JP2004195103A - 口腔用移植片 - Google Patents
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Abstract
【課題】取り扱い性がよく、口腔内の欠損部に移植した場合に、移植部位の安静状態を長期間維持することが可能であり、また、外部からの刺激による痛みを緩和することを提供する。
【解決手段】口腔用移植片10は、線維芽細胞及び/又は担体を含む真皮層12と、シート材からなる支持体16と、上皮細胞を含む上皮層20とを積層している。このとき、支持体16には、真皮層12から全周にわたって突出した延長部14が設けられている。口腔用移植片10を口腔内の欠損部に移植する際は、延長部14の貫通孔に縫合糸を通して、欠損部周囲の正常部位に固定する。
【選択図】 図1
【解決手段】口腔用移植片10は、線維芽細胞及び/又は担体を含む真皮層12と、シート材からなる支持体16と、上皮細胞を含む上皮層20とを積層している。このとき、支持体16には、真皮層12から全周にわたって突出した延長部14が設けられている。口腔用移植片10を口腔内の欠損部に移植する際は、延長部14の貫通孔に縫合糸を通して、欠損部周囲の正常部位に固定する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔用移植片に関し、特に、口腔内に形成された口腔粘膜欠損部への移植に適した口腔用移植片に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、培養技術の発展にともなって、培養皮膚、培養軟骨などの移植物が開発され、臨床にも利用されている。殊に、培養皮膚の歴史は古く、1970年代後半にGreen 及び Rheinwaldによって表皮細胞(Keratinocyte)を培養してシート化する技術が確立された。そのような培養シートは、O'Connorらによって火傷患者に、Leighらによって潰瘍患者に対して適用された。また、Bellらによって水和コラーゲン格子に線維芽細胞を保持及び培養した培養真皮と、この培養真皮上で表皮細胞を培養した複合型の培養皮膚が案出された(特許文献1及び非特許文献1参照)。その後、特許文献2などの種々の培養皮膚が案出されている。
【0003】
しかしながら、これらの培養皮膚は、患者外部に露出している皮膚を治療対象としたものであって、口腔内の欠損部に対してまで配慮されたものではない。外部皮膚を対象とした治療では、培養皮膚を適用した後、ドレッシング材などにより被覆することで施術部位を比較的安静にすることができるが、口腔欠損部の治療においては、食事の際の食べ物や舌などが治療部位に接触するなど、治療後においても長時間安静な状態で維持することが困難である。特許文献3には、口腔内の組織由来の培養上皮シートが開示されているが、上皮細胞のみで構成されているので脆弱であり、取り扱いが困難であるとともに、深部に至る欠損には適していない。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−23191号公報
【特許文献2】
特許第2655269号公報
【特許文献3】
特許第3043727号公報
【非特許文献1】
Bell E. Ehrlich H P. Buttle D J. Nakatsuji T., "Science", (United States of America), 1981, 211, 4486, p.1052-1054
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、取り扱い性がよく、口腔欠損部に移植した場合に、移植部位の安静状態を長期間維持することが可能な口腔用移植片を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、線維芽細胞及び/又は担体を含む真皮層と、該真皮層の周縁部よりも外方へ延長した延長部を有する支持体と、上皮細胞を含む上皮層と、を積層したことを特徴とする口腔用移植片を提供するものである。
本発明の前記上皮層は、前記真皮層と前記支持体との接触面と少なくとも同等の面積を有することを特徴としている。
本発明の前記延長部は、少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴としている。
本発明の前記貫通孔は、縫合糸が通過可能な大きさを有していることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の実施の形態に係る口腔用移植片10の断面が示されている。この口腔用移植片10は、移植物として口腔欠損部へ移植されるものである。
口腔用移植片10は、線維芽細胞を含む真皮層12と、延長部14を有する支持体16と、上皮細胞を含む上皮層20とをこの順で備えている。これらの真皮層12、支持体16及び上皮層20は、それぞれがほぼ相似形であることが好ましく、同心状に積層されている。これにより、真皮層12から突出した支持体16の周縁部に一様な幅(長さ)の延長部14を設けることができる。
【0008】
真皮層12は、線維芽細胞とこれを保持する担体(Scaffold)とから構成されている。
真皮層12は、口腔欠損部の形状に応じた大きさ及び形状をとり、欠損部内をほぼ埋めるように配置可能となっている。厚みは、欠損部の深さに応じて変更可能であるが、良好な取り扱い性が得られるためには、1〜3mm程度であることが好ましい。
【0009】
線維芽細胞は、適当な生体組織、例えば、粘膜下組織、皮膚真皮組織などから既知の採取方法によって採取された細胞を使用することができる。採取された細胞をそのまま使用することもできるが、適当な培地で所定期間培養して増殖させた後に使用することもできる。このような線維芽細胞は、担体中にほぼ均一な密度で配置されていることが好ましい。
【0010】
担体は、スポンジ状、ゲル状、フェルト状、不織布、織物など種々の形態のものが利用できる。担体の材料は、生体に移植するために適した組成のものであれば使用することができるが、生体吸収性材料であることが好ましい。例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール重合体、絹フィブロイン、及びポリロタキサンなどから選択的に決定することができ、単独で使用するだけでなく、複数の材料を混合したり、積層させたりしてもよい。
【0011】
真皮層12上には、支持体16が配置されている。支持体16は、真皮層12の周縁部よりも外方へ延長し、口腔用移植片10を欠損部周辺に固定する際の縫合部として使用される延長部14を有している。延長部14は、真皮層12の周縁部よりも突出しており、口腔用移植片10を欠損部に移植した際に、欠損部周辺の正常部位上に位置する。このように延長部14が正常部位上にあることによって、口腔用移植片10に食物や舌があたって荷重が掛かったとしても、そのほとんどが正常部位で受け止められることになるので、欠損部(移植部位)に直接荷重が掛かることが抑制され、患者への痛みを軽減することができる。
【0012】
支持体16は、多数の貫通孔を有するシート材であって、適用する欠損部周辺の形状に応じた形に形成されている。この支持体16は、変化可能に柔軟性を有しているものであることが好ましい。
支持体16の材料は、生体に移植するために適した組成のものであれば使用することができるが、生体吸収性材料であることが好ましい。例えば、ポリ乳酸グリコール重合体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリロタキサンなどから選択的に決定することができる。また、支持体16の生体への吸収時間と、真皮層12が適用される欠損部の治癒時間とがほぼ等しいものがなお好ましい。
【0013】
このような支持体16としては、支持体16のうち延長部14に相当する部分は、少なくとも1つの貫通孔を有し、例えば、図2に示されるような適度な強度を有するメッシュ状シート材が挙げられる。支持体16には、全面に略矩形状の貫通孔18が設けられている。この貫通孔18は、口腔用移植片10を口腔内で固定する際の固定部材を通す孔として機能することができる。貫通孔18の大きさは、支持体16としての強度を保つと共に、固定部材を通すことが可能であれば如何なる大きさであってもよいが、好ましくは孔径100〜400μmである。また、貫通孔18の形状は、円孔などであってもよい。口腔用移植片10を欠損部に固定する際には、貫通孔18のうち延長部14に相当する部分の貫通孔18に、固定部材を通して縫合すればよい。
固定部材としては、通常の口腔用の、縫合糸、縫合針などが挙げられるが、例えば3−0、4−0のサイズの縫合糸が好ましい。
このように支持体16は、適度な強度を有しており且つ貫通孔18を縫合糸を通す孔として利用することができるので、口腔用移植片10を固定する際、延長部14を容易且つ確実に固定することができると共に、固定後であっても口腔用移植片10が破れたりすることがない。
【0014】
支持体16の厚さは、適度な強度が保たれる厚さであればよく、好ましくは移植後の口腔内において、違和感が生じない又は少ない程度の厚さであることが望まれる。
【0015】
支持体16上には、真皮層12と支持体16との接触面と少なくとも同等の面積及び形状の上皮層20が配置されている。なお、上皮層20は支持体16の延長部14上にまで形成されていることが好ましい。この方が、移植後の口腔内における違和感が少ない。上皮層20は、上皮細胞の層で構成されている。
上皮細胞は、適当な生体組織、例えば、粘膜上皮組織などから既知の採取方法によって採取された細胞を使用することができる。採取された細胞をそのまま使用することもできるが、適当な培地で所定期間培養して増殖させた後に使用することもできる。
【0016】
また、上皮層20は、担体と、その担体に保持された状態の上皮細胞層と、で構成されていてもよい。この場合には、担体上に形成された上皮細胞層が好ましい。担体は、上述の真皮層12を構成する担体と同様の形態のものであってよい。例えば、スポンジ状、ゲル状、フェルト状、不織布、織物など種々の形態のものが利用できる。また、担体の材料は、上述の真皮層12を構成する担体と同様の材料のものであってよく、生体吸収性材料であることが好ましい。例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール重合体、絹フィブロイン、及びポリロタキサンなどから選択的に決定することができる。
【0017】
上皮層20の厚さは、移植後の口腔内において、違和感が生じない又は少ない程度の厚さであることが好ましい。また、上皮層20を構成する上皮細胞層は、単層であってもよいし、重層化させて複数層としてもよい。これにより、上皮層20は、上皮細胞層によるバリア効果を得ることができると共に、上皮細胞層から産生されるサイトカイン(産生基質)による組織再生の促進が期待される。
【0018】
次に、口腔用移植片10の作製方法について説明する(図4参照)。
口腔用移植片10は、真皮層12を形成する真皮層形成工程と、上皮層20を形成する上皮層形成工程と、真皮層12、支持体16及び上皮層20を積層状態に結合させる結合工程と、を含む工程により作製される。
なお、結合工程は、真皮層形成工程及び上皮層形成工程において真皮層12及び上皮層20を形成した後に、各層を支持体16と共に積層して結合してもよいが、真皮層12及び/又は上皮層20を細胞及び担体で構成させる場合には、真皮層形成工程及び/又は上皮層形成工程の一部として、支持体16と、真皮層12及び/又は上皮層20とを結合させてもよい。
本実施の形態では、担体としてゲル化可能なコラーゲンを使用し、結合工程を上皮層形成工程の一部として口腔用移植片10を製造する方法について説明する。
【0019】
真皮層形成工程では、担体に線維芽細胞を播種し、線維芽細胞を担体に保持させた状態で培養して真皮層12を形成する。これにより、線維芽細胞が増殖すると共に、線維芽細胞が産生するサイトカインが担体に確実に保持され、移植後における組織再生の促進が期待できる。
【0020】
播種する線維芽細胞の細胞数は、採取した細胞数、予定される培養期間、担体の種類や大きさ、培地組成等によって異なるが、1×103個/ml〜1×108個/ml程度であることが好ましい。
また、線維芽細胞の培養に使用される培地は、当業界で既知の如何なる培地からも選択することができる。例えば、ウシ胎児血清(FBS)を含有したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などが挙げられる。培養容器は、組織培養に通常用いられるものをそのまま使用することができる。
【0021】
線維芽細胞が播種された担体を培養容器に入れ、線維芽細胞の通常の培養に用いられる条件下で所定時間培養することにより、真皮層12を形成する。ここで所定時間は、培養条件及び細胞の状態等によって異なるが、一般に数日から数週間である。培養は、所望する構成の真皮層12が形成されるまで行い、必要に応じて適宜培地交換を行う。真皮層形成工程の終了は、例えば、細胞数、サイトカイン量、強度、大きさ等に基づいて判断することが好ましい。
例えば、コラーゲンゲル内に線維芽細胞を包埋する場合には、培養することによってコラーゲンゲルが収縮するので、ゲル体積を溶液の1/20〜1/200程度まで収縮させると、真皮層12に適度な強度が寄与され、良好な取り扱い性を得ることができる。
【0022】
なお、播種時に充分な細胞数が得られている場合には、上述の培養工程を省略し、播種した線維芽細胞が担体に確実に保持(接着)された時点で真皮層形成工程の終了としてもよい。
【0023】
次の上皮層形成工程には、ゲル化可能なコラーゲンを上皮層20の担体として使用する場合、真皮層12の上に支持体16を配置した後、上皮層20を構成する担体を用いて、真皮層12、支持体16及び上皮層20を結合することが含まれる。
このとき支持体16は、延長部14が真皮層12の外側に同様の幅(長さ)で形成されるように、真皮層12上に載置する。その後、ゲル化可能なコラーゲン溶液を支持体16の上から流し入れる。その際、液面が支持体16よりも高くなる量のコラーゲン溶液を流し入れると、ゲル化したコラーゲンによって支持体16が覆われた状態で、真皮層12と支持体16とを結合させることができる。
【0024】
コラーゲン溶液を結合に使用する場合には、その範囲を画定する囲み部材を使用することが好ましい。囲み部材には、例えばガラスリングなどを挙げることができ、コラーゲン溶液がその中に流し込まれる。
【0025】
このように、真皮層12と支持体16とを確実に結合することによって、真皮層12のみの場合よりも、口腔用移植片10の強度を確保することができるので、口腔用移植片10の取り扱い性を高めることができる。また、真皮層12及び支持体16の上方からの投影形状を相似形とし、同心状に配置して結合することにより、支持体16の全周にわたり均等な幅の延長部14が形成される。
【0026】
また、この上皮層形成工程には、支持体16上または支持体16上に配置した担体上に上皮細胞を播種して培養することによって、上皮層20を形成することが含まれる。
上皮細胞は、1×103個/cm2〜1×108個/cm2の播種密度であることが好ましい。
また、上皮細胞の培養に使用される培地は、通常、上皮細胞を成育させるために用いられる既知の如何なるものでもよいが、例えば、ケラチノサイト増殖用培地(KGM)やFBS含有DMEMなどが好ましい。
【0027】
培養は、最初に上皮細胞の懸濁液を支持体16上または支持体16上に配置した担体上に播種することにより行なわれる。その後、所定の培養条件で培養することにより、上皮細胞が支持体16上または担体上で増殖し、上皮細胞層が形成される。上皮細胞の培養は、通常の培養条件下で行うことができ、上皮細胞が重層化するまで行うことが好ましい。
この培養工程では、上皮細胞懸濁液の播種前に、予めフィーダ細胞を支持体16上または担体上に敷設しておいてもよい。フィーダ細胞としては、当分野で既知のもの、例えば、不活化したマウス線維芽細胞等を利用することができる。
【0028】
また、上述のフィーダ細胞を使用せず、KGM等の無血清培地で培養工程を行う際には、カルシウム(Ca)濃度を高濃度で含む培地に切り換えた後、気相リフト(気液界面培養)を行うことで上皮細胞を充分に重層化することができる。
なお、上皮細胞は単層であってもよいが、重層化させることが好ましい。重層化によって生体の上皮組織に近い上皮細胞層が形成される。さらには、細胞数が多くなるので、産生されるサイトカインが増加し、創傷治癒を促進することが期待される。
【0029】
これにより、真皮層12、支持体16及び上皮層20がこの順に積層され、延長部14が全周にわたり突出して設けられた口腔用移植片10が作製される。
【0030】
なお、真皮層12を構成する担体を用いて支持体16と真皮層12とを結合させる場合には、予め担体に線維芽細胞を包埋させて真皮層12の一部を形成した後に、支持体16を載置し、その後、線維芽細胞を包埋する担体を支持体16の上から流し込んで、支持体16と真皮層12とを結合させる。この場合には、真皮層12と支持体16とを一体化させることができる。
また、真皮層12上への担体の流し込みの量(厚み)を調整することによって、上皮層20の担体としての作用も兼ねることができる。この場合には、その後に支持体16上の担体に上皮細胞を配置して培養することにより、上皮層20も構成することができる。上述のように担体を連続させて設けてもよく、連続させずに分離させた状態で形成させてもよい。
このように担体を各層で利用することにより、工程を省略して短期間で口腔用移植片10を作製することができる。
【0031】
また、真皮層12、支持体16及び上皮層20の結合を、各種の接着部材を用いて行ってもよい。後述の担体のみで形成した真皮層12を支持体16に結合する場合も同様に、接着部材を用いて担体と支持体16とを結合させてもよい。このような用途に用いられる接着部材としては、ゼラチンやフィブリンのり等が挙げられる。この場合には、各層をそれぞれ作製後に結合することができ、上皮層20及び真皮層12を形成するための細胞培養を同時に行うことができるので、口腔用移植片10の作製期間を短縮することができる。
【0032】
作製された口腔用移植片10は、口腔内、殊に口腔歯肉に形成された欠損部に、当分野において既知の方法により移植される。また、口腔用移植片10は、複数の細胞からなる組織構造を再構築した三次元再構成培養物であるので、そのまま移植片として直接的に欠損部に移植することができる。さらに、口腔用移植片10は、適度な強度を有しているので、取り扱い性に優れている。
【0033】
口腔用移植片10を欠損部に移植する際には、真皮層12を欠損部の内部に配置させ接触させる。このとき延長部14は、欠損部周辺の正常部位上に配置される。このため、口腔用移植片10を移植する際には、延長部14に設けられた貫通孔に例えば縫合糸を通せばよく、容易かつ確実に取り付けることができる。またこのとき口腔用移植片10は適度な強度を有しているので、移植部位を保護することができる。
【0034】
また、口腔用移植片10全体が延長部14で正常部位に固定されるため、長期間にわたって移植部位の安静状態を維持することができると共に、口腔用移植片10全体の荷重を正常部位で受けることができる。これにより、口腔用移植片10全体の荷重を分散させて欠損部への負担を軽くし、外部刺激による欠損部の痛みを緩和させることができる。
さらに、口腔用移植片10を移植した際に、配置した真皮層12と正常部位との間に形成される隙間を延長部14が覆うことになるので、欠損部への異物の混入を防止することができると共に、長期間にわたって移植部位の安静状態を維持することができる。
【0035】
本発明の実施の形態では、移植の際に延長部14を縫合糸などで固定する構成となっているが、これに限定されない。例えば、口腔用移植片10の延長部14には、固定部材、例えば縫合糸を予め設けていてもよい。この場合には、延長部14の少なくとも1カ所に固定部材を取り付け可能であればよく、欠損部及び口腔用移植片10の形状に応じて、固定部材の数及び固定場所を適宜選択することができる。固定部材は、延長部14の貫通孔に貫通させて固定させたものであってもよく、或いは支持体16の一部として形成されたものであってもよい。
この場合の固定部材は、通常、固定に用いられる手術用の固定部材であればよく、例えば縫合糸、縫合針、接着剤などを挙げることができる。
このように延長部14に予め固定部材を設けた場合には、口腔用移植片10を欠損部に移植する際、固定部材を別途取り付ける必要性を排除することができる。
【0036】
なお、延長部14は全周にわたって均一な幅(長さ)で設けなくてもよく、欠損部の周囲の形状、大きさに応じて延長部14の幅を変更してもよい。また、厚さについても同様である。
【0037】
一方、支持体16の貫通孔18は、均一な大きさ及び密度で配置される必要はなく、適用条件に応じて種々の形態のものを利用することができる。例えば、不定形の孔が設けられたスポンジ状のシート材であってもよい。
【0038】
例えば、図3には、支持体16の変形例として、貫通孔の大きさ及びパターンが異なる複数の領域を有する支持体36が示されている。支持体36は、真皮層12上に位置する中央の領域36aと、延長部14の内周側に相当する領域36bと、延長部14の外周側に相当する領域36cとで構成されている。
【0039】
領域36aには、格子状の比較的大きな貫通孔38が均一に設けられている。この貫通孔38の大きさは、真皮層12と上皮層20を構成する担体を用いて結合させるのに必要な連続する面積があればよく、好ましくは約孔径100μm〜1mmの範囲である。これにより、前述のコラーゲン溶液による結合方法を適用した場合に、支持体36と、真皮層12及び/又は上皮層20との接触面積が増加するので、各層間の結合を充分に確保することができる。なお、接着因子等で真皮層12と支持体36とを接着させる場合には、貫通孔38を設けなくともよい。
【0040】
領域36bには、全面に多数の小孔(ピンホール)40が設けられている。この小孔40の大きさは、異物が侵入しない程度の大きさであればよく、好ましくは約孔径10〜500μmの範囲である。この領域36bは、欠損部と正常部位との間に配置されるため、欠損部の隙間に異物が侵入することを防止できる。また、口腔内の唾液が小孔40を通過するので、移植部位の湿潤環境が維持され、理想的な治癒環境を持続することができる。
【0041】
領域36cには、支持体36の周縁に沿って略等間隔に貫通孔42が設けられている。この貫通孔42は、固定部材を通す孔として使用する。貫通孔42の大きさは、固定部材を通すことが可能な大きさであればよく、好ましくは孔径100〜400μm程度である。この領域36cは、正常部位上に配置されるため、貫通孔42に固定部材を通すことにより、正常部位に固定することができる。このように、貫通孔42が設けられているので、口腔用移植片10を正常部位に容易かつ確実に固定することができる。
【0042】
本発明の実施の形態では、真皮層12を担体と線維芽細胞とによって構成させているが、担体のみで真皮層12を構成してもよい。この場合に使用する担体は、好ましくは多孔質体(スポンジ)で形成されたもの、不織布や織物を積層して厚みを持たせたもの等である。このような担体のみの真皮層12は、欠損部周辺組織と接触することにより、移植後にこの周辺組織からの細胞の遊走を促す。これにより、細胞が担体内に定着し、創傷治癒が行われる。
【0043】
本発明の実施の形態の口腔用移植片10では、延長部14は、真皮層12と上皮層20の間に介在している支持体16の一部として形成されているが、これに限定されない。例えば、上皮層20を支持体16と同一の面積及び形状として、支持体16及び上皮層20の2層によって延長部14を形成してもよい。これにより、延長部14上にも上皮層20が設けられるので、上皮細胞層によるバリア効果が期待でき、真皮層12と欠損部との隙間への異物混入を確実に防止できると共に、長期にわたって安静状態にすることができる。
また、支持体16の延長部14に予め貫通孔を設けることなく、上皮層20を支持体16の全面上で形成した後に、上皮層20及び支持体16の延長部14の双方を貫通する貫通孔を設けてもよい。これによれば、支持体16上で容易かつ安定的に上皮層20を形成することができるとともに、移植部位の湿潤環境を維持するための貫通孔を容易に設けることができる。
【0044】
【実施例】
以下に、本発明について一実施例を挙げて説明するが、これらに何ら限定されるものではない(図4参照)。
【0045】
<細胞の準備>
患者又はドナーの口腔から正常な粘膜組織及び粘膜下組織(上皮細胞及び線維芽細胞が含まれる)を採取し、ディスパーゼ処理によって上皮組織と真皮組織とに分離した。具体的には、1000PU/mlのディスパーゼ(登録商標)(合同酒精株式会社製)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に4℃で16時間浸漬することで分離した。
【0046】
分離した上皮組織をトリプシン処理することによって細胞を分散し、上皮細胞を細胞懸濁液の状態で得た。具体的には、0.25%トリプシン溶液に室温で30分間浸漬した後、トリプシンインヒビターで洗浄することにより酵素活性を停止させた。その後、10%FBS含有DMEMで30分間攪拌した後、50μmのナイロンガーゼでデブリスをろ過して、上皮細胞を単離した。単離した上皮細胞を1500rpmで5分間遠心分離した後、分離した細胞ペレットを0.03mM Ca2+含有ケラチノサイト増殖用培地(KGM)(クラボウ社製)に懸濁することで上皮細胞懸濁液を得た。
【0047】
一方、分離した真皮組織をコラゲナーゼ処理することによって細胞を分散し、線維芽細胞を細胞懸濁液の状態で得た。具体的には、0.5%コラゲナーゼ溶液に室温で3時間浸漬することにより真皮組織を構成するコラーゲンを溶解し、線維芽細胞を単離した。単離した線維芽細胞を1500rpmで5分間遠心分離した後、分離した細胞ペレットを10%FBS含有DMEMで懸濁することで線維芽細胞懸濁液を得た。
【0048】
<真皮層形成工程>
0.3%コラーゲン溶液10mlと、線維芽細胞懸濁液 5ml(線維芽細胞数:3×106個)とを混合し、混合液を調製した。この混合液10mlを径60mmディッシュに滴下した。このときのコラーゲン溶液の深さは約3.5mmであった。
コラーゲン溶液を滴下した後、5%CO2、37℃に設定されたインキュベータ内で2時間静置し、ゲル化させた。ゲル化後、ディッシュ底面よりゲルを剥離し、培地として10%FBS含有DMEM 10mlをディッシュに加え、7日間培養した。培地交換は2日毎行った。
7日間培養後には、収縮した線維芽細胞含有コラーゲンゲルを得ることができた。この際の線維芽細胞含有コラーゲンゲルは、直径が約15mm、厚さが約2mm程度であった。
【0049】
<結合工程>
支持体としては、ポリ乳酸グリコール重合体(PLGA)で構成された柔軟性のあるメッシュ状のシート材(孔径200μm)を用意した。シート材は径25mmの円形状のものを準備した。
上述で形成した線維芽細胞含有コラーゲンゲルを径35mmディッシュの底面に配置し、支持体であるシート材をコラーゲンゲル上に載置した。この際、コラーゲンゲルの中心位置とシート材の中心位置が略同じになるように同心円状に載置させた。これにより、シート材の周縁がコラーゲンゲル周縁からほぼ均等に突出し、延長部が形成される。
【0050】
シート材を載置した後、内径15mm(線維芽細胞含有コラーゲンゲルの外径と略同じ)のガラスリングをその内径とコラーゲンゲル周縁部とが略一致するようにシート材上に載置した。ガラスリング内に0.3%コラーゲン溶液を0.5ml注入し、5%CO2、37℃の条件下でインキュベートすることでコラーゲン溶液をゲル化させた。このゲル化により、メッシュ状のシート材と線維芽細胞含有コラーゲンゲルとを、結合して一体化した。このメッシュ状のシート材上には、コラーゲンゲル層が形成された。コラーゲンゲル層形成後は、ガラスリングは取り除かれた。
【0051】
<上皮層形成工程>
得られたシート材結合コラーゲンゲルの外周に、内径25mm(シート材の外径と略同じ)のガラスリングを載置した。この際、ガラスリングは、シート材外周とガラスリング内周とが略接触する状態にしてディッシュ上に設置した。
ガラスリング設置後、予め調製した上皮細胞懸濁液を1×105個/cm2の播種密度となるように、シート材上及びシート材上に形成されたコラーゲンゲル層の上に播種した。1時間静置することで上皮細胞をシート材上及びコラーゲンゲル層上に接着させた後、0.03mM Ca2+含有KGMをガラスリング内に加え、3日間培養した。この間に上皮細胞は、シート材上及びコラーゲンゲル層上で増殖した。この時点で、単層の上皮細胞層を有する口腔用移植片が作製された。
重層化した上皮細胞層を有する口腔用移植片とするために、培地を1.8mMCa2+含有KGMに切り替え、引き続き3日間培養した後、気相リフト(気液界面培養)することで、上皮細胞に重層化を促した。気相リフトで約1週間培養することで、重層化させた上皮細胞層を有する口腔用移植片を得ることができた。なお、この間の培地交換は2日毎行った。
【0052】
このように作製された口腔用移植片は取扱い性が良好で欠損部に容易に移植でき、簡単に縫合固定することができる。また、固定後においては荷重が欠損部にかからないので痛みをなくすことができ、欠損部への異物の侵入を防止すると共に湿潤状態を維持することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、取り扱い性がよく、口腔内の欠損部に移植した場合に、移植部位の安静状態を長期間維持することが可能な口腔用移植片が提供される。また、欠損部が保護されることで、外部からの刺激による痛みを緩和することが可能な口腔用移植片が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る口腔用移植片の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る支持体の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る支持体の変形例の平面図である。
【図4】本発明の実施例に係る口腔用移植片の作製手順を説明する図である。
【符号の説明】
10 口腔用移植片
12 真皮層
14 延長部
16 支持体
18 貫通孔
20 上皮層
36 支持体
38 貫通孔
40 小孔
42 貫通孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、口腔用移植片に関し、特に、口腔内に形成された口腔粘膜欠損部への移植に適した口腔用移植片に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、培養技術の発展にともなって、培養皮膚、培養軟骨などの移植物が開発され、臨床にも利用されている。殊に、培養皮膚の歴史は古く、1970年代後半にGreen 及び Rheinwaldによって表皮細胞(Keratinocyte)を培養してシート化する技術が確立された。そのような培養シートは、O'Connorらによって火傷患者に、Leighらによって潰瘍患者に対して適用された。また、Bellらによって水和コラーゲン格子に線維芽細胞を保持及び培養した培養真皮と、この培養真皮上で表皮細胞を培養した複合型の培養皮膚が案出された(特許文献1及び非特許文献1参照)。その後、特許文献2などの種々の培養皮膚が案出されている。
【0003】
しかしながら、これらの培養皮膚は、患者外部に露出している皮膚を治療対象としたものであって、口腔内の欠損部に対してまで配慮されたものではない。外部皮膚を対象とした治療では、培養皮膚を適用した後、ドレッシング材などにより被覆することで施術部位を比較的安静にすることができるが、口腔欠損部の治療においては、食事の際の食べ物や舌などが治療部位に接触するなど、治療後においても長時間安静な状態で維持することが困難である。特許文献3には、口腔内の組織由来の培養上皮シートが開示されているが、上皮細胞のみで構成されているので脆弱であり、取り扱いが困難であるとともに、深部に至る欠損には適していない。
【0004】
【特許文献1】
特公平2−23191号公報
【特許文献2】
特許第2655269号公報
【特許文献3】
特許第3043727号公報
【非特許文献1】
Bell E. Ehrlich H P. Buttle D J. Nakatsuji T., "Science", (United States of America), 1981, 211, 4486, p.1052-1054
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、取り扱い性がよく、口腔欠損部に移植した場合に、移植部位の安静状態を長期間維持することが可能な口腔用移植片を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、線維芽細胞及び/又は担体を含む真皮層と、該真皮層の周縁部よりも外方へ延長した延長部を有する支持体と、上皮細胞を含む上皮層と、を積層したことを特徴とする口腔用移植片を提供するものである。
本発明の前記上皮層は、前記真皮層と前記支持体との接触面と少なくとも同等の面積を有することを特徴としている。
本発明の前記延長部は、少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴としている。
本発明の前記貫通孔は、縫合糸が通過可能な大きさを有していることを特徴としている。
【0007】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の実施の形態に係る口腔用移植片10の断面が示されている。この口腔用移植片10は、移植物として口腔欠損部へ移植されるものである。
口腔用移植片10は、線維芽細胞を含む真皮層12と、延長部14を有する支持体16と、上皮細胞を含む上皮層20とをこの順で備えている。これらの真皮層12、支持体16及び上皮層20は、それぞれがほぼ相似形であることが好ましく、同心状に積層されている。これにより、真皮層12から突出した支持体16の周縁部に一様な幅(長さ)の延長部14を設けることができる。
【0008】
真皮層12は、線維芽細胞とこれを保持する担体(Scaffold)とから構成されている。
真皮層12は、口腔欠損部の形状に応じた大きさ及び形状をとり、欠損部内をほぼ埋めるように配置可能となっている。厚みは、欠損部の深さに応じて変更可能であるが、良好な取り扱い性が得られるためには、1〜3mm程度であることが好ましい。
【0009】
線維芽細胞は、適当な生体組織、例えば、粘膜下組織、皮膚真皮組織などから既知の採取方法によって採取された細胞を使用することができる。採取された細胞をそのまま使用することもできるが、適当な培地で所定期間培養して増殖させた後に使用することもできる。このような線維芽細胞は、担体中にほぼ均一な密度で配置されていることが好ましい。
【0010】
担体は、スポンジ状、ゲル状、フェルト状、不織布、織物など種々の形態のものが利用できる。担体の材料は、生体に移植するために適した組成のものであれば使用することができるが、生体吸収性材料であることが好ましい。例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール重合体、絹フィブロイン、及びポリロタキサンなどから選択的に決定することができ、単独で使用するだけでなく、複数の材料を混合したり、積層させたりしてもよい。
【0011】
真皮層12上には、支持体16が配置されている。支持体16は、真皮層12の周縁部よりも外方へ延長し、口腔用移植片10を欠損部周辺に固定する際の縫合部として使用される延長部14を有している。延長部14は、真皮層12の周縁部よりも突出しており、口腔用移植片10を欠損部に移植した際に、欠損部周辺の正常部位上に位置する。このように延長部14が正常部位上にあることによって、口腔用移植片10に食物や舌があたって荷重が掛かったとしても、そのほとんどが正常部位で受け止められることになるので、欠損部(移植部位)に直接荷重が掛かることが抑制され、患者への痛みを軽減することができる。
【0012】
支持体16は、多数の貫通孔を有するシート材であって、適用する欠損部周辺の形状に応じた形に形成されている。この支持体16は、変化可能に柔軟性を有しているものであることが好ましい。
支持体16の材料は、生体に移植するために適した組成のものであれば使用することができるが、生体吸収性材料であることが好ましい。例えば、ポリ乳酸グリコール重合体、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、及びポリロタキサンなどから選択的に決定することができる。また、支持体16の生体への吸収時間と、真皮層12が適用される欠損部の治癒時間とがほぼ等しいものがなお好ましい。
【0013】
このような支持体16としては、支持体16のうち延長部14に相当する部分は、少なくとも1つの貫通孔を有し、例えば、図2に示されるような適度な強度を有するメッシュ状シート材が挙げられる。支持体16には、全面に略矩形状の貫通孔18が設けられている。この貫通孔18は、口腔用移植片10を口腔内で固定する際の固定部材を通す孔として機能することができる。貫通孔18の大きさは、支持体16としての強度を保つと共に、固定部材を通すことが可能であれば如何なる大きさであってもよいが、好ましくは孔径100〜400μmである。また、貫通孔18の形状は、円孔などであってもよい。口腔用移植片10を欠損部に固定する際には、貫通孔18のうち延長部14に相当する部分の貫通孔18に、固定部材を通して縫合すればよい。
固定部材としては、通常の口腔用の、縫合糸、縫合針などが挙げられるが、例えば3−0、4−0のサイズの縫合糸が好ましい。
このように支持体16は、適度な強度を有しており且つ貫通孔18を縫合糸を通す孔として利用することができるので、口腔用移植片10を固定する際、延長部14を容易且つ確実に固定することができると共に、固定後であっても口腔用移植片10が破れたりすることがない。
【0014】
支持体16の厚さは、適度な強度が保たれる厚さであればよく、好ましくは移植後の口腔内において、違和感が生じない又は少ない程度の厚さであることが望まれる。
【0015】
支持体16上には、真皮層12と支持体16との接触面と少なくとも同等の面積及び形状の上皮層20が配置されている。なお、上皮層20は支持体16の延長部14上にまで形成されていることが好ましい。この方が、移植後の口腔内における違和感が少ない。上皮層20は、上皮細胞の層で構成されている。
上皮細胞は、適当な生体組織、例えば、粘膜上皮組織などから既知の採取方法によって採取された細胞を使用することができる。採取された細胞をそのまま使用することもできるが、適当な培地で所定期間培養して増殖させた後に使用することもできる。
【0016】
また、上皮層20は、担体と、その担体に保持された状態の上皮細胞層と、で構成されていてもよい。この場合には、担体上に形成された上皮細胞層が好ましい。担体は、上述の真皮層12を構成する担体と同様の形態のものであってよい。例えば、スポンジ状、ゲル状、フェルト状、不織布、織物など種々の形態のものが利用できる。また、担体の材料は、上述の真皮層12を構成する担体と同様の材料のものであってよく、生体吸収性材料であることが好ましい。例えば、コラーゲン、ヒアルロン酸、フィブリン、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール重合体、絹フィブロイン、及びポリロタキサンなどから選択的に決定することができる。
【0017】
上皮層20の厚さは、移植後の口腔内において、違和感が生じない又は少ない程度の厚さであることが好ましい。また、上皮層20を構成する上皮細胞層は、単層であってもよいし、重層化させて複数層としてもよい。これにより、上皮層20は、上皮細胞層によるバリア効果を得ることができると共に、上皮細胞層から産生されるサイトカイン(産生基質)による組織再生の促進が期待される。
【0018】
次に、口腔用移植片10の作製方法について説明する(図4参照)。
口腔用移植片10は、真皮層12を形成する真皮層形成工程と、上皮層20を形成する上皮層形成工程と、真皮層12、支持体16及び上皮層20を積層状態に結合させる結合工程と、を含む工程により作製される。
なお、結合工程は、真皮層形成工程及び上皮層形成工程において真皮層12及び上皮層20を形成した後に、各層を支持体16と共に積層して結合してもよいが、真皮層12及び/又は上皮層20を細胞及び担体で構成させる場合には、真皮層形成工程及び/又は上皮層形成工程の一部として、支持体16と、真皮層12及び/又は上皮層20とを結合させてもよい。
本実施の形態では、担体としてゲル化可能なコラーゲンを使用し、結合工程を上皮層形成工程の一部として口腔用移植片10を製造する方法について説明する。
【0019】
真皮層形成工程では、担体に線維芽細胞を播種し、線維芽細胞を担体に保持させた状態で培養して真皮層12を形成する。これにより、線維芽細胞が増殖すると共に、線維芽細胞が産生するサイトカインが担体に確実に保持され、移植後における組織再生の促進が期待できる。
【0020】
播種する線維芽細胞の細胞数は、採取した細胞数、予定される培養期間、担体の種類や大きさ、培地組成等によって異なるが、1×103個/ml〜1×108個/ml程度であることが好ましい。
また、線維芽細胞の培養に使用される培地は、当業界で既知の如何なる培地からも選択することができる。例えば、ウシ胎児血清(FBS)を含有したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)などが挙げられる。培養容器は、組織培養に通常用いられるものをそのまま使用することができる。
【0021】
線維芽細胞が播種された担体を培養容器に入れ、線維芽細胞の通常の培養に用いられる条件下で所定時間培養することにより、真皮層12を形成する。ここで所定時間は、培養条件及び細胞の状態等によって異なるが、一般に数日から数週間である。培養は、所望する構成の真皮層12が形成されるまで行い、必要に応じて適宜培地交換を行う。真皮層形成工程の終了は、例えば、細胞数、サイトカイン量、強度、大きさ等に基づいて判断することが好ましい。
例えば、コラーゲンゲル内に線維芽細胞を包埋する場合には、培養することによってコラーゲンゲルが収縮するので、ゲル体積を溶液の1/20〜1/200程度まで収縮させると、真皮層12に適度な強度が寄与され、良好な取り扱い性を得ることができる。
【0022】
なお、播種時に充分な細胞数が得られている場合には、上述の培養工程を省略し、播種した線維芽細胞が担体に確実に保持(接着)された時点で真皮層形成工程の終了としてもよい。
【0023】
次の上皮層形成工程には、ゲル化可能なコラーゲンを上皮層20の担体として使用する場合、真皮層12の上に支持体16を配置した後、上皮層20を構成する担体を用いて、真皮層12、支持体16及び上皮層20を結合することが含まれる。
このとき支持体16は、延長部14が真皮層12の外側に同様の幅(長さ)で形成されるように、真皮層12上に載置する。その後、ゲル化可能なコラーゲン溶液を支持体16の上から流し入れる。その際、液面が支持体16よりも高くなる量のコラーゲン溶液を流し入れると、ゲル化したコラーゲンによって支持体16が覆われた状態で、真皮層12と支持体16とを結合させることができる。
【0024】
コラーゲン溶液を結合に使用する場合には、その範囲を画定する囲み部材を使用することが好ましい。囲み部材には、例えばガラスリングなどを挙げることができ、コラーゲン溶液がその中に流し込まれる。
【0025】
このように、真皮層12と支持体16とを確実に結合することによって、真皮層12のみの場合よりも、口腔用移植片10の強度を確保することができるので、口腔用移植片10の取り扱い性を高めることができる。また、真皮層12及び支持体16の上方からの投影形状を相似形とし、同心状に配置して結合することにより、支持体16の全周にわたり均等な幅の延長部14が形成される。
【0026】
また、この上皮層形成工程には、支持体16上または支持体16上に配置した担体上に上皮細胞を播種して培養することによって、上皮層20を形成することが含まれる。
上皮細胞は、1×103個/cm2〜1×108個/cm2の播種密度であることが好ましい。
また、上皮細胞の培養に使用される培地は、通常、上皮細胞を成育させるために用いられる既知の如何なるものでもよいが、例えば、ケラチノサイト増殖用培地(KGM)やFBS含有DMEMなどが好ましい。
【0027】
培養は、最初に上皮細胞の懸濁液を支持体16上または支持体16上に配置した担体上に播種することにより行なわれる。その後、所定の培養条件で培養することにより、上皮細胞が支持体16上または担体上で増殖し、上皮細胞層が形成される。上皮細胞の培養は、通常の培養条件下で行うことができ、上皮細胞が重層化するまで行うことが好ましい。
この培養工程では、上皮細胞懸濁液の播種前に、予めフィーダ細胞を支持体16上または担体上に敷設しておいてもよい。フィーダ細胞としては、当分野で既知のもの、例えば、不活化したマウス線維芽細胞等を利用することができる。
【0028】
また、上述のフィーダ細胞を使用せず、KGM等の無血清培地で培養工程を行う際には、カルシウム(Ca)濃度を高濃度で含む培地に切り換えた後、気相リフト(気液界面培養)を行うことで上皮細胞を充分に重層化することができる。
なお、上皮細胞は単層であってもよいが、重層化させることが好ましい。重層化によって生体の上皮組織に近い上皮細胞層が形成される。さらには、細胞数が多くなるので、産生されるサイトカインが増加し、創傷治癒を促進することが期待される。
【0029】
これにより、真皮層12、支持体16及び上皮層20がこの順に積層され、延長部14が全周にわたり突出して設けられた口腔用移植片10が作製される。
【0030】
なお、真皮層12を構成する担体を用いて支持体16と真皮層12とを結合させる場合には、予め担体に線維芽細胞を包埋させて真皮層12の一部を形成した後に、支持体16を載置し、その後、線維芽細胞を包埋する担体を支持体16の上から流し込んで、支持体16と真皮層12とを結合させる。この場合には、真皮層12と支持体16とを一体化させることができる。
また、真皮層12上への担体の流し込みの量(厚み)を調整することによって、上皮層20の担体としての作用も兼ねることができる。この場合には、その後に支持体16上の担体に上皮細胞を配置して培養することにより、上皮層20も構成することができる。上述のように担体を連続させて設けてもよく、連続させずに分離させた状態で形成させてもよい。
このように担体を各層で利用することにより、工程を省略して短期間で口腔用移植片10を作製することができる。
【0031】
また、真皮層12、支持体16及び上皮層20の結合を、各種の接着部材を用いて行ってもよい。後述の担体のみで形成した真皮層12を支持体16に結合する場合も同様に、接着部材を用いて担体と支持体16とを結合させてもよい。このような用途に用いられる接着部材としては、ゼラチンやフィブリンのり等が挙げられる。この場合には、各層をそれぞれ作製後に結合することができ、上皮層20及び真皮層12を形成するための細胞培養を同時に行うことができるので、口腔用移植片10の作製期間を短縮することができる。
【0032】
作製された口腔用移植片10は、口腔内、殊に口腔歯肉に形成された欠損部に、当分野において既知の方法により移植される。また、口腔用移植片10は、複数の細胞からなる組織構造を再構築した三次元再構成培養物であるので、そのまま移植片として直接的に欠損部に移植することができる。さらに、口腔用移植片10は、適度な強度を有しているので、取り扱い性に優れている。
【0033】
口腔用移植片10を欠損部に移植する際には、真皮層12を欠損部の内部に配置させ接触させる。このとき延長部14は、欠損部周辺の正常部位上に配置される。このため、口腔用移植片10を移植する際には、延長部14に設けられた貫通孔に例えば縫合糸を通せばよく、容易かつ確実に取り付けることができる。またこのとき口腔用移植片10は適度な強度を有しているので、移植部位を保護することができる。
【0034】
また、口腔用移植片10全体が延長部14で正常部位に固定されるため、長期間にわたって移植部位の安静状態を維持することができると共に、口腔用移植片10全体の荷重を正常部位で受けることができる。これにより、口腔用移植片10全体の荷重を分散させて欠損部への負担を軽くし、外部刺激による欠損部の痛みを緩和させることができる。
さらに、口腔用移植片10を移植した際に、配置した真皮層12と正常部位との間に形成される隙間を延長部14が覆うことになるので、欠損部への異物の混入を防止することができると共に、長期間にわたって移植部位の安静状態を維持することができる。
【0035】
本発明の実施の形態では、移植の際に延長部14を縫合糸などで固定する構成となっているが、これに限定されない。例えば、口腔用移植片10の延長部14には、固定部材、例えば縫合糸を予め設けていてもよい。この場合には、延長部14の少なくとも1カ所に固定部材を取り付け可能であればよく、欠損部及び口腔用移植片10の形状に応じて、固定部材の数及び固定場所を適宜選択することができる。固定部材は、延長部14の貫通孔に貫通させて固定させたものであってもよく、或いは支持体16の一部として形成されたものであってもよい。
この場合の固定部材は、通常、固定に用いられる手術用の固定部材であればよく、例えば縫合糸、縫合針、接着剤などを挙げることができる。
このように延長部14に予め固定部材を設けた場合には、口腔用移植片10を欠損部に移植する際、固定部材を別途取り付ける必要性を排除することができる。
【0036】
なお、延長部14は全周にわたって均一な幅(長さ)で設けなくてもよく、欠損部の周囲の形状、大きさに応じて延長部14の幅を変更してもよい。また、厚さについても同様である。
【0037】
一方、支持体16の貫通孔18は、均一な大きさ及び密度で配置される必要はなく、適用条件に応じて種々の形態のものを利用することができる。例えば、不定形の孔が設けられたスポンジ状のシート材であってもよい。
【0038】
例えば、図3には、支持体16の変形例として、貫通孔の大きさ及びパターンが異なる複数の領域を有する支持体36が示されている。支持体36は、真皮層12上に位置する中央の領域36aと、延長部14の内周側に相当する領域36bと、延長部14の外周側に相当する領域36cとで構成されている。
【0039】
領域36aには、格子状の比較的大きな貫通孔38が均一に設けられている。この貫通孔38の大きさは、真皮層12と上皮層20を構成する担体を用いて結合させるのに必要な連続する面積があればよく、好ましくは約孔径100μm〜1mmの範囲である。これにより、前述のコラーゲン溶液による結合方法を適用した場合に、支持体36と、真皮層12及び/又は上皮層20との接触面積が増加するので、各層間の結合を充分に確保することができる。なお、接着因子等で真皮層12と支持体36とを接着させる場合には、貫通孔38を設けなくともよい。
【0040】
領域36bには、全面に多数の小孔(ピンホール)40が設けられている。この小孔40の大きさは、異物が侵入しない程度の大きさであればよく、好ましくは約孔径10〜500μmの範囲である。この領域36bは、欠損部と正常部位との間に配置されるため、欠損部の隙間に異物が侵入することを防止できる。また、口腔内の唾液が小孔40を通過するので、移植部位の湿潤環境が維持され、理想的な治癒環境を持続することができる。
【0041】
領域36cには、支持体36の周縁に沿って略等間隔に貫通孔42が設けられている。この貫通孔42は、固定部材を通す孔として使用する。貫通孔42の大きさは、固定部材を通すことが可能な大きさであればよく、好ましくは孔径100〜400μm程度である。この領域36cは、正常部位上に配置されるため、貫通孔42に固定部材を通すことにより、正常部位に固定することができる。このように、貫通孔42が設けられているので、口腔用移植片10を正常部位に容易かつ確実に固定することができる。
【0042】
本発明の実施の形態では、真皮層12を担体と線維芽細胞とによって構成させているが、担体のみで真皮層12を構成してもよい。この場合に使用する担体は、好ましくは多孔質体(スポンジ)で形成されたもの、不織布や織物を積層して厚みを持たせたもの等である。このような担体のみの真皮層12は、欠損部周辺組織と接触することにより、移植後にこの周辺組織からの細胞の遊走を促す。これにより、細胞が担体内に定着し、創傷治癒が行われる。
【0043】
本発明の実施の形態の口腔用移植片10では、延長部14は、真皮層12と上皮層20の間に介在している支持体16の一部として形成されているが、これに限定されない。例えば、上皮層20を支持体16と同一の面積及び形状として、支持体16及び上皮層20の2層によって延長部14を形成してもよい。これにより、延長部14上にも上皮層20が設けられるので、上皮細胞層によるバリア効果が期待でき、真皮層12と欠損部との隙間への異物混入を確実に防止できると共に、長期にわたって安静状態にすることができる。
また、支持体16の延長部14に予め貫通孔を設けることなく、上皮層20を支持体16の全面上で形成した後に、上皮層20及び支持体16の延長部14の双方を貫通する貫通孔を設けてもよい。これによれば、支持体16上で容易かつ安定的に上皮層20を形成することができるとともに、移植部位の湿潤環境を維持するための貫通孔を容易に設けることができる。
【0044】
【実施例】
以下に、本発明について一実施例を挙げて説明するが、これらに何ら限定されるものではない(図4参照)。
【0045】
<細胞の準備>
患者又はドナーの口腔から正常な粘膜組織及び粘膜下組織(上皮細胞及び線維芽細胞が含まれる)を採取し、ディスパーゼ処理によって上皮組織と真皮組織とに分離した。具体的には、1000PU/mlのディスパーゼ(登録商標)(合同酒精株式会社製)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)に4℃で16時間浸漬することで分離した。
【0046】
分離した上皮組織をトリプシン処理することによって細胞を分散し、上皮細胞を細胞懸濁液の状態で得た。具体的には、0.25%トリプシン溶液に室温で30分間浸漬した後、トリプシンインヒビターで洗浄することにより酵素活性を停止させた。その後、10%FBS含有DMEMで30分間攪拌した後、50μmのナイロンガーゼでデブリスをろ過して、上皮細胞を単離した。単離した上皮細胞を1500rpmで5分間遠心分離した後、分離した細胞ペレットを0.03mM Ca2+含有ケラチノサイト増殖用培地(KGM)(クラボウ社製)に懸濁することで上皮細胞懸濁液を得た。
【0047】
一方、分離した真皮組織をコラゲナーゼ処理することによって細胞を分散し、線維芽細胞を細胞懸濁液の状態で得た。具体的には、0.5%コラゲナーゼ溶液に室温で3時間浸漬することにより真皮組織を構成するコラーゲンを溶解し、線維芽細胞を単離した。単離した線維芽細胞を1500rpmで5分間遠心分離した後、分離した細胞ペレットを10%FBS含有DMEMで懸濁することで線維芽細胞懸濁液を得た。
【0048】
<真皮層形成工程>
0.3%コラーゲン溶液10mlと、線維芽細胞懸濁液 5ml(線維芽細胞数:3×106個)とを混合し、混合液を調製した。この混合液10mlを径60mmディッシュに滴下した。このときのコラーゲン溶液の深さは約3.5mmであった。
コラーゲン溶液を滴下した後、5%CO2、37℃に設定されたインキュベータ内で2時間静置し、ゲル化させた。ゲル化後、ディッシュ底面よりゲルを剥離し、培地として10%FBS含有DMEM 10mlをディッシュに加え、7日間培養した。培地交換は2日毎行った。
7日間培養後には、収縮した線維芽細胞含有コラーゲンゲルを得ることができた。この際の線維芽細胞含有コラーゲンゲルは、直径が約15mm、厚さが約2mm程度であった。
【0049】
<結合工程>
支持体としては、ポリ乳酸グリコール重合体(PLGA)で構成された柔軟性のあるメッシュ状のシート材(孔径200μm)を用意した。シート材は径25mmの円形状のものを準備した。
上述で形成した線維芽細胞含有コラーゲンゲルを径35mmディッシュの底面に配置し、支持体であるシート材をコラーゲンゲル上に載置した。この際、コラーゲンゲルの中心位置とシート材の中心位置が略同じになるように同心円状に載置させた。これにより、シート材の周縁がコラーゲンゲル周縁からほぼ均等に突出し、延長部が形成される。
【0050】
シート材を載置した後、内径15mm(線維芽細胞含有コラーゲンゲルの外径と略同じ)のガラスリングをその内径とコラーゲンゲル周縁部とが略一致するようにシート材上に載置した。ガラスリング内に0.3%コラーゲン溶液を0.5ml注入し、5%CO2、37℃の条件下でインキュベートすることでコラーゲン溶液をゲル化させた。このゲル化により、メッシュ状のシート材と線維芽細胞含有コラーゲンゲルとを、結合して一体化した。このメッシュ状のシート材上には、コラーゲンゲル層が形成された。コラーゲンゲル層形成後は、ガラスリングは取り除かれた。
【0051】
<上皮層形成工程>
得られたシート材結合コラーゲンゲルの外周に、内径25mm(シート材の外径と略同じ)のガラスリングを載置した。この際、ガラスリングは、シート材外周とガラスリング内周とが略接触する状態にしてディッシュ上に設置した。
ガラスリング設置後、予め調製した上皮細胞懸濁液を1×105個/cm2の播種密度となるように、シート材上及びシート材上に形成されたコラーゲンゲル層の上に播種した。1時間静置することで上皮細胞をシート材上及びコラーゲンゲル層上に接着させた後、0.03mM Ca2+含有KGMをガラスリング内に加え、3日間培養した。この間に上皮細胞は、シート材上及びコラーゲンゲル層上で増殖した。この時点で、単層の上皮細胞層を有する口腔用移植片が作製された。
重層化した上皮細胞層を有する口腔用移植片とするために、培地を1.8mMCa2+含有KGMに切り替え、引き続き3日間培養した後、気相リフト(気液界面培養)することで、上皮細胞に重層化を促した。気相リフトで約1週間培養することで、重層化させた上皮細胞層を有する口腔用移植片を得ることができた。なお、この間の培地交換は2日毎行った。
【0052】
このように作製された口腔用移植片は取扱い性が良好で欠損部に容易に移植でき、簡単に縫合固定することができる。また、固定後においては荷重が欠損部にかからないので痛みをなくすことができ、欠損部への異物の侵入を防止すると共に湿潤状態を維持することができる。
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、取り扱い性がよく、口腔内の欠損部に移植した場合に、移植部位の安静状態を長期間維持することが可能な口腔用移植片が提供される。また、欠損部が保護されることで、外部からの刺激による痛みを緩和することが可能な口腔用移植片が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る口腔用移植片の断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る支持体の平面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る支持体の変形例の平面図である。
【図4】本発明の実施例に係る口腔用移植片の作製手順を説明する図である。
【符号の説明】
10 口腔用移植片
12 真皮層
14 延長部
16 支持体
18 貫通孔
20 上皮層
36 支持体
38 貫通孔
40 小孔
42 貫通孔
Claims (4)
- 線維芽細胞及び/又は担体を含む真皮層と、該真皮層の周縁部よりも外方へ延長した延長部を有する支持体と、上皮細胞を含む上皮層と、を積層したことを特徴とする口腔用移植片。
- 前記上皮層は、前記真皮層と前記支持体との接触面と少なくとも同等の面積を有することを特徴する請求項1に記載の口腔用移植片。
- 前記延長部は、少なくとも1つの貫通孔を有することを特徴とする請求項1に記載の口腔用移植片。
- 前記貫通孔は、縫合糸が通過可能な大きさを有していることを特徴とする請求項3に記載の口腔用移植片。
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