JP2004047240A - 電子放出素子とその製造方法、および表示装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】カーボンナノチューブなどの炭素系針状物質を用いて電子放出素子のエミッタを形成する場合に、炭素系針状物質の配列密度を適正化して高い発光効率を実現する。
【解決手段】電子放出素子の製造方法として、カソード基板のベースとなるベース基板3上にカソード電極4、絶縁層5およびゲート電極6を順に積層した後、ゲートホール7を形成し、かつゲートホール7内に複数の炭素系針状物質9を配列してエミッタ8を形成する第1工程と、ゲートホール7内に複数の球体13を充填して当該複数の球体13との接触により複数の炭素系針状物質9の一部をベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲させる第2工程とを有する。
【選択図】 図6
【解決手段】電子放出素子の製造方法として、カソード基板のベースとなるベース基板3上にカソード電極4、絶縁層5およびゲート電極6を順に積層した後、ゲートホール7を形成し、かつゲートホール7内に複数の炭素系針状物質9を配列してエミッタ8を形成する第1工程と、ゲートホール7内に複数の球体13を充填して当該複数の球体13との接触により複数の炭素系針状物質9の一部をベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲させる第2工程とを有する。
【選択図】 図6
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出型の電子放出素子とその製造方法、および電子放出素子を用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中におかれた金属等の導体あるいは半導体の表面に、ある閾値以上の電界を与えると、トンネル効果によって電子が障壁を通過し、常温時においても真空中に電子が放出される。この現象は電界放出(Field Emission)と呼ばれ、これによって電子を放出するカソードは電界放出型カソード(Field Emission Cathode)と呼ばれている。近年では、ミクロンサイズの電界放出型カソードを、半導体加工技術を駆使して基板上に多数形成したフラットディスプレイ装置(平面型表示装置)としてFED(Field Emission Display)が注目されている。FEDは、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示するものである。
【0003】
図8は従来の表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図9はその概略斜視図である。図においては、カソード基板51とアノード基板52とが微小なギャップを介して対向状態に配置されている。カソード基板51とアノード基板52との間は真空状態に維持される。カソード基板51は、ベース基板53と、カソード電極54と、抵抗層55と、絶縁層56と、ゲート電極57、エミッタ58とを備えている。ゲート電極57および絶縁層56にはゲートホール59が形成されている。また、ゲートホール59内にはコーン形状(略円錐形)のエミッタ58が形成されている。このエミッタ58はスピント型エミッタとも呼ばれる。一方、アノード基板52は、ベース基板60と、アノード電極61と、蛍光体62とを備えている。アノード電極61はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるもので、蛍光体62は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて配置したものである。
【0004】
ここで、上記構成の表示装置(FED)の製造プロセスについて簡単に説明する。先ず、カソード基板51を得るにあたっては、ベース基板53上に、カソード電極54、抵抗層55、絶縁層56およびゲート電極57を蒸着法によって順に積層する。次に、フォトプロセス(フォトレジスト塗布、パターニング、エッチング)を施して、ゲート電極57および絶縁層56にゲートホール59を形成した後、フォトレジストを除去する。
【0005】
次いで、ベース基板53を回転させながら、その基板面に対して斜め方向からアルミニウムなどを蒸着させることにより、ゲート電極57の表面とその開口縁部にのみアルミニウムからなる剥離層を形成する。続いて、剥離層の上からエミッタ材料となる金属、例えばモリブデンを堆積させる。これにより、ゲートホール59の開口径がモリブデンの堆積とともに徐々に小さくなり、最終的にゲートホール59が完全に閉じられる。その結果、ゲートホール59内にエミッタ材料(モリブデン)の堆積によってコーン形状のエミッタ58が形成される。その後、ゲート電極57上の不要なエミッタ材料を剥離層とともにエッチングによって除去する。
【0006】
一方、アノード基板52を得るにあたっては、ベース基板60上にITO等のアノード電極61を形成した後、蛍光体材料の塗布によって蛍光体62を形成する。また、こうして得られたカソード基板51とアノード基板52とを、例えば0.2〜1.0mmのギャップで真空状態に封止する。以上の製造プロセスでは、エミッタ58とゲート電極57との間の距離がサブミクロンレベルに制御されることから、それらの間に数十ボルトの電圧を印加することにより、エミッタ58の先端部に電界を集中させ、これに伴うトンネル効果によってエミッタ58から真空中に電子を放出させることができる。その際、抵抗層55は、例えばエミッタ58への放電電流が大きくなった場合に、抵抗による電圧降下の増大によってエミッタ58に作用する実効電圧を減少させ、逆に放電電流が小さくなった場合はエミッタ58に作用する実効電圧を増加させることにより、放電電流を安定化させる役目を果たす。
【0007】
ところで近年においては、電界放出型カソードの構成として、非常に鋭利な先端が無数に得られるカーボンナノチューブを用いたエミッタ構造が提案されている。一般にカーボンナノチューブは高いアスペクト比を有し、先端の曲率半径も非常に小さいため、高い発光効率を実現する電子放出源として注目されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブでエミッタを形成する手法の一つとして、CVD法(気相成長法;Chemical Vapor Deposition)が知られている。ただし、CVD法でカーボンナノチューブを成膜すると、カーボンナノチューブの配列密度が非常に高くなる。そうした場合、FEDの特性として、図10(A)に示すように、各々のカーボンナノチューブ63の間に電界が侵入しにくくなるため、カーボンナノチューブ63の先端部で電位分布が平滑化されてしまう。その結果、カーボンナノチューブ63の先端部に電界が集中しにくくなって発光効率が低下する。
【0009】
これに対して、図10(B)に示すように、各々のカーボンナノチューブ63を適度な離間寸法Lを隔てて配列した状態では、カーボンナノチューブ63の先端部に電界が集中しやすくなるため、発光効率が高まる。しかしながら、カソード電極54上に直接カーボンナノチューブ63を成膜するCVD法等では、カーボンナノチューブ63の配列密度を制御できないため、高い発光効率を実現することが困難な状況にある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、カーボンナノチューブなどの炭素系針状物質を用いて電子放出素子のエミッタを形成する場合に、炭素系針状物質の配列密度を適正化して高い発光効率を実現することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子放出素子の製造方法は、基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成する第1工程と、ゲートホール内に複数の球体を充填することにより、当該複数の球体との接触によって複数の炭素系針状物質の一部を基板に対して横倒しの状態に屈曲させる第2工程とを含むものである。
【0012】
この電子放出素子の製造方法においては、基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成した後、ゲートホール内に複数の球体を充填して当該複数の球体との接触により複数の炭素系針状物質の一部を基板に対して横倒しの状態に屈曲させることにより、ゲートホール内における炭素系針状物質の配列状態がエミッタ形成時よりも疎らになる。すなわち、ゲートホール内に複数の球体を充填すると、例えばCVD法によってほぼ垂直に配向した状態で高密度に配列された複数の炭素系針状物質のうち、一部の炭素系針状物質は、各々の球体との接触によって横倒しの状態に屈曲し、それ以外の炭素系針状物質は、各々の球体によって形成される隙間部分でほぼ垂直に配向した状態に維持される。そのため、複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成した後、ゲートホールに複数の球体を充填することにより、炭素系針状物質の配列密度を低下させることが可能となる。その結果、この製造方法によって得られた電子放出素子とこれを用いた表示装置においては、炭素系針状物質の先端部に電界が集中しやすいように、複数の炭素系針状物質の配列密度を適正化することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図2はその概略斜視図である。図においては、カソード基板1とアノード基板2とが微小なギャップを介して対向状態で配置されている。カソード基板1とアノード基板2との間は真空状態に維持される。カソード基板1は、ガラス基板等からなるベース基板3と、このベース基板3上に順に積層されたカソード電極4、絶縁層5、ゲート電極6と、ベース基板3上に形成されたゲートホール7と、このゲートホール7内に形成されたエミッタ8とを備え、これらの構成要素によって電界放出型の電子放出素子が構成されている。なお、図1および図2においては、電子放出素子の1画素に相当する部分のみを示している。また、放電電流の安定化のための抵抗層(不図示)は、カソード電極4と同一のパターンで形成される。
【0015】
上述した構成要素のうち、カソード電極4は、図3に示すように、ベース基板3上で複数のカソードラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成され、ゲート電極6はベース基板3上で上記カソードラインに交又する複数のゲートラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成されている。カソード電極4とゲート電極6の交叉部分は一つの画素を構成するものとなる。絶縁層5はカソード電極4とゲート電極6との間で電気的な絶縁作用をなすもので、それらの電極間に層状に形成されている。ゲートホール7は、絶縁層5およびゲート電極6を貫通する状態で、カソード電極4とゲート電極6の交叉部分に複数個形成されている。ゲートホール7の孔形状は円形状となっている。エミッタ8は、ゲートホール7内でカソード電極4上に形成されている。このエミッタ8は、カソード電極4上に植設された複数の炭素系針状物質9によって形成されている。
【0016】
炭素系針状物質9としては、カーボンナノチューブを用いることが望ましい。カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めた1層又は多層の円筒状をなすもので、直径が0.7〜50nm程度で長さが数μmの高いアスペクト比をもつ材料である。ただし、エミッタ材料として利用可能な微細な針状構造を有する物質であれば、カーボンナノチューブ以外のものを炭素系針状物質9として用いてもよい。
【0017】
一方、アノード基板2は、FEDの前面パネルを構成するもので、透明ガラス基板からなるベース基板10と、このベース基板10上に積層されたアノード電極11および蛍光体12を備えて構成されている。アノード電極11はITO等の透明電極によって形成され、蛍光体12は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて形成されている。
【0018】
上記構成からなる電子放出素子を備える表示装置において、アノード電極11にアノード電圧(高圧)を印加する一方、カソード電極4にカソード電圧、ゲート電極6に正のゲート電圧をそれぞれ印加すると、エミッタ8を形成する各々の炭素系針状物質9の先鋭なエッジ部(先端部)に電界が集中し、この電界集中に伴うトンネル効果によってエミッタ8から真空中に電子が放出される。こうして放出された電子は、アノード基板2のアノード電極11に引き寄せられて蛍光体12に衝突する。これにより、蛍光体12が励起されて発光し、画像が表示される。
【0019】
ここで、FEDの発光効率は、エミッタ8を形成する複数の炭素系針状物質9の配列密度に大きく影響される。すなわち、炭素系針状物質9の配列密度が過度に高い場合(配列が密の場合)は前述したように炭素系針状物質9の先端部で電位分布が平滑化されるため、エミッタ8で電界の集中が起こりにくくなり、反対に、炭素系針状物質9の配列密度が過度に低い場合(配列が疎の場合)は、エミッタ8で電界の集中が起こりやすくなるものの、単位面積あたりの炭素系針状物質9の本数が少ないために電子の放出量が少なくなる。そのため、いずれの場合も高い発光効率が得られない。そこで本発明の実施形態においては、電子放出素子を製造するにあたって、エミッタ8における炭素系針状物質9の配列密度を適正化(好ましくは最適化)するために、以下のような製造方法を採用することとした。
【0020】
図4は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の製造方法として、特に電子放出素子を構成するカソード基板1の製造プロセスを示すフローチャートである。
【0021】
[カソード電極の形成工程;S1]
先ず、ベース基板3上にカソード電極4を形成する。カソード電極4を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。カソード電極4の形成パターンはストライプ状であって、その形成方法としてはペースト状の電極材料を印刷により塗布する印刷法を採用することが簡便である。ただし、他の形成方法として、周知のフォトリソグラフィ工程によってカソード電極4をストライプ状に形成してもよい。この場合の塗布方法としてはスピンコート法を用いることができる。
【0022】
[絶縁層の形成工程;S2]
次に、カソード電極4を覆う状態でベース基板3上に絶縁層5を形成する。絶縁層5を構成する材料としては、SiO2(二酸化シリコン)などのように電気的に高い絶縁性を有する材料であれば、どのような材料を用いてもよい。絶縁層5はベース基板3の上面を全体的に覆うように層状に形成される。絶縁層5の形成方法としては、例えば、スピンコート法、印刷法、スパッタ法、蒸着法などのいわゆる成膜法を用いることができる。
【0023】
[ゲート電極の形成工程;S3]
次いで、上述のように積層したベース基板3の絶縁層5上にゲート電極6を形成する。ゲート電極6を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。ゲート電極6の形成パターンは、カソード電極4にほぼ直交するストライプ状であって、その形成方法としては上記カソード電極4の形成方法と同様の方法を用いることができる。これにより、図5(A)に示すように、ベース基板3上にカソード電極4、絶縁層5およびゲート電極6を順に積層した状態の構造体が得られる。
【0024】
[ゲートホールの形成工程;S4]
続いて、ゲート電極6および絶縁層5の所定部位(カソード電極4とゲート電極6の各電極ラインが交叉する部分;1画素部分)を、所望するゲートホール7の配置に合わせて部分的にエッチングすることにより、図5(B)に示すように、カソード電極4の一部を露出する状態でベース基板3上にゲートホール7を形成する。このゲートホール7は上記所定部位に複数形成される。エッチング方法としては、ウェット式、ドライ式のどちらを採用してもよい。
【0025】
[エミッタの形成工程;S5]
次いで、図5(C)に示すように、ゲートホール7の内部に複数の炭素系針状物質9を配列してエミッタ8を形成する。エミッタ8の形成手法としては、CVD法を用いることができる。CVD法を用いる場合は、ゲートホール7内で所望の部位にエミッタ8を形成するため、このエミッタ形成部位に対して予め触媒層を設けておく。触媒層は、ベース基板3上にカソード電極4を形成した後(絶縁層5を形成する前)に、当該カソード電極4上に設ける。触媒層は、炭素系針状物質9となるカーボンナノチューブの成長反応を促すもので、例えばニッケル、コバルト、鉄、又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金を、蒸着法、スパッタ法、電解メッキ法等によりカソード電極4に被着させた後、フォトリソグラフィーによる選択的エッチングによってパターニングすることにより得られる。そして、実際のエミッタ形成工程では、ゲートホール7内の触媒層上にCVD法によってカーボンナノチューブを成長させることにより、ベース基板3上に複数の炭素系針状物質9を植設した状態でエミッタ8が形成される。このようにCVD法を用いてエミッタ8を形成することにより、ゲートホール7内で複数の炭素系針状物質9をベース基板8に対してほぼ垂直に配向した状態で高密度に配列させることができる。
【0026】
[球体の散布工程;S6]
その後、図6(A)に示すように、ベース基板3上に多数の球体13を散布する。各々の球体13は、有機材料、無機材料又はそれらの組み合わせによって構成される硬質の小球であって、互いに均一な大きさ(例えば粒径分布が1〜3%程度)に形成されている。球体13の散布方法としては、ゲートホール7を上向きにしてベース基板3を水平状態に保持した状態で、その上方から多数の球体13をベース基板3に向けて噴射する方法、あるいはコーター(塗布装置)によって塗布する方法などを用いることができる。いずれの散布方法を採用する場合も、散布後の状態としては、ベース基板3上(特に、ゲートホール7内)で多数の球体13が互いに積み重なった状態となるように散布する。
【0027】
[加圧工程;S7]
次に、先ほど散布した多数の球体13をゲートホール7に押し込む方向(図5(A)の下方)に加圧することにより、このゲートホール7内に複数の球体13を密に充填する。このとき、ゲートホール7内に充填した複数の球体13との接触により、複数の炭素系針状物質9の一部をベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲させる。
【0028】
ここで、「横倒しの状態」とは、例えば、ベース基板3の基板面をゼロ基準とした場合に、この基板面に対して炭素系針状物質9が所定の倒れ角(例えば、0〜45°の鋭角)をなして倒れた状態をいう。よって、この横倒しの状態には、ベース基板3上で炭素系針状物質9が基板面に沿うようにほぼ真横に倒れた状態(倒れ角がほぼ0°の状態)と、ベース基板3上で炭素系針状物質9が斜めに倒れた状態の両方が含まれる。また、「複数の炭素系針状物質9の一部」という用語は、上記エミッタの形成工程でゲートホール7に植設された全ての炭素系針状物質9のうちの一部(例えば、半分)という意味で使用している。複数の炭素系針状物質9をどの程度の割合で横倒しの状態にするかは、エミッタ形成時の炭素系針状物質9の配列密度や、使用する球体13の直径などによって変わる。
【0029】
また、球体3を加圧する方法としては、各々の球体3に均一な加圧力が作用するよう、ベース基板3上に散布された多数の球体13に対して、例えばゴム状弾性を有する加圧パッドを押し当てるなどの手法を用いることができる。球体3の加圧は一時的に行って、その後は加圧を解放する。このように球体3を加圧することにより、ゲートホール7内は各々の球体3が互いに接触した状態で密に充填されるとともに、上記加圧力によって複数の炭素系針状物質9の一部が球体13に押されて屈曲し、横に倒れた状態となる。
【0030】
これにより、ゲートホール7内においては、ベース基板3の面方向で各々の球体13により形成される隙間部分に位置する炭素系針状物質9だけが垂直に配向された状態となる。したがって、ゲートホール7内では、球体13との接触により横倒しの状態となった炭素系針状物質9の本数に応じて垂直配向の炭素系針状物質9の割合が減少する。そのため、CVD法によりエミッタ8を形成した時点と比較して、炭素系針状物質9の離間寸法が長くなる。よって、エミッタ8を形成する複数の炭素系針状物質9の配列密度を実質的に低下させることができる。
【0031】
また、上記加圧工程後にゲートホール7内で隣り合う炭素系針状物質9の離間寸法は、球体13の直径(粒径)をそのまま反映した寸法となる。したがって、使用する球体13の直径をパラメータとして、炭素系針状物質9の離間寸法を任意に制御することが可能となる。特に、発光効率を高めるうえでは、図10(B)において、炭素系針状物質の離間寸法Lと炭素系針状物質の高さ寸法Hの寸法関係が概ね1:1であることが理想的である。そのため、上記球体の散布工程では、この理想的な寸法関係を満たす直径(つまり、炭素系針状物質9の長さとほぼ同じ直径)を有する球体13を用いることにより、ゲートホール7内での炭素系針状物質9の配列密度を最適化することが可能となる。
【0032】
[球体の除去工程;S8]
その後、電子放出素子の最終形態として球体13が残留しない方が好ましい場合は、この球体13を図6(B)に示すようにベース基板3上から除去する。球体13の除去は、球体13の材料として有機材料を用いた場合に、この有機材料を燃焼,蒸発によって焼き飛ばす、いわゆる焼成によって行うことができる。球体13を焼成によって除去する場合は、球体13を構成する有機材料(高分子材料等)として、カソード基板1の特性に悪影響を与えない程度の焼成温度(例えば400〜500℃)で炭化する材料を用いることが望ましい。代表的な有機材料の一例として、スチレン系、ウレタン系、アクリル系、ビニル系、ジビニルベンゼン系、メラニン系、ホルムアルデヒド系、ポリメチレン系のホモポリマー又は共重合体を挙げることができる。
【0033】
以上の製造プロセスによってカソード基板1が得られる。ただし、カソード基板1を得るにあたっては、上記工程S6、S7、S8に代えて、下記工程S6′,S7′,S8′を採用することも可能である。
【0034】
[シートの張り付け工程;S6′]
先ず、図7(A)に示すように、予め多数の球体13を平面的に密な配置状態で固着したシート14をベース基板3に張り合わせる。シート14は、適度な可撓性を有するものであって、球体13が固着した面をゲートホール7に向けた状態でベース基板13に張り合わせられる。このシート14には予め多数の球体13を散布して固着させる。このとき、各々の球体13がシート14の面方向で互いに当接するように平面的に密に配置しておく。
【0035】
[減圧工程;S7′]
次に、ベース基板3とシート14との間の空間を真空引きによって減圧することにより、図7(B)に示すように、ゲートホール7の形成部分でシート14を凹状に変形させる。これにより、ゲートホール7に複数の球体13が密に充填された状態となるため、これらの球体13との接触により、上記同様に複数の炭素系針状物質9の一部をベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲させることができる。真空引きによる減圧は一時的に行って、その後は減圧を解放する。
【0036】
[シートの剥離工程;S8′]
その後、ベース基板3からシート14を剥離させる。このシート14の剥離により、当該シート14と一緒にベース基板13上から球体13が除去される。そのため、電子放出素子の最終形態として球体13が残留することはない。
【0037】
以上のような製造プロセスを経て得られたカソード基板1をアノード基板2と組み合わせて電子放出素子を構成することにより、ベース基板3上のゲートホール7内では、エミッタ8を形成する複数の炭素系針状物質9の一部が、ベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲して配置されたものとなる。これにより、かかる製造プロセスを用いて製造された表示装置(FED)においては、各々の炭素系針状物質9の間に適度な離間寸法が確保されるため、炭素系針状物質9の先端部に電界が集中しやすくなる。その結果、より低い電圧でより多くの電子をエミッタ8から放出させることができるため、表示装置の発光効率を向上させることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成した後、ゲートホール内に複数の球体を充填して当該複数の球体との接触によって複数の炭素系針状物質の一部を基板に対して横倒しの状態に屈曲させることにより、ゲートホール内での炭素系針状物質の配列密度を適正化して高い発光効率を実現することことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その1)である。
【図6】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その2)である。
【図7】本発明の実施形態に係る電子放出素子の他の製造工程例を示す図である。
【図8】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図9】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【図10】カーボンナノチューブの配列状態による電位分布の違いを示す図である。
【符号の説明】
1…カソード基板、2…アノード基板、3…ベース基板、4…カソード電極、5…絶縁層、6…ゲート電極、7…ゲートホール、8…エミッタ、9…炭素系針状物質、10…ベース基板、11…アノード電極、12…蛍光体、13…球体、14…シート
【発明の属する技術分野】
本発明は、電界放出型の電子放出素子とその製造方法、および電子放出素子を用いた表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
真空中におかれた金属等の導体あるいは半導体の表面に、ある閾値以上の電界を与えると、トンネル効果によって電子が障壁を通過し、常温時においても真空中に電子が放出される。この現象は電界放出(Field Emission)と呼ばれ、これによって電子を放出するカソードは電界放出型カソード(Field Emission Cathode)と呼ばれている。近年では、ミクロンサイズの電界放出型カソードを、半導体加工技術を駆使して基板上に多数形成したフラットディスプレイ装置(平面型表示装置)としてFED(Field Emission Display)が注目されている。FEDは、電気的に選択(アドレッシング)されたエミッタから電界の集中によって電子を放出させるとともに、この電子をアノード基板側の蛍光体に衝突させて、蛍光体の励起・発光により画像を表示するものである。
【0003】
図8は従来の表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図9はその概略斜視図である。図においては、カソード基板51とアノード基板52とが微小なギャップを介して対向状態に配置されている。カソード基板51とアノード基板52との間は真空状態に維持される。カソード基板51は、ベース基板53と、カソード電極54と、抵抗層55と、絶縁層56と、ゲート電極57、エミッタ58とを備えている。ゲート電極57および絶縁層56にはゲートホール59が形成されている。また、ゲートホール59内にはコーン形状(略円錐形)のエミッタ58が形成されている。このエミッタ58はスピント型エミッタとも呼ばれる。一方、アノード基板52は、ベース基板60と、アノード電極61と、蛍光体62とを備えている。アノード電極61はITO(Indium Tin Oxide)等の透明電極からなるもので、蛍光体62は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて配置したものである。
【0004】
ここで、上記構成の表示装置(FED)の製造プロセスについて簡単に説明する。先ず、カソード基板51を得るにあたっては、ベース基板53上に、カソード電極54、抵抗層55、絶縁層56およびゲート電極57を蒸着法によって順に積層する。次に、フォトプロセス(フォトレジスト塗布、パターニング、エッチング)を施して、ゲート電極57および絶縁層56にゲートホール59を形成した後、フォトレジストを除去する。
【0005】
次いで、ベース基板53を回転させながら、その基板面に対して斜め方向からアルミニウムなどを蒸着させることにより、ゲート電極57の表面とその開口縁部にのみアルミニウムからなる剥離層を形成する。続いて、剥離層の上からエミッタ材料となる金属、例えばモリブデンを堆積させる。これにより、ゲートホール59の開口径がモリブデンの堆積とともに徐々に小さくなり、最終的にゲートホール59が完全に閉じられる。その結果、ゲートホール59内にエミッタ材料(モリブデン)の堆積によってコーン形状のエミッタ58が形成される。その後、ゲート電極57上の不要なエミッタ材料を剥離層とともにエッチングによって除去する。
【0006】
一方、アノード基板52を得るにあたっては、ベース基板60上にITO等のアノード電極61を形成した後、蛍光体材料の塗布によって蛍光体62を形成する。また、こうして得られたカソード基板51とアノード基板52とを、例えば0.2〜1.0mmのギャップで真空状態に封止する。以上の製造プロセスでは、エミッタ58とゲート電極57との間の距離がサブミクロンレベルに制御されることから、それらの間に数十ボルトの電圧を印加することにより、エミッタ58の先端部に電界を集中させ、これに伴うトンネル効果によってエミッタ58から真空中に電子を放出させることができる。その際、抵抗層55は、例えばエミッタ58への放電電流が大きくなった場合に、抵抗による電圧降下の増大によってエミッタ58に作用する実効電圧を減少させ、逆に放電電流が小さくなった場合はエミッタ58に作用する実効電圧を増加させることにより、放電電流を安定化させる役目を果たす。
【0007】
ところで近年においては、電界放出型カソードの構成として、非常に鋭利な先端が無数に得られるカーボンナノチューブを用いたエミッタ構造が提案されている。一般にカーボンナノチューブは高いアスペクト比を有し、先端の曲率半径も非常に小さいため、高い発光効率を実現する電子放出源として注目されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
カーボンナノチューブでエミッタを形成する手法の一つとして、CVD法(気相成長法;Chemical Vapor Deposition)が知られている。ただし、CVD法でカーボンナノチューブを成膜すると、カーボンナノチューブの配列密度が非常に高くなる。そうした場合、FEDの特性として、図10(A)に示すように、各々のカーボンナノチューブ63の間に電界が侵入しにくくなるため、カーボンナノチューブ63の先端部で電位分布が平滑化されてしまう。その結果、カーボンナノチューブ63の先端部に電界が集中しにくくなって発光効率が低下する。
【0009】
これに対して、図10(B)に示すように、各々のカーボンナノチューブ63を適度な離間寸法Lを隔てて配列した状態では、カーボンナノチューブ63の先端部に電界が集中しやすくなるため、発光効率が高まる。しかしながら、カソード電極54上に直接カーボンナノチューブ63を成膜するCVD法等では、カーボンナノチューブ63の配列密度を制御できないため、高い発光効率を実現することが困難な状況にある。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、カーボンナノチューブなどの炭素系針状物質を用いて電子放出素子のエミッタを形成する場合に、炭素系針状物質の配列密度を適正化して高い発光効率を実現することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電子放出素子の製造方法は、基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成する第1工程と、ゲートホール内に複数の球体を充填することにより、当該複数の球体との接触によって複数の炭素系針状物質の一部を基板に対して横倒しの状態に屈曲させる第2工程とを含むものである。
【0012】
この電子放出素子の製造方法においては、基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成した後、ゲートホール内に複数の球体を充填して当該複数の球体との接触により複数の炭素系針状物質の一部を基板に対して横倒しの状態に屈曲させることにより、ゲートホール内における炭素系針状物質の配列状態がエミッタ形成時よりも疎らになる。すなわち、ゲートホール内に複数の球体を充填すると、例えばCVD法によってほぼ垂直に配向した状態で高密度に配列された複数の炭素系針状物質のうち、一部の炭素系針状物質は、各々の球体との接触によって横倒しの状態に屈曲し、それ以外の炭素系針状物質は、各々の球体によって形成される隙間部分でほぼ垂直に配向した状態に維持される。そのため、複数の炭素系針状物質によってエミッタを形成した後、ゲートホールに複数の球体を充填することにより、炭素系針状物質の配列密度を低下させることが可能となる。その結果、この製造方法によって得られた電子放出素子とこれを用いた表示装置においては、炭素系針状物質の先端部に電界が集中しやすいように、複数の炭素系針状物質の配列密度を適正化することが可能となる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の主要部の構成例を示す概略断面図であり、図2はその概略斜視図である。図においては、カソード基板1とアノード基板2とが微小なギャップを介して対向状態で配置されている。カソード基板1とアノード基板2との間は真空状態に維持される。カソード基板1は、ガラス基板等からなるベース基板3と、このベース基板3上に順に積層されたカソード電極4、絶縁層5、ゲート電極6と、ベース基板3上に形成されたゲートホール7と、このゲートホール7内に形成されたエミッタ8とを備え、これらの構成要素によって電界放出型の電子放出素子が構成されている。なお、図1および図2においては、電子放出素子の1画素に相当する部分のみを示している。また、放電電流の安定化のための抵抗層(不図示)は、カソード電極4と同一のパターンで形成される。
【0015】
上述した構成要素のうち、カソード電極4は、図3に示すように、ベース基板3上で複数のカソードラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成され、ゲート電極6はベース基板3上で上記カソードラインに交又する複数のゲートラインを構成するようにストライプ状(帯状)に形成されている。カソード電極4とゲート電極6の交叉部分は一つの画素を構成するものとなる。絶縁層5はカソード電極4とゲート電極6との間で電気的な絶縁作用をなすもので、それらの電極間に層状に形成されている。ゲートホール7は、絶縁層5およびゲート電極6を貫通する状態で、カソード電極4とゲート電極6の交叉部分に複数個形成されている。ゲートホール7の孔形状は円形状となっている。エミッタ8は、ゲートホール7内でカソード電極4上に形成されている。このエミッタ8は、カソード電極4上に植設された複数の炭素系針状物質9によって形成されている。
【0016】
炭素系針状物質9としては、カーボンナノチューブを用いることが望ましい。カーボンナノチューブは、グラフェンシートを丸めた1層又は多層の円筒状をなすもので、直径が0.7〜50nm程度で長さが数μmの高いアスペクト比をもつ材料である。ただし、エミッタ材料として利用可能な微細な針状構造を有する物質であれば、カーボンナノチューブ以外のものを炭素系針状物質9として用いてもよい。
【0017】
一方、アノード基板2は、FEDの前面パネルを構成するもので、透明ガラス基板からなるベース基板10と、このベース基板10上に積層されたアノード電極11および蛍光体12を備えて構成されている。アノード電極11はITO等の透明電極によって形成され、蛍光体12は1画素分のエリア内に赤、緑、青の各色に対応する蛍光体を並べて形成されている。
【0018】
上記構成からなる電子放出素子を備える表示装置において、アノード電極11にアノード電圧(高圧)を印加する一方、カソード電極4にカソード電圧、ゲート電極6に正のゲート電圧をそれぞれ印加すると、エミッタ8を形成する各々の炭素系針状物質9の先鋭なエッジ部(先端部)に電界が集中し、この電界集中に伴うトンネル効果によってエミッタ8から真空中に電子が放出される。こうして放出された電子は、アノード基板2のアノード電極11に引き寄せられて蛍光体12に衝突する。これにより、蛍光体12が励起されて発光し、画像が表示される。
【0019】
ここで、FEDの発光効率は、エミッタ8を形成する複数の炭素系針状物質9の配列密度に大きく影響される。すなわち、炭素系針状物質9の配列密度が過度に高い場合(配列が密の場合)は前述したように炭素系針状物質9の先端部で電位分布が平滑化されるため、エミッタ8で電界の集中が起こりにくくなり、反対に、炭素系針状物質9の配列密度が過度に低い場合(配列が疎の場合)は、エミッタ8で電界の集中が起こりやすくなるものの、単位面積あたりの炭素系針状物質9の本数が少ないために電子の放出量が少なくなる。そのため、いずれの場合も高い発光効率が得られない。そこで本発明の実施形態においては、電子放出素子を製造するにあたって、エミッタ8における炭素系針状物質9の配列密度を適正化(好ましくは最適化)するために、以下のような製造方法を採用することとした。
【0020】
図4は本発明の実施形態に係る表示装置(FED)の製造方法として、特に電子放出素子を構成するカソード基板1の製造プロセスを示すフローチャートである。
【0021】
[カソード電極の形成工程;S1]
先ず、ベース基板3上にカソード電極4を形成する。カソード電極4を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。カソード電極4の形成パターンはストライプ状であって、その形成方法としてはペースト状の電極材料を印刷により塗布する印刷法を採用することが簡便である。ただし、他の形成方法として、周知のフォトリソグラフィ工程によってカソード電極4をストライプ状に形成してもよい。この場合の塗布方法としてはスピンコート法を用いることができる。
【0022】
[絶縁層の形成工程;S2]
次に、カソード電極4を覆う状態でベース基板3上に絶縁層5を形成する。絶縁層5を構成する材料としては、SiO2(二酸化シリコン)などのように電気的に高い絶縁性を有する材料であれば、どのような材料を用いてもよい。絶縁層5はベース基板3の上面を全体的に覆うように層状に形成される。絶縁層5の形成方法としては、例えば、スピンコート法、印刷法、スパッタ法、蒸着法などのいわゆる成膜法を用いることができる。
【0023】
[ゲート電極の形成工程;S3]
次いで、上述のように積層したベース基板3の絶縁層5上にゲート電極6を形成する。ゲート電極6を構成する電極材料としては、例えば、クロム、タンタル、タングステン、モリブデン等の金属のように電気的に抵抗値の低い材料であれば、どのような材料を用いてもよい。ゲート電極6の形成パターンは、カソード電極4にほぼ直交するストライプ状であって、その形成方法としては上記カソード電極4の形成方法と同様の方法を用いることができる。これにより、図5(A)に示すように、ベース基板3上にカソード電極4、絶縁層5およびゲート電極6を順に積層した状態の構造体が得られる。
【0024】
[ゲートホールの形成工程;S4]
続いて、ゲート電極6および絶縁層5の所定部位(カソード電極4とゲート電極6の各電極ラインが交叉する部分;1画素部分)を、所望するゲートホール7の配置に合わせて部分的にエッチングすることにより、図5(B)に示すように、カソード電極4の一部を露出する状態でベース基板3上にゲートホール7を形成する。このゲートホール7は上記所定部位に複数形成される。エッチング方法としては、ウェット式、ドライ式のどちらを採用してもよい。
【0025】
[エミッタの形成工程;S5]
次いで、図5(C)に示すように、ゲートホール7の内部に複数の炭素系針状物質9を配列してエミッタ8を形成する。エミッタ8の形成手法としては、CVD法を用いることができる。CVD法を用いる場合は、ゲートホール7内で所望の部位にエミッタ8を形成するため、このエミッタ形成部位に対して予め触媒層を設けておく。触媒層は、ベース基板3上にカソード電極4を形成した後(絶縁層5を形成する前)に、当該カソード電極4上に設ける。触媒層は、炭素系針状物質9となるカーボンナノチューブの成長反応を促すもので、例えばニッケル、コバルト、鉄、又はこれらの金属の少なくとも2種からなる合金を、蒸着法、スパッタ法、電解メッキ法等によりカソード電極4に被着させた後、フォトリソグラフィーによる選択的エッチングによってパターニングすることにより得られる。そして、実際のエミッタ形成工程では、ゲートホール7内の触媒層上にCVD法によってカーボンナノチューブを成長させることにより、ベース基板3上に複数の炭素系針状物質9を植設した状態でエミッタ8が形成される。このようにCVD法を用いてエミッタ8を形成することにより、ゲートホール7内で複数の炭素系針状物質9をベース基板8に対してほぼ垂直に配向した状態で高密度に配列させることができる。
【0026】
[球体の散布工程;S6]
その後、図6(A)に示すように、ベース基板3上に多数の球体13を散布する。各々の球体13は、有機材料、無機材料又はそれらの組み合わせによって構成される硬質の小球であって、互いに均一な大きさ(例えば粒径分布が1〜3%程度)に形成されている。球体13の散布方法としては、ゲートホール7を上向きにしてベース基板3を水平状態に保持した状態で、その上方から多数の球体13をベース基板3に向けて噴射する方法、あるいはコーター(塗布装置)によって塗布する方法などを用いることができる。いずれの散布方法を採用する場合も、散布後の状態としては、ベース基板3上(特に、ゲートホール7内)で多数の球体13が互いに積み重なった状態となるように散布する。
【0027】
[加圧工程;S7]
次に、先ほど散布した多数の球体13をゲートホール7に押し込む方向(図5(A)の下方)に加圧することにより、このゲートホール7内に複数の球体13を密に充填する。このとき、ゲートホール7内に充填した複数の球体13との接触により、複数の炭素系針状物質9の一部をベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲させる。
【0028】
ここで、「横倒しの状態」とは、例えば、ベース基板3の基板面をゼロ基準とした場合に、この基板面に対して炭素系針状物質9が所定の倒れ角(例えば、0〜45°の鋭角)をなして倒れた状態をいう。よって、この横倒しの状態には、ベース基板3上で炭素系針状物質9が基板面に沿うようにほぼ真横に倒れた状態(倒れ角がほぼ0°の状態)と、ベース基板3上で炭素系針状物質9が斜めに倒れた状態の両方が含まれる。また、「複数の炭素系針状物質9の一部」という用語は、上記エミッタの形成工程でゲートホール7に植設された全ての炭素系針状物質9のうちの一部(例えば、半分)という意味で使用している。複数の炭素系針状物質9をどの程度の割合で横倒しの状態にするかは、エミッタ形成時の炭素系針状物質9の配列密度や、使用する球体13の直径などによって変わる。
【0029】
また、球体3を加圧する方法としては、各々の球体3に均一な加圧力が作用するよう、ベース基板3上に散布された多数の球体13に対して、例えばゴム状弾性を有する加圧パッドを押し当てるなどの手法を用いることができる。球体3の加圧は一時的に行って、その後は加圧を解放する。このように球体3を加圧することにより、ゲートホール7内は各々の球体3が互いに接触した状態で密に充填されるとともに、上記加圧力によって複数の炭素系針状物質9の一部が球体13に押されて屈曲し、横に倒れた状態となる。
【0030】
これにより、ゲートホール7内においては、ベース基板3の面方向で各々の球体13により形成される隙間部分に位置する炭素系針状物質9だけが垂直に配向された状態となる。したがって、ゲートホール7内では、球体13との接触により横倒しの状態となった炭素系針状物質9の本数に応じて垂直配向の炭素系針状物質9の割合が減少する。そのため、CVD法によりエミッタ8を形成した時点と比較して、炭素系針状物質9の離間寸法が長くなる。よって、エミッタ8を形成する複数の炭素系針状物質9の配列密度を実質的に低下させることができる。
【0031】
また、上記加圧工程後にゲートホール7内で隣り合う炭素系針状物質9の離間寸法は、球体13の直径(粒径)をそのまま反映した寸法となる。したがって、使用する球体13の直径をパラメータとして、炭素系針状物質9の離間寸法を任意に制御することが可能となる。特に、発光効率を高めるうえでは、図10(B)において、炭素系針状物質の離間寸法Lと炭素系針状物質の高さ寸法Hの寸法関係が概ね1:1であることが理想的である。そのため、上記球体の散布工程では、この理想的な寸法関係を満たす直径(つまり、炭素系針状物質9の長さとほぼ同じ直径)を有する球体13を用いることにより、ゲートホール7内での炭素系針状物質9の配列密度を最適化することが可能となる。
【0032】
[球体の除去工程;S8]
その後、電子放出素子の最終形態として球体13が残留しない方が好ましい場合は、この球体13を図6(B)に示すようにベース基板3上から除去する。球体13の除去は、球体13の材料として有機材料を用いた場合に、この有機材料を燃焼,蒸発によって焼き飛ばす、いわゆる焼成によって行うことができる。球体13を焼成によって除去する場合は、球体13を構成する有機材料(高分子材料等)として、カソード基板1の特性に悪影響を与えない程度の焼成温度(例えば400〜500℃)で炭化する材料を用いることが望ましい。代表的な有機材料の一例として、スチレン系、ウレタン系、アクリル系、ビニル系、ジビニルベンゼン系、メラニン系、ホルムアルデヒド系、ポリメチレン系のホモポリマー又は共重合体を挙げることができる。
【0033】
以上の製造プロセスによってカソード基板1が得られる。ただし、カソード基板1を得るにあたっては、上記工程S6、S7、S8に代えて、下記工程S6′,S7′,S8′を採用することも可能である。
【0034】
[シートの張り付け工程;S6′]
先ず、図7(A)に示すように、予め多数の球体13を平面的に密な配置状態で固着したシート14をベース基板3に張り合わせる。シート14は、適度な可撓性を有するものであって、球体13が固着した面をゲートホール7に向けた状態でベース基板13に張り合わせられる。このシート14には予め多数の球体13を散布して固着させる。このとき、各々の球体13がシート14の面方向で互いに当接するように平面的に密に配置しておく。
【0035】
[減圧工程;S7′]
次に、ベース基板3とシート14との間の空間を真空引きによって減圧することにより、図7(B)に示すように、ゲートホール7の形成部分でシート14を凹状に変形させる。これにより、ゲートホール7に複数の球体13が密に充填された状態となるため、これらの球体13との接触により、上記同様に複数の炭素系針状物質9の一部をベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲させることができる。真空引きによる減圧は一時的に行って、その後は減圧を解放する。
【0036】
[シートの剥離工程;S8′]
その後、ベース基板3からシート14を剥離させる。このシート14の剥離により、当該シート14と一緒にベース基板13上から球体13が除去される。そのため、電子放出素子の最終形態として球体13が残留することはない。
【0037】
以上のような製造プロセスを経て得られたカソード基板1をアノード基板2と組み合わせて電子放出素子を構成することにより、ベース基板3上のゲートホール7内では、エミッタ8を形成する複数の炭素系針状物質9の一部が、ベース基板3に対して横倒しの状態に屈曲して配置されたものとなる。これにより、かかる製造プロセスを用いて製造された表示装置(FED)においては、各々の炭素系針状物質9の間に適度な離間寸法が確保されるため、炭素系針状物質9の先端部に電界が集中しやすくなる。その結果、より低い電圧でより多くの電子をエミッタ8から放出させることができるため、表示装置の発光効率を向上させることができる。
【0038】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成した後、ゲートホール内に複数の球体を充填して当該複数の球体との接触によって複数の炭素系針状物質の一部を基板に対して横倒しの状態に屈曲させることにより、ゲートホール内での炭素系針状物質の配列密度を適正化して高い発光効率を実現することことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る表示装置の主要部の構成例を示す概略平面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る表示装置の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その1)である。
【図6】本発明の実施形態に係る電子放出素子の製造工程を示す図(その2)である。
【図7】本発明の実施形態に係る電子放出素子の他の製造工程例を示す図である。
【図8】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略断面図である。
【図9】従来の表示装置の主要部の構成例を示す概略斜視図である。
【図10】カーボンナノチューブの配列状態による電位分布の違いを示す図である。
【符号の説明】
1…カソード基板、2…アノード基板、3…ベース基板、4…カソード電極、5…絶縁層、6…ゲート電極、7…ゲートホール、8…エミッタ、9…炭素系針状物質、10…ベース基板、11…アノード電極、12…蛍光体、13…球体、14…シート
Claims (10)
- 基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してエミッタを形成する第1工程と、
前記ゲートホール内に複数の球体を充填して当該複数の球体との接触により前記複数の炭素系針状物質の一部を前記基板に対して横倒しの状態に屈曲させる第2工程と
を含むことを特徴とする電子放出素子の製造方法。 - 前記炭素系針状物質がカーボンナノチューブである
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第1工程において、前記複数の炭素系針状物質を前記基板に対してほぼ垂直に配向した状態で高密度に配列させる
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第2工程において、前記炭素系針状物質の長さとほぼ等しい直径を有する球体を用いる
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第2工程において、前記基板上に多数の球体を散布した後、当該多数の球体を前記ゲートホールに押し込む方向に加圧することにより、前記ゲートホール内に複数の球体を充填する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記第2工程において、予め多数の球体を平面的に密な配置状態で固着したシートを、前記球体が固着した面を前記ゲートホールに向けた状態で前記基板に張り合わせた後、前記ゲートホールの形成部分で前記シートを凹状に変形させることにより、前記ゲートホール内に複数の球体を充填する
ことを特徴とする請求項1記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記球体は有機材料からなるもので、この球体を焼成によって前記基板上から除去する第3工程を有する
ことを特徴とする請求項5記載の電子放出素子の製造方法。 - 前記基板から前記シートを剥離させることにより、前記球体を前記基板上から除去する第3工程を有する
ことを特徴とする請求項6記載の電子放出素子の製造方法。 - 基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してなるエミッタを有するとともに、前記エミッタを形成する前記複数の炭素系針状物質の一部を前記基板に対して横倒しの状態に屈曲させてなる
ことを特徴とする電子放出素子。 - 基板上のゲートホール内に複数の炭素系針状物質を配列してなるエミッタを有するとともに、前記エミッタを形成する前記複数の炭素系針状物質の一部を前記基板に対して横倒しの状態に屈曲させてなる電子放出素子を備える
ことを特徴とする表示装置。
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Cited By (2)
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