JP2004033854A - 多孔質膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】疎水性ポリマーと親水性ポリマーからなる多孔質膜より、親水性ポリマーを短時間で効率的に除去できる多孔質膜の製造方法を提供する。
【解決手段】疎水性ポリマーと親水性ポリマーとからなる多孔質膜を、pHを9未満に調整した次亜塩素酸塩水溶液と接触させ、親水性ポリマーの少なくとも一部を分解除去する多孔質膜の製造方法は、次亜塩素酸の分解を促進することができるため、短時間で効率的に親水性ポリマーを除去し、高い透過性能を達成することを可能にする。したがって、紡糸等の工程と、洗浄工程を連続的に行うことが可能な、工業的に優れた製造方法である。
【選択図】 なし
【解決手段】疎水性ポリマーと親水性ポリマーとからなる多孔質膜を、pHを9未満に調整した次亜塩素酸塩水溶液と接触させ、親水性ポリマーの少なくとも一部を分解除去する多孔質膜の製造方法は、次亜塩素酸の分解を促進することができるため、短時間で効率的に親水性ポリマーを除去し、高い透過性能を達成することを可能にする。したがって、紡糸等の工程と、洗浄工程を連続的に行うことが可能な、工業的に優れた製造方法である。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高透過係数を持つ多孔質膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品工業分野、医療分野、電子工業分野等の分野で有用成分の濃縮、回収、不要成分の除去、或いは造水等にセルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン等からなる精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜等が用いられており、これらの膜の多くには、湿式又は乾湿式紡糸により製造させる多孔質中空糸膜が用いられている。
【0003】
多孔質膜に要求される性能として特に重要な性能の一つに透水性能があるが、透水性能を向上させようとした場合、一般的には膜孔径が大きくなるように紡糸原液の濃度や凝固液を調節する。湿式又は乾湿式紡糸を行う場合、原液は、疎水性ポリマー、親水性ポリマーを溶剤に溶解させたものが用いられている。
【0004】
この際、親水性ポリマーとしては、紡糸時における原液粘度を向上させ、製膜状態の安定化を図るために添加されており、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドン等の高分子量の親水性ポリマーを用いることが多い。
【0005】
湿式又は乾湿式紡糸により製造される多孔質膜は、凝固浴を通過して凝固が完了した段階では、膜中に高分子量の親水性ポリマーが多量に残存しているため、このままでは高透水性の膜としての機能を発揮できない。そのため、凝固完了した後、膜中に残存している高分子量の親水性ポリマーを除去する必要がある。
【0006】
親水性ポリマーを除去する方法としては、例えば特開平2−302449号公報には、酸化剤又は加水分解剤を用いて親水性ポリマーを除去する方法が開示されている。
【0007】
多孔質膜の製造は、紡糸、凝固、洗浄までを連続して行うことにより、製造コストの低減が可能となる。ここで、洗浄を長時間行うことが必要な場合、連続して製造するためには、設備を極端に大きくする必要があるため、できるだけ短時間の分解処理で透水性能を発現させることが望まれる。
【0008】
分解処理時間を短縮するためには、酸化剤等の濃度を高くすることが基本的には有効ではあるが、酸化剤の濃度を高くすると、酸化剤のコストアップにつながるのみならず、洗浄に使用する設備の腐食が激しくなるため、耐食性の材料が必須となる、設備更新頻度が多くなる、等により、更なるコストアップが生じるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーからなる多孔質膜より、親水性ポリマーを短時間で効率的に除去できる多孔質膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の要旨は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとからなる多孔質膜を、pHを9未満に調整した次亜塩素酸塩水溶液と接触させ、親水性ポリマーの少なくとも一部を分解除去する多孔質膜の製造方法、である。
【0011】
前記次亜塩素酸塩水溶液のpHは、5以上9未満であると、効率的に洗浄を行うことが可能であると共に、塩素ガスの発生を防止できるため好ましい。
前記次亜塩素酸塩水溶液の温度は60℃以上であると、分解除去速度が向上するため好ましい。
前記多孔質膜は、中空糸膜であることが好ましい。
【0012】
また、前記次亜塩素酸塩水溶液と多孔質膜との接触時間を10分未満とすると、紡糸工程と洗浄工程を連続的に行うことが可能であるため好ましい。
前記次亜塩素酸塩水溶液中の次亜塩素酸濃度は、10〜4000mg/Lであると、効率的に洗浄を行うことができるため好ましい。
【0013】
また、前記疎水性ポリマーを10〜30質量%と、前記親水性ポリマーを1〜20質量%含んでなる原液から多孔質膜を製造すると、優れた透過性能を有する中空糸膜を安定して得る事ができるため好ましい。
【0014】
前記疎水性ポリマーが、フッ素系樹脂、より好ましくはポリフッ化ビニリデンであり、前記親水性ポリマーがポリビニルピロリドンであると、本発明による製造方法によって、好ましい物性を有する多孔質膜を安定的に得る事ができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明による多孔質膜の製造方法は、膜の形態に限定されるものではなく、平膜、管状膜、中空糸膜等の製造に使用することができる。
【0016】
以下、中空糸膜の製造方法を例に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明における多孔質膜の製造方法は、中空糸膜に成型可能な疎水性ポリマーを溶媒に溶解し、この溶液を紡糸原液として、紡糸口金より一旦空気中に紡出した後、疎水性ポリマーの非溶媒中に導き、非溶媒中で凝固させる乾湿式紡糸法が好ましく用いられる。上記工程の他、延伸工程等を含んでも構わないし、空気中を経ずに非溶媒中に直接吐出させても構わない。
【0017】
紡糸口金としては、中空糸膜状に成形し得る任意の紡糸口金が用いられ、例えば二重環状ノズル等の紡糸口金を用いて紡糸する。このとき、紡糸口金の中心部にポリマーの非溶媒を送り、中空糸膜の内表面を凝固させるようにしてもよい。
【0018】
本発明に使われる疎水性ポリマーは、湿式、乾湿式紡糸により多孔質中空糸膜を形成し得るものであれば特に限定されるものではなく、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートなどが挙げられる。また、これらの樹脂の共重合体や一部に置換基を導入したものであってもよい。さらに、2種以上の樹脂を混合したものであってもよい。
特にフッ素系樹脂、中でもポリフッ化ビニリデンは、次亜塩素酸に対する耐久性が強く、本発明の製造方法に好ましく用いることができる。
【0019】
本発明における紡糸原液は、疎水性ポリマーを溶媒に均一に溶解させて用いる。この際、疎水性ポリマーの濃度は、薄すぎても、濃すぎても、紡糸安定性が損なわれる、望ましい多孔質構造が得られなくなる、等の不都合があるため、下限は10質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。また、上限は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。
【0020】
原液には、相分離を制御するための添加剤として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを共に溶解させる。親水性ポリマーの濃度下限は1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。また、上限は20質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。
【0021】
本発明に使われる溶媒は、膜形成性樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されるものではないが、乾湿式紡糸の空走部において原液に吸湿させることから、水と均一に混合可能なものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシドなどが挙げられ、これらの単独又は混合物、或いはこれら溶媒に、その溶解性を損なわない範囲で非溶媒を加えたものが好ましく用いられる。
【0022】
非溶媒を混合する場合、水、アルコール類、グリセリン、エチレングリコール等を用いることができ、水が最も好ましい。
【0023】
紡糸口金から吐出された原液は、空走部を経た後、凝固浴中の非溶媒と接触することにより、多孔質中空糸膜が形成される。凝固浴に使用する非溶媒には、水、アルコール類、グリセリン、エチレングリコール等を、単独或いは混合して用いることができる。また、前述の溶媒を混合させてもよい。
【0024】
以上のような条件で紡糸された多孔質中空糸膜は、孔径が大きく高透水性能を潜在的に有しているが、凝固が完了した段階では、膜中に高分子量の親水性ポリマーが多量に残存しているため、このままでは高透水性の膜としての機能を発揮できない。そのため、凝固完了段階で膜中に残存している高分子量の親水性ポリマーを、次亜塩素酸塩水溶液と接触させて分解除去する。
【0025】
次亜塩素酸塩水溶液によって行われる高分子量親水性ポリマーの分解除去は、次亜塩素酸の分解によって発生した活性酸素が高分子量親水性ポリマーを分解することによって達成されると考えられる。
【0026】
一般に市販される次亜塩素酸塩水溶液は、長期保存を可能にするために、安定剤としてアルカリ性薬剤が混合されている。従って市販の次亜塩素酸塩水溶液をそのまま希釈すると、pHは10以上の範囲となる。
【0027】
ところが、pHが高いと、次亜塩素酸塩自体の分解を抑制するため、次亜塩素酸塩の分解によって発生する活性酸素の量が抑えられ、多孔質中空糸膜中に残存している高分子量親水性ポリマーを効果的に分解除去する際の妨げとなる。
【0028】
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法は、次亜塩素酸塩水溶液の濃度を調整する際、pHを9未満に調整することによって、次亜塩素酸塩の分解を促進する。
但し、pHが5未満になると塩素ガスが発生し、それにより次亜塩素酸塩水溶液の酸化剤としての効果を損なうばかりか、毒ガスの発生による危険を伴うこととなる。従って、pHの下限は5が好ましい。
【0029】
次亜塩素酸塩水溶液の温度は、温度が高いほうが、次亜塩素酸塩の分解を促進する効果を高めると同時に、液の拡散効果を高めることができ、膜中に残存する高分子量親水性ポリマーの分解除去には極めて有効である。具体的には常圧で60℃以上の温度に保持することが好ましい。水分の蒸発により系が不安定になるので、温度の上限は100℃未満が好ましく、85℃以下が更に好ましい。
【0030】
次亜塩素酸塩水溶液の濃度は、10mg/L以上であれば分解処理がスムーズに行われる。あまり濃度が高いと腐食性が高くなるため、濃度の上限は4000mg/Lが好ましく、3000mg/Lがより好ましい。
【0031】
次亜塩素酸塩水溶液と多孔質膜との接触時間は、あまり長いと紡糸工程、凝固工程との所要時間のバランスが取れず、連続的に洗浄を行うことが実質的に困難となるため、10分未満とすることが好ましく、5分以下がより好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明を更に詳しく説明する。
【0033】
<実施例1>
ポリフッ化ビニリデン樹脂(アトフィナ・ジャパン社製、商品名カイナー301F)と、ポリフッ化ビニリデン樹脂(アトフィナ・ジャパン社製、商品名カイナー9000)と、ポリビニルピロリドン(ISP社製、商品名K−90、分子量1200000)と、N、N−ジメチルアセトアミドとを、質量比が12:8:10:80となるように攪拌しながら加熱溶解して紡糸原液を調整した。調整した紡糸原液を、乾湿式紡糸法にて紡糸を行った。
【0034】
得られた多孔質中空糸膜を、塩酸にてpH7.7に調整し、温度70℃、濃度3000mg/Lとした次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄を行った。そして、洗浄時間2分後及び5分後の水フラックスを測定した。その結果、2分後の水フラックスは70m3/m2/hr/MPa、5分後の水フラックスは123m3/m2/hr/MPaであった。
【0035】
<実施例2>
実施例1と同様の条件で紡糸して得られた多孔質中空糸膜を、温度を60℃とした以外は実施例1と同様に洗浄し、洗浄時間2分後及び5分後の水フラックスを測定した。その結果、2分後の水フラックスは65m3/m2/hr/MPa、5分後の水フラックスは102m3/m2/hr/MPaであった。
【0036】
<比較例1>
実施例1と同様の条件で紡糸して得られた多孔質中空糸膜を、pHを調整しない以外は実施例1と同様に洗浄し、洗浄時間2分後及び5分後の水フラックスを測定した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHは11.5であった。その結果、2分後の水フラックスは44m3/m2/hr/MPa、5分後の水フラックスは77m3/m2/hr/MPaであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法によると、多孔質中空糸膜の膜中に残存している高分子量親水性ポリマーを次亜塩素酸塩水溶液で分解するにあたり、pHを9未満に調整することによって分解効果を促進させ、より短時間で分解除去できるため、紡糸等の工程と、洗浄工程を連続的に行うことが可能となる。
また、次亜塩素酸塩水溶液の温度を60℃以上とすることにより、次亜塩素酸塩による分解洗浄効果をより促進することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高透過係数を持つ多孔質膜の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
食品工業分野、医療分野、電子工業分野等の分野で有用成分の濃縮、回収、不要成分の除去、或いは造水等にセルロースアセテート、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン等からなる精密濾過膜、限外濾過膜、逆浸透膜等が用いられており、これらの膜の多くには、湿式又は乾湿式紡糸により製造させる多孔質中空糸膜が用いられている。
【0003】
多孔質膜に要求される性能として特に重要な性能の一つに透水性能があるが、透水性能を向上させようとした場合、一般的には膜孔径が大きくなるように紡糸原液の濃度や凝固液を調節する。湿式又は乾湿式紡糸を行う場合、原液は、疎水性ポリマー、親水性ポリマーを溶剤に溶解させたものが用いられている。
【0004】
この際、親水性ポリマーとしては、紡糸時における原液粘度を向上させ、製膜状態の安定化を図るために添加されており、ポリエチレングリコールやポリビニルピロリドン等の高分子量の親水性ポリマーを用いることが多い。
【0005】
湿式又は乾湿式紡糸により製造される多孔質膜は、凝固浴を通過して凝固が完了した段階では、膜中に高分子量の親水性ポリマーが多量に残存しているため、このままでは高透水性の膜としての機能を発揮できない。そのため、凝固完了した後、膜中に残存している高分子量の親水性ポリマーを除去する必要がある。
【0006】
親水性ポリマーを除去する方法としては、例えば特開平2−302449号公報には、酸化剤又は加水分解剤を用いて親水性ポリマーを除去する方法が開示されている。
【0007】
多孔質膜の製造は、紡糸、凝固、洗浄までを連続して行うことにより、製造コストの低減が可能となる。ここで、洗浄を長時間行うことが必要な場合、連続して製造するためには、設備を極端に大きくする必要があるため、できるだけ短時間の分解処理で透水性能を発現させることが望まれる。
【0008】
分解処理時間を短縮するためには、酸化剤等の濃度を高くすることが基本的には有効ではあるが、酸化剤の濃度を高くすると、酸化剤のコストアップにつながるのみならず、洗浄に使用する設備の腐食が激しくなるため、耐食性の材料が必須となる、設備更新頻度が多くなる、等により、更なるコストアップが生じるという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーからなる多孔質膜より、親水性ポリマーを短時間で効率的に除去できる多孔質膜の製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
即ち本発明の要旨は、疎水性ポリマーと親水性ポリマーとからなる多孔質膜を、pHを9未満に調整した次亜塩素酸塩水溶液と接触させ、親水性ポリマーの少なくとも一部を分解除去する多孔質膜の製造方法、である。
【0011】
前記次亜塩素酸塩水溶液のpHは、5以上9未満であると、効率的に洗浄を行うことが可能であると共に、塩素ガスの発生を防止できるため好ましい。
前記次亜塩素酸塩水溶液の温度は60℃以上であると、分解除去速度が向上するため好ましい。
前記多孔質膜は、中空糸膜であることが好ましい。
【0012】
また、前記次亜塩素酸塩水溶液と多孔質膜との接触時間を10分未満とすると、紡糸工程と洗浄工程を連続的に行うことが可能であるため好ましい。
前記次亜塩素酸塩水溶液中の次亜塩素酸濃度は、10〜4000mg/Lであると、効率的に洗浄を行うことができるため好ましい。
【0013】
また、前記疎水性ポリマーを10〜30質量%と、前記親水性ポリマーを1〜20質量%含んでなる原液から多孔質膜を製造すると、優れた透過性能を有する中空糸膜を安定して得る事ができるため好ましい。
【0014】
前記疎水性ポリマーが、フッ素系樹脂、より好ましくはポリフッ化ビニリデンであり、前記親水性ポリマーがポリビニルピロリドンであると、本発明による製造方法によって、好ましい物性を有する多孔質膜を安定的に得る事ができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明による多孔質膜の製造方法は、膜の形態に限定されるものではなく、平膜、管状膜、中空糸膜等の製造に使用することができる。
【0016】
以下、中空糸膜の製造方法を例に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明における多孔質膜の製造方法は、中空糸膜に成型可能な疎水性ポリマーを溶媒に溶解し、この溶液を紡糸原液として、紡糸口金より一旦空気中に紡出した後、疎水性ポリマーの非溶媒中に導き、非溶媒中で凝固させる乾湿式紡糸法が好ましく用いられる。上記工程の他、延伸工程等を含んでも構わないし、空気中を経ずに非溶媒中に直接吐出させても構わない。
【0017】
紡糸口金としては、中空糸膜状に成形し得る任意の紡糸口金が用いられ、例えば二重環状ノズル等の紡糸口金を用いて紡糸する。このとき、紡糸口金の中心部にポリマーの非溶媒を送り、中空糸膜の内表面を凝固させるようにしてもよい。
【0018】
本発明に使われる疎水性ポリマーは、湿式、乾湿式紡糸により多孔質中空糸膜を形成し得るものであれば特に限定されるものではなく、ポリスルホンやポリエーテルスルホンなどのポリスルホン系樹脂、ポリアクリロニトリル、セルロース誘導体、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートなどが挙げられる。また、これらの樹脂の共重合体や一部に置換基を導入したものであってもよい。さらに、2種以上の樹脂を混合したものであってもよい。
特にフッ素系樹脂、中でもポリフッ化ビニリデンは、次亜塩素酸に対する耐久性が強く、本発明の製造方法に好ましく用いることができる。
【0019】
本発明における紡糸原液は、疎水性ポリマーを溶媒に均一に溶解させて用いる。この際、疎水性ポリマーの濃度は、薄すぎても、濃すぎても、紡糸安定性が損なわれる、望ましい多孔質構造が得られなくなる、等の不都合があるため、下限は10質量%が好ましく、15質量%がより好ましい。また、上限は30質量%が好ましく、25質量%がより好ましい。
【0020】
原液には、相分離を制御するための添加剤として、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコールなどの親水性ポリマーを共に溶解させる。親水性ポリマーの濃度下限は1質量%が好ましく、5質量%がより好ましい。また、上限は20質量%が好ましく、12質量%がより好ましい。
【0021】
本発明に使われる溶媒は、膜形成性樹脂を溶解し得るものであれば特に限定されるものではないが、乾湿式紡糸の空走部において原液に吸湿させることから、水と均一に混合可能なものが好ましく、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリン−N−オキシドなどが挙げられ、これらの単独又は混合物、或いはこれら溶媒に、その溶解性を損なわない範囲で非溶媒を加えたものが好ましく用いられる。
【0022】
非溶媒を混合する場合、水、アルコール類、グリセリン、エチレングリコール等を用いることができ、水が最も好ましい。
【0023】
紡糸口金から吐出された原液は、空走部を経た後、凝固浴中の非溶媒と接触することにより、多孔質中空糸膜が形成される。凝固浴に使用する非溶媒には、水、アルコール類、グリセリン、エチレングリコール等を、単独或いは混合して用いることができる。また、前述の溶媒を混合させてもよい。
【0024】
以上のような条件で紡糸された多孔質中空糸膜は、孔径が大きく高透水性能を潜在的に有しているが、凝固が完了した段階では、膜中に高分子量の親水性ポリマーが多量に残存しているため、このままでは高透水性の膜としての機能を発揮できない。そのため、凝固完了段階で膜中に残存している高分子量の親水性ポリマーを、次亜塩素酸塩水溶液と接触させて分解除去する。
【0025】
次亜塩素酸塩水溶液によって行われる高分子量親水性ポリマーの分解除去は、次亜塩素酸の分解によって発生した活性酸素が高分子量親水性ポリマーを分解することによって達成されると考えられる。
【0026】
一般に市販される次亜塩素酸塩水溶液は、長期保存を可能にするために、安定剤としてアルカリ性薬剤が混合されている。従って市販の次亜塩素酸塩水溶液をそのまま希釈すると、pHは10以上の範囲となる。
【0027】
ところが、pHが高いと、次亜塩素酸塩自体の分解を抑制するため、次亜塩素酸塩の分解によって発生する活性酸素の量が抑えられ、多孔質中空糸膜中に残存している高分子量親水性ポリマーを効果的に分解除去する際の妨げとなる。
【0028】
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法は、次亜塩素酸塩水溶液の濃度を調整する際、pHを9未満に調整することによって、次亜塩素酸塩の分解を促進する。
但し、pHが5未満になると塩素ガスが発生し、それにより次亜塩素酸塩水溶液の酸化剤としての効果を損なうばかりか、毒ガスの発生による危険を伴うこととなる。従って、pHの下限は5が好ましい。
【0029】
次亜塩素酸塩水溶液の温度は、温度が高いほうが、次亜塩素酸塩の分解を促進する効果を高めると同時に、液の拡散効果を高めることができ、膜中に残存する高分子量親水性ポリマーの分解除去には極めて有効である。具体的には常圧で60℃以上の温度に保持することが好ましい。水分の蒸発により系が不安定になるので、温度の上限は100℃未満が好ましく、85℃以下が更に好ましい。
【0030】
次亜塩素酸塩水溶液の濃度は、10mg/L以上であれば分解処理がスムーズに行われる。あまり濃度が高いと腐食性が高くなるため、濃度の上限は4000mg/Lが好ましく、3000mg/Lがより好ましい。
【0031】
次亜塩素酸塩水溶液と多孔質膜との接触時間は、あまり長いと紡糸工程、凝固工程との所要時間のバランスが取れず、連続的に洗浄を行うことが実質的に困難となるため、10分未満とすることが好ましく、5分以下がより好ましい。
【0032】
【実施例】
以下、実施例をもとに本発明を更に詳しく説明する。
【0033】
<実施例1>
ポリフッ化ビニリデン樹脂(アトフィナ・ジャパン社製、商品名カイナー301F)と、ポリフッ化ビニリデン樹脂(アトフィナ・ジャパン社製、商品名カイナー9000)と、ポリビニルピロリドン(ISP社製、商品名K−90、分子量1200000)と、N、N−ジメチルアセトアミドとを、質量比が12:8:10:80となるように攪拌しながら加熱溶解して紡糸原液を調整した。調整した紡糸原液を、乾湿式紡糸法にて紡糸を行った。
【0034】
得られた多孔質中空糸膜を、塩酸にてpH7.7に調整し、温度70℃、濃度3000mg/Lとした次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いて洗浄を行った。そして、洗浄時間2分後及び5分後の水フラックスを測定した。その結果、2分後の水フラックスは70m3/m2/hr/MPa、5分後の水フラックスは123m3/m2/hr/MPaであった。
【0035】
<実施例2>
実施例1と同様の条件で紡糸して得られた多孔質中空糸膜を、温度を60℃とした以外は実施例1と同様に洗浄し、洗浄時間2分後及び5分後の水フラックスを測定した。その結果、2分後の水フラックスは65m3/m2/hr/MPa、5分後の水フラックスは102m3/m2/hr/MPaであった。
【0036】
<比較例1>
実施例1と同様の条件で紡糸して得られた多孔質中空糸膜を、pHを調整しない以外は実施例1と同様に洗浄し、洗浄時間2分後及び5分後の水フラックスを測定した。次亜塩素酸ナトリウム水溶液のpHは11.5であった。その結果、2分後の水フラックスは44m3/m2/hr/MPa、5分後の水フラックスは77m3/m2/hr/MPaであった。
【0037】
【発明の効果】
本発明の多孔質中空糸膜の製造方法によると、多孔質中空糸膜の膜中に残存している高分子量親水性ポリマーを次亜塩素酸塩水溶液で分解するにあたり、pHを9未満に調整することによって分解効果を促進させ、より短時間で分解除去できるため、紡糸等の工程と、洗浄工程を連続的に行うことが可能となる。
また、次亜塩素酸塩水溶液の温度を60℃以上とすることにより、次亜塩素酸塩による分解洗浄効果をより促進することができる。
Claims (10)
- 疎水性ポリマーと親水性ポリマーとからなる多孔質膜を、pHを9未満に調整した次亜塩素酸塩水溶液と接触させ、親水性ポリマーの少なくとも一部を分解除去する多孔質膜の製造方法。
- 前記次亜塩素酸塩水溶液のpHが5以上9未満である請求項1記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記次亜塩素酸塩水溶液の温度が60℃以上である請求項1又は2に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記多孔質膜が中空糸膜である請求項1〜3いずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記次亜塩素酸塩水溶液と多孔質膜との接触時間を10分未満とする請求項1〜4いずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記次亜塩素酸塩水溶液中の次亜塩素酸濃度が10〜4000mg/Lである請求項1〜5いずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記疎水性ポリマーを10〜30質量%と、前記親水性ポリマーを1〜20質量%含んでなる原液を用いて多孔質膜を製造する請求項1〜6いずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記疎水性ポリマーが、フッ素系樹脂である請求項1〜7いずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記疎水性ポリマーが、ポリフッ化ビニリデンである請求項8に記載の多孔質膜の製造方法。
- 前記親水性ポリマーが、ポリビニルピロリドンである請求項1〜9いずれか一項に記載の多孔質膜の製造方法。
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