JP2004052614A - ノック制御装置 - Google Patents
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- Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)
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Abstract
【課題】吸気弁または排気弁の少なくともいずれかのバルブ開,閉タイミングが可変となる内燃機関にてノック検出が難しかった。
【解決手段】ノックセンサ信号に含まれる複数の周波数成分に基づきノック判定を行うノック制御において、吸気弁または排気弁のバルブタイミングに合わせてノック検出周波数または分析区間を変えてバルブ信号の影響を抑制する。
【効果】バルブタイミング時に生じる信号をノック発生時と分離でき、ノック検出を確実に行うことができる。
【選択図】 図1
【解決手段】ノックセンサ信号に含まれる複数の周波数成分に基づきノック判定を行うノック制御において、吸気弁または排気弁のバルブタイミングに合わせてノック検出周波数または分析区間を変えてバルブ信号の影響を抑制する。
【効果】バルブタイミング時に生じる信号をノック発生時と分離でき、ノック検出を確実に行うことができる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの運転状態制御装置に係わり、特に、ノックキング発生時のノック信号分析結果に基づき、ノッキングを抑制するための有効な手段を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエンジン出力向上のため、燃焼室の圧縮比を高めたり、圧縮行程の容量よりも膨張行程の容量を大きくするために吸気弁と排気弁のタイミングを変えることのできる可動弁制御が使われている。
【0003】
圧縮比を向上すると燃焼室内のガスの温度がより上昇し自己着火による早期燃焼(ノッキング)が生じる。また、点火信号による燃焼が燃焼室壁付近に達するまでに燃焼ガスが自己着火すると、正常な燃焼が行われないので出力の低下となり、長時間繰り返すと燃焼室壁への圧力波が燃焼室壁表面を削る働きをして、燃焼室の圧縮が困難になりエンジンの破損につながる。
【0004】
こうした異常燃焼を防止するために、早期着火が生じないように点火時期を設定しているが、エンジンの製造上のばらつきや経年変化に伴う形状の歪み等で異常燃焼が生じることがある。
【0005】
異常燃焼は燃焼室内の圧力波となって広がり、燃焼室の形状に応じた共鳴が生じる。共鳴モードとして代表的な振動は、燃焼室の半径方向と円周方向に広がる複数のモードがある。これらの共鳴は従来、複数の共鳴モードのなかで、特に発生頻度や共鳴周波数での検出のしやすさを勘案して特定の周波数成分のみを取り出して異常燃焼時の共鳴周波数(ノック周波数)として取り出し、その特定の周波数成分が得られたときにエンジン制御量を変更してノッキングの発生を抑えるノック制御が知られている。
【0006】
しかし、ノック周波数は燃焼室内の共鳴であるから、ノッキングによる異常燃焼の圧力波以外に燃焼室内に振動を発生する振動源があれば、ノック周波数と区別することができない。
【0007】
このため、ノック周波数の発生時期をエンジンの膨張行程時に限定して、ノック信号を取り出したり、周波数を広範囲に渡って分析することでノック検出を確実にした技術として特開平3−47449号がある。
【0008】
しかしながら、エンジン出力向上に伴う吸気弁や排気弁のバルブタイミングの変化に対しては、格段の考慮をしていないために、エンジン制御状態の変化に対してノック検出の向上を図ることが困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、ノック検出を高めるために、バルブタイミングの変化に伴うエンジン運転状態に応じたノック検出を行うことを第1の課題とする。
【0010】
また、ノック検出後にノック発生を抑えるためのノック制御として、エンジン運転状態を変化させることを第2の課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記、第1の課題を解決するため、ノック周波数を検出手段として、エンジンに取り付けたノックセンサ出力に含まれる周波数成分を分析する手段、さらに、ノック検出を行うタイミングを設定する手段,ノッキングによる周波数以外の成分を除去する手段、等を組み合わせてノック検出を行う。
【0012】
第2の課題を解決するため、ノック検出結果に応じて点火時期,燃料噴射量,バルブタイミング,バルブリフト量、等のエンジン制御状態を変えてノック発生を抑制する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に本発明に関する内燃機関の構成を示す。
【0014】
内燃機関100には、インジェクタ101,点火プラグ102,点火コイル
103,スロットル104,気筒判別センサ109,水温センサ110,クランク角センサ111,気筒基準位置センサ112,スロットルポジションセンサ
113,吸気管圧力センサ114、または吸入空気流量計115,空燃比センサ116,触媒118、からなり、エンジン制御装置120に接続されている。
【0015】
燃料は燃料タンク1014から燃料ポンプ1011により輸送され、燃圧制御弁1012によって一定の燃料圧力としている。
【0016】
また、エンジンの制御パラメータとして、吸気温度センサ(図示せず),排気温度センサ(図示せず)が取り付けられている。
【0017】
エンジンの燃焼室近傍にノックセンサ131を取り付けて、燃焼室内での異常燃焼によって生じるノック信号を検出する。
【0018】
尚、空燃比センサ116は、空燃比に対してリニアな出力となる広域空燃比センサもしくは、ストイキ近傍にて2値的に変化するO2 センサのいずれであっても良い。
【0019】
図2にエンジン制御装置の概要を示す。
【0020】
エンジン制御装置内には、数値・論理演算を行うCPU,CPUが実行するプログラム及びデータを格納したROM,データを一時的に記憶するRAM,センサからのアナログ電圧を取り込むA/D変換器,運転状態を示すスイッチを取り込むデジタル入力回路,パルス信号の時間間隔または、所定時間内のパルス数を計数するパルス入力回路、さらに、CPUの演算結果に基づきアクチュエータ
(図示せず)のオン・オフを行う、デジタル出力,タイマ設定出力、そして、通信回路により、エンジン制御装置内のデータを外部に出力、または、外部からの通信コマンドによって内部状態を変更できる。
【0021】
エンジン制御装置は吸気管圧力センサまたは吸入空気流量計の出力を取り込み、センサ電圧を所定のテーブル変換により、実際の単位時間当りの吸入空気量
Qaを算出する。また、水温センサのA/D値からテーブル変換によってエンジンの水温を算出する。
【0022】
同時に、クランク角センサのパルス信号を計測し、所定時間内のパルス数またはパルスの時間間隔に応じてエンジンの回転数NDATAを計算する。
【0023】
前記、単位時間当りの吸入空気量QaをNDATAで割り算し、さらに気筒数で割ることにより、1気筒の1回毎の吸入空気量Qacylを計算する。
【0024】
Qacylに所定の計数KTIを乗じて、さらに、空燃比制御補正量を含む補正係数を乗じることにより燃料量TIを求めて、TIに相当するパルス幅の間、インジェクタを開弁することにより、必要とする燃料量を噴射して、1燃焼毎の混合気を生成する。
【0025】
TIの計算には以下の補正係数COEFnが乗算される。
【0026】
TI=COEFn×KTI×Qacyl
COEFnは気筒毎または特定の気筒をまとめて代表する補正係数である。
【0027】
エンジン出力向上のためには、燃料量を増やす、点火時期を進める、吸入空気量を増やす、膨張率を高めるなどの手段がある。
【0028】
燃料量を増やすことは上記COEFnを1よりも大きくすれば実現できるが、燃料消費量が増えるために、定常では使えない。
【0029】
例えば、エンジンのEGR制御量が多くなれば、燃焼室内の温度が下がるので、点火時期を進める。また、スワール弁やタンブル弁によって燃焼室内のガス混合がより均質化されて異常燃焼を抑える効果があるので、点火時期を進めることも可能である。
【0030】
図3に示すように、エンジンの回転数と燃料量(TI)または燃料量に相当するエンジン負荷データ(LDATA)に応じて、基本点火時期(STD)を設定する。基本点火時期は、使用するガソリンのオクタン価によっても異なるので、通常ハイオクタン用とレギュラーガソリン用の2つのマップから選択する。ハイオクタンのガソリンは、レギュラーガソリンに比べて、燃焼室内の温度が高くなってもノッキングを生じにくいので、点火時期を進めることができる。
【0031】
点火時期はエンジンの燃焼毎に変化させることが可能であり、ノックを抑制するためにノック検出時に点火時期を遅らせる。
【0032】
ノック発生がなくなった時点で、点火時期を進めて、できる限り燃焼室内の有効圧力が最大となるクランク角度を上死点付近に設定すれば良い。しかし、圧縮比とも関係するが、燃焼室内の温度分布が不均一となり、特に点火プラグから離れたところで自己着火が起きて燃焼が不安定になる。自己着火による異常燃焼は燃焼室の壁に衝撃波となって伝わり、燃焼室壁に損傷を与える。
【0033】
また、エンジン出力を高めるために吸入空気量を増やす手段として、吸気管長が共鳴することによる吸入空気量の増加やターボチャージャーによる空気圧縮が使われる。この場合も、燃焼室内の温度分布の不均一が生じて異常燃焼が起きやすい。
【0034】
エンジン出力を高める別の手段として膨張率を高めることがある。例えば、吸気弁を開いているクランク角度を狭めたり、排気弁の開いている角度をより大きくすることが行われる。同時に弁の開き始め角度と閉じ角度,排気弁の開き始め角度と閉じ角度を変化させて、膨張率の向上と吸入空気量の増大を図ることができる。
【0035】
上記のエンジン出力向上に伴い、燃焼室内での異常燃焼が起きるぎりぎりの運転状態まで制御することが必要となる。前記、異常燃焼は燃焼室内での衝撃波となって現れるので、衝撃波をとらえて、異常燃焼を検出してその後の運転状態での異常燃焼を抑制する手段が必要となる。
【0036】
衝撃波は広範囲の周波数成分を持っているが、特に燃焼室内で共鳴する特定の周波数成分がシリンダーブロックに伝わる。この現象をノッキングとして、特定の周波数成分をノック周波数として検出する。
【0037】
ノック周波数は燃焼室を円柱で近似した場合、図4で示すような振動モードで共鳴が発生する。すなわち、燃焼室内の半径方向と円周方向にそれぞれ複数の振動モードがあり、燃焼室の直径と燃焼温度によってノック周波数が決まる。
【0038】
しかしながら、自己着火による異常燃焼発生の位置は燃焼毎に変化するので、振動モードは一様ではなく、燃焼毎にノック周波数は一定しない。
【0039】
よって、本発明では複数の振動モードをすべてとらえることができるノック検出器を用意して、ノック検出を確実に行う。
【0040】
振動を同時にとらえる手段として複数のバンドパスフィルタを使うことも可能であるが、バンドパスフィルタの中心周波数やバンド幅の設計・調整に手間がかかること、また、複数の増幅回路を用意する必要がありコスト的に高いことがデメリットになる。
【0041】
本発明では複数の振動モードを同時にとらえるため、プログラムによってFFTを実現して、ノック周波数をとらえることにする。
【0042】
図5にノック検出回路のブロック図を示す。
【0043】
ノック周波数をすべてとらえるために、ノックセンサの周波数特性は非共振型とする。ノックセンサ出力は初段増幅器で直流成分を除去した後、可変増幅器で信号を増幅する。可変増幅器はノック検出用CPUからの指令によって増幅度を変えることができる。
【0044】
増幅されたノック信号は、FFTの折り返し周波数以下となるようにローパスフィルタを通してCPUのA/D変換器に入力される。本発明の一態様としては、A/D変換は25.6μs 毎に行うので、サンプリング周波数fsは
fs=1/(25.6×106)=39kHz
となり、サンプリング定理から折り返し周波数は39kHz/2=19.5kHzであるので、19.5kHz 以下のローパスフィルターとしたものを一例としている。
【0045】
CPUにはエンジンのクランク角度信号,気筒基準位置信号,気筒判別信号と点火信号が入力され、エンジンの特定のクランク角度から周波数分析を開始する。
【0046】
すなわち、気筒判別信号と気筒基準位置信号を組み合わせて気筒判別を行い、気筒毎に点火信号が生じた後の、クランク角信号に従って特定の基準位置から周波数分析を開始する。
【0047】
ただし、点火信号は点火が行われたことを確実に検出するための信号として使われるので、フェイルセーフが特に必要なければ不要である。
【0048】
図6にサンプリングのタイミングを説明する。
【0049】
周波数分析開始位置は気筒基準位置信号またはクランク各信号から所定のディレイ時間tdまたはディレイの角度taとする。
【0050】
tdまたはtaは運転状態に従ってあらかじめマッチングした値であり、例えば、回転数とエンジンの負荷によって決まるマップ値とする。
【0051】
また、周波数分析区間の幅はノックの発生するクランク角度をカバーする幅とするが、一回のFFTでは終了できない場合は複数回FFTを繰り返す。通常、ノックの発生するクランク角度はATDC10度から70度程度であり、エンジン回転数が6000r/minのときは
(60/6000)×(70−10)/360=1.67ms
程度の幅となる。
【0052】
一方、エンジン回転数が1000r/minのとき、幅は
(60/1000)×(70−10)/360=10ms
となる。このため、6000r/min の時に比べて、6倍繰り返すことによりノック周波数分析を行う必要がある。
【0053】
本発明では、FFTを32サンプリング毎に行う設計としたので、25.6
μs×32=約820μs が最小分析幅であり、6000r/min のときに2回、1000r/min では12回、周波数分析を行う。これらの周波数分析回数は回転数のテーブルとして用意する。
【0054】
図7にノック検出フローを示す。
【0055】
FFTによる周波数分析結果の内、共鳴モードに近い周波数成分を選択し、それぞれの周波数成分(PWERmn)毎にバックグランドレベル(BGLmn)と比較する。
【0056】
バックグランドレベルはノックが発生していないときの信号レベルであり、ノック判定でノックなしと判定したときの周波数分析結果から算出される。
【0057】
例えば、今回の周波数分析結果からバックグランドレベルは、次のように求めることができる。
【0058】
BGLmn=BGLmn[前回値]×(1−BGLGAIN)
+PWRmn×BGLGAIN
ここで、BGLGAINはバックグランドレベルに対するフィルタゲインである。また、添え字mは周波数番号を表し、添え字nは気筒番号を表す。
【0059】
バックグランドレベルには最小値を用意して、ノック発生していないときの誤判定を防止する。
【0060】
上記バックグランドレベル算出にはフィルタを使ったが、その他、所定値を加減算する方法や、気筒毎にゲインを設定することも可能である。
【0061】
また、加速中など運転状態が変化するときはフィルタゲインを大きくして、バックグランドレベルの増大に追従するようにすることも必要である。
【0062】
周波数成分とバックグランドレベルとの比または差分を求めて、その総和を取り所定のしきい値と比較して、しきい値以上であればノックありと判定する。
【0063】
しきい値はあらかじめエンジンの運転状態に応じて求めるが、回転数やエンジン負荷データ(LDATA)や燃料噴射量(TI),エンジン冷却水温度に応じてしきい値を変更する。
【0064】
また、エンジンの運転状態によってはノック検出を避けるべきタイミング、例えば、加速中などにはノック検出を行わない。
【0065】
ノックありと判定された場合は、次の燃焼に対して運転状態を変化させる。
【0066】
例えば、図8に示すように、点火時期を一時的に遅らせて、自己着火を防止したり燃料量を増大させて燃料の気化熱によって燃焼室内の温度を下げるなどのノック制御が行われる。
【0067】
同時に、吸気弁や排気弁のタイミングを変化させて、エンジン出力を制限することも必要に応じて行う。
【0068】
吸気弁や排気弁のバルブタイミングは、エンジン回転数とエンジン負荷によってあらかじめ設定した角度で動作するようにしており、例えば油圧を使ってカム軸の位相をずらす手段が使われている。
【0069】
図9に示すように、バルブの開き始めまたは閉じるタイミングに相当するカム信号が、クランク各信号または気筒基準位置信号と所定の時間差(tvt)または角度差(tva)をもつように油圧を制御する例がある。すなわち、目標とする角度差または時間差と実際の角度差または時間差を求めて、その差分がゼロとなるまで、油圧を増減するものである。
【0070】
しかしながら、ノック周波数は燃焼室内の共鳴として現れるので、自己着火による異常燃焼以外に、吸気弁や排気弁の着座時の打撃音も燃焼室内に共鳴して、ノック周波数と類似の周波数成分として現れる。
【0071】
図10にバルブのタイミングとノック発生のタイミングを示す。
【0072】
他の気筒の吸気弁や排気弁の閉じるタイミングがあると、ノックが発生すると想定される周波数分析区間内にノイズ成分として現れる。
【0073】
ノイズ成分は、発生位置が変化しても周波数は一定である。
【0074】
よって、FFTによる周波数分析結果では特定の周波数のみ常時、検出されるので、この周波数をノック検出から外してノイズ成分の影響を抑えることができる。図11に示す様に、ノック判定があったとき、点火時期等のノック制御を行い、その後のノック周波数成分を分析した結果、特定の周波数成分(例えば図
10(b)(c)では6kHz付近)が現れるときは、吸気弁または排気弁の着座に伴うノイズが発生していると判断する。
【0075】
この場合、エンジン運転状態に応じて、ノック判定を行う周波数選択にバルブの周波数成分を使わないように周波数選択を変えて対応する。
【0076】
またはノイズ成分に対して、ノック周波数が重畳する場合は、ノック発生区間を縮めて、ノック周波数成分のみをとらえるようにする。
【0077】
この場合、バルブタイミングに合わせてノック周波数分析区間の設定を変える。
【0078】
例えば、図12に示すように、ノック周波数分析区間のスタートを早めたり、または、A/D変換取り込み区間を縮める方法や強制的にA/D変換結果をゼロと見なす処理を行うものである。
【0079】
また、ノック発生を抑制するために、通常、点火時期を遅角させる手段が用いられるが、そのほかにバルブの開閉タイミングを変化させて、実質的な圧縮比を変更することによっても、ノック発生を抑制できる。
【0080】
例えば、吸気バルブが開く角度を遅くすることや閉じる角度を早めることによって、圧縮比が実質的に下がり燃焼室内の圧縮行程での温度が下がるので、ノック発生を抑制できる。また、排気バルブの開く角度を遅くすることや閉じる角度を早めることによって、燃焼室内に留まる排気ガス量が増えて、燃焼室内の自己EGR量が増えるので、燃焼ガス温度が低下してノック発生を抑制できる。
【0081】
さらに、バルブのリフト量を下げることによって、排気バルブの動作と同様に自己EGR量が増えるので、ノック発生を抑制できる。
【0082】
次に、ノックセンサのフェイル検出を図13で説明する。
【0083】
まず、ノックセンサ内部に抵抗を組み込み、エンジン制御装置から抵抗を介して直流電圧を印加して、センサ端子電圧を測定する。センサがつながっていれば、センサ端子電圧はセンサ内部の抵抗とエンジン制御装置内の抵抗で分圧される電圧が測定できるので、この時センサ接続正常とする。
【0084】
電圧がゼロに近い場合は、センサハーネスがグランドにショートしていると判断される。
【0085】
電圧が断線判定しきい値(3.41V)相当の場合はセンサハーネス断線と判断する。
【0086】
電圧がVccに近い電圧(4.8V)程度では、センサハーネスがVBにショートしていると判断する。
【0087】
また、ノック制御量が制御限界に達してもノック判定がされている場合、ノック制御自体の故障と判定される。
【0088】
こうしたノックセンサフェイルまたはノック制御故障が判定された場合、直ちに運転状態をノックが発生しない状態に変化させて、ノックによるエンジン破損を防止する。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、バルブタイミングを可変してエンジン出力を向上するエンジンでもノック発生を確実に検出できるので、エンジンの寿命を延ばすことができ、車両の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のエンジン構成図。
【図2】ノック制御装置のブロック図。
【図3】エンジン運転状態の制御ブロック図。
【図4】ノック発生時の振動モードの説明図。
【図5】ノック検出回路のブロック図。
【図6】ノック信号サンプリングの説明図。
【図7】ノック検出のフローチャート説明図。
【図8】ノック制御の説明図。
【図9】バルブタイミング制御の説明図。
【図10】バルブタイミングとノック信号の関係図。
【図11】着座音ノイズ判断フローチャート説明図。
【図12】バルブタイミングによるノイズの回避説明図。
【図13】ノックセンサ自己診断説明図。
【符号の説明】
100…内燃機関、101…インジェクタ、102…点火プラグ、103…点火コイル、104…スロットル、109…気筒判別センサ、110…水温センサ、111…クランク角センサ、112…気筒基準位置センサ、113…スロットルポジションセンサ、114…吸気管圧力センサ、115…吸入空気流量計、
116…空燃比センサ、118…触媒、120…エンジン制御装置、131…ノックセンサ、1011…燃料ポンプ、1012…燃圧制御弁。
【発明の属する技術分野】
本発明はエンジンの運転状態制御装置に係わり、特に、ノックキング発生時のノック信号分析結果に基づき、ノッキングを抑制するための有効な手段を提供する。
【0002】
【従来の技術】
近年のエンジン出力向上のため、燃焼室の圧縮比を高めたり、圧縮行程の容量よりも膨張行程の容量を大きくするために吸気弁と排気弁のタイミングを変えることのできる可動弁制御が使われている。
【0003】
圧縮比を向上すると燃焼室内のガスの温度がより上昇し自己着火による早期燃焼(ノッキング)が生じる。また、点火信号による燃焼が燃焼室壁付近に達するまでに燃焼ガスが自己着火すると、正常な燃焼が行われないので出力の低下となり、長時間繰り返すと燃焼室壁への圧力波が燃焼室壁表面を削る働きをして、燃焼室の圧縮が困難になりエンジンの破損につながる。
【0004】
こうした異常燃焼を防止するために、早期着火が生じないように点火時期を設定しているが、エンジンの製造上のばらつきや経年変化に伴う形状の歪み等で異常燃焼が生じることがある。
【0005】
異常燃焼は燃焼室内の圧力波となって広がり、燃焼室の形状に応じた共鳴が生じる。共鳴モードとして代表的な振動は、燃焼室の半径方向と円周方向に広がる複数のモードがある。これらの共鳴は従来、複数の共鳴モードのなかで、特に発生頻度や共鳴周波数での検出のしやすさを勘案して特定の周波数成分のみを取り出して異常燃焼時の共鳴周波数(ノック周波数)として取り出し、その特定の周波数成分が得られたときにエンジン制御量を変更してノッキングの発生を抑えるノック制御が知られている。
【0006】
しかし、ノック周波数は燃焼室内の共鳴であるから、ノッキングによる異常燃焼の圧力波以外に燃焼室内に振動を発生する振動源があれば、ノック周波数と区別することができない。
【0007】
このため、ノック周波数の発生時期をエンジンの膨張行程時に限定して、ノック信号を取り出したり、周波数を広範囲に渡って分析することでノック検出を確実にした技術として特開平3−47449号がある。
【0008】
しかしながら、エンジン出力向上に伴う吸気弁や排気弁のバルブタイミングの変化に対しては、格段の考慮をしていないために、エンジン制御状態の変化に対してノック検出の向上を図ることが困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明では、ノック検出を高めるために、バルブタイミングの変化に伴うエンジン運転状態に応じたノック検出を行うことを第1の課題とする。
【0010】
また、ノック検出後にノック発生を抑えるためのノック制御として、エンジン運転状態を変化させることを第2の課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
上記、第1の課題を解決するため、ノック周波数を検出手段として、エンジンに取り付けたノックセンサ出力に含まれる周波数成分を分析する手段、さらに、ノック検出を行うタイミングを設定する手段,ノッキングによる周波数以外の成分を除去する手段、等を組み合わせてノック検出を行う。
【0012】
第2の課題を解決するため、ノック検出結果に応じて点火時期,燃料噴射量,バルブタイミング,バルブリフト量、等のエンジン制御状態を変えてノック発生を抑制する。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に本発明に関する内燃機関の構成を示す。
【0014】
内燃機関100には、インジェクタ101,点火プラグ102,点火コイル
103,スロットル104,気筒判別センサ109,水温センサ110,クランク角センサ111,気筒基準位置センサ112,スロットルポジションセンサ
113,吸気管圧力センサ114、または吸入空気流量計115,空燃比センサ116,触媒118、からなり、エンジン制御装置120に接続されている。
【0015】
燃料は燃料タンク1014から燃料ポンプ1011により輸送され、燃圧制御弁1012によって一定の燃料圧力としている。
【0016】
また、エンジンの制御パラメータとして、吸気温度センサ(図示せず),排気温度センサ(図示せず)が取り付けられている。
【0017】
エンジンの燃焼室近傍にノックセンサ131を取り付けて、燃焼室内での異常燃焼によって生じるノック信号を検出する。
【0018】
尚、空燃比センサ116は、空燃比に対してリニアな出力となる広域空燃比センサもしくは、ストイキ近傍にて2値的に変化するO2 センサのいずれであっても良い。
【0019】
図2にエンジン制御装置の概要を示す。
【0020】
エンジン制御装置内には、数値・論理演算を行うCPU,CPUが実行するプログラム及びデータを格納したROM,データを一時的に記憶するRAM,センサからのアナログ電圧を取り込むA/D変換器,運転状態を示すスイッチを取り込むデジタル入力回路,パルス信号の時間間隔または、所定時間内のパルス数を計数するパルス入力回路、さらに、CPUの演算結果に基づきアクチュエータ
(図示せず)のオン・オフを行う、デジタル出力,タイマ設定出力、そして、通信回路により、エンジン制御装置内のデータを外部に出力、または、外部からの通信コマンドによって内部状態を変更できる。
【0021】
エンジン制御装置は吸気管圧力センサまたは吸入空気流量計の出力を取り込み、センサ電圧を所定のテーブル変換により、実際の単位時間当りの吸入空気量
Qaを算出する。また、水温センサのA/D値からテーブル変換によってエンジンの水温を算出する。
【0022】
同時に、クランク角センサのパルス信号を計測し、所定時間内のパルス数またはパルスの時間間隔に応じてエンジンの回転数NDATAを計算する。
【0023】
前記、単位時間当りの吸入空気量QaをNDATAで割り算し、さらに気筒数で割ることにより、1気筒の1回毎の吸入空気量Qacylを計算する。
【0024】
Qacylに所定の計数KTIを乗じて、さらに、空燃比制御補正量を含む補正係数を乗じることにより燃料量TIを求めて、TIに相当するパルス幅の間、インジェクタを開弁することにより、必要とする燃料量を噴射して、1燃焼毎の混合気を生成する。
【0025】
TIの計算には以下の補正係数COEFnが乗算される。
【0026】
TI=COEFn×KTI×Qacyl
COEFnは気筒毎または特定の気筒をまとめて代表する補正係数である。
【0027】
エンジン出力向上のためには、燃料量を増やす、点火時期を進める、吸入空気量を増やす、膨張率を高めるなどの手段がある。
【0028】
燃料量を増やすことは上記COEFnを1よりも大きくすれば実現できるが、燃料消費量が増えるために、定常では使えない。
【0029】
例えば、エンジンのEGR制御量が多くなれば、燃焼室内の温度が下がるので、点火時期を進める。また、スワール弁やタンブル弁によって燃焼室内のガス混合がより均質化されて異常燃焼を抑える効果があるので、点火時期を進めることも可能である。
【0030】
図3に示すように、エンジンの回転数と燃料量(TI)または燃料量に相当するエンジン負荷データ(LDATA)に応じて、基本点火時期(STD)を設定する。基本点火時期は、使用するガソリンのオクタン価によっても異なるので、通常ハイオクタン用とレギュラーガソリン用の2つのマップから選択する。ハイオクタンのガソリンは、レギュラーガソリンに比べて、燃焼室内の温度が高くなってもノッキングを生じにくいので、点火時期を進めることができる。
【0031】
点火時期はエンジンの燃焼毎に変化させることが可能であり、ノックを抑制するためにノック検出時に点火時期を遅らせる。
【0032】
ノック発生がなくなった時点で、点火時期を進めて、できる限り燃焼室内の有効圧力が最大となるクランク角度を上死点付近に設定すれば良い。しかし、圧縮比とも関係するが、燃焼室内の温度分布が不均一となり、特に点火プラグから離れたところで自己着火が起きて燃焼が不安定になる。自己着火による異常燃焼は燃焼室の壁に衝撃波となって伝わり、燃焼室壁に損傷を与える。
【0033】
また、エンジン出力を高めるために吸入空気量を増やす手段として、吸気管長が共鳴することによる吸入空気量の増加やターボチャージャーによる空気圧縮が使われる。この場合も、燃焼室内の温度分布の不均一が生じて異常燃焼が起きやすい。
【0034】
エンジン出力を高める別の手段として膨張率を高めることがある。例えば、吸気弁を開いているクランク角度を狭めたり、排気弁の開いている角度をより大きくすることが行われる。同時に弁の開き始め角度と閉じ角度,排気弁の開き始め角度と閉じ角度を変化させて、膨張率の向上と吸入空気量の増大を図ることができる。
【0035】
上記のエンジン出力向上に伴い、燃焼室内での異常燃焼が起きるぎりぎりの運転状態まで制御することが必要となる。前記、異常燃焼は燃焼室内での衝撃波となって現れるので、衝撃波をとらえて、異常燃焼を検出してその後の運転状態での異常燃焼を抑制する手段が必要となる。
【0036】
衝撃波は広範囲の周波数成分を持っているが、特に燃焼室内で共鳴する特定の周波数成分がシリンダーブロックに伝わる。この現象をノッキングとして、特定の周波数成分をノック周波数として検出する。
【0037】
ノック周波数は燃焼室を円柱で近似した場合、図4で示すような振動モードで共鳴が発生する。すなわち、燃焼室内の半径方向と円周方向にそれぞれ複数の振動モードがあり、燃焼室の直径と燃焼温度によってノック周波数が決まる。
【0038】
しかしながら、自己着火による異常燃焼発生の位置は燃焼毎に変化するので、振動モードは一様ではなく、燃焼毎にノック周波数は一定しない。
【0039】
よって、本発明では複数の振動モードをすべてとらえることができるノック検出器を用意して、ノック検出を確実に行う。
【0040】
振動を同時にとらえる手段として複数のバンドパスフィルタを使うことも可能であるが、バンドパスフィルタの中心周波数やバンド幅の設計・調整に手間がかかること、また、複数の増幅回路を用意する必要がありコスト的に高いことがデメリットになる。
【0041】
本発明では複数の振動モードを同時にとらえるため、プログラムによってFFTを実現して、ノック周波数をとらえることにする。
【0042】
図5にノック検出回路のブロック図を示す。
【0043】
ノック周波数をすべてとらえるために、ノックセンサの周波数特性は非共振型とする。ノックセンサ出力は初段増幅器で直流成分を除去した後、可変増幅器で信号を増幅する。可変増幅器はノック検出用CPUからの指令によって増幅度を変えることができる。
【0044】
増幅されたノック信号は、FFTの折り返し周波数以下となるようにローパスフィルタを通してCPUのA/D変換器に入力される。本発明の一態様としては、A/D変換は25.6μs 毎に行うので、サンプリング周波数fsは
fs=1/(25.6×106)=39kHz
となり、サンプリング定理から折り返し周波数は39kHz/2=19.5kHzであるので、19.5kHz 以下のローパスフィルターとしたものを一例としている。
【0045】
CPUにはエンジンのクランク角度信号,気筒基準位置信号,気筒判別信号と点火信号が入力され、エンジンの特定のクランク角度から周波数分析を開始する。
【0046】
すなわち、気筒判別信号と気筒基準位置信号を組み合わせて気筒判別を行い、気筒毎に点火信号が生じた後の、クランク角信号に従って特定の基準位置から周波数分析を開始する。
【0047】
ただし、点火信号は点火が行われたことを確実に検出するための信号として使われるので、フェイルセーフが特に必要なければ不要である。
【0048】
図6にサンプリングのタイミングを説明する。
【0049】
周波数分析開始位置は気筒基準位置信号またはクランク各信号から所定のディレイ時間tdまたはディレイの角度taとする。
【0050】
tdまたはtaは運転状態に従ってあらかじめマッチングした値であり、例えば、回転数とエンジンの負荷によって決まるマップ値とする。
【0051】
また、周波数分析区間の幅はノックの発生するクランク角度をカバーする幅とするが、一回のFFTでは終了できない場合は複数回FFTを繰り返す。通常、ノックの発生するクランク角度はATDC10度から70度程度であり、エンジン回転数が6000r/minのときは
(60/6000)×(70−10)/360=1.67ms
程度の幅となる。
【0052】
一方、エンジン回転数が1000r/minのとき、幅は
(60/1000)×(70−10)/360=10ms
となる。このため、6000r/min の時に比べて、6倍繰り返すことによりノック周波数分析を行う必要がある。
【0053】
本発明では、FFTを32サンプリング毎に行う設計としたので、25.6
μs×32=約820μs が最小分析幅であり、6000r/min のときに2回、1000r/min では12回、周波数分析を行う。これらの周波数分析回数は回転数のテーブルとして用意する。
【0054】
図7にノック検出フローを示す。
【0055】
FFTによる周波数分析結果の内、共鳴モードに近い周波数成分を選択し、それぞれの周波数成分(PWERmn)毎にバックグランドレベル(BGLmn)と比較する。
【0056】
バックグランドレベルはノックが発生していないときの信号レベルであり、ノック判定でノックなしと判定したときの周波数分析結果から算出される。
【0057】
例えば、今回の周波数分析結果からバックグランドレベルは、次のように求めることができる。
【0058】
BGLmn=BGLmn[前回値]×(1−BGLGAIN)
+PWRmn×BGLGAIN
ここで、BGLGAINはバックグランドレベルに対するフィルタゲインである。また、添え字mは周波数番号を表し、添え字nは気筒番号を表す。
【0059】
バックグランドレベルには最小値を用意して、ノック発生していないときの誤判定を防止する。
【0060】
上記バックグランドレベル算出にはフィルタを使ったが、その他、所定値を加減算する方法や、気筒毎にゲインを設定することも可能である。
【0061】
また、加速中など運転状態が変化するときはフィルタゲインを大きくして、バックグランドレベルの増大に追従するようにすることも必要である。
【0062】
周波数成分とバックグランドレベルとの比または差分を求めて、その総和を取り所定のしきい値と比較して、しきい値以上であればノックありと判定する。
【0063】
しきい値はあらかじめエンジンの運転状態に応じて求めるが、回転数やエンジン負荷データ(LDATA)や燃料噴射量(TI),エンジン冷却水温度に応じてしきい値を変更する。
【0064】
また、エンジンの運転状態によってはノック検出を避けるべきタイミング、例えば、加速中などにはノック検出を行わない。
【0065】
ノックありと判定された場合は、次の燃焼に対して運転状態を変化させる。
【0066】
例えば、図8に示すように、点火時期を一時的に遅らせて、自己着火を防止したり燃料量を増大させて燃料の気化熱によって燃焼室内の温度を下げるなどのノック制御が行われる。
【0067】
同時に、吸気弁や排気弁のタイミングを変化させて、エンジン出力を制限することも必要に応じて行う。
【0068】
吸気弁や排気弁のバルブタイミングは、エンジン回転数とエンジン負荷によってあらかじめ設定した角度で動作するようにしており、例えば油圧を使ってカム軸の位相をずらす手段が使われている。
【0069】
図9に示すように、バルブの開き始めまたは閉じるタイミングに相当するカム信号が、クランク各信号または気筒基準位置信号と所定の時間差(tvt)または角度差(tva)をもつように油圧を制御する例がある。すなわち、目標とする角度差または時間差と実際の角度差または時間差を求めて、その差分がゼロとなるまで、油圧を増減するものである。
【0070】
しかしながら、ノック周波数は燃焼室内の共鳴として現れるので、自己着火による異常燃焼以外に、吸気弁や排気弁の着座時の打撃音も燃焼室内に共鳴して、ノック周波数と類似の周波数成分として現れる。
【0071】
図10にバルブのタイミングとノック発生のタイミングを示す。
【0072】
他の気筒の吸気弁や排気弁の閉じるタイミングがあると、ノックが発生すると想定される周波数分析区間内にノイズ成分として現れる。
【0073】
ノイズ成分は、発生位置が変化しても周波数は一定である。
【0074】
よって、FFTによる周波数分析結果では特定の周波数のみ常時、検出されるので、この周波数をノック検出から外してノイズ成分の影響を抑えることができる。図11に示す様に、ノック判定があったとき、点火時期等のノック制御を行い、その後のノック周波数成分を分析した結果、特定の周波数成分(例えば図
10(b)(c)では6kHz付近)が現れるときは、吸気弁または排気弁の着座に伴うノイズが発生していると判断する。
【0075】
この場合、エンジン運転状態に応じて、ノック判定を行う周波数選択にバルブの周波数成分を使わないように周波数選択を変えて対応する。
【0076】
またはノイズ成分に対して、ノック周波数が重畳する場合は、ノック発生区間を縮めて、ノック周波数成分のみをとらえるようにする。
【0077】
この場合、バルブタイミングに合わせてノック周波数分析区間の設定を変える。
【0078】
例えば、図12に示すように、ノック周波数分析区間のスタートを早めたり、または、A/D変換取り込み区間を縮める方法や強制的にA/D変換結果をゼロと見なす処理を行うものである。
【0079】
また、ノック発生を抑制するために、通常、点火時期を遅角させる手段が用いられるが、そのほかにバルブの開閉タイミングを変化させて、実質的な圧縮比を変更することによっても、ノック発生を抑制できる。
【0080】
例えば、吸気バルブが開く角度を遅くすることや閉じる角度を早めることによって、圧縮比が実質的に下がり燃焼室内の圧縮行程での温度が下がるので、ノック発生を抑制できる。また、排気バルブの開く角度を遅くすることや閉じる角度を早めることによって、燃焼室内に留まる排気ガス量が増えて、燃焼室内の自己EGR量が増えるので、燃焼ガス温度が低下してノック発生を抑制できる。
【0081】
さらに、バルブのリフト量を下げることによって、排気バルブの動作と同様に自己EGR量が増えるので、ノック発生を抑制できる。
【0082】
次に、ノックセンサのフェイル検出を図13で説明する。
【0083】
まず、ノックセンサ内部に抵抗を組み込み、エンジン制御装置から抵抗を介して直流電圧を印加して、センサ端子電圧を測定する。センサがつながっていれば、センサ端子電圧はセンサ内部の抵抗とエンジン制御装置内の抵抗で分圧される電圧が測定できるので、この時センサ接続正常とする。
【0084】
電圧がゼロに近い場合は、センサハーネスがグランドにショートしていると判断される。
【0085】
電圧が断線判定しきい値(3.41V)相当の場合はセンサハーネス断線と判断する。
【0086】
電圧がVccに近い電圧(4.8V)程度では、センサハーネスがVBにショートしていると判断する。
【0087】
また、ノック制御量が制御限界に達してもノック判定がされている場合、ノック制御自体の故障と判定される。
【0088】
こうしたノックセンサフェイルまたはノック制御故障が判定された場合、直ちに運転状態をノックが発生しない状態に変化させて、ノックによるエンジン破損を防止する。
【0089】
【発明の効果】
本発明によれば、バルブタイミングを可変してエンジン出力を向上するエンジンでもノック発生を確実に検出できるので、エンジンの寿命を延ばすことができ、車両の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のエンジン構成図。
【図2】ノック制御装置のブロック図。
【図3】エンジン運転状態の制御ブロック図。
【図4】ノック発生時の振動モードの説明図。
【図5】ノック検出回路のブロック図。
【図6】ノック信号サンプリングの説明図。
【図7】ノック検出のフローチャート説明図。
【図8】ノック制御の説明図。
【図9】バルブタイミング制御の説明図。
【図10】バルブタイミングとノック信号の関係図。
【図11】着座音ノイズ判断フローチャート説明図。
【図12】バルブタイミングによるノイズの回避説明図。
【図13】ノックセンサ自己診断説明図。
【符号の説明】
100…内燃機関、101…インジェクタ、102…点火プラグ、103…点火コイル、104…スロットル、109…気筒判別センサ、110…水温センサ、111…クランク角センサ、112…気筒基準位置センサ、113…スロットルポジションセンサ、114…吸気管圧力センサ、115…吸入空気流量計、
116…空燃比センサ、118…触媒、120…エンジン制御装置、131…ノックセンサ、1011…燃料ポンプ、1012…燃圧制御弁。
Claims (15)
- エンジンのノッキング発生時のノック信号を検出するノックセンサと、前記ノックセンサ出力に含まれる複数の周波数成分を検出する周波数検出手段と、前記周波数検出手段により検出された周波数成分を運転状態に応じて選択し、周波数成分に応じてノック発生の判定がされたときに運転状態を変化させてノック発生を抑制するノック制御装置であって、吸気弁または排気弁の少なくともいずれかのバルブ開,閉タイミングが可変となる内燃機関の吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの開,閉タイミングに基づいて、ノック分析区間を変更して周波数分析を行うことを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項1に記載のノック制御装置において、エンジン運転に応じてノック検出のしきい値を変化させることを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項1または2のいずれかに記載のノック制御装置において、周波数分析を行う期間を、ノック発生を含む期間に限定したことを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項1から3のいずれかに記載のノック制御装置において、ノック周波数を取り込む分析区間内には検出吸気弁または排気弁のバルブ開,閉に伴う振動が生じる所定のタイミングを含まないことを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項1から4のいずれかに記載のノック制御装置において、ノック発生を検出した場合、検出後の運転状態を変化させてノック発生を抑制することを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項5に記載のノック制御装置において、点火時期,吸気バルブの開閉クランク角度,排気バルブの開閉クランク角度,バルブのリフト量,量空気と燃料の混合比の何れかを変化させてノック発生を抑制することを特徴とするノック制御装置。
- エンジンのノッキング発生時のノック信号を検出するノックセンサと、前記ノックセンサ出力に含まれる複数の周波数成分を検出する周波数検出手段と、前記周波数検出手段により、検出された周波数成分を運転状態に応じて選択し、該周波数成分に応じてノック発生を検出したとき、運転状態を変化させてノック発生を抑制するノック制御装置であって、吸気弁または排気弁の少なくともいずれかのバルブ開,閉タイミングが可変となる内燃機関の吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの着座に伴う周波数成分を検出することを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項7に記載のノック制御装置において、ノック発生時の周波数成分とノック発生がないときの周波数成分と比較して、ノック発生の有無に関わらず発生する周波数成分を検出して、吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの着座に伴う周波数成分と判断することを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項8に記載のノック制御装置において、前記吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの着座に伴う特定の周波数成分があることを判断したときは、ノック周波数の分析区間を変更することを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項8に記載のノック制御装置において、前記吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの着座に伴う特定の周波数成分があることを判断したときは、ノック検出に際して周波数成分から前記特定の周波数成分を用いないことを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項8に記載のノック制御装置において、前記吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの着座に伴う特定の周波数成分があることを判断したときは、ノック信号の取り込みに際してノック信号のA/D変換値の一部を所定の値に見なすことを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項11に記載のノック制御装置において、前記吸気弁または排気弁の少なくともいずれかの着座に伴う特定の周波数成分があることを判断したときは、ノック信号の取り込みに際してノック信号のA/D変換値の一部をゼロと見なすことを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項1から12のいずれかに記載のノック制御装置において、ノックセンサの異常を検出したときは、ノック発生を抑制する運転状態に移行することを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項13に記載のノック制御装置において、ノックセンサにバイアス電圧を印加して、バイアス電圧が所定の範囲外にあるときにノックセンサを異常とすることを特徴とするノック制御装置。
- 前記請求項1から14のいずれかに記載のノック制御装置において、ノック制御によって運転状態を変化させてもノック検出が継続する場合は、ノック制御を停止すると共にノック発生の無いエンジン運転状態に移行することを特徴とするノック制御装置。
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