JP2004176096A - 一次精錬用石灰系フラックス - Google Patents
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Abstract
【課題】石灰自体のポーラス化を高め、かつカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトによる石灰溶融滓化作用の促進を図り、石灰消費量の低減や精錬時間の短縮が実現できる一次精錬用石灰系フラックスを提供すること。
【解決手段】石灰石を1ミリメートル以下の粉粒状に砕き、この粉粒石灰石に略同サイズの粉粒化されたカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの既製品を混入する。水を添加して略5ないし60ミリメートル径に造粒し、その造粒物をロータリキルンにより850ないし1,050℃で焼成する。生石灰をポーラス質と化し、このポーラス石灰中にカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを散在させる。カルシウム・アルミネート等と生石灰とが近接した混在状態を維持し、精錬炉におけるカルシウム・アルミネートの影響を生石灰に直ちに及ぼすことができるようにしておく。
【解決手段】石灰石を1ミリメートル以下の粉粒状に砕き、この粉粒石灰石に略同サイズの粉粒化されたカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの既製品を混入する。水を添加して略5ないし60ミリメートル径に造粒し、その造粒物をロータリキルンにより850ないし1,050℃で焼成する。生石灰をポーラス質と化し、このポーラス石灰中にカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを散在させる。カルシウム・アルミネート等と生石灰とが近接した混在状態を維持し、精錬炉におけるカルシウム・アルミネートの影響を生石灰に直ちに及ぼすことができるようにしておく。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は一次精錬用石灰系フラックスに係り、詳しくは、カルシウム・アルミネート/カルシウム・フェライトによる石灰溶融滓化作用を増進させると共に、石灰のポーラス化促進による反応性の増強を図り、溶銑の脱硫・脱燐により溶鋼を溶製する一次精錬に好適な石灰系フラックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉や電気炉等の金属精錬炉内の溶湯に含まれる硫黄分や燐酸分等と反応して脱硫スラグや脱燐スラグを生成させるために、石灰系フラックスが使用されることは従来からよく知られている。そのフラックス(造滓材)の代表的なものは、生石灰CaOである。これは、溶湯中に含まれている珪素が酸化されてSiO2 となるとCaO・SiO2 と化し、燐が気体酸素もしくは固体酸素と反応してP2 O5 となると、nCaO・P2 O5 (n=2ないし5)を生成する反応を呈するからである。
【0003】
また、硫黄分については、溶湯中のサルファをCaOと反応させてCaSが生成され、金属Mgが添加されている場合にはそれによっても最終的にCaSを生成させ、これがスラグ中へ移行するようにしている。なお、生石灰にはミルスケールFe2 O3 や蛍石CaF2 が混合され、その滓化性の向上が図られることも多い。
【0004】
ミルスケールは脱燐を促すための酸化剤であり、蛍石は融点の高い生石灰の反応性を高めるための融剤として機能する。すなわち、蛍石は塩基性スラグの塩基度を下げることなくスラグの流動性をよくし、造滓作用を活発化させる。ちなみに、脱燐は低温度・酸化性雰囲気であることが必要であるが、スラグが高塩基度であることも要求される。
【0005】
ところで、塩基性炉の発達もあって、P2 O5 の生成のために必要となる酸素源として、気体酸素やミルスケールなどが使用できるようになった。そのため、カルシウム・フェライトによる脱燐の研究も多くなされてきている。例えば特公昭39−25884号公報には、酸化鉄ダストに水を加えた泥漿と石灰石CaCO3 とを混合して1,200℃以上で焼成し、これによって生石灰CaOの表面にカルシウム・フェライトを形成しておくことが記載されている。
【0006】
このカルシウム・フェライトで被覆された生石灰を滓化剤として溶湯に添加すると、吹錬終期において滓化が急速に進行していたのが早い時期から溶融滓化し始めて、精錬能率が改善されるという。このように脱燐・脱硫効果が上がるとすれば、それは、融点の低いカルシウム・フェライトが、石灰石CaCO3 を焼成することによって生じた生石灰の融解を促しているからと言える。
【0007】
特公昭49−48369号公報にも、カルシウム・フェライトを使用して滓化能の向上を図ることが開示されている。このカルシウム・フェライトも生石灰にコーティングされたものであるが、ジカルシウム・フェライト2CaO・Fe2 O3 を主成分としておけば耐消化性に優れ、表層が低融点であって滓化速度も速くなると説明されている。
【0008】
【特許文献1】
特公昭39−25884号公報
【特許文献2】
特公昭49−48369号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、石灰石にアルミナやフェライトを加えて1,300ないし1,350℃で焼き、これによってカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを得ようとする試みがなされてきた。カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトはそれ自体が脱硫等の機能を発揮するのでなく、石灰の融解を促しつつもシリカとの無用の反応を抑え、溶銑中のサルファとの反応機会を与えて脱硫能を高めるように作用する。そして、生成スラグの融化も促すように機能するものである。
【0010】
しかし、実際には1,350℃以上で長時間掛けなければカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトは生成されず、一方、その焼成の間に石灰石から生石灰が生成されてもそれが焼き締まったものとなり、一次精錬において高い反応性を発揮する石灰は簡単には得られないことが判明した。
【0011】
石灰石は焼成すると生石灰になるが、その際、CO2 ガスが抜けることによって微細な孔が残り、ポーラス状となる。従って、石灰に生じた細孔に溶銑が進入すればCaOと溶鉄との接触の機会が増え、脱燐や脱硫の進行がはかどることになる。しかし、そのポーラスは所詮極めて小さなものであり、反応性の向上が図られるにしても目を惹くほどのものでない。
【0012】
そこで、本出願人は、特許第3,005,770号において、1,100℃程度で石灰を焼こうとする場合、石灰石を予め粉砕し、これを水で練って5ミリメートル径以上の造粒物としておくことを提案した。これを焼けば、水分が飛ばされかつCO2 が抜けることによって、多数のしかも大きい空孔を形成できるからである。
【0013】
しかし、単に水で練った造粒物を低い温度で焼いているだけであるので粒間結合力は乏しく、塊状物としてはいささか脆いものとなる。これを溶銑に投入すると、空孔に進入した溶鉄によって結合力が弱められ、生石灰の粒塊が溶銑中で保形できなくなる。細かくなって散らばれば生石灰が溶銑中のシリカと反応しやすくなり、その表面が融点の高い2CaO・SiO2 で覆われたりすると、CaOの以後の融解が遅延したり妨げられることにもなる。
【0014】
ところで、低温で焼成して得られた生石灰は上記したようにして空孔が生じ、全体としてポーラス質となる。このような性状を呈することは溶銑との接触率を高める点で極めて都合がよく、脱硫反応等の向上を期待させる。このような粉粒石灰石にAl2 O3 やFe2 O3 を混入させて造粒しておき、これを焼成してカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを生成することができれば、生石灰の造滓作用を増強することができるが、上記したように石灰の焼き締まりをきたして狙いどおりにはならないのが実情である。
【0015】
そこで、粉粒石灰石にAl2 O3 やFe2 O3 を混ぜておくが焼成温度は低くし、生石灰のポーラス化を図る一方でアルミナやフェライトの性状変化は期待せず、これらが混じった造塊物を溶銑に投入した時点でカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトに変成させようとする試みもなされている。
【0016】
しかし、成分調整などに供される二次精錬に比べて溶湯温度の低い一次精錬では、カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを生成させることができないか極めて長い時間を要し、与えられた操業時間内では生石灰の脱硫反応促進や反応物のスラグ化に対してさしたる成果を見ることができない。なお、時間を掛けて生成できたとしても脱硫時間が長引くだけであり、精錬能率は著しく低下したものとなってしまう。
【0017】
本発明は上記した問題に鑑みなされたもので、その目的は、カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトによる石灰溶融滓化作用を促進させることができると共に、石灰自体はサルファ等との反応性を高く発揮すべくポーラス化を高めておくことができ、ひいては石灰消費量の低減や精錬時間の短縮が実現されるようにした一次精錬用石灰系フラックスを提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶銑に投入されて脱硫・脱燐することにより、一次精錬された溶鋼を溶製するための石灰系フラックスに適用される。その特徴とするところは、石灰石を1ミリメートル以下の粉粒状に砕き、この粉粒石灰石に略同サイズの粉粒化されたカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの既製品を混入する。水を添加して造粒し、その造粒物を850ないし1,050℃で焼成して生石灰をポーラス質と化し、このポーラス石灰中にカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを散在させるようにしたことである。
【0019】
カルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの混入量は、石灰石100重量部に対して5ないし15重量部としておく。そのカルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトとを併用することも可能で、その場合でも石灰石との混成比は5ないし15重量部とする。
【0020】
この造粒物には、水酸化マグネシウムを混入させておくことが望ましい。なお、酸化マグネシウムを混入するようにしてもよい。
【0021】
粉粒石灰石に代えて、ライムケーキ(製糖滓)としたり、消石灰(水酸化カルシウム)Ca(OH)2 を採用することもできる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、石灰石造粒物が平均的には1,200℃を上回ることのない温度で焼成されるので、石灰石は水分とCO2 ガスの抜けたポーラス質豊かな生石灰に変成し、その生石灰に高い造滓能力が与えられる。一方、その造粒石灰にはカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライト(以下カルシウム・アルミネート等という)の粉粒体が造粒の段階で混練されるので、これが溶銑への投入初期の段階で融解し、生石灰の溶融を促して造滓作用を増進する。
【0023】
カルシウム・アルミネート等は造粒物の焼成温度が高まってきた時点で粉粒子間の結束を強め、溶銑への投入時点で造粒物空孔に溶銑が進入しても塊粒の早期崩壊を抑え、また溶銑投入直後の生石灰シリカ反応を抑止したり、脱硫等の反応で生じた滓化物のスラグ移行やスラグ融点の降下作用をもたらし、精錬効率の向上と精錬時間の短縮が図られる。
【0024】
カルシウム・アルミネート等の混入量を、粉粒石灰石100重量部に対して5ないし15重量部としておけば、カルシウム・アルミネート等によって一次精錬中生石灰に及ぼす影響を最大限に引き出すことができる。なお、カルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトを併用することも差し支えなく、その場合の混入量はいずれか一方を混入する場合と同様にとどめておけば、生石灰の造滓作用等を損なうことはない。
【0025】
ところで、石灰造粒物に水酸化マグネシウムを混入しておけば、造粒物を焼成したことによってMgOを生成させることができ、これが精錬炉耐火壁の侵蝕に対して保護作用を発揮して、都合がよい。その水酸化マグネシウムは水溶液のかたちで造粒用の水と共にもしくはその水に代えて使用することができ、これが水より高い粘性を発揮するバインダとして造粒物の保形性を高めるようにも作用する。なお、酸化マグネシウムMgOを混入しておけば、造粒物の保形性を高めるようには作用しないものの、精錬炉耐火壁の侵蝕に対して保護作用を発揮させることができる。
【0026】
粉粒石灰石に代えて、ライムケーキを採用したり消石灰とすることもできる。いずれも粉体であって石灰石の場合のように粉砕エネルギを消費することはなくなる。ライムケーキは産業廃棄物であり、その資源化も図られる。一方、消石灰は焼成するとCaCO3 を焼成した場合よりも反応性の高い生石灰を生成する。これは、フラックスとのして効用を著しく増強する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る一次精錬用石灰系フラックスを詳細に説明する。これは溶銑に投入されて脱硫・脱燐し、一次精錬された溶鋼を溶製するためのものである。その造滓作用を高めるべくカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを伴い、かつ豊富な空孔を持ったポーラス質のすなわち反応性の高い生石灰を得ようとするものである。
【0028】
従来技術の項でも述べたが、1,350℃以上にならなければ生成することができないカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを、精錬中に造滓反応と並行して生成することは現実的でない。また、石灰中にアルミナを添加してフラックス製造時にカルシウム・アルミネート等を生成させようとすれば焼成温度を高くしなければならなず、この場合生石灰が焼き締まり、反応性の低いものとなる。逆に焼成温度を抑えれば、ポーラス石灰は生成できるとしてもアルミナがそのまま残り、融化作用を発揮するカルシウム・アルミネートは生成することができない。
【0029】
これらの実情を踏まえて、本発明は、石灰の中にカルシウム・アルミネート/カルシウム・フェライトを顕在化させるために、既製のカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトをフラックス製造の初期段階で添加しておこうとするものである。
【0030】
まず、カルシウム・アルミネートを例にして説明する。これは製造するときの温度条件によって高温焼結品(焼結温度約1,380)であったりプリメルト品(生成温度1,480℃)であったりする。いずれにしても、以後の焼成処理において軟化しやすくまた精錬中融解しやすい性状となっている。焼成過程では石灰石から生じた生石灰に粒子間結合力を与えて造粒・造塊物の保形性を高め、精錬過程ではそれ自体の融解により生石灰を無用の反応から保護する。加えて、生石灰に対する融化作用を発揮して生石灰の造滓機能を高める。さらには、造滓物のスラグ移行化、ならびにその低融点化をも促すようにも作用する。
【0031】
そのフラックスの製造工程から、以下に述べる。まず、石灰石を1ミリメートル以下の造粒しやすい粉粒状に砕く。この粉粒石灰石に、略同サイズに粉粒化させたカルシウム・アルミネート12CaO・7Al2 O3 の既製品を混ぜる。その混入量は、石灰石100重量部に対して20重量部以下、好ましくは5ないし15重量部とし、その混合物に水を添加して略5ないし60ミリメートル径に造粒する。
【0032】
その造粒物をロータリキルンにより850ないし1,050℃で焼成する。混練物にはかなりの水分が含まれるが、これは焼成炉において100℃になれば消散し、水の抜けたところが空孔化する。焼成温度が800℃にもなればCaCO3 からCO2 が抜けて微細な孔が追加され、二種類の孔を持ったポーラス質豊かな生石灰CaOが生成される。
【0033】
このように焼成温度が平均的には1,200℃に満たないので、生成された生石灰が焼き締まってしまうことはない。ましてや1,100℃までに留めるようにしているので、ポーラス質化の促進とその保持がなされ、焼き締まりの回避はより一層確かなものとなる。
【0034】
このポーラス生石灰の粒塊には、カルシウム・アルミネートのかなりの部分が混練時そのままに散在する。カルシウム・アルミネートは1,000℃前後での焼成で化学的に変成することはないが、軟化するなど一部性状を変化させた部分は生石灰粒相互の付着性を強め、粒塊物の保形性を高める。それと共に、両者が近接した混在状態を維持させることになるので、精錬炉に投入されれば生石灰に対してカルシウム・アルミネートの挙動の影響を直ちに受けられるようにしておく条件も整う。
【0035】
カルシウム・アルミネートはCaOとAl2 O3 の溶融混成物であるが、上記の説明から分かるように、本発明は焼成工程・精錬工程のいずれにおいてもこれを生成させようというのではない。すなわち、カルシウム・アルミネートの既製品を直接使用することにして、それを砕き石灰石粉造粒の際に混入させておくことにしている点が注目すべきところである。
【0036】
このカルシウム・アルミネート等はその製造過程で一旦溶融されており、熱を加えれば融解しやすい性状の固溶体である。生石灰との混成状態にあるとはいえども精錬炉に投入されれば1,200℃前後で融化する。従って、焼成中は生石灰に粒塊結合力を与え、精錬中は空孔に溶鉄が進入し始めても生石灰の急激な崩壊を抑え、融解すればそれが石灰表面を覆って表層の2CaO・SiO2 化を抑止制御し、CaOのその後の溶融や造滓反応を助成する。
【0037】
生石灰とカルシウム・アルミネートとを精錬炉で用いる場合、従来はそれを炉頂の開口を通して落とし込むようにしている。それゆえ、溶銑内で均一に混じり合うには時間を要する。その結果、投入当初ほとんどの生石灰はカルシウム・アルミネートによる恩恵を受けることができず、溶銑の流動で均一に混合されるのを待つことになる。この間にシリカと無用の反応を起こしたり、造滓作用に入るまでに多くの時間を費やし、溶製操作の能率低下をきたす。
【0038】
本発明は、1,380℃といったように生成温度が高いカルシウム・アルミネートであっても、一旦溶融生成された後の固溶体や高温焼結品となっていると、1,200℃程度で十分に融解するとの知見を得てなされたものである。また、焼成の段階においては軟化して造粒物のバインダとして機能させ得ることも見い出したことによる。
【0039】
それのみならず、カルシウム・アルミネートを焼成物中に顕在させておけば、ポーラス生石灰とカルシウム・アルミネートとを常時近接状態に置いておくことができるとの見通しをも踏まえたものである。これによって、精錬炉で均一混合状態とされるまでの待機時間は可及的に排除される。カルシウム・アルミネートは高温焼結品もしくはプリメルト品であるからそれが早期に融解し、投入当初起こりやすいSiO2 との不都合な反応は阻止される。同時にカルシウム・アルミネートが生石灰の融材として機能し、その溶融を促すことは既に述べたとおりである。
【0040】
生石灰の豊かなポーラスと相まって石灰の活性が高められ、生石灰の脱酸、脱硫、脱燐等のための反応が促進され、例えば生成CaSの造滓化やスラグ移行を誘うと共に生成スラグの低融点化を助長する。石灰の溶融の促進と石灰の反応性向上は脱硫等の作用を加速し、これが精錬時間の短縮におおいに寄与することは言うまでもない。
【0041】
ちなみに、石灰石を粉砕したとき、その粉粒体は細かいほどよいが、粉砕動力の節減や造粒の可否の観点から、1ミリメートルアンダーとしている。また、カルシウム・アルミネートの混入量を5重量部以下としたときには、いずれかの段階で所望する効果が薄れ、15重量部を超すとましてや20重量部を超すと生石灰に対して過剰混入となり、その量に応じた成果が得られなくなる。
【0042】
結局は、粉粒石灰石100重量部に対して5ないし最大20重量部にとどめておくことが、高価なカルシウム・アルミネートを使用するうえで好ましいということになる。しかし、この範囲にあるにしても、石灰と均一に混ざり合っていることが重要であることは述べるまでもない。
【0043】
そのカルシウム・アルミネートによる貢献は上記したところであるが、時期を失したカルシウム・アルミネートの融解は意味をなさず、生石灰の挙動や反応に対して時機を得た融解は、本発明によって達成されるものであることを銘記すべきである。
【0044】
以上は、カルシウム・アルミネートを使用した場合について述べた。しかし、カルシウム・フェライト2CaO・Fe2 O3 についても、同様に適用することができる。それはカルシウム・アルミネートと同じく溶融混成物であり、その挙動も特に区別するほどの違いがないからである。もちろん、これも既製品を採用し、粉粒状に砕いて粉粒石灰石と共に造粒造塊されることになる。
【0045】
これから推測できるように、カルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトとを併用することも何ら差し支えない。カルシウム・アルミネートは脱硫・脱炭能力が高く、カルシウム・フェライトは脱燐能力が高い。これらが混在すれば溶製効率が上がることは言うまでもない。もちろん、併存させても他方の作用を抑制したり減殺することはない。
【0046】
ところで、造粒物を作るにあたり水酸化マグネシウムMg(OH)2 を、1ミリメートル以下の粉粒状石灰石100重量部に対して3ないし10重量部となるように混入させてもよい。水酸化マグネシウムは焼成された時点でMgOと化し、これが精錬時侵蝕される炉壁耐火物の保護作用を発揮するからである。また、これが造粒のための水と混ざった時点で水だけの場合よりは粘りを発揮し、造粒直後の保形性の向上や焼成中の粒塊崩壊の抑制に寄与して都合がよい。
【0047】
なお、造粒時に、MgOを直接混入しておくことを妨げるものではない。酸化マグネシウムは造粒物の保形性を高めるように機能しないが、精錬炉耐火壁の侵蝕に対して保護作用を発揮するからである。もう少しつけ加えるなら、MgOは造粒の際に添加される水によって影響を受けることがほとんどなく、その点に着目すればMgO単体で混ぜても、またMg(OH)2 と共に混ぜることも差し支えない。いずれにしても、添加量は粉粒状石灰石100重量部に対して3ないし10重量部でよいことが多い。
【0048】
ちなみに、一次精錬は溶銑から脱硫等の処理を施して溶鋼を得る工程である。本発明はこの工程において有用なフラックスを提供しようとするものであり、一次精錬で溶製された溶鋼の脱炭や脱水素、そして成分調整といった所望する鋼質の溶湯を得ようとする二次精錬においては、詳しくは述べないが必ずしも適当であるとは言えない。上記した作用や挙動は一次精錬で発現されるものであり、それゆえ、本発明は一次精錬に適用するに好適なフラックスであるというべきものである。
【0049】
ところで、造粒のために水を使用しているが、その水と共にまたは水に代えて水酸化マグネシウム水溶液を使用することもできる。水酸化マグネシウム水溶液で練れば粉粒石灰石や粉粒カルシウム・アルミネート等との混練物に粘りが出て保形性が上がる。また、カルシウム・アルミネートが軟化するまでの間の粘結材として補完的に作用させることもできる。もちろん、焼成によりMgOと化した後は炉壁保護作用を発揮するものであることも先に述べた例の場合と異なることろでない。
【0050】
上記した造粒物を作る際に粉粒石灰石に代えて、ライムケーキ(糖石灰)を使用することもできる。ライムケーキは製糖工程における炭酸石灰清浄法において生成された製糖廃滓であるが、その成分の大部分はCaCO3 であり、石灰石と実質的に変わらないからである。
【0051】
しかし、石灰石と異なる点は5ないし12ミクロン(μm)といったごとく極めて微細であること、そして製糖工程で得られるものであるだけに有機物が混入してそれに糖蜜が含まれていることである。従って、ライムケーキは造粒物の保形性を高めるには好適な素材となる。もちろん、石灰石のように粉砕する必要はなく、しかも産業廃棄物の有効利用にもつながる。
【0052】
粉粒石灰石に代えて、消石灰を使用することもできる。消石灰もまた微細な粉体であり、粉砕の必要がない造粒に好適な材料であると言える。消石灰は生石灰に水を加えれば簡単に得られるだけでなく、泥状の石灰乳としておいても、カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトとの造粒混成品を作るにあたり特に障害が生じるわけでもない。
【0053】
消石灰は焼成すれば生石灰となるが、これは石灰石を焼成して得た生石灰よりも比表面積が大きいことが知られている。その富んだポーラス性によって反応性は一段と高いものとなり、フラックスとして極めて都合のよいものが得られる。精錬炉に投入された状態では上記したいずれの例よりも脱硫反応は向上する。ちなみに、学術的に解明がなされているわけではないが、消石灰を1,000℃前後で焼いて得た生石灰はふけにくい性質をも備えており、輸送や保管性の面からも優れたフラックスということができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は一次精錬用石灰系フラックスに係り、詳しくは、カルシウム・アルミネート/カルシウム・フェライトによる石灰溶融滓化作用を増進させると共に、石灰のポーラス化促進による反応性の増強を図り、溶銑の脱硫・脱燐により溶鋼を溶製する一次精錬に好適な石灰系フラックスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉や電気炉等の金属精錬炉内の溶湯に含まれる硫黄分や燐酸分等と反応して脱硫スラグや脱燐スラグを生成させるために、石灰系フラックスが使用されることは従来からよく知られている。そのフラックス(造滓材)の代表的なものは、生石灰CaOである。これは、溶湯中に含まれている珪素が酸化されてSiO2 となるとCaO・SiO2 と化し、燐が気体酸素もしくは固体酸素と反応してP2 O5 となると、nCaO・P2 O5 (n=2ないし5)を生成する反応を呈するからである。
【0003】
また、硫黄分については、溶湯中のサルファをCaOと反応させてCaSが生成され、金属Mgが添加されている場合にはそれによっても最終的にCaSを生成させ、これがスラグ中へ移行するようにしている。なお、生石灰にはミルスケールFe2 O3 や蛍石CaF2 が混合され、その滓化性の向上が図られることも多い。
【0004】
ミルスケールは脱燐を促すための酸化剤であり、蛍石は融点の高い生石灰の反応性を高めるための融剤として機能する。すなわち、蛍石は塩基性スラグの塩基度を下げることなくスラグの流動性をよくし、造滓作用を活発化させる。ちなみに、脱燐は低温度・酸化性雰囲気であることが必要であるが、スラグが高塩基度であることも要求される。
【0005】
ところで、塩基性炉の発達もあって、P2 O5 の生成のために必要となる酸素源として、気体酸素やミルスケールなどが使用できるようになった。そのため、カルシウム・フェライトによる脱燐の研究も多くなされてきている。例えば特公昭39−25884号公報には、酸化鉄ダストに水を加えた泥漿と石灰石CaCO3 とを混合して1,200℃以上で焼成し、これによって生石灰CaOの表面にカルシウム・フェライトを形成しておくことが記載されている。
【0006】
このカルシウム・フェライトで被覆された生石灰を滓化剤として溶湯に添加すると、吹錬終期において滓化が急速に進行していたのが早い時期から溶融滓化し始めて、精錬能率が改善されるという。このように脱燐・脱硫効果が上がるとすれば、それは、融点の低いカルシウム・フェライトが、石灰石CaCO3 を焼成することによって生じた生石灰の融解を促しているからと言える。
【0007】
特公昭49−48369号公報にも、カルシウム・フェライトを使用して滓化能の向上を図ることが開示されている。このカルシウム・フェライトも生石灰にコーティングされたものであるが、ジカルシウム・フェライト2CaO・Fe2 O3 を主成分としておけば耐消化性に優れ、表層が低融点であって滓化速度も速くなると説明されている。
【0008】
【特許文献1】
特公昭39−25884号公報
【特許文献2】
特公昭49−48369号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、石灰石にアルミナやフェライトを加えて1,300ないし1,350℃で焼き、これによってカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを得ようとする試みがなされてきた。カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトはそれ自体が脱硫等の機能を発揮するのでなく、石灰の融解を促しつつもシリカとの無用の反応を抑え、溶銑中のサルファとの反応機会を与えて脱硫能を高めるように作用する。そして、生成スラグの融化も促すように機能するものである。
【0010】
しかし、実際には1,350℃以上で長時間掛けなければカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトは生成されず、一方、その焼成の間に石灰石から生石灰が生成されてもそれが焼き締まったものとなり、一次精錬において高い反応性を発揮する石灰は簡単には得られないことが判明した。
【0011】
石灰石は焼成すると生石灰になるが、その際、CO2 ガスが抜けることによって微細な孔が残り、ポーラス状となる。従って、石灰に生じた細孔に溶銑が進入すればCaOと溶鉄との接触の機会が増え、脱燐や脱硫の進行がはかどることになる。しかし、そのポーラスは所詮極めて小さなものであり、反応性の向上が図られるにしても目を惹くほどのものでない。
【0012】
そこで、本出願人は、特許第3,005,770号において、1,100℃程度で石灰を焼こうとする場合、石灰石を予め粉砕し、これを水で練って5ミリメートル径以上の造粒物としておくことを提案した。これを焼けば、水分が飛ばされかつCO2 が抜けることによって、多数のしかも大きい空孔を形成できるからである。
【0013】
しかし、単に水で練った造粒物を低い温度で焼いているだけであるので粒間結合力は乏しく、塊状物としてはいささか脆いものとなる。これを溶銑に投入すると、空孔に進入した溶鉄によって結合力が弱められ、生石灰の粒塊が溶銑中で保形できなくなる。細かくなって散らばれば生石灰が溶銑中のシリカと反応しやすくなり、その表面が融点の高い2CaO・SiO2 で覆われたりすると、CaOの以後の融解が遅延したり妨げられることにもなる。
【0014】
ところで、低温で焼成して得られた生石灰は上記したようにして空孔が生じ、全体としてポーラス質となる。このような性状を呈することは溶銑との接触率を高める点で極めて都合がよく、脱硫反応等の向上を期待させる。このような粉粒石灰石にAl2 O3 やFe2 O3 を混入させて造粒しておき、これを焼成してカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを生成することができれば、生石灰の造滓作用を増強することができるが、上記したように石灰の焼き締まりをきたして狙いどおりにはならないのが実情である。
【0015】
そこで、粉粒石灰石にAl2 O3 やFe2 O3 を混ぜておくが焼成温度は低くし、生石灰のポーラス化を図る一方でアルミナやフェライトの性状変化は期待せず、これらが混じった造塊物を溶銑に投入した時点でカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトに変成させようとする試みもなされている。
【0016】
しかし、成分調整などに供される二次精錬に比べて溶湯温度の低い一次精錬では、カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを生成させることができないか極めて長い時間を要し、与えられた操業時間内では生石灰の脱硫反応促進や反応物のスラグ化に対してさしたる成果を見ることができない。なお、時間を掛けて生成できたとしても脱硫時間が長引くだけであり、精錬能率は著しく低下したものとなってしまう。
【0017】
本発明は上記した問題に鑑みなされたもので、その目的は、カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトによる石灰溶融滓化作用を促進させることができると共に、石灰自体はサルファ等との反応性を高く発揮すべくポーラス化を高めておくことができ、ひいては石灰消費量の低減や精錬時間の短縮が実現されるようにした一次精錬用石灰系フラックスを提供することである。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は、溶銑に投入されて脱硫・脱燐することにより、一次精錬された溶鋼を溶製するための石灰系フラックスに適用される。その特徴とするところは、石灰石を1ミリメートル以下の粉粒状に砕き、この粉粒石灰石に略同サイズの粉粒化されたカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの既製品を混入する。水を添加して造粒し、その造粒物を850ないし1,050℃で焼成して生石灰をポーラス質と化し、このポーラス石灰中にカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを散在させるようにしたことである。
【0019】
カルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの混入量は、石灰石100重量部に対して5ないし15重量部としておく。そのカルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトとを併用することも可能で、その場合でも石灰石との混成比は5ないし15重量部とする。
【0020】
この造粒物には、水酸化マグネシウムを混入させておくことが望ましい。なお、酸化マグネシウムを混入するようにしてもよい。
【0021】
粉粒石灰石に代えて、ライムケーキ(製糖滓)としたり、消石灰(水酸化カルシウム)Ca(OH)2 を採用することもできる。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、石灰石造粒物が平均的には1,200℃を上回ることのない温度で焼成されるので、石灰石は水分とCO2 ガスの抜けたポーラス質豊かな生石灰に変成し、その生石灰に高い造滓能力が与えられる。一方、その造粒石灰にはカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライト(以下カルシウム・アルミネート等という)の粉粒体が造粒の段階で混練されるので、これが溶銑への投入初期の段階で融解し、生石灰の溶融を促して造滓作用を増進する。
【0023】
カルシウム・アルミネート等は造粒物の焼成温度が高まってきた時点で粉粒子間の結束を強め、溶銑への投入時点で造粒物空孔に溶銑が進入しても塊粒の早期崩壊を抑え、また溶銑投入直後の生石灰シリカ反応を抑止したり、脱硫等の反応で生じた滓化物のスラグ移行やスラグ融点の降下作用をもたらし、精錬効率の向上と精錬時間の短縮が図られる。
【0024】
カルシウム・アルミネート等の混入量を、粉粒石灰石100重量部に対して5ないし15重量部としておけば、カルシウム・アルミネート等によって一次精錬中生石灰に及ぼす影響を最大限に引き出すことができる。なお、カルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトを併用することも差し支えなく、その場合の混入量はいずれか一方を混入する場合と同様にとどめておけば、生石灰の造滓作用等を損なうことはない。
【0025】
ところで、石灰造粒物に水酸化マグネシウムを混入しておけば、造粒物を焼成したことによってMgOを生成させることができ、これが精錬炉耐火壁の侵蝕に対して保護作用を発揮して、都合がよい。その水酸化マグネシウムは水溶液のかたちで造粒用の水と共にもしくはその水に代えて使用することができ、これが水より高い粘性を発揮するバインダとして造粒物の保形性を高めるようにも作用する。なお、酸化マグネシウムMgOを混入しておけば、造粒物の保形性を高めるようには作用しないものの、精錬炉耐火壁の侵蝕に対して保護作用を発揮させることができる。
【0026】
粉粒石灰石に代えて、ライムケーキを採用したり消石灰とすることもできる。いずれも粉体であって石灰石の場合のように粉砕エネルギを消費することはなくなる。ライムケーキは産業廃棄物であり、その資源化も図られる。一方、消石灰は焼成するとCaCO3 を焼成した場合よりも反応性の高い生石灰を生成する。これは、フラックスとのして効用を著しく増強する。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係る一次精錬用石灰系フラックスを詳細に説明する。これは溶銑に投入されて脱硫・脱燐し、一次精錬された溶鋼を溶製するためのものである。その造滓作用を高めるべくカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを伴い、かつ豊富な空孔を持ったポーラス質のすなわち反応性の高い生石灰を得ようとするものである。
【0028】
従来技術の項でも述べたが、1,350℃以上にならなければ生成することができないカルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトを、精錬中に造滓反応と並行して生成することは現実的でない。また、石灰中にアルミナを添加してフラックス製造時にカルシウム・アルミネート等を生成させようとすれば焼成温度を高くしなければならなず、この場合生石灰が焼き締まり、反応性の低いものとなる。逆に焼成温度を抑えれば、ポーラス石灰は生成できるとしてもアルミナがそのまま残り、融化作用を発揮するカルシウム・アルミネートは生成することができない。
【0029】
これらの実情を踏まえて、本発明は、石灰の中にカルシウム・アルミネート/カルシウム・フェライトを顕在化させるために、既製のカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトをフラックス製造の初期段階で添加しておこうとするものである。
【0030】
まず、カルシウム・アルミネートを例にして説明する。これは製造するときの温度条件によって高温焼結品(焼結温度約1,380)であったりプリメルト品(生成温度1,480℃)であったりする。いずれにしても、以後の焼成処理において軟化しやすくまた精錬中融解しやすい性状となっている。焼成過程では石灰石から生じた生石灰に粒子間結合力を与えて造粒・造塊物の保形性を高め、精錬過程ではそれ自体の融解により生石灰を無用の反応から保護する。加えて、生石灰に対する融化作用を発揮して生石灰の造滓機能を高める。さらには、造滓物のスラグ移行化、ならびにその低融点化をも促すようにも作用する。
【0031】
そのフラックスの製造工程から、以下に述べる。まず、石灰石を1ミリメートル以下の造粒しやすい粉粒状に砕く。この粉粒石灰石に、略同サイズに粉粒化させたカルシウム・アルミネート12CaO・7Al2 O3 の既製品を混ぜる。その混入量は、石灰石100重量部に対して20重量部以下、好ましくは5ないし15重量部とし、その混合物に水を添加して略5ないし60ミリメートル径に造粒する。
【0032】
その造粒物をロータリキルンにより850ないし1,050℃で焼成する。混練物にはかなりの水分が含まれるが、これは焼成炉において100℃になれば消散し、水の抜けたところが空孔化する。焼成温度が800℃にもなればCaCO3 からCO2 が抜けて微細な孔が追加され、二種類の孔を持ったポーラス質豊かな生石灰CaOが生成される。
【0033】
このように焼成温度が平均的には1,200℃に満たないので、生成された生石灰が焼き締まってしまうことはない。ましてや1,100℃までに留めるようにしているので、ポーラス質化の促進とその保持がなされ、焼き締まりの回避はより一層確かなものとなる。
【0034】
このポーラス生石灰の粒塊には、カルシウム・アルミネートのかなりの部分が混練時そのままに散在する。カルシウム・アルミネートは1,000℃前後での焼成で化学的に変成することはないが、軟化するなど一部性状を変化させた部分は生石灰粒相互の付着性を強め、粒塊物の保形性を高める。それと共に、両者が近接した混在状態を維持させることになるので、精錬炉に投入されれば生石灰に対してカルシウム・アルミネートの挙動の影響を直ちに受けられるようにしておく条件も整う。
【0035】
カルシウム・アルミネートはCaOとAl2 O3 の溶融混成物であるが、上記の説明から分かるように、本発明は焼成工程・精錬工程のいずれにおいてもこれを生成させようというのではない。すなわち、カルシウム・アルミネートの既製品を直接使用することにして、それを砕き石灰石粉造粒の際に混入させておくことにしている点が注目すべきところである。
【0036】
このカルシウム・アルミネート等はその製造過程で一旦溶融されており、熱を加えれば融解しやすい性状の固溶体である。生石灰との混成状態にあるとはいえども精錬炉に投入されれば1,200℃前後で融化する。従って、焼成中は生石灰に粒塊結合力を与え、精錬中は空孔に溶鉄が進入し始めても生石灰の急激な崩壊を抑え、融解すればそれが石灰表面を覆って表層の2CaO・SiO2 化を抑止制御し、CaOのその後の溶融や造滓反応を助成する。
【0037】
生石灰とカルシウム・アルミネートとを精錬炉で用いる場合、従来はそれを炉頂の開口を通して落とし込むようにしている。それゆえ、溶銑内で均一に混じり合うには時間を要する。その結果、投入当初ほとんどの生石灰はカルシウム・アルミネートによる恩恵を受けることができず、溶銑の流動で均一に混合されるのを待つことになる。この間にシリカと無用の反応を起こしたり、造滓作用に入るまでに多くの時間を費やし、溶製操作の能率低下をきたす。
【0038】
本発明は、1,380℃といったように生成温度が高いカルシウム・アルミネートであっても、一旦溶融生成された後の固溶体や高温焼結品となっていると、1,200℃程度で十分に融解するとの知見を得てなされたものである。また、焼成の段階においては軟化して造粒物のバインダとして機能させ得ることも見い出したことによる。
【0039】
それのみならず、カルシウム・アルミネートを焼成物中に顕在させておけば、ポーラス生石灰とカルシウム・アルミネートとを常時近接状態に置いておくことができるとの見通しをも踏まえたものである。これによって、精錬炉で均一混合状態とされるまでの待機時間は可及的に排除される。カルシウム・アルミネートは高温焼結品もしくはプリメルト品であるからそれが早期に融解し、投入当初起こりやすいSiO2 との不都合な反応は阻止される。同時にカルシウム・アルミネートが生石灰の融材として機能し、その溶融を促すことは既に述べたとおりである。
【0040】
生石灰の豊かなポーラスと相まって石灰の活性が高められ、生石灰の脱酸、脱硫、脱燐等のための反応が促進され、例えば生成CaSの造滓化やスラグ移行を誘うと共に生成スラグの低融点化を助長する。石灰の溶融の促進と石灰の反応性向上は脱硫等の作用を加速し、これが精錬時間の短縮におおいに寄与することは言うまでもない。
【0041】
ちなみに、石灰石を粉砕したとき、その粉粒体は細かいほどよいが、粉砕動力の節減や造粒の可否の観点から、1ミリメートルアンダーとしている。また、カルシウム・アルミネートの混入量を5重量部以下としたときには、いずれかの段階で所望する効果が薄れ、15重量部を超すとましてや20重量部を超すと生石灰に対して過剰混入となり、その量に応じた成果が得られなくなる。
【0042】
結局は、粉粒石灰石100重量部に対して5ないし最大20重量部にとどめておくことが、高価なカルシウム・アルミネートを使用するうえで好ましいということになる。しかし、この範囲にあるにしても、石灰と均一に混ざり合っていることが重要であることは述べるまでもない。
【0043】
そのカルシウム・アルミネートによる貢献は上記したところであるが、時期を失したカルシウム・アルミネートの融解は意味をなさず、生石灰の挙動や反応に対して時機を得た融解は、本発明によって達成されるものであることを銘記すべきである。
【0044】
以上は、カルシウム・アルミネートを使用した場合について述べた。しかし、カルシウム・フェライト2CaO・Fe2 O3 についても、同様に適用することができる。それはカルシウム・アルミネートと同じく溶融混成物であり、その挙動も特に区別するほどの違いがないからである。もちろん、これも既製品を採用し、粉粒状に砕いて粉粒石灰石と共に造粒造塊されることになる。
【0045】
これから推測できるように、カルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトとを併用することも何ら差し支えない。カルシウム・アルミネートは脱硫・脱炭能力が高く、カルシウム・フェライトは脱燐能力が高い。これらが混在すれば溶製効率が上がることは言うまでもない。もちろん、併存させても他方の作用を抑制したり減殺することはない。
【0046】
ところで、造粒物を作るにあたり水酸化マグネシウムMg(OH)2 を、1ミリメートル以下の粉粒状石灰石100重量部に対して3ないし10重量部となるように混入させてもよい。水酸化マグネシウムは焼成された時点でMgOと化し、これが精錬時侵蝕される炉壁耐火物の保護作用を発揮するからである。また、これが造粒のための水と混ざった時点で水だけの場合よりは粘りを発揮し、造粒直後の保形性の向上や焼成中の粒塊崩壊の抑制に寄与して都合がよい。
【0047】
なお、造粒時に、MgOを直接混入しておくことを妨げるものではない。酸化マグネシウムは造粒物の保形性を高めるように機能しないが、精錬炉耐火壁の侵蝕に対して保護作用を発揮するからである。もう少しつけ加えるなら、MgOは造粒の際に添加される水によって影響を受けることがほとんどなく、その点に着目すればMgO単体で混ぜても、またMg(OH)2 と共に混ぜることも差し支えない。いずれにしても、添加量は粉粒状石灰石100重量部に対して3ないし10重量部でよいことが多い。
【0048】
ちなみに、一次精錬は溶銑から脱硫等の処理を施して溶鋼を得る工程である。本発明はこの工程において有用なフラックスを提供しようとするものであり、一次精錬で溶製された溶鋼の脱炭や脱水素、そして成分調整といった所望する鋼質の溶湯を得ようとする二次精錬においては、詳しくは述べないが必ずしも適当であるとは言えない。上記した作用や挙動は一次精錬で発現されるものであり、それゆえ、本発明は一次精錬に適用するに好適なフラックスであるというべきものである。
【0049】
ところで、造粒のために水を使用しているが、その水と共にまたは水に代えて水酸化マグネシウム水溶液を使用することもできる。水酸化マグネシウム水溶液で練れば粉粒石灰石や粉粒カルシウム・アルミネート等との混練物に粘りが出て保形性が上がる。また、カルシウム・アルミネートが軟化するまでの間の粘結材として補完的に作用させることもできる。もちろん、焼成によりMgOと化した後は炉壁保護作用を発揮するものであることも先に述べた例の場合と異なることろでない。
【0050】
上記した造粒物を作る際に粉粒石灰石に代えて、ライムケーキ(糖石灰)を使用することもできる。ライムケーキは製糖工程における炭酸石灰清浄法において生成された製糖廃滓であるが、その成分の大部分はCaCO3 であり、石灰石と実質的に変わらないからである。
【0051】
しかし、石灰石と異なる点は5ないし12ミクロン(μm)といったごとく極めて微細であること、そして製糖工程で得られるものであるだけに有機物が混入してそれに糖蜜が含まれていることである。従って、ライムケーキは造粒物の保形性を高めるには好適な素材となる。もちろん、石灰石のように粉砕する必要はなく、しかも産業廃棄物の有効利用にもつながる。
【0052】
粉粒石灰石に代えて、消石灰を使用することもできる。消石灰もまた微細な粉体であり、粉砕の必要がない造粒に好適な材料であると言える。消石灰は生石灰に水を加えれば簡単に得られるだけでなく、泥状の石灰乳としておいても、カルシウム・アルミネートやカルシウム・フェライトとの造粒混成品を作るにあたり特に障害が生じるわけでもない。
【0053】
消石灰は焼成すれば生石灰となるが、これは石灰石を焼成して得た生石灰よりも比表面積が大きいことが知られている。その富んだポーラス性によって反応性は一段と高いものとなり、フラックスとして極めて都合のよいものが得られる。精錬炉に投入された状態では上記したいずれの例よりも脱硫反応は向上する。ちなみに、学術的に解明がなされているわけではないが、消石灰を1,000℃前後で焼いて得た生石灰はふけにくい性質をも備えており、輸送や保管性の面からも優れたフラックスということができる。
Claims (7)
- 溶銑に投入されて脱硫・脱燐することにより一次精錬された溶鋼を溶製するための石灰系フラックスにおいて、
石灰石を1ミリメートル以下の粉粒状に砕き、この粉粒石灰石に略同サイズの粉粒化されたカルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの既製品を混入し、水を添加して造粒し、その造粒物を850ないし1,050℃で焼成して生石灰をポーラス質と化し、このポーラス石灰中に前記カルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトを散在させたことを特徴とする一次精錬用石灰系フラックス。 - 前記カルシウム・アルミネートまたはカルシウム・フェライトの混入量は、石灰石100重量部に対して5ないし15重量部としたことを特徴とする請求項1に記載された一次精錬用石灰系フラックス。
- 前記カルシウム・アルミネートとカルシウム・フェライトとは、両方を合わせて石灰石100重量部に対し5ないし15重量部となるように混入されていることを特徴とする請求項1に記載された一次精錬用石灰系フラックス。
- 前記造粒物には水酸化マグネシウムを混入しておくことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載された一次精錬用石灰系フラックス。
- 前記造粒物には酸化マグネシウムを混入しておくことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載された一次精錬用石灰系フラックス。
- 前記粉粒石灰石に代えて、ライムケーキとしたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載された一次精錬用石灰系フラックス。
- 前記粉粒石灰石に代えて、消石灰を使用したことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載された一次精錬用石灰系フラックス。
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-
2002
- 2002-11-26 JP JP2002341704A patent/JP2004176096A/ja active Pending
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