JP2004143605A - 全芳香族ポリアミド繊維構造物 - Google Patents
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Abstract
【課題】着用感が良好で、且つ、染色や対繊維機能付与剤の含有が容易で、優れた快適性及び機能特性を付与することが可能な繊維構造物を提供すること。
【解決手段】全芳香族ポリアミド繊維と、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃のポリエステル繊維とが混合されてなる繊維構造物であって、該繊維構造物における全芳香族ポリアミド繊維の混合比率が50〜90重量%、ポリエステル繊維の混合比率が50〜10重量%であり、且つ該繊維構造物が少なくとも27.0の限界酸素指数を有する。
【選択図】 なし
【解決手段】全芳香族ポリアミド繊維と、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃のポリエステル繊維とが混合されてなる繊維構造物であって、該繊維構造物における全芳香族ポリアミド繊維の混合比率が50〜90重量%、ポリエステル繊維の混合比率が50〜10重量%であり、且つ該繊維構造物が少なくとも27.0の限界酸素指数を有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として全芳香族ポリアミド繊維からなる繊維構造物に関するものであり、さらに詳しくは、染色や対繊維機能付与剤の含有が容易なポリエステル繊維と複合させることにより、優れた快適性及び機能特性を付与することが可能で、消防士、飛行士、レースドライバー、電力会社、化学会社など、火災に遭遇する可能性の高い作業に従事する人々が着用する衣服に好適に使用できる全芳香族ポリアミド繊維構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
全芳香族ポリアミド(以下アラミドと称することがある)繊維にはコーネックス、ノーメックスに代表されるメタ系アラミド繊維とテクノーラ、ケブラー、トワロンに代表されるパラ系アラミド繊維とがある。
【0003】
これらのアラミド繊維は、ナイロン6、ナイロン66などの従来から広く使用されている脂肪族ポリアミド繊維に比較して、剛直な分子構造と高い結晶性を有しているので、耐熱性、耐炎性(難燃性)などの熱的性質、並びに耐薬品性、強力な耐放射線性、電気特性などの安全性に優れた性質を有している。そのため、アラミド繊維は耐炎性(難燃性)や耐熱性を必要とする防護服などの衣料用やバッグフィルターなどの産業資材用、カーテンなどのインテリア用として広く使用されるようになってきている。
【0004】
中でも、消防士、飛行士、レースドライバー、電力会社、化学会社など、火災に遭遇する可能性の高い作業に従事する人々が着用する衣服を構成する繊維として、環境問題や動き易さ・軽量化などの観点より、従来のアスベスト繊維やガラス繊維に代わってアラミド繊維が多く使用されるようになってきており、例えば特開2002−115106号公報には、アラミド繊維布帛からなる表地層と、中間層及び遮熱層からなる防護服が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の布帛は、高温の環境下では着用感が著しく悪い上、染色や吸湿剤などの対繊維機能付与剤を含有させることが困難であり、種々の機能や快適性が付与された繊維構造物を得るには至っていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−115106号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、着用感が良好で、且つ、染色や対繊維機能付与剤の含有が容易で、優れた快適性及び機能特性を付与することが可能な繊維構造物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アラミド繊維構造物に、対繊維機能付与剤等の吸尽が容易なポリエステル繊維を適量混合させるとき、所望の繊維構造物が得られることを究明した。
【0009】
かくして本発明によれば、全芳香族ポリアミド繊維と、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃のポリエステル繊維とが混合されてなる繊維構造物であって、該繊維構造物における全芳香族ポリアミド繊維の混合比率が50〜90重量%、ポリエステル繊維の混合比率が50〜10重量%であり、且つ該繊維構造物が少なくとも27.0の限界酸素指数を有することを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するアラミド繊維とは、主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりメタ型に結合されてなるメタ系アラミド繊維であることが好ましく、ポリマーの全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるもの、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。全繰返し単位の15モル%未満、好ましくは5モル%以下で共重合し得る第3成分としては、ジアミン成分として、例えばパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3’−ジクロルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが、また酸成分として、例えばテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は、その芳香族環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基等のアルキル基によって置換されていてもよい。
【0011】
尚、ポリマーの全末端の20%以上が、アニリン等の一価のジアミンもしくは一価のカルボン酸成分で封鎖されている場合には、特に高温下に長時間保持しても繊維の強力低下が小さくなるので好ましい。
【0012】
このようなメタ系芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとを、例えば従来公知の界面重合させる方法により製造することができる。ポリマーの重合度としては、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として0℃で測定した固有粘度(IV)が0.8〜3.0、特に1.0〜2.0の範囲にあるものが好ましい。
【0013】
尚、上記メタ系芳香族ポリアミド繊維には、機能特性を保持するために難燃剤や紫外線吸収剤が含まれていても良く、特に本発明においては、ポリエステル繊維との複合によって難燃性や耐光性が低下する傾向があるので、難燃剤や紫外線吸収剤を含有させることはむしろ好ましいことである。この際使用される難燃剤の好ましい具体例としては、下記式で示される芳香族縮合型ノンハロゲン化リン酸エステル系難燃剤が、染色加工後の繊維における洗濯耐久難燃性を付与すると共に、例え燃焼しても有毒ガスの発生を少なくすることができるので、好ましく例示することができる。
【0014】
【化1】
【0015】
また紫外線吸収剤としては下記式に示す紫外線吸収剤を好ましく例示することができる。
【0016】
【化2】
【0017】
これらメタ系アラミド繊維には、更に耐熱耐炎性や強力保持性などの機能特性を向上させるためにパラ系アラミド繊維を5〜35重量部混合しても良い。
【0018】
ここで、パラ系アラミド繊維とは、デュポン社の「ケブラー」或いは帝人トワロン社の「トワロン」に代表されるポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維や、帝人(株)の「テクノーラ」に代表される3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体など、パラフェニレン基を主鎖中に組み込んだ芳香族ポリアミド繊維を言う。
【0019】
上記パラ系アラミド繊維には、押し込み式捲縮などの捲縮付与手段の他、強打(叩く)、表面摩擦(しごく)、撚糸及び仮撚などの該物理的手段により、座屈部(キンクバンド)が形成(付与)されていることが好ましい。座屈部(キンクバンド)が形成されているパラ系アラミド繊維は、該座屈部(キンクバンド)がノンキャリヤーで染色されるため、染色が可能となる上、対繊維機能付与剤等の吸尽も起こり易くなる。
【0020】
また、本発明で使用するポリエステル繊維は、テレフタル繊維を主たるジカルボン酸成分とし、少なくとも1種類のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維である。該ポリエステル繊維には、必要に応じて任意の添加剤、例えば触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、酸化防止剤、無機粒子などが含まれていても構わない。
【0021】
上記ポリエステル繊維は、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃であることが必要である。このようなポリエステル繊維は、例えば、ポリエステルを5000m/分以上の紡糸速度で紡糸した、いわゆるUSY糸条としたり、第三成分を共重合した変性ポリエステルとすることにより得られる。
【0022】
前記変性ポリエステルポリマーとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素原子数2〜6のアルキレングリコール、即ち、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールから、更に好ましくは、エチレングリコール及びテトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のグリコールを、特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール成分とするものである。
【0023】
また該テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を前記グリコール以外のジオール成分で置き換えたポリエステルであっても良い。
【0024】
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。
【0025】
前記ポリエステルは、任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングルコールとを、直接、エステル化反応させるか、テレフタルジメチルなどのテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかにして、テレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応と、該第1段階の反応生成物を減圧下に加熱して所望の重合度となるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造することができる。
【0026】
前記ポリエステルには、別工程での延伸や熱処理、或いは仮撚・空気交絡等の処理が施されていても良い。また、ポリエステル繊維の形態は、トウ、原綿、フィラメント、紡績糸、複合糸、編織物などの何れの形態であっても構わない。
【0027】
本発明においては、上記全芳香族ポリアミド繊維の比率が50〜90重量%、上記ポリエステル繊維の比率が50〜10重量%となるように混合して繊維構造物とする。混合方法としては、混紡(均一混紡、コアヤーン混紡など)、混繊(芯鞘複合糸、カバリング糸など)、交織或いは交編など任意の混合方法が採用できるが、混紡或いは芯部にポリエステル繊維が配置され、鞘部に全芳香族ポリアミド繊維が配置された芯鞘型複合糸として混合させることが好ましい。
【0028】
本発明においては、上記ポリエステル繊維に対繊維機能付与剤を含有させることが好ましい。ここで、対繊維機能付与剤とは、繊維又は繊維構造物に快適性や機能性を付与することが可能な添加剤等を言い、例えば、吸汗剤、帯電防止剤、抗菌剤、吸湿剤、消臭剤、蓄熱保温剤、接触冷感剤および撥水・撥油剤などが好ましく挙げられる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染色のための染料、難燃剤及び遮熱性向上剤なども一種の対繊維機能付与剤と考えることができる。
【0029】
対繊維機能付与剤を付与する具体的手段としては、ポリエステル繊維(綿、延伸糸、加工糸などの形態は問わない)に湿熱処理、スプレー処理、樹脂処理(コーティング法、パディング法など)又は浸漬処理などの加工方法により対繊維機能付与剤を含有しても構わないし、繊維構造物に付与しても構わない。
上記湿熱処理或いは浸漬処理における好ましい処理温度としては、ポリエステル繊維のtanδピーク温度以上であることが望ましい。tanδピーク温度未満の場合は対繊維機能付与剤が充分に付与されない場合がある。ただ、あまり処理温度が高いと、ポリエステル繊維の加水分解などによる劣化の問題が発生しはじめるので、必ずしも高温にすればするほど良いわけではなく、高々140℃であることが好ましい。
【0030】
また、染色に際しては、特殊な設備や特殊な方法は必要なく、既存の合成繊維の染色設備を用いた染色方法を採用すれば良い。染色のための染料としては、カチオン染料、分散染料、また更にはカチオン/分散混合染料の何れも用いることが出来るが、緻密な構造に浸透しやすく、また染色後の堅牢性や色相安定性がよいカチオン染料が望ましい。
【0031】
カチオン染料とは、水に可溶で塩基性を示す基を有する水溶性染料をいい、アクリル繊維、天然繊維或いはカチオン可染型ポリエステル繊維等の染色に多く用いられており、ジ及びトリアクリルメタン系、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)系、キサンテン系、メチン系(ポリメチン、アザメチン)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ)、アントラキノン系などが例示される。また最近では塩基性基を封鎖することにより水分散型にしたカチオン染料もあり、両者とも用いることが出来る。
【0032】
好ましい染色温度は、ポリエステル繊維のtanδピーク温度以上である。tanδピーク温度未満の場合は着色が不充分になる場合がある。ただ、あまり染色温度が高いと、ポリエステル繊維の加水分解などによる劣化の問題が発生しはじめるので、必ずしも高温にすればするほど良いわけではなく、高々140℃であることが好ましい。
【0033】
対繊維機能付与剤の付与に際しては、複数の剤による処理を同時に行なってもよいし、別々に処理しても構わない。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。尚、実施例における評価の方法は下記の通りである。
【0035】
(1)難燃性
難燃性は、JIS K−7201のLOI測定方法に準拠して、LOI値を求めた。LOI値が27以上の場合を難燃性が優れていると判断する。
【0036】
(2)吸水性
吸水性はJIS L−1097のバイレック法に準拠し、高さ30mm以上のものを○とした。
【0037】
(3)帯電性
帯電性はJIS L−1094に準拠し、耐電圧が2.0kV以下の場合を○とした。
【0038】
(4)防水性
防水性はJIS L−1097のウイッキング法に準拠し、60秒以上の場合いを○とした。
【0039】
(5)透湿性
透湿性はJIS L−1097のバイレック法で高さ30mm以上、且つJIS L−1097のウイッキング法で10秒以下の場合を○とした。
【0040】
(6)抗菌性
抗菌性の評価は、菌数測定法(SEK統一試験法)に従って、繊維製品衛生加工協議会の試験方法(繊維製品の定量的抗菌性試験方法)による滅菌資料布に試験菌(黄色ブドウ球菌)のブイヨン懸濁液を注加し、密閉容器中で37±1℃の条件下で18時間培養後の生菌数を計測し、無加工試料布に対する増減値差を下記式より求めた。
【0041】
【数1】
【0042】
無加工試料における菌の増殖が、logB/logA>2であれば試験を有効とし、無加工布に対する抗菌加工布の増減値差が1.6以上の試料を合格(○)とする。
【0043】
(7)消臭性
消臭性の評価は、タバコ消臭成分として代表的なアンモニア、アセトアルデヒド臭について、繊維構造物1gをテドラーバックに入れ、一晩後テトラーバック内の臭気官能性を評価した。殆ど臭わないレベル(10人による官能評価で3人以下)を○、少し臭うレベル(10人による官能評価で5人以下)を△、それ以外を×とした。
【0044】
[実施例1]
固有粘度1.35dl/gのポリ−m−フェニレンイソフタルアミド30gをN−メチル−2−ピロリドン115gに溶解し、同時に含ハロゲンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル5重量%をN−メチル−2−ピロリドンに溶解混合し、減圧脱法して紡糸ドープとした。
【0045】
このドープを85℃に加温し、口径0.07ミリ、孔数200の紡糸口金から凝固浴に湿式紡糸した。凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40重量%、NMPが5重量%、残りの水は55重量%であり、該凝固浴の温度は85℃であった。
【0046】
紡出された糸条を凝固浴中に約10cm走行させ6.2m/分の速度で引き出した。次に該糸条を水洗し、95℃の温水中で3.3倍に延伸して120℃のロールで乾燥した後、300℃の熱板上で熱処理して延伸糸を得た。この延伸糸を100本集束してトウとし、捲縮を付与した後カットした。得られた短繊維の単糸繊度、カット長、強度、伸度はそれぞれ1.9dtex、51mm、4.5g/dtex、33.6%であった。
【0047】
一方、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマー(酸化チタン含有量0.07重量%)を紡糸速度1400m/分で紡糸し、延伸温度(予熱)68℃、セット温度150℃で3.5倍に延伸した後、常法に従って捲縮を付与し、カットして短繊維を得た。得られた短繊維の動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度は98℃であった。
【0048】
上記ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維50重量%と、変性ポリエチレンテレフタレート短繊維50重量%とを混綿し、撚糸して40/2の紡績糸とした後、該紡績糸を経55本/インチ、緯54本/インチの密度で製織して平織物を得た。
【0049】
次に、得られた織物をスコアロール400(花王製)で1g/l、80℃で20分間精錬した。水洗・乾燥後、190℃で1分間プレ・セットした。次いで、下記処理浴で常温から2℃/分の速度で昇温し、100℃で60分間染色すると共に対繊維機能付与剤を含有させた。
・染料C.I.Basic Blue 54(Kayacryl Blue GSL−ED) 4%owf
・染料C.I.Disperse Blue 56(Kayalon Polyester Blue EBL−E) 1%owf
・硝酸Na 25g/l
・酢酸 0.5cc/l
・吸汗剤 YM−81(高松油脂製) 10%owf
・浴比1:30
【0050】
次いで、得られた織物を下記洗浄浴で80℃×20分間還元洗浄した。
・NaOH 1g/l
・ハイドロサルファイト 1g/l
・アミラジンD 1g/l
(第一工業製薬製、非イオン活性剤)
還元洗浄後、十分水洗して乾燥、ファイナル・セット(180℃×1分間)した。
【0051】
[実施例2]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の混合割合を10重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を90重量%として紡績糸を得た以外は、実施例1と同様に実施した。
【0052】
[実施例3]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維に代えて、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維を使用し、染色温度を110℃に変更した以外は実施例1と同様に実施した。尚、上記の紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度は112℃であった。
【0053】
[実施例4]
実施例3において、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の混合割合を10重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を90重量%として紡績糸を得た以外は、実施例1と同様に実施した。
【0054】
[実施例5]
実施例1で使用したポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維を常法により粗紡・精紡して40/1の紡績糸とした。一方、同じく実施例1で使用した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維を常法により粗紡・精紡して40/1の紡績糸とした後、該変性ポリエチレンテレフタレート紡績糸が芯糸に、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド紡績糸が鞘糸に配されるようにしてダブルカバリング糸を得た。
【0055】
得られたダブルカバリング糸を実施例1と同様の方法により平織物とし、引き続き、実施例1と同様の方法で染色を行なった。
【0056】
[実施例6]
実施例5において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維に代えて、実施例3で使用した、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維を使用し、染色温度を110℃に変更した以外は実施例5と同様に実施した。
【0057】
[実施例7]
実施例1において、吸汗剤に代えて有機シリコーン第四級アンモニウム塩からなる抗菌剤を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0058】
[実施例8]
実施例1において、吸汗剤に代えてアルキル燐酸エステル第四級アンモニウム塩からなる抗菌剤を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0059】
[実施例9]
実施例1において、吸汗剤に代えて芳香族ハロゲン化物からなる抗菌剤を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0060】
[実施例10]
実施例1において、吸汗剤に代えて撥水剤(明成化学製アサヒガードAG−710)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0061】
[実施例11]
実施例1において、吸汗剤に代えて難燃剤(第一工業製薬製、YM−88)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0062】
[実施例12]
実施例1において、吸汗剤に代えて消臭剤(東亜合成製ケスモン)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維を使用せず、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維のみからなる紡績糸を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0064】
[比較例2]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維の混合割合を60重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を40重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0065】
[比較例3]
実施例3において、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の混合割合を60重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を40重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0066】
[比較例4]
実施例1において、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維を使用せず、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維のみからなる紡績糸を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0067】
[比較例5]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維に代えて、無変性のポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維を使用した以外は実施例1と同様に実施した。尚、上記の無変性のポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度は133℃であった。
【0068】
実施例1〜12及び比較例1〜5により得られた織物における物性の評価結果を表1に示す。尚、表中の「−」は、物性の評価を行なっていないことを表す。
【0069】
【表1】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として全芳香族ポリアミド繊維からなる繊維構造物に関するものであり、さらに詳しくは、染色や対繊維機能付与剤の含有が容易なポリエステル繊維と複合させることにより、優れた快適性及び機能特性を付与することが可能で、消防士、飛行士、レースドライバー、電力会社、化学会社など、火災に遭遇する可能性の高い作業に従事する人々が着用する衣服に好適に使用できる全芳香族ポリアミド繊維構造物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
全芳香族ポリアミド(以下アラミドと称することがある)繊維にはコーネックス、ノーメックスに代表されるメタ系アラミド繊維とテクノーラ、ケブラー、トワロンに代表されるパラ系アラミド繊維とがある。
【0003】
これらのアラミド繊維は、ナイロン6、ナイロン66などの従来から広く使用されている脂肪族ポリアミド繊維に比較して、剛直な分子構造と高い結晶性を有しているので、耐熱性、耐炎性(難燃性)などの熱的性質、並びに耐薬品性、強力な耐放射線性、電気特性などの安全性に優れた性質を有している。そのため、アラミド繊維は耐炎性(難燃性)や耐熱性を必要とする防護服などの衣料用やバッグフィルターなどの産業資材用、カーテンなどのインテリア用として広く使用されるようになってきている。
【0004】
中でも、消防士、飛行士、レースドライバー、電力会社、化学会社など、火災に遭遇する可能性の高い作業に従事する人々が着用する衣服を構成する繊維として、環境問題や動き易さ・軽量化などの観点より、従来のアスベスト繊維やガラス繊維に代わってアラミド繊維が多く使用されるようになってきており、例えば特開2002−115106号公報には、アラミド繊維布帛からなる表地層と、中間層及び遮熱層からなる防護服が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記の布帛は、高温の環境下では着用感が著しく悪い上、染色や吸湿剤などの対繊維機能付与剤を含有させることが困難であり、種々の機能や快適性が付与された繊維構造物を得るには至っていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−115106号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の有する問題点を解消し、着用感が良好で、且つ、染色や対繊維機能付与剤の含有が容易で、優れた快適性及び機能特性を付与することが可能な繊維構造物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記目的を達成するため鋭意検討した結果、アラミド繊維構造物に、対繊維機能付与剤等の吸尽が容易なポリエステル繊維を適量混合させるとき、所望の繊維構造物が得られることを究明した。
【0009】
かくして本発明によれば、全芳香族ポリアミド繊維と、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃のポリエステル繊維とが混合されてなる繊維構造物であって、該繊維構造物における全芳香族ポリアミド繊維の混合比率が50〜90重量%、ポリエステル繊維の混合比率が50〜10重量%であり、且つ該繊維構造物が少なくとも27.0の限界酸素指数を有することを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で使用するアラミド繊維とは、主骨格を構成する芳香環がアミド結合によりメタ型に結合されてなるメタ系アラミド繊維であることが好ましく、ポリマーの全繰返し単位の85モル%以上がメタフェニレンイソフタルアミド単位であるもの、特にポリメタフェニレンイソフタルアミドホモポリマーが好ましい。全繰返し単位の15モル%未満、好ましくは5モル%以下で共重合し得る第3成分としては、ジアミン成分として、例えばパラフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、パラキシリレンジアミン、ビフェニレンジアミン、3,3’−ジクロルベンジジン、3,3’−ジメチルベンジジン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジアミン等の芳香族ジアミンが、また酸成分として、例えばテレフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸が挙げられる。また、これらの芳香族ジアミン及び芳香族ジカルボン酸は、その芳香族環の水素原子の一部がハロゲン原子やメチル基等のアルキル基によって置換されていてもよい。
【0011】
尚、ポリマーの全末端の20%以上が、アニリン等の一価のジアミンもしくは一価のカルボン酸成分で封鎖されている場合には、特に高温下に長時間保持しても繊維の強力低下が小さくなるので好ましい。
【0012】
このようなメタ系芳香族ポリアミドは、芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ジハライドとを、例えば従来公知の界面重合させる方法により製造することができる。ポリマーの重合度としては、N−メチル−2−ピロリドンを溶媒として0℃で測定した固有粘度(IV)が0.8〜3.0、特に1.0〜2.0の範囲にあるものが好ましい。
【0013】
尚、上記メタ系芳香族ポリアミド繊維には、機能特性を保持するために難燃剤や紫外線吸収剤が含まれていても良く、特に本発明においては、ポリエステル繊維との複合によって難燃性や耐光性が低下する傾向があるので、難燃剤や紫外線吸収剤を含有させることはむしろ好ましいことである。この際使用される難燃剤の好ましい具体例としては、下記式で示される芳香族縮合型ノンハロゲン化リン酸エステル系難燃剤が、染色加工後の繊維における洗濯耐久難燃性を付与すると共に、例え燃焼しても有毒ガスの発生を少なくすることができるので、好ましく例示することができる。
【0014】
【化1】
【0015】
また紫外線吸収剤としては下記式に示す紫外線吸収剤を好ましく例示することができる。
【0016】
【化2】
【0017】
これらメタ系アラミド繊維には、更に耐熱耐炎性や強力保持性などの機能特性を向上させるためにパラ系アラミド繊維を5〜35重量部混合しても良い。
【0018】
ここで、パラ系アラミド繊維とは、デュポン社の「ケブラー」或いは帝人トワロン社の「トワロン」に代表されるポリパラフェニレンテレフタルアミド(PPTA)繊維や、帝人(株)の「テクノーラ」に代表される3,4’−オキシジフェニレンテレフタルアミドとの共重合体など、パラフェニレン基を主鎖中に組み込んだ芳香族ポリアミド繊維を言う。
【0019】
上記パラ系アラミド繊維には、押し込み式捲縮などの捲縮付与手段の他、強打(叩く)、表面摩擦(しごく)、撚糸及び仮撚などの該物理的手段により、座屈部(キンクバンド)が形成(付与)されていることが好ましい。座屈部(キンクバンド)が形成されているパラ系アラミド繊維は、該座屈部(キンクバンド)がノンキャリヤーで染色されるため、染色が可能となる上、対繊維機能付与剤等の吸尽も起こり易くなる。
【0020】
また、本発明で使用するポリエステル繊維は、テレフタル繊維を主たるジカルボン酸成分とし、少なくとも1種類のグリコール、好ましくはエチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールなどから選ばれた少なくとも1種のアルキレングリコールを主たるグリコール成分とするポリエステルからなる繊維である。該ポリエステル繊維には、必要に応じて任意の添加剤、例えば触媒、着色防止剤、耐熱剤、難燃剤、酸化防止剤、無機粒子などが含まれていても構わない。
【0021】
上記ポリエステル繊維は、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃であることが必要である。このようなポリエステル繊維は、例えば、ポリエステルを5000m/分以上の紡糸速度で紡糸した、いわゆるUSY糸条としたり、第三成分を共重合した変性ポリエステルとすることにより得られる。
【0022】
前記変性ポリエステルポリマーとしては、テレフタル酸を主たる酸成分とし、炭素原子数2〜6のアルキレングリコール、即ち、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコールから、更に好ましくは、エチレングリコール及びテトラメチレングリコールから選ばれた少なくとも一種のグリコールを、特に好ましくはエチレングリコールを主たるグリコール成分とするものである。
【0023】
また該テレフタル酸成分の一部を他の二官能性カルボン酸成分で置き換えたポリエステルであってもよく、及び/又はグリコール成分の一部を前記グリコール以外のジオール成分で置き換えたポリエステルであっても良い。
【0024】
ここで使用されるテレフタル酸以外の二官能性カルボン酸としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の如き芳香族、脂肪族、脂環族の二官能性カルボン酸を挙げることができる。
【0025】
前記ポリエステルは、任意の方法によって合成したものでよい。例えばポリエチレンテレフタレートについて説明すれば、通常、テレフタル酸とエチレングルコールとを、直接、エステル化反応させるか、テレフタルジメチルなどのテレフタル酸の低級アルキルエステルとエチレングリコールとをエステル交換反応させるか、またはテレフタル酸とエチレンオキサイドとを反応させるかにして、テレフタル酸のグリコールエステル及び/又はその低重合体を生成させる第1段階の反応と、該第1段階の反応生成物を減圧下に加熱して所望の重合度となるまで重縮合反応させる第2段階の反応によって製造することができる。
【0026】
前記ポリエステルには、別工程での延伸や熱処理、或いは仮撚・空気交絡等の処理が施されていても良い。また、ポリエステル繊維の形態は、トウ、原綿、フィラメント、紡績糸、複合糸、編織物などの何れの形態であっても構わない。
【0027】
本発明においては、上記全芳香族ポリアミド繊維の比率が50〜90重量%、上記ポリエステル繊維の比率が50〜10重量%となるように混合して繊維構造物とする。混合方法としては、混紡(均一混紡、コアヤーン混紡など)、混繊(芯鞘複合糸、カバリング糸など)、交織或いは交編など任意の混合方法が採用できるが、混紡或いは芯部にポリエステル繊維が配置され、鞘部に全芳香族ポリアミド繊維が配置された芯鞘型複合糸として混合させることが好ましい。
【0028】
本発明においては、上記ポリエステル繊維に対繊維機能付与剤を含有させることが好ましい。ここで、対繊維機能付与剤とは、繊維又は繊維構造物に快適性や機能性を付与することが可能な添加剤等を言い、例えば、吸汗剤、帯電防止剤、抗菌剤、吸湿剤、消臭剤、蓄熱保温剤、接触冷感剤および撥水・撥油剤などが好ましく挙げられる。また、紫外線吸収剤、酸化防止剤、染色のための染料、難燃剤及び遮熱性向上剤なども一種の対繊維機能付与剤と考えることができる。
【0029】
対繊維機能付与剤を付与する具体的手段としては、ポリエステル繊維(綿、延伸糸、加工糸などの形態は問わない)に湿熱処理、スプレー処理、樹脂処理(コーティング法、パディング法など)又は浸漬処理などの加工方法により対繊維機能付与剤を含有しても構わないし、繊維構造物に付与しても構わない。
上記湿熱処理或いは浸漬処理における好ましい処理温度としては、ポリエステル繊維のtanδピーク温度以上であることが望ましい。tanδピーク温度未満の場合は対繊維機能付与剤が充分に付与されない場合がある。ただ、あまり処理温度が高いと、ポリエステル繊維の加水分解などによる劣化の問題が発生しはじめるので、必ずしも高温にすればするほど良いわけではなく、高々140℃であることが好ましい。
【0030】
また、染色に際しては、特殊な設備や特殊な方法は必要なく、既存の合成繊維の染色設備を用いた染色方法を採用すれば良い。染色のための染料としては、カチオン染料、分散染料、また更にはカチオン/分散混合染料の何れも用いることが出来るが、緻密な構造に浸透しやすく、また染色後の堅牢性や色相安定性がよいカチオン染料が望ましい。
【0031】
カチオン染料とは、水に可溶で塩基性を示す基を有する水溶性染料をいい、アクリル繊維、天然繊維或いはカチオン可染型ポリエステル繊維等の染色に多く用いられており、ジ及びトリアクリルメタン系、キノンイミン(アジン、オキサジン、チアジン)系、キサンテン系、メチン系(ポリメチン、アザメチン)、複素環アゾ系(チアゾールアゾ、トリアゾールアゾ、ベンゾチアゾールアゾ)、アントラキノン系などが例示される。また最近では塩基性基を封鎖することにより水分散型にしたカチオン染料もあり、両者とも用いることが出来る。
【0032】
好ましい染色温度は、ポリエステル繊維のtanδピーク温度以上である。tanδピーク温度未満の場合は着色が不充分になる場合がある。ただ、あまり染色温度が高いと、ポリエステル繊維の加水分解などによる劣化の問題が発生しはじめるので、必ずしも高温にすればするほど良いわけではなく、高々140℃であることが好ましい。
【0033】
対繊維機能付与剤の付与に際しては、複数の剤による処理を同時に行なってもよいし、別々に処理しても構わない。
【0034】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。尚、実施例における評価の方法は下記の通りである。
【0035】
(1)難燃性
難燃性は、JIS K−7201のLOI測定方法に準拠して、LOI値を求めた。LOI値が27以上の場合を難燃性が優れていると判断する。
【0036】
(2)吸水性
吸水性はJIS L−1097のバイレック法に準拠し、高さ30mm以上のものを○とした。
【0037】
(3)帯電性
帯電性はJIS L−1094に準拠し、耐電圧が2.0kV以下の場合を○とした。
【0038】
(4)防水性
防水性はJIS L−1097のウイッキング法に準拠し、60秒以上の場合いを○とした。
【0039】
(5)透湿性
透湿性はJIS L−1097のバイレック法で高さ30mm以上、且つJIS L−1097のウイッキング法で10秒以下の場合を○とした。
【0040】
(6)抗菌性
抗菌性の評価は、菌数測定法(SEK統一試験法)に従って、繊維製品衛生加工協議会の試験方法(繊維製品の定量的抗菌性試験方法)による滅菌資料布に試験菌(黄色ブドウ球菌)のブイヨン懸濁液を注加し、密閉容器中で37±1℃の条件下で18時間培養後の生菌数を計測し、無加工試料布に対する増減値差を下記式より求めた。
【0041】
【数1】
【0042】
無加工試料における菌の増殖が、logB/logA>2であれば試験を有効とし、無加工布に対する抗菌加工布の増減値差が1.6以上の試料を合格(○)とする。
【0043】
(7)消臭性
消臭性の評価は、タバコ消臭成分として代表的なアンモニア、アセトアルデヒド臭について、繊維構造物1gをテドラーバックに入れ、一晩後テトラーバック内の臭気官能性を評価した。殆ど臭わないレベル(10人による官能評価で3人以下)を○、少し臭うレベル(10人による官能評価で5人以下)を△、それ以外を×とした。
【0044】
[実施例1]
固有粘度1.35dl/gのポリ−m−フェニレンイソフタルアミド30gをN−メチル−2−ピロリドン115gに溶解し、同時に含ハロゲンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル5重量%をN−メチル−2−ピロリドンに溶解混合し、減圧脱法して紡糸ドープとした。
【0045】
このドープを85℃に加温し、口径0.07ミリ、孔数200の紡糸口金から凝固浴に湿式紡糸した。凝固浴の組成は、塩化カルシウムが40重量%、NMPが5重量%、残りの水は55重量%であり、該凝固浴の温度は85℃であった。
【0046】
紡出された糸条を凝固浴中に約10cm走行させ6.2m/分の速度で引き出した。次に該糸条を水洗し、95℃の温水中で3.3倍に延伸して120℃のロールで乾燥した後、300℃の熱板上で熱処理して延伸糸を得た。この延伸糸を100本集束してトウとし、捲縮を付与した後カットした。得られた短繊維の単糸繊度、カット長、強度、伸度はそれぞれ1.9dtex、51mm、4.5g/dtex、33.6%であった。
【0047】
一方、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマー(酸化チタン含有量0.07重量%)を紡糸速度1400m/分で紡糸し、延伸温度(予熱)68℃、セット温度150℃で3.5倍に延伸した後、常法に従って捲縮を付与し、カットして短繊維を得た。得られた短繊維の動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度は98℃であった。
【0048】
上記ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維50重量%と、変性ポリエチレンテレフタレート短繊維50重量%とを混綿し、撚糸して40/2の紡績糸とした後、該紡績糸を経55本/インチ、緯54本/インチの密度で製織して平織物を得た。
【0049】
次に、得られた織物をスコアロール400(花王製)で1g/l、80℃で20分間精錬した。水洗・乾燥後、190℃で1分間プレ・セットした。次いで、下記処理浴で常温から2℃/分の速度で昇温し、100℃で60分間染色すると共に対繊維機能付与剤を含有させた。
・染料C.I.Basic Blue 54(Kayacryl Blue GSL−ED) 4%owf
・染料C.I.Disperse Blue 56(Kayalon Polyester Blue EBL−E) 1%owf
・硝酸Na 25g/l
・酢酸 0.5cc/l
・吸汗剤 YM−81(高松油脂製) 10%owf
・浴比1:30
【0050】
次いで、得られた織物を下記洗浄浴で80℃×20分間還元洗浄した。
・NaOH 1g/l
・ハイドロサルファイト 1g/l
・アミラジンD 1g/l
(第一工業製薬製、非イオン活性剤)
還元洗浄後、十分水洗して乾燥、ファイナル・セット(180℃×1分間)した。
【0051】
[実施例2]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の混合割合を10重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を90重量%として紡績糸を得た以外は、実施例1と同様に実施した。
【0052】
[実施例3]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維に代えて、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維を使用し、染色温度を110℃に変更した以外は実施例1と同様に実施した。尚、上記の紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度は112℃であった。
【0053】
[実施例4]
実施例3において、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の混合割合を10重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を90重量%として紡績糸を得た以外は、実施例1と同様に実施した。
【0054】
[実施例5]
実施例1で使用したポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維を常法により粗紡・精紡して40/1の紡績糸とした。一方、同じく実施例1で使用した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維を常法により粗紡・精紡して40/1の紡績糸とした後、該変性ポリエチレンテレフタレート紡績糸が芯糸に、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド紡績糸が鞘糸に配されるようにしてダブルカバリング糸を得た。
【0055】
得られたダブルカバリング糸を実施例1と同様の方法により平織物とし、引き続き、実施例1と同様の方法で染色を行なった。
【0056】
[実施例6]
実施例5において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維に代えて、実施例3で使用した、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維を使用し、染色温度を110℃に変更した以外は実施例5と同様に実施した。
【0057】
[実施例7]
実施例1において、吸汗剤に代えて有機シリコーン第四級アンモニウム塩からなる抗菌剤を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0058】
[実施例8]
実施例1において、吸汗剤に代えてアルキル燐酸エステル第四級アンモニウム塩からなる抗菌剤を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0059】
[実施例9]
実施例1において、吸汗剤に代えて芳香族ハロゲン化物からなる抗菌剤を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0060】
[実施例10]
実施例1において、吸汗剤に代えて撥水剤(明成化学製アサヒガードAG−710)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0061】
[実施例11]
実施例1において、吸汗剤に代えて難燃剤(第一工業製薬製、YM−88)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0062】
[実施例12]
実施例1において、吸汗剤に代えて消臭剤(東亜合成製ケスモン)を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0063】
[比較例1]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維を使用せず、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維のみからなる紡績糸を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0064】
[比較例2]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維の混合割合を60重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を40重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0065】
[比較例3]
実施例3において、紡糸速度6000m/分で紡糸した、ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の混合割合を60重量%とし、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維の混合割合を40重量%とした以外は実施例1と同様に実施した。
【0066】
[比較例4]
実施例1において、ポリ−m−フェニレンイソフタルアミド短繊維を使用せず、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレート短繊維のみからなる紡績糸を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
【0067】
[比較例5]
実施例1において、アジピン酸を12.5モル%共重合した変性ポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維に代えて、無変性のポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維を使用した以外は実施例1と同様に実施した。尚、上記の無変性のポリエチレンテレフタレートポリマーからなる短繊維の動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度は133℃であった。
【0068】
実施例1〜12及び比較例1〜5により得られた織物における物性の評価結果を表1に示す。尚、表中の「−」は、物性の評価を行なっていないことを表す。
【0069】
【表1】
Claims (9)
- 全芳香族ポリアミド繊維と、動的粘弾性測定におけるtanδピーク温度が70〜125℃のポリエステル繊維とが混合されてなる繊維構造物であって、該繊維構造物における全芳香族ポリアミド繊維の混合比率が50〜90重量%、ポリエステル繊維の混合比率が50〜10重量%であり、且つ該繊維構造物が少なくとも27.0の限界酸素指数を有することを特徴とする全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- 全芳香族ポリアミド繊維とポリエステル繊維とが混紡により混合されている請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- 全芳香族ポリアミド繊維とポリエステル繊維とが、芯部にポリエステル繊維が配置され、鞘部に全芳香族ポリアミド繊維が配置された芯鞘型複合糸として混合されている請求項1記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- ポリエステル繊維が対繊維機能付与剤を含有したポリエステル繊維である請求項1〜3のいずれか1項に記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- ポリエステル繊維が、5000m/分以上の紡糸速度で紡糸された高速紡糸糸条(USY)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- ポリエステル繊維が、ガラス転移温度(Tg)が70℃以下のポリエチレンテレフタレート系共重合ポリエステル繊維である請求項1〜5のいずれか1項に記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- 全芳香族ポリアミド繊維が、座屈部(キンクバンド)を有するパラ系アラミド繊維である請求項1〜6のいずれか1項に記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- 座屈部(キンクバンド)が物理的手段により形成された座屈部(キンクバンド)である請求項7記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
- 物理手段が押込み式捲縮付与手段である請求項8記載の全芳香族ポリアミド繊維構造物。
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