JP2004196687A - ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法およびその精製物 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリイミドワニス、成型体に用いられる金属イオン濃度が低く純度の高い3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法に関する。
【解決手段】ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を製造する場合において、粗ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルを加水分解し脱水後、更に溶媒中で吸着剤で濾過後、再結晶することからなるビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法である。特に3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
また再結晶に用いる溶媒が、無水酢酸であることが3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法として好ましい。
【選択図】 なし
【解決手段】ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を製造する場合において、粗ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルを加水分解し脱水後、更に溶媒中で吸着剤で濾過後、再結晶することからなるビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法である。特に3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
また再結晶に用いる溶媒が、無水酢酸であることが3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法として好ましい。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドワニスまたは成型体に用いられるビフェニルテトラカルボン酸二無水物に関する。特にポリイミドワニスまたは成型体に用いられる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に関する。更に詳しくは、ポリイミドの原料に供する事の出来る超高純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を始めとするビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドワニスまたは成型体に用いられるビフェニルテトラカルボン酸二無水物に関する。3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は近年、エレクトロニクスの高度化に伴い、特に高周波用に用いられるプリント基板など耐熱性樹脂として注目されているポリイミド樹脂製造用原料として有用な化合物である。従来、例えば4−クロルフタル酸ジメチルの脱クロル二量化反応によって得られる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステルを加水分解し、次いで得られた3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸を脱水反応させて製造されている。例えば、従来法においては、各工程の反応条件を適当に制御することにより、高純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の結晶が得られるが、その場合にも多少の不純物の混入は避けられず、精製する3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に金属イオンの混入が避けられず、ポリアミック酸の重合性が低い物であった(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には金属配線板用基材として、高精細FPC(Flexible Printed Circuits)は、使用される環境が高温かつ精密性を必要とされるため金属イオンを低減することが望まれている。また重合性が良好である原料を提供する。
【0004】
本発明者は、主として3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミンからなるポリアミック酸について検討し、そのフィルムが可撓性および寸法精度の観点から高精細用COFに適していることを明らかにしつつある。そして、このフィルムは最近の需要の高まりおよび用途の広がりからコストダウンが要望されている。このため、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を製造する場合は貴金属系触媒に替わり、特にニッケル系触媒またはニッケル貴金属合金系触媒などが検討されている。この時用いる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は脱クロル二量化触媒としてニッケル系触媒を使用する方法は操作が容易である反面、有機不純物または金属不純物が混入して原料の着色の為、フィルム色調が悪く、破断伸度が小さく製膜性が十分でなかった。特にナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムおよび白金金属を含有することで、高温加熱後の物性が低下するするなどの問題があった。その内、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の影響が著しいことが判った。
【0005】
またポリイミドに使用される原料の精製方法として、例えば蒸留法がある(特許文献2参照)。しかし、蒸留法では蒸留工程で発生する熱変成物または不純物のため、重合速度が遅いなどという問題があった。
【0006】
すなわち、従来の製造方法による3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドフィルムは工業的に複雑な工程をとるため、高価な原料であった。
【0007】
【特許文献1】
特許第3061859号公報
【特許文献2】
特公平4−37078号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、製膜性および耐熱性を同時に改善した80μmピッチ以下の高精細配線が構成されるCOF(Chip on Film)回路用基板に用いられる金属蒸着用に適したポリイミドフィルムに用いられる金属イオン濃度が低く純度の高い3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法に関する。
【0010】
特に触媒としてピリジン、キノリンまたはその誘導体と無水ニッケル化合物及び還元金属を用い製造された粗ビフェニルテトラカルボン酸またはその誘導体を精製し、経済的で商業的に有用な3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の製法に関する。
【0011】
またポリイミドワニス、ポリイミド成型用に用いられる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の製法に関する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を製造する場合において、粗ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルを加水分解し脱水後、更に溶媒中で吸着剤で濾過後、再結晶することからなるビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法である。特に3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0013】
また再結晶に用いる溶媒が、無水酢酸であることが3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法として好ましい。
【0014】
アルカリ金属含有量が1ppm以下であることを特徴とする3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物が好ましい。
【0015】
粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルは、種々の方法で得られたものがいずれも使用できるが、特にピリジン、キノリンまたはその誘導体と無水ニッケル化合物及び還元金属の存在下反応させる脱クロル二量化反応を用い製造された粗ビフェニルテトラカルボン酸またはその誘導体を精製する方法は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を安価に供給できるので好ましい。
【0016】
粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルはキシレン/酢酸などの混合溶媒中でパラトルエンスルホン酸などの酸触媒を加え加水分解する。その加水分解反応は90〜160℃で行われる。
【0017】
この加水分解反応においては、粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が反応溶媒中に結晶として析出してくるので、加温状態で熟成後冷却濾過し採取する。
【0018】
このような方法で得られる粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸をキシレンなどで洗浄し、無水酢酸中に溶解させ吸着剤処理し金属イオンを取り除く、しかる後熱濾過し再結晶を行う。その後、無水酢酸などで洗浄し乾燥させ3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を得る。
【0019】
吸着剤としては、活性炭、活性白土およびケイ藻土などがある。
【0020】
このようにして得られた3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中のナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムまたは白金含有量がそれぞれ1ppm以下が好ましい。好ましくはナトリウムおよびカリウムの合計が1ppm以下である。1ppmを超えるとポリイミドフィルムとした場合、破断伸度が20%未満となり好ましくない。
【0021】
ポリアミック酸またはポリイミド成型体の製造方法としては、従来の方法が用いられる。特に主として3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をジカルボン酸成分として用い、パラフェニレンジアミンを主としてジアミン成分として用いでポリアミド酸を得、これを流延後、イミド化するポリイミドフィルムの製造方法であり、ポリアミド酸の最高到達粘度が300Pa・sec以上であることが好ましい。
【0022】
また、これらのポリイミドフィルムを基材として、その表面に金属配線を施してなる可撓性印刷回路用またはテープ自動化接合テープ用の金属配線板も本発明である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成及び効果について詳述する。
【0024】
一般に、粗ビフェニルテトラカルボン酸およびその誘導体は4−クロルフタル酸、2−クロルフタル酸およびその誘導体、などを経由して、脱塩素二量化反応により得られる。例えば、米国特許第4,727,185号には、貴金属触媒、ギ酸塩および少量のアルコールの存在下に二量化させる方法が開示されている。また日本国特許第3061859号には、ヒドロキシルアミンまたはその塩の1つの水溶液を、パラジウム触媒の存在下にアルカリ性溶液中で二量化させる方法が開示されている。
【0025】
特許第2727104号には、ピリジン、キノリンまたはその誘導体と無水ニッケル化合物及び還元金属の存在下反応させ脱クロル二量化反応されることが示唆されている。ピリジンなどの使用量は、ニッケル1g原子に対して等モル以上使用すること。無水ニッケル化合物として無水塩化ニッケルが好ましく、反応系内で、無水ニッケル化合物とピリジンと単座化合物の錯体を作ることが好ましいこと。無水ニッケル化合物の使用量は、クロロフタル酸1モルに対し0.001〜1モルの範囲での使用が好ましいこと。また還元金属として微粉末状の亜鉛が好ましいこと、およびその使用量はクロロフタル酸1モルに対し当モルまたはそれ以上が好ましいことが示唆されている。
【0026】
本発明では、経済的また商業的に有用な4−クロルフタル酸から得られる粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボンテトラメチルが好ましい。また好ましい還元金属として亜鉛である。また好ましい触媒として無水ニッケル化合物およびトリフェニルホスフィンから誘導される錯体、ジクロロテトラキス(ピリジン)ニッケル(II)、ジクロロビス(ピリジン)ニッケル(II)などである。
【0027】
本発明の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物はポリアミック酸の原料として用いるが、その不純物を少なくする必要がある。本発明の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中のナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムまたは白金含有量はそれぞれ1ppm以下が好ましい。更に好ましくはナトリウムおよびカリウムの合計が1ppm以下である。1ppmを超えると、ポリアミド酸の重合粘度が上昇しなかったり、重合速度が遅くなったりする。また得られたポリイミドフィルムの加熱後の強度および伸度が実用に耐えられなくなる。
【0028】
金属イオンは原子吸光法で確認できるが、特にナトリウムイオンまたはカリウムイオン含有量は0.5ppm以下が好ましい。
【0029】
本発明に使用される好ましい3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸を再結晶させた後、溶媒中で吸着剤で金属イオンを除去した後、再結晶する精製結晶化工程を経て得られる。得られたガスクロ純度は99.5%以上が好ましい。更に好ましくは99.9%以上である。粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の精製は2つの異なる精製工程を組み合わせることでその純度を飛躍的に向上させることが出来ることを見いだした。即ち、金属イオンを吸着処理した後、溶媒による再結晶操作を後に続けることにより、本発明の目的とする純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が得られる。理由は吸着工程で二量化工程で発生する金属イオンを除去し、再結晶工程で二量化工程または吸着工程で副生される微量の有機変性物を取り除くことができるためである。
【0030】
吸着剤としては、活性炭、活性白土およびケイ藻土などがある。特に予めケイ藻土などで濾過助剤のケークを作成した後、活性炭入りの研濁液を濾過すること好ましい。吸着剤として使用する活性炭の重量は溶液重量の5%から30%程度が好ましい。
【0031】
二量化工程での変性物は加熱変性物または3,3’、4−ビフェニルトリカルボン酸およびそれらの誘導体であろう。
【0032】
二量化生成された粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルは加水分解後、吸着処理後冷却再結晶して精製結晶化される工程を経て得られる。後工程での吸湿を防ぐため、嵩比重が0.1以上の結晶粒子として採取する。嵩比重は取り扱い上、0.25以上、更には0.4以上が好ましい。嵩比重が0.1未満では配管ラインで塊となってブリッジをつくり配管詰まりとなりやすい。形状は顆粒状が好ましい。
【0033】
好ましい再結晶温度は50℃以上250℃未満である。50℃以下では効率が悪い。
【0034】
3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の簡便な純度指標としてDSC融点範囲で示すことも出来る。好ましいDSC融点範囲は297℃以上302℃以下である。純度が低いとこのDSC融点範囲から外れてくる場合がある。精製された3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物ジアミンと反応させポリアミド酸に重合させられる。併用する他のジアミンおよび酸二無水物のアルカリ金属、ニッケル、アルミニウムは1ppm以下が好ましい。好ましくは主としてパラフェニレンジアミンと反応させてポリアミド酸を経てポリイミドフィルムを形成する。
【0035】
金属含有量の合計が1ppmを超えるとポリアミド酸の重合粘度が300Pa・sec以上となりにくい。
【0036】
300Pa・sec未満で重合を終結して得られたポリイミドフィルム、あるいは300Pa・sec未満で重合が終結し得られたポリイミドフィルムは、重合度が低いためであろうか、伸度を始めとする機械物性が不十分となる。また含有金属の触媒作用により、長時間加熱後の機械物性の低下も著しい。
【0037】
また、ポリアミド酸中のナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムおよび/または白金金属含有量は1ppm以下であることが好ましい。特に好ましくはナトリウムおよびカリウムの合計が1ppm以下である。
【0038】
またポリイミドフィルムを製造するためにはそのポリアミド酸の最高到達粘度は300Pa・sec以上とし、得られたポリイミドフィルムの破断伸度が50%以上であることが好ましい。後述するが、ポリアミド酸溶液の粘度は回転粘度計で測定される。
【0039】
ポリアミド酸は、ジメチルアセトアミドなどの溶媒にジアミンを溶解させ、酸二無水物を添加し反応させることにより重合される。重合反応によりポリアミド酸の分子量が大きくなるが、それに従って粘度が高くなる。等モル付近で最高粘度に到達するが、更に等モル点を超えて酸二無水物を添加して行くと、逆に粘度が低下して行く。このときの最高到達粘度は300Pa・sec以上である。数平均分子量では1万以上、好ましくは5万以上である。
【0040】
また、例えば好ましいポリイミドフィルムの組成は、ジアミン成分が4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、パラフェニレンジアミンなどからなるポリイミドフィルムである。併用出来る酸二無水物はピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが用いることが出来る。得られるポリイミドフィルムは可とう性および耐熱性の優れた基材であるが、本発明の高純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることで、可とう性および耐熱性を保持し、剛性を向上できる。ヤング率として6GPa〜10GPa、熱膨張係数として4〜16(ppm/℃)のものが得られる。さらに延伸により配向を高めることによりさらに高ヤング率のフィルムも得ることが出来る。
【0041】
また、以上の方法で得られるポリイミドフィルムは、例えば、その表面に金属配線を施してなることを特徴とする可撓性の印刷回路またはテープ自動化接合テープ用の金属配線板用基材としても好適である。特にCOFが好ましい。
【0042】
本発明のポリアミド酸は、175℃以下、好ましくは90℃以下の温度で、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を、モル比を約0.90〜1.10、好ましくは0.95〜1.05、更に好ましくは0.98〜1.02とし、それぞれの成分と非反応性の有機溶剤中で反応させることにより製造される。
【0043】
上記それぞれの成分は、単独で順次有機溶剤中に供給してもよいし、同時に供給してもよく、また混合した成分に有機溶剤を供給してもよいが、均一な反応を行わせるためには、有機溶剤中に各成分を順次添加することが好ましい。
【0044】
また、本発明において、ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素との使用も可能である。
【0045】
本発明で用いるポリアミック酸の有機溶媒溶液(ポリアミック酸溶液)は、固形分を5〜40重量%を含有するのが好ましく、10〜30重量%を含有するのがより好ましく、15〜25重量%を含有するのが最も好ましい。またその粘度は、安定した送液のため、ブルックフィールド粘度計による測定値で10Pa・s以上が好ましく、100Pa・s以上がより好ましい。粘度の上限は送液するための流動性があれば良いが、安定なフィルムを高速で成形・製膜する観点から2000Pa・s以下が好ましく、更には1000Pa・s以下が好ましい。
【0046】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加することによって、重合反応の制御を行ってもよい。
【0047】
本発明においては、ポリアミック酸溶液を得るための反応手順としては、有機極性溶媒中に芳香族ジアミンを添加し溶解したのち、芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加する方法、または有機極性溶媒中に芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加したのち、芳香族ジアミンを添加する方法などいずれの方法でも可能である。このとき芳香族テトラカルボン酸に無水物と芳香族ジアミンの添加量は、実質的に等モルとすることができる。
【0048】
前記ポリアミック酸溶液を支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得る。次いで、得られたポリアミック酸フィルムの端部を固定し、200℃以下の温度で延伸しながら予備乾燥させる。引き続き150℃以上500℃以下の温度で更に乾燥およびイミド化をするための熱処理を行うことによりポリイミドフィルムを得るのが好ましい。
【0049】
なお、支持体とはガラス、金属、高分子フィルムなど平面を有し、ポリアミック酸をこの上にキャストした場合に、キャストされたポリアミック酸を支持することができるものを意味する。
【0050】
また、キャストとはポリアミック酸を支持体上に展開することを意味する。キャストの一例としては、バーコート、スピンコート、あるいは任意の空洞形状を有するパイプ状物質からポリアミック酸を押し出し、支持体上に展開する方法が挙げられる。
【0051】
得られたポリアミック酸をイミド閉環化させてポリイミドフィルムにする際には、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法、あるいはその両者を併用した閉環法のいずれで行ってもよい。
【0052】
化学閉環法で使用する脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。また触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン類などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0053】
具体的に、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の製造例を以下に説明する。
【0054】
まずクロルフタル酸ジメチルエステルを乾燥ピリジン溶媒中で、微粉末状亜鉛および乾燥ジクロロテトラキス(ピリジン)ニッケル(II)を加え撹拌し、50〜100℃で1〜10時間掛けて反応させ二量化する。このときトリフェニルホスフィンを併用することも好ましい。再結晶、濾過および洗浄を繰り返しビフェニルテトラカルボン酸メチルエステル(BPTM)を採取する。
【0055】
BPTMをキシレンまたは無水酢酸などの溶媒中で、110〜140℃に加熱して脱水反応させ、冷却すると3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が得られる。これを無水酢酸中に溶解させ、活性炭、濾過助剤または吸着材を加え金属イオン分を除去する。
冷却後濾過洗浄し再結晶後得られた粉体を粉砕後乾燥させる。
各工程後再結晶および洗浄が繰り返されるが、これらの再結晶溶媒または洗浄溶媒の金属イオンも1ppm未満が好ましい。
【0056】
得られたBPDAの金属含有量が1ppmを超えると、ポリアミド酸の製造は、その溶液のポリアミド酸濃度と溶液の粘度とでその終了点を決定される。最高到達粘度は300Pa・secを超えて重合させる。終了点の溶液の粘度を精度良く決定するためには、最後に供給する成分の一部を、反応に使用する有機溶剤の溶液として添加することは有効であるが、ポリアミド酸濃度をあまり低下させないような調節が必要である。
【0057】
溶液中のポリアミド酸濃度は、5ないし40重量%、好ましくは10ないし30重量%である。
【0058】
得られたポリアミック酸はワニスコーティング剤、フィルム用、成型用として好適である。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお各フィルム特性値は、下記の方法で測定したものである。
【0060】
また、下記の実施例中で、略号DMAcはジメチルアセトアミドを、PMDAはピロメリット酸二無水物を、44’ODAは4,4’−オキシジアニリンを、また、33’44’BPDAは3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を示す略記である。
(1)破断強度および破断伸度
破断強度は、JISK7113に準じて、室温でORIENREC社製のテンシロン型引張試験器により、引張速度300mm/分にて得られる張力−歪み曲線において、試料が破断するときの強度を取った。破断伸度は試料が破断するときの伸度を取った。
(2)製膜性
室温での破断伸度で評価する。
【0061】
◎;極めて良好 破断伸度が70%以上
○;良好 破断伸度が50%以上70%未満
△;実用上問題であるレベル 破断伸度が30%以上50%未満
×;製膜困難 破断伸度が30%未満
(3)原料、ポリアミド酸、およびフィルム中の各金属イオン量および全金属イオン量
原子吸光法でナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛および白金含有量をそれぞれ測定し金属イオン量とする。それぞれの測定下限は0.5ppm、0.1ppm、0.5ppm、0.5ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.1ppmおよび0.5ppmであった。
【0062】
その内、ナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムおよび白金含有量の合計を全金属イオン量とした。測定下限の場合は加算しなかった。
(4)耐熱性
フィルムを沸騰水に200時間浸浸し、室温で水を拭き取った後、室温で破断強度および破断伸度を測定する。
【0063】
○;良好 破断強度が150MPa以上かつ破断伸度が30%以上
△;実用上問題である 破断伸度が150MPa未満または破断伸度が30%未満
×;悪い 破断伸度が150MPa未満かつ破断伸度が30%未満
(5)ポリアミド酸の最高到達粘度
DCスターラーを備えた1000mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル40.048gおよびN,N’−ジメチルアセトアミド386.94gを入れ、窒素雰囲気下にて0℃で攪拌した。
【0064】
次に、30分から1時間後にかけて得られたBPDA56.688gを数回に分けて投入し1時間撹拌し、ジアミンおよび酸二無水物のモル比1/0.97のジアミン過剰のポリアミド酸重合溶液を得た。
【0065】
その後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6重量%)を滴下し撹拌を続け反応を進行させ、ポリアミド酸重合溶液の粘度上昇を回転粘度計にて測定した。粘度計はビスメトロン(単一円筒型回転粘度計、型式VS−A1、芝浦システム株式会社製)を用いた。
【0066】
ジアミン過剰のポリアミド酸重合溶液に酸二無水物を添加し続けると、ジアミンおよび酸二無水物の等量モル付近で最高粘度に到達し、その後酸二無水物過剰領域で粘度が再び低下する。
【0067】
[実施例]
参考例1
定法に従い、4クロロフタル酸メチルエステル2200g、トリフェニルホスフィン50gおよび塩化ニッケル20gをピリジン1800g中に溶かし、この溶液に微粉末状亜鉛400gを入れ80℃で、5時間反応させ二量化させた。さらに80℃で5時間放置した後キシレン3000gを滴下し希釈した。添加完結後、混合物を濾過して塩化亜鉛・亜鉛ピリジン溶液を除去した。
【0068】
ついで濾液を水2000gで希釈した濃塩酸500gへ添加し酸洗浄した。水洗を繰り返した後、メタノール(3000g)溶液中で再結晶を行った。析出した白色粉末を窒素パージを行いながら真空下100〜110℃で一昼夜乾燥し粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチル(BPTM)を得た。収率は60%であった。
【0069】
[実施例1]
参考例1で得た200gの粗BPTMをキシレン500g、酢酸50g、パラトルエンスルホン酸10gを加え110〜140℃で加熱溶解後5℃まで冷却し粉体を析出させた。析出物を濾取し、キシレン(100g)で洗浄後粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を得た。
【0070】
80gの粗BPDA(Aと表記)を無水酢酸に溶解させ活性炭(クラレコール、GLC)20gを添加し120℃で熱濾過した。濾過助剤は活性白土(ガレオンアースR、水沢化学工業社製)で予めケークを作り用いた。
【0071】
濾液を冷却し結晶を析出させ濾過後、窒素パージを行いながら真空下100〜110℃で一昼夜乾燥し精製BPDA(Bと表記)を得た。
【0072】
得られた精製BPDAはガスクロ純度は99.999%以上であった。液体クロマトグラフ全面積での純度分析では、BPDAが99.8%であった。
【0073】
原子吸光法での金属分析では、ナトリウム0.5ppm以下、カリウム0.2ppm、ニッケル0.5ppm以下、亜鉛0.1ppm以下、カルシウム0.1ppm、マグネシウム0.1ppm以下であった。
【0074】
フィルムの調整
500ccのガラス製フラスコに、DMAc393.96gを入れ、44’ODA(和歌山精化社製、40.048g)および精製BPDA(B)58.441gを順次供給し、窒素雰囲気下0℃で、約1時間攪拌する。最終的にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0075】
このポリアミド酸溶液30gを、12.7mlのDMAc、3.6mlの無水酢酸及び3.6mlのβ−ピコリンと混合した混合溶液を調製し、この混合溶液をガラス板上にキャストした後、150℃に加熱したホットプレート上で約4分間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0076】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の固定枠に固定し、250℃から330℃に昇温しながら30分間、その後400℃で約5分間加熱し、厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0077】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0078】
[比較例1]
実施例1で得られた粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(A)を窒素パージを行いながら真空下100〜110℃で一昼夜乾燥した。
【0079】
得られたBPDAはガスクロ純度は98%であった。液体クロマトグラフ全面積での純度分析では、BPDAが98%であった。
【0080】
原子吸光法での金属分析では、ナトリウム2.22ppm、カリウム1.2ppm、ニッケル0.5ppm、亜鉛1.1ppm、カルシウム0.1ppm、マグネシウム0.1ppm以下であった。
【0081】
フィルムの調整
500ccのガラス製フラスコに、DMAc393.96gを入れ、44’ODA(和歌山精化社製、40.048g)および精製BPDA(B)58.441gを順次供給し、窒素雰囲気下0℃で、約1時間攪拌する。最終的にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0082】
このポリアミド酸溶液30gを、12.7mlのDMAc、3.6mlの無水酢酸及び3.6mlのβ−ピコリンと混合した混合溶液を調製し、この混合溶液をガラス板上にキャストした後、150℃に加熱したホットプレート上で約4分間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0083】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の固定枠に固定し、250℃から330℃に昇温しながら30分間、その後400℃で約5分間加熱し、厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0084】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法で得られた、または金属含有量の小さいBPDAは、重合性が良好で、得られたポリイミドフィルムの伸度が良好である。更に得られるフィルム成型品を可撓性の印刷回路,CSP,COF、BGAまたはTABテープ用の金属配線板基材に適用した場合に、優れた取り扱い性および耐熱性を有するものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドワニスまたは成型体に用いられるビフェニルテトラカルボン酸二無水物に関する。特にポリイミドワニスまたは成型体に用いられる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に関する。更に詳しくは、ポリイミドの原料に供する事の出来る超高純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を始めとするビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドワニスまたは成型体に用いられるビフェニルテトラカルボン酸二無水物に関する。3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は近年、エレクトロニクスの高度化に伴い、特に高周波用に用いられるプリント基板など耐熱性樹脂として注目されているポリイミド樹脂製造用原料として有用な化合物である。従来、例えば4−クロルフタル酸ジメチルの脱クロル二量化反応によって得られる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルエステルを加水分解し、次いで得られた3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸を脱水反応させて製造されている。例えば、従来法においては、各工程の反応条件を適当に制御することにより、高純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の結晶が得られるが、その場合にも多少の不純物の混入は避けられず、精製する3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物に金属イオンの混入が避けられず、ポリアミック酸の重合性が低い物であった(特許文献1参照)。
【0003】
具体的には金属配線板用基材として、高精細FPC(Flexible Printed Circuits)は、使用される環境が高温かつ精密性を必要とされるため金属イオンを低減することが望まれている。また重合性が良好である原料を提供する。
【0004】
本発明者は、主として3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物およびジアミンからなるポリアミック酸について検討し、そのフィルムが可撓性および寸法精度の観点から高精細用COFに適していることを明らかにしつつある。そして、このフィルムは最近の需要の高まりおよび用途の広がりからコストダウンが要望されている。このため、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を製造する場合は貴金属系触媒に替わり、特にニッケル系触媒またはニッケル貴金属合金系触媒などが検討されている。この時用いる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は脱クロル二量化触媒としてニッケル系触媒を使用する方法は操作が容易である反面、有機不純物または金属不純物が混入して原料の着色の為、フィルム色調が悪く、破断伸度が小さく製膜性が十分でなかった。特にナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムおよび白金金属を含有することで、高温加熱後の物性が低下するするなどの問題があった。その内、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属の影響が著しいことが判った。
【0005】
またポリイミドに使用される原料の精製方法として、例えば蒸留法がある(特許文献2参照)。しかし、蒸留法では蒸留工程で発生する熱変成物または不純物のため、重合速度が遅いなどという問題があった。
【0006】
すなわち、従来の製造方法による3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いたポリイミドフィルムは工業的に複雑な工程をとるため、高価な原料であった。
【0007】
【特許文献1】
特許第3061859号公報
【特許文献2】
特公平4−37078号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述した従来技術における問題点の解決を課題として検討した結果達成されたものである。
【0009】
したがって、本発明の目的は、製膜性および耐熱性を同時に改善した80μmピッチ以下の高精細配線が構成されるCOF(Chip on Film)回路用基板に用いられる金属蒸着用に適したポリイミドフィルムに用いられる金属イオン濃度が低く純度の高い3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法に関する。
【0010】
特に触媒としてピリジン、キノリンまたはその誘導体と無水ニッケル化合物及び還元金属を用い製造された粗ビフェニルテトラカルボン酸またはその誘導体を精製し、経済的で商業的に有用な3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の製法に関する。
【0011】
またポリイミドワニス、ポリイミド成型用に用いられる3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の製法に関する。
【0012】
【課題を解決するための手段】
ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を製造する場合において、粗ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルを加水分解し脱水後、更に溶媒中で吸着剤で濾過後、再結晶することからなるビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法である。特に3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が好ましい。
【0013】
また再結晶に用いる溶媒が、無水酢酸であることが3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法として好ましい。
【0014】
アルカリ金属含有量が1ppm以下であることを特徴とする3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物が好ましい。
【0015】
粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルは、種々の方法で得られたものがいずれも使用できるが、特にピリジン、キノリンまたはその誘導体と無水ニッケル化合物及び還元金属の存在下反応させる脱クロル二量化反応を用い製造された粗ビフェニルテトラカルボン酸またはその誘導体を精製する方法は、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を安価に供給できるので好ましい。
【0016】
粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルはキシレン/酢酸などの混合溶媒中でパラトルエンスルホン酸などの酸触媒を加え加水分解する。その加水分解反応は90〜160℃で行われる。
【0017】
この加水分解反応においては、粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸が反応溶媒中に結晶として析出してくるので、加温状態で熟成後冷却濾過し採取する。
【0018】
このような方法で得られる粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸をキシレンなどで洗浄し、無水酢酸中に溶解させ吸着剤処理し金属イオンを取り除く、しかる後熱濾過し再結晶を行う。その後、無水酢酸などで洗浄し乾燥させ3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を得る。
【0019】
吸着剤としては、活性炭、活性白土およびケイ藻土などがある。
【0020】
このようにして得られた3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中のナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムまたは白金含有量がそれぞれ1ppm以下が好ましい。好ましくはナトリウムおよびカリウムの合計が1ppm以下である。1ppmを超えるとポリイミドフィルムとした場合、破断伸度が20%未満となり好ましくない。
【0021】
ポリアミック酸またはポリイミド成型体の製造方法としては、従来の方法が用いられる。特に主として3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物をジカルボン酸成分として用い、パラフェニレンジアミンを主としてジアミン成分として用いでポリアミド酸を得、これを流延後、イミド化するポリイミドフィルムの製造方法であり、ポリアミド酸の最高到達粘度が300Pa・sec以上であることが好ましい。
【0022】
また、これらのポリイミドフィルムを基材として、その表面に金属配線を施してなる可撓性印刷回路用またはテープ自動化接合テープ用の金属配線板も本発明である。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成及び効果について詳述する。
【0024】
一般に、粗ビフェニルテトラカルボン酸およびその誘導体は4−クロルフタル酸、2−クロルフタル酸およびその誘導体、などを経由して、脱塩素二量化反応により得られる。例えば、米国特許第4,727,185号には、貴金属触媒、ギ酸塩および少量のアルコールの存在下に二量化させる方法が開示されている。また日本国特許第3061859号には、ヒドロキシルアミンまたはその塩の1つの水溶液を、パラジウム触媒の存在下にアルカリ性溶液中で二量化させる方法が開示されている。
【0025】
特許第2727104号には、ピリジン、キノリンまたはその誘導体と無水ニッケル化合物及び還元金属の存在下反応させ脱クロル二量化反応されることが示唆されている。ピリジンなどの使用量は、ニッケル1g原子に対して等モル以上使用すること。無水ニッケル化合物として無水塩化ニッケルが好ましく、反応系内で、無水ニッケル化合物とピリジンと単座化合物の錯体を作ることが好ましいこと。無水ニッケル化合物の使用量は、クロロフタル酸1モルに対し0.001〜1モルの範囲での使用が好ましいこと。また還元金属として微粉末状の亜鉛が好ましいこと、およびその使用量はクロロフタル酸1モルに対し当モルまたはそれ以上が好ましいことが示唆されている。
【0026】
本発明では、経済的また商業的に有用な4−クロルフタル酸から得られる粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボンテトラメチルが好ましい。また好ましい還元金属として亜鉛である。また好ましい触媒として無水ニッケル化合物およびトリフェニルホスフィンから誘導される錯体、ジクロロテトラキス(ピリジン)ニッケル(II)、ジクロロビス(ピリジン)ニッケル(II)などである。
【0027】
本発明の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物はポリアミック酸の原料として用いるが、その不純物を少なくする必要がある。本発明の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物中のナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムまたは白金含有量はそれぞれ1ppm以下が好ましい。更に好ましくはナトリウムおよびカリウムの合計が1ppm以下である。1ppmを超えると、ポリアミド酸の重合粘度が上昇しなかったり、重合速度が遅くなったりする。また得られたポリイミドフィルムの加熱後の強度および伸度が実用に耐えられなくなる。
【0028】
金属イオンは原子吸光法で確認できるが、特にナトリウムイオンまたはカリウムイオン含有量は0.5ppm以下が好ましい。
【0029】
本発明に使用される好ましい3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物は、粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸を再結晶させた後、溶媒中で吸着剤で金属イオンを除去した後、再結晶する精製結晶化工程を経て得られる。得られたガスクロ純度は99.5%以上が好ましい。更に好ましくは99.9%以上である。粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸の精製は2つの異なる精製工程を組み合わせることでその純度を飛躍的に向上させることが出来ることを見いだした。即ち、金属イオンを吸着処理した後、溶媒による再結晶操作を後に続けることにより、本発明の目的とする純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が得られる。理由は吸着工程で二量化工程で発生する金属イオンを除去し、再結晶工程で二量化工程または吸着工程で副生される微量の有機変性物を取り除くことができるためである。
【0030】
吸着剤としては、活性炭、活性白土およびケイ藻土などがある。特に予めケイ藻土などで濾過助剤のケークを作成した後、活性炭入りの研濁液を濾過すること好ましい。吸着剤として使用する活性炭の重量は溶液重量の5%から30%程度が好ましい。
【0031】
二量化工程での変性物は加熱変性物または3,3’、4−ビフェニルトリカルボン酸およびそれらの誘導体であろう。
【0032】
二量化生成された粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルは加水分解後、吸着処理後冷却再結晶して精製結晶化される工程を経て得られる。後工程での吸湿を防ぐため、嵩比重が0.1以上の結晶粒子として採取する。嵩比重は取り扱い上、0.25以上、更には0.4以上が好ましい。嵩比重が0.1未満では配管ラインで塊となってブリッジをつくり配管詰まりとなりやすい。形状は顆粒状が好ましい。
【0033】
好ましい再結晶温度は50℃以上250℃未満である。50℃以下では効率が悪い。
【0034】
3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の簡便な純度指標としてDSC融点範囲で示すことも出来る。好ましいDSC融点範囲は297℃以上302℃以下である。純度が低いとこのDSC融点範囲から外れてくる場合がある。精製された3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物ジアミンと反応させポリアミド酸に重合させられる。併用する他のジアミンおよび酸二無水物のアルカリ金属、ニッケル、アルミニウムは1ppm以下が好ましい。好ましくは主としてパラフェニレンジアミンと反応させてポリアミド酸を経てポリイミドフィルムを形成する。
【0035】
金属含有量の合計が1ppmを超えるとポリアミド酸の重合粘度が300Pa・sec以上となりにくい。
【0036】
300Pa・sec未満で重合を終結して得られたポリイミドフィルム、あるいは300Pa・sec未満で重合が終結し得られたポリイミドフィルムは、重合度が低いためであろうか、伸度を始めとする機械物性が不十分となる。また含有金属の触媒作用により、長時間加熱後の機械物性の低下も著しい。
【0037】
また、ポリアミド酸中のナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムおよび/または白金金属含有量は1ppm以下であることが好ましい。特に好ましくはナトリウムおよびカリウムの合計が1ppm以下である。
【0038】
またポリイミドフィルムを製造するためにはそのポリアミド酸の最高到達粘度は300Pa・sec以上とし、得られたポリイミドフィルムの破断伸度が50%以上であることが好ましい。後述するが、ポリアミド酸溶液の粘度は回転粘度計で測定される。
【0039】
ポリアミド酸は、ジメチルアセトアミドなどの溶媒にジアミンを溶解させ、酸二無水物を添加し反応させることにより重合される。重合反応によりポリアミド酸の分子量が大きくなるが、それに従って粘度が高くなる。等モル付近で最高粘度に到達するが、更に等モル点を超えて酸二無水物を添加して行くと、逆に粘度が低下して行く。このときの最高到達粘度は300Pa・sec以上である。数平均分子量では1万以上、好ましくは5万以上である。
【0040】
また、例えば好ましいポリイミドフィルムの組成は、ジアミン成分が4,4’−オキシジアニリン、3,4’−オキシジアニリン、パラフェニレンジアミンなどからなるポリイミドフィルムである。併用出来る酸二無水物はピロメリット酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物などが用いることが出来る。得られるポリイミドフィルムは可とう性および耐熱性の優れた基材であるが、本発明の高純度の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を用いることで、可とう性および耐熱性を保持し、剛性を向上できる。ヤング率として6GPa〜10GPa、熱膨張係数として4〜16(ppm/℃)のものが得られる。さらに延伸により配向を高めることによりさらに高ヤング率のフィルムも得ることが出来る。
【0041】
また、以上の方法で得られるポリイミドフィルムは、例えば、その表面に金属配線を施してなることを特徴とする可撓性の印刷回路またはテープ自動化接合テープ用の金属配線板用基材としても好適である。特にCOFが好ましい。
【0042】
本発明のポリアミド酸は、175℃以下、好ましくは90℃以下の温度で、上記テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を、モル比を約0.90〜1.10、好ましくは0.95〜1.05、更に好ましくは0.98〜1.02とし、それぞれの成分と非反応性の有機溶剤中で反応させることにより製造される。
【0043】
上記それぞれの成分は、単独で順次有機溶剤中に供給してもよいし、同時に供給してもよく、また混合した成分に有機溶剤を供給してもよいが、均一な反応を行わせるためには、有機溶剤中に各成分を順次添加することが好ましい。
【0044】
また、本発明において、ポリイミドフィルムの前駆体であるポリアミック酸溶液の形成に使用される有機溶媒の具体例としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−,m−,またはp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどの非プロトン性極性溶媒を挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、さらにはキシレン、トルエンのような芳香族炭化水素との使用も可能である。
【0045】
本発明で用いるポリアミック酸の有機溶媒溶液(ポリアミック酸溶液)は、固形分を5〜40重量%を含有するのが好ましく、10〜30重量%を含有するのがより好ましく、15〜25重量%を含有するのが最も好ましい。またその粘度は、安定した送液のため、ブルックフィールド粘度計による測定値で10Pa・s以上が好ましく、100Pa・s以上がより好ましい。粘度の上限は送液するための流動性があれば良いが、安定なフィルムを高速で成形・製膜する観点から2000Pa・s以下が好ましく、更には1000Pa・s以下が好ましい。
【0046】
また、重合反応の前に芳香族ジアミン類に少量の末端封止剤を添加することによって、重合反応の制御を行ってもよい。
【0047】
本発明においては、ポリアミック酸溶液を得るための反応手順としては、有機極性溶媒中に芳香族ジアミンを添加し溶解したのち、芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加する方法、または有機極性溶媒中に芳香族テトラカルボン酸二無水物を添加したのち、芳香族ジアミンを添加する方法などいずれの方法でも可能である。このとき芳香族テトラカルボン酸に無水物と芳香族ジアミンの添加量は、実質的に等モルとすることができる。
【0048】
前記ポリアミック酸溶液を支持体上にキャストして自己支持性のポリアミック酸フィルムを得る。次いで、得られたポリアミック酸フィルムの端部を固定し、200℃以下の温度で延伸しながら予備乾燥させる。引き続き150℃以上500℃以下の温度で更に乾燥およびイミド化をするための熱処理を行うことによりポリイミドフィルムを得るのが好ましい。
【0049】
なお、支持体とはガラス、金属、高分子フィルムなど平面を有し、ポリアミック酸をこの上にキャストした場合に、キャストされたポリアミック酸を支持することができるものを意味する。
【0050】
また、キャストとはポリアミック酸を支持体上に展開することを意味する。キャストの一例としては、バーコート、スピンコート、あるいは任意の空洞形状を有するパイプ状物質からポリアミック酸を押し出し、支持体上に展開する方法が挙げられる。
【0051】
得られたポリアミック酸をイミド閉環化させてポリイミドフィルムにする際には、脱水剤と触媒を用いて脱水する化学閉環法、熱的に脱水する熱閉環法、あるいはその両者を併用した閉環法のいずれで行ってもよい。
【0052】
化学閉環法で使用する脱水剤としては、無水酢酸などの脂肪族酸無水物、フタル酸無水物などの酸無水物などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。また触媒としては、ピリジン、ピコリン、キノリンなどの複素環式第3級アミン類、トリエチルアミンなどの脂肪族第3級アミン類、N,N−ジメチルアニリンなどの第3級アミン類などが挙げられ、これらを単独あるいは混合して使用するのが好ましい。
【0053】
具体的に、3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の製造例を以下に説明する。
【0054】
まずクロルフタル酸ジメチルエステルを乾燥ピリジン溶媒中で、微粉末状亜鉛および乾燥ジクロロテトラキス(ピリジン)ニッケル(II)を加え撹拌し、50〜100℃で1〜10時間掛けて反応させ二量化する。このときトリフェニルホスフィンを併用することも好ましい。再結晶、濾過および洗浄を繰り返しビフェニルテトラカルボン酸メチルエステル(BPTM)を採取する。
【0055】
BPTMをキシレンまたは無水酢酸などの溶媒中で、110〜140℃に加熱して脱水反応させ、冷却すると3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)が得られる。これを無水酢酸中に溶解させ、活性炭、濾過助剤または吸着材を加え金属イオン分を除去する。
冷却後濾過洗浄し再結晶後得られた粉体を粉砕後乾燥させる。
各工程後再結晶および洗浄が繰り返されるが、これらの再結晶溶媒または洗浄溶媒の金属イオンも1ppm未満が好ましい。
【0056】
得られたBPDAの金属含有量が1ppmを超えると、ポリアミド酸の製造は、その溶液のポリアミド酸濃度と溶液の粘度とでその終了点を決定される。最高到達粘度は300Pa・secを超えて重合させる。終了点の溶液の粘度を精度良く決定するためには、最後に供給する成分の一部を、反応に使用する有機溶剤の溶液として添加することは有効であるが、ポリアミド酸濃度をあまり低下させないような調節が必要である。
【0057】
溶液中のポリアミド酸濃度は、5ないし40重量%、好ましくは10ないし30重量%である。
【0058】
得られたポリアミック酸はワニスコーティング剤、フィルム用、成型用として好適である。
【0059】
【実施例】
以下、実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。なお各フィルム特性値は、下記の方法で測定したものである。
【0060】
また、下記の実施例中で、略号DMAcはジメチルアセトアミドを、PMDAはピロメリット酸二無水物を、44’ODAは4,4’−オキシジアニリンを、また、33’44’BPDAは3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を示す略記である。
(1)破断強度および破断伸度
破断強度は、JISK7113に準じて、室温でORIENREC社製のテンシロン型引張試験器により、引張速度300mm/分にて得られる張力−歪み曲線において、試料が破断するときの強度を取った。破断伸度は試料が破断するときの伸度を取った。
(2)製膜性
室温での破断伸度で評価する。
【0061】
◎;極めて良好 破断伸度が70%以上
○;良好 破断伸度が50%以上70%未満
△;実用上問題であるレベル 破断伸度が30%以上50%未満
×;製膜困難 破断伸度が30%未満
(3)原料、ポリアミド酸、およびフィルム中の各金属イオン量および全金属イオン量
原子吸光法でナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウム、カルシウム、マグネシウム、亜鉛および白金含有量をそれぞれ測定し金属イオン量とする。それぞれの測定下限は0.5ppm、0.1ppm、0.5ppm、0.5ppm、0.05ppm、0.1ppm、0.1ppmおよび0.5ppmであった。
【0062】
その内、ナトリウム、カリウム、ニッケル、パラジウムおよび白金含有量の合計を全金属イオン量とした。測定下限の場合は加算しなかった。
(4)耐熱性
フィルムを沸騰水に200時間浸浸し、室温で水を拭き取った後、室温で破断強度および破断伸度を測定する。
【0063】
○;良好 破断強度が150MPa以上かつ破断伸度が30%以上
△;実用上問題である 破断伸度が150MPa未満または破断伸度が30%未満
×;悪い 破断伸度が150MPa未満かつ破断伸度が30%未満
(5)ポリアミド酸の最高到達粘度
DCスターラーを備えた1000mlセパラブルフラスコ中に、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル40.048gおよびN,N’−ジメチルアセトアミド386.94gを入れ、窒素雰囲気下にて0℃で攪拌した。
【0064】
次に、30分から1時間後にかけて得られたBPDA56.688gを数回に分けて投入し1時間撹拌し、ジアミンおよび酸二無水物のモル比1/0.97のジアミン過剰のポリアミド酸重合溶液を得た。
【0065】
その後、ピロメリット酸二無水物のN,N’−ジメチルアセトアミド溶液(6重量%)を滴下し撹拌を続け反応を進行させ、ポリアミド酸重合溶液の粘度上昇を回転粘度計にて測定した。粘度計はビスメトロン(単一円筒型回転粘度計、型式VS−A1、芝浦システム株式会社製)を用いた。
【0066】
ジアミン過剰のポリアミド酸重合溶液に酸二無水物を添加し続けると、ジアミンおよび酸二無水物の等量モル付近で最高粘度に到達し、その後酸二無水物過剰領域で粘度が再び低下する。
【0067】
[実施例]
参考例1
定法に従い、4クロロフタル酸メチルエステル2200g、トリフェニルホスフィン50gおよび塩化ニッケル20gをピリジン1800g中に溶かし、この溶液に微粉末状亜鉛400gを入れ80℃で、5時間反応させ二量化させた。さらに80℃で5時間放置した後キシレン3000gを滴下し希釈した。添加完結後、混合物を濾過して塩化亜鉛・亜鉛ピリジン溶液を除去した。
【0068】
ついで濾液を水2000gで希釈した濃塩酸500gへ添加し酸洗浄した。水洗を繰り返した後、メタノール(3000g)溶液中で再結晶を行った。析出した白色粉末を窒素パージを行いながら真空下100〜110℃で一昼夜乾燥し粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチル(BPTM)を得た。収率は60%であった。
【0069】
[実施例1]
参考例1で得た200gの粗BPTMをキシレン500g、酢酸50g、パラトルエンスルホン酸10gを加え110〜140℃で加熱溶解後5℃まで冷却し粉体を析出させた。析出物を濾取し、キシレン(100g)で洗浄後粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)を得た。
【0070】
80gの粗BPDA(Aと表記)を無水酢酸に溶解させ活性炭(クラレコール、GLC)20gを添加し120℃で熱濾過した。濾過助剤は活性白土(ガレオンアースR、水沢化学工業社製)で予めケークを作り用いた。
【0071】
濾液を冷却し結晶を析出させ濾過後、窒素パージを行いながら真空下100〜110℃で一昼夜乾燥し精製BPDA(Bと表記)を得た。
【0072】
得られた精製BPDAはガスクロ純度は99.999%以上であった。液体クロマトグラフ全面積での純度分析では、BPDAが99.8%であった。
【0073】
原子吸光法での金属分析では、ナトリウム0.5ppm以下、カリウム0.2ppm、ニッケル0.5ppm以下、亜鉛0.1ppm以下、カルシウム0.1ppm、マグネシウム0.1ppm以下であった。
【0074】
フィルムの調整
500ccのガラス製フラスコに、DMAc393.96gを入れ、44’ODA(和歌山精化社製、40.048g)および精製BPDA(B)58.441gを順次供給し、窒素雰囲気下0℃で、約1時間攪拌する。最終的にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0075】
このポリアミド酸溶液30gを、12.7mlのDMAc、3.6mlの無水酢酸及び3.6mlのβ−ピコリンと混合した混合溶液を調製し、この混合溶液をガラス板上にキャストした後、150℃に加熱したホットプレート上で約4分間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0076】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の固定枠に固定し、250℃から330℃に昇温しながら30分間、その後400℃で約5分間加熱し、厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0077】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0078】
[比較例1]
実施例1で得られた粗3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(A)を窒素パージを行いながら真空下100〜110℃で一昼夜乾燥した。
【0079】
得られたBPDAはガスクロ純度は98%であった。液体クロマトグラフ全面積での純度分析では、BPDAが98%であった。
【0080】
原子吸光法での金属分析では、ナトリウム2.22ppm、カリウム1.2ppm、ニッケル0.5ppm、亜鉛1.1ppm、カルシウム0.1ppm、マグネシウム0.1ppm以下であった。
【0081】
フィルムの調整
500ccのガラス製フラスコに、DMAc393.96gを入れ、44’ODA(和歌山精化社製、40.048g)および精製BPDA(B)58.441gを順次供給し、窒素雰囲気下0℃で、約1時間攪拌する。最終的にテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分が約100モル%化学量論からなるポリアミド酸濃度20重量%の溶液を調製した。
【0082】
このポリアミド酸溶液30gを、12.7mlのDMAc、3.6mlの無水酢酸及び3.6mlのβ−ピコリンと混合した混合溶液を調製し、この混合溶液をガラス板上にキャストした後、150℃に加熱したホットプレート上で約4分間加熱して、自己支持性のポリアミド酸−ポリイミドゲルフィルムを形成し、これをガラス板から剥離した。
【0083】
このゲルフィルムを、多数のピンを備えた金属製の固定枠に固定し、250℃から330℃に昇温しながら30分間、その後400℃で約5分間加熱し、厚さ約25μmのポリイミドフィルムを得た。
【0084】
得られたポリイミドフィルムの特性値評価結果を表1に示した。
【0085】
【表1】
【0086】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の製造方法で得られた、または金属含有量の小さいBPDAは、重合性が良好で、得られたポリイミドフィルムの伸度が良好である。更に得られるフィルム成型品を可撓性の印刷回路,CSP,COF、BGAまたはTABテープ用の金属配線板基材に適用した場合に、優れた取り扱い性および耐熱性を有するものである。
Claims (5)
- 粗ビフェニルテトラカルボン酸テトラメチルを加水分解、脱水し、溶媒中で吸着剤を加え濾過後、再結晶することからなるビフェニルテトラカルボン酸無水物の精製方法
- ビフェニルテトラカルボン酸二無水物が3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物であることを特徴とするビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法およびその精製物
- 再結晶に用いる溶媒が、無水酢酸であることを特徴とする請求項2に記載の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法。
- 吸着剤が活性炭であることであることて特徴とする請求項1〜3に記載の3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物の精製方法。
- アルカリ金属含有量が1ppm以下であることを特徴とする3,3’、4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸無水物。
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