JP2004175011A - ガスバリア性積層体 - Google Patents
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Abstract
【課題】作業性に優れた塗工用組成物を用いて、高湿度下でも十分なガスバリア性を発揮し、かつ耐屈曲性、透明性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【解決手段】高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層したガスバリア性積層体を用いる。
【選択図】 なし
【解決手段】高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層したガスバリア性積層体を用いる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガスバリア性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、さらに味、鮮度を保持したり、無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持したりするために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのため、従来からポリビニルアルコール(以下、PVAとする)、エチレンビニルアルコール共重合体(以下EVOHとする)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(以下、PVDCとする)等の一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物からなるガスバリア性フィルム、又は上記の高分子樹脂組成物をラミネート又はコーティングによりガスバリア性積層体として包装材料に用いた包装フィルムが一般的に使用されている。
【0004】
また、単独では、高いガスバリア性を有していない高分子樹脂組成物からなるフィルムに、Al等の金属又は金属化合物を蒸着した蒸着フィルム、透明性を有する高分子フィルムからなる基材上に、一酸化珪素(SiO)等の珪素酸化物(SiOx)薄膜や酸化マグネシウム(MgO)薄膜を蒸着等により形成した蒸着フィルムも優れたガスバリア特性を有しており、高湿度下での劣化も少なく、この蒸着フィルムを包装材料として一般的に使用され始めている。
【0005】
ところで、上述のPVA、EVOH系の高分子樹脂組成物からなるフィルムや高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層体は、温度依存性及び湿度依存性が大きいため、高温又は高湿下においてガスバリア性の低下が見られ、特に水蒸気バリア性がなく、包装の用途によっては煮沸処理やレトルト処理を行うとガスバリア性が著しく低下する問題点を有する。
【0006】
また、上記のPVDC系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層体は、湿度依存性は小さいが、酸素バリア性を1cm3/m2・day・atm以下とする高ガスバリア材(ハイガスバリア材)を実現することは、困難であるという問題がある。さらにまた、被膜中に塩素を多量に含むため、焼却処理やリサイクリングなど廃棄物処理の面で問題がある。
【0007】
また、上記の金属蒸着フィルム、珪素酸化物薄膜、酸化マグネシウム薄膜等を蒸着した蒸着フィルムは、ガスバリア層に用いられる無機化合物の薄膜が可撓性に欠けており、揉みや折り曲げに弱く、また基材との密着性が悪いため、取扱いに注意を要し、とくに印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、上記薄膜にクラックを発生しガスバリア性が著しく低下する問題がある。
【0008】
これに対し、ガスバリア層のクラック発生を抑制するガスバリア性フィルムとして、水溶性高分子とアルコキシドからなるコーティング剤を蒸着層表面にオーバーコートしたガスバリア性フィルム(特許文献1等参照)や、無機層状化合物と高水素結合性樹脂からなるコーティング層を蒸着層表面にオーバーコートしたガスバリア性フィルム(特許文献2参照)等が知られている。これらは、いずれも蒸着層を保護するため、蒸着層のクラックを防止し、ガスバリア性の低下を抑制するという特徴を有する。
【0009】
【特許文献1】
特許第2790054号公報
【特許文献2】
特開平7−251475号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたガスバリア性フィルムは、ゾルゲル法によってコーティング層を形成するため、コーティング液の安定性が十分でない場合があり、作業性に問題を有する場合がある。
また、上記の特許文献2に記載されたガスバリア性フィルムは、高湿度下でガスバリア性の向上が十分でなかったり、透明性の低下等が見られたりする場合がある。
【0011】
そこで、この発明は、作業性に優れた塗工用組成物を用いて、高湿度下でも十分なガスバリア性を発揮し、かつ耐屈曲性、透明性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層することにより、上記の課題を解決したのである。
【0013】
所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いるので、これを含有する塗工用組成物を、基材の蒸着層に塗工した際、この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が均一に蒸着層上に配され、得られるフィルムのガスバリア性、特に高湿度下のガスバリア性がより向上し、かつ、透明性が保持される。
また、この塗工用組成物の安定性が十分なので、作業性に優れる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかるガスバリア性積層体は、高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層した積層体である。
【0015】
上記基材を構成する高分子樹脂フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、又はそれらの混合物よりなる高分子樹脂フィルム、またはそれらのフィルムの積層体等があげられる。この高分子樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、また、延伸フィルムであってもよい。
【0016】
なお、上記高分子樹脂フィルムの表面には、接着性を向上させるため、公知のコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、アンカーコート剤塗布処理などを行ってもよい。また、上記高分子樹脂フィルムを構成する樹脂には、必要に応じて、この発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0017】
上記基材を構成する無機化合物からなる蒸着層とは、上記高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に、上記無機化合物を真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)等の真空プロセスにより形成した層である。上記無機化合物としては、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウム等の酸化物、窒化物、弗化物、又はそれらの複合物等があげられる。
【0018】
上記蒸着層の膜厚は、用途等によって異なるが、10Åから5000Åの範囲が好ましく、50〜3000Åがより好ましい。10Å以下では薄膜の連続性に問題がある場合があり、一方、3000Åを越えると、クラックが発生しやすく、可撓性が低下する場合がある。
【0019】
上記コーティング層を構成する塗工用組成物は、水溶性高分子及び所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有したものである。
【0020】
水溶性高分子とは、水溶性を有する高分子物質をいい、官能基として水酸基、アミノ基、酸アミド基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を有するものがあげられる。この水溶性高分子の例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系重合体、カルボキシメチルセルロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド等やこれらの共重合体、変性体等の誘導体があげられる。また、上記の変性ポリビニルアルコールとしては、疎水基を含有した変性ポリビニルアルコール、例えば、α−オレフィン単位やシリル基を含有するポリビニルアルコールの変性体があげられる。
【0021】
これらの中でも、ポリビニルアルコール系重合体が好ましい。また、高湿度下でのガスバリア性をより向上させるためには、ケン化度が90モル%以上のポリビニルアルコール系重合体が好ましく、97モル%以上のポリビニルアルコール系重合体がより好ましい。
【0022】
また、上記ポリビニルアルコール系重合体を用いる場合は、重合度は、100〜5000が好ましく、200〜2000がより好ましい。100より小さいと、ガスバリア性が低下する傾向があり、5000より大きいと、塗工液の粘度が大きく、塗工が困難となり好ましくない。
【0023】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とは、下記の式(2)を満たす人工鉱物であり、SiO4正四面体を基本にして、この四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオンがイオン結合し、サンドイッチ層を形成している。このサンドイッチ層とサンドイッチ層の間に層間イオンと呼ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンが非常に弱いイオン結合で配位している構造を有する。
X0.33〜1.0Y2〜3Z4O10F2 (2)
なお、ここで、Xは配位数12の陽イオン、Yは配位数6の陽イオン、Zは配位数4の陽イオンを表す。具体的には、Xは、Na+、K+、Ca2+、Ba2+、Rb2+、Sr2+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、また、Yは、Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、さらに、Zは、Si4+、Ge4+、Al3+、Fe3+、B3+から選ばれる1種または2種以上の陽イオンである。
【0024】
また、一般式(2)のZに入るSiの数により、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物には、二ケイ素型(ジシリシックタイプ)、三ケイ素型(トリシリシックタイプ)、四ケイ素タイプ(テトラシリシック)の各タイプが存在する。これらの中でも、四ケイ素タイプであり、上記X、すなわち、層間イオン種がNa+或いはLi+であり、結晶構造中において電荷のバランスを層間イオンが補っている四ケイ素雲母は、膨潤性を有しており、特に好ましい。
【0025】
この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例としては、ナトリウムテトラシリシックマイカ[NaMg2.5(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムテニオライト[(NaまたはLi)Mg2Li(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムヘクトライト[(NaまたはLi)0.33Mg2.67Li0.33(Si4O10)F2]などが挙げられ、これらの中でも、ナトリウムテトラシリシックマイカ、ナトリウム又はリチウムヘクトライトがより好適に用いられる。これらは1種のみでも2種以上混合しても使用することができる。なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例についてのそれぞれの組成式については、理想的な組成を示しており、厳密に一致している必要はない。
【0026】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、原料として、目的とする膨潤性フッ素雲母の化学組成となるように、シリカ、マグネシア、フッ化マグネシウム、ケイフッ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウム等を調合し、これを内燃式電気炉中、1400〜1500℃で溶融後、溶融体を鋳型に流出させて冷却する過程で、鋳型内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法といわれる公知の方法によって合成することができる。
【0027】
また、他の合成方法として、特開平2−149415号公報に開示されているような、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして、膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法をあげることができる。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られる。
【0028】
上記の溶融法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、通常数重量%程度又はそれ以上のオーダーで、合成フッ素雲母系鉱物とはいえない副生成物(以下、単に「副生成物」と称する。)や未反応原料等が混在する。また、この溶融法での製造時には、結晶自体は大きく良好なものが得られるが、上記副生成物として、主にクリストバライト等が混在する。
【0029】
上記のインターカレーション法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、溶融法に比べて、副生成物や未反応原料等の不純物が少なく比較的純度の高いものが得られるものの、合成フッ素雲母系鉱物に類縁する副生物(以下、単に「副生物」と称する。)が混在する。この副生物の例としては、膨潤性に乏しい相からなる合成フッ素雲母系鉱物があげられる。
【0030】
市販されている膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の中には、副生成物や未反応原料等をあるレベルまで減少させたものがあるが、これらの市販品には、副生成物や副生物が少量含まれている。
【0031】
これら副生成物や副生物を少量含む膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水溶性高分子と混合分散し、フィルムに塗工した場合、高湿度下でのガスバリア性を低下させたり、さらにまた透明性、平滑性なども低下させ、非常に重要な問題となる。
【0032】
これらの存在は、X線回折分析により得られる回折ピークで確認することができる。すなわち、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)については、面間隔dがほぼ9.6Å(9.4〜9.8Å)のピークで確認することができる。また、クリストバライトについては、面間隔dがほぼ4.0Å(3.9〜4.1Å)のピークで確認することができる。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物については、面間隔dがほぼ12.4Å(12.1〜12.6Å)のピークで確認することができる。いずれも、ピークトップの強度を評価する。測定は、120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて行われる。なお、サンプルの粒度は、100メッシュのふるいを通過するものに揃えた。
【0033】
(1)粉末X線回折分析条件
装置:理学電機(株)製RINT2000シリーズ、X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)
カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
【0034】
(2)ピーク強度Iの算出条件
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0035】
具体的には上記粉末X線回折分析において、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)を示す面間隔dがほぼ9.6Åの回折ピーク強度を[Id=9.6Å]、クリストバライトを示す面間隔dがほぼ4.0Åの回折ピーク強度を[Id=4.0Å]、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を示す面間隔dがほぼ12.4Åの回折ピーク強度を[Id=12.4Å]としたとき、各回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20を満たすのがよく、さらに[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]=0、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦10であるのが好ましい。さらにまた、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]=0、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦4であるのがより好ましい。
【0036】
[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100>2である場合や、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100>20である場合は、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0037】
さらに本発明における上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の純度とは以下に示す粒子の沈降テストにより求めた値が所定の条件を満たす必要がある。イオン交換水中に膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分が1.5重量%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行って十分分散させる。その水分散液50mlを50mlメスシリンダー(胴径25mmφ×全長220mm)に入れ、静置する。6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定する。このとき、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量をA重量部、完全沈降した粒子の量をB重量部としたとき、下記の式(1)を満たすのがよい。
(A−B)/A×100≧90 (1)
また、上記式(1)の左辺の値が、92以上が好ましく、95以上がより好ましい。上記式(1)の左辺の値が、90より小さいと、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0038】
なお、上記の容器の底面に完全沈降したか否かは、目視で判断し、メスシリンダーの底面に接触しているものと目視で判断されたものを完全沈降した粒子とする。また、粒子が、3層以上に分離した場合であっても、完全に沈降した粒子のみを対象とし、これらの重量を測定する。
【0039】
上記に示したX線回折分析から得られる相対強度が前述の範囲内にある場合、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたガスバリア性積層体が得られる。さらに、上記沈降テストにおける純度が前述の値を満たす場合には、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともにより優れたガスバリア性積層体が得られる。
【0040】
上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物、すなわち、X線回折分析から得られる相対強度が前述の条件を満たす膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得るためには、以下の精製方法を採用することができる。上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製、すなわち、上記の非膨潤性合成フッ素雲母系鉱物等の副生物や、クリストバライト等の副生成物、未反応原料等(以下、「不純物等」と称する。)の除去は、遠心分離又はデカンテーションにより行うことができる。具体的には、上記遠心分離は、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をホモジナイザーなどで固形分濃度が0.5〜12重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%となるように十分水に分散させたものを、200〜100000G、好ましくは300〜50000G、より好ましくは500〜20000Gの範囲で、10秒〜30分間の条件で行い、沈殿した不純物等を取り除くことができる。200G未満だと、不純物等の分離を十分に行うのが困難となる傾向がある。一方、100000Gより大きくてもよいが、遠心分離機の性能と能力の面から、100000G程度で十分である。
【0041】
また、上記デカンテーションは、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度が0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4.5重量%、さらに好ましくは1〜4重量%となるよう水に分散させ、ホモジナイザーなどを用いて十分分散させたものを、1〜120時間、好ましくは3〜72時間、より好ましくは8〜48時間静置させることにより、沈殿した不純物等を取り除くことができる。これらのいずれの方法でも、上澄みの懸濁液から膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を回収することにより、上記の高純度の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。1時間より短いと、不純物等との分離が十分に行われない場合がある。また、120時間より長いと、生産性の低下を招くだけでなく、収率も低下する傾向がある。
上記の遠心分離処理とデカンテーション処理とは、いずれか一方のみを行っても、両方を続けて行ってもよい。
なお、上記分散液に使用される分散媒としては、イオン交換水や蒸留水等があげられる。
【0042】
上記の精製処理に供与される膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、デカンテーション法を用いる場合、6μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。6μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。遠心分離法を用いる場合、2μm以上であるのが好ましく、4μm以上がより好ましい。2μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。
【0043】
また、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の遠心分離やデカンテーションによる精製の前に、ガスバリア性、透明性、平滑性などの物性を損なわない範囲であれば、分散剤等を少量添加して分散処理をしてもよい。この場合、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散して分散液を調製し、これに上記分散剤を添加して分散処理をすることができる。
【0044】
上記インターカレーション法によって製造した膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の場合には、水に長時間浸漬することにより、膨潤性に乏しい相がある程度、膨潤する相に変化していく。この状態のものについて、上記デカンテーション及び遠心分離処理により上澄み分を採取することにより、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。このとき、上記デカンテーション及び遠心分離処理の前に上記分散処理を施すと、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を短時間で効率よく得ることができる。
【0045】
上記分散剤の種類としては、高分子型、界面活性型、及び無機型のもの等が例示できるが、中でもポリカルボン酸型高分子を用いるのが好ましい。ポリカルボン酸型高分子を用いる理由としては、上記デカンテーション及び遠心分離処理時の収率がよく、さらに最終的に得られるフィルムの高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたものが得られる。
【0046】
この上記ポリカルボン酸型高分子としては、平均分子量は1000〜100万のナトリウム塩やアンモニウム塩を好適に用いることができる。
【0047】
上記分散媒としては、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を上記分散媒に分散させるときの膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度は、0.5〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。0.5重量%より少ないと、生産効率の低下を招く場合がある。一方、15重量%より多いと、粘度が高くなりすぎ、分散しにくくなる傾向がある。
【0048】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散させた分散液への上記分散剤の添加量は、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。0.1重量%より少ないと、分散性能が発揮されない場合がある。一方、10重量%より多くても、期待されたほどの分散性能が発揮されない場合がある。
【0049】
上記分散剤を添加した分散液の分散処理方法としては、既知の分散機を用いて、撹拌等の分散処理することができるが、高速ホモジナイザー等を使用するのが好ましい。分散時間については特に制限は無いが、10分〜1時間程度の比較的短時間で十分である。
【0050】
上記の精製処理によって不純分等を取り除いた後の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、0.05〜10μmがよく、0.1〜8μmがより好ましい。0.05μmより小さいと、高湿度下でのガスバリア性が十分発現されず、一方、10μmより大きいと、塗工面の透明性や平滑性が失われるため実用上好ましくない。なお、この平均粒径は、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱粒度分布測定装置LA920を使用し、分散媒としてイオン交換水を用いて測定することができる。なお本発明でいう平均粒径とはメジアン径(粒子径基準は体積)を意味する。
【0051】
上記塗工用組成物は、上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とを水系溶媒に溶解及び懸濁することによって形成される。この水系溶媒としては、水が好適に用いられる。また水を主な成分とし、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等を添加されていてもよい。
【0052】
また、ガスバリア性、透明性及び平滑性などを損なわない範囲であれば、各種の添加剤を混合してもよい。各種の添加剤としては、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤などがあげられる。
【0053】
上記の水溶性高分子及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の上記水系溶媒への合計固形分は、総固形分として0.5〜15重量%が好ましい。さらに、塗工液の粘度とフィルムへの塗工適性、塗工厚み、ガスバリア性など考慮すると2〜10重量%が更に好ましい。0.5重量%より少ないと、フィルムへの塗工時に乾燥不十分となる場合がある。一方15重量%より多いと、塗工液の粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0054】
上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物との添加割合は任意であるが、水溶性高分子/膨潤性合成フッ素雲母系鉱物(重量比)で99.5/0.5〜20/80がよく、99/1〜30/70が好ましい。膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が0.5重量%より少ないと、ガスバリア性が十分でなく、80重量%より多いとコーティング膜の強度が弱くなる場合がある。
【0055】
上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の混合方法はどのような手順で調製しても良い。即ち、▲1▼膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水系溶媒に分散させた後、水溶性高分子を固体のまま添加して溶解させる。▲2▼水溶性高分子を水系溶媒に溶解させたあと、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を添加する。▲3▼膨潤性合成フッ素雲母系鉱物分散液と水溶性高分子水溶液とを混合する。このうちどの手順によって混合しても良い。
【0056】
なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製を、上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の混合の前後のいずれで行ってもよい。すなわち、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製を行った後に上記▲1▼〜▲3▼の混合を行ってもよく、また、まず、上記▲1▼〜▲3▼の混合を行い、その後、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製を行ってもよい。
【0057】
上記塗工用組成物には、必要に応じて、架橋剤を添加することができる。この架橋剤を添加することにより、耐熱水性を向上させることができる。上記架橋剤としては、アルデヒド化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、チタンやジルコニウム、アルミニウム等の有機金属塩又は無機金属、ケイ素化合物等があげられる。
【0058】
上記アルデヒド化合物の具体例としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサンジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘキサンジアール、5−メチルヘプタンジアール、4−メチルオクタンジアール、2,5−ジメチルオクタンジアール、3,6−ジメチルデカンジアール、オルトフタルアルデヒド等があげられる。
【0059】
上記エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類などがあげられる。
【0060】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、カルボジイミド基を有する重合体(例えば日清紡績(株)製、商品名 カルボジライト)等があげられる。
【0061】
上記イソシアネート化合物の具体例としては、ブロック化イソシアネート化合物(例えば第一工業製薬(株)製、商品名 エラストロン、エラストロンBNシリーズ)、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0062】
上記チタン化合物の具体例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルへキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等があげられる。
【0063】
上記ジルコニウム化合物の具体例としてはジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等の有機ジルコニウム化合物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウムなどのハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸ジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩があげられる。
【0064】
上記アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機キレート等があげられる。
【0065】
上記ケイ素化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルシリケート、テトラノルマルブチルシリケート、ブチルシリケートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラメチルシリケート、ケイ素アセチルアセトネート、ケイ素エチルアセトアセテート、ケイ素オクタンジオレート、ケイ素ラクテート、ケイ素トリエタノールアミネート、ポリヒドロキシケイ素ステアレート、ケイ素ノルマルプロピレート、ケイ素モノアセチルアセトネート、ケイ素ビスアセチルアセトネート、ケイ素モノエチルアセトアセテート、ケイ素ビスエチルアセトネート、ケイ素アセテート、ケイ素トリブトキシステアレート等があげられる。
【0066】
上記架橋剤の添加量は、特に限定されないが、この架橋剤を添加しすぎるとガスバリア性が低下してしまうので低下しない範囲で添加することができる。架橋剤の添加量は架橋される官能基(水酸基など)に対して、モル比で1/1000〜1/2の範囲で添加するのがよく、1/500〜1/10の範囲で添加するのがより好ましい。添加量が1/1000より少ないと得られるフィルムの耐熱水性が低くなり、一方1/2より多いと得られるフィルムのガスバリア性が低くなる傾向がある。
【0067】
上記塗工用組成物を上記高分子樹脂フィルム及び蒸着層からなる基材の蒸着層の表面に塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常の塗工方法を採用することができる。なお、コーティングはフィルムの延伸前であっても延伸後であってもよい。
【0068】
上記塗工用組成物の塗工厚みは、乾燥状態で0.05〜5μmがよく、0.1〜3μmが好ましく、0.15〜1μmがより好ましい。0.05μmより薄いと、ガスバリア性や耐屈曲性の向上が見られない。一方、5μmより厚いと、膜強度が低下する傾向にある。
【0069】
上記塗工用組成物を上記基材の蒸着層に塗工する際に、アンカーコート剤塗布処理を行って、上記の蒸着層とコーティング層との間に、アンカーコート層を形成させてもよい。このアンカーコート層を設けることにより、上記の蒸着層とコーティング層との接合力をより向上させることができる。
【0070】
上記アンカーコート剤としては、ポリエチレンイミン系、ポリウレタン系、ポリブタジエン系、有機チタン系のアンカーコート剤を使用することができる。
上記アンカーコート剤の塗工量は、乾燥固形分として、0.005〜0.8g/m2がよく、0.01〜0.5g/m2が好ましい。0.005g/m2より少ないと、密着性が十分でない。一方、0.8g/m2より多くても、塗工量に見合う効果がでない傾向にある。
【0071】
上記塗工用組成物を上記基材の蒸着層に塗工することによって形成されるコーティング層の乾燥は特に限定されないが、高分子樹脂フィルムの融点及び軟化点以下の温度で行うことができる。上記ガスバリアコート層は、高温・長時間での熱処理を必要としないため、150℃以下、数秒の比較的低温・短時間での乾燥・熱処理で十分である。
【0072】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、高湿度下でのガスバリア性、水蒸気バリア性ともに良好であると同時に、耐屈曲試験(ゲルボテスト)後のガスバリア性、水蒸気バリア性ともに劣化が少ない。上記ガスバリア性積層体とシーラントフィルムとのラミネートフィルムにおいて、30回ゲルボテスト(ASTM−E−392−74)後の酸素透過度は、1.5cc/m2・day・atm以下、水蒸気透過度は、2.0g/m2・day以下がよい。上記酸素透過度、水蒸気透過度が高すぎると、ガスバリア性包材としての実用性に欠ける。
【0073】
またこの発明にかかるガスバリア性積層体の透明性はヘイズ値で10%以下がよく、5%以下が好ましく、透明性が非常に高いものとなる。
さらにまたこの発明にかかるガスバリア性積層体の塗工面の平滑性はざらつき感が全くなく、平滑性に優れたものとなる。
透明性と平滑性に優れるため、塗工面への印刷加工や他のフィルムとのラミネート加工時には悪影響を示さない利点を有する。
【0074】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、そのままガスバリア性積層体として使用することができ、また、このガスバリア性積層体を他のフィルム又はシートに積層して、ガスバリア性積層体を少なくとも1層含む積層体を形成することができる。この積層体は、ガスバリア性を有する積層体として使用することができる。
【0075】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。まず、使用原料、精製方法及び評価方法について下記に示す。
【0076】
[使用原料]
(無機層状化合物)
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製DMA−80E(粉末)13.2μm)を固形分5重量%となるようにイオン交換水に分散させ、4000Gで5分間遠心沈降分離を行い、上澄みを採取して調製した(以下、「処理品A」と称する。)。この処理品Aの平均粒径は0.9μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=0、後述する純度試験による純度で100%であった。
【0077】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製NTS10重量%(ゾル)13.5μm)を固形分5重量%となるようにイオン交換水に分散させ、4000Gで5分間遠心沈降分離を行い、上澄みを採取して調製した(以下、「処理品B」と称する。)。この処理品Bの平均粒径は0.8μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=0、後述する純度試験による純度で100%であった。
【0078】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製NTS10重量%(ゾル)13.5μm)をそのまま使用した(以下、「未処理品C」と称する。)。この未処理品Cの平均粒径は13.5μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=56、後述する純度試験による純度で59.3%であった。
【0079】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製NTS7重量%(ゾル)2.8μm)をそのまま使用した(以下、「未処理品D」と称する。)。この未処理品Dの平均粒径は2.8μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=72、後述する純度試験による純度で100%であった。
・精製モンモリロナイト…クニミネ工業(株)製クニピアG(平均粒径1.2μm)(以下、「クニピアG」と略する。)
【0080】
(水溶性高分子)
・変性ポリビニルアルコール…(株)クラレ製AQ−4105(以下、「AQ4105」と略する。)
・ポリビニルアルコール…(株)クラレ製PVA117(以下、「PVA117」と略する。)
【0081】
(基材)
・シリカ透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム…尾池工業(株)製:MOS−TO(以下、「PET1」と略する。)。
・アルミナ透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム…東洋メタライジング(株)製:バリアロックス1011HG(以下「PET2」と略する。)
【0082】
[無機層状化合物の評価]
(平均粒径)
(株)堀場製作所製LA920を用いて、レーザー回折散乱法を用いて分析し、メジアン径を平均粒子径とした。なお分散媒にはイオン交換水を用いた。
【0083】
(相対強度)
理学電機(株)製RINT2000を用いて、粉末X線回折法により分析し、各ピークの強度から算出した。
サンプルについては120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて測定した。そして、下記の比を算出した。その結果を上記の使用した無機層状化合物の説明の欄に示す。
・[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100
・[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100
【0084】
<測定条件>
X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)、カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
<ピーク強度Iの算出条件>
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0085】
(純度試験)
以下に示す粒子の沈降テストにより、純度を求めた。
精製した又は未精製の無機層状化合物を1.5重量%となるように、イオン交換水中でホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行い、イオン交換水に十分分散させ、その水分散液50mlを50mlメスシリンダーに入れて静置し、6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定する。このとき、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量をA重量部、完全沈降した粒子の量をB重量部としたとき、下記式により純度を算出する。
純度[%]=(A−B)/A×100
【0086】
[評価方法]
(フィルムのガスバリア性及び水蒸気バリア性)
積層体の初期酸素透過度と水蒸気透過度を測定した。また、ウレタン系接着剤を用いて、LLDPE40μmのフィルムとドライラミネートを行い、ラミネート品について、30回ゲルボテスト(屈曲試験)後の酸素透過度及び水蒸気透過度を下記の方法で測定した。
【0087】
(酸素透過度)
酸素透過試験器(Modern Contorol社製、OX−TRAN2/20)を用い、23℃、相対湿度90%の雰囲気下において測定した。
【0088】
(水蒸気透過度)
水蒸気透過試験器(Modern Contorol社製、PERMATRAN−W 3/31)を用い、40℃、相対湿度90%の雰囲気下において測定した。
【0089】
(透明度)
日本電色工業(株)製NDH2000を用いて、JIS K7105に従い、ヘイズを測定して、下記の基準で評価した。
○:ヘイズが4%未満
×:ヘイズが4%以上
【0090】
[コート面の平滑性]
塗工用組成物の塗工面を指でなぞり、下記の基準で評価した。
○:ザラツキ感なし
×:ザラツキ感あり
【0091】
(実施例1〜4、比較例4〜6)
表1に記載の無機層状化合物、水溶性高分子をイオン交換水中に全固形分濃度が5重量%、無機層状化合物/水溶性高分子=3/7(重量比)となるように混合分散した。この分散液100重量部に対し、10重量%の2−プロパノールを添加し、撹拌して塗工用組成物を調製した。
次いで、この塗工用組成物を、メイヤーバーを用いて乾燥塗工厚みが約0.4μmになるように表1に示す透明蒸着フィルムの蒸着面へ塗工した。乾燥は100℃、1分間行った。得られた積層体を用いて、上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
上記塗工用組成物による積層を行わなかった以外は、実施例1と同様にして上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
上記塗工用組成物による積層を行わなかった以外は、実施例3と同様にして上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0094】
(比較例3)
上記無機層状化合物を用いない以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体を用いて、上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
[結果]
実施例1〜4から明らかなように、本発明の範囲内においては、比較例1〜3と比較して、積層体の初期のガスバリア性及び水蒸気バリア性が優れると同時に、屈曲試験後のガスバリア性及び水蒸気バリア性の劣化が非常に少ない。
また、実施例1〜4から明らかなように、本発明の範囲内においては、比較例4〜6と比較して、積層体の初期のガスバリア性及び水蒸気バリア性が優れると同時に、屈曲試験後のガスバリア性及び水蒸気バリア性の劣化が非常に少なく、かつ、透明性及び平滑性に優れる。
これらから、この発明は、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れると同時に、耐屈曲性が優れることが明らかとなった。
【0097】
【発明の効果】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いるので、これを含有する塗工用組成物を、基材の蒸着層に塗工した際、この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が均一に基材の蒸着層上に配され、得られるガスバリア性積層体は、ガスバリア性、水蒸気バリア性が共に向上し、かつ、耐屈曲性に優れ、さらにまた透明性にも優れる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガスバリア性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、食品、医薬品等の包装に用いられる包装材料は、内容物の変質、特に食品においては蛋白質や油脂等の酸化、変質を抑制し、さらに味、鮮度を保持したり、無菌状態での取扱いが必要とされる医薬品においては有効成分の変質を抑制し、効能を維持したりするために、包装材料を透過する酸素、水蒸気、その他内容物を変質させる気体による影響を防止する必要があり、これら気体(ガス)を遮断するガスバリア性を備えることが求められている。
【0003】
そのため、従来からポリビニルアルコール(以下、PVAとする)、エチレンビニルアルコール共重合体(以下EVOHとする)、ポリ塩化ビニリデン樹脂(以下、PVDCとする)等の一般にガスバリア性が比較的高いと言われる高分子樹脂組成物からなるガスバリア性フィルム、又は上記の高分子樹脂組成物をラミネート又はコーティングによりガスバリア性積層体として包装材料に用いた包装フィルムが一般的に使用されている。
【0004】
また、単独では、高いガスバリア性を有していない高分子樹脂組成物からなるフィルムに、Al等の金属又は金属化合物を蒸着した蒸着フィルム、透明性を有する高分子フィルムからなる基材上に、一酸化珪素(SiO)等の珪素酸化物(SiOx)薄膜や酸化マグネシウム(MgO)薄膜を蒸着等により形成した蒸着フィルムも優れたガスバリア特性を有しており、高湿度下での劣化も少なく、この蒸着フィルムを包装材料として一般的に使用され始めている。
【0005】
ところで、上述のPVA、EVOH系の高分子樹脂組成物からなるフィルムや高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層体は、温度依存性及び湿度依存性が大きいため、高温又は高湿下においてガスバリア性の低下が見られ、特に水蒸気バリア性がなく、包装の用途によっては煮沸処理やレトルト処理を行うとガスバリア性が著しく低下する問題点を有する。
【0006】
また、上記のPVDC系の高分子樹脂組成物を用いてなるガスバリア性積層体は、湿度依存性は小さいが、酸素バリア性を1cm3/m2・day・atm以下とする高ガスバリア材(ハイガスバリア材)を実現することは、困難であるという問題がある。さらにまた、被膜中に塩素を多量に含むため、焼却処理やリサイクリングなど廃棄物処理の面で問題がある。
【0007】
また、上記の金属蒸着フィルム、珪素酸化物薄膜、酸化マグネシウム薄膜等を蒸着した蒸着フィルムは、ガスバリア層に用いられる無機化合物の薄膜が可撓性に欠けており、揉みや折り曲げに弱く、また基材との密着性が悪いため、取扱いに注意を要し、とくに印刷、ラミネート、製袋など包装材料の後加工の際に、上記薄膜にクラックを発生しガスバリア性が著しく低下する問題がある。
【0008】
これに対し、ガスバリア層のクラック発生を抑制するガスバリア性フィルムとして、水溶性高分子とアルコキシドからなるコーティング剤を蒸着層表面にオーバーコートしたガスバリア性フィルム(特許文献1等参照)や、無機層状化合物と高水素結合性樹脂からなるコーティング層を蒸着層表面にオーバーコートしたガスバリア性フィルム(特許文献2参照)等が知られている。これらは、いずれも蒸着層を保護するため、蒸着層のクラックを防止し、ガスバリア性の低下を抑制するという特徴を有する。
【0009】
【特許文献1】
特許第2790054号公報
【特許文献2】
特開平7−251475号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の特許文献1に記載されたガスバリア性フィルムは、ゾルゲル法によってコーティング層を形成するため、コーティング液の安定性が十分でない場合があり、作業性に問題を有する場合がある。
また、上記の特許文献2に記載されたガスバリア性フィルムは、高湿度下でガスバリア性の向上が十分でなかったり、透明性の低下等が見られたりする場合がある。
【0011】
そこで、この発明は、作業性に優れた塗工用組成物を用いて、高湿度下でも十分なガスバリア性を発揮し、かつ耐屈曲性、透明性に優れる積層体を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
この発明は、高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層することにより、上記の課題を解決したのである。
【0013】
所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いるので、これを含有する塗工用組成物を、基材の蒸着層に塗工した際、この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が均一に蒸着層上に配され、得られるフィルムのガスバリア性、特に高湿度下のガスバリア性がより向上し、かつ、透明性が保持される。
また、この塗工用組成物の安定性が十分なので、作業性に優れる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかるガスバリア性積層体は、高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層した積層体である。
【0015】
上記基材を構成する高分子樹脂フィルムとしては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、又はそれらの混合物よりなる高分子樹脂フィルム、またはそれらのフィルムの積層体等があげられる。この高分子樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、また、延伸フィルムであってもよい。
【0016】
なお、上記高分子樹脂フィルムの表面には、接着性を向上させるため、公知のコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、アンカーコート剤塗布処理などを行ってもよい。また、上記高分子樹脂フィルムを構成する樹脂には、必要に応じて、この発明の効果を阻害しない範囲で、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0017】
上記基材を構成する無機化合物からなる蒸着層とは、上記高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に、上記無機化合物を真空蒸着法、スパッタリング法、プラズマ気相成長法(CVD法)等の真空プロセスにより形成した層である。上記無機化合物としては、珪素、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、錫、マグネシウム等の酸化物、窒化物、弗化物、又はそれらの複合物等があげられる。
【0018】
上記蒸着層の膜厚は、用途等によって異なるが、10Åから5000Åの範囲が好ましく、50〜3000Åがより好ましい。10Å以下では薄膜の連続性に問題がある場合があり、一方、3000Åを越えると、クラックが発生しやすく、可撓性が低下する場合がある。
【0019】
上記コーティング層を構成する塗工用組成物は、水溶性高分子及び所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有したものである。
【0020】
水溶性高分子とは、水溶性を有する高分子物質をいい、官能基として水酸基、アミノ基、酸アミド基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を有するものがあげられる。この水溶性高分子の例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系重合体、カルボキシメチルセルロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド等やこれらの共重合体、変性体等の誘導体があげられる。また、上記の変性ポリビニルアルコールとしては、疎水基を含有した変性ポリビニルアルコール、例えば、α−オレフィン単位やシリル基を含有するポリビニルアルコールの変性体があげられる。
【0021】
これらの中でも、ポリビニルアルコール系重合体が好ましい。また、高湿度下でのガスバリア性をより向上させるためには、ケン化度が90モル%以上のポリビニルアルコール系重合体が好ましく、97モル%以上のポリビニルアルコール系重合体がより好ましい。
【0022】
また、上記ポリビニルアルコール系重合体を用いる場合は、重合度は、100〜5000が好ましく、200〜2000がより好ましい。100より小さいと、ガスバリア性が低下する傾向があり、5000より大きいと、塗工液の粘度が大きく、塗工が困難となり好ましくない。
【0023】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とは、下記の式(2)を満たす人工鉱物であり、SiO4正四面体を基本にして、この四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオンがイオン結合し、サンドイッチ層を形成している。このサンドイッチ層とサンドイッチ層の間に層間イオンと呼ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンが非常に弱いイオン結合で配位している構造を有する。
X0.33〜1.0Y2〜3Z4O10F2 (2)
なお、ここで、Xは配位数12の陽イオン、Yは配位数6の陽イオン、Zは配位数4の陽イオンを表す。具体的には、Xは、Na+、K+、Ca2+、Ba2+、Rb2+、Sr2+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、また、Yは、Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、さらに、Zは、Si4+、Ge4+、Al3+、Fe3+、B3+から選ばれる1種または2種以上の陽イオンである。
【0024】
また、一般式(2)のZに入るSiの数により、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物には、二ケイ素型(ジシリシックタイプ)、三ケイ素型(トリシリシックタイプ)、四ケイ素タイプ(テトラシリシック)の各タイプが存在する。これらの中でも、四ケイ素タイプであり、上記X、すなわち、層間イオン種がNa+或いはLi+であり、結晶構造中において電荷のバランスを層間イオンが補っている四ケイ素雲母は、膨潤性を有しており、特に好ましい。
【0025】
この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例としては、ナトリウムテトラシリシックマイカ[NaMg2.5(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムテニオライト[(NaまたはLi)Mg2Li(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムヘクトライト[(NaまたはLi)0.33Mg2.67Li0.33(Si4O10)F2]などが挙げられ、これらの中でも、ナトリウムテトラシリシックマイカ、ナトリウム又はリチウムヘクトライトがより好適に用いられる。これらは1種のみでも2種以上混合しても使用することができる。なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例についてのそれぞれの組成式については、理想的な組成を示しており、厳密に一致している必要はない。
【0026】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、原料として、目的とする膨潤性フッ素雲母の化学組成となるように、シリカ、マグネシア、フッ化マグネシウム、ケイフッ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウム等を調合し、これを内燃式電気炉中、1400〜1500℃で溶融後、溶融体を鋳型に流出させて冷却する過程で、鋳型内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法といわれる公知の方法によって合成することができる。
【0027】
また、他の合成方法として、特開平2−149415号公報に開示されているような、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして、膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法をあげることができる。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られる。
【0028】
上記の溶融法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、通常数重量%程度又はそれ以上のオーダーで、合成フッ素雲母系鉱物とはいえない副生成物(以下、単に「副生成物」と称する。)や未反応原料等が混在する。また、この溶融法での製造時には、結晶自体は大きく良好なものが得られるが、上記副生成物として、主にクリストバライト等が混在する。
【0029】
上記のインターカレーション法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、溶融法に比べて、副生成物や未反応原料等の不純物が少なく比較的純度の高いものが得られるものの、合成フッ素雲母系鉱物に類縁する副生物(以下、単に「副生物」と称する。)が混在する。この副生物の例としては、膨潤性に乏しい相からなる合成フッ素雲母系鉱物があげられる。
【0030】
市販されている膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の中には、副生成物や未反応原料等をあるレベルまで減少させたものがあるが、これらの市販品には、副生成物や副生物が少量含まれている。
【0031】
これら副生成物や副生物を少量含む膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水溶性高分子と混合分散し、フィルムに塗工した場合、高湿度下でのガスバリア性を低下させたり、さらにまた透明性、平滑性なども低下させ、非常に重要な問題となる。
【0032】
これらの存在は、X線回折分析により得られる回折ピークで確認することができる。すなわち、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)については、面間隔dがほぼ9.6Å(9.4〜9.8Å)のピークで確認することができる。また、クリストバライトについては、面間隔dがほぼ4.0Å(3.9〜4.1Å)のピークで確認することができる。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物については、面間隔dがほぼ12.4Å(12.1〜12.6Å)のピークで確認することができる。いずれも、ピークトップの強度を評価する。測定は、120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて行われる。なお、サンプルの粒度は、100メッシュのふるいを通過するものに揃えた。
【0033】
(1)粉末X線回折分析条件
装置:理学電機(株)製RINT2000シリーズ、X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)
カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
【0034】
(2)ピーク強度Iの算出条件
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0035】
具体的には上記粉末X線回折分析において、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)を示す面間隔dがほぼ9.6Åの回折ピーク強度を[Id=9.6Å]、クリストバライトを示す面間隔dがほぼ4.0Åの回折ピーク強度を[Id=4.0Å]、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を示す面間隔dがほぼ12.4Åの回折ピーク強度を[Id=12.4Å]としたとき、各回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20を満たすのがよく、さらに[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]=0、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦10であるのが好ましい。さらにまた、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]=0、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦4であるのがより好ましい。
【0036】
[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100>2である場合や、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100>20である場合は、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0037】
さらに本発明における上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の純度とは以下に示す粒子の沈降テストにより求めた値が所定の条件を満たす必要がある。イオン交換水中に膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分が1.5重量%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行って十分分散させる。その水分散液50mlを50mlメスシリンダー(胴径25mmφ×全長220mm)に入れ、静置する。6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定する。このとき、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量をA重量部、完全沈降した粒子の量をB重量部としたとき、下記の式(1)を満たすのがよい。
(A−B)/A×100≧90 (1)
また、上記式(1)の左辺の値が、92以上が好ましく、95以上がより好ましい。上記式(1)の左辺の値が、90より小さいと、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0038】
なお、上記の容器の底面に完全沈降したか否かは、目視で判断し、メスシリンダーの底面に接触しているものと目視で判断されたものを完全沈降した粒子とする。また、粒子が、3層以上に分離した場合であっても、完全に沈降した粒子のみを対象とし、これらの重量を測定する。
【0039】
上記に示したX線回折分析から得られる相対強度が前述の範囲内にある場合、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたガスバリア性積層体が得られる。さらに、上記沈降テストにおける純度が前述の値を満たす場合には、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともにより優れたガスバリア性積層体が得られる。
【0040】
上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物、すなわち、X線回折分析から得られる相対強度が前述の条件を満たす膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得るためには、以下の精製方法を採用することができる。上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製、すなわち、上記の非膨潤性合成フッ素雲母系鉱物等の副生物や、クリストバライト等の副生成物、未反応原料等(以下、「不純物等」と称する。)の除去は、遠心分離又はデカンテーションにより行うことができる。具体的には、上記遠心分離は、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をホモジナイザーなどで固形分濃度が0.5〜12重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%となるように十分水に分散させたものを、200〜100000G、好ましくは300〜50000G、より好ましくは500〜20000Gの範囲で、10秒〜30分間の条件で行い、沈殿した不純物等を取り除くことができる。200G未満だと、不純物等の分離を十分に行うのが困難となる傾向がある。一方、100000Gより大きくてもよいが、遠心分離機の性能と能力の面から、100000G程度で十分である。
【0041】
また、上記デカンテーションは、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度が0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4.5重量%、さらに好ましくは1〜4重量%となるよう水に分散させ、ホモジナイザーなどを用いて十分分散させたものを、1〜120時間、好ましくは3〜72時間、より好ましくは8〜48時間静置させることにより、沈殿した不純物等を取り除くことができる。これらのいずれの方法でも、上澄みの懸濁液から膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を回収することにより、上記の高純度の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。1時間より短いと、不純物等との分離が十分に行われない場合がある。また、120時間より長いと、生産性の低下を招くだけでなく、収率も低下する傾向がある。
上記の遠心分離処理とデカンテーション処理とは、いずれか一方のみを行っても、両方を続けて行ってもよい。
なお、上記分散液に使用される分散媒としては、イオン交換水や蒸留水等があげられる。
【0042】
上記の精製処理に供与される膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、デカンテーション法を用いる場合、6μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。6μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。遠心分離法を用いる場合、2μm以上であるのが好ましく、4μm以上がより好ましい。2μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。
【0043】
また、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の遠心分離やデカンテーションによる精製の前に、ガスバリア性、透明性、平滑性などの物性を損なわない範囲であれば、分散剤等を少量添加して分散処理をしてもよい。この場合、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散して分散液を調製し、これに上記分散剤を添加して分散処理をすることができる。
【0044】
上記インターカレーション法によって製造した膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の場合には、水に長時間浸漬することにより、膨潤性に乏しい相がある程度、膨潤する相に変化していく。この状態のものについて、上記デカンテーション及び遠心分離処理により上澄み分を採取することにより、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。このとき、上記デカンテーション及び遠心分離処理の前に上記分散処理を施すと、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を短時間で効率よく得ることができる。
【0045】
上記分散剤の種類としては、高分子型、界面活性型、及び無機型のもの等が例示できるが、中でもポリカルボン酸型高分子を用いるのが好ましい。ポリカルボン酸型高分子を用いる理由としては、上記デカンテーション及び遠心分離処理時の収率がよく、さらに最終的に得られるフィルムの高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたものが得られる。
【0046】
この上記ポリカルボン酸型高分子としては、平均分子量は1000〜100万のナトリウム塩やアンモニウム塩を好適に用いることができる。
【0047】
上記分散媒としては、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を上記分散媒に分散させるときの膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度は、0.5〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。0.5重量%より少ないと、生産効率の低下を招く場合がある。一方、15重量%より多いと、粘度が高くなりすぎ、分散しにくくなる傾向がある。
【0048】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散させた分散液への上記分散剤の添加量は、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。0.1重量%より少ないと、分散性能が発揮されない場合がある。一方、10重量%より多くても、期待されたほどの分散性能が発揮されない場合がある。
【0049】
上記分散剤を添加した分散液の分散処理方法としては、既知の分散機を用いて、撹拌等の分散処理することができるが、高速ホモジナイザー等を使用するのが好ましい。分散時間については特に制限は無いが、10分〜1時間程度の比較的短時間で十分である。
【0050】
上記の精製処理によって不純分等を取り除いた後の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、0.05〜10μmがよく、0.1〜8μmがより好ましい。0.05μmより小さいと、高湿度下でのガスバリア性が十分発現されず、一方、10μmより大きいと、塗工面の透明性や平滑性が失われるため実用上好ましくない。なお、この平均粒径は、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱粒度分布測定装置LA920を使用し、分散媒としてイオン交換水を用いて測定することができる。なお本発明でいう平均粒径とはメジアン径(粒子径基準は体積)を意味する。
【0051】
上記塗工用組成物は、上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とを水系溶媒に溶解及び懸濁することによって形成される。この水系溶媒としては、水が好適に用いられる。また水を主な成分とし、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等を添加されていてもよい。
【0052】
また、ガスバリア性、透明性及び平滑性などを損なわない範囲であれば、各種の添加剤を混合してもよい。各種の添加剤としては、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤などがあげられる。
【0053】
上記の水溶性高分子及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の上記水系溶媒への合計固形分は、総固形分として0.5〜15重量%が好ましい。さらに、塗工液の粘度とフィルムへの塗工適性、塗工厚み、ガスバリア性など考慮すると2〜10重量%が更に好ましい。0.5重量%より少ないと、フィルムへの塗工時に乾燥不十分となる場合がある。一方15重量%より多いと、塗工液の粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0054】
上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物との添加割合は任意であるが、水溶性高分子/膨潤性合成フッ素雲母系鉱物(重量比)で99.5/0.5〜20/80がよく、99/1〜30/70が好ましい。膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が0.5重量%より少ないと、ガスバリア性が十分でなく、80重量%より多いとコーティング膜の強度が弱くなる場合がある。
【0055】
上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の混合方法はどのような手順で調製しても良い。即ち、▲1▼膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水系溶媒に分散させた後、水溶性高分子を固体のまま添加して溶解させる。▲2▼水溶性高分子を水系溶媒に溶解させたあと、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を添加する。▲3▼膨潤性合成フッ素雲母系鉱物分散液と水溶性高分子水溶液とを混合する。このうちどの手順によって混合しても良い。
【0056】
なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製を、上記の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の混合の前後のいずれで行ってもよい。すなわち、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製を行った後に上記▲1▼〜▲3▼の混合を行ってもよく、また、まず、上記▲1▼〜▲3▼の混合を行い、その後、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製を行ってもよい。
【0057】
上記塗工用組成物には、必要に応じて、架橋剤を添加することができる。この架橋剤を添加することにより、耐熱水性を向上させることができる。上記架橋剤としては、アルデヒド化合物、エポキシ化合物、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、チタンやジルコニウム、アルミニウム等の有機金属塩又は無機金属、ケイ素化合物等があげられる。
【0058】
上記アルデヒド化合物の具体例としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサンジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘキサンジアール、5−メチルヘプタンジアール、4−メチルオクタンジアール、2,5−ジメチルオクタンジアール、3,6−ジメチルデカンジアール、オルトフタルアルデヒド等があげられる。
【0059】
上記エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類などがあげられる。
【0060】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、カルボジイミド基を有する重合体(例えば日清紡績(株)製、商品名 カルボジライト)等があげられる。
【0061】
上記イソシアネート化合物の具体例としては、ブロック化イソシアネート化合物(例えば第一工業製薬(株)製、商品名 エラストロン、エラストロンBNシリーズ)、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0062】
上記チタン化合物の具体例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルへキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等があげられる。
【0063】
上記ジルコニウム化合物の具体例としてはジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等の有機ジルコニウム化合物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウムなどのハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸ジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩があげられる。
【0064】
上記アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機キレート等があげられる。
【0065】
上記ケイ素化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルシリケート、テトラノルマルブチルシリケート、ブチルシリケートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラメチルシリケート、ケイ素アセチルアセトネート、ケイ素エチルアセトアセテート、ケイ素オクタンジオレート、ケイ素ラクテート、ケイ素トリエタノールアミネート、ポリヒドロキシケイ素ステアレート、ケイ素ノルマルプロピレート、ケイ素モノアセチルアセトネート、ケイ素ビスアセチルアセトネート、ケイ素モノエチルアセトアセテート、ケイ素ビスエチルアセトネート、ケイ素アセテート、ケイ素トリブトキシステアレート等があげられる。
【0066】
上記架橋剤の添加量は、特に限定されないが、この架橋剤を添加しすぎるとガスバリア性が低下してしまうので低下しない範囲で添加することができる。架橋剤の添加量は架橋される官能基(水酸基など)に対して、モル比で1/1000〜1/2の範囲で添加するのがよく、1/500〜1/10の範囲で添加するのがより好ましい。添加量が1/1000より少ないと得られるフィルムの耐熱水性が低くなり、一方1/2より多いと得られるフィルムのガスバリア性が低くなる傾向がある。
【0067】
上記塗工用組成物を上記高分子樹脂フィルム及び蒸着層からなる基材の蒸着層の表面に塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常の塗工方法を採用することができる。なお、コーティングはフィルムの延伸前であっても延伸後であってもよい。
【0068】
上記塗工用組成物の塗工厚みは、乾燥状態で0.05〜5μmがよく、0.1〜3μmが好ましく、0.15〜1μmがより好ましい。0.05μmより薄いと、ガスバリア性や耐屈曲性の向上が見られない。一方、5μmより厚いと、膜強度が低下する傾向にある。
【0069】
上記塗工用組成物を上記基材の蒸着層に塗工する際に、アンカーコート剤塗布処理を行って、上記の蒸着層とコーティング層との間に、アンカーコート層を形成させてもよい。このアンカーコート層を設けることにより、上記の蒸着層とコーティング層との接合力をより向上させることができる。
【0070】
上記アンカーコート剤としては、ポリエチレンイミン系、ポリウレタン系、ポリブタジエン系、有機チタン系のアンカーコート剤を使用することができる。
上記アンカーコート剤の塗工量は、乾燥固形分として、0.005〜0.8g/m2がよく、0.01〜0.5g/m2が好ましい。0.005g/m2より少ないと、密着性が十分でない。一方、0.8g/m2より多くても、塗工量に見合う効果がでない傾向にある。
【0071】
上記塗工用組成物を上記基材の蒸着層に塗工することによって形成されるコーティング層の乾燥は特に限定されないが、高分子樹脂フィルムの融点及び軟化点以下の温度で行うことができる。上記ガスバリアコート層は、高温・長時間での熱処理を必要としないため、150℃以下、数秒の比較的低温・短時間での乾燥・熱処理で十分である。
【0072】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、高湿度下でのガスバリア性、水蒸気バリア性ともに良好であると同時に、耐屈曲試験(ゲルボテスト)後のガスバリア性、水蒸気バリア性ともに劣化が少ない。上記ガスバリア性積層体とシーラントフィルムとのラミネートフィルムにおいて、30回ゲルボテスト(ASTM−E−392−74)後の酸素透過度は、1.5cc/m2・day・atm以下、水蒸気透過度は、2.0g/m2・day以下がよい。上記酸素透過度、水蒸気透過度が高すぎると、ガスバリア性包材としての実用性に欠ける。
【0073】
またこの発明にかかるガスバリア性積層体の透明性はヘイズ値で10%以下がよく、5%以下が好ましく、透明性が非常に高いものとなる。
さらにまたこの発明にかかるガスバリア性積層体の塗工面の平滑性はざらつき感が全くなく、平滑性に優れたものとなる。
透明性と平滑性に優れるため、塗工面への印刷加工や他のフィルムとのラミネート加工時には悪影響を示さない利点を有する。
【0074】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、そのままガスバリア性積層体として使用することができ、また、このガスバリア性積層体を他のフィルム又はシートに積層して、ガスバリア性積層体を少なくとも1層含む積層体を形成することができる。この積層体は、ガスバリア性を有する積層体として使用することができる。
【0075】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。まず、使用原料、精製方法及び評価方法について下記に示す。
【0076】
[使用原料]
(無機層状化合物)
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製DMA−80E(粉末)13.2μm)を固形分5重量%となるようにイオン交換水に分散させ、4000Gで5分間遠心沈降分離を行い、上澄みを採取して調製した(以下、「処理品A」と称する。)。この処理品Aの平均粒径は0.9μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=0、後述する純度試験による純度で100%であった。
【0077】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製NTS10重量%(ゾル)13.5μm)を固形分5重量%となるようにイオン交換水に分散させ、4000Gで5分間遠心沈降分離を行い、上澄みを採取して調製した(以下、「処理品B」と称する。)。この処理品Bの平均粒径は0.8μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=0、後述する純度試験による純度で100%であった。
【0078】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製NTS10重量%(ゾル)13.5μm)をそのまま使用した(以下、「未処理品C」と称する。)。この未処理品Cの平均粒径は13.5μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=56、後述する純度試験による純度で59.3%であった。
【0079】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製NTS7重量%(ゾル)2.8μm)をそのまま使用した(以下、「未処理品D」と称する。)。この未処理品Dの平均粒径は2.8μm、粉末X線回折法による分析で、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100=0、[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100=72、後述する純度試験による純度で100%であった。
・精製モンモリロナイト…クニミネ工業(株)製クニピアG(平均粒径1.2μm)(以下、「クニピアG」と略する。)
【0080】
(水溶性高分子)
・変性ポリビニルアルコール…(株)クラレ製AQ−4105(以下、「AQ4105」と略する。)
・ポリビニルアルコール…(株)クラレ製PVA117(以下、「PVA117」と略する。)
【0081】
(基材)
・シリカ透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム…尾池工業(株)製:MOS−TO(以下、「PET1」と略する。)。
・アルミナ透明蒸着ポリエチレンテレフタレートフィルム…東洋メタライジング(株)製:バリアロックス1011HG(以下「PET2」と略する。)
【0082】
[無機層状化合物の評価]
(平均粒径)
(株)堀場製作所製LA920を用いて、レーザー回折散乱法を用いて分析し、メジアン径を平均粒子径とした。なお分散媒にはイオン交換水を用いた。
【0083】
(相対強度)
理学電機(株)製RINT2000を用いて、粉末X線回折法により分析し、各ピークの強度から算出した。
サンプルについては120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて測定した。そして、下記の比を算出した。その結果を上記の使用した無機層状化合物の説明の欄に示す。
・[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100
・[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100
【0084】
<測定条件>
X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)、カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
<ピーク強度Iの算出条件>
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0085】
(純度試験)
以下に示す粒子の沈降テストにより、純度を求めた。
精製した又は未精製の無機層状化合物を1.5重量%となるように、イオン交換水中でホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行い、イオン交換水に十分分散させ、その水分散液50mlを50mlメスシリンダーに入れて静置し、6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定する。このとき、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量をA重量部、完全沈降した粒子の量をB重量部としたとき、下記式により純度を算出する。
純度[%]=(A−B)/A×100
【0086】
[評価方法]
(フィルムのガスバリア性及び水蒸気バリア性)
積層体の初期酸素透過度と水蒸気透過度を測定した。また、ウレタン系接着剤を用いて、LLDPE40μmのフィルムとドライラミネートを行い、ラミネート品について、30回ゲルボテスト(屈曲試験)後の酸素透過度及び水蒸気透過度を下記の方法で測定した。
【0087】
(酸素透過度)
酸素透過試験器(Modern Contorol社製、OX−TRAN2/20)を用い、23℃、相対湿度90%の雰囲気下において測定した。
【0088】
(水蒸気透過度)
水蒸気透過試験器(Modern Contorol社製、PERMATRAN−W 3/31)を用い、40℃、相対湿度90%の雰囲気下において測定した。
【0089】
(透明度)
日本電色工業(株)製NDH2000を用いて、JIS K7105に従い、ヘイズを測定して、下記の基準で評価した。
○:ヘイズが4%未満
×:ヘイズが4%以上
【0090】
[コート面の平滑性]
塗工用組成物の塗工面を指でなぞり、下記の基準で評価した。
○:ザラツキ感なし
×:ザラツキ感あり
【0091】
(実施例1〜4、比較例4〜6)
表1に記載の無機層状化合物、水溶性高分子をイオン交換水中に全固形分濃度が5重量%、無機層状化合物/水溶性高分子=3/7(重量比)となるように混合分散した。この分散液100重量部に対し、10重量%の2−プロパノールを添加し、撹拌して塗工用組成物を調製した。
次いで、この塗工用組成物を、メイヤーバーを用いて乾燥塗工厚みが約0.4μmになるように表1に示す透明蒸着フィルムの蒸着面へ塗工した。乾燥は100℃、1分間行った。得られた積層体を用いて、上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0092】
(比較例1)
上記塗工用組成物による積層を行わなかった以外は、実施例1と同様にして上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例2)
上記塗工用組成物による積層を行わなかった以外は、実施例3と同様にして上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0094】
(比較例3)
上記無機層状化合物を用いない以外は、実施例1と同様にして、積層体を得た。この積層体を用いて、上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0095】
【表1】
【0096】
[結果]
実施例1〜4から明らかなように、本発明の範囲内においては、比較例1〜3と比較して、積層体の初期のガスバリア性及び水蒸気バリア性が優れると同時に、屈曲試験後のガスバリア性及び水蒸気バリア性の劣化が非常に少ない。
また、実施例1〜4から明らかなように、本発明の範囲内においては、比較例4〜6と比較して、積層体の初期のガスバリア性及び水蒸気バリア性が優れると同時に、屈曲試験後のガスバリア性及び水蒸気バリア性の劣化が非常に少なく、かつ、透明性及び平滑性に優れる。
これらから、この発明は、ガスバリア性及び水蒸気バリア性に優れると同時に、耐屈曲性が優れることが明らかとなった。
【0097】
【発明の効果】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いるので、これを含有する塗工用組成物を、基材の蒸着層に塗工した際、この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が均一に基材の蒸着層上に配され、得られるガスバリア性積層体は、ガスバリア性、水蒸気バリア性が共に向上し、かつ、耐屈曲性に優れ、さらにまた透明性にも優れる。
Claims (8)
- 高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に無機化合物からなる蒸着層を形成した基材の上記蒸着層の表面に、水溶性高分子、及び平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した塗工用組成物からなるコーティング層を積層したガスバリア性積層体。
- 上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、イオン交換水中にこの膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分が1.5重量%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行って十分に分散させ、その水分散液50mlを50mlメスシリンダーに入れて静置して6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定したとき、下記の式(1)を満たす請求項1に記載のガスバリア性積層体。
(A−B)/A×100≧90 (1)
(上記式において、Aは、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量(重量部)を示し、Bは、完全沈降した粒子の量(重量部)を示す。) - 上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、200〜100000Gの遠心分離又はデカンテーションの少なくとも一方の処理により得られたものである請求項1又は2に記載のガスバリア性積層体。
- 上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、分散剤を用いて分散処理した後、200〜100000Gの遠心分離又はデカンテーションの少なくとも一方の処理により得られたものである請求項1又は2に記載のガスバリア性積層体。
- 上記水溶性高分子がポリビニルアルコール系重合体である請求項1乃4至のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
- 上記ポリビニルアルコール系重合体は、分子中に疎水基を含有した変性ポリビニルアルコールである請求項5に記載のガスバリア性積層体。
- 上記蒸着層とコーティング層との間にアンカーコート層を設けた請求項1乃至6のいずれかに記載のガスバリア性積層体。
- 請求項1乃至7のいずれかに記載のガスバリア性積層体を少なくとも1層含む積層体。
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-
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- 2002-11-28 JP JP2002345735A patent/JP2004175011A/ja active Pending
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