JP2004138671A - 再帰反射性物品の製造方法および再帰反射性物品 - Google Patents
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Abstract
【課題】再帰反射性の高いパターン状の再帰反射性領域を有する物品を、生産性良く製造する。
【解決手段】基材12、14の表面に、樹脂インク22をパターン状に塗工する工程(a)と、工程(a)で形成されたパターン状の樹脂インク層22が固化する前に、樹脂インク層22を含む基材12、14の表面に透明ビーズ24を散布する工程(b)と、工程(b)で散布された透明ビーズ24のうち、樹脂インク層22に付着した透明ビーズ24以外の透明ビーズ24を除去する工程(c)と、樹脂インク層22を固化させる工程(d)とを含む。
【選択図】 図1
【解決手段】基材12、14の表面に、樹脂インク22をパターン状に塗工する工程(a)と、工程(a)で形成されたパターン状の樹脂インク層22が固化する前に、樹脂インク層22を含む基材12、14の表面に透明ビーズ24を散布する工程(b)と、工程(b)で散布された透明ビーズ24のうち、樹脂インク層22に付着した透明ビーズ24以外の透明ビーズ24を除去する工程(c)と、樹脂インク層22を固化させる工程(d)とを含む。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、再帰反射性物品の製造方法および再帰反射性物品に関し、詳しくは、表面に再帰反射性が付与された物品を製造する方法と、この方法で得られた再帰反射性物品とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
再帰反射性とは、外部から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させることで、視認性を高めたり、装飾的効果を発揮させたりできる特性を意味する。例えば、夜間に自動車のヘッドライトを効率良く運転者のほうに反射させて注意を促す安全標識に利用されている。広告媒体などに用いて、消費者の注目を集めるためにも利用される。
物品の表面に再帰反射性を付与する方法として、反射性の高いアルミニウム層、染料や顔料等からなる色素層、ガラスビーズ層を順次積層する方法が知られている。外部からの光は、最上層のガラスビーズを通過してアルミニウム層で反射し、再びガラスビーズを通過していく。ガラスビーズによる屈折作用で、入射光と同じ方向に反射光が出ていき、前記した再帰反射性が発現する。この技術では、光が色素層を通過することで、再帰反射光が色光として視認される。視覚的に注目され易い色を使って視認性を高めたり、色の異なる領域を組み合わせて色彩豊かな表現を行い、意匠性あるいは装飾性を高めたりすることもできる。
【0003】
本件特許出願人が先に特許出願している特許文献1の技術では、微細なマイカ片やアルミニウム粒子などの反射性のある材料と、ガラスビーズ、接着用樹脂が配合されたインキ組成物を、布や紙の表面に印刷する。このとき、ガラスビーズの粒径を、マイカ片などの反射材に比べて大きくしておく。印刷されたインク組成物が硬化する過程で、インク組成物の層内で反射材は沈み、ガラスビーズが表面に集まることで、外部の光は、表面のガラスビーズを通過したあと反射材で反射し、再びガラスビーズを通過して表面から再帰反射光として戻って行く。インキ組成物に色素を配合しておいたり、アルミニウム粒子を着色しておいたりすれば、再帰反射光に色を付けることもできる。この技術では、1層のインキ組成物を印刷するだけで、物品の表面に再帰反射性を付与することができるので、前記した3層印刷技術に比べて、はるかに製造が容易である。
【0004】
物品の表面に、文字や図柄をかたどったパターン状の再帰反射領域を設けるには、前記した反射層、色素層、ガラスビーズ層を順次、スクリーン印刷などでパターン状に形成したり、予め作製された再帰反射性シートをパターン状に切り取ったりする方法が採用される。前記した特許文献1でも、スクリーン印刷などでインク組成物を印刷しているが、3層毎にスクリーン印刷するのにくらべて、1層のインク組成物を印刷するだけでよいので、作製が容易である。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−303011号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の技術では、ガラスビーズがインク組成物の層内に埋め込まれてしまって、十分な再帰反射性が発揮できない場合がある。
インク組成物の層内で、表面にガラスビーズ、その下側に反射材が配置されるという層分離が理想的には行われず、ガラスビーズの一部がインク組成物層に完全に埋めこまれてしまうと、埋め込まれたガラスビーズは再帰反射作用を発揮できないことになる。インク組成物層の一部にガラスビーズが偏在すると、ガラスビーズが少ない部分では再帰反射性が弱くなる。インク組成物の取扱い性や塗工性を良好にするには、ガラスビーズの配合量には制限があるので、ガラスビーズの密度を一定以上に高めることは難しい。
【0007】
そのため、高輝度の再帰反射性を要求される場合には、前記した3層構造による製造方法を適用しなければならず、生産性が悪くなり、コストも高くついていた。
本発明の課題は、再帰反射性の高いパターン状の再帰反射性領域を有する物品を、生産性良く製造することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる再帰反射性物品の製造方法は、基材の表面にパターン状の再帰反射性領域を有する物品を製造する方法であって、前記基材の表面に、樹脂インクをパターン状に塗工する工程(a)と、前記工程(a)で形成されたパターン状の樹脂インク層が固化する前に、樹脂インク層を含む前記基材の表面に透明ビーズを散布する工程(b)と、前記工程(b)で散布された透明ビーズのうち、前記樹脂インク層に付着した透明ビーズ以外の透明ビーズを除去する工程(c)と
前記樹脂インク層を硬化させる工程(d)とを含む。
【0009】
〔基材〕
再帰反射性物品の基本構造を構成する。使用目的や要求性能などに合わせて各種の構造材料が使用される。
具体的には、タイルおよび皿を包含する陶磁器類、ガラス、石材、木材、金属板、プラスチック板、合成樹脂フィルム、布帛、不織布、紙、天然および合成ゴム板などが挙げられる。勿論、複数の材料層の積層体や、複数の材料部分から組立てられた組立体などにも適用できる。最終的に使用される状態の完成品であってもよいし、製造途中の中間製品や部品段階の物品であってもよい。素材や原材料の段階の物品であってもよい。
【0010】
再帰反射性転写シートを製造する場合の基材には、転写シートとしての機能や特性に適した材料が選択される。
〔樹脂インク〕
透明ビーズを接合して保持する機能を有する。
以下に示す成分を適宜に組み合わせて樹脂インクが構成される。
<樹脂材料>
樹脂インクの基本成分である樹脂材料としては、造膜性を有するとともに、未固化状態で透明ビーズに対する付着性を示すものが好ましい。
【0011】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れも使用できる。湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。水系樹脂、有機溶剤系樹脂、それらの混合溶媒系樹脂も何れもが使用できる。具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エチレン酢ビ系、ポバール系、シリコーン系、ポリエステル系、ナイロン系、オレフィン系、天然ゴム系、アルキッド系、塩ビ系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の共重合体も使用できる。一般的な接着性樹脂材料が使用できる。また、市販の接着用樹脂がそのまま使用できる場合もある。
熱硬化性樹脂の場合、熱硬化温度が透明ビーズの機能を損なわない程度のものが好ましい。熱硬化温度が高過ぎると、加熱硬化処理において、透明ビーズが変形したり溶融したりして、再帰反射特性が損なわれる。具体的な熱硬化温度として、550℃以下が採用できる。
【0012】
樹脂材料が透明性に優れたものであれば、透明ビーズを通過して樹脂インク層に到達した光を、樹脂インク層内の反射材や色素成分で反射させて、色光を作り出すのに有効である。また、樹脂インク層を通過した光が、基材表面で反射することで、基材表面の色や質感を、再帰反射光の一部に付与することができる。この場合、樹脂インクには色素成分が配合されていなくてもよいし、色素成分と基材色とで複合的な色調を発現させることもできる。
樹脂材料が不透明材料であれば、透明ビーズに入射した光は全て、透明ビーズの球内面あるいは透明ビーズと樹脂インク層との境界面で反射するか樹脂インク層で吸収される。この場合は、樹脂インク層内での反射材と色素成分とによる色光の生成は果たせない。
【0013】
基材物品に直接に樹脂インク層を塗工して再帰反射性を付与する場合は、基材に対して接合性の高い樹脂材料が好ましい。転写シートに適用する場合には、基材に対して化学的に反応して接着することがない樹脂材料が好ましい。
<反射材>
樹脂インクの配合成分として、微細な反射材がある。この反射材は、透明ビーズを通過した光を反射して透明ビーズのほうに返す機能を有する。透明ビーズのみによる再帰反射に比べて、反射光を強くできる。
反射材は、実質的に完全な反射性を有する材料のほか、一部の光を透過させる透過性のある反射材も使用できる。透過性反射材のほうが、樹脂インクに配合された色素成分による光の色づけが行われやすい。また、透明ビーズ内で反射した光と樹脂インク層の反射材で反射した光とが多重反射光として放出されることで、透明ビーズのみの再帰反射光に比べて、より視認されやすく色彩性および意匠性にも優れた再帰反射光が得られる。
【0014】
反射材は、微細な燐片状、粒子状、繊維状などの形態で使用される。反射材の粒径として、0.1〜200μmに設定できる。微細な反射材は、樹脂インク中に均一に配合することができ、反射機能も良好に発揮できる。
反射材の具体的材料として、前記した透過性反射材に該当するマイカがある。マイカは、雲母を原料として薄い燐片状に加工されたものである。一般的にマイカの反射光は白色である。マイカ表面に、酸化チタンや酸化鉄の被覆をしておくと、反射性能が高まる。反射材として、アルミニウム等の表面反射性を有する金属、無機材料、鉱物なども使用できる。反射材が、着色されたものであれば、反射機能に加えて着色機能も発揮することができる。例えば、アルミニウム粒子は、シルバー色の反射光を出す。着色アルミニウム粒子は、その着色された色の反射光を出す。ノンリーフィングタイプのアルミニウム粒子は、表面酸化が起こり難く、良好な反射性を持続でき、使用に適したものとなる。
【0015】
反射材による反射機能を生かすには、樹脂インクに光透過性を有するものを用いることが望ましい。
樹脂インク中における反射材の配合量は、反射材の種類や要求性能によっても異なるが、通常、樹脂インク全体の固形分100重量部に対して0〜90重量部に設定できる。好ましくは、10部〜20部である。反射材の配合量が多過ぎると、色素成分を隠蔽してしまって、色光が得られ難くなる。この場合も、反射材の反射特性による色付けが生じることはある。反射材の量が多過ぎると、樹脂インク中の樹脂分の割合が少なくなり、樹脂インク内に反射材を固定したり樹脂インク層の表面に透明ビーズを固定したりする力が弱くなったり、堅牢性に問題が生じたりする。
【0016】
<色素成分>
樹脂インクの配合成分として、色素成分がある。色素成分は樹脂インクを通過する光に色をつけて、色光からなる再帰反射光を作ることができる。色素成分の具体例として、通常の塗料用や染色用の着色材料が使用でき、各種の顔料あるいは染料が使用できる。プラスチック成形用の着色材料も使用できる。色素成分は、樹脂インク中に分散するものであってもよいし、溶解してしまうものであってもよい。
なお、タイルや陶磁器の色づけに使用されている釉薬あるいは無機顔料は使用に適さない。これらの材料は、比較的に高温(700〜1000℃)で焼成しなければ発色せず、このような高温処理では、透明ビーズが溶融してしまうからである。
【0017】
色素成分は、粒子状のものや燐片状のもの繊維状のものなどが使用できる。色素成分の粒径を、0.01〜1μmの範囲に設定できる。一般的な市販の色素成分は、粒径1μm未満である。
樹脂インクに、透光性のある反射材が配合されている場合、色素成分の粒径を反射材よりも小さくしておくことが望ましい。これによって、樹脂インク層の上層には反射材、下層に着色成分が配置され易くなり、良好な反射特性を発揮させることができる。色素成分が反射材の反射機能を阻害し難くなる。
樹脂インク中における色素成分の配合量は、色素成分の種類や要求性能によっても異なる。
【0018】
<その他の成分>
樹脂インクには、上記した以外にも、必要に応じて、通常の樹脂インクに配合される各種配合成分が配合できる。
例えば、シランカップリング剤を配合しておくと、ガラスからなる透明ビーズと樹脂インクとの接合力を高めることができる。色素成分の分散を助ける分散剤がある。樹脂インク層のひび割れを防ぐ、ひび割れ防止剤がある。樹脂インクの粘度を適度に調整する粘度調整剤がある。硬化剤や硬化促進剤、硬化遅延剤がある。溶剤や消泡剤も含まれる。架橋剤や粘性付与剤、安定剤も使用できる。
【0019】
樹脂インクは、塗工してから固化して表面の付着性がなくなるまでの時間が十分にあるものが好ましい。樹脂インクに配合する溶剤などの成分調整によっても、固化特性は調整できる。
〔樹脂インクの塗工〕
所定の配合に調製された樹脂インクは、通常の塗装技術あるいは印刷技術などの塗工手段で、基材の表面にパターン状に塗工することができる。
印刷技術として、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、コーティングなどが採用できる。
【0020】
樹脂インクの塗工厚みは、再帰反射性物品の用途や要求性能によっても異なるが、通常、透明ビーズの粒径以下に設定される。透明ビーズの粒径によって、適切な樹脂インク層の厚みが変わる。樹脂インク層に透明ビーズの一部が埋め込まれた状態でも、透明ビーズの下側に一定の厚みの樹脂インクが存在していることが望ましい。透明ビーズの粒径が大きいほど、樹脂インク層の厚みを増やすことになる。
樹脂インク層を、材料や配合の異なる複数の層を積層して構成することもできる。例えば、反射性の高い層と、透明性の高い層と、着色層とを順次積層することなどが可能である。
【0021】
基材の表面には、樹脂インク層で複数のパターンを形成することもできる。複数のパターンで、樹脂インクの材質や色を変えることもできる。
〔透明ビーズ〕
基本的には、通常の再帰反射性物品に使用されている透明ビーズと同様のものが使用できる。
透明ビーズの材料は、再帰反射性が発揮される透明性のある材料であればよく、例えば、ガラスが使用できる。硬質の合成樹脂や透明セラミック、天然鉱物なども使用可能である。透明ビーズの形状は、理想的には球形のものが良好な再帰反射性を発揮できる。球形の透明ビーズは、任意の方向から入射した光が球内面に焦点を結ぶように屈折して球内面で反射した光が再び屈折して入射した方向と平行な方向に出ていく。実用的には、工業的に得られる程度の球形度を有していれば十分な再帰反射性が発揮できる。球形以外の楕円体や長円体、多面体に近い形状のものでも、球形に比べると劣るが、ある程度の再帰反射性を示すことができる。
【0022】
透明ビーズは、入射した光を全て内部で再帰反射してもよいが、透明ビーズを通過して下層の樹脂インク層へ到達する光が含まれるようであってもよい。樹脂インク層に到達して、樹脂インク層の色素成分を通過したり反射したりした光には色がつくので、再帰反射光に色を付けることができる。透明ビーズ同士の間の隙間を通過した光も、樹脂インク層に到達して色素成分で色が付けられる。透明ビーズを通過する光の割合が多い場合は、樹脂インク層に反射材を配合して、樹脂インク層に到達した光を効率的に反射できるようにすることが好ましい。透明ビーズ内で反射する光と、樹脂インク層に到達する光との割合を調整することで、再帰反射光の色調や輝度などの特性を変えることができる。
【0023】
透明ビーズの粒径は、散布による層形成の容易さや樹脂インク層への付着性、再帰反射機能などの条件を考慮して設定され、通常は、1μm〜10mmの範囲に設定できる。
透明ビーズの屈折率によって、入射光および反射光の屈折作用が変わる。再帰反射性を良好にするには、屈折率1.5〜2.5のものが好ましい。より好ましくは、屈折率1.92±0.01である。
透明ビーズは透明性に優れたものが好ましい。但し、再帰反射性を損なわない程度に薄く着色された半透明のビーズも使用可能であり、この明細書において、透明ビーズとは、狭義の透明ビーズだけでなく半透明ビーズをも含む意味で使用している。
【0024】
透明ビーズとして、表面の一部に反射膜が形成された自反射性を有する透明ビーズが使用できる。自反射性透明ビーズとしては、通常、透明ビーズの半球部分程度に反射膜を設けておく。透明ビーズに入射した光が、反射膜の内面で反射して、良好な再帰反射性が発揮される。
自反射性透明ビーズに形成される反射膜として、アルミニウムなどの金属による蒸着膜が挙げられる。例えば、アルミニウム蒸着膜は、シルバー色の反射光が得られ、樹脂インク層の色素成分による着色と混色されると、少しくすみのある反射光になる。反射膜は、ある程度の光透過性を有するものでもよい。
【0025】
透明ビーズとして、材料や特性の異なる複数種類の透明ビーズを混合して使用すれば、単独種類の透明ビーズでは得られない再帰反射特性や表面性状を得ることもできる。
〔透明ビーズの散布〕
樹脂インク層を含む基材の表面に一様に散布すればよい。
通常の粉体材料の散布手段が採用できる。単に落下散布するだけでもよいし、エアー噴射による散布や攪拌羽根、揺動ノズルなどの機械的散布手段を採用することもできる。透明ビーズの堆積層や透明ビーズを収容した容器内に、樹脂インク層を含む基材を沈めたり通過させたりする方法も採用できる。
【0026】
透明ビーズの散布は、樹脂インク層の表面が固化する前に行う。樹脂インク層の固化形態は様々であるが、塗工後の一定時間は固化が進行せず、流動性を有していたり、軟化状態であったり、変形容易な状態である。表面には、他の物体を付着させる付着性を有している状態である。少なくとも樹脂インク層の表面に透明ビーズが付着しても、直ぐには脱落せずに留まることができる状態のときに、透明ビーズを散布する。固化が進行した樹脂インク層に、熱を加えたり、溶剤を塗布したりして、軟化あるいは付着性を回復させておいてもよい。
透明ビーズの散布は、樹脂インク層のパターン形状に関わらず、基材の表面全体に散布すればよいが、基材の表面のうち、樹脂インク層が存在する可能性のない領域には散布しないでおいてもよい。基材の表面のうち、樹脂インク層とその周辺のみに散布してもよい。但し、樹脂インク層の外形に対応する正確な形状のマスクなどを用いて、透明ビーズの散布領域を厳密に制限する必要はない。
【0027】
散布された透明ビーズは、樹脂インク層の表面に単層かつ最密充填状態で配置されていることが、透明ビーズで再帰反射する光の量が多くなる点で望ましい。前記したような、樹脂インク層での色付けや多重反射の効果を達成するには、透明ビーズ同士の間にわずかな隙間があいているほうが好ましい場合がある。透明ビーズを最密充填状態で配置したとしても、球状の透明ビーズであれば、透明ビーズ同士の間に隙間が発生し、透明ビーズの下方の樹脂インク層へ到達する光の量が十分に確保される。
基材の表面あるいは樹脂インク層の表面に、複数種類の透明ビーズを、それぞれ領域を分けて散布することもできる。樹脂インク層によるパターン形状のうち、再帰反射性を与えず、単なる色彩パターンを表現するだけの領域には、透明ビーズを散布しないでおくことができる。
【0028】
〔透明ビーズの除去〕
樹脂インク層に付着した透明ビーズ以外の透明ビーズは、基材との間に付着力や接合力は働かないので、容易に脱落する。また、樹脂インク層の上で、複層に重なって散布された透明ビーズについても、樹脂インク層に付着していない上層の透明ビーズは、容易に脱落する。
例えば、基材を裏返せば、透明ビーズを落下させることができる。圧力エアーを噴射して、透明ビーズを吹き飛ばすこともできる。真空吸引によって透明ビーズを吸い上げることもできる。基材を傾けて振動させたり衝撃を加えたりして、透明ビーズを滑り落とすこともできる。刷毛やブラシで掃き落とすこともできる。これらの方法を組み合わせてもよい。
【0029】
透明ビーズを除去する段階では、樹脂インク層は、完全に固化していてもよいし、完全には固化していなくてもよい。少なくとも、透明ビーズの除去作業の間、樹脂インク層に付着した透明ビーズが脱落しない程度になっていればよい。
〔樹脂インク層の固化〕
樹脂インク層が、経時的に固化して、透明ビーズと一体接合されるものであれば、透明ビーズを散布し、十分に固化するまで放置しておけばよい。
樹脂インク層の固化を促進させるために、空気を送風したり、温風やヒータで加熱したり、架橋促進剤を加えたりすることができる。
【0030】
樹脂インク層を硬化させる場合、加熱硬化処理を行ったり、紫外線照射などによる硬化処理を行ったりすることもできる。
樹脂インク層の硬化前あるいは硬化後に、透明ビーズの表面に保護層を形成することができる。保護層として、酸化チタンのような触媒的機能を持った単分子膜を形成することができる。透明ビーズの屈折作用による再帰反射特性を損なわない程度に、膜厚などの条件を設定しておくことが望ましい。
〔透明ビーズの押圧〕
樹脂インク層に付着した透明ビーズを押圧して、透明ビーズの一部分を樹脂インク層に埋めこむことができる。また、透明ビーズが単層で最密充填された状態を作り出すにも有効である。
【0031】
透明ビーズは、樹脂インク層に完全に埋めこまれてしまって外部に露出しないようになると、目的とする再帰反射機能が発揮できなくなる。そこで、通常は、透明ビーズの高さの約半分程度までが樹脂インク層に埋め込まれればよい。球状の透明ビーズであれば、半球部分が樹脂インク層に埋め込まれ、残りの半球部分が樹脂インク層の上に露出している状態にできる。
透明ビーズを押圧することで、透明ビーズと樹脂インク層との接合性あるいは一体性を強化することができる。また、樹脂インク層の表面が透明ビーズの外形に沿って変形することで、透明ビーズと樹脂インク層との間の隙間をなくせ、最密充填状態に近い状態で透明ビーズを配置することができる。透明ビーズから樹脂インク層への光の通過が良好になり、樹脂インク層の内部で光を反射させるのに有効である。
【0032】
透明ビーズの押圧埋め込みは、樹脂インク層が変形可能な状態の間に行う。樹脂インク層の固化が進行してしまうと困難である。
透明ビーズの押圧手段としては、透明ビーズの上にプレス部材を配置して圧力を加えればよい。樹脂インク層の全体に配置された透明ビーズを均等に押圧するには、樹脂インク層あるいは基材の表面に対応する面形状のプレス板を使用すればよい。基材および樹脂インク層が平坦であれば平坦なプレス板が使用できる。基材および樹脂インク層が曲面や凹凸を有する表面であれば、それに対応する曲面や凹凸のプレス板が使用できる。ローラー状のプレス部材を、樹脂インク層の表面に沿って転動させてもよい。樹脂インク層の表面形状に合わせて柔軟に変形できるパッド状のプレス部材を押し当ててもよい。プレス部材として、ゴムなどの弾性材料が使用できる。
【0033】
透明ビーズに加える押圧力は、前記したような埋め込み状態が得られればよい。
透明ビーズに押圧力を加えた状態で、樹脂インク層の固化が進むまで保持していてもよいし、透明ビーズが元に戻らなければ、直ぐに押圧力を取り除いてもよい。
押圧力の印加は、1度だけでもよいし、何度か繰り返してもよい。ローラー状のプレス部材を何回か通過させることもできる。
〔転写シート〕
再帰反射性物品の具体例として、転写シートが挙げられる。転写シートの製造方法として、以下の方法が採用できる。
【0034】
基材として、吸水性シートの表面に離型剤が塗工された基材シートを用いる。基材シートの材料や構造は、通常の転写シートと同様でよい。
基材シートを構成する吸水性シートは、紙あるいは合成樹脂フィルムなどが使用される。離型剤は、吸水性シートに対する樹脂インク層の分離を可能にするとともに、透明ビーズに対する付着性のない材料が使用される。撥水性を有する材料が好ましい。離型剤としては、通常の転写シートの場合と同様の材料が使用できる。吸水性シートに塗工された離型剤は、吸水性シートの表面に離型剤層を形成する。
【0035】
基材に転写シート用の基材シートを使用する以外は、前記した再帰反射性物品の製造工程と同様の工程を経て、基材シートの表面に、樹脂インク層に透明ビーズが付着してなるパターン状の転写膜が配置された転写シートが得られる。
〔転写シートによる再帰反射性物品の製造〕
前記転写シートを使って、別の再帰反射性物品を製造することができる。基本的には、通常の転写シートによる、図柄や模様の形成方法と同様の技術が適用される。
転写シートの基材シートすなわち吸水性シートを吸水させることで、樹脂インク層と透明ビーズとからなるパターン形状の転写膜を基材シートから分離させる。基材シートには、樹脂インク層との接触面に離型剤層を有するので、転写膜は容易に分離される。分離された転写膜を、転写シートとは別の基材の表面に貼り付ければ、別基材の表面に転写膜からなるパターン状の再帰反射性領域を有する物品が得られる。
【0036】
吸水によって基材シートから転写膜を分離させても、樹脂インク層と透明ビーズとが分離することはない。樹脂インク層と透明ビーズとが一体化された転写膜を、基材シートとは別の任意の材料からなる基材に貼り付けることができる。平坦な転写シートから分離された転写膜を、別基材の曲面や屈曲面に貼り付けることが可能である。直接は樹脂インク層や透明ビーズの形成作業が困難な材質や形状の基材に対しても、優れた再帰反射性を容易に付与できる。
転写膜に柔軟な変形性を与えるには、樹脂インク層として、柔軟性に優れた樹脂材料あるいは配合を採用することが望ましい。水と接触してもよい耐水性の材料が好ましい。転写膜の樹脂インク層としては、前記した樹脂材料が使用できる。転写膜が薄いほうが、別基材の表面に沿わせ易く、物品の表面に大きな盛り上がりも生じ難い。転写膜が薄過ぎると、取扱い時に割れたり破れたりし易くなる。
【0037】
転写シートを用いて再帰反射性物品を製造する方法では、予め転写シートを製造して準備しておけば、任意の基材物品に簡単に再帰反射機能を付与することが可能になる。転写シートの製造は、平坦な基材シートに樹脂インク層の印刷や透明ビーズの散布を行えばよいので、技術的に容易であり、品質性能も安定する。複雑な形状を有し表面特性にも違いのある各種物品に、直接に再帰反射性を付与する作業を行うのに比べて、はるかに能率的に安定した品質の仕上がりが得られる。
〔再帰反射性物品の直接製造〕
前記した転写シートの基材シートの代わりに、前記した各種材料の基材からなる物品に、直接に樹脂インク層を形成し、透明ビーズを散布し、不要個所の透明ビーズを除去すれば、様々な材質および形状からなる再帰反射性物品を製造することができる。
【0038】
この方法では、転写シートを製造してから、物品に貼り付けるという2段階の作業が必要とされない。曲面状の基材物品に沿わせて平坦な転写膜を貼り付けるには、樹脂インク層などに柔軟性や伸縮性が必要であるが、樹脂インクを直接に塗工したり印刷したりする場合には、それほどの柔軟性は要求されない。
〔再帰反射性物品〕
再帰反射性を必要とされる各種用途および構造を有する再帰反射性物品が得られる。
従来、再帰反射性を付与して使用されていた、各種の交通安全用具や作業資材のほか、従来の方法では実現できなかったような、高輝度の再帰反射性を有し、色彩や形状の多様性に優れ、意匠性あるいは装飾性の高い各種物品が得られる。
【0039】
具体的な物品の例として、建築物のタイル貼り壁面を構成するタイルに適用すれば、夜間ライトアップの際に極めて印象的な光の意匠効果を発揮する。ライトアップ時だけでなく昼間などにおいても、建築物の景観を向上するのに有効である。タイル貼り壁面以外の建築部材や屋外設置物にも適用できる。室内壁面や室内装飾品などに適用すれば、室内照明の効果を高めるなどの機能が発揮できる。陶板や金属板、プラスチック板からなる案内板の全体あるいは枠、表記文字などに適用すれば、遠くからでも視認し易い案内表示が実現できる。
宣伝広告用看板、道路に沿って設置される表示板にも適用できる。色彩が豊かでファッション性に富んだ各種の表示を実現できることになる。広告看板では、基材として、アルポリック板(デラニウム板)や金属板、陶板、その他のプラスチック板などが使用される。
【0040】
自動車や自転車、オートバイの安全表示に適用すれば、ファッション性と安全機能性との両方を兼ね備えたものとなる。特に、自動車やオートバイのスポーク、あるいは、後輪用泥はね防止マット、車幅確認部材に適用すれば、他者への注意喚起性を高めることができる。
これらの使用形態に合わせて、樹脂インク層と透明ビーズによって構成される再帰反射性領域のパターンとしては、帯状のものや、円形や多角形などの図形状のもの、文字や記号、具象シンボルを表すもの、これらのパターンを組み合わせたものなどが構成できる。写真や絵画のように、濃度や色彩が連続的に変化する画像を構成させることもできる。
【0041】
<日射過熱防止機能>
本発明の再帰反射性物品には、日射過熱防止機能がある。
例えば、危険物が収容される屋外貯蔵用タンクは、日射を受けて外面が過熱されるという問題がある。昇温すると爆発性や有毒ガスを発生する貯蔵物がある。安全性を確保するには、外面を冷却するなどの対策が必要である。このようなタンクの外面に、再帰反射性転写シートを用いて再帰反射性転写膜を貼り付けておけば、強い日射を効率的に再帰反射性転写膜が反射して、タンクの本体には過剰な熱エネルギーが伝達されないようにできる。その結果、特別な冷却装置がなくても、簡単かつ経済的に、タンク内の貯蔵物が異常に過熱することを防止できる。転写シートを用いることで、設置済のタンクに後から再帰反射機能を持たせることが、簡単に行える。
【0042】
トタン屋根の表面にも、同様の再帰反射性機能を付与すれば、屋根裏空間あるいは室内空間が過熱することが防止できる。この場合、トタン屋根材の生産過程で、トタン材料の表面に直接に樹脂インク層および透明ビーズによる再帰反射構造を形成してもよいし、転写シートを用いて転写膜を貼り付けてもよい。施工後のトタン屋根に、転写シートを用いて転写膜を貼り付けることもできる。トタン屋根以外の屋根材にも適用できることは言うまでもない。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、再帰反射性転写シートの製造工程を段階的に示している。
〔透明ビーズの散布〕
図1〜2は、透明ビーズの散布段階を示す。
基材シート11は、吸水性シート12の片側の表面に離型剤を塗工して離型剤層14が形成されたものである。吸水性シート12は、吸水性に優れた紙からなる。離型剤層14は、その上に形成される樹脂インク層22に対して離型性を有している。具体的には、離型剤として、シリコンコーティング剤を塗工している。基材シート11は、吸水性シート12側の表面は親水性で吸水性を示し、離型剤層14側の表面は撥水性を示す。
【0044】
基材シート11の離型剤層14の上には、樹脂インクが塗工されて樹脂インク層22が形成される。樹脂インク層22は、スクリーン印刷によって所定のパターン状に形成されている。樹脂インク層22の厚みは、後述する透明ビーズ24の粒径と同じ程度に設定される。樹脂インクとして、以下の配合を有するものが使用される。
<樹脂インクの配合>
アクリル−シリコン樹脂 100部
マイカ 5部
着色成分 10部
キシレン(希釈溶剤) 5部
離型剤層14の表面には、樹脂インク層22が形成されておらず、離型剤層14が露出している表面がある。
【0045】
このようにして樹脂インク層22が形成された基材シート11の全面に、透明ビーズ24を散布する。透明ビーズ24として、ガラス材料からなるUB−02MG(ユニオン社製、平均粒径35μm)を使用する。HI2544(日本電気硝子社製、平均粒径35μm)を使用した場合も、同様の性能が得られた。
なお、透明ビーズ24の散布は、樹脂インク層22が完全に固化するまでの段階で行う。具体的には、樹脂インクの塗工終了後、樹脂インクのポットライフ時間内に透明ビーズ24を散布する。
図2では、透明ビーズ24が、樹脂インク層22および離型剤層14の表面に単層で密に配置されている理想的な状態を例示しているが、実際には、透明ビーズ24が重なっていたり、機能に影響がない範囲でわずかな隙間があいていたりしても構わない。
【0046】
〔透明ビーズの押圧〕
図3に示すように、透明ビーズ24の上方に平坦なプレス板30を配置し、下方に押圧する。未だ固化していない樹脂インク層22に載った状態の透明ビーズ24は、樹脂インク層22に押し込まれる。個々の透明ビーズ24は、その一部、具体的には半分ぐらいが、樹脂インク層22に埋め込まれた状態が最も好ましい。離型剤層14の表面に存在する透明ビーズ24には、プレス板30からの押圧力が加わっても、離型剤層14に埋め込まれることはない。
この工程によって、透明ビーズ24と樹脂インク層22との結合が強化される。透明ビーズ24の下側の表面全体が、樹脂インク層22と密着した状態になる。
【0047】
〔透明ビーズの除去〕
図4に示すように、透明ビーズ24のうち、離型剤層14の表面に存在していた透明ビーズ24を除去する。樹脂インク層22に一部が埋め込まれた透明ビーズ24は、除去せずに残す。
具体的には、吸水性シート12および離型剤層14からなる基材の表面を、刷毛ローラや刷毛で軽くブラッシングするだけで、疎水性の離型材層14に載った透明ビーズ24は容易に脱落する。
樹脂インク層22は、透明ビーズ24を除去する段階では、透明ビーズ24が脱落しない程度まで固化していればよく、完全に硬化している必要はない。
【0048】
透明ビーズ24が除去された後、樹脂インク層22を、常温〜180℃で1昼夜〜10分かけて加熱乾燥させ、樹脂インク層22を十分に固化させれば、その後の取扱いで、透明ビーズ24が脱落するようなことが防げる。
このようにして、吸水性シート12と離型剤層14とからなる基材シート11、樹脂インク層22、および、透明ビーズ24からなる転写シート10が完成する。この転写シート10は、表面に再帰反射性の領域を有する再帰反射性転写シート10である。
〔転写による再帰反射性タイルの製造〕
図5〜7には、前記した再帰反射性転写シート10を用いて、別の物品に再帰反射性を付与する方法を示している。
【0049】
図5に示すように、転写シート10を、水槽などに溜められた水40の中に漬ける。通常、約30秒、水中に漬けておけばよい。
転写シート10の基材シート11は、吸水性シート12側の表面から水40が迅速に吸収され、基材シート11の離型剤層14側の表面から樹脂インク層22が分離する。基材シート11に対して樹脂インク層22を滑らせるようにすると、容易に分離することができる。水中で、あるいは水40から取り出した転写シート10に対して、基材シート11の表面から樹脂インク層22を滑らせるようにすると、容易に分離することができる。
【0050】
図6に示すように、基材シート11と分離された樹脂インク層22(透明ビーズ24付着)は、転写膜20となる。基材シート11は廃棄してもよいし、再使用することもできる。図6では、転写膜20の断面が、複数個所の樹脂インク層22に分割された状態になっているが、各部分の樹脂インク層22は連結されて一体化され、1枚の転写膜20を構成している。
図7(a)に示すように、予め用意された陶磁器製の基材タイル52の表面に、転写膜20を貼り付ける。水40に濡れた状態の転写膜20をそのまま貼り付けて、水40の付着力で転写膜20を基材タイル52の表面に密着させれば、隙間なく貼り付けることができる。
【0051】
転写膜20を、60〜130℃で加熱乾燥させ、水分を蒸発させて除去すれば、転写膜20は基材タイル52に強く接合されて、容易には剥がれない状態になる。
さらに、転写膜20が貼り付けられたタイル52を、100〜350℃で30秒〜60分かけて加熱処理することで、転写膜20の樹脂インク層22が基材タイル52に強固に接着された状態で硬化する。この処理によって、基材タイル52と転写膜20とは完全に一体化する。雨などの水分が付着したり、表面が擦られたりしても、転写膜20が剥がれることはない。なお、前記温度条件の加熱処理では、透明ビーズ24が過度に溶融したり変質したりすることはない。ちなみに、前記したガラス材料からなる透明ビーズ24の溶融温度は、550〜600℃である。
【0052】
図7(b)に示すように、基材タイル52の表面に、転写膜20によるパターン状の再帰反射性領域が形成された再帰反射性タイル50が得られる。
〔再帰反射性タイルの直接製造方法〕
図8、9は、転写シート10を使用せずに、再帰反射性タイル50を製造する方法を示している。基本的な製造工程は、図1〜4に示す転写シート10の製造工程と共通している。
転写シート10における基材シート11の代わりに、基材タイル52を用いる。基材タイル52の表面には硬質の釉薬層が形成されているので、透明ビーズ24の付着性はない。
【0053】
図8に示すように、基材タイル52の表面に、樹脂インク層22をパターン形成し、その上に透明ビーズ24を散布する。樹脂インク層22が存在せず基材タイル52が直接に露出している表面にも透明ビーズ24が配置される。
基材タイル52を、刷毛や刷毛ローラを使って軽くブラッシングし、基材タイル52の上から透明ビーズ24を除去する。
図9に示すように、樹脂インク層22以外の基材タイル52表面からは透明ビーズ24が容易に脱落して除去される。樹脂インク層22の上には透明ビーズ24が密に配置される。前記同様に、透明ビーズ24の上からプレス板30で押圧して、透明ビーズ24の一部分を樹脂インク層22に埋め込んでいる。プレス板30の代わりにゴムローラを使用してもよい。
【0054】
その後、前記同様の加熱処理を行って、樹脂インク層22および透明ビーズ24を基材タイル52に強固に接合一体化させれば、再帰反射性タイル50が得られる。
【0055】
【発明の効果】
本発明にかかる再帰反射性物品の製造方法では、基材表面にパターン状に塗工した樹脂インクが固化する前に透明ビーズを散布するので、散布された透明ビーズは樹脂インクの表面に付着し、樹脂インク以外の基材表面の透明ビーズは容易に除去できる。その後で樹脂インクを固化させれば、樹脂インク層の表面に十分な量の透明ビーズが配置された所望パターンの再帰反射性領域を、容易に作製することができる。透明ビーズが樹脂インク層に埋没したり、樹脂インク層内で偏在したりすることがないので、再帰反射性を効率的に発揮して、高輝度の再帰反射性物品が生産性良く、製造されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態となる再帰反射性転写シートの製造工程のうち、第1段階を示す断面図
【図2】次の段階を示す断面図
【図3】次の段階を示す断面図
【図4】製造された転写シートの断面図
【図5】転写シートの使用方法を示し、第1段階の断面図
【図6】次の段階を示す断面図
【図7】製造された再帰反射性タイルの断面図(a)および平面図(b)
【図8】別の実施形態となる製造方法の第1段階の断面図
【図9】製造された再帰反射性タイルの断面図
【符号の説明】
10 再帰反射性転写シート
11 基材シート
12 吸水性シート
14 離型剤層
20 転写膜
22 樹脂インク層
24 透明ビーズ
30 プレス板
40 水
50 再帰反射性タイル
52 タイル基材
【発明の属する技術分野】
本発明は、再帰反射性物品の製造方法および再帰反射性物品に関し、詳しくは、表面に再帰反射性が付与された物品を製造する方法と、この方法で得られた再帰反射性物品とを対象にしている。
【0002】
【従来の技術】
再帰反射性とは、外部から入射した光を入射方向と同じ方向に反射させることで、視認性を高めたり、装飾的効果を発揮させたりできる特性を意味する。例えば、夜間に自動車のヘッドライトを効率良く運転者のほうに反射させて注意を促す安全標識に利用されている。広告媒体などに用いて、消費者の注目を集めるためにも利用される。
物品の表面に再帰反射性を付与する方法として、反射性の高いアルミニウム層、染料や顔料等からなる色素層、ガラスビーズ層を順次積層する方法が知られている。外部からの光は、最上層のガラスビーズを通過してアルミニウム層で反射し、再びガラスビーズを通過していく。ガラスビーズによる屈折作用で、入射光と同じ方向に反射光が出ていき、前記した再帰反射性が発現する。この技術では、光が色素層を通過することで、再帰反射光が色光として視認される。視覚的に注目され易い色を使って視認性を高めたり、色の異なる領域を組み合わせて色彩豊かな表現を行い、意匠性あるいは装飾性を高めたりすることもできる。
【0003】
本件特許出願人が先に特許出願している特許文献1の技術では、微細なマイカ片やアルミニウム粒子などの反射性のある材料と、ガラスビーズ、接着用樹脂が配合されたインキ組成物を、布や紙の表面に印刷する。このとき、ガラスビーズの粒径を、マイカ片などの反射材に比べて大きくしておく。印刷されたインク組成物が硬化する過程で、インク組成物の層内で反射材は沈み、ガラスビーズが表面に集まることで、外部の光は、表面のガラスビーズを通過したあと反射材で反射し、再びガラスビーズを通過して表面から再帰反射光として戻って行く。インキ組成物に色素を配合しておいたり、アルミニウム粒子を着色しておいたりすれば、再帰反射光に色を付けることもできる。この技術では、1層のインキ組成物を印刷するだけで、物品の表面に再帰反射性を付与することができるので、前記した3層印刷技術に比べて、はるかに製造が容易である。
【0004】
物品の表面に、文字や図柄をかたどったパターン状の再帰反射領域を設けるには、前記した反射層、色素層、ガラスビーズ層を順次、スクリーン印刷などでパターン状に形成したり、予め作製された再帰反射性シートをパターン状に切り取ったりする方法が採用される。前記した特許文献1でも、スクリーン印刷などでインク組成物を印刷しているが、3層毎にスクリーン印刷するのにくらべて、1層のインク組成物を印刷するだけでよいので、作製が容易である。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−303011号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
特許文献1の技術では、ガラスビーズがインク組成物の層内に埋め込まれてしまって、十分な再帰反射性が発揮できない場合がある。
インク組成物の層内で、表面にガラスビーズ、その下側に反射材が配置されるという層分離が理想的には行われず、ガラスビーズの一部がインク組成物層に完全に埋めこまれてしまうと、埋め込まれたガラスビーズは再帰反射作用を発揮できないことになる。インク組成物層の一部にガラスビーズが偏在すると、ガラスビーズが少ない部分では再帰反射性が弱くなる。インク組成物の取扱い性や塗工性を良好にするには、ガラスビーズの配合量には制限があるので、ガラスビーズの密度を一定以上に高めることは難しい。
【0007】
そのため、高輝度の再帰反射性を要求される場合には、前記した3層構造による製造方法を適用しなければならず、生産性が悪くなり、コストも高くついていた。
本発明の課題は、再帰反射性の高いパターン状の再帰反射性領域を有する物品を、生産性良く製造することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかる再帰反射性物品の製造方法は、基材の表面にパターン状の再帰反射性領域を有する物品を製造する方法であって、前記基材の表面に、樹脂インクをパターン状に塗工する工程(a)と、前記工程(a)で形成されたパターン状の樹脂インク層が固化する前に、樹脂インク層を含む前記基材の表面に透明ビーズを散布する工程(b)と、前記工程(b)で散布された透明ビーズのうち、前記樹脂インク層に付着した透明ビーズ以外の透明ビーズを除去する工程(c)と
前記樹脂インク層を硬化させる工程(d)とを含む。
【0009】
〔基材〕
再帰反射性物品の基本構造を構成する。使用目的や要求性能などに合わせて各種の構造材料が使用される。
具体的には、タイルおよび皿を包含する陶磁器類、ガラス、石材、木材、金属板、プラスチック板、合成樹脂フィルム、布帛、不織布、紙、天然および合成ゴム板などが挙げられる。勿論、複数の材料層の積層体や、複数の材料部分から組立てられた組立体などにも適用できる。最終的に使用される状態の完成品であってもよいし、製造途中の中間製品や部品段階の物品であってもよい。素材や原材料の段階の物品であってもよい。
【0010】
再帰反射性転写シートを製造する場合の基材には、転写シートとしての機能や特性に適した材料が選択される。
〔樹脂インク〕
透明ビーズを接合して保持する機能を有する。
以下に示す成分を適宜に組み合わせて樹脂インクが構成される。
<樹脂材料>
樹脂インクの基本成分である樹脂材料としては、造膜性を有するとともに、未固化状態で透明ビーズに対する付着性を示すものが好ましい。
【0011】
熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の何れも使用できる。湿気硬化型や紫外線硬化型の樹脂も使用できる。水系樹脂、有機溶剤系樹脂、それらの混合溶媒系樹脂も何れもが使用できる。具体的には、アクリル系、ウレタン系、エポキシ系、エチレン酢ビ系、ポバール系、シリコーン系、ポリエステル系、ナイロン系、オレフィン系、天然ゴム系、アルキッド系、塩ビ系などの樹脂が挙げられる。これらの樹脂の共重合体も使用できる。一般的な接着性樹脂材料が使用できる。また、市販の接着用樹脂がそのまま使用できる場合もある。
熱硬化性樹脂の場合、熱硬化温度が透明ビーズの機能を損なわない程度のものが好ましい。熱硬化温度が高過ぎると、加熱硬化処理において、透明ビーズが変形したり溶融したりして、再帰反射特性が損なわれる。具体的な熱硬化温度として、550℃以下が採用できる。
【0012】
樹脂材料が透明性に優れたものであれば、透明ビーズを通過して樹脂インク層に到達した光を、樹脂インク層内の反射材や色素成分で反射させて、色光を作り出すのに有効である。また、樹脂インク層を通過した光が、基材表面で反射することで、基材表面の色や質感を、再帰反射光の一部に付与することができる。この場合、樹脂インクには色素成分が配合されていなくてもよいし、色素成分と基材色とで複合的な色調を発現させることもできる。
樹脂材料が不透明材料であれば、透明ビーズに入射した光は全て、透明ビーズの球内面あるいは透明ビーズと樹脂インク層との境界面で反射するか樹脂インク層で吸収される。この場合は、樹脂インク層内での反射材と色素成分とによる色光の生成は果たせない。
【0013】
基材物品に直接に樹脂インク層を塗工して再帰反射性を付与する場合は、基材に対して接合性の高い樹脂材料が好ましい。転写シートに適用する場合には、基材に対して化学的に反応して接着することがない樹脂材料が好ましい。
<反射材>
樹脂インクの配合成分として、微細な反射材がある。この反射材は、透明ビーズを通過した光を反射して透明ビーズのほうに返す機能を有する。透明ビーズのみによる再帰反射に比べて、反射光を強くできる。
反射材は、実質的に完全な反射性を有する材料のほか、一部の光を透過させる透過性のある反射材も使用できる。透過性反射材のほうが、樹脂インクに配合された色素成分による光の色づけが行われやすい。また、透明ビーズ内で反射した光と樹脂インク層の反射材で反射した光とが多重反射光として放出されることで、透明ビーズのみの再帰反射光に比べて、より視認されやすく色彩性および意匠性にも優れた再帰反射光が得られる。
【0014】
反射材は、微細な燐片状、粒子状、繊維状などの形態で使用される。反射材の粒径として、0.1〜200μmに設定できる。微細な反射材は、樹脂インク中に均一に配合することができ、反射機能も良好に発揮できる。
反射材の具体的材料として、前記した透過性反射材に該当するマイカがある。マイカは、雲母を原料として薄い燐片状に加工されたものである。一般的にマイカの反射光は白色である。マイカ表面に、酸化チタンや酸化鉄の被覆をしておくと、反射性能が高まる。反射材として、アルミニウム等の表面反射性を有する金属、無機材料、鉱物なども使用できる。反射材が、着色されたものであれば、反射機能に加えて着色機能も発揮することができる。例えば、アルミニウム粒子は、シルバー色の反射光を出す。着色アルミニウム粒子は、その着色された色の反射光を出す。ノンリーフィングタイプのアルミニウム粒子は、表面酸化が起こり難く、良好な反射性を持続でき、使用に適したものとなる。
【0015】
反射材による反射機能を生かすには、樹脂インクに光透過性を有するものを用いることが望ましい。
樹脂インク中における反射材の配合量は、反射材の種類や要求性能によっても異なるが、通常、樹脂インク全体の固形分100重量部に対して0〜90重量部に設定できる。好ましくは、10部〜20部である。反射材の配合量が多過ぎると、色素成分を隠蔽してしまって、色光が得られ難くなる。この場合も、反射材の反射特性による色付けが生じることはある。反射材の量が多過ぎると、樹脂インク中の樹脂分の割合が少なくなり、樹脂インク内に反射材を固定したり樹脂インク層の表面に透明ビーズを固定したりする力が弱くなったり、堅牢性に問題が生じたりする。
【0016】
<色素成分>
樹脂インクの配合成分として、色素成分がある。色素成分は樹脂インクを通過する光に色をつけて、色光からなる再帰反射光を作ることができる。色素成分の具体例として、通常の塗料用や染色用の着色材料が使用でき、各種の顔料あるいは染料が使用できる。プラスチック成形用の着色材料も使用できる。色素成分は、樹脂インク中に分散するものであってもよいし、溶解してしまうものであってもよい。
なお、タイルや陶磁器の色づけに使用されている釉薬あるいは無機顔料は使用に適さない。これらの材料は、比較的に高温(700〜1000℃)で焼成しなければ発色せず、このような高温処理では、透明ビーズが溶融してしまうからである。
【0017】
色素成分は、粒子状のものや燐片状のもの繊維状のものなどが使用できる。色素成分の粒径を、0.01〜1μmの範囲に設定できる。一般的な市販の色素成分は、粒径1μm未満である。
樹脂インクに、透光性のある反射材が配合されている場合、色素成分の粒径を反射材よりも小さくしておくことが望ましい。これによって、樹脂インク層の上層には反射材、下層に着色成分が配置され易くなり、良好な反射特性を発揮させることができる。色素成分が反射材の反射機能を阻害し難くなる。
樹脂インク中における色素成分の配合量は、色素成分の種類や要求性能によっても異なる。
【0018】
<その他の成分>
樹脂インクには、上記した以外にも、必要に応じて、通常の樹脂インクに配合される各種配合成分が配合できる。
例えば、シランカップリング剤を配合しておくと、ガラスからなる透明ビーズと樹脂インクとの接合力を高めることができる。色素成分の分散を助ける分散剤がある。樹脂インク層のひび割れを防ぐ、ひび割れ防止剤がある。樹脂インクの粘度を適度に調整する粘度調整剤がある。硬化剤や硬化促進剤、硬化遅延剤がある。溶剤や消泡剤も含まれる。架橋剤や粘性付与剤、安定剤も使用できる。
【0019】
樹脂インクは、塗工してから固化して表面の付着性がなくなるまでの時間が十分にあるものが好ましい。樹脂インクに配合する溶剤などの成分調整によっても、固化特性は調整できる。
〔樹脂インクの塗工〕
所定の配合に調製された樹脂インクは、通常の塗装技術あるいは印刷技術などの塗工手段で、基材の表面にパターン状に塗工することができる。
印刷技術として、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット印刷、コーティングなどが採用できる。
【0020】
樹脂インクの塗工厚みは、再帰反射性物品の用途や要求性能によっても異なるが、通常、透明ビーズの粒径以下に設定される。透明ビーズの粒径によって、適切な樹脂インク層の厚みが変わる。樹脂インク層に透明ビーズの一部が埋め込まれた状態でも、透明ビーズの下側に一定の厚みの樹脂インクが存在していることが望ましい。透明ビーズの粒径が大きいほど、樹脂インク層の厚みを増やすことになる。
樹脂インク層を、材料や配合の異なる複数の層を積層して構成することもできる。例えば、反射性の高い層と、透明性の高い層と、着色層とを順次積層することなどが可能である。
【0021】
基材の表面には、樹脂インク層で複数のパターンを形成することもできる。複数のパターンで、樹脂インクの材質や色を変えることもできる。
〔透明ビーズ〕
基本的には、通常の再帰反射性物品に使用されている透明ビーズと同様のものが使用できる。
透明ビーズの材料は、再帰反射性が発揮される透明性のある材料であればよく、例えば、ガラスが使用できる。硬質の合成樹脂や透明セラミック、天然鉱物なども使用可能である。透明ビーズの形状は、理想的には球形のものが良好な再帰反射性を発揮できる。球形の透明ビーズは、任意の方向から入射した光が球内面に焦点を結ぶように屈折して球内面で反射した光が再び屈折して入射した方向と平行な方向に出ていく。実用的には、工業的に得られる程度の球形度を有していれば十分な再帰反射性が発揮できる。球形以外の楕円体や長円体、多面体に近い形状のものでも、球形に比べると劣るが、ある程度の再帰反射性を示すことができる。
【0022】
透明ビーズは、入射した光を全て内部で再帰反射してもよいが、透明ビーズを通過して下層の樹脂インク層へ到達する光が含まれるようであってもよい。樹脂インク層に到達して、樹脂インク層の色素成分を通過したり反射したりした光には色がつくので、再帰反射光に色を付けることができる。透明ビーズ同士の間の隙間を通過した光も、樹脂インク層に到達して色素成分で色が付けられる。透明ビーズを通過する光の割合が多い場合は、樹脂インク層に反射材を配合して、樹脂インク層に到達した光を効率的に反射できるようにすることが好ましい。透明ビーズ内で反射する光と、樹脂インク層に到達する光との割合を調整することで、再帰反射光の色調や輝度などの特性を変えることができる。
【0023】
透明ビーズの粒径は、散布による層形成の容易さや樹脂インク層への付着性、再帰反射機能などの条件を考慮して設定され、通常は、1μm〜10mmの範囲に設定できる。
透明ビーズの屈折率によって、入射光および反射光の屈折作用が変わる。再帰反射性を良好にするには、屈折率1.5〜2.5のものが好ましい。より好ましくは、屈折率1.92±0.01である。
透明ビーズは透明性に優れたものが好ましい。但し、再帰反射性を損なわない程度に薄く着色された半透明のビーズも使用可能であり、この明細書において、透明ビーズとは、狭義の透明ビーズだけでなく半透明ビーズをも含む意味で使用している。
【0024】
透明ビーズとして、表面の一部に反射膜が形成された自反射性を有する透明ビーズが使用できる。自反射性透明ビーズとしては、通常、透明ビーズの半球部分程度に反射膜を設けておく。透明ビーズに入射した光が、反射膜の内面で反射して、良好な再帰反射性が発揮される。
自反射性透明ビーズに形成される反射膜として、アルミニウムなどの金属による蒸着膜が挙げられる。例えば、アルミニウム蒸着膜は、シルバー色の反射光が得られ、樹脂インク層の色素成分による着色と混色されると、少しくすみのある反射光になる。反射膜は、ある程度の光透過性を有するものでもよい。
【0025】
透明ビーズとして、材料や特性の異なる複数種類の透明ビーズを混合して使用すれば、単独種類の透明ビーズでは得られない再帰反射特性や表面性状を得ることもできる。
〔透明ビーズの散布〕
樹脂インク層を含む基材の表面に一様に散布すればよい。
通常の粉体材料の散布手段が採用できる。単に落下散布するだけでもよいし、エアー噴射による散布や攪拌羽根、揺動ノズルなどの機械的散布手段を採用することもできる。透明ビーズの堆積層や透明ビーズを収容した容器内に、樹脂インク層を含む基材を沈めたり通過させたりする方法も採用できる。
【0026】
透明ビーズの散布は、樹脂インク層の表面が固化する前に行う。樹脂インク層の固化形態は様々であるが、塗工後の一定時間は固化が進行せず、流動性を有していたり、軟化状態であったり、変形容易な状態である。表面には、他の物体を付着させる付着性を有している状態である。少なくとも樹脂インク層の表面に透明ビーズが付着しても、直ぐには脱落せずに留まることができる状態のときに、透明ビーズを散布する。固化が進行した樹脂インク層に、熱を加えたり、溶剤を塗布したりして、軟化あるいは付着性を回復させておいてもよい。
透明ビーズの散布は、樹脂インク層のパターン形状に関わらず、基材の表面全体に散布すればよいが、基材の表面のうち、樹脂インク層が存在する可能性のない領域には散布しないでおいてもよい。基材の表面のうち、樹脂インク層とその周辺のみに散布してもよい。但し、樹脂インク層の外形に対応する正確な形状のマスクなどを用いて、透明ビーズの散布領域を厳密に制限する必要はない。
【0027】
散布された透明ビーズは、樹脂インク層の表面に単層かつ最密充填状態で配置されていることが、透明ビーズで再帰反射する光の量が多くなる点で望ましい。前記したような、樹脂インク層での色付けや多重反射の効果を達成するには、透明ビーズ同士の間にわずかな隙間があいているほうが好ましい場合がある。透明ビーズを最密充填状態で配置したとしても、球状の透明ビーズであれば、透明ビーズ同士の間に隙間が発生し、透明ビーズの下方の樹脂インク層へ到達する光の量が十分に確保される。
基材の表面あるいは樹脂インク層の表面に、複数種類の透明ビーズを、それぞれ領域を分けて散布することもできる。樹脂インク層によるパターン形状のうち、再帰反射性を与えず、単なる色彩パターンを表現するだけの領域には、透明ビーズを散布しないでおくことができる。
【0028】
〔透明ビーズの除去〕
樹脂インク層に付着した透明ビーズ以外の透明ビーズは、基材との間に付着力や接合力は働かないので、容易に脱落する。また、樹脂インク層の上で、複層に重なって散布された透明ビーズについても、樹脂インク層に付着していない上層の透明ビーズは、容易に脱落する。
例えば、基材を裏返せば、透明ビーズを落下させることができる。圧力エアーを噴射して、透明ビーズを吹き飛ばすこともできる。真空吸引によって透明ビーズを吸い上げることもできる。基材を傾けて振動させたり衝撃を加えたりして、透明ビーズを滑り落とすこともできる。刷毛やブラシで掃き落とすこともできる。これらの方法を組み合わせてもよい。
【0029】
透明ビーズを除去する段階では、樹脂インク層は、完全に固化していてもよいし、完全には固化していなくてもよい。少なくとも、透明ビーズの除去作業の間、樹脂インク層に付着した透明ビーズが脱落しない程度になっていればよい。
〔樹脂インク層の固化〕
樹脂インク層が、経時的に固化して、透明ビーズと一体接合されるものであれば、透明ビーズを散布し、十分に固化するまで放置しておけばよい。
樹脂インク層の固化を促進させるために、空気を送風したり、温風やヒータで加熱したり、架橋促進剤を加えたりすることができる。
【0030】
樹脂インク層を硬化させる場合、加熱硬化処理を行ったり、紫外線照射などによる硬化処理を行ったりすることもできる。
樹脂インク層の硬化前あるいは硬化後に、透明ビーズの表面に保護層を形成することができる。保護層として、酸化チタンのような触媒的機能を持った単分子膜を形成することができる。透明ビーズの屈折作用による再帰反射特性を損なわない程度に、膜厚などの条件を設定しておくことが望ましい。
〔透明ビーズの押圧〕
樹脂インク層に付着した透明ビーズを押圧して、透明ビーズの一部分を樹脂インク層に埋めこむことができる。また、透明ビーズが単層で最密充填された状態を作り出すにも有効である。
【0031】
透明ビーズは、樹脂インク層に完全に埋めこまれてしまって外部に露出しないようになると、目的とする再帰反射機能が発揮できなくなる。そこで、通常は、透明ビーズの高さの約半分程度までが樹脂インク層に埋め込まれればよい。球状の透明ビーズであれば、半球部分が樹脂インク層に埋め込まれ、残りの半球部分が樹脂インク層の上に露出している状態にできる。
透明ビーズを押圧することで、透明ビーズと樹脂インク層との接合性あるいは一体性を強化することができる。また、樹脂インク層の表面が透明ビーズの外形に沿って変形することで、透明ビーズと樹脂インク層との間の隙間をなくせ、最密充填状態に近い状態で透明ビーズを配置することができる。透明ビーズから樹脂インク層への光の通過が良好になり、樹脂インク層の内部で光を反射させるのに有効である。
【0032】
透明ビーズの押圧埋め込みは、樹脂インク層が変形可能な状態の間に行う。樹脂インク層の固化が進行してしまうと困難である。
透明ビーズの押圧手段としては、透明ビーズの上にプレス部材を配置して圧力を加えればよい。樹脂インク層の全体に配置された透明ビーズを均等に押圧するには、樹脂インク層あるいは基材の表面に対応する面形状のプレス板を使用すればよい。基材および樹脂インク層が平坦であれば平坦なプレス板が使用できる。基材および樹脂インク層が曲面や凹凸を有する表面であれば、それに対応する曲面や凹凸のプレス板が使用できる。ローラー状のプレス部材を、樹脂インク層の表面に沿って転動させてもよい。樹脂インク層の表面形状に合わせて柔軟に変形できるパッド状のプレス部材を押し当ててもよい。プレス部材として、ゴムなどの弾性材料が使用できる。
【0033】
透明ビーズに加える押圧力は、前記したような埋め込み状態が得られればよい。
透明ビーズに押圧力を加えた状態で、樹脂インク層の固化が進むまで保持していてもよいし、透明ビーズが元に戻らなければ、直ぐに押圧力を取り除いてもよい。
押圧力の印加は、1度だけでもよいし、何度か繰り返してもよい。ローラー状のプレス部材を何回か通過させることもできる。
〔転写シート〕
再帰反射性物品の具体例として、転写シートが挙げられる。転写シートの製造方法として、以下の方法が採用できる。
【0034】
基材として、吸水性シートの表面に離型剤が塗工された基材シートを用いる。基材シートの材料や構造は、通常の転写シートと同様でよい。
基材シートを構成する吸水性シートは、紙あるいは合成樹脂フィルムなどが使用される。離型剤は、吸水性シートに対する樹脂インク層の分離を可能にするとともに、透明ビーズに対する付着性のない材料が使用される。撥水性を有する材料が好ましい。離型剤としては、通常の転写シートの場合と同様の材料が使用できる。吸水性シートに塗工された離型剤は、吸水性シートの表面に離型剤層を形成する。
【0035】
基材に転写シート用の基材シートを使用する以外は、前記した再帰反射性物品の製造工程と同様の工程を経て、基材シートの表面に、樹脂インク層に透明ビーズが付着してなるパターン状の転写膜が配置された転写シートが得られる。
〔転写シートによる再帰反射性物品の製造〕
前記転写シートを使って、別の再帰反射性物品を製造することができる。基本的には、通常の転写シートによる、図柄や模様の形成方法と同様の技術が適用される。
転写シートの基材シートすなわち吸水性シートを吸水させることで、樹脂インク層と透明ビーズとからなるパターン形状の転写膜を基材シートから分離させる。基材シートには、樹脂インク層との接触面に離型剤層を有するので、転写膜は容易に分離される。分離された転写膜を、転写シートとは別の基材の表面に貼り付ければ、別基材の表面に転写膜からなるパターン状の再帰反射性領域を有する物品が得られる。
【0036】
吸水によって基材シートから転写膜を分離させても、樹脂インク層と透明ビーズとが分離することはない。樹脂インク層と透明ビーズとが一体化された転写膜を、基材シートとは別の任意の材料からなる基材に貼り付けることができる。平坦な転写シートから分離された転写膜を、別基材の曲面や屈曲面に貼り付けることが可能である。直接は樹脂インク層や透明ビーズの形成作業が困難な材質や形状の基材に対しても、優れた再帰反射性を容易に付与できる。
転写膜に柔軟な変形性を与えるには、樹脂インク層として、柔軟性に優れた樹脂材料あるいは配合を採用することが望ましい。水と接触してもよい耐水性の材料が好ましい。転写膜の樹脂インク層としては、前記した樹脂材料が使用できる。転写膜が薄いほうが、別基材の表面に沿わせ易く、物品の表面に大きな盛り上がりも生じ難い。転写膜が薄過ぎると、取扱い時に割れたり破れたりし易くなる。
【0037】
転写シートを用いて再帰反射性物品を製造する方法では、予め転写シートを製造して準備しておけば、任意の基材物品に簡単に再帰反射機能を付与することが可能になる。転写シートの製造は、平坦な基材シートに樹脂インク層の印刷や透明ビーズの散布を行えばよいので、技術的に容易であり、品質性能も安定する。複雑な形状を有し表面特性にも違いのある各種物品に、直接に再帰反射性を付与する作業を行うのに比べて、はるかに能率的に安定した品質の仕上がりが得られる。
〔再帰反射性物品の直接製造〕
前記した転写シートの基材シートの代わりに、前記した各種材料の基材からなる物品に、直接に樹脂インク層を形成し、透明ビーズを散布し、不要個所の透明ビーズを除去すれば、様々な材質および形状からなる再帰反射性物品を製造することができる。
【0038】
この方法では、転写シートを製造してから、物品に貼り付けるという2段階の作業が必要とされない。曲面状の基材物品に沿わせて平坦な転写膜を貼り付けるには、樹脂インク層などに柔軟性や伸縮性が必要であるが、樹脂インクを直接に塗工したり印刷したりする場合には、それほどの柔軟性は要求されない。
〔再帰反射性物品〕
再帰反射性を必要とされる各種用途および構造を有する再帰反射性物品が得られる。
従来、再帰反射性を付与して使用されていた、各種の交通安全用具や作業資材のほか、従来の方法では実現できなかったような、高輝度の再帰反射性を有し、色彩や形状の多様性に優れ、意匠性あるいは装飾性の高い各種物品が得られる。
【0039】
具体的な物品の例として、建築物のタイル貼り壁面を構成するタイルに適用すれば、夜間ライトアップの際に極めて印象的な光の意匠効果を発揮する。ライトアップ時だけでなく昼間などにおいても、建築物の景観を向上するのに有効である。タイル貼り壁面以外の建築部材や屋外設置物にも適用できる。室内壁面や室内装飾品などに適用すれば、室内照明の効果を高めるなどの機能が発揮できる。陶板や金属板、プラスチック板からなる案内板の全体あるいは枠、表記文字などに適用すれば、遠くからでも視認し易い案内表示が実現できる。
宣伝広告用看板、道路に沿って設置される表示板にも適用できる。色彩が豊かでファッション性に富んだ各種の表示を実現できることになる。広告看板では、基材として、アルポリック板(デラニウム板)や金属板、陶板、その他のプラスチック板などが使用される。
【0040】
自動車や自転車、オートバイの安全表示に適用すれば、ファッション性と安全機能性との両方を兼ね備えたものとなる。特に、自動車やオートバイのスポーク、あるいは、後輪用泥はね防止マット、車幅確認部材に適用すれば、他者への注意喚起性を高めることができる。
これらの使用形態に合わせて、樹脂インク層と透明ビーズによって構成される再帰反射性領域のパターンとしては、帯状のものや、円形や多角形などの図形状のもの、文字や記号、具象シンボルを表すもの、これらのパターンを組み合わせたものなどが構成できる。写真や絵画のように、濃度や色彩が連続的に変化する画像を構成させることもできる。
【0041】
<日射過熱防止機能>
本発明の再帰反射性物品には、日射過熱防止機能がある。
例えば、危険物が収容される屋外貯蔵用タンクは、日射を受けて外面が過熱されるという問題がある。昇温すると爆発性や有毒ガスを発生する貯蔵物がある。安全性を確保するには、外面を冷却するなどの対策が必要である。このようなタンクの外面に、再帰反射性転写シートを用いて再帰反射性転写膜を貼り付けておけば、強い日射を効率的に再帰反射性転写膜が反射して、タンクの本体には過剰な熱エネルギーが伝達されないようにできる。その結果、特別な冷却装置がなくても、簡単かつ経済的に、タンク内の貯蔵物が異常に過熱することを防止できる。転写シートを用いることで、設置済のタンクに後から再帰反射機能を持たせることが、簡単に行える。
【0042】
トタン屋根の表面にも、同様の再帰反射性機能を付与すれば、屋根裏空間あるいは室内空間が過熱することが防止できる。この場合、トタン屋根材の生産過程で、トタン材料の表面に直接に樹脂インク層および透明ビーズによる再帰反射構造を形成してもよいし、転写シートを用いて転写膜を貼り付けてもよい。施工後のトタン屋根に、転写シートを用いて転写膜を貼り付けることもできる。トタン屋根以外の屋根材にも適用できることは言うまでもない。
【0043】
【発明の実施の形態】
図1〜図4は、再帰反射性転写シートの製造工程を段階的に示している。
〔透明ビーズの散布〕
図1〜2は、透明ビーズの散布段階を示す。
基材シート11は、吸水性シート12の片側の表面に離型剤を塗工して離型剤層14が形成されたものである。吸水性シート12は、吸水性に優れた紙からなる。離型剤層14は、その上に形成される樹脂インク層22に対して離型性を有している。具体的には、離型剤として、シリコンコーティング剤を塗工している。基材シート11は、吸水性シート12側の表面は親水性で吸水性を示し、離型剤層14側の表面は撥水性を示す。
【0044】
基材シート11の離型剤層14の上には、樹脂インクが塗工されて樹脂インク層22が形成される。樹脂インク層22は、スクリーン印刷によって所定のパターン状に形成されている。樹脂インク層22の厚みは、後述する透明ビーズ24の粒径と同じ程度に設定される。樹脂インクとして、以下の配合を有するものが使用される。
<樹脂インクの配合>
アクリル−シリコン樹脂 100部
マイカ 5部
着色成分 10部
キシレン(希釈溶剤) 5部
離型剤層14の表面には、樹脂インク層22が形成されておらず、離型剤層14が露出している表面がある。
【0045】
このようにして樹脂インク層22が形成された基材シート11の全面に、透明ビーズ24を散布する。透明ビーズ24として、ガラス材料からなるUB−02MG(ユニオン社製、平均粒径35μm)を使用する。HI2544(日本電気硝子社製、平均粒径35μm)を使用した場合も、同様の性能が得られた。
なお、透明ビーズ24の散布は、樹脂インク層22が完全に固化するまでの段階で行う。具体的には、樹脂インクの塗工終了後、樹脂インクのポットライフ時間内に透明ビーズ24を散布する。
図2では、透明ビーズ24が、樹脂インク層22および離型剤層14の表面に単層で密に配置されている理想的な状態を例示しているが、実際には、透明ビーズ24が重なっていたり、機能に影響がない範囲でわずかな隙間があいていたりしても構わない。
【0046】
〔透明ビーズの押圧〕
図3に示すように、透明ビーズ24の上方に平坦なプレス板30を配置し、下方に押圧する。未だ固化していない樹脂インク層22に載った状態の透明ビーズ24は、樹脂インク層22に押し込まれる。個々の透明ビーズ24は、その一部、具体的には半分ぐらいが、樹脂インク層22に埋め込まれた状態が最も好ましい。離型剤層14の表面に存在する透明ビーズ24には、プレス板30からの押圧力が加わっても、離型剤層14に埋め込まれることはない。
この工程によって、透明ビーズ24と樹脂インク層22との結合が強化される。透明ビーズ24の下側の表面全体が、樹脂インク層22と密着した状態になる。
【0047】
〔透明ビーズの除去〕
図4に示すように、透明ビーズ24のうち、離型剤層14の表面に存在していた透明ビーズ24を除去する。樹脂インク層22に一部が埋め込まれた透明ビーズ24は、除去せずに残す。
具体的には、吸水性シート12および離型剤層14からなる基材の表面を、刷毛ローラや刷毛で軽くブラッシングするだけで、疎水性の離型材層14に載った透明ビーズ24は容易に脱落する。
樹脂インク層22は、透明ビーズ24を除去する段階では、透明ビーズ24が脱落しない程度まで固化していればよく、完全に硬化している必要はない。
【0048】
透明ビーズ24が除去された後、樹脂インク層22を、常温〜180℃で1昼夜〜10分かけて加熱乾燥させ、樹脂インク層22を十分に固化させれば、その後の取扱いで、透明ビーズ24が脱落するようなことが防げる。
このようにして、吸水性シート12と離型剤層14とからなる基材シート11、樹脂インク層22、および、透明ビーズ24からなる転写シート10が完成する。この転写シート10は、表面に再帰反射性の領域を有する再帰反射性転写シート10である。
〔転写による再帰反射性タイルの製造〕
図5〜7には、前記した再帰反射性転写シート10を用いて、別の物品に再帰反射性を付与する方法を示している。
【0049】
図5に示すように、転写シート10を、水槽などに溜められた水40の中に漬ける。通常、約30秒、水中に漬けておけばよい。
転写シート10の基材シート11は、吸水性シート12側の表面から水40が迅速に吸収され、基材シート11の離型剤層14側の表面から樹脂インク層22が分離する。基材シート11に対して樹脂インク層22を滑らせるようにすると、容易に分離することができる。水中で、あるいは水40から取り出した転写シート10に対して、基材シート11の表面から樹脂インク層22を滑らせるようにすると、容易に分離することができる。
【0050】
図6に示すように、基材シート11と分離された樹脂インク層22(透明ビーズ24付着)は、転写膜20となる。基材シート11は廃棄してもよいし、再使用することもできる。図6では、転写膜20の断面が、複数個所の樹脂インク層22に分割された状態になっているが、各部分の樹脂インク層22は連結されて一体化され、1枚の転写膜20を構成している。
図7(a)に示すように、予め用意された陶磁器製の基材タイル52の表面に、転写膜20を貼り付ける。水40に濡れた状態の転写膜20をそのまま貼り付けて、水40の付着力で転写膜20を基材タイル52の表面に密着させれば、隙間なく貼り付けることができる。
【0051】
転写膜20を、60〜130℃で加熱乾燥させ、水分を蒸発させて除去すれば、転写膜20は基材タイル52に強く接合されて、容易には剥がれない状態になる。
さらに、転写膜20が貼り付けられたタイル52を、100〜350℃で30秒〜60分かけて加熱処理することで、転写膜20の樹脂インク層22が基材タイル52に強固に接着された状態で硬化する。この処理によって、基材タイル52と転写膜20とは完全に一体化する。雨などの水分が付着したり、表面が擦られたりしても、転写膜20が剥がれることはない。なお、前記温度条件の加熱処理では、透明ビーズ24が過度に溶融したり変質したりすることはない。ちなみに、前記したガラス材料からなる透明ビーズ24の溶融温度は、550〜600℃である。
【0052】
図7(b)に示すように、基材タイル52の表面に、転写膜20によるパターン状の再帰反射性領域が形成された再帰反射性タイル50が得られる。
〔再帰反射性タイルの直接製造方法〕
図8、9は、転写シート10を使用せずに、再帰反射性タイル50を製造する方法を示している。基本的な製造工程は、図1〜4に示す転写シート10の製造工程と共通している。
転写シート10における基材シート11の代わりに、基材タイル52を用いる。基材タイル52の表面には硬質の釉薬層が形成されているので、透明ビーズ24の付着性はない。
【0053】
図8に示すように、基材タイル52の表面に、樹脂インク層22をパターン形成し、その上に透明ビーズ24を散布する。樹脂インク層22が存在せず基材タイル52が直接に露出している表面にも透明ビーズ24が配置される。
基材タイル52を、刷毛や刷毛ローラを使って軽くブラッシングし、基材タイル52の上から透明ビーズ24を除去する。
図9に示すように、樹脂インク層22以外の基材タイル52表面からは透明ビーズ24が容易に脱落して除去される。樹脂インク層22の上には透明ビーズ24が密に配置される。前記同様に、透明ビーズ24の上からプレス板30で押圧して、透明ビーズ24の一部分を樹脂インク層22に埋め込んでいる。プレス板30の代わりにゴムローラを使用してもよい。
【0054】
その後、前記同様の加熱処理を行って、樹脂インク層22および透明ビーズ24を基材タイル52に強固に接合一体化させれば、再帰反射性タイル50が得られる。
【0055】
【発明の効果】
本発明にかかる再帰反射性物品の製造方法では、基材表面にパターン状に塗工した樹脂インクが固化する前に透明ビーズを散布するので、散布された透明ビーズは樹脂インクの表面に付着し、樹脂インク以外の基材表面の透明ビーズは容易に除去できる。その後で樹脂インクを固化させれば、樹脂インク層の表面に十分な量の透明ビーズが配置された所望パターンの再帰反射性領域を、容易に作製することができる。透明ビーズが樹脂インク層に埋没したり、樹脂インク層内で偏在したりすることがないので、再帰反射性を効率的に発揮して、高輝度の再帰反射性物品が生産性良く、製造されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態となる再帰反射性転写シートの製造工程のうち、第1段階を示す断面図
【図2】次の段階を示す断面図
【図3】次の段階を示す断面図
【図4】製造された転写シートの断面図
【図5】転写シートの使用方法を示し、第1段階の断面図
【図6】次の段階を示す断面図
【図7】製造された再帰反射性タイルの断面図(a)および平面図(b)
【図8】別の実施形態となる製造方法の第1段階の断面図
【図9】製造された再帰反射性タイルの断面図
【符号の説明】
10 再帰反射性転写シート
11 基材シート
12 吸水性シート
14 離型剤層
20 転写膜
22 樹脂インク層
24 透明ビーズ
30 プレス板
40 水
50 再帰反射性タイル
52 タイル基材
Claims (11)
- 基材の表面にパターン状の再帰反射性領域を有する物品を製造する方法であって、
前記基材の表面に、樹脂インクをパターン状に塗工する工程(a)と、
前記工程(a)で形成されたパターン状の樹脂インク層が固化する前に、樹脂インク層を含む前記基材の表面に透明ビーズを散布する工程(b)と、
前記工程(b)で散布された透明ビーズのうち、前記樹脂インク層に付着した透明ビーズ以外の透明ビーズを除去する工程(c)と
前記樹脂インク層を固化させる工程(d)と
を含む再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(a)が、前記樹脂インクとして、光透過性を有する樹脂インクに微細な反射材が分散された反射性樹脂インクを用いる
請求項1に記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(a)が、前記樹脂インクとして、光透過性を有する樹脂インクに色素成分が配合された着色樹脂インクを用いる
請求項1または2に記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(b)が、前記透明ビーズとして、屈折率1.5〜2.5の透明ビーズを用いる
請求項1〜3の何れかに記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(c)が、前記透明ビーズとして、その表面の一部に反射膜が形成された自反射性透明ビーズを用いる
請求項1〜4の何れかに記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(b)の後で前記工程(d)の前に、前記樹脂インク層に付着した透明ビーズを押圧して、透明ビーズの一部分を樹脂インク層に埋めこむ工程(p)を、さらに含む
請求項1〜5の何れかに記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(a)が、前記基材として、タイルおよび皿を包含する陶磁器類、ガラス、石材、木材、金属板、プラスチック板、合成樹脂フィルム、布帛、不織布、紙、天然および合成ゴム板からなる群から選ばれる何れか1種を用いる
請求項1〜6の何れかに記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(a)が、前記基材として、吸水性シートの表面に離型剤が塗工された基材シートを用い、
前記工程(b)が、前記透明ビーズを、前記基材シートの離型剤が塗工された表面に散布し、
前記物品として、前記基材シートの表面に、前記樹脂インク層に前記透明ビーズが付着してなるパターン状の転写膜が配置された転写シートを得る
請求項1〜7の何れかに記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 前記請求項8に記載の方法で得られた転写シートの基材シートを吸水させることで、前記転写膜を前記基材シートから分離させる工程(m)と、
前記工程(m)で分離された転写膜を、転写シートとは別の基材の表面に貼り付ける工程(n)とを含み、
前記別基材の表面に前記転写シートからなるパターン状の再帰反射性領域を有する物品を製造する
再帰反射性物品の製造方法。 - 前記工程(n)が、前記別基材として、タイルおよび皿を包含する陶磁器類、ガラス、石材、木材、金属板、プラスチック板、合成樹脂フィルム、布帛、不織布、紙、天然および合成ゴム板からなる群から選ばれる何れか1種を用いる
請求項9に記載の再帰反射性物品の製造方法。 - 請求項1〜10の何れかの方法で得られ、
前記基材の表面にパターン状の再帰反射性領域を有する
再帰反射性物品。
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