JP2004055767A - 電子ビーム露光装置及び半導体デバイスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】電子ビームを単数又は複数用いて基板5に所定のパターンを露光する電子ビーム露光装置であって、基板5を搭載するθZステージ11と、平面上を移動し、θZステージ11を駆動するXY運搬ステージ12と、θZステージ11とXY運搬ステージ12との間に設けられ、XY運搬ステージ12に対して、前記平面に略垂直なZ軸の回転方向にθZステージ11を駆動する電磁アクチュエータ(θリニアモータ可動子106、θリニアモータ固定子106’)と、を備えることを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子ビーム露光装置及び半導体デバイスの製造方法に関し、特に、電子ビームを用いてパターン描画を行う電子ビーム露光装置及びそれを用いた半導体デバイスの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造においては、マスク上に形成された各種パターンを光でウエハ上に縮小転写するリソグラフィ技術が利用されている。リソグラフィ技術で用いられるマスクのパターンは、極めて高い精度が要求される。従って、マスクのパターンを作成する場合には、微細なパターンを描画しうる電子ビーム露光装置が使用されている。更に、マスクを用いないで微細なパターンをウエハ上に直接描画する場合にも、電子ビーム露光装置が使用されている。
【0003】
電子ビーム露光装置には、ビームをスポット状にして使用するポイントビーム型やサイズ可変の矩形断面にして使用する可変矩形ビーム型等の装置がある。また、電子ビーム露光装置は、一般的には、電子ビームを発生させる電子銃部、電子銃部より発せられた電子ビームを試料上に導くための電子光学系、電子ビームに対して試料を全面にわたって走査するためのステージ系、及び電子ビームを試料面上に高精度に位置決めするための対物偏向器を備える。
【0004】
この対物偏向器により電子ビームを位置決め可能な領域は、電子光学系の収差を小さく抑えるために、数ミリ程度である。これに対して、試料の大きさは、例えば、シリコンウエハであればφ200〜300mm程度であり、マスクに使用されるガラス基板であれば150mm角程度である。従って、これらの試料を全面にわたって電子ビームが走査可能なステージが用いられている。
【0005】
ステージは、高精度な露光を行うために、その姿勢や位置のずれが計測されている。これらのずれ量は、電子ビームの位置決め応答性が極めて高いために、ステージの機械的・制御的特性を高めるというシステム構成ではなく、電子ビームを走査させる偏向器による電子ビームの位置決めによって調整されることが一般的であった。
【0006】
従って、従来のステージは、XY平面方向に動きさえすればよかった。更に、従来のステージは、真空チャンバ内に設置され、かつ、電子ビームの位置決めに影響を与える磁場変動を引き起こしてはならないという制約があったため、例えば、転がりガイドやボールネジアクチュエータといった接触型の限られた機構要素で構成されていた。
【0007】
しかしながら、接触型の機構要素では、潤滑の問題や発塵などの問題が生じる。その対応技術として、図5に示すように、真空エアガイド、リニアモータを用いた平面方向2自由度ステージ構成を有するXY運搬ステージが開示されている。図5のステージ構成によれば、XY方向に対して極めてスムーズに加速し、かつ、XY方向の位置決めの際にガイドからの外乱を受けることも非常に少ないステージを実現できる。
【0008】
一方、電子ビーム露光装置では、リソグラフィ工程の高速化(スループット)が課題とされていていた。その対応技術として、例えば、特開平9−330867号のように複数の電子ビームを設計上の座標に沿って試料面に照射し、設計上の座標に沿ってその複数の電子ビームを偏向させて試料面を走査させるとともに、描画するパターンに応じて複数の電子ビームを個別にon/offしてパターンを描画するマルチ電子ビーム露光装置が開示されている。マルチ電子ビーム露光装置は、複数の電子ビームで任意の描画パターンを描画できるので、スループットを改善できるという特徴がある。
【0009】
図6は、マルチ電子ビーム露光装置の概要を示す図である。電子銃501a ,501b,501cは、個別に電子ビームをon/offできる。縮小電子光学系502は、電子銃501a ,501b,501cからの複数の電子ビームをウエハ503上に縮小投影する。偏向器504は、縮小投影された複数の電子ビームをウエハ503上に走査させる。
【0010】
図7は、図6のマルチ電子ビーム露光装置により、ウエハ上で複数の電子ビームを走査した際の様子を示す図である。白丸は、各電子ビームが偏向器504により偏向を受けていないときにウエハに入射するビーム基準位置(BS1,BS2,BS3)であって、各ビーム基準位置(BS1,BS2,BS3)は設計上の直交座標系(Xs,Ys)に沿って配列される。一方、各電子ビームはビーム基準位置(BS1,BS2,BS3)を基準として、設計上の直交座標系(Xs,Ys)に沿って走査され、各電子ビーム毎の露光フィールド(EF1,EF2,EF3)を走査する。各電子ビームの露光フィールドは隣接して配置されており、これらの露光フィールドを順次露光してウエハ全体に配置された露光フィールドが露光される。
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、今後、更なる高精度化および高速化が求められるリソグラフィにおいては、基板を支持するステージのヨーイング成分による描画精度の劣化を抑える必要がある。
【0011】
これに対して、電子ビーム露光装置においては、偏向器を用いてヨーイング成分を補正する方法がある。しかし、そのような偏向器による補正制御系が複雑になることは避けられず、コストアップやスループット低下につながる。また、従来のステージ構成は、XY方向の位置決め特性は優れているが、ヨーイング成分を大幅に低減することは困難である。
【0012】
更に、マルチ電子ビーム型の露光方式を用いる場合は、特に、ポイントビーム型、可変矩形ビーム型等の単一ビーム露光方式と比べて、ステージを走査して露光する際に、ヨーイング成分が各ビームに対する位置ズレとして発生しやすいという問題点がある。
【0013】
即ち、従来の単一ビーム露光装置では、ビーム位置がステージの平面2軸方向の位置を計測する計測軸の交点に配置されているため、ヨーイングの回転中心がどこにあってもビーム位置との距離で発生する平面方向のズレは、位置フィードバックすることで自動的に追従しており、追従残分があればステージ位置ズレとして偏向器で補正すればよい。このとき回転分だけが補正されずに残ることになるが、例えば10μmのビーム径に対して100μradステージが回転した場合、この回転による描画スポット内のウエハ面内方向の位置ズレは最大1nmであり誤差としては無視できる。
【0014】
しかし、ビームが複数本あるマルチ電子ビーム露光装置では、例えば、ビーム間距離が10mm の2本ビームの場合、前記計測軸の交点に配置できるビームは1本だけなので、交点に配置したビーム位置での位置ズレは単一ビーム露光装置と同じであるが、もう一方のビームは前記計測軸の交点からの距離に応じて位置ズレが発生してしまう。上記ビーム間距離では100μradステージが回転すると両者の位置ズレ量の差は1000nmとなる。
【0015】
この位置ズレ量に対して、回転偏向器で全ビームをまとめて回転補正する方法と、各々のビームをそれぞれ個別の偏向器で補正する方法がある。しかし、どちらの方法でも補正制御系が複雑になることは避けられず、コストアップやスループット低下につながる。
【0016】
そこで、ステージのヨーイング成分による描画精度の劣化を低減し、高精度な露光を実現するために、ステージのヨーイング方向において高帯域な制御特性を有する電子ビーム露光装置が求められている。
【0017】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされてものであり、例えば、描画精度の劣化を低減し、高精度な露光が可能な電子ビーム露光装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の側面は、電子ビームを単数又は複数用いて基板に所定のパターンを露光する電子ビーム露光装置に係り、基板を搭載する基板ステージと、平面上を移動し、前記基板ステージを駆動する運搬ステージと、前記基板ステージと前記運搬ステージとの間に設けられ、前記運搬ステージに対して、前記平面に略垂直なZ軸の回転方向に前記基板ステージを駆動する電磁アクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0019】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記電磁アクチュエータは可動子と固定子とを含み、前記可動子は前記基板ステージに固定され、前記固定子は前記運搬ステージに固定されることが好ましい。
【0020】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記可動子と前記固定子とは、互いに非接触であることをことが好ましい。
【0021】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記可動子は磁石であり、前記固定子はコイルであることが好ましい。
【0022】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記基板ステージをZ方向に駆動するためのZアクチュエータと、前記Zアクチュエータを介して前記運搬ステージ上に支持されたチルトフレームと、を更に備え、前記基板ステージは、前記チルトフレームに連結されていることが好ましい。
【0023】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記チルトフレームは、前記Z軸の回転方向に自由度を有する連結部材を有し、前記基板ステージは、前記連結部材を介して前記チルトフレームに支持されることが好ましい。
【0024】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記基板ステージと前記運搬ステージとの間に設けられ、前記運搬ステージに対して、X軸の回転方向、Y軸の回転方向、Z軸方向、及びXY方向の少なくとも1つの方向に前記基板ステージを駆動する第2の電磁アクチュエータを更に備えることが好ましい。
【0025】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記電磁アクチュエータを複数組み合わせることによって、前記基板ステージを6自由度駆動することが好ましい。
【0026】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記電磁アクチュエータは、Z軸方向において前記運搬ステージの重心を介して、前記基板と反対側に配置されたことが好ましい。
【0027】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記電磁アクチュエータは、電磁シールドで覆われていることが好ましい。
【0028】
本発明の第2の側面は、複数の電子ビームを用いた電子ビーム露光装置に係り、基板を搭載する基板ステージと、平面上を移動し、前記基板ステージを駆動する運搬ステージと、前記基板ステージと前記運搬ステージとの間に設けられ、前記運搬ステージに対して、前記平面に略垂直なZ軸の回転方向及び前記複数の電子ビームの配列方向と直交する方向に、前記基板ステージを駆動する電磁アクチュエータと、を備えることを特徴とする。
【0029】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記基板ステージをZ方向に駆動するためのZアクチュエータと、前記Zアクチュエータを介して前記運搬ステージ上に支持されたチルトフレームと、を更に備え、前記基板ステージは、前記チルトフレームに連結されていることが好ましい。
【0030】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記チルトフレームは、前記Z軸の回転方向に自由度を有する連結部材を有し、前記基板ステージは、前記連結部材を介して前記チルトフレームに支持されることが好ましい。
【0031】
本発明の好適な実施の形態によれば、前記チルトフレームは、前記複数の電子ビームの配列方向と直交する方向に作用する第2の電磁アクチュエータを更に備えることが好ましい。
【0032】
本発明の第3の側面は、半導体デバイスの製造方法に係り、基板に感光材を塗布する塗布工程と、前記塗布工程で前記感光材が塗布された前記基板に請求項1乃至請求項12のいずれか1項に記載の電子ビーム露光装置を利用してパターンを転写する露光工程と、前記露光工程で前記パターンが転写された前記基板の前記感光材を現像する現像工程と、を有することを特徴とする。
【0033】
【発明の実施の形態】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の好適な実施の形態に係る電子ビーム露光装置を示す図である。
【0034】
電子銃1は、カソード1a、グリッド1b、アノード1cを備える。カソード1aから放射された電子は、グリッド1bとアノード1cとの間でクロスオーバ像を形成する(以下、これらのクロスオーバ像を光源と記す)。
【0035】
この光源から放射される電子は、その前側焦点位置が前記光源位置にあるコンデンサレンズ2によって、略平行な電子ビームとなる。略平行な電子ビームは、要素電子光学系アレイ3に入射される。要素電子光学系アレイ3は、ブランキング電極と開口と電子レンズとで構成される要素電子光学系が、Z軸に平行な光軸に直交する方向に複数配列されて形成されたものである。要素電子光学系アレイ3の詳細については後述する。
【0036】
要素電子光学系アレイ3は、光源の中間像を複数形成する。各中間像は、後述する縮小電子光学系4によって縮小投影され、基板としてのウエハ5上に光源像を形成する。その際、ウエハ5上の光源像の間隔が光源像の大きさの整数倍になるように、要素電子光学系アレイ3の各要素が設定されている。更に、要素電子光学系アレイ3は、各中間像の光軸方向の位置を縮小電子光学系4の像面湾曲に応じて異ならせるとともに、各中間像が縮小電子光学系4よってウエハ5に縮小投影される際に発生する収差を予め補正している。
【0037】
縮小電子光学系4は、第1投影レンズ41(43)と第2投影レンズ42(44)とを含む対称磁気タブレットで構成される。第1投影レンズ41(43)の焦点距離をf1、第2投影レンズ42(44)の焦点距離をf2とすると、この2つのレンズ間距離はf1+f2になっている。光軸上の物点は第1投影レンズ41(43)の焦点位置にあり、その像点は第2投影レンズ42(44)の焦点に結ぶ。この像は−f2/f1に縮小される。また、2つのレンズ磁界が互いに逆方向に作用する様に決定されているので、理論上は、球面収差、等方性非点収差、等方性コマ収差、像面湾曲収差、軸上色収差の5つの収差を除いて、他のザイデル収差および回転と倍率に関する色収差が打ち消される。
【0038】
偏向器6は、要素電子光学系アレイ3からの複数の電子ビームを偏向させて、複数の光源像をウエハ5上でX軸方向,Y軸方向に略同一の変位量だけ変位させる。偏向器6は、図示はされていないが、偏向幅が広い場合に用いられる主偏向器と偏向幅が狭い場合に用いられる副偏向器を含む。主偏向器は電磁型偏向器であり、副偏向器は静電型偏向器である。
【0039】
ダイナミックフォーカスコイル7は、偏向器6を作動させた際に発生する偏向収差による光源像のフォーカス位置のずれを補正する。ダイナミックスティグコイル8は、ダイナミックフォーカスコイル7と同様に、偏向により発生する偏向収差の非点収差を補正する。
【0040】
基板ステージとしてのθZチルトステージ11は、ウエハ5を搭載し、光軸方向(Z軸に略平行な方向)、Z軸の回転方向(θ方向)およびチルト方向に移動可能である。
【0041】
運搬ステージとしてのXY運搬ステージ12(以後、センタスライダ12と呼ぶ)は、ステージベース15上を移動し、θZチルトステージ11をXY方向に駆動する。
【0042】
図2は、図1の電子ビーム露光装置に用いられるステージ(θZチルトステージ11、センタスライダ12)を詳細に示す図である。図2に示すように、θZチルトステージ11は、上面に例えばウエハ5を保持する基板ホルダ105、位置計測のための反射ミラー101x、101yを備える。また、θZチルトステージ11は、センタスライダ12を取り囲むようなカゴ型構造をしており、X可動ガイド14x、Y可動ガイド14yが貫通する開口111x、111yを有している。
【0043】
θZチルトステージ11のXY方向の位置は、例えば、図1の試料チャンバ100に保持されたレーザ干渉計102によりチャンバ内壁を基準にして計測される。反射ミラー101x、101yでは、θおよびチルト方向の計測も行われる。θ計測102’は、複数ビームの並びに直交する側から、測定されることが望ましい。Z軸方向の位置は、非感光性の光を用いた光学センサにより検出される。サーボ用のセンサとしては、真空対応のエンコーダを用いてもよい。
【0044】
図2に示すように、センタスライダ12は、光軸方向 (Z軸に略平行な方向)に直交しステージベース15に平行なXY平面上でXY方向に移動することができる。センタスライダ12は、例えば、図4に示すようなXY運搬ステージを適用することも可能である。
【0045】
図5を用いてセンタスライダ12の詳細を説明する。センタスライダ12は、底板12bおよび側板12sを備える。底板12bの下面には軸受がステージベース15の上面に対向して構成され、また側板12sの内側には同様の軸受がX可動ガイド14xおよびY可動ガイド14yを挟み込むように構成されている。
【0046】
図2に示すように、θZチルトステージ11とセンタスライダ12との間には、電磁アクチュエータを構成するθリニアモータ可動子106及び電磁アクチュエータを構成するθリニアモータ固定子106’が設けられている。θリニアモータ可動子106及びθリニアモータ固定子106’は、センタスライダ12に対して少なくともZ軸の回転方向にθZチルトステージ11を駆動する。具体的には、θZチルトステージ11の末端部には、θリニアモータ可動子106が固定されており、これに対向して、運搬ステージ12の底板12bには、θリニアモータ固定子106’が底板12bに固定されている。リニアモータ可動子106とθリニアモータ固定子106’とは、互いに非接触であるため、基板ステージを非接触で駆動することができる。また、θリニアモータ可動子106は磁石、θリニアモータ固定子106’はコイルであることが熱的には好ましい。
【0047】
また、θリニアモータ可動子106、θリニアモータ固定子106’は、多重の電磁シールドで覆われていることが好ましい。従って、θリニアモータ可動子106としての磁石は、磁場変動要因にならないようパーマロイなどで多重の電磁シールドが施されているのが好ましい。また、θリニアモータ可動子106としての磁石は、縮小電子光学系4からのもれ磁場により磁場変動をおこさぬよう、縮小電子光学系4より十分離れたところに配置されているのが好ましい。具体的には、θリニアモータ可動子106は、Z軸方向においてセンタスライダ12の重心を介して、ウエハ5と反対側に配置されることが望ましい。また、θリニアモータ固定子106’は、チルトフレーム13上に構成されてもよい。
【0048】
センタスライダ12は、X可動ガイド14x及びY可動ガイド14yを田の字状に備える。センタスライダ12は、X可動ガイド14xをX軸方向に動かすことにより、Y可動ガイド14yの側面およびステージベース15の上面に沿ってX軸方向に滑らかに動かされ、Y可動ガイド14yをY軸方向に動かすことにより、x可動ガイド14xの側面およびステージベース15の上面に沿ってY軸方向に滑らかに動かされる。
【0049】
チルトフレーム13は、θZチルトステージ11をセンタスライダ12の底板12bの上でZ方向に駆動するためのZアクチュエータ107を介して支持されている。Zアクチュエータ107は、XY平面に剛であるガイド付き圧電素子を用いてもよい。チルトフレーム13は、θ方向(Z軸の回転方向)のみに自由度を有する連結部材としてのθフリー板バネ108を有する。θフリー板バネ108を介して、θZチルトステージ11はチルトフレーム13に支持されている。θフリー板バネ108は、X軸方向、Y軸方向にそれぞれ複数配置されており、θZチルトステージ11はチルトフレーム13に対してZ軸方向に剛である。チルトフレーム13は、センタスライダ12を取り囲むように構成される。
【0050】
以上のように、本実施形態によれば、基板ステージと運搬ステージとの間に電磁アクチュエータを備えることによって、基板ステージを少なくともZ軸の回転方向に非接触で駆動できるため、運搬ステージからの振動が基板ステージに伝達されることがなくなり、Z軸の回転方向に対して高帯域な制御特性を有するステージ(基板ステージ、運搬ステージ)を実現できる。その結果、これらのステージを備えた電子ビーム露光装置、特に、複数の電子ビームを用いた電子ビーム露光装置において、ステージ走査時に生じるヨーイング成分による描画精度の劣化を低減し、高精度な露光が実現できる。
【0051】
[第2の実施形態]
図3は、本発明の好適な第2の実施形態に係る電子ビーム露光装置のステージを示す図である。
【0052】
本実施形態では、電磁アクチュエータを複数組み合わせることによって、基板ステージとしてのθZチルトステージ11を6自由度駆動することができる。θZチルトステージ11は、センタスライダ12を取り囲むようなカゴ型構造をしており、X可動ガイド14x、Y可動ガイド14yが貫通する開口111x、111yを有している。θZチルトステージ11の側面部には、電磁アクチュエータを構成する6個のリニアモータ可動子120x、120y、120zがそれぞれ固定されている。これらに対向して、電磁アクチュエータを構成するリニアモータ固定子120x’、120y’、120z’が底板12bに固定されている。電磁アクチュエータとしてのリニアモータの各駆動方向は、図3(b)に示すように、Z軸方向に駆動力を発生する3組の120z、X軸方向およびθ方向(Z軸の回転方向)に駆動力を発生する120x、Y軸方向に駆動力を発生する1組の120yによって決定される。X軸の回転方向に駆動力を発生する電磁アクチュエータやY軸の回転方向に駆動力を発生する電磁アクチュエータも同様にして構成されうる。以上のようにして、複数方向の複数リニアモータを組み合わせることにより、θZチルトステージ11を6自由度駆動できる構成となっているが、これらのリニアモータの組み合わせ方法はこれに限定されない。
【0053】
本実施形態においては、図2に示したチルトフレーム13は必ずしも必要とされない。また、リニアモータ可動子とリニアモータ固定子とは、互いに非接触であるため、基板ステージを非接触で駆動することができる。リニアモータ可動子は磁石、リニアモータ固定子はコイルであることが熱的には好ましい。また、電磁アクチュエータは、多重の電磁シールドで覆われていることが好ましい。従って、リニアモータ可動子としての磁石は、磁場変動要因にならないようパーマロイなどで多重の電磁シールドが施されているのが好ましい。また、リニアモータ可動子としての磁石は、縮小電子光学系4からのもれ磁場により磁場変動をおこさぬよう、縮小電子光学系4より十分離れたところに配置されているのが好ましい。具体的には、リニアモータ可動子は、Z軸方向においてセンタスライダ12の重心を介して、ウエハ5と反対側に配置されることが望ましい。
【0054】
[第3の実施形態]
図4は、本発明の好適な第3の実施形態に係る電子ビーム露光装置のステージを示す図である。本実施形態におけるY軸方向は、複数の電子ビーム(B1、B2、B3...)の配列方向と直交する方向である。θ計測102’は、図4(a)に示すように、複数ビームの配列方向と直交する方向から測定されることが望ましい。センタスライダ12の底板12bの上では、θZチルトステージ11をZ方向に駆動するZアクチュエータ107を介してチルトフレーム13が支持されている。チルトフレーム13は、センタスライダ12を取り囲むように構成されている。Zアクチュエータ107は、XY平面に剛であるガイド付き圧電素子であってもよい。θZチルトステージ11は、θ方向(Z軸の回転方向)のみに自由度を有する連結部材としてのθフリー板バネ108を介して、チルトフレーム13に支持されている。θフリー板バネ108はX軸方向、Y軸方向にそれぞれ複数構成されており、チルトフレーム13に対して、θZチルトステージ11はZ軸方向に剛である。θZチルトステージ11は、センタスライダ12を取り囲むようなカゴ型構造をしており、X可動ガイド14x、Y可動ガイド14yが貫通する開口111x、111yを有している。
【0055】
θZチルトステージ11の側面部には、電磁アクチュエータを構成するθリニアモータ可動子106が固定されている。これに対向して、電磁アクチュエータを構成するθリニアモータ固定子106’が底板12bに固定されている。θリニアモータ可動子106とθリニアモータ固定子106’とは、非接触であるため、基板ステージを非接触で駆動することができる。θリニアモータ可動子106は磁石、θリニアモータ固定子106’はコイルであることが熱的には好ましい。また、θリニアモータ可動子106、θリニアモータ固定子106’は、多重の電磁シールドで覆われていることが好ましい。従って、リニアモータ可動子106である磁石は、磁場変動要因にならないようパーマロイなどで多重の電磁シールドが施されているのが好ましい。また、θリニアモータ可動子106である磁石は、縮小電子光学系4からのもれ磁場により磁場変動をおこさぬよう、縮小電子光学系4より十分離れたところに配置されているのが好ましい。具体的には、θリニアモータ可動子106は、Z軸方向においてセンタスライダ12の重心を介して、基板と反対側に配置されるのが望ましい。また、θリニアモータ固定子106’は、チルトフレーム13上に構成されてもよい。
【0056】
更に、本実施形態では、図4(b)に示すように、チルトフレーム13は、Y軸方向のみに作用する電磁アクチュエータとしての電磁石130を備える。これによって、Y軸方向に加減速するときのθリニアモータの負荷を減らすことができ、θリニアモータ(θリニアモータ可動子106、θリニアモータ固定子106’)の大きさを小さくすることが可能である。電磁石130は、磁場変動要因にならないようにパーマロイなどで多重の電磁シールドが施されているのが好ましい。また、電磁石130は、縮小電子光学系4からのもれ磁場により磁場変動をおこさぬよう、縮小電子光学系4より十分離れたところに配置されているのが好ましい。
[他の実施形態]
次に本発明の好適な実施の形態に係る電子ビーム露光装置を利用した半導体デバイスの製造プロセスを説明する。図8は半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す。ステップ1(回路設計)では半導体デバイスの回路設計を行なう。ステップ2(マスク作製)では設計した回路パターンに基づいてマスクを作製する。一方、ステップ3(ウエハ製造)ではシリコン等の材料を用いてウエハを製造する。ステップ4(ウエハプロセス)は前工程と呼ばれ、上記のマスクとウエハを用いて、リソグラフィ技術によってウエハ上に実際の回路を形成する。次のステップ5(組み立て)は後工程と呼ばれ、ステップ4によって作製されたウエハを用いて半導体チップ化する工程であり、アッセンブリ工程(ダイシング、ボンディング)、パッケージング工程(チップ封入)等の組立て工程を含む。ステップ6(検査)ではステップ5で作製された半導体デバイスの動作確認テスト、耐久性テスト等の検査を行なう。こうした工程を経て半導体デバイスが完成し、これを出荷(ステップ7)する。
【0057】
図9は上記ウエハプロセスの詳細なフローを示す。ステップ11(酸化)ではウエハの表面を酸化させる。ステップ12(CVD)ではウエハ表面に絶縁膜を成膜する。ステップ13(電極形成)ではウエハ上に電極を蒸着によって形成する。ステップ14(イオン打込み)ではウエハにイオンを打ち込む。ステップ15(レジスト処理)ではウエハに感光剤を塗布する。ステップ16(露光)では上記の電子ビーム露光装置によって回路パターンをウエハに転写する。ステップ17(現像)では露光したウエハを現像する。ステップ18(エッチング)では現像したレジスト像以外の部分を削り取る。ステップ19(レジスト剥離)ではエッチングが済んで不要となったレジストを取り除く。これらのステップを繰り返し行なうことによって、ウエハ上に多重に回路パターンを形成する。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、例えば、描画精度の劣化を低減し、高精度な露光が可能な電子ビーム露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な第1の実施の形態に係る電子ビーム露光装置を示す図である。
【図2】図1の電子ビーム露光装置に用いられるステージを詳細に示す図である。
【図3】本発明の好適な第2の実施形態に係る電子ビーム露光装置のステージを示す図である。
【図4】本発明の好適な第3の実施形態に係る電子ビーム露光装置のステージを示す図である。
【図5】XY運搬ステージを示す図である。
【図6】マルチ電子ビーム露光装置の概要を示す図である。
【図7】図6のマルチ電子ビーム露光装置により、ウエハ上で複数の電子ビームを走査した際の様子を示す図である。
【図8】半導体デバイスの全体的な製造プロセスのフローを示す図である。
【図9】ウエハプロセスの詳細なフローを示す図である。
【符号の説明】
1:電子銃、2:コンデンサレンズ、3:要素電子光学系アレイ、4:縮小光学系電子アレイ、5:ウエハ、6:偏向器、11:θZチルトステージ、12:XY運搬ステージ、13:チルトフレーム、14:可動ガイド、100:試料チャンバ、102’:θ計測、106:θリニアモータ可動子、106’:θリニアモータ固定子、107:Zアクチュエータ、108:θフリー板バネ、120:リニアモータ、130:電磁石
Claims (15)
- 電子ビームを単数又は複数用いて基板に所定のパターンを露光する電子ビーム露光装置であって、
基板を搭載する基板ステージと、
平面上を移動し、前記基板ステージを駆動する運搬ステージと、
前記基板ステージと前記運搬ステージとの間に設けられ、前記運搬ステージに対して、前記平面に略垂直なZ軸の回転方向に前記基板ステージを駆動する電磁アクチュエータと、
を備えることを特徴とする電子ビーム露光装置。 - 前記電磁アクチュエータは可動子と固定子とを含み、前記可動子は前記基板ステージに固定され、前記固定子は前記運搬ステージに固定されることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記可動子と前記固定子とは、互いに非接触であることを特徴とする請求項2に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記可動子は磁石であり、前記固定子はコイルであることを特徴とする請求項3に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記基板ステージをZ方向に駆動するためのZアクチュエータと、前記Zアクチュエータを介して前記運搬ステージ上に支持されたチルトフレームと、を更に備え、前記基板ステージは、前記チルトフレームに連結されていることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記チルトフレームは、前記Z軸の回転方向に自由度を有する連結部材を有し、前記基板ステージは、前記連結部材を介して前記チルトフレームに支持されることを特徴とする請求項5に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記基板ステージと前記運搬ステージとの間に設けられ、前記運搬ステージに対して、X軸の回転方向、Y軸の回転方向、Z軸方向、及びXY方向の少なくとも1つの方向に前記基板ステージを駆動する第2の電磁アクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記電磁アクチュエータを複数組み合わせることによって、前記基板ステージを6自由度駆動することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記電磁アクチュエータは、Z軸方向において前記運搬ステージの重心を介して、前記基板と反対側に配置されたことを特徴とする請求項1又は請求項8に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記電磁アクチュエータは、電磁シールドで覆われていることを特徴とする請求項1、8、9のいずれか1項に記載の電子ビーム露光装置。
- 複数の電子ビームを用いた電子ビーム露光装置であって、
基板を搭載する基板ステージと、
平面上を移動し、前記基板ステージを駆動する運搬ステージと、
前記基板ステージと前記運搬ステージとの間に設けられ、前記運搬ステージに対して、前記平面に略垂直なZ軸の回転方向及び前記複数の電子ビームの配列方向と直交する方向に、前記基板ステージを駆動する電磁アクチュエータと、
を備えることを特徴とする電子ビーム露光装置。 - 前記基板ステージをZ方向に駆動するためのZアクチュエータと、前記Zアクチュエータを介して前記運搬ステージ上に支持されたチルトフレームと、を更に備え、前記基板ステージは、前記チルトフレームに連結されていることを特徴とする請求項11に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記チルトフレームは、前記Z軸の回転方向に自由度を有する連結部材を有し、前記基板ステージは、前記連結部材を介して前記チルトフレームに支持されることを特徴とする請求項12に記載の電子ビーム露光装置。
- 前記チルトフレームは、前記複数の電子ビームの配列方向と直交する方向に作用する第2の電磁アクチュエータを更に備えることを特徴とする請求項13に記載の電子ビーム露光装置。
- 半導体デバイスの製造方法であって、
基板に感光材を塗布する塗布工程と、
前記塗布工程で前記感光材が塗布された前記基板に請求項1乃至請求項14のいずれか1項に記載の電子ビーム露光装置を利用してパターンを転写する露光工程と、
前記露光工程で前記パターンが転写された前記基板の前記感光材を現像する現像工程と、
を有することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
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