実開平3−15678号公報などに開示されている従来のエアーディスペンサは、圧縮空気としてコンプレッサなどの圧縮空気源から空気の供給を受けて作動するので、エアーディスペンサ本体の他に、コンプレッサ、コンプレッサからの空気供給配管、圧縮空気を制御するバルブなどの機構、さらに、それらを操作する機構等を有し、全体としては複雑、かつ、かなり大規模な設備となっている。
したがって、製造ラインなどの固定された施設で使用するには問題ないが、どこでも手軽に利用できるものではない。この点を改良し、小型で、いつでもどこでも手軽に使用できるようにするために、手動で空気を圧縮する加圧装置をシリンジに付けた手動式エアーディスペンサが考えられている。
例えば、手動でピストンを動かして空気を圧縮し、その圧縮された空気によりシリンジ内を加圧して吐出物を押し出すものであり、別置きの空気供給設備を必要としないので、構成が簡素であり、コンパクトにまとめられる。また、手動のため、コンプレッサを用いる場合のように大量の液体を吐出できないとしても、簡単な操作で、適量の吐出物を、適切な適用領域へ吐出することが可能である。
しかしながら、手動で圧縮空気を生成する場合も、外部から圧縮空気が供給される場合も、比較的低い粘度の吐出物に使用する場合には、吐出終了の操作をした後の液切れが悪く、吐出終了後に液だれが発生するという欠点があった。大型のエアーディスペンサでは、その対策として吐出終了の操作に伴いバキューム発生器を作動させてシリンジ内の圧力を負圧にしたり、吐出物の残量を勘案して吐出時間等を制御する機構を別途設けるなどの対応策が採られているが、設備が複雑化するばかりでなく、吐出量精度の低下や、バキューム発生器への吐出物の逆流等の問題があった。
一方、手動式エアーディスペンサでは、手動でピストンを動かして空気を圧縮する機構に加えて、液だれを防止する機構を設けて同時あるいは並列に操作することは使い勝手が悪く、実際には使用できない。
また、高粘度の吐出物であると、手動で得られる程度の圧縮空気では、細い吐出口から吐出物を吐出するのが困難である。そのため、吐出口に高粘度の吐出物を押し出す補助的な機構を設けようとしても、ピストンと共にそのような機構を同時に、または平行して操作することは実際的でない。
そこで、本発明では、手動でピストンを動かして空気を圧縮するタイプの吐出装置(エアーディスペンサ)であっても、ピストンを動かすだけで、高粘度の吐出物であれば、確実に吐出物を吐出でき、比較的低い粘度の吐出物であれば、吐出終了後の液ダレを防止できる吐出装置を提供することを目的としている。そして、さまざまな液状または流状の吐出物を、所望の量だけ、手軽に、そして確実に塗布したり、滴下したりすることができる吐出装置を提供することを目的としている。
このため、本発明においては、シリンダ内を上下に動くピストンを手動で操作して出口端から圧縮空気を供給可能な加圧装置と、流状の吐出物を保持する容器であって、第1の端が加圧装置の出口端に接続され、当該加圧装置からの圧縮空気が供給可能であり、第2の端が吐出物を吐出する吐出口となった容器とを有する吐出装置において、第1の端から第2の端に延び、吐出口からの吐出物の吐出状態を制御する制御棒を設け、この制御棒を、加圧装置のピストンの動きにより操作するようにしている。すなわち、本発明の吐出装置は、シリンダ内を上下に動くピストンを手動で操作して出口端から圧縮空気を供給可能な加圧装置と、流状の吐出物を保持する容器であって、第1の端が加圧装置の出口端に接続され、当該加圧装置からの圧縮空気が供給可能であり、第2の端が吐出物を吐出する吐出口となった容器とに加え、第1の端から第2の端に延び、吐出口からの吐出物の吐出状態を制御する制御棒を有し、加圧装置は、ピストンの動きにより制御棒を操作する制御機構を備えている。
本発明の吐出装置であると、圧縮空気の供給を制御することができるピストンの動きを、制御棒を介して吐出口に伝えることが可能であり、ピストンを操作することにより吐出口の状態も制御することができる。したがって、手動タイプの吐出装置であれば、ピストンを操作するだけで、ピストンによりシリンダ内の空気を圧縮して出口端より出力するのに加えて、高粘度の吐出物を押し出したり、低粘度の吐出物の液ダレが発生しないように吐出口を開閉したりすることができる。
ピストンの動きにより制御棒を操作する制御機構のタイプはいくつかある。1つは、ピストンが動いて容器に圧縮空気を供給するときにピストンと接触し、制御棒を第2の端の側、すなわち吐出口側に動かすものである。この制御機構は、高粘度の吐出物を吐出する吐出装置に適している。すなわち、高粘度の吐出物用の吐出装置は、制御棒の第2の端の側を、容器の第2の端近傍の吐出物を吐出口に向かって押しやる押出部とし、制御機構は、制御棒の第1の端の側を操作する受動部であって、ピストンが動いて容器に圧縮空気を供給するときにピストンと接触し、制御棒を第2の端の側に動かす受動部と、制御棒を第1の端の方向に押す制御棒用の弾性部材とを備えていることが望ましい。
この吐出装置であると、ピストンを押して圧縮空気を出口端から容器内に注入するときに、そのピストンの動きにより制御棒が第2の端の側に動いて吐出物を吐出口に向かって押しやる。したがって、ピストンを操作することにより、圧縮空気の圧力と、押出部の物理的あるいは機械的な力により吐出口近傍の液体が吐出口の方向に押されるので、高粘度の吐出物であっても吐出口から出力することができる。このため、ピストンの操作だけで、高粘度の吐出物も確実に吐出することができる。ピストンを戻せば、コイルバネ、板バネ、ゴムなどの制御棒用の弾性部材の力により制御棒は第1の端の側、すなわち、ピストン側に押し戻されるので、ピストンを繰り返し操作することにより、次々と高粘度の吐出物を次々と吐出できる。
さらに、制御機構または制御棒は、当該制御棒のストロークを調整する手段を設けておくことにより、ピストンが最上端から最下端まで動いて圧縮空気を容器内に供給する段階の適当な位置で受動端とピストンとを接触させることができる。したがって、ピストンのストロークの全部に限らず、一部により制御棒が動かされるようにすることができる。吐出物の押出には、その物性や吐出量に応じて押出部の最適なストロークがあり、それは必ずしもピストンのストロークに一致しないが、ストロークを調整する手段を設けることにより、容器内が適当な圧力になったときに押出部を動かして吐出物を押すことができるので、高粘度の吐出物を、適量だけ、より確実に吐出できる。
また、制御棒を、加圧装置内に主に位置する第1の部分と、容器内に主に位置する第2の部分に分け、これら第1および第2の部分を接続する部材を設けることにより、制御棒の長さを調整でき、容器の吐出口との関係で、押出部や以下の弁体部の位置を適切な位置に設定することができる。
押出部は、第2の端に動くときに吐出物に対する抵抗が大きく、第1の端に動くときは吐出物に対する抵抗が小さいことが望ましい。そのような形状は第2の端の側が広く、第1の端が狭い押出形状であり、第2の端の側に広がった円錐状または角錐状、さらには、階段状に広がった押出し形状である。したがって、そのような押出形状を少なくとも1つ備えていることが望ましい。
制御機構は、ピストンが動いて容器に圧縮空気を供給するときにピストンと接触し、制御棒を第1の端の側、すなわち吐出口に対し反対側に動かすものであっても良い。この制御機構は、低粘度の吐出物を吐出する吐出装置に適している。すなわち、低粘度の吐出物用の吐出装置は、制御棒の第2の端の側を吐出口に内接して閉鎖する弁体部とし、制御機構は、制御棒の第1の端の側を操作する受動部であって、ピストンが動いて容器に圧縮空気を供給するときにピストンと接触し、制御棒を第1の端の側に動かす受動部と、制御棒を第2の端の方向に押す制御棒用の弾性部材とを備えていることが望ましい。この制御機構の受動部の動きは、ピストンと逆になるが、レバーやカムなどの適当な機械的な機構によりそのような動きをする受動部を実現できる。
この吐出装置であると、ピストンを押して圧縮空気を出口端から容器内に注入するときに、そのピストンの動きにより制御棒が第1の端の側に動いて吐出口が開き、吐出物が出る。そして、ピストンを戻せば、コイルバネ、板バネ、ゴムなどの制御棒用の弾性部材の力により制御棒が第2の端の側、すなわち、吐出口側に押し戻されるので、弁体部が吐出口に内接して吐出口が閉じる。したがって、容器内に圧力が残っていたり、吐出物の自重が吐出口にかかっても、吐出終了後の液ダレがない。このように、本吐出装置であると、ピストンを操作するだけで、圧縮空気を容器内に注入できるだけではなく、吐出口の開閉も行い、確実に吐出後の液ダレを防止できる。
この吐出装置においても、制御機構または制御棒は、当該制御棒のストロークを調整する手段を設けておくことにより、ピストンが最上端から最下端まで動いて圧縮空気を容器内に供給する段階の適当な位置で受動端とピストンとを接触させることができる。したがって、ピストンのストロークの全部に限らず、一部により制御棒が動かされるようにすることができ、低粘度の吐出物を、適量だけ、より確実に吐出できる。
制御機構は、ピストンと共に動いて、容器に圧縮空気を供給するときに制御棒を把持し、制御棒を第1の端の側、すなわち吐出口に対し反対側に動かすものであっても良い。この制御機構は、低粘度の吐出物を吐出する吐出装置に適している。すなわち、この吐出装置は、制御棒の第2の端の側は吐出口に内接して閉鎖する弁体部とし、制御機構は、ピストンと共に動く受動部であって、容器に圧縮空気を供給するときに制御棒の第1の端の側を把持し、その後、第1の端の方向にピストンと共に動いて制御棒を第1の端の側に動かして吐出口を開ける受動部と、制御棒を第2の端の方向に押す制御棒用の弾性部材とを備えていることが望ましい。
この吐出装置であると、ピストンを押して圧縮空気を出口端から容器内に注入した後に、ピストンの動きにより受動部が制御棒の第1の端を把持し、ピストンを戻すときに制御棒が第1の端の側に動いて吐出口が開き吐出物が出る。そして、受動部から第1の端が開放されると、コイルバネ、板バネ、ゴムなどの制御棒用の弾性部材の力により制御棒が第2の端の側、すなわち、吐出口側に押し戻されるので、弁体部が吐出口に内接して吐出口が閉じる。したがって、容器内に圧力が残っていたり、吐出物の自重が吐出口にかかっても、吐出終了後の液ダレがない。このように、本吐出装置においても、ピストンを操作するだけで、圧縮空気を容器内に注入できるだけではなく、吐出口の開閉も行い、確実に吐出後の液ダレを防止できる。
この吐出装置においても、制御機構または制御棒は、当該制御棒のストロークを調整する手段を設けておくことにより、ピストンが最下端から最上端まで動く適当な位置で受動端から制御棒を開放させることができる。したがって、ピストンのストロークの全部に限らず、一部により制御棒が動かされるようにすることができ、低粘度の吐出物を、適量だけ、より確実に吐出できる。
液を吐出する先の精度を上げたり、液滴のサイズを小さくするなどの目的で、容器には、吐出口の先端を構成する吐出針を着脱可能に接続できるようになっていることが望ましい。流動性の高い吐出物、たとえば、機械油、アルコールなどを使用する場合は、制御棒の第2の端の側は、吐出針に内接して閉鎖する弁体部であることが望ましい。液切れが良くなるからである。一方、吐出物が、溶剤などの流動性の若干低いもの、条件により固化しやすいもの、あるいは若干液切れが悪くても良いものの場合は、制御棒の第2の端の側は吐出口の容器の側に内接して閉鎖する弁体部であることが望ましい。液を止めた状態で吐出針を交換することが可能となるので、吐出針の種類の交換や、目詰まりしたときの交換が極めて容易である。また、吐出針の内部に制御棒を通さなくて良いので、吐出針内における目詰まりを防止でき、針先から液が出やすくなる。
加圧装置の出口端に容器内の圧力を保持するために逆流防止機構を設けることにより容器内を高圧にすることができ、高粘度の吐出物が取り扱い易くなる。一方、低粘度の流体の場合は、容器内の圧力を高くする必要はないので、吐出口の液切れを良くするためには逆流防止機構を設けずに、容器内の圧力を開放することが望ましい。
この場合、容器と加圧装置との間を開閉可能な仕切り機構を設け、この仕切り機構を制御棒に連動して動かし、容器に圧縮空気を供給するときに開くようにすることがさらに好ましい。この仕切り機構により、吐出口に用意された弁体と連動して動かすことにより、液切りをした後に容器の内圧があがることを防止でき、液切れをさらに改善できる。同時に、吐出装置を横置きしたときに容器内の吐出物が加圧装置の側に漏れ出すことも防止できる。
このように、本発明の吐出装置は、ピストンを操作するだけで、制御棒を介して吐出口またはその近傍の状態を制御することが可能であり、高粘度の吐出物はより確実に吐出でき、低粘度の吐出物は液ダレを確実に防止できる。そして、加圧装置と制御棒を返れば、高粘度の吐出物に対しても、低粘度の吐出物に対しても適応した吐出装置を提供できるというメリットもある。
特に、本発明は、加圧装置が、ピストンによりシリンダ内の空気を圧縮して出口端より出力する、手動タイプの吐出装置に対しても適応でき、片手で吐出物を押し出すための圧縮空気を作りながら、吐出口も適切に制御することが可能である。したがって、手動タイプであっても、ピストンを動かすだけで、高粘度の吐出物であれば、確実に吐出物を吐出でき、比較的低い粘度の吐出物であれば、吐出終了後の液ダレを防止できる吐出装置を提供できる。そして、さまざまな液状または流状の吐出物を、所望の量だけ、手軽に、そして確実に塗布したり、滴下したりすることができる吐出装置を提供できる。
手動の加圧装置としては、ピストンに一端が繋がり、指で操作できる操作部に他端が繋がったピストンロッドと、操作部、ピストンロッドおよびピストンを貫通する通気孔であって操作部を操作する際に、その操作部の側の開口を塞ぐことできる通気孔と、ピストンをピストンロッドの側に押すピストン用の弾性部材とを備えているものが適している。この加圧装置であれば、ピストンロッドを操作してピストンを押すときに、その操作部に開口した通気孔を手あるいは指で塞ぐことによりシリンダ内の空気を加圧でき、ピストンがコイルバネなどの弾性部材により押し戻されるときに手あるいは指をはなして通気孔を開放することにより、シリンダ内に空気を吸入することができる。したがって、吸入側の逆止弁が不要となり、シリンダ内に吸入側の逆止弁を配置するスペースが要らないのでピストンのストロークに対してシリンダの長さが最小限になる。また、本加圧装置では、通気孔をシリンダの周囲ではなく、上下に動くピストンロッドを貫通するように設けているので、シリンダには通気孔を配置するスペースも不要であり、この点でもシリンダの長さを最短にできて、コンパクトな加圧装置およびそれを備えた吐出装置を提供できる。
さらに、シリンダを最短にできるので、最下端におけるピストンと受動部との距離あるいは受動部と制御棒の第1の端との距離を最小にできる。したがって、ピストンと受動部あるいは受動部と制御棒の第1の端が接しやすくなり、ピストンの動きにより確実に制御棒を操作できる信頼性の高い吐出装置を提供できる。
また、通気孔には、外界に繋がり、開度調整が可能な第2の開口を設けておくことが望ましい。第2の開口の開度を調整することにより、ピストンの一回のストロークで容器側に供給される空気量を制御することができ、吐出口から吐出される量を制御できる。
以上に説明したように、本発明では、手動でピストンを動かして空気を圧縮するタイプの吐出装置(エアーディスペンサ)において、ピストンの動きで操作または制御可能な制御棒を設け、ピストンの動きで圧縮空気を生成または供給すると共に、制御棒の動きで、高粘度の吐出物であれば、確実に吐出物を吐出でき、比較的低い粘度の吐出物であれば、吐出終了後の液ダレを防止できる吐出装置を提供している。したがって、さまざまな粘度の液状または流状の吐出物を、所望の量だけ、手軽に、そして確実に塗布したり、滴下したりすることができる吐出装置を提供することが可能となる。
(第1の実施の形態)
以下に図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。図1に、押出棒タイプの制御棒を使用する吐出装置1aの概略構成を断面図により示してある。また、図2には、吐出装置1aの先端部Aの詳細を拡大して示してあり、図3には、吐出装置1aの容器に空気を供給する加圧装置10の出口端の近傍を拡大して示してある。また、図4は、吐出装置1aにより吐出物を吐出している状態を断面図により示してある。なお、各実施の形態の説明において、共通する部分は、同じ符号を用いるものとする。
この吐出装置1aは全体がペンシル状であり、金属製のシリンダ11を備えた加圧装置10と、このシリンダ11に上端(第1の端)38が繋がった半透明なガラス製またはプラスチック製の注入用の容器(シリンジ)30を備えている。シリンジ30の下端(第2の端)39は吐出口31となり、吐出口31を形成する吐出針32が装着されている。加圧装置10のシリンダ11の下端29は圧縮空気が出力される出口端となっており、その出口端29とシリンジ30の上端38がO−リングなどのパッキン35を挟み、外側に設けられたねじ式のフィッティング36により機械的に繋がっている。したがって、本例の吐出装置1aにおいては、シリンジ30に油や接着剤などの吐出物71aを入れた後に、フィッティング36を用いて加圧装置10を取付けることにより、シリンジ30の内部に圧縮空気79を注入してシリンジ30の吐出口31から吐出物71aを出力できる。
加圧装置10は、シリンダ11の内部を上下に動くピストン12と、このピストン12に一端13aが繋がったピストンロッド13と、ピストン12をピストンロッド13の側に押すピストン用の弾性部材であるコイルバネ14とを備えている。ピストン12の周囲にはゴム製のYパッキン15がシリンダ11の内面と接触するように取付けられており、シリンダ11のピストン12の下側になる領域28が密封され、ピストン12の上下の動きによりその領域28の空気が圧縮されて、ブッシュ44の外側の空気路78を通って出口端29からシリンジ30の内部に供給される。出口端29には、シリンジ30の方にだけ変形できるような構成でシリコンマット29aが取り付けられており、シリコンマット29aが逆流防止機構となってシリンジ30から加圧装置10の側への逆流を防止している。
ピストンロッド13の上端13bには、ユーザが指で操作できる操作部16が接続されている。この操作部16は上に凸に湾曲しており、その中央には、ピストンロッド13及びピストン12を貫通する通気孔17の開口18が設けられている。
図4に示すように、この開口18は操作部16を押すユーザの指75の腹に比べると十分小さい。このため、ユーザがシリンジ30の内部を加圧して吐出物を吐出するためピストン12を下方に移動させようと操作部16を指75の腹で押すと、開口18を覆う形で指75が接して、通気孔17は自然に閉じられる。したがって、ユーザが操作部16を押し下げてピストン12をシリンダ11の内部で下方に移動させることにより、ピストン12の下側の領域28の空気が漏れることなく圧縮されシリンジ30に供給される。
この際、シリンダ11の内において、ピストン12の上方の領域が負圧になるとピストン12が押しにくくなる。このため、シリンダ11の上方を塞ぎピストンロッド13が貫通するシリンダーカバー19には、外界とピストン12の上方の領域とを繋ぐ均圧路19aが適宜設けられている。
吐出(加圧)を終え、ユーザが操作部16から指75を離すと、コイルバネ14によりピストン12は上方に押される。このとき、通気孔17の開口18は指75でふさがれていないので、ピストン12の下方の領域28は通気孔17を通じて外界に繋がり、必要に応じて空気が供給される。このため、ピストン12はスムーズに上方に動いて元の位置に復帰する。この際、ピストン12の上方の領域は上述の均圧路19aにより均圧化され、ピストン12の動きを阻害しない。また、シリンジ30に空気79を供給する出口端29には、シリンジ30の方にだけ変形できるような形状でシリコンマット29aが取り付けられてシリンジ30からピストン12への逆流が防止されている。したがって、シリンジ30の内容物、すなわち吐出物71aがピストン12に逆流せず、ピストン12が汚染されるのが防がれている。さらに、逆流を防止することによりシリンジ30の内圧も保持することができる。
シリンジ30の吐出口31から吐出される吐出物71aの量は、加圧装置10からシリンジ30に注入される空気の量や圧力にも依存する。したがって、ピストンロッド13のストロークを調整するストッパ21がシリンダーカバー19に設けられており、ユーザが一回の操作でシリンジ30に供給できる空気量を制御することができる。
さらに、本例の吐出装置1aには、加圧装置10のピストン12により操作することができる押出棒タイプの制御棒40が設けられている。この制御棒40は、シリンジ30の上端(第1の端)38から下端(第2の端)39にわたりシリンジ30の中心軸に沿って延びており、その下端39の側の先端部分、すなわち、吐出口31に近い部分が押出部41となり、逆側の上端38の先端部分42は、シリンダ11の下面(出口端)29に固定されたブッシュ44を貫通し、加圧装置10の制御機構80の受動部81aに取り付けられている。したがって、受動部81aにより制御棒40を操作することができる。
図3に拡大して示すように、本例の加圧装置10に組み込まれた制御棒40の制御機構80aは、シリンダ11の内部のピストン12の下方に位置し、制御棒40の上方の先端42を把持した状態でピストン12に接して下方に押される受動部81aと、受動部81aを上方のピストン12の方向に押すコイルバネ83aとを備えている。したがって、本例の吐出装置1aにおいては、ピストン12が下がると受動部81aに当たり、制御棒40が下方に動かされて、その先端の押出部41が下方に動く。制御棒40の先端の押出部41と受動部81aに把持された上端42とを接続する中間部43には、制御棒40が上下に動く範囲、すなわち、制御棒40のストロークを調整するためのストッパ46が取り付けられている。
このストッパ46は、制御棒40の連結あるいは接続部材も兼ねている。すなわち、制御棒40は、上部の加圧装置10の内部を動く第1の部分48と、容器30の内部を動く第2の部分49とに分かれており、ストッパ46で繋がっている。制御棒40は、一本の部材で製造することも可能であるが、容器30に入る部分49と、加圧装置10とともに動く部分48とに分けておくことにより、接続したときの制御棒40の長さの調整が容易となり、押出部41を吐出口31の近傍に配置しやすくなる。さらに、加圧装置10を容器30から取り外すときも、制御棒40の全体を容器30から取り出さなくてもよく、ストッパ46の部分で接続を解くことにより、第2の部分49は容器30の内部に残したまま加圧装置10を取り外して吐出液71aを補給することができる。
本例の吐出装置1aは、図1に示すように、スタンバイ状態では、ストッパ46がブッシュ44の下面に当たり、受動部81aがシリンダ11の下方に若干突き出た位置に達するまで制御棒40はコイルバネ83aにより上方に押された状態となる。そして、図4に示すように、操作端16を指75で持ってピストン12が押し下げられると、シリンダ11の内部で圧縮された空気79は出口端29に設けられたブッシュ44の脇の隙間を通過してシリンジ30の中に注入される。その途中で、ピストン12が最下端に到達する前に、ピストン12の下面12aが受動部81aと接触する。その後は、ピストン12を操作するために操作端16を押す力は受動部81aを介して制御棒40にも伝達される。その結果、ピストン12が動いて空気が圧縮され、シリンジ30に供給されると共に、制御棒40の先端の押出部41が動いてシリンジ30の内部の液体または流状の吐出物71aが吐出口31に向かって押しやられ、吐出口31から基板73などの上にと出物71aが吐出される。
このような制御装置80aを備えた吐出装置1aは、制御棒40の先端の押出部41で吐出物71aを機械的に下側の吐出口31に動かすことができるので、高粘度の吐出物71aを吐出するのに適している。押出部41の形状は、吐出物71aを押し出すことを考えると、吐出口31の方向に動かしたときに吐出物71aとの間で抵抗が発生し、反対の上側に動かしたときに吐出物71aとの間で抵抗が発生し難いことが望ましい。本例では図2に示すように、制御棒40の円周方向に溝を複数条成形し、吐出口31の方向(下側、または、シリンジの下端39の方向)に広がった階段状の押出形状45を複数形成している。この押出形状45は、階段状に限らず、円錐状や角錐状であっても良い。
図4に示した、操作端16を指75で押した状態から、操作端16を離すと、上述したように、ピストン12の下方の領域28は通気孔17を介して外界とつながり、ピストン12は、ピストン用のバネ14により上方へ押し戻される。したがって、受動部81aも制御棒用のバネ83aにより、ストッパ46で決まる位置まで上方に押し戻される。この過程で、制御棒40および押出部41も上方、すなわち、シリンジ30の上端38の側に動く。押出部41は上方に動くときに吐出物41aと抵抗が小さい形状になっているといっても、吐出口31の付近の吐出物71aは押出部41の動きによってシリンジ30の内部に引き込まれる。このため、不用意な吐出物71aの滴下は防止できる。このような液ダレをさらに積極的に防止するのであれば、押出部41の形状は上方に動くときも多少、吐出物との抵抗の高いものにすることが望ましい。
このように、本例の吐出装置1aは、加圧装置10から供給される圧縮空気79の力と、押出部41の動きにより吐出口31から吐出物71aを出力できる。したがって、吐出口31が小径の吐出針32であっても、高粘度の吐出物71aをスムーズに吐出することが可能となる。そして、押出部41は制御棒40と制御機構80aによりピストン12を介して操作できるようになっているので、ユーザは、操作端16を操作するだけで、圧縮空気79を注入し、押出部41を下方の吐出口31に向かって動かすことができる。したがって、本例の吐出装置1aは、高圧の圧縮空気源は不要であり、制御棒40の操作に気を配ることなく、高粘度の液体を片手でも簡単に、そして精度良く吐出することが可能である。このため、完全に手動のポータブルな吐出装置でありながら高粘度の吐出物も取り扱い可能な、非常に使い勝手の良い吐出装置を提供できる。また、本例の吐出装置1aのピストン12の動きを制御棒40に伝えてそれを操作する機構は極めて小型で、かつ、簡単であるから、この機構を加えても吐出装置全体として構成が簡素で、かつ、コンパクトにまとめられ、安価な吐出装置を提供できる。
なお、押出部41のストロークの上限と下限は、吐出物71の物性や吐出量および吐出口31や吐出針32の形状により異なってくる。ストッパ46を中間部43の任意な位置で固定できるようにすることにより適正な上限値を得ることができる。
(第2の実施の形態)
図5に、開閉弁タイプの制御棒を使用する吐出装置1bの概略構成を断面図により示してある。また、図6には、先端部Bの詳細を、拡大した断面図により示してある。また、図7は、吐出装置1bの制御部80bの動作時の状態を、拡大した断面図により示してある。
この吐出装置1bは、上記の吐出装置1aと同様に全体としてペンシル状であり、加圧装置10と、シリンジ30とが組合された構成となっている。加圧装置10の概略の機能とシリンジ30の概略の構成は上記の吐出装置1aと同様であり、加圧装置10に内蔵されている制御機構80bと、シリンジ30に内蔵されている制御棒50の構成が異なる。
まず、本例の吐出装置1bの制御棒50は開閉弁タイプであり、シリンジ30の下端(第1の端)39の側、すなわち、吐出口31に近い部分は先端が細くなった弁体部51となり、図6に先端部Bを拡大して示すように、吐出口31の内面31aに内接して吐出口31を開閉できるようになっている。さらに詳しくは、吐出口31の先端を形成するようにシリンジ30の先39に着脱可能に取り付けられた吐出針32の内側に弁体部51が接して吐出口31を開閉する。
一方、制御棒50のシリンジ30の上端(第2の端)38の側の端52は、シリンダ11の下面の出口端29に固定されたブッシュ44を貫通し、加圧装置10のシリンダ11の中に突き出た状態となっている。さらに、シリンダ11の中に突き出た制御棒50は、組立て時等に制御棒50がブッシュ44からはずれ落ちないように取り付け部材84で把持されている。
また、制御棒50の弁体部51と逆側の端52との中間部分(弁棒部)53には、上記の吐出装置1aと同様にバッファ44に当たって制御棒50のストロークを調整するストッパ56が取り付けられている。このストッパ56とバッファ44との間には、制御棒50を吐出口31の方向(すなわち、第2の方向39)に押す制御棒用の弾性部材であるコイルバネ83bが取り付けられており、本例の制御機構80bの一部を構成している。さらに、ストッパ56とバッファ44の間にはストッパ56の外を覆う筒状の部材56aが取り付けられており、ストッパ56とバネ83bのガイドとして機能する。
加圧装置10のピストン12には、シリンダ11の内部に突き出た制御棒50の一方の端52を把持する受動部81bが取り付けられており、この受動部81bも制御機構80bを構成する。この受動部81bは、一旦、制御棒50の端52を把持すると、ストッパ56がバッファ44に当たって制御棒50が上方に動くのを阻害するまで、制御棒50をピストン12の動きに連動して上方に引っ張ることができる。したがって、加圧装置10の操作端16を押して圧縮空気79をシリンジ30の内部に注入してシリンジ30を加圧した後、操作端16を離すと、ピストン12がピストン用のバネ14により押し戻されるときに制御棒50も上方に引っ張られ、制御棒50の先端の弁体部51が吐出口31から離れてと出口31が開き、シリンジ内部の吐出物71bが吐出される。このため、本例の吐出装置1bは、液ダレが発生しやすい低粘度の吐出物71bを吐出するのに適している。
さらに、本例の制御棒50は、先端がほぼ円錐状の弁体部51となり、その上方は、若干括れた部分57になっている。したがって、弁体部51で吐出口31を塞いだときに、容器30の内圧が括れた部分57に加わり、弁体部51を吐出口31の側に押し付けることにより密閉度が高まる。また、容器30に内圧があると吐出物71bは吐出しやすい状態であるが、その圧力により吐出口31の密閉度を維持できるので、長時間にわたり液ダレを防止できる。
なお、この明細書で低粘度とは、高粘度な流体以外の中粘度および低粘度を含む概念であり、吐出口31へ弁体部51を押し付ける機構で吐出口31からの漏れ出しを防ぐことができる程度のもの、たとえば流動性の高い接着剤、さらに流動性の高い機械油やアルコールなどである。したがって、シリンジ30に残圧があると、弁体部51の外面と吐出口31の内側、本例においては、吐出針32の内面との接面同士の精度が高くないと、その残圧により微小な液漏れが発生する可能性がある。したがって、液切れを改善する点では、シリンジ30に残圧が残らないようにすることが望ましく、本例では、逆流防止機構として機能するシリコンマット29aを取り付けていない。一方、粘性が高く、弁体部51で液を止めやすい場合は、逆にシリコンマット29aを取り付けてシリンジ30に残圧が残るようにしておいた方が応答性は高くなり、使いやすい吐出装置を提供できる。したがって、シリコンマット29aは、低粘度の流体では使用せず、高粘度の流体では使用すると言った使い分を行うことが望ましい。
図7に、本例の受動部81bのさらに詳しい構成を拡大して示してある。受動部81bは、ピストン12の下面12aに取り付けたられた円筒状の支持部89と、制御棒50の端52を把持する円筒状の弾性体88とを備えており、支持部89に対して弾性体88は強固に取り付けられている。たとえば、支持部89の内側には弾性体88をはめ込む溝を設けることが可能である。そして、円筒状の弾性体88の外径と高さは、制御棒50の端52が弾性体88に挿入されて一旦把持した状態52´になると、外部から引っ張られない限りその状態を維持できるようなものとなっている。
したがって、本例の吐出装置1bは、ユーザが指を操作部16にあてがい、通気孔17の開口部18を塞いだ状態で下方に押していくと、ピストン12が下がって、加圧装置10の出口端29から圧縮空気79がシリンジ30に供給される。さらに、ピストン12とともに制御機構80bの受動部81bが下がるので、制御棒50の一方の端52を把持する。そこでユーザが操作部16から指を離すと、ピストン12はコイルバネ14の力で上昇するが、図8に示したように受動部81bは制御棒50の端52を把持したままピストン12と共に上方に動く。その結果、弁体部51も上昇して吐出口31の吐出針32が開き、シリンジ30の内部の圧力も上昇しているので、吐出物71bが吐出される。制御棒の端52は、受動部81bに挿入しやすいように先端が細くなっているが、さらに、受動部81bにより把持された状態を維持できるように矢尻のように括れた部分を形成しておくことは有効である。
さらにピストン12が上昇すると、コイルバネ83bを間に挟んだ状態であるが、制御棒50に取り付けられたストッパ56がバッファ44に当たって制御棒50は受動部81bから抜ける。したがって、制御棒50はコイルバネ83bの力により下方に動き、弁体部51で吐出口31を封止する図5の状態に戻る。一方、ピストン12は、圧縮領域28が通気孔17を通って外気とつながるので、コイルバネ14の力により上昇を続け、図5の状態に復帰する。このとき、弁体部51が吐出口31の内面31aに接する前に、取り付け部材84がシリンダ11の下面11aに当たったり、取り付け部材84が弾性を備えていると、弁体部51が吐出口31に瞬間的に強く当たるのを防止でき、弁体部51あるいは吐出口31が磨耗したり変形したりして閉止する能力が低下するのを未然に防止することができる。
このように、本例の吐出装置1bは、制御棒50が制御機構80bを介してピストン12の動きにより把持されて持ち上げられて吐出口31が開き、制御棒50が復帰する間だけ吐出口31が開いて吐出針32の針先から吐出物71bを放出できる。そして、吐出口31が開いている間を除くと、吐出口31は制御棒50の弁体部51により機械的あるいは物理的に閉止される。したがって、吐出した後は吐出口31から吐出物71bが漏れ出すことはなく、吐出した後の液ダレを防止できる。このため、シリンジ30の内部に低粘度で液ダレが発生しやすい吐出物71bを入れておいても、不用意な液ダレは未然に防止でき、液切れの良い吐出装置を提供できる。また、この吐出装置1bにおいては、ピストン12が上方に復帰する間の限られた時間だけ吐出口31が開くので、吐出する時間が構造上限られている。したがって、液状または流状であって流動性が高く低粘度の吐出物71bを少量だけ吐出する用途に適している。
また、本例の吐出装置1bも、上述した高粘度の吐出物と同様に、単にピストン12に繋がった操作端16を操作するだけで、制御機構80bの有無を、あるいは制御棒50の操作に気を配ることなく、シリンジ30に圧縮空気79を注入し、吐出口31の開閉も操作できる。したがって、ユーザは、単にピストンを動かして加圧する吐出装置と同じ操作感で、先端に閉止弁が設けられた本例の吐出装置1bを操作することができ、使い勝手が良く、低粘度の吐出物を液ダレなく吐出できる吐出装置を提供できる。
さらに、ピストン12の動きを制御棒50に伝えてそれを操作する機構80bは極めて小型で、かつ、簡易な構成であるから、この機構を加えても吐出装置全体として構成が簡素であり、また、コンパクトにまとめることができる。したがって、本発明により、液ダレがない、携帯型の手動タイプの吐出装置を低コストで提供できる。
(第3の実施の形態)
図9に、開閉弁タイプの制御棒を使用する他の吐出装置1cの概略構成を断面図により示してある。また、図10には、制御機構80cの受動部81cの詳細を斜視図により示してある。また、図11に、受動部81cが動いたときの様子を拡大して示してある。
この吐出装置1cは、上記の吐出装置1bと同様に全体としてペンシル状であり、加圧装置10と、シリンジ30とが組合された構成となっている。さらに、制御棒50も吐出口31の側の先端は、吐出口31の内面と接して吐出口を閉鎖することができる弁体部51となり、反対側の端52は、制御機構80cの受動部81cに把持されて弁体部51を動かすようになっている。したがって、本例の吐出装置1cも上記の吐出装置1bと共に液ダレを防止することができ、低粘度の吐出物71bを吐出するのに適した吐出装置である。
上記の吐出装置1bの制御機構80bは、ピストン12が上方に動くときに吐出口31が開いて少量の吐出物71bを吐出するようになっていたのに対し、本例の吐出装置1cでは、ピストン12を下方に押したときに吐出口31が開いて吐出物71bが吐出される。したがって、ピストン12を押し下げたまま保持することにより吐出物71bを連続吐出することが可能であり、上記の吐出装置1bに対して多量の吐出物71bを吐出する機会が多い現場に適した吐出装置1cである。
このため、本例の制御機構80cは、制御棒50のストッパ56とバッファ44の間に配置され、制御棒50を吐出口31の側に押すコイルバネ83cと、制御棒50の一方の端52を把持してシリンダ11の内部に止めるための取り付け部材84と、取り付け部材84に把持された制御棒50の端52をピストン12が下がったときに押し上げる受動部81cとを備えている。制御棒50を引き上げる受動部81cの構成は幾つか考えられるが、たとえば、図10に示した梃子のように動くレバー式のものがある。この受動部81cは、制御棒50の弁棒部53が遊びを持って貫通する程度の直径の穴65を有する平面状の部分64と、この平面状の部分64から途中で屈曲して斜め上に伸びる腕66の部分とを備えている。
したがって、図11に示すように、ピストン12が降下し、腕の部分66の先端67にピストン12の下面12aが接触すると、腕の折曲部68を支点として平面状の部分64が上がり、その上に位置している取り付け部材84を持ち上げる。その結果、制御棒50は、ピストン12を下方に動かすと上方に動き、制御棒50の反対側の先端の弁体部51が吐出口31から離れて吐出口31が開く。そして、吐出口31から吐出物71bが吐出される。ピストン12の中心部には、取り付け部分84を収納できる程度の空間12cが用意されており、ピストン12が降下したときに、取り付け部分84や制御棒50の一端52と干渉しないようになっている。
一方、ピストン12が上方に動くと、受動部81cがピストン12から開放されるので、弁棒部53に設けられたコイルバネ83cにより制御棒50に取り付けられたストッパを兼ねた受け金具56が下側に押され、シリンジ30の吐出口31が弁体部51で閉鎖される。さらに、本例の制御棒50は、加圧装置10に繋がった上部の第1の部分58と、シリンジ30の中心軸に沿って伸びた第2の部分59とに別れており、それらを、ストッパ56を連結具として接続している。したがって、制御棒50の長さを弁体部51が吐出口31を構成する吐出針32の内面と当たって精度良く封鎖できる長さに調整することが可能であり、この点でも液ダレを確実に防止できる。
本例の吐出装置1cは、ユーザが指を操作部16にあてがい、通気孔17の開口部18を塞いだ状態で下方に押していくと、ピストン12が下がって加圧装置10から圧縮空気79がシリンジ30に供給される。それと共に、ピストン12が最下点に近づくと、その下面12aが受動部81cに当たり、制御棒50が上側に動かされて弁体部51が吐出口31から離れ、吐出口31が開く。このため、吐出口31から加圧された吐出物71bが出力される。この状態は、ユーザが操作部16を押し下げている間継続し、シリンジ30の内圧が下がるまで吐出物71を出力できる。
上記の吐出装置1bであっても、操作部16を若干戻した状態で保持することにより吐出口31は開いた状態になるので、連続吐出は可能である。しかしながら、操作部16を若干戻した状態を維持する必要があるので、吐出を安定して続けることはそれほど楽ではない。これに対し、本例の吐出装置1cであれば、操作部16を押し続けるだけで連続吐出ができるので、連続吐出用としては使い勝手が良い。
ユーザが操作部16から指を離すと、ピストン12はコイルバネ14の力で上方に動くので、ピストンの下面12aが受動部81cから離れ、制御棒50はコイルバネ83cの力により下方に動く。したがって、制御棒50の弁体部51が吐出口31の内側31aに接して吐出口31を塞ぐ。このため、本例の吐出装置1cにおいても吐出口31からの液ダレを防止できる。したがって、比較的低粘度の吐出物71bを液ダレなく吐出し、基板などに塗布したり、滴下したりすることができる。
そして、本例の吐出装置1cも、吐出口31の弁操作は、圧縮空気を生成するためにピストン12を動かすだけで可能であり、片手でも簡単にシリンジ内を加圧して吐出し、吐出した後は液ダレを防止することができる。したがって、携帯型のコンパクトな吐出装置であって、低粘度の吐出物も液ダレなく吐出することができる、液切れの良い吐出装置を低コストで提供できる。
(第4の実施の形態)
図12に、開閉弁タイプの制御棒を使用する、さらに異なる吐出装置1dの概略構成を断面図により示してある。この吐出装置1dは、上記の吐出装置1cと基本的な構成および動作は同じであるので、異なる部分を以下では説明する。まず、本例の加圧装置10は、ピストンロッド13を貫通する通気孔17の上端の開口18が2重構造になっており、通気孔17の内側にパイプ90が嵌めこまれている。さらに、ピストンロッド13およびパイプ90を通気孔17と直交する方向に貫通するように開口91および92がそれぞれ設けられており、パイプ90を回転することにより通気孔17に繋がる開口91および92の開度を制御できるようになっている。
開度調整の様子を図13に断面図で示してある。図13(a)のように、内側のパイプ90またはピストンロッド13を回転することにより、パイプ90の開口91の位置をピストンロッド13の開口92の位置に合わせると、通気孔17に対して開度が100%の第2の開口93が形成される。図13(b)に示すように、内側のパイプ90またはピストンロッド13を回転することにより、パイプ90の開口91の位置をピストンロッド13の開口92の位置から若干ずらすと、通気孔17に対する第2の開口93の開度が減り、さらに、図13(c)に示すように、内側のパイプ90またはピストンロッド13を回転することにより、パイプ90の開口91の位置をピストンロッド13の開口92の位置からずらすと、通気孔17に対する第2の開口93は閉じる。パイプ90の内面は外面と異なる色、たとえば黒色に塗装されており、開度により色の異なる面積が変化する。したがって、ピストンロッド13の開口92から目で見ながらインナーパイプ90あるいはピストンロッド13を回転することにより第2の開口93の開度を確認することができる。
吐出口31からの吐出量を制御するとき、上記の吐出装置であるとピストンの作動量を調整して、加圧装置10からシリンジ30に供給される空気量を制御している。これに対し、本例の吐出装置1dであれば、通気孔17に外界と繋がる第2の開口93を設けることにより、ピストン12を動かしたときにシリンダ11から排気され、シリンダ11の圧縮効果を減らし発生する加圧空気量を削減できる。そして、第2の開口93の開度を調整することにより、加圧装置10に供給される空気量を制御できるので、ピストン13のストロークを一定になるように操作しても加圧装置10からシリンジ30に供給される空気量を制御できる。ピストン13のストローク(作動量)を変えることも可能なので、シリンジ30の内圧の調整範囲が大幅に広がり、シリンジ30から吐出される液量の調整範囲が広くなる。
また、上記の実施例3の吐出装置1cにおいては、ストッパ56の部分で制御棒50の長さを調整し、弁体51の押し付け量を調整して微小な吐出量を制御するという方法が採用されているが、本例においては、加圧装置10の側に流量の微調節を行う機構が設けられているので、制御棒50の長さ調整は不要となる。したがって、本例の吐出装置1cは制御棒50は一体化されており、ストップ56は長さ調整の機能は備えていない。
さらに、本例の吐出装置1dは、容器30と加圧装置10との間を開閉可能な仕切り機構96を備えている。本例の仕切り機構96は、シリンジ30の側に取り付けられたリング状の板94と、リング状の板94の中心の開口部分を開閉可能なシール部材95とを備えており、シール部材95が制御棒50により上下に駆動される。本例においては、シール部材95は、制御棒50のストッパ56としての機能も兼ねている。シリンジ30の内部は先端に向かって徐々に細くなるようにテーパー状になっているので、適当な外形のリング状の板94を挿入すると適当な位置で止まり、そのリング状の板94と当たる位置にシール部材95を取り付ける。
図14に示すように、仕切り機構96においては、ピストンロッド13を押し下げて、制御棒50が上がり、弁体51がオープンする状態になると、シール部材95も上がり、リング状の板94から離れるので、仕切り機構96はオープンとなり、加圧装置10から圧縮空気79がシリンジ30に供給される。ピストンロッド13を離すと、制御棒50が下がり、弁体51がクローズすると共に、シール部材95が下がり、リング状の板94と接して仕切り機構96は閉じる。したがって、加圧装置10から圧縮空気79が供給されないと共に、シリンジ30の内部の吐出物71bが加圧装置10に漏れ出すことも防がれる。
このため、本例の吐出装置1dは、逆流を防止する目的のシリコンマットは設けられていない。逆流防止機構は、シリンジ30の内部を高圧しないと吐出しない高粘度の吐出物を取り扱うには便利であるが、低圧でも吐出する低粘度あるいは流動性の高い吐出物の場合は、弁対51をクローズしても加圧される状態が発生しうるので液切れが悪くなる可能性がある。これに対し、本例の仕切り機構96であれば、加圧装置10の側の圧力が高くても弁体51と連動してシリンジ30に対する加圧空気の供給を停止できるので液切れを改善できる。
さらに、本例の吐出装置1dは、シリンジ30の上方に吐出物71bを供給するための供給口97が設けられており、シリンジ30の外側に上下に動くように取り付けられた伸縮性のベルト98より供給口97を開閉できるようになっている。図15に、吐出物を供給する様子を示してある。ベルト98は、たとえば、シリコンゴム製のパイプであり、図15(a)に示すようにベルト98を上または下に動かして供給口97を開け、吐出物の供給源99からシリンジ30に吐出物71bを注入する。そして、図15(b)に示すようにベルト97を上下に動かして供給口96を閉じてピストンロッド13を操作することによりシリンジ30から吐出物71bを所望の量、所望の場所に吐出できる。供給口97を設けることにより、その都度、シリンジ30と加圧装置10を分離しなくても吐出物を補給できるので作業性が向上する。また、本例の吐出装置1dは、シリンジ内の圧力は手先で加圧できる程度の低い圧力にしかならないので、シリコンゴムのような簡単な部材で供給口97をシールでき、構成も複雑にならず、コストアップもほとんどない。
また、本例の吐出装置1dでは、弁体部51が吐出口31を構成する吐出針32の内側ではなく、シリンジ30の先端39の内側に接して吐出口31を開閉するようになっている。このため、図16に示すように、シリンジ30の内部に吐出物71bが入っていても、制御棒50により制御される弁体部51で吐出口31を閉じた状態で、吐出針32を取り外すことができる。このため、吐出針32の取り付け、取り外しが自由になり、吐出先によって吐出針32の形状や径を変えたり、目詰まりが発生したときに吐出針を交換したりすることが簡単に行える。さらに、吐出装置1dを使わないときに吐出針32を外して漏れ防止用のキャップを装着しておくことが可能であり、目詰まりを防止するためにその都度、シリンジ30から吐出物71bを出して空にしておくような手間も省くことができる。
さらに、針穴に制御棒50を通して開閉する必要がないので、針穴の形状が自由になり、針穴の大小を自由に加工できるというメリット、針穴に制御棒50が通らないので、針穴の面積を大きく確保でき、液が出やすくなり、穴詰まりなどのトラブルが減るなどのメリットも得られる。したがって、機械油やアルコールなどの流動性の非常に高い吐出物ではなく、溶剤のような流動性が若干低く、固まりやすく、若干、液切れが悪くても支障のないような吐出物を使用する場合は、本例のようにシリンジ30の先端39に弁体部51を接して吐出口31を開閉することは非常に有効である。
一方、流動性の高い機械油、アルコールなどを使用する場合は、目詰まりという心配はほとんどなく、吐出停止後の針穴からの液漏れの事態が発生しうることから、上記の実施例に示したように、吐出針32の内部に弁体部51を接して吐出口31を開閉する方法を採用することが望ましく、さらに、精度の高い吐出停止性能を得ることができる。
なお、上述した各実施例の吐出装置1a〜1dは、少なくともシリンジ30は共通に使うことが可能であり、加圧装置10を付け替えたり、制御棒を追加または取り替えることにより構成できる。したがって、本例の吐出装置1a〜1dは、その点でも経済的な吐出装置である。また、これらの吐出装置1a〜1dは、ピストン12を手で動かし、完全に手動で所望の吐出物を所望の量だけ、所望の場所に吐出することができるものであり、どこでも手軽に使用できる。そして、図17に示すようなスタンド100に掛けたり、差したりして作業場の手の届く範囲に置いておくことが可能であり、近年推奨されつつある、ラピッド・マニュファクチャリングあるいはデスクトップ・マニュファクチャリングといった生産手法にも好適な吐出装置である。このスタンド100は、吐出装置1a〜1dの操作部16を引っ掛けて吐出装置を吊り下げられる部分101と、シリンジ30を差し込んで針先を下に付けて吐出装置8を立てかけられる部分102とが用意されており、針先の状態や、液切れなどの条件により選択して利用できる。
また、上記では、ピストン12の動きで圧縮空気を生成する加圧装置を備えた吐出装置により、本発明を説明しているが、外部から供給される圧縮空気のオンオフをピストン12で切り替えるような加圧装置においても本発明を適用することができる。しかしながら、上述した各実施例に示したように、吐出口の近傍を制御棒で操作することができるので、高粘度の吐出物であっても低圧の圧縮空気で吐出することができ、また、シリンジ内を負圧にしなくても吐出口を閉鎖することにより低粘度の吐出物の液ダレ(液漏れ)を防止できる。したがって、簡易な構成になるので、コンプレッサなどの空気圧縮源を伴わない携帯型(ハンディータイプ)のコンパクトな吐出装置として好適である。そして、ピストン12を操作するだけで吐出口31の近傍を操作できることは上述した通りであり、吐出する際に操作する部分が少なくて済むので、この点でも携帯型の吐出装置に適している。