JP2004137640A - 通気性の高い布地の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、比較的簡単な方法で通気性が高く、しかも、透けて見えることのない布地を提供することを目的としている。
【解決手段】収縮率30〜60%の高収縮性ポリエステル短繊維と綿繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸として紡出する。この複合糸を、少なくとも一部に用いて製織又は製編して布地とする。できた布地を80℃以上の熱水に10分間以上浸漬して、収縮処理する。サイドバイサイドの複合糸は、高収縮性ポリエステル短繊維が収縮し、その周りに綿繊維が螺旋状に巻き付いた状態となる。これによって、通気性の高い布地を得ることができる。
【選択図】 図1
【解決手段】収縮率30〜60%の高収縮性ポリエステル短繊維と綿繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸として紡出する。この複合糸を、少なくとも一部に用いて製織又は製編して布地とする。できた布地を80℃以上の熱水に10分間以上浸漬して、収縮処理する。サイドバイサイドの複合糸は、高収縮性ポリエステル短繊維が収縮し、その周りに綿繊維が螺旋状に巻き付いた状態となる。これによって、通気性の高い布地を得ることができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、通気性の高い布地の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
夏物の衣料では、布地の通気性の向上が求められている。通気性の高い布地の製造方法としては、幾つかの方法がある。
【0003】
第1には、織物の密度を粗くする方法がある。第2には、使用する糸を細くする方法がある。これらは、主として糸と糸の間に隙間を作ることで通気性を向上させるものである。第3の方法としては、二重織りにする方法がある。この方法も基本的には上記2つの方法と同じで、2重織りにすることで糸と糸の間隔や、表地と裏地の間の隙間を確保して通気性を上げるものである。第4の方法としては、繊維束と単糸とを端子の撚りと逆撚りとなるように撚った複合糸を使用する方法がある(たとえば特許文献1)。単糸の撚りと逆の撚りを複合糸に加えることで、単糸が解撚されて膨らみを持ったソフト感の凸状の部分が作成される。一方繊維束から生成された部分は凹状になり、しまった感じがする。この凹状の溝に空気の流れが流れ、通気性が高まる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−17532号 図1、段落0009
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、織物の密度を粗くしたり、使用する糸を細くして通気性を上げると、衣服にしたときに透けたり、目ずれを起こすといった問題がある。また、2重織りは、製織時に高度の技術が必要となり、コストが上がる。また、特許文献1に記載のものでは、通気性の向上が十分ではない。
【0006】
本発明は、このような事実から考えられたもので、比較的簡単な方法で通気性が高く、しかも、透けて見えることのない布地を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の通気性の高い布地の製造方法は、収縮率30〜60%の高収縮性繊維と低収縮性繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸とし、少なくとも一部に該複合糸を用いて製織又は製編して布地とし、該布地を収縮処理することによって上記高収縮性繊維を収縮処理したことを特徴としている。
【0008】
上記低収縮性繊維が綿繊維である構成としたり、上記高収縮性繊維が、高収縮性ポリエステル短繊維である構成とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。本発明の複合糸では、収縮率30〜60%の高収縮性繊維として、高収縮性ポリエステル短繊維を用いることができる。高収縮性ポリエステル短繊維は、80℃以上の熱水に10分以上浸漬すると、その長さが収縮する性質を有するものである。
【0010】
ここで、収縮率とは、原綿(収縮処理前)の状態と、収縮処理した後の繊維の長さを、荷重をかけずに直線状にして測定し、
{(収縮処理前の長さ−収縮処理後の長さ)/収縮処理前の長さ}×100%
として計算する。
【0011】
他方の低収縮性繊維とは、高収縮性繊維の収縮処理をしたときに、収縮が少ない繊維を指す。高収縮性繊維が高収縮性ポリエステル短繊維の場合は、熱水で収縮させるので、熱水処理による収縮が少ない短繊維として、綿繊維、麻繊維、高強度再生セルロース繊維(商品名:テンセル)、レーヨン等の再生セルロース繊維等のセルロース系短繊維が挙げられる。特に、綿繊維又は高強度再生セルロース繊維が強度、風合いの面から好ましい。
【0012】
これらの繊維の原綿を通常の紡績工程に仕掛け、高収縮性ポリエステル短繊維100%の粗糸と、綿100%の粗糸を作成する。粗糸の太さは、単位長さ当たりの重量で示すが、それぞれの粗糸の太さは、重量比で40:60〜60:40となるようにした。高収縮性繊維の割合が重量比で40%未満になると、セルロース系短繊維を含む糸全体としての収縮不足となる。逆に高収縮性繊維の割合が重量比で60%を越えると、セルロース系短繊維の絶対量が少なすぎて、通気性の確保が困難となる。
【0013】
上記の粗糸を綿糸用の一般的なリング精紡機にかけ、精紡交撚により複合糸を紡出する。精紡交撚とは、リング精紡機の同一の錘に、高収縮性ポリエステル短繊維100%の粗糸と綿100%の粗糸の2本の粗糸を相互に離間した状態で供給して2本のフリースを形成し、これらを合わせて1本の糸として撚りを加えるものである。糸番手は、10〜60番手で、撚係数は3.0〜4.0である。精紡交撚により紡出された複合糸は、サイドバイサイドの糸となる。
【0014】
図1はサイドバイサイドの糸の断面構造を示す。サイドバイサイドの糸は、図1に示すように糸を任意の位置で輪切りにしたとき、それぞれの繊維が分かれた状態になっている。図1は、混紡比が50:50なので、複合糸1の断面の半分が○で示す綿繊維2で他の半分が●で示す高収縮性ポリエステル短繊維3となっている。勿論、混紡割合が異なれば、半分ではなく4:6のように混紡割合に応じて変化することになる。
【0015】
上記のようにして紡出されたサイドバイサイドの複合糸を、通常の織機又は編機にかけて織物又は編物(これらを総称してここでは「布地」という)を作成する。
【0016】
なお、発明の効果を発揮する織物としては、接続点の少ない、浮きの大きい組織が望ましい。たとえば、平織りよりは綾織りが好ましく、綾織りよりもサテン織りが好ましく、サテン織りよりも二重織りが好ましい。編組織としては、通常のメリヤス編みでも優れた通気性が得られるが、織組織と同様に浮きの大きな組織が好ましい。
【0017】
次に、上記のようにして形成された布地中に含まれる高収縮性繊維を収縮させる。収縮させる処理条件は、高収縮性繊維の種類により適宜選択されるが、実施例では、高収縮性ポリエステル短繊維なので、織物を、温度80℃以上の熱水に10分間以上浸漬して行った。ただし、この工程は特に従来の工程に付加する必要がない。というのは、通常、織機で織った布地は、糊抜精錬されるが、この際に、95〜100℃の温水に30〜40分浸漬するので、この工程で収縮処理も併せて行うことができるからである。
【0018】
図2は、収縮処理されたサイドバイサイドの複合糸を示す写真である。図3は、比較のために示す通常の糸の写真である。図2に示す本発明の複合糸1は、高収縮性ポリエステル短繊維3が収縮して、周囲に綿繊維2が螺旋状に巻き付いた形状となる。図2に示す本発明の複合糸1は、図3の通常の糸と比べて蛇行が大きく、山と山との間にできる谷が深い。これによって、織物や編物といった布地になったとき、隣接する糸相互間に隙間が確保され、通気性が向上する。通気度は、JIS L 1096A法(フラジール形法)で測定した。
【0019】
なお、複合糸の作り方としては、本発明の実施例に記載した精紡交撚の他に、混打綿機の段階で混合する方法や、練条機や粗紡機で混合する方法などが知られている。
【0020】
しかし、この先願に記載された複合糸は、糸の断面が、図1のサイドバイサイドの糸のように高収縮性繊維と低収縮性繊維とに分離せずに、両方の繊維がバラバラに混合した形態となる。そのため、収縮処理をしても、複合糸として全体が嵩高にはなるが、図2に示す本発明の複合糸のように、高収縮性繊維の周囲にセルロース系短繊維が螺旋状に巻き付いた形態にはならない。したがって、通気性に関しては、却って悪くなる。これに対し、本発明のサイドバイサイドの複合糸では、図2に示すように糸の周囲に隙間が多く確保されることから、通気性に優れた布地を得ることができる。
【0021】
織物の作成にあたっては、本発明のサイドバイサイドの複合糸を、経糸と緯糸の双方の全糸に使用してもよいが、経糸、緯糸の一部ずつに使用してもよい。また、収縮処理した後の糸を観察すると、経方向はあまり収縮していないので、緯糸のみの使用としてもよい。
【0022】
〔実施例〕
高収縮性繊維として高収縮性ポリエステル短繊維(商品銘柄:TR08、帝人株式会社製)を用い、低収縮性繊維としては、綿繊維を用いた。これらの繊維からそれぞれ100%の粗糸を作成した。粗糸の太さは、双方の繊維の配合割合が重量比で50:50となるようにした。紡出する複合糸は、50番手とした。
【0023】
こうして紡出された複合糸を、経糸と緯糸の全てに用いて平織物に織った。密度は、経83本/吋、緯69本/吋とした。
【0024】
この織物を、95〜100℃の温水に30〜40分浸漬して糊抜精練をした。次に、95〜100℃で、30〜40分かけて漂白した。この後、シルケット加工、ヒートセット、樹脂加工を順次施して仕上げとなった。
【0025】
図4は、こうして仕上げられた織物の写真である。糸と糸との間の織り目に小さな孔が多数できており、この孔を空気が自由に通過できるので、通気性に優れた布地になるということが分かる。ただし、1つ1つの孔が小さく、布地の面積に対する孔の面積の比率も大きくないことから、透けて見えることはない。
【0026】
JIS L 1096A法(フラジール形法)で通気度を測定したところ、96.3cc/secとなった。加工揚がり密度は、経:111本/吋、緯:72本/吋で、加工揚がり番手は、経糸51番手、緯糸45番手であった。すなわち、経糸は若干細くなり、緯糸はかなり太くなった。このことから、緯糸の方が経糸より収縮し易いことが分かる。
【0027】
〔比較例〕
通常のポリエステル短繊維と綿繊維とをスライバーで混合して粗糸を作り、50番手の混紡糸を紡出した。こうして紡出された混紡糸を、経糸と緯糸の全てに用いて平織物に織った。密度は、実施例と同じく、経83本/吋、緯69本/吋とした。この織物を、95〜100℃の温水に30〜40分浸漬して糊抜精練をし、実施例と同じ条件で、漂白、シルケット加工、ヒートセット、樹脂加工をして仕上げとなった。
【0028】
図5は、こうして仕上げられた織物の写真である。織り目の孔は図4に比べて非常に小さくなっており、通気性が悪いことが分かる。
【0029】
JIS L 1096A法(フラジール形法)で通気度を測定したところ、72.0cc/secとなった。加工揚がり密度は、経:110本/吋、緯:73本/吋で、実施例と殆ど同じである。しかし、加工揚がり番手は、経糸48番手、緯糸48番手で、経緯とも同じ太さで、僅かに収縮していた。
【0030】
以上のことから、本発明の実施例の織物は、比較例の織物に対して通気度が34%高くなった。また、本発明の布地は、通気性が向上するが、透けて見えることもない。
【0031】
上記の実施例では、高収縮性繊維と低収縮性繊維の双方を短繊維とし、精紡交撚によりサイドバイサイドの糸を紡出した。しかし、高収縮性繊維をフィラメントとし、低収縮性繊維を短繊維として、それぞれを離間した状態で供給し、フィラメントを短繊維の周囲に螺旋状に巻き付けた複合糸としても同様の効果を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、収縮率30〜60%の高収縮性繊維と低収縮性繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸とし、該複合糸を製織編して布地とし、該布地を収縮処理することによって上記高収縮性繊維を収縮処理するので、通気性の高い布地を比較的簡単な方法で得ることができる。この布地は、通気性が向上するが、透けて見えることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】サイドバイサイドの糸の断面図である。
【図2】収縮処理されたサイドバイサイドの複合糸を示す写真である。
【図3】比較のために示す通常の糸の写真である。
【図4】本発明のサイドバイサイド糸で織り、収縮処理がされた織物の写真である。
【図5】比較のために通常の糸で織った織物の写真である。
【符号の説明】
1 複合糸(サイドバイサイドの糸)
2 綿繊維
3 高収縮性ポリエステル短繊維
【発明が属する技術分野】
本発明は、通気性の高い布地の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
夏物の衣料では、布地の通気性の向上が求められている。通気性の高い布地の製造方法としては、幾つかの方法がある。
【0003】
第1には、織物の密度を粗くする方法がある。第2には、使用する糸を細くする方法がある。これらは、主として糸と糸の間に隙間を作ることで通気性を向上させるものである。第3の方法としては、二重織りにする方法がある。この方法も基本的には上記2つの方法と同じで、2重織りにすることで糸と糸の間隔や、表地と裏地の間の隙間を確保して通気性を上げるものである。第4の方法としては、繊維束と単糸とを端子の撚りと逆撚りとなるように撚った複合糸を使用する方法がある(たとえば特許文献1)。単糸の撚りと逆の撚りを複合糸に加えることで、単糸が解撚されて膨らみを持ったソフト感の凸状の部分が作成される。一方繊維束から生成された部分は凹状になり、しまった感じがする。この凹状の溝に空気の流れが流れ、通気性が高まる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−17532号 図1、段落0009
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、織物の密度を粗くしたり、使用する糸を細くして通気性を上げると、衣服にしたときに透けたり、目ずれを起こすといった問題がある。また、2重織りは、製織時に高度の技術が必要となり、コストが上がる。また、特許文献1に記載のものでは、通気性の向上が十分ではない。
【0006】
本発明は、このような事実から考えられたもので、比較的簡単な方法で通気性が高く、しかも、透けて見えることのない布地を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために本発明の通気性の高い布地の製造方法は、収縮率30〜60%の高収縮性繊維と低収縮性繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸とし、少なくとも一部に該複合糸を用いて製織又は製編して布地とし、該布地を収縮処理することによって上記高収縮性繊維を収縮処理したことを特徴としている。
【0008】
上記低収縮性繊維が綿繊維である構成としたり、上記高収縮性繊維が、高収縮性ポリエステル短繊維である構成とすることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を説明する。本発明の複合糸では、収縮率30〜60%の高収縮性繊維として、高収縮性ポリエステル短繊維を用いることができる。高収縮性ポリエステル短繊維は、80℃以上の熱水に10分以上浸漬すると、その長さが収縮する性質を有するものである。
【0010】
ここで、収縮率とは、原綿(収縮処理前)の状態と、収縮処理した後の繊維の長さを、荷重をかけずに直線状にして測定し、
{(収縮処理前の長さ−収縮処理後の長さ)/収縮処理前の長さ}×100%
として計算する。
【0011】
他方の低収縮性繊維とは、高収縮性繊維の収縮処理をしたときに、収縮が少ない繊維を指す。高収縮性繊維が高収縮性ポリエステル短繊維の場合は、熱水で収縮させるので、熱水処理による収縮が少ない短繊維として、綿繊維、麻繊維、高強度再生セルロース繊維(商品名:テンセル)、レーヨン等の再生セルロース繊維等のセルロース系短繊維が挙げられる。特に、綿繊維又は高強度再生セルロース繊維が強度、風合いの面から好ましい。
【0012】
これらの繊維の原綿を通常の紡績工程に仕掛け、高収縮性ポリエステル短繊維100%の粗糸と、綿100%の粗糸を作成する。粗糸の太さは、単位長さ当たりの重量で示すが、それぞれの粗糸の太さは、重量比で40:60〜60:40となるようにした。高収縮性繊維の割合が重量比で40%未満になると、セルロース系短繊維を含む糸全体としての収縮不足となる。逆に高収縮性繊維の割合が重量比で60%を越えると、セルロース系短繊維の絶対量が少なすぎて、通気性の確保が困難となる。
【0013】
上記の粗糸を綿糸用の一般的なリング精紡機にかけ、精紡交撚により複合糸を紡出する。精紡交撚とは、リング精紡機の同一の錘に、高収縮性ポリエステル短繊維100%の粗糸と綿100%の粗糸の2本の粗糸を相互に離間した状態で供給して2本のフリースを形成し、これらを合わせて1本の糸として撚りを加えるものである。糸番手は、10〜60番手で、撚係数は3.0〜4.0である。精紡交撚により紡出された複合糸は、サイドバイサイドの糸となる。
【0014】
図1はサイドバイサイドの糸の断面構造を示す。サイドバイサイドの糸は、図1に示すように糸を任意の位置で輪切りにしたとき、それぞれの繊維が分かれた状態になっている。図1は、混紡比が50:50なので、複合糸1の断面の半分が○で示す綿繊維2で他の半分が●で示す高収縮性ポリエステル短繊維3となっている。勿論、混紡割合が異なれば、半分ではなく4:6のように混紡割合に応じて変化することになる。
【0015】
上記のようにして紡出されたサイドバイサイドの複合糸を、通常の織機又は編機にかけて織物又は編物(これらを総称してここでは「布地」という)を作成する。
【0016】
なお、発明の効果を発揮する織物としては、接続点の少ない、浮きの大きい組織が望ましい。たとえば、平織りよりは綾織りが好ましく、綾織りよりもサテン織りが好ましく、サテン織りよりも二重織りが好ましい。編組織としては、通常のメリヤス編みでも優れた通気性が得られるが、織組織と同様に浮きの大きな組織が好ましい。
【0017】
次に、上記のようにして形成された布地中に含まれる高収縮性繊維を収縮させる。収縮させる処理条件は、高収縮性繊維の種類により適宜選択されるが、実施例では、高収縮性ポリエステル短繊維なので、織物を、温度80℃以上の熱水に10分間以上浸漬して行った。ただし、この工程は特に従来の工程に付加する必要がない。というのは、通常、織機で織った布地は、糊抜精錬されるが、この際に、95〜100℃の温水に30〜40分浸漬するので、この工程で収縮処理も併せて行うことができるからである。
【0018】
図2は、収縮処理されたサイドバイサイドの複合糸を示す写真である。図3は、比較のために示す通常の糸の写真である。図2に示す本発明の複合糸1は、高収縮性ポリエステル短繊維3が収縮して、周囲に綿繊維2が螺旋状に巻き付いた形状となる。図2に示す本発明の複合糸1は、図3の通常の糸と比べて蛇行が大きく、山と山との間にできる谷が深い。これによって、織物や編物といった布地になったとき、隣接する糸相互間に隙間が確保され、通気性が向上する。通気度は、JIS L 1096A法(フラジール形法)で測定した。
【0019】
なお、複合糸の作り方としては、本発明の実施例に記載した精紡交撚の他に、混打綿機の段階で混合する方法や、練条機や粗紡機で混合する方法などが知られている。
【0020】
しかし、この先願に記載された複合糸は、糸の断面が、図1のサイドバイサイドの糸のように高収縮性繊維と低収縮性繊維とに分離せずに、両方の繊維がバラバラに混合した形態となる。そのため、収縮処理をしても、複合糸として全体が嵩高にはなるが、図2に示す本発明の複合糸のように、高収縮性繊維の周囲にセルロース系短繊維が螺旋状に巻き付いた形態にはならない。したがって、通気性に関しては、却って悪くなる。これに対し、本発明のサイドバイサイドの複合糸では、図2に示すように糸の周囲に隙間が多く確保されることから、通気性に優れた布地を得ることができる。
【0021】
織物の作成にあたっては、本発明のサイドバイサイドの複合糸を、経糸と緯糸の双方の全糸に使用してもよいが、経糸、緯糸の一部ずつに使用してもよい。また、収縮処理した後の糸を観察すると、経方向はあまり収縮していないので、緯糸のみの使用としてもよい。
【0022】
〔実施例〕
高収縮性繊維として高収縮性ポリエステル短繊維(商品銘柄:TR08、帝人株式会社製)を用い、低収縮性繊維としては、綿繊維を用いた。これらの繊維からそれぞれ100%の粗糸を作成した。粗糸の太さは、双方の繊維の配合割合が重量比で50:50となるようにした。紡出する複合糸は、50番手とした。
【0023】
こうして紡出された複合糸を、経糸と緯糸の全てに用いて平織物に織った。密度は、経83本/吋、緯69本/吋とした。
【0024】
この織物を、95〜100℃の温水に30〜40分浸漬して糊抜精練をした。次に、95〜100℃で、30〜40分かけて漂白した。この後、シルケット加工、ヒートセット、樹脂加工を順次施して仕上げとなった。
【0025】
図4は、こうして仕上げられた織物の写真である。糸と糸との間の織り目に小さな孔が多数できており、この孔を空気が自由に通過できるので、通気性に優れた布地になるということが分かる。ただし、1つ1つの孔が小さく、布地の面積に対する孔の面積の比率も大きくないことから、透けて見えることはない。
【0026】
JIS L 1096A法(フラジール形法)で通気度を測定したところ、96.3cc/secとなった。加工揚がり密度は、経:111本/吋、緯:72本/吋で、加工揚がり番手は、経糸51番手、緯糸45番手であった。すなわち、経糸は若干細くなり、緯糸はかなり太くなった。このことから、緯糸の方が経糸より収縮し易いことが分かる。
【0027】
〔比較例〕
通常のポリエステル短繊維と綿繊維とをスライバーで混合して粗糸を作り、50番手の混紡糸を紡出した。こうして紡出された混紡糸を、経糸と緯糸の全てに用いて平織物に織った。密度は、実施例と同じく、経83本/吋、緯69本/吋とした。この織物を、95〜100℃の温水に30〜40分浸漬して糊抜精練をし、実施例と同じ条件で、漂白、シルケット加工、ヒートセット、樹脂加工をして仕上げとなった。
【0028】
図5は、こうして仕上げられた織物の写真である。織り目の孔は図4に比べて非常に小さくなっており、通気性が悪いことが分かる。
【0029】
JIS L 1096A法(フラジール形法)で通気度を測定したところ、72.0cc/secとなった。加工揚がり密度は、経:110本/吋、緯:73本/吋で、実施例と殆ど同じである。しかし、加工揚がり番手は、経糸48番手、緯糸48番手で、経緯とも同じ太さで、僅かに収縮していた。
【0030】
以上のことから、本発明の実施例の織物は、比較例の織物に対して通気度が34%高くなった。また、本発明の布地は、通気性が向上するが、透けて見えることもない。
【0031】
上記の実施例では、高収縮性繊維と低収縮性繊維の双方を短繊維とし、精紡交撚によりサイドバイサイドの糸を紡出した。しかし、高収縮性繊維をフィラメントとし、低収縮性繊維を短繊維として、それぞれを離間した状態で供給し、フィラメントを短繊維の周囲に螺旋状に巻き付けた複合糸としても同様の効果を得ることができる。
【0032】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明は、収縮率30〜60%の高収縮性繊維と低収縮性繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸とし、該複合糸を製織編して布地とし、該布地を収縮処理することによって上記高収縮性繊維を収縮処理するので、通気性の高い布地を比較的簡単な方法で得ることができる。この布地は、通気性が向上するが、透けて見えることもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】サイドバイサイドの糸の断面図である。
【図2】収縮処理されたサイドバイサイドの複合糸を示す写真である。
【図3】比較のために示す通常の糸の写真である。
【図4】本発明のサイドバイサイド糸で織り、収縮処理がされた織物の写真である。
【図5】比較のために通常の糸で織った織物の写真である。
【符号の説明】
1 複合糸(サイドバイサイドの糸)
2 綿繊維
3 高収縮性ポリエステル短繊維
Claims (3)
- 収縮率30〜60%の高収縮性繊維と低収縮性繊維とを配合割合が重量比で40:60〜60:40のサイドバイサイドの複合糸とし、少なくとも一部に該複合糸を用いて製織又は製編して布地とし、該布地を収縮処理することによって上記高収縮性繊維を収縮処理したことを特徴とする通気性の高い布地の製造方法。
- 上記低収縮性繊維が綿繊維であることを特徴とする請求項1記載の通気性の高い布地の製造方法。
- 上記高収縮性繊維が、高収縮性ポリエステル短繊維であることを特徴とする請求項1又は2記載の通気性の高い布地の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2002305226A JP2004137640A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | 通気性の高い布地の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2002305226A JP2004137640A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | 通気性の高い布地の製造方法 |
Publications (1)
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JP2002305226A Pending JP2004137640A (ja) | 2002-10-21 | 2002-10-21 | 通気性の高い布地の製造方法 |
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Country | Link |
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JP (1) | JP2004137640A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011195971A (ja) * | 2010-03-17 | 2011-10-06 | Daiwabo Holdings Co Ltd | 複合糸、及びそれを用いた織編物 |
CN113564780A (zh) * | 2021-08-02 | 2021-10-29 | 金利来(中国)有限公司 | 一种羊毛混纺面料的制造方法 |
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2002
- 2002-10-21 JP JP2002305226A patent/JP2004137640A/ja active Pending
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2011195971A (ja) * | 2010-03-17 | 2011-10-06 | Daiwabo Holdings Co Ltd | 複合糸、及びそれを用いた織編物 |
CN113564780A (zh) * | 2021-08-02 | 2021-10-29 | 金利来(中国)有限公司 | 一种羊毛混纺面料的制造方法 |
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