JP2004092931A - 熱交換器 - Google Patents
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Abstract
【課題】大型化を伴わずに放熱性を向上させること。
【解決手段】ラジエータは、冷却水を流す金属製のチューブ4と、そのチューブ4に一体的に設けられた多数の金属製のフィン5とを備え、チューブ4を流れる冷却水の熱をチューブ4及び多数のフィン5を通じて空気中に放散させるようになっている。チューブ4及び多数のフィン5の外面には、ミクロ的に多孔質な被膜8が設けられる。チューブ4及び多数のフィン5の外面の表面積がミクロ的に多孔質な被膜8により拡大される。従って、チューブ4を流れる冷却水の熱は、チューブ4や各フィンへ5伝わり、その外面で被膜8を介して空気中へ効率よく放散される。
【選択図】 図2
【解決手段】ラジエータは、冷却水を流す金属製のチューブ4と、そのチューブ4に一体的に設けられた多数の金属製のフィン5とを備え、チューブ4を流れる冷却水の熱をチューブ4及び多数のフィン5を通じて空気中に放散させるようになっている。チューブ4及び多数のフィン5の外面には、ミクロ的に多孔質な被膜8が設けられる。チューブ4及び多数のフィン5の外面の表面積がミクロ的に多孔質な被膜8により拡大される。従って、チューブ4を流れる冷却水の熱は、チューブ4や各フィンへ5伝わり、その外面で被膜8を介して空気中へ効率よく放散される。
【選択図】 図2
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、車両等に搭載され、冷却水やオイル等の流体の熱交換のために使用される熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、車両においては、各種機器を流れる流体の熱交換のために熱交換器が使用されている。例えば、車両用エンジンの水冷式冷却装置では、熱交換器としてラジエータが設けられる。このラジエータは、エンジンのウォータジャケットを循環する冷却水の熱を、空気中へ放散させる。一方、トランスミッションの油圧装置では、熱交換器としてオイルクーラが設けられる。このオイルクーラは、油圧装置で使用されて高温となったオイルの熱を、空気中へ放散させる。
【0003】
ここで、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器は、冷却水やオイルを流すチューブと、そのチューブに一体的に設けられた多数のフィンとを備える。チューブを流れる流体の熱は、チューブとフィンの外面から空気中へ放散される。従って、熱交換器の放熱性を高めるには、熱交換器を大型化するか、フィンの数を増やすのが一般的な方策であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように熱交換器を大型化させたのでは、車両への搭載性が悪くなり、コストアップにもつながることになった。一方、フィンの数を増やすことも、熱交換器を大型化させることになり、コストアップにつながることになった。又、フィンの数が増えると、コアの面積が拡大して空気抵抗が増大することになった。熱交換器が車両に搭載される場合、それらは走行風を受けやすいフロントグリルに設置されることから、空気抵抗の増大は車両の走行性能に影響を与えるおそれがあった。
【0005】
又、熱交換器の表面が砂埃や泥水の付着により汚れると、高い放熱性を長く持続させることができなくなる。そこで、熱交換器の高い放熱性を長く持続させるために、熱交換器の耐汚損性を高める必要があった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、大型化を伴わずに放熱性を向上させることを可能にした熱交換器を提供することにある。この発明の第2の目的は、第1の目的に加え、耐汚損性に優れ、高い放熱性を長く持続させることを可能にした熱交換器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、流体を流す金属製のチューブと、そのチューブに一体的に設けられた多数の金属製のフィンとを備え、チューブを流れる流体の熱をチューブ及び多数のフィンを通じて空気中に放散させる熱交換器であって、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方にミクロ的に多孔質な被膜を設けたことを趣旨とする。ここで、チューブの外面とは、チューブの外表面の全部を意味する。又、多数のフィンの外面とは、各フィンの外表面の全部を意味する。
【0008】
上記発明の構成によれば、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方の表面積がミクロ的に多孔質な被膜により拡大される。従って、チューブを流れる流体の熱は、チューブや各フィンへ伝わり、その外面で被膜を介して空気中へ効率よく放散される。
【0009】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、被膜の表面に高撥液性を有する薄膜を設けたことを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方に設けられた被膜の表面が高撥液性を有する薄膜により低表面エネルギー化して、汚れが付き難くなる。
【0011】
上記第2の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、薄膜は、フルオロアルキルシラン系の物質を含むことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、薄膜がフルオロアルキルシラン系の物質を含むものに特定されることにより、薄膜の低表面エネルギー化が促進される。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、薄膜は、0.1nm〜10nmの厚さを有することを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、薄膜が相対的に極めて薄いものとなる。
【0015】
上記第1の目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明において、被膜は、高輻射率物質より構成されることを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明の作用に加え、被膜が高輻射率物質より構成されることから、被膜の熱伝達が促進される。
【0017】
上記第1の目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質は、少なくとも二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質を含むことを趣旨とする。
【0018】
上記発明の構成によれば、請求項5に記載の発明の作用に加え、高輻射率物質を二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質に特定することにより、被膜の熱伝達が促進される。
【0019】
上記第1の目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質は、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものであることを趣旨とする。
【0020】
上記発明の構成によれば、請求項5に記載の発明の作用に加え、高輻射率物質を酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものに特定することにより、被膜の熱伝達が促進される。
【0021】
上記第1の目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一つに記載の発明において、被膜は、数μm〜数十μmの厚さを有することを趣旨とする。
【0022】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至7の何れか一つに記載の発明の作用に加え、被膜が比較的薄いものとなり、熱応力による剥離が起こり難く、複雑な形状の部位にも均一に形成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の熱交換器をラジエータに具体化した第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に、車両用エンジンの冷却装置に使用されるラジエータ1の縦断面を簡略化して示す。ラジエータ1は、アッパタンク2と、ロアタンク3と、アッパタンク2からロアタンク3へ流体である冷却水を流す複数のチューブ4と、各チューブ4と一体的に設けられた多数のプレートタイプのフィン5とを備える。アッパタンク2には、インレットパイプ6が設けられ、ロアタンク3には、アウトレットパイプ7が設けられる。エンジンのウォータジャケットを巡回して高温となった冷却水は、インレットパイプ6からアッパタンク2に入り、各チューブ4を通じてロアタンク3へ流れ、アウトレットパイプ7より出て再びエンジンへ戻される。各チューブ4を冷却水が流れるとき、その冷却水の熱がチューブ4及び多数のフィン5を通じて空気中に放散される。この実施の形態で、各チューブ4及び多数のフィン5を含む各部材2〜7が、それぞれアルミニウム合金より形成される。
【0025】
図2は、図1の楕円Aの部分を拡大して示す断面図である。図2に示すように、ラジエータ1は、各チューブ4の外面及び各フィン5の外面に、ミクロ的に多孔質な被膜8が形成される。ここで、各チューブ4の外面とは、各チューブ4の外表面の全部を意味する。又、各フィン5の外面とは、各フィン5の外表面の全部を意味する。
【0026】
この実施の形態で、被膜8は、「数μm〜数十μm」の厚さを有し、一般的なミリオーダのコーティング層と比べ大幅に薄くなっている。具体的に、被膜8の厚さとして、「5〜30μm」が有効である。
【0027】
この実施の形態で、被膜8は、高輻射率物質より構成される。高輻射率物質とは、吸熱効率及び放熱効率の高い物質である。この高輻射率物質として、少なくとも二酸化珪素(Si02)系又は酸化アルミニウム(Al2O3)系の物質を含む物質が使用される。この実施の形態では、高輻射率物質として、二酸化珪素のみが使用される。この場合の最適膜厚は「10〜20μm」であり、被膜8の輻射率に相当する赤外線放射率は「0.87」である。
【0028】
この実施の形態で、被膜8を形成するために「電解析出法」が採用される。この電解析出法では、先ず、アルカリ洗浄剤の中で各チューブ4及び各フィン5のアッセンブリの外面の脱脂が行われる。次に、常温の水中でアッセンブリの洗浄が行われる。その後、高輻射率物質を主成分とする電解溶液中にアッセンブリが浸され、そのアッセンブリが陽極として通電される。これにより、目的とする各チューブ4及び各フィン5の外面にセラミックスの析出が起こり、被膜8が形成される。
【0029】
図3に、図2の破線円Bの部分を拡大して示す。電解析出法を実施したときの初期段階には、図3に示すように、各チューブ4及び各フィン5である基材10上に、いわゆるアルマイト層11が形成される。その後、通電を継続すると、セラミックスとの混在層である共析被膜層12が形成される。続いて、共析被膜層12が成長することにより、ミクロ的に多孔質なセラミック層13が形成される。このようにして3層構造の被膜8が形成される。図3に示すように、各層11〜13の間の境界は明確ではない。
【0030】
被膜8の形成は、通常、常温の水中で行われる。従って、被膜8を形成するために高温で焼成することがないので、各チューブ4と各フィン5のアッセンブリが熱により変形することがなく、寸法精度が損なわれることがない。このことが、アルミニウム合金製のアッセンブリに対する被膜8の形成を容易にしている。又、電解析出法は、均一析出性にも優れているので、複雑に入り組んだ各チューブ4と各フィン5との間への被膜8の処理を容易にしている。
【0031】
図4に、本実施の形態の被膜の表面を拡大した参考写真を示す。この写真から明らかなように、被膜の表面は多孔質であるが、基材に対して非直線的であり、ピンホール状ではなく、孔形状は、概ね不規則であることが分かる。孔径は被膜の材質により異なるが、一般には、二酸化珪素系の物質で大きく、酸化アルミニウム系の物質で、サブミクロンオーダと小さく緻密になる傾向がある。
【0032】
二酸化珪素系の被膜では、良好な耐食性が得られる。被膜が多孔質でありながら耐食性が良いのは、図3に示すように、基材10とセラミック層13との界面に生成している共析被膜層12が緻密であることによるものと考えられる。又、図3に示すように、被膜8は、基材10の表面に対して、アルミニウムの陽極酸化被膜、即ち、アルマイト層11を介して傾斜的に結合していることから、基材10からの剥離が生じることはなく、基材10に対する密着性が良好である。加熱と冷却を繰り返すヒートサイクルによっても剥離が生じることはない。被膜8の耐熱性は良好であり、本実施の形態のように基材10がアルミニウム製の場合には、基材10よりも高い耐熱性を示すことになる。
【0033】
以上説明したこの実施の形態のラジエータ1によれば、各チューブ4及び各フィン5の外面にミクロ的に多孔質な被膜8が設けられることから、各チューブ4及び各フィン5の外面の表面積が、それぞれ被膜8により拡大される。従って、各チューブ4を流れる冷却水の熱は、各チューブ4や各フィン5へ伝わり、それらの外面から被膜8を介して空気中へ効率よく放散される。この結果、各チューブ4を流れる冷却水を効率良く冷却することができる。このため、ラジエータ1の放熱性を高めるために、ラジエータ1を大型化したり、フィン5の数を増やしたりする必要がなく、大型化を伴わずにラジエータ1の放熱性を向上させることができる。
【0034】
ここで、高温となった冷却水によるラジエータ1の加熱を想定した加熱実験について説明する。この実験では、図5に示すように、アルミニウム製のプレート21の上面21aに上記したと同様の被膜8を形成してテストピース22とした。又、アルミニウム製のプレートのみの対照ピース(図示略)を準備した。そして、600Wの電気ヒータを熱源23として、テストピース22を、その下面21bから加熱し、その下面21bの温度変化を計測した。対照ピースについても同様の計測を行った。
【0035】
図6に、テストピース22の計測結果を、図7に、対照ピースの計測結果をそれぞれグラフに示す。図6,7から明らかなように、加熱開始後2000秒の到達温度は、テストピース22では「315℃」であり、対照ピースの「370℃」より「55℃」低く、テストピース22の方が暖まり難いことが分かる。又、図6,7から明らかなように、最高温度は、テストピース22で「360℃」であり、対照ピースの「465℃」より「105℃」低く、テストピース22の方で温度上昇が大幅に抑えられていることが分かる。この実験結果から、本実施の形態のラジエータ1についても、冷却水が持つ高熱を、被膜8を設けた各チューブ4及び各フィン5の外面から有効に放散できることが推測できる。
【0036】
又、この実施の形態のラジエータ1では、各チューブ4及び各フィン5の外面に対し、電解析出法により薄い被膜8を形成するだけなので、比較的簡易な構成によりラジエータ1の放熱性を向上させることができ、被膜8について高い信頼性を確保することができる。
【0037】
この実施の形態では、被膜8が「数μm〜数十μm」の厚さであることから、被膜8が比較的薄いものとなり、熱応力による剥離が起こり難く、複雑な形状の部位にも均一に形成される。このことから、被膜8の耐久性を向上させることができ、各チューブ4と各フィン5との間の入り組んだ部位にも高品質な被膜8を容易に設けることができる。
【0038】
この実施の形態では、被膜8が高輻射率物質、特に、二酸化珪素により構成されることから、被膜8の熱伝達が促進される。このため、各チューブ4及び各フィン5では、冷却水から伝わる熱が、被膜8により効率良く放散されることになる。この意味でも、ラジエータ1としての放熱性を向上させることができ、各チューブ4を流れる冷却水を効率良く冷却することができる。
【0039】
この実施の形態では、各チューブ4及び各フィン5の外面に対する被膜8の密着性が良好であることから、化学的にも安定となり、酸性度の高い凝縮水に対しても安定した耐食性を得ることができ、アルミニウム合金製のラジエータ1に腐食による欠損を生じ難くすることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の熱交換器をラジエータに具体化した第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
尚、本実施の形態を含む以下の各実施の形態で、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0042】
図8には、図2に準ずる断面図を示す。このラジエータにおいて、各チューブ4及び各フィン5の外面に設けられた被膜8の表面には、高撥液性を有する薄膜9が設けられる。この実施の形態で、被膜8の厚さ、組成、輻射率及び被膜8の形成方法等について、第1の実施の形態のそれと同じである。
【0043】
一方、この実施の形態で、薄膜9は「0.1nm〜10nm」の厚さを有し、被膜8の「数μm〜数十μm」のオーダに比べて極めて薄いものとなっている。
【0044】
この実施の形態で、薄膜9は、フルオロアルキルシラン(FAS)系の物質を含む物質より構成される。FAS系物質を含む薄膜9は、その表面が超低表面エネルギー化しており、撥水性、撥油性、防汚性及び離型性に優れる。
【0045】
FAS系物質としては、例えば、「CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3」が使用されるが、基材である各チューブ4及び各フィン5の金属表面と強く結合するものであればよい。具体的には、下記に示す化学式1において、アルコキシド又は塩素等の官能基(化学式1の「X」)を有するFASが特に好適である。フルオロアルキシル鎖が短いと、基材に十分な撥液性能が付与できないことから、化学式1において「n≧3」となるのが望ましい。FASの部分加水分解物や、その物質の混合物であってもよい。
CF3(CF2)n(CH2)2SiX3 ・・・(化学式1)
ここで、「n」は「3〜15」の整数で、「X」はアルコキシド又は塩素等の官能基である。
【0046】
この実施の形態で、薄膜9を形成するために以下に説明する「蒸着法」が採用される。
先ず、蒸着の前工程として、洗浄と乾燥が行われる。洗浄工程では、予め被膜8を形成した各チューブ4及び各フィン5のアッセンブリがワークとして浴槽に浸され、その表面がアルカリ洗浄される。乾燥工程では、洗浄後のワークがエアブロー乾燥される。
【0047】
次に、蒸着の第1工程では、ワークが処理容器の中に取り付けられる。蒸着の第2工程では、処理容器が加熱され、同容器の中にFAS系物質の蒸気がキャリアガスと共に流される。このとき、ワークの表面にFAS系物質を含む物質の蒸気が接触し、凝結して有機−無機複合の薄膜9が形成される。この第2工程の進行に伴い、薄膜9の厚みが増す。処理時間が短ければ、分子レベルの極めて薄い薄膜9が形成される。薄膜9の厚みは処理時間により調整することができる。温度、時間、FAS系物質、水蒸気の濃度を管理することにより、所望の厚さ(0.1〜10nm)の薄膜9を形成することができる。その後、蒸着の第3工程で、処理容器に対する加熱と、蒸気とキャリアガスの供給を停止させる。そして、処理容器からワークを取り出すことにより一連の工程が終了する。
【0048】
このようにして各チューブ4及び各フィン5の外面に形成された被膜8の表面に、高撥液性を含む薄膜9が形成される。
【0049】
図9には、図8の破線円Bの部分を拡大して示す。薄膜9は、図9に破線で示すように、ミクロ的に多孔質なセラミック層13の凸凹表面に沿って均一に形成される。
【0050】
図10に、本実施の形態の薄膜の表面を拡大した参考写真を示す。この写真から明らかなように、薄膜の表面は、その下に存在する被膜の凸凹表面の形態と大差はない。即ち、被膜の表面は多孔質であるが、基材に対して非直線的であり、ピンホール状ではなく、孔形状は、概ね不規則となっている。孔径は被膜の材質により異なるが、一般には、二酸化珪素系の物質で大きく、酸化アルミニウム系の物質で、サブミクロンオーダと小さく緻密になる傾向がある。そして、この写真から分かるように、薄膜の表面も被膜と同様に多孔質となり、孔形状は、基材に対して非直線的で、ピンホール状ではなく、概ね不規則となり、被膜の表面の特徴をそのまま残していることが分かる。
【0051】
この薄膜の表面は、融雪塩等に対する耐蝕性に優れ、超低表面エネルギー化しており、撥水性、撥油性、防汚性及び離型性等に優れる。離型性に優れることから、汚損物質の付着が抑制される。又、撥水性及び撥油性に優れることから、薄膜の表面に接触した液体は液滴化する。図11に、薄膜の表面に置かれた水滴を拡大した参考写真を示す。この写真から明らかなように、薄膜の表面に落とされた水は、ほぼ球体をなす複数の水滴に分離し、撥水性が極めて高いことが分かる。このような撥水性の高さから、離型性の高さが推測できる。
【0052】
以上説明したこの実施の形態のラジエータによれば、各チューブ4及び各フィン5の外面に被膜8を設けただけの第1の実施の形態のラジエータ1と基本的に同じ作用及び効果を得ることができる。
【0053】
この実施の形態のラジエータで、被膜8による作用及び効果が、各チューブ4や各フィン5に被膜8を設けただけの場合のそれと大差がなく、被膜8の特徴が薄膜9により損なわれていないのは、以下の理由によるものと考えられる。
【0054】
即ち、薄膜9の厚さが「0.1nm〜10nm」と極めて薄く、被膜8のミクロ的に多孔質な凸凹表面を埋めることなくその凹凸に沿って均一に形成されることで、被膜8の多孔質な凸凹表面の特質が損なわれないからである。つまり、被膜8の凸凹表面の特質をそのまま保つことができるのである。仮に、薄膜9がチューブ4やフィン5の外面に直接形成されたとしても、同様にその表面の特質を保つことができることになる。
【0055】
この実施の形態では、チューブ4やフィン5の被膜8の表面に高撥液性を含む薄膜9が設けられることから、被膜8の表面が高撥液性を有する薄膜9により超低表面エネルギー化して、汚れが付き難くなる。特に、この実施の形態では、ラジエータが車両のフロントグリル等の汚れた雰囲気中に設置されることから、そのような雰囲気中でも、チューブ4やフィン5の外面に砂埃や泥水等の汚損物質が付き難くなる。このため、放熱機能を発揮するチューブ4やフィン5の耐汚損性を高めることができる。つまり、ラジエータとして、耐汚損性に優れ、高い放熱性を長く持続させることができる。
【0056】
ここで、チューブ4やフィン5の汚損を想定した耐汚損実験について説明する。この実験では、アルミニウム合金製の供試板の表面に本実施の形態の被膜及び薄膜9形成してテストピースとして準備した。又、被膜と薄膜の代わりに表面をテフロン(登録商標)加工したアルミニウム合金製の供試板を第1対照ピースとして準備した。更に、被膜も薄膜も持たないアルミニウム合金製の供試板を第2対照ピースとして準備した。そして、これらテストピース、第1対照ピース及び第2対照ピースの表面を、JIS8種粉体を含む泥水により汚損・乾燥させ、それら表面上の汚損面積を測定して比較した。更に、汚損・乾燥後の表面を洗浄した後、再びその表面上の汚損面積を測定して比較した。
【0057】
図12に、上記実験結果の表面の描写絵を、テストピース、第1対照ピース及び第2対照ピースの間で比較して上下2段の表に示す。上段の描写絵は、「汚水乾燥後」の表面汚損状態を示すものであり、左から順に「未処理」(第2対照ピース)、「テフロン(登録商標)」(第1対照ピース)及び「本実施の形態」(テストピース)の違いを示す。下段の描写絵は、「洗浄後」の汚損状態を示すものであり、配列は上段のそれと同じである。又、図13には、泥水塗布時の汚損面積をそれぞれ100%としたときの「泥水乾燥後」と「洗浄後」の汚損面積の占有率の違いをグラフに示す。
【0058】
図12,13から明らかなように、「泥水乾燥後」の汚損面積の違いは、「未処理」のもので「98%程度」と最も大きく、「テフロン(登録商標)」と「本実施の形態」のものでは、ともに「40%程度」と少なくなっている。このことから、「本実施の形態」の被膜と薄膜を設けたテストピースでは、「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースと同程度に耐汚損性に優れていることが分かる。
【0059】
一方、図12,13から明らかなように、「未処理」の第2対照ピースでは、「泥水乾燥後」と「洗浄後」との間で、汚損の面積占有率で「16%前後」だけ低下した。「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースでは、「泥水乾燥後」と「洗浄後」との間で、「25%前後」ほど低下した。「本実施の形態」のテストピースでは、「泥水乾燥後」と「洗浄後」との間で、「40%前後」に低下した。このことから、「本実施の形態」の被膜と薄膜を設けたテストピースでは、「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースと同程度に汚損の洗浄性能にも優れていることが分かる。このことは、汚損を雨水等で容易に洗い流すことができることを意味する。
【0060】
このように「本実施の形態」のテストピースでは、「未処理」の第2対照ピースのものに比べて耐汚損性能が高いことが分かる。又、「本実施の形態」のテストピースでは、「洗浄後」に汚損が殆ど無くなることが分かる。ここで、「本実施の形態」のテストピースの実験結果は、「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースのそれと大差がないと言える。しかし、「テフロン(登録商標)」によるコーティング加工では、一般に基材の熱伝達率が低下することから、「本実施の形態」の被膜と薄膜を設けた場合のような良好な放熱特性を得ることが困難である。このようなことから、本実施の形態のチューブ4やフィン5を含むラジエータでは、それらの高い放熱性が、汚損物質により損なわれることが少なく、高い放熱性をメンテナンスフリーで長期間持続できることが分かる。
【0061】
この実施の形態では、薄膜9が、FAS系物質を含む物質より構成されることから、薄膜9の超低表面エネルギー化が促進される。このことから、薄膜9の撥水性、撥油性、防汚性及び離型性を有効に発揮させることができる。このため、各チューブ4や各フィン5の耐汚損性をより一層高めることができる。
【0062】
この実施の形態では、薄膜9が、「0.1nm〜10nm」の厚さを有することから、薄膜9が極めて薄いものとなり、被膜8のミクロ的に多孔質な凸凹表面の特質が損なわない。このため、薄膜9の下の被膜8が有する効果を有効に発揮させることができる。
【0063】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の熱交換器をラジエータに具体化した第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0064】
この実施の形態では、被膜8の組成の点で、第1の実施の形態のラジエータ1と構成が異なる。即ち、この実施の形態では、被膜8に使用される高輻射率物質として、酸化アルミニウム(Al2O3)又は酸化マグネシウム(MgO)に四硼化珪素(SiB4)又はグラファイトの何れかを加えたものを使用している。即ち、
酸化アルミニウムに四硼化珪素を加えたもの、酸化アルミニウムにグラファイトを加えたもの、酸化マグネシウムに四硼化珪素を加えたもの、或いは、酸化マグネシウムにグラファイトを加えたものが使用される。
【0065】
従って、この実施の形態のラジエータでも、各チューブ4及び各フィン5の外面に被膜8を設けたので、第1の実施の形態のラジエータ1と基本的に同じ作用及び効果を得ることができる。
【0066】
ここで、被膜8として、例えば、酸化アルミニウムに四硼化珪素を加えたものを、高輻射率物質として使用した場合の熱的効果のモデル試験について説明する
。
【0067】
この試験は、図14に示すように、「φ40×L400」のパイプ25の中に、ドライヤ26で入りガス温度「500℃」の高温ガスを送り込み、測定点A(出ガス温度)と測定点B(パイプ中央部外面の温度)につき所定時間だけ計測した。図15には、測定点A,Bにおける温度変化をグラフに示す。
【0068】
ここで、パイプ25として、図16に表に示すNo.1,No.2,No.3,No.4の四つのサンプルを準備した。No.1のサンプルは、パイプ25の内面にも外面にも被膜(コーティング)がないものである。No.2のサンプルは、パイプ25の内面に被膜がなく、外面に被膜があるものであり、本実施の形態のラジエータのチューブ4及びフィン5を想定したものである。No.3のサンプルは、パイプ25の内面に被膜があり、外面に被膜がないものである。No.4のサンプルは、パイプ25の内面にも外面にも被膜があるものである。
【0069】
上記No.1〜No.4のサンプルにつき、測定点A,Bにおける最高温度の計測結果を図17,18の表に示す。図17には、パイプはめ込み時(パイプ25にドライヤ26を接続した場合)の計測結果を示す。ここで、「A−B」の欄には、測定点A,Bの間の最高温度の温度差を示す。この表から明らかなように、パイプ25の外面のみに被膜があるNo.2のサンプルで温度差が「113℃」と最も大きく、次いで、内面・外面の両方に被膜があるNo.4のサンプルの「97℃」、内面のみに被膜があるNo.3のサンプルの「82℃」、内面・外面の両方に被膜がないNo.1のサンプルの「70℃」の順に放熱効果が良いことが分かった。この結果から、本実施の形態のラジエータのチューブ4及びフィン5を想定したNo.2のサンプルにつき、パイプ25における放熱効果が最も高いことが分かった。
【0070】
図18には、パイプはめ込みなし時(パイプ25にドライヤ26を未接続の場合)の計測結果を示す。ここでも、「A−B」の欄は、測定点A,Bの間の最高温度の温度差を示す。この表から明らかなように、パイプ25の外面のみに被膜があるNo.2のサンプルで温度差が「63℃」と最も大きく、次いで、内面・外面の両方に被膜があるNo.4のサンプルの「62℃」、内面のみに被膜があるNo.3のサンプルの「52℃」、内面・外面の両方に被膜がないNo.1のサンプルの「45℃」の順に放熱効果が良いことが分かった。この結果から、本実施の形態のラジエータのチューブ4及びフィン5を想定したNo.2のサンプルにつき、パイプ25における放熱効果が最も高いことが分かった。ここで、No.2のサンプルとNo.4のサンプルの間で温度差に大差はないと言える。しかし、No.4のサンプルの場合には、パイプ25の内面にも被膜を形成しなければならず、そのための手間と材料コストを削減できることを考慮すれば、No.2のサンプルの場合の方が優れていると言える。
【0071】
尚、この発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0072】
(1)前記各実施の形態では、各チューブ4と各フィン5の両方の外面に被膜8を設けたり、被膜8及び薄膜9を設けたりしたが、各チューブと各フィンの何れか一方の外面に被膜を設けたり、被膜及び薄膜を設けるようにしてもよい。
【0073】
(2)前記各実施の形態では、本発明の熱交換器をラジエータに具体化したが、流体であるオイルを流す金属製のチューブと、そのチューブに一体的に設けられた多数の金属製のフィンとを備え、チューブを流れるオイルの熱をチューブ及び多数のフィンを通じて空気中に放散させるように構成したオイルクーラに、本発明の熱交換器を具体化してもよい。
【0074】
(3)前記各実施の形態では、本発明の熱交換器を、多数のプレートタイプのフィン5を備えたラジエータに具体化したが、本発明の熱交換器を、図19に示すように、多数のコルゲートタイプのフィン15を備えたラジエータやオイルクーラに具体化してもよい。
【0075】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明の構成によれば、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方にミクロ的に多孔質な被膜を設けたので、その外面の表面積がミクロ的に多孔質な被膜により拡大される。従って、チューブを流れる流体の熱が、チューブや多数のフィンの外面で被膜を介して空位中へ効率よく放散される。このため、大型化を伴わずに熱交換器の放熱性を向上させることができる。
【0076】
請求項2に記載の発明の構成によれば、請求項1に記載の発明において、被膜の表面に高撥液性を有する薄膜を設けたので、被膜の表面が高撥液性を有する薄膜により低表面エネルギー化して、汚れが付き難くなる。このため、請求項1に記載の発明の効果に加え、耐汚損性に優れ、高い放熱性を長く持続させることができる。
【0077】
請求項3に記載の発明の構成によれば、請求項2に記載の発明において、薄膜がフルオロアルキルシラン系の物質を含むものに特定されることにより、その薄膜の低表面エネルギー化が促進される。このため、請求項2に記載の発明の効果に加え、薄膜の撥水性、撥油性、防汚性及び離型性を有効に発揮させることができ、チューブや各フィンの耐汚損性をより一層高めることができる。
【0078】
請求項4に記載の発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明において、薄膜の厚さが0.1nm〜10nmに特定されることにより、薄膜が極めて薄いものとなり、被膜のミクロ的に多孔質な凸凹表面の特質が損なわれない。このため、薄膜の下の被膜が有する効果を有効に発揮させることができる。
【0079】
請求項5に記載の発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明において、被膜を高輻射率物質より構成したので、被膜の熱伝達が促進される。このため、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明に加え、熱交換器としての放熱性を向上させることができる。
【0080】
請求項6に記載の発明の構成によれば、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質を、少なくとも二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質を含むものとしたので、被膜の熱伝達が促進される。このため、請求項5に記載の発明に加え、熱交換器としての放熱性をより向上させることができる。
【0081】
請求項7に記載の発明の構成によれば、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質を、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものとしたので、被膜の熱伝達が促進される。このため、請求項5に記載の発明に加え、熱交換器としての放熱性をより向上させることができる。
【0082】
請求項8に記載の発明の構成によれば、請求項1乃至7の何れか一つに記載の発明において、被膜を、数μm〜数十μmの厚さを有するものとしたので、被膜が比較的薄いものとなり、熱応力による剥離が起こり難く、複雑な形状の部位にも均一に形成される。このため、被膜の耐久性を向上させることができ、チューブと各フィンとの間の入り組んだ部位にも高品質な被膜を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係り、ラジエータを簡略化して示す縦断面図である。
【図2】図1の楕円Aの部分を拡大して示す断面図である。
【図3】図2の破線円Bの部分を拡大して示す断面図である。
【図4】被膜の表面を拡大して示す参考写真である。
【図5】加熱実験を示す概念図である。
【図6】テストピースの計測結果を示すグラフである。
【図7】対照ピースの計測結果を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態に係り、図2に準ずる断面図である。
【図9】図8の破線円Bの部分を拡大して示す断面図である。
【図10】薄膜の表面を拡大して示す参考写真である。
【図11】薄膜の表面に置かれた水滴を拡大して示す参考写真である。
【図12】実験結果の表面を示す描写絵である。
【図13】汚損面積の占有率の違いを示すグラフである。
【図14】第3の実施の形態に係り、熱的効果のモデル試験を示す概念図である。
【図15】測定点A,Bにおける温度変化を示すグラフである。
【図16】各種サンプルの違いを示す表である。
【図17】計測結果を示す表である。
【図18】計測結果を示す表である。
【図19】別の実施の形態に係り、図2に準ずる断面図である。
【符号の説明】
1 ラジエータ(熱交換器)
4 チューブ
5 フィン
8 被膜
9 薄膜
15 フィン
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば、車両等に搭載され、冷却水やオイル等の流体の熱交換のために使用される熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、例えば、車両においては、各種機器を流れる流体の熱交換のために熱交換器が使用されている。例えば、車両用エンジンの水冷式冷却装置では、熱交換器としてラジエータが設けられる。このラジエータは、エンジンのウォータジャケットを循環する冷却水の熱を、空気中へ放散させる。一方、トランスミッションの油圧装置では、熱交換器としてオイルクーラが設けられる。このオイルクーラは、油圧装置で使用されて高温となったオイルの熱を、空気中へ放散させる。
【0003】
ここで、ラジエータやオイルクーラ等の熱交換器は、冷却水やオイルを流すチューブと、そのチューブに一体的に設けられた多数のフィンとを備える。チューブを流れる流体の熱は、チューブとフィンの外面から空気中へ放散される。従って、熱交換器の放熱性を高めるには、熱交換器を大型化するか、フィンの数を増やすのが一般的な方策であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記のように熱交換器を大型化させたのでは、車両への搭載性が悪くなり、コストアップにもつながることになった。一方、フィンの数を増やすことも、熱交換器を大型化させることになり、コストアップにつながることになった。又、フィンの数が増えると、コアの面積が拡大して空気抵抗が増大することになった。熱交換器が車両に搭載される場合、それらは走行風を受けやすいフロントグリルに設置されることから、空気抵抗の増大は車両の走行性能に影響を与えるおそれがあった。
【0005】
又、熱交換器の表面が砂埃や泥水の付着により汚れると、高い放熱性を長く持続させることができなくなる。そこで、熱交換器の高い放熱性を長く持続させるために、熱交換器の耐汚損性を高める必要があった。
【0006】
この発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その第1の目的は、大型化を伴わずに放熱性を向上させることを可能にした熱交換器を提供することにある。この発明の第2の目的は、第1の目的に加え、耐汚損性に優れ、高い放熱性を長く持続させることを可能にした熱交換器を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、流体を流す金属製のチューブと、そのチューブに一体的に設けられた多数の金属製のフィンとを備え、チューブを流れる流体の熱をチューブ及び多数のフィンを通じて空気中に放散させる熱交換器であって、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方にミクロ的に多孔質な被膜を設けたことを趣旨とする。ここで、チューブの外面とは、チューブの外表面の全部を意味する。又、多数のフィンの外面とは、各フィンの外表面の全部を意味する。
【0008】
上記発明の構成によれば、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方の表面積がミクロ的に多孔質な被膜により拡大される。従って、チューブを流れる流体の熱は、チューブや各フィンへ伝わり、その外面で被膜を介して空気中へ効率よく放散される。
【0009】
上記第2の目的を達成するために、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、被膜の表面に高撥液性を有する薄膜を設けたことを趣旨とする。
【0010】
上記発明の構成によれば、請求項1に記載の発明の作用に加え、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方に設けられた被膜の表面が高撥液性を有する薄膜により低表面エネルギー化して、汚れが付き難くなる。
【0011】
上記第2の目的を達成するために、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、薄膜は、フルオロアルキルシラン系の物質を含むことを趣旨とする。
【0012】
上記発明の構成によれば、請求項2に記載の発明の作用に加え、薄膜がフルオロアルキルシラン系の物質を含むものに特定されることにより、薄膜の低表面エネルギー化が促進される。
【0013】
上記第2の目的を達成するために、請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の発明において、薄膜は、0.1nm〜10nmの厚さを有することを趣旨とする。
【0014】
上記発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明の作用に加え、薄膜が相対的に極めて薄いものとなる。
【0015】
上記第1の目的を達成するために、請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明において、被膜は、高輻射率物質より構成されることを趣旨とする。
【0016】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明の作用に加え、被膜が高輻射率物質より構成されることから、被膜の熱伝達が促進される。
【0017】
上記第1の目的を達成するために、請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質は、少なくとも二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質を含むことを趣旨とする。
【0018】
上記発明の構成によれば、請求項5に記載の発明の作用に加え、高輻射率物質を二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質に特定することにより、被膜の熱伝達が促進される。
【0019】
上記第1の目的を達成するために、請求項7に記載の発明は、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質は、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものであることを趣旨とする。
【0020】
上記発明の構成によれば、請求項5に記載の発明の作用に加え、高輻射率物質を酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものに特定することにより、被膜の熱伝達が促進される。
【0021】
上記第1の目的を達成するために、請求項8に記載の発明は、請求項1乃至7の何れか一つに記載の発明において、被膜は、数μm〜数十μmの厚さを有することを趣旨とする。
【0022】
上記発明の構成によれば、請求項1乃至7の何れか一つに記載の発明の作用に加え、被膜が比較的薄いものとなり、熱応力による剥離が起こり難く、複雑な形状の部位にも均一に形成される。
【0023】
【発明の実施の形態】
[第1の実施の形態]
以下、本発明の熱交換器をラジエータに具体化した第1の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1に、車両用エンジンの冷却装置に使用されるラジエータ1の縦断面を簡略化して示す。ラジエータ1は、アッパタンク2と、ロアタンク3と、アッパタンク2からロアタンク3へ流体である冷却水を流す複数のチューブ4と、各チューブ4と一体的に設けられた多数のプレートタイプのフィン5とを備える。アッパタンク2には、インレットパイプ6が設けられ、ロアタンク3には、アウトレットパイプ7が設けられる。エンジンのウォータジャケットを巡回して高温となった冷却水は、インレットパイプ6からアッパタンク2に入り、各チューブ4を通じてロアタンク3へ流れ、アウトレットパイプ7より出て再びエンジンへ戻される。各チューブ4を冷却水が流れるとき、その冷却水の熱がチューブ4及び多数のフィン5を通じて空気中に放散される。この実施の形態で、各チューブ4及び多数のフィン5を含む各部材2〜7が、それぞれアルミニウム合金より形成される。
【0025】
図2は、図1の楕円Aの部分を拡大して示す断面図である。図2に示すように、ラジエータ1は、各チューブ4の外面及び各フィン5の外面に、ミクロ的に多孔質な被膜8が形成される。ここで、各チューブ4の外面とは、各チューブ4の外表面の全部を意味する。又、各フィン5の外面とは、各フィン5の外表面の全部を意味する。
【0026】
この実施の形態で、被膜8は、「数μm〜数十μm」の厚さを有し、一般的なミリオーダのコーティング層と比べ大幅に薄くなっている。具体的に、被膜8の厚さとして、「5〜30μm」が有効である。
【0027】
この実施の形態で、被膜8は、高輻射率物質より構成される。高輻射率物質とは、吸熱効率及び放熱効率の高い物質である。この高輻射率物質として、少なくとも二酸化珪素(Si02)系又は酸化アルミニウム(Al2O3)系の物質を含む物質が使用される。この実施の形態では、高輻射率物質として、二酸化珪素のみが使用される。この場合の最適膜厚は「10〜20μm」であり、被膜8の輻射率に相当する赤外線放射率は「0.87」である。
【0028】
この実施の形態で、被膜8を形成するために「電解析出法」が採用される。この電解析出法では、先ず、アルカリ洗浄剤の中で各チューブ4及び各フィン5のアッセンブリの外面の脱脂が行われる。次に、常温の水中でアッセンブリの洗浄が行われる。その後、高輻射率物質を主成分とする電解溶液中にアッセンブリが浸され、そのアッセンブリが陽極として通電される。これにより、目的とする各チューブ4及び各フィン5の外面にセラミックスの析出が起こり、被膜8が形成される。
【0029】
図3に、図2の破線円Bの部分を拡大して示す。電解析出法を実施したときの初期段階には、図3に示すように、各チューブ4及び各フィン5である基材10上に、いわゆるアルマイト層11が形成される。その後、通電を継続すると、セラミックスとの混在層である共析被膜層12が形成される。続いて、共析被膜層12が成長することにより、ミクロ的に多孔質なセラミック層13が形成される。このようにして3層構造の被膜8が形成される。図3に示すように、各層11〜13の間の境界は明確ではない。
【0030】
被膜8の形成は、通常、常温の水中で行われる。従って、被膜8を形成するために高温で焼成することがないので、各チューブ4と各フィン5のアッセンブリが熱により変形することがなく、寸法精度が損なわれることがない。このことが、アルミニウム合金製のアッセンブリに対する被膜8の形成を容易にしている。又、電解析出法は、均一析出性にも優れているので、複雑に入り組んだ各チューブ4と各フィン5との間への被膜8の処理を容易にしている。
【0031】
図4に、本実施の形態の被膜の表面を拡大した参考写真を示す。この写真から明らかなように、被膜の表面は多孔質であるが、基材に対して非直線的であり、ピンホール状ではなく、孔形状は、概ね不規則であることが分かる。孔径は被膜の材質により異なるが、一般には、二酸化珪素系の物質で大きく、酸化アルミニウム系の物質で、サブミクロンオーダと小さく緻密になる傾向がある。
【0032】
二酸化珪素系の被膜では、良好な耐食性が得られる。被膜が多孔質でありながら耐食性が良いのは、図3に示すように、基材10とセラミック層13との界面に生成している共析被膜層12が緻密であることによるものと考えられる。又、図3に示すように、被膜8は、基材10の表面に対して、アルミニウムの陽極酸化被膜、即ち、アルマイト層11を介して傾斜的に結合していることから、基材10からの剥離が生じることはなく、基材10に対する密着性が良好である。加熱と冷却を繰り返すヒートサイクルによっても剥離が生じることはない。被膜8の耐熱性は良好であり、本実施の形態のように基材10がアルミニウム製の場合には、基材10よりも高い耐熱性を示すことになる。
【0033】
以上説明したこの実施の形態のラジエータ1によれば、各チューブ4及び各フィン5の外面にミクロ的に多孔質な被膜8が設けられることから、各チューブ4及び各フィン5の外面の表面積が、それぞれ被膜8により拡大される。従って、各チューブ4を流れる冷却水の熱は、各チューブ4や各フィン5へ伝わり、それらの外面から被膜8を介して空気中へ効率よく放散される。この結果、各チューブ4を流れる冷却水を効率良く冷却することができる。このため、ラジエータ1の放熱性を高めるために、ラジエータ1を大型化したり、フィン5の数を増やしたりする必要がなく、大型化を伴わずにラジエータ1の放熱性を向上させることができる。
【0034】
ここで、高温となった冷却水によるラジエータ1の加熱を想定した加熱実験について説明する。この実験では、図5に示すように、アルミニウム製のプレート21の上面21aに上記したと同様の被膜8を形成してテストピース22とした。又、アルミニウム製のプレートのみの対照ピース(図示略)を準備した。そして、600Wの電気ヒータを熱源23として、テストピース22を、その下面21bから加熱し、その下面21bの温度変化を計測した。対照ピースについても同様の計測を行った。
【0035】
図6に、テストピース22の計測結果を、図7に、対照ピースの計測結果をそれぞれグラフに示す。図6,7から明らかなように、加熱開始後2000秒の到達温度は、テストピース22では「315℃」であり、対照ピースの「370℃」より「55℃」低く、テストピース22の方が暖まり難いことが分かる。又、図6,7から明らかなように、最高温度は、テストピース22で「360℃」であり、対照ピースの「465℃」より「105℃」低く、テストピース22の方で温度上昇が大幅に抑えられていることが分かる。この実験結果から、本実施の形態のラジエータ1についても、冷却水が持つ高熱を、被膜8を設けた各チューブ4及び各フィン5の外面から有効に放散できることが推測できる。
【0036】
又、この実施の形態のラジエータ1では、各チューブ4及び各フィン5の外面に対し、電解析出法により薄い被膜8を形成するだけなので、比較的簡易な構成によりラジエータ1の放熱性を向上させることができ、被膜8について高い信頼性を確保することができる。
【0037】
この実施の形態では、被膜8が「数μm〜数十μm」の厚さであることから、被膜8が比較的薄いものとなり、熱応力による剥離が起こり難く、複雑な形状の部位にも均一に形成される。このことから、被膜8の耐久性を向上させることができ、各チューブ4と各フィン5との間の入り組んだ部位にも高品質な被膜8を容易に設けることができる。
【0038】
この実施の形態では、被膜8が高輻射率物質、特に、二酸化珪素により構成されることから、被膜8の熱伝達が促進される。このため、各チューブ4及び各フィン5では、冷却水から伝わる熱が、被膜8により効率良く放散されることになる。この意味でも、ラジエータ1としての放熱性を向上させることができ、各チューブ4を流れる冷却水を効率良く冷却することができる。
【0039】
この実施の形態では、各チューブ4及び各フィン5の外面に対する被膜8の密着性が良好であることから、化学的にも安定となり、酸性度の高い凝縮水に対しても安定した耐食性を得ることができ、アルミニウム合金製のラジエータ1に腐食による欠損を生じ難くすることができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の熱交換器をラジエータに具体化した第2の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0041】
尚、本実施の形態を含む以下の各実施の形態で、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略し、以下には異なった点を中心に説明する。
【0042】
図8には、図2に準ずる断面図を示す。このラジエータにおいて、各チューブ4及び各フィン5の外面に設けられた被膜8の表面には、高撥液性を有する薄膜9が設けられる。この実施の形態で、被膜8の厚さ、組成、輻射率及び被膜8の形成方法等について、第1の実施の形態のそれと同じである。
【0043】
一方、この実施の形態で、薄膜9は「0.1nm〜10nm」の厚さを有し、被膜8の「数μm〜数十μm」のオーダに比べて極めて薄いものとなっている。
【0044】
この実施の形態で、薄膜9は、フルオロアルキルシラン(FAS)系の物質を含む物質より構成される。FAS系物質を含む薄膜9は、その表面が超低表面エネルギー化しており、撥水性、撥油性、防汚性及び離型性に優れる。
【0045】
FAS系物質としては、例えば、「CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3」が使用されるが、基材である各チューブ4及び各フィン5の金属表面と強く結合するものであればよい。具体的には、下記に示す化学式1において、アルコキシド又は塩素等の官能基(化学式1の「X」)を有するFASが特に好適である。フルオロアルキシル鎖が短いと、基材に十分な撥液性能が付与できないことから、化学式1において「n≧3」となるのが望ましい。FASの部分加水分解物や、その物質の混合物であってもよい。
CF3(CF2)n(CH2)2SiX3 ・・・(化学式1)
ここで、「n」は「3〜15」の整数で、「X」はアルコキシド又は塩素等の官能基である。
【0046】
この実施の形態で、薄膜9を形成するために以下に説明する「蒸着法」が採用される。
先ず、蒸着の前工程として、洗浄と乾燥が行われる。洗浄工程では、予め被膜8を形成した各チューブ4及び各フィン5のアッセンブリがワークとして浴槽に浸され、その表面がアルカリ洗浄される。乾燥工程では、洗浄後のワークがエアブロー乾燥される。
【0047】
次に、蒸着の第1工程では、ワークが処理容器の中に取り付けられる。蒸着の第2工程では、処理容器が加熱され、同容器の中にFAS系物質の蒸気がキャリアガスと共に流される。このとき、ワークの表面にFAS系物質を含む物質の蒸気が接触し、凝結して有機−無機複合の薄膜9が形成される。この第2工程の進行に伴い、薄膜9の厚みが増す。処理時間が短ければ、分子レベルの極めて薄い薄膜9が形成される。薄膜9の厚みは処理時間により調整することができる。温度、時間、FAS系物質、水蒸気の濃度を管理することにより、所望の厚さ(0.1〜10nm)の薄膜9を形成することができる。その後、蒸着の第3工程で、処理容器に対する加熱と、蒸気とキャリアガスの供給を停止させる。そして、処理容器からワークを取り出すことにより一連の工程が終了する。
【0048】
このようにして各チューブ4及び各フィン5の外面に形成された被膜8の表面に、高撥液性を含む薄膜9が形成される。
【0049】
図9には、図8の破線円Bの部分を拡大して示す。薄膜9は、図9に破線で示すように、ミクロ的に多孔質なセラミック層13の凸凹表面に沿って均一に形成される。
【0050】
図10に、本実施の形態の薄膜の表面を拡大した参考写真を示す。この写真から明らかなように、薄膜の表面は、その下に存在する被膜の凸凹表面の形態と大差はない。即ち、被膜の表面は多孔質であるが、基材に対して非直線的であり、ピンホール状ではなく、孔形状は、概ね不規則となっている。孔径は被膜の材質により異なるが、一般には、二酸化珪素系の物質で大きく、酸化アルミニウム系の物質で、サブミクロンオーダと小さく緻密になる傾向がある。そして、この写真から分かるように、薄膜の表面も被膜と同様に多孔質となり、孔形状は、基材に対して非直線的で、ピンホール状ではなく、概ね不規則となり、被膜の表面の特徴をそのまま残していることが分かる。
【0051】
この薄膜の表面は、融雪塩等に対する耐蝕性に優れ、超低表面エネルギー化しており、撥水性、撥油性、防汚性及び離型性等に優れる。離型性に優れることから、汚損物質の付着が抑制される。又、撥水性及び撥油性に優れることから、薄膜の表面に接触した液体は液滴化する。図11に、薄膜の表面に置かれた水滴を拡大した参考写真を示す。この写真から明らかなように、薄膜の表面に落とされた水は、ほぼ球体をなす複数の水滴に分離し、撥水性が極めて高いことが分かる。このような撥水性の高さから、離型性の高さが推測できる。
【0052】
以上説明したこの実施の形態のラジエータによれば、各チューブ4及び各フィン5の外面に被膜8を設けただけの第1の実施の形態のラジエータ1と基本的に同じ作用及び効果を得ることができる。
【0053】
この実施の形態のラジエータで、被膜8による作用及び効果が、各チューブ4や各フィン5に被膜8を設けただけの場合のそれと大差がなく、被膜8の特徴が薄膜9により損なわれていないのは、以下の理由によるものと考えられる。
【0054】
即ち、薄膜9の厚さが「0.1nm〜10nm」と極めて薄く、被膜8のミクロ的に多孔質な凸凹表面を埋めることなくその凹凸に沿って均一に形成されることで、被膜8の多孔質な凸凹表面の特質が損なわれないからである。つまり、被膜8の凸凹表面の特質をそのまま保つことができるのである。仮に、薄膜9がチューブ4やフィン5の外面に直接形成されたとしても、同様にその表面の特質を保つことができることになる。
【0055】
この実施の形態では、チューブ4やフィン5の被膜8の表面に高撥液性を含む薄膜9が設けられることから、被膜8の表面が高撥液性を有する薄膜9により超低表面エネルギー化して、汚れが付き難くなる。特に、この実施の形態では、ラジエータが車両のフロントグリル等の汚れた雰囲気中に設置されることから、そのような雰囲気中でも、チューブ4やフィン5の外面に砂埃や泥水等の汚損物質が付き難くなる。このため、放熱機能を発揮するチューブ4やフィン5の耐汚損性を高めることができる。つまり、ラジエータとして、耐汚損性に優れ、高い放熱性を長く持続させることができる。
【0056】
ここで、チューブ4やフィン5の汚損を想定した耐汚損実験について説明する。この実験では、アルミニウム合金製の供試板の表面に本実施の形態の被膜及び薄膜9形成してテストピースとして準備した。又、被膜と薄膜の代わりに表面をテフロン(登録商標)加工したアルミニウム合金製の供試板を第1対照ピースとして準備した。更に、被膜も薄膜も持たないアルミニウム合金製の供試板を第2対照ピースとして準備した。そして、これらテストピース、第1対照ピース及び第2対照ピースの表面を、JIS8種粉体を含む泥水により汚損・乾燥させ、それら表面上の汚損面積を測定して比較した。更に、汚損・乾燥後の表面を洗浄した後、再びその表面上の汚損面積を測定して比較した。
【0057】
図12に、上記実験結果の表面の描写絵を、テストピース、第1対照ピース及び第2対照ピースの間で比較して上下2段の表に示す。上段の描写絵は、「汚水乾燥後」の表面汚損状態を示すものであり、左から順に「未処理」(第2対照ピース)、「テフロン(登録商標)」(第1対照ピース)及び「本実施の形態」(テストピース)の違いを示す。下段の描写絵は、「洗浄後」の汚損状態を示すものであり、配列は上段のそれと同じである。又、図13には、泥水塗布時の汚損面積をそれぞれ100%としたときの「泥水乾燥後」と「洗浄後」の汚損面積の占有率の違いをグラフに示す。
【0058】
図12,13から明らかなように、「泥水乾燥後」の汚損面積の違いは、「未処理」のもので「98%程度」と最も大きく、「テフロン(登録商標)」と「本実施の形態」のものでは、ともに「40%程度」と少なくなっている。このことから、「本実施の形態」の被膜と薄膜を設けたテストピースでは、「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースと同程度に耐汚損性に優れていることが分かる。
【0059】
一方、図12,13から明らかなように、「未処理」の第2対照ピースでは、「泥水乾燥後」と「洗浄後」との間で、汚損の面積占有率で「16%前後」だけ低下した。「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースでは、「泥水乾燥後」と「洗浄後」との間で、「25%前後」ほど低下した。「本実施の形態」のテストピースでは、「泥水乾燥後」と「洗浄後」との間で、「40%前後」に低下した。このことから、「本実施の形態」の被膜と薄膜を設けたテストピースでは、「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースと同程度に汚損の洗浄性能にも優れていることが分かる。このことは、汚損を雨水等で容易に洗い流すことができることを意味する。
【0060】
このように「本実施の形態」のテストピースでは、「未処理」の第2対照ピースのものに比べて耐汚損性能が高いことが分かる。又、「本実施の形態」のテストピースでは、「洗浄後」に汚損が殆ど無くなることが分かる。ここで、「本実施の形態」のテストピースの実験結果は、「テフロン(登録商標)」の第1対照ピースのそれと大差がないと言える。しかし、「テフロン(登録商標)」によるコーティング加工では、一般に基材の熱伝達率が低下することから、「本実施の形態」の被膜と薄膜を設けた場合のような良好な放熱特性を得ることが困難である。このようなことから、本実施の形態のチューブ4やフィン5を含むラジエータでは、それらの高い放熱性が、汚損物質により損なわれることが少なく、高い放熱性をメンテナンスフリーで長期間持続できることが分かる。
【0061】
この実施の形態では、薄膜9が、FAS系物質を含む物質より構成されることから、薄膜9の超低表面エネルギー化が促進される。このことから、薄膜9の撥水性、撥油性、防汚性及び離型性を有効に発揮させることができる。このため、各チューブ4や各フィン5の耐汚損性をより一層高めることができる。
【0062】
この実施の形態では、薄膜9が、「0.1nm〜10nm」の厚さを有することから、薄膜9が極めて薄いものとなり、被膜8のミクロ的に多孔質な凸凹表面の特質が損なわない。このため、薄膜9の下の被膜8が有する効果を有効に発揮させることができる。
【0063】
[第3の実施の形態]
次に、本発明の熱交換器をラジエータに具体化した第3の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0064】
この実施の形態では、被膜8の組成の点で、第1の実施の形態のラジエータ1と構成が異なる。即ち、この実施の形態では、被膜8に使用される高輻射率物質として、酸化アルミニウム(Al2O3)又は酸化マグネシウム(MgO)に四硼化珪素(SiB4)又はグラファイトの何れかを加えたものを使用している。即ち、
酸化アルミニウムに四硼化珪素を加えたもの、酸化アルミニウムにグラファイトを加えたもの、酸化マグネシウムに四硼化珪素を加えたもの、或いは、酸化マグネシウムにグラファイトを加えたものが使用される。
【0065】
従って、この実施の形態のラジエータでも、各チューブ4及び各フィン5の外面に被膜8を設けたので、第1の実施の形態のラジエータ1と基本的に同じ作用及び効果を得ることができる。
【0066】
ここで、被膜8として、例えば、酸化アルミニウムに四硼化珪素を加えたものを、高輻射率物質として使用した場合の熱的効果のモデル試験について説明する
。
【0067】
この試験は、図14に示すように、「φ40×L400」のパイプ25の中に、ドライヤ26で入りガス温度「500℃」の高温ガスを送り込み、測定点A(出ガス温度)と測定点B(パイプ中央部外面の温度)につき所定時間だけ計測した。図15には、測定点A,Bにおける温度変化をグラフに示す。
【0068】
ここで、パイプ25として、図16に表に示すNo.1,No.2,No.3,No.4の四つのサンプルを準備した。No.1のサンプルは、パイプ25の内面にも外面にも被膜(コーティング)がないものである。No.2のサンプルは、パイプ25の内面に被膜がなく、外面に被膜があるものであり、本実施の形態のラジエータのチューブ4及びフィン5を想定したものである。No.3のサンプルは、パイプ25の内面に被膜があり、外面に被膜がないものである。No.4のサンプルは、パイプ25の内面にも外面にも被膜があるものである。
【0069】
上記No.1〜No.4のサンプルにつき、測定点A,Bにおける最高温度の計測結果を図17,18の表に示す。図17には、パイプはめ込み時(パイプ25にドライヤ26を接続した場合)の計測結果を示す。ここで、「A−B」の欄には、測定点A,Bの間の最高温度の温度差を示す。この表から明らかなように、パイプ25の外面のみに被膜があるNo.2のサンプルで温度差が「113℃」と最も大きく、次いで、内面・外面の両方に被膜があるNo.4のサンプルの「97℃」、内面のみに被膜があるNo.3のサンプルの「82℃」、内面・外面の両方に被膜がないNo.1のサンプルの「70℃」の順に放熱効果が良いことが分かった。この結果から、本実施の形態のラジエータのチューブ4及びフィン5を想定したNo.2のサンプルにつき、パイプ25における放熱効果が最も高いことが分かった。
【0070】
図18には、パイプはめ込みなし時(パイプ25にドライヤ26を未接続の場合)の計測結果を示す。ここでも、「A−B」の欄は、測定点A,Bの間の最高温度の温度差を示す。この表から明らかなように、パイプ25の外面のみに被膜があるNo.2のサンプルで温度差が「63℃」と最も大きく、次いで、内面・外面の両方に被膜があるNo.4のサンプルの「62℃」、内面のみに被膜があるNo.3のサンプルの「52℃」、内面・外面の両方に被膜がないNo.1のサンプルの「45℃」の順に放熱効果が良いことが分かった。この結果から、本実施の形態のラジエータのチューブ4及びフィン5を想定したNo.2のサンプルにつき、パイプ25における放熱効果が最も高いことが分かった。ここで、No.2のサンプルとNo.4のサンプルの間で温度差に大差はないと言える。しかし、No.4のサンプルの場合には、パイプ25の内面にも被膜を形成しなければならず、そのための手間と材料コストを削減できることを考慮すれば、No.2のサンプルの場合の方が優れていると言える。
【0071】
尚、この発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱することのない範囲で以下のように実施することもできる。
【0072】
(1)前記各実施の形態では、各チューブ4と各フィン5の両方の外面に被膜8を設けたり、被膜8及び薄膜9を設けたりしたが、各チューブと各フィンの何れか一方の外面に被膜を設けたり、被膜及び薄膜を設けるようにしてもよい。
【0073】
(2)前記各実施の形態では、本発明の熱交換器をラジエータに具体化したが、流体であるオイルを流す金属製のチューブと、そのチューブに一体的に設けられた多数の金属製のフィンとを備え、チューブを流れるオイルの熱をチューブ及び多数のフィンを通じて空気中に放散させるように構成したオイルクーラに、本発明の熱交換器を具体化してもよい。
【0074】
(3)前記各実施の形態では、本発明の熱交換器を、多数のプレートタイプのフィン5を備えたラジエータに具体化したが、本発明の熱交換器を、図19に示すように、多数のコルゲートタイプのフィン15を備えたラジエータやオイルクーラに具体化してもよい。
【0075】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明の構成によれば、チューブの外面及び多数のフィンの外面の少なくとも一方にミクロ的に多孔質な被膜を設けたので、その外面の表面積がミクロ的に多孔質な被膜により拡大される。従って、チューブを流れる流体の熱が、チューブや多数のフィンの外面で被膜を介して空位中へ効率よく放散される。このため、大型化を伴わずに熱交換器の放熱性を向上させることができる。
【0076】
請求項2に記載の発明の構成によれば、請求項1に記載の発明において、被膜の表面に高撥液性を有する薄膜を設けたので、被膜の表面が高撥液性を有する薄膜により低表面エネルギー化して、汚れが付き難くなる。このため、請求項1に記載の発明の効果に加え、耐汚損性に優れ、高い放熱性を長く持続させることができる。
【0077】
請求項3に記載の発明の構成によれば、請求項2に記載の発明において、薄膜がフルオロアルキルシラン系の物質を含むものに特定されることにより、その薄膜の低表面エネルギー化が促進される。このため、請求項2に記載の発明の効果に加え、薄膜の撥水性、撥油性、防汚性及び離型性を有効に発揮させることができ、チューブや各フィンの耐汚損性をより一層高めることができる。
【0078】
請求項4に記載の発明の構成によれば、請求項2又は3に記載の発明において、薄膜の厚さが0.1nm〜10nmに特定されることにより、薄膜が極めて薄いものとなり、被膜のミクロ的に多孔質な凸凹表面の特質が損なわれない。このため、薄膜の下の被膜が有する効果を有効に発揮させることができる。
【0079】
請求項5に記載の発明の構成によれば、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明において、被膜を高輻射率物質より構成したので、被膜の熱伝達が促進される。このため、請求項1乃至4の何れか一つに記載の発明に加え、熱交換器としての放熱性を向上させることができる。
【0080】
請求項6に記載の発明の構成によれば、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質を、少なくとも二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質を含むものとしたので、被膜の熱伝達が促進される。このため、請求項5に記載の発明に加え、熱交換器としての放熱性をより向上させることができる。
【0081】
請求項7に記載の発明の構成によれば、請求項5に記載の発明において、高輻射率物質を、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものとしたので、被膜の熱伝達が促進される。このため、請求項5に記載の発明に加え、熱交換器としての放熱性をより向上させることができる。
【0082】
請求項8に記載の発明の構成によれば、請求項1乃至7の何れか一つに記載の発明において、被膜を、数μm〜数十μmの厚さを有するものとしたので、被膜が比較的薄いものとなり、熱応力による剥離が起こり難く、複雑な形状の部位にも均一に形成される。このため、被膜の耐久性を向上させることができ、チューブと各フィンとの間の入り組んだ部位にも高品質な被膜を容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施の形態に係り、ラジエータを簡略化して示す縦断面図である。
【図2】図1の楕円Aの部分を拡大して示す断面図である。
【図3】図2の破線円Bの部分を拡大して示す断面図である。
【図4】被膜の表面を拡大して示す参考写真である。
【図5】加熱実験を示す概念図である。
【図6】テストピースの計測結果を示すグラフである。
【図7】対照ピースの計測結果を示すグラフである。
【図8】第2の実施の形態に係り、図2に準ずる断面図である。
【図9】図8の破線円Bの部分を拡大して示す断面図である。
【図10】薄膜の表面を拡大して示す参考写真である。
【図11】薄膜の表面に置かれた水滴を拡大して示す参考写真である。
【図12】実験結果の表面を示す描写絵である。
【図13】汚損面積の占有率の違いを示すグラフである。
【図14】第3の実施の形態に係り、熱的効果のモデル試験を示す概念図である。
【図15】測定点A,Bにおける温度変化を示すグラフである。
【図16】各種サンプルの違いを示す表である。
【図17】計測結果を示す表である。
【図18】計測結果を示す表である。
【図19】別の実施の形態に係り、図2に準ずる断面図である。
【符号の説明】
1 ラジエータ(熱交換器)
4 チューブ
5 フィン
8 被膜
9 薄膜
15 フィン
Claims (8)
- 流体を流す金属製のチューブと、前記チューブに一体的に設けられた多数の金属製のフィンとを備え、前記チューブを流れる流体の熱を前記チューブ及び前記多数のフィンを通じて空気中に放散させる熱交換器であって、
前記チューブの外面及び前記多数のフィンの外面の少なくとも一方にミクロ的に多孔質な被膜を設けたことを特徴とする熱交換器。 - 前記被膜の表面に高撥液性を有する薄膜を設けたことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
- 前記薄膜は、フルオロアルキルシラン系の物質を含むことを特徴とする請求項2に記載の熱交換器。
- 前記薄膜は、0.1nm〜10nmの厚さを有することを特徴とする請求項2又は3に記載の熱交換器。
- 前記被膜は、高輻射率物質より構成されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一つに記載の熱交換器。
- 前記高輻射率物質は、少なくとも二酸化珪素系又は酸化アルミニウム系の物質を含むことを特徴とする請求項5に記載の熱交換器。
- 前記高輻射率物質は、酸化アルミニウム又は酸化マグネシウムに四硼化珪素又はグラファイトの何れかを加えたものであることを特徴とする請求項5に記載の熱交換器。
- 前記被膜は、数μm〜数十μmの厚さを有することを特徴とする請求項1乃至7の何れか一つに記載の熱交換器。
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