JP2004178770A - 光ディスク装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】SN比が小さく、振幅変動を有するウォブル信号からアドレスを高精度に検出すること。
【解決手段】一定の周波数で蛇行し、かつアドレスが局所的に変調されているグルーブを有する光ディスクに、光スポットを位置付ける光ディスク装置であって、光ディスク上に光スポットを照射し、反射光からウォブル信号を検出する光ヘッドと、ウォブル信号の少なくとも2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器と、デジタル値にFIR演算を行い、FIR演算された信号を2値化し、ウォブル信号の1/N倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する位相検波演算器と、位相検波演算器の出力信号からアドレスを識別するデコード回路とを備える。また、4タップのFIR演算を行い、FIRフィルタとしてのカットオフ周波数を下げる。さらに、1部の係数を0としたFIR演算を行い、振幅変動が発生しているデジタル値の影響を受けにくくする。
【選択図】 図1
【解決手段】一定の周波数で蛇行し、かつアドレスが局所的に変調されているグルーブを有する光ディスクに、光スポットを位置付ける光ディスク装置であって、光ディスク上に光スポットを照射し、反射光からウォブル信号を検出する光ヘッドと、ウォブル信号の少なくとも2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器と、デジタル値にFIR演算を行い、FIR演算された信号を2値化し、ウォブル信号の1/N倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する位相検波演算器と、位相検波演算器の出力信号からアドレスを識別するデコード回路とを備える。また、4タップのFIR演算を行い、FIRフィルタとしてのカットオフ周波数を下げる。さらに、1部の係数を0としたFIR演算を行い、振幅変動が発生しているデジタル値の影響を受けにくくする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アドレスが局所的に変調されているグルーブを有する光ディスクに光スポットを位置決めして情報の記録再生を行う光ディスク装置に係り、特に、アドレスの検出精度を高めることが可能な光ディスク装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ディスク装置では、光スポットを目標のトラックに位置付けするために、あるいは光ディスク上の所定の位置に情報を記録するために、光ディスク上に設けられたアドレスを用いている。近年、アドレス方式としてグルーブを位相変調した光ディスクが製品化されている。この製品はグルーブが一定の周波数で蛇行し、それにアドレスが位相変調されている(例えば、非特許文献1参照)。上記光ディスク上に光スポットを照射し、その反射光から検出されるウォブル信号を図10に示す。
【0003】
図10は従来の光ディスクに設けられたウォブルからのウォブル信号の波形図であり、図10(a)はウォブル信号を、図10(b)は「SYNC」ウォブル信号を、図10(c)は「1」ウォブル信号を、図10(d)は「0」のウォブル信号を示す。
一般にウォブル信号はディスクからの反射光を2分割ディテクタで受光して、ディテクタのそれぞれの信号を減算することにより生成される。1周期の正弦波はウォブルと呼ばれている。先頭の8個のウォブルが位相変調部分2となっており、残りの85個のウォブル4は位相が一定の正弦波である。93個のウォブルで1ビットが構成されている。位相変調部分2は3種類あり、「SYNC」、「1」および「0」が割り当てられている。51ビットでアドレスが構成されている。
また、上記光ディスクに情報を記録する際には、アドレスと一対一の相対関係をもつID(Identification Data)が1セクタ毎に記録される。そのため、記録された光ディスクでは、位相変調されたアドレスか、IDで光スポットの位置を認識することが可能である。
【0004】
一方、通信工学の技術では、位相変調方式してPSK(Phase Shift Keying)方式が広く知られている。上記光ディスクはPSK方式である。PSK方式の復調には位相検波回路を用いた同期検波方式が一般的に用いられている(非特許文献2参照)。図11を用いて同期検波方式を説明する。
図11は従来のPSK復調回路のブロック図である。図において、端子11にPSK変調信号受信10が入力される。搬送波再生回路12は変調成分が取り除かれた搬送波14を生成する。位相検波回路16はPSK変調信号受信10と搬送波14からベースバンド信号22を生成する。位相検波回路16は変調信号受信入力10と搬送波14を、乗算器18により乗算を行い、乗算された信号を、LPF回路20を通して出力する。ベースバンド信号22は識別再生回路24で2値化され、受信デジタル信号26を生成する。
【0005】
【非特許文献1】
株式会社トリケップス発行、「WHITE SERIES No 218 DVD+R/RW」(初版発行日:2002年1月22日)
【非特許文献2】
株式会社オーム社発行、「デジタル変復調の基礎」(初版発行日 2001年9月25日)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した位相変調を光ディスクのアドレスに適用した場合、光ディスク特有の課題が発生する。
第1の課題は、記録されていない光ディスクではウォブル信号のSN比が大きいが、記録された光ディスクではウォブル信号のSN比が極めて小さいことである。SN比が小さいウォブル信号からアドレスを再生することはもちろんであるが、記録されていない光ディスクから極めて簡単な方法でアドレスを再生可能であれば、用途に応じて、それぞれに適したアドレス再生を行うこができる。
第2の課題は、位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界で、ウォブル信号の振幅が変動することである。主な要因は3つあり、第1の要因は、隣接するグルーブとの距離の変動によるものである。これは光ディスクからの反射光の回折特性に起因している。第2の要因は、ディスクの汚れ、トラッキングサーボ系の追従誤差を取り除くHPFによるものである。これはPSK方式の信号帯域を制限することに起因している。第3の要因は、光ディスクの製造プロセスによるものである。
第3の課題は、複雑な機能を有するアドレス再生回路を、簡易で安価な回路で実現することである。
【0007】
従って、本発明の目的は、アドレスが変調されているグルーブを有する光ディスクに対して、簡易で安価な回路でアドレスの検出精度を高めること可能な光ディスク装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためには、複雑な演算を行う必要があり、簡易な回路で実現するためにはデジタル処理を行うことが不可欠である。特に位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界での、ウォブル信号の振幅が変動する課題に対しては、デジタル処理を行うことが不可欠である。一方、一般的にAD変換器は変換する周波数が低いほど安価である。したがってAD変換器の変換する周波数は、必要最低限の周波数とすることが望ましい。
【0009】
そこで、まず、デジタル処理を行うために、ウォブル信号の少なくとも2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器を設ける。2倍の周波数で変換する場合には、変換するタイミングは、ウォブル信号の振幅が最大となる位置とする。2倍より高い周波数で変換する場合には、少なくともウォブル信号の振幅が最大となる位置で変換する。4倍の周波数で変換する場合には、変換するタイミングは、ウォブル信号の振幅が最大となる位置とウォブル信号の振幅が0となる位置とする。
【0010】
次にウォブル信号の振幅が最大となる位置で変換されたデジタル値に、FIR演算を行い、FIR演算された信号を2値化し、ウォブル信号の1/N倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する位相検波演算器を設ける。n番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n、X1nとし、n−1番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n−1、X1n−1とし、FIR演算の演算結果をYnとする。FIR演算には無限個の方式があるが、簡易な方式の数は限られる。以下に簡易な方式を示す。これらは用途によって使い分けられる。
第1の用途として使用されるFIR演算は、n番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた2タップのFIR演算であり、
Yn=(X1n)−(X2n)
である。右辺第2項の負の係数は、右辺第1項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と2つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFである。FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。位相検波演算器はFIR演算された信号を、例えば0をスライスレベルとして2値化し、ウォブル信号の1倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する。更新するタイミングは、FIR演算するタイミングと同一でよい。
第2の用途として使用されるFIR演算は、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた4タップのFIR演算であり、
Yn=a×(X1n)−b×(X2n)+c×(X1n−1)−d×(X2n−1)
である。ここで、a、b、c、dは0あるいは正の定数である。a、b、c、dの組み合わせも無限にあるが、LPFの特性を実現する上ではその特性に大差はない。4タップのFIR演算の中でも最も簡単なFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)
である。右辺第2および第4項の負の係数は、右辺第1および第3項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と4つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFであり、2つのデジタル値の平均演算を行う2タップのFIRフィルタに比べて信号通過帯域は約半分である。そのため、4タップのFIR演算はノイズを低減する効果が優れており、ウォブル信号のSN比が小さい記録された光ディスクのアドレス再生に適している。FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。しかしながら、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いて平均演算を行うため、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、FIR演算された信号が約0となる。FIR演算された信号は、例えば0をスライスレベルとして2値化されるので、条件によって2値化された信号が0にも1にもなり誤動作を引き起こす。この不具合は、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、2値化された信号を更新しないことにより回避できる。すなわち、2値化された信号を更新して出力するタイミングをウォブル信号の1/2倍の周波数とし、さらにこの更新するタイミングではウォブルの位相が反転しないように、更新するタイミングを調整する必要がある。ただし、このFIR演算が単純に適用されるためには、位相が同じウォブルが偶数個連続している必要がある。
【0011】
従来の光ディスクでは、位相の反転したウォブルが「SYNC」は4個連続しており、「1」および「0」は2個連続しているため、上述した2タップおよび4タップのFIR演算がともに適用可能である。ただし、4タップのFIR演算では位相変調部分の先頭にある1個のウォブルの反転部分は検出できない。そもそもこれは検出する必要がない。一方、奇数である93個のウォブル毎に位相変調部分が設けられている。この場合、4タップのFIR演算を単純に適用することはできない。位相変調部分毎に、2値化された信号を更新するタイミングがウォブル1周期ずれてしまうためである。この不具合は、更新するタイミングを93ウォブル毎にウォブル信号の1周期に相当する時間ずらす手段を設けることにより回避できる。
2タップのFIR演算では、2値化された信号を更新して出力するタイミングを調整する必要もなく、93ウォブル毎にずらす必要もない。従って、検出精度の観点では4タップのFIR演算が2タップのFIR演算より優れ、簡易性の観点では2タップのFIR演算が4タップのFIR演算より優れている。この特長を踏まえ、記録処理を開始する前のアドレス再生には記録されているか否かに限らず検出精度の高い4タップのFIR演算を用い、シーク処理を行うためのアドレス再生には記録されたIDの再生、あるいは2タップのFIR演算を用いる使用方法が最適な使い方である。
上述した位相検波演算器の出力信号からアドレスを識別するデコード回路を設けることにより、アドレスを再生することが可能である。
【0012】
位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界での、ウォブル信号の振幅変動を考慮したFIR演算は3方式ある。振幅変動が発生しているデジタル値をFIR演算に用いないことで課題を解決することが可能である。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)
である。
ウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)
である。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値、およびウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)
である。
【0013】
FIR演算された信号の振幅と極性を用いて、AD変換するタイミングを決定することが可能である。ウォブル信号の2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングではFIR演算された信号が0でない。本来のAD変換するタイミングから、AD変換するタイミングをウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらした場合、FIR演算された信号は0となる。この特性を利用し、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングを求める。それに対しウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらしたAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングである。また、ウォブル信号の4倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングからウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずれたタイミングでAD変換を行っていることとなる。そのため、位相検波演算器が使用しないデジタル値を用いて、位相検波演算器と同様のFIR演算を行えば、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、実施例を用い、図を参照して説明する。
まず、図1を用いて本発明である光ディスク装置の構成を説明する。
図1は本発明による光ディスク装置の一実施例を示すブロック図であり、本実施例を用いて光ディスクのアドレスを再生する場合について説明する。図2は2タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図である。なお、FIR演算とは、Finite Impulse Response演算の略称である。
図2では、検出原理を理解しやすくするために、図1に示すフィルタ回路54の伝達特性は1に近い特性として示している。さらには、外乱のない理想的なウォブル信号34が得られたものとして示している。
【0015】
図1において、光ヘッド30は光ディスク32上に光スポットを照射し、反射光からウォブル信号34を検出する。ウォブル信号34はBPF回路36を通してPLL回路38に入力される。BPF回路はウォブル信号のノイズを除去するものであり、ウォブル信号の周波数を通過させる特性であればよい。BPF回路36の出力には、主に85個のウォブル信号である位相が一定な正弦波が得られる。PLL回路38は、ウォブル信号と同期して同じ周波数のWOB信号40と、WOB信号をてい倍したWOBCLK信号42を生成する。遅延回路44はマイコン(図示せず)からの指令によって、WOB信号40を所定量遅延させたWOBD信号46を生成する。遅延量はWOBCLK信号42の周期を単位として設定される。遅延量はAD変換のタイミングを決定するものであり、設定方法は後述する。タイミング信号生成回路48は、WOBD信号46を用いてAD変換タイミング信号50とラッチ信号52を生成する。
【0016】
一方、ウォブル信号34はフィルタ回路54を通してAD変換器56に入力される。フィルタ回路55は、HPFとLPFからなる。HPFはディスクの汚れ、トラッキングサーボ系の追従誤差を取り除くものであり、LPFはウォブル信号のノイズを除去するものである。AD変換するタイミングはAD変換タイミング信号50により決定する。図2に示すように、AD変換器56はウォブル信号の2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値58に変換する。変換するタイミングは、ウォブル信号の振幅が最大となる位置である。図2を参照して説明すると、図2(a)はAD変換器56の入力信号55の波形を示し、図2(b)はAD変換器56に入力されるAD変換タイミング信号50を示す。AD変換器56ではAD変換タイミング信号50のタイミングで入力信号55の振幅(略最大振幅)を検出し、その出力に、図2(c)に示すデジタル値58を出力する。このデジタル値58はAD変換器入力信号55の振幅値を示す。
【0017】
位相検波演算器60はデジタル値58に位相検波演算を行い、位相検波信号72を生成する。位相検波演算器60は第1のFIR演算器62、2値化回路66およびラッチ回路70から構成される。第1のFIR演算器62はデジタル値58を用いてFIR演算を行う。FIR演算は、図2(d)に示すWOBD信号46に従い実行される。ここで、WOBD信号46はAD変換タイミング信号50よりAD変換器56での処理開始から第1のFIR演算器62での演算開始時間分だけ遅延されるため、図2(d)は図2(b)より若干遅延されて示されている。図2(e)は第1のFIR演算器出力信号64を示す。FIR演算によって、この第1のFIR演算器出力信号64の生成方法については別途説明する。2値化回路66はFIR演算された結果である第1のFIR演算器出力信号64を、例えば0をスライスレベルとして2値化する。図2(f)は2値化回路66の出力信号である2値化回路出力信号68を示す。図2(f)に示すように、0をスライスレベルとして2値化した場合、2値化回路出力信号68は図2(e)の第1のFIR演算器出力信号64の内、ゼロより大きい信号のみを取り出した波形となる。
【0018】
ラッチ回路70は、ウォブル信号34の1/N倍の周波数で2値化された信号68を更新して出力する。図2では、ウォブル信号の1倍の周波数を持つ図2(g)のラッチ信号52で2値化された信号68を更新して図2(h)に示す位相検波信号72を出力している。デコード回路74は位相検波信号72からアドレス76を生成する。光ディスク装置はこのアドレスを用いて、光スポットを目標のトラックに位置付けることが可能である。また、光ディスク32上の所定の位置に情報を記録することが可能である。
【0019】
次にFIR演算を説明する。まず、図3を用いて信号の説明をする。
図3はFIR演算を説明するための波形図である。図3(a)はAD変換器入力信号55であり、図3(b)に示すデジタル値58は、そのAD変換器入力信号55の略最大振幅の値を示す。今、n番目のAD変換器入力信号55のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n、X1nとし、n−1番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n−1、X1n−1とし、FIR演算の演算結果である第1のFIR演算器出力信号64をYnとする。WOBD信号46をもとに、AD変換タイミング信号が生成されるため、上述したようなウォブルとデジタル値の関係は容易に実現する。FIR演算には無限個の方式があるが、簡易な方式の数は限られる。以下に簡易な方式を示す。これらは用途によって使い分けられる。以下、数式を示すに当り、例えば、デジタル値X1n−1はX1nから1を引くと誤解されることを防ぐために、デジタル値については括弧で示した。即ち、デジタル値X1n−1を(X1n−1)で示した。
【0020】
第1の用途として使用されるFIR演算は、n番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた2タップのFIR演算であり、
Yn=(X1n)−(X2n)………(数1)
である。図2に示した信号はこのFIR演算を行っている。(数1)において、右辺第2項の負の係数は、右辺第1項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と2つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFである。FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。ラッチ回路70の更新タイミングであるラッチ信号72は、FIR演算するタイミングと同一である。
【0021】
第2の用途として使用されるFIR演算は、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた4タップのFIR演算であり、
Yn=a×(X1n)−b×(X2n)+c×(X1n−1)−d×(X2n−1)……(数2)
で示される。ここで、a、b、c、dは0あるいは正の定数である。a、b、c、dの組み合わせも無限にあるが、LPFの特性を実現する上ではその特性に大差はない。4タップのFIR演算の中でも最も簡単なFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)……(数3)
である。
このFIR演算の信号を図4に示す。
図4は4タップのFIR演算を行なう際の各信号の波形図であり、正常に動作した場合の波形図を示す。図において、図4(a)〜図4(d)は図2(a)〜図2(d)と同じ信号であるため、その説明を省略する。図4(e)に示す第1のFIR演算器62の出力信号64は(数3)に従って演算することによって、4回反転しているので、黒点で示すゼロの部分が4個発生する。第1のFIR演算器62の出力信号64を2値化回路66で2値化すると図4(f)に示す2値化回路66の出力信号68が得られるので、この出力信号68を図4(g)に示すラッチ信号52を用いてラッチ回路70で処理すると、図4(h)に示す位相検波信号72が得られる。
【0022】
(数3)において、右辺第2および第4項の負の係数は、右辺第1および第3項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と4つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFであり、2つのデジタル値の平均演算を行う2タップのFIRフィルタに比べて信号通過帯域は約半分である。そのため、4タップのFIR演算はノイズを低減する効果が優れており、ウォブル信号のSN比が小さい記録された光ディスクのアドレス再生に適している。
FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。しかしながら、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いて平均演算を行うため、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、FIR演算された信号が約0となる。図4(e)ではウォブルの反転が4回行われているため、第1のFIR演算器出力信号は4回0となっている。FIR演算された信号は、例えば0をスライスレベルとして2値化されるので、条件によって2値化された信号が0にも1にもなり誤動作を引き起こす。この不具合は、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、2値化された信号を更新しないことにより回避できる。すなわち、ラッチ信号をウォブル信号の1/2倍の周波数とし、さらにラッチするタイミングではウォブルの位相が反転しないように、ラッチ信号を調整する必要がある。ウォブル信号の1/2倍の周波数のラッチ信号はWOBD信号を分周して作成される。
【0023】
もし、図4(g)のラッチ信号が、1ウォブル周期ずれていたら、位相検波信号は出力されない。その状態を図5に示す。
図5は4タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図であり、正常に動作しない場合の波形図を示す。図5において、図5(a)〜図5(f)は図4(a)〜図4(f)と同じであるため、その説明を省略する。図5(g)のラッチ信号52では、図5(f)の2値化回路の出力信号68が発生された場所に信号がないので、図5(h)に示すように、位相検波信号72は得られない。これは、ラッチ信号52のタイミングミスであり、確立は1/2である。従って、この場合、ラッチ信号の位相をウォブル周期で調整する必要がある。すなわち、図4の状態か図5の状態かを選択することである。
この調整方法は種々ある。アドレスが再生可能な方を選択してもよいし、2値化回路のスライスレベルを正の値として、ラッチ信号の有無を判定基準としてもよい。この処理は、タイミング信号生成回路48で実施される。ただし、このFIR演算が単純に適用されるためには、位相が同じウォブルが偶数個連続している必要がある。
【0024】
図10に示した従来の光ディスクでは、位相の反転したウォブルが「SYNC」では4個連続しており、「1」および「0」では2個連続しているため、上述した2タップおよび4タップのFIR演算がともに適用可能である。ただし、4タップのFIR演算では位相変調部分の先頭にある1個のウォブルの反転部分は検出できない。そもそもこれは検出する必要がない。図4(e)で最初に第1のFIR演算器出力信号が0となるウォブルである。一方、奇数である93個のウォブル毎に位相変調部分が設けられている。この場合、4タップのFIR演算を単純に適用することはできない。位相変調部分毎に、2値化された信号を更新するタイミングがウォブル1周期ずれてしまうためである。言い換えれば、位相変調部分毎に、図4と図5の状態が交互に発生する。この不具合は、更新するタイミングを93ウォブル毎にウォブル信号の1周期に相当する時間ずらすことにより回避できる。
【0025】
図6は4タップにおけるラッチ信号のタイミングの補正を説明するための波形図である。図6(a)はウォブルの位相変調部分2及び85個の位相が一定な正弦波であるウォブル4を有するウォブル信号である。図6(b)はウォブル4を示す。図6(c)では、ラッチ信号52を位相変調部分2と位相変調部分2の間で、ウォブル信号の1周期に相当する時間ずらしている。この処理は、タイミング信号生成回路48で実施される。
【0026】
2タップのFIR演算では、2値化された信号を更新して出力するタイミングを調整する必要もなく、93ウォブル毎にずらす必要もない。従って、検出精度の観点では4タップのFIR演算が2タップのFIR演算より優れ、簡易性の観点では2タップのFIR演算が4タップのFIR演算より優れている。この特長を踏まえ、記録処理を開始する前のアドレス再生には記録されているか否かに限らず検出精度の高い4タップのFIR演算を用い、シーク処理を行うためのアドレス再生には記録されたIDの再生、あるいは2タップのFIR演算を用いる使用方法が最適な使い方である。使い方に応じて、第1のFIR演算器62とタイミング生成回路48をそれぞれの設定に切り替えればよい。ただし、図2と図4からわかる通り、位相検波信号72の出力されるタイミングが1ウォブル周期ずれている。これは、2タップと4タップのFIR演算でアドレスが再生されるタイミングが1ウォブル周期異なることを意味している。これはアドレスが再生されるタイミングが異なることになるので、それを加味して再生すればよい。
【0027】
これまで、冒頭で述べたように,検出原理の説明に重点をおいてきた。位相変調を光ディスクのアドレスに適用した場合、光ディスク特有の課題が発生する。それは、位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界で、ウォブル信号の振幅が変動することである。
主な要因は3つある。以下、主な要因について、図7を用いて説明する。
図7はウォブル信号の振幅の変動の要因を説明するための波形図であり、図7(a)は第1のウォブル信号を、図7(b)はAD変換器入力信号を、図7(c)は第2のウォブル信号を示す。
第1の要因は、隣接するグルーブとの距離の変動によるものである。これは光ディスクからの反射光の回折特性に起因している。この場合のウォブル信号を第1のウォブル信号34aとして図7(a)に示す。図では、切替直後のウォブル34aaの振幅とそれから1周期経過した後のウォブル34abの振幅が小さくなっている。第2の要因は、ディスクの汚れ、トラッキングサーボ系の追従誤差を取り除くHPFによるものである。これはPSK方式の信号帯域を制限することに起因している。この場合のAD変換器の入力信号55を図7(b)に示す。図では、切替直後におけるAD変換器の入力信号55aの振幅が小さくなっている。第3の要因は、光ディスクの製造プロセスによるものである。グルーブが欠けた場合のウォブル信号を図7(c)に示す。図では、第2のウォブル信号34bの34ba、34bbで示す部分で反転されるべきであるが反転されておらず、振幅も変化している。この要因では、特にHPFの影響が顕著で、他の2要因の振幅変動を強調してしまう。
【0028】
位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界での、ウォブル信号の振幅変動を考慮したFIR演算は3方式ある。振幅変動が発生しているデジタル値をFIR演算に用いないことで課題を解決することが可能である。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)……(数4)
で表される。
ウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)……(数5)
で表される。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値、およびウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)……(数6)
で表される。
【0029】
最後に、AD変換するタイミングの決定方法について説明する。図1に示す遅延回路44はWOB信号40を所定量遅延させたWOBD信号46を生成する。AD変換タイミング信号50はWOBD信号から生成されるため、AD変換するタイミングは遅延回路44の遅延量により決定される。AD変換するタイミングの指標に、FIR演算された信号の振幅と極性を用いる。
図8はAD変換タイミングとFIR演算された信号の平均値の関係を示す特性図であり、横軸にAD変換タイミングを示し、縦軸に第1のFIR演算器の出力信号の平均値を示す。図の特性線91ではAD変換するタイミングが0の位置が、本来のAD変換するタイミングである。ウォブル信号の2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングではFIR演算された信号が0でない。本来のAD変換するタイミングから、AD変換するタイミングをウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらした場合、FIR演算された信号は0となる。この特性を利用し、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングを求める。それに対しウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらしたAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングである。
【0030】
また、ウォブル信号の4倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングからウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずれたタイミングでAD変換を行っていることとなる。そのため、位相検波演算器60が使用しないデジタル値を用いて、図1の第2のFIR演算器78で、位相検波演算器60と同様のFIR演算を行うと、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングとなる。
図9はAD変換タイミングと第1のFIR演算器および第2のFIR演算器がFIR演算した信号の平均値の関係を示す特性図であり、横軸にAD変換タイミングを、縦軸はFIR演算器の出力信号の平均値をしめす。図において、
特性線92は第1のFIR演算器62の出力信号の平均値であり、特性線95は第2のFIR演算器78の出力信号の平均値であり、特性線95の位相は特性線95の位相に比べπ/4だけずれているので、第2のFIR演算器78の出力を利用してAD変換タイミングを求めることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ウォブル信号に含まれるノイズを低減できるとともに、ウォブル信号の振幅変動の影響を回避できるため、ウォブル信号からアドレスを高精度に検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】2タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図である。
【図3】FIR演算を説明するための波形図である。
【図4】4タップのFIR演算を行なう際の各信号の波形図である。
【図5】4タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図である。
【図6】4タップにおけるラッチ信号のタイミングの補正を説明するための波形図である。
【図7】ウォブル信号の振幅の変動の要因を説明するための波形図である。
【図8】AD変換タイミングとFIR演算された信号の平均値の関係を示す特性図である。
【図9】AD変換タイミングと第1のFIR演算器および第2のFIR演算器がFIR演算した信号の平均値の関係を示す特性図である。
【図10】従来の光ディスクに設けられたウォブルからのウォブル信号の波形図である。
【図11】従来のPSK復調回路のブロック図である。
【符号の説明】
2…位相変調部分、4…位相が一定の正弦波、10…PSK変調信号受信、12…搬送波再生回路、14…搬送波、16…位相検波回路、18…乗算器、20…LPF回路、22…ベースバンド信号、24…識別再生回路、26…受信デジタル信号、30…光ヘッド、32…光ディスク、34…ウォブル信号、36…BPF回路、38…PLL回路、40…WOB信号、42…WOBCLK信号、44…遅延回路、46…WOBD信号、48…タイミング信号生成回路、50…AD変換タイミング信号、52…ラッチ信号、54…フィルタ回路、56…AD変換器、58…デジタル値、60…位相検波演算器、62…第1のFIR演算器、64…第1のFIR演算器の出力信号、66…2値化回路、68…、70…ラッチ回路、72…位相検波信号、74…デコード回路、76…アドレス、78…第2のFIR演算器、80…第2のFIR演算器の出力信号。
【発明の属する技術分野】
本発明は、アドレスが局所的に変調されているグルーブを有する光ディスクに光スポットを位置決めして情報の記録再生を行う光ディスク装置に係り、特に、アドレスの検出精度を高めることが可能な光ディスク装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、光ディスク装置では、光スポットを目標のトラックに位置付けするために、あるいは光ディスク上の所定の位置に情報を記録するために、光ディスク上に設けられたアドレスを用いている。近年、アドレス方式としてグルーブを位相変調した光ディスクが製品化されている。この製品はグルーブが一定の周波数で蛇行し、それにアドレスが位相変調されている(例えば、非特許文献1参照)。上記光ディスク上に光スポットを照射し、その反射光から検出されるウォブル信号を図10に示す。
【0003】
図10は従来の光ディスクに設けられたウォブルからのウォブル信号の波形図であり、図10(a)はウォブル信号を、図10(b)は「SYNC」ウォブル信号を、図10(c)は「1」ウォブル信号を、図10(d)は「0」のウォブル信号を示す。
一般にウォブル信号はディスクからの反射光を2分割ディテクタで受光して、ディテクタのそれぞれの信号を減算することにより生成される。1周期の正弦波はウォブルと呼ばれている。先頭の8個のウォブルが位相変調部分2となっており、残りの85個のウォブル4は位相が一定の正弦波である。93個のウォブルで1ビットが構成されている。位相変調部分2は3種類あり、「SYNC」、「1」および「0」が割り当てられている。51ビットでアドレスが構成されている。
また、上記光ディスクに情報を記録する際には、アドレスと一対一の相対関係をもつID(Identification Data)が1セクタ毎に記録される。そのため、記録された光ディスクでは、位相変調されたアドレスか、IDで光スポットの位置を認識することが可能である。
【0004】
一方、通信工学の技術では、位相変調方式してPSK(Phase Shift Keying)方式が広く知られている。上記光ディスクはPSK方式である。PSK方式の復調には位相検波回路を用いた同期検波方式が一般的に用いられている(非特許文献2参照)。図11を用いて同期検波方式を説明する。
図11は従来のPSK復調回路のブロック図である。図において、端子11にPSK変調信号受信10が入力される。搬送波再生回路12は変調成分が取り除かれた搬送波14を生成する。位相検波回路16はPSK変調信号受信10と搬送波14からベースバンド信号22を生成する。位相検波回路16は変調信号受信入力10と搬送波14を、乗算器18により乗算を行い、乗算された信号を、LPF回路20を通して出力する。ベースバンド信号22は識別再生回路24で2値化され、受信デジタル信号26を生成する。
【0005】
【非特許文献1】
株式会社トリケップス発行、「WHITE SERIES No 218 DVD+R/RW」(初版発行日:2002年1月22日)
【非特許文献2】
株式会社オーム社発行、「デジタル変復調の基礎」(初版発行日 2001年9月25日)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述した位相変調を光ディスクのアドレスに適用した場合、光ディスク特有の課題が発生する。
第1の課題は、記録されていない光ディスクではウォブル信号のSN比が大きいが、記録された光ディスクではウォブル信号のSN比が極めて小さいことである。SN比が小さいウォブル信号からアドレスを再生することはもちろんであるが、記録されていない光ディスクから極めて簡単な方法でアドレスを再生可能であれば、用途に応じて、それぞれに適したアドレス再生を行うこができる。
第2の課題は、位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界で、ウォブル信号の振幅が変動することである。主な要因は3つあり、第1の要因は、隣接するグルーブとの距離の変動によるものである。これは光ディスクからの反射光の回折特性に起因している。第2の要因は、ディスクの汚れ、トラッキングサーボ系の追従誤差を取り除くHPFによるものである。これはPSK方式の信号帯域を制限することに起因している。第3の要因は、光ディスクの製造プロセスによるものである。
第3の課題は、複雑な機能を有するアドレス再生回路を、簡易で安価な回路で実現することである。
【0007】
従って、本発明の目的は、アドレスが変調されているグルーブを有する光ディスクに対して、簡易で安価な回路でアドレスの検出精度を高めること可能な光ディスク装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するためには、複雑な演算を行う必要があり、簡易な回路で実現するためにはデジタル処理を行うことが不可欠である。特に位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界での、ウォブル信号の振幅が変動する課題に対しては、デジタル処理を行うことが不可欠である。一方、一般的にAD変換器は変換する周波数が低いほど安価である。したがってAD変換器の変換する周波数は、必要最低限の周波数とすることが望ましい。
【0009】
そこで、まず、デジタル処理を行うために、ウォブル信号の少なくとも2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器を設ける。2倍の周波数で変換する場合には、変換するタイミングは、ウォブル信号の振幅が最大となる位置とする。2倍より高い周波数で変換する場合には、少なくともウォブル信号の振幅が最大となる位置で変換する。4倍の周波数で変換する場合には、変換するタイミングは、ウォブル信号の振幅が最大となる位置とウォブル信号の振幅が0となる位置とする。
【0010】
次にウォブル信号の振幅が最大となる位置で変換されたデジタル値に、FIR演算を行い、FIR演算された信号を2値化し、ウォブル信号の1/N倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する位相検波演算器を設ける。n番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n、X1nとし、n−1番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n−1、X1n−1とし、FIR演算の演算結果をYnとする。FIR演算には無限個の方式があるが、簡易な方式の数は限られる。以下に簡易な方式を示す。これらは用途によって使い分けられる。
第1の用途として使用されるFIR演算は、n番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた2タップのFIR演算であり、
Yn=(X1n)−(X2n)
である。右辺第2項の負の係数は、右辺第1項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と2つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFである。FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。位相検波演算器はFIR演算された信号を、例えば0をスライスレベルとして2値化し、ウォブル信号の1倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する。更新するタイミングは、FIR演算するタイミングと同一でよい。
第2の用途として使用されるFIR演算は、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた4タップのFIR演算であり、
Yn=a×(X1n)−b×(X2n)+c×(X1n−1)−d×(X2n−1)
である。ここで、a、b、c、dは0あるいは正の定数である。a、b、c、dの組み合わせも無限にあるが、LPFの特性を実現する上ではその特性に大差はない。4タップのFIR演算の中でも最も簡単なFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)
である。右辺第2および第4項の負の係数は、右辺第1および第3項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と4つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFであり、2つのデジタル値の平均演算を行う2タップのFIRフィルタに比べて信号通過帯域は約半分である。そのため、4タップのFIR演算はノイズを低減する効果が優れており、ウォブル信号のSN比が小さい記録された光ディスクのアドレス再生に適している。FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。しかしながら、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いて平均演算を行うため、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、FIR演算された信号が約0となる。FIR演算された信号は、例えば0をスライスレベルとして2値化されるので、条件によって2値化された信号が0にも1にもなり誤動作を引き起こす。この不具合は、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、2値化された信号を更新しないことにより回避できる。すなわち、2値化された信号を更新して出力するタイミングをウォブル信号の1/2倍の周波数とし、さらにこの更新するタイミングではウォブルの位相が反転しないように、更新するタイミングを調整する必要がある。ただし、このFIR演算が単純に適用されるためには、位相が同じウォブルが偶数個連続している必要がある。
【0011】
従来の光ディスクでは、位相の反転したウォブルが「SYNC」は4個連続しており、「1」および「0」は2個連続しているため、上述した2タップおよび4タップのFIR演算がともに適用可能である。ただし、4タップのFIR演算では位相変調部分の先頭にある1個のウォブルの反転部分は検出できない。そもそもこれは検出する必要がない。一方、奇数である93個のウォブル毎に位相変調部分が設けられている。この場合、4タップのFIR演算を単純に適用することはできない。位相変調部分毎に、2値化された信号を更新するタイミングがウォブル1周期ずれてしまうためである。この不具合は、更新するタイミングを93ウォブル毎にウォブル信号の1周期に相当する時間ずらす手段を設けることにより回避できる。
2タップのFIR演算では、2値化された信号を更新して出力するタイミングを調整する必要もなく、93ウォブル毎にずらす必要もない。従って、検出精度の観点では4タップのFIR演算が2タップのFIR演算より優れ、簡易性の観点では2タップのFIR演算が4タップのFIR演算より優れている。この特長を踏まえ、記録処理を開始する前のアドレス再生には記録されているか否かに限らず検出精度の高い4タップのFIR演算を用い、シーク処理を行うためのアドレス再生には記録されたIDの再生、あるいは2タップのFIR演算を用いる使用方法が最適な使い方である。
上述した位相検波演算器の出力信号からアドレスを識別するデコード回路を設けることにより、アドレスを再生することが可能である。
【0012】
位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界での、ウォブル信号の振幅変動を考慮したFIR演算は3方式ある。振幅変動が発生しているデジタル値をFIR演算に用いないことで課題を解決することが可能である。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)
である。
ウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)
である。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値、およびウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)
である。
【0013】
FIR演算された信号の振幅と極性を用いて、AD変換するタイミングを決定することが可能である。ウォブル信号の2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングではFIR演算された信号が0でない。本来のAD変換するタイミングから、AD変換するタイミングをウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらした場合、FIR演算された信号は0となる。この特性を利用し、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングを求める。それに対しウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらしたAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングである。また、ウォブル信号の4倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングからウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずれたタイミングでAD変換を行っていることとなる。そのため、位相検波演算器が使用しないデジタル値を用いて、位相検波演算器と同様のFIR演算を行えば、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、実施例を用い、図を参照して説明する。
まず、図1を用いて本発明である光ディスク装置の構成を説明する。
図1は本発明による光ディスク装置の一実施例を示すブロック図であり、本実施例を用いて光ディスクのアドレスを再生する場合について説明する。図2は2タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図である。なお、FIR演算とは、Finite Impulse Response演算の略称である。
図2では、検出原理を理解しやすくするために、図1に示すフィルタ回路54の伝達特性は1に近い特性として示している。さらには、外乱のない理想的なウォブル信号34が得られたものとして示している。
【0015】
図1において、光ヘッド30は光ディスク32上に光スポットを照射し、反射光からウォブル信号34を検出する。ウォブル信号34はBPF回路36を通してPLL回路38に入力される。BPF回路はウォブル信号のノイズを除去するものであり、ウォブル信号の周波数を通過させる特性であればよい。BPF回路36の出力には、主に85個のウォブル信号である位相が一定な正弦波が得られる。PLL回路38は、ウォブル信号と同期して同じ周波数のWOB信号40と、WOB信号をてい倍したWOBCLK信号42を生成する。遅延回路44はマイコン(図示せず)からの指令によって、WOB信号40を所定量遅延させたWOBD信号46を生成する。遅延量はWOBCLK信号42の周期を単位として設定される。遅延量はAD変換のタイミングを決定するものであり、設定方法は後述する。タイミング信号生成回路48は、WOBD信号46を用いてAD変換タイミング信号50とラッチ信号52を生成する。
【0016】
一方、ウォブル信号34はフィルタ回路54を通してAD変換器56に入力される。フィルタ回路55は、HPFとLPFからなる。HPFはディスクの汚れ、トラッキングサーボ系の追従誤差を取り除くものであり、LPFはウォブル信号のノイズを除去するものである。AD変換するタイミングはAD変換タイミング信号50により決定する。図2に示すように、AD変換器56はウォブル信号の2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値58に変換する。変換するタイミングは、ウォブル信号の振幅が最大となる位置である。図2を参照して説明すると、図2(a)はAD変換器56の入力信号55の波形を示し、図2(b)はAD変換器56に入力されるAD変換タイミング信号50を示す。AD変換器56ではAD変換タイミング信号50のタイミングで入力信号55の振幅(略最大振幅)を検出し、その出力に、図2(c)に示すデジタル値58を出力する。このデジタル値58はAD変換器入力信号55の振幅値を示す。
【0017】
位相検波演算器60はデジタル値58に位相検波演算を行い、位相検波信号72を生成する。位相検波演算器60は第1のFIR演算器62、2値化回路66およびラッチ回路70から構成される。第1のFIR演算器62はデジタル値58を用いてFIR演算を行う。FIR演算は、図2(d)に示すWOBD信号46に従い実行される。ここで、WOBD信号46はAD変換タイミング信号50よりAD変換器56での処理開始から第1のFIR演算器62での演算開始時間分だけ遅延されるため、図2(d)は図2(b)より若干遅延されて示されている。図2(e)は第1のFIR演算器出力信号64を示す。FIR演算によって、この第1のFIR演算器出力信号64の生成方法については別途説明する。2値化回路66はFIR演算された結果である第1のFIR演算器出力信号64を、例えば0をスライスレベルとして2値化する。図2(f)は2値化回路66の出力信号である2値化回路出力信号68を示す。図2(f)に示すように、0をスライスレベルとして2値化した場合、2値化回路出力信号68は図2(e)の第1のFIR演算器出力信号64の内、ゼロより大きい信号のみを取り出した波形となる。
【0018】
ラッチ回路70は、ウォブル信号34の1/N倍の周波数で2値化された信号68を更新して出力する。図2では、ウォブル信号の1倍の周波数を持つ図2(g)のラッチ信号52で2値化された信号68を更新して図2(h)に示す位相検波信号72を出力している。デコード回路74は位相検波信号72からアドレス76を生成する。光ディスク装置はこのアドレスを用いて、光スポットを目標のトラックに位置付けることが可能である。また、光ディスク32上の所定の位置に情報を記録することが可能である。
【0019】
次にFIR演算を説明する。まず、図3を用いて信号の説明をする。
図3はFIR演算を説明するための波形図である。図3(a)はAD変換器入力信号55であり、図3(b)に示すデジタル値58は、そのAD変換器入力信号55の略最大振幅の値を示す。今、n番目のAD変換器入力信号55のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n、X1nとし、n−1番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n−1、X1n−1とし、FIR演算の演算結果である第1のFIR演算器出力信号64をYnとする。WOBD信号46をもとに、AD変換タイミング信号が生成されるため、上述したようなウォブルとデジタル値の関係は容易に実現する。FIR演算には無限個の方式があるが、簡易な方式の数は限られる。以下に簡易な方式を示す。これらは用途によって使い分けられる。以下、数式を示すに当り、例えば、デジタル値X1n−1はX1nから1を引くと誤解されることを防ぐために、デジタル値については括弧で示した。即ち、デジタル値X1n−1を(X1n−1)で示した。
【0020】
第1の用途として使用されるFIR演算は、n番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた2タップのFIR演算であり、
Yn=(X1n)−(X2n)………(数1)
である。図2に示した信号はこのFIR演算を行っている。(数1)において、右辺第2項の負の係数は、右辺第1項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と2つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFである。FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。ラッチ回路70の更新タイミングであるラッチ信号72は、FIR演算するタイミングと同一である。
【0021】
第2の用途として使用されるFIR演算は、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いた4タップのFIR演算であり、
Yn=a×(X1n)−b×(X2n)+c×(X1n−1)−d×(X2n−1)……(数2)
で示される。ここで、a、b、c、dは0あるいは正の定数である。a、b、c、dの組み合わせも無限にあるが、LPFの特性を実現する上ではその特性に大差はない。4タップのFIR演算の中でも最も簡単なFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)……(数3)
である。
このFIR演算の信号を図4に示す。
図4は4タップのFIR演算を行なう際の各信号の波形図であり、正常に動作した場合の波形図を示す。図において、図4(a)〜図4(d)は図2(a)〜図2(d)と同じ信号であるため、その説明を省略する。図4(e)に示す第1のFIR演算器62の出力信号64は(数3)に従って演算することによって、4回反転しているので、黒点で示すゼロの部分が4個発生する。第1のFIR演算器62の出力信号64を2値化回路66で2値化すると図4(f)に示す2値化回路66の出力信号68が得られるので、この出力信号68を図4(g)に示すラッチ信号52を用いてラッチ回路70で処理すると、図4(h)に示す位相検波信号72が得られる。
【0022】
(数3)において、右辺第2および第4項の負の係数は、右辺第1および第3項と極性を同じにするものであり、従来の技術で示した搬送波を乗算する乗算器に相当する。すなわち、このFIR演算は乗算器と4つのデジタル値の平均演算を意味する。平均演算を行うFIRフィルタとしての特性はLPFであり、2つのデジタル値の平均演算を行う2タップのFIRフィルタに比べて信号通過帯域は約半分である。そのため、4タップのFIR演算はノイズを低減する効果が優れており、ウォブル信号のSN比が小さい記録された光ディスクのアドレス再生に適している。
FIR演算の式からわかる通り、FIR演算はウォブル信号の1倍の周波数で行うことができる。しかしながら、n番目とn−1番目のウォブル信号から得られるデジタル値を用いて平均演算を行うため、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、FIR演算された信号が約0となる。図4(e)ではウォブルの反転が4回行われているため、第1のFIR演算器出力信号は4回0となっている。FIR演算された信号は、例えば0をスライスレベルとして2値化されるので、条件によって2値化された信号が0にも1にもなり誤動作を引き起こす。この不具合は、n番目とn−1番目のウォブルの位相が反転していた場合、2値化された信号を更新しないことにより回避できる。すなわち、ラッチ信号をウォブル信号の1/2倍の周波数とし、さらにラッチするタイミングではウォブルの位相が反転しないように、ラッチ信号を調整する必要がある。ウォブル信号の1/2倍の周波数のラッチ信号はWOBD信号を分周して作成される。
【0023】
もし、図4(g)のラッチ信号が、1ウォブル周期ずれていたら、位相検波信号は出力されない。その状態を図5に示す。
図5は4タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図であり、正常に動作しない場合の波形図を示す。図5において、図5(a)〜図5(f)は図4(a)〜図4(f)と同じであるため、その説明を省略する。図5(g)のラッチ信号52では、図5(f)の2値化回路の出力信号68が発生された場所に信号がないので、図5(h)に示すように、位相検波信号72は得られない。これは、ラッチ信号52のタイミングミスであり、確立は1/2である。従って、この場合、ラッチ信号の位相をウォブル周期で調整する必要がある。すなわち、図4の状態か図5の状態かを選択することである。
この調整方法は種々ある。アドレスが再生可能な方を選択してもよいし、2値化回路のスライスレベルを正の値として、ラッチ信号の有無を判定基準としてもよい。この処理は、タイミング信号生成回路48で実施される。ただし、このFIR演算が単純に適用されるためには、位相が同じウォブルが偶数個連続している必要がある。
【0024】
図10に示した従来の光ディスクでは、位相の反転したウォブルが「SYNC」では4個連続しており、「1」および「0」では2個連続しているため、上述した2タップおよび4タップのFIR演算がともに適用可能である。ただし、4タップのFIR演算では位相変調部分の先頭にある1個のウォブルの反転部分は検出できない。そもそもこれは検出する必要がない。図4(e)で最初に第1のFIR演算器出力信号が0となるウォブルである。一方、奇数である93個のウォブル毎に位相変調部分が設けられている。この場合、4タップのFIR演算を単純に適用することはできない。位相変調部分毎に、2値化された信号を更新するタイミングがウォブル1周期ずれてしまうためである。言い換えれば、位相変調部分毎に、図4と図5の状態が交互に発生する。この不具合は、更新するタイミングを93ウォブル毎にウォブル信号の1周期に相当する時間ずらすことにより回避できる。
【0025】
図6は4タップにおけるラッチ信号のタイミングの補正を説明するための波形図である。図6(a)はウォブルの位相変調部分2及び85個の位相が一定な正弦波であるウォブル4を有するウォブル信号である。図6(b)はウォブル4を示す。図6(c)では、ラッチ信号52を位相変調部分2と位相変調部分2の間で、ウォブル信号の1周期に相当する時間ずらしている。この処理は、タイミング信号生成回路48で実施される。
【0026】
2タップのFIR演算では、2値化された信号を更新して出力するタイミングを調整する必要もなく、93ウォブル毎にずらす必要もない。従って、検出精度の観点では4タップのFIR演算が2タップのFIR演算より優れ、簡易性の観点では2タップのFIR演算が4タップのFIR演算より優れている。この特長を踏まえ、記録処理を開始する前のアドレス再生には記録されているか否かに限らず検出精度の高い4タップのFIR演算を用い、シーク処理を行うためのアドレス再生には記録されたIDの再生、あるいは2タップのFIR演算を用いる使用方法が最適な使い方である。使い方に応じて、第1のFIR演算器62とタイミング生成回路48をそれぞれの設定に切り替えればよい。ただし、図2と図4からわかる通り、位相検波信号72の出力されるタイミングが1ウォブル周期ずれている。これは、2タップと4タップのFIR演算でアドレスが再生されるタイミングが1ウォブル周期異なることを意味している。これはアドレスが再生されるタイミングが異なることになるので、それを加味して再生すればよい。
【0027】
これまで、冒頭で述べたように,検出原理の説明に重点をおいてきた。位相変調を光ディスクのアドレスに適用した場合、光ディスク特有の課題が発生する。それは、位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界で、ウォブル信号の振幅が変動することである。
主な要因は3つある。以下、主な要因について、図7を用いて説明する。
図7はウォブル信号の振幅の変動の要因を説明するための波形図であり、図7(a)は第1のウォブル信号を、図7(b)はAD変換器入力信号を、図7(c)は第2のウォブル信号を示す。
第1の要因は、隣接するグルーブとの距離の変動によるものである。これは光ディスクからの反射光の回折特性に起因している。この場合のウォブル信号を第1のウォブル信号34aとして図7(a)に示す。図では、切替直後のウォブル34aaの振幅とそれから1周期経過した後のウォブル34abの振幅が小さくなっている。第2の要因は、ディスクの汚れ、トラッキングサーボ系の追従誤差を取り除くHPFによるものである。これはPSK方式の信号帯域を制限することに起因している。この場合のAD変換器の入力信号55を図7(b)に示す。図では、切替直後におけるAD変換器の入力信号55aの振幅が小さくなっている。第3の要因は、光ディスクの製造プロセスによるものである。グルーブが欠けた場合のウォブル信号を図7(c)に示す。図では、第2のウォブル信号34bの34ba、34bbで示す部分で反転されるべきであるが反転されておらず、振幅も変化している。この要因では、特にHPFの影響が顕著で、他の2要因の振幅変動を強調してしまう。
【0028】
位相変調されていないウォブルと位相変調されたウォブルの境界での、ウォブル信号の振幅変動を考慮したFIR演算は3方式ある。振幅変動が発生しているデジタル値をFIR演算に用いないことで課題を解決することが可能である。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)……(数4)
で表される。
ウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)……(数5)
で表される。
ウォブルの位相が反転した直後のデジタル値、およびウォブルの位相が反転する直前のデジタル値を省いた場合のFIR演算は、
Yn=−(X2n)+(X1n−1)……(数6)
で表される。
【0029】
最後に、AD変換するタイミングの決定方法について説明する。図1に示す遅延回路44はWOB信号40を所定量遅延させたWOBD信号46を生成する。AD変換タイミング信号50はWOBD信号から生成されるため、AD変換するタイミングは遅延回路44の遅延量により決定される。AD変換するタイミングの指標に、FIR演算された信号の振幅と極性を用いる。
図8はAD変換タイミングとFIR演算された信号の平均値の関係を示す特性図であり、横軸にAD変換タイミングを示し、縦軸に第1のFIR演算器の出力信号の平均値を示す。図の特性線91ではAD変換するタイミングが0の位置が、本来のAD変換するタイミングである。ウォブル信号の2倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングではFIR演算された信号が0でない。本来のAD変換するタイミングから、AD変換するタイミングをウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらした場合、FIR演算された信号は0となる。この特性を利用し、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングを求める。それに対しウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずらしたAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングである。
【0030】
また、ウォブル信号の4倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器では、本来のAD変換するタイミングからウォブル信号の1/4周期に相当する時間ずれたタイミングでAD変換を行っていることとなる。そのため、位相検波演算器60が使用しないデジタル値を用いて、図1の第2のFIR演算器78で、位相検波演算器60と同様のFIR演算を行うと、FIR演算された信号が0となるAD変換タイミングが、求めるAD変換タイミングとなる。
図9はAD変換タイミングと第1のFIR演算器および第2のFIR演算器がFIR演算した信号の平均値の関係を示す特性図であり、横軸にAD変換タイミングを、縦軸はFIR演算器の出力信号の平均値をしめす。図において、
特性線92は第1のFIR演算器62の出力信号の平均値であり、特性線95は第2のFIR演算器78の出力信号の平均値であり、特性線95の位相は特性線95の位相に比べπ/4だけずれているので、第2のFIR演算器78の出力を利用してAD変換タイミングを求めることができる。
【0031】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ウォブル信号に含まれるノイズを低減できるとともに、ウォブル信号の振幅変動の影響を回避できるため、ウォブル信号からアドレスを高精度に検出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による光ディスク装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】2タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図である。
【図3】FIR演算を説明するための波形図である。
【図4】4タップのFIR演算を行なう際の各信号の波形図である。
【図5】4タップのFIR演算を行う際の各信号の波形図である。
【図6】4タップにおけるラッチ信号のタイミングの補正を説明するための波形図である。
【図7】ウォブル信号の振幅の変動の要因を説明するための波形図である。
【図8】AD変換タイミングとFIR演算された信号の平均値の関係を示す特性図である。
【図9】AD変換タイミングと第1のFIR演算器および第2のFIR演算器がFIR演算した信号の平均値の関係を示す特性図である。
【図10】従来の光ディスクに設けられたウォブルからのウォブル信号の波形図である。
【図11】従来のPSK復調回路のブロック図である。
【符号の説明】
2…位相変調部分、4…位相が一定の正弦波、10…PSK変調信号受信、12…搬送波再生回路、14…搬送波、16…位相検波回路、18…乗算器、20…LPF回路、22…ベースバンド信号、24…識別再生回路、26…受信デジタル信号、30…光ヘッド、32…光ディスク、34…ウォブル信号、36…BPF回路、38…PLL回路、40…WOB信号、42…WOBCLK信号、44…遅延回路、46…WOBD信号、48…タイミング信号生成回路、50…AD変換タイミング信号、52…ラッチ信号、54…フィルタ回路、56…AD変換器、58…デジタル値、60…位相検波演算器、62…第1のFIR演算器、64…第1のFIR演算器の出力信号、66…2値化回路、68…、70…ラッチ回路、72…位相検波信号、74…デコード回路、76…アドレス、78…第2のFIR演算器、80…第2のFIR演算器の出力信号。
Claims (17)
- 一定の周波数で蛇行し、かつアドレスが局所的に変調されているグルーブを有する光ディスクから得られたウォブル信号を、該ウォブル信号の少なくとも2倍の周波数でデジタル値に変換するAD変換器と、該デジタル値にFIR演算を行い、FIR演算された信号を2値化し、該ウォブル信号の1/N倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する位相検波演算器と、該位相検波演算器の出力信号からアドレスを識別するデコード回路とを備えることを特徴とする光ディスク装置。
- 一定の周波数で蛇行し、かつアドレスが局所的に変調されているグルーブを有する光ディスクに、光スポットを位置付ける光ディスク装置であって、該光ディスク上に光スポットを照射し、反射光からウォブル信号を検出する光ヘッドと、該ウォブル信号の少なくとも2倍の周波数で該ウォブル信号をデジタル値に変換するAD変換器と、該デジタル値にFIR演算を行い、FIR演算された信号を2値化し、該ウォブル信号の1/N倍の周波数で2値化された信号を更新して出力する位相検波演算器と、該位相検波演算器の出力信号からアドレスを識別するデコード回路とを備えることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該Nは1であることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該Nは2であることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該Nは1と2を切り替えて使用されることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該位相検波演算器は2タップのFIR演算器を備えることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該位相検波演算器は4タップのFIR演算器を備えることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、n番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n、X1nとし、FIR演算の演算結果をYnとすれば、FIR演算が
Yn=(X1n)−(X2n)
であることを特徴とする光ディスク装置。 - 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、n番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n、X1nとし、n−1番目のウォブル信号のAD変換された2つのデジタル値を、変換した順にX2n−1、X1n−1とし、a、b、c、dを0あるいは正の定数とし、FIR演算の演算結果をYnとすれば、FIR演算が
Yn=a×(X1n)−b×(X2n)+c×(X1n−1)−d×(X2n−1)
であることを特徴とする光ディスク装置。 - 請求項9記載の光ディスク装置において、FIR演算が
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)
であることを特徴とする光ディスク装置。 - 請求項9記載の光ディスク装置において、FIR演算が
Yn=(X1n)−(X2n)+(X1n−1)
であることを特徴とする光ディスク装置。 - 請求項9記載の光ディスク装置において、FIR演算が
Yn=−(X2n)+(X1n−1)−(X2n−1)
であることを特徴とする光ディスク装置。 - 請求項9記載の光ディスク装置において、FIR演算が
Yn=−(X2n)+(X1n−1)
であることを特徴とする光ディスク装置。 - 請求項4記載の光ディスク装置において、該位相検波演算器は、所定の期間ごとに、2値化された信号を更新して出力するタイミングをウォブル信号の1周期に相等する時間ずらすことを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該FIR演算された信号の振幅と極性を用いて、AD変換するタイミングを決定することを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項1又は2記載の光ディスク装置において、該位相検波演算器はFIR演算器と、2値化回路と、ラッチ回路で構成されていることを特徴とする光ディスク装置。
- 請求項16記載の光ディスク装置において、他のFIR演算器を設け、該AD変換器は、ウォブル信号の少なくとも4倍の周波数でウォブル信号をデジタル値に変換し、該4倍の周波数でウォブル信号が変換されたデジタル値を該FIR演算器で演算し、その結果によってAD変換するタイミングを決定することを特徴とする光ディスク装置。
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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WO2005036548A1 (ja) * | 2003-10-09 | 2005-04-21 | Ricoh Company, Ltd. | ウォブル信号復調方法、ウォブル信号復調回路及び光ディスク装置 |
KR100635322B1 (ko) | 2004-11-11 | 2006-10-18 | 가부시끼가이샤 도시바 | 정보 기록 매체, 정보 기록 매체의 평가 방법 및 장치,정보 기록 매체의 제조 방법 |
-
2002
- 2002-11-29 JP JP2002347139A patent/JP2004178770A/ja active Pending
Cited By (3)
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