JP2004093459A - タンパク質相互作用検出方法およびタンパク質のスクリーニング方法ならびにタンパク質間相互作用検出用タンパク質、活性の変化したタンパク質 - Google Patents
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Abstract
【課題】簡便かつ再現性のよいタンパク質相互作用解析法、スクリーニング法を提供することであり、また、不純物が少なく、活性の変化の測定を容易にかつ正確に行うことができるタンパク質間相互作用検出用タンパク質を提供する。
【解決手段】無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のレポータータンパク質を取得し、該レポータータンパク質を用いて候補タンパク質とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法。
【解決手段】無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のレポータータンパク質を取得し、該レポータータンパク質を用いて候補タンパク質とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法。
Description
【0001】
【産業の属する技術分野】
本発明は、無細胞タンパク質合成されたタンパク質を用いてタンパク質間相互作用を検出する方法に関し、より詳細には、無細胞タンパク合成されたシグナル伝達系タンパク質を用いるタンパク質間相互作用解析およびその応用に関する。また、無細胞タンパク質合成法を用いて得られた、修飾の度合いの低いタンパク質および他のタンパク質により活性化されたタンパク質にも関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞は外界からの刺激に対し、増殖、分化、形態変化、細胞死等の応答を示す。外界からの刺激は、主にストレス刺激、細胞増殖因子、細胞分化因子などがあるが、これらの刺激を情報として伝達し、細胞応答へ結びつけるのが、細胞内シグナル伝達機構である。シグナル伝達機構が正常に機能することにより、細胞の増殖や分化は、極めて厳密な制御の下に置かれているが、この機構がひとたび破壊されると、細胞は制御されることなく成長***することとなる。そのような細胞は無限に増殖を続け、ときに腫瘍を形成するに至る。このようなことから、シグナル伝達機構の研究は、腫瘍形成のメカニズムを解明するのに必要不可欠であるとされてきた。
【0003】
細胞内でこれらのシグナルを伝達する手段としては、タンパク質のアセチル化や、サイクリックAMP等の二次メッセンジャーによる機構、また、そのなかでも特に主要なシステムとして、タンパク質のリン酸化/脱リン酸化による機構があげられる。細胞は、ある一つの刺激に対して、いくつもの伝達機構を活性化させる。そのシグナル伝達経路は、ときに枝分かれし、あるいは合流し、ときにはある特定の因子が、一見関係のみられない複数の経路の情報伝達に関わっていたりと、極めて複雑な様相を呈している。そのため、この分野は古くから研究がなされ、非常に多くの知見が得られているにもかかわらず、未だ不明な点が数多く残されている。
【0004】
シグナル伝達に関与するタンパク質は、それぞれ単独あるいは複数の特定の因子と相互作用することにより、情報の伝達を行っている。一例を挙げると、タンパク質リン酸化酵素の一種であるMAPキナーゼは、別のタンパク質リン酸化酵素MAPキナーゼキナーゼによるリン酸化を受ける。MAPキナーゼはMAPキナーゼキナーゼによるリン酸化を受けて初めて活性化し、MAPキナーゼの標的タンパク質であるMAPKAPK(MAP kinase activated protein kinase)をリン酸化して活性化させたり、あるいは転写因子をリン酸化して活性化させ、その転写因子が関わる遺伝子の発現制御を行ったりしている。MAPキナーゼをリン酸化する責任タンパク質、あるいはMAPキナーゼがリン酸化する標的タンパク質の特異性は厳密であり、MAPキナーゼは他種のタンパク質リン酸化酵素による制御を受けることはなく、またあるいはMAPキナーゼ自身が特定の標的タンパク質以外をリン酸化して活性を制御することもない。
【0005】
MAPキナーゼを活性化する経路を上流にたどると、さらにMAPキナーゼキナーゼをリン酸化して活性を制御する、MAPキナーゼキナーゼキナーゼが存在している。MAPキナーゼキナーゼキナーゼもまた、上流の因子により制御を受けている存在であり、その活性化にはMAPキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼと呼ばれるタンパク質や、低分子量Gタンパク質と呼ばれるタンパク質が関与していると言われているが、その機構は未だ完全には解明されていない。
【0006】
MAPキナーゼキナーゼキナーゼの活性化に関わっているタンパク質の一種として、プロテインキナーゼCが挙げられているが、このプロテインキナーゼCは元々別の研究によりその存在が明らかになったタンパク質であり、MAPキナーゼキナーゼキナーゼとの関連は後の研究により判明したものである。MAPキナーゼも、プロテインキナーゼCも、シグナル伝達の分野では比較的古くから知られていたものではあるが、このように、個々の分子がどのような経路でお互いに関与しているのかについては、未解明な点が多い。
【0007】
シグナル伝達に関わるタンパク質は、現在までにその機能がある程度判明しているとされるものに限定しても、その数は膨大なものにのぼっている。それぞれのタンパク質のシグナル伝達経路における関連性を探索する研究が、これまでにも数多く行われてきた。しかしながら、未解明な伝達経路が多いばかりか、シグナル伝達系に関与するとされる新規な因子が、現在もなお続々と同定されており、それらの関連性の全貌を明らかにする容易ではなく、今後も多大なる労力が必要とされると推測される。
【0008】
シグナル伝達系のタンパク質の研究には、そのタンパク質が発現している生体組織から抽出精製、あるいは大腸菌や動物細胞等の他の宿主に遺伝子を導入してタンパク質を大量合成し、それを抽出精製して試験管内でその特性を検討するといった方法が用いられてきた。しかしながら、タンパク質の抽出、精製には、時間、労力ともに多大に費やされ、当然ながら検討できるタンパク質の数も限定されてしまう。
【0009】
また、大腸菌を用いたタンパク質合成法の一般的な特徴として、タンパク合成時に凝集しやすいタンパク質は、インクルージョンボディを形成して不溶化してしまい、タンパク質としての活性を失ってしまうことや、宿主細胞に対して毒性を示すようなタンパク質は合成が困難であったことなどの欠点があった。
【0010】
さらに、シグナル伝達系のタンパク質を合成するに際しては、特に発現しようとするタンパク質の由来する生物種と同一または近縁の細胞を用いる場合においては、宿主細胞に固有に発現している他のシグナル伝達系タンパク質による望ましくない影響、例えばリン酸化や脂肪酸付加などの影響が不可避であり、合成されたタンパク質を、いわゆるインタクトな状態で回収するには、信頼性が低いと言わざるを得ない状況であった。またこれは、生体組織から目的タンパク質を単離精製する場合にも同じことが言える。
【0011】
また、目的の遺伝子をその由来する細胞において過剰発現させ、その表現型を観察することによって目的遺伝子の機能を解析するといった方法が一般に用いられている。ただ、この方法では、そのタンパク質の関与の効果がシグナル伝達経路の末端に影響が現れることが多いため、そのタンパク質自体が他のタンパク質と直接的にどのように相互作用するかを解析する目的には不向きであるといえる。その上、過剰発現することによって、生体内では本来起こり得ないような影響が現れることも多々あり、本来の機能を解析するのに支障をきたすこともある。
【0012】
逆に、目的遺伝子を欠失させる遺伝子ノックアウト法と呼ばれる方法もあり、細胞レベルではなく、実際にその遺伝子型を持つ個体を生育させて表現形を観察するといった方法をとるが、過剰発現法と同じような問題点があった。
【0013】
更に、Two−hybridシステムも近年盛んに使用される相互作用の解析方法である。ただ、この方法にも様々な制限があり、相互作用が測定できない場合や、偽陽性が生じやすいなどの問題点が多くあった。
【0014】
前述のような細胞の系を用いたタンパク質の合成法の欠点を克服する方法として、近年、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質合成法が注目を浴びるようになってきた。現在、無細胞タンパク質合成系は、生体細胞からの抽出液を用いたものが主流であり、その中でも、大腸菌、コムギ胚芽、ウサギ網状赤血球に由来するものが特に広く用いられている。特に大腸菌に由来する系は、原料の供給が比較的容易であることもあり、他の二つの系と比較してもより一般的に用いられている。しかしながら、大腸菌は原核細胞であり、真核細胞由来のタンパク質、特にヒト由来のタンパク質を合成しようとした場合、合成システムがうまく適合せずに合成に失敗する例が数多く見られる。特に、シグナル伝達に関与するタンパク質の合成は、経験則的に大腸菌由来の無細胞系では合成が困難であるとされてきた。
【0015】
一方、大腸菌由来の無細胞タンパク質合成系と比較して、コムギ由来のタンパク質合成系は、コムギが真核生物であることから、ヒトのタンパク質合成により適しているとされている。また、ウサギ網状赤血球と比較しても、材料が遥かに容易に供給されることもあり、無細胞タンパク合成系の中でも特に期待が持たれていた。しかしながらこれまで、内在性のタンパク質合成阻害物質の混入により、その合成効率は芳しいものではなかった。最近、”トリチン”と呼ばれるRNAグリコシダーゼがタンパク質の合成を阻害していることが明らかになり、また、この”トリチン”はコムギ種子の胚乳成分に大量に局在していることが分かった。そこで、コムギ胚芽抽出液を用いる無細胞タンパク質合成系における効率を上昇させる手段として、胚芽より胚乳成分を洗浄によってほぼ完全に除去することにより、タンパク質合成効率を飛躍的に向上させることが出来るようになることが報告されている(Madin K et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 559−564)。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べたような理由から、シグナル伝達に係わるタンパク質を中心として、簡便かつ再現性の良い、相互作用パートナーをスクリーニングする方法が求められていた。すなわち、本発明の目的は簡便かつ再現性のよいタンパク質相互作用解析法、スクリーニング法を提供することである。また、不純物が少なく、状態の変化、特に活性の変化の測定を容易にかつ正確に行うことができるタンパク質間相互作用検出用タンパク質を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、二種以上のシグナル伝達系タンパク質を無細胞タンパク質合成系により同時または別個に合成して相互に反応させることにより、該タンパク質のうち一方の活性により該タンパク質のうちの他方を活性化または不活性化させ、活性化または不活性化された該タンパク質の活性を測定することにより、各タンパク質間の相互作用の有無を判定する方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち本発明は以下の項目よりなる。
(1)無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のレポータータンパク質を得し、該タンパク質を用いて他の候補タンパク質とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法。
【0019】
(2)一種以上のレポータータンパク質と該レポータータンパク質と相互作用の予想される一種以上の候補タンパク質を無細胞タンパク質合成により同時または別個に合成、反応させ、該レポータータンパク質の状態の変化を測定することにより、該レポータータンパク質と相互作用する候補タンパク質をスクリーニングする方法。
【0020】
(3)レポータータンパク質が酵素またはレセプターであることを特徴とする(2)に記載の方法。
【0021】
(4) レポータータンパク質がシグナル伝達に関与するタンパク質であることを特徴とする(2)または(3)に記載の方法。
【0022】
(5) 無細胞タンパク質合成が、コムギ胚芽抽出液、大腸菌抽出液および、網状赤血球抽出液の少なくとも1つを用いることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の方法。
【0023】
(6) 活性型もしくは不活性型のタンパク質と、該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法にて同時または別個に合成、反応させ、不活性化もしくは活性化された該タンパク質を取得する方法。
【0024】
(7)活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質が変異導入により活性化されたタンパク質であることを特徴とする(6)に記載の方法。
【0025】
(8)無細胞タンパク質合成を用いて合成されたタンパク質間相互作用検出用タンパク質。
【0026】
(9)活性型もしくは不活性型のタンパク質と、該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法にて同時または別個に合成、反応させて得られたことを特徴とする活性化または不活性化されたタンパク質。
【0027】
(10)合成されたタンパク質がシグナル伝達系タンパク質であることを特徴とする(9)に記載のタンパク質。
【0028】
(11)シグナル伝達系タンパク質が、プロテインキナーゼ、プロテインホスファターゼ、レセプターおよび、転写因子であることを特徴とする(10)に記載のタンパク質。
【0029】
【発明の実施の形態】
ます、本発明は、無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のタンパク質(レポータータンパク質)取得し、該タンパク質を用いて他のタンパク質(候補タンパク質)とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法である。ここで、レポータータンパク質とは候補タンパク質によって相互作用を受けるタンパク質を意味し、また、候補タンパク質とはレポータータンパク質に対して相互作用を与えることを期待するタンパク質を意味する。
【0030】
本発明におけるレポータータンパク質としては特に限定されないが、何らかの形で状態の変化が測定可能であるものが好ましい。
ここで言う状態の変化とは、会合し、結合による複合体形成、タンパク質の立体構造の変化等の物理学的変化、タンパク質分子の修飾、脱修飾等の化学的変化、活性の変化等の他の物質との相互作用の度合いの変化などが挙げられる。
これら状態の変化を測定することにより、レポータータンパク質と他のタンパク質との相互作用の有無を検出する。
【0031】
本発明でいう相互作用とは、上記のようにレポータータンパク質が他のタンパク質から何らかの形で状態の変化を受けることを言う。
相互作用の検出は、簡便性の面からタンパク質としての活性の変化により検出することが好ましい。
【0032】
上記のことから、レポータータンパク質としては、測定の簡便さから、活性測定可能なタンパク質が好ましく、具体的には酵素もしくはレセプターが好ましい。酵素としては特に限定されないが、プロテインキナーゼやプロテインホスファターゼなどのシグナル伝達系酵素、プロテアーゼなどを挙げることが出来る。また、レセプターとしては、相互作用によって、酵素活性の増減がみられるものが好ましく用いられる。例えば、ATPase活性を有するレセプターなどが好ましい。
【0033】
また、本発明では、レポータータンパク質、候補タンパク質の少なくとも一方、特には両方を無細胞タンパク合成系で取得することが好ましい。
本発明における無細胞タンパク質合成系とは、細胞を用いずに核酸類内に含まれる情報を元にタンパク質やポリペプチドを合成する技術を言い、具体的にはmRNAを添加してタンパク質やポリペプチド鎖を合成する無細胞翻訳系、あるいはDNAからの情報を元にしてmRNAを合成し、さらにタンパク質やポリペプチド鎖を合成する無細胞転写翻訳共役系のいずれでもよい。
【0034】
さらに、本発明における無細胞タンパク質合成系においては、コムギ胚芽抽出液、大腸菌細胞抽出液、網状赤血球抽出液が好適に使用される。
【0035】
更に好ましくはコムギ胚芽抽出液が使用される。最近、タンパク質合成阻害物質を除去することによりタンパク質合成効率を飛躍的に向上させることが出来るようになることが報告されており(Madin K et al. (2000) Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 97, 559−564)、その原理を用いた製品が販売されていることから(PROTEIOS cell−free protein synthesis kit:東洋紡製)、それを用いることが好ましいといえる。
【0036】
無細胞タンパク質合成方法を用いてタンパク質を合成する方法としては公知の方法をそのまま用いることができ、市販キットを用いる場合にはその説明書に従って合成することができる。
【0037】
無細胞タンパク質合成方法により得られたレポータータンパク質や候補タンパク質などのタンパク質間相互作用検出用タンパク質は、他のタンパク質や物質との相互作用を受けておらず、修飾がされていないか修飾のレベルが低い。ここで言う修飾のレベルが低いとは、修飾されたタンパク質の分子数の割合が、修飾されていないものに比べて圧倒的に少なく、活性の変化等が検出できないか、あるいは無視できるほど小さいことを言う。
【0038】
すなわち、無細胞タンパク質合成により得られたタンパク質は他のタンパク質の活性による活性化または不活性化されおらず、他のタンパク質との相互作用を調べるうえで非常に好ましい。
また、無細胞タンパク質合成により得られたタンパク質は不純物が少ないため、その状態の変化、特に活性の変化の測定を容易にかつ正確に行うことができる。
なお、無細胞タンパク質合成により得られたタンパク質間相互作用検出用タンパク質はタンパク質シグナル伝達系タンパク質であることが好ましい。
【0039】
ここでいうシグナル伝達系タンパク質とは、細胞内シグナル伝達経路に関与する一連のタンパク質の総称またはその一部を指す。具体的には、プロテインキナーゼ、プロテインフォスファターゼ、レセプター、転写因子などが好ましく、さらに具体的には、プロテインキナーゼとしては、MAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼ、プロテインキナーゼC、非受容体型チロシンキナーゼなど、プロテインフォスファターゼとして、カルシニューリン、MAPキナーゼフォスファターゼなど、レセプターとして、EGFレセプター、PDGFレセプターなど、転写因子として、c−Fos、c−Junなどを用いることができる。
【0040】
また、本発明では、これらのレセプタータンパク質の活性変化を測定することにより、容易に候補タンパク質をスクリーニングすることができる。
【0041】
一方で、本発明でいう候補タンパク質としては、特に限定されず、レポータータンパク質に相互作用すると思われるタンパク質全般を含む。スクリーニングの際には、候補タンパク質を単独であっても良いし、複数の候補タンパク質を同時に作用させても良く、さらには候補タンパク質が含まれるであろうライブラリーなどのようなものでも良い。
【0042】
また、具体的にスクリーニングする方法としては、ライブラリーをいくつかのグループに分け、レポータータンパク質と個々のグループのタンパク質を共発現させ、それぞれグループ毎にレポータータンパク質の活性を測定し、まずどのグループに目的の候補タンパク質が含まれるかを推定し、更にグループを分割して解析して行く方法が挙げられる。また、タンパク質の発現は、レポータータンパク質と候補タンパク質は分けて行い、合成後に混合して状態の変化を調べても良い。
【0043】
後述する実施例では、MAPキナーゼをレポータータンパク質として、候補タンパク質としてMAPキナーゼキナーゼの構成的活性型変異体(Brunet A et al. (1994) Oncogene 9, 3379−3387)を用いて行ったが、MAPキナーゼキナーゼの構成的活性型変異体が候補タンパク質のグループのうち約1/100存在するだけでも、レポータータンパク質(MAPキナーゼ)の活性化を測定することが可能であったことから、本発明はスクリーニングに非常に有効であることが示された。
【0044】
また、本発明は、活性型もしくは不活性型のタンパク質と該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法を用いて同時または別個に合成し、相互に反応させることにより、不活性化または活性化されたタンパク質を取得する方法を提供する。
【0045】
ここで言う、活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質とは、活性型もしくは不活性化のタンパク質と相互作用し、活性状態のタンパク質であれば不活性化させ、不活性状態のタンパク質であれば活性化させるタンパク質である。
【0046】
活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質としては、野生型タンパク質を用いても良いが、そのタンパク質自身も活性化が必要な場合があり、必要に応じて変異を導入して、活性化して用いることができる。変異としては、点突然変異、欠失などを挙げることができる。実際本発明の有意性を示す実施例には、プロテインキナーゼの一種であるMEK1に、2箇所のアミノ酸置換と1箇所の欠失を導入することにより、MEK1を他のタンパク質からの制御を受けない構成的活性型変異体を作成し、これを用いてプロテインキナーゼの一種であるERK2の活性化を示した。 ERK2は変異型のMEK1により活性化され、本発明の有意性が示された。
【0047】
また、本発明は、上記方法に従って合成された活性化または不活性化されたタンパク質である。タンパク質としてはシグナル伝達系タンパク質が好ましい。
この方法を用いることにより、従来法では非常に煩雑であった活性化もしくは不活性化タンパク質の調整を非常に短時間で終わらせることができ、また、不純物が少なく、解析に用いるのに適したタンパク質を容易に得ることができる。
従って、このタンパク質を用いることにより、タンパク質の活性、不活性状態での構造変化、修飾変化などの解析を行うことも容易となる。
【0048】
以下、本発明におけるタンパク質相互作用のスクリーニング法について詳細に説明する。
本発明に使用される無細胞抽出液は、通常のいかなる組成のものを用いてもよい。しかし、タンパク合成効率や、取扱の簡便さを考慮すると、コムギ胚芽由来抽出液を用いるのが望ましい。無細胞タンパク質合成反応液には、無細胞抽出液のほか、目的のタンパク質をコードするDNAあるいはRNA、DNAを用いる場合にはRNAポリメラーゼ、アミノ酸、緩衝液、ATPまたはGTPなどのエネルギー源、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ等のATP再生系、安定化剤、RNase阻害剤等を適量加える。反応温度は、23−26℃が適している。
【0049】
タンパク質合成の鋳型となるmRNAは、DNAからRNAポリメラーゼによる転写反応により提供される。本発明に用いられるRNAポリメラーゼは、通常のいかなる構造の物を用いてもよい。しかし、mRNA転写効率や、取扱の簡便さを考慮すると、市販のT7、SP6等のウィルス由来のRNAポリメラーゼが望ましい。
【0050】
本発明に用いられる鋳型DNAは、RNAポリメラーゼが結合するプロモータ配列と、その下流に目的遺伝子のオープンリーディングフレームが配置される構造を持つ。望ましくは、プロモータとオープンリーディングフレームとの間に翻訳増強配列が含まれるものが良い。また、適当なベクター上に配置されたプラスミドDNAの形態であることが望ましい。本発明におけるDNAの転写は、合成するタンパク質をコードするDNAを全て混合した状態で一反応系で行ってもよいし、、もちろん、各タンパク質をコードする遺伝子から別個にRNAを合成し、合成後に任意の割合で各RNAを混合しても良い。
【0051】
本発明に用いられる候補タンパク質の遺伝子は、レポータータンパク質に対して相互作用する可能性が示唆される既知タンパク質の遺伝子もしくは構造的に作用を及ぼす可能性が高い機能的に未知なタンパク質の遺伝子を任意に選択したものであってもよいし、ランダムもしくは網羅的にあらゆる遺伝子を包含したものであってもよい。
【0052】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
実施例1
ヒト由来ERK2(MAPK1)遺伝子のクローニング
HeLa細胞由来のmRNAを単離精製し、これを鋳型として逆転写反応によりcDNAを合成した。逆転写反応には、ReverTra Ace(R)(東洋紡績製)を用いた。合成したcDNAを鋳型として、センスプライマーMAPK1−F(配列番号1)とアンチセンスプライマーMAPK1−R(配列番号2)を用い、PCR反応を行った。PCR反応には、KOD−Plus−DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)を使用し、各プライマー50pmol、硫酸マグネシウム1mM、dATP、dTTP、dCTP、dGTP各0.2mM、KOD−Plus− 専用バッファーを1x濃度、KOD−Plus− DNAポリメラーゼ1ユニット、最終液量50μlの反応系で、94℃2分、[94℃15秒、60℃20秒、68℃1分]x25サイクルの温度で反応を行った。PCR産物を精製し、無細胞タンパク質合成キット「PROTEIOS(TM)」付属の専用ベクターpEU3−NIIのEcoRVサイトにサブクローニングを行い、プラスミドpEU−MAPK1を構築した。
【0054】
実施例2
ヒト由来MEK1遺伝子の構成的活性型変異体のクローニング
HeLa細胞由来のmRNAから逆転写したcDNAを鋳型として、5ステップのnested−PCRを行うことにより、MEK1遺伝子の増幅と構成的活性型変異の導入を同時に行った。
具体的には、HeLa細胞由来のmRNAを単離精製し、これを鋳型として逆転写反応によりcDNAを合成した。逆転写反応には、ReverTra Ace(R)(東洋紡績製)を用いた。合成したcDNAを鋳型として、センスプライマーMEK1−F(配列番号3)とアンチセンスプライマーMEK1−R(配列番号4)を用い、PCR反応を行った(第一ステップ)。PCR反応には、KOD−Plus− DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)を使用し、各プライマー50pmol、硫酸マグネシウム1mM、dATP、dTTP、dCTP、dGTP各0.2mM、KOD−Plus− 専用バッファーを1x濃度、KOD−Plus− DNAポリメラーゼ1ユニット、最終液量50μlの反応系で、94℃2分、[94℃15秒、60℃20秒、68℃1分]x20サイクルの温度で反応を行った。増幅したPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−CAR(配列番号5)およびセンスプライマーMEK1−CAF(配列番号6)とアンチセンスプライマーMEK1−Rの二種の組み合わせのプライマーを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第二ステップ)。MEK1−CAFとMEK1−CARには、アミノ酸置換(Ser218Glu、Ser222Glu)を導入する塩基配列を含んでいる。二種のPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−Rを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第三ステップ)。増幅したPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−AaR(配列番号7)およびセンスプライマーMEK1−AaF(配列番号8)とアンチセンスプライマーMEK1−Rの二種の組み合わせのプライマーを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第四ステップ)。MEK1−AaFとMEK1−AaRには、525位のAat I切断部位を破壊するサイレント変異を導入する塩基配列を含んでいる。二種のPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−Rを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第五ステップ)。増幅したPCR産物を、前述のpEU3−NIIベクターのEcoRVサイトにサブクローニングし、中間体プラスミドpEU−MEK1−XEを構築した。このプラスミドを2箇所のAat Iサイトで切断し、Ligation反応で再び連結することによって、その間のDNA断片を欠失させ、pEU−MEK1−CAを構築した。
【0055】
実施例3
ERK2とMEK1構成的活性型変異体の無細胞タンパク質合成系による合成
上記の2種類のプラスミドpEU−MAPK1およびpEU−MEK1−CAを鋳型として、Thermo T7 RNAポリメラーゼ(東洋紡績製)によりmRNAの合成をそれぞれ行った。合成したmRNAをG−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて精製、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファーミックス溶液にバッファー置換し、重層法による無細胞タンパク質合成を行った。
重層法反応は、96穴プレートにおいて、滅菌水1.8μl、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファー#2 2.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のクレアチンキナーゼ(10mg/ml)1.7μl、RNアーゼ阻害剤(40U/μl、東洋紡績製)1.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のコムギ胚芽抽出液10.0μl、バッファー置換したpEU−MAPK1およびpEU−MEK1−CA由来の2種類の精製mRNA等量混合液(0.3〜0.4μg/μl)33.5μlからなるリアクションミックス溶液を、あらかじめ96穴プレートに分注したバッファーミックス溶液250μlの下に重層することにより行った。反応は、26℃で16時間行った。
【0056】
実施例4
ERK2の酵素活性測定
無細胞タンパク質合成により合成したERK2の活性測定を行った。
具体的には、無細胞タンパク質合成反応終了液を、G−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて、MAPキナーゼバッファー(25mM Tris−HCl, pH7.5、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、0.05% Triton X−100)にバッファー置換を行った。このバッファー置換後のタンパク質溶液をサンプル液として活性測定を行った。活性測定には、p42/p44 MAP Kinase Enzyme Assay System(Amersham社製)を用いた。
その結果を図1に示す。ERK2単独で合成を行った場合と比べ、MEK1と同時に合成をおこなったERK2は、1000倍を超える活性の増強が確認された。この結果はERK2がMEK1により活性化されたことを強く示唆しており、この2種類のタンパク質が相互作用する関係にあることが改めて証明されるに至った。この結果は、本発明が、相互の関係が不明確である2種類のタンパク質の相互作用の有無を証明するのに有効な手段であることを示す好例であると考えられ、他の種類のシグナル伝達系タンパク質への応用が可能になると期待される。
【0057】
実施例5
他のタンパク質共存化におけるMEK1構成的活性型変異体によるERK2活性化上記のプラスミドpEU−MAPK1と、同じくpEU3−NIIベクターにクローニングした無関係の遺伝子99種類と上記のpEU−MEK1−CAをそれぞれ等量混合したプラスミド混合液(以下、ライブラリ)を、1:1の割合で混合したものを鋳型として、Thermo T7 RNAポリメラーゼ(東洋紡績製)によりmRNAの合成を行った。合成したmRNAをG−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて精製、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファーミックス溶液にバッファー置換し、重層法による無細胞タンパク質合成を行った。
重層法反応は、96穴プレートにおいて、滅菌水1.8μl、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファー#2 2.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のクレアチンキナーゼ(10mg/ml)1.7μl、RNアーゼ阻害剤(40U/μl、東洋紡績製)1.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のコムギ胚芽抽出液10.0μl、バッファー置換したpEU−MAPK1およびpEU−MEK1−CA由来の2種類の精製mRNA等量混合液(0.3〜0.4μg/μl)33.5μlからなるリアクションミックス溶液を、あらかじめ96穴プレートに分注したバッファーミックス溶液250μlの下に重層することにより行った。反応は、26℃で16時間行った。
【0058】
実施例6
ERK2の酵素活性測定
無細胞タンパク質合成系により合成したERK2の活性測定を行った。
具体的には、無細胞タンパク質合成反応終了液を、G−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて、MAPキナーゼバッファー(25mM Tris−HCl, pH7.5、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、0.05% Triton X−100)にバッファー置換を行った。このバッファー置換後のタンパク質溶液をサンプル液として活性測定を行った。活性測定には、p42/p44 MAP Kinase Enzyme Assay System(Amersham社製)を用いた。
その結果を図2に示す。ERK2とMEK1を等量で発現させた場合におけるERK2の活性を100とした場合、ライブラリとの等量混合で発現させた場合の活性は、18となった。MEK1の発現量はERK2の1/100前後と推察されるが、等量に発現させた場合には及ばないものの、明らかにMEK1がERK2に作用していることが示された。この結果から、1プールあたり100クローンからなる遺伝子発現ライブラリを用いて、ERK2に相互作用を及ぼす未知または既知のタンパク質の遺伝子を同定することができることは容易に推察される。またこの結果を応用して、ある特定のシグナル伝達系タンパク質に影響を及ぼす未知または既知のタンパク質の遺伝子を同定することができることは容易に推察される。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、あるタンパク質の活性を制御するタンパク質のハイスループットなスクリーニングが可能となった。さらに本発明の方法を用いることにより、活性化または不活性化されたタンパク質を効率的かつ簡便に調整できるようになった。従って本発明によれば、目的タンパク質を活性化または不活性化するうようなタンパク質を容易にスクリーニングすることができ、また、活性化または不活性化さらたタンパク質を簡便に調整できる。
【0060】
【配列表】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【図面の簡単な説明】
【図1】ERK2タンパク質を、単独あるいはMEK1構成的活性型変異体と共発現させた場合のERK2タンパク質の酵素活性を示す図。
縦軸にERK2の活性(基質ペプチドへの32Pの付加活性)を、横軸にサンプルの希釈率を示す。(単独):ERK2遺伝子mRNAを単独発現、(共発現):ERK2遺伝子mRNAとMEK1構成的活性型変異体遺伝子mRNAとを等量発現、(コントロール):mRNAを添加せずに合成。
【図2】MEK1構成的活性型変異体遺伝子を含むライブラリをERK2と共発現させた場合のERK2タンパク質の酵素活性を示す図。
横軸にERK2の相対活性を示す。ERK2とMEK1−CAを共発現させた場合(MEK1−CA)のERK2の活性値を100とし、ERK2とライブラリを共発現させた場合(ライブラリ)、ERK2単独で発現させた場合(コントロール)の相対値を示す。
【産業の属する技術分野】
本発明は、無細胞タンパク質合成されたタンパク質を用いてタンパク質間相互作用を検出する方法に関し、より詳細には、無細胞タンパク合成されたシグナル伝達系タンパク質を用いるタンパク質間相互作用解析およびその応用に関する。また、無細胞タンパク質合成法を用いて得られた、修飾の度合いの低いタンパク質および他のタンパク質により活性化されたタンパク質にも関する。
【0002】
【従来の技術】
細胞は外界からの刺激に対し、増殖、分化、形態変化、細胞死等の応答を示す。外界からの刺激は、主にストレス刺激、細胞増殖因子、細胞分化因子などがあるが、これらの刺激を情報として伝達し、細胞応答へ結びつけるのが、細胞内シグナル伝達機構である。シグナル伝達機構が正常に機能することにより、細胞の増殖や分化は、極めて厳密な制御の下に置かれているが、この機構がひとたび破壊されると、細胞は制御されることなく成長***することとなる。そのような細胞は無限に増殖を続け、ときに腫瘍を形成するに至る。このようなことから、シグナル伝達機構の研究は、腫瘍形成のメカニズムを解明するのに必要不可欠であるとされてきた。
【0003】
細胞内でこれらのシグナルを伝達する手段としては、タンパク質のアセチル化や、サイクリックAMP等の二次メッセンジャーによる機構、また、そのなかでも特に主要なシステムとして、タンパク質のリン酸化/脱リン酸化による機構があげられる。細胞は、ある一つの刺激に対して、いくつもの伝達機構を活性化させる。そのシグナル伝達経路は、ときに枝分かれし、あるいは合流し、ときにはある特定の因子が、一見関係のみられない複数の経路の情報伝達に関わっていたりと、極めて複雑な様相を呈している。そのため、この分野は古くから研究がなされ、非常に多くの知見が得られているにもかかわらず、未だ不明な点が数多く残されている。
【0004】
シグナル伝達に関与するタンパク質は、それぞれ単独あるいは複数の特定の因子と相互作用することにより、情報の伝達を行っている。一例を挙げると、タンパク質リン酸化酵素の一種であるMAPキナーゼは、別のタンパク質リン酸化酵素MAPキナーゼキナーゼによるリン酸化を受ける。MAPキナーゼはMAPキナーゼキナーゼによるリン酸化を受けて初めて活性化し、MAPキナーゼの標的タンパク質であるMAPKAPK(MAP kinase activated protein kinase)をリン酸化して活性化させたり、あるいは転写因子をリン酸化して活性化させ、その転写因子が関わる遺伝子の発現制御を行ったりしている。MAPキナーゼをリン酸化する責任タンパク質、あるいはMAPキナーゼがリン酸化する標的タンパク質の特異性は厳密であり、MAPキナーゼは他種のタンパク質リン酸化酵素による制御を受けることはなく、またあるいはMAPキナーゼ自身が特定の標的タンパク質以外をリン酸化して活性を制御することもない。
【0005】
MAPキナーゼを活性化する経路を上流にたどると、さらにMAPキナーゼキナーゼをリン酸化して活性を制御する、MAPキナーゼキナーゼキナーゼが存在している。MAPキナーゼキナーゼキナーゼもまた、上流の因子により制御を受けている存在であり、その活性化にはMAPキナーゼキナーゼキナーゼキナーゼと呼ばれるタンパク質や、低分子量Gタンパク質と呼ばれるタンパク質が関与していると言われているが、その機構は未だ完全には解明されていない。
【0006】
MAPキナーゼキナーゼキナーゼの活性化に関わっているタンパク質の一種として、プロテインキナーゼCが挙げられているが、このプロテインキナーゼCは元々別の研究によりその存在が明らかになったタンパク質であり、MAPキナーゼキナーゼキナーゼとの関連は後の研究により判明したものである。MAPキナーゼも、プロテインキナーゼCも、シグナル伝達の分野では比較的古くから知られていたものではあるが、このように、個々の分子がどのような経路でお互いに関与しているのかについては、未解明な点が多い。
【0007】
シグナル伝達に関わるタンパク質は、現在までにその機能がある程度判明しているとされるものに限定しても、その数は膨大なものにのぼっている。それぞれのタンパク質のシグナル伝達経路における関連性を探索する研究が、これまでにも数多く行われてきた。しかしながら、未解明な伝達経路が多いばかりか、シグナル伝達系に関与するとされる新規な因子が、現在もなお続々と同定されており、それらの関連性の全貌を明らかにする容易ではなく、今後も多大なる労力が必要とされると推測される。
【0008】
シグナル伝達系のタンパク質の研究には、そのタンパク質が発現している生体組織から抽出精製、あるいは大腸菌や動物細胞等の他の宿主に遺伝子を導入してタンパク質を大量合成し、それを抽出精製して試験管内でその特性を検討するといった方法が用いられてきた。しかしながら、タンパク質の抽出、精製には、時間、労力ともに多大に費やされ、当然ながら検討できるタンパク質の数も限定されてしまう。
【0009】
また、大腸菌を用いたタンパク質合成法の一般的な特徴として、タンパク合成時に凝集しやすいタンパク質は、インクルージョンボディを形成して不溶化してしまい、タンパク質としての活性を失ってしまうことや、宿主細胞に対して毒性を示すようなタンパク質は合成が困難であったことなどの欠点があった。
【0010】
さらに、シグナル伝達系のタンパク質を合成するに際しては、特に発現しようとするタンパク質の由来する生物種と同一または近縁の細胞を用いる場合においては、宿主細胞に固有に発現している他のシグナル伝達系タンパク質による望ましくない影響、例えばリン酸化や脂肪酸付加などの影響が不可避であり、合成されたタンパク質を、いわゆるインタクトな状態で回収するには、信頼性が低いと言わざるを得ない状況であった。またこれは、生体組織から目的タンパク質を単離精製する場合にも同じことが言える。
【0011】
また、目的の遺伝子をその由来する細胞において過剰発現させ、その表現型を観察することによって目的遺伝子の機能を解析するといった方法が一般に用いられている。ただ、この方法では、そのタンパク質の関与の効果がシグナル伝達経路の末端に影響が現れることが多いため、そのタンパク質自体が他のタンパク質と直接的にどのように相互作用するかを解析する目的には不向きであるといえる。その上、過剰発現することによって、生体内では本来起こり得ないような影響が現れることも多々あり、本来の機能を解析するのに支障をきたすこともある。
【0012】
逆に、目的遺伝子を欠失させる遺伝子ノックアウト法と呼ばれる方法もあり、細胞レベルではなく、実際にその遺伝子型を持つ個体を生育させて表現形を観察するといった方法をとるが、過剰発現法と同じような問題点があった。
【0013】
更に、Two−hybridシステムも近年盛んに使用される相互作用の解析方法である。ただ、この方法にも様々な制限があり、相互作用が測定できない場合や、偽陽性が生じやすいなどの問題点が多くあった。
【0014】
前述のような細胞の系を用いたタンパク質の合成法の欠点を克服する方法として、近年、無細胞タンパク質合成系によるタンパク質合成法が注目を浴びるようになってきた。現在、無細胞タンパク質合成系は、生体細胞からの抽出液を用いたものが主流であり、その中でも、大腸菌、コムギ胚芽、ウサギ網状赤血球に由来するものが特に広く用いられている。特に大腸菌に由来する系は、原料の供給が比較的容易であることもあり、他の二つの系と比較してもより一般的に用いられている。しかしながら、大腸菌は原核細胞であり、真核細胞由来のタンパク質、特にヒト由来のタンパク質を合成しようとした場合、合成システムがうまく適合せずに合成に失敗する例が数多く見られる。特に、シグナル伝達に関与するタンパク質の合成は、経験則的に大腸菌由来の無細胞系では合成が困難であるとされてきた。
【0015】
一方、大腸菌由来の無細胞タンパク質合成系と比較して、コムギ由来のタンパク質合成系は、コムギが真核生物であることから、ヒトのタンパク質合成により適しているとされている。また、ウサギ網状赤血球と比較しても、材料が遥かに容易に供給されることもあり、無細胞タンパク合成系の中でも特に期待が持たれていた。しかしながらこれまで、内在性のタンパク質合成阻害物質の混入により、その合成効率は芳しいものではなかった。最近、”トリチン”と呼ばれるRNAグリコシダーゼがタンパク質の合成を阻害していることが明らかになり、また、この”トリチン”はコムギ種子の胚乳成分に大量に局在していることが分かった。そこで、コムギ胚芽抽出液を用いる無細胞タンパク質合成系における効率を上昇させる手段として、胚芽より胚乳成分を洗浄によってほぼ完全に除去することにより、タンパク質合成効率を飛躍的に向上させることが出来るようになることが報告されている(Madin K et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97, 559−564)。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
上に述べたような理由から、シグナル伝達に係わるタンパク質を中心として、簡便かつ再現性の良い、相互作用パートナーをスクリーニングする方法が求められていた。すなわち、本発明の目的は簡便かつ再現性のよいタンパク質相互作用解析法、スクリーニング法を提供することである。また、不純物が少なく、状態の変化、特に活性の変化の測定を容易にかつ正確に行うことができるタンパク質間相互作用検出用タンパク質を提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
前記の目的を達成するために、本発明者らは鋭意研究を重ね、二種以上のシグナル伝達系タンパク質を無細胞タンパク質合成系により同時または別個に合成して相互に反応させることにより、該タンパク質のうち一方の活性により該タンパク質のうちの他方を活性化または不活性化させ、活性化または不活性化された該タンパク質の活性を測定することにより、各タンパク質間の相互作用の有無を判定する方法を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0018】
すなわち本発明は以下の項目よりなる。
(1)無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のレポータータンパク質を得し、該タンパク質を用いて他の候補タンパク質とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法。
【0019】
(2)一種以上のレポータータンパク質と該レポータータンパク質と相互作用の予想される一種以上の候補タンパク質を無細胞タンパク質合成により同時または別個に合成、反応させ、該レポータータンパク質の状態の変化を測定することにより、該レポータータンパク質と相互作用する候補タンパク質をスクリーニングする方法。
【0020】
(3)レポータータンパク質が酵素またはレセプターであることを特徴とする(2)に記載の方法。
【0021】
(4) レポータータンパク質がシグナル伝達に関与するタンパク質であることを特徴とする(2)または(3)に記載の方法。
【0022】
(5) 無細胞タンパク質合成が、コムギ胚芽抽出液、大腸菌抽出液および、網状赤血球抽出液の少なくとも1つを用いることを特徴とする(2)〜(4)のいずれかに記載の方法。
【0023】
(6) 活性型もしくは不活性型のタンパク質と、該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法にて同時または別個に合成、反応させ、不活性化もしくは活性化された該タンパク質を取得する方法。
【0024】
(7)活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質が変異導入により活性化されたタンパク質であることを特徴とする(6)に記載の方法。
【0025】
(8)無細胞タンパク質合成を用いて合成されたタンパク質間相互作用検出用タンパク質。
【0026】
(9)活性型もしくは不活性型のタンパク質と、該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法にて同時または別個に合成、反応させて得られたことを特徴とする活性化または不活性化されたタンパク質。
【0027】
(10)合成されたタンパク質がシグナル伝達系タンパク質であることを特徴とする(9)に記載のタンパク質。
【0028】
(11)シグナル伝達系タンパク質が、プロテインキナーゼ、プロテインホスファターゼ、レセプターおよび、転写因子であることを特徴とする(10)に記載のタンパク質。
【0029】
【発明の実施の形態】
ます、本発明は、無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のタンパク質(レポータータンパク質)取得し、該タンパク質を用いて他のタンパク質(候補タンパク質)とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法である。ここで、レポータータンパク質とは候補タンパク質によって相互作用を受けるタンパク質を意味し、また、候補タンパク質とはレポータータンパク質に対して相互作用を与えることを期待するタンパク質を意味する。
【0030】
本発明におけるレポータータンパク質としては特に限定されないが、何らかの形で状態の変化が測定可能であるものが好ましい。
ここで言う状態の変化とは、会合し、結合による複合体形成、タンパク質の立体構造の変化等の物理学的変化、タンパク質分子の修飾、脱修飾等の化学的変化、活性の変化等の他の物質との相互作用の度合いの変化などが挙げられる。
これら状態の変化を測定することにより、レポータータンパク質と他のタンパク質との相互作用の有無を検出する。
【0031】
本発明でいう相互作用とは、上記のようにレポータータンパク質が他のタンパク質から何らかの形で状態の変化を受けることを言う。
相互作用の検出は、簡便性の面からタンパク質としての活性の変化により検出することが好ましい。
【0032】
上記のことから、レポータータンパク質としては、測定の簡便さから、活性測定可能なタンパク質が好ましく、具体的には酵素もしくはレセプターが好ましい。酵素としては特に限定されないが、プロテインキナーゼやプロテインホスファターゼなどのシグナル伝達系酵素、プロテアーゼなどを挙げることが出来る。また、レセプターとしては、相互作用によって、酵素活性の増減がみられるものが好ましく用いられる。例えば、ATPase活性を有するレセプターなどが好ましい。
【0033】
また、本発明では、レポータータンパク質、候補タンパク質の少なくとも一方、特には両方を無細胞タンパク合成系で取得することが好ましい。
本発明における無細胞タンパク質合成系とは、細胞を用いずに核酸類内に含まれる情報を元にタンパク質やポリペプチドを合成する技術を言い、具体的にはmRNAを添加してタンパク質やポリペプチド鎖を合成する無細胞翻訳系、あるいはDNAからの情報を元にしてmRNAを合成し、さらにタンパク質やポリペプチド鎖を合成する無細胞転写翻訳共役系のいずれでもよい。
【0034】
さらに、本発明における無細胞タンパク質合成系においては、コムギ胚芽抽出液、大腸菌細胞抽出液、網状赤血球抽出液が好適に使用される。
【0035】
更に好ましくはコムギ胚芽抽出液が使用される。最近、タンパク質合成阻害物質を除去することによりタンパク質合成効率を飛躍的に向上させることが出来るようになることが報告されており(Madin K et al. (2000) Proc. Natl. Acad.Sci. USA, 97, 559−564)、その原理を用いた製品が販売されていることから(PROTEIOS cell−free protein synthesis kit:東洋紡製)、それを用いることが好ましいといえる。
【0036】
無細胞タンパク質合成方法を用いてタンパク質を合成する方法としては公知の方法をそのまま用いることができ、市販キットを用いる場合にはその説明書に従って合成することができる。
【0037】
無細胞タンパク質合成方法により得られたレポータータンパク質や候補タンパク質などのタンパク質間相互作用検出用タンパク質は、他のタンパク質や物質との相互作用を受けておらず、修飾がされていないか修飾のレベルが低い。ここで言う修飾のレベルが低いとは、修飾されたタンパク質の分子数の割合が、修飾されていないものに比べて圧倒的に少なく、活性の変化等が検出できないか、あるいは無視できるほど小さいことを言う。
【0038】
すなわち、無細胞タンパク質合成により得られたタンパク質は他のタンパク質の活性による活性化または不活性化されおらず、他のタンパク質との相互作用を調べるうえで非常に好ましい。
また、無細胞タンパク質合成により得られたタンパク質は不純物が少ないため、その状態の変化、特に活性の変化の測定を容易にかつ正確に行うことができる。
なお、無細胞タンパク質合成により得られたタンパク質間相互作用検出用タンパク質はタンパク質シグナル伝達系タンパク質であることが好ましい。
【0039】
ここでいうシグナル伝達系タンパク質とは、細胞内シグナル伝達経路に関与する一連のタンパク質の総称またはその一部を指す。具体的には、プロテインキナーゼ、プロテインフォスファターゼ、レセプター、転写因子などが好ましく、さらに具体的には、プロテインキナーゼとしては、MAPキナーゼ、MAPキナーゼキナーゼ、プロテインキナーゼC、非受容体型チロシンキナーゼなど、プロテインフォスファターゼとして、カルシニューリン、MAPキナーゼフォスファターゼなど、レセプターとして、EGFレセプター、PDGFレセプターなど、転写因子として、c−Fos、c−Junなどを用いることができる。
【0040】
また、本発明では、これらのレセプタータンパク質の活性変化を測定することにより、容易に候補タンパク質をスクリーニングすることができる。
【0041】
一方で、本発明でいう候補タンパク質としては、特に限定されず、レポータータンパク質に相互作用すると思われるタンパク質全般を含む。スクリーニングの際には、候補タンパク質を単独であっても良いし、複数の候補タンパク質を同時に作用させても良く、さらには候補タンパク質が含まれるであろうライブラリーなどのようなものでも良い。
【0042】
また、具体的にスクリーニングする方法としては、ライブラリーをいくつかのグループに分け、レポータータンパク質と個々のグループのタンパク質を共発現させ、それぞれグループ毎にレポータータンパク質の活性を測定し、まずどのグループに目的の候補タンパク質が含まれるかを推定し、更にグループを分割して解析して行く方法が挙げられる。また、タンパク質の発現は、レポータータンパク質と候補タンパク質は分けて行い、合成後に混合して状態の変化を調べても良い。
【0043】
後述する実施例では、MAPキナーゼをレポータータンパク質として、候補タンパク質としてMAPキナーゼキナーゼの構成的活性型変異体(Brunet A et al. (1994) Oncogene 9, 3379−3387)を用いて行ったが、MAPキナーゼキナーゼの構成的活性型変異体が候補タンパク質のグループのうち約1/100存在するだけでも、レポータータンパク質(MAPキナーゼ)の活性化を測定することが可能であったことから、本発明はスクリーニングに非常に有効であることが示された。
【0044】
また、本発明は、活性型もしくは不活性型のタンパク質と該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法を用いて同時または別個に合成し、相互に反応させることにより、不活性化または活性化されたタンパク質を取得する方法を提供する。
【0045】
ここで言う、活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質とは、活性型もしくは不活性化のタンパク質と相互作用し、活性状態のタンパク質であれば不活性化させ、不活性状態のタンパク質であれば活性化させるタンパク質である。
【0046】
活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質としては、野生型タンパク質を用いても良いが、そのタンパク質自身も活性化が必要な場合があり、必要に応じて変異を導入して、活性化して用いることができる。変異としては、点突然変異、欠失などを挙げることができる。実際本発明の有意性を示す実施例には、プロテインキナーゼの一種であるMEK1に、2箇所のアミノ酸置換と1箇所の欠失を導入することにより、MEK1を他のタンパク質からの制御を受けない構成的活性型変異体を作成し、これを用いてプロテインキナーゼの一種であるERK2の活性化を示した。 ERK2は変異型のMEK1により活性化され、本発明の有意性が示された。
【0047】
また、本発明は、上記方法に従って合成された活性化または不活性化されたタンパク質である。タンパク質としてはシグナル伝達系タンパク質が好ましい。
この方法を用いることにより、従来法では非常に煩雑であった活性化もしくは不活性化タンパク質の調整を非常に短時間で終わらせることができ、また、不純物が少なく、解析に用いるのに適したタンパク質を容易に得ることができる。
従って、このタンパク質を用いることにより、タンパク質の活性、不活性状態での構造変化、修飾変化などの解析を行うことも容易となる。
【0048】
以下、本発明におけるタンパク質相互作用のスクリーニング法について詳細に説明する。
本発明に使用される無細胞抽出液は、通常のいかなる組成のものを用いてもよい。しかし、タンパク合成効率や、取扱の簡便さを考慮すると、コムギ胚芽由来抽出液を用いるのが望ましい。無細胞タンパク質合成反応液には、無細胞抽出液のほか、目的のタンパク質をコードするDNAあるいはRNA、DNAを用いる場合にはRNAポリメラーゼ、アミノ酸、緩衝液、ATPまたはGTPなどのエネルギー源、クレアチンリン酸、クレアチンキナーゼ等のATP再生系、安定化剤、RNase阻害剤等を適量加える。反応温度は、23−26℃が適している。
【0049】
タンパク質合成の鋳型となるmRNAは、DNAからRNAポリメラーゼによる転写反応により提供される。本発明に用いられるRNAポリメラーゼは、通常のいかなる構造の物を用いてもよい。しかし、mRNA転写効率や、取扱の簡便さを考慮すると、市販のT7、SP6等のウィルス由来のRNAポリメラーゼが望ましい。
【0050】
本発明に用いられる鋳型DNAは、RNAポリメラーゼが結合するプロモータ配列と、その下流に目的遺伝子のオープンリーディングフレームが配置される構造を持つ。望ましくは、プロモータとオープンリーディングフレームとの間に翻訳増強配列が含まれるものが良い。また、適当なベクター上に配置されたプラスミドDNAの形態であることが望ましい。本発明におけるDNAの転写は、合成するタンパク質をコードするDNAを全て混合した状態で一反応系で行ってもよいし、、もちろん、各タンパク質をコードする遺伝子から別個にRNAを合成し、合成後に任意の割合で各RNAを混合しても良い。
【0051】
本発明に用いられる候補タンパク質の遺伝子は、レポータータンパク質に対して相互作用する可能性が示唆される既知タンパク質の遺伝子もしくは構造的に作用を及ぼす可能性が高い機能的に未知なタンパク質の遺伝子を任意に選択したものであってもよいし、ランダムもしくは網羅的にあらゆる遺伝子を包含したものであってもよい。
【0052】
【実施例】
本願発明の詳細を実施例で説明する。本願発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0053】
実施例1
ヒト由来ERK2(MAPK1)遺伝子のクローニング
HeLa細胞由来のmRNAを単離精製し、これを鋳型として逆転写反応によりcDNAを合成した。逆転写反応には、ReverTra Ace(R)(東洋紡績製)を用いた。合成したcDNAを鋳型として、センスプライマーMAPK1−F(配列番号1)とアンチセンスプライマーMAPK1−R(配列番号2)を用い、PCR反応を行った。PCR反応には、KOD−Plus−DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)を使用し、各プライマー50pmol、硫酸マグネシウム1mM、dATP、dTTP、dCTP、dGTP各0.2mM、KOD−Plus− 専用バッファーを1x濃度、KOD−Plus− DNAポリメラーゼ1ユニット、最終液量50μlの反応系で、94℃2分、[94℃15秒、60℃20秒、68℃1分]x25サイクルの温度で反応を行った。PCR産物を精製し、無細胞タンパク質合成キット「PROTEIOS(TM)」付属の専用ベクターpEU3−NIIのEcoRVサイトにサブクローニングを行い、プラスミドpEU−MAPK1を構築した。
【0054】
実施例2
ヒト由来MEK1遺伝子の構成的活性型変異体のクローニング
HeLa細胞由来のmRNAから逆転写したcDNAを鋳型として、5ステップのnested−PCRを行うことにより、MEK1遺伝子の増幅と構成的活性型変異の導入を同時に行った。
具体的には、HeLa細胞由来のmRNAを単離精製し、これを鋳型として逆転写反応によりcDNAを合成した。逆転写反応には、ReverTra Ace(R)(東洋紡績製)を用いた。合成したcDNAを鋳型として、センスプライマーMEK1−F(配列番号3)とアンチセンスプライマーMEK1−R(配列番号4)を用い、PCR反応を行った(第一ステップ)。PCR反応には、KOD−Plus− DNAポリメラーゼ(東洋紡績製)を使用し、各プライマー50pmol、硫酸マグネシウム1mM、dATP、dTTP、dCTP、dGTP各0.2mM、KOD−Plus− 専用バッファーを1x濃度、KOD−Plus− DNAポリメラーゼ1ユニット、最終液量50μlの反応系で、94℃2分、[94℃15秒、60℃20秒、68℃1分]x20サイクルの温度で反応を行った。増幅したPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−CAR(配列番号5)およびセンスプライマーMEK1−CAF(配列番号6)とアンチセンスプライマーMEK1−Rの二種の組み合わせのプライマーを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第二ステップ)。MEK1−CAFとMEK1−CARには、アミノ酸置換(Ser218Glu、Ser222Glu)を導入する塩基配列を含んでいる。二種のPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−Rを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第三ステップ)。増幅したPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−AaR(配列番号7)およびセンスプライマーMEK1−AaF(配列番号8)とアンチセンスプライマーMEK1−Rの二種の組み合わせのプライマーを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第四ステップ)。MEK1−AaFとMEK1−AaRには、525位のAat I切断部位を破壊するサイレント変異を導入する塩基配列を含んでいる。二種のPCR産物を鋳型として、センスプライマーMEK1−FとアンチセンスプライマーMEK1−Rを用いて、前記と同じ反応条件でPCR反応を行った(第五ステップ)。増幅したPCR産物を、前述のpEU3−NIIベクターのEcoRVサイトにサブクローニングし、中間体プラスミドpEU−MEK1−XEを構築した。このプラスミドを2箇所のAat Iサイトで切断し、Ligation反応で再び連結することによって、その間のDNA断片を欠失させ、pEU−MEK1−CAを構築した。
【0055】
実施例3
ERK2とMEK1構成的活性型変異体の無細胞タンパク質合成系による合成
上記の2種類のプラスミドpEU−MAPK1およびpEU−MEK1−CAを鋳型として、Thermo T7 RNAポリメラーゼ(東洋紡績製)によりmRNAの合成をそれぞれ行った。合成したmRNAをG−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて精製、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファーミックス溶液にバッファー置換し、重層法による無細胞タンパク質合成を行った。
重層法反応は、96穴プレートにおいて、滅菌水1.8μl、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファー#2 2.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のクレアチンキナーゼ(10mg/ml)1.7μl、RNアーゼ阻害剤(40U/μl、東洋紡績製)1.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のコムギ胚芽抽出液10.0μl、バッファー置換したpEU−MAPK1およびpEU−MEK1−CA由来の2種類の精製mRNA等量混合液(0.3〜0.4μg/μl)33.5μlからなるリアクションミックス溶液を、あらかじめ96穴プレートに分注したバッファーミックス溶液250μlの下に重層することにより行った。反応は、26℃で16時間行った。
【0056】
実施例4
ERK2の酵素活性測定
無細胞タンパク質合成により合成したERK2の活性測定を行った。
具体的には、無細胞タンパク質合成反応終了液を、G−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて、MAPキナーゼバッファー(25mM Tris−HCl, pH7.5、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、0.05% Triton X−100)にバッファー置換を行った。このバッファー置換後のタンパク質溶液をサンプル液として活性測定を行った。活性測定には、p42/p44 MAP Kinase Enzyme Assay System(Amersham社製)を用いた。
その結果を図1に示す。ERK2単独で合成を行った場合と比べ、MEK1と同時に合成をおこなったERK2は、1000倍を超える活性の増強が確認された。この結果はERK2がMEK1により活性化されたことを強く示唆しており、この2種類のタンパク質が相互作用する関係にあることが改めて証明されるに至った。この結果は、本発明が、相互の関係が不明確である2種類のタンパク質の相互作用の有無を証明するのに有効な手段であることを示す好例であると考えられ、他の種類のシグナル伝達系タンパク質への応用が可能になると期待される。
【0057】
実施例5
他のタンパク質共存化におけるMEK1構成的活性型変異体によるERK2活性化上記のプラスミドpEU−MAPK1と、同じくpEU3−NIIベクターにクローニングした無関係の遺伝子99種類と上記のpEU−MEK1−CAをそれぞれ等量混合したプラスミド混合液(以下、ライブラリ)を、1:1の割合で混合したものを鋳型として、Thermo T7 RNAポリメラーゼ(東洋紡績製)によりmRNAの合成を行った。合成したmRNAをG−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて精製、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファーミックス溶液にバッファー置換し、重層法による無細胞タンパク質合成を行った。
重層法反応は、96穴プレートにおいて、滅菌水1.8μl、「PROTEIOS(TM)」付属のバッファー#2 2.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のクレアチンキナーゼ(10mg/ml)1.7μl、RNアーゼ阻害剤(40U/μl、東洋紡績製)1.0μl、「PROTEIOS(TM)」付属のコムギ胚芽抽出液10.0μl、バッファー置換したpEU−MAPK1およびpEU−MEK1−CA由来の2種類の精製mRNA等量混合液(0.3〜0.4μg/μl)33.5μlからなるリアクションミックス溶液を、あらかじめ96穴プレートに分注したバッファーミックス溶液250μlの下に重層することにより行った。反応は、26℃で16時間行った。
【0058】
実施例6
ERK2の酵素活性測定
無細胞タンパク質合成系により合成したERK2の活性測定を行った。
具体的には、無細胞タンパク質合成反応終了液を、G−25マイクロスピンカラム(Amersham社製)を用いて、MAPキナーゼバッファー(25mM Tris−HCl, pH7.5、0.5mM EDTA、0.5mM EGTA、0.05% Triton X−100)にバッファー置換を行った。このバッファー置換後のタンパク質溶液をサンプル液として活性測定を行った。活性測定には、p42/p44 MAP Kinase Enzyme Assay System(Amersham社製)を用いた。
その結果を図2に示す。ERK2とMEK1を等量で発現させた場合におけるERK2の活性を100とした場合、ライブラリとの等量混合で発現させた場合の活性は、18となった。MEK1の発現量はERK2の1/100前後と推察されるが、等量に発現させた場合には及ばないものの、明らかにMEK1がERK2に作用していることが示された。この結果から、1プールあたり100クローンからなる遺伝子発現ライブラリを用いて、ERK2に相互作用を及ぼす未知または既知のタンパク質の遺伝子を同定することができることは容易に推察される。またこの結果を応用して、ある特定のシグナル伝達系タンパク質に影響を及ぼす未知または既知のタンパク質の遺伝子を同定することができることは容易に推察される。
【0059】
【発明の効果】
本発明により、あるタンパク質の活性を制御するタンパク質のハイスループットなスクリーニングが可能となった。さらに本発明の方法を用いることにより、活性化または不活性化されたタンパク質を効率的かつ簡便に調整できるようになった。従って本発明によれば、目的タンパク質を活性化または不活性化するうようなタンパク質を容易にスクリーニングすることができ、また、活性化または不活性化さらたタンパク質を簡便に調整できる。
【0060】
【配列表】
【0061】
【0062】
【0063】
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
【図面の簡単な説明】
【図1】ERK2タンパク質を、単独あるいはMEK1構成的活性型変異体と共発現させた場合のERK2タンパク質の酵素活性を示す図。
縦軸にERK2の活性(基質ペプチドへの32Pの付加活性)を、横軸にサンプルの希釈率を示す。(単独):ERK2遺伝子mRNAを単独発現、(共発現):ERK2遺伝子mRNAとMEK1構成的活性型変異体遺伝子mRNAとを等量発現、(コントロール):mRNAを添加せずに合成。
【図2】MEK1構成的活性型変異体遺伝子を含むライブラリをERK2と共発現させた場合のERK2タンパク質の酵素活性を示す図。
横軸にERK2の相対活性を示す。ERK2とMEK1−CAを共発現させた場合(MEK1−CA)のERK2の活性値を100とし、ERK2とライブラリを共発現させた場合(ライブラリ)、ERK2単独で発現させた場合(コントロール)の相対値を示す。
Claims (11)
- 無細胞タンパク質合成を用いて一種以上のレポータータンパク質を取得し、該レポータータンパク質を用いて候補タンパク質とのタンパク質間相互作用を検出することを特徴とするタンパク質間相互作用の検出方法。
- 一種以上のレポータータンパク質と該レポータータンパク質と相互作用の予想される一種以上の候補タンパク質を無細胞タンパク質合成により同時または別個に合成、反応させ、該レポータータンパク質の状態の変化を測定することにより、該レポータータンパク質と相互作用する候補タンパク質をスクリーニングする方法。
- レポータータンパク質が酵素またはレセプターであることを特徴とする請求項2に記載の方法。
- レポータータンパク質がシグナル伝達に関与するタンパク質であることを特徴とする請求項2または3に記載の方法。
- 無細胞タンパク質合成が、コムギ胚芽抽出液、大腸菌抽出液および、網状赤血球抽出液の少なくとも1つを用いることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の方法。
- 活性型もしくは不活性型のタンパク質と、該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法にて同時または別個に合成、反応させ、不活性化もしくは活性化された該タンパク質を取得する方法。
- 活性型もしくは不活性型のタンパク質と相互作用するタンパク質が変異導入により活性化されたタンパク質であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
- 無細胞タンパク質合成を用いて合成されたタンパク質間相互作用検出用タンパク質。
- 活性型もしくは不活性型のタンパク質と、該タンパク質と相互作用するタンパク質を無細胞タンパク質合成方法にて同時または別個に合成、反応させて得られたことを特徴とする活性化または不活性化されたタンパク質。
- 合成されたタンパク質がシグナル伝達系タンパク質であることを特徴とする請求項9に記載のタンパク質。
- シグナル伝達系タンパク質が、プロテインキナーゼ、プロテインホスファターゼ、レセプターおよび、転写因子であることを特徴とする請求項10に記載のタンパク質。
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JP2002256956A JP2004093459A (ja) | 2002-09-02 | 2002-09-02 | タンパク質相互作用検出方法およびタンパク質のスクリーニング方法ならびにタンパク質間相互作用検出用タンパク質、活性の変化したタンパク質 |
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JP2012511330A (ja) * | 2008-12-10 | 2012-05-24 | デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド | Mek阻害剤に対する耐性を付与するmek突然変異 |
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2002
- 2002-09-02 JP JP2002256956A patent/JP2004093459A/ja active Pending
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JP2012511330A (ja) * | 2008-12-10 | 2012-05-24 | デイナ ファーバー キャンサー インスティチュート,インコーポレイテッド | Mek阻害剤に対する耐性を付与するmek突然変異 |
US9084781B2 (en) | 2008-12-10 | 2015-07-21 | Novartis Ag | MEK mutations conferring resistance to MEK inhibitors |
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