landscapes
- Materials For Medical Uses (AREA)
Abstract
【課題】アパタイト形成能を持つ新規な骨セメントの提供。
【解決手段】少なくともアパタイト形成能を付与する平均粒径10nm〜10μmのアナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80、及び重量平均分子量Mwが10,000以上のポリメタクリレート粉末とメタクリレートモノマーとの質量比が5:1から1:5の範囲の混合物を質量部で20〜60配合したことを特徴とする、更に、重合開始剤、重合促進剤の骨セメント配合剤を配合した生体活性骨セメント。
【選択図】 図1
【解決手段】少なくともアパタイト形成能を付与する平均粒径10nm〜10μmのアナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80、及び重量平均分子量Mwが10,000以上のポリメタクリレート粉末とメタクリレートモノマーとの質量比が5:1から1:5の範囲の混合物を質量部で20〜60配合したことを特徴とする、更に、重合開始剤、重合促進剤の骨セメント配合剤を配合した生体活性骨セメント。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80で配合したことを特徴とする生体内でのアパタイト形成能(生体活性)を有し、硬化時の発熱、化学的耐久性が改善され粉末ポリマーと液体モノマーを含む骨セメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に人工材料を骨の欠損部に埋め込むと、生体はこれを繊維性の被膜で取り囲み、周囲の骨から隔離する。アルミナやジルコニア焼結体も薄いながらも繊維性被膜を形成する。したがって生体骨を人工材料で置き換え、周囲の骨に固定することは難しい。しかし、1970年アメリカフロリダ大学のHenchは、セラミックスの中には線維性皮膜を作らず、骨と直接接し、これと強く結合するものがあることを見出し、バイオガラスと名付けて、早速、人工中耳骨、顎堤繊維埋込材、歯周充填材などとして実用化され、大変良い治療効果をあげてきた。しかしながら、人工材料としては極めて高い骨結合性(生体活性)を示すが、その曲げ強度は60MPa程度でヒトの皮質骨の曲げ強度の160MPaには遠く及ばなかった。
次いで、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)焼結体、結晶化ガラスA−Wなどが開発され、それらの曲げ強度も115MPa、220MPaと改善され、また擬似体液中でのテストでも、後者は生体内でかなりの強度を長期間維持することが知られているが、大きな荷重のかかる大腿骨や脛骨としての強度を有しない。
【0003】
ところで、人工骨材が骨と結合する条件は、前記結晶化ガラスA−Wとラット脛骨の界面を透過型電子顕微鏡で見ると、同結晶性ガラスはアパタイトだけからなる層を介して骨と結合している。前記結晶化ガラスの場合、体液との化学反応で該ガラス表面にアパタイトが形成されるのは、前記結晶化ガラスが生体内に埋め込まれたとき、該ガラス表面から溶出するCa2+イオンが溶出し、アパタイトの核形成に有効なSi−OH基が形成され、同時に、溶出したCa2+イオンが体液中のOH−及びCa2+イオン濃度を上昇させることによりアパタイトのイオン活動度積を上昇させることにより誘起される。
【0004】
市販のボーンセメント(PMMA系セメント)の組成は、粉末ポリマー、液体モノマーおよび過酸化物開始剤とから本質的になり、これは、骨の欠損部、あるいは人工股関節などの金属製の人工股関節を周囲の骨と固定するために世界的に使用されてきた。しかし、同セメントは上記生体活性セラミックスのように生体内でアパタイトを形成しないので、線維性皮膜に覆われ、長期の間には人工股関節と骨との間に緩みが生じる。また、重合時、セメントが発熱し、その温度は100℃にも達するので、周囲の正常組織が損傷を受ける。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−234841、特許請求の範囲
【特許文献2】
特開平10−179714、特許請求の範囲
【特許文献3】
特開平10−179713、特許請求の範囲
【特許文献4】
特開平10−137332、特許請求の範囲
【特許文献5】
特開平10−137331、特許請求の範囲
【特許文献6】
特開平10−118175、特許請求の範囲
【特許文献7】
特開2002−085548、特許請求の範囲
【特許文献8】
特開2002−085546、特許請求の範囲
【特許文献9】
特開2002−085545、特許請求の範囲
【特許文献10】
特開2001−340443、特許請求の範囲
【特許文献11】
特開2001−299900、特許請求の範囲
【特許文献12】
特開2001−293080、特許請求の範囲
【特許文献13】
特開2001−231848、特許請求の範囲
【特許文献14】
特開2001−164073、特許請求の範囲
【特許文献15】
特開2000−279506、特許請求の範囲
【特許文献16】
特開2000−271205、特許請求の範囲
【特許文献17】
特開2000−254220、特許請求の範囲
【特許文献18】
特開2000−245821、特許請求の範囲
【特許文献19】
特開2000−279506、特許請求の範囲
【特許文献20】
特開2000−086420、特許請求の範囲
【特許文献21】
特開2000−086419、特許請求の範囲
【特許文献22】
特開2000−014763、特許請求の範囲
【特許文献23】
特開2000−014762、特許請求の範囲
【特許文献24】
特開2000−005297、特許請求の範囲
【特許文献25】
特開平11−164879、特許請求の範囲
【0006】
これまでに、セメントに骨結合性を付与する試みとして、Al2O3あるいは/及びCaを含む結晶化ガラスA−Wなどの粒子をPMMA系骨セメントに混和したもの(前記特許文献1〜6)が提案されている。しかし、Al2O3は生体内でその表面にアパタイトを作らず、従ってAl2O3を含むセメントは骨との結合性に乏しく、また該セメントと骨との接着強度は低い。
【0007】
また、PMMA系骨セメントに前記結晶化ガラスA−W粒子を混和したもの(前記特許文献7〜25)も提案されている。同セメントはアパタイト形成能を示すが、前記のように、結晶化ガラスA−W粒子からCa2+イオンが溶出するので、生体埋入後、長期の間にはセメントの強度が低下する恐れがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記結晶化ガラスA−Wのような水中へのイオンの溶出がなくて生体活性を付与し、かつ、骨欠損部等に充填して使用可能な機械的強度等が改善され、充填後、速やかに骨と強固な結合が生成が可能な、骨セメント配合用の成分を見出し、新規な生体活性骨セメントを提供することである。
前記課題を解決するために、本発明者らは、種々のセラミックス粉末を試行錯誤している中で、アナタース型のTiO2微粉末を前記結晶化ガラスA−Wに変えて配合することにより、生体活性を示す骨セメントとなり得ること、更に、配合アナタース型のTiO2微粉末の粒径及び配合量を選択することにより、硬化時の最高温度を108℃から87℃まで抑制することが可能であることを見出し前記課題を解決することが出来た。加えて、前記アナタース型のTiO2微粉末に予めシランカップリング剤で処理しておくことにより硬化時間を短縮できることを見出した。Ca2+イオンを溶出しなくて生体活性を示す骨セメントを形成することの発見は驚くべきことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともアパタイト形成能を付与する平均粒径10nm〜10μmのアナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80、及び重量平均分子量Mwが10,000以上のポリメタクリレート粉末とメタクリレートモノマーとの質量比が5:1から1:5の範囲の混合物を質量部で20〜60配合したことを特徴とする、更に、重合開始剤、重合促進剤の骨セメント配合剤を配合した生体活性骨セメントである。好ましくは、アナタースTiO2微粒子が一端化学構造がトリアルコキシシランであるγ−メタクリロキシシランカップリング剤で処理しものであることを特徴とする前記生体活性骨セメントであり、より好ましくは、アナタースTiO2微粒子の平均粒径が200nm±100nmでありあることを特徴とする前記各生体活性骨セメントである。
【0010】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明の骨セメントからの試料の作製方法を図1に示す。
粉末成分;ポリマー粉末、例えば、重量平均分子量Mw=270,000のPMMA粉末とアナタースTiO2微粉末、過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤の粉末混合物と、液体成分;モノマー、例えばメチルメタクリレートと重合促進剤であるN,N−ジメチルーp−トルイジンと配合したものを、ポリテトラフルオロエチレン製の容器内で混合し、これを離型性の良いポリテトラフルオロエチレン製の成型器内で成形、硬化し試料とする。
【0011】
B.ポリマー粉末としては、公知の骨セメント製造用のポリマー、例えば少なくとも重量平均分子量Mw10,000のポリメチルメタクリル系ポリマー粉末を用いることが好ましい。また、モノマーとしては、メタクリレート系モノマー、ジメタクリレート系モノマーが好ましいが、他の多官能性、一官能性モノマー、更にはPMMAなどのオリゴマー、低分子ポリマーを用いることが出来る。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイルの他に、過酸化tert−ブチル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリルなど、重合促進剤としては、N,N−ジメチルーp−トルイジンの他に、トリ−ジメチルアミノメチルフェノールなどを用いることが出来る。配合量は共にモノマー100に対して0.1〜5質量部、好ましくは2〜3質量部である。
【0012】
C.アナタース型二酸化チタンの真球状の微粒子が得られれば、本発明の複合体において、微粒子の充填率を上げることができるので好ましい。また、石原産業株式会社製のアナタース型二酸化チタン微粒子、例えばT200、T100及びT20などを好ましいものとして挙げることができる。
【0013】
D、アナタース型二酸化チタン微粒子のシランカップリング処理剤としては、下記の式1で表される、アルコキシル末端であるγ−メタクリロキシシランカップリング剤
CH2=C(CH3)−C(=O)−O−(CH2)n−Si(−O−R1)3−m
・式1
(式1中、R1はメチル基、又はエチル基、nは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。)
例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
この他にも、CH2=CHSi(OC2H4OCH3)3、CH2=CH−SiCl3、CH2=CH−Si(CH3)(OCOCH3)3、CH2=CH−SiH(OCOCH3)3などが挙げられる。
E.前記成分の他に、公知の骨セメントへの添加成分、例えば、硫酸バリウム、色素、抗生物質、骨成長因子、その他薬学的に許容しうる成分などを配合することが出来る。
【0014】
【実施例】
PMMA系骨セメントを製造するのに用いた材料。
1,PMMA粉末、重量平均分子量MW=270,000
2,モノマー液体、メチルメタクリレート(MMA)
重合促進剤、N,N−ジメチル−p−トルイジン
3,開始剤、過酸化ベンゾイル
4,骨セメント用アナタースTiO2〔石原産業(株)製〕
T200=200nmアナタース、
T100=100nmアナタース、
T20=20nmアナタース
5,結晶化ガラスA−W〔日本電気硝子(株)製〕=AW
6,PMMA骨セメント〔実施例〕
【0015】
測定器具;
X線回折像; リガク社製
TEM: 日本電子データム社製
FE−SEM; 日立製作所社製
【0016】
実施例1;アナタースTiO2をシランカップリング剤処理しないで用いた場合。
表1に示すPMMA粉末、MMA及びセラミックス粉末を表に示す割合で配合した組成物に、開始剤である過酸化ベンゾイルをモノマー100質量部に対して4質量部、促進剤であるN,N−ジメチルーp−トルイジンを2質量部配合した。それぞれの組成物を用いて試料を作製した場合の硬化時間、および硬化時最高温度を表1に示す。アナタースTiO2の粒径および配合量により前記各特性の至適値があることが分かる。
【0017】
【表1】
【0018】
実施例2:アナタースTiO2(T200)をシランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:γ−MPS)処理したものを用いた場合。
重量比で、アナタースTiO2を100、エタノールを1.5、水0.2及びγ−MPS1〜2を、室温において1時間混合。粉末を分離し110℃で2時間加熱処理をして、シランカップリング処理アナタースTiO2(ST200)を得た。前記処理したアナタースTiO2を60質量部配合し(ST200−60)、PMMA粉末、MMA、重合開始剤、重合促進剤の成分および配合量は実施例1と同様とした。比較のために、前記と同様にシランカップリング処理した結晶化ガラスA−W(SAW)を用意し、アナタースTiO2に代えて配合した試料、および未処理アナタースTiO2を配合した試料(T200−60)を作製した。硬化時間が短縮されたことが理解される。
【0019】
【表2】
【0020】
実施例3:前記実施例1および2で得られた試料を下記表3に示す擬似体液(SBF)中に3日間浸漬した時のアパタイト形成能を、結晶化ガラスA−Wを用いた場合と共に対比して示す。電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真の図2、3、4および5は実施例1に、図6は実施例2に対応する。
図2は、PMMA:MMA=16:24にセラミックT−200を60配合した場合とAWを60配合した場合の対比。
図3は、PMMA:MMA=20:30にセラミックT−200、T100およびAWをそれぞれ50配合した場合の対比。
図4は、PMMA:MMA=24:36にセラミックT−200、T100T−20およびAWをそれぞれ40配合した場合の対比。
図5は、PMMA:MMA=20:45にセラミックT−200を50配合した場合。モノマー配合の増加に伴い硬化時間が長くなった。
いずれの試料においても良好なアパタイト形成を確認できた。SBF中でその表面にアパタイトを形成する材料は、生体内でもその表面にアパタイトを形成し、それを介して骨と直接結合することが既に確かめられている。
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、体内で安定なアナタースTiO2微粒子をボーンセメントに混ぜ込むことにより、同セメントに高いアパタイト形成能を付与でき、生体内で安定でしかも骨と結合するセメントが得られるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料の作製の工程図
【図2】実施例1の試料のアパタイト形成能(1)
【図3】実施例1の試料のアパタイト形成能(2)
【図4】実施例1の試料のアパタイト形成能(3)
【図5】実施例1の試料のアパタイト形成能(4)
【図6】実施例2の試料のアパタイト形成能
【発明の属する技術分野】
本発明は、アナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80で配合したことを特徴とする生体内でのアパタイト形成能(生体活性)を有し、硬化時の発熱、化学的耐久性が改善され粉末ポリマーと液体モノマーを含む骨セメントに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に人工材料を骨の欠損部に埋め込むと、生体はこれを繊維性の被膜で取り囲み、周囲の骨から隔離する。アルミナやジルコニア焼結体も薄いながらも繊維性被膜を形成する。したがって生体骨を人工材料で置き換え、周囲の骨に固定することは難しい。しかし、1970年アメリカフロリダ大学のHenchは、セラミックスの中には線維性皮膜を作らず、骨と直接接し、これと強く結合するものがあることを見出し、バイオガラスと名付けて、早速、人工中耳骨、顎堤繊維埋込材、歯周充填材などとして実用化され、大変良い治療効果をあげてきた。しかしながら、人工材料としては極めて高い骨結合性(生体活性)を示すが、その曲げ強度は60MPa程度でヒトの皮質骨の曲げ強度の160MPaには遠く及ばなかった。
次いで、水酸アパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)焼結体、結晶化ガラスA−Wなどが開発され、それらの曲げ強度も115MPa、220MPaと改善され、また擬似体液中でのテストでも、後者は生体内でかなりの強度を長期間維持することが知られているが、大きな荷重のかかる大腿骨や脛骨としての強度を有しない。
【0003】
ところで、人工骨材が骨と結合する条件は、前記結晶化ガラスA−Wとラット脛骨の界面を透過型電子顕微鏡で見ると、同結晶性ガラスはアパタイトだけからなる層を介して骨と結合している。前記結晶化ガラスの場合、体液との化学反応で該ガラス表面にアパタイトが形成されるのは、前記結晶化ガラスが生体内に埋め込まれたとき、該ガラス表面から溶出するCa2+イオンが溶出し、アパタイトの核形成に有効なSi−OH基が形成され、同時に、溶出したCa2+イオンが体液中のOH−及びCa2+イオン濃度を上昇させることによりアパタイトのイオン活動度積を上昇させることにより誘起される。
【0004】
市販のボーンセメント(PMMA系セメント)の組成は、粉末ポリマー、液体モノマーおよび過酸化物開始剤とから本質的になり、これは、骨の欠損部、あるいは人工股関節などの金属製の人工股関節を周囲の骨と固定するために世界的に使用されてきた。しかし、同セメントは上記生体活性セラミックスのように生体内でアパタイトを形成しないので、線維性皮膜に覆われ、長期の間には人工股関節と骨との間に緩みが生じる。また、重合時、セメントが発熱し、その温度は100℃にも達するので、周囲の正常組織が損傷を受ける。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−234841、特許請求の範囲
【特許文献2】
特開平10−179714、特許請求の範囲
【特許文献3】
特開平10−179713、特許請求の範囲
【特許文献4】
特開平10−137332、特許請求の範囲
【特許文献5】
特開平10−137331、特許請求の範囲
【特許文献6】
特開平10−118175、特許請求の範囲
【特許文献7】
特開2002−085548、特許請求の範囲
【特許文献8】
特開2002−085546、特許請求の範囲
【特許文献9】
特開2002−085545、特許請求の範囲
【特許文献10】
特開2001−340443、特許請求の範囲
【特許文献11】
特開2001−299900、特許請求の範囲
【特許文献12】
特開2001−293080、特許請求の範囲
【特許文献13】
特開2001−231848、特許請求の範囲
【特許文献14】
特開2001−164073、特許請求の範囲
【特許文献15】
特開2000−279506、特許請求の範囲
【特許文献16】
特開2000−271205、特許請求の範囲
【特許文献17】
特開2000−254220、特許請求の範囲
【特許文献18】
特開2000−245821、特許請求の範囲
【特許文献19】
特開2000−279506、特許請求の範囲
【特許文献20】
特開2000−086420、特許請求の範囲
【特許文献21】
特開2000−086419、特許請求の範囲
【特許文献22】
特開2000−014763、特許請求の範囲
【特許文献23】
特開2000−014762、特許請求の範囲
【特許文献24】
特開2000−005297、特許請求の範囲
【特許文献25】
特開平11−164879、特許請求の範囲
【0006】
これまでに、セメントに骨結合性を付与する試みとして、Al2O3あるいは/及びCaを含む結晶化ガラスA−Wなどの粒子をPMMA系骨セメントに混和したもの(前記特許文献1〜6)が提案されている。しかし、Al2O3は生体内でその表面にアパタイトを作らず、従ってAl2O3を含むセメントは骨との結合性に乏しく、また該セメントと骨との接着強度は低い。
【0007】
また、PMMA系骨セメントに前記結晶化ガラスA−W粒子を混和したもの(前記特許文献7〜25)も提案されている。同セメントはアパタイト形成能を示すが、前記のように、結晶化ガラスA−W粒子からCa2+イオンが溶出するので、生体埋入後、長期の間にはセメントの強度が低下する恐れがある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、前記結晶化ガラスA−Wのような水中へのイオンの溶出がなくて生体活性を付与し、かつ、骨欠損部等に充填して使用可能な機械的強度等が改善され、充填後、速やかに骨と強固な結合が生成が可能な、骨セメント配合用の成分を見出し、新規な生体活性骨セメントを提供することである。
前記課題を解決するために、本発明者らは、種々のセラミックス粉末を試行錯誤している中で、アナタース型のTiO2微粉末を前記結晶化ガラスA−Wに変えて配合することにより、生体活性を示す骨セメントとなり得ること、更に、配合アナタース型のTiO2微粉末の粒径及び配合量を選択することにより、硬化時の最高温度を108℃から87℃まで抑制することが可能であることを見出し前記課題を解決することが出来た。加えて、前記アナタース型のTiO2微粉末に予めシランカップリング剤で処理しておくことにより硬化時間を短縮できることを見出した。Ca2+イオンを溶出しなくて生体活性を示す骨セメントを形成することの発見は驚くべきことである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、少なくともアパタイト形成能を付与する平均粒径10nm〜10μmのアナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80、及び重量平均分子量Mwが10,000以上のポリメタクリレート粉末とメタクリレートモノマーとの質量比が5:1から1:5の範囲の混合物を質量部で20〜60配合したことを特徴とする、更に、重合開始剤、重合促進剤の骨セメント配合剤を配合した生体活性骨セメントである。好ましくは、アナタースTiO2微粒子が一端化学構造がトリアルコキシシランであるγ−メタクリロキシシランカップリング剤で処理しものであることを特徴とする前記生体活性骨セメントであり、より好ましくは、アナタースTiO2微粒子の平均粒径が200nm±100nmでありあることを特徴とする前記各生体活性骨セメントである。
【0010】
【本発明の実施の態様】
本発明をより詳細に説明する。
A.本発明の骨セメントからの試料の作製方法を図1に示す。
粉末成分;ポリマー粉末、例えば、重量平均分子量Mw=270,000のPMMA粉末とアナタースTiO2微粉末、過酸化ベンゾイルなどの重合開始剤の粉末混合物と、液体成分;モノマー、例えばメチルメタクリレートと重合促進剤であるN,N−ジメチルーp−トルイジンと配合したものを、ポリテトラフルオロエチレン製の容器内で混合し、これを離型性の良いポリテトラフルオロエチレン製の成型器内で成形、硬化し試料とする。
【0011】
B.ポリマー粉末としては、公知の骨セメント製造用のポリマー、例えば少なくとも重量平均分子量Mw10,000のポリメチルメタクリル系ポリマー粉末を用いることが好ましい。また、モノマーとしては、メタクリレート系モノマー、ジメタクリレート系モノマーが好ましいが、他の多官能性、一官能性モノマー、更にはPMMAなどのオリゴマー、低分子ポリマーを用いることが出来る。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイルの他に、過酸化tert−ブチル、過酸化ラウロイル、アゾビスイソブチロニトリルなど、重合促進剤としては、N,N−ジメチルーp−トルイジンの他に、トリ−ジメチルアミノメチルフェノールなどを用いることが出来る。配合量は共にモノマー100に対して0.1〜5質量部、好ましくは2〜3質量部である。
【0012】
C.アナタース型二酸化チタンの真球状の微粒子が得られれば、本発明の複合体において、微粒子の充填率を上げることができるので好ましい。また、石原産業株式会社製のアナタース型二酸化チタン微粒子、例えばT200、T100及びT20などを好ましいものとして挙げることができる。
【0013】
D、アナタース型二酸化チタン微粒子のシランカップリング処理剤としては、下記の式1で表される、アルコキシル末端であるγ−メタクリロキシシランカップリング剤
CH2=C(CH3)−C(=O)−O−(CH2)n−Si(−O−R1)3−m
・式1
(式1中、R1はメチル基、又はエチル基、nは1〜3の整数、mは1〜2の整数である。)
例えば、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランである。
この他にも、CH2=CHSi(OC2H4OCH3)3、CH2=CH−SiCl3、CH2=CH−Si(CH3)(OCOCH3)3、CH2=CH−SiH(OCOCH3)3などが挙げられる。
E.前記成分の他に、公知の骨セメントへの添加成分、例えば、硫酸バリウム、色素、抗生物質、骨成長因子、その他薬学的に許容しうる成分などを配合することが出来る。
【0014】
【実施例】
PMMA系骨セメントを製造するのに用いた材料。
1,PMMA粉末、重量平均分子量MW=270,000
2,モノマー液体、メチルメタクリレート(MMA)
重合促進剤、N,N−ジメチル−p−トルイジン
3,開始剤、過酸化ベンゾイル
4,骨セメント用アナタースTiO2〔石原産業(株)製〕
T200=200nmアナタース、
T100=100nmアナタース、
T20=20nmアナタース
5,結晶化ガラスA−W〔日本電気硝子(株)製〕=AW
6,PMMA骨セメント〔実施例〕
【0015】
測定器具;
X線回折像; リガク社製
TEM: 日本電子データム社製
FE−SEM; 日立製作所社製
【0016】
実施例1;アナタースTiO2をシランカップリング剤処理しないで用いた場合。
表1に示すPMMA粉末、MMA及びセラミックス粉末を表に示す割合で配合した組成物に、開始剤である過酸化ベンゾイルをモノマー100質量部に対して4質量部、促進剤であるN,N−ジメチルーp−トルイジンを2質量部配合した。それぞれの組成物を用いて試料を作製した場合の硬化時間、および硬化時最高温度を表1に示す。アナタースTiO2の粒径および配合量により前記各特性の至適値があることが分かる。
【0017】
【表1】
【0018】
実施例2:アナタースTiO2(T200)をシランカップリング剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン:γ−MPS)処理したものを用いた場合。
重量比で、アナタースTiO2を100、エタノールを1.5、水0.2及びγ−MPS1〜2を、室温において1時間混合。粉末を分離し110℃で2時間加熱処理をして、シランカップリング処理アナタースTiO2(ST200)を得た。前記処理したアナタースTiO2を60質量部配合し(ST200−60)、PMMA粉末、MMA、重合開始剤、重合促進剤の成分および配合量は実施例1と同様とした。比較のために、前記と同様にシランカップリング処理した結晶化ガラスA−W(SAW)を用意し、アナタースTiO2に代えて配合した試料、および未処理アナタースTiO2を配合した試料(T200−60)を作製した。硬化時間が短縮されたことが理解される。
【0019】
【表2】
【0020】
実施例3:前記実施例1および2で得られた試料を下記表3に示す擬似体液(SBF)中に3日間浸漬した時のアパタイト形成能を、結晶化ガラスA−Wを用いた場合と共に対比して示す。電界放出型走査電子顕微鏡(FE−SEM)写真の図2、3、4および5は実施例1に、図6は実施例2に対応する。
図2は、PMMA:MMA=16:24にセラミックT−200を60配合した場合とAWを60配合した場合の対比。
図3は、PMMA:MMA=20:30にセラミックT−200、T100およびAWをそれぞれ50配合した場合の対比。
図4は、PMMA:MMA=24:36にセラミックT−200、T100T−20およびAWをそれぞれ40配合した場合の対比。
図5は、PMMA:MMA=20:45にセラミックT−200を50配合した場合。モノマー配合の増加に伴い硬化時間が長くなった。
いずれの試料においても良好なアパタイト形成を確認できた。SBF中でその表面にアパタイトを形成する材料は、生体内でもその表面にアパタイトを形成し、それを介して骨と直接結合することが既に確かめられている。
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】
以上述べたように、体内で安定なアナタースTiO2微粒子をボーンセメントに混ぜ込むことにより、同セメントに高いアパタイト形成能を付与でき、生体内で安定でしかも骨と結合するセメントが得られるという優れた効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料の作製の工程図
【図2】実施例1の試料のアパタイト形成能(1)
【図3】実施例1の試料のアパタイト形成能(2)
【図4】実施例1の試料のアパタイト形成能(3)
【図5】実施例1の試料のアパタイト形成能(4)
【図6】実施例2の試料のアパタイト形成能
Claims (3)
- 少なくともアパタイト形成能を付与する平均粒径10nm〜10μmのアナタースTiO2微粒子を質量部で40〜80、及び重量平均分子量Mwが10,000以上のポリメタクリレート粉末とメタクリレートモノマーとの質量比が5:1から1:5の範囲の混合物を質量部で20〜60配合したことを特徴とする、更に、重合開始剤、重合促進剤の骨セメント配合剤を配合した生体活性骨セメント。
- アナタースTiO2微粒子が、一端化学構造がトリアルコキシルであるγ−メタクリロキシシランカップリング剤で処理したものであることを特徴とする請求項1に記載の生体活性骨セメント。
- アナタースTiO2微粒子の平均粒径が200nm±100nmであり、ポリメタクリレート粉末とメタクリレートモノマーとの混合物に対する質量部が50±30であることを特徴とする請求項1または2に記載の生体活性骨セメント。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002373436A JP2004201869A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 生体活性骨セメント |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002373436A JP2004201869A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 生体活性骨セメント |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004201869A true JP2004201869A (ja) | 2004-07-22 |
Family
ID=32811715
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002373436A Pending JP2004201869A (ja) | 2002-12-25 | 2002-12-25 | 生体活性骨セメント |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004201869A (ja) |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007054619A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-03-08 | Japan Science & Technology Agency | 生体活性骨セメント組成物及びその製造方法、並びにそれを製造するためのキット |
WO2010098305A1 (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-02 | 国立大学法人京都大学 | 骨セメント組成物及び骨セメント組成物キット並びに骨セメント硬化体の形成方法 |
US20120046385A1 (en) * | 2009-02-25 | 2012-02-23 | Takashi Nakamura | Bone cement composition and production method thereof, and kit for producing the same |
WO2013129292A1 (ja) * | 2012-02-29 | 2013-09-06 | 石原産業株式会社 | 骨セメント組成物 |
JP2015517004A (ja) * | 2012-03-30 | 2015-06-18 | ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド | 硬化性二液型アクリル組成物 |
-
2002
- 2002-12-25 JP JP2002373436A patent/JP2004201869A/ja active Pending
Cited By (13)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP4555804B2 (ja) * | 2005-07-29 | 2010-10-06 | 独立行政法人科学技術振興機構 | 生体活性骨セメント組成物及びその製造方法、並びにそれを製造するためのキット |
JP2007054619A (ja) * | 2005-07-29 | 2007-03-08 | Japan Science & Technology Agency | 生体活性骨セメント組成物及びその製造方法、並びにそれを製造するためのキット |
US8609746B2 (en) | 2009-02-25 | 2013-12-17 | Kyoto University | Bone cement composition, bone cement composition kit and forming method of bone cement hardened material |
CN102333553A (zh) * | 2009-02-25 | 2012-01-25 | 国立大学法人京都大学 | 骨水泥组合物和骨水泥组合物试剂盒以及骨水泥固化体的形成方法 |
US20120046385A1 (en) * | 2009-02-25 | 2012-02-23 | Takashi Nakamura | Bone cement composition and production method thereof, and kit for producing the same |
WO2010098305A1 (ja) * | 2009-02-25 | 2010-09-02 | 国立大学法人京都大学 | 骨セメント組成物及び骨セメント組成物キット並びに骨セメント硬化体の形成方法 |
US8658713B2 (en) | 2009-02-25 | 2014-02-25 | Kyoto University | Bone cement composition and production method thereof, and kit for producing the same |
TWI446938B (zh) * | 2009-02-25 | 2014-08-01 | Univ Kyoto | A bone cement composition, a method for producing the same, and a method for manufacturing the same |
JP5602127B2 (ja) * | 2009-02-25 | 2014-10-08 | 国立大学法人京都大学 | 骨セメント組成物及び骨セメント組成物キット並びに骨セメント硬化体の形成方法 |
WO2013129292A1 (ja) * | 2012-02-29 | 2013-09-06 | 石原産業株式会社 | 骨セメント組成物 |
TWI572376B (zh) * | 2012-02-29 | 2017-03-01 | Ishihara Sangyo Kaisha | A bone cement composition, a bone cement composition kit using the same, a method for producing a bone cement composition, and a cement composition for hardening |
US9713654B2 (en) | 2012-02-29 | 2017-07-25 | Ishihara Sangyo Kaisha, Ltd. | Bone cement composition |
JP2015517004A (ja) * | 2012-03-30 | 2015-06-18 | ルーサイト インターナショナル ユーケー リミテッド | 硬化性二液型アクリル組成物 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2018149346A (ja) | ポリマー複合体およびその作製 | |
JP2003339850A (ja) | 骨セメント混合物、x線造影剤、該骨セメント混合物および該x線造影剤の製造法、並びにx線造影剤としての、バリウム、ジルコニウムおよび別の元素を含有するポリマーおよびコポリマーの使用 | |
Zhang et al. | Effect of surface treatment of hydroxyapatite whiskers on the mechanical properties of bis-GMA-based composites | |
Bapat et al. | Review on synthesis, properties and multifarious therapeutic applications of nanostructured zirconia in dentistry | |
JP2005520798A (ja) | セラミック材料及び製造方法 | |
Samad et al. | New bioactive glass-ceramic: synthesis and application in PMMA bone cement composites | |
KR20140132345A (ko) | 골 시멘트 조성물 | |
WO2003074009A1 (en) | Glass ionomers for enhancing mineralization of hard tissue | |
Ohtsuki et al. | Development of bioactive PMMA-based cement by modification with alkoxysilane and calcium salt | |
Kobayashi et al. | Direct bone formation on alumina bead composite | |
Kobayashi et al. | Effect of bioactive filler content on mechanical properties and osteoconductivity of bioactive bone cement | |
JP2004201869A (ja) | 生体活性骨セメント | |
Mousa et al. | Effect of silane treatment and different resin compositions on biological properties of bioactive bone cement containing apatite‐wollastonite glass ceramic powder | |
Kobayashi et al. | Alumina powder/Bis‐GMA composite: Effect of filler content on mechanical properties and osteoconductivity | |
CN110339395B (zh) | 一种pmma基的水合骨水泥及其制备方法与应用 | |
KR100559171B1 (ko) | 생체활성 골 시멘트 제조용 혼합물 및 이를 이용한생체활성 골 시멘트의 제조방법 | |
Okazaki et al. | Mechanical and biological properties of apatite composite resins | |
JP2002210002A (ja) | 生体組織修復用組成物 | |
JP3871298B2 (ja) | 医療用インプラント材 | |
Okada et al. | Ultrastructure of the interface between alumina bead composite and bone | |
JPH04208164A (ja) | 移植用材料およびその製造方法 | |
JP2000254220A (ja) | 生体活性セメント組成物 | |
Otsuka et al. | Effects of water-soluble | |
VIBHA et al. | Division of Dental Products, Biomedical Technology Wing, Sree Chitra Tirunal Institute for Medical Sciences and Technology, Poojappura, Thiruvananthapuram 695012, India | |
JP2001231848A (ja) | 生体活性セメント組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040423 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20050322 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20050712 |
|
A02 | Decision of refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02 Effective date: 20051101 |