JP2004128033A - 固体電解コンデンサの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止する。
【解決手段】コンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤を含浸し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置することにより、コンデンサ素子内の不純物が取り除かれ、不純物に起因する固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止することができる。
【選択図】 図1
【解決手段】コンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤を含浸し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置することにより、コンデンサ素子内の不純物が取り除かれ、不純物に起因する固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止することができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は固体電解コンデンサの製造方法に関するもので、特に固体電解質として導電性高分子を用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体電解コンデンサは、アルミニウム等からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子に、固体電解質を保持してなるいわゆる巻回型の電解コンデンサや、タンタル微粉末を焼結してなるコンデンサ素子の表面に固体電解質層を形成してなる焼結型の固体電解コンデンサが知られている。
【0003】
このような電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、近年、低ESR化を目的として導電性高分子が着目され、導電性高分子を固体電解質として用いる固体電解コンデンサが実用化されている。一般に、これら導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリピロール又はポリアニリン、或いはそれらの誘導体等があり、中でもポリチオフェンは、ポリピロール又はポリアニリンと比較して、導電率が高く熱安定性が特に優れていることから近年注目されており、ポリチオフェン又はその誘導体を固体電解質として用いた固体電解コンデンサとして特開平2−15611号公報(特許文献1)に開示されているものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平2−15611号公報
【0005】
このようなポリチオフェンは、化学酸化重合及び電解重合によって得る方法が知られている
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このうち、電解重合法は導電性高分子層を容易に厚く形成できるという利点がある一方で、電解重合を行うにはコンデンサ素子毎に重合用電極を取り付けることが必要であることと、導電性高分子が電極上にフィルム状に形成されるため、大量に製造することが困難であるという問題がある。
【0007】
一方、化学酸化重合では、電解重合の上記のような問題が無く、簡易に大量に製造する方法であることが知られている。しかしながら、化学重合による導電性高分子層の中には、残留モノマー、低重合度のオリゴマーやそれらの分解物等の比較的低沸点の分子、あるいはイオンがポリマーの中に分布し、広い分子量分布となる。このため、酸化皮膜欠陥部を通して流れるイオン電流も大きくなり、固体電解コンデンサの漏れ電流の増加を引き起こす。さらに、トランスファーモールド法による樹脂外装構造の固体電解コンデンサにおいては、モールド成形時の温度により低沸点の低分子量物質が蒸発・飛散する。この場合に、導電性高分子層が多孔質化して電導度が低下し、さらに誘電体酸化物皮膜に対する密着性強度も低下して、熱ストレスが陽極酸化皮膜を損傷することになり、中には固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を引き起こすものも発生するという問題をも抱える結果となっていた。
【0008】
同様にコンデンサを回路基板にはんだ付けする場合の温度によっても前述した様な原因でショート、漏れ電流増大やESR増大となる問題が顕在化しており、今後鉛フリー対応のはんだ付けによってますます高温になろうとした時、このような欠点は大きな問題であった。
【0009】
そこで、この発明では、固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止することのできる固体電解コンデンサの製造方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
陽極となる弁作用金属基体の表面に誘電体酸化皮膜を形成したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤を含浸し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置すると、蒸気蒸留と同様の作用により、導電性高分子層の内部の残留モノマーや残留酸化剤等の不純物を除去することができる。
【0012】
このため、前述の残留モノマーによる不都合を回避することができ、固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止することのできる。
【0013】
また、この発明は高温多湿雰囲気に放置する工程の前に、コンデンサ素子を乾燥する工程を有することを特徴とする。
【0014】
高温多湿雰囲気に放置する工程の前に、予めコンデンサ素子を乾燥しておくと、前述した蒸気蒸留と同様の効果がより顕著なものとなり、効率よく残留モノマー等を除去することができる。
【0015】
チオフェンの誘導体としては次に掲げる構造のものを例示できる、チオフェン又はその誘導体は、ポリピロール又はポリアニリンと比較して、導電率が高いとともに熱安定性が特に優れているため、低ESRで耐熱特性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
【0016】
【化1】
XはOまたはS
XがOのとき、Aはアルキレン、又はポリオキシアルキレン
Xの少なくとも一方がSのとき、
Aはアルキレン、ポリオキシアルキレン、置換アルキレン、置換ポリオキシアルキレン:ここで、置換基はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基
【0017】
チオフェンの誘導体の中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いると好適である。
【0018】
3,4−エチレンジオキシチオフェンは、酸化剤と接触することで、緩やかな重合反応によってポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)を生成するため、3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマー溶液を微細な構造を有するコンデンサ素子の内部にまで浸透した状態で重合させることができる。この結果、コンデンサ素子の内部にまで導電性高分子層を形成することができるようになり、固体電解コンデンサの静電容量の増大を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
図1は固体電解コンデンサの内部構造を示す断面図である。1はコンデンサ素子であり、タンタル微粉末を所定形状に成型するとともに、タンタル線等の陽極導出線を埋設して、さらに焼結してタンタル焼結体を得、さらにリン酸水溶液等に浸漬し、所定電圧を印加してタンタル微粉末の表面に誘電体となる陽極酸化皮膜を形成したものである。なお、焼結体はタンタルに限らず、アルミニウム、ニオブ、チタン等の弁作用金属を用いることができる。
【0020】
2は、陽極酸化皮膜の上に形成された導電性高分子層である。導電性高分子層は、3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化重合して形成したものである。
【0021】
この重合工程は、まず所定溶媒で希釈したモノマー溶液にコンデンサ素子を浸漬し、さらに過硫酸イオンを含む酸化剤溶液に浸漬することを繰り返す工程よりなる。
【0022】
過硫酸イオンを含む酸化剤としては、水を溶媒として過硫酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を溶解し、さらに硫酸を溶解した水溶液を用いることができる。
【0023】
そして、コンデンサ素子に導電性高分子層を形成した後、所定の流水洗浄、乾燥を行う。
【0024】
上記の乾燥まで終了した後、重合性モノマー溶液および酸化剤溶液への浸漬工程を再び行い、導電性高分子層が所望の厚さになるまで繰り返した。
【0025】
次いで、乾燥したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に所定時間放置する。この高温多湿雰囲気下に放置することにより、蒸気蒸留と同様の作用により、コンデンサ素子内の残留モノマーやオリゴマー、さらには不純物成分が除去されるようになる。
【0026】
高温多湿雰囲気下での放置処理が終了したコンデンサ素子は、その後導電性高分子層2の上に形カーボン層3を形成し、さらにカーボン層の上に銀ペースト層4を形成する。
【0027】
その後、陽極リード線5をコンデンサ素子の陽極導出線と溶接するとともに、陰極リード線6を銀ペースト層と接続し、それぞれ外部と電気的に連絡するようにする。
【0028】
さらに、コンデンサ素子を陽極リード線及び陰極リード線の一部を除き、トランスファーモールドによって樹脂被覆し、外装樹脂7とする。
【0029】
そして、陽極リード線および陰極リード線は表面実装が可能となるよう外装樹脂7の端面に沿って折り曲げ、固体電解コンデンサを完成する。
【0030】
【実施例】
次に具体的な実施例について比較例と対比して詳細に説明する。
(実施例)
陽極として大きさが3.9×3.3×1.6mm3のタンタル焼結体を用い、陽極線としてタンタル線を用いた重量が約100mgの陽極体を0.05wt%燐酸水溶液中で90℃、40Vで180分陽極酸化し、脱イオン水の流水により洗浄して、乾燥を行いコンデンサ素子とした。
【0031】
次に、このコンデンサ素子を2−プロパノール50gと3,4−エチレンジオキシチオフェン50gとを混ぜ合わせてなるモノマー溶液に30秒間浸漬した。次いで、過硫酸イオンを含む酸化剤として過硫酸アンモニウム40gと硫酸4gを100gの純水に溶解して得た酸化剤溶液に40分間浸漬し、化学酸化重合を行った。このようにしてコンデンサ素子を構成する陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成し、さらに流水洗浄を30分間行った後、コンデンサ素子を乾燥した。その後前記高分子層が所望の厚さになるまで、モノマー溶液への浸漬−乾燥までの重合回数を5回繰り返した。そして、その後にコンデンサ素子の重量を測定し、コンデンサ素子に形成された導電性高分子の量を測定した。
【0032】
さらに、重合を終えたコンデンサ素子を、湿度95%、温度60℃の環境に、2時間放置し、その後コンデンサ素子を乾燥した。この高温多湿雰囲気に放置した後、コンデンサ素子の重量を測定したところ、平均で約1mgの重量の減少が確認された。この重量減少は、コンデンサ素子内の残留モノマー等の不純物が除去されたことによる重量減少と考えられる。
【0033】
次に、このコンデンサ素子の導電性高分子層の上に、カーボン層、このカーボン層の上に陰極となる銀塗料層を形成し、この銀塗料層の上に陰極引出端子を、前記陽極体から引出した陽極線に陽極引出端子をそれぞれ取付け、トランスファーモールドにより樹脂外装を行い、前記陰極引出端子及び陽極引出端子を所定の位置に折曲げてチップ状の固体電解コンデンサを完成した。
【0034】
以上のようにして完成した固体電解コンデンサの定格電圧は10V、定格静電容量は100μFであった。
【0035】
(従来例)
上記の実施例の高温多湿処理工程を省略した点の他は、同一条件で固体電解コンデンサを製造した。
【0036】
上記の実施例および従来例によって製造した固体電解コンデンサの漏れ電流を測定したところ、次の表1に示す結果の通りであった。
【0037】
【表1】
【0038】
この結果から判るように、本発明の高温多湿処理工程を行ったことによって、固体電解コンデンサの漏れ電流のばらつきが小さくなり、その平均値も小さくなっている。また、高温多湿処理工程を行っていない従来例では、リフロー後にショートが発生するものがあったが、本発明の実施例では、ショートは発生していない。従って、本発明による固体電解コンデンサの漏れ電流低減効果、およびショート発生抑制効果を確認できた。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、陽極となる弁作用金属基体の表面に誘電体酸化皮膜を形成したコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に順次浸漬し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置する工程を含む製造方法により、固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体電解コンデンサの基本構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 コンデンサ素子
2 導電性高分子層
3 カーボン層
4 銀塗料層
5 陽極引出端子
6 陰極引出端子
7 樹脂外装層
【発明の属する技術分野】
この発明は固体電解コンデンサの製造方法に関するもので、特に固体電解質として導電性高分子を用いた固体電解コンデンサの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
固体電解コンデンサは、アルミニウム等からなる陽極箔と陰極箔をセパレータを介して巻回してなるコンデンサ素子に、固体電解質を保持してなるいわゆる巻回型の電解コンデンサや、タンタル微粉末を焼結してなるコンデンサ素子の表面に固体電解質層を形成してなる焼結型の固体電解コンデンサが知られている。
【0003】
このような電解コンデンサに用いられる固体電解質としては、近年、低ESR化を目的として導電性高分子が着目され、導電性高分子を固体電解質として用いる固体電解コンデンサが実用化されている。一般に、これら導電性高分子としては、ポリチオフェン、ポリピロール又はポリアニリン、或いはそれらの誘導体等があり、中でもポリチオフェンは、ポリピロール又はポリアニリンと比較して、導電率が高く熱安定性が特に優れていることから近年注目されており、ポリチオフェン又はその誘導体を固体電解質として用いた固体電解コンデンサとして特開平2−15611号公報(特許文献1)に開示されているものがある。
【0004】
【特許文献1】特開平2−15611号公報
【0005】
このようなポリチオフェンは、化学酸化重合及び電解重合によって得る方法が知られている
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このうち、電解重合法は導電性高分子層を容易に厚く形成できるという利点がある一方で、電解重合を行うにはコンデンサ素子毎に重合用電極を取り付けることが必要であることと、導電性高分子が電極上にフィルム状に形成されるため、大量に製造することが困難であるという問題がある。
【0007】
一方、化学酸化重合では、電解重合の上記のような問題が無く、簡易に大量に製造する方法であることが知られている。しかしながら、化学重合による導電性高分子層の中には、残留モノマー、低重合度のオリゴマーやそれらの分解物等の比較的低沸点の分子、あるいはイオンがポリマーの中に分布し、広い分子量分布となる。このため、酸化皮膜欠陥部を通して流れるイオン電流も大きくなり、固体電解コンデンサの漏れ電流の増加を引き起こす。さらに、トランスファーモールド法による樹脂外装構造の固体電解コンデンサにおいては、モールド成形時の温度により低沸点の低分子量物質が蒸発・飛散する。この場合に、導電性高分子層が多孔質化して電導度が低下し、さらに誘電体酸化物皮膜に対する密着性強度も低下して、熱ストレスが陽極酸化皮膜を損傷することになり、中には固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を引き起こすものも発生するという問題をも抱える結果となっていた。
【0008】
同様にコンデンサを回路基板にはんだ付けする場合の温度によっても前述した様な原因でショート、漏れ電流増大やESR増大となる問題が顕在化しており、今後鉛フリー対応のはんだ付けによってますます高温になろうとした時、このような欠点は大きな問題であった。
【0009】
そこで、この発明では、固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止することのできる固体電解コンデンサの製造方法を提供するものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
陽極となる弁作用金属基体の表面に誘電体酸化皮膜を形成したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤を含浸し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置する工程を含むことを特徴とする。
【0011】
重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置すると、蒸気蒸留と同様の作用により、導電性高分子層の内部の残留モノマーや残留酸化剤等の不純物を除去することができる。
【0012】
このため、前述の残留モノマーによる不都合を回避することができ、固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大やESR増大を防止することのできる。
【0013】
また、この発明は高温多湿雰囲気に放置する工程の前に、コンデンサ素子を乾燥する工程を有することを特徴とする。
【0014】
高温多湿雰囲気に放置する工程の前に、予めコンデンサ素子を乾燥しておくと、前述した蒸気蒸留と同様の効果がより顕著なものとなり、効率よく残留モノマー等を除去することができる。
【0015】
チオフェンの誘導体としては次に掲げる構造のものを例示できる、チオフェン又はその誘導体は、ポリピロール又はポリアニリンと比較して、導電率が高いとともに熱安定性が特に優れているため、低ESRで耐熱特性に優れた固体電解コンデンサを得ることができる。
【0016】
【化1】
XはOまたはS
XがOのとき、Aはアルキレン、又はポリオキシアルキレン
Xの少なくとも一方がSのとき、
Aはアルキレン、ポリオキシアルキレン、置換アルキレン、置換ポリオキシアルキレン:ここで、置換基はアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基
【0017】
チオフェンの誘導体の中でも、3,4−エチレンジオキシチオフェンを用いると好適である。
【0018】
3,4−エチレンジオキシチオフェンは、酸化剤と接触することで、緩やかな重合反応によってポリ−(3,4−エチレンジオキシチオフェン)(PEDT)を生成するため、3,4−エチレンジオキシチオフェンのモノマー溶液を微細な構造を有するコンデンサ素子の内部にまで浸透した状態で重合させることができる。この結果、コンデンサ素子の内部にまで導電性高分子層を形成することができるようになり、固体電解コンデンサの静電容量の増大を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
次にこの発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
図1は固体電解コンデンサの内部構造を示す断面図である。1はコンデンサ素子であり、タンタル微粉末を所定形状に成型するとともに、タンタル線等の陽極導出線を埋設して、さらに焼結してタンタル焼結体を得、さらにリン酸水溶液等に浸漬し、所定電圧を印加してタンタル微粉末の表面に誘電体となる陽極酸化皮膜を形成したものである。なお、焼結体はタンタルに限らず、アルミニウム、ニオブ、チタン等の弁作用金属を用いることができる。
【0020】
2は、陽極酸化皮膜の上に形成された導電性高分子層である。導電性高分子層は、3,4−エチレンジオキシチオフェンを酸化重合して形成したものである。
【0021】
この重合工程は、まず所定溶媒で希釈したモノマー溶液にコンデンサ素子を浸漬し、さらに過硫酸イオンを含む酸化剤溶液に浸漬することを繰り返す工程よりなる。
【0022】
過硫酸イオンを含む酸化剤としては、水を溶媒として過硫酸のアルカリ金属塩やアンモニウム塩を溶解し、さらに硫酸を溶解した水溶液を用いることができる。
【0023】
そして、コンデンサ素子に導電性高分子層を形成した後、所定の流水洗浄、乾燥を行う。
【0024】
上記の乾燥まで終了した後、重合性モノマー溶液および酸化剤溶液への浸漬工程を再び行い、導電性高分子層が所望の厚さになるまで繰り返した。
【0025】
次いで、乾燥したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に所定時間放置する。この高温多湿雰囲気下に放置することにより、蒸気蒸留と同様の作用により、コンデンサ素子内の残留モノマーやオリゴマー、さらには不純物成分が除去されるようになる。
【0026】
高温多湿雰囲気下での放置処理が終了したコンデンサ素子は、その後導電性高分子層2の上に形カーボン層3を形成し、さらにカーボン層の上に銀ペースト層4を形成する。
【0027】
その後、陽極リード線5をコンデンサ素子の陽極導出線と溶接するとともに、陰極リード線6を銀ペースト層と接続し、それぞれ外部と電気的に連絡するようにする。
【0028】
さらに、コンデンサ素子を陽極リード線及び陰極リード線の一部を除き、トランスファーモールドによって樹脂被覆し、外装樹脂7とする。
【0029】
そして、陽極リード線および陰極リード線は表面実装が可能となるよう外装樹脂7の端面に沿って折り曲げ、固体電解コンデンサを完成する。
【0030】
【実施例】
次に具体的な実施例について比較例と対比して詳細に説明する。
(実施例)
陽極として大きさが3.9×3.3×1.6mm3のタンタル焼結体を用い、陽極線としてタンタル線を用いた重量が約100mgの陽極体を0.05wt%燐酸水溶液中で90℃、40Vで180分陽極酸化し、脱イオン水の流水により洗浄して、乾燥を行いコンデンサ素子とした。
【0031】
次に、このコンデンサ素子を2−プロパノール50gと3,4−エチレンジオキシチオフェン50gとを混ぜ合わせてなるモノマー溶液に30秒間浸漬した。次いで、過硫酸イオンを含む酸化剤として過硫酸アンモニウム40gと硫酸4gを100gの純水に溶解して得た酸化剤溶液に40分間浸漬し、化学酸化重合を行った。このようにしてコンデンサ素子を構成する陽極酸化皮膜上に導電性高分子層を形成し、さらに流水洗浄を30分間行った後、コンデンサ素子を乾燥した。その後前記高分子層が所望の厚さになるまで、モノマー溶液への浸漬−乾燥までの重合回数を5回繰り返した。そして、その後にコンデンサ素子の重量を測定し、コンデンサ素子に形成された導電性高分子の量を測定した。
【0032】
さらに、重合を終えたコンデンサ素子を、湿度95%、温度60℃の環境に、2時間放置し、その後コンデンサ素子を乾燥した。この高温多湿雰囲気に放置した後、コンデンサ素子の重量を測定したところ、平均で約1mgの重量の減少が確認された。この重量減少は、コンデンサ素子内の残留モノマー等の不純物が除去されたことによる重量減少と考えられる。
【0033】
次に、このコンデンサ素子の導電性高分子層の上に、カーボン層、このカーボン層の上に陰極となる銀塗料層を形成し、この銀塗料層の上に陰極引出端子を、前記陽極体から引出した陽極線に陽極引出端子をそれぞれ取付け、トランスファーモールドにより樹脂外装を行い、前記陰極引出端子及び陽極引出端子を所定の位置に折曲げてチップ状の固体電解コンデンサを完成した。
【0034】
以上のようにして完成した固体電解コンデンサの定格電圧は10V、定格静電容量は100μFであった。
【0035】
(従来例)
上記の実施例の高温多湿処理工程を省略した点の他は、同一条件で固体電解コンデンサを製造した。
【0036】
上記の実施例および従来例によって製造した固体電解コンデンサの漏れ電流を測定したところ、次の表1に示す結果の通りであった。
【0037】
【表1】
【0038】
この結果から判るように、本発明の高温多湿処理工程を行ったことによって、固体電解コンデンサの漏れ電流のばらつきが小さくなり、その平均値も小さくなっている。また、高温多湿処理工程を行っていない従来例では、リフロー後にショートが発生するものがあったが、本発明の実施例では、ショートは発生していない。従って、本発明による固体電解コンデンサの漏れ電流低減効果、およびショート発生抑制効果を確認できた。
【0039】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、陽極となる弁作用金属基体の表面に誘電体酸化皮膜を形成したコンデンサ素子を、重合性モノマー溶液と酸化剤溶液に順次浸漬し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置する工程を含む製造方法により、固体電解コンデンサのショート、漏れ電流増大を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の固体電解コンデンサの基本構造を示す断面図である。
【符号の説明】
1 コンデンサ素子
2 導電性高分子層
3 カーボン層
4 銀塗料層
5 陽極引出端子
6 陰極引出端子
7 樹脂外装層
Claims (4)
- 陽極となる弁作用金属基体の表面に誘電体酸化皮膜を形成したコンデンサ素子に、重合性モノマーと酸化剤を含浸し、前記重合性モノマーの化学重合により、前記誘電体酸化皮膜の表面に導電性高分子層を形成してなる固体電解コンデンサの製造方法において、
重合性モノマーの重合が終了したコンデンサ素子を、温度が40℃以上、湿度80%RH以上の高温多湿雰囲気に放置する工程を含む固体電解コンデンサの製造方法。 - 前記高温多湿雰囲気に放置する工程の前に、コンデンサ素子を乾燥する工程を有する請求項1記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記重合性モノマーがチオフェン又はその誘導体からなるモノマーであることを特徴とする請求項1または2に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
- 前記チオフェンの誘導体が3,4−エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサの製造方法。
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