以下、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施例であるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型ハイブリッド車両のパワートレーンを示す概略構成図で、燃料の燃焼によって作動する内燃機関などのエンジン10と、エンジン10の回転変動を防止するスプリング式のダンパ装置12と、電気エネルギーで作動するモータおよび発電機として機能するモータジェネレータ14と、それ等のエンジン10およびモータジェネレータ14の出力を機械的に合成、分配して自動変速機16に出力する遊星歯車装置18とを備えており、エンジン10,ダンパ装置12,モータジェネレータ14,遊星歯車装置18,自動変速機16の順に同軸上にハウジング20内に配置されている。ハウジング20は、3つの隔壁20a,20b,20cによって4つの部屋に分離されており、第1室22は大気に開放されているとともにエンジン10およびダンパ装置12を収容している。第2室24は、軸部に設けられたオイルシールにより液密にシールされて水や潤滑油等の侵入が防止されており、内部にはモータジェネレータ14が配設されている。第3室26内には遊星歯車装置18が配設され、第4室28内には自動変速機16が配設されており、それ等の第3室26および第4室28内は互いに連通させられているとともに、オイルシールによって外部との間が液密にシールされ、内部に充填された潤滑油により油浴方式で潤滑されるようになっている。なお、上記ダンパ装置12、モータジェネレータ14、遊星歯車装置18、自動変速機16は中心線まわりに略対称的に構成されており、図1では中心線の下半分を省略してある。
エンジン10の出力軸すなわちクランク軸30は、ダンパ装置12を介して遊星歯車装置18への入力軸32に連結されており、その入力軸32は、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる第1クラッチ34を介して遊星歯車装置18のリングギヤ18rに連結されている。遊星歯車装置18はシンプル型(シングルピニオン型)で、サンギヤ18sはモータジェネレータ14のロータ軸36に連結されているとともに、キャリア18cは出力部材37を介して自動変速機16の入力軸38に連結されている。ロータ軸36は中空で、前記入力軸32はその中空内を挿通させられている。また、上記サンギヤ18sとキャリア18cとの間には、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる第2クラッチ40が設けられている。この第2クラッチ40は、隔壁20bと遊星歯車装置18との間に配置されており、その第2クラッチ40へ作動油圧を供給する油路は隔壁20bに設けられている。上記第1クラッチ34は、隔壁20cと遊星歯車装置18との間に配置されており、その第1クラッチ34に作動油圧を供給する油路は隔壁20cに設けられている。
前記自動変速機16は、例えば図3の(a) に示すような遊星歯車式の変速機で、入力軸38と同軸に出力軸44が配設されているとともに、2つのシンプル型遊星歯車装置と、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式摩擦係合装置としての油圧式クラッチC1 ,C2 、油圧式ブレーキB1 ,B2 ,B3 と、一方向クラッチF1 ,F2 とを備えて構成されており、油圧式クラッチC1 ,C2 および油圧式ブレーキB1 ,B2 ,B3 がそれぞれ図3の(b) のように作動させられることにより、ニュートラルと前進3段、後進1段の変速段が成立させられる。図3(b) の「○」は係合状態を表しており、括弧付きの「(○)」はエンジンブレーキや回生制動時に係合させることを意味する。これ等の変速用油圧アクチュエータへ作動油圧を供給する油路も、隔壁20cやハウジング20、軸部材などに設けられている。上記出力軸44はプロペラシャフトに連結され、終減速装置等を経て左右の駆動輪(後輪)に動力を伝達する。なお、図3(a) の入力軸38,出力軸44の下側半分は、上側と略対称的に構成されているため省略してある。
図1に戻って、前記第1室22内には歯車式等のオイルポンプ50が設けられており、前記モータジェネレータ14のロータ軸36によって回転駆動されることにより、前記遊星歯車装置18の第1クラッチ34、第2クラッチ40を係合させる油圧アクチュエータや、前記自動変速機16の油圧クラッチC1 ,C2 、油圧式ブレーキB1 ,B2 ,B3 を係合させる油圧アクチュエータに作動油を供給するようになっている。オイルポンプ50には、図2に示すように4個の逆止弁をブリッジ型に組み合わせた整流回路52が接続されており、モータジェネレータ14の回転方向に拘らずハウジング20の下部などに設けられたオイル溜部54から作動油を汲み上げて、隔壁20aやハウジング20などに形成された供給油路56へ出力するようになっている。また、供給油路56にはスプリング式等のアキュムレータ58が接続されており、所定圧の作動油を所定量だけ蓄積するようになっている。なお、上記オイルポンプ50は、隔壁20aと、その隔壁20aに一体的に固設されるポンプカバー20dとによって、気密なハウジングが構成されている。オイルポンプ50は、動力を必要とする車載装置に相当する。
上記モータジェネレータ14は、M/G制御器60を介してバッテリー等の蓄電装置62に接続されており、コントローラ46(図1参照)によってM/G制御器60が制御されることにより、蓄電装置62から電気エネルギーが供給されて所定のトルクで回転駆動される回転駆動状態と、回生制動(モータジェネレータ14自体の電気的な制動トルク)により発電機として機能して蓄電装置62に電気エネルギーを充電する充電状態と、ロータ軸36が自由回転することを許容する無負荷状態とに切り換えられる。また、前記エンジン10は、コントローラ46によってスロットル弁開度や燃料噴射量、点火時期などが制御されることにより、その作動状態が制御される。また、前記オイルポンプ50から供給油路56を介して作動油が供給される油圧回路も、コントローラ46により電磁切換弁等を介して回路が切り換えられ、前記遊星歯車装置18のクラッチ34,40の係合、解放状態が切り換えられるとともに、自動変速機16の油圧式クラッチC1 ,C2 、油圧式ブレーキB1 ,B2 ,B3 の係合、解放状態が切り換えられる。
コントローラ46は、CPUやRAM,ROM等を有するマイクロコンピュータを備えて構成され、予め設定されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、例えば図4に示すフローチャートに従って表1に示す6つの運転モードの1つを選択し、その選択したモードで作動させる。コントローラ46には、エンジントルクT
E やモータトルクT
M 、エンジン回転数N
E 、モータ回転数N
M 、自動変速機16の出力軸回転数(車速に対応)N
O 、アクセル操作量θ
AC、蓄電装置62の蓄電量SOC、ブレーキのON,OFF、シフトレバーの操作レンジL
SH等に関する情報が、種々の検出手段などから供給されるようになっている。エンジントルクT
E はスロットル弁開度や燃料噴射量などから求められ、モータトルクT
M はモータ電流などから求められ、蓄電量SOCはモータジェネレータ14が発電機として機能する充電時のモータ電流や充電効率などから求められる。
図4において、ステップSS1では回生制動時か、或いはエンジンブレーキ時かを、例えばブレーキがONか否か、シフトレバーの操作レンジLSHがLや2等のエンジンブレーキレンジで且つアクセル操作量θACが0か否か、或いは単にアクセル操作量θACが0か否か、等によって判断し、YESであればステップSS2でモード6を選択する。モード6は、前記表1から明らかなように第1クラッチ34を解放(OFF)し、第2クラッチ40を係合(ON)し、エンジン10を停止し、モータジェネレータ14を充電状態とするもので、回生制動によりエンジンブレーキと同様な制動力が得られるとともに、その制動力に対応する電気エネルギーが蓄電装置62に充電される。第2クラッチ40が係合させられることにより遊星歯車装置18は一体回転させられるとともに、第1クラッチ34が解放されてエンジン10が遮断されているため、引き擦り損失が少なく、効率の良いエネルギー回生制動制御が可能である。なお、前記自動変速機16は、「1st」変速段の場合にはブレーキB3 が係合制御され、「2nd」変速段の場合にはブレーキB1 が係合制御され、駆動輪側から自動変速機16を経て遊星歯車装置18側へ動力伝達が行われるようにする。また、蓄電量SOCが予め定められた所定値以上の場合には、過充電を回避するためにモード6による充電制御が行われないようになっており、代わりにエンジン10によるエンジンブレーキ制御が実施される。
ステップSS1の判断がNOの場合には、ステップSS3においてエンジン発進が要求されているか否かを、例えばエンジン10の運転中で車速すなわち出力軸回転数NO =0で且つアクセル操作量θAC≠0か否か等によって判断し、YESであればステップSS4においてモード5を選択する。モード5は、前記表1から明らかなように第1クラッチ34を係合(ON)し、第2クラッチ40を解放(OFF)し、エンジン10を運転状態とし、モータジェネレータ14をトルク制御することにより、車両を発進させるものである。具体的に説明すると、遊星歯車装置18のギヤ比(サンギヤ18sの歯数/リングギヤ18rの歯数)をρとすると、エンジントルクTE :遊星歯車装置18の出力トルク:モータトルクTM =1:(1+ρ):ρとなるため、例えばギヤ比ρを一般的な値である0.5程度とすると、エンジントルクTE の半分のトルクをモータジェネレータ14が分担することにより、エンジントルクTE の約1.5倍のトルクがキャリア18cから出力される。また、モータ電流を遮断してモータジェネレータ14を無負荷状態とすれば、ロータ軸36が逆回転させられるだけでキャリア18cからの出力は0となり、車両停止状態となる。すなわち、この場合のモータジェネレータ14および遊星歯車装置18は発進クラッチおよびトルク増幅装置として機能するのであり、モータトルクTM (モータ電流)を0から徐々に増大させることにより、エンジントルクTE の(1+ρ)倍の出力トルクで車両を滑らかに発進させることができるのである。
ステップSS3の判断がNOの場合には、ステップSS5において要求出力Pdが予め設定された第1判定値P1以下か否かを判断する。要求出力Pdは、走行抵抗を含む車両の走行に必要な出力で、アクセル操作量θACやその変化速度、車速(出力軸回転数NO )、自動変速機16の変速段などに基づいて、予め定められたデータマップや演算式などにより算出される。そして、要求出力Pdが第1判定値P1以下の場合には、ステップSS6で蓄電量SOCが予め設定された最低蓄電量A以上か否かを判断し、SOC≧AであればステップSS7でモード1を選択し、SOC<AであればステップSS8でモード3を選択する。最低蓄電量Aは、モータジェネレータ14を動力源として走行する場合に蓄電装置62から電気エネルギーを取り出すことが許容される最低の蓄電量で、蓄電装置62の放電効率や充電効率などに基づいて例えば70%程度の値が設定される。
上記モード1は、前記表1から明らかなように第1クラッチ34を解放(OFF)し、第2クラッチ40を係合(ON)し、エンジン10を停止し、モータジェネレータ14を要求出力Pdで回転駆動させるもので、モータジェネレータ14のみを動力源として車両を走行させる。この場合も前記モード6と同様に引き擦り損失が少なく、自動変速機16を適当に変速制御することにより効率の良いモータ駆動制御が可能である。モード3は、第1クラッチ34および第2クラッチ40を共に係合(ON)し、エンジン10を運転状態とし、モータジェネレータ14を回生制動により充電状態とするもので、エンジン10の出力で車両を走行させながら、モータジェネレータ14によって発生した電気エネルギーを蓄電装置62に充電する。エンジン10は、要求出力Pd以上の出力で運転させられ、その要求出力Pdより大きい余裕動力分だけモータジェネレータ14で消費されるように、そのモータジェネレータ14の電流制御が行われる。
前記ステップSS5の判断がNOの場合、すなわち要求出力Pdが第1判定値P1より大きい場合には、ステップSS9において第1判定値P1より大きい第2判定値P2より小さいか否か、すなわちP1<Pd<P2か否かを判断する。そして、YESの場合にはステップSS10でSOC≧Aか否かを判断し、SOC≧AであればステップSS11でモード2を選択し、SOC<Aであれば前記ステップSS8でモード3を選択する。モード2は、前記表1から明らかなように第1クラッチ34および第2クラッチ40を共に係合(ON)し、エンジン10を要求出力Pdで運転し、モータジェネレータ14を無負荷状態とするもので、エンジン10のみを動力源として車両を走行させる。
上記ステップSS9の判断がNOの場合、すなわち要求出力Pdが第2判定値P2以上の場合には、ステップSS10でSOC≧Aか否かを判断し、SOC≧AであればステップSS13でモード4を選択し、SOC<Aであれば前記ステップSS11でモード2を選択する。モード4は、前記表1から明らかなように第1クラッチ34および第2クラッチ40を共に係合(ON)し、エンジン10を運転状態とし、モータジェネレータ14を回転駆動するもので、エンジン10およびモータジェネレータ14の両方を動力源として車両を走行させる。
すなわち、蓄電量SOC≧Aであれば、Pd≦P1の低負荷領域ではステップSS7でモード1を選択してモータジェネレータ14のみを動力源として走行し、P1<Pd<P2の中負荷領域ではステップSS11でモード2を選択してエンジン10のみを動力源として走行し、P2≦Pdの高負荷領域ではステップSS13でモード4を選択してエンジン10およびモータジェネレータ14の両方を動力源として走行するのである。第1判定値P1および第2判定値P2は、例えば燃料消費量や排出ガス量ができるだけ少なくなるように、エンジン10の燃料消費率(単位動力当たりの燃料消費量)や排出ガス率(単位動力当たりの排出ガス量)、モータジェネレータ14のエネルギー変換効率などに基づいて設定される。
ここで、本実施例のハイブリッド車両は、自動変速機16の変速段を切り換えたり合成分配機構として機能する遊星歯車装置18のクラッチ34,40を係合させたりするための作動油を供給するオイルポンプ50が、エンジン10に比較して動力源として使用する頻度が高いとともに、エンジンブレーキの代わりに回生制動トルクを発生させたり、エンジン10を動力源とする走行時に無負荷で回転させたりすることが可能なモータジェネレータ14によって駆動されるため、エンジン10をオイルポンプ50の動力源とする場合に比較して幅広い走行条件下で作動油や潤滑油を供給することが可能である。因みに、前記表1のモード1〜6は全てモータジェネレータ14が回転させられ、多量の作動油を必要とする自動変速機16の変速時にもオイルポンプ50から十分な量の作動油を供給できる。
車両の停止時には、モード5のエンジン発進を除いてモータジェネレータ14は停止するが、必要に応じてアキュムレータ58から所定圧の作動油が供給されるため、オイルポンプ専用のモータが不要であるとともに、車両停止時には殆ど変速制御が行われないため小容量のアキュムレータ58を用いることが可能で、車両への搭載性を損なうこともない。
なお、車両停止時にシフトレバーの切換え操作に従って変速段を切り換えたり、駐車後の発進時にパーキング状態から前進或いは後進変速段へ切り換えたりする必要があるが、そのような車両停止時の変速制御については、例えば車両停止状態を維持しつつモータジェネレータ14を作動させてオイルポンプ50により油圧を発生させるようにすることが可能である。その場合は、アキュムレータ58は、信号待ちなど比較的短時間の車両停止時に、自動変速機16が所定の変速段、例えば前進走行時には「1st」変速段を維持できるように、作動油の漏れを補う程度の量を供給できれば良く、アキュムレータ58として一層小容量のものを採用することが可能となる。
このように、本実施例ではエンジン10がダンパ装置12を介して遊星歯車装置18のリングギヤ18rに連結されるようになっているため、エンジン10の回転変動がそのまま遊星歯車装置18に伝達されることが防止される。
また、オイルポンプ50はモータジェネレータ14によって駆動されるため、オイルポンプ専用のモータが不要となり、油圧回路を簡単且つ安価に構成できるとともに、設置スペースが小さくなって車両への搭載性が向上する。特に、アキュムレータ58として作動油の漏れを補う程度の小容量のものを採用した場合には、上記効果が一層顕著となる。
また、オイルポンプ50には整流回路52が設けられ、モータジェネレータ14の回転方向に拘らず作動油が出力されるようになっているため、前記モード5のエンジン発進時にも作動油が十分に供給される利点がある。
次に、本発明の他の実施例を説明する。
図5のハイブリッド駆動装置110はFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両用のもので、燃料の燃焼によって作動する内燃機関等のエンジン112と、電動モータおよび発電機としての機能を有するモータジェネレータ114と、シングルピニオン型の遊星歯車装置116と、自動変速機118とを車両の前後方向に沿って備えており、出力軸119から図示しないプロペラシャフトや差動装置などを介して左右の駆動輪(後輪)へ駆動力を伝達する。
遊星歯車装置116は機械的に力を合成分配する合成分配機構で、モータジェネレータ114と共に電気式トルコン124を構成しており、そのリングギヤ116rは第1クラッチCE1 を介してエンジン112に連結され、サンギヤ116sはモータジェネレータ114のロータ軸114rに連結され、キャリア116cは自動変速機118の入力軸126に連結されている。また、サンギヤ116sおよびキャリア116cは第2クラッチCE2 によって連結されるようになっている。
なお、エンジン112の出力は、回転変動やトルク変動を抑制するためのフライホイール128およびスプリング、ゴム等の弾性部材によるダンパ装置130を介して第1クラッチCE1 に伝達される。第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 は、何れも油圧アクチュエータによって係合、解放される摩擦式の多板クラッチである。
自動変速機118は、前置式オーバードライブプラネタリギヤユニットから成る副変速機120と、単純連結3プラネタリギヤトレインから成る前進4段、後進1段の主変速機122とを組み合わせたものである。
具体的には、副変速機120はシングルピニオン型の遊星歯車装置132と、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式のクラッチC0 、ブレーキB0 と、一方向クラッチF0 とを備えて構成されている。また、主変速機122は、3組のシングルピニオン型の遊星歯車装置134、136、138と、油圧アクチュエータによって摩擦係合させられる油圧式のクラッチC1 , C2 、ブレーキB1 ,B2 ,B3 ,B4 と、一方向クラッチF1 ,F2 とを備えて構成されている。
そして、図6に示されているソレノイドバルブSL1〜SL4の励磁、非励磁により油圧回路140が切り換えられたり、図9に示されるシフトレバー142に連結されたマニュアルシフトバルブ144によって油圧回路140が機械的に切り換えられたりすることにより、クラッチC0 ,C1 ,C2 、ブレーキB0 ,B1 ,B2 ,B3 ,B4 がそれぞれ係合、解放制御され、図7に示されているようにニュートラル(N)と前進5段(1st〜5th)、後進1段(Rev)の各変速段が成立させられる。なお、上記自動変速機118や前記電気式トルコン124は、中心線に対して略対称的に構成されており、図5では中心線の下半分が省略されている。
図7のクラッチ、ブレーキ、一方向クラッチの欄の「○」は係合、「●」はシフトレバーがエンジンブレーキレンジ、たとえば「3」、「2」、及び「L」レンジ等の低速レンジへ操作された場合に係合、そして、空欄は非係合を表している。
その場合に、ニュートラルN、後進変速段Rev、及びエンジンブレーキレンジは、シフトレバー142に機械的に連結されたマニュアルシフトバルブ144によって油圧回路140が機械的に切り換えられることによって成立させられ、シフトレバー142がD(前進)レンジへ操作された場合の1st〜5thの相互間の変速はソレノイドバルブSL1〜SL4によって電気的に制御される。
また、前進変速段の変速比は1stから5thとなるに従って段階的に小さくなり、4thの変速比i4 =1であり、5thの変速比i5 は、副変速機120の遊星歯車装置132のギヤ比をρ(=サンギヤの歯数ZS /リングギヤの歯数ZR <1)とすると1/(1+ρ)となる。後進変速段Revの変速比iR は、遊星歯車装置136、138のギヤ比をそれぞれρ2 、ρ3 とすると1−1/ρ2 ・ρ3 である。図7は各変速段の変速比の一例を示したものである。
図8は、図6に示されるシフトレバー142の操作位置を示している。図において、車両の前後方向の6つの操作位置と車両の左右方向の2つの操作位置との組み合わせにより、シフトレバー142を8通りの操作位置へ操作可能に支持する図示しない支持装置によってシフトレバー142が支持されている。
図9は、マニュアルシフトバルブ144の作動を説明する図である。マニュアルシフトバルブ144には、油路145を介して図示しないプライマリレギュレータバルブよりライン圧が加えられている。シフトレバー142が、中立レンジとしてのNレンジ或いはPレンジへ操作されている場合には、スプール146によって油路145から油路147及び油路148への流路が塞がれるため、クラッチC1 、C2 の何れにも油圧が供給されずに機械的にニュートラルが成立させられる。
一方、シフトレバー142がDレンジ或いはエンジンブレーキレンジへ操作されている場合には、スプール146の動きに合わせて油路147が導通されるため、クラッチC1 (フォワードクラッチ)へ油圧が供給されて機械的に前進状態が成立され、また、シフトレバー142がRレンジへ操作されている場合には、スプール146の動きに合わせて油路148が導通されるため、クラッチC2 (ダイレクトクラッチ)へ油圧が供給されて機械的に後進状態が成立させられる。
図7の作動表に示されているように、第2変速段(2nd)と第3変速段(3rd)との間の変速は、第2ブレーキB2 と第3ブレーキB3 との係合・解放状態を共に変えるクラッチツウクラッチ変速になる。この変速を円滑に行うために、上述した油圧回路140には図10に示す回路が組み込まれている。
図10において符号170は1−2シフトバルブを示し、また符号171は2−3シフトバルブを示し、さらに符号172は3−4シフトバルブを示している。これらのシフトバルブ170、171、172の各ポートの各変速段での連通状態は、それぞれのシフトバルブ170、171、172の下側に示している通りである。なお、その数字は各変速段を示す。
その2−3シフトバルブ171のポートのうち第1変速段および第2変速段で入力ポート173に連通するブレーキポート174に、第3ブレーキB3 が油路175を介して接続されている。この油路にはオリフィス176が介装されており、そのオリフィス176と第3ブレーキB3 との間にダンパーバルブ177が接続されている。このダンパーバルブ177は、第3ブレーキB3 にライン圧が急激に供給された場合に少量の油圧を吸入して緩衝作用を行うものである。
また符号178はB−3コントロールバルブであって、第3ブレーキB3 の係合圧PB3をこのB−3コントロールバルブ178によって直接制御するようになっている。すなわち、このB−3コントロールバルブ178は、スプール179とプランジャ180とこれらの間に介装したスプリング181とを備えており、スプール179によって開閉される入力ポート182に油路175が接続され、またこの入力ポート182に選択的に連通させられる出力ポート183が第3ブレーキB3 に接続されている。さらにこの出力ポート183は、スプール179の先端側に形成したフィードバックポート184に接続されている。
一方、前記スプリング181を配置した箇所に開口するポート185には、2−3シフトバルブ171のポートのうち第3変速段以上の変速段でDレンジ圧を出力するポート186が油路187を介して連通させられている。また、プランジャ180の端部側に形成した制御ポート188には、リニアソレノイドバルブSLUが接続されている。
したがって、B−3コントロールバルブ178は、スプリング181の弾性力とポート185に供給される油圧とによって調圧レベルが設定され、且つ制御ポート188に供給される信号圧が高いほどスプリング181による弾性力が大きくなるように構成されている。
さらに、図10における符号189は、2−3タイミングバルブであって、この2−3タイミングバルブ189は、小径のランドと2つの大径のランドとを形成したスプール190と第1のプランジャ191とこれらの間に配置したスプリング192とスプール190を挟んで第1のプランジャ191とは反対側に配置された第2のプランジャ193とを有している。
この2−3タイミングバルブ189の中間部のポート194に油路195が接続され、また、この油路195は2−3シフトバルブ171のポートのうち第3変速段以上の変速段でブレーキポート174に連通させられるポート196に接続されている。
さらに、この油路195は途中で分岐して、前記小径ランドと大径ランドとの間に開口するポート197にオリフィスを介して接続されている。この中間部のポート194に選択的に連通させられるポート198は油路199を介してソレノイドリレーバルブ200に接続されている。
そして、第1のプランジャ191の端部に開口しているポートにリニアソレノイドバルブSLUが接続され、また第2のプランジャ193の端部に開口するポートに第2ブレーキB2 がオリフィスを介して接続されている。
前記油路187は第2ブレーキB2 に対して油圧を供給・排出するためのものであって、その途中には小径オリフィス201とチェックボール付きオリフィス202とが介装されている。また、この油路187から分岐した油路203には、第2ブレーキB2 から排圧する場合に開くチェックボールを備えた大径オリフィス204が介装され、この油路203は以下に説明するオリフィスコントロールバルブ205に接続されている。
オリフィスコントロールバルブ205は第2ブレーキB2 からの排圧速度を制御するためのバルブであって、そのスプール206によって開閉されるように中間部に形成したポート207には第2ブレーキB2 が接続されており、このポート207より図での下側に形成したポート208に前記油路203が接続されている。
第2ブレーキB2 を接続してあるポート207より図での上側に形成したポート209は、ドレインポートに選択的に連通させられるポートであって、このポート209には、油路210を介して前記B−3コントロールバルブ178のポート211が接続されている。尚、このポート211は、第3ブレーキB3 を接続してある出力ポート183に選択的に連通させられるポートである。
オリフィスコントロールバルブ205のポートのうちスプール206を押圧するスプリングとは反対側の端部に形成した制御ポート212が油路213を介して、3−4シフトバルブ172のポート214に接続されている。このポート214は、第3変速段以下の変速段で第3ソレノイドバルブSL3の信号圧を出力し、また、第4変速段以上の変速段で第4ソレノイドバルブSL4の信号圧を出力するポートである。
さらに、このオリフィスコントロールバルブ205には、前記油路195から分岐した油路215が接続されており、この油路215を選択的にドレインポートに連通させるようになっている。
なお、前記2−3シフトバルブ171において第2変速段以下の変速段でDレンジ圧を出力するポート216が、前記2−3タイミングバルブ189のうちスプリング192を配置した箇所に開口するポート217に油路218を介して接続されている。また、3−4シフトバルブ172のうち第3変速段以下の変速段で前記油路187に連通させられるポート219が油路220を介してソレノイドリレーバルブ200に接続されている。
そして、図10において、符号221は第2ブレーキB2 用のアキュムレータを示し、その背圧室にはリニアソレノイドバルブSLNが出力する油圧に応じて調圧されたアキュムレータコントロール圧が供給されている。このアキュムレータコントロール圧は、リニアソレノイドバルブSLNの出力圧が低いほど高い圧力になるように構成されている。したがって、第2ブレーキB2 の係合・解放の過渡的な油圧PB2は、リニアソレノイドバルブSLNの信号圧が低いほど高い圧力で推移するようになっている。変速用の他のクラッチC1 、C2 やブレーキB0 などにもアキュムレータが設けられ、上記アキュムレータコントロール圧が作用させられることにより、変速時の過渡油圧が入力軸126のトルクTI などに応じて制御されるようになっている。
また、符号222はC−0エキゾーストバルブを示し、さらに符号223はクラッチC0 用のアキュムレータを示している。C−0エキゾーストバルブ222は2速レンジでの第2変速段のみにおいてエンジンブレーキを効かせるためにクラッチC0 を係合させるように動作するものである。
したがって、上述した油圧回路140によれば、B−3コントロールバルブ178のポート211がドレインに連通していれば、第3ブレーキB3 の係合圧PB3をB−3コントロ−ルバルブ178によって直接調圧することができ、また、その調圧レベルをリニアソレノイドバルブSLUによって変えることができる。
また、オリフィスコントロールバルブ205のスプール206が、図の左半分に示す位置にあれば、第2ブレーキB2 はこのオリフィスコントロールバルブ205を介して排圧が可能になり、したがって第2ブレーキB2 からのドレイン速度を制御することができる。
さらに、第2変速段から第3変速段への変速は、第3ブレーキB3 を緩やかに解放すると共に第2ブレーキB2 を緩やかに係合する所謂クラッチツウクラッチ変速が行われるわけであるが、入力軸126への入力軸トルクTI に基づいてリニアソレノイドバルブSLUにより駆動される第3ブレーキB3 の解放過渡油圧PB3を制御することにより変速ショックを好適に軽減することができる。入力軸トルクTI に基づく油圧PB3の制御は、フィードバック制御などでリアルタイムに行うこともできるが、変速開始時の入力軸トルクTI のみを基準にして行うものであっても良い。
ハイブリッド駆動装置110は、図6に示されるようにハイブリッド制御用コントローラ150及び自動変速制御用コントローラ152を備えている。これらのコントローラ150、152は、CPUやRAM、ROM等を有するマイクロコンピュータを備えて構成され、シフトポジションセンサ162、車速センサ163、入力軸回転数センサ164からそれぞれシフトレバー142の操作レンジ、車速V(自動変速機118の出力軸119の回転数NO に対応)、自動変速機118の入力軸126の回転数NI を表す信号が供給される他、エンジントルクTE 、モータトルクTM 、エンジン回転数NE 、モータ回転数NM 、蓄電装置158の蓄電量SOC、ブレーキのON、OFF、アクセル操作量θACなどに関する情報が、種々の検出手段などから供給されるようになっており、予め設定されたプログラムに従って信号処理を行う。
なお、エンジントルクTE はスロットル弁開度や燃料噴射量などから求められ、モータトルクTM はモータ電流などから求められ、蓄電量SOCはモータジェネレータ114がジェネレータとして機能する充電時のモータ電流や充電効率などから求められる。
前記エンジン112は、ハイブリッド制御用コントローラ150によってスロットル弁開度や燃料噴射量、点火時期などが制御されることにより、運転状態に応じて出力が制御される。
前記モータジェネレータ114は、図11に示すようにM/G制御器(インバータ)156を介してバッテリー等の蓄電装置158に接続されており、ハイブリッド制御用コントローラ150により、その蓄電装置158から電気エネルギーが供給されて所定のトルクで回転駆動される回転駆動状態と、回生制動(モータジェネレータ114自体の電気的な制動トルク)によりジェネレータとして機能して蓄電装置158に電気エネルギーを充電する充電状態と、ロータ軸114rが自由回転することを許容する無負荷状態とに切り換えられる。
また、前記第1クラッチCE1 及び第2クラッチCE2 は、ハイブリッド制御用コントローラ150により電磁弁等を介して油圧回路140が切り換えられることにより、係合或いは解放状態が切り換えられる。
前記自動変速機118は、自動変速制御用コントローラ152によって前記ソレノイドバルブSL1〜SL4、リニアソレノイドバルブSLU、SLT、SLNの励磁状態が制御され、油圧回路140が切り換えられたり油圧制御が行われることにより、予め定められた変速条件に従って変速段が切り換えられる。変速条件は、例えばアクセル操作量θACおよび車速Vなどの走行状態をパラメータとする変速マップ等により設定される。
上記ハイブリッド制御用コントローラ150は、例えば本願出願人が先に出願した特願平7−294148号に記載されているように、図12に示すフローチャートに従って表2に示す9つの運転モードの1つを選択し、その選択したモードでエンジン112及び電気式トルコン124を作動させる。なお、図12のステップS11〜S19は、前記図4のステップSS5〜SS13と同じである。
図12において、ステップS1ではエンジン始動要求があったか否かを、例えばエンジン112を動力源として走行したり、エンジン112によりモータジェネレータ114を回転駆動して蓄電装置158を充電したりするために、エンジン112を始動すべき旨の指令があったか否かを判断する。
ここで、始動要求があればステップS2でモード9を選択する。モード9は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、モータジェネレータ114により遊星歯車装置116を介してエンジン112を回転駆動すると共に、燃料噴射などのエンジン始動制御を行ってエンジン112を始動する。
このモード9は、車両停止時には前記自動変速機118をニュートラルにして行われ、モード1のように第1クラッチCE1 を解放したモータジェネレータ114のみを動力源とする走行時には、第1クラッチCE1 を係合すると共に走行に必要な要求出力以上の出力でモータジェネレータ114を作動させ、その要求出力以上の余裕出力でエンジン112を回転駆動することによって行われる。
また、車両走行時であっても、一時的に自動変速機118をニュートラルにしてモード9を実行することも可能である。このようにモータジェネレータ114によってエンジン112が始動させられることにより、始動専用のスタータ(電動モータなど)が不要となり、部品点数が少なくなって装置が安価となる。
一方、ステップS1の判断が否定された場合、すなわちエンジン始動要求がない場合には、ステップS3を実行することにより、制動力の要求があるか否かを、ブレーキがONか否かによって判断する。
この判断が肯定された場合にはステップS4を実行する。ステップS4では、蓄電装置158の蓄電量SOCが予め定められた最大蓄電量B以上か否かを判断し、SOC≧BであればステップS5でモード8(エンジンブレーキモード)を選択し、SOC<BであればステップS6でモード6(回生制動モード)を選択する。最大蓄電量Bは、蓄電装置158に電気エネルギーを充電することが許容される最大の蓄電量で、蓄電装置158の充放電効率などに基づいて例えば80%程度の値が設定される。
上記ステップS5で選択されるモード8は、表2に示されるように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、モータジェネレータ114を無負荷状態とし、エンジン112を停止状態すなわちスロットル弁を閉じると共に燃料噴射量を0とするものであり、これによりエンジン112の引き擦り回転やポンプ作用による制動力、すなわちエンジンブレーキが車両に作用させられ、運転者によるブレーキ操作が軽減されて運転操作が容易になる。また、モータジェネレータ114は無負荷状態とされ、自由回転させられるため、蓄電装置158の蓄電量SOCが過大となって充放電効率等の性能を損なうことが回避される。
ステップS6で選択されるモード6は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 を解放(OFF)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、エンジン112を停止し、モータジェネレータ114を充電状態とするもので、車両の運動エネルギーでモータジェネレータ114が回転駆動されることにより、蓄電装置158を充電するとともにその車両にエンジンブレーキのような回生制動力を作用させるため、運転者によるブレーキ操作が軽減されて運転操作が容易になる。
また、第1クラッチCE1 が解放されてエンジン112が遮断されているため、そのエンジン112の引き擦りによるエネルギー損失がないとともに、蓄電量SOCが最大蓄電量Bより少ない場合に実行されるため、蓄電装置158の蓄電量SOCが過大となって充放電効率等の性能を損なうことがない。
一方、ステップS3の判断が否定された場合、すなわち制動力の要求がない場合にはステップS7を実行し、エンジン発進が要求されているか否かを、例えばモード3などエンジン112を動力源とする走行中の車両停止時か否か、すなわち車速V=0か否か等によって判断する。
この判断が肯定された場合には、ステップS8を実行する。ステップS8ではアクセルがONか否か、すなわちアクセル操作量θACが略零の所定値より大きいか否かを判断し、アクセルONの場合にはステップS9でモード5を選択し、アクセルがONでなければステップS10でモード7を選択する。
上記ステップS9で選択されるモード5は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を解放(OFF)し、エンジン112を運転状態とし、モータジェネレータ114の回生制動トルクを制御することにより車両を発進させるものである。
具体的に説明すると、遊星歯車装置116のギヤ比をρE とすると、エンジントルクTE :遊星歯車装置116の出力トルク:モータトルクTM =1:(1+ρE ):ρE となるため、例えばギヤ比ρE を一般的な値である0.5程度とすると、エンジントルクTE の半分のトルクをモータジェネレータ114が分担することにより、エンジントルクTE の約1.5倍のトルクがキャリア116cから出力される。
すなわち、モータジェネレータ114のトルクの(1+ρE )/ρE 倍の高トルク発進を行うことができるのである。また、モータ電流を遮断してモータジェネレータ114を無負荷状態とすれば、ロータ軸114rが逆回転させられるだけでキャリア116cからの出力は0となり、車両停止状態となる。
すなわち、この場合の遊星歯車装置116は発進クラッチおよびトルク増幅装置として機能するのであり、モータトルク(回生制動トルク)TM を0から徐々に増大させて反力を大きくすることにより、エンジントルクTE の(1+ρE )倍の出力トルクで車両を滑らかに発進させることができるのである。
ここで、本実施例では、エンジン112の最大トルクの略ρE 倍のトルク容量のモータジェネレータ、すなわち必要なトルクを確保しつつできるだけ小型で小容量のモータジェネレータ114が用いられており、装置が小型で且つ安価に構成される。
また、本実施例ではモータトルクTM の増大に対応して、スロットル弁開度や燃料噴射量を増大させてエンジン112の出力を大きくするようになっており、反力の増大に伴うエンジン回転数NE の低下に起因するエンジンストール等を防止している。
ステップS10で選択されるモード7は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 を係合(ON)し、第2クラッチCE2 を解放(OFF)し、エンジン112を運転状態とし、モータジェネレータ114を無負荷状態として電気的にニュートラルとするもので、モータジェネレータ114のロータ軸114rが逆方向へ自由回転させられることにより、自動変速機118の入力軸126に対する出力が零となる。これにより、モード3などエンジン112を動力源とする走行中の車両停止時に一々エンジン112を停止させる必要がないとともに、前記モード5のエンジン発進が実質的に可能となる。
一方、ステップS7の判断が否定された場合、すなわちエンジン発進の要求がない場合にはステップS11を実行し、要求出力Pdが予め設定された第1判定値P1以下か否かを判断する。要求出力Pdは、走行抵抗を含む車両の走行に必要な出力で、アクセル操作量θACやその変化速度、車速V(出力軸回転数NO )、自動変速機118の変速段などに基づいて、予め定められたデータマップや演算式などにより算出される。
また、第1判定値P1はエンジン112のみを動力源として走行する中負荷領域とモータジェネレータ114のみを動力源として走行する低負荷領域の境界値であり、エンジン112による充電時を含めたエネルギー効率を考慮して、排出ガス量や燃料消費量などができるだけ少なくなるように実験等によって定められている。
ステップS11の判断が肯定された場合、すなわち要求出力Pdが第1判定値P1以下の場合には、ステップS12で蓄電量SOCが予め設定された最低蓄電量A以上か否かを判断し、SOC≧AであればステップS13でモード1を選択する。一方、SOC<AであればステップS14でモード3を選択する。
最低蓄電量Aはモータジェネレータ114を動力源として走行する場合に蓄電装置158から電気エネルギーを取り出すことが許容される最低の蓄電量であり、蓄電装置158の充放電効率などに基づいて例えば70%程度の値が設定される。
上記モード1は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 を解放(OFF)し、第2クラッチCE2 を係合(ON)し、エンジン112を停止し、モータジェネレータ114を要求出力Pdで回転駆動させるもので、モータジェネレータ114のみを動力源として車両を走行させる。
この場合も、第1クラッチCE1 が解放されてエンジン112が遮断されるため、前記モード6と同様に引き擦り損失が少なく、自動変速機118を適当に変速制御することにより効率の良いモータ駆動制御が可能である。
また、このモード1は、要求出力Pdが第1判定値P1以下の低負荷領域で且つ蓄電装置158の蓄電量SOCが最低蓄電量A以上の場合に実行されるため、エンジン112を動力源として走行する場合よりもエネルギー効率が優れていて燃費や排出ガスを低減できるとともに、蓄電装置158の蓄電量SOCが最低蓄電量Aより低下して充放電効率等の性能を損なうことがない。
ステップS14で選択されるモード3は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 を共に係合(ON)し、エンジン112を運転状態とし、モータジェネレータ114を回生制動により充電状態とするもので、エンジン112の出力で車両を走行させながら、モータジェネレータ114によって発生した電気エネルギーを蓄電装置158に充電する。エンジン112は、要求出力Pd以上の出力で運転させられ、その要求出力Pdより大きい余裕動力分だけモータジェネレータ114で消費されるように、そのモータジェネレータ114の電流制御が行われる。
一方、前記ステップS11の判断が否定された場合、すなわち要求出力Pdが第1判定値P1より大きい場合には、ステップS15において、要求出力Pdが第1判定値P1より大きく第2判定値P2より小さいか否か、すなわちP1<Pd<P2か否かを判断する。
第2判定値P2は、エンジン112のみを動力源として走行する中負荷領域とエンジン112およびモータジェネレータ114の両方を動力源として走行する高負荷領域の境界値であり、エンジン112による充電時を含めたエネルギー効率を考慮して、排出ガス量や燃料消費量などができるだけ少なくなるように実験等によって予め定められている。
そして、P1<Pd<P2であればステップS16でSOC≧Aか否かを判断し、SOC≧Aの場合にはステップS17でモード2を選択し、SOC<Aの場合には前記ステップS14でモード3を選択する。
また、Pd≧P2であればステップS18でSOC≧Aか否かを判断し、SOC≧Aの場合にはステップS19でモード4を選択し、SOC<Aの場合にはステップS17でモード2を選択する。
上記モード2は、表2から明らかなように第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 を共に係合(ON)し、エンジン112を要求出力Pdで運転し、モータジェネレータ114を無負荷状態とするもので、エンジン112のみを動力源として車両を走行させる。
また、モード4は、第1クラッチCE1 および第2クラッチCE2 を共に係合(ON)し、エンジン112を運転状態とし、モータジェネレータ114を回転駆動するもので、エンジン112およびモータジェネレータ114の両方を動力源として車両を高出力走行させる。
このモード4は、要求出力Pdが第2判定値P2以上の高負荷領域で実行されるが、エンジン112およびモータジェネレータ114を併用しているため、エンジン112およびモータジェネレータ114の何れか一方のみを動力源として走行する場合に比較してエネルギー効率が著しく損なわれることがなく、燃費や排出ガスを低減できる。また、蓄電量SOCが最低蓄電量A以上の場合に実行されるため、蓄電装置158の蓄電量SOCが最低蓄電量Aより低下して充放電効率等の性能を損なうことがない。
上記モード1〜4の運転条件についてまとめると、蓄電量SOC≧Aであれば、Pd≦P1の低負荷領域ではステップS13でモード1を選択してモータジェネレータ114のみを動力源として走行し、P1<Pd<P2の中負荷領域ではステップS17でモード2を選択してエンジン112のみを動力源として走行し、P2≦Pdの高負荷領域ではステップS19でモード4を選択してエンジン112およびモータジェネレータ114の両方を動力源として走行する。
また、SOC<Aの場合には、要求出力Pdが第2判定値P2より小さい中低負荷領域でステップS14のモード3を実行することにより蓄電装置158を充電するが、要求出力Pdが第2判定値P2以上の高負荷領域ではステップS17でモード2が選択され、充電を行うことなくエンジン112により高出力走行が行われる。
ステップS17のモード2は、P1<Pd<P2の中負荷領域で且つSOC≧Aの場合、或いはPd≧P2の高負荷領域で且つSOC<Aの場合に実行されるが、中負荷領域では一般にモータジェネレータ114よりもエンジン112の方がエネルギー効率が優れているため、モータジェネレータ114を動力源として走行する場合に比較して燃費や排出ガスを低減できる。
また、高負荷領域では、モータジェネレータ114およびエンジン112を併用して走行するモード4が望ましいが、蓄電装置158の蓄電量SOCが最低蓄電量Aより小さい場合には、上記モード2によるエンジン112のみを動力源とする運転が行われることにより、蓄電装置158の蓄電量SOCが最低蓄電量Aよりも少なくなって充放電効率等の性能を損なうことが回避される。
次に、エアコン166などの動力を必要とする車載装置を簡単且つ安価に構成するための制御作動を図13のフローチャートに基づいて説明する。尚、本実施例のエアコン166は、コンプレッサ167をファンベルトを介してエンジン112により駆動する一般的なモデルであるため、エンジン112が停止するとコンプレッサ167も停止してエアコン166の機能は低下してしまう。
図13において、ステップSA1では、図6のシフトポジションセンサ162から供給される信号に基づいて、シフトレバー142がNレンジへ操作されているか否かが判断される。この判断が肯定された場合は、ステップSA2において、図12の運転モード判断サブルーチンに従って、モータジェネレータ14のみを動力源として走行する前記モード1が選択されているか否かが判断される。
このステップSA2の判断が否定された場合、すなわちエンジン112を動力源とする走行時には、ステップSA3において、モータトルク(反力)TM を0として、電気式トルコン124を動力伝達が行われない状態(ニュートラル)にし、マニュアルシフトバルブ144により機械的に成立されているニュートラルをより確実にする。エンジン112は、アイドル回転などアクセル操作量θACに対応する所定の作動状態に維持される。
一方、この判断が肯定された場合は、ステップSA4において、車速センサ163により検出される車速Vが所定値V1 以上であるか否かが判断される。この所定値V1 は、N→Dシフト時にモータ回転数NM を上昇させる際にショックが生じるような車速に設定される。
このステップSA4の判断が肯定された場合は、ステップSA5において、第1クラッチCE1 及び第2クラッチCE2 が共に係合状態(ON)とされて、モータジェネレータ114と自動変速機118の入力軸126とが直結される。
次にステップSA6において、車速センサ163により検出される出力軸回転数NO と遊星歯車装置134、136、138のギヤ比ρ1 、ρ2 、ρ3 とから算出されるクラッチC1 以降のシャフトAの回転数NA と、入力軸回転数センサ164から検出される入力軸回転数NI と遊星歯車装置132のギヤ比ρ0 とから算出されるクラッチC1 以前のシャフトBの回転数NB との差が次式(1) に従って一定値β以内に納まるように、モータジェネレータ114により入力軸回転数NI が増減制御される。尚、回転数NA と回転数NB との比が一定値以内に納まるように、入力軸回転数NI が増減制御されていても良く、ステップSA6はリアルタイムフィードバック制御として実行される。N→Dシフト時に成立させられる変速段を求め、その場合の入力軸回転数NI でモータジェネレータ114を作動させるようにしても良い。
|NA −NB |≦β ・・・(1)
一方、ステップSA4の判断が否定された場合は、ステップSA7において、エアコン(A/C)166のスイッチがONされているか否かが判断される。この判断が否定された場合は、ステップSA8において、蓄電量SOCの低下を防止するために、モータジェネレータ114も停止させられる。一方、この判断が肯定された場合は、ステップSA9において、第1クラッチCE1 及び第2クラッチCE2 が共に係合状態(ON)とされて、モータジェネレータ114とエンジン112とが直結される。
次にステップSA10において、モータジェネレータ114によりエンジン112のクランク軸が強制的に回転されることにより、ファンベルトを介してエアコン166のコンプレッサ167が駆動させられる。尚、モータ回転数NM は、車載装置の種類や駆動状態に応じて逐次所定のマップ等により最適値が設定される。
次にステップSA11において、エンジン112のフリクションロスを出来るだけ少なくするために、スロットル弁が略全開とされる。次に、ステップSA12において、スロットル弁は略全開とされているがフューエルカットは継続させられる。
このように、本実施例においてもエンジン112がダンパ装置130を介して遊星歯車装置116のリングギヤ116rに連結されるようになっているため、エンジン112の回転変動がそのまま遊星歯車装置116に伝達されることが防止される。
また、本実施例では、通常はエンジン112によってエアコン166のコンプレッサ167が駆動されると共に、モード1が選択されてエンジン112が停止された場合には、モータジェネレータ114によりエンジン112のクランク軸が強制的に回転されることにより、ファンベルトを介してコンプレッサ167が駆動されるため常にコンプレッサ167は停止せず、エアコン166の機能の低下を防止するために余分に専用モータ等を搭載する必要が無くなるため、装置を簡単且つ安価に構成することが可能となる。
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
例えば、前記第1実施例では第1クラッチ34および第2クラッチ40が遊星歯車装置18の両側に分けて配置されているが、図14や図15に示すように一方に纏めて配置しても良い。図15の第2クラッチ48は、遊星歯車装置18のサンギヤ18sとリングギヤ18rとの間に設けられている。これらの場合も、第1クラッチ34の油路は隔壁20cに設け、第2クラッチ40、48の油路は隔壁20bに設けることができる。
また、前述の第2実施例においては、後進1段および前進5段の変速段を有する自動変速機118が用いられていたが、図16に示されるように、前記副変速機120を省略して前記主変速機122のみから成る自動変速機160を採用し、図17に示されるように前進4段および後進1段で変速制御を行うようにすることも可能である。
また、前記第1実施例では6つのモードで運転させられる場合について説明したが、この運転モードは適宜変更できる。前記遊星歯車装置18には2つの油圧式クラッチ34,40が設けられていたが、更にリングギヤ18rをハウジング20に固定する油圧式ブレーキなどを設けることも可能である。
また、前記オイルポンプ50から出力された作動油を、遊星歯車装置18や自動変速機16の歯車噛合い部、軸受け部などを潤滑する潤滑油として利用することも可能である。
また、前記第1実施例ではエンジン10から自動変速機16まで同軸上に配設されていたが、FF車両など横置き型の車両においては、エンジン10やモータジェネレータ14、遊星歯車装置18に対して自動変速機16を並列に配置して歯車やチェーンなどで動力伝達を行うようにしても良いなど、それ等の配設形態は適宜変更できる。
本発明は、その主旨を逸脱しない範囲において、その他種々の態様で適用され得るものである。
10、112:エンジン 12、130:ダンパ装置 14、114:モータジェネレータ 16、118、160:自動変速機 18、116:遊星歯車装置 34、CE1 :第1クラッチ 40、48、CE2 :第2クラッチ(クラッチ) 50:オイルポンプ(車載装置) 150:ハイブリッド制御用コントローラ 166:エアコン(車載装置)