JP2004131419A - センシング抗体及び受容体コンホメーションセンシングアッセイ - Google Patents

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Yasuyuki Shimohigashi
下東 康幸
Daisuke Asai
浅井 大輔
Makoto Nakai
中井 誠
Yoshikuni Yakabe
矢可部 芳州
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Abstract

【課題】被検化学物質のホルモン受容体への結合性及びホルモン活性の有無を同時に試験することができるアッセイを提供する。
【解決手段】女性ホルモン受容体と被検化学物質とを反応させた後、女性ホルモン受容体の第12へリックスを抗原とするセンシング抗体を添加して、前記抗体の女性ホルモン受容体第12へリックスに対する結合割合を検出する受容体コンホメーションセンシングアッセイ。センシング抗体の結合割合の検出はELISA法により行う。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、リガンド結合に起因する女性ホルモン受容体の構造変化をセンシング抗体を用いて検知することにより、被検化学物質の受容体への結合能及びホルモン活性の有無を同時に試験するセンシング抗体及び受容体コンホメーションセンシングアッセイに関する。
【0002】
【従来の技術】
環境中に存在する化学物質あるいは化学製品から漏出する化学物質で、生体内においてホルモンに類似した作用を示すものは、いわゆる「環境ホルモン」と呼ばれる。環境ホルモンはヒトや生物の内分泌系に影響を及ぼし、生殖障害等を引き起こすことが明らかになっている。
【0003】
環境ホルモンは、ホルモン受容体(エストロゲン、アンドロゲン、甲状腺ホルモン受容体等)に結合してそれらのホルモンの支配下に置かれている遺伝子を転写活性化するホルモン様作用を有している。このホルモン様作用は、環境ホルモンが環境生物の内分泌攪乱を引き起こす主要な作用メカニズムであると考えられている。
【0004】
このように環境ホルモンが生物に有害であることが明らかになるに伴い、種々の化学物質から内分泌攪乱作用が懸念される化学物質を迅速にスクリーニングする方法が必要とされている。化学物質をスクリーニングする方法としては、ホルモン受容体への結合試験法(例えば、非特許文献1参照)やホルモン受容体への結合を介したレポーター遺伝子転写活性化試験方法(例えば、非特許文献2参照)がある。
【0005】
しかしながら、これらの方法はホルモン受容体への結合性、ホルモン活性についてそれぞれ別々に試験を行うものであり、きわめて非効率的である。
【0006】
【非特許文献1】
Sato, AM., Michaelson, CL., Prechtl, NV., Weill, BC., Sonnenschein, C., Olea−Serrana, F. and Olea, N. (1998) Assays to measure estrogen and androgen agonists and antagonists, Adv. Exp. Med. Biol., 444, 9−23.
【非特許文献2】
Sumida, K., Ooe, N., Nagahori, H., Saito, K., Isobe, N., Kaneko, H., Nakatsuka, I. (2001) An in vitro reporter gene assay method incorporating metabolic activation with human and rat S9 or liver microsomes,Biochem. Biophys. Res. Commun., 280, 85−91.
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、被検化学物質のホルモン受容体への結合性及びホルモン活性の有無を同時に試験することができるアッセイを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ホルモンが細胞核内の受容体に結合すると、受容体のリガンド結合部位のC端部で自由にしていたα−ヘリックスは「フタ」をするように大きくコンホメーション変化を起こす。このフタが正しく閉まると、受容体に別のタンパク質(コアクチベーター)が結合して転写活性発現へと機能する。
【0009】
環境ホルモンには、本来のホルモンと同じ作用をするアゴニストと、受容体の結合部位に結合してホルモンの作用を阻害するアンタゴニストがあることが知られている。最近、リガンド−女性ホルモン受容体複合体のX線結晶解析から、そのコンホメーション変化の内容はアゴニストとアンタゴニストでは異なることが明らかとなった。
【0010】
即ち、アゴニストはα−へリックスのコンホメーションを変化させ、リガンド−受容体複合体を転写活性が発現する活性型へと導く。一方、アンタゴニストはリガンド結合部位に結合してホルモンの結合を阻害するが、アゴニスト結合型複合体と同様な構造変化を起こさず転写活性は発現しないことが知られている。
【0011】
本発明者は、被検化学物質を反応させた女性ホルモン受容体に、コンホメーション変化をおこす前のα−ヘリックスに結合するセンシング抗体を反応させて前記抗体の結合割合を測定することにより、被検化学物質がホルモン活性型か非活性型かを区別して検出できることを見出した。更に、抗体応答の強さから被検化学物質の女性ホルモン受容体への結合能が評価できることを見出した。
【0012】
上記目的を達成する本発明は、以下に記載するものである。
【0013】
〔1〕 女性ホルモン受容体の第12へリックスを抗原とするセンシング抗体。
【0014】
〔2〕 女性ホルモン受容体と被検化学物質とを反応させた後、〔1〕記載のセンシング抗体を添加して、前記抗体の女性ホルモン受容体第12へリックスに対する結合割合を検出する受容体コンホメーションセンシングアッセイ。
【0015】
〔3〕 センシング抗体の女性ホルモン受容体への結合割合の検出をELISA法により行う〔2〕記載の受容体コンホメーションセンシングアッセイ。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明のセンシング抗体は、女性ホルモン受容体の第12へリックスを抗原とする抗体である。このセンシング抗体は、女性ホルモン受容体の第12へリックスに相当する断片ペプチドを合成し、このペプチドを抗原として免疫することにより得られる。第12へリックスに相当する断片ペプチドのアミノ酸配列は、以下に示すものである(配列番号1)。
H−Leu−Tyr−Asp−Leu−Leu−Leu−Glu−Met−Leu−Asp−Ala−His−Arg−Leu−His−Ala−NH
ペプチドの合成は、液相法、固相法等公知の方法を用いることができるが、Fmoc固相法が好適に用いられる。
【0017】
Fmoc固相法を用いた具体的な断片ペプチドの合成は、以下のように行う。
【0018】
側鎖官能基を3級ブチルアルコール型等の保護基で、また、N末端アミノ基をFmoc基で保護したアミノ酸を、塩基(ピペリジン)でFmoc基の除去を行いながら樹脂上にペプチド鎖を延長し、最終的に側鎖の保護基の脱保護及び合成したペプチドの樹脂からの切り離しをトリフルオロ酢酸により行う。これをゲルろ過及び逆相液体クロマトグラフィーにより精製して目的のペプチドを得る。
【0019】
第12へリックスに相当するペプチドは抗原性が低いため、タンパク質担体(キャリアータンパク質)に結合して十分な大きさの抗原としてから免疫を行うことが好ましい。タンパク質担体への結合は、上記のアミノ酸配列を有する断片ペプチドのN末端にCysを加えてから行う。
【0020】
得られた合成ペプチド粗生成物は、ゲルろ過およびHPLCによる精製を行う。システイン含有ペプチドの精製は困難を伴うことが多いが、ゲルろ過及びHPLCにより高純度のものを得ることができる。
【0021】
次に、合成ペプチドをキャリアータンパク質に結合する。この結合はトリス−(2−シアノエチル)ホスフィン等を添加してシステインのSH基を完全に遊離した合成ペプチドに、架橋試薬を反応させたキャリアータンパク質を添加することにより行う。架橋試薬としては、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−ヨードアセチルアミノ安息香酸−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、ε−マレイミドカプロイルオキシ−N−スクシンイミドエステル等を挙げることができる。キャリアータンパク質としては、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、ウシサイログロブリン(BthG)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ニワトリ卵白アルブミン(OVA)等を用いることができる。これらは市販品として入手できる。
【0022】
ゲルろ過等による精製後、合成ペプチドを架橋したキャリアータンパク質をウサギ等に免役し、数週間〜数ヶ月後に血液を採取する。採取した血液の血清を精製し、本発明のセンシング抗体を得る。
【0023】
血清の精製は、キャリアータンパク質に対する抗体を免疫沈降により除去した後、合成ペプチドを用いたアフィニティ精製を行うことが好ましい。
【0024】
免疫沈降は、血清にキャリアータンパク質水溶液を加え、キャリアータンパク質と当該キャリアータンパク質に作用する抗体の複合体を遠心分離して取り除くことにより行う。この操作は、キャリアータンパク質水溶液を加えても沈殿物が析出しなくなるまで繰り返し行うことが好ましい。
【0025】
アフィニティ精製は、センシング抗体の抗原である合成ペプチドを架橋したアフィニティ担体を用いて行うクロマトグラフィーである。例えばアガロース担体にヨードアセチルを架橋したゲルにCys(SH)−ペプチドを反応させて担体を調製し、アフィニティ担体とする。
【0026】
以下、上記のように調製したセンシング抗体を用いた受容体コンホメーションセンシングアッセイにつき説明する。
【0027】
まず、女性ホルモン受容体に対して被検化学物質を室温で反応させ、リガンド−受容体複合体を調製する。その後、リガンド−受容体複合体を含む溶液にセンシング抗体を添加し、女性ホルモン受容体の第12へリックスに対するセンシング抗体の結合量を測定する。
【0028】
センシング抗体は、コンホメーション変化を起こしていない第12へリックスに結合する。一方、コンホメーション変化をおこしてフタが閉じた状態となった第12へリックスに対しては結合しない。
【0029】
センシング抗体の第12へリックスに対する結合量の測定は、ELISA法により行うことが好ましい。
【0030】
ELISA法は、キャリアータンパク質以外のタンパク質(例えば、ウシサイログロブリン(BthG)等)に結合した抗原ペプチドをコートしたイムノプレート(ELISAプレート)を用いて行う方法である。プレートの調製は、例えば、タンパク質に結合した抗原ペプチドを96穴プレートに吸着させ、インキュベート、洗浄後、1%BSAによりブロッキングすることにより行う。抗原ペプチドは、上記のように合成した断片ペプチドを用いることができる。
【0031】
ELISA法によるセンシング抗体の結合量の測定は、次のように行う。被検化学物質、女性ホルモン受容体を含む溶液を96穴ELISAプレートに移し、センシング抗体溶液を加えてインキュベートする。プレートを洗浄後、センシング抗体に反応する別の抗体(2次抗体)をプレートに添加する。この2次抗体には定量のため予め酵素等で標識を行う。更にプレートを洗浄後、抗体応答からプレートに残存する2次抗体量と、更に第12へリックスに対するセンシング抗体の結合量を測定できる。
【0032】
2次抗体に行う標識としては、酵素、ラジオアイソトープ、蛍光等による標識を挙げることができるが、酵素による標識が好ましい。標識に用いる酵素としては、例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ(βGal)等を挙げることができる。
【0033】
HRPを標識として用いた場合には、HRP標識2次抗体をプレート上のセンシング抗体に反応させ、洗浄した後、2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)を基質として反応させる。反応したABTSは発色するので、プレートの吸光度から酵素活性を測定できる。
【0034】
受容体のコンホメーション変化量(抗体応答)は、基準の女性ホルモンに対する相対値として、プレートに残存する二次抗体の酵素活性等の測定値から下記式(1)により算出できる。
D(%)=(A−B)×100/(C−B)   (1)
D:コンホメーション変化量(抗体応答)
A:受容体及び化学物質を添加したときの測定値
B:受容体のみ添加したときの測定値
C:受容体及び過剰の基準女性ホルモンを添加したときの測定値
基準とする女性ホルモンは、17β−エストラジオール、エストリオール等のアゴニストとして知られる女性ホルモンから選択する。
【0035】
EC50の算出は以下の手順で行う。まず、被検化学物質の濃度に対し抗体応答をプロットしたグラフ(図1)からプラトーに達した抗体応答値Pを読み取る。次に、その50%値P’に対応する化学物質濃度Mをグラフから読み取る。この読み取った値をEC50とする。
【0036】
より便利な手法としては、以下のものがある。
【0037】
被検化学物質の濃度に対し抗体応答をプロットしたグラフから得た曲線を、例えば解析プログラムALLFIT等を用いて数理解析すると、プラトーに達した抗体応答値の50%の抗体応答値を得るために必要な被検化学物質の濃度(EC50)を算出することができる。
【0038】
このように算出したEC50値は、化学物質の受容体への結合率を表すパラメータとなる。
【0039】
また、上記のようにして求めた抗体応答値Pは、被検化学物質が受容体を活性型コンホメーションに転化できる割合の最大値を示し、被検化学物質のホルモン活性を表すパラメータとなる。
【0040】
【実施例】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明する。実施例において、女性ホルモン受容体、ELISAキット、プレートリーダーは下記のものを用いた。
女性ホルモン受容体:Estrogen Receptor−Alpha Human Recombinant(PANVERA社製、カタログ番号:P2503)
ELISAキット:ELISAmate(KPL社製、カタログ番号:54−62−00)
プレートリーダー:ImmunoMini NJ−2300(Inter Med社製)
合成例1
(抗原ペプチドの合成)
女性ホルモン受容体の第12ヘリックスに相当する断片ペプチド(配列番号1)をエピトープとして設定し、このペプチドをFmoc固相法により合成した。タンパク質担体との結合のために、合成したペプチドのN末端にCysを加えた。合成粗生成物をゲルろ過(Sephadex G25, φ=1.8cm, l=75cm:アマシャムバイオサイエンス社製)およびHPLC(Lichrospher RP−18(e), φ=25cm x 250mm:MERK社製)により精製し、純粋な目的ペプチドを得た。目的物の確認は質量分析により行った。
【0041】
合成例2
(架橋試薬のキャリアタンパク質KLHへの結合)
タンパク質担体としてキーホールリンペットヘモシアニン (KLH:Calbiochem社製)、架橋試薬として二価性のm−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(MBS:Pierce社製)を用いた。
【0042】
KLHの10 mM リン酸バッファー (pH7.2) 溶液(16 mg/ml)に、MBSのDMF溶液 (3.6 mg/12 μl)を9.3 μl 添加し、室温で30分撹拌した。反応液を遠心後、上清をSephadex G−25を用いたゲルろ過により精製し、目的物を得た。
【0043】
合成例3
(エピトープペプチドのKLHへの結合)
合成例1で得られたペプチド 1 mg を添加した水溶液 500 μl に、トリス−(2−シアノエチル)ホスフィン水溶液(5 mg/ml)を200 μl 加えてシステインのSH基を完全に遊離させた。これに合成例2で調製したKLH−MBS複合体溶液(230 μl) および0.2 M NaHPO(115 μl) を加え、室温で3時間撹拌した。遠心後、上清をSephadex G−25を用いたゲルろ過により精製し、目的物を得た。
【0044】
合成例4
(ウサギへの免疫)
合成例3で調製した抗原溶液をフロイントのアジュバント(Difco社製)と混合してエマルジョンとし、ペプチド0.1 mg/匹となるように2匹のウサギ(ニュージーランドホワイト)に免疫した。約3ヶ月後、耳静脈から採血し十分な抗体価が得られていることをELISAにより確認した。
〔ELISAによる抗体価の確認〕
合成例1で調製したペプチドを抗原ペプチドとして用い、96穴プレートに吸着(2.5 μg/ml, 50 μl/well)した後、4% BSA(ELISAキット(ELISAmate)付属のBSA Diluent/Blocking Solution Concentrateを10倍に希釈したもの)によるブロッキング、洗浄を行い、96穴ELISAプレートを調製した。その後、血清(希釈率:1/100〜1/100,000)を反応させた。洗浄後、HRP標識の2次抗体を反応させ、再び洗浄後、基質(H, ABTS)を反応させて発色させ、405 nmの吸光度を測定した。1/10,000希釈の血清でこの吸光度が陽性であれば十分な抗体価があるとした。
【0045】
合成例5
(抗体の精製)
まず、合成例4で採血した血液 30 ml を37℃で1時間、その後、4℃で終夜インキュベートした。遠心分離により血清と血餅を分画し、血清画分を抗血清とした。得られた抗血清を次に示す2段階で精製した。まず、キャリアータンパク質KLHに対する抗体を免疫沈降により除去し、次いで合成ペプチドを用いてアフィニティ精製した。
〔免疫沈降〕
終濃度0.5 mg/mlとなるように5 mg/mlのKLH水溶液を粗血清に加えて4℃で終夜インキュベートし、沈殿したKLH−抗KLH抗体複合体を遠心分離した。この操作をKLH水溶液を加えても沈殿が析出してこなくなるまで繰り返し行った。
〔アフィニティ精製〕
アガロース担体にヨードアセチルが架橋したゲル(SulfoLink Coupling Gel、Pierce社製) に合成例1で調製したCys(SH)−ペプチドを反応させ、抗原ペプチドを架橋したゲル担体を調製した。これをアフィニティ担体とし、アフィニティクロマトグラフィーにより抗体を精製した。
【0046】
試験例1
調製した抗体の女性ホルモン受容体に対する応答をELISAにより調べた。
〔ELISAによる操作法〕
女性ホルモン受容体 (10−7〜10−12 M, 90 μl)を17β−エストラジオール(10−6〜10−10 Mまたは0 M, 10 μl)と反応させた。この溶液を合成例4と同様にしてあらかじめ調製しておいた96穴ELISAプレートに全量移し、作製した抗体溶液 (10 μl) を加えて4℃で終夜インキュベートした。洗浄後、HRP標識の2次抗体を反応させた。更に洗浄後、基質 (H, ABTS) を反応させて発色させ、405 nmの吸光度を測定した。
【0047】
その結果、合成例5で得られた抗体は、リガンド非存在下で女性ホルモン受容体を強く認識し、結合した。一方、天然のエストロゲン及び17β−エストラジオールを受容体に結合させた状態で調べたところ、抗体は受容体に結合できなくなることが判明した。
【0048】
受容体を加えていない系の吸光度と比較して、吸光度が小さいほど抗体は受容体に結合したことを意味する。リガンド未処理時(リガンド非存在下)では女性ホルモン受容体の濃度依存的に吸光度が小さくなった。一方、10−6 Mの17β−エストラジオール処理時(17β−エストラジオールを受容体に結合させた状態)では、受容体の有無に関わらず吸光度はほぼ一定であった。
【0049】
実施例1
女性ホルモン受容体 (40 nM, 90 μl) に対して、表1に示す各化学物質 (10−11〜10−5 M, 10 μl) を室温で1時間反応させ、リガンド−受容体複合体を調製した。この溶液をあらかじめ調製した抗原ペプチドをコートした96穴ELISAプレートに移した。ELISAプレートの調製は、ウシサイログロブリン(BthG)に結合した抗原ペプチドをプレートに吸着(2.5 μg/ml, 50 μl/well)させ、室温で1.5時間インキュベート後、洗浄し、ELISAキット(ELISAmate)付属のBSA Diluent/Blocking Solution Concentrateを10倍に希釈したものによるブロッキングにより行った。リガンド−受容体複合体溶液を移した96穴ELISAプレートに合成例1〜4で調製したセンシング抗体溶液 (10 μl/well) を加えて4℃で終夜反応させた。溶液を捨て、プレートを洗浄(洗浄液としてELISAキット(ELISAmate)付属のWash Solution Concentrate, 200Xを200倍に希釈したものを使用)後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識2次抗体(50 μl)を室温で1時間反応させた。溶液を捨て、プレートを洗浄後、過酸化水素/2,2’−アジノ−ビス(3−エチルベンズチアゾリン−6−スルホン酸(ABTS)を基質とした酵素反応により溶液を発色させた。基質は、ELISAキット(ELISAmate)付属のABTS Peroxidase SubstrateとPeroxidase Solution A及びBを使用直前に当量体積ずつ混合して調製し、添加量は100 μl/wellとした。プレートリーダーを用い、405 nmの吸光度を測定してプレート上のペプチドに結合した抗体量を定量した。
【0050】
受容体に17β−エストラジオール(E2)が結合すると受容体が構造変化し、抗体の受容体への結合量が減少した。この減少の程度を17β−エストラジオールの濃度を変えて測定すると、用量依存的な相関曲線が描かれた(図2)。これは、17β−エストラジオールの受容体結合能とそれが引き起こす受容体構造変化の程度を定量的に相関させた受容体結合活性試験の構築が可能であることを示す。また、天然の女性ホルモンのエストリオール(E3)や合成女性ホルモンのジエチルスチルベストロール、エチニルエストラジオールについても同様の結果が得られた。しかし、エストロン(E1)は応答性が低く、エストロンの実際の受容体結合性および転写活性の結果とよく符合することが判明した。
【0051】
さらに、アンタゴニストであるヒドロキシタモキシフェンについて検討したところ、エストロン、17β−エストラジオール、エストリオール、そしてこれらの合成女性ホルモンのいずれの場合とも異なる低い抗体応答を示した。ジエチルスチルベストロール及び4−ヒドロキシタモキシフェンの濃度に対して抗体応答をプロットした結果を17β−エストラジオールと併せて図2に示す。
【0052】
この結果より本発明は、化学物質が結合して引き起こした構造変化が活性型か、不活性型の判別により、ホルモン活性の有無を、また、その抗体応答の強さで受容体結合の強さを同時に判定できるアッセイであることが判明した。
【0053】
さらに、一連のアルキルフェノールやジフェニルメタンについて調べたところ、化学物質により様々なパターンの抗体応答を示した。
【0054】
表1に示す各化学物質について、17β−エストラジオール未処理のときの抗体応答を0、10 μMの17β−エストラジオール処理によって活性化型コンホメーションに100%変化させたときの抗体応答を100として各化学物質の濃度に対して抗体応答をプロットし、抗体応答がプラトーに達したときの値をグラフより算出した。さらに、得られたシグモイド様曲線を解析プログラムALLFITで数理解析し、EC50を算出した。算出した各化学物質の抗体応答とEC50の値を表1に示す。
【0055】
【表1】
Figure 2004131419
【0056】
評価としては、抗体応答(縦軸)はホルモン活性の強さを示し、EC50化学物質濃度は化学物質と受容体との結合の強さを表す。
【0057】
【発明の効果】
本発明は、被検化学物質のホルモン活性をリガンド結合前後のα−へリックスのコンホメーション変化の差異として抗体でセンシングし、抗体応答の強さから被検化学物質の受容体結合能を試験するものである。本発明によれば、被検化学物質の女性ホルモン受容体に対する結合能とホルモン活性を同時にしかも簡便に測定することができる。従って、本発明は女性ホルモン系に影響を及ぼす環境ホルモンのプレスクリーニング法として有用である。
【0058】
【配列表】
Figure 2004131419

【図面の簡単な説明】
【図1】化学物質の濃度と抗体応答の関係を示すグラフである。
【図2】実施例1における被検化学物質の濃度と抗体応答の関係を示すグラフである。

Claims (3)

  1. 女性ホルモン受容体の第12へリックスを抗原とするセンシング抗体。
  2. 女性ホルモン受容体と被検化学物質とを反応させた後、請求項1記載のセンシング抗体を添加して、前記抗体の女性ホルモン受容体第12へリックスに対する結合割合を検出する受容体コンホメーションセンシングアッセイ。
  3. センシング抗体の女性ホルモン受容体への結合割合の検出をELISA法により行う請求項2記載の受容体コンホメーションセンシングアッセイ。
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