JP2004050461A - 鮮明な色調を呈するクリア塗装金属板 - Google Patents
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Abstract
【構成】半透明顔料6で明度L値を25〜60の範囲に調整した下層クリア塗膜2を基材・金属板1の表面に設けた後、発色顔料7を分散させた上層クリア塗膜3を形成する。発色した色調が基材・金属板1からの反射光L3で希釈されることが少なくなり、基材・金属板1からの反射光自体の光量も減少するので、鮮明でマイルドな色調を呈するクリア塗装金属板が得られる。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、光の干渉作用で発現する色調を鮮明にしたクリア塗装金属板に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電製品,OA機器等の表装材として、クリア塗装を施した塗装金属板が使用され始めている。クリア塗装金属板は、金属光沢を活用した外観を呈することから、従来の着色塗装金属板では得られない雰囲気を醸し出す。
クリア塗装金属板は、着色剤を配合したクリア塗料を塗装原板表面に塗布し、焼付け乾燥することによって製造される。着色剤に染料を使用すると焼付け時に変色しやすく色調が安定しないので、有機顔料を通常使用している。
【0003】
有機顔料を配合したカラークリア塗膜では、塗膜に入射した光の特定波長成分が有機顔料に吸収され、残りの入射光が下地金属板の表面で反射され、吸収波長成分を除く反射光により特定の色調が発現する。カラークリア塗膜を透過した入射光が有機顔料に吸収される光量は塗膜の厚みによって異なり、厚い塗膜ほど吸収量が大きく、薄い塗膜ほど吸収量が少ない。そのため、発現する色調の膜厚依存性が高く、僅かな膜厚変動によっても色調が微妙に変動しやすい。色調の変動は、製造ロットの異なるクリア塗装金属板を突き合わせて施工する場合に色ムラとして強調される。
有機顔料による色調付与は、下地金属板の金属光沢を損ない、明度L値が低く黒味がかった冷たい感じの色調を与えやすい。艶消し処理で明度L値の低下を防止できるが、艶消しによって塗膜の透明感が損なわれ、鮮映性も低くなって高級感がなくなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、膜厚に応じた色調の変動を抑制するため、有機顔料に代えて発色顔料をクリア塗膜に分散させることを特願2001−376893号で提案した。発色顔料は、鱗片状無機基質に透明な金属酸化物皮膜を設けたものであり、塗膜に入射した光が鱗片状無機基質及び金属酸化物皮膜の表面で反射する。鱗片状無機基質,金属酸化物皮膜からの反射光に光路差が生じ、光路差に応じた光の干渉作用によって干渉色が発現する。
【0005】
発色顔料で色調を発現させるカラークリア塗膜では、有機顔料のような光吸収物質がクリア塗膜に存在せず、基材・金属板,鱗片状無機基質,金属酸化物皮膜それぞれの表面で反射する光の合計が入射光の光量にほぼ等しい。そのため、発色した色調は、クリア塗膜の膜厚に影響されず、明度の低下もない。
本発明者等は、発色顔料を分散させたカラークリア塗膜を種々調査・検討する過程で、色調の鮮明度が基材の色調に大きく影響されることを見出した。具体的には、明度の高い基材を使用すると、発色顔料で発現させた干渉色が不鮮明になりやすい。逆に明度が低すぎる基材を使用すると、基材・金属板の色調が隠蔽されてしまい、クリア塗装金属板特有の透明感が損なわれる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、このような知見をベースに完成されたものであり、明度が調節されたクリア塗膜を介在させることにより、発色顔料で発現させた干渉色を強調し、透明感を損なうことなく鮮明度の高い色調を呈するクリア塗装金属板を提供することを目的とする。
【0007】
本発明のクリア塗装金属板は、その目的を達成するため、基材・金属板の表面に、半透明顔料の分散によって明度L値を25〜60の範囲に調整した下層クリア塗膜を介し、鱗片状無機基質を透明の金属酸化物で被覆した透明又は半透明の発色顔料を分散させた上層クリア塗膜が形成されていることを特徴とする。
【0008】
下層クリア塗膜に分散させる半透明顔料としては、光透過率が15〜90%の範囲にあり、カーボンブラック,グラファイト,金属酸化物,金属硫化物の1種又は2種以上から選ばれたフレークが好ましい。半透明顔料の光透過率は、可視光域の光(たとえば波長500nm)に対する値を示し、フレークの厚みやクリア塗料の顔料配合量によって所定範囲に収めることができる。
【0009】
【実施の形態】
本発明に従ったクリア塗装金属板は、基材・金属板1に下層クリア塗膜2,上層クリア塗膜3を積層した構造(図1)を基本構成としている。基材・金属板1と下層クリア塗膜2との間に、塗膜の密着性を向上させるため顔料無添加のクリア塗膜4を設けても良い。上層クリア塗膜3の上にトップクリア塗膜5を形成すると、塗膜の表面性状が改善され、高級感に富む色調が得られる。
【0010】
基材・金属板1としては、光沢のある金属表面が観察される製品形態で使用されることから、ステンレス鋼,各種めっき鋼板,アルミニウム,アルミニウム合金,銅,銅合金,マグネシウム,マグネシウム合金等が使用される。基材・金属板1には、クリア塗膜の形成に先立って脱脂・酸洗,クロメート処理,リン酸塩処理,クロムフリー処理等、適宜の塗装前処理が施される。
下層クリア塗膜2を形成するためのクリア塗料は、塗料種に特段の制約が加わるものではないが、透明度の高いアクリル系,ポリエステル系,ウレタン系,ポリオレフィン系,フッ素系,エポキシ系,酢酸ビニル系,クロロプレン系等の有機樹脂,無機系ポリマーを配合した有機樹脂も使用できる。
【0011】
下層用クリア塗料には、下層クリア塗膜2の明度を調整するため半透明顔料6を配合している。半透明顔料6の他に、透明感の高いパールマイカ,ブルーマイカ,レッドマイカ等の発色顔料や、下層クリア塗膜2の透明性を損なわない範囲で防錆顔料,着色顔料,染料等を必要に応じて添加しても良い。
半透明顔料6には、カーボンブラック,グラファイト,金属酸化物,金属硫化物等のフレークが使用される。たとえば、カーボンブラックやグラファイトは、光吸収物質として通常扱われているが、厚みが2μm以下(好ましくは、1μm以下)のフレークにすると半透明になる。同様に薄いフレークで半透明を呈する金属酸化物にはCrO,Co2O3,Co3O4,CuO,MnO,Mn2O3,Mn3O4,SnO,MoO3,MoO4等があり、金属硫化物にはCrS,Cr2S3,CoS,CoS2,Co2S3,CuS,MnS2,MoS2,SnS,CuS,Cu2S,FeS等がある。
【0012】
鱗片状の半透明顔料6を使用しているため、粒状の着色顔料を配合して基材・金属板1全体の明度L値を調整する方法に比較し、少量の配合量で基材・金属板1の金属感を損なうことなく明度L値が容易に調整される。しかも、半透明であるため、粒状着色顔料に比較して弱い隠蔽力が却って膜厚変動時の色調変化が小さくなる。
半透明顔料6の光透過率は、次式に従って求められる値であり、可視光域にある500nmの光に対する透過率が15〜90%の範囲にあることが好ましい。
E=−logT=log(I0/I)
ただし、E:吸光度,T:透過率(透光度),
I0:入射光強度,I:透過光強度
15%以下の光透過率では、基材・金属板1に対する隠蔽力が強くなりすぎ、金属感がなくなる。逆に90%を超える光透過率では、上層クリア塗膜3における光の干渉作用で発色した色調の鮮明度を向上させる半透明顔料6の作用が弱くなる。半透明顔料6には、下層用クリア塗料への配合に先立って分散性,樹脂密着性を改善する適宜の前処理が必要に応じて施される。
【0013】
半透明顔料6は、下層クリア塗膜2の明度L値が25〜60の範囲となる配合割合で下層用クリア塗料に添加される。半透明顔料6の配合割合は、半透明顔料の材質,光透過率,下層用クリア塗料の樹脂種,下層用クリア塗料に添加する他の添加材等によって変わり、一概に定めることはできない。しかし、下層クリア塗膜2の明度L値が25〜60の範囲に維持される限り、干渉色が適度に強調された鮮明度の高い色調が発現する。
半透明顔料6を配合した下層用クリア塗料を基材・金属板1に塗布した後、クリア塗料の樹脂種や塗布量にもよるが200〜400℃で30〜120秒加熱することによって下層クリア塗膜2が基材・金属板1に焼き付けられる。下層クリア塗膜2は、所定の明度L値を確保し、且つ基材・金属板1の金属光沢を損なわないように5〜20μmの膜厚で形成することが好ましい。
【0014】
上層クリア塗膜3を形成するためのクリア塗料には、下層用クリア塗料と同様な透明度の高い塗料が使用され、必要に応じて防錆顔料,着色顔料,染料等が配合される。
クリア塗料に配合される発色顔料7は、マイカ,ガラスフレーク,アルミナフレーク,シリカフレーク等の鱗片状無機基質7aに湿式法,CVD法,粉末スパッタリング法等で単層又は複層の金属酸化物皮膜7bを形成することにより製造される(図2)。基材・金属板1の表面に沿った方向に鱗片状無機基質7aを配向させるほど発色顔料7の表面で入射光Linが反射する確率が高くなるので、鱗片状無機基質7aのアスペクト比(厚みに対する最大径の比率)が大きなものほど好ましい。具体的には、アスペクト比が60以上になると、大半の鱗片状無機基質7aが基材・金属板1の表面と平行又はほぼ平行な配向性をもって上層クリア塗膜3に分散し、透明の金属酸化物皮膜7bの干渉色が強く発現して鮮やかな色調になる。
【0015】
マイカを鱗片状無機基質7aとして使用し、湿式法でTiO2被覆する場合、種々の方法を採用できる。たとえば、希薄なチタン酸水溶液にマイカを懸濁させて70〜100℃に加温し、チタン塩の加水分解生成物である水和酸化チタン粒子をマイカ表面に析出させた後、700〜1000℃で高温焼成することによりTiO2被覆が形成される。TiO2被覆の膜厚は、チタン塩の濃度,懸濁液の温度,処理時間等の処理条件によって制御できる。
粉末スパッタリング法で発色顔料7を製造する場合、マイカ,ガラスフレーク等の鱗片状無機基質7aを回転ドラムに入れ、Tiをターゲットとする反応性雰囲気下でスパッタリングすることにより、鱗片状無機基質7aの表面にTiO2被覆が形成される。
【0016】
何れの方法による場合でも、金属酸化物皮膜7bの膜厚調整により、発色させようとする色調が得られる。たとえば、マイカをTiO2で被覆した発色顔料7を分散させた上層クリア塗膜3では、TiO2が厚膜になるに従ってシルバー,ゴールド,レッド,カッパー,ライラック,ブルー,グリーンに色調が変わる。TiO2皮膜の上に更にFe2O3皮膜を積層すると鮮やかなゴールド色調でパール光沢感に富む発色顔料,FeTiO3皮膜を積層すると鮮やかなグレー系の色調でパール光沢感に富む発色顔料,CoTiO3皮膜を積層すると鮮やかなグリーン系の色調でパール光沢感に富む発色顔料が得られる。
【0017】
透明な金属酸化物皮膜7bで鱗片状無機基質7aを被覆した発色顔料7は、そのままでクリア塗料用樹脂に添加することも可能であるが、必要に応じて適宜の表面処理を施すことができる。表面処理では、クロム酸系,リン酸系,アルミナ系,ジルコニア系,セリウム系等の無機質表面処理剤や各種シランカップリング剤,チタネートカップリング剤,有機モノマー系等の有機質表面処理剤が使用される。表面処理により、クリア塗料用樹脂に対する発色顔料7の分散性及び隣接樹脂層との層間密着性が改善される。
【0018】
上層クリア塗膜3は、下層クリア塗膜2と同様な塗布・焼付け条件で形成され、所定の色調を安定して発現させるため好ましくは5〜20μmの膜厚に調整される。
上層クリア塗膜3を最表層とするクリア塗装金属板では、製品形状に加工されることもあるので、基材・金属板1,下層クリア塗膜2に対する密着性,塗膜自体の柔軟性に富むことが要求される。また、柔軟性に相反する機能として耐疵付き性が要求されることもある。このような目的に応じた特性を考慮して上層用クリア塗料の樹脂系が選択され、たとえばメラミン,イソシアネート等の硬化剤を適宜配合して上層クリア塗膜3を形成することも可能である。
【0019】
基材・金属板1と下層クリア塗膜2との間に、基材・金属板1に対するクリア塗膜の密着性を高めるため発色顔料7を含まないプライマクリア塗膜4を設けても良い。プライマクリア塗膜4形成用のプライマ塗料は、塗料種に特段の制約が加わるものではないが、エポキシ樹脂,エポキシ変性ポリエステル樹脂,ウレタン樹脂,ウレタン変性ポリエステル樹脂等が使用される。プライマクリア塗膜4によって、塗装前処理した基材・金属板1と半透明顔料6を分散させた下層クリア塗膜2との密着性が一層向上する。プライマクリア塗膜4を形成する場合、プライマクリア塗膜4の膜厚を1〜10μmの範囲にすることが好ましい。
【0020】
上層クリア塗膜3の上に、更にトップクリア塗膜5を積層しても良い。トップクリア塗膜5形成用のクリア塗料は、特に限定されるものではないが、発色顔料7を分散させたクリア塗膜2,3と同種又は類似の塗料が好ましい。具体的には、透明度の高いアクリル系,ポリエステル系,ウレタン系,ポリオレフィン系,フッ素系,エポキシ系,酢酸ビニル系,クロロプレン系等の有機樹脂や無機系ポリマーを配合した有機樹脂も使用できる。透明性を損なわない範囲で、防錆顔料,着色顔料,染料等を必要に応じてクリア塗料に添加しても良い。
【0021】
トップクリア塗膜5は、上層クリア塗膜3から突出しがちな発色顔料7を覆い、塗膜表面の平滑度を向上させると共に、発色顔料7での光反射を均一化することにより光の干渉作用で発色した色調を安定化させる。その結果、濁りのない鮮明な干渉色が発現し、高級感のある色調が付与される。しかも、トップクリア塗膜5による平滑化も図られ、表面性状の良好なクリア塗装金属板が得られる。
【0022】
【作用】
明度L値が25〜60の範囲にある下層クリア塗膜2は、上層クリア塗膜3に分散している発色顔料7による光の干渉作用で発現する色調を鮮明化する。下層クリア塗膜2の明度が色調の鮮明化に及ぼす影響は次のように推察される。
入射光Linは、発色顔料7の鱗片状無機基質7a,金属酸化物皮膜7bで反射し、反射光L1,L2の間に光路差ΔLが生じる(図2)。光路差ΔLによる干渉作用で発色するが、上層クリア塗膜3を透過する入射光Linもある。透過した入射光Linは、基材・金属板1の表面で反射する。基材・金属板1の表面からの反射光L3が強いと、光の干渉作用により発現した色調が希釈され、鮮明度が低下する。
【0023】
これに対し、基材・金属板1と上層クリア塗膜3との間に下層クリア塗膜2を介在させると、上層クリア塗膜3を透過した入射光Linの一部が半透明顔料6で吸収され、基材・金属板1の表面からの反射光L3が弱くなる(図3)。その結果、光の干渉作用により発現した色調の反射光L3による希釈が抑制され、色調の鮮明度が向上する。しかも、半透明顔料6の表面で反射する光L4もあり、基材・金属板1の到達して反射する入射光Linの光量が低下するので、金属表面のギラギラ感が抑えられ、マイルドな色調をもつ塗膜表面になる。また、膜厚変動が色調に及ぼす影響も抑制される。
下層クリア塗膜2に配合した半透明顔料6により基材・金属板1の表面からの反射光が適度に抑えられ、光の干渉作用で発色した色調が鮮明化する。色調の鮮明度は彩度(a値,b値)による影響が大きいことから、均等色空間における透明度面内の2座標間の色刺激を色差として表面するクロマティクネス指数で鮮明度を表すことができる。クロマティクネス指数は、(a2+b2)1/2として算出される。
【0024】
【実施例1】
板厚0.4mmのSUS430ステンレス鋼板を塗装原板に使用した。塗装原板を2%塩酸で酸洗し、酸系の表面処理を施した後、クロム換算付着量20mg/m2の塗布型クロメート処理を施した。
下層用クリア塗料として、高分子ポリエステル系クリア樹脂塗料(PM5000:日本ペイント株式会社製)に半透明顔料を配合したクリア塗料を用意した。半透明顔料には、(a)〜(d)のフレークを使用した。なお、各フレークの光透過率は、ダブルビーム,ダイノードフィードバックによるダイレクトレシオ方式の分光光度計を用い、半透明顔料6を適量配合した膜厚5μmのクリア塗膜に波長500nmの可視光を照射したときの透過光を測定し、式:E=−logT=log(I0/I)に従って算出された値で示す。
【0025】
【0026】
上層用クリア塗料には、同じ高分子ポリエステル系クリア樹脂塗料に発色顔料を配合したクリア塗料を用意した。発色顔料としては、膜厚90nmのTiO2被覆を形成したアスペクト比150,中心粒径30μmのカッパー色マイカフレークを使用した。
塗装前処理した塗装原板に下層用クリア塗料を塗布し、到達板温230℃で60秒加熱することにより乾燥膜厚5μmの下層クリア塗膜2を形成した。形成された下層クリア塗膜2の明度L値を測定したところ、クリア塗膜A〜Dの明度L値は配合した半透明顔料6に応じて異なっていた。
【0027】
下層クリア塗膜2の上に更に上層用クリア塗料を塗布し、同様な焼付け条件下で膜厚10μmの上層クリア塗膜3を形成した。
得られた各クリア塗装金属板の色調を測定し、色調の鮮明度に及ぼす下層クリア塗膜の影響を調査した。なお、色調の鮮明度は、クロマティクネス指数により評価した。比較のため、下層クリア塗膜2を形成しない他は同じ条件下で上層クリア塗膜3を形成したクリア塗装金属板についても、色調及び色調の鮮明度を調査した。
【0028】
表2の調査結果にみられるように、基材・金属板1と上層クリア塗膜3との間に下層クリア塗膜2を介在させることにより、発色顔料7で発色させた色調ではa値が1.5〜3.5倍も高くなっていることが確認される。他方、下層クリア塗膜2を介在させない比較例5〜8では、発色顔料7を10%配合(約40%の増量に相当する)した場合でもa値の増加が小さく、鮮明度の向上も10%程度に過ぎなかった。
【0029】
【0030】
【実施例2】
明度L値を種々変化させた膜厚5μmの下層クリア塗膜2を形成する以外には、実施例1と同様に発色顔料7を7%配合した上層クリア塗膜3を形成した。本実施例では、下層用クリア塗料に配合する半透明顔料6として厚み(ひいては、光透過率)が異なる鱗片状MoS2を使用することにより、下層クリア塗膜2の明度L値を変えた。
鱗片状MoS2を3質量%配合した下層用クリア塗料から形成された下層クリア塗膜2の明度L値は、鱗片状MoS2の厚みに応じて表3に示すように変化していた。
【0031】
【0032】
得られた各クリア塗装金属板について、色調を測定し、色調の鮮明度及び金属素地の外観に及ぼす下層クリア塗膜2の影響を調査した。金属素地の外観は、金属素地が良好に観察されたものを○,金属素地が観察可能なものを△,金属素地が観察できなかったものを×と評価した。
表4の調査結果にみられるように、基材・金属板1/上層クリア塗膜3間の下層クリア塗膜2に鱗片状MoS2を分散させることによって、発色顔料7で発色させた色調の鮮明度が改善されていることが判る。なかでも、光透過率が15〜90%の範囲に収まる厚みの鱗片状MoS2を分散させた下層クリア塗膜2を設けたクリア塗装金属板では、鱗片状MoS2が分散していない比較例5に比べて色調の鮮明度が格段に改善されていた。しかし、厚すぎる鱗片状MoS2を分散させた比較例6,7では、光透過率が15%以下となったため金属素地を観察できず、目標とするクリア塗装金属板が得られなかった。
【0033】
【0034】
【発明の効果】
以上に説明したように、光の干渉作用で色調を発現する発色顔料を分散させたクリア塗膜と基材・金属板との間に明度L値が調整された下層クリア塗膜を介在させるとき、発色した色調が基材・金属板からの反射光で希釈されることが少なくなり、金属板からの反射光自体の光量も減少するので、鮮明でマイルドな色調を呈するクリア塗装金属板が得られる。光の干渉作用による発色で色調を付与しているため、クリア塗膜の膜厚変動による影響が少なく、発現した色調も安定する。このような特性を活用し、家電機器,OA機器,厨房機器等の広範な分野で表装材,内装材として使用可能なクリア塗装金属板が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従ったクリア塗装金属板の塗膜構成を示す断面図
【図2】上層クリア塗膜に分散させた発色顔料で光の干渉作用が生じることを示す説明図
【図3】上層クリア塗膜を透過した入射光の一部が下層クリア塗膜で吸収され、残りが基材・金属板1で反射されることを示す説明図
【符号の説明】
1:基材・金属板 2:下層クリア塗膜 3:上層クリア塗膜 4:顔料無添加のクリア塗膜 5:トップクリア塗膜 6:半透明顔料 7:発色顔料
Lin:入射光 Lout:反射光
L1:発色顔料7の鱗片状無機基質7aで反射した光
L2:発色顔料7の金属酸化物皮膜7bで反射した光
L3:基材・金属板1の表面で反射した光
L4:下層クリア塗膜2の半透明顔料6で反射した光
Claims (3)
- 基材・金属板の表面に、半透明顔料の分散によって明度L値を25〜60の範囲に調整した下層クリア塗膜を介し、鱗片状無機基質を透明の金属酸化物で被覆した透明又は半透明の発色顔料を分散させた上層クリア塗膜が形成されていることを特徴とする鮮明な色調を呈するクリア塗装金属板。
- 光透過率15〜90%の半透明顔料が下層クリア塗膜に分散している請求項1記載のクリア塗装金属板。
- カーボンブラック,グラファイト,金属酸化物,金属硫化物の1種又は2種以上のフレークを薄膜化して光透過量を調節した半透明顔料を使用する請求項1又は2記載のクリア塗装金属板。
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