JP2004121343A - 生体器官拡張用器具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】生体器官拡張用器具1は、シース2と、シース2の先端部内に収納されたステント3と、シース2内を摺動可能に挿通し、ステント3をシースの先端より押し出すための内管4とを備える。内管4は、先端より少なくともシース2のステント収納部位より基端側まで延びるルーメン41と、ルーメン41とステント収納部位より基端側において連通する内管側孔42とを備え、シース2は、ステント収納部位より基端側に設けられたシース側孔21を備え、さらに、生体器官拡張用器具1は、シース側孔21および内管側孔42を貫通し、先端が内管4のルーメン41内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えるものである。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、消化管その他の臓器などの生体内に形成された狭窄部または閉塞部に、ステントを留置するための生体器官拡張用器具に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、消化管その他の臓器などの生体管腔または体腔の狭窄部あるいは閉塞部にステントを留置して、管腔または体腔空間を確保する生体器官拡張用器具が提案されている。
上記生体器官拡張用器具を構成するステントとしては、機能および留置方法によって、バルーンエキスパンダブルステントとセルフエキスパンダブルステントとがある。
【0003】
バルーンエキスパンダブルステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、例えばステントを目的部位まで挿入した後、ステント内にバルーンを位置させてバルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
このタイプのステントは上記のようなステントの拡張作業が必要であるが、収縮したバルーンにステントを直接取り付けて留置することもできるので、留置に関してはさほど問題がない。しかし、ステント自身に拡張力がないため、血管の圧力等によって経時的に径が小さくなり、再狭窄が生じる可能性が高い。
【0004】
これに対して、セルフエキスパンダブルステントは、ステント自身が収縮および拡張機能を有している。このステントを目的部位に留置するためには、収縮させた状態にて目的部位に挿入した後、収縮状態の維持のために負荷した応力を除去する。例えば、目的部位の内径より小さい外径のシース内にステントを収縮させて収納し、このシースの先端を目的部位に到達させた後、ステントをシースより押し出す。押し出されたステントは、シースより解放されることにより応力負荷が解除され、収縮前の形状に復元し拡張する。これにより、目的部位の内面に密着し固定する。
このタイプのステントは、ステント自身が拡張力を有しているので、バルーンエキスパンダブルステントのような拡張作業は必要なく、血管の圧力等によって径が次第に小さくなり再狭窄を生じるといった問題もない。
また、ステントを用いた生体器官拡張用器具において、シース内に摺動可能に収納された内管内に先端から基端まで貫通したガイドワイヤールーメンが形成されたタイプのいわゆるオーバーザワイヤータイプのものと、内管の先端部に側孔を備え、同様にシースにも側孔を備え、内管の先端より挿入されたガイドワイヤーを内管の側孔およびシースの側孔より外部に導き出すタイプのいわゆるモノレールタイプのものがある。両者、それぞれ一長一短があるが、モノレールタイプのものは、オーバーザワイヤータイプのものに比べて、ガイドワイヤーがシース外に出てくる距離がかなり短くてすむため、使用するガイドワイヤーを短いものとすることができるとともに、生体への挿入操作も容易であるという利点を備えている。
【0005】
【特許文献1】
バルーンエキスパンダブルステントを目的部位に留置するための生体器官拡張用器具であって、かつ、上述したオーバーザワイヤータイプのものとして、例えば、特開平7−47133号公報に示すものがある。
【特許文献2】
また、同様に、バルーンエキスパンダブルステントを目的部位に留置するための生体器官拡張用器具であって、かつ、上述したオーバーザワイヤータイプのものとして、本件出願人は、特開2002−102359号公報に示すものを提案している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記の2つの公報のものでは、内管の基端部を固定したとしても、シース内で内管がねじれたりすると、シースの開口と内管の開口とが合致せず、先端側から挿入したガイドワイヤーの基端部が内管の側孔を通過するものの、シースの側孔より外方に送り出すことが困難な場合があった。
そこで、本発明の目的は、先端から内管内に挿入したガイドワイヤの端部を容易かつ確実にシースの側孔より外部へ導き出すことが可能な生体器官拡張用器具を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) シースと、前記シースの先端部内に収納されたステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備える生体器官拡張用器具であって、前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものであり、かつ、前記中心軸方向に圧縮させた状態で前記シース内に保持されており、さらに、前記内管は、先端より少なくとも前記シースの前記ステント収納部位より基端側まで延びるルーメンと、該ルーメンと前記ステント収納部位より基端側において連通する内管側孔とを備え、前記シースは、前記ステント収納部位より基端側に設けられたシース側孔を備え、さらに、前記生体器官拡張用器具は、前記シース側孔および前記内管側孔を貫通し、先端が前記内管のルーメン内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材を備える生体器官拡張用器具。
【0008】
(2) 前記内管は、前記ステント収納部位より基端側に設けられたステント押出用突出部を備えており、さらに、該ステント押出用突出部の基端側は、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部となっている上記(1)に記載の生体器官拡張用器具。
(3) 前記内管は、前記ステント収納部位より先端側に設けられたステント保持用突出部を備えており、さらに、該ステント保持用突出部の基端側は、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部となっている上記(1)または(2)に記載の生体器官拡張用器具。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(4) チューブ状の内管本体と、該内管本体の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の該バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張されるステントとを備える内管と、該内管を摺動可能に収納するシースとからなる生体器官拡張用器具であって、前記内管は、先端より少なくとも前記内管の前記バルーンより基端側まで延びるルーメンと、該ルーメンと前記バルーンより基端側において連通する内管側孔とを備え、前記シースは、前記バルーンより基端側に設けられたシース側孔を備え、さらに、前記生体器官拡張用器具は、前記シース側孔および前記内管側孔を貫通し、先端が前記内管のルーメン内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材を備える生体器官拡張用器具。
【0010】
(5) 前記筒状部材は、基端側が前記シースの前記シース側孔より露出している上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(6) 前記筒状部材は、前記内管の先端より挿入されるガイドワイヤーの端部が侵入可能な端部収納部を備えている上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(7) 前記筒状部材は、前記端部収納部より基端側に設けられた閉塞部もしくは前記ガイドワイヤーの端部の侵入が不能な小径部を備えている上記(6)に記載の生体器官拡張用器具。
(8) 前記筒状部材の先端は、筒状部材の中心軸に対して斜めとなるように形成されている上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
【0011】
(9) 前記生体器官拡張用器具は、前記内管の先端より挿入され、一端部が前記筒状部材内に侵入し、かつ、他端部が前記内管の先端より露出した筒状部材抜止部材を備えている上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(10) 前記内管のルーメンは、前記側孔もしくは該側孔より基端側の位置にて終端している上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(11) 前記内管側孔は、前記シース側孔より前記生体器官拡張用器具の先端側に位置している上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
【0012】
(12) 前記シースの基端部には、前記内管を摺動可能、かつ液密に保持する弁体を備えたハブが設けられいる上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(13) 前記生体器官拡張用器具は、前記シースを前記内管に解除可能に固定する固定手段を有している上記(1)ないし(12)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(14) 前記内管の基端部には、前記シースの先端側への移動距離を規制する挿入深度規制部を備えている上記(1)ないし(13)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(15) 前記シースは、該シースに対して前記内管を任意の位置で固定するロック機構を備えている上記(1)ないし(14)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
(16) 前記内管は、前記ステントよりも先端側に設けられ、前記シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えている上記(1)ないし(15)のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の生体器官拡張用器具を図面に示した実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の生体器官拡張用器具の部分省略正面図であり、図2は、図1に示した生体器官拡張用器具の先端部付近の拡大断面図であり、図3は図1に示した生体器官拡張用器具の基端部付近の部分省略拡大断面図であり、図4は、本発明の生体器官拡張用器具に使用する体腔内留置用ステントの一例の斜視図であり、図5および図6は、本発明の生体器官拡張用器具の作用を説明するための説明図である。
本発明の生体器官拡張用器具1は、シース2と、シース2の先端部内に収納されたステント3と、シース2内を摺動可能に挿通し、ステント3をシースの先端より押し出すための内管4とを備える。そして、ステント3は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものであり、かつ、中心軸方向に圧縮させた状態でシース内に保持されている。さらに、内管4は、先端より少なくともシース2のステント収納部位より基端側まで延びるルーメン41と、ルーメン41とステント収納部位より基端側において連通する内管側孔42とを備え、シース2は、ステント収納部位より基端側に設けられたシース側孔21を備え、さらに、生体器官拡張用器具1は、シース側孔21および内管側孔42を貫通し、先端が内管4のルーメン41内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えるものである。
【0014】
この実施例の生体器官拡張用器具は、シース2、ステント3、内管4およびガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えている。
シース2は、図1、図2および図3に示すように管状体である。先端および後端は開口している。先端開口は、ステント3を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント3の放出口として機能する。ステント3はこの先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
そして、シース2は、ステント収納部位22より基端側に設けられた側孔21を備えている。この側孔21は、ガイドワイヤーを外部に導出するためのものであるとともに、筒状部材5の挿入口としても機能する。
【0015】
シース2の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース2の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。シース2の長さは、0.7〜3.5mm程度が好ましく、特に、0.7〜2.5mmが好ましい。
シース2の形成材料としては、シースに求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
【0016】
さらに、シース2の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、シース2の内面に、内管4との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
【0017】
また、シース2の基端部には、図1および図3に示すように、シースハブ6が固定されている。シースハブ6は、図3に示すように、シースハブ本体61と、シースハブ本体61内に収納され、内管4を摺動可能、かつ液密に保持する弁体62を備えている。また、シースハブ6は、シースハブ本体61の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート63を備えている。
さらに、シースハブ6は、内管4の移動を規制する内管ロック機構を備えている。この実施例では、ロック機構は、圧縮により内管4の基端部を液密状態に挟持する弁体62と弁体62を圧縮する操作部材64およびシースハブ本体61により構成されている。このロック機構を備えることにより、内管4はシース2に対して任意の位置で固定可能である。弁体62は、シースハブ本体61の基端部に設けられた弁体収納用凹部内に設置されており、弁体62の内部には内管用ルーメンの一部を形成する内管挿通用通路が形成されている。また、弁体収納用凹部の内径は、弁体62の外径より若干大きく作製されており、弁体62が操作部材64により圧縮された際の弁体の半径方向への拡径を可能にしている。弁体62の内部形状(言い換えれば、内管挿通用通路形状)は、軸方向に2つの略球形状が一部重なり合った形状に作製されており、両端と中央部が縮径したものとなっている。
【0018】
操作部材64は、中央部に先端側に突出した筒状の弁体押圧部64aと、この弁体押圧部64aを被包するように形成され、かつ、シースハブ本体61の後端外面に形成された螺合部61aと螺合可能な螺合部64bを備える内筒部64cと、内筒部64cを被包するように形成された筒状の把持部64dを備えている。把持部64dは、操作部材64を回転させる際に把持するための部位である。また、弁体押圧部64aの内部、具体的には、弁体押圧部64aの内部には、内管用ルーメンの一部を形成する内部通路が形成されている。また、弁体押圧部64aの先端側部分は、図3に示すように、弁体収納用凹部内に侵入しており、操作体の先端への移動により弁体62を圧縮可能となっている。
この実施例のロック機構では、操作部材64を回転させて、シースハブ6の先端側に移動するように螺合を進行させると、弁体押圧部64aの先端は弁体62の後端に接触して、さらに、操作部材64を回転させて螺合を進行させると弁体62は軸方向に圧縮される。そして、弁体62は圧縮が進行するに従い内部通路の内径は小さくなり最終的に弁体62により内管4が把持され固定される。なお、ロック機構の解除は、上記と逆の回転操作により行われる。
【0019】
シースハブ本体61および操作部材64の構成材料としては、硬質もしくは半硬質材料が使用される。硬質もしくは半硬質材料としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミもしくはアルミ合金などの金属が使用できる。
また、弁体62の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用される。
また、シース2の基端部とシースハブ6間には、シースハブ6の先端より先端側に延びる補強用チューブ66が設けられている。この補強用チューブ66は、シースハブ6の先端におけるシース2のキンクを防止する。補強用チューブとしては、熱収縮性チューブを用いることが好ましい。
【0020】
内管4は、図1ないし図3に示すように、シャフト状の内管本体部40と、内管本体部40の先端に設けられ、シース2の先端より突出する先端部47と、内管本体部40の基端部に固定された内管ハブ7とを備える。
先端部47は、シース2の先端より突出し、かつ、図2に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、内管4は、ステント3よりも先端側に設けられ、シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。先端部47の基端は、シース2の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
先端部47の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部47の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0021】
また、内管4は、図2に示すように、後述する体腔内留置用ステント3を保持するための2つの突出部43,45を備えている。突出部43,45は、環状突出部であることが好ましい。内管4の先端部47の基端側には、ステント保持用突出部43が設けられている。そして、このステント保持用突出部43より所定距離基端側には、ステント押出用突出部45が設けられている。これら2つの突出部43,45間にステント3が配置される。よって、生体器官拡張用器具1におけるこれら2つの突出部43と突出部45間がステント収納部位22となっている。言い換えれば、内管4は、ステント収納部位22より基端側に設けられたステント押出用突出部45と、ステント収納部位22より先端側に設けられたステント保持用突出部43を備えるものである。これら突出部43,45の外径は、後述する圧縮されたステント3と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント3は、突出部43により先端側への移動が規制され、突出部45により基端側への移動が規制される。さらに、内管4が先端側に移動すると、突出部45によりステント3は先端側に押され、シース2より排出される。さらに、ステント押出用突出部45の基端側は、図2に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部46となっていることが好ましい。同様に、ステント保持用突出部43の基端側は、図2に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部44となっていることが好ましい。このようにすることにより、内管4をシース2の先端より突出させ、ステント3をシースより放出した後に、内管4をシース2内に再収納する際に、突出部がシースの先端に引っかかることを防止する。
【0022】
突出部43,45の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、突出部43,45は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント3の移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、内管4に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、突出部43,45は、X線造影性材料により別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を適確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤーを形成し内管の外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成しかしめる又は接着することにより取り付けられる。
また、突出部43の基端側に形成されるテーパー部44および突出部45の基端側に形成されるテーパー部46は、テーパー状部材を固定すること、また、硬化性樹脂をテーパー状に塗布し硬化させることなどにより形成される。
【0023】
内管4は、図2に示すように、先端より少なくともシース2のステント収納部位22より基端側まで延びるルーメン41と、ルーメン41とステント収納部位より基端側において連通する内管側孔42とを備えている。この実施例の生体器官拡張用器具1では、ルーメン41は、側孔42形成部位にて終端している。なお、ルーメン41は、さらに基端側に延びるものであってもよく、後端まで貫通するものであってもよい。ルーメン41は、生体器官拡張用器具1の先端よりガイドワイヤーの一端を挿入し、内管内を部分的に挿通させた後、内管側面より外部に導出するためのものである。そして、内管側孔42は、シース側孔21より、生体器官拡張用器具1の若干先端側に位置している。このようにすることにより、後述する筒状部材5を斜めに配置することができ、配置状態の安定性が高くなる。内管側孔42の中心は、シース側孔21の中心より、1〜10mm先端側となっていることが好ましい。特に、2〜5mm先端側となっていることが好ましい。本発明の生体器官拡張用器具では、シース側孔21および内管側孔42を貫通し、先端が内管4のルーメン41内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えている。このため、内管側孔42の中心とシース側孔21の中心間距離を長いものとしても、ガイドワイヤーは筒状部材5により確実に導出可能である。また、内管側孔42の中心とシース側孔21の中心間距離を長いものとすることにより、内管4の側孔42からシース2の側孔21間を通るガイドワイヤーの湾曲がゆるやかなものとなり、ガイドワイヤーの挿通ならびに生体器官拡張用器具の操作性が良好なものとなる。
【0024】
内管4の外径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。また、内管4の長さは、400〜2500mm程度が好ましく、特に、900〜2200mmが好ましい。また、ルーメン41の内径としては、0.5〜2.0mm程度が好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。また、ルーメン41の長さは、10〜400mm程度が好ましく、特に、50〜350mmが好ましい。また、側孔42の位置は、内管4の先端より、10〜400mm基端側に位置することが好ましく、特に、50〜350mmが好ましい。また、側孔42の位置は、配置されるステント3の後端(言い換えれば、ステント収納部位の後端)より、50〜250mm程度基端側であることが好ましい。
【0025】
内管4の形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、内管4の外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する樹脂をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
さらに、内管4のうち、シース2より突出する可能性のある部分の外面は、潤滑性を有していることが好ましい。このために、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定してもよい。また、内管4の外面全体に上記のものをコーティング、または固定してもよい。さらに、ガイドワイヤーとの摺動性を向上させるために、内管4の内面にも上記のものをコーティング、または固定してもよい。
そして、内管4は、シース2内を貫通し、シース2の後端開口より突出している。内管4の基端部には、図1および図3に示すように、内管ハブ7が固着されている。
【0026】
さらに、この実施例の器具1では、内管4の基端部には、硬質パイプ72が被嵌されている。この硬質パイプ72は、内管4の基端部より先端側に所定距離延び、少なくともパイプ72の先端部は、シースハブ6内に侵入し、かつ、弁体62より先端側となる位置まで延びている。このため、シースハブ6の後端における内管4のキンクを防止し、弁体62の圧縮に対向する。硬質パイプとしては、金属製パイプ、硬質樹脂製パイプが使用できる。
さらに、内管4の基端部には、シース2の先端側への移動距離を規制する挿入深度規制部を備えていることが好ましい。内管4は、基端部に挿入深度規制用チューブ73を備えている。このチューブ73は、外径がシースハブ6の操作部材64の通路の内径よりも大きく、シースハブ6内に侵入不能なものとなっている。このためこのチューブが内管の挿入深度、言い換えれば、内管のシース先端側への移動距離を規制する。この実施例では、チューブ73は、上述した硬質パイプを被包するように設けられている。なお、挿入深度規制部は、上記のようなチューブ体に限定されるものではなく、内管4の基端部側面に環状部材を固定することにより形成してもよい。
また、内管ハブ7の形成材料としては、シースハブ6において説明したものが好適に使用できる。
【0027】
そして、本発明の生体器官拡張用器具1は、図1および図2に示すように、シース側孔21および内管側孔42を貫通し、先端が内管4のルーメン41内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えている。
筒状部材5は、内管4のルーメン41内に位置する先端開口52と、先端側に設けられ、内管4の先端より挿入されるガイドワイヤーの端部(具体的には、後端部)が侵入可能な端部収納部51と、端部収納部51より基端側に設けられた閉塞部53を備えている。なお、閉塞部53に代えて、ガイドワイヤーの端部の侵入が不能な小径部を備えるものとしてもよい。なお、閉塞部および小径部は設けないものとしてもよい。この実施例では、上述したように、内管側孔42は、シース側孔21より、生体器官拡張用器具1の若干先端側に位置しているため、筒状部材5はその先端が、生体器官拡張用器具1の先端側となる斜めの状態に配置されている。さらに、筒状部材5の先端は若干湾曲し、ルーメン41の直線状部分に侵入している。そして、筒状部材5の先端部は、筒状部材5の中心軸に対して斜めとなるように形成されていることが好ましい。このようにすることにより、内管4のルーメン41内への挿入が容易となる。さらに、筒状部材5は、基端側がシース2のシース側孔21より露出していることが好ましい。露出していることにより、筒状部材5の存在の確認が容易となる。
【0028】
筒状部材5の外径としては、0.7〜2.0mm程度が好ましく、特に、0.7〜1.5mmが好ましい。また、筒状部材5の長さは、10〜100mm程度が好ましく、特に、25〜75mmが好ましい。また、筒状部材5の内径としては、0.4〜1.5mm程度が好ましく、特に、0.5〜1.2mmが好ましい。
筒状部材の形成材料としては、硬度があってかつ多少の可撓性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、ポリイミドなどが好適に使用できる。
さらに、この実施例の生体器官拡張用器具1は、図1および図2に示すように、内管4のルーメン41の先端より挿入され、一端部が筒状部材5の内部、具体的には、端部収納部51内に侵入し、かつ、他端部が内管4の先端より露出した筒状部材抜止部材8を備えている。このような抜止部材を設けることにより、輸送時、使用準備時における筒状部材5の生体器官拡張用器具1からの離脱を防止できる。
【0029】
この実施例の抜止部材8は、スタイレット状の細径の棒状部材であり、少なくとも本体部分81は、内管4のルーメン41内に挿入可能な外径を備え、先端部分81aは、筒状部材5内に侵入可能な外径を備えている。さらに、抜止部材8は、内管4の先端より露出する部分に、把持部82を備えることが好ましい。抜止部材の形成材料としては、金属、硬質樹脂もしくは半硬質樹脂が使用できる。そして、シース2内には、ステント3が収納されている。具体的には、上述したステント収納部位22に、ステント3が収納されている。
【0030】
この実施例の生体器官拡張用器具1において使用されているステント3は、いわゆるセルフエキスパンダブルステントである。具体的には、ステント3は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである。そして、中心軸方向に圧縮させた状態でシース2内に保持されている。よって、ステント3は自らの復元力によりシース2の内面を押圧する状態にてシース内に保持されている。また、ステント3は、上述したように、内管4に設けられた突出部43および突出部45によりシース内の移動が規制されている。
ステント3としては、上述したようないわゆるセルフエキスパンダブルステントであればどのようなものであってもよい。例えば、ステント3としては、図4(拡張して圧縮前の形状に復元した状態を示している)に示すような形状を有しているものが好適に使用できる。この例のステント3は、円筒状フレーム体30と、この円筒状フレーム体30を構成するフレーム36a,36bにより区画(囲撓)された開口34およびフレーム36aにより区画された切欠部35を有しており、フレーム体30は両端部33a,33bを有している。
【0031】
ステントの形成材料としては、合成樹脂または金属が使用される。合成樹脂としては、ある程度の硬度と弾性を有するものが使用され、生体適合性合成樹脂が好ましい。具体的には、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート),フッ素樹脂(例えば、PTFE、ETFE)、若しくは生体内吸収材料であるポリ乳酸、ポリグリコール酸、又はポリ乳酸とポリグリコール酸の共重合体などである。また、金属としても生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス、タンタル、ニッケルチタン合金などがある。特に、超弾性金属が好ましい。ステント3は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステントは、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工、化学エッチングなどにより部分的に除去して、側面に複数の切欠部または複数の開口を形成することにより作製される。
【0032】
このステント3はフレーム体30の端部に切欠部35を有するので、ステント3の端部33a,33bの変形が容易となり、特に、端部の部分的変形が可能となり、留置される血管の変形時に対する応答が良好である。また、端部33は、複数のフレーム36aの端部により形成されているため、つぶれにくく、十分な強度を有する。また、両端部間には、フレーム36a,36bにより囲まれた開口34が形成されており、この開口34は、フレーム36aの変形により容易に変形する。このため、ステント3はその中央部(フレーム体30の中央部)での変形も容易である。なお、切欠部および開口は図示した形状および個数に限定されるものではなく、切欠部としては、3〜10個、開口としては、3〜10個程度が好適である。
フレーム体30は、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜20mm、内径が1.4〜29mm、好ましくは1.6〜28mmのものであり、長さは、10〜150mm、より好ましくは15〜100mmである。
【0033】
なお、ステントの形状は、図4に示すものに限られず、例えば両端部に台形状の切欠部が形成されるとともに、中央部にハニカム状に複数の六角形の開口が形成されているもの、また、両端部に長方形状の切欠部が形成され、中央部に複数の長方形状(切欠部の二倍の長さを有する)の開口が形成されているものなどであってもよい。さらに、ステント3の形状は、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)可能なものであればよく、上述の形状に限定されるものではない。例えば、コイル状のもの、円筒状のもの、ロール状のもの、異形管状のもの、高次コイル状のもの、板バネコイル状のもの、カゴまたはメッシュ状のものでもよい。
【0034】
ステントを形成する超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0035】
使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜20kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
また、本発明の生体器官拡張用器具に使用されるステントは、略円筒形状に形成された縮径可能なステント本体と、ステント本体の側面を封鎖する筒状カバーを備えるものであってもよい。
【0036】
次に、本発明の生体器官拡張用器具1の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図1および図2に示す状態において提供された生体器官拡張用器具1より、抜止部材8の把持部82を持ち、内管4の先端側から抜止部材8を抜去する。そして、図5に示すように、ガイドワイヤー9の後端部9aを内管4のルーメン41の先端より挿入し、ガイドワイヤー9を押し進める。ガイドワイヤー9の後端部9aは、筒状部材5内(具体的には、端部収納部51内)に侵入し、やがて閉塞部53に当接する。さらに、ガイドワイヤー9を押し進めると、ガイドワイヤー9により筒状部材は生体器官拡張用器具1より押し出され、図5に示す状態となる。これにより、ガイドワイヤー9は、内管4の側孔42およびシース2の側孔21を貫通し、外部に容易に導出される。そして、ガイドワイヤー9の後端部9aより筒状部材5を取り外す。その後、シース2を把持して、ガイドワイヤー9に沿って本発明の生体器官拡張用器具1を体腔(例えば血管)内に挿入させ、目的とする狭窄部内にステント3を位置させる。
【0037】
次に、シース2を軸方向基端側に移動させる。この時、ステント3はその後端面がステント押出用突出部45の先端面に当接し係止されるので、シース2の移動に伴ってシース2の先端開口より放出される。この放出により、ステント3は、図6に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
その後、内管4を軸方向基端側に移動させ、シース2内に収納し、シース2を内管4とともに体腔内から抜去することにより手技が終了する。この内管4をシース2内に収納する際、本発明の生体器官拡張用器具1は、内管4の突出部43の基端側付近が、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部に形成されているので、ステント3が内管4の先端部に引っ掛かって留置位置がずれたり、内管4が抜去不能になることがない。
また、本発明の生体器官拡張用器具は、上述したようないわゆるセルフエキスパンダブルステントを用いるものに限定されるものではなく、いわゆるバルーンエキスパンダブルステントを用いるものであってもよい。
【0038】
以下に、バルーンエキスパンダブルステントを用いるタイプの生体器官拡張用器具について説明する。
図7は、本発明の生体器官拡張用器具の他の実施例の部分省略正面図であり、図8は、図7に示した生体器官拡張用器具の先端部分の拡大断面図であり、図9は、図7に示した生体器官拡張用器具のシース側孔形成部付近の拡大断面図であり、図10は、図7に示した生体器官拡張用器具のシースハブ付近の部分省略拡大断面図であり、図11は、図7に示した生体器官拡張用器具の内管ハブ付近の部分省略拡大断面図であり、図12は、本発明の生体器官拡張用器具に使用する体腔内留置用ステントの一例の斜視図である。
この実施例の生体器官拡張用器具100は、チューブ状の内管本体140と、内管本体140の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーン101と、折り畳まれた状態のバルーン101を被包するように装着され、かつバルーン101の拡張により拡張されるステント103とを備える内管104と、内管104を摺動可能に収納するシース102とからなる。内管104は、先端より少なくとも内管104のバルーン101より基端側まで延びるルーメン141と、ルーメン141とバルーン101より基端側において連通する内管側孔142とを備え、シース102は、バルーン101より基端側に設けられたシース側孔121を備える。さらに、生体器官拡張用器具100は、シース側孔121および内管側孔142を貫通し、先端が内管104のルーメン141内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備える。
【0039】
この実施例の生体器官拡張用器具は、シース102と、ステント103がバルーン101上に装着された内管104とガイドワイヤー誘導用筒状部材5とを備えている。
シース102は、図7、図8および図9に示すように管状体である。先端および後端は開口している。シース102は、内部に収納される内管104に設けられたバルーン101より基端側に位置するシース側孔121を備える。この側孔121は、ガイドワイヤーを外部に導出するためのものであるとともに、筒状部材5の挿入口としても機能する。
【0040】
シース102の外径としては、1.0〜5.0mm程度が好ましく、特に、1.0〜4.0mmが好ましい。また、シース102の内径としては、0.5〜4.5mm程度が好ましい。シース102の長さは、600〜2400mm程度が好ましく、特に、900〜1200mmが好ましい。
シース102の形成材料としては、上述した実施例の生体器官拡張用器具1のシース2の形成材料において説明したものが好適に使用される。さらに、シース102の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としても、上述したシース2において説明したものが好適である。また、シース102の内面に、内管104との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、シース102の基端部には、図7および図10に示すように、シースハブ106が固定されている。シースハブ106は、図10に示すように、シースハブ本体161と、シースハブ本体161内に収納され、内管104を摺動可能、かつ液密に保持する弁体162を備えている。また、シースハブ106は、シースハブ本体161の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート163を備えている。
【0041】
さらに、シースハブ106は、内管104の移動を規制する内管ロック機構を備えている。この実施例では、ロック機構は、圧縮により内管104の基端部を液密状態に挟持する弁体162と弁体162を圧縮する操作部材164と、シースハブ本体161により構成されている。このロック機構を備えることにより、内管104はシース102に対して任意の位置で固定可能である。弁体162は、シースハブ本体161の基端部に設けられた弁体収納用凹部内に設置されており、弁体162の内部には内管用ルーメンの一部を形成する内管挿通用通路が形成されている。また、弁体収納用凹部の内径は、弁体162の外径より若干大きく作製されており、弁体162が操作部材164により圧縮された際の弁体の半径方向への拡径を可能にしている。弁体162の内部形状(言い換えれば、内管挿通用通路形状)は、軸方向に2つの略球形状が一部重なり合った形状に作製されており、両端と中央部が縮径したものとなっている。
【0042】
操作部材164は、中央部に先端側に突出した筒状の弁体押圧部164aと、この弁体押圧部164aを被包するように形成され、かつ、シースハブ本体161の後端外面に形成された螺合部161aと螺合可能な螺合部164bを備える内筒部164cと、内筒部164cを被包するように形成された筒状の把持部164dを備えている。把持部164dは、操作部材164を回転させる際に把持するための部位である。また、弁体押圧部164aの内部、具体的には、弁体押圧部164aの内部には、内管用ルーメンの一部を形成する内部通路が形成されている。また、弁体押圧部164aの先端側部分は、図10に示すように、弁体収納用凹部内に侵入しており、操作体の先端への移動により弁体162を圧縮する可能となっている。
【0043】
この実施例のロック機構では、操作部材164を回転させて、シースハブ106の先端側に移動するように螺合を進行させると、弁体押圧部164aの先端は弁体162の後端に接触して、さらに、操作部材164を回転させて螺合を進行させると弁体162は軸方向に圧縮される。そして、弁体162は圧縮が進行するに従い内部通路の内径は小さくなり最終的に弁体162により内管104が把持され固定される。なお、ロック機構の解除は、上記と逆の回転操作により行われる。
シースハブ本体161および操作部材164の構成材料としては、上述したシースハブ本体61および操作部材64において説明したものが好適に使用される。また、弁体162の構成材料としても、上述した弁体62において説明したものが好適に使用される。
【0044】
また、シース102の基端部とシースハブ106間には、シースハブ106の先端より先端側に延びる補強用チューブ(図示せず)を設けてもよい。
内管104は、図7ないし図10に示すように、内管本体140と、内管本体140先端に設けられた先端部147と、内管本体140の先端部に設けられたステント拡張用のバルーン101と、バルーン101上に装着されたステント103と、内管本体140の後端部に取り付けられた内管ハブ107とからなる。内管104の内管本体140は、先端側シャフト部104aと後端側シャフト部104bを備え、先端側シャフト部104aと後端側シャフト部104bは、図7および図9に示すように接合コネクター170を介して接合されている。また、内管104は、シース102内において、内管104のステント103の先端がシース102内に収納された状態からステント103の後端が露出する状態まで摺動可能である。
【0045】
先端側シャフト部104aは、図8、図9に示すようにガイドワイヤールーメン141を形成する内側チューブ181と、内側チューブ181の先端部に設けられたバルーン101と、バルーン101の外周に装着されたステント103と、バルーン101の後端部が接合され、内側チューブ181を被包し、内側チューブ181の外面との間にバルーン拡張用ルーメン111を形成する外側チューブ182とからなる。そして、先端側シャフト部104aはシース102の内管用ルーメン125内に摺動可能に収納されている。そして、先端側シャフト部104aの後端部は、接合コネクター170の先端部と接合している。
バルーン101は、図8に示すように、先端側接合部101aおよび後端側接合部101bを有し、先端側接合部101aが内側チューブ181の先端より若干後端側の位置に固定され、後端側接合部101bが外側チューブ182の先端に固定されている。また、バルーン101は、基端部付近にてバルーン拡張用ルーメン111と連通している。
【0046】
そして、内側チューブ181の先端には、バルーン101の先端側接合部101aの先端部を被包するように先端部147が固定されている。先端部147は、弾性材料により環状に形成されており、後端部の外径がシース102の内径とほぼ等しいか若干大きいものとなっている。このような先端部147を有することにより、ステント103の先端方向への移動が阻止されステント留置操作中にカテーテルからステント103が脱落することがない。また、先端部147は、先端に向かってなだらかに縮径するテーパー状となっている。このように形成することにより、先端部147に狭窄部への誘導機能を持たせることができ、ステント装着部分を生体器官の狭窄部への挿入が容易となる。
【0047】
そして、内側チューブ181としては、外径が0.35〜1.0mm、好ましくは0.45〜0.8mmであり、内径が0.2〜0.9mm、好ましくは0.35〜0.7mmである。外側チューブ182としては、外径が0.6〜1.5mm、好ましくは0.8〜1.1mmであり、内径が0.5〜1.4mm、好ましくは0.7〜1.0mmである。シース102としては、外径が0.8〜1.8mm、好ましくは1.2〜1.5mmであり、内径が0.5〜1.5mm、好ましくは1.0〜1.3mmである。
内側チューブ181、外側チューブ182ならびに先端部147の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフイン(架橋もしくは部分架橋物も含む)、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用でき、好ましくは上記の熱可塑性樹脂である。
【0048】
バルーン101は、折り畳み可能なものであり、拡張させない状態では、内側チューブ181の外周に折り畳まれた状態となることができるものである。バルーン101は、装着されるステント103を拡張できるようにほぼ同一径の筒状部分(好ましくは、円筒部分)となった拡張可能部101cを有している。上記の略円筒部分は、完全な円筒でなくてもよく、多角柱状のものであってもよい。そして、バルーン101は、上述のように、先端側接合部101aが内側チューブ181にまた後端側接合部101bが外側チューブ182の先端に接着剤または熱融着などにより液密に固着されている。
バルーン101は、図8に示すように、バルーン101の内面と内側チューブ181の外面との間に拡張空間を形成する。この拡張空間は、後端部ではその全周において拡張用ルーメン111と連通している。このように、バルーン101の後端は、比較的大きい容積を有する拡張用ルーメンと連通しているので、拡張用ルーメン111よりバルーン内への拡張用流体の注入が確実である。
【0049】
バルーン101の形成材料としては、ある程度の可撓性を有するものが好ましく、例えば、ポリオレフイン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアリレーンサルファイド等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。特に、延伸可能な材料であることが好ましく、バルーン101は、高い強度および拡張力を有する2軸延伸されたものが好ましい。
バルーン101の大きさとしては、拡張されたときの円筒部分(拡張可能部31)の外径が、1.5〜5.0mm、好ましくは2.5〜4.0mmであり、長さが5〜50mm、好ましくは10〜40mmである。また、先端側接合部3aの外径が、0.5〜1.5mm、好ましくは0.7〜1.0mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは1.0〜1.3mmである。また、後端側接合部3bの外径が、0.8〜1.6mm、好ましくは1.0〜1.5mmであり、長さが1〜5mm、好ましくは2〜4mmである。
【0050】
そして、内管本体140の内側チューブ181の外面には、バルーン101の拡張可能部101cの内部の先端付近となる位置の外面に先端側造影マーカー115が固定されている。同様に、内管本体140の内側チューブ181の外面には、バルーン101の拡張可能部101cの内部の後端付近となる位置の外面に後端側造影マーカー116が固定されている。造影マーカーは、X線不透過材料(例えば、金、白金、タングステンあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等)により形成することが好ましい。このようにすることによりバルーン101の拡張可能部101cの先端および後端の位置、ひいては、ステント103の先端および後端の位置をX線造影により確認することができる。
【0051】
この実施例の生体器官拡張用器具100に使用されるステント103は、略管状体に形成され、生体内への挿入のための直径を有し、管状体の内部より半径方向外方に広がる力が付加されたとき、言い換えれば、バルーン101が拡張したときに拡張可能(伸張可能)なものである。いわゆるバルーンエキスパンダブルステントである。
ステント103としては、このようなバルーンエキスパンダブルステントであれば、どのようなものであってもよい。例えば、ステント103としては、図12に示すように、ステント103の軸方向に長くかつ中央部が開口した略楕円状もしくは多角形状の構成要素222(222a,222b,222c,222d)が、ステント103の中心軸に対してほぼ等角度間隔にて略円周上に配列されかつ、構成要素の円周方向の隣接部(側部)間が接続部223(223a,223b,223c,223d)にて接続された環状ユニット224(224a,224b,224c,224d,224e,224f)からなり、かつ、複数の環状ユニット224a,224b,224c,224d,224e,224fがステント103の軸方向に並んでいる。さらに、一つの環状ユニット224の接続部223と隣り合う環状ユニット224の接続部223とが連結部225(225a,225b,225c,225d,225e)により少なくとも1か所連絡されているものが好適である。しかし、ステント103の形状はこのようなものに限定されるものではなく、網目状などの公知のものが使用できる。
【0052】
ステント103の形成材料としては、ある程度の生体適合性を有するものが好ましく、例えば、ステンレス鋼、タンタルもしくはタンタル合金、プラチナもしくはプラチナ合金、金もしくは金合金、コバルトベース合金等が考えられる。またステント形状を作製した後に貴金属メッキ(金、プラチナ)をしてもよい。ステンレス鋼としては、最も耐腐食性のあるSUS316Lが好適である。
ステント103の非拡張時の直径は、0.8〜1.5mm程度が好適であり、特に、0.9〜1.2mmがより好ましい。
【0053】
後端側シャフト部104bは、図7、図9ないし図11に示すように、シャフトチューブ185と、シャフトチューブ185の後端に固定された内管ハブ107とからなる。そして、後端側シャフト部104bはシース102の内管用ルーメン125内に摺動可能に収納されている。そして、後端側シャフト部104bの先端部は、接合コネクター170の後端部と接合している。
さらに、この実施例では、内管104の基端部、具体的には、シャフトチューブ185には、硬質パイプ172が被嵌されている。この硬質パイプ172は、内管104の基端部(具体的には、シャフトチューブ185の基端部)より先端側に所定距離延び、少なくともパイプ172の先端部は、シースハブ106内に侵入し、かつ、弁体162より先端側となる位置まで延びている。このため、シースハブ106の後端における内管104(シャフトチューブ185)のキンクを防止するとともに、弁体162の圧縮に対向し、バルーン拡張用ルーメンを確保する。硬質パイプとしては、金属製パイプ、硬質樹脂製パイプが使用できる。
【0054】
さらに、内管104の基端部には、シース102の先端側への移動距離を規制する挿入深度規制部を備えていることが好ましい。内管104は、基端部に挿入深度規制用チューブ173を備えている。このチューブ173は、外径がシースハブ106の操作部材164の通路の内径よりも大きく、シースハブ106内に侵入不能なものとなっている。なお、挿入深度規制部は、上記のようなチューブ体に限定されるものではなく、内管104の基端部側面に環状部材を固定することにより形成してもよい。また、内管ハブ107は、バルーン拡張用ルーメン111と連通する液体注入ポート107aを備えている。また、内管ハブ107の形成材料としては、シースハブ6において説明したものが好適に使用できる。
【0055】
接合コネクター170は、図9に示すように、先端中心より中央部へ軸方向に延び、中央部から湾曲し後端側の外側面に到達する内管挿通路を備え、この挿通路内を内側チューブ181の後端部は貫通し、接合コネクター170の側面にて露出する内側チューブ181の後端開口が、内管の側孔142を形成している。また、側孔142は、図9の基端側斜め下方に向かって形成されている。なお、開口の向きは実施例のものに限られず、図9の真上に向かって形成されていてもよい。また、接合コネクター170には、先端から基端に延びるバルーン拡張用流体流通路170aが形成されている。この流通路により、内側チューブ181と外側チューブ182の間により形成されているバルーン拡張用ルーメン111とシャフトチューブ185内に形成されているバルーン拡張用ルーメン111とは連通している。
【0056】
この実施例の生体器官拡張用器具100では、ルーメン141は、側孔142にて終端している。ルーメン141は、生体器官拡張用器具100の先端よりガイドワイヤーの一端を挿入し、内管内を部分的に挿通させた後、内管側面より外部に導出するためのものである。そして、内管側孔142は、シース側孔121より、生体器官拡張用器具100の若干先端側に位置している。このようにすることにより、後述する筒状部材5を斜めに配置することができ、配置状態の安定性が高くなる。内管側孔142の中心は、シース側孔121の中心より、1〜10mm先端側となっていることが好ましい。特に、2〜5mm先端側となっていることが好ましい。本発明の生体器官拡張用器具100では、シース側孔121および内管側孔142を貫通し、先端が内管104のルーメン141内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えている。このため、内管側孔142の中心とシース側孔121の中心間距離を長いものとしても、ガイドワイヤーは筒状部材5により確実に導出可能である。また、内管側孔142の中心とシース側孔121の中心間距離を長いものとすることにより、内管104の側孔142からシース102の側孔121間を通るガイドワイヤーの湾曲がゆるやかなものとなり、ガイドワイヤーの挿通ならびに生体器官拡張用器具の操作性が良好なものとなる。
【0057】
そして、本発明の生体器官拡張用器具100は、図7および図9に示すように、シース側孔121および内管側孔142を貫通し、先端が内管104のルーメン141内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材5を備えている。
筒状部材5は、内管104の内側チューブ182内のルーメン141内に位置する先端開口52と、先端側に設けられ、内管104の先端よりルーメン141内に挿入されるガイドワイヤーの端部(具体的には、後端部)が侵入可能な端部収納部51と、端部収納部51より基端側に設けられた閉塞部53を備えている。なお、閉塞部53に代えて、ガイドワイヤーの端部の侵入が不能な小径部を備えるものとしてもよい。なお、閉塞部および小径部は設けないものとしてもよい。
【0058】
この実施例では、内管側孔142は、シース側孔121より、生体器官拡張用器具100の若干先端側に位置しているため、筒状部材5はその先端が、生体器官拡張用器具1の先端側となる斜めの状態に配置されている。さらに、筒状部材5の先端は若干湾曲し、ルーメン141の直線状部分に侵入している。そして、筒状部材5の先端部は、筒状部材5の中心軸に対して斜めとなるように形成されていることが好ましい。このようにすることにより、内管104のルーメン141内への挿入が容易となる。さらに、筒状部材5は、基端側がシース102のシース側孔121より露出していることが好ましい。露出していることにより、筒状部材5の存在の確認が容易となる。
【0059】
筒状部材5の外径としては、0.7〜2.0mm程度が好ましく、特に、0.7〜1.5mmが好ましい。また、筒状部材5の長さは、10〜100mm程度が好ましく、特に、25〜75mmが好ましい。また、筒状部材5の内径としては、0.4〜1.5mm程度が好ましく、特に、0.5〜1.2mmが好ましい。また、筒状部材5の形成材料としては、上述したものが好適に使用できる。
さらに、この実施例の生体器官拡張用器具100においても、図7ないし図9に示すように、内管104のルーメン141の先端より挿入され、一端部が筒状部材5の端部収納部51内に侵入し、かつ、他端部が内管104の先端より露出した筒状部材抜止部材8を備えることが好ましい。このような抜止部材を設けることにより、輸送時、使用準備時における筒状部材5の生体器官拡張用器具100からの離脱を防止できる。
【0060】
この実施例の抜止部材8は、スタイレット状の細径の棒状部材であり、少なくも本体部分81は、内管104のルーメン141内に挿入可能な外径を備え、先端部分81aは、筒状部材5内に侵入可能な外径を備えている。さらに、抜止部材8は、内管104の先端より露出する部分に、把持部82を備えることが好ましい。抜止部材の形成材料としては、金属、硬質樹脂もしくは半硬質樹脂が使用できる。
【0061】
【発明の効果】
本発明の生体器官拡張用器具は、シースと、前記シースの先端部内に収納されたステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備える生体器官拡張用器具であって、前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものであり、かつ、前記中心軸方向に圧縮させた状態で前記シース内に保持されており、さらに、前記内管は、先端より少なくとも前記シースの前記ステント収納部位より基端側まで延びるルーメンと、該ルーメンと前記ステント収納部位より基端側において連通する内管側孔とを備え、前記シースは、前記ステント収納部位より基端側に設けられたシース側孔を備え、さらに、前記生体器官拡張用器具は、前記シース側孔および前記内管側孔を貫通し、先端が前記内管のルーメン内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材を備えている。
このため、内管の先端より導入されるガイドワイヤーは、内管のルーメン内を通り、ガイドワイヤー誘導用筒状部材により誘導されることにより、内管の側孔およびシース側孔を通過するので、内管内に挿入したガイドワイヤの端部を容易かつ確実にシースの側孔より外部へ導き出すことが可能である。
【0062】
また、前記内管が、前記ステント収納部位より基端側に設けられたステント押出用突出部を備え、さらに、該ステント押出用突出部の基端側が、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部を備えるものであれば、シースよりステント放出後、内管をシース内に再び収納する際に内管を良好に収納することができる。
また、前記内管が前記ステント収納部位より先端側に設けられたステント保持用突出部を備え、さらに、該ステント保持用突出部の基端側が基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部となっているものであれば、シースよりステント放出後、内管をシース内に再び収納する際に内管を良好に収納することができる。
【0063】
また、本発明の生体器官拡張用器具は、チューブ状の内管本体と、該内管本体の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の該バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張されるステントとを備える内管と、該内管を摺動可能に収納するシースとからなる生体器官拡張用器具であって、前記内管は、先端より少なくとも前記内管の前記バルーンより基端側まで延びるルーメンと、該ルーメンと前記バルーンより基端側において連通する内管側孔とを備え、前記シースは、前記バルーンより基端側に設けられたシース側孔を備え、さらに、前記生体器官拡張用器具は、前記シース側孔および前記内管側孔を貫通し、先端が前記内管のルーメン内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材を備えている。
このため、内管の先端より導入されるガイドワイヤーは、内管のルーメン内を通り、ガイドワイヤー誘導用筒状部材により誘導されることにより、内管の側孔およびシース側孔を通過するので、先端から内管内に挿入したガイドワイヤの端部を容易かつ確実にシースの側孔より外部へ導き出すことが可能である。
【0064】
また、前記筒状部材が、先端部に前記内管の先端より挿入されるガイドワイヤーの端部が侵入可能な端部収納部を備えているものであれば、ガイドワイヤーの導出がより容易なものとなる。
また、前記筒状部材が前記端部収納部より基端側に設けられた閉塞部もしくは前記ガイドワイヤーの端部の侵入が不能な小径部を備えるものであれば、内管のルーメン内に導入され、筒状部材の端部収納部内に侵入したガイドワイヤーの端部により筒状部材が押し出されるので、筒状部材の生体器官拡張用器具からの取り外し作業が不要となるととともに、筒状部材の取り外しの忘れを防止できる。また、前記筒状部材の先端部が筒状部材の中心軸に対して斜めとなるように形成されていれば、筒状部材の先端部の内管のルーメン内への挿入が容易なものとなる。
また、前記生体器官拡張用器具が、前記内管の先端より挿入され、一端部が前記筒状部材の前記端部収納部内に侵入し、かつ、他端部が前記内管の先端より露出した筒状部材抜止部材を備えるものであれば、輸送時、使用準備時における筒状部材の生体器官拡張用器具からの離脱を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の生体器官拡張用器具の部分省略正面図である。
【図2】図2は、図1に示した生体器官拡張用器具の先端部付近の拡大断面図である。
【図3】図3は図1に示した生体器官拡張用器具の基端部付近の部分省略拡大断面図である。
【図4】図4は、本発明の生体器官拡張用器具に使用する体腔内留置用ステントの一例の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の生体器官拡張用器具の作用を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の生体器官拡張用器具の作用を説明するための説明図である。
【図7】図7は、本発明の生体器官拡張用器具の他の実施例の部分省略正面図である。
【図8】図8は、図7に示した生体器官拡張用器具の先端部分の拡大断面図である。
【図9】図9は、図7に示した生体器官拡張用器具のシース側孔形成部付近の拡大断面図である。
【図10】図10は、図7に示した生体器官拡張用器具のシースハブ付近の部分省略拡大断面図である。
【図11】図11は、図7に示した生体器官拡張用器具の内管ハブ付近の部分省略拡大断面図である。
【図12】図12は、本発明の生体器官拡張用器具に使用する体腔内留置用ステントの一例の斜視図である。
【符号の説明】
1 生体器官拡張用器具
2 シース
3 ステント
4 内管
5 ガイドワイヤー誘導用筒状部材
6 シースハブ
7 内管ハブ
8 抜止部材
9 ガイドワイヤー
21 シース側孔
41 ルーメン
42 内管側孔
Claims (16)
- シースと、前記シースの先端部内に収納されたステントと、該シース内を摺動可能に挿通し、前記ステントを前記シースの先端より押し出すための内管とを備える生体器官拡張用器具であって、前記ステントは、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものであり、かつ、前記中心軸方向に圧縮させた状態で前記シース内に保持されており、さらに、前記内管は、先端より少なくとも前記シースの前記ステント収納部位より基端側まで延びるルーメンと、該ルーメンと前記ステント収納部位より基端側において連通する内管側孔とを備え、前記シースは、前記ステント収納部位より基端側に設けられたシース側孔を備え、さらに、前記生体器官拡張用器具は、前記シース側孔および前記内管側孔を貫通し、先端が前記内管のルーメン内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材を備えることを特徴とする生体器官拡張用器具。
- 前記内管は、前記ステント収納部位より基端側に設けられたステント押出用突出部を備えており、さらに、該ステント押出用突出部の基端側は、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部となっている請求項1に記載の生体器官拡張用器具。
- 前記内管は、前記ステント収納部位より先端側に設けられたステント保持用突出部を備えており、さらに、該ステント保持用突出部の基端側は、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部となっている請求項1または2に記載の生体器官拡張用器具。
- チューブ状の内管本体と、該内管本体の先端部に設けられた折り畳みおよび拡張可能なバルーンと、折り畳まれた状態の該バルーンを被包するように装着され、かつ該バルーンの拡張により拡張されるステントとを備える内管と、該内管を摺動可能に収納するシースとからなる生体器官拡張用器具であって、前記内管は、先端より少なくとも前記内管の前記バルーンより基端側まで延びるルーメンと、該ルーメンと前記バルーンより基端側において連通する内管側孔とを備え、前記シースは、前記バルーンより基端側に設けられたシース側孔を備え、さらに、前記生体器官拡張用器具は、前記シース側孔および前記内管側孔を貫通し、先端が前記内管のルーメン内に位置する取り外し可能なガイドワイヤー誘導用筒状部材を備えることを特徴とする生体器官拡張用器具。
- 前記筒状部材は、基端側が前記シースの前記シース側孔より露出している請求項1ないし4のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記筒状部材は、前記内管の先端より挿入されるガイドワイヤーの端部が侵入可能な端部収納部を備えている請求項1ないし5のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記筒状部材は、前記端部収納部より基端側に設けられた閉塞部もしくは前記ガイドワイヤーの端部の侵入が不能な小径部を備えている請求項6に記載の生体器官拡張用器具。
- 前記筒状部材の先端は、筒状部材の中心軸に対して斜めとなるように形成されている請求項1ないし7のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記生体器官拡張用器具は、前記内管の先端より挿入され、一端部が前記筒状部材内に侵入し、かつ、他端部が前記内管の先端より露出した筒状部材抜止部材を備えている請求項1ないし8のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記内管のルーメンは、前記側孔もしくは該側孔より基端側の位置にて終端している請求項1ないし9のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記内管側孔は、前記シース側孔より前記生体器官拡張用器具の先端側に位置している請求項1ないし10のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記シースの基端部には、前記内管を摺動可能、かつ液密に保持する弁体を備えたハブが設けられいる請求項1ないし11のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記生体器官拡張用器具は、前記シースを前記内管に解除可能に固定する固定手段を有している請求項1ないし12のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記内管の基端部には、前記シースの先端側への移動距離を規制する挿入深度規制部を備えている請求項1ないし13のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記シースは、該シースに対して前記内管を任意の位置で固定するロック機構を備えている請求項1ないし14のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
- 前記内管は、前記ステントよりも先端側に設けられ、前記シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えている請求項1ないし15のいずれかに記載の生体器官拡張用器具。
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