JP2004083741A - シリコーンエマルジョンコーティング材組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間に亘ってエマルジョンとして安定であり、耐侯性、耐久性等に優れた硬化被膜を形成することのできるシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を提供する。
【解決手段】(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。
上記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有し、(D)成分の含有量が組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とする。(C)成分が重合抑制剤として作用して長期間にわたってエマルジョンを安定化することができる。
【選択図】 なし
【解決手段】(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。
上記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有し、(D)成分の含有量が組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とする。(C)成分が重合抑制剤として作用して長期間にわたってエマルジョンを安定化することができる。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐侯性、耐久性等に優れた被膜を形成することのできる塗料用のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤系塗料は、その使用時に希釈有機溶剤を大気中に放出するため、地球環境問題の一つの要因になっている。その対策として、有機溶剤の代わりに水を希釈剤として用い、乳化剤を介してエマルジョン化したエマルジョン塗料が開発されている。
【0003】
エマルジョン塗料としては、アクリル系、ウレタン系およびアクリルシリコーン系が主流である。しかし、これらのエマルジョン塗料の塗膜は耐候性に劣る。そこで、耐候性に優れた塗膜を形成することのできるエマルジョン塗料が要求されている。耐候性に優れた塗膜を形成することのできる塗料基剤としては、分子末端にアルコキシド基またはシラノール基を有する反応性シリコーン化合物が知られている。しかし、反応性シリコーン化合物は、有機溶剤中では安定に存在可能であるが、水と乳化剤を加えてエマルジョン化しても、この反応性シリコーン化合物の有するアルコキシド基またはシラノール基が水と重縮合反応してゲル化や沈殿等が起こりやすいため、長期間にわたる安定したエマルジョン化は困難であった。そのため、反応性シリコーン化合物を長期間にわたり安定にエマルジョン化するためには、反応性シリコーン化合物の水に対する反応性を制限する必要性があった。
【0004】
そこで、分子末端を封鎖して水に対する反応性を抑制したシリコーンオイルを塗料基剤として用いたものがシリコーンエマルジョンコーティング材の主流になっている。しかし、シリコーンオイルは、反応性に劣るため、触媒等と混合してもコーティング塗膜内での架橋反応は進行しにくいので、耐久性があるシリコーン塗膜は得られない。そのため、シリコーンオイルを塗料基剤とするシリコーンエマルジョンコーティング材は、繊維分野における表面処理剤として主に使用されているにすぎず、塗料分野におけるコーティング材としては使用されていない。
【0005】
また、反応性シリコーン化合物を塗料基剤とするシリコーンエマルジョンコーティング材は、その塗膜の硬化に150℃以上の加熱処理を必要とするため、低温硬化条件には対応できない。そこで、このシリコーンエマルジョンコーティング材にオクチル酸スズ等の硬化触媒を添加することによって、シリコーンエマルジョンコーティング材を室温硬化させる方法が、特開昭58−101153号公報で提案されている。
【0006】
この公報に開示されているシリコーンエマルジョン組成物は、(a)1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノシロキサン部分加水分解物、アニオン系乳化剤および水からなるシリコーンエマルジョンと、(b)アミノファンクショナルシランもしくはその加水分解物と酸無水物との反応生成物およびコロイダルシリカからなる均一分散液と、(c)硬化触媒とからなる3液混合型シリコーンエマルジョン組成物である。この組成物は、基材に塗布されると、2次元架橋を中心としたゴム弾性を有する塗膜を形成する。
【0007】
そしてこの組成物に用いられる前記オルガノシロキサン部分加水分解物は、反応性シリコーン化合物の1種であり、その分子量は、限定こそされていないが、1万以上が望ましいとされている(前記公報第3頁右上欄第6〜8行)。このような大きい分子量では、水との反応に預かるシラノール基の分子中比率はないに等しいため、前記オルガノシロキサン部分加水分解物の水に対する反応性は低い。そのため、エマルジョンとしての安定性は、一応、高いと考えられる。
【0008】
しかし、前記公報に開示のシリコーンエマルジョン組成物は、硬化触媒がないと硬化しないため硬化触媒を必須成分とするものであり、前記オルガノシロキサン部分加水分解物と硬化触媒とを共存させると、前記オルガノシロキサン部分加水分解物の架橋反応が進行しやすい。そのため、エマルジョンのゲル化、硬化塗膜の白濁等の不都合が生じやすく、また、硬化触媒の使用により、コストが高くつくという問題がある。このように、硬化触媒の使用には不利な点が多くある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者等は、上記の従来の問題を解決する発明を行ない、特許第3215943号公報において提供している。この発明では、(A)オルガノシロキサン部分加水分解物、(B)コロイダルシリカ、(C)水、(D)乳化剤を用いることによって、安定で硬化速度の大きいシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を提供している。しかし、このシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を用いた場合においても、使用する用途によっては保存安定性が十分でない場合があり、さらなる保存期間の長期化が望まれているのが現状である。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、長期間に亘ってエマルジョンとして安定であり、耐侯性、耐久性等に優れた硬化被膜を形成することのできるシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、下記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有してなり、(C)成分の含有量がシリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とするものである
(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。
【0012】
また請求項2の発明は、請求項1において、上記(D)のアミド基を有する化合物がアミド基を有するモノマーが重合したポリマーであることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記(D)のアミド基を有する化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドから選ばれるものであることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、上記(D)のアミド基を有する化合物の分子量が1000乃至50000であることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2にフェニル基を含むことを特徴とするものである。
【0016】
また請求項6の発明は、請求項5において、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2のうち、5〜40%がフェニル基であることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の組成物において(A)成分として用いられるオルガノシロキサン部分加水分解物(以下、「オルガノシロキサン部分加水分解物(A)」と記す)は、分子末端に−OR1基と−OH基(いずれもケイ素原子に直接結合している)を両方とも有する、3次元架橋性のシリコーン化合物である。
【0019】
オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を表す前記平均組成式中のR1およびR2は1価の炭化水素基を示し、互いに同一のものであってもよいし異なるものであってもよい。R2は、1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、炭素数1〜8の置換または非置換の1価の炭化水素基が好適であり、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、合成の容易さ或いは入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基およびフェニル基が好ましい。
【0020】
シリコーンエマルジョンコーティング材組成物の保存安定性の観点から、R2にはフェニル基を含むことが好ましく、その含有量は5〜40%であることが好ましい。つまり、R2のうち5〜40%がフェニル基であることが好ましい。フェニル基の含有量が5%未満であると、エマルジョンの保存安定性を向上させる効果を十分に得ることができず、逆にフェニル基の含有量が40%を超えると、コストが高くなり、また塗膜の硬化性に悪影響を及ぼし易くなる。
【0021】
また、R1は、1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、たとえば、炭素数1〜4のアルキル基が好適である。オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の調製方法としては、特に限定はされないが、たとえば、前記平均組成式中のR1がアルキル基(OR1がアルコキシ基)であるものを得る場合について例示すると、加水分解性オルガノクロロシランおよび加水分解性オルガノアルコキシシランからなる群の中から選ばれた1種もしくは2種以上の加水分解性オルガノシランを公知の方法により大量の水で加水分解することで得られるシラノール基含有ポリオルガノシロキサンのシラノール基を部分的にアルコキシ化することにより、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を得ることができる。なお、この調製方法において、加水分解性オルガノアルコキシシランを用いて加水分解を行う場合は、水量を調節することでアルコキシ基の一部のみを加水分解することにより、未反応のアルコキシ基と、シラノール基とが共存したオルガノシロキサン部分加水分解物(A)を得ることができるので、前述した、シラノール基含有ポリオルガノシロキサンのシラノール基を部分的にアルコキシ化する処理が省ける場合がある。
【0022】
前記加水分解性オルガノクロロシランとしては、特に限定はされないが、たとえば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等が挙げられる。前記加水分解性オルガノアルコキシシランとしては、特に限定はされないが、たとえば、一般式が
R2 nSi(OR1)4−n(nは0〜3の整数である) (1)
で表される加水分解性オルガノシランのうち、R1がアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、n=0のテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示でき、n=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。また、n=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示でき、n=3のトリオルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどが例示できる。
【0023】
加水分解性オルガノシランを部分加水分解するために用いられる触媒は、特に限定するものではないが、酸性触媒として、塩酸、硝酸等の水溶性の酸や、後述する酸性コロイダルシリカ等が例示でき、塩基性触媒として、アンモニア水溶液や塩基性コロイダルシリカ等が例示できる。加水分解性オルガノシランとしてR1が低級アルキル基の加水分解性オルガノアルコキシシランを用いた場合、その部分加水分解において低級脂肪族アルコールが発生するが、この低級脂肪族アルコールは両親媒性の溶剤であり、エマルジョンの安定性を低下させるので、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を調製する際には予め脱溶媒して除いておくことが望ましい。
【0024】
オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を表す前記平均組成式中のa、b、cおよびdは前述した関係を満たす数である。aが3以上の場合は、コーティング被膜の硬化がうまく進行しないという不都合がある。b=0の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。bが2の場合は、シリカ(SiO2(オルガノシロキサンではない))であり、硬化被膜にクラックを生じるという問題がある。c=0の場合は、分子末端がR2基と、親水基であるOH基のみになるため、分子全体での親水性が増加してエマルジョンの長期安定性が得られない。c=4の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。d=0の場合は、分子末端がR2基とOR1基の疎水基のみになるために、エマルジョンの長期安定性には有利であるが、OR1基はコーティング被膜硬化時の架橋反応性に欠けるため、十分な硬化被膜を得ることができない。d=4の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。
【0025】
オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の重量平均分子量はポリスチレン換算で600〜5000の範囲が好ましい。600未満の場合は、コーティング硬化塗膜にクラックを生じる等の不都合があり、5000を超えると、硬化がうまく進行しないという不都合を生じる。オルガノシロキサン部分加水分解物(A)は、上記の構造を持ち、かつ、その重量平均分子量が上記所定範囲内にあるため、反応性が高い。そのため、これを含む本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、その塗膜の硬化に硬化触媒を必要としないとともに、加熱硬化だけでなく低温硬化も可能である。また、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)は、反応性が高いにも関わらず、その分子末端基の親水性−疎水性バランスが良好であるため、長期間安定なエマルジョン化が可能である。
【0026】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物にはコロイダルシリカを配合することができる。コロイダルシリカは、優れた造膜性をコーティング被膜に付与し、コーティング被膜の塗膜硬度を高めるための成分である。コロイダルシリカ中のシリカ分は、特に限定されるわけではないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)に対し、好ましくは5〜100質量%、より好ましくは15〜80質量%の割合である。シリカ分が5質量%未満であると、所望の塗膜強度が得られない傾向があり、100質量%を超えると、コロイダルシリカの均一分散が困難となり、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)がゲル化する等の不都合を招来することがある。
【0027】
コロイダルシリカとしては、特に限定はされないが、たとえば、水に分散したもの、あるいは、アルコールなどの非水系の有機溶媒に分散したものが使用できる。一般に、このようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50質量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定できる。水に分散したコロイダルシリカは、水系なので、そのままエマルジョンに導入できる利点がある。非水系の有機溶媒に分散したコロイダルシリカは、エマルジョンの安定性を低下させるので、直接エマルジョンに導入することはできない。非水系の有機溶媒に分散したコロイダルシリカは、前記一般式(1)で表される加水分解性オルガノシランの反応性触媒として使用すれば、非水系の有機溶媒中に分散した(A)成分との混合物として得ることができる。この混合物から有機溶媒を脱溶媒すれば、(A)成分とコロイダルシリカとの混合物としてのエマルジョン化が可能になる。また、水に分散したコロイダルシリカにおいて、固形分以外の成分として存在する水は、前記一般式(1)で表される加水分解性オルガノシランの硬化剤として用いることができる。
【0028】
水に分散したコロイダルシリカは、通常、水ガラスから作られるが、市販品として容易に入手することができる。また、有機溶媒に分散したコロイダルシリカは、前記水分散コロイダルシリカ中の水を有機溶媒と置換することで容易に調製することができる。このような有機溶剤分散コロイダルシリカも水分散コロイダルシリカと同様に市販品として容易に入手することができる。コロイダルシリカが分散している有機溶媒の種類は、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;およびジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども用いることができる。これらの中でも、脱溶媒の容易さから、低級脂肪族アルコール類が好ましい。
【0029】
次に、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の(B)成分として用いられる乳化剤(以下、「乳化剤(B)」と記す)は、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を水中にエマルジョン粒子として分散させるための乳化剤(エマルジョン化剤)である。乳化剤(B)としては、特に限定はされないが、たとえば、一般的な保護コロイドおよび界面活性剤からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
ここで、保護コロイドとしては、特に限定はされないが、たとえば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、水溶性セルロース誘導体(たとえば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等)、でんぷん、寒天、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、マレイン化ポリブタジエン誘導体、ナフタレンスルホン酸縮合物、ポリアクリル酸塩、アクリル酸アミド、アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0031】
また界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン化多価アルコール脂肪族エステル等のノニオン系界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸、アルキルイミノジプロピオン酸、イミダゾリンカルボン酸、アルキルベタイン、スルホベタイン、アミンオキシド等の両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、エマルジョンの長期安定性のためにはアニオン系またはノニオン系の界面活性剤が望ましい。
【0032】
本発明の組成物中の乳化剤(B)の含有量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)とコロイダルシリカとの合計量に対し、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%の割合である。1質量%未満であると、乳化が困難になる傾向があり、30質量%を超えると、被膜の硬化性および耐候性が損なわれる恐れがある。
【0033】
次に、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の(C)成分として用いられる水(以下、「水(C)」と記す)の含有量は、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で、50〜90質量%の範囲に設定されるものであり、より好ましくは60〜80質量%の割合である。水(C)の含有量が上記範囲を外れると、エマルジョンの安定性が低下し、沈殿物を発生する等の不都合を生じる傾向がある。
【0034】
さらに本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、(D)成分としてアミド基を有する化合物(以下、「アミド基を有する化合物(D)と記す」が配合してある。オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の混合物の脱溶媒時からエマルジョン化までの期間の反応性を抑える目的、および、硬化被膜の硬化性能を維持させる目的で、重合抑制剤として、アミド基を有する化合物(D)を配合するものである。
【0035】
このアミド基を有する化合物(D)としては、特に限定はされないが、たとえば、アミド基を有する側鎖を有するビニル重合体やポリアミドが挙げられる。重合抑制剤として使用できる上記アミド基を有する化合物(D)の具体例としては、特に限定はされないが、ポリビニルピロリドン或いはポリアクリルアミド或いはポリビニルアセトアミド等が挙げられる。これらの物質を単独使用または併用してもよい。
【0036】
アミド基を有する化合物(D)の使用量は、特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の量に対し、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%である。1質量%未満では、エマルジョンの安定性を高める効果が十分に発揮されず、30質量%を超えると、被膜の硬化性および耐侯性が損なわれるおそれがある。
【0037】
アミド基を有する化合物(D)の分子量(重量平均分子量)は、1000〜50000の範囲であることが好ましい。分子量が1000未満であると、重合抑止剤としての効果が小さく、逆に50000を超えると、水やアルコール等への溶解度が小さくなるか或いは溶解速度が遅くなるのでエマルジョンの作製が困難になる傾向がある。
【0038】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、エマルジョン粒子内でのオルガノシロキサン部分加水分解物(A)の分子量安定性向上等のため、必要に応じて非水溶性の有機溶剤を含むことができる。使用可能な非水溶性の有機溶剤としては、特に限定はされないが、25℃の水100gに対する溶解度が1g以下のもの、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を例示することができる。このような非水溶性の有機溶剤を使用する場合、その含有量は、環境上などの問題を引き起こさない範囲内、たとえば、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量に対し、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%の割合である。
【0039】
また本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、エマルジョンの安定性向上のために、通常添加される増粘剤または保護コロイド剤等を必要に応じて含むことができる。保護コロイドは、前述した乳化剤としてだけではなく、粘度増加剤としても使用できる。この増粘剤または保護コロイド剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類;グアガム、ローカストビーンガム等の多糖類;ゼラチン、カゼイン等の動物性タンパク質類;可溶性デンプン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0040】
ノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーも増粘剤として用いることができる。ノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーは、エマルジョン粒子に対し会合性を示し、非常に均一なエマルジョンと増粘剤のネットワークを形成することで、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物のエマルジョン安定性を向上させるとともに本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物に優れたフロー性、レベリング性および厚膜性を付与することができる。このようなノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーは、その市販品を容易に入手することができる。本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物がノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーを含む場合、その含有量は、特に限定はされないが、たとえば、前記(A)成分とシリカ分との合計量に対し、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%の割合である。0.1質量%未満の場合は、上記ネットワークが十分に形成できない傾向があり、10質量%を超えると、硬化被膜の耐候性が損なわれる傾向がある。
【0041】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、必要に応じて、さらに顔料を含むことができる。顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0042】
顔料の分散方法としては、通常のダイノーミール、ペイントシェーカー等による顔料粉を直接分散する方法ではエマルジョンが破壊され、相分離、ゲル化、沈殿生成等の不都合を生じる恐れがある。そこで、顔料分散方法としては、分散剤を介して顔料を水に(好ましくは高濃度に)分散してなる顔料ベースをエマルジョンに添加し、適度に攪拌する方法等が望ましい。顔料ベースの市販品は容易に入手できる。顔料ベースは、分散剤の他に、湿潤剤、粘性コントロール剤等を含んでいてもよい。なお、分散剤の一例として、前記ノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーを挙げることができるが、これに限定されない。顔料ベースの分散方法は、特に限定はされず、通常の分散法でよい。その際、分散助剤、カップリング剤等の使用も可能である。
【0043】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、必要に応じて、上記以外の成分、たとえば、レベリング剤、染料、金属粉、ガラス粉、抗菌剤(好ましくは無機抗菌剤)、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防カビ剤等をも、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で含むことができる。
【0044】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、硬化触媒なしで低温硬化および加熱硬化が可能なので、硬化触媒を含む必要はないのであるが、塗布被膜の硬化促進等の目的で必要に応じて、硬化触媒を含んでいてもよい。硬化触媒としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルチタン酸塩類;オクチル酸錫、ラウリン酸錫、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;酢酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属塩;n−ヘキシルアミン、グアニジン、ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン化合物またはその塩酸塩等が挙げられる。これらの硬化触媒は、その使用に際して予め常法により乳化剤(B)と水(C)を使用してエマルジョンにしておくことが望ましい。
【0045】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を製造する方法としては、特に限定はされないが、たとえば、(A)、(B)、(C)および(D)成分を混合攪拌することにより得ることができる。攪拌方法、いわゆる乳化方法は、特に限定はされず、公知の方法を使用できるが、たとえば、ホモジナイザー、ホモミキサー等の乳化機を用いて乳化する方法等が挙げられる。その際、(A)、(B)、(C)および(D)成分の混合順序は、特に限定はされないが、たとえば、(A)、(B)および(D)成分を均一に混合後、これに、(C)成分、または、(C)および(D)成分を添加し、前記乳化機を用いて乳化する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を塗装する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、刷毛塗り、スプレー、浸漬、バー、フロー、ロール、カーテン、ナイフコート等の通常の各種塗装方法を選択することができる。シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を希釈する場合は、水による希釈が望ましいが、必要に応じては、塗布面のレベリング性または乾燥性を調節するためにブチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の比較的高沸点の有機溶剤を組成物に少量添加してもよい。
【0047】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を塗布する際に、被塗装基材の材質や表面状態によっては、そのまま本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を塗布すると密着性が得にくい場合があるので、基材の表面にプライマー層を予め形成させておいてもよい。プライマー層としては、特に限定はされないが、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、塩化ゴム樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂の硬化層等が挙げられる。プライマー層の厚みは、特に限定はされないが、たとえば、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。
【0048】
基材に塗布された本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を硬化させる方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定はされない。また、硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化被膜性能に応じて常温〜加熱温度の広い範囲をとることができる。本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物から形成される塗膜(硬化被膜)の厚みは、特に制限はなく、たとえば、0.1〜20μm程度が好ましいが、塗膜が長期的に安定に密着、保持され、クラックや剥離等が発生しないためには、より好ましくは1〜10μmである。
【0049】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、実施例および比較例中、特に断らない限り、「部」はすべて「質量部」を、「%」はすべて「質量%」を表す。また、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、測定機種として東ソー(株)のHLC8020を用いて、標準ポリスチレンで検量線を作成し、測定したものである。
【0050】
まず、オルガノシロキサン部分加水分解物の調製例について説明する。
【0051】
(調製例1)
メチルトリメトキシシラン100部に、水分散酸性コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)40部と、酸性コロイダルシリカであるメタノールオルガノシリカゾル(商品名「MA−ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)40部を添加し、室温で攪拌混合した。得られた液を60℃恒温槽中で加熱することにより、重量平均分子量1600のコロイダルシリカ混合オルガノシロキサン部分加水分解物の30%メタノール溶液を得た。これをオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)とする。
【0052】
(調製例2)
メチルトリメトキシシラン80部とフェニルトリメトキシシラン20部の混合物に、水分散酸性コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)40部と、酸性コロイダルシリカであるメタノールオルガノシリカゾル(商品名「MA−ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)40部を添加し、室温で攪拌混合した。得られた液を60℃恒温槽中で加熱することにより、重量平均分子量1500のコロイダルシリカ混合オルガノシロキサン部分加水分解物の30%メタノール溶液を得た。これをオルガノシロキサン部分加水分解物(A−2)とする。
【0053】
上記のようにして得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1),(A−2)は、前記の平均組成式を満たすものであることが確認された。
【0054】
(実施例1)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリビニルピロリドン3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0055】
(実施例2)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリアクリルアミド3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0056】
(実施例3)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリビニルアセトアミド3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0057】
(実施例4)
調製例2で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−2)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリビニルピロリドン3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0058】
(比較例1)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)を添加せずに、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0059】
上記で得られた実施例および比較例のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の特性を以下の方法で評価した。
【0060】
(乳化安定性):エマルジョン化の6か月後にシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の乳化状態を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
○:均一白乳色液体で、凝集沈殿物なし。
△:均一白乳色液体だが、微量の凝集沈殿物あり。
×:不均一相分離が起きていて、沈殿物あり。
【0061】
(造膜性):パイレックス(R)ガラスプレートの表面にシリコーンエマルジョンコーティング材組成物をバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が5μmになるように塗布し、室温で乾燥させて、乾燥被膜の状態を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
○:連続透明被膜。
×:不連続不透明被膜(微小クラック、粉末状態)。
【0062】
(硬化性):上記造膜性評価においてパイレックス(R)ガラスプレートの表面に形成させたシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の乾燥被膜を150℃で20分間硬化させ、形成された硬化被膜の鉛筆硬度をJIS−K5400に準じて測定した。
【0063】
(耐候性):上記硬化性評価において形成された硬化被膜について、スガ試験機社製のサンシャインスーパーロングライフウェーザーメーター(型番:WEL−SUN−HC)を用いて1200時間の促進耐候性試験を行い、促進耐候性試験前後の色差(E値)を色差計(日本電色工業社製、品番Σ80)で測定し、ΔEを算出した。
【0064】
評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、
(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。
上記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有してなり、(C)成分の含有量がシリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とするので、水性であるため環境上の問題が少ないだけでなく、(D)成分が重合抑制剤として作用して長期間にわたってエマルジョンを安定化することができ、保存安定性に優れるものであり、また硬化触媒を使用しなくても低温硬化および加熱硬化が可能で、耐候性、耐久性等に優れた硬化被膜を形成することができるものである。
【0067】
また請求項2の発明は、請求項1において、上記(D)のアミド基を有する化合物がアミド基を有するモノマーが重合したポリマーであるので、ポリアミドの重合抑制剤としての作用で長期間にわたってエマルジョンを安定化することができるものである。
【0068】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記(D)のアミド基を有する化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドから選ばれるものであるので、これらの化合物の重合抑制剤としての作用で長期間にわたってエマルジョンを安定化することができるものである。
【0069】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、上記(D)のアミド基を有する化合物の分子量が1000乃至50000であるので、重合抑止剤としての効果を高く得ることができ、より長期間にわたってエマルジョンを安定化することができるものである。
【0070】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2にフェニル基を含むので、エマルジョンの安定性が高くなり、保存安定性に優れるものである。
【0071】
また請求項6の発明は、請求項5において、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2のうち、5〜40%がフェニル基であるので、エマルジョンの安定性が高くなり、保存安定性に優れるものである。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐侯性、耐久性等に優れた被膜を形成することのできる塗料用のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機溶剤系塗料は、その使用時に希釈有機溶剤を大気中に放出するため、地球環境問題の一つの要因になっている。その対策として、有機溶剤の代わりに水を希釈剤として用い、乳化剤を介してエマルジョン化したエマルジョン塗料が開発されている。
【0003】
エマルジョン塗料としては、アクリル系、ウレタン系およびアクリルシリコーン系が主流である。しかし、これらのエマルジョン塗料の塗膜は耐候性に劣る。そこで、耐候性に優れた塗膜を形成することのできるエマルジョン塗料が要求されている。耐候性に優れた塗膜を形成することのできる塗料基剤としては、分子末端にアルコキシド基またはシラノール基を有する反応性シリコーン化合物が知られている。しかし、反応性シリコーン化合物は、有機溶剤中では安定に存在可能であるが、水と乳化剤を加えてエマルジョン化しても、この反応性シリコーン化合物の有するアルコキシド基またはシラノール基が水と重縮合反応してゲル化や沈殿等が起こりやすいため、長期間にわたる安定したエマルジョン化は困難であった。そのため、反応性シリコーン化合物を長期間にわたり安定にエマルジョン化するためには、反応性シリコーン化合物の水に対する反応性を制限する必要性があった。
【0004】
そこで、分子末端を封鎖して水に対する反応性を抑制したシリコーンオイルを塗料基剤として用いたものがシリコーンエマルジョンコーティング材の主流になっている。しかし、シリコーンオイルは、反応性に劣るため、触媒等と混合してもコーティング塗膜内での架橋反応は進行しにくいので、耐久性があるシリコーン塗膜は得られない。そのため、シリコーンオイルを塗料基剤とするシリコーンエマルジョンコーティング材は、繊維分野における表面処理剤として主に使用されているにすぎず、塗料分野におけるコーティング材としては使用されていない。
【0005】
また、反応性シリコーン化合物を塗料基剤とするシリコーンエマルジョンコーティング材は、その塗膜の硬化に150℃以上の加熱処理を必要とするため、低温硬化条件には対応できない。そこで、このシリコーンエマルジョンコーティング材にオクチル酸スズ等の硬化触媒を添加することによって、シリコーンエマルジョンコーティング材を室温硬化させる方法が、特開昭58−101153号公報で提案されている。
【0006】
この公報に開示されているシリコーンエマルジョン組成物は、(a)1分子中に2個以上のシラノール基を有するオルガノシロキサン部分加水分解物、アニオン系乳化剤および水からなるシリコーンエマルジョンと、(b)アミノファンクショナルシランもしくはその加水分解物と酸無水物との反応生成物およびコロイダルシリカからなる均一分散液と、(c)硬化触媒とからなる3液混合型シリコーンエマルジョン組成物である。この組成物は、基材に塗布されると、2次元架橋を中心としたゴム弾性を有する塗膜を形成する。
【0007】
そしてこの組成物に用いられる前記オルガノシロキサン部分加水分解物は、反応性シリコーン化合物の1種であり、その分子量は、限定こそされていないが、1万以上が望ましいとされている(前記公報第3頁右上欄第6〜8行)。このような大きい分子量では、水との反応に預かるシラノール基の分子中比率はないに等しいため、前記オルガノシロキサン部分加水分解物の水に対する反応性は低い。そのため、エマルジョンとしての安定性は、一応、高いと考えられる。
【0008】
しかし、前記公報に開示のシリコーンエマルジョン組成物は、硬化触媒がないと硬化しないため硬化触媒を必須成分とするものであり、前記オルガノシロキサン部分加水分解物と硬化触媒とを共存させると、前記オルガノシロキサン部分加水分解物の架橋反応が進行しやすい。そのため、エマルジョンのゲル化、硬化塗膜の白濁等の不都合が生じやすく、また、硬化触媒の使用により、コストが高くつくという問題がある。このように、硬化触媒の使用には不利な点が多くある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者等は、上記の従来の問題を解決する発明を行ない、特許第3215943号公報において提供している。この発明では、(A)オルガノシロキサン部分加水分解物、(B)コロイダルシリカ、(C)水、(D)乳化剤を用いることによって、安定で硬化速度の大きいシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を提供している。しかし、このシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を用いた場合においても、使用する用途によっては保存安定性が十分でない場合があり、さらなる保存期間の長期化が望まれているのが現状である。
【0010】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、長期間に亘ってエマルジョンとして安定であり、耐侯性、耐久性等に優れた硬化被膜を形成することのできるシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を提供することを目的とするものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係るシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、下記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有してなり、(C)成分の含有量がシリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とするものである
(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。
【0012】
また請求項2の発明は、請求項1において、上記(D)のアミド基を有する化合物がアミド基を有するモノマーが重合したポリマーであることを特徴とするものである。
【0013】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記(D)のアミド基を有する化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドから選ばれるものであることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、上記(D)のアミド基を有する化合物の分子量が1000乃至50000であることを特徴とするものである。
【0015】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2にフェニル基を含むことを特徴とするものである。
【0016】
また請求項6の発明は、請求項5において、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2のうち、5〜40%がフェニル基であることを特徴とするものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
本発明の組成物において(A)成分として用いられるオルガノシロキサン部分加水分解物(以下、「オルガノシロキサン部分加水分解物(A)」と記す)は、分子末端に−OR1基と−OH基(いずれもケイ素原子に直接結合している)を両方とも有する、3次元架橋性のシリコーン化合物である。
【0019】
オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を表す前記平均組成式中のR1およびR2は1価の炭化水素基を示し、互いに同一のものであってもよいし異なるものであってもよい。R2は、1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、炭素数1〜8の置換または非置換の1価の炭化水素基が好適であり、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;クロロメチル基、γ−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換炭化水素基;γ−メタクリロキシプロピル基、γ−グリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、γ−メルカプトプロピル基等の置換炭化水素基等を例示することができる。これらの中でも、合成の容易さ或いは入手の容易さから炭素数1〜4のアルキル基およびフェニル基が好ましい。
【0020】
シリコーンエマルジョンコーティング材組成物の保存安定性の観点から、R2にはフェニル基を含むことが好ましく、その含有量は5〜40%であることが好ましい。つまり、R2のうち5〜40%がフェニル基であることが好ましい。フェニル基の含有量が5%未満であると、エマルジョンの保存安定性を向上させる効果を十分に得ることができず、逆にフェニル基の含有量が40%を超えると、コストが高くなり、また塗膜の硬化性に悪影響を及ぼし易くなる。
【0021】
また、R1は、1価の炭化水素基であれば特に限定はされないが、たとえば、炭素数1〜4のアルキル基が好適である。オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の調製方法としては、特に限定はされないが、たとえば、前記平均組成式中のR1がアルキル基(OR1がアルコキシ基)であるものを得る場合について例示すると、加水分解性オルガノクロロシランおよび加水分解性オルガノアルコキシシランからなる群の中から選ばれた1種もしくは2種以上の加水分解性オルガノシランを公知の方法により大量の水で加水分解することで得られるシラノール基含有ポリオルガノシロキサンのシラノール基を部分的にアルコキシ化することにより、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を得ることができる。なお、この調製方法において、加水分解性オルガノアルコキシシランを用いて加水分解を行う場合は、水量を調節することでアルコキシ基の一部のみを加水分解することにより、未反応のアルコキシ基と、シラノール基とが共存したオルガノシロキサン部分加水分解物(A)を得ることができるので、前述した、シラノール基含有ポリオルガノシロキサンのシラノール基を部分的にアルコキシ化する処理が省ける場合がある。
【0022】
前記加水分解性オルガノクロロシランとしては、特に限定はされないが、たとえば、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン等が挙げられる。前記加水分解性オルガノアルコキシシランとしては、特に限定はされないが、たとえば、一般式が
R2 nSi(OR1)4−n(nは0〜3の整数である) (1)
で表される加水分解性オルガノシランのうち、R1がアルキル基であるものが挙げられる。具体的には、n=0のテトラアルコキシシランとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが例示でき、n=1のオルガノトリアルコキシシランとしては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシランなどが例示できる。また、n=2のジオルガノジアルコキシシランとしては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシランなどが例示でき、n=3のトリオルガノアルコキシシランとしては、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリメチルイソプロポキシシラン、ジメチルイソブチルメトキシシランなどが例示できる。
【0023】
加水分解性オルガノシランを部分加水分解するために用いられる触媒は、特に限定するものではないが、酸性触媒として、塩酸、硝酸等の水溶性の酸や、後述する酸性コロイダルシリカ等が例示でき、塩基性触媒として、アンモニア水溶液や塩基性コロイダルシリカ等が例示できる。加水分解性オルガノシランとしてR1が低級アルキル基の加水分解性オルガノアルコキシシランを用いた場合、その部分加水分解において低級脂肪族アルコールが発生するが、この低級脂肪族アルコールは両親媒性の溶剤であり、エマルジョンの安定性を低下させるので、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を調製する際には予め脱溶媒して除いておくことが望ましい。
【0024】
オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を表す前記平均組成式中のa、b、cおよびdは前述した関係を満たす数である。aが3以上の場合は、コーティング被膜の硬化がうまく進行しないという不都合がある。b=0の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。bが2の場合は、シリカ(SiO2(オルガノシロキサンではない))であり、硬化被膜にクラックを生じるという問題がある。c=0の場合は、分子末端がR2基と、親水基であるOH基のみになるため、分子全体での親水性が増加してエマルジョンの長期安定性が得られない。c=4の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。d=0の場合は、分子末端がR2基とOR1基の疎水基のみになるために、エマルジョンの長期安定性には有利であるが、OR1基はコーティング被膜硬化時の架橋反応性に欠けるため、十分な硬化被膜を得ることができない。d=4の場合は、モノマーであり、硬化被膜を形成できないという問題がある。
【0025】
オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の重量平均分子量はポリスチレン換算で600〜5000の範囲が好ましい。600未満の場合は、コーティング硬化塗膜にクラックを生じる等の不都合があり、5000を超えると、硬化がうまく進行しないという不都合を生じる。オルガノシロキサン部分加水分解物(A)は、上記の構造を持ち、かつ、その重量平均分子量が上記所定範囲内にあるため、反応性が高い。そのため、これを含む本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、その塗膜の硬化に硬化触媒を必要としないとともに、加熱硬化だけでなく低温硬化も可能である。また、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)は、反応性が高いにも関わらず、その分子末端基の親水性−疎水性バランスが良好であるため、長期間安定なエマルジョン化が可能である。
【0026】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物にはコロイダルシリカを配合することができる。コロイダルシリカは、優れた造膜性をコーティング被膜に付与し、コーティング被膜の塗膜硬度を高めるための成分である。コロイダルシリカ中のシリカ分は、特に限定されるわけではないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)に対し、好ましくは5〜100質量%、より好ましくは15〜80質量%の割合である。シリカ分が5質量%未満であると、所望の塗膜強度が得られない傾向があり、100質量%を超えると、コロイダルシリカの均一分散が困難となり、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)がゲル化する等の不都合を招来することがある。
【0027】
コロイダルシリカとしては、特に限定はされないが、たとえば、水に分散したもの、あるいは、アルコールなどの非水系の有機溶媒に分散したものが使用できる。一般に、このようなコロイダルシリカは、固形分としてのシリカを20〜50質量%含有しており、この値からシリカ配合量を決定できる。水に分散したコロイダルシリカは、水系なので、そのままエマルジョンに導入できる利点がある。非水系の有機溶媒に分散したコロイダルシリカは、エマルジョンの安定性を低下させるので、直接エマルジョンに導入することはできない。非水系の有機溶媒に分散したコロイダルシリカは、前記一般式(1)で表される加水分解性オルガノシランの反応性触媒として使用すれば、非水系の有機溶媒中に分散した(A)成分との混合物として得ることができる。この混合物から有機溶媒を脱溶媒すれば、(A)成分とコロイダルシリカとの混合物としてのエマルジョン化が可能になる。また、水に分散したコロイダルシリカにおいて、固形分以外の成分として存在する水は、前記一般式(1)で表される加水分解性オルガノシランの硬化剤として用いることができる。
【0028】
水に分散したコロイダルシリカは、通常、水ガラスから作られるが、市販品として容易に入手することができる。また、有機溶媒に分散したコロイダルシリカは、前記水分散コロイダルシリカ中の水を有機溶媒と置換することで容易に調製することができる。このような有機溶剤分散コロイダルシリカも水分散コロイダルシリカと同様に市販品として容易に入手することができる。コロイダルシリカが分散している有機溶媒の種類は、特に限定はされないが、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の低級脂肪族アルコール類;エチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、酢酸エチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコール誘導体;ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール誘導体;およびジアセトンアルコール等を挙げることができ、これらからなる群より選ばれた1種もしくは2種以上を使用することができる。これらの親水性有機溶媒と併用して、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトオキシムなども用いることができる。これらの中でも、脱溶媒の容易さから、低級脂肪族アルコール類が好ましい。
【0029】
次に、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の(B)成分として用いられる乳化剤(以下、「乳化剤(B)」と記す)は、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)を水中にエマルジョン粒子として分散させるための乳化剤(エマルジョン化剤)である。乳化剤(B)としては、特に限定はされないが、たとえば、一般的な保護コロイドおよび界面活性剤からなる群の中から選ばれた少なくとも1種を用いることができる。
【0030】
ここで、保護コロイドとしては、特に限定はされないが、たとえば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、水溶性セルロース誘導体(たとえば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシセルロース等)、でんぷん、寒天、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸、スチレン−無水マレイン酸共重合体塩、マレイン化ポリブタジエン誘導体、ナフタレンスルホン酸縮合物、ポリアクリル酸塩、アクリル酸アミド、アクリル酸エステル等が挙げられる。
【0031】
また界面活性剤としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、脂肪酸塩、ロジン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、テトラアルキルアンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレン共重合体、多価アルコール脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレン化多価アルコール脂肪族エステル等のノニオン系界面活性剤;アルキルアミノプロピオン酸、アルキルイミノジプロピオン酸、イミダゾリンカルボン酸、アルキルベタイン、スルホベタイン、アミンオキシド等の両性界面活性剤等が挙げられる。これらの中でも、エマルジョンの長期安定性のためにはアニオン系またはノニオン系の界面活性剤が望ましい。
【0032】
本発明の組成物中の乳化剤(B)の含有量は、特に限定されるわけではないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)とコロイダルシリカとの合計量に対し、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%の割合である。1質量%未満であると、乳化が困難になる傾向があり、30質量%を超えると、被膜の硬化性および耐候性が損なわれる恐れがある。
【0033】
次に、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の(C)成分として用いられる水(以下、「水(C)」と記す)の含有量は、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で、50〜90質量%の範囲に設定されるものであり、より好ましくは60〜80質量%の割合である。水(C)の含有量が上記範囲を外れると、エマルジョンの安定性が低下し、沈殿物を発生する等の不都合を生じる傾向がある。
【0034】
さらに本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、(D)成分としてアミド基を有する化合物(以下、「アミド基を有する化合物(D)と記す」が配合してある。オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の混合物の脱溶媒時からエマルジョン化までの期間の反応性を抑える目的、および、硬化被膜の硬化性能を維持させる目的で、重合抑制剤として、アミド基を有する化合物(D)を配合するものである。
【0035】
このアミド基を有する化合物(D)としては、特に限定はされないが、たとえば、アミド基を有する側鎖を有するビニル重合体やポリアミドが挙げられる。重合抑制剤として使用できる上記アミド基を有する化合物(D)の具体例としては、特に限定はされないが、ポリビニルピロリドン或いはポリアクリルアミド或いはポリビニルアセトアミド等が挙げられる。これらの物質を単独使用または併用してもよい。
【0036】
アミド基を有する化合物(D)の使用量は、特に限定はされないが、たとえば、オルガノシロキサン部分加水分解物(A)の量に対し、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜15質量%である。1質量%未満では、エマルジョンの安定性を高める効果が十分に発揮されず、30質量%を超えると、被膜の硬化性および耐侯性が損なわれるおそれがある。
【0037】
アミド基を有する化合物(D)の分子量(重量平均分子量)は、1000〜50000の範囲であることが好ましい。分子量が1000未満であると、重合抑止剤としての効果が小さく、逆に50000を超えると、水やアルコール等への溶解度が小さくなるか或いは溶解速度が遅くなるのでエマルジョンの作製が困難になる傾向がある。
【0038】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、エマルジョン粒子内でのオルガノシロキサン部分加水分解物(A)の分子量安定性向上等のため、必要に応じて非水溶性の有機溶剤を含むことができる。使用可能な非水溶性の有機溶剤としては、特に限定はされないが、25℃の水100gに対する溶解度が1g以下のもの、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン等を例示することができる。このような非水溶性の有機溶剤を使用する場合、その含有量は、環境上などの問題を引き起こさない範囲内、たとえば、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量に対し、好ましくは0〜20質量%、より好ましくは0〜10質量%の割合である。
【0039】
また本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、エマルジョンの安定性向上のために、通常添加される増粘剤または保護コロイド剤等を必要に応じて含むことができる。保護コロイドは、前述した乳化剤としてだけではなく、粘度増加剤としても使用できる。この増粘剤または保護コロイド剤としては、特に限定はされないが、たとえば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類;グアガム、ローカストビーンガム等の多糖類;ゼラチン、カゼイン等の動物性タンパク質類;可溶性デンプン類、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0040】
ノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーも増粘剤として用いることができる。ノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーは、エマルジョン粒子に対し会合性を示し、非常に均一なエマルジョンと増粘剤のネットワークを形成することで、本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物のエマルジョン安定性を向上させるとともに本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物に優れたフロー性、レベリング性および厚膜性を付与することができる。このようなノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーは、その市販品を容易に入手することができる。本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物がノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーを含む場合、その含有量は、特に限定はされないが、たとえば、前記(A)成分とシリカ分との合計量に対し、好ましくは0.1〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%の割合である。0.1質量%未満の場合は、上記ネットワークが十分に形成できない傾向があり、10質量%を超えると、硬化被膜の耐候性が損なわれる傾向がある。
【0041】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、必要に応じて、さらに顔料を含むことができる。顔料としては、特に限定はされないが、たとえば、カーボンブラック、キナクリドン、ナフトールレッド、シアニンブルー、シアニングリーン、ハンザイエロー等の有機顔料;酸化チタン、硫酸バリウム、弁柄、複合金属酸化物等の無機顔料がよく、これらの群から選ばれる1種あるいは2種以上を組み合わせて使用しても差し支えない。
【0042】
顔料の分散方法としては、通常のダイノーミール、ペイントシェーカー等による顔料粉を直接分散する方法ではエマルジョンが破壊され、相分離、ゲル化、沈殿生成等の不都合を生じる恐れがある。そこで、顔料分散方法としては、分散剤を介して顔料を水に(好ましくは高濃度に)分散してなる顔料ベースをエマルジョンに添加し、適度に攪拌する方法等が望ましい。顔料ベースの市販品は容易に入手できる。顔料ベースは、分散剤の他に、湿潤剤、粘性コントロール剤等を含んでいてもよい。なお、分散剤の一例として、前記ノニオン性ウレタンアクリルブロックコーポリマーを挙げることができるが、これに限定されない。顔料ベースの分散方法は、特に限定はされず、通常の分散法でよい。その際、分散助剤、カップリング剤等の使用も可能である。
【0043】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物には、必要に応じて、上記以外の成分、たとえば、レベリング剤、染料、金属粉、ガラス粉、抗菌剤(好ましくは無機抗菌剤)、酸化防止剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、消泡剤、防カビ剤等をも、本発明の効果に悪影響を与えない範囲内で含むことができる。
【0044】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、硬化触媒なしで低温硬化および加熱硬化が可能なので、硬化触媒を含む必要はないのであるが、塗布被膜の硬化促進等の目的で必要に応じて、硬化触媒を含んでいてもよい。硬化触媒としては、特に限定はされないが、たとえば、アルキルチタン酸塩類;オクチル酸錫、ラウリン酸錫、オクチル酸鉄、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジマレエート等のカルボン酸金属塩類;テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、チタニウムテトラアセチルアセトネート等のチタニウム化合物;酢酸リチウム、蟻酸ナトリウム、リン酸カリウム等のアルカリ金属塩;n−ヘキシルアミン、グアニジン、ジブチルアミン−2−ヘキソエート、ジメチルアミンアセテート、エタノールアミンアセテート等のアミン化合物またはその塩酸塩等が挙げられる。これらの硬化触媒は、その使用に際して予め常法により乳化剤(B)と水(C)を使用してエマルジョンにしておくことが望ましい。
【0045】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を製造する方法としては、特に限定はされないが、たとえば、(A)、(B)、(C)および(D)成分を混合攪拌することにより得ることができる。攪拌方法、いわゆる乳化方法は、特に限定はされず、公知の方法を使用できるが、たとえば、ホモジナイザー、ホモミキサー等の乳化機を用いて乳化する方法等が挙げられる。その際、(A)、(B)、(C)および(D)成分の混合順序は、特に限定はされないが、たとえば、(A)、(B)および(D)成分を均一に混合後、これに、(C)成分、または、(C)および(D)成分を添加し、前記乳化機を用いて乳化する方法等が挙げられる。
【0046】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を塗装する方法は、特に限定されるものではなく、たとえば、刷毛塗り、スプレー、浸漬、バー、フロー、ロール、カーテン、ナイフコート等の通常の各種塗装方法を選択することができる。シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を希釈する場合は、水による希釈が望ましいが、必要に応じては、塗布面のレベリング性または乾燥性を調節するためにブチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の比較的高沸点の有機溶剤を組成物に少量添加してもよい。
【0047】
本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を塗布する際に、被塗装基材の材質や表面状態によっては、そのまま本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を塗布すると密着性が得にくい場合があるので、基材の表面にプライマー層を予め形成させておいてもよい。プライマー層としては、特に限定はされないが、たとえば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、塩化ゴム樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂等の樹脂の硬化層等が挙げられる。プライマー層の厚みは、特に限定はされないが、たとえば、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜10μmがより好ましい。この厚みが薄すぎると密着が得られない恐れがあり、厚すぎると乾燥時に発泡等の恐れがある。
【0048】
基材に塗布された本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物を硬化させる方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定はされない。また、硬化の際の温度も特に限定はされず、所望される硬化被膜性能に応じて常温〜加熱温度の広い範囲をとることができる。本発明のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物から形成される塗膜(硬化被膜)の厚みは、特に制限はなく、たとえば、0.1〜20μm程度が好ましいが、塗膜が長期的に安定に密着、保持され、クラックや剥離等が発生しないためには、より好ましくは1〜10μmである。
【0049】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。尚、実施例および比較例中、特に断らない限り、「部」はすべて「質量部」を、「%」はすべて「質量%」を表す。また、分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、測定機種として東ソー(株)のHLC8020を用いて、標準ポリスチレンで検量線を作成し、測定したものである。
【0050】
まず、オルガノシロキサン部分加水分解物の調製例について説明する。
【0051】
(調製例1)
メチルトリメトキシシラン100部に、水分散酸性コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)40部と、酸性コロイダルシリカであるメタノールオルガノシリカゾル(商品名「MA−ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)40部を添加し、室温で攪拌混合した。得られた液を60℃恒温槽中で加熱することにより、重量平均分子量1600のコロイダルシリカ混合オルガノシロキサン部分加水分解物の30%メタノール溶液を得た。これをオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)とする。
【0052】
(調製例2)
メチルトリメトキシシラン80部とフェニルトリメトキシシラン20部の混合物に、水分散酸性コロイダルシリカ(商品名「スノーテックスO」、日産化学工業(株)製、固形分20%)40部と、酸性コロイダルシリカであるメタノールオルガノシリカゾル(商品名「MA−ST」、日産化学工業(株)製、固形分30%)40部を添加し、室温で攪拌混合した。得られた液を60℃恒温槽中で加熱することにより、重量平均分子量1500のコロイダルシリカ混合オルガノシロキサン部分加水分解物の30%メタノール溶液を得た。これをオルガノシロキサン部分加水分解物(A−2)とする。
【0053】
上記のようにして得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1),(A−2)は、前記の平均組成式を満たすものであることが確認された。
【0054】
(実施例1)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリビニルピロリドン3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0055】
(実施例2)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリアクリルアミド3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0056】
(実施例3)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリビニルアセトアミド3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0057】
(実施例4)
調製例2で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−2)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)としてポリビニルピロリドン3部を添加し、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0058】
(比較例1)
調製例1で得られたオルガノシロキサン部分加水分解物(A−1)100部に、アミド基を有する化合物(重合抑制剤)を添加せずに、均一に攪拌した後、ロータリーエバポレーターを用いてメタノールを留去した。得られた残留物43部に、乳化剤としてポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(HLB13.7)3部を添加し、よく攪拌して均一にした。これに、水60部を攪拌下で加えた後、ホモジナイザー(300kg/cm2)処理を行うことにより、シリコーンエマルジョンコーティング材組成物を得た。
【0059】
上記で得られた実施例および比較例のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の特性を以下の方法で評価した。
【0060】
(乳化安定性):エマルジョン化の6か月後にシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の乳化状態を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
○:均一白乳色液体で、凝集沈殿物なし。
△:均一白乳色液体だが、微量の凝集沈殿物あり。
×:不均一相分離が起きていて、沈殿物あり。
【0061】
(造膜性):パイレックス(R)ガラスプレートの表面にシリコーンエマルジョンコーティング材組成物をバーコータ塗装機で乾燥塗膜厚が5μmになるように塗布し、室温で乾燥させて、乾燥被膜の状態を目視で観察し、以下の判断基準で評価した。
○:連続透明被膜。
×:不連続不透明被膜(微小クラック、粉末状態)。
【0062】
(硬化性):上記造膜性評価においてパイレックス(R)ガラスプレートの表面に形成させたシリコーンエマルジョンコーティング材組成物の乾燥被膜を150℃で20分間硬化させ、形成された硬化被膜の鉛筆硬度をJIS−K5400に準じて測定した。
【0063】
(耐候性):上記硬化性評価において形成された硬化被膜について、スガ試験機社製のサンシャインスーパーロングライフウェーザーメーター(型番:WEL−SUN−HC)を用いて1200時間の促進耐候性試験を行い、促進耐候性試験前後の色差(E値)を色差計(日本電色工業社製、品番Σ80)で測定し、ΔEを算出した。
【0064】
評価結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係るシリコーンエマルジョンコーティング材組成物は、
(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。
上記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有してなり、(C)成分の含有量がシリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とするので、水性であるため環境上の問題が少ないだけでなく、(D)成分が重合抑制剤として作用して長期間にわたってエマルジョンを安定化することができ、保存安定性に優れるものであり、また硬化触媒を使用しなくても低温硬化および加熱硬化が可能で、耐候性、耐久性等に優れた硬化被膜を形成することができるものである。
【0067】
また請求項2の発明は、請求項1において、上記(D)のアミド基を有する化合物がアミド基を有するモノマーが重合したポリマーであるので、ポリアミドの重合抑制剤としての作用で長期間にわたってエマルジョンを安定化することができるものである。
【0068】
また請求項3の発明は、請求項1又は2において、上記(D)のアミド基を有する化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドから選ばれるものであるので、これらの化合物の重合抑制剤としての作用で長期間にわたってエマルジョンを安定化することができるものである。
【0069】
また請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかにおいて、上記(D)のアミド基を有する化合物の分子量が1000乃至50000であるので、重合抑止剤としての効果を高く得ることができ、より長期間にわたってエマルジョンを安定化することができるものである。
【0070】
また請求項5の発明は、請求項1乃至4のいずれかにおいて、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2にフェニル基を含むので、エマルジョンの安定性が高くなり、保存安定性に優れるものである。
【0071】
また請求項6の発明は、請求項5において、上記(A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2のうち、5〜40%がフェニル基であるので、エマルジョンの安定性が高くなり、保存安定性に優れるものである。
Claims (6)
- 下記(A)、(B)、(C)および(D)成分を含有してなり、(C)成分の含有量がシリコーンエマルジョンコーティング材組成物全量中で50〜90質量%の割合であることを特徴とするシリコーンエマルジョンコーティング材組成物。
(A)平均組成式R2 aSiOb(OR1)c(OH)dで表される(ここでR1、R2は1価の炭化水素基を示し、a、b、cおよびdはa+2b+c+d=4、0<a<3、0<b<2、0<c<4、0<d<4の関係を満たす数である)オルガノシロキサン部分加水分解物。
(B)乳化剤。
(C)水。
(D)アミド基を有する化合物。 - (D)のアミド基を有する化合物がアミド基を有するモノマーが重合したポリマーであることを特徴とする請求項1に記載のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物。
- (D)のアミド基を有する化合物が、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリビニルアセトアミドから選ばれるものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物。
- (D)のアミド基を有する化合物の分子量が1000乃至50000であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物。
- (A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2にフェニル基を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物。
- (A)のオルガノシロキサン部分加水分解物を構成するR2のうち、5〜40%がフェニル基であることを特徴とする請求項5に記載のシリコーンエマルジョンコーティング材組成物。
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