JP2004067659A - タウ蛋白蓄積性疾患の診断プローブとしてのベンゾイミダゾール環含有化合物 - Google Patents
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Abstract
【課題】タウ蛋白が蓄積する疾患の早期かつ正確な画像診断のためのプローブ用化合物、ならびにそれを含有する組成物およびキットを提供する。脳材料中の神経原線維変化の染色方法、ならびに蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物も提供する。
【解決手段】タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用される、式I:
【化1】
[式中、R1およびR2は独立して水素、ハロゲン、OH、または炭素数1〜4個のアルキルであり、
R3およびR4は独立して水素、または炭素数1〜4個のアルキルであり、
mおよびnは独立して0〜4の整数である]
で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【選択図】 なし
【解決手段】タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用される、式I:
【化1】
[式中、R1およびR2は独立して水素、ハロゲン、OH、または炭素数1〜4個のアルキルであり、
R3およびR4は独立して水素、または炭素数1〜4個のアルキルであり、
mおよびnは独立して0〜4の整数である]
で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブ、詳細には陽電子放出核種により標識されたプローブ、ならびに該プローブを含む画像診断用組成物に関する。さらに本発明は、脳材料中の神経原線維変化の染色、ならびに蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物にも関する。
【0002】
【従来の技術】
アミロイドが蓄積する疾患には、体内の種々の器官や組織への不溶性原線維性蛋白(アミロイド)の沈着を特徴とする種々の疾病があり、アルツハイマー病やダウン症候群等が含まれる。このうち、アルツハイマー病(AD)は現在最も治療の困難な疾病の1つとされており、正確な早期診断が望まれている。
アルツハイマー病(AD)は現在最も治療の困難な疾病の1つとされており、正確な早期診断が望まれている疾病である。アルツハイマー病は主として初老期から老年期に起こる進行性の痴呆を特徴とする疾患である。病理学的には大脳の全体的な萎縮、神経細胞の著しい変性と脱落、神経原線維変化と老人斑の出現を特徴とする。アルツハイマー病に代表される痴呆の最大のリスクファクターは加齢であることが知られている。したがって、老齢人口の増加に伴う患者数の増加は、特に、高齢化社会となっている日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国において顕著であり、それに対する医療コストはこれらの国の医療システムを危機におとしめている。
なお、我が国においてはアルツハイマー病患者数は約100万人と推定され、今後人口の高齢化に伴いその患者数は増大することが確実視されている。アルツハイマー病患者にかかわる費用は介護費用を含めると年間患者1人当たり250万円を超えると考えられていることから、すでに我が国では2兆5千億円を超える社会経済的コストを払っていることになる。アルツハイマー病において痴呆症状が顕在化する以前ないしはできるだけ早期に治療を加えることは、大きな医療経済的効果をもたらすことはいまや世界の常識となっている。しかし現状ではこれらの段階のアルツハイマー病を正確に診断することは極めて困難である。
【0003】
現在のアルツハイマー病診断方法は各種あるが、我が国においては長谷川式、ADAS、MMSE等の、アルツハイマー病が疑われる個体の認知機能の低下を定量的に評価する方法が一般的であり、まれに画像診断法(MRI、CT等)が補助的に用いられている。しかしこれらの診断法では病気を確定するには不十分であり、確定診断には生前における脳の生検(バイオプシー)、死後脳の病理組織学的検査が必要である。このように、アルツハイマー病の診断法についても精力的な研究が行われているにもかかわらず、それほどの進歩がみられないでいる。多くの研究の結果、最初の臨床症状が現れるかなり前(長い場合は約40年前)にはすでにアルツハイマー病特徴的な神経変性が始まっていることが判ってきた。また同病においては患者を取り巻く家族または臨床家が最初の臨床症状に気づいた時には、すでに脳内病理像は取り返しのつかない状態まで進行していることが知られている。上述のような病状の進行特性および患者数の激増を考え合わせると、アルツハイマー病の正確な早期診断の必要性ならびに意義は極めて大きい。
【0004】
アルツハイマー病の病理組織像は2つの主徴に代表される。すなわち老人斑および神経原線維変化である。前者の主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβ(Aβ)蛋白であり、後者のそれは過剰リン酸化されたタウ蛋白である。アルツハイマー病の確定診断はこれらの病理学的特徴が患者脳内に出現することをよりどころとしている。
アミロイドβ蛋白はアルツハイマー病を包含するアミロイドが蓄積する疾患に特徴的であり、密接な関連性を有している。したがって、体内、特に脳内でβシート構造をとったアミロイドβ蛋白をマーカーとして検出することが、アミロイドが蓄積する疾患、特にアルツハイマー病の重要な診断方法の1つとなる。アルツハイマー病をはじめとするアミロイドが蓄積する疾患の診断を目的として、体内、特に脳内アミロイドβ蛋白に特異的に結合し、これを染色する物質の検索が従来から行われている。かかる物質としてはコンゴーレッド(非特許文献1参照)およびチオフラビンS(非特許文献2参照)、チオフラビンT(非特許文献3参照)ならびにクリサミンGおよびその誘導体(特許文献1および特許文献2参照)等が知られているが、アミロイドβ蛋白に対する結合特異性、血液−脳関門透過性、溶解度、毒性等の面から問題が少なくない。本発明者らは、アミロイドβ蛋白に対して特異性が高く、血液−脳関門透過性、溶解度が大きく、毒性が小さい等の特徴を有する種々の化合物化合物を見出している(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7参照)。
【0005】
脳内蛋白がβシート構造をとることによって、その蛋白自身が病因となる疾患が知られている。アルツハイマー病においてはアミロイドβ蛋白およびタウ蛋白がβシート構造をとることによって、蛋白自身が病因または病因の一部となっていると考えられている。Yanknerらはアミロイドβ蛋白にβシート構造をとらせることにより神経細胞毒性を発揮することを初めて報告した(サイエンス、245巻、417−420ページ、1989)。その後、多くの追試が行われ、βシート構造をとったアミロイドβ蛋白が、神経細胞毒性を有することが確認された。このようにβシート構造をとったアミロイドβ蛋白、タウ蛋白に神経細胞毒性がみられることから、その細胞毒性を抑制する化合物は、蛋白自身がβシート構造をとることによって病因、または病因の一部となる疾患、例えばアルツハイマー病の治療薬になりうることが示唆される。
【0006】
一方、アルツハイマー病のもう1つの病理組織学主徴である神経原繊維変化およびその主構成成分である過剰リン酸化されたタウ蛋白(本明細書において「タウ」ともいう)は、一般的にアミロイドβ蛋白よりは遅れて発現すると考えられている。しかし、神経原繊維変化はアミロイドβ蛋白に比し痴呆の程度とよく相関すると考えられている(Braak H and Braak E : Acta Neuropthol. 82巻、239−259、1991年。 Wischikら: In ” Neurobiology of Alzheimer’s Disease”, 103−206, Oxford University Press, Oxford, 2001)。
アルツハイマー病以外にタウ蛋白の脳内蓄積を主徴とする疾病(タウオパチイ)にはピック病、進行性核上性麻痺(PSP)および前頭側頭型麻痺(frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17: FTDP−17)などがあげられる。このようにタウ蛋白はアルツハイマー病を包括するタウ蛋白が蓄積する疾患に特徴的であり、密接な関連を有している。従って体内、特に脳内でβシート構造をとったタウ蛋白をマーカーとして検出することが、タウが蓄積する疾患、特にアルツハイマー病の重要な診断法の1つとなる。
アルツハイマー病を始めとするタウが蓄積する疾患の診断を目的として、体内、特に脳脊髄液中のタウを定量する方法が2、3のグループから報告されている(非特許文献4および非特許文献5参照)。しかし、タウに対する特異性が高く、非侵襲的にインビボでのタウを定量することを目的としたプローブは世界的にみても全くみあたらない。
したがって、アルツハイマー病を始めとするタウが蓄積する疾患の診断のための、タウに対する特異性の高い化合物に対する必要性が高まっている。
【0007】
【特許文献1】
国際特許出願PCT/US96/05918明細書
【特許文献2】
国際特許出願PCT/US98/07889明細書
【特許文献3】
特願平第2000−080082号明細書
【特許文献4】
特願平第2000−080083号明細書
【特許文献5】
特願平第2001−076075号明細書
【特許文献6】
国際特許出願PCT/JP01/02204明細書
【特許文献7】
国際特許出願PCT/JP01/02205明細書
【非特許文献1】
パチトラー(Puchtler)ら、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(Journal of Histochemistry and Cytochemistry)、第10巻、35頁、1962年
【非特許文献2】
パチトラー(Puchtler)ら、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(Journal of Histochemistry and Cytochemistry)、第77巻、431ページ、1983年
【非特許文献3】
レバイン(LeVine)、プロテインサイエンス(Protein Science)、2巻、404−410ページ、1993年
【非特許文献4】
イシグロ(Ishiguro)ら、ニューロサイエンス・レター(Neurosci. Lett.)、270巻、81−84ページ、1999年
【非特許文献5】
イトウ(Itoh)ら、アナルズ・オブ・ニューロロジー(Ann. Neurol.)、50巻、150−156ページ、2001年
【0008】
一方、これまでアルツハイマー病の研究あるいは生検または剖検試料を用いた診断等には、アルツハイマー患者から得た脳試料の切片を調製し、これを染色することが行われてきた。従来の染色剤は主として、コンゴーレッドまたはチオフラビンSが用いられてきた。これらの染色剤はアルツハイマー病の2つの病理学的主徴と言われる老人斑および神経原線維変化の両者を染色するのが特徴である。
しかしながら、これまでの多くの報告においても、神経原線維変化のみを染色できる低分子有機化合物は見あたらない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、タウ蛋白に対する結合特異性、ならびに血液−脳関門透過性が高く、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用できる物質を提供するものである。また本発明は、タウが蓄積する疾患の画像診断プローブとして用いられる標識されたかかる物質、ならびにかかるプローブを含む画像診断用組成物およびキットも提供する。さらに本発明は、脳材料中の神経原線維変化の染色方法、ならびに蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物も提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、式Iに示す化合物またはその塩もしくは溶媒和物がタウに対して非常に高い結合特異性を有し、さらに血液−脳関門透過性も高いことを見出し、本発明を完成するに至った。特に、本発明化合物BF−126はタウを特異的かつ鮮明に染色することから、特にアルツハイマー病、ピック病、および進行性核上性麻痺(PSP)などの正確な早期診断を可能にするものといえる。また、本発明化合物は血液−脳関門透過性も高いことから、生前における非侵襲性の診断が可能となる。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用される、式I:
【化2】
[式中、R1およびR2は独立して水素、ハロゲン、OH、COOH、SO3H、NH2、NO2、炭素数1〜4個のアルキル、またはO−炭素数1〜4個のアルキルであり、
R3およびR4は独立して水素、または炭素数1〜4個のアルキルであり、
mおよびnは独立して0〜4の整数である]
で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(2)BF−126である上記(1)記載の化合物、
(3)標識されている上記(1)または(2)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(4)標識が放射性核種である上記(3)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(5)R1ないしR4のいずれかが放射線放出核種で標識されている上記(4)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(6)標識がγ線放出核種である上記(4)または(5)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(7)γ線放出核種が99mTc、111In、67Ga、201Tl、123Iおよび133Xeからなる群より選択されるものである上記(6)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(8)γ線放出核種が99mTcおよび123Iからなる群より選択されるものである上記(7)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(9)標識が陽電子放出核種である上記(4)または(5)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(10)陽電子放出核種が11C、13N、15Oおよび18Fからなる群より選択される上記(9)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(11)陽電子放出核種が18Fである上記(10)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(12)上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断用組成物、
(13)99mTcまたは123Iで標識された上記(8)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む上記(12)記載の組成物、
(14)18Fで標識された上記(11)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む上記(12)記載の組成物、
(15)上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断用キット、
(16)99mTcまたは123Iで標識された上記(8)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む上記(15)記載のキット、
(17)18Fで標識された上記(11)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む上記(15)記載のキット
(18)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む脳試料中の神経原線維変化の染色用組成物、
(19)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、脳試料中の神経原線維変化の染色用キット、
(20)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする脳試料中の神経原線維変化の染色方法、
(21)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用医薬組成物、および
(22)疾患がアルツハイマー病である上記(21)記載の医薬組成物
に関するものである。
【0012】
本発明のタウが蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用される物質は上の一般式Iで示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物である。特に好ましい本発明化合物はBF−126(4−[2−(2−ベンツイミダゾリル)エテニィル]−N,N−ジエチルベンゼナミン p−トルエンスルフォネート)である(表1参照)。
【0013】
以下、式Iの化合物の各置換基について説明する。
本明細書において、「炭素数1〜4個のアルキル」という場合、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびこれらの構造異性体を包含するものとする。
R1およびR2の例としては水素、フッ素、塩素、OH、COOH、SO3H、NH2、NO2またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル等が挙げられる。好ましいR1およびR2は水素またはメチルである。R1およびR2は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、R1およびR2が標識ハロゲンであってもよく、陽電子放出核種であるハロゲン、例えば、18Fなどが好ましい。
R3およびR4の例としては水素およびメチル等が挙げられる。R3およびR4は同じであってもよく、異なっていてもよい。
mおよびnは独立して0ないし4の整数である。mまたはnが0以外の場合、R1置換基またはR2置換基はそれぞれが結合するベンゼン環のいずれの位置に存在していてもよい。複数のR1置換基が存在する場合、それぞれが同一であってもよく、また異なっていてもよい。このことはR2置換基についても同様である。
【0014】
式Iの化合物の塩も本発明に包含される。式Iの化合物中の窒素原子またはいずれかの官能基とともに塩が形成されてもよい。例えば、化合物中にカルボキシル基またはスルホン酸基が存在するような場合、これと金属との間に塩が形成されてもよい。かかる塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのごときアルカリ金属との塩、マグネシウム、カルシウム、バリウムのごときアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。式Iの化合物が水酸基を含む場合、その水素がナトリウム、カリウム等の金属となっている化合物も、本発明に包含される。さらに、式Iの化合物と金属塩とで形成される錯体(例えば塩化マグネシウム、塩化鉄のごとき金属塩とで形成される錯体)が存在する場合には、これらも本明細書においては式Iの化合物の塩に含めることとする。本発明化合物を組成物またはキットに使用する場合、医薬上許容される塩であることが好ましい。また、式Iの化合物の医薬上許容される塩としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素のごときハロゲン化物イオンとの塩、あるいはナトリウム、カリウム、カルシウムのごとき金属との塩がある。かかる塩は本発明に包含される。さらに上記のごとく本発明化合物は塩化鉄、塩化コバルトのごとき金属塩とで錯体を形成する場合には、かかる錯体も本発明に包含される。また、式Iの化合物の溶媒和物も本発明に包含される。溶媒和物としては、水和物、メタノール和物、エタノール和物、アンモニア和物等が挙げられる。本発明組成物またはキットに使用する場合、やはり医薬上許容されるものが好ましく、医薬上許容される溶媒和物としては、水和物、エタノール和物等が挙げられる。本明細書において、「本発明化合物」または「本発明の化合物」という場合、式Iの化合物、ならびにその塩および溶媒和物を包含するものとする。また、「BF−126」という場合、化合物BF−126、ならびにその塩および溶媒和物を包含するものとする。
【0015】
本発明においては、タウが蓄積する疾患における体内のタウにインビボにおいて特異的に結合する式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物を、タウが蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用する。本明細書における「タウが蓄積する疾患」とは、タウ蛋白の脳内蓄積を主徴とする疾病(タウオパチイ)をいい、タウをマーカーとして診断可能な疾病としては、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)および前頭側頭型麻痺(frontotemporal dementia andparkinsonism linked to chromosome 17: FTDP−17)などがあげられる。
【0016】
タウが蓄積する疾患の診断においては本発明化合物を標識したものをプローブとして使用するのが一般的である。標識には、蛍光物質、アフィニティー物質、酵素基質、放射性核種等がある。タウが蓄積する疾患の画像診断には通常、放射性核種で標識したプローブを使用する。当該分野においてよく知られた方法により種々の放射性核種で本発明化合物を標識することができる。例えば、3H、14C、35S、131I等は以前から使用されている放射性核種であり、インビトロでの利用例が多い。画像診断プローブおよびその検出手段に求められる一般的要件としては、インビボで診断できること、患者へのダメージが少ないこと(特に非侵襲的であること)、検出感度が高いこと、半減期が適当な長さであること(標識プローブ調製時間、診断時間が適当であること)等が挙げられる。そこで、最近では、高い検出感度と物質透過性を示すγ線を利用した陽電子断層撮影法(PET)またはγ線放出核種によるコンピューター断層撮影法(SPECT)が用いられるようになってきた。このうち、PETは、陽電子放出核種から正反対の方向に放射される2本のγ線を1対の検出器により同時計数法により検出するので、解像力や定量性に優れた情報が得られるので好ましい。SPECT用には99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xe等のγ線放出核種で本発明化合物を標識することができる。99mTcおよび123IがSPECによく用いられている。PET用には11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br等の陽電子放出核種で本発明化合物を標識することができる。陽電子放出核種のなかでも、半減期が適当であること、標識しやすさ等の点から11C、13N、15O、18Fが好ましく、18Fが特に好ましい。陽電子放出核種、γ線放出核種等の放射線放出核種での本発明化合物の標識位置は、式I中のいずれの位置であってもよい。あるいは環上の水素が陽電子放出核種、γ線放出核種等の放射線放出核種で置換されていてもよい。式Iの化合物標識位置はいずれの位置であってもよいが、好ましい標識位置は化合物中のフェニル環上である。かかる標識された式Iの化合物も本発明に包含される。例えば、本発明化合物を18Fで標識する場合、側鎖のいずれかが18Fで標識されていてもよく、あるいは環上の水素が18Fで置換されていてもよい。例えば、R1〜R4のいずれかに含まれる水素を18Fで置換してもよい。
【0017】
一般的には、これらの核種はサイクロトロンまたはジェネレーターと呼ばれる装置により産生される。当業者は、産生核種に応じた産生方法および装置が選択可能である。そのようにして産生された核種を用いて本発明化合物を標識することができる。
これらの放射性核種で標識された標識化合物の製造方法は当該分野においてよく知られている。代表的な方法としては、化学合成法、同位体交換法および生合成法がある。化学合成法は従来から広く用いられており、放射性の出発物質を用いること以外は通常の化学合成法と本質的に変わらない。この方法により種々の核種が化合物に導入されている。同位体交換法は、簡単な構造の化合物中の3H、35S、125I等を複雑な構造の化合物中に移して、これらの核種で標識された複雑な構造の化合物を得る方法である。生合成法は14C、35S等で標識した化合物を微生物等の細胞に与えてこれらの核種が導入された代謝産物を得る方法である。
標識位置については、通常の合成と同様に合成スキームを目的に応じて設計することにより、所望位置に標識を導入することができる。かかる設計は当業者によく知られている。
また、例えば、比較的半減期の短い11C、13N、15O、18F等の陽電子放出核種を用いる場合、病院等の施設内の設置された(超)小型サイクロトロンから所望核種を得て、上記の方法により所望化合物を所望位置で標識して、即座に診断、検査、治療等に使用することも可能となっている。
これらの当業者に公知の方法により、本発明化合物の所望位置に所望核種を導入して標識することができる。
【0018】
本発明標識化合物の対象への投与は局所的であってもよく、あるいは全身的であってもよい。投与経路としては、皮内、腹腔内、静脈、動脈、または脊髄液への注射または輸液等があるが、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の状態、検査部位等の要因により選択できる。本発明プローブを投与して、タウ蛋白への結合および崩壊のための十分な時間経過後、PET、SPECT等の手段で検査部位を調べることができる。これらの手段は、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の状態、検査部位等の要因に応じて適宜選択できる。
放射性核種で標識された本発明化合物の用量は、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の年齢、身体的状態、性別、疾病の程度、検査部位等により様々である。特に、対象の被曝量については十分に注意する必要がある。例えば、11C、13N、15O、18Fのごとき陽電子放出核種により標識された本発明化合物の放射能量は、通常には、3.7メガベクレルないし3.7ギガベクレル、好ましくは、18メガベクレルないし740メガベクレルの範囲である。
【0019】
また本発明は、本発明化合物を含む、タウが蓄積する疾患の画像診断用組成物を提供する。本発明組成物は、本発明化合物および医薬上許容される担体を含む。組成物中の本発明化合物は標識されていることが好ましい。上記のごとき標識法は様々であるが、インビボでの画像診断用途には放射性核種(特に11C、13N、15O、18Fのごとき陽電子放出核種)で標識されていることが望ましい。本発明組成物の形態は、その目的からすれば注射あるいは輸液可能な形態であることが好ましい。したがって、医薬上許容される担体は液体であるものが好ましく、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水等のごとき水性溶媒、あるいはポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコール等のごとき非水性溶媒があるが、これらに限らない。担体と本発明化合物との配合比率は、適用部位、検出手段等に応じて適宜選択できるが、通常には10万対1ないし2対1の比率であり、好ましくは1万対1ないし10対1の比率である。また、本発明組成物はさらに公知の抗菌剤(例えば、抗生剤等)、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、バッファー(例えば、トリス−塩酸バッファー、ヘペスバッファー等)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウム等)等を含有していてもよい。
【0020】
さらに本発明は、本発明化合物を必須の構成成分として含む、タウが蓄積する疾患の画像診断用キットを提供する。通常には、キットは、本発明化合物、それを溶解する溶剤、バッファー、浸透圧調節剤、抗菌剤、局所麻酔剤等の各成分を別個に、あるいはいくつかを一緒にしてそれぞれの容器に入れたものをひとまとめにしたものである。本発明化合物は未標識であっても、標識されていてもよい。未標識の場合、上で説明したような通常の方法により、使用前に本発明化合物を標識することができる。また本発明化合物は凍結乾燥粉末等の固形として提供してもよく、あるいは適当な溶媒中に溶解して提供してもよい。溶剤としては上述の本発明組成物に用いる担体と同様のものであってよい。また、バッファー、浸透圧調節剤、抗菌剤、局所麻酔剤等の各成分も上述の本発明組成物に使用するものと同様のものであってよい。容器は種々のものを適宜選択できるが、本発明化合物への標識導入操作に適した形状とすることもでき、化合物の性質に応じて遮光性の材質のものとしてもよく、あるいは患者への投与に便利なようにバイアル、または注射器等の形状とすることもできる。また、キットは診断に必要な器具類、例えば注射器、輸液セット、あるいはPET装置に使用する器具類等を適宜含んでいてもよい。通常、キットには説明書を添付する。
【0021】
さらに、本発明化合物がタウに特異的に結合することから、本発明化合物を未標識のまま、あるいは標識して、インビトロでのタウの検出、定量等に使用することもできる。例えば、顕微鏡標本のタウ蛋白染色、試料中のタウ蛋白の比色定量、あるいはシンチレーションカウンターを用いたタウ蛋白の定量等に本発明化合物を使用してもよい。
【0022】
先にも述べたように、コンゴーレッドまたはチオフラビンS等ではでは神経原線維変化のみを染色できないのに対し、本発明化合物は神経原線維変化のみを染色する。したがって、本発明化合物は、アルツハイマー病の研究あるいは死後における診断等における、アルツハイマー病患者脳切片おける神経原線維変化の染色剤として有用と考えられる。本発明化合物を用いた脳切片の染色は通常の方法で行うことができる。
したがって、本発明は、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む脳試料中の神経原線維変化の染色用組成物、ならびに本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、脳試料中の神経原線維変化の染色用キット関する。さらに、本発明は本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする脳試料中の神経原線維変化の染色方法にも関する。
【0023】
さらに上述のごとく、βシート構造をとったアミロイドβ蛋白、タウ蛋白に神経細胞毒性がみられることが判明している。かくして、本発明化合物は、蛋白自身がβシート構造をとることによって病因、または病因の一部となる疾患、例えばアルツハイマー病の治療薬になりうると考えられる。
したがって、さらに本発明は、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患、例えば、アルツハイマー病の予防および/または治療用医薬組成物に関する。
かかる医薬組成物の形態は特に限定されないが、液体処方が好ましく、特に注射用処方が好ましい。かかる注射用処方を脳内に直接注入することもでき、あるいは、実施例3にて示すように本発明化合物は血液/脳関門透過性が高いので、上記医薬組成物を静脈注射または静脈点滴用に処方して投与することもできる。かかる液体処方の調製は当該分野にて公知の方法で行うことができる。溶液の調製は、例えば、本発明化合物を適当な担体、注射用水、生理食塩水、リンゲル液等に溶解し、フィルター等で滅菌し、その後、適当な容器、例えば、バイアルまたはアンプルに充填する。また、溶液を凍結乾燥させ、使用時に適当な担体で再度溶液に復元することも可能である。懸濁液の調製は、例えば、本発明化合物を例えばエチレンオキサイドにさらすことにより滅菌し、次いで、滅菌済み液体担体懸濁することにより行うことができる。
本発明化合物の投与量は、患者の病状、性別、年齢、体重等に左右されるが、一般的には、体重70kgの成人の場合、1日あたり0.1mgないし1g、好ましくは1mgないし100mg、より好ましくは5mgないし50mgである。一定期間かかる投与量で処置を行い、結果により投与量を増減することができる。
【0024】
次に本発明化合物のスクリーニング方法、すなわち、タウを特異的に認識する化合物のスクリーニング方法について説明する。
(1)病理学的にアルツハイマー病と確定診断された患者および正常高齢者の、側頭葉または海馬における脳標本を使用した。標本は共同研究先である医療法人さわらび会福祉村病院(愛知県豊橋市野依町字山中19−14)から提供を受け、患者遺族から研究目的での使用に対する承諾を得ている(ビーエフ研究所倫理委員会 許可 No. RS−99−02)。
(2)パラフィン包埋された脳組織は厚さ6μmあるいは8μmで薄切し、スライドグラス上に伸展、乾燥させた。パラフィン脳切片はキシレン 10分×2、100% エタノール 5分×2、95% エタノール 5分×2、流水洗10分の順で脱パラフィン化した。
(3)本発明化合物による染色の前処理として、リポフスチンによる自己蛍光を除去する処置を行った。はじめに、脱パラフィン化した切片を10%ホルマリン溶液に60分間浸漬し、PBS(phosphate−buffered saline)で5分間洗浄した後、0.25% KMnO4溶液に90分間浸漬した。PBSにて2分間×2回洗浄した後、0.1% K2S2O5/ シュウ酸溶液中に約30秒間浸し、さらにPBSにて2分間×3回洗浄を行った。(4)50%エタノールに溶解した100μM本発明化合物溶液を約150μl滴下し、10分間反応させた。水道水中に5回つけた後、50%エタノールに3〜5回つけて速やかに分別を行い、その後PBSに60分間浸漬した上、Fluor Save Reagent (Calbiochem)で封入した。本発明化合物6はB励起下で、蛍光顕微鏡(Nikon, Eclips E800)を用いて鏡検した。画像はデジタルカメラ(Polaroid PDMCII)にて撮影した。
【0025】
免疫染色は以下のように行った。
(1)脱パラフィン後、蒸留水中で2分×2で洗浄を行い、イムノペンにより組織を囲んだ後、蟻酸を約150μl滴下し、室温で5分間静置した。水道水で5分間洗浄した後、冷PBS−Tween20に2分間浸漬し、その後、0.05% trypsin溶液を約150μl滴下して、37℃、15分間反応させた。
(2)氷浴中、冷PBS−Tween20で5分間×2回洗浄した後、ブロッキング用血清を2滴滴下して、37℃、30分間反応させ、余分な水分を除去した後に、アミロイドβ蛋白の特異抗体である4G8 (Signet社 Human Amyloid Beta Protein Clone 4G8, 1:100希釈) 、タウ蛋白の特異抗体であるAT8 (Innogenetics NV社 Anti タウ蛋白, 1:200希釈)抗体溶液をそれぞれ約150μl滴下して、37℃、1時間反応させた。
(3)さらに冷PBS−Tween20で2分間×5回洗浄した後、抗マウスIgG(H+L)、ヤギ、ビオチン結合溶液を2滴滴下して37℃、1時間反応させ、冷PBS−Tween20で2分間×3回洗浄した上でABC溶液(ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体溶液)を2滴滴下して、30分間静置した。再び、冷PBS−Tween20で2分間×3回洗浄した後、DAB溶液(20mlの0.05mol/l トリス塩酸緩衝液にDAB錠剤1錠を溶解し、使用直前に3%過酸化水素水100μlを添加)を約150μl滴下して、十分な発色を得たのち、蒸留水で1分間洗浄し、反応を停止させ、封入後、鏡検した。なおBA27、BC05、ブロッキング用血清、抗マウスIgG(H+L)、ヤギ、ビオチン結合溶液、ABC溶液はアミロイドβ−プロテイン免疫組織染色キット(Wako 299−56701)のものを使用した。
【0026】
以下に本発明化合物の特性に関する試験方法を説明する。
(A)急性毒性試験
本発明化合物の急性毒性をマウスを用いて静脈内投与で検討した。Crj:CD1系雄性マウスを一群4匹として使用した(各群の平均体重は32−34gであった)。各化合物は1N HClに溶解し、その後生理的食塩水に希釈して、尾静脈を介して投与し、以後7日まで観察した。
【0027】
(B)脳内移行試験
マウスに本発明化合物を静脈内投与し、インビボにおける脳移行性を測定した。
(1)マウスは30−40 g(7週齢、n = 3)のSlc:ICR(日本SLC)を用いた。
(2)被験化合物を1N HClで溶解後、精製水にて希釈し、尾静脈より注入し、投与より2分後にエーテル麻酔下で腹部大動脈からヘパリン処理注射筒を用いての採血、脳の採材をおこなった。
(3)血液は採血後4 ℃、14,000 rpmで10分間遠心し上清を血漿として−80 ℃で保存した。脳(小脳を含む)は採材後−80 ℃で保存した。
(4)使用時には血漿は溶解後、精製水で希釈した後、コンディショニングしたC18固相抽出カートリッジ(bond elute C18、200 mg、Lot. 070864、Varian)に添加しクロロホルムにて溶出した。
(5)脳は使用時には凍結したまま湿重量を測定し生理食塩水を加え、ミキサーミル(MM300、Retsch)によりホモジェナイズを行った。ホモジェネートを10分間遠心し、上清をコンディショニングしたC18固相抽出カートリッジに添加し、クロロホルムにて溶出を行った。
(6)被験化合物は高速液体クロマトグラフィを用い、最大吸光(2487UV/VIS検出器、Waters社製)および最大蛍光(FS−8020、東ソー製)を検出した。
(7)血漿、脳それぞれについて、投与量に対する血漿もしくは脳内の被験化合物含有量(%ID(injected dose)/ml または g)を求めた。
【0028】
(C)Aβ神経毒性の測定方法
生後2−3日齢Wistar系ラット大脳半球より大脳皮質−線条体の冠状切片 (350 μm厚) を作成し、1ウェル当たり5枚ずつMillicell−CM membrane上に置いて培養した(1プレート分30枚の切片を2ないし3匹の仔より得た)。培地はインビトロで14日目までは 50% minimum essential medium + 25% Hanks’balanced salt solution + 25% ウマ血清を使用した。それ以降(薬物処置時を含む)は血清を含有しないNeurobasal + B−27培地を用いた。培地量は培養開始初日には1ウェル当たり1ml、インビトロで1日目以降は 0.7mlとし、1日おきに培地交換を行った。
被験化合物およびAβ(1−40)の処置(インビトロで28または29日目)の際の培地量は1ウェル当たり1.6ml(膜の下側に1.0ml、上側に0.6ml適用)とし、切片が水没するようにした。24時間後に膜の下側から培地を0.6ml除去し、切片の水没状態を解消した。更に48時間(処置開始からのトータル72時間))培養後、培養切片を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%トルイジンブルーによるNissl染色を行った。
各組織の明視野鏡検像(2視野/切片:1視野=170×170マイクロm2)を、画像解析プロセッサーnexusQubeを用いて画像ファイルとして取得し、Adobe Photoshop上で画像の明るさ・コントラストを調整した上で細胞を計数した。なお、薬物処置前に予め肉眼あるいは実体顕微鏡下で組織の様子を観察し、処置前の時点で既に大脳皮質が厚みを保っていなかった切片はデータから除外した。
【0029】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
実施例1 BF−126はタウ蛋白を特異的に認識する化合物である
上記のタウを特異的に認識する化合物のスクリーニング方法により、特に好ましい化合物として、BF−126が見出された。BF−126の存在形態の一例であるp−ヒドロキシトシラート塩の0.2水和物(タナベR&Dにより合成)(以下、実施例1〜3において「試験化合物」または単に「BF−126」という)に関する試験結果を以下に説明する。下表1に試験化合物の構造を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
図1に示したように試験化合物はアミロイドβ蛋白の特異抗体である4G8で認識される老人斑はほとんど染色しなかった。しかしながら、図2に示したようにタウ蛋白の特異的抗体であるAT8で認識されるタウ蛋白のみを鮮明に染色した。すなわち、試験化合物は特異的にタウ蛋白を認識するプローブであることがわかった。
【0032】
実施例2 BF−126の急性毒性試験
試験化合物を上記(A)の急性毒性試験にて試験したところ、下表2のような結果を得た。
【表2】
一般にヒトでのPET撮影にはポジトロン標識および未標識化合物の総投与量として、1×10−12から1×10−5mg/kgの静脈内投与が用いられ、多くの場合、1×10−10から1×10−7mg/kgの静脈内投与が用いられる。試験化合物の静脈内投与時の最大耐量とPET撮影時に必要な総化合物量を比較すると、両者の間には少なくとも10万倍以上の開きがあることから、試験化合物はPET撮影用のプローブとしては極めて安全性の高い化合物と考えられる。
【0033】
実施例3 BF−126の脳内移行性
表3にマウスにおける試験化合物静脈内投与2分後の脳移行を示した。試験化合物投与2分後の脳内含有量は7.2%ID/gであった。中枢神経系を対象としたPETまたはSPECT用化合物の脳移行性は、0.5%ID/g以上あれば十分と考えられている。その意味で試験化合物は極めての脳移行性の高い化合物である。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例4:本発明化合物のAβ(1−40)神経毒性抑制効果
Aβ(1−40)の神経毒性、すなわちAβ(1−40)により誘発される細胞死に対するBF−126の作用について検討した。試験方法は上記(C)で説明したとおりであった。対照として、Aβ神経毒性を抑制することが近年報告された新規ポリペプチド、ヒューマニン(humanin)(Hashimoto Y et al. Proc.Natl. Acad. Sci. USA 98: 6336−6341, 2001)のアミノ酸残基置換によって活性を高めた誘導体humanin G (Hashimoto Y et al. J .Neurosci. 21: 9235−9245, 2001)の作用についても併せて検討した。BF−126については1μM、humanin Gについては10nMの濃度で10μM Aβ(1−40)と同時に処置した。
表4に結果を示す。
【0036】
【表4】
数値はsham処置群を100%とした各群の生存細胞数(平均±標準誤差)を表している。shamは無処置対照であり、Vehicle controlは薬物を溶解した溶媒を添加した対照である。
【0037】
表4に示すように、本発明化合物BF−126はAβ(1−40)による細胞死、すなわちその神経毒性を大幅に抑制したことがわかる。その効果はHumanin Gよりも優れていた。また、試験に用いたBF−126の濃度は1μMであり、それ自体、細胞に対する毒性は問題とならない濃度である。
このように、本発明化合物BF−126は、細胞にとり安全な濃度でAβ(1−40)の神経毒性を大幅に抑制することが示されたことから、本発明化合物は、蛋白自身がβシートとることによって病因、または病因の一部となる疾患、例えばアルツハイマー病に対する極めて有効かつ安全な治療薬として使用できると考えられる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明化合物は、タウ蛋白に対する特異性が高く、血液−脳関門透過性が高く、しかも極めて安全性の高いものである。したがって、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして有用である。さらに本発明によれば、本発明化合物を含む、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断用組成物およびキットが提供される。かかる化合物、組成物、またはキットを用いることにより、疾病の早期における正確な診断が可能となる。さらに本発明によれば、脳材料中の神経原線維変化の染色が可能になり、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、老人斑をBF−126で染色した場合の蛍光顕微鏡写真(左パネル)および左パネルの隣接試料において老人斑を4G8(抗Aβ抗体)染色した場合の顕微鏡写真(右パネル)を示す。左パネルの矢印はタウ蛋白の存在位置を示す。右パネルのくさび型矢印は老人斑を示す。
【図2】図2は、タウ蛋白をBF−126で染色した場合の蛍光顕微鏡写真(左パネル)および左パネルの隣接試料においてタウをAT8(抗タウ抗体)染色した場合の顕微鏡写真(右パネル)を示す。左パネルの矢印はタウ蛋白の存在位置を示す。右パネルの矢印はタウ蛋白を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブ、詳細には陽電子放出核種により標識されたプローブ、ならびに該プローブを含む画像診断用組成物に関する。さらに本発明は、脳材料中の神経原線維変化の染色、ならびに蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物にも関する。
【0002】
【従来の技術】
アミロイドが蓄積する疾患には、体内の種々の器官や組織への不溶性原線維性蛋白(アミロイド)の沈着を特徴とする種々の疾病があり、アルツハイマー病やダウン症候群等が含まれる。このうち、アルツハイマー病(AD)は現在最も治療の困難な疾病の1つとされており、正確な早期診断が望まれている。
アルツハイマー病(AD)は現在最も治療の困難な疾病の1つとされており、正確な早期診断が望まれている疾病である。アルツハイマー病は主として初老期から老年期に起こる進行性の痴呆を特徴とする疾患である。病理学的には大脳の全体的な萎縮、神経細胞の著しい変性と脱落、神経原線維変化と老人斑の出現を特徴とする。アルツハイマー病に代表される痴呆の最大のリスクファクターは加齢であることが知られている。したがって、老齢人口の増加に伴う患者数の増加は、特に、高齢化社会となっている日本、アメリカ、ヨーロッパ諸国において顕著であり、それに対する医療コストはこれらの国の医療システムを危機におとしめている。
なお、我が国においてはアルツハイマー病患者数は約100万人と推定され、今後人口の高齢化に伴いその患者数は増大することが確実視されている。アルツハイマー病患者にかかわる費用は介護費用を含めると年間患者1人当たり250万円を超えると考えられていることから、すでに我が国では2兆5千億円を超える社会経済的コストを払っていることになる。アルツハイマー病において痴呆症状が顕在化する以前ないしはできるだけ早期に治療を加えることは、大きな医療経済的効果をもたらすことはいまや世界の常識となっている。しかし現状ではこれらの段階のアルツハイマー病を正確に診断することは極めて困難である。
【0003】
現在のアルツハイマー病診断方法は各種あるが、我が国においては長谷川式、ADAS、MMSE等の、アルツハイマー病が疑われる個体の認知機能の低下を定量的に評価する方法が一般的であり、まれに画像診断法(MRI、CT等)が補助的に用いられている。しかしこれらの診断法では病気を確定するには不十分であり、確定診断には生前における脳の生検(バイオプシー)、死後脳の病理組織学的検査が必要である。このように、アルツハイマー病の診断法についても精力的な研究が行われているにもかかわらず、それほどの進歩がみられないでいる。多くの研究の結果、最初の臨床症状が現れるかなり前(長い場合は約40年前)にはすでにアルツハイマー病特徴的な神経変性が始まっていることが判ってきた。また同病においては患者を取り巻く家族または臨床家が最初の臨床症状に気づいた時には、すでに脳内病理像は取り返しのつかない状態まで進行していることが知られている。上述のような病状の進行特性および患者数の激増を考え合わせると、アルツハイマー病の正確な早期診断の必要性ならびに意義は極めて大きい。
【0004】
アルツハイマー病の病理組織像は2つの主徴に代表される。すなわち老人斑および神経原線維変化である。前者の主構成成分はβシート構造をとったアミロイドβ(Aβ)蛋白であり、後者のそれは過剰リン酸化されたタウ蛋白である。アルツハイマー病の確定診断はこれらの病理学的特徴が患者脳内に出現することをよりどころとしている。
アミロイドβ蛋白はアルツハイマー病を包含するアミロイドが蓄積する疾患に特徴的であり、密接な関連性を有している。したがって、体内、特に脳内でβシート構造をとったアミロイドβ蛋白をマーカーとして検出することが、アミロイドが蓄積する疾患、特にアルツハイマー病の重要な診断方法の1つとなる。アルツハイマー病をはじめとするアミロイドが蓄積する疾患の診断を目的として、体内、特に脳内アミロイドβ蛋白に特異的に結合し、これを染色する物質の検索が従来から行われている。かかる物質としてはコンゴーレッド(非特許文献1参照)およびチオフラビンS(非特許文献2参照)、チオフラビンT(非特許文献3参照)ならびにクリサミンGおよびその誘導体(特許文献1および特許文献2参照)等が知られているが、アミロイドβ蛋白に対する結合特異性、血液−脳関門透過性、溶解度、毒性等の面から問題が少なくない。本発明者らは、アミロイドβ蛋白に対して特異性が高く、血液−脳関門透過性、溶解度が大きく、毒性が小さい等の特徴を有する種々の化合物化合物を見出している(特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6および特許文献7参照)。
【0005】
脳内蛋白がβシート構造をとることによって、その蛋白自身が病因となる疾患が知られている。アルツハイマー病においてはアミロイドβ蛋白およびタウ蛋白がβシート構造をとることによって、蛋白自身が病因または病因の一部となっていると考えられている。Yanknerらはアミロイドβ蛋白にβシート構造をとらせることにより神経細胞毒性を発揮することを初めて報告した(サイエンス、245巻、417−420ページ、1989)。その後、多くの追試が行われ、βシート構造をとったアミロイドβ蛋白が、神経細胞毒性を有することが確認された。このようにβシート構造をとったアミロイドβ蛋白、タウ蛋白に神経細胞毒性がみられることから、その細胞毒性を抑制する化合物は、蛋白自身がβシート構造をとることによって病因、または病因の一部となる疾患、例えばアルツハイマー病の治療薬になりうることが示唆される。
【0006】
一方、アルツハイマー病のもう1つの病理組織学主徴である神経原繊維変化およびその主構成成分である過剰リン酸化されたタウ蛋白(本明細書において「タウ」ともいう)は、一般的にアミロイドβ蛋白よりは遅れて発現すると考えられている。しかし、神経原繊維変化はアミロイドβ蛋白に比し痴呆の程度とよく相関すると考えられている(Braak H and Braak E : Acta Neuropthol. 82巻、239−259、1991年。 Wischikら: In ” Neurobiology of Alzheimer’s Disease”, 103−206, Oxford University Press, Oxford, 2001)。
アルツハイマー病以外にタウ蛋白の脳内蓄積を主徴とする疾病(タウオパチイ)にはピック病、進行性核上性麻痺(PSP)および前頭側頭型麻痺(frontotemporal dementia and parkinsonism linked to chromosome 17: FTDP−17)などがあげられる。このようにタウ蛋白はアルツハイマー病を包括するタウ蛋白が蓄積する疾患に特徴的であり、密接な関連を有している。従って体内、特に脳内でβシート構造をとったタウ蛋白をマーカーとして検出することが、タウが蓄積する疾患、特にアルツハイマー病の重要な診断法の1つとなる。
アルツハイマー病を始めとするタウが蓄積する疾患の診断を目的として、体内、特に脳脊髄液中のタウを定量する方法が2、3のグループから報告されている(非特許文献4および非特許文献5参照)。しかし、タウに対する特異性が高く、非侵襲的にインビボでのタウを定量することを目的としたプローブは世界的にみても全くみあたらない。
したがって、アルツハイマー病を始めとするタウが蓄積する疾患の診断のための、タウに対する特異性の高い化合物に対する必要性が高まっている。
【0007】
【特許文献1】
国際特許出願PCT/US96/05918明細書
【特許文献2】
国際特許出願PCT/US98/07889明細書
【特許文献3】
特願平第2000−080082号明細書
【特許文献4】
特願平第2000−080083号明細書
【特許文献5】
特願平第2001−076075号明細書
【特許文献6】
国際特許出願PCT/JP01/02204明細書
【特許文献7】
国際特許出願PCT/JP01/02205明細書
【非特許文献1】
パチトラー(Puchtler)ら、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(Journal of Histochemistry and Cytochemistry)、第10巻、35頁、1962年
【非特許文献2】
パチトラー(Puchtler)ら、ジャーナル・オブ・ヒストケミストリー・アンド・サイトケミストリー(Journal of Histochemistry and Cytochemistry)、第77巻、431ページ、1983年
【非特許文献3】
レバイン(LeVine)、プロテインサイエンス(Protein Science)、2巻、404−410ページ、1993年
【非特許文献4】
イシグロ(Ishiguro)ら、ニューロサイエンス・レター(Neurosci. Lett.)、270巻、81−84ページ、1999年
【非特許文献5】
イトウ(Itoh)ら、アナルズ・オブ・ニューロロジー(Ann. Neurol.)、50巻、150−156ページ、2001年
【0008】
一方、これまでアルツハイマー病の研究あるいは生検または剖検試料を用いた診断等には、アルツハイマー患者から得た脳試料の切片を調製し、これを染色することが行われてきた。従来の染色剤は主として、コンゴーレッドまたはチオフラビンSが用いられてきた。これらの染色剤はアルツハイマー病の2つの病理学的主徴と言われる老人斑および神経原線維変化の両者を染色するのが特徴である。
しかしながら、これまでの多くの報告においても、神経原線維変化のみを染色できる低分子有機化合物は見あたらない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に鑑み、タウ蛋白に対する結合特異性、ならびに血液−脳関門透過性が高く、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用できる物質を提供するものである。また本発明は、タウが蓄積する疾患の画像診断プローブとして用いられる標識されたかかる物質、ならびにかかるプローブを含む画像診断用組成物およびキットも提供する。さらに本発明は、脳材料中の神経原線維変化の染色方法、ならびに蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物も提供する。
【0010】
【課題を解決するための手段および発明の実施の形態】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、式Iに示す化合物またはその塩もしくは溶媒和物がタウに対して非常に高い結合特異性を有し、さらに血液−脳関門透過性も高いことを見出し、本発明を完成するに至った。特に、本発明化合物BF−126はタウを特異的かつ鮮明に染色することから、特にアルツハイマー病、ピック病、および進行性核上性麻痺(PSP)などの正確な早期診断を可能にするものといえる。また、本発明化合物は血液−脳関門透過性も高いことから、生前における非侵襲性の診断が可能となる。
【0011】
すなわち、本発明は、
(1)タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用される、式I:
【化2】
[式中、R1およびR2は独立して水素、ハロゲン、OH、COOH、SO3H、NH2、NO2、炭素数1〜4個のアルキル、またはO−炭素数1〜4個のアルキルであり、
R3およびR4は独立して水素、または炭素数1〜4個のアルキルであり、
mおよびnは独立して0〜4の整数である]
で示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(2)BF−126である上記(1)記載の化合物、
(3)標識されている上記(1)または(2)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(4)標識が放射性核種である上記(3)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(5)R1ないしR4のいずれかが放射線放出核種で標識されている上記(4)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(6)標識がγ線放出核種である上記(4)または(5)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(7)γ線放出核種が99mTc、111In、67Ga、201Tl、123Iおよび133Xeからなる群より選択されるものである上記(6)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(8)γ線放出核種が99mTcおよび123Iからなる群より選択されるものである上記(7)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(9)標識が陽電子放出核種である上記(4)または(5)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(10)陽電子放出核種が11C、13N、15Oおよび18Fからなる群より選択される上記(9)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(11)陽電子放出核種が18Fである上記(10)記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、
(12)上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断用組成物、
(13)99mTcまたは123Iで標識された上記(8)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む上記(12)記載の組成物、
(14)18Fで標識された上記(11)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む上記(12)記載の組成物、
(15)上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断用キット、
(16)99mTcまたは123Iで標識された上記(8)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む上記(15)記載のキット、
(17)18Fで標識された上記(11)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む上記(15)記載のキット
(18)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む脳試料中の神経原線維変化の染色用組成物、
(19)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、脳試料中の神経原線維変化の染色用キット、
(20)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする脳試料中の神経原線維変化の染色方法、
(21)上記(1)記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用医薬組成物、および
(22)疾患がアルツハイマー病である上記(21)記載の医薬組成物
に関するものである。
【0012】
本発明のタウが蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用される物質は上の一般式Iで示される化合物またはその塩もしくは溶媒和物である。特に好ましい本発明化合物はBF−126(4−[2−(2−ベンツイミダゾリル)エテニィル]−N,N−ジエチルベンゼナミン p−トルエンスルフォネート)である(表1参照)。
【0013】
以下、式Iの化合物の各置換基について説明する。
本明細書において、「炭素数1〜4個のアルキル」という場合、メチル、エチル、プロピル、ブチル、およびこれらの構造異性体を包含するものとする。
R1およびR2の例としては水素、フッ素、塩素、OH、COOH、SO3H、NH2、NO2またはメチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル等が挙げられる。好ましいR1およびR2は水素またはメチルである。R1およびR2は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、R1およびR2が標識ハロゲンであってもよく、陽電子放出核種であるハロゲン、例えば、18Fなどが好ましい。
R3およびR4の例としては水素およびメチル等が挙げられる。R3およびR4は同じであってもよく、異なっていてもよい。
mおよびnは独立して0ないし4の整数である。mまたはnが0以外の場合、R1置換基またはR2置換基はそれぞれが結合するベンゼン環のいずれの位置に存在していてもよい。複数のR1置換基が存在する場合、それぞれが同一であってもよく、また異なっていてもよい。このことはR2置換基についても同様である。
【0014】
式Iの化合物の塩も本発明に包含される。式Iの化合物中の窒素原子またはいずれかの官能基とともに塩が形成されてもよい。例えば、化合物中にカルボキシル基またはスルホン酸基が存在するような場合、これと金属との間に塩が形成されてもよい。かかる塩の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムのごときアルカリ金属との塩、マグネシウム、カルシウム、バリウムのごときアルカリ土類金属との塩等が挙げられる。式Iの化合物が水酸基を含む場合、その水素がナトリウム、カリウム等の金属となっている化合物も、本発明に包含される。さらに、式Iの化合物と金属塩とで形成される錯体(例えば塩化マグネシウム、塩化鉄のごとき金属塩とで形成される錯体)が存在する場合には、これらも本明細書においては式Iの化合物の塩に含めることとする。本発明化合物を組成物またはキットに使用する場合、医薬上許容される塩であることが好ましい。また、式Iの化合物の医薬上許容される塩としては、例えば、塩素、臭素、ヨウ素のごときハロゲン化物イオンとの塩、あるいはナトリウム、カリウム、カルシウムのごとき金属との塩がある。かかる塩は本発明に包含される。さらに上記のごとく本発明化合物は塩化鉄、塩化コバルトのごとき金属塩とで錯体を形成する場合には、かかる錯体も本発明に包含される。また、式Iの化合物の溶媒和物も本発明に包含される。溶媒和物としては、水和物、メタノール和物、エタノール和物、アンモニア和物等が挙げられる。本発明組成物またはキットに使用する場合、やはり医薬上許容されるものが好ましく、医薬上許容される溶媒和物としては、水和物、エタノール和物等が挙げられる。本明細書において、「本発明化合物」または「本発明の化合物」という場合、式Iの化合物、ならびにその塩および溶媒和物を包含するものとする。また、「BF−126」という場合、化合物BF−126、ならびにその塩および溶媒和物を包含するものとする。
【0015】
本発明においては、タウが蓄積する疾患における体内のタウにインビボにおいて特異的に結合する式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物を、タウが蓄積する疾患の画像診断プローブとして使用する。本明細書における「タウが蓄積する疾患」とは、タウ蛋白の脳内蓄積を主徴とする疾病(タウオパチイ)をいい、タウをマーカーとして診断可能な疾病としては、アルツハイマー病、ピック病、進行性核上性麻痺(PSP)および前頭側頭型麻痺(frontotemporal dementia andparkinsonism linked to chromosome 17: FTDP−17)などがあげられる。
【0016】
タウが蓄積する疾患の診断においては本発明化合物を標識したものをプローブとして使用するのが一般的である。標識には、蛍光物質、アフィニティー物質、酵素基質、放射性核種等がある。タウが蓄積する疾患の画像診断には通常、放射性核種で標識したプローブを使用する。当該分野においてよく知られた方法により種々の放射性核種で本発明化合物を標識することができる。例えば、3H、14C、35S、131I等は以前から使用されている放射性核種であり、インビトロでの利用例が多い。画像診断プローブおよびその検出手段に求められる一般的要件としては、インビボで診断できること、患者へのダメージが少ないこと(特に非侵襲的であること)、検出感度が高いこと、半減期が適当な長さであること(標識プローブ調製時間、診断時間が適当であること)等が挙げられる。そこで、最近では、高い検出感度と物質透過性を示すγ線を利用した陽電子断層撮影法(PET)またはγ線放出核種によるコンピューター断層撮影法(SPECT)が用いられるようになってきた。このうち、PETは、陽電子放出核種から正反対の方向に放射される2本のγ線を1対の検出器により同時計数法により検出するので、解像力や定量性に優れた情報が得られるので好ましい。SPECT用には99mTc、111In、67Ga、201Tl、123I、133Xe等のγ線放出核種で本発明化合物を標識することができる。99mTcおよび123IがSPECによく用いられている。PET用には11C、13N、15O、18F、62Cu、68Ga、76Br等の陽電子放出核種で本発明化合物を標識することができる。陽電子放出核種のなかでも、半減期が適当であること、標識しやすさ等の点から11C、13N、15O、18Fが好ましく、18Fが特に好ましい。陽電子放出核種、γ線放出核種等の放射線放出核種での本発明化合物の標識位置は、式I中のいずれの位置であってもよい。あるいは環上の水素が陽電子放出核種、γ線放出核種等の放射線放出核種で置換されていてもよい。式Iの化合物標識位置はいずれの位置であってもよいが、好ましい標識位置は化合物中のフェニル環上である。かかる標識された式Iの化合物も本発明に包含される。例えば、本発明化合物を18Fで標識する場合、側鎖のいずれかが18Fで標識されていてもよく、あるいは環上の水素が18Fで置換されていてもよい。例えば、R1〜R4のいずれかに含まれる水素を18Fで置換してもよい。
【0017】
一般的には、これらの核種はサイクロトロンまたはジェネレーターと呼ばれる装置により産生される。当業者は、産生核種に応じた産生方法および装置が選択可能である。そのようにして産生された核種を用いて本発明化合物を標識することができる。
これらの放射性核種で標識された標識化合物の製造方法は当該分野においてよく知られている。代表的な方法としては、化学合成法、同位体交換法および生合成法がある。化学合成法は従来から広く用いられており、放射性の出発物質を用いること以外は通常の化学合成法と本質的に変わらない。この方法により種々の核種が化合物に導入されている。同位体交換法は、簡単な構造の化合物中の3H、35S、125I等を複雑な構造の化合物中に移して、これらの核種で標識された複雑な構造の化合物を得る方法である。生合成法は14C、35S等で標識した化合物を微生物等の細胞に与えてこれらの核種が導入された代謝産物を得る方法である。
標識位置については、通常の合成と同様に合成スキームを目的に応じて設計することにより、所望位置に標識を導入することができる。かかる設計は当業者によく知られている。
また、例えば、比較的半減期の短い11C、13N、15O、18F等の陽電子放出核種を用いる場合、病院等の施設内の設置された(超)小型サイクロトロンから所望核種を得て、上記の方法により所望化合物を所望位置で標識して、即座に診断、検査、治療等に使用することも可能となっている。
これらの当業者に公知の方法により、本発明化合物の所望位置に所望核種を導入して標識することができる。
【0018】
本発明標識化合物の対象への投与は局所的であってもよく、あるいは全身的であってもよい。投与経路としては、皮内、腹腔内、静脈、動脈、または脊髄液への注射または輸液等があるが、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の状態、検査部位等の要因により選択できる。本発明プローブを投与して、タウ蛋白への結合および崩壊のための十分な時間経過後、PET、SPECT等の手段で検査部位を調べることができる。これらの手段は、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の状態、検査部位等の要因に応じて適宜選択できる。
放射性核種で標識された本発明化合物の用量は、疾病の種類、使用核種、使用化合物、対象の年齢、身体的状態、性別、疾病の程度、検査部位等により様々である。特に、対象の被曝量については十分に注意する必要がある。例えば、11C、13N、15O、18Fのごとき陽電子放出核種により標識された本発明化合物の放射能量は、通常には、3.7メガベクレルないし3.7ギガベクレル、好ましくは、18メガベクレルないし740メガベクレルの範囲である。
【0019】
また本発明は、本発明化合物を含む、タウが蓄積する疾患の画像診断用組成物を提供する。本発明組成物は、本発明化合物および医薬上許容される担体を含む。組成物中の本発明化合物は標識されていることが好ましい。上記のごとき標識法は様々であるが、インビボでの画像診断用途には放射性核種(特に11C、13N、15O、18Fのごとき陽電子放出核種)で標識されていることが望ましい。本発明組成物の形態は、その目的からすれば注射あるいは輸液可能な形態であることが好ましい。したがって、医薬上許容される担体は液体であるものが好ましく、リン酸カリウム緩衝液、生理食塩水、リンゲル液、蒸留水等のごとき水性溶媒、あるいはポリエチレングリコール、植物性油脂、エタノール、グリセリン、ジメチルスルホキサイド、プロピレングリコール等のごとき非水性溶媒があるが、これらに限らない。担体と本発明化合物との配合比率は、適用部位、検出手段等に応じて適宜選択できるが、通常には10万対1ないし2対1の比率であり、好ましくは1万対1ないし10対1の比率である。また、本発明組成物はさらに公知の抗菌剤(例えば、抗生剤等)、局所麻酔剤(例えば、塩酸プロカイン、塩酸ジブカイン等)、バッファー(例えば、トリス−塩酸バッファー、ヘペスバッファー等)、浸透圧調節剤(例えば、グルコース、ソルビトール、塩化ナトリウム等)等を含有していてもよい。
【0020】
さらに本発明は、本発明化合物を必須の構成成分として含む、タウが蓄積する疾患の画像診断用キットを提供する。通常には、キットは、本発明化合物、それを溶解する溶剤、バッファー、浸透圧調節剤、抗菌剤、局所麻酔剤等の各成分を別個に、あるいはいくつかを一緒にしてそれぞれの容器に入れたものをひとまとめにしたものである。本発明化合物は未標識であっても、標識されていてもよい。未標識の場合、上で説明したような通常の方法により、使用前に本発明化合物を標識することができる。また本発明化合物は凍結乾燥粉末等の固形として提供してもよく、あるいは適当な溶媒中に溶解して提供してもよい。溶剤としては上述の本発明組成物に用いる担体と同様のものであってよい。また、バッファー、浸透圧調節剤、抗菌剤、局所麻酔剤等の各成分も上述の本発明組成物に使用するものと同様のものであってよい。容器は種々のものを適宜選択できるが、本発明化合物への標識導入操作に適した形状とすることもでき、化合物の性質に応じて遮光性の材質のものとしてもよく、あるいは患者への投与に便利なようにバイアル、または注射器等の形状とすることもできる。また、キットは診断に必要な器具類、例えば注射器、輸液セット、あるいはPET装置に使用する器具類等を適宜含んでいてもよい。通常、キットには説明書を添付する。
【0021】
さらに、本発明化合物がタウに特異的に結合することから、本発明化合物を未標識のまま、あるいは標識して、インビトロでのタウの検出、定量等に使用することもできる。例えば、顕微鏡標本のタウ蛋白染色、試料中のタウ蛋白の比色定量、あるいはシンチレーションカウンターを用いたタウ蛋白の定量等に本発明化合物を使用してもよい。
【0022】
先にも述べたように、コンゴーレッドまたはチオフラビンS等ではでは神経原線維変化のみを染色できないのに対し、本発明化合物は神経原線維変化のみを染色する。したがって、本発明化合物は、アルツハイマー病の研究あるいは死後における診断等における、アルツハイマー病患者脳切片おける神経原線維変化の染色剤として有用と考えられる。本発明化合物を用いた脳切片の染色は通常の方法で行うことができる。
したがって、本発明は、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む脳試料中の神経原線維変化の染色用組成物、ならびに本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、脳試料中の神経原線維変化の染色用キット関する。さらに、本発明は本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする脳試料中の神経原線維変化の染色方法にも関する。
【0023】
さらに上述のごとく、βシート構造をとったアミロイドβ蛋白、タウ蛋白に神経細胞毒性がみられることが判明している。かくして、本発明化合物は、蛋白自身がβシート構造をとることによって病因、または病因の一部となる疾患、例えばアルツハイマー病の治療薬になりうると考えられる。
したがって、さらに本発明は、本発明化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患、例えば、アルツハイマー病の予防および/または治療用医薬組成物に関する。
かかる医薬組成物の形態は特に限定されないが、液体処方が好ましく、特に注射用処方が好ましい。かかる注射用処方を脳内に直接注入することもでき、あるいは、実施例3にて示すように本発明化合物は血液/脳関門透過性が高いので、上記医薬組成物を静脈注射または静脈点滴用に処方して投与することもできる。かかる液体処方の調製は当該分野にて公知の方法で行うことができる。溶液の調製は、例えば、本発明化合物を適当な担体、注射用水、生理食塩水、リンゲル液等に溶解し、フィルター等で滅菌し、その後、適当な容器、例えば、バイアルまたはアンプルに充填する。また、溶液を凍結乾燥させ、使用時に適当な担体で再度溶液に復元することも可能である。懸濁液の調製は、例えば、本発明化合物を例えばエチレンオキサイドにさらすことにより滅菌し、次いで、滅菌済み液体担体懸濁することにより行うことができる。
本発明化合物の投与量は、患者の病状、性別、年齢、体重等に左右されるが、一般的には、体重70kgの成人の場合、1日あたり0.1mgないし1g、好ましくは1mgないし100mg、より好ましくは5mgないし50mgである。一定期間かかる投与量で処置を行い、結果により投与量を増減することができる。
【0024】
次に本発明化合物のスクリーニング方法、すなわち、タウを特異的に認識する化合物のスクリーニング方法について説明する。
(1)病理学的にアルツハイマー病と確定診断された患者および正常高齢者の、側頭葉または海馬における脳標本を使用した。標本は共同研究先である医療法人さわらび会福祉村病院(愛知県豊橋市野依町字山中19−14)から提供を受け、患者遺族から研究目的での使用に対する承諾を得ている(ビーエフ研究所倫理委員会 許可 No. RS−99−02)。
(2)パラフィン包埋された脳組織は厚さ6μmあるいは8μmで薄切し、スライドグラス上に伸展、乾燥させた。パラフィン脳切片はキシレン 10分×2、100% エタノール 5分×2、95% エタノール 5分×2、流水洗10分の順で脱パラフィン化した。
(3)本発明化合物による染色の前処理として、リポフスチンによる自己蛍光を除去する処置を行った。はじめに、脱パラフィン化した切片を10%ホルマリン溶液に60分間浸漬し、PBS(phosphate−buffered saline)で5分間洗浄した後、0.25% KMnO4溶液に90分間浸漬した。PBSにて2分間×2回洗浄した後、0.1% K2S2O5/ シュウ酸溶液中に約30秒間浸し、さらにPBSにて2分間×3回洗浄を行った。(4)50%エタノールに溶解した100μM本発明化合物溶液を約150μl滴下し、10分間反応させた。水道水中に5回つけた後、50%エタノールに3〜5回つけて速やかに分別を行い、その後PBSに60分間浸漬した上、Fluor Save Reagent (Calbiochem)で封入した。本発明化合物6はB励起下で、蛍光顕微鏡(Nikon, Eclips E800)を用いて鏡検した。画像はデジタルカメラ(Polaroid PDMCII)にて撮影した。
【0025】
免疫染色は以下のように行った。
(1)脱パラフィン後、蒸留水中で2分×2で洗浄を行い、イムノペンにより組織を囲んだ後、蟻酸を約150μl滴下し、室温で5分間静置した。水道水で5分間洗浄した後、冷PBS−Tween20に2分間浸漬し、その後、0.05% trypsin溶液を約150μl滴下して、37℃、15分間反応させた。
(2)氷浴中、冷PBS−Tween20で5分間×2回洗浄した後、ブロッキング用血清を2滴滴下して、37℃、30分間反応させ、余分な水分を除去した後に、アミロイドβ蛋白の特異抗体である4G8 (Signet社 Human Amyloid Beta Protein Clone 4G8, 1:100希釈) 、タウ蛋白の特異抗体であるAT8 (Innogenetics NV社 Anti タウ蛋白, 1:200希釈)抗体溶液をそれぞれ約150μl滴下して、37℃、1時間反応させた。
(3)さらに冷PBS−Tween20で2分間×5回洗浄した後、抗マウスIgG(H+L)、ヤギ、ビオチン結合溶液を2滴滴下して37℃、1時間反応させ、冷PBS−Tween20で2分間×3回洗浄した上でABC溶液(ストレプトアビジン−ビオチン−ペルオキシダーゼ複合体溶液)を2滴滴下して、30分間静置した。再び、冷PBS−Tween20で2分間×3回洗浄した後、DAB溶液(20mlの0.05mol/l トリス塩酸緩衝液にDAB錠剤1錠を溶解し、使用直前に3%過酸化水素水100μlを添加)を約150μl滴下して、十分な発色を得たのち、蒸留水で1分間洗浄し、反応を停止させ、封入後、鏡検した。なおBA27、BC05、ブロッキング用血清、抗マウスIgG(H+L)、ヤギ、ビオチン結合溶液、ABC溶液はアミロイドβ−プロテイン免疫組織染色キット(Wako 299−56701)のものを使用した。
【0026】
以下に本発明化合物の特性に関する試験方法を説明する。
(A)急性毒性試験
本発明化合物の急性毒性をマウスを用いて静脈内投与で検討した。Crj:CD1系雄性マウスを一群4匹として使用した(各群の平均体重は32−34gであった)。各化合物は1N HClに溶解し、その後生理的食塩水に希釈して、尾静脈を介して投与し、以後7日まで観察した。
【0027】
(B)脳内移行試験
マウスに本発明化合物を静脈内投与し、インビボにおける脳移行性を測定した。
(1)マウスは30−40 g(7週齢、n = 3)のSlc:ICR(日本SLC)を用いた。
(2)被験化合物を1N HClで溶解後、精製水にて希釈し、尾静脈より注入し、投与より2分後にエーテル麻酔下で腹部大動脈からヘパリン処理注射筒を用いての採血、脳の採材をおこなった。
(3)血液は採血後4 ℃、14,000 rpmで10分間遠心し上清を血漿として−80 ℃で保存した。脳(小脳を含む)は採材後−80 ℃で保存した。
(4)使用時には血漿は溶解後、精製水で希釈した後、コンディショニングしたC18固相抽出カートリッジ(bond elute C18、200 mg、Lot. 070864、Varian)に添加しクロロホルムにて溶出した。
(5)脳は使用時には凍結したまま湿重量を測定し生理食塩水を加え、ミキサーミル(MM300、Retsch)によりホモジェナイズを行った。ホモジェネートを10分間遠心し、上清をコンディショニングしたC18固相抽出カートリッジに添加し、クロロホルムにて溶出を行った。
(6)被験化合物は高速液体クロマトグラフィを用い、最大吸光(2487UV/VIS検出器、Waters社製)および最大蛍光(FS−8020、東ソー製)を検出した。
(7)血漿、脳それぞれについて、投与量に対する血漿もしくは脳内の被験化合物含有量(%ID(injected dose)/ml または g)を求めた。
【0028】
(C)Aβ神経毒性の測定方法
生後2−3日齢Wistar系ラット大脳半球より大脳皮質−線条体の冠状切片 (350 μm厚) を作成し、1ウェル当たり5枚ずつMillicell−CM membrane上に置いて培養した(1プレート分30枚の切片を2ないし3匹の仔より得た)。培地はインビトロで14日目までは 50% minimum essential medium + 25% Hanks’balanced salt solution + 25% ウマ血清を使用した。それ以降(薬物処置時を含む)は血清を含有しないNeurobasal + B−27培地を用いた。培地量は培養開始初日には1ウェル当たり1ml、インビトロで1日目以降は 0.7mlとし、1日おきに培地交換を行った。
被験化合物およびAβ(1−40)の処置(インビトロで28または29日目)の際の培地量は1ウェル当たり1.6ml(膜の下側に1.0ml、上側に0.6ml適用)とし、切片が水没するようにした。24時間後に膜の下側から培地を0.6ml除去し、切片の水没状態を解消した。更に48時間(処置開始からのトータル72時間))培養後、培養切片を4%パラホルムアルデヒドで固定し、0.1%トルイジンブルーによるNissl染色を行った。
各組織の明視野鏡検像(2視野/切片:1視野=170×170マイクロm2)を、画像解析プロセッサーnexusQubeを用いて画像ファイルとして取得し、Adobe Photoshop上で画像の明るさ・コントラストを調整した上で細胞を計数した。なお、薬物処置前に予め肉眼あるいは実体顕微鏡下で組織の様子を観察し、処置前の時点で既に大脳皮質が厚みを保っていなかった切片はデータから除外した。
【0029】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を何ら限定するものではない。
実施例1 BF−126はタウ蛋白を特異的に認識する化合物である
上記のタウを特異的に認識する化合物のスクリーニング方法により、特に好ましい化合物として、BF−126が見出された。BF−126の存在形態の一例であるp−ヒドロキシトシラート塩の0.2水和物(タナベR&Dにより合成)(以下、実施例1〜3において「試験化合物」または単に「BF−126」という)に関する試験結果を以下に説明する。下表1に試験化合物の構造を示す。
【0030】
【表1】
【0031】
図1に示したように試験化合物はアミロイドβ蛋白の特異抗体である4G8で認識される老人斑はほとんど染色しなかった。しかしながら、図2に示したようにタウ蛋白の特異的抗体であるAT8で認識されるタウ蛋白のみを鮮明に染色した。すなわち、試験化合物は特異的にタウ蛋白を認識するプローブであることがわかった。
【0032】
実施例2 BF−126の急性毒性試験
試験化合物を上記(A)の急性毒性試験にて試験したところ、下表2のような結果を得た。
【表2】
一般にヒトでのPET撮影にはポジトロン標識および未標識化合物の総投与量として、1×10−12から1×10−5mg/kgの静脈内投与が用いられ、多くの場合、1×10−10から1×10−7mg/kgの静脈内投与が用いられる。試験化合物の静脈内投与時の最大耐量とPET撮影時に必要な総化合物量を比較すると、両者の間には少なくとも10万倍以上の開きがあることから、試験化合物はPET撮影用のプローブとしては極めて安全性の高い化合物と考えられる。
【0033】
実施例3 BF−126の脳内移行性
表3にマウスにおける試験化合物静脈内投与2分後の脳移行を示した。試験化合物投与2分後の脳内含有量は7.2%ID/gであった。中枢神経系を対象としたPETまたはSPECT用化合物の脳移行性は、0.5%ID/g以上あれば十分と考えられている。その意味で試験化合物は極めての脳移行性の高い化合物である。
【0034】
【表3】
【0035】
実施例4:本発明化合物のAβ(1−40)神経毒性抑制効果
Aβ(1−40)の神経毒性、すなわちAβ(1−40)により誘発される細胞死に対するBF−126の作用について検討した。試験方法は上記(C)で説明したとおりであった。対照として、Aβ神経毒性を抑制することが近年報告された新規ポリペプチド、ヒューマニン(humanin)(Hashimoto Y et al. Proc.Natl. Acad. Sci. USA 98: 6336−6341, 2001)のアミノ酸残基置換によって活性を高めた誘導体humanin G (Hashimoto Y et al. J .Neurosci. 21: 9235−9245, 2001)の作用についても併せて検討した。BF−126については1μM、humanin Gについては10nMの濃度で10μM Aβ(1−40)と同時に処置した。
表4に結果を示す。
【0036】
【表4】
数値はsham処置群を100%とした各群の生存細胞数(平均±標準誤差)を表している。shamは無処置対照であり、Vehicle controlは薬物を溶解した溶媒を添加した対照である。
【0037】
表4に示すように、本発明化合物BF−126はAβ(1−40)による細胞死、すなわちその神経毒性を大幅に抑制したことがわかる。その効果はHumanin Gよりも優れていた。また、試験に用いたBF−126の濃度は1μMであり、それ自体、細胞に対する毒性は問題とならない濃度である。
このように、本発明化合物BF−126は、細胞にとり安全な濃度でAβ(1−40)の神経毒性を大幅に抑制することが示されたことから、本発明化合物は、蛋白自身がβシートとることによって病因、または病因の一部となる疾患、例えばアルツハイマー病に対する極めて有効かつ安全な治療薬として使用できると考えられる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明化合物は、タウ蛋白に対する特異性が高く、血液−脳関門透過性が高く、しかも極めて安全性の高いものである。したがって、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断プローブとして有用である。さらに本発明によれば、本発明化合物を含む、タウ蛋白が蓄積する疾患の画像診断用組成物およびキットが提供される。かかる化合物、組成物、またはキットを用いることにより、疾病の早期における正確な診断が可能となる。さらに本発明によれば、脳材料中の神経原線維変化の染色が可能になり、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用の医薬組成物も提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、老人斑をBF−126で染色した場合の蛍光顕微鏡写真(左パネル)および左パネルの隣接試料において老人斑を4G8(抗Aβ抗体)染色した場合の顕微鏡写真(右パネル)を示す。左パネルの矢印はタウ蛋白の存在位置を示す。右パネルのくさび型矢印は老人斑を示す。
【図2】図2は、タウ蛋白をBF−126で染色した場合の蛍光顕微鏡写真(左パネル)および左パネルの隣接試料においてタウをAT8(抗タウ抗体)染色した場合の顕微鏡写真(右パネル)を示す。左パネルの矢印はタウ蛋白の存在位置を示す。右パネルの矢印はタウ蛋白を示す。
Claims (22)
- BF−126である請求項1記載の化合物。
- 標識されている請求項1または2記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- 標識が放射性核種である請求項3記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- R1ないしR4のいずれかが放射線放出核種で標識されている請求項4記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- 標識がγ線放出核種である請求項4または5記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- γ線放出核種が99mTc、111In、67Ga、201Tl、123Iおよび133Xeからなる群より選択されるものである請求項6記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- γ線放出核種が99mTcおよび123Iからなる群より選択されるものである請求項7記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- 標識が陽電子放出核種である請求項4または5記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- 陽電子放出核種が11C、13N、15Oおよび18Fからなる群より選択される請求項9記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- 陽電子放出核種が18Fである請求項10記載の化合物またはその塩もしくは溶媒和物。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含む、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断用組成物。
- 99mTcまたは123Iで標識された請求項8記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む請求項12記載の組成物。
- 18Fで標識された請求項11記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む請求項12記載の組成物。
- 請求項1ないし11のいずれか1項に記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、アミロイドが蓄積する疾患の画像診断用キット。
- 99mTcまたは123Iで標識された請求項8記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む請求項15記載のキット。
- 18Fで標識された請求項11記載の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む請求項15記載のキット。
- 請求項1の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を含む脳試料中の神経原線維変化の染色用組成物。
- 請求項1の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を必須の構成成分として含む、脳試料中の神経原線維変化の染色用キット。
- 請求項1の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物を用いることを特徴とする脳試料中の神経原線維変化の染色方法。
- 請求項1の化合物またはその医薬上許容される塩もしくは溶媒和物および医薬上許容される担体を含有する、蛋白のβシート構造が病因または病因の一部となる疾患の予防および/または治療用医薬組成物。
- 疾患がアルツハイマー病である請求項21記載の医薬組成物。
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