JP2004131552A - 中空成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル系樹脂またはポリエーテル系樹脂を押出成形して得られる中空成形体であって、外表部は、他の部分よりも融解熱量が低いことを特徴とする中空成形体である。本発明の中空成形体は、融解熱量、すなわち結晶化度)の低い外表部で耐衝撃性やソフト感を確保すると共に、融解熱量、すなわち結晶化度の高い他の部分で剛性や耐クリープ特性などの機械的特性を確保する。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、棚板やコンクリート型枠などに適用される樹脂製中空成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、棚板やコンクリート型枠など、木材が用いられてきた分野に、軽量化、低コスト化などの観点から樹脂製の中空成形体を適用する動きが盛んである(例えば、特許文献1〜6)。こうした中空成形体では、従来、主にポリ塩化ビニルが用いられてきたが、廃棄時のダイオキシン発生の懸念から、ポリエチレンやポリプロピレンといった汎用のポリオレフィン系樹脂を原料とするものに移行している。ところが、ポリオレフィン系樹脂製の中空成形体では、例えば、荷重が加わったときのたわみ量が大きいなど、機械的強度が不十分であるといった問題を抱えていることから、これを解消すべく、補強芯などの補強材を用いた複合体とされる場合が多い。また、補強芯の如き補強材以外にも、例えばタルクなどの無機充填材などが適用される場合も多い。こうした無機充填材は、それ自体が補強材として作用する他、ポリオレフィンなどの結晶核として働き、成形体の結晶化度を増大させて機械的強度の向上に寄与する。
【0003】
ところで、最近では、「資源循環型社会の構築」といった視点で社会環境が大きく変化しようとしており、こうした観点から、樹脂製品においても、重要な品質として、廃棄時のリサイクルの容易性が求められつつある。
【0004】
しかしながら、上記の如き複合体では、廃棄時にマトリックス樹脂と補強材の分別が必要となる。よって、リサイクルに当たり、分別工程の必要がないものとして、補強材を使用しない構成の中空成形体への注目が高まっている。
【0005】
ところが、補強材を使用しない構成の中空成形体において、例えば、剛性の向上を目的として高い曲げ弾性率を発揮し得る樹脂を用いると、通常、衝撃に対して弱く、脆くなる傾向にある。
【0006】
【特許文献1】
特開平7−67738号公報
【特許文献2】
特開平8−70947号公報
【特許文献3】
特開平8−80226号公報
【特許文献4】
特開平8−103340号公報
【特許文献5】
特開平8−173259号公報
【特許文献6】
特開平8−294422号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、補強材を使用しない構成であって、剛性などの機械的強度と耐衝撃性を兼ね備えた中空成形体を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成し得た本発明の中空成形体は、ポリエステル系樹脂またはポリエーテル系樹脂を押出成形して得られる中空成形体であって、外表部は、他の部分よりも融解熱量が小さいところに要旨を有するものである。
【0009】
なお、上記中空成形体では、外表部の融解熱量Taと他の部分の融解熱量Tbとの比Tb/Taが1.1以上であるか、または外表部が非晶質であることが好ましい。
【0010】
上記中空成形体には、唯一の中空部を有するものの他、2以上の中空部を有するものが包含される。後者の場合、中空成形体としては、上面部、底面部および2つの側面部を有し、且つ、中空部は上面部と底面部を接続するリブ部で仕切られているものが挙げられる。
【0011】
本発明の中空成形体を構成する樹脂としては、その一部または全部が再生樹脂であってもよい。
【0012】
上記中空成形体を構成する樹脂がポリエステル系樹脂の場合、ポリエチレンテレフタレート(PET)またはポリブチレンテレフタレート(PBT)が好ましい。また、上記中空成形体を構成する樹脂がポリエーテル系樹脂の場合は、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)が好適である。
【0013】
また、上記中空成形体の好ましい態様としては、中空部側に張出部を有するもの;対向する2つのリブ部に挟まれる中空部が、該リブ部同士を接続する仕切り部でさらに仕切られているもの;側面部と該側面部に対向するリブ部に挟まれる中空部が、該側面部と該リブ部を接続する仕切り部でさらに仕切られているもの;が挙げられる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の中空成形体は補強材を使用しない構成であり、外表部の融解熱量が、他の部分の融解熱量よりも小さいところに最大の特徴を有している。
【0015】
同一組成の樹脂の場合では、融解熱量の相違は、結晶化度の相違に大きく影響を受ける。結晶化度が高い場合、その融解には多くの熱量を必要とするため、融解熱量は大きくなる。他方、結晶化度が低い場合は、その融解には、結晶化度が高い場合よりも少ない熱量しか必要としないため、融解熱量は低くなる。
【0016】
すなわち、融解熱量は結晶化度を表す一つの指標であり、本発明の中空成形体では、外表部の結晶化度が、他の部分よりも低い構造となっている。このような構成を採用することで、結晶化度の低い外表部で耐衝撃性やソフト感を確保すると共に、結晶化度の高い他の部分で剛性や耐クリープ特性などの機械的特性を確保するのである。
【0017】
外表部に耐衝撃性やソフト感を持たせると共に、他の部分に剛性や耐クリープ特性などの機械的特性を保障させるためには、外表部の融解熱量Taと他の部分の融解熱量Tbとの比Tb/Taが1.1以上であることが好ましい。
【0018】
Tb/Taが上記範囲を下回る場合は、外表部と他の部分との結晶化度の差が小さく、本発明の構成を採用する意義が希薄となる。他方、上記Tb/Taの上限は5.0であることが好ましく、これを超えるように冷却温度をコントロールすることは、実操業的に困難である。Tb/Taのより好ましい下限は1.3、より好ましい上限は3.0である。
【0019】
上記TaおよびTbは、上記外表部および他の部分を切り出して得た試料について、示差走査熱量計(DSC)を用いて昇温時のDSC曲線を測定し、このDSC曲線において観察される融解ピーク(吸熱ピーク)の熱量として求めることができる。なお、上記DSC曲線において、冷結晶化(昇温時の結晶化挙動)が観察される場合は、上記融解ピーク熱量から、昇温時の結晶化に伴うピーク(発熱ピーク)の熱量を引いた値がTaやTbに該当する。上記の融解ピーク熱量や昇温時の結晶化に伴うピーク熱量は、JIS K 7122の規定に従って測定することができる。
【0020】
なお、耐衝撃性やソフト感の確保の点では、外表部の融解熱量は低いほど、すなわち、外表部の結晶化度は低いほど好ましく、非晶質であることが最も好ましい。
【0021】
本発明の中空成形体は、押出成形を行うに当たり、樹脂押出物の冷却条件を制御し、外表部は急冷して結晶化度を低くすると共に、他の部分は徐冷して結晶化度をより高めることによって製造できる。
【0022】
従って、本発明の中空成形体の素材として用い得る樹脂は、溶融状態から冷却する際に、冷却速度を変更することで容易に結晶化度を制御し得る程度の結晶化速度を有するものでなければならない。このような樹脂としては、例えば結晶性のポリエステル系樹脂やポリエーテル系樹脂が挙げられる。
【0023】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、PET、PBT、ポリエチレン−2,6−ナフタレートなどの結晶性ポリエステル系樹脂が挙げられる。中でも、成形の容易さや低コストなどの観点から、PETやPBTが推奨される。
【0024】
ポリエーテル系樹脂としては、PEEK、ポリエーテルケトン、ポリオキシメチレンなどの結晶性ポリエーテル系樹脂が挙げられる。中でも、成形の容易さや、成形体としたときの機械的特性などの観点から、PEEKが好ましい。
【0025】
なお、上記のポリエステル系樹脂やポリエーテル系樹脂は、該樹脂製造後、一度も成形などに用いられていない所謂バージン品の他、再生品(再生樹脂)を用いてもよく、バージン品と再生品の混合物であってもよい。特にPETに関しては、所謂容器包装リサイクル法によって、特定業者にPETボトルの回収・再商品化が義務付けられており、再生PETの用途開発が求められているが、本発明の中空成形体は、こうした再生樹脂も適用できる点で極めて有用である。
【0026】
なお、本発明でいう「再生樹脂」とは、一旦成形体や繊維などとして用いられた後に廃棄物として回収された製品から得られるものの他、これらの製品の製造過程で生じたオフ品やバリなどから得られる全てのものを含む意味である。
【0027】
上記中空成形体を構成する樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの公知の添加剤を加えてもよい。ただし、中空成形体のリサイクルの際に分別が必要となるような補強材(例えばガラス繊維、カーボン繊維、中空成形体の成形に用いた樹脂と異なる種類の樹脂から構成される繊維などの補強繊維、タルクなどの補強用無機充填材など)は使用しない。
【0028】
本発明の中空成形体には、唯一の中空部を有するものも含まれる他、2以上の中空部を有するものも包含される。特に、上面部、底面部および2つの側面部を有し、且つ中空部が、上面部と底面部を接続するリブ部で仕切られていることが好ましい。その一例を図1〜図3に示す。なお、側面部と、上面部および/または底面部のなす角度は90°に限定されるものではなく、中空成形体の用途などに応じて適宜決定すればよい。また、例えば、側面部は、図1や図2に示すような平面の他、図3に示すように曲面であってもよい。この他、側面部に嵌合部を設けて、2以上の中空成形体が側面部同士で嵌合し得る態様としてもよい。
【0029】
本発明の中空成形体では、外周部(例えば、上述のリブ部を有する中空成形体にあっては、上面部、底面部および両側面部といった外周を形成する部分)の厚みが比較的薄いことが要求される(後述する)。よって、中空成形体の強度を確保する観点から、上記リブ部を有することが推奨されるのである。また、外表部を除く他の部分の結晶化度をより高める点でも、上記リブ部を設けることが好ましい(後述する)。
【0030】
なお、本発明の中空成形体は、例えば、図1のようにより広い面積を有する面を上面部および底面部としてもよく、反対に、より狭い面積を有する面を上面部および底面部としてもよい。また、上面部と底面部が同じ面積を有する中空成形体の他、異なる面積を有するものも本発明に包まれる。同様に、両側面部についても、同じ面積である中空成形体の他、異なる面積である中空成形体も本発明に包含される。また、リブ部と、上面部および/または底面部のなす角度は、図2に示すように90°であってもよく、他の角度であってもよい。
【0031】
本発明の中空成形体は、上記例示のポリエステル系樹脂またはポリエーテル系樹脂のペレットを、所望の断面形状に成形し得るように設計されたノズル(金型)を備えた押出機で押出し、これを冷却する工程を経て製造される。
【0032】
押出機およびノズル(金型)は特に限定されず、従来の中空成形体の押出成形に用いられているものが採用できる。例えば、押出機には、単軸押出機や二軸押出機を用いることができる。また、上述のリブ部を有する中空成形体の押出成形には、例えば、中空部を形成する芯材(中子)を複数備え、該芯材を支持すると共に外周部を形成するための外枠を有するノズルを、押出機のダイの先に装着して用いることができる。押出機の温度は、使用する樹脂によって異なるが、例えばPETでは255〜270℃、PBTでは220〜240℃、PEEKでは300〜350℃とすることが一般的である。
【0033】
中空成形体において、外表部の結晶化度を他の部分よりも低い構成とするには、上記の押出に引き続いて行う冷却工程での条件が重要となる。すなわち、外表部は結晶化度を低くするために急冷し、他の部分は結晶化度を高めるために徐冷する。
【0034】
よって、押出物の冷却に際しては、サイジングダイを用いて、外表部のみを極短時間で急冷する方法を採用することが好ましい。この場合、外表部を除く他の部分は、放冷して固化・結晶化させる。サイジングダイの温度(樹脂押出物と接触する内壁面の温度)は、中空成形体に用いられる樹脂のガラス転移温度以下とする。好ましくは5〜30℃(より好ましくは15℃以下)である。サイジングダイの温度は、水などの冷媒を循環させて制御する。樹脂押出物がサイジングダイを通過する時間は、中空成形体の外周部の厚み、設けるべき外表部の厚みや結晶化度などに応じて適宜決定されるが、一般的には1〜30秒(より好ましくは5〜10秒)とする。
【0035】
なお、中空成形体の形状によっては、上述のサイジングダイを用いずに、水槽などの冷却槽を通過させて冷却することも可能である。この場合、成形体の中空部に水などの冷媒が侵入すると、外表部を除く他の部分の結晶化が促進されず、成形体の機械的強度などが確保できなくなる場合がある他、成形体が歪んだりする傾向もあるため、樹脂押出物の押出初期の先端を圧縮などして中空部を閉じ、中空部への冷媒の侵入を防止する。
【0036】
冷却槽の冷媒の温度は、中空成形体に用いられる樹脂のガラス転移温度以下とする。好ましくは5〜30℃(より好ましくは15℃以下)である。また、樹脂押出物が冷却槽を通過する時間は、中空成形体の外周部の厚み、設けるべき外表部の厚みや結晶化度などに応じて適宜決定されるが、一般的には20〜150秒(より好ましくは30〜100秒)とする。
【0037】
ただし、中空成形体の外表部の厚み制御や、外表部を除く他の部分の結晶化度制御の容易さという点では、上述のサイジングダイによる冷却を採用する方が望ましい。
【0038】
上記のサイジングダイや冷却槽による冷却の後、引き取り、必要なサイズに切断して本発明の中空成形体が得られる。
【0039】
上記中空成形体の外周部の厚みは0.3mm以上5mm以下とすることが好ましい。より好ましくは1.5mm以上4mm以下である。外周部の厚みが上記範囲を下回る場合、中空成形体の機械的強度が不足する傾向にある。他方、外周部の厚みが上記範囲を超える場合では、押出後の冷却の際に、急冷された外表部に対し、他の部分の厚みが大き過ぎることになる。よって、一旦急冷されて低結晶化度(または非晶質)とされた外表部では、放冷中の他の部分から受ける熱の影響が大きいため、結晶化が進んでしまう。その結果、耐衝撃性などの特性が十分に確保できなくなる場合がある。
【0040】
また、中空成形体の外表部の厚みは、0.1mm以上3mm以下とすることが好ましい。より好ましくは0.5mm以上1mm以下である。外表部の厚みが上記範囲を下回る場合、耐衝撃性やソフト感が不十分となる傾向にある。他方、外表部の厚みが上記範囲を超える場合では、外表部を除く他の部分の厚みが小さくなるため、機械的強度などが低下する傾向にある。
【0041】
さらに、上記中空成形体では、中空成形体の外表部を除く他の部分の結晶化度をより高める観点から、中空部側に、上記リブ部や、張出部、仕切り部を有することが好ましい。これらの部分の存在によって、中空成形体の外周部の厚みをあまり大きくすることなく、中空成形体全体の熱容量を増大させ得るため、外表部の結晶化度を低く維持しつつ、外表部を除く他の部分の結晶化度をさらに高めることが可能となる。すなわち、リブ部、張出部、仕切り部を設けることで、押出成形において、外表部の急冷後放冷をする際に、これらの部分を含めた外表部を除く他の部分の冷却時間がより長くなる。その結果、外表部を除く他の部分の結晶化がより進行するのである。
【0042】
なお、リブ部、張出部、仕切り部は、外表部と直に接するものではないため、同じ樹脂量の場合、外周部の厚みを大きくするよりも、これらを設ける方が外表部に与える熱の影響は小さく、一旦低結晶化度とされた外表部の結晶化は抑制される。
【0043】
なお、張出部とは、図4に示すように、外周部および/またはリブ部から、中空部側へ張り出す部分を意味する。また、仕切り部とは、図5に示すように、対向する2つのリブ部を接続して、該リブ部間に挟まれる中空部を仕切る部分や、側面部と該側面部に対向するリブ部を接続して、該側面部と該リブ部に挟まれる中空部を仕切る部分を意味する。
【0044】
上記中空成形体は、リブ部と張出部の両者を有する態様であってもよく、さらに仕切り部も有する態様であってもよい。リブ部、張出部、仕切り部の厚みは、特に限定されないが、0.3〜5mmとすることが一般的である。また、リブ部、張出部、仕切り部を設ける数も、特に限定されず、外表部の結晶化を抑制し得る範囲で、適宜選択すればよい。例えばリブ部であれば、中空成形体に要求される機械的強度や質量との関係も考慮して決定されるが、中空成形体の長さ方向に平行に連続するリブ部を設ける場合では、該中空成形体の幅1mに対して、上記範囲の厚みのリブ部を30〜100個程度とすることが一般的である。複数のリブ部の各間隔は、等間隔であってもよく、等間隔でなくてもよい。
【0045】
また、張出部と、該張出部が接続する面のなす角度は90°であってもよく、他の角度であってもよい。さらに、仕切り部とリブ部や側面部のなす角度も、90°であってもよく、他の角度であってもよい。
【0046】
本発明の中空成形体は、従来の樹脂製中空成形体が使用されているあらゆる用途に適用可能であり、特に耐衝撃性と機械的強度の両者が要求される分野に好適である。主な用途としては、例えば、棚板、コンクリート型枠、テーブル天板、その他、床下地、天井地、壁パネルなどの建築材料などが挙げられる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものではなく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施をすることは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0048】
実施例1
原料樹脂として、再生PET樹脂(協栄産業社製)を用い、これを押出成形して図1に示す形状の中空成形体No.1を得た。成形温度は265℃とし、サイジングダイの冷却水の温度は10℃とし、樹脂押出物がサイジングダイを通過する時間は10秒とした。
【0049】
得られた中空成形体No.1の外周部の厚みは1.6mmであり、そのうち、外表部の厚みが0.8mm、中空部側の厚みが0.8mmである。また、中空成形体No.1の図1中Lの長さは800mm、Hの長さは12mm、Dの長さは290mmとした。
【0050】
この中空成形体No.1を切削して、外表部のサンプル、および中空部側のサンプル(他の部分のサンプル)を切り出し、融解熱量を測定した。
【0051】
融解熱量の測定は、上記各サンプル約5mgを精秤した後、DSC(島津製作所社製「DSC−60」)を用い、JIS K 7122の規定に従ってDSC曲線を得、このDSC曲線から該規定に従って各融解熱量を求めた。その結果、外表部の融解熱量は20.0J/g、中空部側の部分(他の部分)の融解熱量は39.5J/gであり、融解熱量比は2.0であった。
【0052】
また、融解熱量測定用サンプルを切り出した後の中空成形体No.1について、荷重たわみ量測定を行った。荷重たわみ量測定は、中空成形体No.1からD方向の長さが800mmとなるようにサンプルを切り出し、図6に示すように該サンプルのL方向両端を、断面が一辺20mmの正方形の角材10に載せ、該L方向200mm当たりに、9.8Nの負荷がかかるように、錘9を載せてたわませることにより行った(なお、図6では、中空成形体サンプル8の中空部を図示しない)。たわみ量の測定は、負荷をかけた直後、負荷をかけて1日後、5日後、7日後に夫々行った。その後負荷を取り除き、その直後、および1日後のたわみ量も測定した。たわみ量は、ダイヤルゲージを用いて測定した。結果を表1に示す。
【0053】
実施例2
樹脂押出物がサイジングダイを通過する時間を7秒とした他は、実施例1と同様にして中空成形体No.2を得た。
【0054】
得られた中空成形体No.2の外周部の厚みは2.0mmであり、そのうち、外表部の厚みが0.6mm、中空部側の厚みが1.4mmである。中空成形体No.2の図1中L、H、Dの各長さは、中空成形体No.1と同じとした。
【0055】
この中空成形体No.2について、実施例1と同様にして融解熱量を測定した。図7は、中空成形体No.2の外表部のDSC曲線、図8は、中空成形体No.2の中空部側の部分(他の部分)のDSC曲線である。
【0056】
図7に示すように、外表部では、昇温時において、結晶化に起因する発熱ピークが観察される(図7中、ピークB)。よって、外表部の融解熱量は、融解に伴う吸熱ピーク(図7中、ピークA)の熱量から、上記ピークBの熱量を引いた値となる。他方、中空部側の部分(他の部分)では、図8に示すように、昇温の際に、結晶化に起因する発熱ピークが観察されていない。よって、中空部側の部分の融解熱量は、吸熱ピークAの熱量である。
【0057】
上記の結果、外表部の融解熱量は27.0J/g、中空部側の部分(他の部分)の融解熱量は37.6J/gであり、融解熱量比は1.4であった。
【0058】
また、融解熱量測定用サンプルを切り出した後の中空成形体No.2について、実施例1と同様にして荷重たわみ量測定を行った。結果を表1に示す。
【0059】
従来例
従来例として、ポリプロピレン(PP)から構成される中空成形体No.3を作製した。PPには三井住友ポリオレフィン社製「B101WAT」を用い、これを押出成形して図1に示す形状に成形した。成形温度は210℃とし、サイジングダイの冷却水の温度は10℃とし、樹脂押出物がサイジングダイを通過する時間は10秒とした。得られた中空成形体No.3の外周部の厚みは1.5mmであり、図1中L、H、Dの各長さは、中空成形体No.1と同じとした。
【0060】
この中空成形体No.3について、実施例1と同様にして融解熱量を測定した。図9は、中空成形体No.3の外表部のDSC曲線、図10は、中空成形体No.3の中空部側の部分(他の部分)のDSC曲線である。図9および図10に示すように、中空成形体No.3では、外表部、中空部側部分のいずれにおいても、昇温の際に、吸熱ピーク(図9および図10中、Aのピーク)結晶化に起因する発熱ピークが観察されていない。よって、中空成形体No.3では、外表部、中空部側部分のいずれにおいても、融解熱量は吸熱ピークAの熱量である。この結果、外表部の融解熱量は94.57J/g、中空部側の部分(他の部分)の融解熱量は97.86J/gであり、融解熱量比は1.03であった。
【0061】
また、融解熱量測定用サンプルを切り出した後の中空成形体No.3について、実施例1と同様にして荷重たわみ量測定を行った。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
以上の結果から、本発明例に当たる中空成形体No.1、No.2では、荷重たわみ量が小さく、良好な機械的特性を有している。他方、従来例に当たる中空成形体No.3は、通常PP製の構造体製造時に使用するタルクなどの補強材が添加されていないため、荷重たわみ量が大きくなっており、機械的特性が劣っている。なお、PPを素材とし、上述のタルクなどの補強材を用いて中空成形体No.1やNo.2と同等の機械的特性を有する中空成形体とすることも可能であるが、その場合は、廃棄時のリサイクル性に劣るようになる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の中空成形体は、結晶性のポリエステル系樹脂やポリエーテル系樹脂の、冷却速度によって容易に結晶化度を制御し得る特性を利用して、外表部の融解熱量を、外表部を除く他の部分より低い構成としたものである。本発明の中空成形体は、上記の構成に基づいて、補強材を使用することなく優れた機械的強度を発揮し得ると共に。耐衝撃性やソフト感をも兼ね備えている。
【0065】
従って、補強材の分別が不要であることから、廃棄時のリサイクルが容易であるといった特性も有している。さらに、本発明の中空成形体では、バージン樹脂以外にも、回収PETボトルなどから得られる再生樹脂を原料とすることが可能である。よって、本発明の中空成形体は、資源循環型社会の構築といった観点から、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】リブ部を有する本発明の中空成形体の一例を示す斜視図である。
【図2】リブ部を有する本発明の中空成形体の一例を示す断面図である。
【図3】側面部が曲面である本発明の中空成形体の一例を示す部分斜視図である。
【図4】張出部を有する本発明の中空成形体の一例を示す断面図である。
【図5】仕切り部を有する本発明の中空成形体の一例を示す断面図である。
【図6】実施例の荷重たわみ量測定方法の説明図である。
【図7】実施例2で製造した中空成形体の外表部のDSC曲線である。
【図8】実施例2で製造した中空成形体の中空部側の部分(他の部分)のDSC曲線である。
【図9】従来例で製造した中空成形体の外表部のDSC曲線である。
【図10】従来例で製造した中空成形体の中空部側の部分(他の部分)のDSC曲線である。
【符号の説明】
1 上面部
2 側面部
3 リブ部
4 中空部
5 外表部
6 張出部
7a,7b 仕切り部
8 中空成形体
9 錘
10 角材
Claims (11)
- ポリエステル系樹脂またはポリエーテル系樹脂を押出成形して得られる中空成形体であって、
外表部は、他の部分よりも融解熱量が小さいことを特徴とする中空成形体。 - 外表部の融解熱量Taと、他の部分の融解熱量Tbとの比Tb/Taが1.1以上である請求項1に記載の中空成形体。
- 外表部は非晶質である請求項1に記載の中空成形体。
- 2以上の中空部を有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の中空成形体。
- 上面部、底面部および2つの側面部を有し、且つ、中空部は、上面部と底面部を接続するリブ部で仕切られているものである請求項4に記載の中空成形体。
- 上記中空成形体を構成する樹脂の一部または全部が再生樹脂である請求項1〜5のいずれかに記載の中空成形体。
- 上記中空成形体を構成するポリエステル系樹脂は、ポリエチレンテレフタレートまたはポリブチレンテレフタレートである請求項1〜6のいずれかに記載の中空成形体。
- 上記中空成形体を構成するポリエーテル系樹脂は、ポリエーテルエーテルケトンである請求項1〜6のいずれかに記載の中空成形体。
- 中空部側に張出部を有するものである請求項1〜8のいずれかに記載の中空成形体。
- 対向する2つのリブ部に挟まれる中空部は、該リブ部同士を接続する仕切り部でさらに仕切られているものである請求項5〜9のいずれかに記載の中空成形体。
- 側面部と該側面部に対向するリブ部に挟まれる中空部は、該側面部と該リブ部を接続する仕切り部でさらに仕切られているものである請求項5〜10のいずれかに記載の中空成形体。
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