JP2004141534A - X線ct装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】ダイレクトドライブ方式のスキャナ回転機構を用いてスキャン時間を短縮しても、該スキャナ回転機構の発生する電磁音を抑制して静粛な環境下で撮影が可能なX線CT装置を提供する。
【解決手段】X線照射手段とX線検出手段を搭載して被検者の周りを回転させる回転部材を回転子とし、該回転子に複数の導体を設けてこれらの導体を接続し、前記回転子を挟み対峙する位置に配置した固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子と、前記固定子巻線に回転磁界を発生させるための交流電流を供給する回転磁界発生用電源と、前記発生した回転磁界により前記回転子を回転させるダイレクトドライブ方式によるスキャナ回転機構の固定子と回転子の電磁音を検出するための電磁音検出手段と、許容できる電磁音の音圧レベルを設定するための入力設定手段と、前記電磁音検出手段の出力信号にもとづいて前記入力設定手段で設定した音圧レベル以下で、前記回転子の回転数が増加するように前記回転磁界発生用電源から前記固定子に印加する電圧を制御する手段とを有する。
【選択図】 図2
【解決手段】X線照射手段とX線検出手段を搭載して被検者の周りを回転させる回転部材を回転子とし、該回転子に複数の導体を設けてこれらの導体を接続し、前記回転子を挟み対峙する位置に配置した固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子と、前記固定子巻線に回転磁界を発生させるための交流電流を供給する回転磁界発生用電源と、前記発生した回転磁界により前記回転子を回転させるダイレクトドライブ方式によるスキャナ回転機構の固定子と回転子の電磁音を検出するための電磁音検出手段と、許容できる電磁音の音圧レベルを設定するための入力設定手段と、前記電磁音検出手段の出力信号にもとづいて前記入力設定手段で設定した音圧レベル以下で、前記回転子の回転数が増加するように前記回転磁界発生用電源から前記固定子に印加する電圧を制御する手段とを有する。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線CT装置に係わり、特にダイレクトドライブ方式のスキャナ回転機構の電磁音を抑制して静粛な環境下で撮影を可能とするX線CT装置に関する。
【0002】
【従来技術】
X線CT装置は、X線管から扇状のX線ビームを被検体に照射し、該被検体を透過したX線を前記X線管と対向する位置に配置したX線検出器で検出し、この検出したデータを画像処理して前記被検体の断層像を得るものである。
【0003】
前記X線検出器は、円弧状に配列された数百にも及ぶ検出素子群で構成され、被検体を挟んでX線管に対向して配置されており、検出器素子の数に対応した数の放射状に分布するX線通路を形成し、X線管と検出器が一体となって被検体の周りを少なくとも180度以上回転させて一定の角度ごとに被検体の透過X線を検出する。
【0004】
このX線CT装置において、近年、“短時間で広い範囲のスキャンが可能”、“体軸方向に連続したデータが得られ、これによって三次元画像の生成が可能になる”などの特徴により、ヘリカルスキャンやスパイラルスキャンと呼ばれるら旋CTが急速に普及した。
【0005】
このら旋CTは、上記X線管とX線検出器を被検体の周りに連続して回転させると共に被検体を載置した天板を移動させることで広範囲に亘る多層の断層像データを計測して、このデータにより画像を再構成することによって三次元のCT画像と撮影にかかる時間を大幅に短縮することを可能としたものである。
【0006】
すなわち、X線CT装置は、通常は複数のユニットから構成され、X線管とX線検出器を被検体の周りに回転させて前記被検体を透過したX線データを計測するスキャナと、前記被検体を載置する天板を備えた被検体テーブルと、前記スキャナで計測したデータを画像処理して再構成画像を生成する画像処理装置と、この画像処理装置で再構成した画像を表示する画像表示装置と、各種の操作指令を入力する操作卓及びシステム全体を制御するシステムコントローラ等から構成されている。この中で、スキャナは、被検体にX線を照射するX線照射手段であるX線管と、このX線管から放射されたX線をファンビーム状にコリメートするコリメータと、X線管を冷却する冷却装置と、X線管に高電圧を印加するための高電圧発生装置と、被検体を透過したX線を検出する多チャンネルのX線検出器と、このX線検出器の微弱な電気的出力を増幅する増幅器と、これらを支持して中央に被検者を位置させるため円形の穴(開口部)を設けた回転部材と、この回転部材を回転自在に支持するフレームと、このフレームに固定され上記回転部材の回転動作をなさせる減速機とモータ、及び前記回転部材と減速機出力軸を連結するベルト(通常は歯付きベルトが用いられる)等から構成される。このような構成のスキャナにおいて、前記モータを回転させると、モータ出力軸の回転動力は減速機を介して減速され、ベルトを介して上記回転部材と連結され、X線管とX線検出器が被検者の周囲を回転して、所定角度毎のX線投影データを取得(撮影、またはスキャンと呼ぶ場合がある)するようになっている。X線管や高電圧発生ユニット等を搭載した回転部材は、カウンターウエイト搭載が可能であるため回転軸周りの質量バランスを得ることは容易であり、かつ高速始動の必要もなく、概ね一定の速度で回転すれば良いことから、モータはオープンループ制御による誘導モータを用いることが多い。このように、X線CT装置においては、ら旋CTの普及により診断技術は格段に進歩したが、さらに心臓等の動きのある臓器に対する撮影の要求も生じて来ている。この要求に応えるためには、X線管とX線検出器の回転速度を上げてスキャン時間を短縮する必要がある。すなわち、上記スキャナの回転部材の回転速度を上げなければならない。このスキャン時間は、心臓以外の臓器では1s/回転でも問題はないが、心臓等の動きのある臓器では、前記の1s/回転では不足であり、0.7s/回転から0.5s/回転へ、さらには0.3s/回転といった高速回転の短時間スキャンが求められる。
【0007】
しかし、上記のスキャナ回転駆動機構を用いて0.7s/回転以下の高い回転速度で回転させると、歯付きベルトによる風切り騒音が70dBを越える。X線CT装置は、静粛さが要求される病院内の検査室で使用されることから、上記騒音は被検者及び操作者にとっては耳障りなものとなり静粛な駆動方式が望まれる。この騒音問題を解決し、高速回転を図るには、減速機やベルトを介して回転部材を回転させるのではなく、前記回転部材そのものをモータの回転子とする、いわゆるダイレクトドライブ方式を利用する必要がある。
【0008】
このようなダイレクトドライブ方式として、[特許文献1]に開示されているものがある。これは、スキャナ回転部材を回転子とし、この回転子に回転子鉄心と複数の導体とを設けてこれらの導体を短絡環に接続し、該回転子を挟み対峙する位置に配置した少なくとも1組の固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子とを有し、前記固定子巻線に3相交流電流を流して回転磁界を発生させ、この回転磁界により前記回転子を回転させる構成である。前記回転子で発生する電磁力は、巻線の磁化電流、固定子と回転子とのギャップ、回転子表面の導体の種類などで決まる。
この構成によれば、減速機を使用せず、直接、X線管とX線検出器を搭載した回転部を回転することができるので、上記ベルト駆動方式よりも低騒音でかつ高速回転が可能となる。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−159487号公報。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ダイレクトドライブ方式における固定子と回転子の間で発生する電磁力は回転子表面で発生し、最終的に力、熱の他、音、振動の発生源となり、発生した熱は回転子、固定子の温度をあげる。また、回転子表面で発生する電磁力は、固定子の巻線を流れる磁化電流によって変化し、固定子と回転子の間で発生する電磁力を大きくするには、固定子の巻線に多くの磁化電流を流すことが必要となる。固定子に流す磁化電流は、固定子巻線に電圧を印加するインバータ回路の出力電圧を大きくする方法の他、固定子巻線のインピーダンスを小さくすることで、電流を増大させることができる。しかし、その反面、無負荷時の電流量が増大し、同時に回転子の定格回転速度での電流量が増加するため、効率が悪く、定格回転時に流れる電流を考慮した電流容量の大きいインバータ回路を必要とする。また、固定子の巻線を流れる磁化電流は、そのジュール熱によって、巻線と鉄心の温度をあげるため、加速が終了して一定速度で回転する運転状態に入っても、固定子、固定子巻線の温度がさらに上昇する状態が続く。また、スキャン撮影時の励磁周波数に到達する前に、固定子に全電圧を印加することで、起動直後に固定子巻線を流れる磁化電流を大きくし、大きい電磁力を得ることができるが、低い励磁周波数域での磁化電流の増加により、固定子と回転子が発生する電磁音が増加する。
【0011】
以上のようなことから、固定子巻線のインピーダンスを小さくすることで、固定子の巻線に多くの磁化電流を流して大きい電磁力を得ようとすると、加速時間が短縮する反面、固定子巻線の発熱や電磁音の増大を招き、不都合である。また、X線CT装置のスキャンは加速時間、一定回転する撮影時間、回転子を停止させるための減速時間、次の撮影開始までの休止時間からなり、休止時間では、回転中に発生した固定子巻線や回転子の熱を放熱し、温度を下げている。この固定子と回転子の温度上昇を放置して、温度が異常に高くなると、回転子で発生する推力(加速力)が減少して、一定時間内にスキャン速度に到達できなかったり、回転子の回転速度がスキャン速度に到達しないなどの不具合が予想され、優れた断層画像を得ることができないことが懸念される。以上のような課題に対し、回転子を加速する加速時間を長くとって、固定子に流れる磁化電流を小さくすることで、回転子の発熱と騒音を抑制する方法が考えられ。しかし、加速時間を長くとると、撮影開始が遅くなるため、患者スループットの低下をきたすのみならず、突発的にあるいは不規則に発生する症状や緊急を要する場合などへの迅速な対応にも問題が生じるので、長い加速時間を設定するには限度がある。
【0012】
以上のようなことから、加速時間を損なうことなく、回転子や固定子の温度や騒音を抑制して、回転子を加速させる方法が求められていた。
そこで、本発明の目的は、ダイレクトドライブ方式のスキャナ回転機構を用いてスキャン時間を短縮しても、該スキャナ回転機構の発生する電磁音を抑制して静粛な環境下で撮影が可能なX線CT装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、X線を被検者に照射するX線照射手段と、前記被検者を挟み前記X線照射手段と対向配置したX線検出手段と、前記被検者を配置する開口部を設け、少なくとも前記X線照射手段とX線検出手段を搭載して前記被検者の周りを回転させる回転部材と、この回転部材を回転子とし、該回転子に複数の導体を設けてこれらの導体を接続し、前記回転子を挟み対峙する位置に配置した固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子と、前記固定子巻線に回転磁界を発生させるための交流電流を供給する回転磁界発生用電源と、前記発生した回転磁界により前記回転子を回転させて前記回転部材を回転させる回転駆動手段と、前記回転部材及び回転駆動手段を支持するフレームとを有し、前記X線検出手段で検出した被検者の透過X線情報を処理して該被検者の断層画像を得るX線CT装置であって、前記固定子と回転子の電磁音を検出するための電磁音検出手段と、許容できる電磁音の音圧レベルを設定するための入力設定手段と、前記電磁音検出手段の出力信号にもとづいて前記入力設定手段で設定した音圧レベル以下で、前記回転子の回転数が増加するように前記回転磁界発生用電源から前記固定子に印加する電圧を制御する制御手段とを備えることによって達成される。
【0014】
このように構成することによって、スキャナ回転機構の回転子の回転数を加速する時、電磁音検出手段により固定子と回転子の電磁音の音圧が入力設定器で設定した音圧レベルを超えるような場合は、インバータ回路から固定子に印加する電圧の増加を一時停止し、一定電圧を保ったまま、固定子に印加する励磁周波数のみを増加させて加速を維持するように制御手段からからインバータ回路に制御指令を出力する。これによって、固定子と回転子の電磁音を一定値以下に保ちながら、最小限の加速時間で回転子をスキャン速度に到達させることができる。また、スキャン撮影中も加速時と同様に、スキャン速度を維持しながら、固定子の電圧を下げるように制御することにより、固定子、回転子で発生する電磁音を小さくすることできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図1〜図8を用いて詳細に説明する。
図1はX線CT装置のガントリの構成を示す図である。X線CT装置は、X線管50から扇状のX線ビーム51を開口部52内の天板53に載置された被検体54に照射し、該被検体53を透過したX線を前記X線管50と対向する位置に配置したX線検出器55で検出し、この検出したデータを画像処理して前記被検体の断層像を得るものである。
【0016】
前記X線検出器55は、円弧状に配列された数百にも及ぶ検出素子群で構成され、被検体54を挟んでX線管50に対向して配置されており、検出器素子の数に対応した数の放射状に分布するX線通路を形成し、前記X線管とX線検出器は回転板56に支持されて被検体の周りを少なくとも180度以上回転させて一定の角度ごとに被検体の透過X線を検出する。前記回転板56には、X線管50を冷却する冷却器57、後述するスキャナ回転機構の固定子巻線に三相回転磁界を発生させるための三相交流電圧を出力するインバータ回路58及びこのインバータ回路の出力電圧、該出力電圧の周波数を制御する制御回路59が搭載され、前記回転板56はフレーム60に回転可能に支持されている。
【0017】
図2は、前記回転板56そのものをモータの回転子とするダイレクトドライブ方式によるスキャナ回転駆動機構の電磁音を抑制する本発明の第一の実施例を示す図である。図に示すように、回転子1と、この回転子を回転させる回転磁界発生するための三相交流電流を流す固定子巻線(図示省略)が巻かれた四組の固定子2,3,4,5と、前記固定子巻線には前記回転磁界発生用電源装置としてのインバータ回路8が接続され、このインバータ回路から前記固定子巻線へ任意周波数の三相交流電流が供給される構成をとっている。
【0018】
前記固定子2,3,4,5及び回転子1には、該固定子、回転子が発生する電磁音を検出する電磁音センサ6が取り付けられており、このセンサで検出した電磁音信号7を制御装置11に入力する。インバータ回路8の出力交流電圧の周波数の周期は、周波数信号10として制御装置11に入力する。また、設定入力器13は、固定子、回転子が発生する電磁音を許容できる音圧レベル12を設定し、設定信号12として制御装置11へ出力する。制御装置11では、電磁音信号7、設定信号12に基づき、回転子の回転数を加速中に電磁音信号7が設定信号12を超えないように、固定子巻線(図示省略)に印加する電圧を一定に保つ制御指令9を出力する。以上のような構成をもとに、図3,4,5,6,7,8を用いて、本発明の動作について説明する。
【0019】
図3はX線CT装置のスキャン時の運転パターンと固定子に印加する駆動電圧を示したものである。固定子に電圧Vを印加すると(時間t1)、回転子が起動し、駆動電圧の増加と共に回転速度が増加する。そして、電圧Vが電圧Vmに到達後、回転子はスキャン速度Pmに到達する(時間t2)。スキャン中はスキャン速度Pm を維持し、X線を患者に照射して撮影する。撮影終了後(時間t3)、電圧Vmを降下させて回転子の回転速度を落とし、停止させる(時間t4)。そして、一定の休止時間をおいた後(時間t1’)、再び固定子に電圧を印加して、スキャンを行う。以下、これを繰り返す。
【0020】
次に、図3で示した固定子に印加する駆動電圧について、詳細に説明する。図4は、回転子の回転速度を加速中、電磁音センサ6の電磁音信号7により、固定子、回転子の電磁音が設定入力器13で設定した音圧レベルを超えないように、制御装置11からの制御指令により駆動電圧を制御した例を示す。
【0021】
図4に示すように、スキャン開始(時間ta)によりインバータ回路8から出力される三相交流電圧を固定子巻線に印加すると、時間の経過にともなって前記電圧と励磁周波数が漸次増大してスキャナ回転子の回転速度は上がる。この時、磁化電流も増大するので、固定子、回転子から発生する電磁音が生じ、磁化電流の増加に応じて電磁音が増加する。電磁音が加速時の許容電磁音レベルWmを超えると(時間tb)、固定子に印加する電圧の増加を停止し、この時の電圧値に保持する。電圧は一定電圧を保持するが、電圧の励磁周波数は引き続き、増加させる。これは、電圧の増加停止と一緒に励磁周波数の増加を停止すると、電磁音が減少しないからである。そこで、電圧を一定に保持したまま、励磁周波数を増加させることで、巻線の交流インピーダンス成分が増加し、巻線を流れる磁化電流が減少するため、電磁音を減少させることができる。この電磁音の減少分をΔWとする。
【0022】
また、回転子の回転数は、固定子に印加する電圧を一定に保持しておいても、励磁周波数の増加により、引き続き、回転数の増加が続く。したがって、電磁音を減少させるために、一時的に電圧を保持しても、励磁周波数が増加するので、回転子の加速が停滞することはない。その後、電磁音が小さくなり、(Wm−ΔW)以下となった時、もう一度、電圧の増加を開始する(時間tc)。固定子への電圧増加を再開始すると、巻線の磁化電流が増大するので、一旦小さくなった電磁音が、再び増加する。その後、再び、電磁音がWmを超えた場合(時間td)、固定子に印加する電圧増加を停止し、一定電圧を保持したまま、励磁周波数を増加させて、電磁音を減少させる。この間も電圧の励磁周波数は増加するので、回転子の回転数は引き続き増加する。そして、電磁音が減少し、(Wm−ΔW)以下になった時、固定子に印加する電圧をもう一度、増加を開始する。このような動作を繰り返すことで、固定子と回転子で発生する電磁音を抑えながら、固定子に印加する電圧と周波数をスキャン速度Pmに必要な電圧Vm、周波数fmまで増加させ、回転子の回転数をスキャン速度Pmに到達させる。
【0023】
以上これまでは、回転子が起動してスキャン撮影に入る時の固定子、回転子で発生する電磁音を抑えながら加速する方法について説明してきたが、スキャン撮影中に固定子、回転子で発生する電磁音を小さくして、スキャン速度を維持する場合についても応用することができる。以下、これを説明する。
【0024】
図5に示すように、回転子がスキャン速度に到達した後、スキャン速度を維持するために、固定子には電圧Vmと励磁周波数fmが印加されている。このことから、スキャン撮影中も巻線に磁化電流が流れており、固定子、回転子から電磁音が発生する。この電磁音は以下に示す方法により、さらに小さくすることができる。これまで説明してきたように、電磁音がWmを超えた時、固定子に印加する電圧を保持し、励磁周波数のみを増加することで、電磁音を減少させることができたが、回転子がスキャン速度Pmに到達している場合、これまでのやり方とは逆に、励磁周波数fmは一定に保持し、固定子に印加する電圧を下げることで、回転数Pmを維持しながら電磁音を小さくすることができる。回転子の加速中、電圧を一定に保持したまま、励磁周波数を変えると、電磁音が減少するが、回転子の回転数が変化するため、スキャン撮影中など、一定の速度を維持する必要がある場合には、不都合である。そこで、スキャン撮影中の場合、励磁周波数を一定とし、固定子に印加する電圧を下げることで、磁化電流を減少させて、電磁音の減少を図る。ここで、励磁周波数は基本的に一定とするが、後述するように、固定子に印加する電圧を下げた場合でも、回転子の回転数がスキャン速度で一定に保持するように、励磁周波数を補正する。
【0025】
例えば、図5に示すように、回転子の回転数は加速が終了し、スキャン速度Pmに到達しているが、電磁音はWnよりも大きい。そこで、励磁周波数を一定に保持し、固定子に印加する電圧を下げる(時間te)。これによって、巻線を流れる磁化電流が減少し、電磁音が減少する。その後、電磁音がWn以下になるまで、固定子に印加する電圧を下げる。この間、固定子の電圧の減少により、回転子で発生する電磁力が減少するため、回転子の回転数がスキャン速度Pmよりも低下する(時間tf)。そこで、低下した回転数分に応じて、励磁周波数を増加させる(時間tg)。これは、励磁周波数が増加すると、すべり量が大きくなることで、回転子の回転数が増加するからである。その後、さらに、電磁音がWn以下になるまで、固定子の電圧を下げ、電磁音がWnになった時点で、固定子の電圧を保持する。この間、励磁周波数は、回転速度がスキャン速度を維持できるように制御する。
【0026】
以上、回転子、固定子で発生する電磁音を抑えながら、回転子を加速し、スキャン撮影中の電磁音を小さくすることを説明してきた。また、これまでの説明では、加速中の電磁音のレベルと、スキャン撮影中の電磁音のレベルについて、それぞれ個別に説明したが、常に一定の固定した値として扱う必要はない。以下、これについて説明する。
【0027】
図6は、加速、スキャン撮影の電磁音について示したものである。回転子を加速する時、許容できる電磁音のレベルをW1に設定すると、回転子はこの電磁音W1以下で加速する。また、スキャン撮影中では、加速時と同じ電磁音W1でも撮影に支障はないが、加速時よりも低いW2に設定することで、加速中に比べ、静かな環境下で撮影を行うことができる。一方、スキャン撮影中だけでなく、回転子を加速する場合も含めて、静音化を図る場合、加速中の電磁音のレベルをスキャン撮影中の電磁音と同じW2にすることによって、電磁音W2のレベル以下で、回転子を加速し、スキャン撮影中も含めて、常に静かな環境下で撮影することができる。逆に、常に静かな環境下ではなく、スキャン速度に到達する加速時間や減速時間を短くして、素早い撮影開始を優先したい場合、許容できる電磁音レベルをW1よりも高いW3に設定し、一方、スキャン撮影中はW2に設定することで、素早く加速した後、静かな環境下で撮影をすることができる。このように許容する電磁音を一定の値に設定しておくよりも、加速、スキャン撮影、減速など個別に許容する電磁音のレベルを設定した方が、個々の撮影のニーズに合わせた細かい対応をとることができる。したがって、許容する電磁音のレベルを設定入力するための入力設定器13を備える。
【0028】
以下、図7,8を用いて加速、スキャン撮影、減速など各運転状態に応じて、電磁音を調節する方法について詳細に説明する。回転子を加速する時の許容できる設定電磁音レベルをW1、スキャン撮影中の許容設定電磁音レベルをW2とし、これらの設定値は、設定入力器13で任意に入力し、設定信号12として、比較器30に入力する。比較器30は固定子、回転子で発生している電磁音7(W)と設定信号12(W1)とを比較し、W1<Wの場合、比較器30はオンを出力する。したがって、回転子を起動時、電磁音7(W)はまだ小さいので、W1>Wであり、比較器30はオフ信号を出力する。代入器31は電圧(インバータ回路8の出力電圧)の増加分ΔVの値を代入し、前記の比較器30の出力がオフの場合はΔV=mを代入し、比較器30の出力がオンの場合はΔV=0を代入する。そして、代入器31で代入されたΔVは、演算器32により、演算値保持器33の(現在値として保持している)電圧値V0と加算し、電圧(V0+ΔV)=V1値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値V1=(V+ΔV)は、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をV0からV1へ書き換える。一方、演算器35は、回転子の回転数を示す速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算し、差分ΔPは代入器36に入力する。代入器36は周波数の増加分Δf値を代入し、差分ΔPに応じた値が入る。この時、回転子は起動直後であり、回転子の速度はスキャン速度に到達していないので、差分ΔP>0であり、Δf=nが代入される。その後、代入器36で代入したΔfは、演算器37により、演算値保持器38の(現在値として保持している)周波数値f0と加算し、周波数(f0+Δf)値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した周波数値(f0+Δf)=f1は、演算値保持器38へ戻り、演算値保持器38の値をf0からf1へ書き換える。そして、制御指令出力器34から固定子に印加する電圧V1=(V+ΔV)、励磁周波数f1=(f0+Δf)の制御指令を出力する。この結果、固定子巻線には、電圧V1、周波数f1の三相交流電圧が印加されることになる。その後、もう一度、比較器30にもどり、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W1)が比較される。前記と同様に、まだ、電磁音7(W)は小さくW1>Wとすると、比較器30はオフを出力する。そして、代入器31ではΔV=mを代入し、演算器32により、演算値保持器33の電圧値V1と加算し、電圧(V1+ΔV)あるいは(V0+ΔV×2)値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算値保持器33の値はV1からV2に書き換わる。同様に励磁周波数fについても、演算器35により、速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算する。この場合も同様に、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nを代入する。そして、演算器37により、演算値保持器38の周波数値f1と加算し、周波数(f1+Δf)あるいは(f0+Δf×2)値が制御指令出力器34へ出力する。
【0029】
また、演算値保持器38の値はf1からf2に書き換わる。この結果、固定子巻線には、電圧V2、励磁周波数f2の三相交流電圧が印加され、前回よりも、さらにΔV=m、周波数Δf=n分だけ増加した電圧と周波数が印加される。このような一連の演算を繰り返しながら、固定子に印加する電圧、周波数はそれぞれ、ΔV=m、Δf=nずつ増加して行く。ここで、固定子に印加する電圧、周波数を増加して行く途中で、固定子、回転子の電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えた場合について考える。
【0030】
電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えると、比較器30の出力はオフからオンに変わる。代入器31ではΔV=0が代入され、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vx−1と加算し、電圧Vx=(Vx−1+ΔV)となるが、ΔV=0であるため、出力する電圧Vxは、演算前の電圧Vx−1と同じ値となる。したがって、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えると、電圧値が増加しなくなり、電圧が保持される。一方、励磁周波数について、演算器35により、速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算する。この場合も、回転子はまだスキャン速度Pmに到達していないので、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fx−1と加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数Fx=(Fx−1+Δf)を出力する。このように、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えると、電圧値は保持されるが、周波数はこのまま、増加を続けることがわかる。その後、再び、比較器30で電磁音7(W)が設定信号12(W1)が比較され、W1<Wの場合、代入器31では引き続き、ΔV=0を代入する。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vxと加算し、電圧Vx1=(Vx+ΔV)となるが、ΔV=0であるため、出力する電圧Vx1は、演算前の電圧Vxと同じ値となる。したがって、まだ、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えていれば、引き続き、電圧が保持されることになる。一方、励磁周波数は、回転子はまだスキャン速度に到達していないので、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fxと加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fx1=(fx−1+Δf)を出力する。このように、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えている間、電圧値は保持され、周波数はこのまま、増加を続ける。そして、電圧を一定に保持したまま、励磁周波数を増加するので、巻線の交流インピーダンス成分の増加により、巻線を流れる磁化電流が減少し、電磁音が減少することになる。また、回転子の回転速度は、固定子に印加する電圧を一定に保持しておいても、励磁周波数は増加するので、回転数の加速は停滞せず、増加が続く。そして、しばらくした後、電磁音が減少して、W1>Wとなると、比較器30はオンからオフに変わる。これにより、代入器31ではΔV=mが再び代入され、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vy−1と加算し、電圧値Vy=(Vy−1+ΔV)が動作指令出力器34へ出力する。ΔV=mにより、出力する電圧値Vyは演算前の電圧Vyより大きい値となる。したがって、電磁音7(W)が減少した時、保持されていた電圧が自動的に増加に転じることがわかる。一方、励磁周波数について、演算器35により、速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算する。この場合、回転子はまだスキャン速度Pmに到達していないため、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fy−1と加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fy=(fy−1+Δf)を出力する。このように、電磁音が設定信号42以下に減少すると、電圧値は増加を開始し、周波数は増加をし続ける。
【0031】
以上のことから、電磁音が増加して、W1<Wとなると、電圧に加算するΔV=0となるため、電圧が保持され、電磁音7(W)が減少して、W1>Wとなると、電圧に加算するΔV=mとなり、電圧が増加する。また、周波数は、回転子の回転数15がスキャン速度14するまでの間はΔf=nであり、加速する途中で電磁音が増加して、W1<Wとなっても、周波数の増加が停止することはない。以上、このような動作を繰り返すことで、固定子と回転子で発生する電磁音7(W)を抑えながら、固定子に印加する電圧と周波数をスキャン速度Pmに必要な電圧Vm、周波数fmまで増加させ、回転子の回転数をスキャン速度に到達できる。
【0032】
以上これまでは、回転子が起動してスキャン撮影に入る時の固定子、回転子で発生する電磁音7(W)を抑えながら加速する場合について説明してきたが、スキャン撮影中、スキャン速度Pmを維持しながら、固定子、回転子で発生する電磁音7(W)を小さくすることについて、図8を用いて説明する。
【0033】
スキャン撮影中の電磁音レベルをW2としたことから、速度信号15により、回転子の回転数がスキャン速度14に到達すると、設定入力器13の設定信号12はW1からW2に変わる。
【0034】
比較器39により、速度信号15とスキャン速度14が比較され、速度信号15がスキャン速度14に到達するとオンを出力し、代入器31に値を入力する。この比較器39について、出力がオフの場合、代入器31で代入される値は、ΔV=0を代入し、比較器の出力がオンの場合、ΔV=−mを代入する。したがって、回転子がスキャン速度14に到達すると、回転子を加速中の設定電磁音12(W1)よりも許容レベルが変わり、許容値が小さくなっているので、W2<Wとなり、比較器30は、オンを出力するので、ΔV=0が代入される。このままでは、固定子に印加する電圧は減少せず、電磁音7(W)が小さくならず、不都合である。そこで、スキャン速度Pmに到達していることを利用して、比較器39の出力により、ΔV=−mを代入する。代入器31で代入されたΔVは、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vz−1と加算し、電圧(Vz−1+ΔV)=Vz値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値Vzは、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVz−1からVzへ書き換える。電圧Vzは、演算前のVz−1よりも、ΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が減少することになる。一方、励磁周波数は、回転子がスキャン速度14に到達しているので、差分ΔP=0であり、差分が零であることから、代入器35ではΔf=0が代入さる。その後、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fz−1と加算し、周波数fz1=(fz−1+Δf)を出力する。しかし、Δf=0であるから、出力する周波数fzは、演算前と同じ周波数fz−1と同じになる。次に、再び、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)を比較し、W2<Wによりオンを検出するので、ΔV=0が代入されるが、回転子がスキャン速度Pmを維持しているので、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入される。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vzと加算し、電圧(Vz+ΔV)=Vz1値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値Vz1は、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVzからVz1へ書き換える。電圧Vz1は、演算前のVzよりも、さらにΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が徐々に減少する。このような一連の動作を繰り返しながら、励磁周波数を保持したまま、電圧を下げながら、磁化電流を減少させて、電磁音7(W)を小さくする。
【0035】
ここで、励磁周波数は基本的に一定とするが、固定子に印加する電圧を大きく下げた場合、回転子の速度信号15がスキャン速度14よりも低くなる場合があり、励磁周波数を補正することが必要となる。例えば、スキャン撮影中の電磁音7(W)を減少させるために、固定子に印加する電圧を下げている途中、回転子の速度信号15がスキャン速度14よりも低くなった場合について説明する。ただし、回転子の回転数の低下は、比較器39で速度信号15がスキャン速度14に到達していると検出する範囲内の場合とする。これまで前述したように、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入される。また、回転子の速度は低下しているが、まだ、スキャン速度Pmの範囲にあるので、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入される。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vw−1と加算し、電圧(Vw−1+ΔV)=Vw値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値Vwは、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVw−1からVwへ書き換える。電圧Vwは、演算前のVw−1よりも、さらにΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が減少するので、電磁音7(W)が徐々に小さくなる。ここで、このままでは、回転子の速度信号15が低下したままになり、これを放置することは不都合である。そこで、回転子の速度信号15がスキャン速度14から低下し始めた時、演算器35により差分ΔP>0となるので、これを代入器36によりΔf=nを代入し、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fw−1と加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fw=(fw−1+Δf)を出力する。 この結果、励磁周波数が増加することによって、すべり量が大きくなるため、回転子の速度信号15が増加し、回転数の低下を補償することができる。そして、再び、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入される。ここで、回転子の速度信号15が、まだ、スキャン速度Pmの範囲内にあれば、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入される。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vwと加算し、電圧(Vw+ΔV)=Vw1値が制御指令出力器34へ出力する。
【0036】
また、演算した電圧値Vw1は、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVwからVw1へ書き換える。電圧Vw1は、演算前のVwよりも、さらにΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が減少するので、電磁音7(W)がさらに小さくなる。この時、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmに復帰していれば、演算器35により差分ΔP=0となり、代入器36におけるΔfは0であるから、出力する周波数fw1は、演算前と同じ周波数fwと同じになる。そうではなく、まだ、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmよりも低いならば、演算器35により差分ΔP>0となり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fwと加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fw1=(fw+Δf)を出力することで、さらにすべり量を大きくして、回転子の回転数を増加させることで、回転数の低下を防ぐ。
【0037】
仮に、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmより、一定の範囲を超えて低下してしまった場合、このまま、電圧を下げると、スキャン速度Pmを維持できなくなり、撮影に支障が生じる。この場合、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入され、比較器39の出力は、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmから一定範囲外になるので、ΔV=0が代入される。この結果、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vwと加算し、電圧(Vw+ΔV)=Vw1値が制御指令出力器34へ出力するが、電圧Vw1は、ΔV=0であることから、演算前のVwと同じであり、固定子に印加する電圧が保持される。したがって、これまで、電磁音を下げるために固定子に印加する電圧を下げてきたが、スキャン速度が維持できなくなる恐れがあるなど、撮影に支障が出るような場合、自動的に電圧の減少が停止され、未然に撮影への影響を防止することができる。また、回転数の低下は、演算器35により差分ΔP>0となるので、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fwと加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fw1=(fw+Δf)を出力することで、さらにすべり量を大きくして、回転子の回転数を増加させることで、回転数の低下を防ぐことができる。その後、回転子の速度が再び、スキャン速度に許容範囲内に入ると、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入される。そして、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入され、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vw1と加算し、電圧(Vw1+ΔV)=Vw2値が制御指令出力器34へ出力され、固定子に印加する電圧が減少し、再び、電磁音の減少を開始することができる。
【0038】
以上のように、スキャン撮影中の電磁音についても、許容する電磁音のレベルよりも高い場合、固定子に印加する電圧を下げることによって、固定子、回転子で発生する電磁音を下げることができる。また、固定子に印加する電圧を下げたことによって、スキャン速度が低下しても、励磁周波数を調整することによって、スキャン速度を維持できる。
【0039】
以上のことは、図5に示すように、固定子に印加する電圧を変更しないで、一定の電磁音W3以下で運転した場合と、本発明の構成により、加速時は電磁音W3以下で加速し、スキャン撮影時は、電磁音W1以下で運転した場合、及び、加速時は電磁音W2以下で加速し、スキャン撮影時は、電磁音W1以下で運転した場合の固定子巻線に流れる電流、発生する熱、電磁音をそれぞれ比較することで説明することができる。また、固定子に印加する電圧を変更しないで、一定の電磁音W3以下で運転した場合、加速時は電磁音W3以下で加速し、スキャン撮影時は、電磁音W2以下で運転した場合よりも、スキャン撮影中に流れる電流量が少なく、また、これに伴う発熱も少ない。また、加速時は電磁音W2以下とすると、加速時間が長くなるが、その代わり、加速中やスキャン撮影中に流れる電流量や発熱をさらに減らすことができ、非常に静かな環境を提供することができる。
【0040】
以上のことから、回転子が起動してスキャン撮影に入る時の固定子、回転子で発生する電磁音が一定値を超えた時、固定子への電圧の増加を停止して、励磁周波数のみを増加して電磁音を下げ、電磁音が一定値以下になった時、固定子への電圧を増加を開始することで、電磁音を一定値以下に抑えながら加速し、かつ、スキャン撮影中も同様に、スキャン速度を維持しながら、固定子の電圧を下げて、固定子、回転子で発生する電磁音を小さくできる。なお。電磁音センサは、音圧を電圧に変換する手段として説明したが、固定子、回転子から発生する振動、電磁波を電圧に変換する手段を用いてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、スキャンを高速化するためにダイレクトドライブ方式のスキャナ回転駆動機構を用いても、該スキャナ回転機構の発生する電磁音が抑制されて静粛な環境下でのX線CT撮影が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線CT装置のガントリの構成を示す図。
【図2】ダイレクトドライブ方式によるスキャナ回転駆動機構の電磁音を抑制する本発明の第一の実施例を示す図。
【図3】X線CT装置のスキャン時の運転パターンと固定子に印加する駆動電圧の関係を示す図。
【図4】本発明の第一の実施例における加速中の固定子へ印加する駆動電圧を示す図。
【図5】本発明の第一の実施例におけるスキャン撮影中の固定子へ印加する駆動電圧を示す図。
【図6】加速、スキャン撮影時の電磁音についての本発明と従来との比較を示す図。
【図7】本発明の第一の実施例による加速中の固定子に印加する電圧、励磁周波数の演算を行うフローチャート図。
【図8】本発明の第一の実施例によるスキャン撮影中の固定子に印加する電圧、励磁周波数の演算を行うフローチャート図。
【符号の説明】
1 回転子、2,3,4,5 固定子、6 電磁音センサ、7 電磁音信号、8 インバータ回路、9 制御指令、10 周波数信号、11 制御装置、12 許容電磁音設定信号、13 電磁音入力設定器、50 X線管、55 X線検出器、56 回転板、58 インバータ回路、59 制御回路
【発明の属する技術分野】
本発明は、X線CT装置に係わり、特にダイレクトドライブ方式のスキャナ回転機構の電磁音を抑制して静粛な環境下で撮影を可能とするX線CT装置に関する。
【0002】
【従来技術】
X線CT装置は、X線管から扇状のX線ビームを被検体に照射し、該被検体を透過したX線を前記X線管と対向する位置に配置したX線検出器で検出し、この検出したデータを画像処理して前記被検体の断層像を得るものである。
【0003】
前記X線検出器は、円弧状に配列された数百にも及ぶ検出素子群で構成され、被検体を挟んでX線管に対向して配置されており、検出器素子の数に対応した数の放射状に分布するX線通路を形成し、X線管と検出器が一体となって被検体の周りを少なくとも180度以上回転させて一定の角度ごとに被検体の透過X線を検出する。
【0004】
このX線CT装置において、近年、“短時間で広い範囲のスキャンが可能”、“体軸方向に連続したデータが得られ、これによって三次元画像の生成が可能になる”などの特徴により、ヘリカルスキャンやスパイラルスキャンと呼ばれるら旋CTが急速に普及した。
【0005】
このら旋CTは、上記X線管とX線検出器を被検体の周りに連続して回転させると共に被検体を載置した天板を移動させることで広範囲に亘る多層の断層像データを計測して、このデータにより画像を再構成することによって三次元のCT画像と撮影にかかる時間を大幅に短縮することを可能としたものである。
【0006】
すなわち、X線CT装置は、通常は複数のユニットから構成され、X線管とX線検出器を被検体の周りに回転させて前記被検体を透過したX線データを計測するスキャナと、前記被検体を載置する天板を備えた被検体テーブルと、前記スキャナで計測したデータを画像処理して再構成画像を生成する画像処理装置と、この画像処理装置で再構成した画像を表示する画像表示装置と、各種の操作指令を入力する操作卓及びシステム全体を制御するシステムコントローラ等から構成されている。この中で、スキャナは、被検体にX線を照射するX線照射手段であるX線管と、このX線管から放射されたX線をファンビーム状にコリメートするコリメータと、X線管を冷却する冷却装置と、X線管に高電圧を印加するための高電圧発生装置と、被検体を透過したX線を検出する多チャンネルのX線検出器と、このX線検出器の微弱な電気的出力を増幅する増幅器と、これらを支持して中央に被検者を位置させるため円形の穴(開口部)を設けた回転部材と、この回転部材を回転自在に支持するフレームと、このフレームに固定され上記回転部材の回転動作をなさせる減速機とモータ、及び前記回転部材と減速機出力軸を連結するベルト(通常は歯付きベルトが用いられる)等から構成される。このような構成のスキャナにおいて、前記モータを回転させると、モータ出力軸の回転動力は減速機を介して減速され、ベルトを介して上記回転部材と連結され、X線管とX線検出器が被検者の周囲を回転して、所定角度毎のX線投影データを取得(撮影、またはスキャンと呼ぶ場合がある)するようになっている。X線管や高電圧発生ユニット等を搭載した回転部材は、カウンターウエイト搭載が可能であるため回転軸周りの質量バランスを得ることは容易であり、かつ高速始動の必要もなく、概ね一定の速度で回転すれば良いことから、モータはオープンループ制御による誘導モータを用いることが多い。このように、X線CT装置においては、ら旋CTの普及により診断技術は格段に進歩したが、さらに心臓等の動きのある臓器に対する撮影の要求も生じて来ている。この要求に応えるためには、X線管とX線検出器の回転速度を上げてスキャン時間を短縮する必要がある。すなわち、上記スキャナの回転部材の回転速度を上げなければならない。このスキャン時間は、心臓以外の臓器では1s/回転でも問題はないが、心臓等の動きのある臓器では、前記の1s/回転では不足であり、0.7s/回転から0.5s/回転へ、さらには0.3s/回転といった高速回転の短時間スキャンが求められる。
【0007】
しかし、上記のスキャナ回転駆動機構を用いて0.7s/回転以下の高い回転速度で回転させると、歯付きベルトによる風切り騒音が70dBを越える。X線CT装置は、静粛さが要求される病院内の検査室で使用されることから、上記騒音は被検者及び操作者にとっては耳障りなものとなり静粛な駆動方式が望まれる。この騒音問題を解決し、高速回転を図るには、減速機やベルトを介して回転部材を回転させるのではなく、前記回転部材そのものをモータの回転子とする、いわゆるダイレクトドライブ方式を利用する必要がある。
【0008】
このようなダイレクトドライブ方式として、[特許文献1]に開示されているものがある。これは、スキャナ回転部材を回転子とし、この回転子に回転子鉄心と複数の導体とを設けてこれらの導体を短絡環に接続し、該回転子を挟み対峙する位置に配置した少なくとも1組の固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子とを有し、前記固定子巻線に3相交流電流を流して回転磁界を発生させ、この回転磁界により前記回転子を回転させる構成である。前記回転子で発生する電磁力は、巻線の磁化電流、固定子と回転子とのギャップ、回転子表面の導体の種類などで決まる。
この構成によれば、減速機を使用せず、直接、X線管とX線検出器を搭載した回転部を回転することができるので、上記ベルト駆動方式よりも低騒音でかつ高速回転が可能となる。
【0009】
【特許文献1】
特開2002−159487号公報。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ダイレクトドライブ方式における固定子と回転子の間で発生する電磁力は回転子表面で発生し、最終的に力、熱の他、音、振動の発生源となり、発生した熱は回転子、固定子の温度をあげる。また、回転子表面で発生する電磁力は、固定子の巻線を流れる磁化電流によって変化し、固定子と回転子の間で発生する電磁力を大きくするには、固定子の巻線に多くの磁化電流を流すことが必要となる。固定子に流す磁化電流は、固定子巻線に電圧を印加するインバータ回路の出力電圧を大きくする方法の他、固定子巻線のインピーダンスを小さくすることで、電流を増大させることができる。しかし、その反面、無負荷時の電流量が増大し、同時に回転子の定格回転速度での電流量が増加するため、効率が悪く、定格回転時に流れる電流を考慮した電流容量の大きいインバータ回路を必要とする。また、固定子の巻線を流れる磁化電流は、そのジュール熱によって、巻線と鉄心の温度をあげるため、加速が終了して一定速度で回転する運転状態に入っても、固定子、固定子巻線の温度がさらに上昇する状態が続く。また、スキャン撮影時の励磁周波数に到達する前に、固定子に全電圧を印加することで、起動直後に固定子巻線を流れる磁化電流を大きくし、大きい電磁力を得ることができるが、低い励磁周波数域での磁化電流の増加により、固定子と回転子が発生する電磁音が増加する。
【0011】
以上のようなことから、固定子巻線のインピーダンスを小さくすることで、固定子の巻線に多くの磁化電流を流して大きい電磁力を得ようとすると、加速時間が短縮する反面、固定子巻線の発熱や電磁音の増大を招き、不都合である。また、X線CT装置のスキャンは加速時間、一定回転する撮影時間、回転子を停止させるための減速時間、次の撮影開始までの休止時間からなり、休止時間では、回転中に発生した固定子巻線や回転子の熱を放熱し、温度を下げている。この固定子と回転子の温度上昇を放置して、温度が異常に高くなると、回転子で発生する推力(加速力)が減少して、一定時間内にスキャン速度に到達できなかったり、回転子の回転速度がスキャン速度に到達しないなどの不具合が予想され、優れた断層画像を得ることができないことが懸念される。以上のような課題に対し、回転子を加速する加速時間を長くとって、固定子に流れる磁化電流を小さくすることで、回転子の発熱と騒音を抑制する方法が考えられ。しかし、加速時間を長くとると、撮影開始が遅くなるため、患者スループットの低下をきたすのみならず、突発的にあるいは不規則に発生する症状や緊急を要する場合などへの迅速な対応にも問題が生じるので、長い加速時間を設定するには限度がある。
【0012】
以上のようなことから、加速時間を損なうことなく、回転子や固定子の温度や騒音を抑制して、回転子を加速させる方法が求められていた。
そこで、本発明の目的は、ダイレクトドライブ方式のスキャナ回転機構を用いてスキャン時間を短縮しても、該スキャナ回転機構の発生する電磁音を抑制して静粛な環境下で撮影が可能なX線CT装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、X線を被検者に照射するX線照射手段と、前記被検者を挟み前記X線照射手段と対向配置したX線検出手段と、前記被検者を配置する開口部を設け、少なくとも前記X線照射手段とX線検出手段を搭載して前記被検者の周りを回転させる回転部材と、この回転部材を回転子とし、該回転子に複数の導体を設けてこれらの導体を接続し、前記回転子を挟み対峙する位置に配置した固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子と、前記固定子巻線に回転磁界を発生させるための交流電流を供給する回転磁界発生用電源と、前記発生した回転磁界により前記回転子を回転させて前記回転部材を回転させる回転駆動手段と、前記回転部材及び回転駆動手段を支持するフレームとを有し、前記X線検出手段で検出した被検者の透過X線情報を処理して該被検者の断層画像を得るX線CT装置であって、前記固定子と回転子の電磁音を検出するための電磁音検出手段と、許容できる電磁音の音圧レベルを設定するための入力設定手段と、前記電磁音検出手段の出力信号にもとづいて前記入力設定手段で設定した音圧レベル以下で、前記回転子の回転数が増加するように前記回転磁界発生用電源から前記固定子に印加する電圧を制御する制御手段とを備えることによって達成される。
【0014】
このように構成することによって、スキャナ回転機構の回転子の回転数を加速する時、電磁音検出手段により固定子と回転子の電磁音の音圧が入力設定器で設定した音圧レベルを超えるような場合は、インバータ回路から固定子に印加する電圧の増加を一時停止し、一定電圧を保ったまま、固定子に印加する励磁周波数のみを増加させて加速を維持するように制御手段からからインバータ回路に制御指令を出力する。これによって、固定子と回転子の電磁音を一定値以下に保ちながら、最小限の加速時間で回転子をスキャン速度に到達させることができる。また、スキャン撮影中も加速時と同様に、スキャン速度を維持しながら、固定子の電圧を下げるように制御することにより、固定子、回転子で発生する電磁音を小さくすることできる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について図1〜図8を用いて詳細に説明する。
図1はX線CT装置のガントリの構成を示す図である。X線CT装置は、X線管50から扇状のX線ビーム51を開口部52内の天板53に載置された被検体54に照射し、該被検体53を透過したX線を前記X線管50と対向する位置に配置したX線検出器55で検出し、この検出したデータを画像処理して前記被検体の断層像を得るものである。
【0016】
前記X線検出器55は、円弧状に配列された数百にも及ぶ検出素子群で構成され、被検体54を挟んでX線管50に対向して配置されており、検出器素子の数に対応した数の放射状に分布するX線通路を形成し、前記X線管とX線検出器は回転板56に支持されて被検体の周りを少なくとも180度以上回転させて一定の角度ごとに被検体の透過X線を検出する。前記回転板56には、X線管50を冷却する冷却器57、後述するスキャナ回転機構の固定子巻線に三相回転磁界を発生させるための三相交流電圧を出力するインバータ回路58及びこのインバータ回路の出力電圧、該出力電圧の周波数を制御する制御回路59が搭載され、前記回転板56はフレーム60に回転可能に支持されている。
【0017】
図2は、前記回転板56そのものをモータの回転子とするダイレクトドライブ方式によるスキャナ回転駆動機構の電磁音を抑制する本発明の第一の実施例を示す図である。図に示すように、回転子1と、この回転子を回転させる回転磁界発生するための三相交流電流を流す固定子巻線(図示省略)が巻かれた四組の固定子2,3,4,5と、前記固定子巻線には前記回転磁界発生用電源装置としてのインバータ回路8が接続され、このインバータ回路から前記固定子巻線へ任意周波数の三相交流電流が供給される構成をとっている。
【0018】
前記固定子2,3,4,5及び回転子1には、該固定子、回転子が発生する電磁音を検出する電磁音センサ6が取り付けられており、このセンサで検出した電磁音信号7を制御装置11に入力する。インバータ回路8の出力交流電圧の周波数の周期は、周波数信号10として制御装置11に入力する。また、設定入力器13は、固定子、回転子が発生する電磁音を許容できる音圧レベル12を設定し、設定信号12として制御装置11へ出力する。制御装置11では、電磁音信号7、設定信号12に基づき、回転子の回転数を加速中に電磁音信号7が設定信号12を超えないように、固定子巻線(図示省略)に印加する電圧を一定に保つ制御指令9を出力する。以上のような構成をもとに、図3,4,5,6,7,8を用いて、本発明の動作について説明する。
【0019】
図3はX線CT装置のスキャン時の運転パターンと固定子に印加する駆動電圧を示したものである。固定子に電圧Vを印加すると(時間t1)、回転子が起動し、駆動電圧の増加と共に回転速度が増加する。そして、電圧Vが電圧Vmに到達後、回転子はスキャン速度Pmに到達する(時間t2)。スキャン中はスキャン速度Pm を維持し、X線を患者に照射して撮影する。撮影終了後(時間t3)、電圧Vmを降下させて回転子の回転速度を落とし、停止させる(時間t4)。そして、一定の休止時間をおいた後(時間t1’)、再び固定子に電圧を印加して、スキャンを行う。以下、これを繰り返す。
【0020】
次に、図3で示した固定子に印加する駆動電圧について、詳細に説明する。図4は、回転子の回転速度を加速中、電磁音センサ6の電磁音信号7により、固定子、回転子の電磁音が設定入力器13で設定した音圧レベルを超えないように、制御装置11からの制御指令により駆動電圧を制御した例を示す。
【0021】
図4に示すように、スキャン開始(時間ta)によりインバータ回路8から出力される三相交流電圧を固定子巻線に印加すると、時間の経過にともなって前記電圧と励磁周波数が漸次増大してスキャナ回転子の回転速度は上がる。この時、磁化電流も増大するので、固定子、回転子から発生する電磁音が生じ、磁化電流の増加に応じて電磁音が増加する。電磁音が加速時の許容電磁音レベルWmを超えると(時間tb)、固定子に印加する電圧の増加を停止し、この時の電圧値に保持する。電圧は一定電圧を保持するが、電圧の励磁周波数は引き続き、増加させる。これは、電圧の増加停止と一緒に励磁周波数の増加を停止すると、電磁音が減少しないからである。そこで、電圧を一定に保持したまま、励磁周波数を増加させることで、巻線の交流インピーダンス成分が増加し、巻線を流れる磁化電流が減少するため、電磁音を減少させることができる。この電磁音の減少分をΔWとする。
【0022】
また、回転子の回転数は、固定子に印加する電圧を一定に保持しておいても、励磁周波数の増加により、引き続き、回転数の増加が続く。したがって、電磁音を減少させるために、一時的に電圧を保持しても、励磁周波数が増加するので、回転子の加速が停滞することはない。その後、電磁音が小さくなり、(Wm−ΔW)以下となった時、もう一度、電圧の増加を開始する(時間tc)。固定子への電圧増加を再開始すると、巻線の磁化電流が増大するので、一旦小さくなった電磁音が、再び増加する。その後、再び、電磁音がWmを超えた場合(時間td)、固定子に印加する電圧増加を停止し、一定電圧を保持したまま、励磁周波数を増加させて、電磁音を減少させる。この間も電圧の励磁周波数は増加するので、回転子の回転数は引き続き増加する。そして、電磁音が減少し、(Wm−ΔW)以下になった時、固定子に印加する電圧をもう一度、増加を開始する。このような動作を繰り返すことで、固定子と回転子で発生する電磁音を抑えながら、固定子に印加する電圧と周波数をスキャン速度Pmに必要な電圧Vm、周波数fmまで増加させ、回転子の回転数をスキャン速度Pmに到達させる。
【0023】
以上これまでは、回転子が起動してスキャン撮影に入る時の固定子、回転子で発生する電磁音を抑えながら加速する方法について説明してきたが、スキャン撮影中に固定子、回転子で発生する電磁音を小さくして、スキャン速度を維持する場合についても応用することができる。以下、これを説明する。
【0024】
図5に示すように、回転子がスキャン速度に到達した後、スキャン速度を維持するために、固定子には電圧Vmと励磁周波数fmが印加されている。このことから、スキャン撮影中も巻線に磁化電流が流れており、固定子、回転子から電磁音が発生する。この電磁音は以下に示す方法により、さらに小さくすることができる。これまで説明してきたように、電磁音がWmを超えた時、固定子に印加する電圧を保持し、励磁周波数のみを増加することで、電磁音を減少させることができたが、回転子がスキャン速度Pmに到達している場合、これまでのやり方とは逆に、励磁周波数fmは一定に保持し、固定子に印加する電圧を下げることで、回転数Pmを維持しながら電磁音を小さくすることができる。回転子の加速中、電圧を一定に保持したまま、励磁周波数を変えると、電磁音が減少するが、回転子の回転数が変化するため、スキャン撮影中など、一定の速度を維持する必要がある場合には、不都合である。そこで、スキャン撮影中の場合、励磁周波数を一定とし、固定子に印加する電圧を下げることで、磁化電流を減少させて、電磁音の減少を図る。ここで、励磁周波数は基本的に一定とするが、後述するように、固定子に印加する電圧を下げた場合でも、回転子の回転数がスキャン速度で一定に保持するように、励磁周波数を補正する。
【0025】
例えば、図5に示すように、回転子の回転数は加速が終了し、スキャン速度Pmに到達しているが、電磁音はWnよりも大きい。そこで、励磁周波数を一定に保持し、固定子に印加する電圧を下げる(時間te)。これによって、巻線を流れる磁化電流が減少し、電磁音が減少する。その後、電磁音がWn以下になるまで、固定子に印加する電圧を下げる。この間、固定子の電圧の減少により、回転子で発生する電磁力が減少するため、回転子の回転数がスキャン速度Pmよりも低下する(時間tf)。そこで、低下した回転数分に応じて、励磁周波数を増加させる(時間tg)。これは、励磁周波数が増加すると、すべり量が大きくなることで、回転子の回転数が増加するからである。その後、さらに、電磁音がWn以下になるまで、固定子の電圧を下げ、電磁音がWnになった時点で、固定子の電圧を保持する。この間、励磁周波数は、回転速度がスキャン速度を維持できるように制御する。
【0026】
以上、回転子、固定子で発生する電磁音を抑えながら、回転子を加速し、スキャン撮影中の電磁音を小さくすることを説明してきた。また、これまでの説明では、加速中の電磁音のレベルと、スキャン撮影中の電磁音のレベルについて、それぞれ個別に説明したが、常に一定の固定した値として扱う必要はない。以下、これについて説明する。
【0027】
図6は、加速、スキャン撮影の電磁音について示したものである。回転子を加速する時、許容できる電磁音のレベルをW1に設定すると、回転子はこの電磁音W1以下で加速する。また、スキャン撮影中では、加速時と同じ電磁音W1でも撮影に支障はないが、加速時よりも低いW2に設定することで、加速中に比べ、静かな環境下で撮影を行うことができる。一方、スキャン撮影中だけでなく、回転子を加速する場合も含めて、静音化を図る場合、加速中の電磁音のレベルをスキャン撮影中の電磁音と同じW2にすることによって、電磁音W2のレベル以下で、回転子を加速し、スキャン撮影中も含めて、常に静かな環境下で撮影することができる。逆に、常に静かな環境下ではなく、スキャン速度に到達する加速時間や減速時間を短くして、素早い撮影開始を優先したい場合、許容できる電磁音レベルをW1よりも高いW3に設定し、一方、スキャン撮影中はW2に設定することで、素早く加速した後、静かな環境下で撮影をすることができる。このように許容する電磁音を一定の値に設定しておくよりも、加速、スキャン撮影、減速など個別に許容する電磁音のレベルを設定した方が、個々の撮影のニーズに合わせた細かい対応をとることができる。したがって、許容する電磁音のレベルを設定入力するための入力設定器13を備える。
【0028】
以下、図7,8を用いて加速、スキャン撮影、減速など各運転状態に応じて、電磁音を調節する方法について詳細に説明する。回転子を加速する時の許容できる設定電磁音レベルをW1、スキャン撮影中の許容設定電磁音レベルをW2とし、これらの設定値は、設定入力器13で任意に入力し、設定信号12として、比較器30に入力する。比較器30は固定子、回転子で発生している電磁音7(W)と設定信号12(W1)とを比較し、W1<Wの場合、比較器30はオンを出力する。したがって、回転子を起動時、電磁音7(W)はまだ小さいので、W1>Wであり、比較器30はオフ信号を出力する。代入器31は電圧(インバータ回路8の出力電圧)の増加分ΔVの値を代入し、前記の比較器30の出力がオフの場合はΔV=mを代入し、比較器30の出力がオンの場合はΔV=0を代入する。そして、代入器31で代入されたΔVは、演算器32により、演算値保持器33の(現在値として保持している)電圧値V0と加算し、電圧(V0+ΔV)=V1値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値V1=(V+ΔV)は、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をV0からV1へ書き換える。一方、演算器35は、回転子の回転数を示す速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算し、差分ΔPは代入器36に入力する。代入器36は周波数の増加分Δf値を代入し、差分ΔPに応じた値が入る。この時、回転子は起動直後であり、回転子の速度はスキャン速度に到達していないので、差分ΔP>0であり、Δf=nが代入される。その後、代入器36で代入したΔfは、演算器37により、演算値保持器38の(現在値として保持している)周波数値f0と加算し、周波数(f0+Δf)値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した周波数値(f0+Δf)=f1は、演算値保持器38へ戻り、演算値保持器38の値をf0からf1へ書き換える。そして、制御指令出力器34から固定子に印加する電圧V1=(V+ΔV)、励磁周波数f1=(f0+Δf)の制御指令を出力する。この結果、固定子巻線には、電圧V1、周波数f1の三相交流電圧が印加されることになる。その後、もう一度、比較器30にもどり、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W1)が比較される。前記と同様に、まだ、電磁音7(W)は小さくW1>Wとすると、比較器30はオフを出力する。そして、代入器31ではΔV=mを代入し、演算器32により、演算値保持器33の電圧値V1と加算し、電圧(V1+ΔV)あるいは(V0+ΔV×2)値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算値保持器33の値はV1からV2に書き換わる。同様に励磁周波数fについても、演算器35により、速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算する。この場合も同様に、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nを代入する。そして、演算器37により、演算値保持器38の周波数値f1と加算し、周波数(f1+Δf)あるいは(f0+Δf×2)値が制御指令出力器34へ出力する。
【0029】
また、演算値保持器38の値はf1からf2に書き換わる。この結果、固定子巻線には、電圧V2、励磁周波数f2の三相交流電圧が印加され、前回よりも、さらにΔV=m、周波数Δf=n分だけ増加した電圧と周波数が印加される。このような一連の演算を繰り返しながら、固定子に印加する電圧、周波数はそれぞれ、ΔV=m、Δf=nずつ増加して行く。ここで、固定子に印加する電圧、周波数を増加して行く途中で、固定子、回転子の電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えた場合について考える。
【0030】
電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えると、比較器30の出力はオフからオンに変わる。代入器31ではΔV=0が代入され、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vx−1と加算し、電圧Vx=(Vx−1+ΔV)となるが、ΔV=0であるため、出力する電圧Vxは、演算前の電圧Vx−1と同じ値となる。したがって、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えると、電圧値が増加しなくなり、電圧が保持される。一方、励磁周波数について、演算器35により、速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算する。この場合も、回転子はまだスキャン速度Pmに到達していないので、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fx−1と加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数Fx=(Fx−1+Δf)を出力する。このように、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えると、電圧値は保持されるが、周波数はこのまま、増加を続けることがわかる。その後、再び、比較器30で電磁音7(W)が設定信号12(W1)が比較され、W1<Wの場合、代入器31では引き続き、ΔV=0を代入する。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vxと加算し、電圧Vx1=(Vx+ΔV)となるが、ΔV=0であるため、出力する電圧Vx1は、演算前の電圧Vxと同じ値となる。したがって、まだ、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えていれば、引き続き、電圧が保持されることになる。一方、励磁周波数は、回転子はまだスキャン速度に到達していないので、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fxと加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fx1=(fx−1+Δf)を出力する。このように、電磁音7(W)が設定信号12(W1)を超えている間、電圧値は保持され、周波数はこのまま、増加を続ける。そして、電圧を一定に保持したまま、励磁周波数を増加するので、巻線の交流インピーダンス成分の増加により、巻線を流れる磁化電流が減少し、電磁音が減少することになる。また、回転子の回転速度は、固定子に印加する電圧を一定に保持しておいても、励磁周波数は増加するので、回転数の加速は停滞せず、増加が続く。そして、しばらくした後、電磁音が減少して、W1>Wとなると、比較器30はオンからオフに変わる。これにより、代入器31ではΔV=mが再び代入され、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vy−1と加算し、電圧値Vy=(Vy−1+ΔV)が動作指令出力器34へ出力する。ΔV=mにより、出力する電圧値Vyは演算前の電圧Vyより大きい値となる。したがって、電磁音7(W)が減少した時、保持されていた電圧が自動的に増加に転じることがわかる。一方、励磁周波数について、演算器35により、速度信号15とスキャン速度14の差分ΔPを演算する。この場合、回転子はまだスキャン速度Pmに到達していないため、差分ΔP>0であり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fy−1と加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fy=(fy−1+Δf)を出力する。このように、電磁音が設定信号42以下に減少すると、電圧値は増加を開始し、周波数は増加をし続ける。
【0031】
以上のことから、電磁音が増加して、W1<Wとなると、電圧に加算するΔV=0となるため、電圧が保持され、電磁音7(W)が減少して、W1>Wとなると、電圧に加算するΔV=mとなり、電圧が増加する。また、周波数は、回転子の回転数15がスキャン速度14するまでの間はΔf=nであり、加速する途中で電磁音が増加して、W1<Wとなっても、周波数の増加が停止することはない。以上、このような動作を繰り返すことで、固定子と回転子で発生する電磁音7(W)を抑えながら、固定子に印加する電圧と周波数をスキャン速度Pmに必要な電圧Vm、周波数fmまで増加させ、回転子の回転数をスキャン速度に到達できる。
【0032】
以上これまでは、回転子が起動してスキャン撮影に入る時の固定子、回転子で発生する電磁音7(W)を抑えながら加速する場合について説明してきたが、スキャン撮影中、スキャン速度Pmを維持しながら、固定子、回転子で発生する電磁音7(W)を小さくすることについて、図8を用いて説明する。
【0033】
スキャン撮影中の電磁音レベルをW2としたことから、速度信号15により、回転子の回転数がスキャン速度14に到達すると、設定入力器13の設定信号12はW1からW2に変わる。
【0034】
比較器39により、速度信号15とスキャン速度14が比較され、速度信号15がスキャン速度14に到達するとオンを出力し、代入器31に値を入力する。この比較器39について、出力がオフの場合、代入器31で代入される値は、ΔV=0を代入し、比較器の出力がオンの場合、ΔV=−mを代入する。したがって、回転子がスキャン速度14に到達すると、回転子を加速中の設定電磁音12(W1)よりも許容レベルが変わり、許容値が小さくなっているので、W2<Wとなり、比較器30は、オンを出力するので、ΔV=0が代入される。このままでは、固定子に印加する電圧は減少せず、電磁音7(W)が小さくならず、不都合である。そこで、スキャン速度Pmに到達していることを利用して、比較器39の出力により、ΔV=−mを代入する。代入器31で代入されたΔVは、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vz−1と加算し、電圧(Vz−1+ΔV)=Vz値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値Vzは、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVz−1からVzへ書き換える。電圧Vzは、演算前のVz−1よりも、ΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が減少することになる。一方、励磁周波数は、回転子がスキャン速度14に到達しているので、差分ΔP=0であり、差分が零であることから、代入器35ではΔf=0が代入さる。その後、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fz−1と加算し、周波数fz1=(fz−1+Δf)を出力する。しかし、Δf=0であるから、出力する周波数fzは、演算前と同じ周波数fz−1と同じになる。次に、再び、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)を比較し、W2<Wによりオンを検出するので、ΔV=0が代入されるが、回転子がスキャン速度Pmを維持しているので、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入される。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vzと加算し、電圧(Vz+ΔV)=Vz1値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値Vz1は、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVzからVz1へ書き換える。電圧Vz1は、演算前のVzよりも、さらにΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が徐々に減少する。このような一連の動作を繰り返しながら、励磁周波数を保持したまま、電圧を下げながら、磁化電流を減少させて、電磁音7(W)を小さくする。
【0035】
ここで、励磁周波数は基本的に一定とするが、固定子に印加する電圧を大きく下げた場合、回転子の速度信号15がスキャン速度14よりも低くなる場合があり、励磁周波数を補正することが必要となる。例えば、スキャン撮影中の電磁音7(W)を減少させるために、固定子に印加する電圧を下げている途中、回転子の速度信号15がスキャン速度14よりも低くなった場合について説明する。ただし、回転子の回転数の低下は、比較器39で速度信号15がスキャン速度14に到達していると検出する範囲内の場合とする。これまで前述したように、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入される。また、回転子の速度は低下しているが、まだ、スキャン速度Pmの範囲にあるので、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入される。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vw−1と加算し、電圧(Vw−1+ΔV)=Vw値が制御指令出力器34へ出力する。また、演算した電圧値Vwは、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVw−1からVwへ書き換える。電圧Vwは、演算前のVw−1よりも、さらにΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が減少するので、電磁音7(W)が徐々に小さくなる。ここで、このままでは、回転子の速度信号15が低下したままになり、これを放置することは不都合である。そこで、回転子の速度信号15がスキャン速度14から低下し始めた時、演算器35により差分ΔP>0となるので、これを代入器36によりΔf=nを代入し、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fw−1と加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fw=(fw−1+Δf)を出力する。 この結果、励磁周波数が増加することによって、すべり量が大きくなるため、回転子の速度信号15が増加し、回転数の低下を補償することができる。そして、再び、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入される。ここで、回転子の速度信号15が、まだ、スキャン速度Pmの範囲内にあれば、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入される。そして、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vwと加算し、電圧(Vw+ΔV)=Vw1値が制御指令出力器34へ出力する。
【0036】
また、演算した電圧値Vw1は、演算値保持器33へ戻り、演算値保持器33の値をVwからVw1へ書き換える。電圧Vw1は、演算前のVwよりも、さらにΔV=−m、減少した値であり、固定子に印加する電圧が減少するので、電磁音7(W)がさらに小さくなる。この時、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmに復帰していれば、演算器35により差分ΔP=0となり、代入器36におけるΔfは0であるから、出力する周波数fw1は、演算前と同じ周波数fwと同じになる。そうではなく、まだ、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmよりも低いならば、演算器35により差分ΔP>0となり、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fwと加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fw1=(fw+Δf)を出力することで、さらにすべり量を大きくして、回転子の回転数を増加させることで、回転数の低下を防ぐ。
【0037】
仮に、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmより、一定の範囲を超えて低下してしまった場合、このまま、電圧を下げると、スキャン速度Pmを維持できなくなり、撮影に支障が生じる。この場合、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入され、比較器39の出力は、回転子の速度信号15がスキャン速度Pmから一定範囲外になるので、ΔV=0が代入される。この結果、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vwと加算し、電圧(Vw+ΔV)=Vw1値が制御指令出力器34へ出力するが、電圧Vw1は、ΔV=0であることから、演算前のVwと同じであり、固定子に印加する電圧が保持される。したがって、これまで、電磁音を下げるために固定子に印加する電圧を下げてきたが、スキャン速度が維持できなくなる恐れがあるなど、撮影に支障が出るような場合、自動的に電圧の減少が停止され、未然に撮影への影響を防止することができる。また、回転数の低下は、演算器35により差分ΔP>0となるので、代入器36によりΔf=nが代入され、演算器37により、演算値保持器38の周波数値fwと加算し、演算前の周波数よりも、Δf=nだけ増加した周波数fw1=(fw+Δf)を出力することで、さらにすべり量を大きくして、回転子の回転数を増加させることで、回転数の低下を防ぐことができる。その後、回転子の速度が再び、スキャン速度に許容範囲内に入ると、比較器30において、回転子で発生している電磁音7(W)、設定信号12(W2)が比較されて、ΔV=0が代入される。そして、比較器39の出力により、ΔV=−mが代入され、演算器32により、演算値保持器33の電圧値Vw1と加算し、電圧(Vw1+ΔV)=Vw2値が制御指令出力器34へ出力され、固定子に印加する電圧が減少し、再び、電磁音の減少を開始することができる。
【0038】
以上のように、スキャン撮影中の電磁音についても、許容する電磁音のレベルよりも高い場合、固定子に印加する電圧を下げることによって、固定子、回転子で発生する電磁音を下げることができる。また、固定子に印加する電圧を下げたことによって、スキャン速度が低下しても、励磁周波数を調整することによって、スキャン速度を維持できる。
【0039】
以上のことは、図5に示すように、固定子に印加する電圧を変更しないで、一定の電磁音W3以下で運転した場合と、本発明の構成により、加速時は電磁音W3以下で加速し、スキャン撮影時は、電磁音W1以下で運転した場合、及び、加速時は電磁音W2以下で加速し、スキャン撮影時は、電磁音W1以下で運転した場合の固定子巻線に流れる電流、発生する熱、電磁音をそれぞれ比較することで説明することができる。また、固定子に印加する電圧を変更しないで、一定の電磁音W3以下で運転した場合、加速時は電磁音W3以下で加速し、スキャン撮影時は、電磁音W2以下で運転した場合よりも、スキャン撮影中に流れる電流量が少なく、また、これに伴う発熱も少ない。また、加速時は電磁音W2以下とすると、加速時間が長くなるが、その代わり、加速中やスキャン撮影中に流れる電流量や発熱をさらに減らすことができ、非常に静かな環境を提供することができる。
【0040】
以上のことから、回転子が起動してスキャン撮影に入る時の固定子、回転子で発生する電磁音が一定値を超えた時、固定子への電圧の増加を停止して、励磁周波数のみを増加して電磁音を下げ、電磁音が一定値以下になった時、固定子への電圧を増加を開始することで、電磁音を一定値以下に抑えながら加速し、かつ、スキャン撮影中も同様に、スキャン速度を維持しながら、固定子の電圧を下げて、固定子、回転子で発生する電磁音を小さくできる。なお。電磁音センサは、音圧を電圧に変換する手段として説明したが、固定子、回転子から発生する振動、電磁波を電圧に変換する手段を用いてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上、本発明によれば、スキャンを高速化するためにダイレクトドライブ方式のスキャナ回転駆動機構を用いても、該スキャナ回転機構の発生する電磁音が抑制されて静粛な環境下でのX線CT撮影が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】X線CT装置のガントリの構成を示す図。
【図2】ダイレクトドライブ方式によるスキャナ回転駆動機構の電磁音を抑制する本発明の第一の実施例を示す図。
【図3】X線CT装置のスキャン時の運転パターンと固定子に印加する駆動電圧の関係を示す図。
【図4】本発明の第一の実施例における加速中の固定子へ印加する駆動電圧を示す図。
【図5】本発明の第一の実施例におけるスキャン撮影中の固定子へ印加する駆動電圧を示す図。
【図6】加速、スキャン撮影時の電磁音についての本発明と従来との比較を示す図。
【図7】本発明の第一の実施例による加速中の固定子に印加する電圧、励磁周波数の演算を行うフローチャート図。
【図8】本発明の第一の実施例によるスキャン撮影中の固定子に印加する電圧、励磁周波数の演算を行うフローチャート図。
【符号の説明】
1 回転子、2,3,4,5 固定子、6 電磁音センサ、7 電磁音信号、8 インバータ回路、9 制御指令、10 周波数信号、11 制御装置、12 許容電磁音設定信号、13 電磁音入力設定器、50 X線管、55 X線検出器、56 回転板、58 インバータ回路、59 制御回路
Claims (1)
- X線を被検者に照射するX線照射手段と、前記被検者を挟み前記X線照射手段と対向配置したX線検出手段と、前記被検者を配置する開口部を設け、少なくとも前記X線照射手段とX線検出手段を搭載して前記被検者の周りを回転させる回転部材と、この回転部材を回転子とし、該回転子に複数の導体を設けてこれらの導体を接続し、前記回転子を挟み対峙する位置に配置した固定子鉄心と固定子巻線とから成る固定子と、前記固定子巻線に回転磁界を発生させるための交流電流を供給する回転磁界発生用電源と、前記発生した回転磁界により前記回転子を回転させて前記回転部材を回転させる回転駆動手段と、前記回転部材及び回転駆動手段を支持するフレームとを有し、前記X線検出手段で検出した被検者の透過X線情報を処理して該被検者の断層画像を得るX線CT装置であって、前記固定子と回転子の電磁音を検出するための電磁音検出手段と、許容できる電磁音の音圧レベルを設定するための入力設定手段と、前記電磁音検出手段の出力信号にもとづいて前記入力設定手段で設定した音圧レベル以下で、前記回転子の回転数が増加するように前記回転磁界発生用電源から前記固定子に印加する電圧を制御する制御手段とを備えたことを特徴とするX線CT装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002312357A JP2004141534A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | X線ct装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2002312357A JP2004141534A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | X線ct装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2004141534A true JP2004141534A (ja) | 2004-05-20 |
Family
ID=32457282
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2002312357A Pending JP2004141534A (ja) | 2002-10-28 | 2002-10-28 | X線ct装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2004141534A (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2008519955A (ja) * | 2004-11-12 | 2008-06-12 | シエフレル・コマンデイトゲゼルシヤフト | 回転結合装置 |
JP2009066024A (ja) * | 2007-09-11 | 2009-04-02 | Shimadzu Corp | 回診用x線撮影装置 |
CN104545965A (zh) * | 2013-03-15 | 2015-04-29 | Skf磁轴承公司 | 诊断扫描装置 |
US11612369B2 (en) * | 2019-04-26 | 2023-03-28 | General Electric Company | Communication apparatus, and medical apparatus |
-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002312357A patent/JP2004141534A/ja active Pending
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