JP2004067816A - セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
セルロースアシレートフィルム及びその製造方法、並びに該フィルムを用いた光学フィルム、液晶表示装置及びハロゲン化銀写真感光材料 Download PDFInfo
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Abstract
【課題】優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供し、それを用いて得られる光学フイルム、偏光板、光学補償フイルム及び液晶表示装置を提供する。
【解決手段】溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた光学用途に利用される光学フィルムに関する。特に、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フイルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレーに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる支持体フイルム、又、有機ELディスプレー等にも使用できる各種機能フイルム等に利用できる光学フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)、高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を、適宜選択して単独もしくは混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特公昭47−760号、特公昭43−16305号、特公昭44−32672号、特開平2−292342号、5−197073号公報)。また、米国特許第3,277,032号明細書には、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術が記載されている。しかしながらこれらの支持体でも、長期保存下での膜強度安定性、フイルムの着色等が十分でなかった。
【0004】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムとして優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性質、及び耐久性化が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0005】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来よりセルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させてしまうなどの問題点を有していた。これらの特性を改良のするために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤、帯電防止剤を添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子(例えば、特開平6−148430号、特開2002−31715号等)の添加が提案されている。
【0006】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行い製膜速度を向上させる技術(米国特許第3,738,924号明細書)、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術(例えば、特開2002−20410号、同2002−47357号等)が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要な又は有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼす虞がある。また、光重合反応を行う方法は、重合性モノマーの残存或いは十分な反応を進めるのに時間を必要とする懸念がある。
従って本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することである。他の本発明の目的は、それを用いて得られる光学フイルム、偏光板、光学補償フイルム及び液晶表示装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の構成により解決されることが見出された。
(1) 溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(2) 前記光熱変換剤(IR)が、波長700nm以上の近赤外波長領域に吸収帯があり、且つ分光吸光係数が10000以上の値を有する近赤外吸収剤であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3) 前記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を有する重合性基含有のモノマー(B)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4) 前記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基を有する多官能モノマー(C)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(5) 前記モノマー(A)、(B)及び(C)の各重合性モノマーが、それぞれラジカル重合及びカチオン重合のいずれかで重合反応することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(6) 前記重合性基含有のモノマー(A)が、多環式脂肪族炭化水素基を置換基として有する化合物であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7) 前記セルロースアシレート組成物が、オキセタン基及び一個の水酸基を有する化合物を含有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(8) 前記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(9) 上記セルロースの水酸基への置換度が、下記式(a)〜(b)の全てを満足するセルロースアシレートであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(a) 2.6≦SA+SB≦3.0
(b) 2.0≦SA≦3.0
(c) 0≦SB≦0.8
[ここで、SAはアセチル基の置換度、SBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。]
(10) セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(11) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フイルム。
(12) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学用偏光フイルム。
(13) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示素材。
(14) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フイルム。
(15) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
(16) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載され、その膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
本発明は、セルロースアシレート溶液(ドープ)中に、重合性化合物(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を共存させて流延方法で流延し、かつ近赤外線照射して重合性化合物(A)を速やかに重合反応させて、重合したポリマーがセルロースアシレートと相分離のない光学特性・膜強度に優れたフイルムが作成されるものである。即ち、近赤外線照射すると、光熱変換剤がその光を吸収して熱に変換する。その熱により熱重合開始剤が熱分解し、ラジカル又は酸を発生し重合性化合物の重合反応を開始することができる。
また、本発明において、熱ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物、熱酸発生剤とカチオン重合性化合物、又は両者の重合反応系を混合した系での組み合わせの中で適宜選択することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロールアシレートフィルムは、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む溶液流延方法により製造されるものである。
【0010】
[セルロースアシレート]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて、以下に記す。本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
【0011】
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製して精製リンタと精製高級木材パルプとして用いられる。
【0012】
以上記述したセルロースアシレートについては、特開平10−45803号、特開平11−269304号、特開平8−231761号、特開平8−231761号、特開平10−60170号、特開平9−40792号、特開平11−5851号、特開平11−269304号、特開平9−90101号、特開昭57−182737号、特開平4−277530号、特開平11−292989号、特開平12−131524号、特開平12−137115号などに記載のセルロースアシレートを利用することも好ましい。
【0013】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフイルムの作製]
次に上述のセルロースを原料から製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。
(a) 2.6≦SA+SB≦3.0
(b) 2.0≦SA≦3.0
(c) 0≦SB≦0.8
【0014】
ここで、SA及びSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0015】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、水酸基のSAとSBの置換度の総和は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85であり特には0.90であるセルロースアシレートフィルムも挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0016】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、好ましいSBは、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどである。
【0017】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法等がある。具体的には、例えば、特開平6−32801号、同7−70202号、同10−45804号、同10−511728号、特開2001−200901号等に記載の方法が挙げられる。
【0018】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.1〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が0.2〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく扁平ないし球形に近い形状も好ましい。
【0019】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538に詳細に記載されている。本発明のセルロースアシレートをフィルム製造時に使用する際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。所望の含水率にするために、必要により従来公知の乾燥手段で乾燥すればよい。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0020】
次いで、重合性基含有のモノマー(A)について詳述する。
本発明では、重合性基含有モノマー(A)として、ラジカル重合性モノマー(A1)及びカチオン重合性モノマー(A2)のいずれでも用いることができる。
【0021】
まず、ラジカル重合性モノマー(A1)としては、具体的には、例えば下記一般式(A1−I)で表されるモノマーが挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
一般式(A1−I)中、V1は−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2−、−CO−、−CON(Q1)−、−SO2N(Q1)−又はフェニレン基(以下フェニレン基をPhで表すこともある。ただしPhは1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基を含む)を表す。ここで、Q1は水素原子又は炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、フロロベンジル基、メチルベンジル基、シクロヘキシルメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
V1の好ましい態様として、−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−が挙げられる。
【0024】
a1及びa2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−CN基、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又は−CH2COOR10基(R10はアルキル基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)を表す。
【0025】
Rは、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0026】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO2R11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO2R11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14)、−SO2(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0027】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0028】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
【0029】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0030】
上記式(A1−I)におけるRで表されるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
上記式(A1−I)におけるRで表される複素環基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
更に好ましくは、上記ラジカル重合性モノマー(A1)として、下記一般式(A1−II)で表される環状脂肪族基を置換基中に含有するモノマーが挙げられる。
【0033】
【化2】
【0034】
一般式(A1−II)中、a1、a2及びV1はそれぞれ前記一般式(A1−I)におけるa1、a2及びV1と同義である。
【0035】
R0は、炭素数5〜30個の環状構造を構成する炭化水素基であり、単環式、多環式、架橋環式、スピロ環式等の環状構造が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。好ましくは炭素数6〜25が好ましい。
【0036】
以下に脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。なお、下記構造例において、共役しない位置に二重結合を含有してもよい。
【0037】
【化3】
【0038】
【化4】
【0039】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、前記式(A1−I)中のRで例示したと同一の内容のものが挙げられる。
【0040】
L1は、式(A1−II)における−V1−と−R0とを連結する基を表し、直接結合又は総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)を表す。好ましくは直接結合又は総原子数1〜12の連結基を表す。但し、R0が単環式脂肪族基の場合は、L1は直接結合ではなく、総原子数が1〜12の連結基であることが好ましく、更には総原子数1〜8の連結基であることが好ましい。
【0041】
L1における連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0042】
【化5】
【0043】
ここで、z1、z2は各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。z3、z4は各々、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)等を示す。
【0044】
本発明では、カチオン重合性モノマー(A2)(以下、「カチオン重合性有機化合物」とも称する)として、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0045】
カチオン重合性有機化合物の具体例としては、エポキシ基含有の化合物(脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状エーテル又は環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和炭化水素化合物(ビニル炭化水素化合物)等を挙げることができる。
【0046】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性有機化合物として、エポキシ基、ビニルオキシ基含有の化合物(以下「ビニル化合物」とも称する)が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性有機化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物(エポキシ化合物の混合物)を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度が良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0047】
上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0048】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.28,497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能エポキシ化合物を挙げることができる。
【0049】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価又は多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ又はポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシド化合物として、例えば、特開平11−242101号明細書中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕記載の化合物、特開平8−277320号明細書中の段落番号〔0016〕〜〔0029〕記載の化合物、特開平10−158385号明細書中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0050】
オキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0051】
具体的には、例えば特開2000−239309号明細書中の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物、J.V.CRIVELLO et.al, J.M.S. PUREAPPL.CHEM.、A30、p.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
ビシクロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号等記載の化合物、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1−エチル−4−ヒドロキシエチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物を挙げることができる。
【0052】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等のスチレン化合物、ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等のビニル基置換脂環炭化水素化合物、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物(V1が−O−に相当の化合物)、2−メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of PolymerScience:Part A:Polymer Chemistry,Vol.32,2895(1994)に記載されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science:Part A:PolymerChemistry,Vol.33,2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal ofPolymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。
【0053】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明では、上記したカチオン重合性化合物(A2)の1種又は2種以上を用いることができ、特に上述のように、ビニルエーテル類、エポキシ化合物やオキセタン化合物におけるオキシラン構造を有するものが光重合反応性や重合体の膜特性が良好になる点で好ましい。
1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有する多官能性化合物を30質量%以上の割合で含むカチオン重合性有機化合物として好ましく用いられる。
【0055】
本発明における重合性基含有のモノマー(A)の添加量は、セルロースアシレートの添加量に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有する重合性基含有モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0057】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B1)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜2個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有がより好ましい。
カチオン重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B2)と称することもある)は、分子中にカチオン重合性基の1〜10個と光安定化基の少なくとも1個とを含む化合物が好ましく、光安定化基は複数個含有されてもよい。カチオン重合性基を2〜6個含有がより好ましい。
【0058】
光安定化性能を有する化合物(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」pp235((株)シ−エムシー、1990年刊)に記載の従来公知のものが挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダ−ドアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、又はベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環、ピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0059】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0060】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、 米国特許3493539号、同4528311、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号、同8−188737号に記載の化合物が挙げられる。
【0061】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841等記載の化合物が挙げられる。
【0062】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU1)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0063】
【化6】
【0064】
式(BU1−I)中、V2、b1及びb2は、各々前記一般式(A1−I)のV1、a1及びa2と同一の内容を表す。
b1及びb2は、いずれか一方が水素原子であることが好ましく、水素原子以外の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
L2は−V2−と−U1とを連結する基を表し、単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、前記の一般式(A1−II)のL1と同一の内容を表す。更に、L2は下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。L2全体の水素原子を含まない連結にかかわる原子数が1〜20個の範囲、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることが好ましい。
【0065】
【化7】
【0066】
式(L2a)〜(L2d)中、r1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、r2及びr3は同じでも異なってもよく、各々水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0067】
上記式(BU1−I)中、U1は1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、ベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、又はベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基又はベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。
【0068】
【化8】
【0069】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのフェニル基の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが好ましくは1個存在する。
【0070】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(A1−I)のRに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜18のアルキル(又は炭素数1〜6、もしくは1〜2のアルキル)、アリール(例えば、炭素数6〜20の、例えば、フェニル基)、ヘテロアリール(例えば、ピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(例えば、炭素数6〜20の)、アルコキシ(例えば、炭素数1〜6又は1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、又はハロゲン(例えば、F又はCl、特にベンゾ環上の5位及び/又は6位上に、及び/又はヒドロキシ置換フェニルの5′位上にClを有するもの)であってよい。ベンゾ環の置換基としてはまた、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリル又はチエニル環を挙げることができる。アルキル及びアルコキシ置換基のいずれも1〜5個の(又は1〜2個の)介在する酸素、イオウ又は窒素原子を有してよい。
【0071】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接又は連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
【0072】
【化9】
【0073】
式(BH−I)中のU2は、下記式(U2−I)又は(U2−II)を表す。
【0074】
【化10】
【0075】
式(U2−I)及び(U2−II)中、r11及びr12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表すか、又はr11及びr12は一緒になってペンタメチレン基を表す。r13は、水素原子又はシアノ基を表す。
R21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、―C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、―OCOR23基、又は−OR23基を表す。
R22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(A1−I)中のRの炭化水素基と同一の内容を表す。
Y1は、酸素原子又はイミノ基を表し、Y2は、酸素原子、メチン基又は「―L2―」に直結する基を表す。
【0076】
また、ベンゾフェノン系重合性化合物及びベンゾトリアゾール系重合性化合物以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
本発明における、上記ラジカル重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B1)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B1)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
【0078】
一方、カチオン重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B2)としては、分子中に1〜10個のカチオン重合性基を含有するものが挙げられ、好ましくは、2〜6個である。具体的には、上記式(BU1−I)又は(BH−I)で表される{C(b1)H=C(b2)−V2−}の代わりにエポキシ基又はビニルオキシ基を結合された化合物が挙げられる。好ましくは、上記「−U1」の化学構造中の水素原子又は水素原子以外の置換基に代えた該カチオン重合性基を複数含有する。
【0079】
又、他の好ましい態様として、前記の多官能カチオン重合性モノマー(A2)において、その分子中のカチオン重合性基の代わりに上記式(BU1−I)の「−U1」基を結合してなる化合物が挙げられる。
【0080】
本発明のセルロースアシレート溶液には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性化合物を更に共存して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フイルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0081】
これらモノマーの具体例として、ポリオキソアルキレン基を含有するモノマーとして、特開平7−238115号公報、特開平8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0082】
アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等が挙げられる。
【0083】
また、ホスホニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報等が挙げられる。
【0084】
また、帯電防止性基を有するカチオン重合性モノマーとしては、紫外線吸収性基含有モノマーの場合と同様にラジカル重合性基に代えて該カチオン重合性基が結合してなるものが挙げられる。
【0085】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上の重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有することが好ましい。
多官能モノマー(C)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜5個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0086】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0087】
脂肪族多価アルコール化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等と不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換又はポリ置換の重合性化合物が挙げられる。
【0088】
その他のエステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0089】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0090】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載される1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物が挙げられる。
【0091】
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0092】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0093】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは3〜5個である。該硬化剤の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、セルロースアシレートドープ組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0094】
カチオン重合性基を有する多官能性化合物は前記カチオン重合性化合物と同一の内容のもの、特開平8−277320号記載のエポキシ化合物、特開2002−29162号記載のビニルオキシ基含有化合物等が挙げられる。
また、本発明の多官能性化合物は、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号明細書中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕記載の化合物、特開2000−191737号明細書中の段落番号〔0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0095】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、更に、オキセタンモノアルコール化合物を含有することが好ましい。セルロースアシレートドープ組成物がオキセタンモノアルコール化合物を含有していることによって、耐水性、耐湿性に優れ且つ力学的特性に優れるセルロースアシレートフイルムを作製することができる。
【0096】
オキセタンモノアルコール化合物としては、1分子中にオキセタン基を1個以上有し且つアルコール性水酸基を1個有する化合物であればいずれも使用可能である。
【0097】
具体例としては、例えば特開平11−199647号明細書中の段落番号〔0030〕に記載の化合物等が挙げられる。入手の容易性から、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンが好ましく用いられる。本発明の化合物としては、これらに限定されるものでない。本発明では、オキセタンモノアルコール化合物のうちの1種又は2種以上を用いることができる。モノオキセタンアルコール化合物の使用量は、カチオン重合開始剤の使用量に対して、1〜30質量%の範囲で用いることが好ましい。この範囲において、重合反応性を阻害しないで膜の強度をより良化することができる。
【0098】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光熱変換剤(IR)について詳述する。
本発明の光熱変換剤(IR)は、近赤外線光照射されて光吸収し、吸収した近赤外線を熱に変換する機能を有する化合物である。発生した熱により、後述の熱ラジカル発生剤が分解しラジカルを発生する、又は酸発生剤が熱により酸を発生する。
本発明において用いられる光熱変換剤としては、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。本発明の重合反応は、重合開始が近赤外線の照射であり、従来の紫外線照射による重合系に比べ、セルロースアシレート組成物の紫外線吸収による照射光量の減衰が回避されるので重合反応に効果的である。
【0099】
本発明の光熱変換剤(IR)としては、近赤外光を吸収し熱を発生する化合物であれば特に制限はなく、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている赤外吸収性の微粒子顔料が利用できる。
これら顔料は、添加される組成物に対する分散性を向上させるため、必要に応じて公知の表面処理を施して用いることができる。表面処理の方法には、分散用樹脂を表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤やエポキシ化合物、イソシアナート化合物等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。顔料の粒径は1μm以下の範囲にあることが好ましく、0.005μm〜0.3μmの範囲にあることが更に好ましい。この範囲において、製膜されたセルロースアシレートフイルムの光学特性を損なうことなく用いることができる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術を用いることができる。
【0100】
染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、「機能性色素の化学」(檜垣編集、1981年、(株)シーエムシー発行)、「色素ハンドブック」(大河・平嶋・松岡・北尾編集、講談社発行)、J.FABIAN、Chem.Rev.、92、pp1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0101】
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノン染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料(例えば、オキソノール系、イミニウム系、シアニン系、ピリリウム系、スクワリウム或いはクロコニウム系、アズレニウムウム系、等)、有機金属錯体などの赤外線吸収染料が挙げられる。
【0102】
例えば、以下に挙げるものを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
米国特許第5,156,938号記載、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号、同63−115173号、特開2000−347393号 等に記載されているメチン染料、
シアニン染料として、英国特許434,875号、米国特許第4,756,993号、米国特許第4,973,572号等、特開昭57−46245号、同58−125246号、同58−219091号、同59−24692号、同59−84248号、同59−150795号、同60−78787号、特公平5−60868号、特開平2−67183号、同4−13773号、同5−139046号等、特開2001−125260号等に記載のヘプタメチン以上の色素、
カルボニウム系及びイミニウム系の染料として、特開昭55−79451号、同55−163094号、同56−8149号、同58−181690号、同2000−338651号等に記載の染料、
アズレニウム系染料として、同60−263158号、同61−15151号、同60−192691号、同61−68294号等に記載の染料、
スクワリリウム或いはクロコニウム染料として、特開昭58−112792号、同58−173696号、同58−214162号、特開2000−171975号、同2000−206685号、Jurgen Fabian, Hiroyuki Nakazumi, and Masaru Matsuoka,”Near−Infrared Absorbing Dyes”, Chem.
Rev. 92,1197−1226(1992)に等に記載の染料、
キノン染料として、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号、特開平6−256541号、同7−72332号、8−317735号等に記載の染料
フタロシアニン染料として、特開昭64−60660号公報、特開平1−100171号公報、特開平3−31247号公報、特開平4−15263号公報、特開平4−15264号公報、特開平4−15265号公報、特開平4−15266号公報、特開平11−235883号等に記載のフタロシアニン化合物、特開平2−138382号公報に記載のアルキルフタロシアニン化合物、特開平3−77840号公報、特開平3−100066号公報に記載のアシロキシフタロシアニン化合物、特開平4−348168号公報に記載のアルコキシフタロシアニン化合物、特開昭60−23451号公報、特開昭61−215662号公報、特開昭61−215663号公報、特開昭63−270765号公報、特開平1−287175号公報、特開平2−43269号公報、特開平2−296885号公報、特開平3−43461号公報、特開平3−265664号公報、特開平3−265665号公報に記載のナフタロシアニン化合物、特開平1−108264号公報、特開平1−108265号公報に記載のジナフタロシアニン化合物等、
(チオ)ピリリウム染料として、米国特許第3,881,924号、米国特許第4,283,475号、特開昭58−181051号、同58−181689号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、同61−26044号、号特公平5−13514号、同5−19702号、同6−54394公報、特開平11−95421号等に開示されているピリリウム化合物、
有機金属錯体として、特公平8−22613号、同8−22615号、特開平3−120086号、同7−164729号等に記載のジチオール系錯体、特開昭61−108585号、同63−139303号等のジアミン系錯体、特開昭58−224796号、同62−165648号公報等記載のメルカプトフェノール系錯体等。
【0103】
本発明に用いることのできる光熱変換剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、その使用量は、セルロースアシレート組成物の全固形分に対し、0.01〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に1〜8重量%であることが好ましい。
【0104】
次に、本発明に用いることのできる熱重合開始剤(I)について詳述する。
前述のように、光熱変換剤は近赤外線を吸収して熱を発生するが、本発明の熱重合開始剤(I)はその熱によりラジカル又は酸を発生する化合物である。本発明において用いられる熱重合開始剤(I)は、作成されるフイルムの透光性からその極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。
【0105】
まず、熱によりラジカルを発生する化合物(I1)(以下、化合物(I1)ということもある)について詳述する。
[ラジカルを発生する化合物]
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(I1)は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
化合物(I1)としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、化合物(I1)は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
具体的には、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物、等が挙げられる。
【0106】
上記オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載)、アンモニウム塩(米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載)、ホスホニウム塩(米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書等に記載)、ヨードニウム塩(欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報等に記載)、スルホニウム塩(欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書等に記載)、アルソニウム塩(C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載)、セレノニウム塩(J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載)等のオニウム塩が挙げられる。中でも、下記一般式(I1−a)で示されるヨードニウム塩化合物、又は一般式(I1−b)で示されるスルホニウム塩化合物が好ましい。
【0107】
【化11】
【0108】
上記一般式において、Ar1 、Ar2 はそれぞれ、置換基を有していても良い炭素数20以下のアリール基を示す。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、カルボキシフェニル基、アニリノフェニル基、アニリノカルボニルフェニル基、モルホリノフェニル基、フェニルアゾフェニル基、メトキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ニトロナフチル基、アントラキノニル基等が挙げられる。
【0109】
Rb1 、Rb2、Rb3は、置換基を有していても良い炭素数18以下の炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、ビニル基、1−メチルビニル基、2−フェニルビニル基等のアルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基が挙げられる。これらの炭化水素基は、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アニリノ基、アセトアミド基等の置換基を有していても良い。また、Rb2 とRb3 とが互いに結合し環を形成していても良い。Rb1〜Rb3の置換基中、少なくとも一つの置換基がアリール基であることが好ましい。(A―)は、無機アニオン又は有機アニオンを表す。
無機アニオンは、ハロゲンイオン(F、Cl、Br等)、PF6イオン、SbF6イオン、ClO4イオン、BF4イオン等、有機アニオンは、有機ボレートイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、ホスホネートイオン等が挙げられ、従来公知の対アニオンを用いることができる。
【0110】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報明細書中の段落番号「0039」〜[0048]記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0111】
上記カルボニル化合物としては、アセトフェノン類、ヒドロキシアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン化合物類、安息香酸エステル誘導体、ベンジルメチルケタール、アシルホスフィンオキサイド等が挙げられる。例えば、特開平8−134404号明細書の段落[0015]〜[0016]記載等に記載の化合物が挙げられる。
【0112】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−19925号公報中の段落番号[0025]に記載の化合物類が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0113】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0114】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。
【0115】
具体例として、下記一般式(I1−c)で表される芳香族基を少なくとも3個有する有機ホウ酸化合物が挙げられる。
【0116】
〔一般式(I1−c)〕
{Ar}m{Rc}nB− M+
【0117】
式中、Arはそれぞれ独立に、炭素原子数が6〜18の芳香族基を表す。これらの芳香族基は1つあるいは2つ以上の置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の直鎖状或いは分岐のアルキル基、アリール基、アルケニル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、アセチル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミノ基、またはこれらを2種以上組み合わせたものが挙げられる。Rcは炭素数1〜22の置換されてもよい脂肪族基を表し、置換基としては前記Arに置換されると同様のものが挙げられる。これらの芳香族基のなかでも、安定性の観点からは、無置換の芳香族基、或いは、ハロゲン原子、ハロアルキル基を置換基として有するものが好ましく、さらに好ましくは、一分子中にフッ素原子を4個以上有するか、或いは、置換基として、4個以上のフッ化アルキル基を有する有機ホウ酸塩化合物が挙げられる。
mは3又は4の整数、nは0又は1を表し、且つm+nは4である。好ましくはmが4である。
【0118】
また、カチオンであるM+の好ましい例としては、”Onium ions”(A. Olha, Kennneth K. Laali, Qi Wang, G.K. Surya Prakashら著、出版:A Wiley−Intorscience Pubilcation )に記載のアゾニウム塩(アンモニウム塩、ジアゾニウム塩)、オキソニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ハロニウム塩、シリコニウム塩等、或いは、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩のカチオン部などを挙げることができる。例えば、特開平5−278330号公報中の段落番号[0051]〜[0052]記載のアンモニウム塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体に記載の化合物等が挙げられる。化合物の安定性、感度等の観点より、ホスホニウム、スルホニウム、ピリジニウムなどがより好ましい。
【0119】
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0120】
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号明細書中に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物、或いは一般式(I)で示されるジスルホン化合物等が挙げられる。
【0121】
一般式(I)
Rd1・SO2・SO2・Rd2
【0122】
式中、Rd1及びRd2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。
式中、Rd1、Rd2がアルキル基を表すとき、該アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状のものであっても、環を形成しているものでもよく、また、置換基を有していてもよい。好ましくは、炭素数が1ないし10のアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、などが挙げられる。
また、置換アルキル基には、上記のようなアルキル基に、例えば、塩素原子のようなハロゲン原子、メトキシ基のような炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基のようなアリール基、フェノキシ基のようなアリールオキシ基などが置換したものが含まれ、具体的には、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、フェニルメチル基、ナフチルメチル基、フェノキシメチル基などが挙げられる。
【0123】
Rd1、Rd2がアルケニル基の場合、該アルケニル基としては、例えばビニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、また置換アルケニル基にはビニル基に、例えば、メチル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、また、それら置換基がさらにメトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子などの置換基を有するものなどが含まれ、具体的には、1−メチルビニル基、2−メチルビニル基、1,2−ジメチルビニル基、2−フェニルビニル基、2−(p−メチルフェニル)ビニル基、2−(p−メトキシフェニル)ビニル基、2−(p−クロロフェニル)ビニル基、2−(o−クロロフェニル)ビニル基、1−シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0124】
また、Rd1、Rd2がアリール基を表す場合、該アリール基としては単環あるいは2環のものが好ましく、例えばフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基などが挙げられる。
置換アリール基には上記のようなアリール基に、例えば、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、イミド基、シアノ基などが置換したものが含まれ、具体的には4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−カルボキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−クロロ−1−ナフチル基、5−ニトロ−1−ナフチル基、5−ヒドロキシ−1−ナフチル基、6−クロロ−2−ナフチル基、4−ブロモ−2−ナフチル基、5−ヒドロキシ−2−ナフチル基などが挙げられる。
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、重合性モノマーの全量に対し0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、特に好ましくは1〜20重量%の割合で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0125】
[酸発生剤]
酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。これらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる
酸発生剤の他の例としては、特開平2−161445号公報に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特願平3−140109号に記載のイミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物等が挙げられる。
【0126】
これらの酸を発生する官能基又は化合物を、ポリマーの主鎖若しくは側鎖に導入した化合物も好適に挙げることができる。
例えば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号の各明細書、特開昭63−26653号、同55−164824号、同62−69263号、同63−146037号、同63−163452号、同62−153853号、同63−146029号の各公報、
等に記載の化合物が挙げられる。
更に、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad et al,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem,Soc,.(B),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号の各明細書等に記載の酸を発生する化合物も使用可能である。
【0127】
これらの酸発生剤は、全重合性化合物の全質量に対し、0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、ドープ組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。また、これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
そして、本発明では、上記したラジカル重合性有機化合物と共に、カチオン重合性有機化合物を用いることが好ましい。
【0129】
本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度、得られる製膜フイルムの力学的特性などの点から、上記したラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性有機化合物とを、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0130】
また、本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、ラジカル重合性有機化合物及びカチオン重合性有機化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
【0131】
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号などに記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0132】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物や低級脂肪族アルコールが一般に使用される。低級脂肪族炭化水素の塩化物の例には、メチレンクロライドを挙げることができる。低級脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールが含まれる。その他の溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない、アセトン、炭素原子数4から12までのケトン(例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等)、炭素原子数3〜12のエステル(例えばギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル及び2−エトキシ−エチルアセテート等)、炭素原子数1〜6のアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等)、炭素原子数3〜12のエーテル(例えばジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類(例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等)が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で、塩化メチレン、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒又はこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。
【0133】
また、溶媒には、酢酸メチルを主溶媒に用いて、更にケトン類、アルコール類を添加した混合溶媒をドープ調製溶媒に用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。この場合、酢酸メチルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることが好ましい。
また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0134】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題はない。
【0135】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0136】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n* (Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、40℃での粘度が1〜2000Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paであり、特に好ましくは40℃での粘度が10〜150Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が5万〜50万Paである。
【0137】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法又はバンド方法と称される、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0138】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0139】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
【0140】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0141】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0142】
本発明の熱重合反応は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、近赤外光であればいずれでもよく、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプ等が挙げられる。波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化照射等を採用して用いることもできる。
【0143】
近赤外線照射による光重合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性化合物を使用する場合には、重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する近赤外線の照射強度は、1〜500mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、近赤外照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0144】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。
【0145】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0146】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行ことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、2秒以上1分以下がさらに好ましく、3秒以上30秒以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。更に、本発明で得られるセルロースアシレートフィルムは、アルカリ処理を浸漬法で実施してもよい。すなわち、アルカリ処理浴、水洗浴、酸処理浴更に水洗浴、場合によりリンス浴などを連続的又は間歇的に配置して、表面処理を実施できる。この場合各溶液は、塗布方式で使用される対応する溶液と内容としては、同一の組成である。
【0147】
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0148】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に述べる。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0149】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0150】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。
反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0151】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体としても有用である。本発明のセルロースアシレートフィルムは、印刷製版用、医療用、一般写真用等のいずれのハロゲン化銀写真感光材料の支持体として用いることができる。また、その膜厚は30〜250μmであることが好ましい。このようなハロゲン化銀写真感光材料についてはT. H. James et. al. The Theory of the Photographic Process 第4版 (Macmillan Publishing Co.,Inc. 1977)等に記載されている。
【0152】
以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0153】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0154】
実施例1〜2及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
{実施例1}
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)にて1時間、35℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0155】
セルローストリアセテート(置換度2.83、6位のアシル化の置換度0.93、2,3位のアシル化の置換度1.90、粘度平均重合度320、含水率0.4質量%、メチレンクロライド溶液中6質量%の粘度305mPa・s)18質量部
酢酸メチル 55質量部
メチルエチルケトン 10質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
n−ブタノール 5質量部
可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 1質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm)) 0.1質量部
下記のUV吸収剤(1) 0.15質量部
モノマー(A−1):メチルメタクリレート 1.0質量部
下記構造の光熱変換剤(IR−1) 0.05質量部
下記構造の重合開始剤(I−1) 0.01質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン 0.005質量部
【0156】
【化12】
【0157】
【化13】
【0158】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧、1.5、1.2であり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0159】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とした。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kWハロゲンランプを用いて、ドープ表面の全光照射量が500mJ/cm2となる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0160】
{実施例2}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)のメチルメタクリレート(モノマー(A−1))の代わりに、下記構造のモノマー(A−2)を同量用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0161】
【化14】
【0162】
{比較例1}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、モノマー(A−1)、光熱変換剤(IR−1)、及び重合開始剤(I−1)を除いた他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚60μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0163】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.7%、偏光度は99.97%であった。
【0164】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着剤を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作成した。
【0165】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の結果を表−Aに記載した。
【0166】
【表1】
【0167】
表−A記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行なった。
1)膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
○:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0168】
2)ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値。B:経時後の値。
【0169】
3)引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値。 B:経時後の値。
【0170】
4)異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0171】
5)耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
△:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0172】
6)偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
【0173】
P=√(Yp−Yc)/(Yp+Yc)
【0174】
7)耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上6%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0175】
本発明の実施例1及び実施例2のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
更に、重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基を含有化合物を用いた実施例2の試料は、ヘイズ値がより小さく良化し、且つ膜の引き裂き強度が向上していることが見い出された。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、引き裂き強度、異物・汚れ、耐候性が低い値を示した。又、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
これらは、フィルム作製工程で重合性モノマーが速やかに且つ充分に重合し難いためによるものと推察される。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0176】
{実施例3〜実施例7}
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、モノマー(A−1)、光熱変換剤(IR−1)、及び重合開始剤(I−1)の替わりに下表−Bの各化合物を同量ずつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚50μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0177】
【表2】
【0178】
得られた実施例3〜7の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行なった。各実施例のものは、実施例2と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0179】
{実施例8}
(セルローストリアセテート溶液の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の組成物の代わりに、下記内容の組成物(D−8)を用いた他は、実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液を得た。
【0180】
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.93、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%) 20質量部
ジクロロメタン 62質量部
アセトン 5質量部
メタノール 6質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 0.7質量部
シリカ微粒子(粒径20nm) 0.1質量部
重合性モノマー:シクロオクチルメチルアクリレート 0.6質量部
:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート0.15質量部
下記光安定化モノマー(1) 0.20質量部
下記光安定化モノマー(2) 0.15質量部
下記構造の重合開始剤(I−7) 0.15質量部
下記構造の光熱変換剤(IR−7) 0.05質量部
【0181】
【化15】
【0182】
【化16】
【0183】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で10分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』)で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、『FH 025』)にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0184】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚50μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0185】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Cに記載した。
【0186】
【表3】
【0187】
以上の結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。又、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0188】
{実施例9〜15}
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)の重合開始剤(I−7)及び光熱変換剤(IR−7)の替わりに、下記の重合開始剤(I−8)及び光熱変換剤(IR−8)を用い、更に光安定化モノマー(1)及び(2)の代わりに下記表−Dの各光安定化モノマーを用いた他は、実施例8と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
【化17】
【0192】
{実施例16〜27}
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)の重合性モノマー[シクロオクチルメチルメタクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート]の代わりに、下記表−Eの各重合性モノマーを用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0193】
【表6】
【0194】
【表7】
【0195】
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0196】
{実施例28〜32}
実施例8のセルローストリアセテート溶液(D−8)において、光熱変換剤(IR−7)の替わりに下記の光熱変換剤(IR−9)を用い、更に重合性モノマー、重合開始剤及び光安定化モノマーの代わりに下記表−F記載の各化合物を用いた他は、実施例8と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例8と同等の良好な性能であった。
【0197】
【化18】
【0198】
【表8】
【0199】
【表9】
【0200】
{実施例33}
特開平11−316378号の(実施例1)において、その第1透明支持体を本発明の実施例1の試料1〜6で得られるセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号の(実施例1)を実施して試料1〜6を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0201】
{実施例34}
特開平7−333433の実施例1の富士写真フィルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例1の本発明試料1〜9のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、特開平7−333433の実施例1と全く同様にした光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0202】
{実施例35}
本発明では更に、多種の光学用途に利用され、本発明の代表として試料1〜9を、例えば特開平10−48420実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0203】
{実施例36}
実施例1の本発明の試料1〜3において、そのフィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にしてそのフイルムである本発明の試料1〜3を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流延製膜方法を実施する流延製膜ラインの一実施形態の概略図である。
【符号の説明】
11 ミキシングタンク
12 送液ポンプ
13 フィルタ
14 流延ダイ
15 流延バンド
16 流延側部回転ドラム
17 非流延部側回転ドラム
18 ガイドロール
19 剥ぎ取りロール
20 ガイドロール
21 巻取りロール
22 乾燥部
23 フィルム
【発明の属する技術分野】
本発明は、セルロースアシレートフィルム、及びそれを用いた光学用途に利用される光学フィルムに関する。特に、液晶表示装置等に用いられる偏光板保護フィルム、位相差フイルム、視野拡大フィルム、プラズマディスプレーに用いられる反射防止フィルムなどの各種機能フィルム、ハロゲン化銀写真感光材料に用いられる支持体フイルム、又、有機ELディスプレー等にも使用できる各種機能フイルム等に利用できる光学フイルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースアシレートフィルムは透明で、優れた物理的、機械的性質を有し、且つ温度湿度変化に対する寸法変化が少なく、従来からハロゲン化銀感光材料フィルム用支持体、製図トレーシングフィルム、電気絶縁材料などの広い分野で使用され、最近では液晶画像表示装置の偏光板用保護フィルムとして使用されている。
【0003】
しかし、そのままでは、引裂強度、耐折強度が低く、特に低湿度の状態下では、非常に脆くなり裂け易い欠点があった。このため、これらを改良するために、セルロースアシレートの溶液流延製膜方法を用い、セルロースアシレート溶液に低分子の可塑剤(例えば、リン酸エステル類、フタル酸エステル類等)、高分子量可塑剤(例えばポリエステルエーテル、ポリエステル−ウレタン、ポリエステル等)を、適宜選択して単独もしくは混合したドープ組成物を用いることが試みられている(例えば、特公昭47−760号、特公昭43−16305号、特公昭44−32672号、特開平2−292342号、5−197073号公報)。また、米国特許第3,277,032号明細書には、ポリメチルアクリレート又はメチルアクリレートのコポリマーをセルローストリアセテートと混合させて、セルロースエステルフィルムの可塑性等を付与する技術が記載されている。しかしながらこれらの支持体でも、長期保存下での膜強度安定性、フイルムの着色等が十分でなかった。
【0004】
一方、近年、液晶画像表示装置は高精細化がますます進み、偏光板用保護フィルムとして優れた光透過性、光学的な無配向性、偏光素子との良好な接着性、優れた平面性、紫外線吸収性、帯電防止性等の性質、及び耐久性化が求められている。また、CRTに代わって注目を集めている液晶表示装置に用いることのできる光学的に異方性を有する光学補償フィルムは、液晶表示装置は異方性をもつ液晶材料を使用するために斜めから見ると表示性能が低下するという視野角の問題があり、更なる性能向上が望まれている。
【0005】
光学補償フィルムとしては、液晶性化合物の配向形態を固定化して得られる異方性材料が最近の主流であるが、その製造方法は従来よりセルロースエステルフィルムを支持体とし、その上に液晶性化合物を溶剤塗布している為、セルロースエステルフィルム中の添加剤がブリード現象によって液晶性化合物中に混入してしまい、液晶性化合物の配向を乱してしまったり、白濁させてしまうなどの問題点を有していた。これらの特性を改良のするために、例えばフィルム製造中に紫外線吸収剤、帯電防止剤を添加、或いは紫外線吸収性基を含有した高分子(例えば、特開平6−148430号、特開2002−31715号等)の添加が提案されている。
【0006】
また、ドープ中に重合可能なモノマーを添加し、剥離前にイオン化照射を行い製膜速度を向上させる技術(米国特許第3,738,924号明細書)、ドープ中に紫外線吸収性基を含む重合可能モノマーと光重合開始剤を添加し、流延工程で紫外線光照射して重合して製膜する技術(例えば、特開2002−20410号、同2002−47357号等)が知られている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、イオン化照射による重合反応は、分子の切断などが起こり易く、不必要な又は有害な物質が生じ、後日他に悪影響を及ぼす虞がある。また、光重合反応を行う方法は、重合性モノマーの残存或いは十分な反応を進めるのに時間を必要とする懸念がある。
従って本発明の目的は、優れた引き裂き強度、耐折強度、優れた光学特性、及び長期保存安定性良好なセルロースアセテートフィルムを提供することである。他の本発明の目的は、それを用いて得られる光学フイルム、偏光板、光学補償フイルム及び液晶表示装置を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、下記の構成により解決されることが見出された。
(1) 溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
(2) 前記光熱変換剤(IR)が、波長700nm以上の近赤外波長領域に吸収帯があり、且つ分光吸光係数が10000以上の値を有する近赤外吸収剤であることを特徴とする上記(1)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(3) 前記セルロースアシレート組成物が、光安定化基を有する重合性基含有のモノマー(B)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のセルロースアシレートフィルム。
(4) 前記セルロースアシレート組成物が、分子内に2個以上の重合性基を有する多官能モノマー(C)の少なくとも一種を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(5) 前記モノマー(A)、(B)及び(C)の各重合性モノマーが、それぞれラジカル重合及びカチオン重合のいずれかで重合反応することを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(6) 前記重合性基含有のモノマー(A)が、多環式脂肪族炭化水素基を置換基として有する化合物であることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(7) 前記セルロースアシレート組成物が、オキセタン基及び一個の水酸基を有する化合物を含有することを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(8) 前記セルロースアシレート組成物が、微粒子を含有することを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(9) 上記セルロースの水酸基への置換度が、下記式(a)〜(b)の全てを満足するセルロースアシレートであることを特徴とする上記(1)〜(8)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルム。
(a) 2.6≦SA+SB≦3.0
(b) 2.0≦SA≦3.0
(c) 0≦SB≦0.8
[ここで、SAはアセチル基の置換度、SBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。]
(10) セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
(11) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フイルム。
(12) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学用偏光フイルム。
(13) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示素材。
(14) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学補償フイルム。
(15) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
(16) 上記(1)〜(9)のいずれかに記載され、その膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
本発明は、セルロースアシレート溶液(ドープ)中に、重合性化合物(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を共存させて流延方法で流延し、かつ近赤外線照射して重合性化合物(A)を速やかに重合反応させて、重合したポリマーがセルロースアシレートと相分離のない光学特性・膜強度に優れたフイルムが作成されるものである。即ち、近赤外線照射すると、光熱変換剤がその光を吸収して熱に変換する。その熱により熱重合開始剤が熱分解し、ラジカル又は酸を発生し重合性化合物の重合反応を開始することができる。
また、本発明において、熱ラジカル重合開始剤とラジカル重合性化合物、熱酸発生剤とカチオン重合性化合物、又は両者の重合反応系を混合した系での組み合わせの中で適宜選択することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のセルロースアシレートフィルムとその製造方法について、さらに詳細に説明する。
本発明のセルロールアシレートフィルムは、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む溶液流延方法により製造されるものである。
【0010】
[セルロースアシレート]
本発明に用いられるセルロースアシレートについて、以下に記す。本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ,針葉樹パルプ)などがあり、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。
【0011】
本発明においてはセルロースからエステル化してセルロースアシレートを作製するが、特に好ましい前述のセルロースがそのまま利用できる訳ではなく、リンタやパルプを精製して精製リンタと精製高級木材パルプとして用いられる。
【0012】
以上記述したセルロースアシレートについては、特開平10−45803号、特開平11−269304号、特開平8−231761号、特開平8−231761号、特開平10−60170号、特開平9−40792号、特開平11−5851号、特開平11−269304号、特開平9−90101号、特開昭57−182737号、特開平4−277530号、特開平11−292989号、特開平12−131524号、特開平12−137115号などに記載のセルロースアシレートを利用することも好ましい。
【0013】
[セルロースアシレート溶液(ドープ)の調製及びフイルムの作製]
次に上述のセルロースを原料から製造される本発明のセルロースアシレートについて記載する。本発明のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基への置換度が下記式(a)〜(c)の全てを満足するものが好ましい。
(a) 2.6≦SA+SB≦3.0
(b) 2.0≦SA≦3.0
(c) 0≦SB≦0.8
【0014】
ここで、SA及びSBはセルロースの水酸基に置換されているアシル基の置換基を表し、SAはアセチル基の置換度、またSBは炭素原子数3〜22のアシル基の置換度である。
【0015】
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部又は全部をアシル基によりエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位及び6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。本発明では、水酸基のSAとSBの置換度の総和は、より好ましくは2.7〜2.96であり、特に好ましくは2.80〜2.95である。また、SBの置換度は0〜0.8であり、特には0〜0.6である。さらにSBはその28%以上が6位水酸基の置換基であるが、より好ましくは30%以上が6位水酸基の置換基であり、31%がさらに好ましく、特には32%以上が6位水酸基の置換基であることも好ましい。また更に、セルロースアシレートの6位のSAとSBの置換度の総和が0.8以上であり、さらには0.85であり特には0.90であるセルロースアシレートフィルムも挙げることができる。これらのセルロースアシレートフィルムにより溶解性の好ましい溶液が作製でき、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能となる。
【0016】
本発明に用いられるセルロースアシレートの炭素数3〜22のアシル基(SB)としては、脂肪族基でもアリール基でもよく特に限定されない。それらは、例えばセルロースのアルキルカルボニルエステル、アルケニルカルボニルエステルあるいは芳香族カルボニルエステル、芳香族アルキルカルボニルエステルなどであり、それぞれさらに置換された基を有していてもよい。これらの好ましいSBとしては、プロピオニル、ブタノイル、ケプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、iso‐ブタノイル、t‐ブタノイル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、好ましいSBは、プロピオニル、ブタノイル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどである。
【0017】
セルロースアシレートの合成方法の基本的な原理は、右田他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)に記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相酢化法等がある。具体的には、例えば、特開平6−32801号、同7−70202号、同10−45804号、同10−511728号、特開2001−200901号等に記載の方法が挙げられる。
【0018】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、フィルムを構成するポリマー成分が実質的に上記の定義を有するセルロースアシレートからなることが好ましい。「実質的に」とは、全ポリマー成分の55質量%以上(好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上)を意味する。フィルム製造の原料としては、セルロースアシレート粒子を使用することが好ましい。使用する粒子の90質量%以上は、0.1〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が0.2〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく扁平ないし球形に近い形状も好ましい。
【0019】
本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度200〜700、好ましくは230〜550、更に好ましくは230〜350であり、特に好ましくは粘度平均重合度240〜320である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)により測定できる。更に特開平9−95538に詳細に記載されている。本発明のセルロースアシレートをフィルム製造時に使用する際には、その含水率は2質量%以下であることが好ましく、特に好ましくは0.7質量%以下の含水率を有するセルロースアシレートである。所望の含水率にするために、必要により従来公知の乾燥手段で乾燥すればよい。
本発明のこれらのセルロースアシレートは、その原料綿や合成方法は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7頁〜12頁に詳細に記載されている。
【0020】
次いで、重合性基含有のモノマー(A)について詳述する。
本発明では、重合性基含有モノマー(A)として、ラジカル重合性モノマー(A1)及びカチオン重合性モノマー(A2)のいずれでも用いることができる。
【0021】
まず、ラジカル重合性モノマー(A1)としては、具体的には、例えば下記一般式(A1−I)で表されるモノマーが挙げられる。
【0022】
【化1】
【0023】
一般式(A1−I)中、V1は−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−、−CONHCOO−、−CONHCO−、−SO2−、−CO−、−CON(Q1)−、−SO2N(Q1)−又はフェニレン基(以下フェニレン基をPhで表すこともある。ただしPhは1,2−、1,3−及び1,4−フェニレン基を含む)を表す。ここで、Q1は水素原子又は炭素数1〜8の置換されていてもよい脂肪族基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、フロロベンジル基、メチルベンジル基、シクロヘキシルメチル基、2−エトキシエチル基、3−メトキシプロピル基等)を表す。
V1の好ましい態様として、−COO−、−OCO−、−CH2OCO−、−CH2COO−、−O−が挙げられる。
【0024】
a1及びa2は同じでも異なってもよく、水素原子、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、−CN基、アルキル基(例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等)又は−CH2COOR10基(R10はアルキル基を表す。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等)を表す。
【0025】
Rは、脂肪族基、アリール基又は複素環基を表す。脂肪族基としては、炭素数1〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ナノデシル基、エイコサニル基、ヘネイコサニル基、ドコサニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルケニル基(例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、オクテニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基、オクタデセニル基、エイコセニル基、ドコセニル基、ブタジエニル基、ペンタジエニル基、ヘキサジエニル基、オクタジエニル基等)、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐状のアルキニル基(例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ヘキシニル基、オクタニル基、デカニル基、ドデカニル基等)、炭素数5〜22の脂環式炭化水素基(脂環式炭化水素基としては、単環式、多環式、架橋環式の脂肪族環状炭化水素基が挙げられ、その具体例としては、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプテン、シクロへプタジエン、シクロオクタン、シクロオクテン、シクロオクタジエン、シクロオクタトリエン、シクロソナン、シクロソネン、シクロデカン、シクロデセン、シクロデカンジエン、シクロデカトリエン、シクロウンデカン、シクロドデカン、ビシクロヘプタン、ビシクロヘキサン、ビシクロヘキセン、トリシクロヘキセン、ノルカラン、ノルピナン、ノルボルナン、ノルボルネン、ノルボルナジエン、トリシクロヘプタン、トリシクロヘプテン、デカリン、アダマンタン等の環構造炭化水素等)が挙げられる。
これらの中で、炭素数1〜18の直鎖状、炭素原子数3〜18の分岐状、並びに炭素原子数5〜16の環状の脂肪族基がより好ましい。
【0026】
かかる脂肪族基は置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、水素を除く一価の非金属原子団が用いられる。
非金属原子団の具体的な例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、ニトロ基、−OH基、−OR11、−SR11、−COR11、−COOR11、−OCOR11、−SO2R11、−NHCONHR11、−N(R12)COR11、−N(R12)SO2R11、−N(R13)(R14)、−CO(R13)(R14)、−SO2(R13)(R14)、−P(=O)(R15)(R16)、−OP(=O)(R15)(R16)、−Si(R17)(R18)(R19)、炭素数1〜18のアルキル基、炭素数2〜18のアルケニル基、炭素数2〜18のアルキニル基、炭素数5〜10の脂環式炭化水素基、炭素数6〜18のアリール基(アリール環としては、ベンゼン、ナフタレン、ジヒドロナフタレン、インデン、フルオレン、アセナフチレン、アセナフテン、ビフェニレン等)、酸素原子、硫黄原子、窒素原子のいずれかを少なくとも1個含有する単環式若しくは多環式の環構造を有する複素環基(複素環基としては、例えば、フラニル基、テトラヒドロフラニル基、ピラニル基、ピロイル基、クロメニル基、フェノキサチイニル基、インダゾイル基、ピラゾイル基、ピリジイル基、ピラジニル基、ピリミデイニル基、インドイル基、イソインドイル基、キノニイル基、ピロリジニル基、ピロリニル基、イミダゾリニル基、ピラゾリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チエニル基、ベンゾチエニル基等)等が挙げられる。
【0027】
前記のアルケニル基、アルキニル基、脂環式炭化水素基、アリール基、複素環基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記の脂肪族基に導入し得る基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0028】
前記R11は、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜18のアリール基、又は複素環基を表す。R11における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R11におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は、更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。R12は、水素原子又はR11基と同様のものを表す。
【0029】
前記R13及びR14は、各々独立に、水素原子、又はR11と同様のものを表し、R13とR14とは互いに結合して、N原子を含有する5員又は6員の環を形成してもよい。
前記R15及びR16は、各々独立に、−OH、炭素数1〜22の脂肪族基、炭素数6〜14のアリール基、又は−OR11を表す。R15及びR16における脂肪族基は前記Rで表される脂肪族基と同義である。R15及びR16におけるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。但し、かかる極性置換基において、R15及びR16の双方が−OHで表されることはない。
前記R17、R18及びR19は、各々独立に、炭素数1〜22の炭化水素基又は−OR20を表すが、これらの置換基の内少なくとも1つは炭化水素基を表す。炭化水素基は前記Rで示される脂肪族基及びアリール基と同様のものを表し、−OR20は前記−OR11と同様の内容を表す。
【0030】
上記式(A1−I)におけるRで表されるアリール基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したアリール基と同様のものが挙げられる。また、かかるアリール基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0031】
上記式(A1−I)におけるRで表される複素環基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示した複素環基と同様のものが挙げられる。また、かかる複素環基は更に置換基を有していてもよく、その導入し得る置換基としては、前記Rで表される脂肪族基に導入し得る置換基として例示したものと同様のものが挙げられる。
【0032】
更に好ましくは、上記ラジカル重合性モノマー(A1)として、下記一般式(A1−II)で表される環状脂肪族基を置換基中に含有するモノマーが挙げられる。
【0033】
【化2】
【0034】
一般式(A1−II)中、a1、a2及びV1はそれぞれ前記一般式(A1−I)におけるa1、a2及びV1と同義である。
【0035】
R0は、炭素数5〜30個の環状構造を構成する炭化水素基であり、単環式、多環式、架橋環式、スピロ環式等の環状構造が挙げられる。具体的には、炭素数5以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。好ましくは炭素数6〜25が好ましい。
【0036】
以下に脂環式炭化水素基のうち、脂環式部分の構造例を示す。なお、下記構造例において、共役しない位置に二重結合を含有してもよい。
【0037】
【化3】
【0038】
【化4】
【0039】
また、これらの脂環式炭化水素基は少なくとも1種の置換基を有していてもよい。脂環式炭化水素基の置換基としては、アルキル基、置換アルキル基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、水酸基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、アシル基、アルコキシカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の具体的な内容は、前記式(A1−I)中のRで例示したと同一の内容のものが挙げられる。
【0040】
L1は、式(A1−II)における−V1−と−R0とを連結する基を表し、直接結合又は総原子数1〜22個の連結基(ここでいう総原子数には、炭素原子、窒素原子又はケイ素原子に結合する水素原子を除く)を表す。好ましくは直接結合又は総原子数1〜12の連結基を表す。但し、R0が単環式脂肪族基の場合は、L1は直接結合ではなく、総原子数が1〜12の連結基であることが好ましく、更には総原子数1〜8の連結基であることが好ましい。
【0041】
L1における連結基としては炭素原子−炭素原子結合(一重結合又は二重結合)、炭素原子−ヘテロ原子結合(ヘテロ原子としては例えば、酸素原子、イオウ原子、窒素原子、ケイ素原子等)、ヘテロ原子−ヘテロ原子結合等から構成される原子団の任意の組合せで構成される。例えば、原子団としては下記のものが挙げられる。
【0042】
【化5】
【0043】
ここで、z1、z2は各々、水素原子、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、シアノ基、ヒドロキシル基、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等)等を示す。z3、z4は各々、水素原子、炭素数1〜8の炭化水素基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ベンジル基、フェネチル基、フェニル基、トリル基等)等を示す。
【0044】
本発明では、カチオン重合性モノマー(A2)(以下、「カチオン重合性有機化合物」とも称する)として、活性エネルギー線感受性カチオン重合開始剤の存在下に活性エネルギー線を照射したときに重合反応及び/又は架橋反応を生ずる化合物のいずれもが使用でき、代表例としては、エポキシ化合物、環状エーテル化合物、環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、環状チオエーテル化合物、スピロオルソエステル化合物、ビニルエーテル化合物などを挙げることができる。本発明では前記したカチオン重合性有機化合物のうちの1種を用いても2種以上を用いてもよい。
【0045】
カチオン重合性有機化合物の具体例としては、エポキシ基含有の化合物(脂環族エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、芳香族エポキシ樹脂等)、環状エーテル又は環状アセタール化合物、環状ラクトン化合物、チイラン化合物、チエタン化合物、ビニルオキシ基含有のビニルエーテル化合物、エポキシ化合物とラクトンとの反応によって得られるスピロオルソエステル化合物、エチレン性不飽和炭化水素化合物(ビニル炭化水素化合物)等を挙げることができる。
【0046】
上記した中でも、本発明では、カチオン重合性有機化合物として、エポキシ基、ビニルオキシ基含有の化合物(以下「ビニル化合物」とも称する)が好ましく用いられ、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するポリエポキシ化合物、1分子中に2個以上のビニルオキシ基を有するポリビニルオキシ化合物、1分子中に少なくともエポキシ基とビニルオキシ基を各々一個以上有する化合物、がより好ましく用いられる。特に、カチオン重合性有機化合物として、1分子中に2個以上のエポキシ基を有する脂環式ポリエポキシ化合物を含有し且つ該脂環式ポリエポキシ化合物の含有量がエポキシ化合物の全質量に基づいて30質量%以上、より好ましくは50質量%以上であるエポキシ化合物(エポキシ化合物の混合物)を用いると、カチオン重合速度、厚膜硬化性、解像度が良好になり、しかも樹脂組成物の粘度が低くなって製膜が円滑に行われるようになる。
【0047】
上記した脂環族エポキシ樹脂としては、少なくとも1個の脂環族環を有する多価アルコールのポリグリシジルエーテル、或いは不飽和脂環族環(例えば、シクロヘキセン、シクロペンテン、ジシクロオクテン、トリシクロデセン等)含有化合物を過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化して得られるシクロヘキセンオキサイド又はシクロペンテンオキサイド含有化合物などを挙げることができる。
【0048】
また、上記した脂肪族エポキシ樹脂としては、例えば、脂肪族多価アルコール又はそのアルキレンオキサイド付加物のポリグリシジルエーテル、脂肪族長鎖多塩基酸のポリグリシジルエステル、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートのホモポリマー、コポリマーなどを挙げることができる。さらに、前記のエポキシ化合物以外にも、例えば、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル、高級脂肪酸のグリシジルエステル、エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシ化アマニ油、エポキシ化ポリブタジエンなどを挙げることができる。信越シリコーン社製のK−62−722や東芝シリコーン社製のUV9300等のエポキシシリコーン、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.28,497(1990)に記載されているシリコーン含有エポキシ化合物のような多官能エポキシ化合物を挙げることができる。
【0049】
また、上記した芳香族エポキシ樹脂としては、例えば少なくとも1個の芳香核を有する1価又は多価フェノール或いはそのアルキレンオキサイド付加体のモノ又はポリグリシジルエーテルを挙げることができる。これらのエポキシド化合物として、例えば、特開平11−242101号明細書中の段落番号〔0084〕〜〔0086〕記載の化合物、特開平8−277320号明細書中の段落番号〔0016〕〜〔0029〕記載の化合物、特開平10−158385号明細書中の段落番号〔0044〕〜〔0046〕記載の化合物等が挙げられる。
これらのエポキシドのうち、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドが好ましく、特に脂環式エポキシドが好ましい。本発明では、上記エポキシドの1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0050】
オキセタニル基を含有する化合物としては、分子中に含有されるオキセタニル基の数は1〜10、好ましくは1〜4である。これらの化合物は、エポキシ基含有化合物と併用することが好ましい。
【0051】
具体的には、例えば特開2000−239309号明細書中の段落番号〔0024〕〜〔0025〕に記載の化合物、J.V.CRIVELLO et.al, J.M.S. PUREAPPL.CHEM.、A30、p.173〜187(1993)に記載のシリコン含有のオキセタン化合物等が挙げられる。
ビシクロオルソエステル化合物としては、例えば特表2000−506908号等記載の化合物、1−フェニル−4−エチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン、1−エチル−4−ヒドロキシエチル−2,6,7−トリオキサビシクロ〔2,2,2〕オクタン等の化合物を挙げることができる。
【0052】
ビニル炭化水素化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−t−ブトキシスチレン、4−ビニルビフェニル、ビニルナフタレン等のスチレン化合物、ビニルシクロヘキサン、ビニルビシクロヘプテン等のビニル基置換脂環炭化水素化合物、前記ラジカル重合成性モノマーで記載の化合物(V1が−O−に相当の化合物)、2−メタクリロイルオキシエチルビニルエーテル、2−アクリロイルオキシエチルビニルエーテル等のアルケニルビニルエーテル化合物、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のカチオン重合性窒素含有化合物、ブタンジオールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジオールジビニルエーテル、1,4−ベンゼンジメタノールジビニルエーテル、ハイドロキノンジビニルエーテル、サゾルシノールジビニルエーテル等の多官能ビニル化合物、Journal of PolymerScience:Part A:Polymer Chemistry,Vol.32,2895(1994)に記載されているプロペニル化合物、Journal of Polymer Science:Part A:PolymerChemistry,Vol.33,2493(1995)に記載されているアルコキシアレン化合物、Journal of Polymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,1015(1996)に記載されているビニル化合物、Journal ofPolymer Science:Part A:Polymer Chemistry,Vol.34,2051(1996)に記載されているイソプロペニル化合物等を挙げることができる。
【0053】
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、密着性、表面硬度を考慮すると、ジ又はトリビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0054】
本発明では、上記したカチオン重合性化合物(A2)の1種又は2種以上を用いることができ、特に上述のように、ビニルエーテル類、エポキシ化合物やオキセタン化合物におけるオキシラン構造を有するものが光重合反応性や重合体の膜特性が良好になる点で好ましい。
1分子中に2個以上のカチオン重合性基を有する多官能性化合物を30質量%以上の割合で含むカチオン重合性有機化合物として好ましく用いられる。
【0055】
本発明における重合性基含有のモノマー(A)の添加量は、セルロースアシレートの添加量に対して、0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましい。
【0056】
本発明のセルロースアシレート組成物は、光安定化性能を有する基を含有する重合性基含有モノマー(B)を含有することが好ましい。光安定化性能を有する基を含有する重合性モノマー(B)は、分子中に、前記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも1つの重合性基と、光安定化性能を有する有機残基(以下「光安定化基」と称する)とを含有する化合物であり、従来公知の化合物が挙げられる。
【0057】
ラジカル重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B1)と称することもある)は、分子中にラジカル重合性基の1〜2個と光安定化基の1個とを含む化合物が好ましく、ラジカル重合性基を一個含有がより好ましい。
カチオン重合性基を含有する光安定化基を有するモノマー(以下モノマー(B2)と称することもある)は、分子中にカチオン重合性基の1〜10個と光安定化基の少なくとも1個とを含む化合物が好ましく、光安定化基は複数個含有されてもよい。カチオン重合性基を2〜6個含有がより好ましい。
【0058】
光安定化性能を有する化合物(B)としては、例えば、大沢善次郎「高分子材料の劣化と安定化」pp235((株)シ−エムシー、1990年刊)に記載の従来公知のものが挙げられる。これらの化合物の少なくとも一つが置換された有機残基が光安定化基としてあげられる。好ましい光安定化基は、紫外線吸収性化合物を含む有機残基、ヒンダ−ドアミン骨格を含む有機残基である。紫外線吸収性化合物を含む有機残基は、波長370nm以下の紫外線の吸収性に優れ、且つ波長420nm以上の可視光の吸収が小さいものが好ましい。例えばオキシベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、トリアジン骨格を含む基、サリチル酸エステル骨格、シアノアクリレート骨格、又はベンゼン骨格を含む基等が挙げられ、特に紫外線の波長が320〜400nmの波長域に吸収性の良好なベンゾフェノン骨格を含む基、ベンゾトリアゾール骨格を含む基、s−トリアジン骨格を含む基が好ましい。
ヒンダードアミン骨格を含む有機残基としては、2−位と6−位にそれぞれ1〜2個のアルキル基を有するピペリジン環、ピペリジン環が挙げられる。特に、少なくとも一個の2,2,6,6−テトラアルキルピペリジン環を含む有機残基が好ましい。
【0059】
本発明において、光安定化基を含有するモノマー(B)は、紫外線含有モノマーとヒンダードアミン含有モノマーとを共存して用いる、或いは紫外線吸収性基とヒンダードアミン骨格を含有する基とを共に含む光安定化モノマーを用いることがより好ましい。このことにより、一層の耐光性が得られる。
【0060】
具体的には、例えばベンゾフェノン系モノマーとして、米国特許4304895号、同3162676号、特開平10−1517号公報、同10−60307号公報、同10−316726号公報、同10−182743号公報、特開2001−139640号公報、同2001−139924号公報等に記載の化合物等、また、ベンゾトリアゾール系モノマーとして、例えば、ANDRES S.、CHONGLI Z.、OTTO V.、J.M.S.−PUREAPPL.、A30(9&10)、pp.741〜755(1993)、 米国特許3493539号、同4528311、特開平2−63463号公報、同8−311045号公報、同9−3133号公報、同9−5929号公報、同9−194536号公報、同10―60307号公報、国際公開94/24112号公報、特開2001−114841号公報、同2001−139924号公報等の記載の化合物、他の紫外線吸収性基含有のモノマーとして、特開平7−258166号、同8−188737号に記載の化合物が挙げられる。
【0061】
ヒンダードアミン骨格を含むモノマーとして、例えば、特開平7−70067号、同9−3133号、同10−279832、同10−235992号、同11−138729号、特表平10−116883号、特開2001−114841等記載の化合物が挙げられる。
【0062】
例えば、紫外線吸収性モノマー(BU1)として、下式(BU1−I)で表される、紫外線吸収有機残基を含有するラジカル重合性モノマーが挙げられる。
【0063】
【化6】
【0064】
式(BU1−I)中、V2、b1及びb2は、各々前記一般式(A1−I)のV1、a1及びa2と同一の内容を表す。
b1及びb2は、いずれか一方が水素原子であることが好ましく、水素原子以外の置換基としては、フッ素原子、塩素原子、メチル基、エチル基が特に好ましい。
L2は−V2−と−U1とを連結する基を表し、単結合又は2価の連結基を示す。2価の連結基としては、前記の一般式(A1−II)のL1と同一の内容を表す。更に、L2は下記式(L2a)〜(L2d)で表されるピペリジン骨格を表す。L2全体の水素原子を含まない連結にかかわる原子数が1〜20個の範囲、且つ少なくとも一個のピペリジン骨格を含有する連結基であることが好ましい。
【0065】
【化7】
【0066】
式(L2a)〜(L2d)中、r1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表し、r2及びr3は同じでも異なってもよく、各々水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0067】
上記式(BU1−I)中、U1は1価の紫外線吸収基含有基を示す。
紫外線吸収基含有基は、ベンゾフェノン骨格、サリチル酸骨格、ベンゾトリアゾール骨格、トリアジン骨格、又はベンゼン骨格を含む基であることが好ましく、特にベンゾフェノン骨格を含む1価の基又はベンゾトリアゾール骨格を含む1価の基が好ましい。
【0068】
【化8】
【0069】
重合性基は、上記の式(U1−I)及び(U1−II)で示される骨格の各々のベンゼン環、ベンゾトリアゾール環、s−トリアジン環のいずれに存在していてもよい。ベンゾトリアゾール環の2位に1つのベンゼン環が結合している骨格を有する、しかもこのフェニル基の2位に水酸基を有するものが好ましい。また、重合性基を含有する基は2個以上存在していてもよいが好ましくは1個存在する。
【0070】
上記の各骨格の重合性基を含有する基の存在しない位置には置換基が1個以上存在していてもよい。その置換基としては、前記一般式(A1−I)のRに記載の置換基と同様のものが挙げられる。好ましくは、炭素数1〜18のアルキル(又は炭素数1〜6、もしくは1〜2のアルキル)、アリール(例えば、炭素数6〜20の、例えば、フェニル基)、ヘテロアリール(例えば、ピロロ、フリルもしくはチエニル)、アリールオキシ(例えば、炭素数6〜20の)、アルコキシ(例えば、炭素数1〜6又は1〜2のアルコキシ)、シアノ、ニトロ、又はハロゲン(例えば、F又はCl、特にベンゾ環上の5位及び/又は6位上に、及び/又はヒドロキシ置換フェニルの5′位上にClを有するもの)であってよい。ベンゾ環の置換基としてはまた、それに縮合した環、例えば、ベンゾ、ピロロ、フリル又はチエニル環を挙げることができる。アルキル及びアルコキシ置換基のいずれも1〜5個の(又は1〜2個の)介在する酸素、イオウ又は窒素原子を有してよい。
【0071】
ヒンダードアミン骨格を含有するモノマー(以下、モノマー(BH)と称することもある)は、2、6−テトラアルキルピペリジン骨格の1−位、3−位、4−位、5−位のいずれかの置換位置に直接又は連結基を介して重合性基が結合してなる化合物である。例えば、下記一般式(BH−I)で示される。
【0072】
【化9】
【0073】
式(BH−I)中のU2は、下記式(U2−I)又は(U2−II)を表す。
【0074】
【化10】
【0075】
式(U2−I)及び(U2−II)中、r11及びr12は、同じでも異なってもよく、炭素数1〜4のアルキル基を表すか、又はr11及びr12は一緒になってペンタメチレン基を表す。r13は、水素原子又はシアノ基を表す。
R21は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、―C(=O)R23基(R23は、炭素数1〜18の炭化水素基)、―OCOR23基、又は−OR23基を表す。
R22は、水素原子、炭素数1〜18の炭化水素基、又は−OR23基を表す。
尚、上記R21及びR23の炭化水素基は、置換されてもよく、具体的には前記一般式(A1−I)中のRの炭化水素基と同一の内容を表す。
Y1は、酸素原子又はイミノ基を表し、Y2は、酸素原子、メチン基又は「―L2―」に直結する基を表す。
【0076】
また、ベンゾフェノン系重合性化合物及びベンゾトリアゾール系重合性化合物以外の式(BU1−I)で表される化合物としては、(2−シアノ−2−エチル−3,3−ジフェニル−ヘキシル)(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0077】
本発明における、上記ラジカル重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B1)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。モノマー(B1)の種類は必要に応じて適宜変更されうる。
【0078】
一方、カチオン重合性基含有の光安定化基を有するモノマー(B2)としては、分子中に1〜10個のカチオン重合性基を含有するものが挙げられ、好ましくは、2〜6個である。具体的には、上記式(BU1−I)又は(BH−I)で表される{C(b1)H=C(b2)−V2−}の代わりにエポキシ基又はビニルオキシ基を結合された化合物が挙げられる。好ましくは、上記「−U1」の化学構造中の水素原子又は水素原子以外の置換基に代えた該カチオン重合性基を複数含有する。
【0079】
又、他の好ましい態様として、前記の多官能カチオン重合性モノマー(A2)において、その分子中のカチオン重合性基の代わりに上記式(BU1−I)の「−U1」基を結合してなる化合物が挙げられる。
【0080】
本発明のセルロースアシレート溶液には、帯電防止能を有する置換基(帯電防止性基)を有する重合性化合物を更に共存して製膜することが好ましい。
帯電防止性基としては、帯電防止性或いはイオン導電性の作用を有するとして知られる従来公知の有機性化合物から成るものが挙げられる。
例えば、ポリオキソアルキレン基、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基、ホスホン酸塩の基、スルホン酸塩の基等が挙げられる。セルロースアシレートドープ組成物への溶解性、フイルムの帯電防止性能、湿度変化での帯電防止性の安定性等から、4級アンモニウム塩の基、ホスホニウム塩の基が好ましい。
【0081】
これらモノマーの具体例として、ポリオキソアルキレン基を含有するモノマーとして、特開平7−238115号公報、特開平8−311435号公報、同9−78056号公報、同11−194448号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0082】
アルキル4級アンモニウム塩或いは含窒素複素環式4級アンモニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−160327号公報明細書中の段落番号〔0030〕〜〔0053〕記載の化合物、同7−118480号公報明細書中の段落番号〔0032〕〜〔0036〕に記載の繰り返し単位に相当する化合物、同7−179071号公報明細書中の段落番号〔0010〕、特表2001−507380号公報等が挙げられる。
【0083】
また、ホスホニウム塩の基を含有するモノマー:特開平6−200239号公報明細書中の段落番号〔0012〕〜〔0014〕記載の化合物、同10−219233号公報明細書中の段落番号〔0011〕記載の化合物、同7−179071号公報等が挙げられる。
【0084】
また、帯電防止性基を有するカチオン重合性モノマーとしては、紫外線吸収性基含有モノマーの場合と同様にラジカル重合性基に代えて該カチオン重合性基が結合してなるものが挙げられる。
【0085】
更に、本発明のセルロースアシレート組成物は、分子内に2個以上の重合性基を含有する多官能モノマー(C)を含有することが好ましい。
多官能モノマー(C)としては、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも2個有する化合物から選ばれることが好ましい。好ましくは、分子中に2〜5個の末端エチレン性不飽和結合を有する化合物である。このような化合物群はポリマー材料分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定なく用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつことができる。
【0086】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸等)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル、アミド類との単官能もしくは多官能イソシアネート類、エポキシ類との付加反応物、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアナート基やエポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル又はアミド類と、単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類及びチオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0087】
脂肪族多価アルコール化合物として、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ジペンタエリスリトール等と不飽和カルボン酸(クロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等)とのモノ置換又はポリ置換の重合性化合物が挙げられる。
【0088】
その他のエステルの例としては、例えば、ビニルメタクリレート、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、特公昭46−27926号、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号記載のアミノ基を有するもの等も好適に用いられる。
【0089】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号記載のシクロヘキシレン構造を有するものを挙げることができる。
【0090】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載される1分子中に2個以上のイソシアネート基を有する水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物が挙げられる。
【0091】
更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物類を用いても良い。
【0092】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308頁(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0093】
カチオン重合性基含有化合物としては、1分子中のカチオン重合性基の数は2〜10個が好ましく、特に好ましくは3〜5個である。該硬化剤の分子量は3000以下であり、好ましくは200〜2000の範囲、特に好ましくは400〜1500の範囲である。分子量が小さすぎると、皮膜形成過程での揮発が問題となり、大きすぎると、セルロースアシレートドープ組成物との相溶性が悪くなり好ましくない。
【0094】
カチオン重合性基を有する多官能性化合物は前記カチオン重合性化合物と同一の内容のもの、特開平8−277320号記載のエポキシ化合物、特開2002−29162号記載のビニルオキシ基含有化合物等が挙げられる。
また、本発明の多官能性化合物は、上記のラジカル重合性基及びカチオン重合性基から選ばれる少なくとも各1種を少なくとも分子内に含有する化合物を用いることが好ましい。例えば、特開平8−277320号明細書中の段落番号〔0031〕〜〔0052〕記載の化合物、特開2000−191737号明細書中の段落番号〔0015〕記載の化合物等が挙げられる。本発明に供される化合物は、これらの限定されるものではない。
【0095】
本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、更に、オキセタンモノアルコール化合物を含有することが好ましい。セルロースアシレートドープ組成物がオキセタンモノアルコール化合物を含有していることによって、耐水性、耐湿性に優れ且つ力学的特性に優れるセルロースアシレートフイルムを作製することができる。
【0096】
オキセタンモノアルコール化合物としては、1分子中にオキセタン基を1個以上有し且つアルコール性水酸基を1個有する化合物であればいずれも使用可能である。
【0097】
具体例としては、例えば特開平11−199647号明細書中の段落番号〔0030〕に記載の化合物等が挙げられる。入手の容易性から、3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタン、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタンが好ましく用いられる。本発明の化合物としては、これらに限定されるものでない。本発明では、オキセタンモノアルコール化合物のうちの1種又は2種以上を用いることができる。モノオキセタンアルコール化合物の使用量は、カチオン重合開始剤の使用量に対して、1〜30質量%の範囲で用いることが好ましい。この範囲において、重合反応性を阻害しないで膜の強度をより良化することができる。
【0098】
次に、本発明のセルロースアシレート組成物に用いられる光熱変換剤(IR)について詳述する。
本発明の光熱変換剤(IR)は、近赤外線光照射されて光吸収し、吸収した近赤外線を熱に変換する機能を有する化合物である。発生した熱により、後述の熱ラジカル発生剤が分解しラジカルを発生する、又は酸発生剤が熱により酸を発生する。
本発明において用いられる光熱変換剤としては、700nm以上の波長域の少なくとも一部に吸収帯を有する光吸収物質であればよく、分子吸光係数が10000以上の値を有する化合物が好ましい。更には、750〜1400nmの領域に吸収を有し、且つ分子吸光係数が20000以上の値が好ましい。また、420nm〜700nmの可視光波長域に吸収の谷があり、光学的に透明であることがより好ましい。本発明の重合反応は、重合開始が近赤外線の照射であり、従来の紫外線照射による重合系に比べ、セルロースアシレート組成物の紫外線吸収による照射光量の減衰が回避されるので重合反応に効果的である。
【0099】
本発明の光熱変換剤(IR)としては、近赤外光を吸収し熱を発生する化合物であれば特に制限はなく、近赤外線吸収顔料及び近赤外線吸収染料として知られる種々の顔料及び染料を用いることができる。その中でも、従来公知の近赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)に記載されている赤外吸収性の微粒子顔料が利用できる。
これら顔料は、添加される組成物に対する分散性を向上させるため、必要に応じて公知の表面処理を施して用いることができる。表面処理の方法には、分散用樹脂を表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤やエポキシ化合物、イソシアナート化合物等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。顔料の粒径は1μm以下の範囲にあることが好ましく、0.005μm〜0.3μmの範囲にあることが更に好ましい。この範囲において、製膜されたセルロースアシレートフイルムの光学特性を損なうことなく用いることができる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術を用いることができる。
【0100】
染料としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)、「特殊機能色素」(池森・柱谷編集、1986年、(株)シーエムシー発行)、「機能性色素の化学」(檜垣編集、1981年、(株)シーエムシー発行)、「色素ハンドブック」(大河・平嶋・松岡・北尾編集、講談社発行)、J.FABIAN、Chem.Rev.、92、pp1197〜1226(1992)、日本感光色素研究所が1995年に発行したカタログ、Exciton Inc.が1989年に発行したレーザー色素カタログあるいは特許に記載されている公知の染料が利用できる。
【0101】
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノン染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料(例えば、オキソノール系、イミニウム系、シアニン系、ピリリウム系、スクワリウム或いはクロコニウム系、アズレニウムウム系、等)、有機金属錯体などの赤外線吸収染料が挙げられる。
【0102】
例えば、以下に挙げるものを用いることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
米国特許第5,156,938号記載、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号、同63−115173号、特開2000−347393号 等に記載されているメチン染料、
シアニン染料として、英国特許434,875号、米国特許第4,756,993号、米国特許第4,973,572号等、特開昭57−46245号、同58−125246号、同58−219091号、同59−24692号、同59−84248号、同59−150795号、同60−78787号、特公平5−60868号、特開平2−67183号、同4−13773号、同5−139046号等、特開2001−125260号等に記載のヘプタメチン以上の色素、
カルボニウム系及びイミニウム系の染料として、特開昭55−79451号、同55−163094号、同56−8149号、同58−181690号、同2000−338651号等に記載の染料、
アズレニウム系染料として、同60−263158号、同61−15151号、同60−192691号、同61−68294号等に記載の染料、
スクワリリウム或いはクロコニウム染料として、特開昭58−112792号、同58−173696号、同58−214162号、特開2000−171975号、同2000−206685号、Jurgen Fabian, Hiroyuki Nakazumi, and Masaru Matsuoka,”Near−Infrared Absorbing Dyes”, Chem.
Rev. 92,1197−1226(1992)に等に記載の染料、
キノン染料として、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号、特開平6−256541号、同7−72332号、8−317735号等に記載の染料
フタロシアニン染料として、特開昭64−60660号公報、特開平1−100171号公報、特開平3−31247号公報、特開平4−15263号公報、特開平4−15264号公報、特開平4−15265号公報、特開平4−15266号公報、特開平11−235883号等に記載のフタロシアニン化合物、特開平2−138382号公報に記載のアルキルフタロシアニン化合物、特開平3−77840号公報、特開平3−100066号公報に記載のアシロキシフタロシアニン化合物、特開平4−348168号公報に記載のアルコキシフタロシアニン化合物、特開昭60−23451号公報、特開昭61−215662号公報、特開昭61−215663号公報、特開昭63−270765号公報、特開平1−287175号公報、特開平2−43269号公報、特開平2−296885号公報、特開平3−43461号公報、特開平3−265664号公報、特開平3−265665号公報に記載のナフタロシアニン化合物、特開平1−108264号公報、特開平1−108265号公報に記載のジナフタロシアニン化合物等、
(チオ)ピリリウム染料として、米国特許第3,881,924号、米国特許第4,283,475号、特開昭58−181051号、同58−181689号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号、同61−26044号、号特公平5−13514号、同5−19702号、同6−54394公報、特開平11−95421号等に開示されているピリリウム化合物、
有機金属錯体として、特公平8−22613号、同8−22615号、特開平3−120086号、同7−164729号等に記載のジチオール系錯体、特開昭61−108585号、同63−139303号等のジアミン系錯体、特開昭58−224796号、同62−165648号公報等記載のメルカプトフェノール系錯体等。
【0103】
本発明に用いることのできる光熱変換剤は、単独で用いてもよいし、二種以上を併用してもよく、その使用量は、セルロースアシレート組成物の全固形分に対し、0.01〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは0.5〜10重量%であり、更に1〜8重量%であることが好ましい。
【0104】
次に、本発明に用いることのできる熱重合開始剤(I)について詳述する。
前述のように、光熱変換剤は近赤外線を吸収して熱を発生するが、本発明の熱重合開始剤(I)はその熱によりラジカル又は酸を発生する化合物である。本発明において用いられる熱重合開始剤(I)は、作成されるフイルムの透光性からその極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。
【0105】
まず、熱によりラジカルを発生する化合物(I1)(以下、化合物(I1)ということもある)について詳述する。
[ラジカルを発生する化合物]
本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物(I1)は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。
化合物(I1)としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、化合物(I1)は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
具体的には、例えば、アミン化合物(特公昭44−20189号公報記載)、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン化合物、等が挙げられる。
【0106】
上記オニウム塩としては、例えば、ジアゾニウム塩(S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal etal,Polymer,21,423(1980)等に記載)、アンモニウム塩(米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載)、ホスホニウム塩(米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書等に記載)、ヨードニウム塩(欧州特許第104,143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報等に記載)、スルホニウム塩(欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書等に記載)、アルソニウム塩(C.S.Wen etal,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)等に記載)、セレノニウム塩(J.V.Crivello etal,Macromorecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello etal,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)等に記載)等のオニウム塩が挙げられる。中でも、下記一般式(I1−a)で示されるヨードニウム塩化合物、又は一般式(I1−b)で示されるスルホニウム塩化合物が好ましい。
【0107】
【化11】
【0108】
上記一般式において、Ar1 、Ar2 はそれぞれ、置換基を有していても良い炭素数20以下のアリール基を示す。具体的には、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヨードフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、フェノキシフェニル基、ニトロフェニル基、シアノフェニル基、カルボキシフェニル基、アニリノフェニル基、アニリノカルボニルフェニル基、モルホリノフェニル基、フェニルアゾフェニル基、メトキシナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ニトロナフチル基、アントラキノニル基等が挙げられる。
【0109】
Rb1 、Rb2、Rb3は、置換基を有していても良い炭素数18以下の炭化水素基を示す。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、アリル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基等のアルキル基、ビニル基、1−メチルビニル基、2−フェニルビニル基等のアルケニル基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、クメニル基、メシチル基、ドデシルフェニル基、フェニルフェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基が挙げられる。これらの炭化水素基は、例えばハロゲン原子、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリルオキシ基、ニトロ基、シアノ基、カルボニル基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、アニリノ基、アセトアミド基等の置換基を有していても良い。また、Rb2 とRb3 とが互いに結合し環を形成していても良い。Rb1〜Rb3の置換基中、少なくとも一つの置換基がアリール基であることが好ましい。(A―)は、無機アニオン又は有機アニオンを表す。
無機アニオンは、ハロゲンイオン(F、Cl、Br等)、PF6イオン、SbF6イオン、ClO4イオン、BF4イオン等、有機アニオンは、有機ボレートイオン、カルボキシレートイオン、スルホネートイオン、ホスホネートイオン等が挙げられ、従来公知の対アニオンを用いることができる。
【0110】
上記有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、、M.P.Hutt”Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」筆に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
他の有機ハロゲン化合物の例として、特開平5−27830号公報明細書中の段落番号「0039」〜[0048]記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
【0111】
上記カルボニル化合物としては、アセトフェノン類、ヒドロキシアセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン化合物類、安息香酸エステル誘導体、ベンジルメチルケタール、アシルホスフィンオキサイド等が挙げられる。例えば、特開平8−134404号明細書の段落[0015]〜[0016]記載等に記載の化合物が挙げられる。
【0112】
上記有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−19925号公報中の段落番号[0025]に記載の化合物類が挙げられる。
上記メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0113】
上記ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
【0114】
上記有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩記載される化合物があげられる。
【0115】
具体例として、下記一般式(I1−c)で表される芳香族基を少なくとも3個有する有機ホウ酸化合物が挙げられる。
【0116】
〔一般式(I1−c)〕
{Ar}m{Rc}nB− M+
【0117】
式中、Arはそれぞれ独立に、炭素原子数が6〜18の芳香族基を表す。これらの芳香族基は1つあるいは2つ以上の置換基を有していてもよく、好ましい置換基の例としては、ハロゲン原子、炭素原子数1〜8の直鎖状或いは分岐のアルキル基、アリール基、アルケニル基、カルボニル基、カルボキシル基、アミド基、アセチル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、アミノ基、またはこれらを2種以上組み合わせたものが挙げられる。Rcは炭素数1〜22の置換されてもよい脂肪族基を表し、置換基としては前記Arに置換されると同様のものが挙げられる。これらの芳香族基のなかでも、安定性の観点からは、無置換の芳香族基、或いは、ハロゲン原子、ハロアルキル基を置換基として有するものが好ましく、さらに好ましくは、一分子中にフッ素原子を4個以上有するか、或いは、置換基として、4個以上のフッ化アルキル基を有する有機ホウ酸塩化合物が挙げられる。
mは3又は4の整数、nは0又は1を表し、且つm+nは4である。好ましくはmが4である。
【0118】
また、カチオンであるM+の好ましい例としては、”Onium ions”(A. Olha, Kennneth K. Laali, Qi Wang, G.K. Surya Prakashら著、出版:A Wiley−Intorscience Pubilcation )に記載のアゾニウム塩(アンモニウム塩、ジアゾニウム塩)、オキソニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ハロニウム塩、シリコニウム塩等、或いは、ピリジニウム塩、ヨードニウム塩のカチオン部などを挙げることができる。例えば、特開平5−278330号公報中の段落番号[0051]〜[0052]記載のアンモニウム塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体或いは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体に記載の化合物等が挙げられる。化合物の安定性、感度等の観点より、ホスホニウム、スルホニウム、ピリジニウムなどがより好ましい。
【0119】
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0120】
上記ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号明細書中に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示される化合物、或いは一般式(I)で示されるジスルホン化合物等が挙げられる。
【0121】
一般式(I)
Rd1・SO2・SO2・Rd2
【0122】
式中、Rd1及びRd2はそれぞれ独立にアルキル基、アルケニル基、又はアリール基を表す。
式中、Rd1、Rd2がアルキル基を表すとき、該アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状のものであっても、環を形成しているものでもよく、また、置換基を有していてもよい。好ましくは、炭素数が1ないし10のアルキル基であり、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、などが挙げられる。
また、置換アルキル基には、上記のようなアルキル基に、例えば、塩素原子のようなハロゲン原子、メトキシ基のような炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基のようなアリール基、フェノキシ基のようなアリールオキシ基などが置換したものが含まれ、具体的には、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、ブロモメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、フェニルメチル基、ナフチルメチル基、フェノキシメチル基などが挙げられる。
【0123】
Rd1、Rd2がアルケニル基の場合、該アルケニル基としては、例えばビニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、また置換アルケニル基にはビニル基に、例えば、メチル基のようなアルキル基、フェニル基のようなアリール基、また、それら置換基がさらにメトキシ基などのアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子などの置換基を有するものなどが含まれ、具体的には、1−メチルビニル基、2−メチルビニル基、1,2−ジメチルビニル基、2−フェニルビニル基、2−(p−メチルフェニル)ビニル基、2−(p−メトキシフェニル)ビニル基、2−(p−クロロフェニル)ビニル基、2−(o−クロロフェニル)ビニル基、1−シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0124】
また、Rd1、Rd2がアリール基を表す場合、該アリール基としては単環あるいは2環のものが好ましく、例えばフェニル基、α−ナフチル基、β−ナフチル基などが挙げられる。
置換アリール基には上記のようなアリール基に、例えば、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基などの炭素数1〜6のアルコキシ基、塩素原子などのハロゲン原子、ニトロ基、フェニル基、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アミド基、イミド基、シアノ基などが置換したものが含まれ、具体的には4−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基、4−ニトロフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−フェニルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−エチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、2−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、2−カルボキシフェニル基、4−シアノフェニル基、4−メチル−1−ナフチル基、4−クロロ−1−ナフチル基、5−ニトロ−1−ナフチル基、5−ヒドロキシ−1−ナフチル基、6−クロロ−2−ナフチル基、4−ブロモ−2−ナフチル基、5−ヒドロキシ−2−ナフチル基などが挙げられる。
これらのラジカル発生化合物は、一種のみを添加しても、二種以上を併用してもよい。添加量としては、重合性モノマーの全量に対し0.1〜30重量%、好ましくは0.5〜25重量%、特に好ましくは1〜20重量%の割合で添加することができる。この範囲において、ドープ組成物の経時安定性が問題なく高い重合性となる。
【0125】
[酸発生剤]
酸発生剤としては、例えば、オニウム塩化合物、有機ハロゲン化化合物、ジスルホン化合物が挙げられる。これらの具体例は、前記ラジカルを発生する化合物の記載と同様のものが挙げられる
酸発生剤の他の例としては、特開平2−161445号公報に記載の有機金属/有機ハロゲン化物、欧州特許第0290,750号、同046,083号、同156,535号、同271,851号、同0,388,343号、米国特許第3,901,710号、同4,181,531号の各明細書、特開昭60−198538号、特開昭53−133022号に記載のo−ニトロベンジル型保護基を有する光酸発生剤、欧州特許第0199,672号、同84515号、同199,672号、同044,115号、同0101,122号、米国特許第4,618,564号、同4,371,605号、同4,431,774号の各明細書、特開昭64−18143号、特開平2−245756号、特願平3−140109号に記載のイミノスルフォネート等に代表される光分解してスルホン酸を発生する化合物等が挙げられる。
【0126】
これらの酸を発生する官能基又は化合物を、ポリマーの主鎖若しくは側鎖に導入した化合物も好適に挙げることができる。
例えば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3,914,407号の各明細書、特開昭63−26653号、同55−164824号、同62−69263号、同63−146037号、同63−163452号、同62−153853号、同63−146029号の各公報、
等に記載の化合物が挙げられる。
更に、V.N.R.Pillai,Synthesis,(1),1(1980)、A.Abad et al,Tetrahedron Lett.,(47)4555(1971)、D.H.R.Barton et al,J.Chem,Soc,.(B),329(1970)、米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号の各明細書等に記載の酸を発生する化合物も使用可能である。
【0127】
これらの酸発生剤は、全重合性化合物の全質量に対し、0.01〜30質量%、好ましくは0.1〜25質量%、特に好ましくは0.5〜20質量%の割合で添加することができる。添加量が上記範囲において、ドープ組成物の安定性、重合反応性等から好ましい。また、これらの酸発生剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0128】
そして、本発明では、上記したラジカル重合性有機化合物と共に、カチオン重合性有機化合物を用いることが好ましい。
【0129】
本発明のセルロースアシレート組成物は、セルロースアシレートドープ組成物の粘度、反応速度、得られる製膜フイルムの力学的特性などの点から、上記したラジカル重合性有機化合物とカチオン重合性有機化合物とを、ラジカル重合性有機化合物:カチオン重合性有機化合物の質量比で、90:10〜20:80の割合で含有していることが好ましく、80:20〜30:70の割合で含有していることがより好ましい。
【0130】
また、本発明のセルロースアシレートドープ組成物は、ラジカル重合性有機化合物及びカチオン重合性有機化合物の合計質量に対して、ラジカル重合開始剤を0.5〜10質量%及びカチオン重合開始剤を1〜10質量%の割合で含有していることが好ましい。より好ましくは、ラジカル重合開始剤を1〜5質量%、及びカチオン重合開始剤を2〜6質量%の割合で含有する。
【0131】
本発明のセルロースアシレート溶液には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、可塑剤、紫外線防止剤、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、微粒子、剥離剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば特開平2001−151901号などに記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開平2001−151902号などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
【0132】
次に、本発明のセルロースアシレートを溶解する有機溶媒について記述する。用いる溶媒としては、低級脂肪族炭化水素の塩化物や低級脂肪族アルコールが一般に使用される。低級脂肪族炭化水素の塩化物の例には、メチレンクロライドを挙げることができる。低級脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールが含まれる。その他の溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない、アセトン、炭素原子数4から12までのケトン(例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等)、炭素原子数3〜12のエステル(例えばギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル及び2−エトキシ−エチルアセテート等)、炭素原子数1〜6のアルコール(例えばメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、t−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等)、炭素原子数3〜12のエーテル(例えばジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類(例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等)が挙げられる。本発明においては、以上のような溶媒の中で、塩化メチレン、アセトン、酢酸メチル及びジオキソランの中から選ばれる溶媒又はこれらの混合物を主溶媒とすることが好ましい。
【0133】
また、溶媒には、酢酸メチルを主溶媒に用いて、更にケトン類、アルコール類を添加した混合溶媒をドープ調製溶媒に用いることが、セルロースアシレートの溶解性の点から好ましい。この場合、酢酸メチルを20〜90質量%、ケトン類を5〜60質量%、アルコール類を5〜30質量%の混合比で用いることが好ましい。
また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系として、例えば、特開2002−146043号明細書の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号明細書の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
【0134】
本発明のセルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましいが、より好ましくは13〜27質量%であり、特には15〜25質量%溶解しているセルロースアシレート溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調整してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法で本発明のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題はない。
【0135】
本発明のセルロースアシレート溶液(ドープ)の調製については、その溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301、特開昭61−106628、特開昭58−127737、特開平9−95544、特開平10−95854、特開平10−45950、特開2000−53784、特開平11−322946、さらに特開平11−322947、特開平2−276830、特開2000−273239、特開平11−71463、特開平04−259511、特開2000−273184、特開平11−323017、特開平11−302388などにセルロースアシレート溶液の調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープ溶液は、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
【0136】
本発明のセルロースアシレート溶液は、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度 n* (Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率 G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paである。より好ましくは、40℃での粘度が1〜2000Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が3万〜50万Paであり、特に好ましくは40℃での粘度が10〜150Pa・secであり、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が5万〜50万Paである。
【0137】
次に、本発明のセルロースアシレート溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、セルロースアシレートフィルム製造に供するドラム方法又はバンド方法と称される、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。バンド法を例として製膜工程を説明する。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
【0138】
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50〜50℃であることが好ましい。更には−30〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取りことが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50〜130℃であり、好ましくは−30〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
【0139】
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び又は逐次共流延してもよい。
【0140】
上記のような二層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
【0141】
得られたフィルムを支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40〜250℃、特に70〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0142】
本発明の熱重合反応は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよいが、特にドープ膜が支持体上にあるときに光照射することが好ましい。光照射の光源は、近赤外光であればいずれでもよく、ハロゲンランプ、キセノンランプ、高圧ナトリウムランプ等が挙げられる。波長750〜1400nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化照射等を採用して用いることもできる。
【0143】
近赤外線照射による光重合は、空気又は不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性化合物を使用する場合には、重合の誘導期を短くするか、又は重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する近赤外線の照射強度は、1〜500mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、近赤外照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、±3℃以内が好ましく、更には±1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
【0144】
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。
【0145】
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸又はアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10−3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
【0146】
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行ことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、アルコール系溶媒が好ましく、イソプロピルアルコールが特に好ましい。また、界面活性剤の水溶液を溶媒として使用することもできる。アルカリ鹸化塗布液のアルカリは、上記溶媒に溶解するアルカリが好ましく、KOH、NaOHがさらに好ましい。鹸化塗布液のpHは10以上が好ましく、12以上がさらに好ましい。アルカリ鹸化時の反応条件は、室温で1秒以上5分以下が好ましく、2秒以上1分以下がさらに好ましく、3秒以上30秒以下が特に好ましい。アルカリ鹸化反応後、鹸化液塗布面を水洗あるいは酸で洗浄したあと水洗することが好ましい。また、塗布式鹸化処理と後述の配向膜解塗設を、連続して行うことができ、工程数を減少できる。更に、本発明で得られるセルロースアシレートフィルムは、アルカリ処理を浸漬法で実施してもよい。すなわち、アルカリ処理浴、水洗浴、酸処理浴更に水洗浴、場合によりリンス浴などを連続的又は間歇的に配置して、表面処理を実施できる。この場合各溶液は、塗布方式で使用される対応する溶液と内容としては、同一の組成である。
【0147】
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている。
【0148】
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に述べる。本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号、特開平6−118232号に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。
偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
【0149】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると特に効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。
本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(△n)とセルギャップ(d)との積(△nd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置又はHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
【0150】
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO9848320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。
反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00−65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
【0151】
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体としても有用である。本発明のセルロースアシレートフィルムは、印刷製版用、医療用、一般写真用等のいずれのハロゲン化銀写真感光材料の支持体として用いることができる。また、その膜厚は30〜250μmであることが好ましい。このようなハロゲン化銀写真感光材料についてはT. H. James et. al. The Theory of the Photographic Process 第4版 (Macmillan Publishing Co.,Inc. 1977)等に記載されている。
【0152】
以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)にて45頁〜59頁に詳細に記載されている。
【0153】
【実施例】
以下に本発明のセルロースアシレートについての具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0154】
実施例1〜2及び比較例1
<セルローストリアセテートフィルムの製造>
{実施例1}
(セルローストリアセテート溶液(D−1)の調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、下記の溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルローストリアセテート粉体(平均サイズ2mm)を徐々に添加してドープを調製した。添加後、室温(25℃)にて1時間、35℃にて放置しセルローストリアセテートを膨潤させた。なお、溶媒である酢酸メチルとメチルエチルケトン、メタノール、エタノール、n−ブタノールは、すべてその含水率が0.2質量%以下のものを利用した。
実施例1のドープの調製に用いた各成分の成分比を下記に示す。
【0155】
セルローストリアセテート(置換度2.83、6位のアシル化の置換度0.93、2,3位のアシル化の置換度1.90、粘度平均重合度320、含水率0.4質量%、メチレンクロライド溶液中6質量%の粘度305mPa・s)18質量部
酢酸メチル 55質量部
メチルエチルケトン 10質量部
メタノール 5質量部
エタノール 5質量部
n−ブタノール 5質量部
可塑剤A(ジペンタエリスリトールヘキサアセテート) 1質量部
微粒子(シリカ(粒径20nm)) 0.1質量部
下記のUV吸収剤(1) 0.15質量部
モノマー(A−1):メチルメタクリレート 1.0質量部
下記構造の光熱変換剤(IR−1) 0.05質量部
下記構造の重合開始剤(I−1) 0.01質量部
増感助剤:N−フェニルグリシン 0.005質量部
【0156】
【化12】
【0157】
【化13】
【0158】
つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施した。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させた。それぞれの1次圧、1.5、1.2であり、2次圧はそれぞれ1.0、0.8MPaであった。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵した。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌された。
【0159】
(フィルム製膜)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜した。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥した。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃であった。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とした。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kWハロゲンランプを用いて、ドープ表面の全光照射量が500mJ/cm2となる条件で光照射した。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0160】
{実施例2}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)のメチルメタクリレート(モノマー(A−1))の代わりに、下記構造のモノマー(A−2)を同量用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0161】
【化14】
【0162】
{比較例1}
実施例1のセルローストリアセテート溶液(D−1)の調製における組成分において、モノマー(A−1)、光熱変換剤(IR−1)、及び重合開始剤(I−1)を除いた他は、実施例1と同様にして乾燥後の膜厚60μmのセルロースアセテートフィルムを作製した。
【0163】
<偏光子の作製>
PVAフィルムをヨウ素2.0g/L、ヨウ化カリウム4.0g/Lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/Lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、テンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、以降幅を一定に保ち、収縮させながら80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱して巻き取った。延伸開始前のPVAフィルムの含水率は31%で、乾燥後の含水率は1.5%であった。
左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であった。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
得られた偏光子の550nmにおける透過率43.7%、偏光度は99.97%であった。
【0164】
<偏光板の作製>
上記の各製膜したセルローストリアセテートフィルムを55℃の1.5N NaOH水溶液に1分間浸漬して両面を鹸化した後、希硫酸及び水で十分洗浄し、乾燥後それぞれのセルローストリアセテート側にポリビニルアルコール系粘着剤を約30μmの厚みに塗布し、上記偏光子の両側に貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して偏光板を作成した。
【0165】
<結果>
上記の得られたセルローストリアセテートフィルム及び偏光板の性能の結果を表−Aに記載した。
【0166】
【表1】
【0167】
表−A記載の評価項目の評価方法は以下の通りにして行なった。
1)膜の離型性
セルローストリアセテートフィルムの製膜実験中において、流延バンドからの製膜フィルムの離型性を目視観察した。
○:流延バンドから問題なく離型出来る。
×:流延バンド上に付着現象を生じ、離型されない。
【0168】
2)ヘイズ
セルローストリアセテートフィルムのヘイズは、日本電色工業(株)製、1001DP型を用いて、90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。
A:初期の値。B:経時後の値。
【0169】
3)引き裂き強度
セルローストリアセテートフィルムの引き裂き強度は、東洋精機製作所製軽過重引き裂き強度試験器を用い、ISO6383/2−1983に従って引き裂きに要する過重を評価した。90℃/80%の高温高湿下で500時間保管しその前後で調べた。試料サイズは50mm×64mm、25℃60%RHで2時間調整した後に実施した。
A:初期の値。 B:経時後の値。
【0170】
4)異物・汚れ
セルローストリアセテートフィルムから全幅で長手方向に1mの長さに切り出し、この試料にシャーカステン上で光を透過させながらルーペで異物・汚れの有無及び大きさを観察し、下記グレードで評価した。
A:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、0〜10個観察された。
B:50μm以上の大きさの異物、汚れはなく、50μm未満のものが、11〜30個観察された。
C:50μm以上の大きさの異物、汚れが1〜10個観察され、50μm以下のものが31〜50個観察された。
D:50μm以上の大きさの異物、汚れが11〜30個観察され、50μm以下のものが51〜99個観察された。
E:50μm以上の大きさの異物、汚れが31個以上観察され、50μm以下のものが100個以上観察された。
【0171】
5)耐候性
各セルローストリアセテートフィルムをキセノンランプ2万ルックス、1カ月の光劣化試験(強制評価)を実施した。光劣化試験の前と後とのヘイズ値を測定し、その値の増加の有無を下記のグレードで評価した。
◎:変化が0.3%未満。
○:変化が0.3%以上で0.6%未満。
△:変化が0.6%以上で1.0%未満。
×:変化が1.0%以上。
【0172】
6)偏光度
偏光板の偏光度は、分光光度計により可視領域における並行透過率Yp、直行透過率Ycを求め、次式に基づき偏光度Pを決定した。
【0173】
P=√(Yp−Yc)/(Yp+Yc)
【0174】
7)耐久性
偏光板から150mm×150mmの大きさの試料を2枚切り出し、(50℃/80%RH)の条件下に100時間曝し、クロスニコルにより偏光板の縁に発生する白抜けの面積を全体の面積に対する面積比として観察して、下記のグレードで評価した。
◎:白抜け部分が全くなかった。
○:白抜けが全体の面積に対して2%未満。
○〜△:白抜け部分が全体の面積に対して2%以上6%未満。
△:白抜け部分が全体の面積に対して5%以上10%未満。
×:白抜け部分が全体の面積に対して10%以上あった。
【0175】
本発明の実施例1及び実施例2のセルローストリアセテートフィルムの光学特性(ヘイズ値、異物・汚れ、等)、膜の強度(引き裂き強度)及び耐候性は良好であり、それらを用いて作製した偏光板も、偏光度、耐久性は良好であった。
更に、重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基を含有化合物を用いた実施例2の試料は、ヘイズ値がより小さく良化し、且つ膜の引き裂き強度が向上していることが見い出された。
一方、比較例1のセルローストリアセテートフィルムは、引き裂き強度、異物・汚れ、耐候性が低い値を示した。又、偏光板とした場合にも耐久性が不充分であった。
これらは、フィルム作製工程で重合性モノマーが速やかに且つ充分に重合し難いためによるものと推察される。
以上の様に、本発明のセルローストリアセテートフィルム及びそれを用いた偏光板は、優れた性能を示した。
【0176】
{実施例3〜実施例7}
実施例1におけるセルローストリアセテートフィルム溶液(D−1)において、モノマー(A−1)、光熱変換剤(IR−1)、及び重合開始剤(I−1)の替わりに下表−Bの各化合物を同量ずつ用いた他は、実施例1と同様にして、乾燥後の膜厚50μmの各セルローストリアセテートフィルム、更に各偏光板を作製した。
【0177】
【表2】
【0178】
得られた実施例3〜7の各セルローストリアセテートフィルム及び各偏光板を、実施例1と同様にして性能と評価を行なった。各実施例のものは、実施例2と同等以上の性能を示し、良好であった。
【0179】
{実施例8}
(セルローストリアセテート溶液の調製)
実施例1におけるセルローストリアセテート溶液の組成物の代わりに、下記内容の組成物(D−8)を用いた他は、実施例1と同様にしてセルローストリアセテート溶液を得た。
【0180】
セルローストリアセテート(置換度2.82、6位アセチル基の置換度0.93、粘度平均重合度320、含水率0.2質量%) 20質量部
ジクロロメタン 62質量部
アセトン 5質量部
メタノール 6質量部
ブタノール 5質量部
可塑剤(C):ジペンタエリスリトールヘキサアセテート 0.7質量部
シリカ微粒子(粒径20nm) 0.1質量部
重合性モノマー:シクロオクチルメチルアクリレート 0.6質量部
:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート0.15質量部
下記光安定化モノマー(1) 0.20質量部
下記光安定化モノマー(2) 0.15質量部
下記構造の重合開始剤(I−7) 0.15質量部
下記構造の光熱変換剤(IR−7) 0.05質量部
【0181】
【化15】
【0182】
【化16】
【0183】
次に、上述したセルローストリアセテート溶液をスクリュー押し出し機で送液して、−70℃で10分間となるように冷却部分を通過させた。冷却は冷凍機で冷却した−80℃の冷媒(3M社製、『フロリナート』を用いて実施した。そして、冷却により得られた溶液は、静止型混合器を設置した熱交換器により120℃まで温度を上昇させ、3分間保持した後冷却し50℃としてステンレス製の容器に移送し、50℃で2時間攪拌し脱泡を行った。この後、絶対濾過精度0.01mmの濾紙(東洋濾紙(株)製、『#63』)で濾過し、さらに、絶対濾過精度0.0025mmの濾紙(ポール社製、『FH 025』)にて濾過し、セルローストリアセテート溶液を調製した。
【0184】
(フィルム製膜)
実施例1と同様にして、膜厚50μmのセルローストリアセテートフィルムを作製した。
【0185】
(偏光板の作製)
上記のフィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光板を作製した。得られたフィルム及び偏光板の性能について、実施例1と同様に評価した。その結果を表−Cに記載した。
【0186】
【表3】
【0187】
以上の結果の様に、本発明のセルロースアセテートフィルムは、膜の離型性に全く問題がなく、ヘイズ値も小さくて、異物・汚れも見られなかった。又、引き裂き強度及び耐候性も極めて良好であった。偏光板の性能も良好であった。
【0188】
{実施例9〜15}
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)の重合開始剤(I−7)及び光熱変換剤(IR−7)の替わりに、下記の重合開始剤(I−8)及び光熱変換剤(IR−8)を用い、更に光安定化モノマー(1)及び(2)の代わりに下記表−Dの各光安定化モノマーを用いた他は、実施例8と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0189】
【表4】
【0190】
【表5】
【0191】
【化17】
【0192】
{実施例16〜27}
実施例8において、セルローストリアセテート溶液(D−8)の重合性モノマー[シクロオクチルメチルメタクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレート]の代わりに、下記表−Eの各重合性モノマーを用いた他は、実施例1と同様にして、セルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
【0193】
【表6】
【0194】
【表7】
【0195】
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例1と同等以上の良好なものであった。
【0196】
{実施例28〜32}
実施例8のセルローストリアセテート溶液(D−8)において、光熱変換剤(IR−7)の替わりに下記の光熱変換剤(IR−9)を用い、更に重合性モノマー、重合開始剤及び光安定化モノマーの代わりに下記表−F記載の各化合物を用いた他は、実施例8と同様にしてセルローストリアセテートフィルム及び偏光板を作製した。
得られたセルロースアセテートフィルム及び偏光板の性能を、実施例1と同様にして評価した結果、実施例8と同等の良好な性能であった。
【0197】
【化18】
【0198】
【表8】
【0199】
【表9】
【0200】
{実施例33}
特開平11−316378号の(実施例1)において、その第1透明支持体を本発明の実施例1の試料1〜6で得られるセルローストリアセテートフィルム(第2フィルム)の厚さを80μmとしたものに変更する以外は、全く同様にして特開平11−316378号の(実施例1)を実施して試料1〜6を作製した。得られた楕円偏光板は、優れた光学特性は優れたものであった。従って、本発明のセルローストリアセテートフィルムが光学偏光板に適応されても問題のない好ましい態様であることが明らかである。
【0201】
{実施例34}
特開平7−333433の実施例1の富士写真フィルム(株)製セルローストリアセテートを、本発明の実施例1の本発明試料1〜9のセルローストリエステルフィルムに変更する以外は、特開平7−333433の実施例1と全く同様にした光学補償フィルターフィルム試料を作製した。得られたフィルターフィルムは左右上下に優れた視野角を有するものであった。したがって、本発明のセルローストリアセテートフィルムが、光学的用途として優れたものであることが判る。
【0202】
{実施例35}
本発明では更に、多種の光学用途に利用され、本発明の代表として試料1〜9を、例えば特開平10−48420実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学的異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置に用いたところ良好な性能が得られた。
【0203】
{実施例36}
実施例1の本発明の試料1〜3において、そのフィルム厚さを100μmとする以外は、実施例1と全く同様にしてそのフイルムである本発明の試料1〜3を作製した。得られたフィルムの一方に、特開平4−73736号の実施例1の(バック層組成)第一層及び第2層を付与し、カチオン系ポリマーを導電性層とするバック層を作製した。更に、得られたバック層を付与したフィルムベースの反対の面に、特開平11−38568号の実施例1の試料105を塗布し、ハロゲン化銀カラー写真感光材料を作製した。得られたカラーフイルムは優れた映像が得られかつその取り扱い性においても問題のないものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による流延製膜方法を実施する流延製膜ラインの一実施形態の概略図である。
【符号の説明】
11 ミキシングタンク
12 送液ポンプ
13 フィルタ
14 流延ダイ
15 流延バンド
16 流延側部回転ドラム
17 非流延部側回転ドラム
18 ガイドロール
19 剥ぎ取りロール
20 ガイドロール
21 巻取りロール
22 乾燥部
23 フィルム
Claims (5)
- 溶液流延方法により形成されるセルロースアシレートフィルムにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含む工程により作製されたことを特徴とするセルロースアシレートフィルム。
- セルロースアシレートフィルムを溶液流延方法により製造するにおいて、セルロースアシレート、重合性基含有のモノマー(A)、光熱変換剤(IR)、及び熱重合開始剤(I)を含有するセルロースアシレート組成物を流延する流延工程と近赤外線照射の工程とを含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法。
- 請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムを用いた光学フイルム。
- 請求項1に記載のセルロースアシレートフィルムを用いた液晶表示装置。
- 請求項1に記載され、その膜厚が30〜250μmであるセルロースアシレートフィルムを、ハロゲン化銀写真感光材料用支持体として用いることを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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