JP2004169213A - 古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法及び同製造方法によって得られる古紙パルプ混合クラフトパルプ - Google Patents
古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法及び同製造方法によって得られる古紙パルプ混合クラフトパルプ Download PDFInfo
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Abstract
【課題】クラフトパルプの一部を古紙パルプと置き換えることにより、クラフトパルプの製造コストを低減すること。
【解決手段】薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、分級処理設備にて長繊維分、短繊維分に分級し、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理する。古紙パルプは、分級前、離解叩解設備(ニーダー、ディスパーザー等)にて所定のフリーネス(400〜600ml)に調整するとよい。あるいは分級後にニーダー、ディスパーザー等にて所定のフリーネスに調整するとよい。クラフトパルプは、広葉樹クラフトパルプでも針葉樹クラフトパルプでもよい。
【解決手段】薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、分級処理設備にて長繊維分、短繊維分に分級し、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理する。古紙パルプは、分級前、離解叩解設備(ニーダー、ディスパーザー等)にて所定のフリーネス(400〜600ml)に調整するとよい。あるいは分級後にニーダー、ディスパーザー等にて所定のフリーネスに調整するとよい。クラフトパルプは、広葉樹クラフトパルプでも針葉樹クラフトパルプでもよい。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本願発明は、古紙パルプを混合したクラフトパルプの製造方法及び同製造方法によって得られる古紙パルプ混合クラフトパルプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙資源保護の観点から、色々な紙の原料として古紙の利用が提唱されてきている。長繊維と短繊維に分級されない段ボール古紙は、クラフト蒸解法にて脱リグニンされ、次いで塩素漂白を行い、漂白パルプとして使用する例がある(米国特許5147503)。さらに、長繊維と短繊維に分級されない段ボール古紙は、クラフト蒸解を行わずに硫酸前処理後、3段階の酸素脱リグニン工程を行って漂白有無にもかかわらず上質紙の原料とし使用される例もある(米国特許5486268)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、本願発明者の知る限りでは、古紙パルプをクラフトパルプの一部と置換して利用する、という発想は従来知られていない。したがって、これに関する従来の公知文献は発見できなかった。
【0004】
本願発明は、上記のように、古紙パルプをクラフトパルプの一部と置換して利用するという基本的な着想に立脚している。
【0005】
しかし、古紙パルプをクラフトパルプの一部と置換するといっても、そのためにクラフトパルプが本来的に備えている有用な諸物性(たとえば、強度、白色度等)を劣化させることになっては意味がない。
【0006】
本願発明は、クラフトパルプが本来的に備えている上記のような有用な諸物性を維持しつつ、その一部を古紙パルプで置換し得るようにするための諸条件を提案することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法及び同製造方法によって得られる古紙パルプ混合クラフトパルプは、薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、分級処理設備にて長繊維、短繊維に分級し、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理することを基本的特徴とするものである。古紙パルプとしては、段ボール古紙のほか、種々の古紙パルプが利用できる。古紙パルプは、薬品及び機械的撹拌力(たとえば、パルパー)により離解させた後、分級処理設備(たとえば、スクリーン)にて、長繊維及び短繊維に分級される。分級した長繊維分または短繊維分は、クラフトパルプ(広葉樹クラフトパルプまたは針葉樹クラフトパルプ)と混合されるが、その比率は、クラフトパルプ90〜99に対して、長繊維分または短繊維分10〜1(絶乾重量比)である。クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分の比率が90:10をこえると夾雑物増加、白色度低下等の点で不都合が生じ、一方、99:1未満では、少なすぎて古紙パルプを混合する経済的メリットがない。
【0008】
古紙パルプは、分級処理される前に、離解叩解設備等(特に好ましくは、ニーダーやディスパーザーのような練る効果を持つ設備)にて予め所定のフリーネス(特に限定するものではないが、400〜600ml(JIS P8121)の範囲が好適である)に調整しておくことが推奨される。これとともに、あるいは、これにかえて、分級処理後に離解叩解設備にて所定のフリーネス(上記と同様の範囲)に調整することも推奨される。
【0009】
クラフトパルプ(広葉樹クラフトパルプまたは針葉樹クラフトパルプ)と古紙パルプの混合パルプは、そのあと、さらに漂白設備にて漂白処理される。
【0010】
漂白処理は、酸素脱リグニン工程と、白色度を上げる漂白工程の2工程である。
【0011】
酸素脱リグニン工程では、苛性ソーダ、酸素、熱の処理でパルプのカッパー価を下げる。漂白工程では、酸化剤(たとえば、塩素、二酸化塩素、次亜塩素酸、オゾン、過酸化水素等)を使用して漂白を行い、パルプの白色度を上げる。
【0012】
漂白処理方法としては、特に限定するものではないが、塩素漂白及び無塩素漂白の2方法がある。
【0013】
塩素漂白は、塩素単独または二酸化塩素を含む塩素段(C段またはC/D段)− 酸素を含むアルカリ抽出段(Eo段)− 次亜塩素酸段(ハイポH段)− 二酸化塩素段(D段)の4段塩素漂白シーケンス、またはC段(またはC/D)−過酸化水素またはハイポを含むEo段(Eop段またはEoH段)− D段の3段塩素漂白シーケンスである。
【0014】
無塩素漂白は、二酸化塩素段(D0段)またはオゾン段(Z段)− 酸素及び/または過酸化水素を含むアルカリ抽出段(E、Eo、EpまたはEop段)− 過酸化水素段(P段)− 二酸化塩素段(D1段)の3段(D0−Eop−D1またはZ/D−Eop−D1)または4段(D0−Eo−P−D1またはZ/D−Eo−P−D1)の無塩素漂白シーケンス)である。
【0015】
【実施例】
以下、本願発明のいくつかの実施例と、本願発明の技術的優位性を示すためのいくつかの比較例を表2〜5に示す。
【0016】
なお、各実施例及び比較例においては、クラフトパルプとして未晒広葉樹クラフトパルプ(LUKP)、未晒針葉樹クラフトパルプ(NUKP)を使用し、古紙パルプとしては段ボール古紙パルプ(OCC)を使用した。
【0017】
段ボール古紙パルプは、試験用6カット(0.15mm)スクリーン(熊谷理機工業製)にて長繊維分(リジェクト)と短繊維分(アクセプト)に分級して、必要に応じて長繊維分または短繊維分を使用し、さらに、一部の実施例においては、これらの長繊維分または短繊維分を離解叩解設備(山本百馬製作所製試験用ニーダー)でニーディングし、他の実施例においてはニーダーを使用しないでそのまま使用した。
【0018】
分級処理された古紙パルプの長繊維分または短繊維分は、所定の比率でクラフトパルプ(広葉樹クラフトパルプまたは針葉樹クラフトパルプ)と混合し、その後、同混合パルプを酸素脱リグニン及び漂白処理した。
【0019】
<酸素脱リグニン試験>
未晒パルプ(LUKP、NUKP)単独または未晒パルプと古紙パルプの混合パルプは、4.5L回転オートクレープ(熊谷理機工業製)にて酸素脱リグニンを行った。試験方法の詳細は、文献にて記載した。(Ai Van Tran, Appita Journal,71, No.4(4月号),300頁〜304頁(2000)。)なお、酸素脱リグニン率は、酸素脱リグニン前後のカッパー価の差異と酸素脱リグニン前のカッパー価の割合となる。
【0020】
<漂白試験>
塩素漂白と無塩素漂白を使用した。塩素漂白は、C−E−H−Dの4段漂白シーケンス、無塩素漂白は、D0−E−D1−D2の4段漂白シーケンスであった。パルプ(200g絶乾)をビニール製袋に詰め、所定の温度、滞留時間、薬品添加量、パルプ濃度で各漂白段を行った。漂白条件を下表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
<パルプ品質の測定>
クラフトパルプ単独、段ボール古紙パルプ単独、古紙パルプ混合クラフトパルプは、カッパー価、比引裂強度、裂断長、比破裂強度、耐折度、白色度、夾雑物、繊維長の品質を測定した。測定方法を下記に示す。更に、漂白性を示すために全カッパーファクター(TKF)の指数を使用した。TKFとは、漂白で使用全塩素系漂白薬品(塩素、次亜塩素酸ソーダ、二酸化塩素等)のトータル有効塩素とカッパー価の割合である。
【0023】
各パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度(フリーネス)で、500mlに調製した後、「JIS P8222及びJIS P8223」記載の方法で、手抄シートを作成し、紙質試験に供した。
【0024】
<カッパー価の測定法>
各パルプは、「JIS P8211」記載の方法により、カッパー価を測定した。
【0025】
<裂断長の測定法>
各パルプの裂断長は、「JIS P8113」記載の方法で測定した。
【0026】
<比破裂強度の測定法>
各パルプは、「JIS P8112」記載の方法で比破裂強度を測定した。
【0027】
<比引裂強度の測定法>
各パルプは、「JIS P8116」記載の方法により、比引裂強度を測定した。
【0028】
<耐折強度の測定法>
各パルプは、「JIS P8115」記載の方法により、耐折強度を測定した。
【0029】
<白色度の測定法>
漂白パルプは、「JIS P8123」記載の方法により、ハンター白色度を測定した。
【0030】
<夾雑物の測定法>
未叩解パルプを用いて60g/m2の米坪のシートを10枚製造し、東英電子工業の紙ちり測定装置にて夾雑物を測定した。
【0031】
<パルプの繊維長の測定法>
未叩解パルプを用いてカヤニFS100装置にて繊維長を測定した。
【0032】
<第1実施例および第1〜4比較例>
表2と3は、クラフトパルプに対する古紙パルプの配合率とパルプの諸物性に与える影響とを検証するためのもので、実施例1は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対して段ボール古紙パルプの長繊維分を6.3の比率で混合し、酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。比較例1は、広葉樹クラフトパルプ100%を酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。比較例2は、段ボール古紙パルプの長繊維分100%を酸素脱リグニン(合計3段)した後、漂白処理したものである。比較例3は、針葉樹クラフトパルプ85に対して段ボール古紙パルプの長繊維分を15の比率で混合し、酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。比較例4は、針葉樹クラフトパルプ100%を酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。
【0033】
第1実施例および第1〜4比較例の未晒パルプのカッパー価と漂白性を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
第1実施例および第1〜4比較例の晒パルプの物理特性を示す。
【0036】
【表3】
【0037】
<実施例2〜6および比較例5>
表4は、段ボール古紙パルプの長繊維分または短繊維分に対する離解叩解処理(ニーダー処理)の影響を検証するためのもので、実施例2は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対して、ニーダー処理前の古紙パルプ短繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例3は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対して、ニーダー処理後の古紙パルプ短繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例4は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対してニーダー処理前の古紙パルプ長繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例5は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対してニーダー処理後の古紙パルプ長繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例6は、広葉樹クラフトパルプ90.1に対して、ニーダー処理後の古紙パルプ短繊維分を9.9の比率で混合したもの、比較例5は、広葉樹クラフトパルプ100%のものを示している。なお、上記実施例および比較例のパルプは、酸素脱リグニン後、漂白処理した。
【0038】
第2〜6実施例および第5比較例の未晒パルプのカッパー価と漂白性を示す。
【0039】
【表4】
【0040】
第2〜6実施例および第5比較例の晒パルプの物理特性を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
<古紙パルプへのニーダー処理の効果>
表6は、段ボール古紙パルプの長繊維分または短繊維分へのニーダー処理の影響を示す。短繊維分のフリーネスは低いため、このフリーネスが下がらないようニーダーの処理条件を調整した。長繊維分のフリーネスは高いため、フリーネスの100ml程度の低下幅を得る為には、ニーダーの処理条件を調整した。なお、これらの古紙パルプは酸素脱リグニンと漂白を行わなかった。
【0043】
【表6】
【0044】
<評 価>
(1) 実施例1は、古紙パルプの長繊維分を広葉樹クラフトパルプ93.7%に対して6.3%配合したものであるが、比較例1(広葉樹クラフトパルプ100%)に対して、同等の白色度(85.5→84.9)と、同等の強度(裂断長:6.17→6.19、比破裂度:4.27→4.82、比引裂度:80.7→90.3)が得られ、十分実用性のあるものであった。ただし、夾雑物が多かった(18.3mm2/m2→142.7mm2/m2)が、これは、ニーダー、ディスパーザー処理を適切に行うことによって改善し得るものである。
【0045】
なお、比較例3は、試験的に古紙パルプを多量に使用したもの(針葉樹クラフトパルプ85に対して段ボール古紙の長繊維分を15の比率で混合)であるが、やはり、針葉樹クラフトパルプ100%のもの(比較例4)に比して白色度が大きく劣り(82.0→76.5)、実用パルプとしては不適当であると結論した。
【0046】
(2) 実施例2〜6も、白色度および強度において、比較例5(広葉樹クラフトパルプ100%)と同等の範囲にあり、しかも段ボール古紙についてニーダー処理後のもの(実施例3,5,6)は、白色度が向上するとともに夾雑物が減少する傾向がみられた。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本願発明によれば、所定比率の古紙パルプをもってクラフトパルプの一部と置換しても、実用上品質面で何ら支障のないクラフトパルプを製造し得るものであり、安価な古紙パルプをクラフトパルプの原料として利用し得る経済的メリットの大きいものである。更に、古紙パルプを離解叩解設備であるニーダー、ディスパーザー等で処理することにより完成パルプの見栄え(夾雑物の減少)が極めて向上する。
【発明の属する技術分野】
本願発明は、古紙パルプを混合したクラフトパルプの製造方法及び同製造方法によって得られる古紙パルプ混合クラフトパルプに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
紙資源保護の観点から、色々な紙の原料として古紙の利用が提唱されてきている。長繊維と短繊維に分級されない段ボール古紙は、クラフト蒸解法にて脱リグニンされ、次いで塩素漂白を行い、漂白パルプとして使用する例がある(米国特許5147503)。さらに、長繊維と短繊維に分級されない段ボール古紙は、クラフト蒸解を行わずに硫酸前処理後、3段階の酸素脱リグニン工程を行って漂白有無にもかかわらず上質紙の原料とし使用される例もある(米国特許5486268)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
一方、本願発明者の知る限りでは、古紙パルプをクラフトパルプの一部と置換して利用する、という発想は従来知られていない。したがって、これに関する従来の公知文献は発見できなかった。
【0004】
本願発明は、上記のように、古紙パルプをクラフトパルプの一部と置換して利用するという基本的な着想に立脚している。
【0005】
しかし、古紙パルプをクラフトパルプの一部と置換するといっても、そのためにクラフトパルプが本来的に備えている有用な諸物性(たとえば、強度、白色度等)を劣化させることになっては意味がない。
【0006】
本願発明は、クラフトパルプが本来的に備えている上記のような有用な諸物性を維持しつつ、その一部を古紙パルプで置換し得るようにするための諸条件を提案することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明の古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法及び同製造方法によって得られる古紙パルプ混合クラフトパルプは、薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、分級処理設備にて長繊維、短繊維に分級し、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理することを基本的特徴とするものである。古紙パルプとしては、段ボール古紙のほか、種々の古紙パルプが利用できる。古紙パルプは、薬品及び機械的撹拌力(たとえば、パルパー)により離解させた後、分級処理設備(たとえば、スクリーン)にて、長繊維及び短繊維に分級される。分級した長繊維分または短繊維分は、クラフトパルプ(広葉樹クラフトパルプまたは針葉樹クラフトパルプ)と混合されるが、その比率は、クラフトパルプ90〜99に対して、長繊維分または短繊維分10〜1(絶乾重量比)である。クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分の比率が90:10をこえると夾雑物増加、白色度低下等の点で不都合が生じ、一方、99:1未満では、少なすぎて古紙パルプを混合する経済的メリットがない。
【0008】
古紙パルプは、分級処理される前に、離解叩解設備等(特に好ましくは、ニーダーやディスパーザーのような練る効果を持つ設備)にて予め所定のフリーネス(特に限定するものではないが、400〜600ml(JIS P8121)の範囲が好適である)に調整しておくことが推奨される。これとともに、あるいは、これにかえて、分級処理後に離解叩解設備にて所定のフリーネス(上記と同様の範囲)に調整することも推奨される。
【0009】
クラフトパルプ(広葉樹クラフトパルプまたは針葉樹クラフトパルプ)と古紙パルプの混合パルプは、そのあと、さらに漂白設備にて漂白処理される。
【0010】
漂白処理は、酸素脱リグニン工程と、白色度を上げる漂白工程の2工程である。
【0011】
酸素脱リグニン工程では、苛性ソーダ、酸素、熱の処理でパルプのカッパー価を下げる。漂白工程では、酸化剤(たとえば、塩素、二酸化塩素、次亜塩素酸、オゾン、過酸化水素等)を使用して漂白を行い、パルプの白色度を上げる。
【0012】
漂白処理方法としては、特に限定するものではないが、塩素漂白及び無塩素漂白の2方法がある。
【0013】
塩素漂白は、塩素単独または二酸化塩素を含む塩素段(C段またはC/D段)− 酸素を含むアルカリ抽出段(Eo段)− 次亜塩素酸段(ハイポH段)− 二酸化塩素段(D段)の4段塩素漂白シーケンス、またはC段(またはC/D)−過酸化水素またはハイポを含むEo段(Eop段またはEoH段)− D段の3段塩素漂白シーケンスである。
【0014】
無塩素漂白は、二酸化塩素段(D0段)またはオゾン段(Z段)− 酸素及び/または過酸化水素を含むアルカリ抽出段(E、Eo、EpまたはEop段)− 過酸化水素段(P段)− 二酸化塩素段(D1段)の3段(D0−Eop−D1またはZ/D−Eop−D1)または4段(D0−Eo−P−D1またはZ/D−Eo−P−D1)の無塩素漂白シーケンス)である。
【0015】
【実施例】
以下、本願発明のいくつかの実施例と、本願発明の技術的優位性を示すためのいくつかの比較例を表2〜5に示す。
【0016】
なお、各実施例及び比較例においては、クラフトパルプとして未晒広葉樹クラフトパルプ(LUKP)、未晒針葉樹クラフトパルプ(NUKP)を使用し、古紙パルプとしては段ボール古紙パルプ(OCC)を使用した。
【0017】
段ボール古紙パルプは、試験用6カット(0.15mm)スクリーン(熊谷理機工業製)にて長繊維分(リジェクト)と短繊維分(アクセプト)に分級して、必要に応じて長繊維分または短繊維分を使用し、さらに、一部の実施例においては、これらの長繊維分または短繊維分を離解叩解設備(山本百馬製作所製試験用ニーダー)でニーディングし、他の実施例においてはニーダーを使用しないでそのまま使用した。
【0018】
分級処理された古紙パルプの長繊維分または短繊維分は、所定の比率でクラフトパルプ(広葉樹クラフトパルプまたは針葉樹クラフトパルプ)と混合し、その後、同混合パルプを酸素脱リグニン及び漂白処理した。
【0019】
<酸素脱リグニン試験>
未晒パルプ(LUKP、NUKP)単独または未晒パルプと古紙パルプの混合パルプは、4.5L回転オートクレープ(熊谷理機工業製)にて酸素脱リグニンを行った。試験方法の詳細は、文献にて記載した。(Ai Van Tran, Appita Journal,71, No.4(4月号),300頁〜304頁(2000)。)なお、酸素脱リグニン率は、酸素脱リグニン前後のカッパー価の差異と酸素脱リグニン前のカッパー価の割合となる。
【0020】
<漂白試験>
塩素漂白と無塩素漂白を使用した。塩素漂白は、C−E−H−Dの4段漂白シーケンス、無塩素漂白は、D0−E−D1−D2の4段漂白シーケンスであった。パルプ(200g絶乾)をビニール製袋に詰め、所定の温度、滞留時間、薬品添加量、パルプ濃度で各漂白段を行った。漂白条件を下表1に示す。
【0021】
【表1】
【0022】
<パルプ品質の測定>
クラフトパルプ単独、段ボール古紙パルプ単独、古紙パルプ混合クラフトパルプは、カッパー価、比引裂強度、裂断長、比破裂強度、耐折度、白色度、夾雑物、繊維長の品質を測定した。測定方法を下記に示す。更に、漂白性を示すために全カッパーファクター(TKF)の指数を使用した。TKFとは、漂白で使用全塩素系漂白薬品(塩素、次亜塩素酸ソーダ、二酸化塩素等)のトータル有効塩素とカッパー価の割合である。
【0023】
各パルプは、「JIS P8221−2」記載のPFIミルにより、「JIS P8121」記載のカナダ標準濾水度(フリーネス)で、500mlに調製した後、「JIS P8222及びJIS P8223」記載の方法で、手抄シートを作成し、紙質試験に供した。
【0024】
<カッパー価の測定法>
各パルプは、「JIS P8211」記載の方法により、カッパー価を測定した。
【0025】
<裂断長の測定法>
各パルプの裂断長は、「JIS P8113」記載の方法で測定した。
【0026】
<比破裂強度の測定法>
各パルプは、「JIS P8112」記載の方法で比破裂強度を測定した。
【0027】
<比引裂強度の測定法>
各パルプは、「JIS P8116」記載の方法により、比引裂強度を測定した。
【0028】
<耐折強度の測定法>
各パルプは、「JIS P8115」記載の方法により、耐折強度を測定した。
【0029】
<白色度の測定法>
漂白パルプは、「JIS P8123」記載の方法により、ハンター白色度を測定した。
【0030】
<夾雑物の測定法>
未叩解パルプを用いて60g/m2の米坪のシートを10枚製造し、東英電子工業の紙ちり測定装置にて夾雑物を測定した。
【0031】
<パルプの繊維長の測定法>
未叩解パルプを用いてカヤニFS100装置にて繊維長を測定した。
【0032】
<第1実施例および第1〜4比較例>
表2と3は、クラフトパルプに対する古紙パルプの配合率とパルプの諸物性に与える影響とを検証するためのもので、実施例1は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対して段ボール古紙パルプの長繊維分を6.3の比率で混合し、酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。比較例1は、広葉樹クラフトパルプ100%を酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。比較例2は、段ボール古紙パルプの長繊維分100%を酸素脱リグニン(合計3段)した後、漂白処理したものである。比較例3は、針葉樹クラフトパルプ85に対して段ボール古紙パルプの長繊維分を15の比率で混合し、酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。比較例4は、針葉樹クラフトパルプ100%を酸素脱リグニン後、漂白処理したものである。
【0033】
第1実施例および第1〜4比較例の未晒パルプのカッパー価と漂白性を示す。
【0034】
【表2】
【0035】
第1実施例および第1〜4比較例の晒パルプの物理特性を示す。
【0036】
【表3】
【0037】
<実施例2〜6および比較例5>
表4は、段ボール古紙パルプの長繊維分または短繊維分に対する離解叩解処理(ニーダー処理)の影響を検証するためのもので、実施例2は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対して、ニーダー処理前の古紙パルプ短繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例3は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対して、ニーダー処理後の古紙パルプ短繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例4は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対してニーダー処理前の古紙パルプ長繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例5は、広葉樹クラフトパルプ93.7に対してニーダー処理後の古紙パルプ長繊維分を6.3の比率で混合したもの、実施例6は、広葉樹クラフトパルプ90.1に対して、ニーダー処理後の古紙パルプ短繊維分を9.9の比率で混合したもの、比較例5は、広葉樹クラフトパルプ100%のものを示している。なお、上記実施例および比較例のパルプは、酸素脱リグニン後、漂白処理した。
【0038】
第2〜6実施例および第5比較例の未晒パルプのカッパー価と漂白性を示す。
【0039】
【表4】
【0040】
第2〜6実施例および第5比較例の晒パルプの物理特性を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
<古紙パルプへのニーダー処理の効果>
表6は、段ボール古紙パルプの長繊維分または短繊維分へのニーダー処理の影響を示す。短繊維分のフリーネスは低いため、このフリーネスが下がらないようニーダーの処理条件を調整した。長繊維分のフリーネスは高いため、フリーネスの100ml程度の低下幅を得る為には、ニーダーの処理条件を調整した。なお、これらの古紙パルプは酸素脱リグニンと漂白を行わなかった。
【0043】
【表6】
【0044】
<評 価>
(1) 実施例1は、古紙パルプの長繊維分を広葉樹クラフトパルプ93.7%に対して6.3%配合したものであるが、比較例1(広葉樹クラフトパルプ100%)に対して、同等の白色度(85.5→84.9)と、同等の強度(裂断長:6.17→6.19、比破裂度:4.27→4.82、比引裂度:80.7→90.3)が得られ、十分実用性のあるものであった。ただし、夾雑物が多かった(18.3mm2/m2→142.7mm2/m2)が、これは、ニーダー、ディスパーザー処理を適切に行うことによって改善し得るものである。
【0045】
なお、比較例3は、試験的に古紙パルプを多量に使用したもの(針葉樹クラフトパルプ85に対して段ボール古紙の長繊維分を15の比率で混合)であるが、やはり、針葉樹クラフトパルプ100%のもの(比較例4)に比して白色度が大きく劣り(82.0→76.5)、実用パルプとしては不適当であると結論した。
【0046】
(2) 実施例2〜6も、白色度および強度において、比較例5(広葉樹クラフトパルプ100%)と同等の範囲にあり、しかも段ボール古紙についてニーダー処理後のもの(実施例3,5,6)は、白色度が向上するとともに夾雑物が減少する傾向がみられた。
【0047】
【発明の効果】
以上のように、本願発明によれば、所定比率の古紙パルプをもってクラフトパルプの一部と置換しても、実用上品質面で何ら支障のないクラフトパルプを製造し得るものであり、安価な古紙パルプをクラフトパルプの原料として利用し得る経済的メリットの大きいものである。更に、古紙パルプを離解叩解設備であるニーダー、ディスパーザー等で処理することにより完成パルプの見栄え(夾雑物の減少)が極めて向上する。
Claims (6)
- 薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、分級処理設備にて長繊維、短繊維に分級し、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理することを特徴とする古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法。
- 薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、離解叩解設備にて所定のフリーネスに調整した後、分級処理設備にて長繊維、短繊維に分級し、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理することを特徴とする古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法。
- 薬品及び機械的撹拌力により離解させて得た古紙パルプを、分級処理設備にて長繊維、短繊維に分級し、長繊維分または短繊維分を離解叩解設備にて所定のフリーネスに調整した後、クラフトパルプと古紙パルプの長繊維分または短繊維分とを、90:10〜99:1の割合で混合し、さらに漂白設備にて漂白処理することを特徴とする古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法。
- クラフトパルプが、広葉樹クラフトパルプであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法。
- クラフトパルプが、針葉樹クラフトパルプであることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の古紙パルプ混合クラフトパルプの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか1項の方法によって得られた古紙パルプ混合クラフトパルプ。
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-
2002
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