JP2004124246A - 耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜およびその製造方法、並びに耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜被覆工具 - Google Patents

耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜およびその製造方法、並びに耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜被覆工具 Download PDF

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Abstract

【課題】特に耐熱性に優れたα型結晶構造主体のアルミナ膜が被覆された、耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜を提供する。
【解決手段】▲1▼AlとTiを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物をからなる硬質皮膜を有する積層皮膜において、該硬質皮膜を酸化することによって形成される酸化物含有層と、該酸化物含有層上に形成されるα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を有することを特徴とする積層皮膜とする。または、▲2▼酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属とB、C,N,O等との化合物からなる硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、次いで該酸化物含有層表面における酸化物の還元を伴いながらアルミナ膜を形成する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、切削工具、摺動部材、金型等の如き耐摩耗部材に被覆される積層皮膜に関するものであり、詳細には、耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜と、上記切削工具や摺動部材等の基材の特性を損なうことのない低温条件で該積層皮膜を形成することのできる有用な製造方法に関するものである。尚、本発明の対象となる積層皮膜は、上記した様々な用途に適用できるが、以下では代表例として切削工具に適用する場合を中心に説明を進める。
【0002】
【従来の技術】
一般に、優れた耐摩耗性や摺動特性が求められる切削工具や摺動部材として、高速度鋼製や超硬合金製等の基材表面に、チタン窒化物やチタンアルミニウム窒化物等の硬質皮膜が、物理蒸着法(以下、PVD法という)や化学蒸着法(以下、CVD法という)等の方法で形成されたものが用いられている。
【0003】
特に切削工具として使用する場合、前記硬質皮膜には耐摩耗性と耐熱性(高温での耐酸化性)が特性として要求されるので、該両特性を有するものとして、特にチタンアルミニウム窒化物(TiAlN)が、切削時の刃先温度が高温となる超硬工具等への被覆材料として近年多く使用されている。この様にTiAlNが優れた特性を発揮するのは、皮膜に含まれるアルミニウムの作用により耐熱性が向上し、800℃程度の高温まで安定した耐摩耗性と耐熱性を維持できるからである。該TiAlNとしては、TiとAlの組成比の異なる様々なものが使用されているが、その大半は、上記両特性を備えたTi:Alの原子比が50:50〜25:75のものである。
【0004】
ところで切削工具等の刃先は、切削時に1000℃以上の高温となる場合がある。この様な状況下、上記TiAlN膜のみでは十分な耐熱性を確保できないため、例えば、特許文献1に示されるように、TiAlN膜を形成した上に、更にアルミナ層を形成して耐熱性を確保することが行われている。
【0005】
アルミナは、温度によって様々な結晶構造をとるが、いずれも熱的に準安定状態にある。しかし、切削工具の如く切削時における刃先の温度が、常温から1000℃以上にわたる広範囲で著しく変動する場合には、アルミナの結晶構造が変化し、皮膜に亀裂が生じたり剥離する等の問題を生じる。ところが、CVD法を採用し、基材温度を1000℃以上に高めることによって形成されるα型結晶構造のアルミナだけは、一旦形成されると、以後の温度に関係なく熱的に安定な構造を維持する。したがって、切削工具等に耐熱性を付与するには、α型結晶構造のアルミナ膜を被覆することが有効な手段とされている。
【0006】
しかしながら、上述した通りα型結晶構造のアルミナを形成するには、基材を1000℃以上にまで加熱しなければならないため、適用できる基材が限られる。基材の種類によっては、1000℃以上の高温にさらされると軟質化し、耐摩耗部材用基材としての適性が失われる可能性が生じるからである。また、超硬合金の様な高温用基材であっても、この様な高温にさらされると変形等の問題が生じる。また、耐摩耗性を発揮する膜として基材上に形成されたTiAlN膜等の硬質皮膜の実用温度域は一般に最高で800℃程度であり、1000℃以上の高温にさらされると、皮膜が変質し、耐摩耗性が劣化するおそれがある。
【0007】
この様な問題に対し、特許文献2には、上記アルミナと同レベルの高硬度を有する(Al,Cr)混合結晶が、500℃以下の低温域で得られた旨報告されている。しかしながら、被削材が鉄を主成分とするものである場合、前記混合結晶皮膜の表面に存在するCrが、切削時に被削材中の鉄と化学反応を起こし易いため、皮膜の消耗が激しく寿命を縮める原因となる。
【0008】
また、O.Zywitzki,G.Hoetzschらは、非特許文献1で、高出力(11−17kW)のパルス電源を用いて反応性スパッタリングを行うことで、750℃でα型結晶構造の酸化アルミニウム皮膜を形成できた旨報告している。しかし、この方法でα型結晶構造の酸化アルミニウムを得るには、パルス電源の大型化が避けられない。
【0009】
この様な問題を解決した技術として、特許文献3には、格子定数が4.779Å以上5.000Å以下で、膜厚が少なくとも0.005μmであるコランダム構造(α型結晶構造)の酸化物皮膜を下地層とし、該下地層上にα型結晶構造のアルミナ皮膜を形成する方法が開示されている。上記酸化物皮膜の成分は、Cr、(Fe,Cr)又は(Al,Cr)のいずれかであることが好ましく、該酸化物皮膜の成分が(Fe,Cr)である場合には、(Fe,Cr(1−x)(ただし、xは0≦x≦0.54)を採用することがより好ましく、また、該酸化物皮膜の成分が(Al,Cr)である場合には、(Al,Cr(1−y)(ただし、yは0≦y≦0.90)を採用することがより好ましいと示されている。
【0010】
また、硬質皮膜としてTi、Cr、Vよりなる群から選択される1種以上の元素とAlとの複合窒化皮膜を形成した上に、中間層として(Al,Cr(1−z))N(ただし、zは0≦z≦0.90)からなる皮膜を形成し、さらに該皮膜を酸化処理してコランダム構造(α型結晶構造)の酸化物皮膜を形成した後、該酸化物皮膜上にα型アルミナを形成することが有用である旨示されている。
【0011】
しかし上記方法では、α型結晶構造のアルミナ膜を形成するにあたり、例えばCrN皮膜を形成し、該CrN皮膜を酸化してコランダム構造(α型結晶構造)を有するCrを中間膜として別途形成しなければならないため、積層皮膜の形成効率を高めるうえでは、なお改善の余地が残されている。また、中間膜として形成されたCr含有皮膜による切削性能の低下が懸念されることから、切削性能を高める観点からも改善の余地を残すものと考えられる。
【0012】
【特許文献1】
特許第2742049号公報
【特許文献2】
特開平5−208326号公報
【特許文献3】
特開2002−53946号公報
【非特許文献1】
Surf.Coat.Technol.  86−87   1996  p. 640−647
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこの様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、耐摩耗性および耐熱性に優れた、α型結晶構造主体のアルミナ膜を有する積層皮膜を、基材や硬質皮膜の特性の劣化や変形を抑制し、かつ装置負荷の少ない低温条件下で、中間膜を介さず効率よく形成することのできる有用な方法を提供し、併せてこの様な方法で得られる耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜、更には該積層皮膜の被覆された工具を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明で、耐摩耗性および耐熱性に優れたα型結晶構造主体のアルミナ膜を有する積層皮膜を得るための手段として以下の(i)(ii)がある。
【0015】
(i)本発明の積層皮膜として、AlとTiを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を有する積層皮膜において、該硬質皮膜を酸化することによって形成される酸化物含有層と、該酸化物含有層上に形成されるα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を有するところに特徴があるものとする。前記酸化物含有層は、最表面側が実質的にアルミナからなるものであることが好ましく、また前記硬質皮膜は、TiAlNからなるものを特に好ましい形態とする。
【0016】
また前記AlとTiを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜として、AlおよびTiと、IVa族(Ti除く)、Va族、VIa族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなるものを採用してもよく、この場合、特にTiAlCrNからなるものを用いるのが好ましい。
【0017】
更に本発明は、Alを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を有する積層皮膜であって、該硬質皮膜を酸化することによって形成される最表面側が実質的にアルミナからなる酸化物含有層と、該酸化物含有層上に形成されるα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を有するところに特徴を有する積層皮膜としてもよく、前記Alを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜として、Alと、IVa族、Va族、VIa族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなるものを用いるのがよい。
【0018】
また、前記酸化物含有層上に形成されるアルミナ膜は、α型結晶構造が70%以上であるものがよい。
【0019】
本発明では、この様な積層皮膜が表面に形成された積層皮膜被覆工具も保護対象に包含する。
【0020】
更に本発明は、上記の様な積層皮膜を製造する有用な方法も規定するものであり、前記硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、その後、該酸化物含有層上にα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を形成するところに特徴を有する。
【0021】
前記酸化物含有層の形成は、酸化性ガス含有雰囲気下で基板温度を650〜800℃に保持して行うことが好ましく、また、前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成は、PVD法で行うことが好ましい。尚、この酸化処理時における「基板温度」とは超硬合金製や炭素鋼製、工具鋼製等の基材および該基材上に形成された硬質皮膜の温度をいうものとする(以下同じ)。
【0022】
前記酸化物含有層の形成と、前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成は、生産性向上の観点から同一装置内で行うことが好ましく、より好ましくは前記硬質皮膜の形成、前記酸化物含有層の形成、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成の全てを同一装置内で行うのがよい。
【0023】
(ii)また本発明は、α型結晶構造主体のアルミナ膜の形成された積層皮膜を得るべく、次の方法を規定するものでもある。即ち、金属化合物からなる硬質皮膜上にアルミナ膜の形成された積層皮膜を製造する方法であって、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属とB、C,N,O等との化合物(例えば、窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物)からなる硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、次いで該酸化物含有層表面における酸化物の還元を伴いながら、α型結晶構造を主体とするアルミナ膜を形成するところに特徴を有する方法である。
【0024】
前記酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属としてはTiを用いるのがよく、この場合、前記硬質皮膜として、TiN、TiCおよびTiCNよりなる群から選択される1層または2層以上の積層を形成するのがよい。
【0025】
更に、前記硬質皮膜と基材もしくは硬質皮膜同士の接合界面に、接合される両素材構成元素の組成傾斜層を形成すると、基材と硬質皮膜や硬質皮膜同士の密着性等を高めることができるので望ましい。
【0026】
この様に硬質皮膜として、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きいTiを金属成分とする硬質皮膜を用いる場合、積層皮膜の製造方法として、該硬質皮膜の表面を酸化し、チタン酸化物含有層を形成した後に、該層表面のチタン酸化物の還元を伴いながらアルミナ膜を形成するのがよく、具体的には、前記酸化物含有層(前記チタン酸化物含有層)としてTiO含有層を形成した後、アルミナ形成において該層表面のTiOのTiへの還元を伴いながらアルミナ膜を形成することが好ましい。
【0027】
前記酸化物含有層の形成は、酸化性ガス含有雰囲気下で基板温度を650〜800℃に保持して行うことが好ましく、前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成は、PVD法で行うことが好ましい。
【0028】
また、上記方法においても、前記酸化物含有層の形成と、前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成は、生産性向上の観点から同一装置内で行うことが好ましく、より好ましくは前記硬質皮膜の形成、前記酸化物含有層の形成、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成の全てを同一装置内で行うのがよい。
【0029】
本発明では、上記いずれかの方法で製造された積層皮膜であって、金属化合物からなる硬質皮膜上にα型結晶構造を主体とするアルミナ膜が形成されていることを特徴とする耐摩耗性と耐熱性に優れた積層皮膜と、該積層皮膜が表面に形成された耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜被覆工具も保護対象に包含する。
【0030】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前述した様な状況の下で、α型結晶構造主体のアルミナを硬質皮膜や基材等の特性を維持できる約800℃以下の温度域で形成するための方法について研究を進めた。その結果、
▲1▼第1手段として、Alを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を形成後、当該硬質皮膜の表面を酸化し、酸化物含有層を形成する処理を行った後にアルミナの皮膜を形成する方法、または、
▲2▼第2手段として、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属とB、C,N,O等との化合物からなる硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、次いで該酸化物含有層表面における酸化物の還元を伴いながらアルミナ膜を形成する方法
を採用すればよいことを見出し、本発明に想到した。以下、上記▲1▼▲2▼の各方法について説明する。
(1)第1手段について
上述の通り、本発明者らは、前述した様な状況の下で、α型結晶構造主体のアルミナ(以下、単に「α型主体アルミナ膜」ということがある)を、前記硬質皮膜や基材等の特性を維持できる約800℃以下の温度域で形成するための方法について研究を進めた結果、第1手段として、TiAlN、TiAlCrN等のAlを含む硬質皮膜を形成した後、当該皮膜の表面を酸化することにより形成した酸化物含有層を、α型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜形成の下地とすればよいことを見出し、上記本発明に想到した。
【0031】
この様な作用が得られる詳細な機構は定かではないが、Ikedaらが、「Thin Solid Films」[195(1991)99−110]に開示したTiAlN皮膜の高温酸化挙動からすると、本発明の上記作用は以下のような理由によるものと考えられる。
【0032】
即ち上記文献中で、Ikedaらは、高温の酸素含有雰囲気でTiAlN皮膜を酸化処理すると、TiAlN皮膜の最表面に薄いアルミナ膜が析出することを指摘している。また、その結論に至った観察結果として、大気中で最大800℃まで加熱することで酸化したTiAlN(原子比でTi:Al=50:50)膜のオージェ深さ方向分析の結果をFig.12に示している。このFig.12には、最表面から皮膜内部に至る膜組成として、まず最表面に、アルミナを主体とする層が存在し、その内部にTiとAlの混合した酸化物層が存在し、更にその内部にTi主体の酸化物層が存在していることを明らかにしている。
【0033】
そして、本発明者らが行った後記実施例からも明らかなように、TiAlNからなる硬質皮膜の酸化処理温度(740〜780℃)は、Ikedaらの実験における酸化温度(800℃)に比較的近いことから、本発明でも、上記実験結果と同様の層が形成されているものと推定される。
【0034】
本発明者らは、更に、様々な金属元素を含む硬質皮膜を酸化して同様の測定を行ったところ、Alを含有する硬質皮膜の表面を酸化すれば、硬質皮膜中のAlが優先的に表面に浮上して酸化され、その結果、形成された酸化層の最表面にはアルミナが形成しやすいことを見出した。そしてこの様なアルミナを含む酸化物層をアルミナ皮膜形成の下地とすれば、800℃以下の比較的低温域でも、α型結晶構造主体のアルミナ皮膜が形成されることを見出した。この様な現象が生ずる理由としては、硬質皮膜を酸化処理して形成された酸化物含有層上に、例えば反応性スパッタリング法によってアルミナ膜の形成を行うと、該酸化物含有層上にα型アルミナの結晶核が選択的に形成されるためと考えられる。
【0035】
<第1手段における硬質皮膜について>
切削工具等の優れた耐摩耗性を確保するのに有効であり、かつ、該硬質皮膜を酸化処理して、α型結晶構造主体のアルミナ膜形成に有用な酸化物層を形成するのに有用な硬質皮膜として、AlとTiを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を採用する。
【0036】
AlとTiを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜としては、AlとTiを必須とする金属成分の窒化物、または炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、炭窒酸化物等からなる硬質皮膜が挙げられ、具体的に、例えばTiAlN、TiAlCN、TiAlC、TiAlNO等を用いることができる。その中でも、特にTiAlNからなる硬質皮膜が好ましい。尚、硬質皮膜としてTiAlN皮膜を用いる場合、TiとAlの組成比は任意に設定できるが、好ましいのはTi:Alが原子比で40:60〜25:75のものである。
【0037】
更に本発明では、AlとTiを必須とし、更に第3番目の元素として、IVa族(Ti除く)、Va族、VIa族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素を必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなるものを硬質皮膜としてもよく、該硬質皮膜として、例えばTiAlCrN、TiAlVN、TiAlSiN、TiAlCrCN等が挙げられる。より好ましくは、Al,TiおよびCrの窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなる硬質皮膜を用いるのがよく、例えばTiAlCrN、TiAlCrCN、TiAlCrON、TiAlCrBN等が挙げられる。この場合、TiAlCrNからなる硬質皮膜を用いるのが更に好ましく、特に、下記に示す組成のものを用いることが推奨される。
【0038】
即ち、(Ti,Al,Cr)(C1−d)からなる硬質皮膜であって、
0.02≦a≦0.30、
0.55≦b≦0.765、
0.06≦c、
a+b+c=1、
0.5≦d≦1(a,b,cはそれぞれTi,Al,Crの原子比を示し、dはNの原子比を示す。以下同じ)、
または
0.02≦a≦0.175、
0.765≦b、
4(b−0.75)≦c、
a+b+c=1、
0.5≦d≦1を満たすものである。
【0039】
更に本発明では、Alを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を酸化することによって形成される最表面側が実質的にアルミナからなる酸化物含有層と、該酸化物含有層上に形成されるα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を有する積層皮膜も規定するが、このときのAlを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜としては、Alと、IVa族、Va族、VIa族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなるものを用いるのがよく、例えば、上述の様なAlとTiを金属成分として含有するものの他、AlCrN、AlCrCN等を用いることができる。
【0040】
前記硬質皮膜の膜厚は、硬質皮膜に期待される耐摩耗性と耐熱性を十分に発揮させるため、0.5μm以上とするのがよく、より好ましくは1μm以上である。しかし硬質皮膜の膜厚が厚すぎると、切削時に該硬質皮膜に亀裂が生じ易くなり長寿命化が図れなくなるので、硬質皮膜の膜厚は20μm以下、より好ましくは10μm以下に抑えるのがよい。
【0041】
上記硬質皮膜の形成方法は特に限定されないが、耐摩耗性および耐熱性を高めるべくAl原子比の高い硬質皮膜を形成するには、PVD法で形成することが好ましく、該PVD法としてAIP(イオンプレーティング)法や反応性スパッタリング法を採用することがより好ましい。また、PVD法で硬質皮膜を形成する方法を採用すれば、硬質皮膜の形成と後述するα型主体アルミナ膜の形成を同一装置内で成膜を行うことができるので、生産性向上の観点からも好ましい。
【0042】
<第1手段における酸化物含有層について>
本発明では、前記硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化し、酸化物含有層を形成、特にAlを含有する硬質皮膜表面に、最表面側が実質的にアルミナからなる酸化物含有層を形成するのがよいことから、硬質皮膜の酸化は下記の条件で行うことが好ましい。
【0043】
即ち、前記酸化は、酸化性ガス含有雰囲気で行うことが好ましい。その理由は効率よく酸化できるからであり、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスを含有する雰囲気が挙げられ、その中には大気雰囲気も勿論含まれる。
【0044】
また前記酸化は、基板温度を650〜800℃に保持して熱酸化を行うことが望ましい。基板温度が低過ぎると十分に酸化が行われないからであり、好ましくは700℃以上に高めて行うことが望ましい。基板温度を高めるにつれて酸化は促進されるが、基板温度の上限は、本発明の目的に照らして1000℃未満に抑えることが必要である。本発明では、800℃以下でも後述するα型主体アルミナ膜の形成に有用な酸化物含有層を形成することができる。
【0045】
本発明では、上記酸化処理のその他の条件について格別の制限はなく、具体的な酸化方法として、上記熱酸化の他、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスをプラズマ化して照射する方法を採用することも勿論有効である。
【0046】
<第1手段におけるα型結晶構造主体のアルミナ膜について>
そして上述した通り、前記酸化物含有層を下地とすれば、該酸化物含有層上にα型結晶構造主体のアルミナ膜を確実に形成することができるのである。
【0047】
このα型主体のアルミナ膜は、α型結晶構造が70%以上のものが優れた耐熱性を発揮するので好ましく、より好ましくはα型結晶構造が90%以上のものであり、最も好ましくはα型結晶構造が100%のものである。
【0048】
α型主体アルミナ膜の膜厚は、0.1〜20μmとすることが望ましい。該アルミナ膜の優れた耐熱性を持続させるには、0.1μm以上確保することが有効だからであり、好ましくは1μm以上である。しかしα型主体アルミナ膜の膜厚が厚すぎると、該アルミナ膜中に内部応力が生じて亀裂等が生じ易くなるので好ましくない。従って、前記膜厚は20μm以下とするのがよく、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0049】
α型主体アルミナ膜の形成方法は特に限定されないが、CVD法では1000℃以上の高温域で行う必要があるので好ましくなく、低温域で成膜することのできるPVD法を採用することが望ましい。PVD法の中でも、スパッタリング法が好ましく、特に反応性スパッタリングは、安価なメタルターゲットを用いて高速成膜を行うことができるので好ましい。
【0050】
該アルミナ膜形成時の基板温度は特に規定しないが、約650〜800℃の温度域で行うと、α型主体アルミナ膜が形成され易いので好ましい。また、前記酸化処理工程に引き続き、酸化処理時の基板温度を一定に保ってα型主体アルミナ膜を形成すれば、基材や硬質皮膜の特性を維持できる他、生産性にも優れているので好ましい。
【0051】
尚、本発明にかかる積層皮膜の形成は、前記酸化物含有層の形成と前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成を、同一装置内で行うことが生産性向上の観点から好ましく、より好ましくは、前記硬質皮膜の形成、前記酸化物含有層の形成、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成の全ての工程を、同一装置内で行うのがよい。
【0052】
具体的には、例えばAIP蒸発源、マグネトロンスパッタリングカソード、ヒーター加熱機構、基材回転機構等を備え、後述する実施例で示す様な成膜装置に、例えば超硬合金製の基材を設置し、まずAIP法等を採用してTiAlN等の硬質皮膜を形成した後、前述した様な酸素、オゾン、H等の酸化性ガス雰囲気中で該硬質皮膜の表面を熱酸化させ、その後、反応性スパッタリング法等を採用してα型結晶構造主体のアルミナ膜を形成することが挙げられる。
【0053】
本発明は、この様な積層皮膜が形成された積層皮膜被覆工具も規定するものであり、その具体的な適用例としては、例えば、基材が超硬合金製であり、硬質皮膜としてTiAlNを形成したスローアウェイチップや、基材が超硬合金製であり、硬質皮膜としてTiAlCrNを形成したエンドミルや、基材がサーメット製であり、硬質皮膜としてTiAlNを形成したスローアウェイチップ等の切削工具、更には、高温下で使用される熱間加工用金型等を挙げることができる。
【0054】
(2)第2手段について
上述した様に、本発明者らは、約800℃以下の低温条件でα型主体アルミナ膜を硬質皮膜上に形成する別の手段として、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属、即ちAlよりも酸化されにくい元素と、B、C,N,O等との化合物からなる硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、次いで該酸化物含有層表面における酸化物の還元を伴いながらアルミナ膜を形成すればよいことを見出した。
【0055】
上記手段のメカニズムについて完全に解明できた訳ではないが、以下に示す実験結果に基づき、次のような機構によるものと考えられる。
【0056】
(a)本発明者らは、まず、後述する実施例に示す通り、超硬基材上に硬質皮膜としてTiN皮膜を形成し、次に酸素雰囲気中で基材の温度を約760℃で20分間保持して酸化処理を行い、その後、ほぼ同じ温度に保ったまま、Alターゲットをアルゴンと酸素雰囲気中でスパッタリングさせて酸化処理膜上にアルミナ膜を形成した。
【0057】
後述する図6は、この様にして得られた積層皮膜の薄膜X線回折結果である。該図6から、確認できるピークのほとんどはα型結晶構造のアルミナを示すものであり、α型結晶構造を主体とするアルミナ膜が形成されていることがわかる。尚、硬質皮膜としてTiCNを用いた場合も同様の結果が得られた。
【0058】
そこでこの様に、TiN膜やTiCN膜をベースにα型結晶構造を主体とするアルミナ皮膜が形成される機構について追究すべく、前記図6の薄膜X線回折結果を調べたところ、アルミナ膜の下地層を構成する化合物と考えられるTiNとγ−Tiのピークが確認された。TiNは硬質皮膜を構成する化合物であると考えられ、γ−Tiはアルミナ膜とTiN膜の間に存在する酸化物含有層と考えられる。
【0059】
(b)次に、硬質皮膜としてTiN膜を形成し、上記図6の場合と同様の条件で酸化処理を行ったものについて、XPSでデプスプロファイリングを観察した。その結果を図1に示す。また、該酸化処理後の皮膜の薄膜X線回折結果を図2に示す。
【0060】
この図1および図2より、酸化処理後の皮膜の表層から約100nm深さまでは、TiO(ルチル型)が形成されていることがわかる。尚、この結果は、TiCN皮膜を酸化処理した場合も同様であった。
【0061】
この上記(a)および(b)の結果から、酸化処理で形成されたTiOは、次のアルミナ膜の形成過程でTiOからTiに還元されていることがわかる。
【0062】
(c)また、本発明者らは、Cr皮膜上にアルミナ膜を形成する実験を行って、成膜雰囲気における酸素濃度が高いほど、形成されるアルミナはα型の結晶構造となり易く、酸素濃度が低くなるとα型結晶構造のアルミナが得られ難いことを既に確認している。
【0063】
これら上記(a)〜(c)の結果から、本発明者らは、アルミナ膜形成工程(特にその初期段階)において、成膜雰囲気形成のために供給された酸素に加えて、皮膜中の酸化物の還元で生ずる酸素の働きにより、α型結晶構造のアルミナの結晶成長が促進されること、換言すれば、硬質皮膜の酸化処理で形成された酸化物の還元反応が促進される状態にして、成膜雰囲気の酸素濃度をより高めるようにすれば、α型結晶構造のアルミナの結晶成長が促進されることを見出した。以下、この様な機構を実現するための条件について詳述する。
【0064】
<第2手段における硬質皮膜について>
アルミナ膜の形成工程において、皮膜側からの酸素の供給、即ち、上記酸化物含有層中の酸化物の還元を促進させるには、硬質皮膜が、「酸化処理工程では酸化されて酸化物となるが、アルミナ膜形成工程では、Al存在下で該酸化物が還元され易い」元素を金属元素として含むものがよく、そのためには、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムよりも大きい元素を採用することが大変有効であることがわかった。
【0065】
上記酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムよりも大きい元素としては、Si、Cr、Fe、Mn等挙げられる。しかしその中でも、Tiの酸化物生成の標準自由エネルギーが、750℃付近で約−720kJ/(g・mol)と、アルミニウムの酸化物生成の標準自由エネルギー:約−900kJ/(g・mol)と比較して大きく、Al存在下で還元されやすいので、Tiを金属成分とする硬質皮膜を用いることが好ましい。また、切削工具等に汎用されているTiCやTiN等の硬質皮膜上にα型結晶構造のアルミナ膜を形成できる点からも、Tiを金属成分とする硬質皮膜を用いることが好ましい。
【0066】
尚、硬質皮膜としては、該金属とB、C,N,O等との化合物からなるもの形成すればよく、例えば、前記金属を必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物等からなるものを硬質皮膜として形成することができ、具体的に、TiN、TiCN、TiC、TiCNO、TiCrN、TiSiN等が挙げられる。
【0067】
本発明では、この中でもTiNやTiCN、TiCを用いるのがよく、具体的には、TiN、TiCNまたはTiCを単独で基材上に形成する他、TiN、TiCNまたはTiCを2層以上積層することが挙げられる。
【0068】
この場合、硬質皮膜と基材もしくは硬質皮膜同士の接合界面に、接合される両素材構成元素の組成傾斜層を形成し、基材と硬質皮膜または硬質皮膜同士の密着性等を高めるようにしてもよい。
【0069】
組成傾斜層を設ける場合の具体例として、例えば基材上にTiN皮膜を形成する場合、組成傾斜層としてTi金属膜に占めるN組成比が基材側から連続的または段階的に高くなる層を設け、該組成傾斜層上にTiN皮膜を形成することが挙げられる。また、例えばTiN皮膜上にTiCN皮膜を形成する場合には、TiN皮膜上に、組成傾斜層としてTiN皮膜に占めるC組成比がTiN皮膜側から連続的または段階的に高くなる層を設け、該組成傾斜層上にTiCN皮膜を形成することが挙げられる。
【0070】
Tiを金属成分とする硬質皮膜を用いて、該硬質皮膜上にα型結晶構造主体のアルミナ膜を形成する場合には、まず、TiNやTiCN等のTiを必須元素として含む窒化物等の化合物からなる硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化してチタン酸化物含有層を形成し、次いでアルミナ膜形成工程で、該層表面のチタン酸化物の還元反応させながらアルミナ膜を形成すればよく、具体的には、硬質皮膜の表面を酸化してTiOとした後、アルミナ膜の形成において該層表面のTiOをTiに還元させながらアルミナ膜を形成すれば、α型結晶構造を主体とするアルミナを効率よく形成できることが分かった。
【0071】
前記硬質皮膜の膜厚は、硬質皮膜に期待される耐摩耗性と耐熱性を十分に発揮させるため、0.5μm以上とするのがよく、より好ましくは1μm以上である。しかし硬質皮膜の膜厚が厚すぎると、切削時に該硬質皮膜に亀裂が生じ易くなり長寿命化が図れなくなるので、硬質皮膜の膜厚は20μm以下、より好ましくは10μm以下に抑えるのがよい。
【0072】
上記硬質皮膜の形成方法は特に限定されないが、PVD法で形成することが好ましく、該PVD法としてAIP(イオンプレーティング)法や反応性スパッタリング法を採用することがより好ましい。また、PVD法で硬質皮膜を形成する方法を採用すれば、硬質皮膜の形成と後述するα型主体アルミナ膜の形成を同一装置内で成膜を行うことができるので、生産性向上の観点からも好ましい。
【0073】
<第2手段における酸化物含有層の形成について>
本発明では、前記硬質皮膜を形成した後に、該硬質皮膜の表面を酸化して、酸化物含有層(特にTiを含有する硬質皮膜を用いる場合には、最表面側が実質的にTiOからなる酸化物含有層)を形成すべく、硬質皮膜の酸化は下記条件で行うことが好ましい。
【0074】
即ち、前記酸化は、酸化性ガス含有雰囲気で行うことが好ましい。その理由は効率よく酸化できるからであり、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスを含有する雰囲気が挙げられ、その中には大気雰囲気も勿論含まれる。
【0075】
また前記酸化は、基板温度を650〜800℃に保持して熱酸化を行うことが望ましい。この場合、基板温度が650℃を下回る低温だと十分に酸化が行われないからであり、好ましくは700℃以上に高めて行うことが望ましい。基板温度を高めるにつれて酸化は促進されるが、基板温度の上限は、本発明の目的に照らして1000℃未満に抑えることが必要である。本発明では、800℃以下でも後述するα型主体アルミナ膜の形成に有用な酸化物含有層を形成することができる。
【0076】
本発明では、上記酸化処理のその他の条件について格別の制限はなく、具体的な酸化方法として、上記熱酸化の他、例えば酸素、オゾン、H等の酸化性ガスをプラズマ化して照射する方法を採用することも勿論有効である。
【0077】
また、後述するように、上記酸化処理は、次の工程で成膜するアルミナ膜の成膜装置中で行うのが望ましい。
【0078】
<第2手段におけるα型結晶構造主体のアルミナ膜の形成について>
上述した通り、第2手段においては、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属とB、C,N,O等との化合物からなる硬質皮膜を形成し、該硬質皮膜の表面を酸化して得た酸化物含有層を下地とすれば、該酸化物含有層上にα型主体のアルミナ膜を確実に形成することができ、α型主体アルミナ膜の形成方法は特に限定されないが、基板や装置等に悪影響を与えることなく効率よく成膜するには、次の様な方法が推奨される。
【0079】
即ち、CVD法では1000℃以上の高温域で行う必要があるので好ましくなく、低温域で成膜することのできるPVD法を採用することが望ましい。PVD法の中でも、スパッタリング法が好ましく、特に反応性スパッタリングは、安価なメタルターゲットを用いて高速成膜を行うことができるので好ましい。
【0080】
該アルミナ膜形成時の基板温度は特に規定しないが、約650〜800℃の温度域で行うと、α型主体アルミナ膜が形成され易いので好ましい。また、前記酸化処理工程に引き続き、酸化処理時の基板温度を一定に保ってα型主体アルミナ膜を形成すれば、基材や硬質皮膜の特性を維持できる他、生産性にも優れているので好ましい。
【0081】
形成するα型主体のアルミナ膜は、α型結晶構造が70%以上のものが優れた耐熱性を発揮するので好ましく、より好ましくはα型結晶構造が90%以上のものであり、最も好ましくはα型結晶構造が100%のものである。
【0082】
α型主体アルミナ膜の膜厚は、0.1〜20μmとすることが望ましい。該アルミナ膜の優れた耐熱性等を持続させるには、0.1μm以上確保することが有効だからであり、より好ましくは、0.5μm以上、更に好ましくは1μm以上である。しかしα型主体アルミナ膜の膜厚が厚すぎると、該アルミナ膜中に内部応力が生じて亀裂等が生じ易くなるので好ましくない。従って、前記膜厚は20μm以下とするのがよく、より好ましくは10μm以下、更に好ましくは5μm以下である。
【0083】
尚、第2手段で積層皮膜を形成する場合も、前記第1手段の場合と同様に前記酸化物含有層の形成と前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成を、同一装置内で行うことが生産性向上の観点から好ましく、より好ましくは、前記硬質皮膜の形成、前記酸化物含有層の形成、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成の全ての工程を、同一装置内で行うのがよい。
【0084】
具体的には、例えばAIP蒸発源、マグネトロンスパッタリングカソード、ヒーター加熱機構、基材回転機構等を備え、後述する実施例で示す様な成膜装置に、例えば超硬合金製の基材を設置し、まずAIP法等を採用してTiN等の硬質皮膜を形成した後、前述した様な酸素、オゾン、H等の酸化性ガス雰囲気中で該硬質皮膜の表面を熱酸化させ、その後、反応性スパッタリング法等を採用してα型結晶構造主体のアルミナ膜を形成することが挙げられる。
【0085】
本発明は、この様な第2手段による方法で形成された、金属化合物からなる硬質皮膜上にα型結晶構造を主体とするアルミナ膜が形成されていることを特徴とする耐摩耗性と耐熱性に優れた積層皮膜と、該積層皮膜が形成された積層皮膜被覆工具も規定するものであり、積層皮膜被覆工具の具体的な適用例としては、例えば、基材が超硬合金製であり、硬質皮膜としてTiN、TiCNを形成したスローアウェイチップや、基材が超硬合金製であり、硬質皮膜としてTiN、TiCNを形成したエンドミルや、基材がサーメット製であり、硬質皮膜としてTiN、TiCNを形成したスローアウェイチップ等の切削工具、更には、高温下で使用される熱間加工用金型等を挙げることができる。
【0086】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0087】
<実施例1>
まず、前記第1手段についての実施例を示す。サイズが12.7mm×12.7mm×5mmで超硬合金製の基材を、鏡面研磨(Ra=0.02μm程度)し、アルカリ槽と純水槽中で超音波洗浄してから乾燥したものを、積層皮膜の被覆に用いた。
【0088】
本実施例では、硬質皮膜の形成、該硬質皮膜の酸化処理、およびα型主体アルミナ膜の形成を、図3に示す真空成膜装置( (株)神戸製鋼所製 AIP−S40複合機)で行った。
【0089】
基材上への硬質皮膜の形成は、図3に示す装置1でAIP用蒸発源7を用いAIP法(アークイオンプレーティング法)で行い、膜厚が2〜3μmの、TiとAlの原子比(Ti:Al)が0.55:0.45のTiAlN硬質皮膜、またはTi、AlおよびCrの原子比(Ti:Al:Cr)が0.10:0.65:0.18のTiAlCrN硬質皮膜を形成した。また比較例1として、上記TiAlN皮膜上に、更にAIP法でCrN皮膜を形成した。
【0090】
上記硬質皮膜の酸化、または硬質皮膜上に形成されたCrN膜の酸化は、次の様にして行った。即ち、試料(基板)2を装置1内の回転テーブル3上の遊星回転治具4にセットし、装置内がほぼ真空状態となるまで排気した後、装置内部の側面に2箇所と中央部に設置したヒーター5で試料を表1に示す温度(酸化工程での基板温度)となるまで加熱した。試料の温度が所定の温度となった時点で、装置1内に、酸素ガスを流量200sccm、圧力0.5Paとなるよう導入し、20分間または60分間加熱保持して酸化を行った。
【0091】
尚、上記硬質皮膜の形成、酸化処理および後述するアルミナ成膜は、前記図3における回転テーブル3を回転(公転)させるとともに、その上に設置した遊星回転治具4(基材保持用パイプ)も回転(自転)させながら行った。本実施例では、回転テーブル3の回転数を3rpmとし、遊星回転治具4の回転数を20rpmにして回転させながら、酸化処理およびアルミナ成膜を行った。
【0092】
次に、α型結晶構造を主体とするアルミナ膜を前記酸化物含有層上に形成した。該アルミナ膜の形成は、アルゴンと酸素雰囲気中で、基板温度を前記酸化処理工程とほぼ同程度とし、図3における1台又は2台のアルミニウムターゲットを装着したスパッタリングカソード6に約3kWのパルスDC電力を加え、反応性スパッタリング法を採用して行った。尚、アルミナ膜の形成時には、試料(基板)温度が酸化処理時よりも若干上昇した。また該アルミナ膜の形成は、放電電圧およびアルゴン−酸素の流量比率をプラズマ発光分光法を利用して制御し、放電状態をいわゆる遷移モードにして行った。
【0093】
この様にして形成された積層皮膜の表面を薄膜X線回折装置で分析し、最表面皮膜として形成されたアルミナ膜の結晶構造を特定した。即ち、後述する図4や図5に示される様なX線回折測定結果から、α型結晶構造のアルミナを代表するX線回折ピークとして2θ=25.5761(°)のピーク強度Iαを選択し、γ型結晶構造のアルミナを代表するX線回折ピークとして2θ=19.4502(°)のピーク強度Iγを選択し、この強度比:Iα/Iγ値の大きさから、α型結晶構造のアルミナ形成の程度を評価した。これらの結果を表1に併記する。
【0094】
【表1】
Figure 2004124246
【0095】
図4は、本発明例1の積層皮膜表面を薄膜X線回折装置で測定した結果である。この図4に示されるX線回折の主要なピークが、TiAlNに起因する回折ピークと最表面に形成されたα型結晶構造のアルミナの回折ピークであることから、本発明例1の皮膜は、硬質皮膜上にα型結晶構造主体のアルミナ皮膜が形成されたものであることがわかる。
【0096】
また図5は、比較例1の積層皮膜表面の薄膜X線回折結果を示したものであり、α型結晶構造のアルミナの回折ピークとともに、中間膜であるCrNが酸化されてなるCrに起因する回折ピークが観察される。
【0097】
このことから、比較例1でも本発明例1と同様にα型結晶構造主体のアルミナ膜が形成されていることがわかる。しかし、本発明にかかる硬質皮膜の方が、中間膜として形成されたCr含有皮膜による切削性能低下を懸念する必要がないことに加え、中間膜を設けるといった工程を省略して積層皮膜の生産性をより高めるといった観点から優れている。
【0098】
本発明例2および本発明例3は、硬質皮膜としてTiAlNまたはTiAlCrNを基材上に形成し、酸化処理工程の基板温度のみを本発明例1より30℃低い750℃に設定し、その他の条件を本発明例1と同様にして成膜したものである。表1に示す通り、本発明例2および本発明例3では、形成された皮膜に若干γ型結晶構造のアルミナが混合するものの、α型主体のアルミナ皮膜が形成されていることがわかる。
【0099】
また本発明例4は、硬質皮膜としてTiAlNを形成し、酸化処理工程における基板温度を前記本発明例2および本発明例3よりも更に低い740℃とし、酸化処理時間を本発明例1〜3よりも長い60分間とし、その他の条件を本発明例1と同様にして成膜したものである。表1に示す通り、本発明例4で得られた皮膜の最表面は、ほぼ純粋なα型結晶構造アルミナで覆われていることがわかる。
【0100】
比較例2および比較例3は、酸化処理温度を比較例2では635℃とし、比較例3では580℃とし、いずれも20分間加熱保持して行ったものである。表1に示す比較例3の結果より、酸化処理を580℃で行った場合には、その後にアルミナ膜を成膜しても全くα型結晶構造のアルミナ膜が形成されず、γ型結晶構造主体のアルミナ膜が形成されることがわかる。また比較例2から、酸化処理を635℃で行った場合には、成膜されたアルミナ膜の結晶構造はα型が若干優位であるが、実質的にα型とγ型の混合となっており、α型主体とは言い難い。
【0101】
<実施例2>
次に、前記第2手段についての実施例を示す。サイズが12.7mm×12.7mm×5mmで超硬合金製の基材を、鏡面研磨(Ra=0.02μm程度)し、アルカリ槽と純水槽中で超音波洗浄してから乾燥したものを、積層皮膜の被覆に用いた。
【0102】
本実施例でも、前記実施例1と同様に、硬質皮膜の形成、該硬質皮膜の酸化処理、およびα型主体アルミナ膜の形成を、図3に示す真空成膜装置( (株)神戸製鋼所製 AIP−S40複合機)で行った。
【0103】
基材上への硬質皮膜の形成は、図3に示す装置1でAIP用蒸発源7を用いAIP法(アークイオンプレーティング法)で行い、膜厚が2〜3μmのTiN皮膜またはTiCN皮膜を基材上に形成した。また参考例として、基材上に同膜厚のCrNを形成した。
【0104】
上記皮膜の酸化は、次の様にして行った。即ち、試料(基板)2を装置1内の回転テーブル3上の遊星回転治具4にセットし、装置内がほぼ真空状態となるまで排気した後、装置内部の側面に2箇所と中央部に設置したヒーター5で試料を約760℃付近まで加熱した。試料の温度が約760℃付近となった時点で、装置1内に、酸素ガスを流量200sccm、圧力0.5Paとなるよう導入し、20分間加熱保持して酸化を行った。
【0105】
尚、上記硬質皮膜の形成、酸化処理および後述するアルミナ成膜は、前記図3における回転テーブル3を回転(公転)させるとともに、その上に設置した遊星回転治具4(基材保持用パイプ)も回転(自転)させながら行った。本実施例では、回転テーブル3の回転数を3rpmとし、遊星回転治具4の回転数を20rpmにして回転させながら、酸化処理およびアルミナ成膜を行った。
【0106】
次に、α型結晶構造を主体とするアルミナ膜を前記酸化物含有層上に形成した。該アルミナ膜の形成は、アルゴンと酸素雰囲気中で、基板温度を前記酸化処理工程とほぼ同程度とし、図3における2台のアルミニウムターゲットを装着したスパッタリングカソード6に平均5.6kWのパルスDC電力を加え、反応性スパッタリング法を採用して行った。尚、アルミナ膜の形成時には、試料(基板)温度が酸化処理時よりも若干上昇した。
また該アルミナ膜の形成は、放電電圧およびアルゴン−酸素の流量比率をプラズマ発光分光法を利用して制御し、放電状態をいわゆる遷移モードにして行った。
【0107】
この様にして形成された積層皮膜の表面を薄膜X線回折装置で分析(薄膜XRD分析)し、最表面皮膜として形成されたアルミナ膜の結晶構造を特定した。TiN皮膜を用いた場合(本発明例1´)の薄膜X線回折結果を図6に示し、TiCN皮膜を用いた場合(本発明例2´)の薄膜X線回折結果を図7に示す。
【0108】
また、前記実施例1と同様に、図6または図7の薄膜X線回折結果からIα/Iγ値を求め、α型結晶構造のアルミナ形成の程度を評価した。この結果を前記成膜条件と併せて表2に示す。
【0109】
【表2】
Figure 2004124246
【0110】
前記図6および図7で示されるX線回折の主要なピークは、TiN皮膜またはTiCN皮膜(尚、図7では、TiCN皮膜中のTiN構造のみが薄膜X線回折で検出される)に起因する回折ピークと最表面に形成されたα型結晶構造のアルミナの回折ピークであり、また前記図6、図7および表2から、γ型結晶構造のアルミナを代表するX線回折ピーク(2θ=19.4502°)は確認されず、また、その他のγ型結晶構造のアルミナを示すピークも小さいことから、本発明例1´および本発明例2´の積層皮膜は、硬質皮膜上にα型結晶構造主体のアルミナ膜が形成されたものであることがわかる。
【0111】
更に、前記図6および図7から、TiN皮膜またはTiCN皮膜とアルミナ膜との間には、該皮膜を酸化処理したのち還元されて形成されたと思われるTiのピークを確認できる。
【0112】
これに対し参考例は、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより小さい金属であるCrを金属成分とするCrN皮膜上にアルミナ膜を形成した例であるが、表2より、Iα/Iγ値が前記本発明例1’や本発明例2’と比較して小さいことから、形成されたアルミナ膜は、α型結晶構造のアルミナに対してγ型結晶構造アルミナの比率が高いものであることが分かる。
【0113】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されており、特に耐熱性に優れたα型結晶構造主体のアルミナ膜を、基材や硬質皮膜の特性を劣化させることのない成膜温度域で形成することができた。また従来のように、硬質皮膜とα型結晶構造のアルミナ膜との間に中間膜を設ける必要がないので、効率的に積層皮膜を形成することができ、かつ該中間膜による切削性能等の低下が生じることもない。従ってこの様な積層皮膜および該積層皮膜の製造方法の実現により、従来よりも耐摩耗性および耐熱性に優れた切削工具等を安価で提供できることとなった。
【0114】
尚、本発明は、汎用されるTiN,TiCN,TiC等のチタン系硬質皮膜上に耐酸化性に優れたα型結晶構造のアルミナを比較的低温で形成する方法を提供する点で実用的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】TiNを酸化処理して得られた皮膜のXPSデプスプロファイリングを示す図である。
【図2】TiNを酸化処理して得られた皮膜の薄膜X線回折結果である。
【図3】本発明の実施に用いる装置例を示す概略説明図(上面図)である。
【図4】実施例1における本発明例1の薄膜X線回折結果である。
【図5】実施例1における比較例1の薄膜X線回折結果である。
【図6】実施例2における本発明例1´(TiN皮膜)の薄膜X線回折結果である。
【図7】実施例2における本発明例2´(TiCN皮膜)の薄膜X線回折結果である。
【符号の説明】
1 成膜用装置
2 試料(基板)
3 回転テーブル
4 遊星回転治具
5 ヒーター
6 スパッタリングカソード
7 AIP用蒸発源

Claims (26)

  1. AlとTiを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を有する積層皮膜において、該硬質皮膜を酸化することによって形成される酸化物含有層と、該酸化物含有層上に形成されるα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を有することを特徴とする耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜。
  2. 前記酸化物含有層は、最表面側が実質的にアルミナからなるものである請求項1に記載の積層皮膜。
  3. 前記硬質皮膜は、TiAlNからなるものである請求項1または2に記載の積層皮膜。
  4. 前記硬質皮膜は、AlおよびTiと、IVa族(Ti除く)、Va族、VIa族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなるものである請求項1または2に記載の積層皮膜。
  5. 前記硬質皮膜は、TiAlCrNからなるものである請求項4に記載の積層皮膜。
  6. Alを必須とする金属成分とB、C、N、O等との化合物からなる硬質皮膜を有する積層皮膜において、該硬質皮膜を酸化することによって形成される最表面側が実質的にアルミナからなる酸化物含有層と、該酸化物含有層上に形成されるα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を有することを特徴とする耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜。
  7. 前記硬質皮膜は、Alと、IVa族、Va族、VIa族およびSiよりなる群から選択される少なくとも1種の元素とを必須成分とする窒化物、炭化物、炭窒化物、ほう化物、窒酸化物、または炭窒酸化物からなるものである請求項6に記載の積層皮膜。
  8. 前記酸化物含有層上に形成されるアルミナ膜は、α型結晶構造が70%以上である請求項1〜7のいずれかに記載の積層皮膜。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層皮膜が表面に形成されていることを特徴とする積層皮膜被覆工具。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層皮膜を形成する方法であって、前記硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、その後、該酸化物含有層上に前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜を形成することを特徴とする耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜の製造方法。
  11. 前記酸化物含有層の形成を、酸化性ガス含有雰囲気下で基板温度を650〜800℃に保持して行う請求項10に記載の積層皮膜の製造方法。
  12. 前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成を、PVD法で行う請求項10または11に記載の積層皮膜の製造方法。
  13. 前記酸化物含有層の形成と前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成を、同一装置内で行う請求項10〜12のいずれかに記載の積層皮膜の製造方法。
  14. 前記硬質皮膜の形成、前記酸化物含有層の形成、および前記α型結晶構造を主体とするアルミナ膜の形成を、同一装置内で行う請求項10〜12のいずれかに記載の製造方法。
  15. 金属化合物からなる硬質皮膜上にアルミナ膜の形成された積層皮膜を製造する方法であって、酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属とB、C,N,O等との化合物からなる硬質皮膜を形成した後、該硬質皮膜の表面を酸化して酸化物含有層を形成し、次いで該酸化物含有層表面における酸化物の還元を伴いながらα型結晶構造を主体とするアルミナ膜を形成することを特徴とする積層皮膜の製造方法。
  16. 前記酸化物生成の標準自由エネルギーがアルミニウムより大きい金属としてTiを用いる請求項15に記載の積層皮膜の製造方法。
  17. 前記硬質皮膜として、TiN、TiCおよびTiCNよりなる群から選択される1層または2層以上の積層を形成する請求項16に記載の積層皮膜の製造方法。
  18. 前記硬質皮膜と基材もしくは硬質皮膜同士の接合界面に、接合される両素材構成元素の組成傾斜層を形成する請求項17に記載の積層皮膜の製造方法。
  19. 前記酸化物含有層としてチタン酸化物含有層を形成した後、アルミナ形成において、該層表面のチタン酸化物の還元を伴いながらアルミナ膜を形成する請求項16〜18のいずれかに記載の積層皮膜の製造方法。
  20. 前記酸化物含有層としてTiO含有層を形成した後、アルミナ形成において、該層表面のTiOのTiへの還元を伴いながらアルミナ膜を形成する請求項19に記載の積層皮膜の製造方法。
  21. 前記酸化物含有層の形成を、酸化性ガス含有雰囲気下で基板温度を650〜800℃に保持して行う請求項15〜20のいずれかに記載の積層皮膜の製造方法。
  22. 前記アルミナ膜の形成を、PVD法で行う請求項15〜21のいずれかに記載の積層皮膜の製造方法。
  23. 前記酸化物含有層の形成と前記アルミナ膜の形成を、同一装置内で行う請求項15〜22のいずれかに記載の積層皮膜の製造方法。
  24. 前記硬質皮膜の形成、前記酸化物含有層の形成、および前記アルミナ膜の形成を、同一装置内で行う請求項15〜23のいずれかに記載の製造方法。
  25. 請求項15〜24のいずれかに記載の製造方法で製造された積層皮膜であって、金属化合物からなる硬質皮膜上にα型結晶構造を主体とするアルミナ膜が形成されていることを特徴とする耐摩耗性と耐熱性に優れた積層皮膜。
  26. 請求項25に記載の積層皮膜が表面に形成されていることを特徴とする耐摩耗性および耐熱性に優れた積層皮膜被覆工具。
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