JP2004156680A - 車両用自動変速機の油圧制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】第1熱負荷状態判定手段142により所定の変速を実現するために係合させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態を示す熱負荷値HL が第1過負荷状態に対応する第1判定値HL1を超えたと判定されると、潤滑油量増量手段144によってその所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量が増量させられるので、その油圧式摩擦係合装置の耐久性が高められる一方で、繰り返し同じ変速を行うことができるので、運転者の意図の通りに走行することが可能となって使い勝手が高められる。
【選択図】 図6
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は車両用自動変速機の油圧制御装置に係り、特に、自動変速機内の油圧式摩擦係合装置の熱負荷が過大とならないように潤滑油量を制御する技術に関する関するものである。
【0002】
【従来の技術】
たとえば油圧式多板クラッチ或いはブレーキのような複数の油圧式摩擦係合装置を備えた車両用自動変速機では、それら複数の油圧式摩擦係合装置の選択的係合状態の切換を行うことにより所望のギヤ段への変速が行われるようになっている。このような変速は、予め記憶された変速線図から実際の車速およびスロットル開度(アクセル開度)に基づいて変速判断され。判断された変速が実現されるように上記油圧式摩擦係合装置が選択的に係合作動させられる。このような変速制御は所謂自動変速モードにおいて実行される。たとえば、特許文献1に記載された車両用自動変速機がそれである。
【0003】
【特許文献1】
特開平3−223562号公報
【0004】
そして、上記自動変速機を備えた車両では、運転者の手動操作に応答して所望の変速を実行させるようにギヤ段或いは変速レンジを変更できる装置が設けられる場合がある。たとえば、自動変速モードに替えて手動変速モードが選択されることによりギヤ段を1段ずつ変速可能とするために操作されるシフト操作体の操作が有効化された場合や、D(ドライブ)レンジから2(セカンド)レンジ、L(ロー)レンジへ操作されることにより上限ギヤ段が制限され且つ各ギヤ段にエンジンブレーキが作用される変速レンジが選択された場合である。しかし、このような手動変速装置は通常スポーティ走行のために用いられるので、比較的急発進、急制動に伴って繰り返し同じ変速が行われる頻度が高くなり、そのように繰り返し同じ変速が行われると、その変速を達成するために係合作動させられる油圧式摩擦係合装置における熱負荷が大きくなり、その耐久性が損なわれる可能性がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このため、上記のよう同じ変速が繰り返し実行され得る場合には、その同じ変速を所定の頻度で繰り返し連続的に実行することを防止するようにした自動変速機の制御装置が提案されている。しかしながら、このように所定の頻度で繰り返し連続的に変速を実行することが禁止されると、運転者の意図の通りに走行することが困難となり、使い勝手が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、使い勝手を低下させることなく油圧式摩擦係合装置の耐久性を高めることができる車両用自動変速機の油圧制御装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、複数の油圧式摩擦係合装置とを備え、該複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合させられることにより複数段の前進ギヤ段が択一的に達成される形式の車両用自動変速機の油圧制御装置であって、(a) 所定のギヤ段への変速を成立させるために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第1過負荷状態となったか否かを判定する第1熱負荷状態判定手段と、(b) その第1熱負荷状態判定手段により前記所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第1過負荷状態を超えたと判定されると、該所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量を増量させる潤滑油量増量手段とを、含むことにある。
【0008】
【発明の効果】
このようにすれば、第1熱負荷状態判定手段により前記所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第1過負荷状態を超えたと判定されると、潤滑油量増量手段によってその所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量が増量させられるので、その油圧式摩擦係合装置の耐久性が高められる一方で、繰り返し同じ変速を行うことができるので、運転者の意図の通りに走行することが可能となって使い勝手が高められる。
【0009】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいて該油圧式摩擦係合装置の熱負荷値を算出する熱負荷値算出手段を含み、前記第1熱負荷状態判定手段は該熱負荷値が第1判定値を超えたことに基づいて前記所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったことを判定するものである。このようにすれば、所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったことが、熱負荷値算出手段により所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいて容易に判定される。
【0010】
また、好適には、前記熱負荷値算出手段は、車両のエンジンの出力または回転速度が所定値を超えているときに、所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいてその油圧式摩擦係合装置の熱負荷値を算出するものである。このようにすれば、エンジンの出力または回転速度が所定値を超えているときの変速回数に基づいて前記所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷値が算出されるので、算出精度が高められる。
【0011】
また、好適には、油圧源から圧送される作動油圧を所定のライン圧に調圧するための調圧弁を含み、前記潤滑油量は、そのライン圧を導くライン油路から流出させられる作動油量を含むものであり、前記潤滑油量増量手段は、前記ライン圧が所定値高く或いは低く調圧されるように該調圧弁を一時的に制御するものである。このようにすれば、調圧弁によりライン圧が高く或いは低くされると、そのライン圧を導くライン油路から流出させられる潤滑油量が増加させられることにより前記所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量が増量される。
【0012】
また、好適には、前記潤滑油量は、油圧源から圧送される作動油を調圧するためのリリーフ型調圧弁からオリフィスを通して流出させられる作動油量を含むものであり、前記潤滑油量増量手段は、そのオリフィスに並列に設けられたバイパス油路に設けられた開閉弁を操作することにより前記潤滑油量を増量させるものである。このようにすれば、オリフィスに並列に設けられたバイパス油路が開かれることにより前記所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量が増量される。
【0013】
また、好適には、前記所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段は、アップ変速またはダウン変速により達成されるものである。このようにすれば、油圧式摩擦係合装置の耐久性が高められる一方で、繰り返し同じアップ変速またはダウン変速を行うことができるので、運転者の意図の通りに走行することが可能となって使い勝手が高められる。
【0014】
また、好適には、前記所定のギヤ段への変速を成立させるために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態となったか否かを判定する第2熱負荷状態判定手段と、その第2熱負荷状態判定手段によりその所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態を超えたと判定されると、その所定のギヤ段への変速を禁止する変速禁止手段とを、さらに含むものである。このようにすれば、所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態となったと判定されると、その所定のギヤ段への変速が禁止されるので、何らかの事情で熱負荷過大となったときにその所定の油圧式摩擦係合装置が保護される。
【0015】
また、好適には、運転者のシフト操作体の操作に応答して自動変速機の変速が実行される手動変速状態が選択されているか否かを判定する手動変速状態判定手段を含み、前記変速禁止手段は、その手動変速状態判定手段により手動変速状態が選択されていると判定されている場合に前記所定のギヤ段への変速を禁止するものである。このようにすれば、手動変速状態が選択されているときにのみ所定のギヤ段への変速が禁止される利点がある。
【0016】
また、好適には、前記自動変速機の実際のギヤ段が上限ギヤ段と一致するか否かを判定する上限ギヤ段判定手段を含み、前記変速禁止手段は、その上限ギヤ段判定手段により前記自動変速機の実際のギヤ段がその上限ギヤ段と一致すると判定されている場合にアップ変速を禁止するものである。このようにすれば、自動変速機の実際のギヤ段がその上限ギヤ段と一致するためにアップ変速の余地がない場合には、アップ変速が禁止される利点がある。
【0017】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明の油圧制御装置が適用された車両用自動変速機16を含む動力伝達装置10を示している。図1において、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンなどの内燃機関にて構成されている走行用駆動力源としてのエンジン12の出力は、流体式動力伝達装置として機能するトルクコンバータ14を経て自動変速機16の入力軸18に入力され、その自動変速機16の出力歯車20から軸図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。上記トルクコンバータ14は、エンジン12に連結されたポンプ翼車22と、自動変速機16の入力軸18に連結されたタービン翼車24と、一方向クラッチによって一方向の回転が阻止されているステータ翼車26とを備えたよく知られたものであり、ポンプ翼車22とタービン翼車24との間で流体を介して動力伝達を行うとともに、ポンプ翼車22およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ28を備えている。上記ポンプ翼車22の一部には油圧ポンプ30が設けられ、エンジン12によって直接的に回転駆動されるようになっている。
【0019】
図1において、車両用自動変速機16は、FF車両などのための横置き用のものであり、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置32を主体として構成されている第1変速部34と、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置36およびダブルピニオン型の第3遊星歯車装置38を主体として構成されている第2変速部40とを同軸線上に有し、入力軸18の回転を変速して出力歯車20から出力する。入力軸18は入力回転部材に相当するものであり、トルクコンバータ14の出力軸であるタービン軸としても機能している。出力歯車24は出力回転部材に相当するものである。なお、この車両用自動変速機16などは中心線に対して略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分が省略されている。
【0020】
上記第1変速部34を構成している第1遊星歯車装置32は、サンギヤS1、キャリアCA1、およびリングギヤR1の3つの回転要素を備えており、サンギヤS1が入力軸18に連結されて共に回転駆動されるとともに、キャリアCA1が第3ブレーキB3を介して回転不能な部材(非回転部材)である変速機ハウジング(ケース)46に固定(連結)されることにより、リングギヤR1が中間出力部材として入力軸18に対して減速回転させられ、その回転が第2変速部40の第3サンギヤS3へ出力されるようになっている。
【0021】
上記第2変速部40を構成している第2遊星歯車装置36および第3遊星歯車装置38は、一部が互いに連結されることによって4つの回転要素RM1〜RM4が構成されている。具体的には、第3遊星歯車装置38のサンギヤS3によって第1回転要素RM1が構成され、第2遊星歯車装置36のリングギヤR2および第3遊星歯車装置38のリングギヤR3が互いに連結されて第2回転要素RM2が構成され、第2遊星歯車装置36のキャリアCA2および第3遊星歯車装置38のキャリアCA3が互いに連結されて第3回転要素RM3が構成され、第2遊星歯車装置36のサンギヤS2によって第4回転要素RM4が構成されている。上記第2遊星歯車装置36および第3遊星歯車装置38では、キャリアCA2およびCA3が共通の部材にて構成されているとともにリングギヤR2およびR3が一体的な部材にて構成されており、且つ第2遊星歯車装置36のピニオンギヤが第3遊星歯車装置38の一対のピニオンギヤのうちの第2ピニオンギヤを兼ねているので、ラビニヨ型の遊星歯車列とされている。
【0022】
上記第1回転要素RM1(サンギヤS3)は第1ブレーキB1によって選択的に変速機ハウジング46に連結されて回転停止させられ、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2ブレーキB2によって選択的に変速機ハウジング46に連結されて回転停止させられ、第4回転要素RM4(サンギヤS2)は第1クラッチC1を介して選択的に前記入力軸18に連結され、第2回転要素RM2(リングギヤR2、R3)は第2クラッチC2を介して選択的に入力軸18に連結され、第1回転要素RM1(サンギヤS3)は中間出力部材である前記第1遊星歯車装置32のリングギヤR1に一体的に連結され、第3回転要素RM3(キャリアCA2、CA3)は前記出力歯車20に一体的に連結されて回転を出力するようになっている。第1ブレーキB1〜第3ブレーキB3、第1クラッチC1、第2クラッチC2は、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置である。なお、第2回転要素RM2と変速機ハウジング46との間には、第2回転要素RM2の正回転(入力軸18と同じ回転方向)を許容しつつ逆回転を阻止する一方向クラッチFが第2ブレーキB2と並列に設けられている。
【0023】
そして、第1クラッチC1および第2ブレーキB2が係合させられて、第4回転要素RM4が入力軸18と一体回転させられるとともに第2回転要素RM2が回転停止させられると、出力歯車20に連結された第3回転要素RM3は最も大きい変速比γ1 (=入力軸回転速度/出力軸回転速度)に対応する回転速度で回転させられ、第1速ギヤ段「1st」が成立させられる。第1クラッチC1および第1ブレーキB1が係合させられて、第4回転要素RM4が入力軸18と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は変速比γ1 よりも小さい変速比γ2 に対応する回転速度で回転させられ、第2速ギヤ段「2nd」が成立させられる。第1クラッチC1および第3ブレーキB3が係合させられて、第4回転要素RM4が入力軸18と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が第1変速部34を介して減速回転させられると、第3回転要素RM3は変速比γ2 よりも小さい変速比γ3 に対応する回転速度で回転させられ、第3速ギヤ段「3rd」が成立させられる。第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられて、第2変速部40が入力軸18と一体回転させられると、第3回転要素RM3は変速比γ3 よりも小さい変速比γ4 に相当する回転速度ですなわち入力軸18と同じ回転速度で回転させられ、第4ギヤ段「4th」が成立させられる。この第4速ギヤ段「4th」の変速比γ4 は1である。第2クラッチC2および第3ブレーキB3が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸18と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が第1変速部34を介して減速回転させられると、第3回転要素RM3は変速比γ4 よりも小さい変速比γ5 に対応する回転速度で回転させられ、第5速ギヤ段「5th」が成立させられる。第2クラッチC2および第1ブレーキB1が係合させられて、第2回転要素RM2が入力軸18と一体回転させられるとともに第1回転要素RM1が回転停止させられると、第3回転要素RM3は変速比γ5 よりも小さい変速比γ6 に対応する回転速度で回転させられ、第6速ギヤ段「6th」が成立させられる。また、第2ブレーキB2および第3ブレーキB3が係合させられると、第2回転要素RM2が回転停止させられるとともに第1回転要素RM1が第1変速部34を介して減速回転させられることにより、第3回転要素RM3は変速比γR に対応する回転速度で回転させられ、後進ギヤ段「Rev」が成立させられる。
【0024】
図2は、上記自動変速機16において、複数の油圧式摩擦係合装置すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3の係合作動の組み合わせと、それにより達成される第1速ギヤ段乃至第6速ギヤ段および後進ギヤ段との関係を示す係合表であり、「○」は係合、「◎」はエンジンブレーキ時のみ係合を表している。第1変速段「1st」を成立させるブレーキB2には並列に一方向クラッチFが設けられているため、発進時(加速時)には必ずしもブレーキB2を係合させる必要は無いのである。また、各変速段の変速比は、第1遊星歯車装置32、第2遊星歯車装置36、および第3遊星歯車装置38の各ギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1 、ρ2 、ρ3 によって適宜定められ、例えばρ1 ≒0.45、ρ2 ≒0.38、ρ3 ≒0.41とすれば、図1に説明する変速比が得られ、ギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値が略適切であるとともにトータルの変速比幅(=3.62/0.59)も6.1程度と大きく、後進変速段「Rev」の変速比も適当で、全体として適切な変速比特性が得られる。図2から明らかなように、1−2変速、2−3変速、3−4変速、4−5変速、5−6変速は、いずれも変速過程において解放側油圧式摩擦係合装置の解放と係合側油圧式摩擦係合装置の係合とを同時期に進行させることにより変速が実行される所謂クラッチツウクラッチ変速である。
【0025】
図3は、図1のエンジン12や自動変速機16などを制御するために車両に搭載された電子制御装置90などから成る制御係合を示している。アクセルペダル50の操作量Accはアクセル操作量センサ51により検出されるようになっている。アクセルペダル50は、運転者の出力要求量に応じて大きく踏み込み操作されるものであるのでアクセル操作部材に相当し、アクセルペダル操作量Accは出力要求量に相当する。エンジン12の吸気配管には、スロットルアクチュエータ54によって基本的にはアクセルペダル操作量Accに応じた開き角(開度)θTHとされる電子スロットル弁56が設けられている。また、アイドル回転速度制御のために上記電子スロットル弁56に並列に設けられてそれをバイパスさせるバイパス通路52には、エンジン12のアイドル回転速度NEIDLを制御するために電子スロットル弁56の全閉時の吸気量を制御するISC弁(アイドル回転速度制御弁)53が設けられている。この他、エンジン12の回転速度NE を検出するためのエンジン回転速度センサ58、エンジン12の吸入空気量Qを検出するための吸入空気量センサ60、吸入空気の温度TA を検出するための吸入空気温度センサ62、上記電子スロットル弁56の全閉状態(アイドル状態)およびその開度θTHを検出するためのアイドルスイッチ付スロットルセンサ64、車速V(出力歯車20の回転速度Nout に対応)を検出するための車速センサ66、エンジン12の冷却水温TW を検出するための冷却水温センサ68、常用ブレーキであるフットブレーキの操作の有無を検出するためのブレーキスイッチ70、シフトレバー72のレバーポジション(操作位置)PSHを検出するためのレバーポジションセンサ74、タービン回転速度NT(=入力軸18の回転速度Nin)を検出するためのタービン回転速度センサ76、油圧制御回路98内の作動油の温度であるAT油温TOIL を検出するためのAT油温センサ78、アップシフトスイッチ80、ダウンシフトスイッチ82などが設けられており、それらのセンサやスイッチから、エンジン回転速度NE、吸入空気量Q、吸入空気温度TA 、スロットル弁開度θTH、車速V、エンジン冷却水温TW 、ブレーキ操作の有無、シフトレバー72のレバーポジションPSH、タービン回転速度NT、AT油温TOIL 、変速レンジのアップ指令RUP、ダウン指令RDN、などを表す信号が電子制御装置90に供給されるようになっている。また、フットブレーキの操作時に車輪がロック(スリップ)しないようにブレーキ力を制御するABS(アンチロックブレーキシステム)84に接続され、ブレーキ力に対応するブレーキ油圧等に関する情報が供給されるとともに、エアコン86から作動の有無を表す信号が供給されるようになっている。
【0026】
上記シフトレバー72は運転席の近傍に配設され、たとえば図4に示すように、駐車のためのP(パーキング)ポジション、後進走行のためのR(リバース)ポジション、動力伝達経路を開放するためのN(ニュートラル)ポジション、第1速ギヤ段から第6速ギヤ段までの範囲で自動的に変速制御される前進走行のためのD(ドライブ)ポジション、手動変速用のS(セカンド)ポジションへ択一的に手動操作されるようになっている。DポジションおよびSポジションでは、前進走行させるためにライン圧を各油圧式摩擦係合装置の係合圧の元圧として供給する。そのSポジションでは、アップ変速させる操作により上記アップシフトスイッチ80を作動させるための+ポジション又は、ダウン変速させる操作により上記ダウンシフトスイッチ82を作動させるための−ポジションへ択一的に操作されるようになっている。Rポジションではリバース用回路が機械的に成立させられるなどして図2に示す後進変速段「Rev」が成立させられ、「N」ポジションではニュートラル回路が機械的に成立させられて総てのクラッチCおよびブレーキBが解放される。
【0027】
上記変速用の油圧制御回路98は、上記各油圧式摩擦係合装置すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3の係合圧を制御するためにそれぞれに設けられた変速用のリニヤソレノイド弁SL1〜SL5と、ロックアップクラッチ28を制御するロックアップコントロール弁と、第1速ギヤ段以外のギヤ段において第2ブレーキB2用のリニヤソレノイド弁SL4をロックアップコントロール弁の制御に用いる側に切り換えるソレノイドリレー弁と、ソレノイドリレー弁を切り換えるための電磁弁と、エンジン出力トルクTE すなわちスロットル開度θTHに対応する大きさのライン油圧PL1を調圧するリリーフ型の第1調圧弁と、その第1調圧弁から流出させられる作動油をロックアップクラッチ28を制御するためにトルクコンバータ14へ供給される第2ライン油圧PL2を調圧するリリーフ形式の第2調圧弁と、第1ライン油圧PL1および第2ライン油圧PL2をエンジン出力トルクTE すな わちスロットル開度θTHに対応する大きさとするためにそのエンジン出力トルクTE 或いはそのスロットル開度θTHに対応する制御圧を第1調圧弁および第2調圧弁へ出力するリニアソレノイド弁SLTと、シフトレバー72に操作位置に応じて第1ライン油圧PL1を前進レンジ圧或いは後進レンジ圧としてを出力するマニアル弁とを備えている。
【0028】
図5は、上記油圧制御回路98の要部を示している。油圧ポンプ30から圧送された作動油は、第1調圧弁100によって調圧されることによって第1ライン油圧PL1とされ、その第1調圧弁100から流出させられた作動油は第2調圧弁102によって調圧されることにより第2ライン油圧PL2とされるようになっている。上記第1調圧弁100は、第1ライン油圧PL1を導く第1ライン油路L1に接続された流入ポート104および第2ライン油圧PL2を導く第2ライン油路L2に接続された流出ポート106と、それら流入ポート104および流出ポート106の間を開閉するスプール弁子108と、そのスプール弁子108を閉弁方向に向かう推力を発生させるために第1ライン油路L1に接続されたフィードバック油室110と、上記スプール弁子108を開弁方向に向かって付勢するスプリング112を収容し且つそのスプール弁子108を開弁方向に向かう推力を発生させるためにリニアソレノイド弁SLTからの制御圧PSLT を受け入れる制御油室114とを備え、以下の制御式(1) が成立するように作動させられる。この制御式(1) において、FS1はスプリング112の付勢力、S11はスプール弁子108のフィードバック油室110における有効受圧面積、S12はスプール弁子108の制御油室114における有効受圧面積である。
【0029】
PL1=(FS1/S11)+(S12/S11)・PSLT ・・・(1)
【0030】
上記第2調圧弁102は、第2ライン油圧PL2を導く第2ライン油路L2に接続された流入ポート116および流出した作動油を潤滑油として導く潤滑油路LLUB に接続された流出ポート118と、それら流入ポート116および流出ポート118の間を開閉するスプール弁子120と、そのスプール弁子120を閉弁方向に向かう推力を発生させるために第2ライン油路L2に接続されたフィードバック油室122と、上記スプール弁子120を開弁方向に向かって付勢するスプリング124を収容し且つそのスプール弁子120を開弁方向に向かう推力を発生させるためにリニアソレノイド弁SLTからの制御圧PSLT を受け入れる制御油室126とを備え、以下の制御式(2) が成立するように作動させられる。この制御式(2) において、FS2はスプリング124の付勢力、S21はスプール弁子120のフィードバック油室122における有効受圧面積、S22はスプール弁子120の制御油室126における有効受圧面積である。
【0031】
PL2=(FS2/S21)+(S22/S21)・PSLT ・・・(2)
【0032】
前記第1ライン油路L1は、それにより導かれる作動油の一部も潤滑油として用いるために、オリフィス125、127を介して上記潤滑油路LLUB に接続されている。また、この潤滑油路LLUB は、オリフィス128を介して自動変速機16内に形成された潤滑通路130へ供給されるようになっている。この潤滑通路130は、たとえば自動変速機16の中心部たとえば入力軸18内に形成された油路と、その入力軸18に径方向に設けられた多数の潤滑穴と、その潤滑穴から出た潤滑油を歯車や摩擦板などの所定の部位へ導く案内部材などから構成され、その潤滑穴から油圧および遠心力に従って外周側へ向かって放出された作動油(潤滑油)が複数の油圧式摩擦係合装置すなわち第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、第3ブレーキB3の摩擦板がそれぞれ潤滑されるようになっている。
【0033】
前記電子制御装置90は、CPU、RAM、ROM、入出力インターフェース等を備えた所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、CPUはRAMの一時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン12の出力制御や自動変速機16の変速制御、ロックアップクラッチ28のスリップ制御などを実行するようになっており、必要に応じてエンジン制御用と変速制御用とに分けて構成される。図6は、電子制御装置90の信号処理によって実行される制御機能の要部を説明するブロック線図である。
【0034】
図6において、潤滑油量制御手段134は、所定の変速たとえばアップ変速を達成するために係合させられる所定の油圧式摩擦係合装置、たとえば1→2アップ変速ではブレーキB1、2→3アップ変速ではブレーキB3、3→4アップ変速ではクラッチC2、4→5アップ変速ではブレーキB3、5→6アップ変速ではブレーキB1の熱負荷状態が予め設定された第1過負荷状態を超えたと判定されると、前記リニアソレノイド弁SLTからの制御圧PSLT を所定値増加させることにより第1ライン油圧PL1を所定値高くし、第1ライン油路L1から潤滑油路LLUB へ流出させられる作動油量を増量させることにより、上記所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量を増量させる。
【0035】
上記潤滑油量制御手段134は、エンジン出力判定手段136、変速作動判定手段138、熱負荷値算出手段140、第1熱負荷状態判定手段142、潤滑油量増量手段144を備えている。エンジン出力状態判定手段136は、エンジン12の出力トルクTE が所定値以上の高出力走行状態であるか否かを、たとえば予め記憶された関係から車速Vおよびスロットル開度θTHに基づいて算出される推定エンジントルクが予め設定された判定値を超えたことに基づいて判定するとともに、それに替えてまたはそれに加えて、エンジン12の回転速度NE が所定値以上の高出力走行状態であるか否かを実際のエンジン回転速度NE に基づいて判定する。上記変速作動判定手段138は、変速制御手段146において変速出力たとえばアップ変速出力が出されているか否かを判定する。上記熱負荷値算出手段140は、変速作動判定手段138により変速出力が判定された時点で、上記エンジン出力判定手段136によりエンジン出力トルクTE が所定値以上のパワーオン(アップ)変速であると判定されると、熱負荷値HL を予め設定された増加値たとえば「1」だけ増加させるが、前回熱負荷値HL が変更(増加または減少)されてからの経過時間tELがたとえば0.4秒程度の所定値を超えると予め設定された増加値たとえば「1」だけ減少させる。上記第1熱負荷状態判定手段142は、熱負荷値算出手段140により算出された熱負荷値HL が予め設定された第1判定値HL1を超えたことに基づいて前記所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったことを判定する。潤滑油量増量手段144は、その第1熱負荷状態判定手段142によって熱負荷値HL が第1判定値HL1を超えて所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったと判定されると、リニアソレノイド弁SLTからの制御圧PSLT を一時的に所定値増加させることにより第1ライン油圧PL1を所定値高くし、その第1ライン油圧PL1を導く第1ライン油路L1から潤滑油路LLUB へ流出させられる作動油量を一時的に増量させ、その所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量を増量させ、その耐久性を高める。
【0036】
変速制御手段146は、シフトレバー72のレバーポジションPSHおよびたとえば図7に示す変速線図に基づいて変速段を決定し、その変速段を得るために自動変速機16の変速制御を行う。たとえば変速制御手段146は、たとえば図7に示す予め記憶された変速線図から実際の車速Vおよびスロットル開度θTHに基づいて変速判断を実行し、その判断された変速が実行されるように変速出力を行う。そして、この変速出力に従って、変速を実現するためのリニヤソレノイド弁SL1、SL2、SL3、SL4、SL5、SLT、電磁弁S1のいずれかを選択的に駆動する。また、この変速制御手段146は、所定の変速を達成するために係合させられる油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が所定の(第2)過負荷状態を超えたと判定されると、その所定の変速を禁止し、所定の変速を達成するために係合させられる油圧式摩擦係合装置の係合を回避させる。
【0037】
上記変速制御手段146は、手動変速状態判定手段148、上限ギヤ段判定手段150、第2熱負荷状態判定手段152、変速禁止手段154を備えている。手動変速状態判定手段148は、運転者の操作に応答して自動変速機16のギヤ段が変更可能な手動変速状態或いは手動変速モードであるか否かをたとえば前記シフトレバー72がSポジションへ操作されているか否かに基づいて判定する。上限ギヤ段判定手段150は、自動変速機16の実際のギヤ段がその上限ギヤ段すなわち第6速ギヤ段であるか否かを判定する。第2熱負荷状態判定手段152は、前記熱負荷算出手段140により算出された、変速達成のために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL が予め設定された第2判定値HL2を超えて第2過負荷状態となったか否かを判定する。この第2判定値は、所定の油圧式摩擦係合装置がこれ以上の過熱によって耐久性が損なわれるおそれのある状態を判定ために求められた値であり、前記第1判定値HL1よりも大きい値に設定されている。変速禁止手段154は、上記変速作動判定手段138により変速出力たとえばアップ変速出力が判定され、上記手動変速状態判定手段148により手動変速状態であると判定され、上記上限ギヤ段判定手段150により自動変速機16の実際のギヤ段がその上限ギヤ段すなわち第6速ギヤ段でないと判定され、上記第2熱負荷状態判定手段152により所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL が予め設定された第2判定値HL2を超えたと判定された場合には、変速作動判定手段138により判定された変速たとえばアップ変速を禁止することによりその所定の油圧式摩擦係合装置を保護する。
【0038】
図8および図9は、電子制御装置90の制御作動の要部すなわち自動変速機16において変速のために設けられた各油圧式摩擦係合装置をその熱負荷に応じて潤滑油量を制御するとともに、その油圧式摩擦係合装置の熱負荷が過大である場合にはその係合作動を禁止して保護する制御を説明するフローチャートであり、たとえば数十ミリ秒程度の周期でそれぞれ繰り返し実行される。図8は潤滑油量制御ルーチンを、図9は変速禁止制御ルーチンをそれぞれ示している。
【0039】
図8において、前記変速作動判定手段138に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、アップ変速出力が出されたか否かが判断される。このSA1の判断が肯定される場合は、前記エンジン出力状態判定手段136に対応するSA2において、エンジン12の出力トルクTE が予め設定された値よりも大きいか、或いはエンジン回転速度NE が予め設定された値よりも大きい高出力走行時のパワーオンアップ変速であるか否かが判断される。このSA2の判断が肯定される場合は、エンジン出力トルクTE が所定値以上のパワーオンアップ変速であるので、前記熱負荷値算出手段140に対応するSA3において、熱負荷値HL が予め設定された増加値たとえば「1」だけ増加させられる。
【0040】
一方、上記SA1或いはSA2の判断が否定される場合は、SA4において、前回の熱負荷値HL の変更すなわち増加或いは減少からの経過時間tELがたとえば0.4秒程度の予め設定された所定時間T1 以上経過したか否かが判断される。そのSA4の判断が否定される場合はSA6以下が直接実行されるが、肯定される場合は、SA5において熱負荷値HL が予め設定された増加値たとえば「1」だけ減少させられてからSA6以下が実行される。上記SA4およびSA5も前記熱負荷値算出手段140に対応している。
【0041】
前記第1熱負荷状態判定手段142に対応するSA6では、上記SA3或いはSA4において算出された熱負荷値HL が予め設定された第1判定値HL1を超えたか否かが判断される。このSA6の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定されると、上記アップ変速のために係合させられる所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態すなわちさらなる冷却(潤滑)が必要となった状態であるので、前記潤滑油量増量手段144に対応するSA7において、前記リニヤソレノイド弁SLTから出力される制御圧PSLT が一時的に所定値増加させられることにより第1ライン油圧PL1が所定値高くされ、そのライン油圧PL1を導く第1ライン油路L1から潤滑油路LLUB へ流出させられる作動油量が一時的に増量させられて、その耐久性が高められる。
【0042】
図9において、前記変速作動判定手段138に対応するSB1では、アップ変速出力が出されたか否かが判断される。このSB1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記手動変速状態判定手段148に対応するSB2において、手動変速状態であるか否かがシフトレバー72がSポジションへ操作されているか否かに基づいて判断される。このSB2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は前記上限ギヤ段判定手段150に対応するSB3において、自動変速機16の実際のギヤ段がその上限ギヤ段すなわち第6速ギヤ段であるか否かが判断される。このSB3の判断が否定されると、前記第2熱負荷状態判定手段152に対応するSB4において、前記SA3乃至SA5において算出されたアップ変速を達成するために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL が第1判定値HL1よりも大きい値に設定された第2判定値HL2を超えて第2過負荷状態となったか否かが判定される。
【0043】
上記SB4の判断が否定される場合は、SB5において、SB1にて判定されたアップ変速が実行され、そのアップ変速を達成するための所定の油圧式摩擦係合装置が係合作動させられる。しかし、上記SB3またはSB4の判断が肯定される場合は、前記変速禁止手段154に対応するSB6において、SB1にて判定されたアップ変速がキャンセルされる。すなわち、SB1にてアップ変速出力が判定され、SB2にて手動変速状態であると判定され、SB3にて自動変速機16の実際のギヤ段がその上限ギヤ段すなわち第6速ギヤ段でないと判定され、SB4にて上記所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL が予め設定された第2判定値HL2を超えたと判定された場合には、そのアップ変速が禁止されることによりその所定の油圧式摩擦係合装置が保護される。
【0044】
上述のように、本実施例によれば、第1熱負荷状態判定手段142(SA6)により所定の変速を実現するために係合させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態を示す熱負荷値HL が第1過負荷状態に対応する第1判定値HL1を超えたと判定されると、潤滑油量増量手段144(SA7)によってその所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量が増量させられるので、その油圧式摩擦係合装置の耐久性が高められる一方で、繰り返し同じ変速を行うことができるので、たとえば加速指向の運転者の意図の通りにスポーティな走行を持続することが可能となって使い勝手が高められる。
【0045】
また、本実施例によれば、所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいてその油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL を算出する熱負荷値算出手段140(SA3乃至SA5)を含み、第1熱負荷状態判定手段142(SA6)はその熱負荷値HL が第1判定値HL1を超えたことに基づいてその所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったことを判定するものであるので、その所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったことが、所定のギヤ段への変速回数に基づいて容易に判定される。
【0046】
また、本実施例によれば、熱負荷値算出手段140(SA3乃至SA5)は、車両のエンジン12の出力または回転速度NE が所定値を超えているときに、前記所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいてその油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL を算出するものであるので、算出精度が高められる。すなわち、惰行走行などのパワーオフ変速時における係合ではエンジン12の出力または回転速度NE が低く、上記所定の油圧式摩擦係合装置に対する熱負荷がそれほど大きくはないので、そのような変速の場合は回数から除外される。
【0047】
また、本実施例によれば、前記所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量は、油圧源から圧送される作動油を調圧するためのリリーフ型の第2調圧弁102から流出させられる作動油量であり、潤滑油量増量手段144(SA7)は、その第2調圧弁102からの作動油流出量を増加させる信号をリニヤソレノイド弁SLTへ供給してそのリニヤソレノイド弁SLTからの制御圧PSLT がそのリリーフ型調圧弁102へ供給されるようにするものであるので、第2ライン油圧PL2の大きさを入力トルクすなわちエンジン出力トルクに応じて変化させるために作動させられるリニヤソレノイド弁SLTが、上記潤滑油量の増量制御に共用される利点がある。
【0048】
また、本実施例によれば、前記所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段は、発熱量が大きいアップ変速により達成されるものであるので、その油圧式摩擦係合装置の耐久性が高められる一方で、繰り返し同じアップ変速を行うことができるので、運転者の意図の通りに走行することが可能となって使い勝手が高められる。
【0049】
また、本実施例によれば、前記所定のギヤ段への変速を成立させるために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態となったか否かを判定する第2熱負荷状態判定手段152(SB4)と、その第2熱負荷状態判定手段152によりその所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態を超えたと判定されると、その所定のギヤ段への変速を禁止する変速禁止手段154(SB6)とが、さらに設けられていることから、所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態となったと判定されるとその所定のギヤ段への変速が禁止されるので、何らかの事情で熱負荷過大となったときにその所定の油圧式摩擦係合装置が保護される。
【0050】
また、本実施例によれば、運転者のシフト操作に応答して自動変速機16の所望の変速が実行される手動変速状態が選択されているか否かを判定する手動変速状態判定手段148(SB2)が設けられ、変速禁止手段154(SB6)は、その手動変速状態判定手段148により手動変速状態が選択されていると判定されている場合に前記所定のギヤ段への変速を禁止するものであるので、手動変速状態が選択されているときにのみ所定のギヤ段への変速が禁止される利点がある。
【0051】
また、本実施例によれば、自動変速機16の実際のギヤ段が上限ギヤ段と一致するか否かを判定する上限ギヤ段判定手段150(SB3)が設けられ、変速禁止手段154(SB6)は、その上限ギヤ段判定手段150により自動変速機16の実際のギヤ段がその上限ギヤ段と一致していると判定されている場合にアップ変速を禁止するものであるので、自動変速機16の実際のギヤ段がその上限ギヤ段と一致するためにアップ変速の余地がない場合には、アップ変速が禁止される利点がある。
【0052】
つぎに、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0053】
図10は、本発明の他の実施例における油圧制御回路98の要部を説明する図である。本実施例では、第2調圧弁102からオリフィス128を通して流出させられる潤滑油を導くための潤滑油路LLUB には、そのオリフィス128と並列に設けられたバイパス油路156と、そのバイパス油路156に設けられてそのバイパス油路156を開閉する電磁開閉弁158とが設けられている。
【0054】
本実施例によれば、潤滑油量増量手段144により、上記オリフィス128に並列に設けられたバイパス油路156に設けられた電磁開閉弁158が開かれる操作が行われると、そのバイパス油路156内を通過する分だけ潤滑油路LLUB を通して潤滑通路130へ導かれる潤滑油量が増量させられることから、前述の実施例と同様の効果が得られる。また、本実施例によれば、第1ライン油圧PL1および第2ライン油圧PL2に影響を与えることなく、潤滑油量が増量させられる利点がある。
【0055】
なお、本実施例において、潤滑油量増量手段144は、上記のように電磁開閉弁158を開く操作をすることにより潤滑油量を増加させることに加えると同時に、前記第1実施例のように、リニヤソレノイド弁SLTから出力される制御圧PSLT を所定値上昇させることにより第1ライン油路L1から潤滑油路LLUB へ流出させられる作動油量を増量させるようにしてもよい。このようにすれば、十分に潤滑油量が増量させられる。
【0056】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0057】
たとえば、前述の実施例では、アップ変速を達成するための所定の油圧式摩擦係合装置の係合回数すなわち変速回数に基づいて熱負荷値HL が算出されていたが、その変速回数および伝達トルク値(入力トルク値)に基づいて熱負荷値HL が算出されもよい。また、ダウン変速についても本発明は適用され得る。
【0058】
また、所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷値HL の算出に替えて、その油圧式摩擦係合装置の温度を直接検出するようにしてもよい。
【0059】
また、前述の実施例の油圧制御回路98において、第1調圧弁100から流出させられる作動油が潤滑油路LLUB へ導かれてもよいし、第1調圧弁100および第2調圧弁102の一方が省略されてもよい。
【0060】
また、前述の図10の実施例では、オリフィス125、127を介して第1ライン油路L1と潤滑油路LLUB とが接続されていたが、相互に接続されていなくてもよい。
【0061】
また、前述の実施例では、手動変速或いはエンジンブレーキ走行のためにSポジションへ操作されるシフトレバー72が用いられていたが、手動変速或いはエンジンブレーキ走行のために3(サード)ポジション、2(セカンド)ポジション、L(ロー)ポジションへ操作されるシフトレバー72であってもよい。また、手動変速モードが選択された状態では、ステアリングホイールに設けられた手動変速操作釦を用いて手動変速が操作されるものであってもよい。
【0062】
また、前述の実施例では、アップ変速時の発熱量が大きい場合に、そのアップ変速を行う油圧式摩擦係合装置への潤滑油量が増量されるものであったが、ダウン変速時の発熱量が大きい場合にそのダウン変速を行う油圧式摩擦係合装置への潤滑油量が増量されるようにしてもよい。
【0063】
また、前述の実施例では、リニヤソレノイド弁SLTからの制御圧PSLT が一時的に増加させられることにより高くされた第1ライン油圧PL1を導く第1ライン油路L1から潤滑油路LLUB へ流出させられる作動油量が増量させられていたが、オリフィスの径の設定や配置変更により制御圧PSLT が一時的に減少させられることにより第2ライン油圧PL2が低くさせられ、それにより第2調圧弁102の流出ポート118から潤滑油路LLUB へ流出させられる作動油が増量されるようにしてもよい。
【0064】
また、図10の実施例では、油圧制御回路98は、電磁開閉弁158を開く操作が行われることによって潤滑油量が増量されるように構成されていたが、閉じる操作が行われることによって潤滑油量が増量されるように構成されてもよい。
【0065】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の車両用自動変速機の構成を説明する骨子図である。
【図2】図1の自動変速機における複数の油圧式摩擦係合装置の係合作動の組合わせとそれにより成立させられる変速ギヤ段との関係を示す図である。
【図3】図1の自動変速機の油圧制御或いは変速制御を実行する電子制御装置の構成を説明する図である。
【図4】図1の車両に設けられたシフトレバーの一例を示す斜視図である。
【図5】図3の油圧制御回路の要部を説明する油圧回路図である。
【図6】図3の電子制御装置の制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図7】図6の変速制御手段による自動変速制御のために用いられる予め記憶された変速線図の一例である。
【図8】図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、潤滑油量制御ルーチンを示している。
【図9】図1の電子制御装置の制御作動の要部を説明するフローチャートであって、変速禁止制御ルーチンを示している。
【図10】本発明の他の実施例の油圧制御回路の要部を示す図であって、図5に相当する図である。
【符号の説明】
12:エンジン
16:自動変速機
102:第2調圧弁(リリーフ型調圧弁)
128:オリフィス
140:熱負荷値算出手段
142:第1熱負荷状態判定手段
144:潤滑油量増量手段
150:上限ギヤ段判定手段
152:第2熱負荷状態判定手段
154:変速禁止手段
158:電磁開閉弁(開閉弁)
LLUB :潤滑油路
Claims (9)
- 複数の油圧式摩擦係合装置を備え、該複数の油圧式摩擦係合装置が選択的に係合させられることにより複数段の前進ギヤ段が択一的に達成される形式の車両用自動変速機の油圧制御装置であって、
所定のギヤ段への変速を成立させるために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第1過負荷状態となったか否かを判定する第1熱負荷状態判定手段と、
該第1熱負荷状態判定手段により前記所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第1過負荷状態を超えたと判定されると、該所定の油圧式摩擦係合装置に対する潤滑油量を増量させる潤滑油量増量手段と
を、含むことを特徴とする車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 前記所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいて該油圧式摩擦係合装置の熱負荷値を算出する熱負荷値算出手段を含み、
前記第1熱負荷状態判定手段は該熱負荷値が第1判定値を超えたことに基づいて前記所定の油圧式摩擦係合装置が第1過負荷状態となったことを判定するものである請求項1の車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 前記熱負荷値算出手段は、車両のエンジンの出力または回転速度が所定値を超えているときに、所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段への変速回数に基づいて該油圧式摩擦係合装置の熱負荷値を算出するものである請求項2の車両用自動変速機の油圧制御装置。
- 油圧源から圧送される作動油圧を所定のライン圧に調圧するための調圧弁を含み、
前記潤滑油量は、該ライン圧を導くライン油路から流出させられる作動油量を含むものであり、
前記潤滑油量増量手段は、前記ライン圧が所定値高く或いは低く調圧されるように該調圧弁を制御するものである請求項1乃至3のいずれかの車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 前記潤滑油量は、油圧源から圧送される作動油を調圧するためのリリーフ型調圧弁からオリフィスを通して流出させられる作動油量を含むものであり、
前記潤滑油量増量手段は、該オリフィスに並列に設けられたバイパス油路に設けられた開閉弁を操作することにより前記潤滑油量を増量させるものである請求項1乃至3のいずれかの車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 前記所定の油圧式摩擦係合装置の係合により達成される所定のギヤ段は、アップ変速またはダウン変速により達成されるものである請求項1乃至5のいずれかの車両用自動変速機の油圧制御装置。
- 前記所定のギヤ段への変速を成立させるために係合作動させられる所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態となったか否かを判定する第2熱負荷状態判定手段と、
該第2熱負荷状態判定手段により該所定の油圧式摩擦係合装置の熱負荷状態が第2過負荷状態を超えたと判定されると、該所定のギヤ段への変速を禁止する変速禁止手段と
を、さらに含むものである請求項1乃至6のいずれかの車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 運転者のシフト操作体の操作に応答して自動変速機の変速が実行される手動変速モードが選択されているか否かを判定する手動変速モード判定手段を含み、
前記変速禁止手段は、該手動変速モード判定手段により手動変速モードが選択されていると判定されている場合に前記所定のギヤ段への変速を禁止するものである請求項7の車両用自動変速機の油圧制御装置。 - 前記自動変速機の実際のギヤ段が上限ギヤ段と一致するか否かを判定する上限ギヤ段判定手段を含み、
前記変速禁止手段は、該上限ギヤ段判定手段により前記自動変速機の実際のギヤ段がその上限ギヤ段と一致すると判定されている場合にアップ変速を禁止するものである請求項7の車両用自動変速機の油圧制御装置。
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