JP2004167539A - フェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備 - Google Patents
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Abstract
【課題】フェライト系ステンレス鋼材を加熱後、熱間圧延するに際し、表面性状に優れた熱間圧延製品を得ること、及び、熱間圧延工程の生産能率の向上ならびに熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることが可能なフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備を提供すること。
【解決手段】フェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉1内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱し、次いで、ウォーキングビーム炉1内で加熱した鋼材を誘導加熱炉2内でその表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱する。
【選択図】 図1
【解決手段】フェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉1内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱し、次いで、ウォーキングビーム炉1内で加熱した鋼材を誘導加熱炉2内でその表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備に関し、更に詳しくは、ウォーキングビーム炉で加熱されたフェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延工程に入る前に再加熱してなるフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェライト系ステンレス鋼材は、耐食性、加工性、溶接性等に優れていることから、厨房用品、建築内装、自動車用部品、化学プラント等種々の用途に応用されている。従来、工業的に製造されるフェライト系ステンレス鋼材は、連続鋳造で得られた鋳片を分塊圧延により鋼片とし、その鋼片を加熱炉を通して加熱した後、粗列圧延、中間列圧延、仕上列圧延を経て線、棒などの熱間圧延製品となし、得られた熱間圧延製品に焼鈍し・酸洗を施してから冷間引き抜き加工にて所定の製品寸法まで加工されるのが一般的である。
【0003】
しかし、このフェライト系ステンレス鋼材を圧延する工程においては、熱間圧延後の熱間圧延製品の表面に「ワレ、ヘゲ」と呼ばれる疵が発生しやすいという問題があった。ワレ、ヘゲは、鋼材表層部の温度が低く、鋼材表層部の熱間加工性が低い状態で鋼材が圧延ロールに噛み込まれる際に鋼材表層部に過度の引張り応力が掛かることが原因となって生じる。このワレ、ヘゲは、冷間加工後も消失せずに残留し、品質管理上大きな問題となっている。このため、ワレ、ヘゲ発生を抑制する観点から、加熱炉から粗圧延機までの間を高温に保持して鋼材表層部の熱間加工性を向上させるべく、加熱炉における加熱温度をできるだけ高くする必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−239717号公報
【0005】
ところで、上記フェライト系ステンレス鋼材等を加熱する際に使用される加熱炉としては、近年、省エネ・高効率の観点からウォーキングビーム炉が一般的である。このウォーキングビーム炉は、炉内に上下前後に可動するウォーキングビームと固定ビームとが所定間隔で配置され、ウォーキングビームに上昇、前進、下降、後退の矩形ないし楕円形状の駆動サイクルを与えることにより、固定ビームに支承された鋼材を加熱しながら1ピッチずつ前進搬送するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粗圧延時のフェライト系ステンレス鋼材表層部の熱間加工性を向上させるべく加熱炉での加熱温度を高く設定すると、大部分が軟らかいフェライト組織であることから鋼材が軟化して、特に、上記ウォーキングビーム炉を使用した場合には、ビームに支承されていない鋼材部分、すなわち、ビーム間および両端ビームの外側に位置する部分が垂れて下がって変形してしまうという問題があった。鋼材の垂れは円滑な搬送の妨げとなるばかりでなく、圧延ロールに噛み込まれる際のミスロールにつながるといった不都合が生じ得る。このため、炉内の加熱温度を鋼材が軟化しない温度に低く抑えたり、鋼材端部の垂れ防止のために鋼材長を両端ビーム間の距離に合わせて規制するなどの対策を講じなければならなかった。
【0007】
ところが、ウォーキングビーム炉内での加熱温度を下げてしまうと、鋼材に高い熱間加工性を付与することができないため圧延時の鋼材表面にワレ、ヘゲが発生するという問題があり、また、鋼材長を規制すると、1つの鋳片から取得できる所定長さの鋼片取りが半端になり、歩留損(切り捨てロス)が大きくなり、さらには、作業工数の増大ならびに生産能率の低下を招くという問題があった。
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、フェライト系ステンレス鋼材を加熱後、熱間圧延するに際し、ワレ、ヘゲの発生がない表面性状に優れた熱間圧延製品を得ること、さらに、加熱を含めた熱間圧延工程全体の生産能率の向上ならびに得られる熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることが可能なフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延前の加熱方法は、フェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉にて搬送しつつ加熱し熱間圧延工程により圧延するものにおいて、前記鋼材をウォーキングビーム炉内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱する工程と、前記ウォーキングビーム炉内で加熱された鋼材を熱間圧延工程に入る前に誘導加熱炉内でその表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱する工程とを含むことを要旨とする。
【0010】
この場合、ウォーキングビーム炉での加熱条件がフェライト系ステンレス鋼材の表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように設定されているので、加熱時に鋼材が垂れて変形することはなく安定にその形状を維持することができる。また、熱間圧延工程に入る前に行う誘導加熱炉による再加熱では、その加熱条件が鋼材の表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲に急速加熱されるように設定されているので、鋼材内部の昇温よりも表層部の昇温効果が高められる結果、鋼材が軟化し垂れ下がりが発生することなく鋼材表層部の熱間加工性を向上させることができる。
【0011】
また、フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延する際に、鋼材表層部の温度が1150〜1300℃を維持したままでも良いが、降温したとしても100℃以内である1050〜1200℃の範囲にある時に熱間圧延の粗圧延第1パスの圧延を行えば、粗圧延時にワレ、ヘゲが発生しない程度に鋼材の熱間加工性を向上させることができる。
【0012】
また、フェライト系ステンレス鋼材の急速加熱を行う誘導加熱炉が、鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動するものであれば、加熱が不十分となりがちな鋼材端部も内側部分と同等に加熱されることとなるため、鋼材長が炉長と同程度となるような長尺物であっても均一加熱を達成することができる。さらに、この揺動機構が備えられていることにより誘導加熱炉自体の小型化を図ることができるので、スペースの少ない場所であっても誘導加熱炉の設置が可能となる。
【0013】
また、フェライト系ステンレス鋼材の加熱設備を、フェライト系ステンレス鋼材を加熱しつつ搬送するウォーキングビーム炉とこのウォーキングビーム炉により搬送加熱された鋼材を熱間圧延する圧延機との間に、ウォーキングビーム炉により搬送加熱された鋼材の急速加熱を可能とする誘導加熱炉を配設し、再加熱させたものとすることにより、変形のない高い熱間加工性を備えた鋼材が提供されるので、円滑な熱間圧延を実現することができると共に、ワレ、ヘゲのない表面性状に優れた熱間圧延製品を製造することができる。
【0014】
また、この加熱設備において、誘導加熱炉をフェライト系ステンレス鋼材を圧延方向全長に亘って均一に再加熱するためその鋼材の長手方向に揺動させる揺動機構を備えたものとすることにより、鋼材全体の均一加熱を達成することができる。このように、ウォーキングビーム炉では低めの温度で予備的な加熱を行い、その後誘導加熱炉で圧延加工に必要な温度にまで昇温することによって、鋼材の垂れ下がりを防ぐと共にワレ、ヘゲの発生を抑えることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
初めに、本発明を構成するフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法ならびに加熱設備について説明する。本発明に係る加熱設備は、図1に示すように、図示しない連続鋳造機から得られた鋳片を分塊し、これにより得られた鋼片(以下、鋼片については「フェライト系ステンレス鋼材」若しくは単に「鋼材」と記述する。)を熱間圧延可能な温度近傍まで予加熱するためのウォーキングビーム炉(図中では、「WB」と表示する。)1と、ウォーキングビーム炉1の後工程として鋼材を急速に再加熱するための誘導加熱炉(図中では、「IH」と表示する。)2とからなる。これらの加熱炉1,2での加熱を施した鋼材は粗圧延機3へと搬送される。また、各設備装置間は鋼材を搬送するためのテーブルローラ4,5によって結ばれている。なお、実際の熱間圧延においては、粗圧延機3の下流側に図示しない中間圧延機、仕上圧延機、冷却装置等の種々の設備装置が配設されるがここでは省略する。以下に、ウォーキングビーム炉1、誘導加熱炉2、及び粗圧延機3の構成について説明する。
【0016】
ウォーキングビーム炉1は、一般に、炉内に上下前後に可動するウォーキングビームと固定ビームとが所定間隔で配置され、ウォーキングビームに上昇、前進、下降、後退の矩形ないし楕円形状の駆動サイクルを与えることにより、固定ビームに支承された鋼材を加熱しながら1ピッチずつ前進搬送するという動作機構を有するものである。なお、本発明で使用するウォーキングビーム炉は特に限定されるものではなく、上記動作機構を備えたものであれば如何なる形態を有するものであっても構わない。
【0017】
このウォーキングビーム炉1におけるフェライト系ステンレス鋼材の加熱温度は、1000〜1200℃の温度範囲にあることが好ましく、更には、1050〜1150℃の温度範囲にあることが好ましい。加熱温度が1000℃未満であると、誘導加熱炉での再加熱に時間が掛かりすぎるという問題があり、一方、加熱温度が1200℃を超えると、フェライト系ステンレス鋼材が軟化してビーム間及び端部において鋼材の垂れが生じるため好ましくない。
【0018】
誘導加熱炉2は、一般に、複数個の誘導加熱コイルが所定間隔をあけて配列されており、この誘導加熱コイル内に被加熱鋼材を挿入し、コイルに高周波電流(交流電流)を流すと交番磁束が発生し被加熱鋼材に誘導電流が流れることによって、被加熱鋼材中にジュール熱が発生し被加熱鋼材が加熱されるというものである。この誘導加熱炉によれば、被加熱鋼材の急速・高温加熱が可能であり、また、鋼材の表皮効果により周波数を変化させることによって被加熱鋼材の表層部と内部の加熱効果に差違を持たせることが可能である。
【0019】
具体的には、被加熱鋼材(本発明の場合、フェライト系ステンレス鋼材)の表層部のみを高温加熱する場合には高周波数の電流を用いるのが好ましい。鋼材表層部のみを高温加熱することができれば、表層部の熱間加工性を向上させることにより粗圧延時のワレ、ヘゲ発生を抑制することができる一方、内部は表層部ほど高温に達していないので軟化し鋼材が変形するといった不都合を回避することができる。なお、本発明で使用する誘導加熱炉は特に限定されるものではなく、上記機構を備えたものであれば如何なる形態を有するものであっても構わない。
【0020】
この誘導加熱炉2では、フェライト系ステンレス鋼材をその表層部の温度が前段階であるウォーキングビーム炉での加熱温度よりも高くなる温度であって1150〜1300℃の温度範囲となるように再加熱することが省エネの観点から好ましく、更には、1200〜1300℃の温度範囲となるように加熱することがワレ、ヘゲ防止の観点からより好ましい。鋼材表層部の温度が1150℃未満であると、十分な熱間加工性が得られず、粗圧延時に材料表面にワレ、ヘゲが発生するおそれがあるため好ましくない。一方、鋼材表層部の温度が1300℃を超えると、フェライト系ステンレス鋼材の軟化が起こり、その結果、粗圧延の際に座屈(反り)が生じて、圧延ロールが噛み込み不能となる、いわゆるミスロールの原因となるため好ましくない。なお、ウォーキングビーム炉及び誘導加熱炉での加熱温度は、圧延時のワレ、ヘゲの発生を防止する観点から高めに設定しておくのが良い。
【0021】
また、この誘導加熱炉2には、フェライト系ステンレス鋼材をその長手方向に揺動可能とする揺動機構を備えたものであることが好ましい。ここで長手方向に揺動とは、圧延工程の進行方向に対して前後に揺動するという意味である。この揺動機構を備えることにより、鋼材の長手方向の加熱状態が均一となる。
【0022】
粗圧延機3は、上述の誘導加熱炉内より搬出されたフェライト系ステンレス鋼材を粗圧延するものであり、2ロール型、3ロール型、4ロール型など、希望する圧延形状に応じて種々のタイプのものが適用可能であり、また、圧延ロール数も圧延スケジュール等に応じて適宜変更可能である。
【0023】
この粗圧延機2によってフェライト系ステンレス鋼材が圧延される際に、粗圧延第1パスの圧延時における鋼材表層部の温度は、誘導加熱炉での表層部の温度をほぼ維持する温度範囲にあることが好ましく、更には、その表層部の温度が誘導加熱炉での加熱時からの降温が100℃以内であれば良く、更には、50℃以内にあることがより好ましい。鋼材表層部の温度が誘導加熱炉での加熱時からの降温が100℃を超えると、ワレ、ヘゲ発生の要因となるため好ましくない。
【0024】
ここで粗圧延第1パスの圧延時における鋼材表層部の温度の測定は、鋼材が第1パス通過した後の状態で行うのが好ましい。フェライト系ステンレス鋼材は、圧延前の加熱工程において1000℃以上の高温域で加熱されるため、その表層部にスケール(酸化被膜)が僅かながら生じる。このスケールが形成された状態で鋼材表層部の温度を測定すると、実際の表層部の温度とは異なる温度が測定されてしまい、適切な温度管理ができなくなるおそれがあるため好ましくない。これに対して測定点が第1パス通過後であると、鋼材が第1パスの圧延ロールを通ることによって鋼材表層部のスケールが取り除かれるので、鋼材表層部の温度をより正確に測定することが可能となる。
【0025】
上記加熱設備及び粗圧延機によって熱間圧延されるフェライト系ステンレス鋼材は、0.12重量%以下のC、11.0〜27.5重量%のCr、及び必要に応じて強化元素であるMo等又は快削性元素であるS、Pb、Te等を含有するステンレス鋼からなるものであり、SUS405、SUS410L、SUS430,SUS430F、SUS434、SUSXM27等が代表的なものとして挙げられる。フェライト系ステンレス鋼材は、板状、線状、棒状等いかなる形状を有するものであっても良い。
【0026】
【実施例】
本発明の効果を、実施例により具体的に説明する。
【0027】
本実施例における加熱設備は、上流側より、ウォーキングビーム炉、誘導加熱炉、粗圧延機、中間圧延機、及び仕上圧延機を順に配設してなる。圧延に用いるフェライト系ステンレス鋼材としては、SUS430(C:0.06重量%、Cr:16.8重量%含有)鋼材を用いた。また、この鋼材の寸法は、150mm角、長さ11.5mとした。
【0028】
上記加熱設備を経て得られた熱間圧延製品の評価としては、圧延製品表面のワレ、ヘゲ有無の観察と鋼材端部の垂れ下がり発生率の評価を行った。
【0029】
(熱間圧延製品表面のワレ、ヘゲ有無の観察)
熱間圧延製品表面のワレ、ヘゲ有無の観察は目視により行い、ワレ、ヘゲが1つも観察されなかったものを「◎」、部分的にワレ、ヘゲが観察されるが許容される範囲内のものを「○」として合格と評価し、許容範囲外のものを「×」として不合格と評価した。
【0030】
(鋼材端部の垂れ下がり発生率の評価)
また、鋼材端部の垂れ下がり発生率の評価は、ウォーキングビーム炉若しくは誘導加熱炉での加熱により、垂れ下がりが大きく搬送不可能となるか否かにより判断した。搬送を良好に行えたものを「○」として合格と評価し、搬送不可能となったものを「×」として不合格と評価した。
【0031】
(実施例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1100℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。誘導加熱炉では、鋼材を長手方向に揺動しながら70秒間炉内に挿置し、その間に表層部の温度を1150℃まで上昇させることとした。次いで、誘導加熱炉より鋼材を搬出し、粗圧延機にて粗圧延を行った。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1100℃であった。粗圧延後、中間圧延機による中間圧延、仕上圧延機による仕上圧延を行いさらに冷却装置で冷却して熱間圧延製品を得た。
【0032】
(実施例2)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1150℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。誘導加熱炉では、鋼材を長手方向に揺動しながら70秒間炉内に挿置し、その間に表層部の温度を1250℃まで上昇させることとした。次いで、誘導加熱炉より鋼材を搬出し、粗圧延機にて粗圧延を行った。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1200℃であった。粗圧延後、中間圧延機による中間圧延、仕上圧延機による仕上圧延を行いさらに冷却装置で冷却して熱間圧延製品を得た。
【0033】
(実施例3)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1100℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。誘導加熱炉では、鋼材を長手方向に揺動しながら120秒間炉内に挿置し、その間に表層部の温度を1200℃まで上昇させることとした。次いで、誘導加熱炉より鋼材を搬出し、粗圧延機にて粗圧延を行った。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1150℃であった。粗圧延後、中間圧延機による中間圧延、仕上圧延機による仕上圧延を行いさらに冷却装置で冷却して熱間圧延製品を得た。
【0034】
(比較例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1250℃となるように温度制御して1時間加熱した後、鋼材を搬出した。
【0035】
(比較例2)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1150℃となるように温度制御して1時間加熱した後、誘導加熱炉で表層部の温度が1350℃となるように昇温加熱し、130秒間保持し、鋼材を搬出した。
【0036】
(比較例3)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1050℃となるように温度制御して1時間加熱した後、誘導加熱炉で表層部の温度が1100℃となるように昇温加熱すると共にその温度に70秒間保持し、さらに圧延工程を経て熱間圧延製品を得た。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1050℃であった。
【0037】
図2には、上記実施例及び比較例におけるフェライト系ステンレス鋼材表層部の温度履歴を示した。
【0038】
表1に実施例品及び比較例品の評価結果を示す。なお、表1における加熱温度は、加熱により達成されるフェライト系ステンレス鋼材表層部の温度を指す。表より、ワレ、ヘゲ観察の結果、実施例1〜3の熱間圧延製品は共に良好な表面性状を有していた。
【0039】
これに対して、比較例1は、ウォーキングビーム炉での加熱温度が高いことにより鋼材に垂れが発生し、鋼材の搬送ができなくなったため以降の工程は全て中止した。また、比較例2は、再加熱となる誘導加熱炉での加熱温度が高いことにより鋼材が軟化しすぎて搬送不能となったため圧延を中止した。また、比較例3は、誘導加熱炉での加熱温度が低いために、鋼材表層部の熱間加工性が十分に上がらず、圧延時にワレ、ヘゲが多発した。
【0040】
【表1】
【0041】
以上の結果より、実施例1〜3の熱間圧延製品は、ワレ、ヘゲの発生が無く表面性状に優れており、また、加熱において鋼材の垂れは一切認められておらず円滑な熱間圧延を行うことができた。
【0042】
以上、実施例について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例におけるフェライト系ステンレス鋼材の材質及び寸法、ウォーキングビーム炉及び誘導加熱炉における加熱温度は一例であり、これに限られるものではない。また、上記実施例では、粗圧延の第1パスを行う際のフェライト系ステンレス鋼材表層部の温度を第1パス通過後に測定しているがこれに限られず、第1パス通過前あるいは第2パス以降を通過する時点で測定しても構わない。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延前の加熱方法及び加熱設備によれば、フェライト系ステンレス鋼材がウォーキングビーム炉内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱されるので、加熱時の鋼材の垂れが抑えられ、また、その後の搬送工程及び圧延工程を円滑に行うことができ、加熱を含めた熱間圧延工程全体の作業能率を大幅に改善することができるという効果がある。また、ウォーキングビーム炉で加熱された鋼材はさらに誘導加熱炉でその表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲内になるように急速加熱されるので、鋼材の垂れを発生させることなく鋼材表層部の熱間加工性を向上させ表面性状の良好な熱間圧延製品を得ることができるという効果がある。
【0044】
また、フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延する際に、誘導加熱炉での加熱温度をほぼ維持するか、低くとも100℃以内の降温である1050〜1200℃の温度範囲で熱間圧延工程の粗圧延第1パスの圧延を行うことにより、表面性状に優れた熱間圧延製品を提供することができると共に、熱間圧延時の生産能率を向上させることができるという効果がある。
【0045】
また、フェライト系ステンレス鋼材の急速加熱を行う誘導加熱炉を、鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動させるものとすることにより、加熱が不十分となりがちな鋼材端部も中央部分と同等に加熱されることとなるため、鋼材長が炉長と同程度となるような長尺物であっても均一加熱を達成することができる。その結果、狭いスペースでも誘導加熱炉の設置が可能となり、また、熱間圧延工程全体の生産能率の向上ならびに熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態に係る加熱設備を示したものである。
【図2】本願発明の実施の形態に係る(a)実施例、(b)比較例の加熱履歴を示したものである。
【符号の説明】
1 ウォーキングビーム炉
2 誘導加熱炉
3 粗圧延機
4,5 テーブルローラ
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備に関し、更に詳しくは、ウォーキングビーム炉で加熱されたフェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延工程に入る前に再加熱してなるフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、フェライト系ステンレス鋼材は、耐食性、加工性、溶接性等に優れていることから、厨房用品、建築内装、自動車用部品、化学プラント等種々の用途に応用されている。従来、工業的に製造されるフェライト系ステンレス鋼材は、連続鋳造で得られた鋳片を分塊圧延により鋼片とし、その鋼片を加熱炉を通して加熱した後、粗列圧延、中間列圧延、仕上列圧延を経て線、棒などの熱間圧延製品となし、得られた熱間圧延製品に焼鈍し・酸洗を施してから冷間引き抜き加工にて所定の製品寸法まで加工されるのが一般的である。
【0003】
しかし、このフェライト系ステンレス鋼材を圧延する工程においては、熱間圧延後の熱間圧延製品の表面に「ワレ、ヘゲ」と呼ばれる疵が発生しやすいという問題があった。ワレ、ヘゲは、鋼材表層部の温度が低く、鋼材表層部の熱間加工性が低い状態で鋼材が圧延ロールに噛み込まれる際に鋼材表層部に過度の引張り応力が掛かることが原因となって生じる。このワレ、ヘゲは、冷間加工後も消失せずに残留し、品質管理上大きな問題となっている。このため、ワレ、ヘゲ発生を抑制する観点から、加熱炉から粗圧延機までの間を高温に保持して鋼材表層部の熱間加工性を向上させるべく、加熱炉における加熱温度をできるだけ高くする必要があった(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−239717号公報
【0005】
ところで、上記フェライト系ステンレス鋼材等を加熱する際に使用される加熱炉としては、近年、省エネ・高効率の観点からウォーキングビーム炉が一般的である。このウォーキングビーム炉は、炉内に上下前後に可動するウォーキングビームと固定ビームとが所定間隔で配置され、ウォーキングビームに上昇、前進、下降、後退の矩形ないし楕円形状の駆動サイクルを与えることにより、固定ビームに支承された鋼材を加熱しながら1ピッチずつ前進搬送するものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、粗圧延時のフェライト系ステンレス鋼材表層部の熱間加工性を向上させるべく加熱炉での加熱温度を高く設定すると、大部分が軟らかいフェライト組織であることから鋼材が軟化して、特に、上記ウォーキングビーム炉を使用した場合には、ビームに支承されていない鋼材部分、すなわち、ビーム間および両端ビームの外側に位置する部分が垂れて下がって変形してしまうという問題があった。鋼材の垂れは円滑な搬送の妨げとなるばかりでなく、圧延ロールに噛み込まれる際のミスロールにつながるといった不都合が生じ得る。このため、炉内の加熱温度を鋼材が軟化しない温度に低く抑えたり、鋼材端部の垂れ防止のために鋼材長を両端ビーム間の距離に合わせて規制するなどの対策を講じなければならなかった。
【0007】
ところが、ウォーキングビーム炉内での加熱温度を下げてしまうと、鋼材に高い熱間加工性を付与することができないため圧延時の鋼材表面にワレ、ヘゲが発生するという問題があり、また、鋼材長を規制すると、1つの鋳片から取得できる所定長さの鋼片取りが半端になり、歩留損(切り捨てロス)が大きくなり、さらには、作業工数の増大ならびに生産能率の低下を招くという問題があった。
【0008】
本発明の解決しようとする課題は、フェライト系ステンレス鋼材を加熱後、熱間圧延するに際し、ワレ、ヘゲの発生がない表面性状に優れた熱間圧延製品を得ること、さらに、加熱を含めた熱間圧延工程全体の生産能率の向上ならびに得られる熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることが可能なフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法及び加熱設備を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延前の加熱方法は、フェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉にて搬送しつつ加熱し熱間圧延工程により圧延するものにおいて、前記鋼材をウォーキングビーム炉内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱する工程と、前記ウォーキングビーム炉内で加熱された鋼材を熱間圧延工程に入る前に誘導加熱炉内でその表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱する工程とを含むことを要旨とする。
【0010】
この場合、ウォーキングビーム炉での加熱条件がフェライト系ステンレス鋼材の表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように設定されているので、加熱時に鋼材が垂れて変形することはなく安定にその形状を維持することができる。また、熱間圧延工程に入る前に行う誘導加熱炉による再加熱では、その加熱条件が鋼材の表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲に急速加熱されるように設定されているので、鋼材内部の昇温よりも表層部の昇温効果が高められる結果、鋼材が軟化し垂れ下がりが発生することなく鋼材表層部の熱間加工性を向上させることができる。
【0011】
また、フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延する際に、鋼材表層部の温度が1150〜1300℃を維持したままでも良いが、降温したとしても100℃以内である1050〜1200℃の範囲にある時に熱間圧延の粗圧延第1パスの圧延を行えば、粗圧延時にワレ、ヘゲが発生しない程度に鋼材の熱間加工性を向上させることができる。
【0012】
また、フェライト系ステンレス鋼材の急速加熱を行う誘導加熱炉が、鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動するものであれば、加熱が不十分となりがちな鋼材端部も内側部分と同等に加熱されることとなるため、鋼材長が炉長と同程度となるような長尺物であっても均一加熱を達成することができる。さらに、この揺動機構が備えられていることにより誘導加熱炉自体の小型化を図ることができるので、スペースの少ない場所であっても誘導加熱炉の設置が可能となる。
【0013】
また、フェライト系ステンレス鋼材の加熱設備を、フェライト系ステンレス鋼材を加熱しつつ搬送するウォーキングビーム炉とこのウォーキングビーム炉により搬送加熱された鋼材を熱間圧延する圧延機との間に、ウォーキングビーム炉により搬送加熱された鋼材の急速加熱を可能とする誘導加熱炉を配設し、再加熱させたものとすることにより、変形のない高い熱間加工性を備えた鋼材が提供されるので、円滑な熱間圧延を実現することができると共に、ワレ、ヘゲのない表面性状に優れた熱間圧延製品を製造することができる。
【0014】
また、この加熱設備において、誘導加熱炉をフェライト系ステンレス鋼材を圧延方向全長に亘って均一に再加熱するためその鋼材の長手方向に揺動させる揺動機構を備えたものとすることにより、鋼材全体の均一加熱を達成することができる。このように、ウォーキングビーム炉では低めの温度で予備的な加熱を行い、その後誘導加熱炉で圧延加工に必要な温度にまで昇温することによって、鋼材の垂れ下がりを防ぐと共にワレ、ヘゲの発生を抑えることができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
初めに、本発明を構成するフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法ならびに加熱設備について説明する。本発明に係る加熱設備は、図1に示すように、図示しない連続鋳造機から得られた鋳片を分塊し、これにより得られた鋼片(以下、鋼片については「フェライト系ステンレス鋼材」若しくは単に「鋼材」と記述する。)を熱間圧延可能な温度近傍まで予加熱するためのウォーキングビーム炉(図中では、「WB」と表示する。)1と、ウォーキングビーム炉1の後工程として鋼材を急速に再加熱するための誘導加熱炉(図中では、「IH」と表示する。)2とからなる。これらの加熱炉1,2での加熱を施した鋼材は粗圧延機3へと搬送される。また、各設備装置間は鋼材を搬送するためのテーブルローラ4,5によって結ばれている。なお、実際の熱間圧延においては、粗圧延機3の下流側に図示しない中間圧延機、仕上圧延機、冷却装置等の種々の設備装置が配設されるがここでは省略する。以下に、ウォーキングビーム炉1、誘導加熱炉2、及び粗圧延機3の構成について説明する。
【0016】
ウォーキングビーム炉1は、一般に、炉内に上下前後に可動するウォーキングビームと固定ビームとが所定間隔で配置され、ウォーキングビームに上昇、前進、下降、後退の矩形ないし楕円形状の駆動サイクルを与えることにより、固定ビームに支承された鋼材を加熱しながら1ピッチずつ前進搬送するという動作機構を有するものである。なお、本発明で使用するウォーキングビーム炉は特に限定されるものではなく、上記動作機構を備えたものであれば如何なる形態を有するものであっても構わない。
【0017】
このウォーキングビーム炉1におけるフェライト系ステンレス鋼材の加熱温度は、1000〜1200℃の温度範囲にあることが好ましく、更には、1050〜1150℃の温度範囲にあることが好ましい。加熱温度が1000℃未満であると、誘導加熱炉での再加熱に時間が掛かりすぎるという問題があり、一方、加熱温度が1200℃を超えると、フェライト系ステンレス鋼材が軟化してビーム間及び端部において鋼材の垂れが生じるため好ましくない。
【0018】
誘導加熱炉2は、一般に、複数個の誘導加熱コイルが所定間隔をあけて配列されており、この誘導加熱コイル内に被加熱鋼材を挿入し、コイルに高周波電流(交流電流)を流すと交番磁束が発生し被加熱鋼材に誘導電流が流れることによって、被加熱鋼材中にジュール熱が発生し被加熱鋼材が加熱されるというものである。この誘導加熱炉によれば、被加熱鋼材の急速・高温加熱が可能であり、また、鋼材の表皮効果により周波数を変化させることによって被加熱鋼材の表層部と内部の加熱効果に差違を持たせることが可能である。
【0019】
具体的には、被加熱鋼材(本発明の場合、フェライト系ステンレス鋼材)の表層部のみを高温加熱する場合には高周波数の電流を用いるのが好ましい。鋼材表層部のみを高温加熱することができれば、表層部の熱間加工性を向上させることにより粗圧延時のワレ、ヘゲ発生を抑制することができる一方、内部は表層部ほど高温に達していないので軟化し鋼材が変形するといった不都合を回避することができる。なお、本発明で使用する誘導加熱炉は特に限定されるものではなく、上記機構を備えたものであれば如何なる形態を有するものであっても構わない。
【0020】
この誘導加熱炉2では、フェライト系ステンレス鋼材をその表層部の温度が前段階であるウォーキングビーム炉での加熱温度よりも高くなる温度であって1150〜1300℃の温度範囲となるように再加熱することが省エネの観点から好ましく、更には、1200〜1300℃の温度範囲となるように加熱することがワレ、ヘゲ防止の観点からより好ましい。鋼材表層部の温度が1150℃未満であると、十分な熱間加工性が得られず、粗圧延時に材料表面にワレ、ヘゲが発生するおそれがあるため好ましくない。一方、鋼材表層部の温度が1300℃を超えると、フェライト系ステンレス鋼材の軟化が起こり、その結果、粗圧延の際に座屈(反り)が生じて、圧延ロールが噛み込み不能となる、いわゆるミスロールの原因となるため好ましくない。なお、ウォーキングビーム炉及び誘導加熱炉での加熱温度は、圧延時のワレ、ヘゲの発生を防止する観点から高めに設定しておくのが良い。
【0021】
また、この誘導加熱炉2には、フェライト系ステンレス鋼材をその長手方向に揺動可能とする揺動機構を備えたものであることが好ましい。ここで長手方向に揺動とは、圧延工程の進行方向に対して前後に揺動するという意味である。この揺動機構を備えることにより、鋼材の長手方向の加熱状態が均一となる。
【0022】
粗圧延機3は、上述の誘導加熱炉内より搬出されたフェライト系ステンレス鋼材を粗圧延するものであり、2ロール型、3ロール型、4ロール型など、希望する圧延形状に応じて種々のタイプのものが適用可能であり、また、圧延ロール数も圧延スケジュール等に応じて適宜変更可能である。
【0023】
この粗圧延機2によってフェライト系ステンレス鋼材が圧延される際に、粗圧延第1パスの圧延時における鋼材表層部の温度は、誘導加熱炉での表層部の温度をほぼ維持する温度範囲にあることが好ましく、更には、その表層部の温度が誘導加熱炉での加熱時からの降温が100℃以内であれば良く、更には、50℃以内にあることがより好ましい。鋼材表層部の温度が誘導加熱炉での加熱時からの降温が100℃を超えると、ワレ、ヘゲ発生の要因となるため好ましくない。
【0024】
ここで粗圧延第1パスの圧延時における鋼材表層部の温度の測定は、鋼材が第1パス通過した後の状態で行うのが好ましい。フェライト系ステンレス鋼材は、圧延前の加熱工程において1000℃以上の高温域で加熱されるため、その表層部にスケール(酸化被膜)が僅かながら生じる。このスケールが形成された状態で鋼材表層部の温度を測定すると、実際の表層部の温度とは異なる温度が測定されてしまい、適切な温度管理ができなくなるおそれがあるため好ましくない。これに対して測定点が第1パス通過後であると、鋼材が第1パスの圧延ロールを通ることによって鋼材表層部のスケールが取り除かれるので、鋼材表層部の温度をより正確に測定することが可能となる。
【0025】
上記加熱設備及び粗圧延機によって熱間圧延されるフェライト系ステンレス鋼材は、0.12重量%以下のC、11.0〜27.5重量%のCr、及び必要に応じて強化元素であるMo等又は快削性元素であるS、Pb、Te等を含有するステンレス鋼からなるものであり、SUS405、SUS410L、SUS430,SUS430F、SUS434、SUSXM27等が代表的なものとして挙げられる。フェライト系ステンレス鋼材は、板状、線状、棒状等いかなる形状を有するものであっても良い。
【0026】
【実施例】
本発明の効果を、実施例により具体的に説明する。
【0027】
本実施例における加熱設備は、上流側より、ウォーキングビーム炉、誘導加熱炉、粗圧延機、中間圧延機、及び仕上圧延機を順に配設してなる。圧延に用いるフェライト系ステンレス鋼材としては、SUS430(C:0.06重量%、Cr:16.8重量%含有)鋼材を用いた。また、この鋼材の寸法は、150mm角、長さ11.5mとした。
【0028】
上記加熱設備を経て得られた熱間圧延製品の評価としては、圧延製品表面のワレ、ヘゲ有無の観察と鋼材端部の垂れ下がり発生率の評価を行った。
【0029】
(熱間圧延製品表面のワレ、ヘゲ有無の観察)
熱間圧延製品表面のワレ、ヘゲ有無の観察は目視により行い、ワレ、ヘゲが1つも観察されなかったものを「◎」、部分的にワレ、ヘゲが観察されるが許容される範囲内のものを「○」として合格と評価し、許容範囲外のものを「×」として不合格と評価した。
【0030】
(鋼材端部の垂れ下がり発生率の評価)
また、鋼材端部の垂れ下がり発生率の評価は、ウォーキングビーム炉若しくは誘導加熱炉での加熱により、垂れ下がりが大きく搬送不可能となるか否かにより判断した。搬送を良好に行えたものを「○」として合格と評価し、搬送不可能となったものを「×」として不合格と評価した。
【0031】
(実施例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1100℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。誘導加熱炉では、鋼材を長手方向に揺動しながら70秒間炉内に挿置し、その間に表層部の温度を1150℃まで上昇させることとした。次いで、誘導加熱炉より鋼材を搬出し、粗圧延機にて粗圧延を行った。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1100℃であった。粗圧延後、中間圧延機による中間圧延、仕上圧延機による仕上圧延を行いさらに冷却装置で冷却して熱間圧延製品を得た。
【0032】
(実施例2)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1150℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。誘導加熱炉では、鋼材を長手方向に揺動しながら70秒間炉内に挿置し、その間に表層部の温度を1250℃まで上昇させることとした。次いで、誘導加熱炉より鋼材を搬出し、粗圧延機にて粗圧延を行った。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1200℃であった。粗圧延後、中間圧延機による中間圧延、仕上圧延機による仕上圧延を行いさらに冷却装置で冷却して熱間圧延製品を得た。
【0033】
(実施例3)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1100℃となるように温度制御して1時間加熱した後、揺動機構を備えた誘導加熱炉に挿入して急速加熱を行った。誘導加熱炉では、鋼材を長手方向に揺動しながら120秒間炉内に挿置し、その間に表層部の温度を1200℃まで上昇させることとした。次いで、誘導加熱炉より鋼材を搬出し、粗圧延機にて粗圧延を行った。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1150℃であった。粗圧延後、中間圧延機による中間圧延、仕上圧延機による仕上圧延を行いさらに冷却装置で冷却して熱間圧延製品を得た。
【0034】
(比較例1)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1250℃となるように温度制御して1時間加熱した後、鋼材を搬出した。
【0035】
(比較例2)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1150℃となるように温度制御して1時間加熱した後、誘導加熱炉で表層部の温度が1350℃となるように昇温加熱し、130秒間保持し、鋼材を搬出した。
【0036】
(比較例3)
上記組成及び寸法を有するフェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉内において鋼材表層部の温度が1050℃となるように温度制御して1時間加熱した後、誘導加熱炉で表層部の温度が1100℃となるように昇温加熱すると共にその温度に70秒間保持し、さらに圧延工程を経て熱間圧延製品を得た。粗圧延機の第1パス通過後における鋼材表層部の温度は1050℃であった。
【0037】
図2には、上記実施例及び比較例におけるフェライト系ステンレス鋼材表層部の温度履歴を示した。
【0038】
表1に実施例品及び比較例品の評価結果を示す。なお、表1における加熱温度は、加熱により達成されるフェライト系ステンレス鋼材表層部の温度を指す。表より、ワレ、ヘゲ観察の結果、実施例1〜3の熱間圧延製品は共に良好な表面性状を有していた。
【0039】
これに対して、比較例1は、ウォーキングビーム炉での加熱温度が高いことにより鋼材に垂れが発生し、鋼材の搬送ができなくなったため以降の工程は全て中止した。また、比較例2は、再加熱となる誘導加熱炉での加熱温度が高いことにより鋼材が軟化しすぎて搬送不能となったため圧延を中止した。また、比較例3は、誘導加熱炉での加熱温度が低いために、鋼材表層部の熱間加工性が十分に上がらず、圧延時にワレ、ヘゲが多発した。
【0040】
【表1】
【0041】
以上の結果より、実施例1〜3の熱間圧延製品は、ワレ、ヘゲの発生が無く表面性状に優れており、また、加熱において鋼材の垂れは一切認められておらず円滑な熱間圧延を行うことができた。
【0042】
以上、実施例について説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。例えば、上記実施例におけるフェライト系ステンレス鋼材の材質及び寸法、ウォーキングビーム炉及び誘導加熱炉における加熱温度は一例であり、これに限られるものではない。また、上記実施例では、粗圧延の第1パスを行う際のフェライト系ステンレス鋼材表層部の温度を第1パス通過後に測定しているがこれに限られず、第1パス通過前あるいは第2パス以降を通過する時点で測定しても構わない。
【0043】
【発明の効果】
本発明に係るフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延前の加熱方法及び加熱設備によれば、フェライト系ステンレス鋼材がウォーキングビーム炉内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱されるので、加熱時の鋼材の垂れが抑えられ、また、その後の搬送工程及び圧延工程を円滑に行うことができ、加熱を含めた熱間圧延工程全体の作業能率を大幅に改善することができるという効果がある。また、ウォーキングビーム炉で加熱された鋼材はさらに誘導加熱炉でその表層部の温度が1150〜1300℃の温度範囲内になるように急速加熱されるので、鋼材の垂れを発生させることなく鋼材表層部の熱間加工性を向上させ表面性状の良好な熱間圧延製品を得ることができるという効果がある。
【0044】
また、フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延する際に、誘導加熱炉での加熱温度をほぼ維持するか、低くとも100℃以内の降温である1050〜1200℃の温度範囲で熱間圧延工程の粗圧延第1パスの圧延を行うことにより、表面性状に優れた熱間圧延製品を提供することができると共に、熱間圧延時の生産能率を向上させることができるという効果がある。
【0045】
また、フェライト系ステンレス鋼材の急速加熱を行う誘導加熱炉を、鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動させるものとすることにより、加熱が不十分となりがちな鋼材端部も中央部分と同等に加熱されることとなるため、鋼材長が炉長と同程度となるような長尺物であっても均一加熱を達成することができる。その結果、狭いスペースでも誘導加熱炉の設置が可能となり、また、熱間圧延工程全体の生産能率の向上ならびに熱間圧延製品の生産コストの低減を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の実施の形態に係る加熱設備を示したものである。
【図2】本願発明の実施の形態に係る(a)実施例、(b)比較例の加熱履歴を示したものである。
【符号の説明】
1 ウォーキングビーム炉
2 誘導加熱炉
3 粗圧延機
4,5 テーブルローラ
Claims (5)
- フェライト系ステンレス鋼材をウォーキングビーム炉にて搬送しつつ加熱し熱間圧延工程により圧延するフェライト系ステンレス鋼材の熱間圧延前の加熱方法において、
前記鋼材をウォーキングビーム炉内でその表層部の温度が1000〜1200℃の温度範囲となるように加熱する工程と、
前記ウォーキングビーム炉内で加熱された鋼材を熱間圧延工程に入る前に誘導加熱炉内でその表層部の温度が前記表層部温度よりも高く且つ1150〜1300℃の温度範囲となるように急速加熱する工程とを含むことを特徴とするフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法。 - 前記フェライト系ステンレス鋼材を熱間圧延する際に、前記誘導加熱炉で加熱された鋼材表層部の温度をほぼ維持するか又は100℃以内の降温の範囲で熱間圧延工程の粗圧延第1パスの圧延を行うことを特徴とする請求項1に記載のフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法。
- 前記誘導加熱炉が、前記フェライト系ステンレス鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためこの鋼材をその長手方向に揺動することを特徴とする請求項1又は2に記載のフェライト系ステンレス鋼材の加熱方法。
- フェライト系ステンレス鋼材を加熱しつつ搬送するウォーキングビーム炉とこのウォーキングビーム炉により搬送加熱された鋼材を熱間圧延する圧延機との間に、前記ウォーキングビーム炉により搬送加熱された鋼材の急速加熱を可能とする誘導加熱炉が配設されていることを特徴とするフェライト系ステンレス鋼材の加熱設備。
- 前記誘導加熱炉が、前記フェライト系ステンレス鋼材を圧延方向全長に亘って均一加熱するためその鋼材の長手方向に揺動させる揺動機構を備えていることを特徴とする請求項4に記載のフェライト系ステンレス鋼材の加熱設備。
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